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ファイルを開く - MIUSE
博
士
論
文
地盤環境変動評価への
InSAR と GIS の 適 用 に 関 す る 研 究
平 成 23 年 3 月
三重大学大学院生物資源学研究科
生物圏保全科学専攻
鄭
敏学
目
次
要旨
1.
ⅴ
はじめに
1
1.1
研究背景
1
1.2
研究目的
4
2.
地盤環境変動の研究
5
2.1
地盤環境変動の研究の歴史
5
2.2
最近の地盤環境変動の研究及び課題
6
3.
合 成 開 口 レ ー ダ と 干 渉 SAR
3.1
9
リモートセンシングと合成開口レーダ
9
3.1.1
リモートセンシング
9
3.1.2
センサ
10
3.1.3
合成開口レーダの概要
12
3. 2
地 球 資 源 衛 星 1 号 JERS-1
14
3. 3
合成開口レーダの基礎
16
3.3.1
パルスの性質
16
3.3.2
レンジ分解能とパルス圧縮
18
3. 3.2.1
レンジ分解能
18
3. 3.2.2
パルス圧縮
19
3.3.3
アジマス分解能・合成開口・アジマス圧縮
22
3. 3.3.1
アジマス分解能
22
3. 3.3.2
合成開口
23
3. 3.3.3
アジマス圧縮
26
3.3.4
再生処理
27
ii
3. 4
干 渉 SAR
3.4.1
30
干 渉 SAR の 原 理
30
3.4.1.1
軌道位相の推定
35
3.4.1.2
地形位相の推定
36
3.4. 2
干 渉 SAR に よ る 地 形 標 高 の 測 定
37
3.4.3
干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 の 測 定
40
3. 5
4.
干 渉 SAR に お け る 誤 差 要 因
水蒸気影響の解析方法
41
42
4.1
類似天気図法
42
4.2
可降水量の計算方法
44
4.3
大気遅延量
46
4.3.1
大気遅延の基本原理
46
4.3.2
大気遅延量の推定方法
48
5.
解析データ
51
5.1
メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV-MSM デ ー タ
51
5.2
衛星データ
52
5.3
高層気象観測年報データ
57
6.
地 盤 変 動 解 析 へ の InSAR の 適 用
59
6.1
干渉画像
59
6.2
GPV -MSM デ ー タ の 選 択
59
6.3
水蒸気分布の復元
72
6.4
大気遅延量の推定
83
6.5
水蒸気による大気遅延の補正
83
iii
7.
濃尾平野における地盤変動の状況
88
7.1
濃尾平野の概要
88
7.2
濃尾平野の地形・地質
88
7.3
濃尾平野の地盤沈下の状況
91
7.4
地盤沈下のメカニズム
93
7.5
GIS に よ る 地 盤 沈 下 の 解 析
94
7.5.1
水準測量データ
94
7.5.2
解析方法
94
7.5.3
経年変化
96
7.5.4
地盤沈下と土地利用変化
98
8.
考察
106
8.1
干 渉 SAR の 大 気 遅 延
106
8.2
類似天気図法
106
8.3
水蒸気の影響評価
107
8.4
水準測量の補完検討
111
9.
結論
112
謝辞
114
参考文献
115
iv
要旨
地 盤 環 境 ,特 に 地 盤 沈 下 関 係 の 従 来 の 研 究 は ,主 と し て 水 準 測 量
成 果 を 用 い た ,測 点 や 測 定 路 線 に 依 存 し た 解 析 に よ っ て な さ れ て き
た .非 常 に 興 味 深 く 有 意 義 な も の で あ る が ,水 準 測 量 デ ー タ の 精 度
の問題や測量路線からはずれた地域での変動が評価できないなど,
多くの課題も残されている.
一 方 , マ イ ク ロ 波 を 用 い る SAR ( 合 成 開 口 レ ー ダ ) は 能 動 的 セ ン
サ で あ り ,雲 な ど を 通 過 す る の で ,光 学 セ ン サ と 違 っ て 天 候 に 左 右
されずに,昼夜も関係なく観測ができる.
こ の SAR 観 測 を 同 じ 場 所 に 対 し て 2 回 以 上 行 っ て そ の 差 を と る と ,
その干渉効果によって地殻表面の高さ変動の分布や変動量を詳細
に と ら え る こ と が で き る .近 年 ,地 盤 環 境 の 新 な 調 査 ・ 研 究 手 法 と
して注目されてきた.
干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 の 研 究 は 将 来 的 に 極 め て 有 望 で あ る が ,
課 題 も 残 さ れ て い る .例 え ば ,検 出 精 度 低 下 の 問 題 が あ る .そ の 原
因としては以下の 3 つが考えられる.
( a) 人 工 衛 星 の 軌 道 位 置 の 推 定 誤 差
( b ) 標 高 デ ー タ ( DEM ) や 地 表 基 準 点 の 誤 差
( c) 大 気 中 の 水 蒸 気 に よ る マ イ ク ロ 波 伝 播 屈 折 に 伴 う 遅 延
( a)に 関 し て は ,2 つ の 時 期 の 人 工 衛 星 の 軌 道 間 の 位 置 関 係( 基
線 )と 地 表 の 対 象 物 の 位 置 か ら ,軌 道 の ず れ に 起 因 し て 発 生 す る 干
渉 縞 を 再 現 で き る の で ,こ れ を 利 用 し て 補 正 す る .(b) に 関 し て は ,
高 精 度 の 標 高 デ ー タ が 存 在 す れ ば ,干 渉 SAR に よ る 地 表 変 動 検 出 に
十 分 な 分 析 能 と 精 度 が 得 ら れ る . (c) に 関 し て は ,観 測 域 上 空 の 水
蒸 気 の 空 間 分 布 を 推 定 し な け れ ば な ら な い た め ,詳 細 な 三 次 元 気 象
v
デ ー タ が 必 要 で あ る .し か し ,JERS -1 衛 星 な ど の 干 渉 SAR 観 測 時 期
に 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 場 合 ,水 蒸 気 の 空 間 分 布 と そ の 変
化による大気遅延を定量的に評価することが大きな課題となる.
本 研 究 で は ,特 に( c )の 問 題 を 明 ら か に す る た め に ,詳 細 な 三
次 元 気 象 デ ー タ が な い 時 期 の 干 渉 SAR 観 測 デ ー タ に 対 し て ,水 蒸 気
分 布 の 影 響 を 評 価 す る 類 似 天 気 図 法 を 検 討 す る .次 に ,気 象 庁 メ ソ
数 値 予 報 モ デ ル GPV- MSM デ ー タ を 用 い て ,干 渉 SAR に 及 ぼ す 水 蒸 気
の 影 響 に 関 す る 評 価 に つ い て ,そ の 有 効 性 を 検 証 す る .さ ら に ,濃
尾 平 野 に お け る 過 去 の 水 準 測 量 成 果 を GIS に 適 用 し て ,こ の 地 域 の
地 盤 環 境 変 動 を 空 間 的 に 解 析 す る と と も に ,干 渉 SAR に よ る 地 表 面
変動解析の適用可能性を検討する.
本 研 究 で は , 濃 尾 平 野 に お け る JERS -1 衛 星 干 渉 画 像 を 例 と し て
地 盤 環 境 変 動 評 価 へ の 干 渉 SAR の 適 用 に 検 討 し た .研 究 対 象 地 域 の
JERS -1 SAR の 1 シ ー ン で 大 気 遅 延 量 水 平 分 布 の 最 大 差 は 約 38mm と
な る こ と が 示 さ れ た .差 分 干 渉 画 像 の 西 北 部 で の 位 相 変 化 は ,標 高
変 化 に よ る 大 気 遅 延 ,東 南 部 は 水 蒸 気 の 水 平 変 化 に 伴 う 大 気 遅 延 に
よ っ て 生 じ て い る こ と が 考 え ら れ た . GP V- MSM デ ー タ を 適 用 し て 求
め た 大 気 遅 延 量 と 差 分 干 渉 SAR 位 相 の 空 間 分 布 の バ タ ー ン と 類 似 し
て い る .補 正 し た 差 分 干 渉 画 像 で の 西 北 部 と 東 南 部 の 位 相 が 大 幅 に
減尐することも見出された.
ま た ,濃 尾 平 野 に お け る 過 去 約 40 年 の 水 準 測 量 成 果 を 用 い た GI S
解 析 に よ り ,地 盤 沈 下 の 空 間 変 動 と そ の 経 年 変 化 を 評 価 し ,地 盤 変
動 の 原 因 を 追 及 し た .本 領 域 に お い て は 今 な お 持 続 的 な 沈 降 域 ・ 隆
起 域 が 存 在 し ,沈 降 の 激 し い 地 域 が 河 口 付 近 か ら そ の 周 辺 へ 移 行 し
ていることが明らかになった.沈降域は農地水系に, 隆起域は住
宅域工業用地に分布する傾向が見られた.
vi
本 研 究 で は ,高 精 度 GPV -MSM の 水 蒸 気 分 布 を 用 い れ ば ,マ イ ク ロ
波 の 大 気 遅 延 の 影 響 を 評 価 で き る 可 能 性 を 示 し た .類 似 天 気 図 法 は ,
詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ の 存 在 し な い 時 期 の JERS -1 衛 星 干 渉 SAR
の 大 気 遅 延 の 評 価 に 有 効 利 用 で き る こ と を 示 し た .ま た ,水 準 測 量
成 果 の GIS 解 析 結 果 と の 比 較 検 討 に よ り , 人 工 衛 星 に よ る 干 渉 SAR
解 析 は ,水 準 測 量 等 が 不 可 能 な 地 域 で の 地 盤 環 境 変 動 量 を 推 定 で き
る 可 能 性 を 示 し た .GPV -MSM デ ー タ が 提 供 さ れ る よ う に な っ た 2003
年 以 後 の ALOS 衛 星 な ど の 干 渉 SAR に 対 し て も , 本 研 究 の 成 果 を 生
か す こ と が で き る .つ ま り ,干 渉 SAR に よ る 地 殻 変 動 検 出 の 精 度 を
高 め る に は ,大 気 中 の 水 蒸 気 の 空 間 分 布 や そ の 変 化 に よ る SAR 伝 播
屈 折 の 遅 延 量 を 定 量 的 に 評 価 す る 必 要 が あ る が ,本 研 究 は こ れ に 対
し て 最 新 衛 星 の 干 渉 SAR デ ー タ 解 析 の 精 度 向 上 に 大 き な 貢 献 を な し
得るものと考えられる.
vii
1. は じ め に
1.1
研究背景
濃尾平野における地盤環境変動でもっとも注目を集めるのは地
盤 沈 下 で あ る .日 本 で も 最 大 級 の 地 盤 沈 下 地 帯 で あ り ,特 に 1959 年
秋 の 伊 勢 湾 台 風 に よ っ て 注 目 を 集 め た ( 飯 田 , 1986 ) . そ の 後 地 域
を 漸 次 拡 大 し , 1973 ~ 74 年 に ピ ー ク を 迎 え た が , 地 下 水 揚 水 の 規
制強化等により現在では沈静化傾向にある .そのため,その研究
は 余 り 活 発 で は な い .し か し ,現 在 も 地 盤 沈 下 が 起 こ っ て い る 地 域
も 存 在 し ,隆 起 に せ よ 沈 降 に せ よ 生 活 の 基 盤 で あ る「 大 地 」の 変 動
は 地 域 住 民 に と っ て は 不 安 な 事 で あ り ,構 造 物 な ど に 被 害 を 与 え る
ことも懸念される.地盤がどのような動きを示しているのか監視・
解 析 行 う こ と で 自 然 か ら 人 間 が 受 け る 被 害 も ,人 間 が 自 然 に 与 え る
影 響 も 減 ら し て い く 必 要 が あ る .こ の 地 域 は も と も と 標 高 が 低 い た
め ,わ ず か の 沈 降 に よ っ て も 洪 水 や 内 水 氾 濫 ,高 潮 な ど の 水 害 に た
び た び 脅 か さ れ て き た .今 後 も 地 盤 沈 下 状 況 の 監 視 な ど を も と に し
た 適 切 な 対 応 が 求 め ら れ て い る ( 福 山 , 2004 ) .
環境省によると日本における地盤沈下は大正初期の東京都江東
地区から問題となり始め,大阪西部では昭和初期に注目された.
1950 年 代 の 高 度 経 済 成 長 な ど と 共 に 地 下 水 使 用 量 の 急 増 が あ り ,沈
下 地 域 が 拡 大 し た .1955 年 以 降 に は ,地 盤 沈 下 が 大 都 市 域 ば か り で
は な く ,新 潟 平 野 ,濃 尾 平 野 ,筑 後・佐 賀 平 野 を は じ め と し た 全 国
各 地 に お い て 認 め ら れ る よ う に な っ た .そ の た め ,さ ま ざ ま な 角 度
から地盤沈下について調査・研究が行われた.
最 近 の 地 盤 環 境 ,特 に 地 盤 沈 下 関 係 の 研 究 は 主 に GIS を 用 い た 地
盤 沈 下 の 環 境 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て の シ ミ ュ レ ー ト 解 析 が 多 い( 村
上 ほ か , 199 9; 周 ほ か , 2001 ) . 非 常 に 興 味 深 く 有 意 義 な も の で あ
1
る が ,水 準 測 量 デ ー タ の 精 度 の 問 題 や 測 量 路 線 か ら は ず れ た 地 域 で
変 動 の 評 価 で き な い な ど の 多 く の 課 題 も 残 さ れ て い る( 福 山 ,2005 ).
一 方 , SAR ( 合 成 開 口 レ ー ダ ) は , マ イ ク ロ 波 を 利 用 し , 対 象 物
に 直 接 接 触 す る こ と な く ,計 測 を 実 施 す る リ モ ー ト セ ン シ ン グ 技 術
の 一 種 で あ る .マ イ ク ロ 波 は 雲 な ど を 通 過 す る の で 航 空 写 真 と 違 っ
て 天 候 に 左 右 さ れ る こ と な く 観 測 が で き る .ま た 光 学 セ ン サ と 違 い ,
マイクロ波を自ら送信するという能動的センサであるため目的に
最 適 な パ ラ メ ー タ ー( 波 長 )を 選 択 す る こ と が で き る .昼 夜 も 関 係
なく運用することが可能である.
こ の SAR 観 測 を 同 じ 場 所 に 対 し て 2回 以 上 行 っ て , そ の 差 を と る
( 干 渉 )と 面 的 に 地 殻 表 面 の 高 さ 変 動 の 分 布 及 び 変 動 量 を 詳 細 に と
ら え る こ と が で き る .近 年 多 く 成 果 が 得 ら れ た( 例 え ば ,Zebker and
Goldstein,1986;Massonnet et al.,1 993;Fujiwara et al., 1998;
Shimada and Hirosawa,2000 ) . 衛 星 に よ る 観 測 は , 地 盤 環 境 の 新
た な 調 査・研 究 手 法 と し て き わ め て 有 効 で あ る こ と が 注 目 さ れ て い
る .従 来 の 水 準 測 量 等 に よ る 地 盤 沈 下 監 視 の 補 完 的 な 手 法 と し て 期
待が寄せられている.
干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 検 出 精 度 が 低 下 す る の は 以 下 の 3 つ 原 因
がある.
( a )人 工 衛 星 の 軌 道 位 置 の 推 定 誤 差 ,(b) 標 高 デ ー タ( DEM )
や 地 表 基 準 点 の 誤 差 , (c) 大 気 中 の 水 蒸 気 分 布 に よ る 遅 延 .( a ) に
関 し て は , 2つ の 時 期 の 人 工 衛 星 の 軌 道 間 の 位 置 関 係 ( 基 線 ) と 地
表 の 対 象 物 の 位 置 か ら ,軌 道 の ず れ に 起 因 し て 発 生 す る 干 渉 縞 を 再
現 で き る の で ,こ れ を 利 用 し て 補 正 す る .(b) に 関 し て ,日 本 で は ,
国 土 地 理 院 の 50メ ー ト ル マ ッ シ ュ の 標 高 デ ー タ が 全 国 を カ バ ー し
て お り , 現 在 の 干 渉 SAR に よ る 地 表 変 動 検 出 に 十 分 な 分 析 能 と 精 度
を 持 っ て い る . (c) に 関 し て は ,水 蒸 気 の 空 間 分 布 を 推 定 す る た め ,
2
詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が 必 要 で あ る . し か し , 干 渉 SAR の 観 測 期
間 に 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 場 合 ,水 蒸 気 の 空 間 分 布 と そ の
変化による大気遅延を定量的に評価することが大きな課題になっ
ている.
日本では湿度が高く,とくに梅雤時期に水蒸気の変化も激しい.
そ の た め ,JERS -1 衛 星 に 搭 載 さ れ た SAR の 多 く の デ ー タ は ,雤 や 雲
が あ る 気 象 条 件 下 で 取 得 さ れ る .こ の よ う な 場 合 ,得 ら れ る 干 渉 SAR
画像に水蒸気による大気遅延位相と地殻変動による位相は本質的
に 分 離 不 可 能 で あ り ,大 気 遅 延 は 直 接 的 な 誤 差 を 生 じ さ せ る( 藤 原
ほ か , 1999; 島 田 , 1999 ) . し た が っ て , 雤 や 雲 が あ る 気 象 条 件 下
で 取 得 し た デ ー タ を 有 効 利 用 し ,地 殻 変 動 検 出 の 精 度 を 高 め る に は ,
マイクロ波に対する水蒸気の影響についての研究が不可欠である.
3
1. 2
研究目的
本 研 究 で は , 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 時 期 の 干 渉 SAR に 対
し て , 気 象 庁 が 提 供 し て い る 高 精 度 の メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV -MSM
デ ー タ を 用 い て ,水 蒸 気 分 布 の 影 響 を 評 価 す る 類 似 天 気 図 法 を 検 討
する.
濃 尾 平 野 で の JERS- 1 干 渉 画 像 を 例 と し て , 衛 星 SAR デ ー タ 領 域 に
あ る 詳 細 な メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV -MSM デ ー タ を 用 い て , 衛 星 観 測
日 の 水 蒸 気 分 布 を 復 元 し ,大 気 の 鉛 直 構 造 に つ い て 気 象 学 的 な 検 討
を 加 え , 水 蒸 気 分 布 の 違 い に よ る 大 気 遅 延 量 を 求 め , G PV -MSM デ ー
タ を 用 い て 干 渉 SAR に 及 ぼ す 水 蒸 気 の 影 響 に 関 す る 評 価 に つ い て そ
の有効性を検証する.
さ ら に ,東 海 三 県 地 盤 調 査 会( 2000 )に よ る 1960 ~ 1999 年 の 水 準
測 量 成 果 を 用 い て , GIS 解 析 に よ り 濃 尾 平 野 に お け る 地 盤 沈 下 の 空
間変動とその経年変化を評価し,地盤変動の原因を追及する.
従 来 の 水 準 測 量 に よ る 地 盤 沈 下 推 定 量 と ,InSAR デ ー タ 解 析 か ら
求 め ら れ る 地 盤 沈 下 量 と 比 較 し , InSAR に よ る 地 表 面 変 動 解 析 の 適
用可能性を検討する.
4
2. 地 盤 環 境 変 動 の 研 究
2.1
地盤環境変動の研究の歴史
日 本 に お け る 地 盤 沈 下 は 東 京 都 江 東 地 区 で は 大 正 の 初 期 ,大 阪 市
西 部 で は 昭 和 の 初 期 か ら 注 目 さ れ た .1950 年 か ら 経 済 の 復 興 と と も
に 地 下 水 使 用 量 が 急 増 す る に つ れ て 再 び 沈 下 は 激 し く な り ,沈 下 地
域 も 拡 大 し て き た .1955 年 以 降 に は ,地 盤 沈 下 が 大 都 市 域 ば か り で
は な く ,新 潟 平 野 ,濃 尾 平 野 ,筑 後・佐 賀 平 野 を は じ め と し た 全 国
各 地 に お い て 認 め ら れ る よ う に な っ た .濃 尾 平 野 に お け る 地 盤 高 変
動 は 地 盤 沈 下 と し て ,1959 年 秋 の 伊 勢 湾 台 風 の 被 災 か ら 注 目 さ れ は
じ め た .そ の 後 ,さ ま ざ ま な 角 度 か ら 地 盤 沈 下 に つ い て 調 査 ・ 研 究
が 行 わ れ た ( 環 境 省 , 2005 ) .
濃尾平野の地盤の成り立ちや構造の観点から濃尾平野周辺の地
盤 構 造 の 把 握 が 進 む と 共 に ,地 盤 沈 下 の メ カ ニ ズ ム を 解 明 し た( 桑
原 , 1968 ; 松 澤 , 1978 ; 成 瀬 , 1978 な ど ) .
地下水の挙動に着眼して濃尾平野における急激な地盤沈下の最
も 大 き な 要 因 は 自 然 圧 密 や 地 殻 変 動 で は な く ,人 為 的 要 因 で あ る 地
下 水 の 過 剰 汲 み 上 げ に よ る も の で あ る こ と を 指 摘 し た .ま た ,不 可
逆であると思われていた地盤沈下現象も一般にリバウンドと呼ば
れ る 地 盤 高 の 回 復 が 尐 な か ら ず 見 ら れ る こ と な ど も わ か っ た( 植 下
ほ か ,1978;杉 浦 ,1982;森 ,19 80;成 瀬 ,1978;飯 田 ,1986 な ど ).
各種規制などの地盤沈下防止対策と経済の急激な成長が落ち着
い た こ と な ど に よ っ て 1980 年 以 降 は 地 盤 沈 下 が 沈 静 化 の 傾 向 に あ
る .し か し ,渇 水 な ど に よ る 揚 水 量 の 増 大 に 伴 う 大 き な 沈 下 な ど も
観 測 さ れ て , そ の 危 険 性 も 指 摘 さ れ て い た ( 大 東 ほ か , 1996 ) .
