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博 士 論 文 地盤環境変動評価への InSAR と GIS の 適 用 に 関 す る 研 究 平 成 23 年 3 月 三重大学大学院生物資源学研究科 生物圏保全科学専攻 鄭 敏学 目 次 要旨 1. ⅴ はじめに 1 1.1 研究背景 1 1.2 研究目的 4 2. 地盤環境変動の研究 5 2.1 地盤環境変動の研究の歴史 5 2.2 最近の地盤環境変動の研究及び課題 6 3. 合 成 開 口 レ ー ダ と 干 渉 SAR 3.1 9 リモートセンシングと合成開口レーダ 9 3.1.1 リモートセンシング 9 3.1.2 センサ 10 3.1.3 合成開口レーダの概要 12 3. 2 地 球 資 源 衛 星 1 号 JERS-1 14 3. 3 合成開口レーダの基礎 16 3.3.1 パルスの性質 16 3.3.2 レンジ分解能とパルス圧縮 18 3. 3.2.1 レンジ分解能 18 3. 3.2.2 パルス圧縮 19 3.3.3 アジマス分解能・合成開口・アジマス圧縮 22 3. 3.3.1 アジマス分解能 22 3. 3.3.2 合成開口 23 3. 3.3.3 アジマス圧縮 26 3.3.4 再生処理 27 ii 3. 4 干 渉 SAR 3.4.1 30 干 渉 SAR の 原 理 30 3.4.1.1 軌道位相の推定 35 3.4.1.2 地形位相の推定 36 3.4. 2 干 渉 SAR に よ る 地 形 標 高 の 測 定 37 3.4.3 干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 の 測 定 40 3. 5 4. 干 渉 SAR に お け る 誤 差 要 因 水蒸気影響の解析方法 41 42 4.1 類似天気図法 42 4.2 可降水量の計算方法 44 4.3 大気遅延量 46 4.3.1 大気遅延の基本原理 46 4.3.2 大気遅延量の推定方法 48 5. 解析データ 51 5.1 メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV-MSM デ ー タ 51 5.2 衛星データ 52 5.3 高層気象観測年報データ 57 6. 地 盤 変 動 解 析 へ の InSAR の 適 用 59 6.1 干渉画像 59 6.2 GPV -MSM デ ー タ の 選 択 59 6.3 水蒸気分布の復元 72 6.4 大気遅延量の推定 83 6.5 水蒸気による大気遅延の補正 83 iii 7. 濃尾平野における地盤変動の状況 88 7.1 濃尾平野の概要 88 7.2 濃尾平野の地形・地質 88 7.3 濃尾平野の地盤沈下の状況 91 7.4 地盤沈下のメカニズム 93 7.5 GIS に よ る 地 盤 沈 下 の 解 析 94 7.5.1 水準測量データ 94 7.5.2 解析方法 94 7.5.3 経年変化 96 7.5.4 地盤沈下と土地利用変化 98 8. 考察 106 8.1 干 渉 SAR の 大 気 遅 延 106 8.2 類似天気図法 106 8.3 水蒸気の影響評価 107 8.4 水準測量の補完検討 111 9. 結論 112 謝辞 114 参考文献 115 iv 要旨 地 盤 環 境 ,特 に 地 盤 沈 下 関 係 の 従 来 の 研 究 は ,主 と し て 水 準 測 量 成 果 を 用 い た ,測 点 や 測 定 路 線 に 依 存 し た 解 析 に よ っ て な さ れ て き た .非 常 に 興 味 深 く 有 意 義 な も の で あ る が ,水 準 測 量 デ ー タ の 精 度 の問題や測量路線からはずれた地域での変動が評価できないなど, 多くの課題も残されている. 一 方 , マ イ ク ロ 波 を 用 い る SAR ( 合 成 開 口 レ ー ダ ) は 能 動 的 セ ン サ で あ り ,雲 な ど を 通 過 す る の で ,光 学 セ ン サ と 違 っ て 天 候 に 左 右 されずに,昼夜も関係なく観測ができる. こ の SAR 観 測 を 同 じ 場 所 に 対 し て 2 回 以 上 行 っ て そ の 差 を と る と , その干渉効果によって地殻表面の高さ変動の分布や変動量を詳細 に と ら え る こ と が で き る .近 年 ,地 盤 環 境 の 新 な 調 査 ・ 研 究 手 法 と して注目されてきた. 干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 の 研 究 は 将 来 的 に 極 め て 有 望 で あ る が , 課 題 も 残 さ れ て い る .例 え ば ,検 出 精 度 低 下 の 問 題 が あ る .そ の 原 因としては以下の 3 つが考えられる. ( a) 人 工 衛 星 の 軌 道 位 置 の 推 定 誤 差 ( b ) 標 高 デ ー タ ( DEM ) や 地 表 基 準 点 の 誤 差 ( c) 大 気 中 の 水 蒸 気 に よ る マ イ ク ロ 波 伝 播 屈 折 に 伴 う 遅 延 ( a)に 関 し て は ,2 つ の 時 期 の 人 工 衛 星 の 軌 道 間 の 位 置 関 係( 基 線 )と 地 表 の 対 象 物 の 位 置 か ら ,軌 道 の ず れ に 起 因 し て 発 生 す る 干 渉 縞 を 再 現 で き る の で ,こ れ を 利 用 し て 補 正 す る .