5
2.2
最近の地盤環境変動の研究及び課題
最 近 の 地 盤 環 境 , 特 に 地 盤 沈 下 関 係 の 研 究 は , 主 に GIS を 用 い て
地 盤 沈 下 に よ る 特 定 地 域 の 被 害 ポ テ ン シ ャ ル の 評 価 ,地 震 危 険 度 評
価 , 水 循 環 と の 解 析 シ ス テ ム の 構 築 な ど に GIS を 用 い た シ ミ ュ レ ー
ト 解 析 し ,評 価 や 視 覚 化 が 行 わ れ て い る .多 く の 地 盤 沈 下 の 環 境 に
及 ぼ す 影 響 に つ い て の シ ミ ュ レ ー ト 解 析 の 成 果 が 得 ら れ た( 例 え ば ,
村 上 ほ か , 199 9; 周 ほ か , 2001 ) . そ の 中 で 過 去 の 沈 下 観 測 成 果 や
地 下 水 位 な ど を 利 用 し て 沈 下 を モ デ ル 化 し て い る .非 常 に 興 味 深 く
有 意 義 な も の で あ る と 考 え て い る が ,過 去 の デ ー タ の 吟 味 な ど は 果
た し て 十 分 な の か と い う 疑 問 が あ る .ま た ,測 量 の 労 力 や 水 準 点 の
維 持 管 理 に か か る 経 費 や ,水 準 測 量 路 線 の 網 目 か ら 漏 れ た 地 域 で 監
視 が で き な い な ど の 多 く の 課 題 も 残 さ れ て い る ( 福 山 , 2005 ) .
近 年 ,リ モ ー ト セ ン シ ン グ 技 術 の 発 展 に よ り ,広 域 的 な 地 盤 変 動
や地上の水準点がない地域の地盤変動を高精度に把握することが
可 能 と な っ て い る .リ モ ー ト セ ン シ ン グ 技 術 を 用 い た 調 査 ・ 解 析 は
従来の監視とのお互いに補い合うことで非常に有意義なものであ
る と 思 わ れ る . 干 渉 SAR ( 干 渉 合 成 開 口 レ ー ダ ) は , マ イ ク ロ 波 を
利 用 し ,対 象 物 に 直 接 接 触 す る こ と な く ,計 測 を 実 施 す る リ モ ー ト
セ ン シ ン グ 技 術 の 一 種 で あ る .近 年 ,こ の 技 術 を 用 い て ,多 く の 地
盤変動検出の成果が得られた.
干 渉 SAR に よ る 地 殻 変 動 観 測 の 主 要 な 誤 差 要 因 の 一 つ に 電 波 の 大
気 遅 延 が あ る .日 本 で は 湿 度 が 高 く ,と く に 梅 雤 時 期 に 水 蒸 気 の 変
化 も 激 し い . そ の た め , JERS -1衛 星 に 搭 載 さ れ た SAR の 多 く の デ ー
タ は ,雤 や 雲 が あ る 気 象 条 件 下 で 取 得 さ れ る .こ の よ う な 場 合 ,得
ら れ る 干 渉 SAR 画 像 に 水 蒸 気 に よ る 大 気 遅 延 位 相 と 地 殻 変 動 に よ る
位 相 は 本 質 的 に 分 離 不 可 能 で あ り ,大 気 遅 延 は 直 接 的 な 誤 差 を 生 じ
6
さ せ る ( 藤 原 ほ か , 1999; 島 田 , 1999 ) . し た が っ て , 雤 や 雲 が あ
る 気 象 条 件 下 で 取 得 し た デ ー タ を 有 効 利 用 し ,地 殻 変 動 検 出 の 精 度
を 高 め る に は ,マ イ ク ロ 波 に 対 す る 水 蒸 気 の 影 響 に つ い て の 研 究 が
不可欠である.
藤 原 ほ か ( 1998 ) は , 大 気 遅 延 影 響 の 低 減 の た め に , 複 数 の 異 な
っ た 時 期 の 観 測 デ ー タ の 平 均 化 を 行 っ て い る .こ れ は 観 測 値 が 多 い
場 合 に は 有 効 で あ る が ,観 測 頻 度 が 低 く 地 殻 変 動 が 断 続 的 に 続 く 場
合 は 処 理 し に く い . Delacourt et al . (1998) は , 地 表 面 の 気 象 デ
ー タ を 用 い て 高 度 に 対 す る 大 気 遅 延 の 簡 易 モ デ ル を 作 成 し ,エ ト ナ
山地域の大気遅延の補正を試みた.大気中の水蒸気の変化は時間
的 ・ 空 間 的 に 均 一 で は な く ,多 く の 気 象 観 測 デ ー タ が な け れ ば ,水
蒸 気 に よ る 大 気 遅 延 を 補 正 す る の は 困 難 で あ る( Williams et al .,
1998 ) . 藤 原 ほ か ( 1999 ) は , 水 蒸 気 に よ る 大 気 遅 延 が 高 度 と 線 形
な 相 関 を 持 つ と 仮 定 し て ,簡 単 な 大 気 遅 延 補 正 の 1 次 モ デ ル を 提 唱
し た .実 際 の 大 気 で は ,水 蒸 気 の 高 度 変 化 に は 1 次 で は 表 現 で き な
い 複 雑 な 構 造 が 存 在 す る . 島 田 ( 1999 ) は , 全 球 客 観 解 析 デ ー タ
(GANAL) を 利 用 し て ,大 気 遅 延 位 相 差 モ デ ル を 提 案 し た .1 シ ー ン で
同 じ GANAL デ ー タ を 利 用 し て 富 士 山 領 域 の 高 度 変 化 に よ る 大 気 遅 延
の 補 正 に 対 し て 有 効 性 が 確 認 さ れ た が ,こ の 方 法 で は ,水 蒸 気 の 水
平 変 化 に よ る 大 気 遅 延 は 補 正 で き な い . 大 塚 ・ 小 林 ( 2 002 ) は , 一
つのラジオゾンデ観測点での高層気象観測データを用いて大気運
動 の 理 論 計 算 に 基 づ き ,岩 手 山 地 域 の 風 に よ る 水 蒸 気 大 気 遅 延 を 検
討 し た .使 用 し た ラ ジ オ ゾ ン デ 観 測 地 点 と 研 究 地 域 は 約 140km 離 れ
て い る .ま た ,こ の ラ ジ オ ゾ ン デ デ ー タ と SAR デ ー タ の 取 得 時 刻 に
約 一 時 間 半 の 差 が あ る た め ,シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は ,小 さ い ス ケ ー
ル の 遅 延 パ タ ー ン や 山 岳 波 の 波 長 は SAR の 遅 延 と 不 一 致 が 存 在 す る .
7
大気中の水蒸気の変化は非常に複雑で,高度変化だけではなく,
水平方向にも変化している.詳細な三次元気象データがなければ,
局所的な水蒸気の影響を補正することは非常に困難である.干渉
SAR に 及 ぼ す 大 気 遅 延 に 関 す る 従 来 の 研 究 は , 主 に 水 蒸 気 の 高 度 変
化 の 影 響 に つ い て の み 検 討 し て い る .観 測 期 間 に 詳 細 な 三 次 元 気 象
デ ー タ が な い JERS -1 な ど の 干 渉 SAR に 対 し て , 観 測 日 の 水 蒸 気 の 空
間分布や水蒸気の水平変化による大気遅延を定量的に評価するこ
とが大きな課題になっている.
8
3. 合 成 開 口 レ ー ダ と 干 渉 SAR
合 成 開 口 レ ー ダ と 干 渉 SAR に つ い て 日 本 リ モ ー ト セ ン シ ン グ 研 究
会 ( 1992 ) , 小 林 ( 1994a ) , 日 本 写 真 測 量 学 会 ( 1998 ) , 王 ほ か
( 2002 ) , 滝 口 ・ 中 根 ( 2005 ) , 宇 宙 開 発 事 業 団 地 球 観 測 セ ン タ ー
( 1994 ),福 山 (2009) ,Ferretti et al .( 2007 ),国 土 地 理 院( 2004 )
などをともに概説する.
3.1
3.1.1
リモートセンシングと合成開口レーダ
リモートセンシング
図 3.1 リ モ ー ト セ ン シ ン グ に よ る デ ー タ 収 集 の 概 念
( 日 本 リ モ ー ト セ ン シ ン グ 研 究 会 , 1992)
リ モ ー ト セ ン シ ン グ と は ,地 球 表 面 や 大 気 で 放 射 ,散 乱 ,反 射 し
た 種 々 の 電 磁 波 を 航 空 機 や 人 工 衛 星 か ら 計 測 し ,そ れ を 地 球 資 源 や
地 球 環 境 の 観 測 ,評 価 ,管 理 な ど に 役 立 て る 技 術 の 総 称 で あ る . こ
の 手 法 に よ れ ば ,従 来 得 ら れ な か っ た よ う な 広 域 の マ ル チ ス ベ ク ト
ル 情 報 が 瞬 時 に ,し か も 繰 り 返 し 得 ら れ る た め に ,資 源 探 査 ,地 球
環 境 監 視 な ど の 多 く の 分 野 で 大 変 注 目 さ れ て い る .す な わ ち ,広 域
9
性 ,同 時 性 ,同 期 性 ,マ ル チ ス ペ ク ト ル 性 と い う 特 徴 の た め に ,例
え ば 大 気 汚 染 ,水 質 汚 染 や 植 生 状 況 な ど の 自 然 環 境 の 監 視 ,土 地 利
用 作 図 資 料 な ど 国 土 情 報 の 収 集 ,都 市 開 発 ,市 街 地 の 熱 分 布 な ど の
都 市 環 境 ,海 洋 ,海 流 の 研 究 ,流 氷 観 測 ,農 業 情 報 ,森 林 資 源 の 探
査,船舶航行補助,気象現象の解析など,様々な分野で利用でき,
リ モ ー ト セ ン シ ン グ の 重 要 性 は ,ま す ま す 大 き く な っ て い る .リ モ
ー ト セ ン シ ン グ に よ る デ ー タ 収 集 の 概 念 を 図 3.1 ( 日 本 リ モ ー ト セ
ン シ ン グ 研 究 会 , 1992) に 示 す . リ モ ー ト セ ン シ ン グ で は , さ ま ざ
まな電磁波に感度をもつセンサによる電磁波計測を観測手段とし
て い る .セ ン サ は 人 間 で い え ば 目 で あ る が ,人 間 の 視 覚 は ,電 磁 波
の中でもごく一部の可視光領域の波長しか感じることができない.
ま た ,人 間 が 視 覚 的 に 得 て い る 情 報 は ,主 と し て 観 測 対 象 の 空 間 的
な 形 状 と 分 布 に 関 す る も の で あ る .こ れ に 対 し て リ モ ー ト セ ン シ ン
グでは可視光領域に限らずいろいろな波長域の電磁波を利用して
お り ,人 間 の 目 で は 認 識 で き な い 地 表 や 海 面 な ど の さ ま ざ ま な 現 象
が可能となっている.
3.1.2
センサ
リ モ ー ト セ ン シ ン グ に 用 い ら れ る セ ン サ に は ,太 陽 光 の 反 射 及 び
対 象 物 か ら 放 射 さ れ る 電 磁 波 を 受 信 す る 受 動 方 式 と ,対 象 物 に 向 け
て 電 磁 波 を 照 射 し ,対 象 物 で 反 射 さ れ た 電 磁 波 を 受 信 す る 能 動 方 式
と が あ る .ま た ,こ れ ら の 方 式 は 走 査 方 式 と 非 走 査 方 式 と に 分 け ら
れ る .合 成 開 口 レ ー ダ は 能 動 方 式 の 代 表 例 で ,進 行 方 向 に 対 し 直 交
方向に走査を行い地表面の二次元画像を得る.
セ ン サ の 種 類 は 使 用 す る 電 磁 波 の 波 長 に よ っ て も 分 類 さ れ る .合
成 開 口 レ ー ダ で は 波 長 1 ㎜ ~ 1m の マ イ ク ロ 波 を 使 用 し て い る .こ の
10
よ う な 波 長 領 域 の セ ン サ を マ イ ク ロ 波 セ ン サ と い う .図 3.2 電 磁 波
の 呼 称 と セ ン サ ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 1998 ) に 示 す .
また,可視・赤外に至る光の領域のセンサを光学センサという.
通 常 の マ イ ク ロ 波 リ モ ー ト セ ン シ ン グ で は ,レ ー ダ か ら 送 信 さ れ た
マ イ ク ロ 波 に 対 す る 対 象 物 の 散 乱 の 強 さ ,す な わ ち 後 方 散 乱 係 数 を
観 測 す る .こ れ は 式 (3.1),式 (3. 2)に 示 す レ ー ダ 方 程 式 中 の 受 信 電
力 P r と セ ン サ の 特 性 よ り 求 め ら れ ,目 標 の 表 面 の 電 気 的 特 性 と 形 状
で決まる散乱断面積 iに関連する.
Pr 
PtGt 2 2
(4 ) 3 R 4
 i 
i
Pr(4 ) 3 R 4
PtGt 2 4
( 3. 1 )
( 3. 2)
散 乱 断 面 積 :  i , レ ー ダ の 受 信 電 力 : Pr, レ ー ダ の 送 信 電 力 : Pt
散 乱 体 の ア ン テ ナ か ら の 距 離 : R, ア ン テ ナ 利 得 : Gt, 波 長 : λ
図 3.2 電 磁 波 の 呼 称 と セ ン サ ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 199 8 )
11
3.1.3
合成開口レーダの概要
合 成 開 口 レ ー ダ ( SAR ) と は , (Synthetic Aperture Radar) の 略
で あ る . SAR は マ イ ク ロ 波 を 自 ら 送 受 信 す る 能 動 的 セ ン サ で あ り ,
天 候 に 左 右 さ れ ず に ,昼 夜 の 関 係 な く 観 測 が で き る 光 学 セ ン サ に は
ない特徴を持っている.
SAR の 空 間 分 解 能 は , 観 測 に 用 い て い る 電 磁 波 パ ル ス の 長 さ や パ
ル ス 帯 域 幅 ,ま た ア ン テ ナ の 大 き さ か ら 決 ま り ,セ ン サ の 高 度 や 用
い て い る 電 磁 波 の 波 長 に 無 関 係 で あ る .人 工 衛 星 の 高 さ か ら で も 高
い空間分解能のデータを得ることができる.
SAR は マ イ ク ロ 波 L バ ン ド や P バ ン ド な ど の 使 用 に よ り , 植 生 ・
乾 燥 な 砂 地 の 透 過 率 が 高 い で す か ら 植 生 ,砂 に 覆 わ れ た 地 表 面 の 情
報 を 得 る こ と が で き る . SAR で は 地 質 構 造 , 海 面 波 浪 , 海 氷 を 含 む
表 面 状 況 ,植 生 状 況 を 観 測 し た り ,ま た 全 天 候 の 特 徴 を 生 か し た り ,
厚い雲が覆う熱帯雤林地方や日照時間の尐ない高緯度地方での観
測・資源探査に大いに期待されている.
衛 星 ま た は 航 空 機 に 搭 載 さ れ た レ ー ダ シ ス テ ム で は ,ア ン テ ナ か
ら マ イ ク ロ 波 は 発 射 し て 地 表 面 を 照 射 し ,照 射 さ れ た 地 表 面 か ら の
マ イ ク ロ 波 の 後 方 散 乱 を そ の 同 じ に ア ン テ ナ で 受 信 す る .図 3.3 に
示 す よ う に ア ン テ ナ の 電 波 照 射 方 向( レ ン ジ 方 向 と い う )は ,通 常
プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 進 行 方 向( ア ジ マ ス 方 向 と い う )に 対 し て 横 向
き で か つ 斜 め 下 方 で あ る .こ の た め サ イ ド ル ッ キ ン グ レ ー ダ( Side
looking radar ) と 呼 ば れ る . こ れ は 能 動 型 セ ン サ で あ る の で 距 離
の情報つまり衛星から目標までの距離を測定する.
合成開口レーダでは,パルスに変調をかけて受信信号を処理し,
パ ル ス を 圧 縮 す る 方 式 が 用 い ら れ ,レ ン ジ 方 向 に 高 い 分 解 能 を 達 成
し て い る が ,ア ジ マ ス 方 向 に お い て は ,合 成 開 口 処 理 に よ り 分 解 能
12
を 改 善 し て い る 点 に 特 徴 が あ る .す な わ ち ,位 置 を 次 々 と 変 え な が
ら 受 信 し た 信 号 を 位 相 ま で 含 め て 記 録 し ,後 述 の 処 理 を 行 う こ と に
よ り ,実 際 の ア ン テ ナ よ り も 長 い ア ン テ ナ 長( 合 成 開 口 長 )を 用 い
て観測したのと同等の効果が得られるようになるのである.
図 3.3 サ イ ド ル ッ キ ン グ レ ー ダ の 幾 何 学 的 配 置
( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 19 98 )
13
3.2
地 球 資 源 衛 星 1 号 JERS -1
地 球 資 源 衛 星「 ふ よ う 1 号 」
( JERS- 1)(Japanese Earth Resources
Satellite-1 ふ よ う 1 号 )( 図 3.4 ) は , 全 陸 域 の デ ー タ を 取 得 し ,
資 源 探 査 を 主 目 的 に ,国 土 調 査 ,農 林 漁 業 ,環 境 保 全 ,防 災 ,沿 岸
監 視 等 の 観 測 を 行 う こ と を 目 的 と し た 地 球 観 測 衛 星 で あ る .衛 星 は
1992 年 2 月 11 日 に 宇 宙 開 発 事 業 団 に よ っ て 打 ち 上 げ ら れ , 以 来 日
本 国 内 外 の ユ ー ザ に 観 測 デ ー タ を 提 供 し た .ふ よ う 1 号 の ミ ッ シ ョ
ン 期 間 は 計 画 で は 2 年 間 で あ る が ,約 6 年 半 に わ た り 観 測 デ ー タ を
取 得 ,1998 年 10 月 12 日 に そ の 運 用 を 終 了 し た .2001 年 12 月 4 日
に 大 気 圏 に 再 突 入 し た ( 宇 宙 開 発 事 業 団 地 球 観 測 セ ン タ ー , 1994;
日 本 写 真 測 量 学 会 , 1998 ) .
図 3.4 J ERS - 1 写 真
( 地 球 観 測 研 究 セ ン タ ー , 200 4 )
14
衛 星 高 度 568km,回 帰 日 数 44 日 の 太 陽 同 期 準 回 帰 軌 道 に 投 入 さ れ
た . 高 性 能 の 合 成 開 口 レ ー ダ ( SAR) と 光 学 セ ン サ ( OPS) 及 び ミ ッ
ションデータレコーダを搭載し地球観測データの収集を行った.
1996 年 11 月 末 ま で の 約 5 年 間 の 運 用 で は 約 28 万 シ ー ン( 同 じ 場 所
の シ ー ン を 除 く と 約 45000 シ ー ン で , こ れ は 全 陸 域 の 98.4% の 面 積
になる)のデータを収集している.
光 学 セ ン サ OPS は ,可 視 域 か ら 短 波 長 赤 外 ま で を 7 つ の バ ン ド に
分 け , 可 視 域 で は 15.3 度 の 前 方 視 に よ る 立 体 観 測 が 可 能 で あ り ,
短波長赤外では岩石や鉱物の識別に威力を発揮する特長を持って
いる.
合 成 開 口 レ ー ダ( SAR) は 能 動 型 セ ン サ で あ り ,マ イ ク ロ 波 (L バ ン
ド :1275MHz ,波 長 23.5cm ,HH 偏 波 )を 照 射 し て 地 上 か ら の 散 乱 反 射
波 を 受 信 す る こ と に よ り ,天 候 に 左 右 さ れ ず に ,昼 夜 も 関 係 な く 地
表 面 の 特 性 や 起 伏 ,傾 斜 な ど が 観 測 で き る と い う 光 学 セ ン サ に な い
優 れ た 特 徴 を 持 つ . 中 間 レ ン ジ に お け る オ フ ナ デ ィ ア (off- nadir)
角 は 35 o (入 射 角 は 38.7 o ) で あ り , 観 測 幅 75km で あ る . ま た , SAR
は 合 成 開 口 と パ ル ス 圧 縮 技 術 に よ り ,通 常 の レ ー ダ に 比 べ て 格 段 に
高 い 分 解 能 を 得 る こ と が で き ,処 理 後 の 空 間 分 解 能 は ,レ ン ジ と ア
ジ マ ス 両 方 向 と も 3 ル ッ ク で 18 m で あ る .
JERS -1 SAR は 衛 星 進 行 方 向 に 直 行 し た 斜 め 下 方 向 に マ イ ク ロ 波 を
次 々 と 照 射 し ,地 表 面 か ら の 散 乱・ 反 射 波 を 受 信 す る .散 乱・反 射
が大きいところは明るく,小さいところは暗く現れる.そのため,
こ と に よ り 地 表 面 の 物 性 や 起 伏 ,凹 凸 ,傾 斜 な ど を 高 解 像 度 で 観 測
し,地表の実態を詳細に把握することができる.
JERS -1 ( ふ よ う 1 号 ) は L バ ン ド の 電 波 ( 波 長 23.5 セ ン チ メ ー
ト ル ) を 用 い る SAR を 搭 載 し て い る .L バ ン ド の 電 波 は 植 生・乾 い た
15
砂 地 の 透 過 率 が 高 い た め ,植 生 ・ 砂 に 覆 わ れ た 地 表 面 の 情 報 を 得 る
ことができる.
ま た , SAR 観 測 を 同 じ 場 所 に 対 し て 2 回 以 上 行 っ て そ の 差 を と る
と ,そ の 干 渉 効 果 に よ っ て 地 殻 表 面 の 高 さ 変 動 の 分 布 や 変 動 量 を 詳
細にとらえることができる.
本 研 究 で は , 濃 尾 平 野 に お け る JERS -1 衛 星 干 渉 画 像 を 例 と し て
地 盤 環 境 変 動 評 価 へ の 干 渉 SAR の 適 用 を 検 討 す る .
3.3
3.3.1
合成開口レーダの基礎
パルスの性質
ア ン テ ナ か ら 送 信 さ れ る マ イ ク ロ 波 は ,時 間 長 が 数 μ 秒 か ら 数 十
μ 秒 の パ ル ス で あ る .パ ル ス の 持 続 時 間 で あ る パ ル ス 幅 が τ で ,周
波 数( 搬 送 周 波 数 )及 び 振 幅 が そ れ ぞ れ f 及 び a の シ グ ナ ル S(t) が
次 式 で 表 さ れ る 最 も 単 純 な パ ル ス に つ い て 考 え て み る( 図 3.5(a) ).
S (t )  a cos(2f 0t )
( 3. 3)
 / 2  t   / 2
こ れ は 時 間 の 関 数 と し て 表 わ れ て い る が ,こ れ を フ ー リ エ 変 換 し
て周波数の関数(スべクトル)で表すと次のようになる