(b) に 関 し て は , 高 精 度 の 標 高 デ ー タ が 存 在 す れ ば ,干 渉 SAR に よ る 地 表 変 動 検 出 に 十 分 な 分 析 能 と 精 度 が 得 ら れ る . (c) に 関 し て は ,観 測 域 上 空 の 水 蒸 気 の 空 間 分 布 を 推 定 し な け れ ば な ら な い た め ,詳 細 な 三 次 元 気 象 v デ ー タ が 必 要 で あ る .し か し ,JERS -1 衛 星 な ど の 干 渉 SAR 観 測 時 期 に 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 場 合 ,水 蒸 気 の 空 間 分 布 と そ の 変 化による大気遅延を定量的に評価することが大きな課題となる. 本 研 究 で は ,特 に( c )の 問 題 を 明 ら か に す る た め に ,詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 時 期 の 干 渉 SAR 観 測 デ ー タ に 対 し て ,水 蒸 気 分 布 の 影 響 を 評 価 す る 類 似 天 気 図 法 を 検 討 す る .次 に ,気 象 庁 メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV- MSM デ ー タ を 用 い て ,干 渉 SAR に 及 ぼ す 水 蒸 気 の 影 響 に 関 す る 評 価 に つ い て ,そ の 有 効 性 を 検 証 す る .さ ら に ,濃 尾 平 野 に お け る 過 去 の 水 準 測 量 成 果 を GIS に 適 用 し て ,こ の 地 域 の 地 盤 環 境 変 動 を 空 間 的 に 解 析 す る と と も に ,干 渉 SAR に よ る 地 表 面 変動解析の適用可能性を検討する. 本 研 究 で は , 濃 尾 平 野 に お け る JERS -1 衛 星 干 渉 画 像 を 例 と し て 地 盤 環 境 変 動 評 価 へ の 干 渉 SAR の 適 用 に 検 討 し た .研 究 対 象 地 域 の JERS -1 SAR の 1 シ ー ン で 大 気 遅 延 量 水 平 分 布 の 最 大 差 は 約 38mm と な る こ と が 示 さ れ た .差 分 干 渉 画 像 の 西 北 部 で の 位 相 変 化 は ,標 高 変 化 に よ る 大 気 遅 延 ,東 南 部 は 水 蒸 気 の 水 平 変 化 に 伴 う 大 気 遅 延 に よ っ て 生 じ て い る こ と が 考 え ら れ た . GP V- MSM デ ー タ を 適 用 し て 求 め た 大 気 遅 延 量 と 差 分 干 渉 SAR 位 相 の 空 間 分 布 の バ タ ー ン と 類 似 し て い る .補 正 し た 差 分 干 渉 画 像 で の 西 北 部 と 東 南 部 の 位 相 が 大 幅 に 減尐することも見出された. ま た ,濃 尾 平 野 に お け る 過 去 約 40 年 の 水 準 測 量 成 果 を 用 い た GI S 解 析 に よ り ,地 盤 沈 下 の 空 間 変 動 と そ の 経 年 変 化 を 評 価 し ,地 盤 変 動 の 原 因 を 追 及 し た .本 領 域 に お い て は 今 な お 持 続 的 な 沈 降 域 ・ 隆 起 域 が 存 在 し ,沈 降 の 激 し い 地 域 が 河 口 付 近 か ら そ の 周 辺 へ 移 行 し ていることが明らかになった.沈降域は農地水系に, 隆起域は住 宅域工業用地に分布する傾向が見られた. vi 本 研 究 で は ,高 精 度 GPV -MSM の 水 蒸 気 分 布 を 用 い れ ば ,マ イ ク ロ 波 の 大 気 遅 延 の 影 響 を 評 価 で き る 可 能 性 を 示 し た .類 似 天 気 図 法 は , 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ の 存 在 し な い 時 期 の JERS -1 衛 星 干 渉 SAR の 大 気 遅 延 の 評 価 に 有 効 利 用 で き る こ と を 示 し た .ま た ,水 準 測 量 成 果 の GIS 解 析 結 果 と の 比 較 検 討 に よ り , 人 工 衛 星 に よ る 干 渉 SAR 解 析 は ,水 準 測 量 等 が 不 可 能 な 地 域 で の 地 盤 環 境 変 動 量 を 推 定 で き る 可 能 性 を 示 し た .GPV -MSM デ ー タ が 提 供 さ れ る よ う に な っ た 2003 年 以 後 の ALOS 衛 星 な ど の 干 渉 SAR に 対 し て も , 本 研 究 の 成 果 を 生 か す こ と が で き る .つ ま り ,干 渉 SAR に よ る 地 殻 変 動 検 出 の 精 度 を 高 め る に は ,大 気 中 の 水 蒸 気 の 空 間 分 布 や そ の 変 化 に よ る SAR 伝 播 屈 折 の 遅 延 量 を 定 量 的 に 評 価 す る 必 要 が あ る が ,本 研 究 は こ れ に 対 し て 最 新 衛 星 の 干 渉 SAR デ ー タ 解 析 の 精 度 向 上 に 大 き な 貢 献 を な し 得るものと考えられる. vii 1. は じ め に 1.1 研究背景 濃尾平野における地盤環境変動でもっとも注目を集めるのは地 盤 沈 下 で あ る .日 本 で も 最 大 級 の 地 盤 沈 下 地 帯 で あ り ,特 に 1959 年 秋 の 伊 勢 湾 台 風 に よ っ て 注 目 を 集 め た ( 飯 田 , 1986 ) . そ の 後 地 域 を 漸 次 拡 大 し , 1973 ~ 74 年 に ピ ー ク を 迎 え た が , 地 下 水 揚 水 の 規 制強化等により現在では沈静化傾向にある .