F ( )   S (t ) exp( j 2ft )dt

 a [sin c{f 0  f ) }  sin c{ ( f 0  f ) }] / 2
16
( 3. 4)
こ の 関 数 は 図 3.5(b) に 示 す よ う に , 周 波 数 f =± f 0 で 左 右 対 称 で
あ る .τ が 大 き く な る ほ ど メ イ ン ス ペ ク ト ル の 幅 が 狭 ま り シ ャ ー プ
になる.一般にパルスの帯域幅は次式で定義される.
B  1/
図 3.5
( 3. 5)
固 定 周 波 数 パ ル ス ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 1 998 )
17
3.3.2
レンジ分解能とパルス圧縮
3.3.2.1
レンジ分解能
ア ジ マ ス 方 向 に 鋭 く ,レ ン ジ 方 向 に 広 い 放 射 パ タ ー ン を も つ ア ン
テ ナ を 真 下 に 向 け る と ,ア ン テ ナ か ら 発 射 さ れ る パ ル ス は 直 下 を 対
称 に 等 し い レ ン ジ 2 か 所 の 地 表 に 同 時 に 到 着 し ,そ こ か ら の 散 乱 エ
コーの受信も同時になるので,この 2 か所を区別できなくなる.
そ こ で , SAR を 含 め た サ イ ド ル ッ キ ン グ レ ー ダ で は , ア ン テ ナ の
最 大 放 射 の 向 き を ,プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 進 行 方 向 に 対 し て 横 向 き 斜
め 下 方 に し ,片 側 だ け を み る こ と に よ り 等 レ ン ジ 2 か 所 の 曖 昧 さ を
排除している.
ア ン テ ナ か ら の ビ ー ム は 図 3. 3 の よ う に 進 行 方 向( ア ジ マ ス 方 向 )
に は 狭 く ,そ の 直 交 方 向( レ ン ジ 方 向 )に は 幅 広 い 地 表 面 領 域 を 照
射 す る . 地 表 距 離 分 解 能 (  r )は 次 式 で 表 わ さ れ て い る .
 r  c / 2 sin 
( 3. 6)
こ こ で , c:光 速 , θ : 入 射 角
こ の 式 は , ま た 式 (3.5) の 帯 域 幅 の 定 義 を 用 い て , 次 の よ う に も
表される.
 r  c / 2 B sin 
18
( 3. 7)
3. 3.2.2
パルス圧縮
式 ( 3.6 ) , 式 ( 3.7 ) で 示 さ れ る よ う に , レ ン ジ 分 解 能 を 上 げ る
に は ,パ ル ス 幅 を 小 さ く す る か ,あ る い は パ ル ス の 帯 域 幅 を 大 き く
す れ ば よ い .パ ル ス の エ ネ ル ギ ー は パ ル ス の ピ ー ク 電 力 と パ ル ス 幅
の 積 で 定 義 さ れ る .ピ ー ク 電 力 に は 限 界 が あ る の で ,レ ン ジ 分 解 能
を上げるためにパルス幅を狭くするとパルスのエネルギーが小さ
く な り , 逆 に 信 号 対 雑 音 比 ( S/N ) の 低 下 を 招 く こ と に な る . こ れ
を 克 服 す る 技 法 と し て パ ル ス 圧 縮 が あ る .パ ル ス 圧 縮 に は ,チ ャ ー
ピ ン グ と い わ れ る 線 形 周 波 数 変 調 が 持 ち ら れ る こ と が 多 い .チ ャ ー
ピングは,パルス内の周波数
0 ( 2f 0 )
を一定に保つのではなく,
時 間 の 1 次 関 数 と し て 次 の よ う に 変 化 さ せ る( 変 調 す る )こ と で あ
る ( 図 3.6a) .
図 3.6 チ ャ ― プ パ ル ス( 日 本 写 真 測 量 学 会 ,1 998 )
19
  0   t
( 3. 8)
た だ し ,ω は 角 周 波 数 で 周 波 数 と の 関 係 は ω = 2 π f , 0 は 搬 送 波
角周波数である.
こ の よ う に す る と ,パ ル ス 幅 は 大 き い ま ま で ,パ ル ス の 帯 域 幅 を
独 立 に 大 き く す る こ と が で き ( 図 3.6b ) , 式 ( 3.7 ) に よ り 分 解 能
を 向 上 で き る .時 間 と と も に 周 波 数 の 変 化 す る パ ル ス を 地 表 面 に 照
射 す る と ,対 象 物 体 に は 時 間 と と も に 異 な る 周 波 数 が 入 射 し ,そ の
散 乱 エ コ ー も 同 様 に 時 間 と と も に 周 波 数 が 変 化 す る .こ の 散 乱 エ コ
ー の 各 周 波 数 成 分 に 時 間 遅 れ を つ け て 足 し 合 わ せ る と ,あ る 1 点 に
強 い シ ャ ー プ な 信 号 を 生 成 で き る ( 図 3.7 ) .
図 3.7 圧 縮 パ ル ス
( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 19 98 )
このようにパルス内の異なる周波数成分を合成して高い分解能
を 得 る の が 圧 縮 で あ る .こ の 場 合 ,圧 縮 前 に 二 つ の 隣 り 合 う タ ー ゲ
ッ ト か ら の エ コ ー が 重 な り あ っ て も ,あ る 瞬 間 の 各 エ コ ー の 周 波 数
は異なっているので対象物体を分離することができる.
20
チ ャ ー プ パ ル ス の 角 周 波 数 変 化 率 は ,パ ル ス 幅 τ ,帯 域 幅 B を 用
いて,
  2B / 
( 3. 9)
となる.したがって,送信信号は次のように表される.
 / 2  t   / 2
St (t )  exp{ j (0t  at 2 )}
こ こ で , a   /2
( 3. 10 )
であり,簡単のために信号振幅を 1 とした.
受 信 信 号 は 送 信 信 号 に 対 し て , T D = 2 R/c だ け 時 間 遅 れ が あ る の で ,
S t (t )  exp{ j[0 (t  TD )  a(t  TD ) 2 ]}
( 3. 11 )
と 表 さ れ る .パ ル ス 圧 縮 は ,受 信 信 号 と 送 信 信 号 の 相 互 複 素 相 関 を
とることによって実現できる.つまり,

g (t )   S r (t  x) St* ( x)dx


 / 2
 / 2
exp{ j[0 (t  TD  x)
 a(t  TD  x) 2 ]} exp{ j[0 x  ax 2 ]}dx
 exp{ j[0 (t  TD )  a(t  TD ) 2
・
 / 2
 / 2
exp{ j 2a(t  TD ) x}dx
  exp{ j[0 (t  TD )  a (t  TD ) 2
・sin{a(t  TD ) } /{a(t  TD ) }
  exp{ j (0t  a (t  TD ) 2 )}
・exp( j0TD ) sin c{a(t  TD ) }
21
( 3. 12 )
最 初 の exp の 項 は ,高 周 波 の 振 動 成 分 な の で ,こ れ を フ ィ ル タ な
どで除けば,
g (t )  exp( j0TD ) sin c{a(t  TD ) }
( 3. 13 )
と な り , t=T D の 位 置 を 中 心 に 先 ほ ど か ら 再 三 で で き て い る sinc 関
数 の 波 形 ( 図 3.7 ) に 圧 縮 さ れ る こ と が 示 さ れ る .
3.3.3
アジマス分解能・合成開口・アジマス圧縮
3.3.3.1
アジマス分解能
進 行 方 向 に 平 行 な ア ジ マ ス 方 向 の 分 解 能 は ,実 開 口 レ ー ダ( RAR )
の場合,
 a   a Rs  h a / cos 
( 3. 14 )
で あ る .こ こ で は ,  a は ア ジ マ ス の ア ン テ ナ の ビ ー ム 幅 で ,R s は ス
ラントレンジ距離,h はアンテナの高さ,θは入射角である.
航 空 機 搭 載 レ ー ダ の 場 合 ,実 開 口 方 式 で も ア ジ マ ス 分 解 能 と レ ジ
ン 分 解 能 を 同 程 度 に す る こ と は 可 能 で あ る .し か し ,衛 星 搭 載 レ ー
ダ の 場 合 , 高 度 が 数 百 km に な る の で 実 開 口 方 式 で は ア ジ マ ス 分 解
能 が 数 km ~ 十 数 km に も な っ て し ま う .例 え ば ,λ = 25cm,h = 800km ,
d = 10m , θ = 20 o と す る と ,  a = 21km で あ る .
し た が っ て ,衛 星 の 場 合 ,実 開 口 レ ー ダ は 散 乱 計 や 高 度 計 と し て
は用いられているが,高分解能の映像レーダとしては不適である.
22
3.3.3.2
合成開口
飛 翔 体 (人 工 衛 星 や 飛 行 機 な ど )が 移 動 し な が ら 電 波 を 送 受 信 し
て ,大 き な 開 口 を 持 っ た ア ン テ ナ の 場 合 と 等 価 な 画 像 が 得 ら れ る よ
うに,人工的に「開口」を「合成」するのが「合成開口 レーダ」と
呼 ば れ る 技 術 で あ る ( 図 3.8) .
図 3.8
合成開口技術による分解能
( 国 土 地 理 院 , 2 00 4 )
レーダの進行方向をx軸にとり,レーダが対象物体の真横のとき
x =0 , そ の 時 の 対 象 物 体 と レ ー ダ 間 の 距 離 が R0 と い う 単 純 な 幾 何 で
こ の 相 対 運 動 を 考 え て み よ う ( 図 3.9 ) . こ の 対 象 物 体 と x に 位 置
するレーダ間の距離 R は次のように表される.
R  R0  x 2  R0  x 2 / 2 R0  x 4 / 8R03
23
( 3. 1 5 )
図 3.9 S AR ア ン テ ナ と 対 象 物 体 の 幾 何 学 的 関 係
( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 19 98 )
x か ら 横 向 き に は ビ ー ム 幅  a (  / d ) の マ イ ク ロ 波 を 送 信 す る と ,
レ ン ジ R0 で は R0 の 幅 に 照 射 域 が 広 が る . | x |  a R0 / 2 な ら ば , 対 象
物 体 は 照 射 さ れ ,散 乱 波 が レ ー ダ に 帰 る .レ ー ダ に 受 信 さ れ る 散 乱
波の位相は往復の伝播を考えれば
 ( x)  2  2R / 
 4R0 /   2x 2 / R0  x 4 / 2R03
( 3. 16 )
と な る . レ ー ダ は 一 直 線 上 を 一 定 の 速 度 v で 移 動 す る の で , x =0 に
時 間 の 原 点 に お け ば x = vt で あ る . レ ー ダ と 対 象 物 体 微 分 よ り ,
 ( x)  d ( x) / dt  4v 2t / R0
( 3. 17 )
 4vx / R0
24
負 号 は ,x <0( レ ー ダ が 対 象 物 に 近 づ く ) で は ド ッ プ ラ 周 波 数 が 正 ,
x >0( レ ー ダ が 対 象 物 か ら 遠 ざ か る ) で は ド ッ プ ラ 周 波 数 が 負 で あ る
ことに対応する.
以 上 か ら , 位 相 φ ( x )は 対 象 物 体 に 対 す る レ ー ダ 位 置 x の 2 次 関
数 ,ド ッ プ ラ 周 波 数 ω ( x )は ,x の 1 次 関 数 で あ る こ と が わ か っ た( 図
3.10).こ れ は レ ン ジ 圧 縮 の 場 合 の チ ャ ー プ パ ル ス と 全 く 同 じ 状 況
ので,アジマス方向についての同様の原理で分解能を向上できる.
これは,大きな仮想的なアンテナを合成することに等価なので,
こ の よ う な 方 法 を 合 成 開 口 あ る い は 開 口 合 成 と い う .こ の 仮 想 的 な
アンテナの開口長は実開口のビームの地表照射幅に等しくなる.
(a) ア ン テ ナ 位 置 と 位
(b) ア ン テ ナ 位 置 と ド
相との関係
ップラ周波数との関係
図 3.1 0 ア ン テ ナ 方 向 の 受 信 信 号 ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 1 99 8 )
25
3.3.3.3
アジマス圧縮
合 成 開 口 に よ る ア ジ マ ス 分 解 能 の 向 上 は ,パ ル ス 圧 縮 と 同 じ で あ
る た め , ア ジ マ ス 圧 縮 と も 呼 ば れ る . 式 (3.1 6) と x = vt よ り , ア ジ
マス方向の受信信号は次式で表せる.
er (t )  exp(( j ( x))  exp( j 4R /  )
 exp{ j (4R0 /   2v 2t 2 / R0  )}
( 3. 18 )
こ こ で は 簡 単 の た め に 信 号 振 幅 を 1 と し た .ア ジ マ ス 圧 縮 の 方 法 ,
レ ン ジ 方 向 の パ ル ス 圧 縮 と 全 く 同 じ で あ る .た だ し ,レ ン ジ 圧 縮 時
の 送 信 信 号 に 相 当 す る es (t ) ,1 個 の 散 乱 体 を 観 測 す る 場 合 に 予 想 さ
れ る 受 信 信 号 , つ ま り es (t )  er (t ) で あ る . 合 成 開 口 の 時 間 を T S A と す
ると,アジマス圧縮出力は,

E   er (t  y )er ( y )dy


TSA / 2
TSA / 2
{ j[4R0 /   2v 2 (t  y ) 2 /
R0  ]} exp{ j 4R0 /   2v 2 y 2 / R0  )}dy
 TSA exp( j 2v 2t 2 / R0  ) sin c(2v 2TSA / R0  )
( 3. 19 )
上 式 の exp の 項 は ,高 周 波 で 振 動 す る 項 で あ り ,フ ィ ル タ な ど で
こ の 項 を 除 け ば , 圧 縮 後 の 波 形 は パ ル ス 圧 縮 と 同 様 に sinc 関 数 で
表せる.圧縮後のパルス幅はパルス圧縮と同様にメインローブの 0
ク ロ ス 幅 の 1/2 で 定 義 さ れ ,
26
t a  R0  / 2v 2TSA
( 3. 20 )
であり,アジマス分解能は
 a  vta  R0 / 2 LSA
( 3. 2 1 )
となる.
こ こ で , LSA は 合 成 開 口 長 で LSA  vTSA で あ り LSA  R0  / d よ り ,
a  d / 2
( 3. 2 2 )
が得られる.
合 成 開 口 の 重 要 な 結 論 は ,ア ジ マ ス 分 解 能 が レ ン ジ に も 波 長 に も
無 関 係 で ,一 定 で あ る こ と で あ る .ま た ,理 論 的 に は ,ア ン テ ナ 長
が 短 い ほ ど 分 解 能 が 向 上 す る .こ れ は ,短 い ア ン テ ナ 程 ビ ー ム 幅 が
広がり,その結果合成開口長が長くできるからである.
3.3.4
再生処理
SAR の 受 信 信 号 デ ー タ は , レ ー ダ ホ ロ グ ラ ム で , 干 渉 模 様 を な し
ている.このデータから,画像を再生する処理を圧縮処理という.
地 表 に あ る 一 点 P か ら の 受 信 信 号 は ,パ ル ス 幅 に 相 当 す る だ け レ
ン ジ 方 向 に 広 が っ て 記 録 さ れ る .ま た ,プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 移 動 に
つれて,マイクロ波ビームが P を横切るあいだ,P は次々とやって
く る マ イ ク ロ 波 パ ル ス に 照 射 さ れ 続 け る た め ,反 射 信 号 は ア ジ マ ス
方 向 に も 広 が っ て 受 信 さ れ る .つ ま り ,受 信 信 号 は ,レ ン ジ 方 向 に
お い て は ,送 信 チ ャ ー プ 信 号 そ の も の が 伝 播 時 間 に 相 当 す る 位 相 変
化 を 受 け た も の と な り ,ア ジ マ ス 方 向 に お い て は ,送 信 チ ャ ー プ 信
号そのものが目標とプラットフォームの相対運動によるドップラ
効果を受けたものになる.
こ こ で 圧 縮 に 関 す る 周 波 数 偏 位 は ,レ ン ジ 方 向 と ア ジ マ ス 方 向 で
27
は 5 桁以上違うのでレンジ方向とアジマス方向の圧縮を別々に考え
る こ と が で き る . 圧 縮 の 順 序 は レ ベ ル 0(シ グ ナ ル デ ー タ )の SAR デ
ー タ ブ ロ ッ ク が レ ン ジ 方 向 の デ ー タ 列 で 構 成 さ れ て い る の で ,レ ン
ジ圧縮,アジマス圧縮の順となる.
アジマス圧縮の前にデータ並びをレンジ方向からアジマス方向
に 並 べ か え る 処 理 を コ ー ナ ー タ ー ン と 呼 ぶ .ド ッ プ ラ 信 号 の レ プ リ
カはレーダとターゲットの幾何学モデルから導く.
地表の1点のスラントレンジはプラットフォームの移動ととも
に 時 間 に 関 し て 2 次 関 数 的 に 変 化 す る .こ の 変 化 量 を レ ン ジ マ イ グ
レ ー シ ョ ン ( range migration ) と い う . 1 次 の 項 を レ ン ジ ウ ォ ー
ク ( range walk ) と よ び , 地 球 の 自 転 に 起 因 す る . 2 次 項 は レ ン ジ
カ バ チ ャ ー ( range curvature ) と 呼 ば れ る . レ ン ジ マ イ グ レ ー シ
ョンのためアジマス方向に関して,2 次曲線上に広がって記録され
た地表のある1点の信号を1ライン上に並べ直す処理がレンジマ
イ グ レ ー シ ョ ン 補 正 で あ る .レ ン ジ ウ ォ ー ク と レ ン ジ カ バ チ ャ ー を
そ れ ぞ れ 補 正 す る ,レ ン ジ ウ ォ ー ク 補 正 と レ ン ジ カ バ チ ャ ー 補 正 に
分 け て 行 わ れ る こ と も あ る .処 理 過 程 で の SAR デ ー タ を 図 3.11( 日
本 写 真 測 量 学 会 , 1998 ) に , SAR 処 理 の 流 れ を 図 3.12( 日 本 写 真 測
量 学 会 , 1998 ) に 示 す .
28
図 3.1 1
処 理 過 程 で の S AR デ ー タ
( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 19 98 )
図 3.1 2
SAR 処 理 の 流 れ
( 日 本 写 真 測 量 学 会 ,199 8)
29
3.4
3.4.1
干 渉 SAR
干 渉 SAR の 原 理
干 渉 SAR ( InSAR ) と は 干 渉 合 成 開 口 レ ー ダ ( Interferometric
Synthetic Aperture Radar ) の 略 で あ る . こ れ は , 同 じ 地 点 を 2 ヵ
所 か ら , ま た は 2 時 期 に 観 測 し ,デ ー タ 処 理 す る こ と に よ っ て ,地
殻表面の高さ変動の分布や変動量を詳細にとらえることができる.
こ の 方 法 に は 2 種 類 あ る .一 つ は ,同 じ 機 器 を 搭 載 し た 2基 の レ ー
ダ に よ る 同 時 観 測 で ,も う 一 つ は 同 じ 衛 星 で ほ ぼ 同 じ 探 査 反 復 軌 道
上 で 異 な る 時 期 に 観 測 す る こ と で あ る .例 え ば 後 者 の 方 法 に 対 し て
は ,ALOS の 回 帰 日 数 は 46日 な の で ,原 則 的 に は こ の 日 数 の 倍 数 の 時
間間隔の観測データが利用可能である.
軌 道 に 直 行 す る 平 面 上 で の 2 つ の 衛 星 (ま た は 2つ の 軌 道 ) 間 の 距
離 を ,干 渉 基 線 と 呼 ぶ (図 3.13) .こ れ を ス ラ ン ト レ ン ジ に 垂 直 に 投
影したものが垂直基線である.
図 3. 13 干 渉 S AR の 幾 何 概 念 図 ( Ferretti et al ., 2007)
30
時 間 的 に 変 化 し な い 地 表 の 分 解 能 エ リ ア 中 に ,散 乱 強 度 が き わ め
て強い地点が一つあると仮定する.
図 3.14 に 示 し た よ う に , 2
基 の SAR か ら わ ず か に 異 な る
視角でこうした点散乱体を観
測 す る .こ の 場 合 ,各 SAR 画 素
の 干 渉 位 相 は , 2 基 の SAR の
各々から該当のエリアまでの
マイクロ波の伝播経路差にの
み依存することになる.
点散乱体からもたらされる
図 3.1 4
In SAR 幾 何 学 図 (王 ほ か ,2 00 2 )
位相変化が仮にあったとして
も ,こ の 経 路 差 に よ っ て 相 殺 さ れ る た め ,干 渉 位 相 は そ の 影 響 を 受
けないことになる.
A 1 と A 2 は 同 じ 地 表 面 の 点 P を 不 同 時 間 に 観 測 し た SAR ア ン テ ナ ,
H は A 1 の 水 平 基 準 面 か ら の 高 度 ,R は SAR ア ン テ ナ と 地 点 P の 間 片
道 の 距 離 ,B は 2 つ の ア ン テ ナ A 1 と A 2 を 結 ぶ 基 線 長 ,  0 は 直 下 方
向と視線方向の間の角度,αは水平方向と基線の間の角度,zは P
点の標高である.
干 渉 SAR に は ,各 ピ ク セ ル の 信 号 は 複 素 数 で 表 さ れ る .複 素 数 で
あ る SAR 画 像 や 干 渉 図 を 見 や す く 表 現 す る た め に ,通 常 は 位 相 φ と
振幅μが用いられる.
こ れ ら 信 号・デ ー タ・振 幅・位 相 を 繋 げ る 関 係 は 2 つ の ア ン テ ナ
A 1 と A 2 で 受 信 し た 信 号 は s1 と s 2 文 字 で 表 す .
31
s1 (R)=u1 (R)exp(i (R))
( 3.23 )
s2 ( R  R)  u2 ( R  R) exp(i ( R  R))
( 3.24 )
受 信 信 号 の 位 相 は 2 つ の 部 分 に 構 成 さ れ る ,一 つ は ア ン テ ナ と タ
ー ゲ ッ ト の 往 復 経 路 か ら の 位 相 ,も う 一 つ は 観 測 地 表 の ラ ン ダ ム 散
乱からの位相である.
1  2
2  2
2