そのため,その研究 は 余 り 活 発 で は な い .し か し ,現 在 も 地 盤 沈 下 が 起 こ っ て い る 地 域 も 存 在 し ,隆 起 に せ よ 沈 降 に せ よ 生 活 の 基 盤 で あ る「 大 地 」の 変 動 は 地 域 住 民 に と っ て は 不 安 な 事 で あ り ,構 造 物 な ど に 被 害 を 与 え る ことも懸念される.地盤がどのような動きを示しているのか監視・ 解 析 行 う こ と で 自 然 か ら 人 間 が 受 け る 被 害 も ,人 間 が 自 然 に 与 え る 影 響 も 減 ら し て い く 必 要 が あ る .こ の 地 域 は も と も と 標 高 が 低 い た め ,わ ず か の 沈 降 に よ っ て も 洪 水 や 内 水 氾 濫 ,高 潮 な ど の 水 害 に た び た び 脅 か さ れ て き た .今 後 も 地 盤 沈 下 状 況 の 監 視 な ど を も と に し た 適 切 な 対 応 が 求 め ら れ て い る ( 福 山 , 2004 ) . 環境省によると日本における地盤沈下は大正初期の東京都江東 地区から問題となり始め,大阪西部では昭和初期に注目された. 1950 年 代 の 高 度 経 済 成 長 な ど と 共 に 地 下 水 使 用 量 の 急 増 が あ り ,沈 下 地 域 が 拡 大 し た .1955 年 以 降 に は ,地 盤 沈 下 が 大 都 市 域 ば か り で は な く ,新 潟 平 野 ,濃 尾 平 野 ,筑 後・佐 賀 平 野 を は じ め と し た 全 国 各 地 に お い て 認 め ら れ る よ う に な っ た .そ の た め ,さ ま ざ ま な 角 度 から地盤沈下について調査・研究が行われた. 最 近 の 地 盤 環 境 ,特 に 地 盤 沈 下 関 係 の 研 究 は 主 に GIS を 用 い た 地 盤 沈 下 の 環 境 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て の シ ミ ュ レ ー ト 解 析 が 多 い( 村 上 ほ か , 199 9; 周 ほ か , 2001 ) . 非 常 に 興 味 深 く 有 意 義 な も の で あ 1 る が ,水 準 測 量 デ ー タ の 精 度 の 問 題 や 測 量 路 線 か ら は ず れ た 地 域 で 変 動 の 評 価 で き な い な ど の 多 く の 課 題 も 残 さ れ て い る( 福 山 ,2005 ). 一 方 , SAR ( 合 成 開 口 レ ー ダ ) は , マ イ ク ロ 波 を 利 用 し , 対 象 物 に 直 接 接 触 す る こ と な く ,計 測 を 実 施 す る リ モ ー ト セ ン シ ン グ 技 術 の 一 種 で あ る .マ イ ク ロ 波 は 雲 な ど を 通 過 す る の で 航 空 写 真 と 違 っ て 天 候 に 左 右 さ れ る こ と な く 観 測 が で き る .ま た 光 学 セ ン サ と 違 い , マイクロ波を自ら送信するという能動的センサであるため目的に 最 適 な パ ラ メ ー タ ー( 波 長 )を 選 択 す る こ と が で き る .昼 夜 も 関 係 なく運用することが可能である. こ の SAR 観 測 を 同 じ 場 所 に 対 し て 2回 以 上 行 っ て , そ の 差 を と る ( 干 渉 )と 面 的 に 地 殻 表 面 の 高 さ 変 動 の 分 布 及 び 変 動 量 を 詳 細 に と ら え る こ と が で き る .近 年 多 く 成 果 が 得 ら れ た( 例 え ば ,Zebker and Goldstein,1986;Massonnet et al.,1 993;Fujiwara et al., 1998; Shimada and Hirosawa,2000 ) . 衛 星 に よ る 観 測 は , 地 盤 環 境 の 新 た な 調 査・研 究 手 法 と し て き わ め て 有 効 で あ る こ と が 注 目 さ れ て い る .従 来 の 水 準 測 量 等 に よ る 地 盤 沈 下 監 視 の 補 完 的 な 手 法 と し て 期 待が寄せられている. 干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 検 出 精 度 が 低 下 す る の は 以 下 の 3 つ 原 因 がある. ( a )人 工 衛 星 の 軌 道 位 置 の 推 定 誤 差 ,(b) 標 高 デ ー タ( DEM ) や 地 表 基 準 点 の 誤 差 , (c) 大 気 中 の 水 蒸 気 分 布 に よ る 遅 延 .( a ) に 関 し て は , 2つ の 時 期 の 人 工 衛 星 の 軌 道 間 の 位 置 関 係 ( 基 線 ) と 地 表 の 対 象 物 の 位 置 か ら ,軌 道 の ず れ に 起 因 し て 発 生 す る 干 渉 縞 を 再 現 で き る の で ,こ れ を 利 用 し て 補 正 す る .(b) に 関 し て ,日 本 で は , 国 土 地 理 院 の 50メ ー ト ル マ ッ シ ュ の 標 高 デ ー タ が 全 国 を カ バ ー し て お り , 現 在 の 干 渉 SAR に よ る 地 表 変 動 検 出 に 十 分 な 分 析 能 と 精 度 を 持 っ て い る . (c) に 関 し て は ,水 蒸 気 の 空 間 分 布 を 推 定 す る た め , 2 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が 必 要 で あ る . し か し , 干 渉 SAR の 観 測 期 間 に 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 場 合 ,水 蒸 気 の 空 間 分 布 と そ の 変化による大気遅延を定量的に評価することが大きな課題になっ ている. 