2
R  arg{u1}
( 3.25 )
( R  R)  arg{u2 }
( 3.26 )

式 ( 3.25 ) と 式 ( 3.26 ) の 中 で , arg{u1} と arg{u 2 } は 観 測 地 表 の ラ
ン ダ ム 散 乱 か ら の 位 相 で ,係 数 2 は 送 受 信 の 往 復 経 路 を 表 す .本 研
究では2つの地表のランダム散乱からの位相は観測された2つの
画像位相に貢献することが同じ,軌道からの誤差がないとする.
2 回 観 測 の 入 射 角 が 異 な る た め ,2 つ の 画 像 の 同 じ 地 上 目 標 は 重
ね合わせない.マッチングしてから2つの画像は重ね合わせる.
s1 ( R) s2* ( R  R) | s1s2* | exp i(1   2 ) | s1s2* | exp( i
4

R)
( 3.27 )
式( 3.27 )に 示 す よ う に ,A 1 画 像 の 信 号 s1 と A 2 画 像 の 信 号 s 2 の 共
役 複 素 数 を 掛 け る 演 算 に よ っ て ,干 渉 処 理 が 実 現 さ れ ,干 渉 縞 図 が
で き ,干 渉 縞 図 の 位 相 は ,信 号 の 経 路 差 を 波 長 で 割 っ た 量 で あ る( s 2*
は マ ッ チ ン グ し た A2 の 画 像 値 の 共 役 複 素 数 で あ る ) .
32
実 際 的 干 渉 処 理 に は 三 角 計 算 に よ る 干 渉 位 相 が -π ~ π の 値 を と
し , も と も と 幅 広 い 値 を も っ て い る 位 相 情 報 が -π ~ π の 範 囲 に 折
り 畳 ま れ て い る ( wrap ) . 干 渉 SAR で 取 ら れ る 位 相 は -π ~ π の 値
し か と ら ず , 式 ( 3.28 ) の よ う に , 解 い て 元 に 戻 す ( unwrap ) こ と
に よ っ て 変 動 量 の 絶 対 値 に 戻 さ な け れ ば な ら な い .N は 整 数 で あ る .
  
4

R  2N
N  0,1,2,
( 3.28 )
式( 3.28 )は ,レ ー ダ 信 号 を 送 信 し て か ら 受 信 す る ま で に 信 号 が
衛 星 と 地 上 タ ー ゲ ッ ト を 往 復 す る 経 路 長 差 Δ R (m) 中 に 波 長 λ (m) の
波 が 入 る 数 2R / ( 個 )に 2π( radian )を 乗 じ て ,位 相 と し て radian
単位で表したものである.ここで,右辺のΔR 及びλ符号は正であ
る か ら ,受 信 信 号 は 送 信 信 号 よ り 遅 れ る た め ,位 相 の 符 号 は 常 に 負
である.
図 3.14 に 示 す よ う に , 余 弦 定 理 を 基 づ い て , 下 の 式 ( 3.29 ) を
得られた.
( R  R) 2  R 2  B 2
sin( 0  a) 
2 RB
z  H  R cos 0
( 3.29 )
( 3.30 )
式 ( 3.29 ) の 中 で , (R) 2 <<R の た め , 省 略 さ れ , 式 (3.31) を 得
られた.
R  B sin( 0  a) 
B2
2R
( 3.31 )
B2
計 算 の 便 利 に は , B<<R で , 式 (3.31) の 中 で の 右 辺 二 次 項
は省
2R
33
略 さ れ , 下 の 式 ( 3.32 ) を 得 ら れ た .
R  B sin( 0  a)
(3.32 )
図 3.15 に 示 す よ う に 基 線 を 視 線 方 向
に 分 解 し , 式 ( 3.33 ) と 式 ( 3.34 ) の よ
う に 視 線 方 向 に 平 行 な 基 線 分 量 B// と 視
線 方 向 に 垂 直 な 基 線 分 量 B を 得 ら れ た .
B||  B sin( 0  a)
(3.33 )
B  B cos( 0  a)
図 3.1 5 基 線 の 幾 何 図
( 3.34 )
( 王 ほ か , 20 02 )
式( 3.34 )に 示 す よ う に ,基 線 B は 基 線 垂 直 分 量 B と 比 例 の 関 係
が あ る こ と を 明 ら か に な り ,基 線 垂 直 分 量 B が 大 き い ほ ど ,基 線 B
が大きくになる.
式 ( 3.28 ) , 式 ( 3.32 ) , 式 ( 3.33) の 間 の 関 係 に よ り , 下 の 式
( 3.35 ) と 式 ( 3.36 ) を 得 ら れ た . 従 っ て , 干 渉 位 相 の 変 化 量 
は ,R を 送 信 波 長 λ で 割 っ た 値 に 比 例 し , 式 (3.36)で 表 さ れ る .
R  B//
  
( 3.35 )
4R


4

B||
( 3.36 )
式 ( 3.37 ) に 示 す よ う に , こ こ で 得 ら れ た 干 渉 位 相  に は , 軌
道 が 異 な る こ と に よ っ て 生 じ る 軌 道 位 相 orbit , 標 高 の 影 響 に よ る
地 形 位 相 topo , 大 気 水 蒸 気 等 の 影 響 に よ る 大 気 遅 延 位 相 atm , 地 震
な ど の 影 響 に よ る 地 形 変 動 位 相 def が 含 ま れ て い る .
  orbit  topo  atm  def
34
( 3.37 )
3.4.1.1
軌道位相の推定
軌 道 位 相 と は ,地 球 表 面 と 衛 星 と
の距離の変化によって生じる位相
変化である.
地 形 の 高 さ 変 化 ,大 気 水 蒸 気 の 影
響,地盤変動がないと仮定すると,
こ の 干 渉 位 相 の 変 化 量 は ,軌 道 位 相
のみを含まれる.
図 3.16 に 示 す よ う に , P点 と P ’ 点
の位相は
図 3.1 6 軌 道 ず れ の 幾 何 概 念 図
  orbit  
4
,
 ,  orbio


B sin( 0  a)
4

(王 ほ か , 200 2)
B sin( 0   r  a)
となる.
P点 と P ’ 点 の 位 相 差 は
,
orbit  orbit
 orbit  
4


[ B sin( 0   r  a)  B sin( 0  a)]
4

B cos( 0  a)
R r  R sin  r  R / tan 0
orbit  
4B R
R tan  0
( 3. 38 )
となる.
軌 道 位 相 orbit は 式 (3.38)に よ っ て 表 さ れ る . 基 線 値 が 正 確 に 推
定されば軌道位相を除去できる.
35
3.4.1.2
地形位相の推定
地 形 位 相 と は ,地 表 が 平 坦 で は な
く 起 伏( 地 形 )を 持 っ て い る た め に
生じている位相変化である.
軌 道 ず れ ,大 気 水 蒸 気 の 影 響 ,地
盤 変 動 が な い と 仮 定 す る と ,こ の 干
渉 位 相 の 変 化 量 は ,地 形 位 相 の み を
含まれる.
図 3.17 に 示 す よ う に ,地 形 高 さ の
変 化 は △ z, P点 と P’ 点 の 位 相 は
  topo  
,
 ,  topo

4

4

B sin( 0  a)
図 3.1 7 地 形 高 さ の 変 化 幾 何 概 念 図
(王 ほ か , 200 2)
B sin( 0   z  a)
となる.
P点 と P ’ 点 の 位 相 差 は
,
topo  topo
 topo  
4


[ B sin( 0   z  a)  B sin( 0  a)
4

B cos( 0  a) z
R z  R sin  z  z / sin  0
topo  
4B z
R sin  0
( 3. 39 )
となる.
地 形 位 相 topo は 式 (3 .3 9 ) で 表 さ れ る . 式 (3 .3 9 ) に 示 す よ う に ,
基 線 値 が 既 知 で あ れ ば , ほ か の 干 渉 SAR デ ー タ や デ ジ タ ル 標 高 モ デ
ル ( DEM ) か ら 地 形 縞 を シ ミ ュ レ ー ト す る こ と が 可 能 で あ り , こ れ
を用いて干渉画像から地形縞を除去することができる.
36
3.4.2
干 渉 SAR に よ る 地 形 標 高 の 測 定
大 気 水 蒸 気 の 影 響 と 地 盤 変 動 が な い と 仮 定 す る と ,こ の 干 渉 位 相
の 変 化 量 は ,地 形 位 相 と 軌 道 位 相 の み を 含 ま れ て い る .次 式 の よ う
に表す.
  
4B z 4B R

 sin  0 R tan  0
( 3. 40 )
第 1 項 は ,標 高 の 影 響 に よ る 地 形 位 相 .第 2項 は 軌 道 が 異 な る こ と
によって生じる軌道位相に相等する.
垂 直 基 線 は ,衛 星 軌 道 の 厳 密 な デ ー タ か ら 知 る こ と が で き る .ま
た , 第 2項 も 研 鑽 が 可 能 で 干 渉 位 相 か ら 差 し 引 く こ と が で き る . こ
の操作をインターフェログラムフラットニング処理と呼んでいる.
図 3.18 は ,伊 勢 湾 岸 付 近 の SAR 画 像 に 対 す る イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ
ム フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 の 例 で あ る .フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 前 の イ ン タ
ー フ ェ ロ グ ラ ム で は , 陸 域 に 軌 道 縞 が 明 確 に 見 ら れ る の (コ ヒ ー レ
ン ト ) に 対 し て , 海 域 は そ れ が 見 ら れ な い (イ ン コ ヒ ー レ ン ト ).
ア ン ビ ギ ュ イ テ ィ 高 度 ha は , イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム 平 滑 後 の 干 渉
位 相 で 2π の 変 化 を も た ら す 高 度 と し て 定 義 さ れ る .
ha 
R sin  0
( 3. 41 )
2 B
例 え ば JERS -1の 場 合 , λ = 23 .5cm ,
ha 
38400
B
= 35 o , R = 5 70 km な の で ,
( 3. 42 )
垂 直 基 線 が 1000m の 場 合 , 2 π の 干 渉 位 相 変 化 は 約 38m の 高 度 差
に 対 応 す る .原 理 的 に は 基 線 が 長 い ほ ど 高 度 測 定 は 正 確 に な る .な
ぜ な ら ,長 基 線 で 位 相 雑 音 は 高 度 雑 音 が 小 さ く な る た め で あ る .し
37
か し ,垂 直 基 線 に は 上 限 が あ る .つ ま り ,長 基 線 に な る と 干 渉 信 号
に 相 関 性 が 落 ち , 干 渉 位 相 解 析 で 必 要 な 干 渉 縞 (フ リ ン ジ ) が で き
な く な る .結 論 と し て ,信 号 対 雑 音 電 力 比( 今 信 号 は 地 形 高 度 ) を
最 大 に す る 最 適 な 垂 直 基 線 が あ る こ と に な る .JERS -1の 場 合 ,こ の
最 適 基 線 は 約 1000m で あ る .
干 渉 位 相 は 2π の 周 期 性 を 持 つ の で , フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 を し た
イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム を 用 い る と 標 高 の 相 対 的 な 測 定 が で き る .ア
ン ビ ュ ギ ィ テ ィ 高 度 の 整 数 倍 (2 π の 位 相 サ イ ク ル の 整 数 倍 に 相 等 )
削 除 し た 後 ,フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 を し た イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム 上 の
2 地 点 間 の 位 相 変 化 量 か ら ,実 際 の 高 度 変 化 の 測 定 が で き る .こ の
位 相 干 渉 縞 に 2π の 正 確 な 整 数 倍 数 に 加 え る 過 程 を , 位 相 ア ン ラ ッ
ピングと呼ぶ.
アンラッピングの技法にはよく知られているものがいくつかあ
る .し か し ,位 相 ア ン ラ ッ ピ ン グ は 普 通 単 一 の 解 法 で は な く ,経 験
的手法に基づいてその情報をうまく利用するというべきかもしれ
ない.
干 渉 位 相 の ア ン ラ ッ ピ ン グ 処 理 が で き る と ,SAR 座 標 系 で の 標 高
地 図 が 得 ら れ る .こ れ が ,DEM( 数 値 標 高 モ デ ル ) を 入 手 す る 第 一 歩
で あ る .次 に , SAR 高 度 地 図 を ,一 般 に 用 い ら れ て い る 準 拠 楕 円 体
(例 え ば ベ ッ セ ル 楕 円 体 や WGS84) を 参 照 し て ,UTM 等 の 別 の 測 地 系
座標上での値に変換する必要がある.
38
.
図 3. 18
図 3. 18
a : イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム 画 像 (福 山 , 20 09)
b :フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 画 像 ( 福 山 , 20 09)
39
3.4.3
干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 の 測 定
地 表 に あ る 点 散 乱 体 の い く つ か が , 2回 の SAR 観 測 の 間 に 例 え ば
地 盤 沈 下 や 地 滑 り ,地 震 な ど に よ っ て ,そ の 相 対 的 な 位 置 が わ ず か
に 変 わ っ た と 仮 定 す る .こ う し た 場 合 ,基 線 に 寄 ら な い 次 の 位 相 項
が干渉位相に付け加わることになる.
def 
4

d
( 3. 43 )
こ こ で ,d は ス ラ ン ト レ ン ジ 方 向 に 投 影 し た 散 乱 体 の 相 対 的 な 変
位である.
つ ま り ,イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 後 の 干 渉 位 相
に は ,大 気 の 影 響 は 発 生 せ ず ,高 度 と こ う し た 地 盤 の 移 動 に 伴 う も
のが含まれている.
  
4 B z
4

d
 R sin  0 
( 3. 44 )
さ ら に ,数 値 標 高 デ ー タ (DEM) が 利 用 可 能 な ら ,干 渉 位 相 か ら 高
度 か ら 生 じ る 位 相 項 を 差 し 引 く こ と が で き る .こ の 結 果 得 ら れ る の
が ,い わ ゆ る 差 分 イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム で あ る .こ れ に よ り ,地 盤
の変形や移動した成分を測定することができる.
40
3.5
干 渉 SAR に お け る 誤 差 要 因
干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 検 出 精 度 が 低 下 す る の は 以 下 の 3 つ 原 因
がある.
( a )人 工 衛 星 の 軌 道 位 置 の 推 定 誤 差 ,(b) 標 高 デ ー タ( DEM )
や 地 表 基 準 点 の 誤 差 , (c) 大 気 中 の 水 蒸 気 分 布 に よ る 遅 延 .
(a ) に 関 し て は , 2 時 期 の 人 工 衛 星 軌 道 間 の 位 置 関 係 ( 基 線 値 )
と地表のターゲットの位置から厳密にパターンが再現できるので,
これを利用して補正する.
(b) に 関 し て , 地 形 縞 に つ い て も , 対 象 と な っ て い る 地 表 の デ ジ
タ ル 標 高 デ ー タ ( D EM ) が あ れ ば , 同 様 に 幾 何 的 な 数 値 計 算 に よ っ
て補正が可能である.
日 本 で は , 国 土 地 理 院 の 50 メ ー ト ル メ ッ シ ュ の 標 高 デ ー タ が 全
国 を カ バ ー し て お り ,現 在 の 干 渉 SAR に よ る 地 表 変 動 検 出 に 十 分 な
分 解 能 と 精 度 を 持 っ て い る . こ の 地 形 縞 除 去 手 法 は , 2 回 の SAR 観
測データを使用するので 2 パス法と呼ばれる.
(c) に 関 し て は , 観 測 域 上 空 の 水 蒸 気 の 空 間 分 布 を 推 定 し な け れ
ばならないため,詳細な三次元気象データが必要である.しかし,
JERS -1衛 星 な ど の 干 渉 SAR 観 測 時 期 に 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な
い 場 合 ,水 蒸 気 の 空 間 分 布 と そ の 変 化 に よ る 大 気 遅 延 を 定 量 的 に 評
価することが大きな課題となる.
本 研 究 で は , 特 に (c) の 問 題 を 明 ら か に す る た め に , 詳 細 な 三 次
元 気 象 デ ー タ が な い 時 期 の 干 渉 SAR 観 測 デ ー タ に 対 し て ,水 蒸 気 分
布の影響を評価する方法を検討する.
41
4.
水蒸気影響の解析方法
4.1
類似天気図法
大気の状態は,地球上の場所によって異なるのは当然であるが,
同 一 の 場 所 で も 毎 年 決 し て 一 定 で は な い .し か し ,そ の 変 動 は 毎 年
ある決った幅のなかにあり,1 年の周期で繰り返すのが普通である
( 表 4.1 , 表 4.2 ) .
気候とはある場所または地域において基本的にはこの 1 年の周期
で ,毎 年 順 を 追 っ て 繰 り 返 さ れ る ,最 も 確 率 の 高 い 大 気 の 総 合 状 態
で あ る ( 福 井 ・ 吉 野 , 1979 ) .
類 似 天 気 図 と は 天 気 予 報 の ひ と つ の 方 法 と し て ,今 日 の 天 気 図 と
よ く 似 た も の を 過 去 の 天 気 図 か ら 選 び 出 し て ,そ の 気 象 変 化 か ら そ
の後の予報を行うものである.
そ の 原 理 は 単 純 で ,ふ た つ の 同 じ 天 気 図 が 見 出 さ れ ば ,そ の 後 の
天気変化も同じであろうという考えである.
ま た ,類 似 天 気 図 を 求 め る こ と に よ り ,地 形 に よ る 変 化 や 気 候 変
動 ,さ ら に 場 合 に よ っ て は 外 因 に よ る 変 動 さ え 自 動 的 に 含 ま れ た 類
似 天 気 図 が 得 ら れ る と 考 え ら れ ,実 際 の 予 報 に は 極 め て 有 効 な 方 法
と な っ て き た ( 和 田 , 1969 ) .
42
表 4.1
6 月 19 日 と 5 月 6 日 の 30 年 間( 19 71 ~ 20 00 年 )
の日平均値(名古屋)
平均気温 最高気温 最低気温
℃
℃
℃
6月19日
22.5
26.7
19.2
5月6日
17.3
22.6
12.7
日付
表 4.2
降水量
mm
7.1
5.5
名古屋における観測値
平均気温 最高気温 最低気温
℃
℃
℃
1998年6月19日
23.6
24.7
21.9
1998年5月6日
20.0
22.9
16.7
日付
降水量
mm
34.5
0.5
本 研 究 の 類 似 天 気 図 法 は こ う し た 天 気 予 報 原 理 に 基 づ い て ,ま ず
JERS -1 デ ー タ 取 得 日 ( X と す る ) の 天 気 図 と よ く 似 た 2003 年 以 降
の あ る 日( GPV-MSM デ ー タ が 存 在 .Y と す る )の 天 気 図 を 捜 し 出 す .
こ の 異 な る 2 つ の 日( X と Y )の 天 気 状 態 が 同 じ で あ る と 仮 定 し
て , JERS-1 デ ー タ が 取 得 さ れ た X の 日 の 気 象 状 態 を Y の 日 の
GPV- MSM デ ー タ か ら 復 元 す る . こ れ か ら 大 気 遅 延 量 を 推 定 し , 衛 星
干 渉 SAR に 対 す る 水 蒸 気 分 布 の 影 響 を 評 価 す る .
本 研 究 で は ,1 )2 つ の 日 の 地 上 天 気 図 が 類 似 で あ る と い う 単 純 な
類 似 天 気 図 の 手 法 だ け で な く ,評 価 の 精 度 を 高 め る た め に 次 の よ う
な 条 件 も 付 加 し て い る . 2) 2 つ の 日 が 同 じ 季 節 で あ る . 3) 対 象 地
域 で は 地 表 面 観 測 の 気 象 要 素 が 類 似 し て い る . 4) 対 象 地 域 付 近 の
高層気象観測データが類似している.
こ う し た 条 件 を 満 た す GPV -MSM デ ー タ は ,JERS-1 デ ー タ 取 得 日 の
気象状態をある程度反映できる.
43
4.2
可降水量の計算方法
可 降 水 量 と は ,地 表 の あ る 面 を 基 点 と し て そ の 上 空 の 大 気 を 大 き
な 鉛 直 の 柱( 大 気 柱 )と 考 え ,そ こ に 含 ま れ る 水 蒸 気 や 雲 が す べ て
凝 結 し て 地 上 に 落 下( 降 水 )し た 時 の 降 水 量 の こ と で あ る( 図 4.1 ).
大 気 の 移 動 が 全 く 無 い と 仮 定 す れ ば ,こ れ 以 上 の 降 水 量 は 無 い と
考 え ら れ る 値 で あ る .現 実 的 に は こ の よ う な こ と は な い .実 用 的 に
は,大気中の水の総量を表す数値の 1 つとして用いられる.
可 降 水 量 と は ,大 気 中 の 水 蒸 気 を す べ て 降 水 と し て 降 ら せ た と き ,
降 水 量 が 何 mm に な る か を 表 す も の で あ る .降 水 量 は 通 常 mm の 深 さ
で 表 す が ,正 式 に は ,1 m 2 の 面 積 当 た り に 何 kg が 降 っ た か の 単 位
( kg/m 2 ) で 表 す .
可降水量とは単位面積あたりの鉛直気柱に含まれる水蒸気量を
水 量 に 換 算 し た 量 で あ り ,式( 4.1 )で 求 め る こ と が で き る( 二 宮 ,
2006 ) .
wp 
1
g