日本では湿度が高く,とくに梅雤時期に水蒸気の変化も激しい. そ の た め ,JERS -1 衛 星 に 搭 載 さ れ た SAR の 多 く の デ ー タ は ,雤 や 雲 が あ る 気 象 条 件 下 で 取 得 さ れ る .こ の よ う な 場 合 ,得 ら れ る 干 渉 SAR 画像に水蒸気による大気遅延位相と地殻変動による位相は本質的 に 分 離 不 可 能 で あ り ,大 気 遅 延 は 直 接 的 な 誤 差 を 生 じ さ せ る( 藤 原 ほ か , 1999; 島 田 , 1999 ) . し た が っ て , 雤 や 雲 が あ る 気 象 条 件 下 で 取 得 し た デ ー タ を 有 効 利 用 し ,地 殻 変 動 検 出 の 精 度 を 高 め る に は , マイクロ波に対する水蒸気の影響についての研究が不可欠である. 3 1. 2 研究目的 本 研 究 で は , 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 時 期 の 干 渉 SAR に 対 し て , 気 象 庁 が 提 供 し て い る 高 精 度 の メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV -MSM デ ー タ を 用 い て ,水 蒸 気 分 布 の 影 響 を 評 価 す る 類 似 天 気 図 法 を 検 討 する. 濃 尾 平 野 で の JERS- 1 干 渉 画 像 を 例 と し て , 衛 星 SAR デ ー タ 領 域 に あ る 詳 細 な メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV -MSM デ ー タ を 用 い て , 衛 星 観 測 日 の 水 蒸 気 分 布 を 復 元 し ,大 気 の 鉛 直 構 造 に つ い て 気 象 学 的 な 検 討 を 加 え , 水 蒸 気 分 布 の 違 い に よ る 大 気 遅 延 量 を 求 め , G PV -MSM デ ー タ を 用 い て 干 渉 SAR に 及 ぼ す 水 蒸 気 の 影 響 に 関 す る 評 価 に つ い て そ の有効性を検証する. さ ら に ,東 海 三 県 地 盤 調 査 会( 2000 )に よ る 1960 ~ 1999 年 の 水 準 測 量 成 果 を 用 い て , GIS 解 析 に よ り 濃 尾 平 野 に お け る 地 盤 沈 下 の 空 間変動とその経年変化を評価し,地盤変動の原因を追及する. 従 来 の 水 準 測 量 に よ る 地 盤 沈 下 推 定 量 と ,InSAR デ ー タ 解 析 か ら 求 め ら れ る 地 盤 沈 下 量 と 比 較 し , InSAR に よ る 地 表 面 変 動 解 析 の 適 用可能性を検討する. 4 2. 地 盤 環 境 変 動 の 研 究 2.1 地盤環境変動の研究の歴史 日 本 に お け る 地 盤 沈 下 は 東 京 都 江 東 地 区 で は 大 正 の 初 期 ,大 阪 市 西 部 で は 昭 和 の 初 期 か ら 注 目 さ れ た .1950 年 か ら 経 済 の 復 興 と と も に 地 下 水 使 用 量 が 急 増 す る に つ れ て 再 び 沈 下 は 激 し く な り ,沈 下 地 域 も 拡 大 し て き た .1955 年 以 降 に は ,地 盤 沈 下 が 大 都 市 域 ば か り で は な く ,新 潟 平 野 ,濃 尾 平 野 ,筑 後・佐 賀 平 野 を は じ め と し た 全 国 各 地 に お い て 認 め ら れ る よ う に な っ た .濃 尾 平 野 に お け る 地 盤 高 変 動 は 地 盤 沈 下 と し て ,1959 年 秋 の 伊 勢 湾 台 風 の 被 災 か ら 注 目 さ れ は じ め た .そ の 後 ,さ ま ざ ま な 角 度 か ら 地 盤 沈 下 に つ い て 調 査 ・ 研 究 が 行 わ れ た ( 環 境 省 , 2005 ) . 濃尾平野の地盤の成り立ちや構造の観点から濃尾平野周辺の地 盤 構 造 の 把 握 が 進 む と 共 に ,地 盤 沈 下 の メ カ ニ ズ ム を 解 明 し た( 桑 原 , 1968 ; 松 澤 , 1978 ; 成 瀬 , 1978 な ど ) . 地下水の挙動に着眼して濃尾平野における急激な地盤沈下の最 も 大 き な 要 因 は 自 然 圧 密 や 地 殻 変 動 で は な く ,人 為 的 要 因 で あ る 地 下 水 の 過 剰 汲 み 上 げ に よ る も の で あ る こ と を 指 摘 し た .ま た ,不 可 逆であると思われていた地盤沈下現象も一般にリバウンドと呼ば れ る 地 盤 高 の 回 復 が 尐 な か ら ず 見 ら れ る こ と な ど も わ か っ た( 植 下 ほ か ,1978;杉 浦 ,1982;森 ,19 80;成 瀬 ,1978;飯 田 ,1986 な ど ). 各種規制などの地盤沈下防止対策と経済の急激な成長が落ち着 い た こ と な ど に よ っ て 1980 年 以 降 は 地 盤 沈 下 が 沈 静 化 の 傾 向 に あ る .し か し ,渇 水 な ど に よ る 揚 水 量 の 増 大 に 伴 う 大 き な 沈 下 な ど も 観 測 さ れ て , そ の 危 険 性 も 指 摘 さ れ て い た ( 大 東 ほ か , 1996 ) . 5 2.2 最近の地盤環境変動の研究及び課題 最 近 の 地 盤 環 境 , 特 に 地 盤 沈 下 関 係 の 研 究 は , 主 に GIS を 用 い て 地 盤 沈 下 に よ る 特 定 地 域 の 被 害 ポ テ ン シ ャ ル の 評 価 ,地 震 危 険 度 評 価 , 水 循 環 と の 解 析 シ ス テ ム の 構 築 な ど に GIS を 用 い た シ ミ ュ レ ー ト 解 析 し ,評 価 や 視 覚 化 が 行 わ れ て い る .多 く の 地 盤 沈 下 の 環 境 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て の シ ミ ュ レ ー ト 解 析 の 成 果 が 得 ら れ た( 例 え ば , 村 上 ほ か , 199 9; 周 ほ か , 2001 ) . そ の 中 で 過 去 の 沈 下 観 測 成 果 や 地 下 水 位 な ど を 利 用 し て 沈 下 を モ デ ル 化 し て い る .非 常 に 興 味 深 く 有 意 義 な も の で あ る と 考 え て い る が ,過 去 の デ ー タ の 吟 味 な ど は 果 た し て 十 分 な の か と い う 疑 問 が あ る .ま た ,測 量 の 労 力 や 水 準 点 の 維 持 管 理 に か か る 経 費 や ,水 準 測 量 路 線 の 網 目 か ら 漏 れ た 地 域 で 監 視 が で き な い な ど の 多 く の 課 題 も 残 さ れ て い る ( 福 山 , 2005 ) . 近 年 ,リ モ ー ト セ ン シ ン グ 技 術 の 発 展 に よ り ,広 域 的 な 地 盤 変 動 や地上の水準点がない地域の地盤変動を高精度に把握することが 可 能 と な っ て い る .リ モ ー ト セ ン シ ン グ 技 術 を 用 い た 調 査 ・ 解 析 は 従来の監視とのお互いに補い合うことで非常に有意義なものであ る と 思 わ れ る . 干 渉 SAR ( 干 渉 合 成 開 口 レ ー ダ ) は , マ イ ク ロ 波 を 利 用 し ,対 象 物 に 直 接 接 触 す る こ と な く ,計 測 を 実 施 す る リ モ ー ト セ ン シ ン グ 技 術 の 一 種 で あ る .近 年 ,こ の 技 術 を 用 い て ,多 く の 地 盤変動検出の成果が得られた. 干 渉 SAR に よ る 地 殻 変 動 観 測 の 主 要 な 誤 差 要 因 の 一 つ に 電 波 の 大 気 遅 延 が あ る .日 本 で は 湿 度 が 高 く ,と く に 梅 雤 時 期 に 水 蒸 気 の 変 化 も 激 し い . そ の た め , JERS -1衛 星 に 搭 載 さ れ た SAR の 多 く の デ ー タ は ,雤 や 雲 が あ る 気 象 条 件 下 で 取 得 さ れ る .こ の よ う な 場 合 ,得 ら れ る 干 渉 SAR 画 像 に 水 蒸 気 に よ る 大 気 遅 延 位 相 と 地 殻 変 動 に よ る 位 相 は 本 質 的 に 分 離 不 可 能 で あ り ,大 気 遅 延 は 直 接 的 な 誤 差 を 生 じ 6 さ せ る ( 藤 原 ほ か , 1999; 島 田 , 1999 ) . し た が っ て , 雤 や 雲 が あ る 気 象 条 件 下 で 取 得 し た デ ー タ を 有 効 利 用 し ,地 殻 変 動 検 出 の 精 度 を 高 め る に は ,マ イ ク ロ 波 に 対 す る 水 蒸 気 の 影 響 に つ い て の 研 究 が 不可欠である. 藤 原 ほ か ( 1998 ) は , 大 気 遅 延 影 響 の 低 減 の た め に , 複 数 の 異 な っ た 時 期 の 観 測 デ ー タ の 平 均 化 を 行 っ て い る .こ れ は 観 測 値 が 多 い 場 合 に は 有 効 で あ る が ,観 測 頻 度 が 低 く 地 殻 変 動 が 断 続 的 に 続 く 場 合 は 処 理 し に く い . Delacourt et al . (1998) は , 地 表 面 の 気 象 デ ー タ を 用 い て 高 度 に 対 す る 大 気 遅 延 の 簡 易 モ デ ル を 作 成 し ,エ ト ナ 山地域の大気遅延の補正を試みた.大気中の水蒸気の変化は時間 的 ・ 空 間 的 に 均 一 で は な く ,多 く の 気 象 観 測 デ ー タ が な け れ ば ,水 蒸 気 に よ る 大 気 遅 延 を 補 正 す る の は 困 難 で あ る( Williams et al ., 1998 ) . 藤 原 ほ か ( 1999 ) は , 水 蒸 気 に よ る 大 気 遅 延 が 高 度 と 線 形 な 相 関 を 持 つ と 仮 定 し て ,簡 単 な 大 気 遅 延 補 正 の 1 次 モ デ ル を 提 唱 し た .実 際 の 大 気 で は ,水 蒸 気 の 高 度 変 化 に は 1 次 で は 表 現 で き な い 複 雑 な 構 造 が 存 在 す る . 島 田 ( 1999 ) は , 全 球 客 観 解 析 デ ー タ (GANAL) を 利 用 し て ,大 気 遅 延 位 相 差 モ デ ル を 提 案 し た .1 シ ー ン で 同 じ GANAL デ ー タ を 利 用 し て 富 士 山 領 域 の 高 度 変 化 に よ る 大 気 遅 延 の 補 正 に 対 し て 有 効 性 が 確 認 さ れ た が ,こ の 方 法 で は ,水 蒸 気 の 水 平 変 化 に よ る 大 気 遅 延 は 補 正 で き な い . 