ps
0
qdp
(4.1)
こ こ に ,g は 重 力 の 加 速 度 (m/s 2 ), q は 比 湿 (kg/kg), ps は 地 上 の 気
圧 (hPa ) で あ る .
本 研 究 で は , 各 観 測 日 の 地 上 面 か ら 300hPa 高 度 ま で 可 降 水 量 の
鉛直積算を行って,水蒸気分布を検討する.
44
水蒸気分子
水分子
単位底面積の気柱
単位底面積の水柱
図 4. 1 可 降 水 量 の 概 念 図 ( 二 宮 , 200 6 )
45
4.3
大気遅延量
4.3.1 大 気 遅 延 の 基 本 原 理
大 気 屈 折 に よ る 大 気 遅 延 は 2 つ の 物 理 的 効 果 に 起 因 す る .1 つ は ,
マイクロ波が誘電媒質である大気中を通過するために真空中より
も減速され,見かけ上伝搬経路が伸びる効果である.もう1つは,
マ イ ク ロ 波 の 伝 搬 経 路 が 曲 率 (ray bending) を 持 つ た め , 直 線 よ り
経 路 が 実 際 に 長 く な る 効 果 で あ る ( 市 川 ほ か , 1995) .
S
G
仰角
図 4. 2
大気屈折の模式図
46
こ の と き , 大 気 の 密 度 は 下 層 ほ ど 大 き い の で , 図 4.2 の 大 気 屈 折
の 模 式 図 に 示 し た S の よ う に 上 方 に 凸 の 伝 搬 経 路 と な る .こ れ ら の
効果による遅延△L は次式で表される.
Latm   (n( s )  1)dl  [ S  G ]
( 4.2 )
L
こ こ で ,G は SAR 衛 星 な ど の 電 波 源 か ら 地 上 の ア ン テ ナ ま で の 直
線 距 離 , n(s) は 大 気 屈 折 に よ っ て 曲 率 が 生 じ た 伝 搬 経 路 L 上 の 点
s に お け る 屈 折 率 で あ る .こ の と き , S は L 上 の 微 尐 部 分 ds を 積
分して得られる.右辺第1項が減速の効果であり,実際の電波は L
上 を 大 気 中 の 伝 搬 速 度 c a t m で 伝 搬 す る が ,解 析 の 上 で は 真 空 中 の 速
度 c で 伝 搬 し た と み な さ れ る .し た が っ て ,見 か け 上 伝 搬 経 路 が 伸
び た こ と に な る .そ し て ,残 り の 右 辺 第 2 項 が 伝 搬 経 路 の 曲 率 の 効
果 と な り ,当 然 の 事 な が ら こ の 効 果 に よ る 遅 延 は 天 頂 方 向 で 0 と な
る .こ の 曲 率 の 効 果 は ,仰 角 15 度 以 上 で は 1cm 以 下 の 経 路 長 の 伸
び に 相 当 す る に 過 ぎ な い が ,こ れ よ り も 低 仰 角 で は 急 激 に 増 大 す る .
一 方 ,減 速 の 効 果 は 曲 率 の 効 果 に 比 べ て 3 桁 程 度 大 き く ,仰 角 1 5
度 で は 約 10m に も 達 す る .
衛 星 JERS -1 SAR の 仰 角 は 55 度 で あ り , 小 さ い 曲 率 の 効 果 が 省 略
して,減速の効果が主な誤差要因として大気遅延を検討する.
47
4.3.2
大気遅延量の推定方法
地表点 A から衛星高度 S までの大気が,各々異なる湿度・気温・
気 圧 を 有 す る 地 表 面 平 行 の N 層 で 構 成 さ れ て い る と す る ( 図 4.3) .
そ の と き , 二 層 の 間 で は 以 下 の 条 件 が 成 り 立 つ ( 島 田 , 1999 ) .
ni 1ri 1 sin  i 1  ni ri sin  i
ri
ri 1

sin  i'1 sin  i
(4.3 )
(4.4 )
こ の 条 件 を ,点 A と 点 S を 固 定 し ,そ の 間 を 連 結 す る な  i ,  i'1 を
求 め る .こ れ ら 2 つ の 角 度 は 隣 り 合 う 層 を 隔 た て て 入 射 角 と 屈 折 角
で あ る .ま た ,こ れ ら は 1 シ ー ン 内 で は ほ と ん ど 変 化 し な い こ と か
ら以下の近似が成立する.
 i   i 1 
1  ni 1ri 1 

 1
cos i 1  ni ri

 i'1   i 1 
1  ni 1 

 1
cos  i 1  ni

(4.5 )
(4.6 )
そ の 結 果 , 二 層 間 の 電 波 伝 搬 距 離 ( rmi ) は 以 下 で 求 め ら れ る .
rmi  ri 1
sin i
1 ni 1  ri 1  ri 1
1 


sin  i
cos i 1 ni 
ri  sin  i
48
(4.7 )
各 層 の 電 波 伝 播 時 間 , t mi は
t mi 
1 ni 1  ri 1  ri 1 ni 2ri 1ni 1  ri 1 
1 