大 塚 ・ 小 林 ( 2 002 ) は , 一 つのラジオゾンデ観測点での高層気象観測データを用いて大気運 動 の 理 論 計 算 に 基 づ き ,岩 手 山 地 域 の 風 に よ る 水 蒸 気 大 気 遅 延 を 検 討 し た .使 用 し た ラ ジ オ ゾ ン デ 観 測 地 点 と 研 究 地 域 は 約 140km 離 れ て い る .ま た ,こ の ラ ジ オ ゾ ン デ デ ー タ と SAR デ ー タ の 取 得 時 刻 に 約 一 時 間 半 の 差 が あ る た め ,シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は ,小 さ い ス ケ ー ル の 遅 延 パ タ ー ン や 山 岳 波 の 波 長 は SAR の 遅 延 と 不 一 致 が 存 在 す る . 7 大気中の水蒸気の変化は非常に複雑で,高度変化だけではなく, 水平方向にも変化している.詳細な三次元気象データがなければ, 局所的な水蒸気の影響を補正することは非常に困難である.干渉 SAR に 及 ぼ す 大 気 遅 延 に 関 す る 従 来 の 研 究 は , 主 に 水 蒸 気 の 高 度 変 化 の 影 響 に つ い て の み 検 討 し て い る .観 測 期 間 に 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い JERS -1 な ど の 干 渉 SAR に 対 し て , 観 測 日 の 水 蒸 気 の 空 間分布や水蒸気の水平変化による大気遅延を定量的に評価するこ とが大きな課題になっている. 8 3. 合 成 開 口 レ ー ダ と 干 渉 SAR 合 成 開 口 レ ー ダ と 干 渉 SAR に つ い て 日 本 リ モ ー ト セ ン シ ン グ 研 究 会 ( 1992 ) , 小 林 ( 1994a ) , 日 本 写 真 測 量 学 会 ( 1998 ) , 王 ほ か ( 2002 ) , 滝 口 ・ 中 根 ( 2005 ) , 宇 宙 開 発 事 業 団 地 球 観 測 セ ン タ ー ( 1994 ),福 山 (2009) ,Ferretti et al .( 2007 ),国 土 地 理 院( 2004 ) などをともに概説する. 3.1 3.1.1 リモートセンシングと合成開口レーダ リモートセンシング 図 3.1 リ モ ー ト セ ン シ ン グ に よ る デ ー タ 収 集 の 概 念 ( 日 本 リ モ ー ト セ ン シ ン グ 研 究 会 , 1992) リ モ ー ト セ ン シ ン グ と は ,地 球 表 面 や 大 気 で 放 射 ,散 乱 ,反 射 し た 種 々 の 電 磁 波 を 航 空 機 や 人 工 衛 星 か ら 計 測 し ,そ れ を 地 球 資 源 や 地 球 環 境 の 観 測 ,評 価 ,管 理 な ど に 役 立 て る 技 術 の 総 称 で あ る . こ の 手 法 に よ れ ば ,従 来 得 ら れ な か っ た よ う な 広 域 の マ ル チ ス ベ ク ト ル 情 報 が 瞬 時 に ,し か も 繰 り 返 し 得 ら れ る た め に ,資 源 探 査 ,地 球 環 境 監 視 な ど の 多 く の 分 野 で 大 変 注 目 さ れ て い る .す な わ ち ,広 域 9 性 ,同 時 性 ,同 期 性 ,マ ル チ ス ペ ク ト ル 性 と い う 特 徴 の た め に ,例 え ば 大 気 汚 染 ,水 質 汚 染 や 植 生 状 況 な ど の 自 然 環 境 の 監 視 ,土 地 利 用 作 図 資 料 な ど 国 土 情 報 の 収 集 ,都 市 開 発 ,市 街 地 の 熱 分 布 な ど の 都 市 環 境 ,海 洋 ,海 流 の 研 究 ,流 氷 観 測 ,農 業 情 報 ,森 林 資 源 の 探 査,船舶航行補助,気象現象の解析など,様々な分野で利用でき, リ モ ー ト セ ン シ ン グ の 重 要 性 は ,ま す ま す 大 き く な っ て い る .リ モ ー ト セ ン シ ン グ に よ る デ ー タ 収 集 の 概 念 を 図 3.1 ( 日 本 リ モ ー ト セ ン シ ン グ 研 究 会 , 1992) に 示 す . リ モ ー ト セ ン シ ン グ で は , さ ま ざ まな電磁波に感度をもつセンサによる電磁波計測を観測手段とし て い る .セ ン サ は 人 間 で い え ば 目 で あ る が ,人 間 の 視 覚 は ,電 磁 波 の中でもごく一部の可視光領域の波長しか感じることができない. ま た ,人 間 が 視 覚 的 に 得 て い る 情 報 は ,主 と し て 観 測 対 象 の 空 間 的 な 形 状 と 分 布 に 関 す る も の で あ る .こ れ に 対 し て リ モ ー ト セ ン シ ン グでは可視光領域に限らずいろいろな波長域の電磁波を利用して お り ,人 間 の 目 で は 認 識 で き な い 地 表 や 海 面 な ど の さ ま ざ ま な 現 象 が可能となっている. 3.1.2 センサ リ モ ー ト セ ン シ ン グ に 用 い ら れ る セ ン サ に は ,太 陽 光 の 反 射 及 び 対 象 物 か ら 放 射 さ れ る 電 磁 波 を 受 信 す る 受 動 方 式 と ,対 象 物 に 向 け て 電 磁 波 を 照 射 し ,対 象 物 で 反 射 さ れ た 電 磁 波 を 受 信 す る 能 動 方 式 と が あ る .