1 


cos i 1 ni 
ri  sin  i c c sin  i 1 
ri 
(4.8 )
で与えられる.
ここに,cは光速である.2 回の観測の差として
  4
n  1
2
0 sin 2 0
 n
m ,i
 ns ,i ri
i
77.6
0.373
p 10 6 
e
T
T2
(4.9 )
(4.1 0 )
こ こ に ,  0 は 衛 星 点 に お け る オ フ ナ デ ィ ア 角 , n m ,i , n s , i は マ ス タ
ー ,ス レ ー ブ 画 像 の 第 i 大 気 層 の 屈 折 率 , ri は 第 i 層 に お け る 大 気
の 鉛 直 方 向 厚 さ で あ る . ま た 式 ( 4.10 ) は 屈 折 率 の 経 験 式 で あ り ,
p,T,e は そ れ ぞ れ 大 気 圧 (hPa ) , 気 温 (K) 水 蒸 気 圧 ( hPa)を 表 す .
大 気 遅 延 補 正 は 式 ( 4.9 ) に あ る よ う に ピ ク セ ル 毎 の オ フ ナ デ ィ
ア角に依存して,これを考慮することで補正はより効果的になる.
本 研 究 で は , 式 ( 4.9 ) に 基 づ い て GPV-MSM デ ー タ を 用 い て 大 気
遅延量を推定する.
49
図 4.3 地 表 点 A か ら 衛 星 高 度 S ま で の 電 波 伝 搬 ( 島 田 , 19 9 9)
50
5.
解析データ
5.1
メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV-MSM デ ー タ
JMA-GPV ( Japan Meteor ological Agency Grid Point Value ) は
気 象 庁 ( JMA ) の 数 値 解 析 予 報 シ ス テ ム ( Numerical Analysis and
Prediction System , NAPS ) 等 で 毎 日 作 成 さ れ て い る 数 値 予 報 モ デ
ル の 格 子 点 値 ( GPV ) . こ の デ ー タ に は 全 球 数 値 予 報 モ デ ル
GPV(Global Spectral Model , GSM) ・ 領 域 数 値 予 報 モ デ ル GPV
(Regional Spectral Model , RSM) ・ メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV
(MesoScale Model ,MSM)・1ヶ 月 ア ン サ ン ブ ル 数 値 予 報 モ デ ル (SF1)・
週 間 ア ン サ ン ブ ル 数 値 予 報 モ デ ル ・ 全 球 波 浪 数 値 予 報 モ デ ル GPV 等
の 6種 類 が あ る .
気 象 庁 は GPV- MSM デ ー タ を 2002 年 7 月 か ら 2006 年 2 月 ま で 毎 日
4 回 ( 6 時 間 間 隔 ) , 3 時 , 9 時 , 15 時 及 び 21 時 を 初 期 値 と し て 18
時 間 予 報 デ ー タ を 配 信 し て い る . 領 域 は 北 緯 22.4 度 , 東 経 120 度
~ 北 緯 47.6 度 , 東 経 150 度 で あ る . こ れ は 地 上 デ ー タ 及 び 高 層 デ
ー タ に 分 け て い る .地 上 デ ー タ は 水 平 方 向 が 緯 度 方 向 0.1 度 と 経 度
方 向 0 .125 度 の 約 10km の 格 子 距 離 点 で , 海 面 気 圧 , 風 速 の 南 北 ・
東 西 成 分 ,気 温 ,相 対 湿 度 ,降 水 量 ,上 中 下 層 の 雲 量 の デ ー タ 要 素
か ら な り ,1 時 間 毎 に 作 成 さ れ て い る .高 層 の 14 層( 975 hPa,950hPa,
925hPa ,900hPa ,850hPa ,800hPa ,700hPa ,500hPa ,400hPa ,300hPa ,
250hPa ,200 hPa ,150hPa ,100 hPa )の 各 等 圧 面 デ ー タ は 緯 度 方 向 0.2
度 と 経 度 方 向 0.25 度 の 約 20km の 格 子 で , 3 時 間 間 隔 で 作 成 さ れ ,
そのデータ要素はジオポテンシャル高度,風速の南北・東西成分,
気 温 で あ る . ま た , 相 対 湿 度 と 鉛 直 流 に つ い て は 300 hPa ま で の 1 0
層 で 与 え ら れ て い る . 2006 年 3 月 以 後 は 毎 日 8 回 ( 3 時 間 間 隔 ) ,
0 時 ,3 時 ,6 時 ,9 時 ,12 時 ,15 時 ,18 時 及 び 21 時 を 初 期 値 と し
51
て 15 時 間 予 報 デ ー タ を 配 信 し て い る . 地 上 デ ー タ は 水 平 方 向 が 緯
度 方 向 0.05 度 と 経 度 方 向 0.0625 度 の 約 5km の 格 子 距 離 点 で ,1 時
間 毎 に 作 成 さ れ て い る . 高 層 の 16 層 ( 1000 hPa , 975 hPa , 950hPa ,
925hPa ,900hPa ,850hPa ,800hPa ,600hPa ,700hPa ,500hPa ,400hPa ,
300hPa , 250 hPa , 200 hPa , 150hPa , 100hPa ) の 各 等 圧 面 デ ー タ は 緯
度 方 向 0.1 度 と 経 度 方 向 0.125 度 の 約 10km の 格 子 で ,3 時 間 間 隔 で
作成される.
本 研 究 で は 2003 ~ 2005 年 の メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV -MSM デ ー タ
を用いて水蒸気の影響を評価する.
JERS -1 SAR の デ ー タ 取 得 は 日 本 付 近 で は ほ ぼ 午 前 10 時 30 分 頃 で
あ る の で ,以 下 の 解 析 で は GPV-MSM デ ー タ は 近 接 の 時 刻 で あ る 9 時
の初期値データを用いる.
5.2
衛星データ
濃 尾 平 野 に お け る 1992 年 9 月 か ら 1998 年 9 月 ま で の 32 シ ー ン
JERS -1 SAR 画 像 を 用 い た . 32 シ ー ン JERS - 1 SAR 画 像 は 季 節 に よ
り ,春 が 8 シ ー ン ,夏 が 9 シ ー ン ,秋 が 7 シ ー ン ,冬 が 8 シ ー ン で
あ る ( 表 5.1 ) . 32 シ ー ン 画 像 に 干 渉 の パ ラ ー メ ー タ に よ り 20 シ
ー ン を 検 討 す る .干 渉 SAR で 得 ら れ た 変 動 域 は 研 究 地 区 を 網 羅 す る .
図 5.1 は 名 古 屋 ・ 岐 阜 ・ 四 日 市 に お け る 1971 年 か ら 2000 年 の 月
平 均 降 水 量 で あ る .こ れ を 見 る と 冬 は 夏 に 比 べ て 水 蒸 気 量 が 相 対 的
に 尐 な い こ と が 示 さ れ て い る . 図 5.1 に 示 す よ う に , SAR 観 測 に お
いて冬の気象状況は夏に比べてよいと言える.
SIGMA- SAR プ ロ セ ッ サ ( Shimada, 1999 ) を 利 用 し て 32 シ ー ン
JERS -1 SAR 画 像 の 差 分 干 渉 処 理 の 結 果 は 40 シ ー ン の 組 み 合 わ せ に
つ い て 成 功 し た ( 表 5.2 ) . 基 線 長 に よ り , 200m 以 下 は 4 シ ー ン ,
52
200m ~ 800m は 13 シ ー ン , 800m 以 上 は 23 シ ー ン で あ る .
基 線 長 か ら 見 て み る と , 基 線 長 が 200m 以 下 の と き 軌 道 縞 の な い
き れ い な 画 像 が で き ,800m 以 下 の と き に は 軌 道 縞 が 多 尐 残 る が ,比
較 的 き れ い な 画 像 が で き ま し た .基 線 長 が 2000m を 超 え る と 干 渉 画
像 を 作 る こ と は 難 し く な り , 今 回 の 処 理 で は 最 長 の 基 線 長 が 2284 m
で あ る . し た が っ て ,2 つ の デ ー タ の 期 間 よ り も ,基 線 長 の 方 が 干
渉画像をつくる上で重要だと考えられる.
2回のレーダ観測から取った画像の干渉度(コヒーレンス)が 2
つ の レ ー ダ の 視 線 方 向 に 垂 直 な 位 置 間 隔( 垂 直 基 線 B )に 大 き な 影
響 を 与 え ら れ ,垂 直 基 線 B が 長 い ほ ど ,2 つ の 画 像 の コ ヒ ー レ ン ス
が 落 ち る ( 飛 田 , 2003 ) . か つ て の InSAR の 理 論 及 び 数 学 モ デ ル を
基 づ い て ,長 い 垂 直 基 線 B の 干 渉 ペ ア を 利 用 す る 時 に は 誤 差 が 発 生
す る 可 能 性 が あ る ( 鄭 ・ 福 山 , 2005 ) .
本研究では,大気遅延量を評価するには,濃尾平野を観測した
1998 年 5 月 6 日 ( 春 ) と 同 年 6 月 19 日 ( 夏 ) の デ ー タ を 用 い た .
1998 年 5 月 6 日 と 6 月 19 日 の 干 渉 ペ ア は 基 線 長 が 213m,時 間 間 隔
が 44 日 で あ る .
53
表 5.1 J ERS -1 SAR 画 像 の 季 節 分 布
12
冬
1
2
3
930301
春
4
5
6
夏
7
8
9
秋
10
11
930414
930528
960305
春
970405
970519
980323
980506
930711
930824
950615
960601
夏
960828
970702
980619
970815
980802
920906
921020
931120
秋
951025
970928
971111
980915
921203
930116
冬
940216
950203
951208
970107
971225
980207
54
(mm)
300
250
200
150
100
50
名古屋
岐阜
四日市
0
1
2
3
図 5.1
4
5
6
7
(月)
8
9
197 1 ~ 2000 年 の 月 平 均 降 水 量
55
10
11
12
表 5.2 差 分 干 渉 画 像 に お け る 基 線 長 と 時 間 間 隔
ファイル名
nob001
nob003
nob005
nob009
nob012-2
nob013
nob014
nob015-2
nob016
nob017
nob018-2
nob019-2
nob023
nob024
nob025
nob026
nob030
nob033
nob034
nob039-2
nob041
nob042
nob045
nob046
nob027
nob028
nob029
nob031
nob032
nob036
nob037
nob038
nob040
nob044
nob049
nob050
nob052
nob053
nob055
nob057
slave
980506
980619
980207
970815
970405
970107
980619
980506
980323
980207
971225
971111
980207
980323
951208
930824
970107
950203
960305
971111
971225
971111
980207
971225
930414
930414
921020
950203
950615
960305
960305
980506
971111
971225
971225
931120
950615
931120
960305
960828
master
980619
980802
980323
970928
970519
970405
980915
980802
980619
980506
980323
980207
980619
980915
960601
931120
970519
951025
970519
980323
980619
980915
980915
980506
930528
930711
921203
950615
951208
960828
970107
980915
980506
980802
980915
951208
951025
960305
960601
970107
期間(日)
44
44
44
44
44
88
88
88
88
88
88
88
132
176
176
88
132
264
440
132
176
308
220
132
44
88
44
132
176
176
308
132
176
220
264
748
132
836
88
132
56
基線長(m)
213
589
199
-1188
-987
436
-1726
805
2084
2072
-1749
-88
2284
359
-817
520
-513
-295
823
111
339
472
559
128
596
-1642
-1841
1081
1344
1688
1335
-1512
1988
932
-1388
-1329
-1375
-680
-1462
-358
5.3
高層気象観測年報データ
高層気象観測年報データは日本国内の高層気象観測官署におけ
るレーウィンゾンデ観測とレーウィン観測で得られた観測資料及
び そ の 月 統 計 値 資 料 等 を 収 録 し た も の で あ る .レ ー ウ ィ ン ゾ ン デ 観
測 で は 上 空 約 30 km ま で の 気 圧 ,気 温 ,湿 度 ,風 向 ,風 速 の 観 測 を ,
ま た レ ー ウ ィ ン 観 測 で は 上 空 約 15km ま で の 風 向 , 風 速 の 観 測 を 行
っ て い る .収 録 さ れ た 資 料 は ,指 定 気 圧 面 資 料 ,月 統 計 値 資 料 ,気
温 湿 度 観 測 点 資 料 ,風 観 測 点 資 料 ,イ ン デ ッ ク ス で 構 成 さ れ て お り ,
それぞれバイナリシーケンシャルファイル形式で月別に収録され
ている.
本 研 究 で は , 1992 年 か ら 1998 年 ま で の 気 象 庁 の 発 行 し た 高 層 気
象 観 測 年 報 デ ー タ を 利 用 し て い た .日 本 で は ,高 層 気 象 観 測 年 報 デ
ー タ を 観 測 す る 地 点 が 20 カ 所 だ け で あ る . こ の デ ー タ は 相 対 湿 度
が 地 表 面 か ら 300hPa ま で が 11 層 に 分 割 さ れ , 6 時 間 毎 に 生 成 さ れ
て い る . JERS -1 の デ ー タ 取 得 は 日 本 付 近 で ほ と ん ど 午 前 10 時 30
分頃である.
日本全国には高層気象の観測地点が尐ないので濃尾平野には観
測 地 点 が な く ,濃 尾 平 野 に お け る 水 蒸 気 影 響 の 研 究 は 難 航 し て い る .
濃 尾 平 野 の 一 番 近 い 観 測 点 は 潮 岬 で あ る .濃 尾 平 野 に お け る 大 気
影 響 の 研 究 は ,潮 岬 の 9 時 の デ ー タ を 利 用 し た .図 5.2 は 日 本 に お
ける高層気象の観測地点を示した.
57
図 5.2
高層気象の観測地点
58
6.
地 盤 変 動 解 析 へ の InSAR の 適 用
6. 1
干渉画像
濃尾平野は日本の中央に位置し,有数の平野である.養老山地・
尾 張 丘 陵・伊 勢 湾・木 曽 三 川 な ど の 多 様 な 地 質 条 件 は 地 域 の 気 候 変
化 に 大 き な 影 響 を 与 え る .干 渉 画 像 で 示 さ れ る 地 域 は 濃 尾 平 野 の 中
心 部 に 位 置 し て お り ,西 北 部 の 養 老 山 地( 標 高 約 898m )以 外 は ほ ぼ
平 坦 で あ る ( 図 6 .2) . 水 蒸 気 分 布 の 違 い に よ る 大 気 遅 延 を 検 討 す る
フィールドとしてきわめて有効な地域の一つである.
本 研 究 で は ,上 に 述 べ た 方 法 に よ る 大 気 遅 延 量 評 価 と し て ,濃 尾
平 野 を 観 測 し た 1998 年 5 月 6 日 と 同 年 6 月 19 日 の JERS- 1 SAR デ
ー タ を 用 い た .デ ー タ 処 理 は ,SIGMA-SAR プ ロ セ ッ サ( Shimada, 1999 )
を 利 用 し た . 差 分 干 渉 画 像 ( 図 6.1) は 西 北 部 と 東 南 部 で 位 相 変 化
が大きく,視線距離が伸びていることを示している.
6.2
GPV -MSM デ ー タ の 選 択
以 下 で は ,1998 年 5 月 6 日 と 1998 年 6 月 19 日 の 干 渉 画 像 を 例 と
し て , GPV-MSM デ ー タ を 利 用 す る 類 似 天 気 図 法 に つ い て 検 討 す る .
GPV-MSM デ ー タ を 選 択 す る 手 順 は 次 の 5 つ の 過 程 か ら な る . 1)
JERS -1 の 観 測 日 ( X ) の 地 上 天 気 図 の 用 意 . 2 ) 2003 年 以 降 で 類 似
の 天 気 図 ( Y ) の 抽 出 . 3) X , Y 両 日 の 名 古 屋 で 地 表 気 象 デ ー タ
の 比 較 . 4) 観 測 日 ( X ) の 潮 岬 で の ラ ジ オ ゾ ン デ 高 層 気 象 観 測 デ
ー タ と 3)で 見 出 し た 日( Y )の GPV-MSM デ ー タ を 925 hPa ,850hPa ,
800hPa の 各 等 圧 面 で 気 象 要 素 の 比 較 . 5) 最 類 似 日 を 決 定 し Y の 日
に お け る GPV-MSM デ ー タ の 取 得 .
59
図 6.1
濃 尾 平 野 で 1998 年 5 月 6 日 と 1 998 年 6 月 19 日
の JER S - 1 S AR 観 測 結 果 が 計 算 さ れ た 差 分 干 渉 画
像 . UTM 座 標 に 読 み 込 ん だ .
60
図 6.2
差 分 干 渉 画 像( 図 6 .1 )に 示 し た 領 域 の 地 形
図 . 等 高 線 の 間 隔 は 100 m, 図 中 の 数 字 の 単
位 は m, 白 色 は 海 で あ る .
61
上 に 述 べ た 手 順 1)で 得 た 1998 年 5 月 6 日 と 1998 年 6 月 19 日 の
天 気 図( 図 6 .3,図 6.4)に 示 す よ う に ,1998 年 5 月 6 日 の 天 気 は ,
日 本 の 南 海 上 に 梅 雤 前 線 が 停 滞 し , 東 海 地 域 は 曇 り で あ る . 1998
年 6 月 19 日 は , 各 地 に 大 雤 を 降 ら せ た 梅 雤 前 線 上 の 低 気 圧 が 日 本
列島を横断して三陸沖の方へ進んだ.
手 順 2) で は , 2003 年 か ら 2005 年 に か け て の 地 上 天 気 図 を 用 い
て ,1998 年 5 月 6 日 の 天 気 パ タ ー ン に 対 す る 4 ,5,6 月 ,1998 年 6
月 19 日 の 天 気 パ タ ー ン に 対 す る 5, 6, 7 月 の 類 似 し た 天 気 図 を 見
出 す .見 出 し た 類 似 天 気 図 の 日( Y )の 気 象 デ ー タ を 表 6.1 及 び 表
6.2 に 示 す .
名 古 屋 の 気 象 観 測 点 は 研 究 地 域 の 東 南 部 に 位 置 す る . 手 順 3) で
1998 年 5 月 6 日 と 1998 年 6 月 19 日 の 名 古 屋 で の 地 表 面 気 象 観 測 デ
ー タ ( 気 温 ・ 海 面 気 圧 ・ 水 蒸 気 圧 ) を , 手 順 2) で 見 出 し た 日 の 地
表 面 気 象 デ ー タ と 比 較 す る と( 表 6. 1 ,表 6 .2 ),気 温 ・ 海 面 気 圧 ・
水 蒸 気 圧 の 地 表 面 気 象 観 測 デ ー タ に つ い て , JERS -1 デ ー タ 取 得 日
( X ) と そ れ ぞ れ の 手 順 2) で 見 出 し た 日 ( Y ) の 気 象 要 素 の 差 は
変 化 が 大 き い . そ の う ち , 気 温 の 差 が 5℃ よ り 小 さ い 日 , 或 い は 海
面 気 圧 の 差 が 5hPa よ り 小 さ い 日 を 見 出 し , 類 似 の 日 ( Y ) と し て
表 6.3 と 表 6.4 で 示 す .
手 順 4) で 気 象 庁 が 提 供 す る ラ ジ オ ゾ ン デ に よ る 高 層 観 測 デ ー タ
(高 層 気 象 観 測 年 報 ) を 用 い て , 1998 年 5 月 6 日 と 1998 年 6 月 19
日 と 手 順 3 ) で 見 出 し た 日 の 潮 岬 で の 高 層 観 測 デ ー タ を 925 hPa ,
850hPa , 800hPa 等 圧 面 で 気 象 要 素 ( ジ オ ポ テ ン シ ャ ル 高 度 , 気 温 ,
水 蒸 気 圧 )と 比 較 す る .潮 岬 は 研 究 地 域 に 最 も 近 い 高 層 気 象 観 測 点
で あ る .1998 年 5 月 6 日 と 2004 年 5 月 27 日 の 高 層 気 象 デ ー タ に お
け る , 各 気 圧 面 の 気 温 差 は 2.1~ 4.4℃ で , 平 均 値 が 3.3℃ で あ り ,
62
ジ オ ポ テ ン シ ャ ル 高 度 の 差 は 平 均 値 が 10.6m で あ る .水 蒸 気 圧 の 差
は 3 .3~ 6 .6hPa で ,平 均 値 が 4.8 hPa に な る( 表 6.3).し た が っ て ,
他 の 日 の 気 象 要 素 と 比 べ て , 1998 年 5 月 6 日 に 対 し て 2004 年 5 月
27 日 の 高 層 気 象 要 素 は 最 も 類 似 し て い る . 同 様 に , 1998 年 6 月 19
日 に 対 し て 2005 年 7 月 12 日 の 気 象 要 素 が 他 の 日 よ り ,類 似 性 も 認
め ら れ る ( 表 6 .4) . 即 ち , 1998 年 6 月 19 日 と 2005 年 7 月 12 日
の 気 温 差 は 0.4~ 2.1 ℃ で ,平 均 値 が 1 ℃ 未 満 で あ り ,ジ オ ポ テ ン シ
ャ ル 高 度 の 差 を 平 均 す る と 2m 以 下 で あ る . 水 蒸 気 圧 の 差 は 0.4 ~
2. 3hPa で , 平 均 値 は 1.3 hPa で あ る .
手 順 5)で は ,1)~ 4 )の 手 順 に よ り ,天 気 図 ・ 地 表 気 象 デ ー タ ・
高 層 等 圧 面 気 象 デ ー タ を 総 合 的 に 精 査 す る .気 象 条 件 が 最 も 類 似 す
る 日 と し て ,1998 年 5 月 6 日 に 対 し て は 2004 年 5 月 27 日 が ,1998
年 6 月 19 日 に 対 し て は 2005 年 7 月 12 日 が 選 択 し た (図 6.5 と 図 6.
6).こ れ ら の 天 気 図 か ら わ か る よ う に ,2004 年 5 月 27 と 1998 年 5
月 6 日 , 2005 年 7 月 12 日 と 1998 年 6 月 19 日 の 天 気 図 は 類 似 し て
いる.
63
図 6.3
1998 年 5 月 6 日 の 天 気 図
64
図 6. 4
19 98 年 6 月 1 9 日 の 天 気 図
65
図 6.5
1998 年 5 月 6 日 の 気 象 条 件 と 最 も 類 似 す る
2004 年 5 月 27 日 の 天 気 図 .
66
図 6.6
1998 年 6 月 19 日 の 気 象 条 件 と 最 も 類 似 す る
2005 年 7 月 12 日 の 天 気 図 .
67
表 6.1
1998 年 5 月 6 日 の 地 表 面 気 象 観 測 デ ー タ( X )と 手 順 2 )で
見出した日(Y)の地表面気象データの比較.
日付
5/6/1998 (X)
4/2/2005
4/12/2005
5/17/2005
5/26/2005
5/2/2004
5/27/2004 (Y)
4/28/2003
5/10/2003
5/11/2003
5/12/2003
5/23/2003
P
1023.7
1022.7
1019.2
1020.9
1017.1
1025.9
1022.2
1023.4
1021.7
1024.4
1025.4
1018.7
T
20.6
9.3
12.1
17.8
19.5
18.7
23.3
18.8
18.1
17.7
18.6
21.9
E
19.2
5.4
4.8
12.6
13.2
15.1
16.9
11.1
11.2
11.5
12.2
16.6
(Y-X)
ΔP
ΔT
ΔE
1.0
4.5
2.8
6.6
2.2
1.5
0.3
2.0
0.7
1.7
5.0
11.3
8.5
2.8
1.1
1.9
2.7
1.8
2.5
2.9
2.0
1.3
13.8
14.4
6.5
6.0
4.1
2.3
8.1
8.0
7.6
7.0
2.6
X : JE RS -1 の 観 測 日 , Y : GP V-M SM の 存 在 す る 日 ,Y - X : 観 測 日
と 選 択 し た 日 の 各 地 表 面 気 象 要 素 の 差 の 絶 対 値 ,P:海 面 気 圧 ( hPa),
T : 気 温 ( ℃ ) , E : 水 蒸 気 圧 (hP a), Δ P : 海 面 気 圧 の 差 ( h P a ) , Δ T :
気 温 の 差 ( hP a) .
温 の 差 (℃ ), Δ E : 水 蒸 気 圧 の 差 (hP a) .
68
表 6.2