ま た ,こ れ ら の 方 式 は 走 査 方 式 と 非 走 査 方 式 と に 分 け ら れ る .合 成 開 口 レ ー ダ は 能 動 方 式 の 代 表 例 で ,進 行 方 向 に 対 し 直 交 方向に走査を行い地表面の二次元画像を得る. セ ン サ の 種 類 は 使 用 す る 電 磁 波 の 波 長 に よ っ て も 分 類 さ れ る .合 成 開 口 レ ー ダ で は 波 長 1 ㎜ ~ 1m の マ イ ク ロ 波 を 使 用 し て い る .こ の 10 よ う な 波 長 領 域 の セ ン サ を マ イ ク ロ 波 セ ン サ と い う .図 3.2 電 磁 波 の 呼 称 と セ ン サ ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 1998 ) に 示 す . また,可視・赤外に至る光の領域のセンサを光学センサという. 通 常 の マ イ ク ロ 波 リ モ ー ト セ ン シ ン グ で は ,レ ー ダ か ら 送 信 さ れ た マ イ ク ロ 波 に 対 す る 対 象 物 の 散 乱 の 強 さ ,す な わ ち 後 方 散 乱 係 数 を 観 測 す る .こ れ は 式 (3.1),式 (3. 2)に 示 す レ ー ダ 方 程 式 中 の 受 信 電 力 P r と セ ン サ の 特 性 よ り 求 め ら れ ,目 標 の 表 面 の 電 気 的 特 性 と 形 状 で決まる散乱断面積 iに関連する. Pr PtGt 2 2 (4 ) 3 R 4 i i Pr(4 ) 3 R 4 PtGt 2 4 ( 3. 1 ) ( 3. 2) 散 乱 断 面 積 : i , レ ー ダ の 受 信 電 力 : Pr, レ ー ダ の 送 信 電 力 : Pt 散 乱 体 の ア ン テ ナ か ら の 距 離 : R, ア ン テ ナ 利 得 : Gt, 波 長 : λ 図 3.2 電 磁 波 の 呼 称 と セ ン サ ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 199 8 ) 11 3.1.3 合成開口レーダの概要 合 成 開 口 レ ー ダ ( SAR ) と は , (Synthetic Aperture Radar) の 略 で あ る . SAR は マ イ ク ロ 波 を 自 ら 送 受 信 す る 能 動 的 セ ン サ で あ り , 天 候 に 左 右 さ れ ず に ,昼 夜 の 関 係 な く 観 測 が で き る 光 学 セ ン サ に は ない特徴を持っている. SAR の 空 間 分 解 能 は , 観 測 に 用 い て い る 電 磁 波 パ ル ス の 長 さ や パ ル ス 帯 域 幅 ,ま た ア ン テ ナ の 大 き さ か ら 決 ま り ,セ ン サ の 高 度 や 用 い て い る 電 磁 波 の 波 長 に 無 関 係 で あ る .人 工 衛 星 の 高 さ か ら で も 高 い空間分解能のデータを得ることができる. SAR は マ イ ク ロ 波 L バ ン ド や P バ ン ド な ど の 使 用 に よ り , 植 生 ・ 乾 燥 な 砂 地 の 透 過 率 が 高 い で す か ら 植 生 ,砂 に 覆 わ れ た 地 表 面 の 情 報 を 得 る こ と が で き る . SAR で は 地 質 構 造 , 海 面 波 浪 , 海 氷 を 含 む 表 面 状 況 ,植 生 状 況 を 観 測 し た り ,ま た 全 天 候 の 特 徴 を 生 か し た り , 厚い雲が覆う熱帯雤林地方や日照時間の尐ない高緯度地方での観 測・資源探査に大いに期待されている. 衛 星 ま た は 航 空 機 に 搭 載 さ れ た レ ー ダ シ ス テ ム で は ,ア ン テ ナ か ら マ イ ク ロ 波 は 発 射 し て 地 表 面 を 照 射 し ,照 射 さ れ た 地 表 面 か ら の マ イ ク ロ 波 の 後 方 散 乱 を そ の 同 じ に ア ン テ ナ で 受 信 す る .図 3.3 に 示 す よ う に ア ン テ ナ の 電 波 照 射 方 向( レ ン ジ 方 向 と い う )は ,通 常 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 進 行 方 向( ア ジ マ ス 方 向 と い う )に 対 し て 横 向 き で か つ 斜 め 下 方 で あ る .こ の た め サ イ ド ル ッ キ ン グ レ ー ダ( Side looking radar ) と 呼 ば れ る . こ れ は 能 動 型 セ ン サ で あ る の で 距 離 の情報つまり衛星から目標までの距離を測定する. 合成開口レーダでは,パルスに変調をかけて受信信号を処理し, パ ル ス を 圧 縮 す る 方 式 が 用 い ら れ ,レ ン ジ 方 向 に 高 い 分 解 能 を 達 成 し て い る が ,ア ジ マ ス 方 向 に お い て は ,合 成 開 口 処 理 に よ り 分 解 能 12 を 改 善 し て い る 点 に 特 徴 が あ る .す な わ ち ,位 置 を 次 々 と 変 え な が ら 受 信 し た 信 号 を 位 相 ま で 含 め て 記 録 し ,後 述 の 処 理 を 行 う こ と に よ り ,実 際 の ア ン テ ナ よ り も 長 い ア ン テ ナ 長( 合 成 開 口 長 )を 用 い て観測したのと同等の効果が得られるようになるのである. 