1998 年 6 月 19 日 の 地 表 面 気 象 観 測 デ ー タ( X )と 手 順 2 )
で見出した日(Y)の地表面気象データの比較.
日付
6/19/1998 (X)
5/6/2005
5/18/2005
6/11/2005
6/22/2005
7/10/2005
7/12/2005
(Y)
5/4/2004
5/16/2004
5/31/2004
6/26/2004
7/1/2003
7/5/2003
P
1007.4
1007.4
1014.1
999.8
1002.4
1006.6
1005.6
1004.9
1008.7
1008.7
1006.2
1007.1
1007.2
T
21.9
18.7
18.8
22.7
22.8
25.2
23.8
19.4
17.7
28.1
25.0
23.7
23.3
E
25.5
18.3
13.0
23.7
24.4
26.9
26.8
21.4
18.8
27.8
26.0
23.7
19.5
69
(Y-X)
ΔP
ΔT
ΔE
0.0
6.7
7.6
5.0
0.8
1.8
2.5
1.3
1.3
1.2
0.3
0.2
3.2
3.1
0.8
0.9
3.3
1.9
2.5
4.2
6.2
3.1
1.8
1.4
7.2
12.5
1.8
1.1
1.4
1.3
4.1
6.7
2.3
0.5
1.8
6.0
表 6.3
1998 年 5 月 6 日 の 高 層 気 象 観 測 デ ー タ ( X ) と 手 順 3)
で見出した日(Y)の高層気象観測データの比較.
日付
5/6/1998
4/2/2005
5/17/2005
5/2/2004
5/27/2004
4/28/2003
5/10/2003
5/11/2003
5/12/2003
(X)
(Y)
4/2/2005
5/17/2005
5/2/2004
5/27/2004
(Y-X)
4/28/2003
5/10/2003
5/11/2003
5/12/2003
A
858
828
830
869
856
852
826
842
858
925hPa
T
17
8.9
10.6
14
14.9
12.9
11.7
11.7
12.2
E
18.6
10.5
11.3
12.6
14.2
10.9
11.1
12.7
12.4
A
1577
1522
1531
1576
1566
1556
1529
1545
1561
ΔT
8.1
6.4
3
2.1
4.1
5.3
5.3
4.8
ΔE
8.1
7.4
6
4.4
7.7
7.5
6
6.2
ΔA
55
46
1
11
21
48
32
16
ΔA
30
28
11
2
6
32
16
0
850hPa
T
13.5
3.5
8.4
9.1
10.1
8.1
7.6
7
8.4
E
15
6.7
4.9
7.3
8.4
6.9
9.6
10
9.3
A
2086
2012
2033
2076
2067
2054
2027
2042
2063
ΔT
10
5.1
4.4
3.4
5.4
5.9
6.5
5.1
ΔE
8.3
10.2
7.7
6.6
8.1
5.4
5
5.8
ΔA
74
53
10
19
32
59
44
23
800hPa
T
11.1
0.8
11.1
6.4
6.7
5.1
5.2
4.5
7.8
E
12.7
4.5
0.7
4.5
9.4
2.8
8.2
8.4
10
ΔT
10.3
0
4.7
4.4
6
5.9
6.6
3.3
ΔE
8.2
12
8.2
3.3
9.9
4.5
4.3
2.7
A: ジ オ ポ テ ン シ ャ ル 高 度 (m) , T : 気 温 (℃ ) , E : 水 蒸 気 圧 ( hPa ) ,
Δ A : ジ オ ポ テ ン シ ャ ル 高 度 の 差 (m) , Δ T : 気 温 の 差 ( ℃ ) , Δ E :
水 蒸 気 圧 の 差 (hP a ) .
70
表 6 .4
1 99 8 年 6 月 1 9 日 の 高 層 気 象 観 測 デ ー タ ( X ) と
手 順 3)で 見 出 し た 日 ( Y ) .
の高層気象観測データの比較.
日付
6/19/1998
5/6/2005
7/10/2005
7/12/2005
5/4/2004
5/16/2004
6/26/2004
7/1/2003
7/5/2003
(X)
(Y)
5/6/2005
7/10/2005
7/12/2005
5/4/2004
(Y-X)
5/16/2004
6/26/2004
7/1/2003
7/5/2003
A
747
726
752
747
737
767
745.0
734
750
925hPa
T
21.1
13.2
21.5
21.5
16.7
18.5
21.1
16.1
19.4
E
24.5
15.2
24.4
24.9
18.8
20
22.0
16.3
21.6
A
1477
1437
1483
1478
1455
1489
1475.0
1454
1478
850hPa
T
17
11.2
18.8
17.4
13.8
14.9
17.5
15.3
18.5
E
19.4
13.3
18.5
17.1
15.8
15.9
17.6
17.4
18.5
A
1993
1943
2003
1996
1965
2001
1992.0
1968
1998
800hPa
T
13.4
10.7
16.5
15.5
11.6
12.9
14.6
13.5
15.9
E
14.9
12.9
14.6
16.2
12.8
14.6
14.3
15.5
15.5
ΔA
21
5
0
10
20
2.0
13
3
ΔT
7.9
0.4
0.4
4.4
2.6
0.0
5
1.7
ΔE
9.4
0.2
0.4
5.7
4.5
2.5
8.2
2.9
ΔA
40
6
1
22
12
2.0
23
1
ΔT
5.8
1.8
0.4
3.2
2.1
0.5
1.7
1.5
ΔE
6.1
0.9
2.3
3.6
3.5
1.8
2
0.8
ΔA
50
10
3
28
8
1.0
25
5
ΔT
2.7
3.1
2.1
1.8
0.5
1.2
0.1
2.5
ΔE
2
0.3
1.3
2.1
0.3
0.6
0.6
0.6
71
6. 3
水蒸気分布の復元
こ こ で は , 2004 年 5 月 27 日 と 2005 年 7 月 12 日 の GPV- MSM デ ー
タ を 用 い て ,1998 年 5 月 6 日 と 1998 年 6 月 19 日 の 水 蒸 気 の 分 布 を
復元する.
図 6.7 と 図 6.8 の 黒 線 枠 内 の 範 囲( 以 下 で は 研 究 地 域 と 呼 ぶ )は
図 6.1 に 示 し た 領 域 と 同 じ で あ る . 各 観 測 日 の 地 上 面 か ら 300hPa
高 度 ま で 水 蒸 気 量 の 鉛 直 積 算 ( 図 6.7 ) に よ る と , 2004 年 5 月 27
日 と 2005 年 7 月 12 日 の 水 蒸 気 分 布 は か な り 異 な っ て い る .研 究 地
域 内 で の 2005 年 7 月 12 日 の 平 均 可 降 水 量 は , 2004 年 5 月 27 日 の
約 3 倍 に な っ て い る .図 6.7b か ら 図 6.7a の 可 降 水 量 を 差 し 引 い て ,
2 つの観測日における可降水量の差を求めた.研究地域内では可降
水 量 の 差 の 分 布 は 不 均 一 で ,西 部 か ら 東 南 部 に 増 加 す る 傾 向 が あ り ,
西 北 部 の 最 小 値 (39kg/m 2 )と 東 南 部 の 最 大 値 (45kg/m 2 )の 差 が 6kg/m 2
に な る ( 図 6.8).
図 6. 9 は , (a) 2004 年 5 月 27 日 と (b) 2005 年 7 月 12 日 の 北 緯
34.9 度 線 上 に お け る 高 度 975hPa か ら 500hPa ま で の 比 湿 の 経 度 の 鉛
直 断 面 分 布 を 表 す .北 緯 34.9 度 は 研 究 地 域 の 中 央 の 緯 度 に 当 た る .
2005 年 7 月 12 日 の 各 層 の 比 湿 量 は 2004 年 5 月 27 日 よ り 大 き い .
両 日 の 比 湿 量 は 高 度 に よ っ て 減 尐 す る 傾 向 が あ る .水 平 方 向 の 比 湿
の 変 化 は 両 日 と も 下 層 で 大 き く ,850hPa 以 上 い ず れ の 日 も 緩 や か で
あ る .し か し ,2004 年 5 月 27 日 は 700hPa 面 以 高 で も 変 化 が 大 き く
な る . 2004 年 5 月 27 日 は ほ ぼ 全 層 に わ た っ て 南 風 が 見 ら れ る ( 図
6. 9a).一 方 ,2005 年 7 月 12 日 は ほ ぼ 全 層 で 西 風 で あ る( 図 6.9b ).
2 つ の 観 測 時 期 に お け る 比 湿 の 差 の 断 面 分 布 を 図 6.10 に 表 す .こ の
う ち , 両 日 の 比 湿 差 は , 地 表 面 か ら 925hPa 面 ま で 増 加 し , 925hPa
面 か ら 700hPa 面 に か け て 最 大 に な り , 700hPa 面 以 高 で 減 尐 す る 傾
72
向 を 示 す .500 hPa 面 の 値 は 4g/kg に な る .一 方 ,水 平 方 向 で は ,地
表 面 か ら 925 hPa 面 ま で 減 尐 す る 傾 向 が あ り , 地 表 面 で は 変 化 が 大
き く ,925hPa 面 で は 小 さ く な る .925 hPa 面 か ら 700hPa 面 に か け て
変 化 も 大 き く ,700 hPa 面 以 高 で 変 化 は 小 さ い .東 部 の 比 湿 は 西 部 よ
り著しく大きくなる.
各 観 測 日 の 北 緯 34.9 度 に お け る 高 度 975hPa か ら 500hPa ま で の
屈 折 指 数 の 鉛 直 断 面 図 を 図 6.11 に 示 し た . 各 観 測 日 の 屈 折 率 の 鉛
直 変 化 は ,図 6.9 に 示 し た 比 湿 の 鉛 直 変 化 の パ タ ー ン と ほ ぼ 同 様 で
あ る .水 平 方 向 に は 下 層 で 変 化 が 見 ら れ る が ,図 6.9 に 示 し た 比 湿
と比べて変化が小さい.2 つの観測時期における屈折率の差の断面
分 布 を 図 6.12 に 示 し た .両 日 の 屈 折 率 の 差 は 図 6.10 に 示 す 比 湿 の
差の空間変化パターンと類似している.
73
(a)2004 年 5 月 27 日
図 6.7
各 観 測 日 に お け る 地 上 面 か ら 30 0hPa 高 度 ま で の 鉛 直
積 算 水 蒸 気 量 の 分 布 .( a) 2004 年 5 月 27 日 . ( b)
200 5 年 7 月 12 日 . 黒 線 枠 内 の 範 囲 は 図 6 .1 に 示 し
た 領 域 と 同 じ で ,図 中 の 数 字 の 単 位 は k g/m 2 で あ る .
74
図 6.7
(b) 2005 年 7 月 12 日
75
図 6 .8
2 00 5 年 7 月 12 日 と 2 00 4 年 5 月 27 日 の 可 降 水 量
差の分布. 黒線枠内の範囲は研究地域である.
76
(a)2004 年 5 月 27 日
図 6. 9
各 観 測 日 の 北 緯 34. 9 度 に 沿 っ て 97 5hP a か ら 5 00h P a ま で の
比 湿 の 鉛 直 分 布 図 . ( a ) 2 004 年 5 月 2 7 日 . (b ) 2 005 年 7
月 12 日 . 等 比 湿 線 の 間 隔 は 1g /kg で , 図 中 の 数 字 の 単 位 は
g/kg で あ る .
77
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5
0
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9
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20m/s
(b) 2005 年 7 月 12 日
78
図 6.1 0
北 緯 34 .9 度 に 沿 っ て 2005 年 7 月 12 日 と
2 004 年 5 月 27 日 の 比 湿 差 の 鉛 直 分 布 図 .
79
( a ) 2 004 年 5 月 2 7 日
図 6 .1 1
各 観 測 日 の 北 緯 34 .9 度 に 沿 っ て 9 75h Pa か ら 50 0 hPa
ま で の 屈 折 指 数 の 鉛 直 分 布 図 .( a )2 00 4 年 5 月 27 日 .
(b) 20 0 5 年 7 月 12 日 .図 中 の 数 字 の 単 位 は N U で あ る .
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550
200
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図 6.1 1
( b) 2005 年 7 月 12 日
81
図 6.1 2
北 緯 34 .9 度 に 沿 っ て 2005 年 7 月 12 日 と
2004 年 5 月 27 日 の 屈 折 指 数 差 の 鉛 直 分 布 図
82
6. 4
大気遅延量の推定
研 究 地 域 で , 式 (4.9)に 2004 年 5 月 27 日 ( 1998 年 5 月 6 日 の 最
類 似 日 )と 2005 年 7 月 12 日( 1998 年 6 月 19 日 の 最 類 似 日 )の GPV-MSM
デ ー タ を 適 用 し て ,JERS-1 SAR 観 測 方 向 の 大 気 遅 延 量 の 偏 差( 平 均
値 よ り )を 求 め , 大 気 遅 延 量 の 空 間 分 布 を 再 現 し た の が 図 6.13 で あ
る .西 北 部 と 東 南 部 に 大 き な 変 化 が 存 在 し ,両 日 の 大 気 遅 延 量 の 最
大 偏 差 は 約 38mm に な る .国 土 地 理 院 発 行 の 50 メ ッ シ ュ の 数 値 標 高
モ デ ル (DEM) デ ー タ と GPV デ ー タ を 用 い て ,SAR 観 測 方 向 の 地 形 標 高
に よ る 大 気 遅 延 量 を 求 め , 図 6.14 に 示 し た . 地 形 標 高 に よ る 大 気
遅 延 量 は 研 究 地 域 の 西 北 部 に の み 分 布 す る .水 蒸 気 水 平 方 向 変 化 に
よ る 大 気 遅 延 ( 図 6. 13) と 地 形 標 高 に よ る 大 気 遅 延 ( 図 6.14) を
合 成 し た 大 気 遅 延 分 布 を 図 6.15 に 表 す .大 気 遅 延 分 布 図( 図 6.15)
は西北部と東南部で変化が大きくなることを示している.
6. 5
水蒸気による大気遅延の補正
図 6.16 は 1998 年 6 月 19 日 と 1998 年 5 月 6 日 の 差 分 干 渉 位 相 図
( 図 6.1 ) に 対 し て , 求 め た 水 蒸 気 水 平 方 向 変 化 に よ る 大 気 遅 延 と
地 形 標 高 に よ る 大 気 遅 延 を 補 正 し た 結 果 で あ る . 図 6.16 に 示 す よ
う に ,図 6.1 で の 西 北 部 と 東 南 部 の 位 相 が 大 幅 に 減 尐 す る こ と が 見
ら れ る .し か し , 西 北 部 で 位 相 の 残 留 が 見 ら れ る .こ れ は 地 盤 沈 下
が発生する可能性がある.
83
図 6. 13
大 気 遅 延 量 の 水 平 分 布 の 偏 差 図 .図 中 の 数
字 の 単 位 は mm, 等 値 線 の 間 隔 は 10mm , 白 色
は海である.
84
図 6. 14
地形標高による大気遅延図.図中の数
字 の 単 位 は mm ,等 値 線 の 間 隔 は 10m m ,白
色は海である.
ある.
85
図 6. 15
大気遅延量図
86
図 6. 16
大気遅延量補正図
87
7.
濃尾平野における地盤変動の状況
7. 1
濃尾平野の概要
濃尾平野はかつての美濃の国の南西部から尾張の国の西部にま
た が っ て い る こ と か ら ,濃 尾 平 野 と 名 付 け ら れ て い る .濃 尾 平 野 の
う ち ,木 曽 川 左 岸 地 域 を 尾 張 平 野 と も 呼 ぶ .そ の 東 南 部 に は 名 古 屋
市 が あ り ,周 り の 市 町 村 と 共 に 名 古 屋 都 市 域 と 呼 べ る ほ ど の 人 口 と ,
経済的な発展をしている.
一 方 ,右 岸 地 域 は 美 濃 平 野 と 呼 ば れ る .北 部 に は 岐 阜 ・ 大 垣 の 都
市 域 が ,伊 勢 平 野 と の 境 に は 桑 名 都 市 域 が 広 が っ て い る .そ れ ら の
中 間 地 帯 に ,輪 中 を 含 ん だ 農 業 地 帯 が あ る .こ の 平 野 は 大 き く み る
と 東 高 ・ 西 低 の 地 形 を し て い る .平 野 の 中 で 洪 積 段 丘 が 占 め る 割 合
は 総 面 積 の 約 1 割 で あ る .そ の ほ と ん ど は 東 部 に 広 が る .こ れ に 対
し て 西 部 は ,木 曽・長 良・揖 斐 の 木 曽 三 川 が 集 ま る 低 湿 地 帯 を な し ,
洪積段丘は養老山地の山麓部に急傾斜の幅の狭い複合扇状地が尐
し 残 っ て い る だ け で あ る . 面 積 全 体 の 9割 近 く を 沖 積 平 野 部 が 占 め
ており,扇状地・自然堤防・三角州がよく発達している.
上 に も 述 べ た よ う に ,濃 尾 平 野 は 洪 積 層 と 沖 積 層 か ら な る 水 成 堆
積 平 野 で あ る ( 福 山 , 2005 ) .
7. 2
濃尾平野の地形・地質
濃 尾 平 野 は 西 を 養 老 山 地 , 東 を 尾 張 丘 陵 と し て , 東 が 高 ま り ,西
が 低 下 す る 東 高 西 低 の 濃 尾 傾 動 地 塊 運 動 の 進 行 の 結 果 ,平 野 西 側 部
分 で は 沖 積 層 ,洪 積 層 が 厚 く 分 布 し ,軟 弱 地 盤 を 形 成 し て い る .一
方 東 部 は 隆 起 を 反 映 し て ,尾 張 丘 陵 な ど の 洪 積 台 地 ,さ ら に は 猿 投
山 な ど の 山 地 が 発 達 し て い る ( 図 7.1 ) .
88
濃尾平野の第四紀層を除く深部地質構造については十分解明さ
れ て い る と は 言 え な い の が 現 状 で あ る が ,温 泉 ボ ー リ ン グ 等 の 深 層
ボーリング資料等をもとに概略が推定されている.それによると,
中 古 生 層( 美 濃 帯 の チ ャ ー ト や 砂 岩・泥 岩 )や 花 崗 岩( 白 亜 紀 後 期
に 貫 入 )を 基 盤 と し て そ の 上 位 を 中 新 統( 平 野 南 西 部 で 砂 岩 泥 岩 互
層を主とし凝灰岩を伴う浅海成層として広域に分布(高田ほか,
1979 )が 覆 い ,東 海 湖 形 成 時 に 堆 積 し た 東 海 層 群 及 び そ れ に 続 く 第
四 紀 以 降 の 地 層( 弥 富 累 層 ,第 三 礫 層 ,海 部 累 層 ,第 二 礫 層 ,熱 田
層 ,第 一 礫 層 ,濃 尾 層 ,南 陽 層 )が 堆 積 し て い る .こ れ は 濃 尾 傾 動
地塊とともに氷河性の海面変動により形成されたと推定されてい
る ( 図 7. 2) .
濃 尾 平 野 は 西 縁 を 養 老 断 層 系 ,南 縁 を 天 白 河 口 断 層 に 限 ら れ て お
り ,平 野 下 に は 養 老 断 層 系 に 平 行 な 伏 在 断 層 が ボ ー リ ン グ 資 料 か ら
推 定 さ れ て い る .こ れ ら の 内 ,岐 阜 - 宮 線 ,大 藪 - 津 島 線 ,大 垣 -
今 尾 線 に つ い て は ,平 成 9 年 度 に 実 施 さ れ た「 尾 張 西 部 地 域 活 断 層
調 査 報 告 書 」( 愛 知 県 , 1998 ) の 結 果 , い ず れ も 累 積 性 を 持 つ 大 き
な 上 下 変 位 が 無 い こ と が 確 認 さ れ て い る .こ れ ら の 構 造 線 を 横 切 っ
て 行 わ れ た 平 成 11 年 度 に 行 わ れ た P 波 反 射 法 地 震 探 査 の 結 果 に お
い て も ,基 盤 上 の 堆 積 層 に 明 瞭 な 不 連 続 は 認 め ら れ な か っ た .ま た ,
養 老 断 層 系 の 南 東 延 長 方 向 に は 伊 勢 湾 断 層 が ,天 白 河 口 断 層 の 南 西
延 長 方 向 に は 四 日 市 - 桑 名 断 層 系 が 存 在 す る ( 愛 知 県 , 2002 ) .
89
図 7. 1
濃 尾 平 野 の 地 形 概 念 図 ( 坂 本 , 1984 )
90
図 7. 2
7. 3
濃 尾 傾 動 地 塊 の 断 面 図 ( 牧 野 ほ か , 19 90 )
濃尾平野の地盤沈下の状況
濃 尾 平 野 に お け る 地 盤 沈 下 が 注 目 さ れ た の は 1959 ( 昭 和 34) 年
秋 の 伊 勢 湾 台 風 の 被 災 か ら で あ る .そ の 後 地 域 を 漸 次 拡 大 し ,1973
~ 74 年 に ピ ー ク を 迎 え た が , 地 下 水 揚 水 の 規 制 強 化 等 に よ り 現 在
で は 沈 静 化 傾 向 に あ る . 本 地 域 で 1972 ~ 1999 年 の 最 大 累 積 沈 下 量
は 約 1.8m に 達 し , 沈 下 域 は ほ ぼ 全 域 に 及 ぶ ( 図 7.3 ) .
91
図 7.3
197 2~ 199 9 年 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動
92
7.4
地盤沈下のメカニズム
一 般 に 地 盤 沈 下 の 原 因 は ,( a)軟 弱 な 地 盤 の 自 然 圧 密 に よ る 沈 下 ,
(b ) 断 層 な ど の 活 動 に よ る 地 盤 変 動 に 伴 う 沈 下 ,(c) 工 業 用 水 ・ 農 業
用 水・消 雪 用 水・冷 房 用 水 等 の 地 下 水 の 過 剰 揚 水 に よ る 沈 下( 図 7.4).
(d ) 天 然 ガ ス の 汲 み 上 げ に よ る 沈 下 .( e)建 築 物 な ど の 表 面 載 荷 重 に
よ る 軟 弱 地 盤 の 局 所 的 沈 下 な ど で あ る と 考 え ら れ て い る .( a) と (b )
は 自 然 的 原 因 で あ り , (c ) ・ (d) ・ (e ) は 人 間 活 動 が 原 因 で あ る .
松 澤( 1978 )は 濃 尾 平 野 で は 濃 尾 傾 動 地 塊 の 傾 動 運 動 に よ る 地 盤
の傾動沈下があることを指摘した.
図 7. 4
地 下 水 汲 み 上 げ に よ る 地 盤 沈 下 ( 千 葉 県 庁 , 201 0 )
93
7.5
7.5. 1
GIS に よ る 地 盤 沈 下 の 解 析
水準測量データ
水 準 測 量 デ ー タ は 東 海 三 県 地 盤 沈 下 調 査 会 (愛 知 県 , 三 重 県 , 岐
阜 県 ,国 土 地 理 院 ,国 交 省 中 部 地 方 整 備 局 ,名 古 屋 市 ,名 古 屋 港 管
理 組 合 , 四 日 市 港 管 理 組 合 ) に よ る 1960 ~ 1999 年 の 水 準 測 量 成 果
を 用 い て い る . 水 準 測 量 成 果 の 観 測 点 は , 濃 尾 平 野 全 域 で 1600 カ
所 近 く に の ぼ る ( 図 7.5 ) .水 準 測 量 デ ー タ の 領 域 は 北 緯 34°50′ ~
35°30 ′ , 東 経 136° 30′ ~ 137 °08 ′ の 範 囲 に 及 ぶ .
7.5. 2
解析方法
東 海 三 県 地 盤 沈 下 調 査 会 に よ る 1960 ~ 1999 年 の 水 準 測 量 成 果 に
対 し て ,約 千 数 百 カ 所 の 観 測 点 を 地 理 コ ー ド 化 し ,各 地 点 で の デ ー
タ特性を調べて有効性などを検証した上で濃尾平野における地盤
沈下のデータベースを作成した.
ま た , GIS ソ フ ト ウ ェ ア GRASS に 含 ま れ る 二 次 元 の 張 力 付 き ス プ
ラ イ ン 補 間 法 を 用 い て ,各 観 測 地 点 の 地 盤 高 変 化 量 か ら ,各 年 間 の
変 動 量 に つ い て 二 次 元 の 面 (ラ ス タ ) デ ー タ を 作 成 し 等 変 化 量 分 布
を得た.
さ ら に ,各 年 間 に 対 し て 得 た 地 盤 高 変 動 の 空 間 分 布 を 数 年 ~ 数 十
年 に わ た っ て 統 合 化 す る こ と に よ り ,そ れ ぞ れ の 期 間 に お け る 累 積
変 動 量 を 求 め た ( 福 山 , 2004) .
94
図 7. 5
濃 尾 平 野 全 域 観 測 点 ( 伊 藤 ・ 福 山 , 20 02 )
95
7.5. 3
経年変化
図 7.6~ 7.10 に ,1975 ~ 1979 年 ,1980 ~ 1984 年 ,1985 ~ 1989 年 ,
1989 ~ 1993 年 ,1994~ 1998 年 の 各 4 年 間 に お け る 地 盤 高 の 変 動 量
分布を示す.
4 年 間 に お け る 地 盤 高 の 変 動 量 分 布 は 1975 か ら 1998 年 ま で の 各
年 間 の 地 盤 高 変 動 の 空 間 分 布 を 4 年 に わ た っ て 統 合 化 し て ,求 め た
累積変動量である.
1975 ~ 1979 年 の 図 7.6 を 見 る と , 1980 年 代 以 前 は か な り の 沈 降
が 続 い て い る 地 域 が あ る .木 曽 三 川 や 庄 内 川 の 河 口 ,名 古 屋 港 周 辺
で 広 い 範 囲 で 高 い 沈 下 量 を 示 し て い る .そ の 一 方 で ,急 激 な 膨 張 が
生 じ て い る 地 域 も 存 在 し て い る .四 日 市 市 の 東 部 や 名 古 屋 の 西 部 な
ど の 地 域 で 著 し い 隆 起 を 示 し て い る . こ れ は 1970 年 代 前 半 か ら 各
行 政 機 関 の 地 下 水 揚 水 の 規 制 強 化 等 に よ り ,地 下 水 位 の 回 復 に よ る
急激な膨張が発生していると考えられる.
1980 ~ 1989 年 の 図 7.7 と 図 7.8 に よ れ ば , 1980 年 代 以 降 は , 沈
降 は 全 体 的 に 鈍 化 の 傾 向 を た ど り ,養 老 断 層 以 南 な ど で は 緩 や か な
隆 起 が 起 こ っ て い る .し か し ,依 然 と し て 木 曽 三 川 河 口 か ら 輪 中 地
帯にかけて沈降が持続している.
1989 ~ 1998 年 の 図 7.9 と 図 7.10 に 示 す よ う に ,1990 年 代 に な る
と ,名 古 屋 な ど の 都 市 域 で も 隆 起 が 認 め ら れ ,比 較 的 大 き な 沈 降 は ,
以前沈降が激しかった地域からその周辺部に移動する傾向がある.
各 4 年 間 の 地 盤 高 変 動 図 を 検 討 し て み る と ,濃 尾 平 野 で 持 続 的 な
沈 下 域 ・ 隆 起 域 が 存 在 し て い る が ,年 を 経 る ご と に 沈 降 量 と 隆 起 量
の ど ち ら も 減 尐 す る 傾 向 が あ る .最 も 沈 降 の 激 し い 地 域 が 木 曾 三 川
の 河 口 付 近 か ら ,北 部 の 中 流 域 付 近 へ 次 第 に 移 行 し て い る こ と も 見
ら れ て い る .今 後 は ,詳 細 な 定 量 的 検 討 や 原 因 究 明 は 大 き な 課 題 に
96
なっている.
地 盤 沈 下 と は 自 然 的 ・ 人 為 的 な 要 因 に 分 け て い る .自 然 的 要 因 と
は軟弱な地盤の自然圧密による沈下や断層などの活動による沈下
を 指 摘 す る が ,地 下 水 の 大 量 揚 水 な ど に よ る 人 為 的 要 因 に よ る 地 盤
沈 下 も あ る . 濃 尾 平 野 で は , 19 72 ~ 1999 年 の 最 大 累 積 沈 下 量 は 約
1.8m に 達 し ,沈 下 域 は ほ ぼ 全 域 に 及 ぶ .こ れ ほ ど 大 き な 地 盤 沈 下 の
最 も 重 要 な 要 因 は ,軟 弱 な 堆 積 層 の 自 然 圧 密 や 濃 尾 傾 動 盆 地 運 動 に
よ る 自 然 的 原 因 だ け と し て 説 明 が つ か な く ,こ れ は 戦 後 の 高 度 経 済
成 長 な ど と 共 に 地 下 水 使 用 量 の 急 増 が あ り ,地 下 水 の 過 剰 汲 み 上 げ
に よ る 圧 密 収 縮 の 加 速 で あ る と 考 え ら れ て い る ( 福 山 , 2003) .
97
7.5. 4
地盤沈下と土地利用変化
図 7.11 は , 中 部 圏 に お け る 1997 年 の 宅 地 利 用 動 向 調 査 を も と
に 作 成 さ れ た 濃 尾 平 野 に お け る 土 地 利 用 図 で あ る .今 回 の 解 析 で は
土 地 利 用 状 況 を 簡 潔 に 示 す た め に ,森 林 ,農 地 ,工 業 用 地 ,住 宅 地
域,水系,道路の 6 種類に分類している.
図 7.12 は , 土 地 利 用 の 各 カ テ ゴ リ と 地 盤 高 変 動 量 の 関 係 を 示 し
て い る .こ の 図 に 示 す よ う に , 水 域 や 農 地 で 沈 降 量 が 大 き く ,住 宅
域 や 工 業 用 地 で は 沈 下 は 相 対 的 に 小 さ い 傾 向 が 見 ら れ た .水 域 で 比
較 的 大 き な 沈 降 量 を 示 す 原 因 と し て は ,基 礎 工 事 が 深 く 打 ち 込 ま な
い堤防等の表面載荷重による軟弱地盤の沈下であると考えられる.
そ れ に 対 し て 工 業 用 地 で は ,一 般 に 基 礎 工 事 が 地 盤 沈 下 に 関 係 の
な い( 地 下 水 位 の 変 動 の 影 響 を 受 け な い )支 持 層 に 到 達 さ せ ,深 く
打ち込まれ,構造物を支えるため沈降量は比較的小さい.しかし,
こ う し た 地 点 を 含 む 周 囲 の 地 盤 が 沈 下 す る が ,支 持 層 で 支 え ら れ て
い る 建 物 は 沈 下 し な い た め ,周 辺 地 盤 よ り 相 対 的 に 高 い 位 置 に な る
抜上がりを起こすと考えられる.
98
図 7.6
197 5 ~ 197 9 年 の 4 年 間 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動
99
図 7.7
198 0 ~ 198 4 年 の 4 年 間 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動
100
図 7.8
198 5 ~ 198 9 年 の 4 年 間 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動
101
図 7.9
19 8 9~ 199 3 年 の 4 年 間 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動
102
図 7.1 0
19 94 ~ 19 9 8 年 の 4 年 間 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動
103
図 7.1 1
濃 尾 平 野 に お け る 19 97 年 の 土 地 利 用 ・ 被 覆 分 布
(福 山 , 20 03 )
104
図 7.1 2
濃 尾 平 野 で 197 7 ~ 19 97 年 の 各 土 地 利 用 の 地 盤 高 変 動
(伊 藤 ・ 福 山 , 20 02 )
105
8. 考 察
8.1
干 渉 SAR の 大 気 遅 延
各 JERS -1 SAR 観 測 日 の 天 気 は , 1998 年 5 月 6 日 は 曇 り で , 1998
年 6 月 19 日 は 雤 で あ る .両 日 の 水 蒸 気 分 布 は 均 一 で は な く ,図 6 .1
の差分干渉位相に水蒸気分布による大気遅延が大きな影響を与え
ている可能性がある.
8.2
類似天気図法
手 順 2) で 類 似 の 天 気 図 を 見 出 す に は , 主 に 等 圧 線 の 空 間 分 布 と
梅雤前線の位置を比較する.
大 気 中 に 含 ま れ て い る 水 蒸 気 量 は ,温 度 に よ っ て 限 界 が あ り ,最
大 量 が 決 ま る . 手 順 3) と 手 順 4) で は 気 象 要 素 を 比 較 す る 際 に ,
各気象要素のうち気温が最も重要である.
手 順 3)で ,地 表 観 測 デ ー タ を 比 較 す る と き に , JERS-1 デ ー タ 取
得 日 と そ れ ぞ れ の 手 順 2) で 見 出 し た 日 の 気 温 ・ 海 面 気 圧 ・ 水 蒸 気
圧 の 差 は 変 化 が 大 き く( 表 6.1,表 6.2),GPV-MSM デ ー タ の 類 似 す
る 日 を 見 出 し に く い .気 温 差 5 ℃ ,海 面 気 圧 差 5hPa を 閾 値 に 設 定 す
る.この閾値は経験値である.
手 順 4)で 高 層 観 測 デ ー タ を 比 較 す る と ,1998 年 5 月 6 日 に 対 し
て ,2004 年 5 月 27 日 の 各 気 象 要 素 が 類 似 し ,2004 年 5 月 2 日 も 類
似 し て い る ( 表 6.3) . 同 様 に 1998 年 6 月 19 日 に 対 し て , 2005 年
7 月 12 日 と 2004 年 6 月 26 日 の 気 象 状 態 も 類 似 す る( 表 6 .4).最
も 類 似 す る 日 を 選 択 す る た め ,四 日 市 の 地 表 面 気 象 観 測 デ ー タ と 浜
松のラジオゾンデの高層観測データを参考にした.
手 順 5) で 最 類 似 日 を 決 定 す る と き に , 風 向 ・ 風 速 デ ー タ を 参 考
にした.
106
一 方 ,衛 星 SAR デ ー タ と GPV-MSM デ ー タ の 取 得 時 刻 は 決 ま っ て い
る た め ,同 じ 日 に 同 じ 場 所 で 取 得 す れ ば ,取 得 時 間 の 差 も 約 一 時 間
半 が 存 在 し て い る . こ の 取 得 時 間 の 差 は , GPV- MSM デ ー タ だ け で は
な く ラ ジ オ ゾ ン デ の デ ー タ ・ GANAL の デ ー タ で も 存 在 し て い る . 以
前 の 研 究 に は ,そ の 時 間 差 に よ っ て 気 象 条 件 が 変 化 せ ず ,異 な っ た
時 刻 の 大 気 物 理 量 が 類 似 す る と 仮 定 し た ( 島 田 ,1999; 大 塚 ・ 小
林 ,2002).し た が っ て ,詳 細 な 三 次 元 気 象 観 測 デ ー タ を 用 い て SAR
電 波 の 大 気 遅 延 の 影 響 を 評 価 す る の に ,類 似 法 は 一 つ の 重 要 な 方 法
といえよう.
本 研 究 で は ,大 気 の 屈 折 率 を 定 め る 気 圧 ,温 度 ,水 蒸 気 圧 な ど の
気 象 要 素 を 重 要 な パ ラ -メ ー タ と し て , JERS -1 の 観 測 日 の 気 象 要 素
と 最 も 類 似 し て い る GPV -MSM デ ー タ の 日 を 見 出 し た .そ の た め ,選
択 し た GPV-MSM デ ー タ と JERS -1SAR デ ー タ の 取 得 時 間 の 差 は 約 5 年
間 で あ る が ,GPV- MSM デ ー タ は ,JERS -1 デ ー タ 取 得 日 の 気 象 条 件 を
反 映 し 得 る .類 似 天 気 図 法 の 精 度 を 高 め る に は 今 後 の 研 究 が さ ら に
必要である.
8.3
水蒸気の影響評価
GPV-MSM 水 蒸 気 デ ー タ か ら 両 観 測 日 の 地 上 面 か ら 300hPa 高 度 ま
で の 可 降 水 量 の 分 布 を 定 量 的 に 再 現 し た ( 図 6.7, 図 6.8) . 2004
年 5 月 27 日 の 水 蒸 気 分 布 は 東 南 か ら 北 部 に 増 加 し て い る . 2005 年
7 月 12 日 の 水 蒸 気 分 布 は 西 北 部 か ら 東 南 部 に 増 加 す る 傾 向 が あ る .
2 つの観測時期における可降水量の差は空間的に非常に不均一で,
2005 年 7 月 12 日 の 空 間 分 布 の パ タ ー ン と 類 似 す る . 水 蒸 気 量 が 多
い 2005 年 7 月 12 日 は ,水 蒸 気 分 布 に よ る 大 気 遅 延 に 大 き な 影 響 を
与 え て い る と 推 定 さ れ る .可 降 水 量 1 .5mm は 大 気 遅 延 量 1cm に 値 す
107
る ( 藤 原 ほ か , 1998) . 図 6. 8 の 研 究 地 域 で の 可 降 水 量 分 布 の 最 大
差 は 6kg/m 2 (6mm) に な る . 即 ち , 水 蒸 気 水 平 分 布 の 違 い に よ っ て 約
40mm の 大 気 遅 延 量 を も た ら し て い る 可 能 性 が あ る .
観 測 日 に お け る 各 気 圧 面 で の 比 湿 と 屈 折 指 数 の 分 布 は ,ほ ぼ 一 致
し て お り ,高 度 変 化 が あ り ,局 所 的 な 水 平 方 向 の 変 化 も 著 し く 発 生
し て い る ( 図 6. 9,図 6.1 1) .
比湿と屈折指数における鉛直構造の二日間の差における高度変
化 は 簡 単 な 線 形 関 係 に は な く ,非 常 に 複 雑 な 変 化 を 示 し て い る( 図
6. 10,図 6 .12 ) .
各観測日の比湿と屈折指数は高度によって減尐する傾向があり
( 図 6.9, 図 6.11 ) , 両 日 の 差 は , 高 層 で は 決 し て 小 さ い と は 言 え
な い .600 hPa 面 で は ,両 日 の 比 湿 差 は 約 6g/kg で ,屈 折 指 数 差 が 約
25NU に な る と ,地 表 面 で の 値 は ほ ぼ 同 じ に な る .両 日 の 比 湿 差 と 屈
折 指 数 差 は 500hPa 面 の 値 も 小 さ く な く ,無 視 で き な い .こ れ は 2005
年 7 月 12 日 に お け る 比 湿 と 屈 折 率 の 高 度 に よ る 減 尐 率 が , 2004 年
5 月 27 日 と 一 致 し な い た め で あ る .
本 研 究 で は ,900hPa 以 高 の 大 気 の 鉛 直 変 化 は 考 慮 し な い が ,標 高
が 高 い 山 地 を 対 象 と す る 大 気 遅 延 の 研 究 に と っ て は ,こ れ ら の 結 果
は重要であろう.
一 方 ,水 平 方 向 で は ,比 湿 と 屈 折 指 数 に お け る 鉛 直 構 造 の 二 日 間
の 差 は , 地 表 面 か ら 700hPa 面 に か け て 変 化 が 大 き い こ と が 示 さ れ
る ( 図 6. 10, 図 6.12 ) . GPV -MSM の デ ー タ の 解 析 か ら , 両 日 の 水 蒸
気 の 水 平 分 布 に 主 な 影 響 を 与 え て い る の は ,700hPa 高 度 以 下 の 大 気
中 水 蒸 気 で ,両 日 の 水 蒸 気 量 の 分 布 は 空 間 的 に 非 常 に 不 均 一 で あ る .
し た が っ て ,水 蒸 気 の 水 平 分 布 変 化 だ け で は な く ,本 研 究 地 域 で
は西北部の小さい山地の標高による大気遅延も差分干渉位相に大
108
きな影響を与える.
研究地域で 1 シーンを通しての水蒸気水平分布による大気遅延の
最 大 偏 差 は 約 38mm で あ り , 東 南 で 著 し く 大 き い こ と が 示 さ れ ( 図
6. 13) , 可 降 水 量 の 差 の 空 間 分 布 パ タ ー ン ( 図 6. 8) と よ く 類 似 し
ている.
研 究 地 域 の 西 北 で 地 形 標 高 に よ る 大 気 遅 延 量 も 発 生 し , 海 抜 0m
を 位 相 基 準 面 と し た と き , 海 抜 898m の 山 地 で 推 定 し た 大 気 遅 延 は
約 53mm で あ る ( 図 6 .14 ) .
し た が っ て ,図 6.1 の 西 北 部 で の 位 相 変 化 は ,標 高 変 化 に よ る 大
気 遅 延 ,東 南 部 は 水 蒸 気 の 水 平 変 化 に 伴 う 大 気 遅 延 に よ っ て 生 じ て
いることが考えられる.
GPV-MSM デ ー タ を 用 い て , 観 測 日 の 水 蒸 気 の 空 間 分 布 を 分 析 し ,
水 蒸 気 に よ る 大 気 遅 延 を 定 量 的 に 評 価 で き る こ と を 示 し て き た .図
6.16 に 示 す よ う に ,大 気 遅 延 補 正 は 効 果 的 で あ る .し か し ,西 北 部
で 位 相 の 残 留 が 見 ら れ る .そ の 原 因 と し て は 以 下 の 3 つ が 考 え ら れ
る . 1 ) 地 盤 沈 下 が 発 生 す る 可 能 性 が あ る . 1998 年 の 水 準 測 量 に よ
る 地 盤 高 の 変 化 量 分 布 ( 図 8.1 ) は 西 北 部 で 地 盤 沈 下 が 発 生 す る こ
と を 示 し て い る .2)JERS -1 の 観 測 日 と 見 出 し た 日 の GPV-MSM デ ー タ
の 気 象 要 素 が 近 似 し て い る が ,あ る 程 度 誤 差 が 存 在 し て い る た め で
あ る .3)GPV -MSM デ ー タ の 精 度 は JERS -1 SAR デ ー タ と 比 べ て 解 像 度
が粗いためでと考えられる.
気 象 庁 は 2006 年 3 月 か ら 地 表 面 は 水 平 格 子 間 隔 約 5 km メ ッ シ ュ ,
高 層 各 等 圧 面 は 約 10 km メ ッ シ ュ で GPV-MSM デ ー タ を 提 供 し て い る .
今 後 ,も っ と 詳 細 な GPV -MSM デ ー タ を 用 い れ ば ,水 蒸 気 分 布 の 影 響
の評価精度を高めることができるであろう.
109
図 8.1
1998 年 の 水 準 測 量 に よ る 地 盤 高 の 変 化 量 分 布 図
110
8.4
水準測量の補完検討
衛 星 干 渉 SAR デ ー タ を 用 い た InSAR 解 析 は 「 地 形 が 平 坦 」 「 沈
下 地 域 が 空 間 的 に あ る パ タ ー ン (等 変 動 曲 線 が 大 き さ 1km 以 上 く ら
い の 楕 円 形 等 )」
「 沈 下 速 度 が あ る 程 度 大 き い ( 年 間 数 cm 程 度 以 上 )」
等 の 条 件 を 満 た す 場 合 ,InSAR に よ り 地 盤 沈 下 が 十 分 に 観 測 で き る
ことがわかってきた. 濃尾平野はこれらの条件をすべて満たして
お り ,地 盤 の 変 動 分 布 や 変 動 量 を 把 握 す る こ と が で き ,従 来 の 水 準
測量等による地盤沈下監視の補完的な手法として期待できる.
し た が っ て ,濃 尾 平 野 は ,人 工 衛 星 干 渉 SAR デ ー タ を 用 い た 地 盤
沈下の新たな研究調査手法のフィールドとしてきわめて有効な地
域の一つと考えられる.
衛 星 画 像 に よ る 地 表 面 変 動 解 析 の 特 徴 は ,高 精 度 で 詳 細 な 地 盤 変
動 を 検 出 す る こ と が で き ,広 域 の 観 測 が 可 能 で き る こ と が 大 き な 特
徴である.
面 的 な 補 完 法 と い う 点 で は ,高 密 度 画 像 が 地 表 面 の 変 動 傾 向 を 詳
細 し ,地 盤 変 動 の 中 心 や 範 囲 を 容 易 に 推 定 可 能 で あ る .今 後 ,本 研
究 を 生 か し て ,四 日 市 に お け る 西 北 部 や 伊 勢 湾 岸 東 南 部 の 水 準 点 が
な い 場 所 が ど の よ う な 変 動 を し て い る か ,そ れ が 広 域 の 変 動 と 関 連
があるかを補完することができる.
時 間 的 補 完 と い う 点 で は ,過 去 に 撮 影 済 の 蓄 積 さ れ た 画 像 を 解 析
す る こ と に よ り 長 期 の 履 歴 を 観 測 す る こ と が 可 能 で あ る .ま た ,条
件が整えば,短期間の変動解析も可能である.
従 来 の 水 準 測 量 に よ る 地 盤 沈 下 推 定 量 と ,InSAR デ ー タ 解 析 か ら
求 め ら れ る 地 盤 沈 下 量 と を 比 較 検 討 す る こ と が で き れ ば ,InSAR に
よ る 推 定 精 度 の 評 価 だ け で な く ,水 準 測 量 の 精 度 や 分 解 能 に つ い て
も言及できる.
111
9. 結 論
本 研 究 で は 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 時 期 の 衛 星 干 渉 SAR の
観 測 デ ー タ に 対 し て , GPV- MSM デ ー タ を 用 い て 水 蒸 気 分 布 の 影 響 を
評価する方法について検討した.
GPV-MSM の 水 蒸 気 分 布 を 用 い て 大 気 水 蒸 気 分 布 の 影 響 を 除 去 す れ
ば,これまで検出が困難であった微小な地盤沈下も検出できる.
類似天気図法は,詳細な三次元気象データの存在しない時期の
JERS -1 な ど の 衛 星 干 渉 SAR に 対 し て 水 蒸 気 の 影 響 評 価 に 有 効 に 利
用できる.
GPV-MSM の 水 蒸 気 デ ー タ か ら 推 定 し た 大 気 遅 延 量 の 分 布 は , 空 間
的 に 非 常 に 不 均 一 で , 研 究 対 象 地 域 の JERS-1 SAR の 1 シ ー ン で 大
気 遅 延 量 水 平 分 布 の 最 大 差 は 約 38mm と な る こ と が 示 さ れ た . 干 渉
SAR に よ る 地 盤 変 動 の 検 出 精 度 を 高 め る た め に 水 蒸 気 の 水 平 変 化 を
評価することが重要である.
GPV-MSM デ ー タ を 適 用 し て 求 め た 大 気 遅 延 量 と 差 分 干 渉 SAR 位 相
の 空 間 分 布 の バ タ ー ン と 類 似 し て い る .ま た ,GPV- MSM デ ー タ の SAR
干渉処理への有効性を確認した.
GPV-MSM デ ー タ が 提 供 さ れ る よ う に な っ た 2003 年 以 後 の ALOS 衛
星 な ど の 干 渉 SAR に 対 し て も,本 研 究 の 成 果 を 生 か す こ と が で き る .
本 研 究 で は 各 水 準 点 の 位 置 を 地 理 コ ー ド 化 し , GIS で 作 成 し た 地
盤高のラスターデータを用いた地盤高変動の経年変化や土地利用
と の 直 接 的 な 関 係 な ど に つ い て の 解 析 し か 行 え な か っ た .研 究 地 域
の 土 地 利 用・被 覆 の 各 カ テ ゴ リ と 地 盤 高 の 変 動 量 の 関 係 を 検 討 し た .
本 研 究 地 域 に お い て ,確 か に 地 盤 沈 下 は 沈 静 化 の 傾 向 に あ る こ と
が わ か っ た .場 所 に よ っ て は ,地 下 水 位 の 回 復 に よ る 除 荷 膨 張 や 濃
尾傾動盆地運動によって地盤の上昇している地域である.
112
こ の 地 域 の 地 下 構 造 は 圧 密 の 最 終 期 に い た っ て い な い .今 な お 地
盤 沈 下 が 緩 や か な が ら 進 行 し て い る 地 域 で あ り ,再 び 過 剰 な 地 下 水
揚水などを行えば大規模な地盤沈下が起こる可能性が高いと考え
ている.
本 研 究 の 成 果 を 生 か し て ,従 来 の 水 準 測 量 に よ る 地 盤 沈 下 推 定 量
と ,InSAR デ ー タ 解 析 か ら 求 め ら れ る 地 盤 沈 下 量 と を 比 較 検 討 し て ,
InSAR に よ る 推 定 精 度 の 評 価 だ け で な く ,水 準 測 量 の 精 度 や 分 解 能
に つ い て も 言 及 で き る . さ ら に , InSAR 解 析 結 果 は ,水 準 測 量 等 が
できない地域でのリモートセンシングによる地盤沈下量の推定も
可 能 と な る .こ れ に よ り ,従 来 の 水 準 測 量 成 果 に 加 え て ,よ り 有 機
的で総合的な地盤沈下監視が実現できると考えられる.
本 研 究 の 成 果 を 生 か す こ と が で き る .つ ま り ,干 渉 SAR に よ る 地
殻 変 動 検 出 の 精 度 を 高 め る に は ,大 気 中 の 水 蒸 気 の 空 間 分 布 や そ の
変 化 に よ る SAR 伝 播 屈 折 の 遅 延 量 を 定 量 的 に 評 価 す る 必 要 が あ る が ,
本 研 究 は こ れ に 対 し て 最 新 衛 星 の 干 渉 SAR デ ー タ 解 析 の 精 度 向 上 に
大きな貢献をなし得るものと考えられる.
113
謝辞
本 研 究 の 全 過 程 を 通 じ ,懇 切 丁 寧 な る ご 指 導 ,ご 鞭 撻 の ほ ど を 頂
きました三重大学大学院生物資源学研究科の福山薫教授に深く感
謝するとともに,心から御礼申し上げます.
研究に対するご指導や御助言をいただきました立命館アジア太
平 洋 大 学 の サ ン ガ・ン ゴ イ・カ ザ デ ィ 教 授 に 心 よ り 深 く 感 謝 を 申 し
上げます.
本 研 究 は ,高 知 女 子 大 学 の 大 村 誠 教 授 及 び 三 重 大 学 大 学 院 生 物 資
源学研究科博士後期課程大学院生伊藤太子氏の多大な協力をいた
だき,心より深く感謝を申し上げます.
三重大学大学院生物資源学研究科の諸先生方に有益な御意見や
励ましをいただき,厚く御礼を申し上げます.
三 重 大 学 生 物 資 源 学 部 環 境 解 析 学 研 究 室 の 院 生 ,学 生 の 皆 様 に も
有 益 な ご 意 見 ,ご 協 力 を い た だ き ,心 よ り 深 く 感 謝 を 申 し 上 げ ま す .
合 成 開 口 レ ー ダ の デ ー タ 解 析 に は ,宇 宙 航 空 研 究 機 構 地 球 観 測 利
用 推 進 セ ン タ ー の 島 田 政 信 に よ り , 開 発 さ れ た SIGMA- SAR
processor を 使 用 さ せ て い た だ き ま し た . こ こ に 心 よ り 深 く 感 謝 の
意を表します.
日 本 へ 留 学 し て よ り 12 年 の 歳 月 が 流 れ た . 長 期 間 に わ た り 研 究
を 続 け さ せ て く れ た 両 親 ,家 族 ,親 戚 に 最 後 に 心 よ り 深 く 感 謝 を 申
し上げます.
114
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