図 3.3 サ イ ド ル ッ キ ン グ レ ー ダ の 幾 何 学 的 配 置 ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 19 98 ) 13 3.2 地 球 資 源 衛 星 1 号 JERS -1 地 球 資 源 衛 星「 ふ よ う 1 号 」 ( JERS- 1)(Japanese Earth Resources Satellite-1 ふ よ う 1 号 )( 図 3.4 ) は , 全 陸 域 の デ ー タ を 取 得 し , 資 源 探 査 を 主 目 的 に ,国 土 調 査 ,農 林 漁 業 ,環 境 保 全 ,防 災 ,沿 岸 監 視 等 の 観 測 を 行 う こ と を 目 的 と し た 地 球 観 測 衛 星 で あ る .衛 星 は 1992 年 2 月 11 日 に 宇 宙 開 発 事 業 団 に よ っ て 打 ち 上 げ ら れ , 以 来 日 本 国 内 外 の ユ ー ザ に 観 測 デ ー タ を 提 供 し た .ふ よ う 1 号 の ミ ッ シ ョ ン 期 間 は 計 画 で は 2 年 間 で あ る が ,約 6 年 半 に わ た り 観 測 デ ー タ を 取 得 ,1998 年 10 月 12 日 に そ の 運 用 を 終 了 し た .2001 年 12 月 4 日 に 大 気 圏 に 再 突 入 し た ( 宇 宙 開 発 事 業 団 地 球 観 測 セ ン タ ー , 1994; 日 本 写 真 測 量 学 会 , 1998 ) . 図 3.4 J ERS - 1 写 真 ( 地 球 観 測 研 究 セ ン タ ー , 200 4 ) 14 衛 星 高 度 568km,回 帰 日 数 44 日 の 太 陽 同 期 準 回 帰 軌 道 に 投 入 さ れ た . 高 性 能 の 合 成 開 口 レ ー ダ ( SAR) と 光 学 セ ン サ ( OPS) 及 び ミ ッ ションデータレコーダを搭載し地球観測データの収集を行った. 1996 年 11 月 末 ま で の 約 5 年 間 の 運 用 で は 約 28 万 シ ー ン( 同 じ 場 所 の シ ー ン を 除 く と 約 45000 シ ー ン で , こ れ は 全 陸 域 の 98.4% の 面 積 になる)のデータを収集している. 光 学 セ ン サ OPS は ,可 視 域 か ら 短 波 長 赤 外 ま で を 7 つ の バ ン ド に 分 け , 可 視 域 で は 15.3 度 の 前 方 視 に よ る 立 体 観 測 が 可 能 で あ り , 短波長赤外では岩石や鉱物の識別に威力を発揮する特長を持って いる. 合 成 開 口 レ ー ダ( SAR) は 能 動 型 セ ン サ で あ り ,マ イ ク ロ 波 (L バ ン ド :1275MHz ,波 長 23.5cm ,HH 偏 波 )を 照 射 し て 地 上 か ら の 散 乱 反 射 波 を 受 信 す る こ と に よ り ,天 候 に 左 右 さ れ ず に ,昼 夜 も 関 係 な く 地 表 面 の 特 性 や 起 伏 ,傾 斜 な ど が 観 測 で き る と い う 光 学 セ ン サ に な い 優 れ た 特 徴 を 持 つ . 中 間 レ ン ジ に お け る オ フ ナ デ ィ ア (off- nadir) 角 は 35 o (入 射 角 は 38.7 o ) で あ り , 観 測 幅 75km で あ る . ま た , SAR は 合 成 開 口 と パ ル ス 圧 縮 技 術 に よ り ,通 常 の レ ー ダ に 比 べ て 格 段 に 高 い 分 解 能 を 得 る こ と が で き ,処 理 後 の 空 間 分 解 能 は ,レ ン ジ と ア ジ マ ス 両 方 向 と も 3 ル ッ ク で 18 m で あ る . JERS -1 SAR は 衛 星 進 行 方 向 に 直 行 し た 斜 め 下 方 向 に マ イ ク ロ 波 を 次 々 と 照 射 し ,地 表 面 か ら の 散 乱・ 反 射 波 を 受 信 す る .散 乱・反 射 が大きいところは明るく,小さいところは暗く現れる.そのため, こ と に よ り 地 表 面 の 物 性 や 起 伏 ,凹 凸 ,傾 斜 な ど を 高 解 像 度 で 観 測 し,地表の実態を詳細に把握することができる. JERS -1 ( ふ よ う 1 号 ) は L バ ン ド の 電 波 ( 波 長 23.5 セ ン チ メ ー ト ル ) を 用 い る SAR を 搭 載 し て い る .L バ ン ド の 電 波 は 植 生・乾 い た 15 砂 地 の 透 過 率 が 高 い た め ,植 生 ・ 砂 に 覆 わ れ た 地 表 面 の 情 報 を 得 る ことができる. ま た , SAR 観 測 を 同 じ 場 所 に 対 し て 2 回 以 上 行 っ て そ の 差 を と る と ,そ の 干 渉 効 果 に よ っ て 地 殻 表 面 の 高 さ 変 動 の 分 布 や 変 動 量 を 詳 細にとらえることができる. 本 研 究 で は , 濃 尾 平 野 に お け る JERS -1 衛 星 干 渉 画 像 を 例 と し て 地 盤 環 境 変 動 評 価 へ の 干 渉 SAR の 適 用 を 検 討 す る . 3.3 3.3.1 合成開口レーダの基礎 パルスの性質 ア ン テ ナ か ら 送 信 さ れ る マ イ ク ロ 波 は ,時 間 長 が 数 μ 秒 か ら 数 十 μ 秒 の パ ル ス で あ る .パ ル ス の 持 続 時 間 で あ る パ ル ス 幅 が τ で ,周 波 数( 搬 送 周 波 数 )及 び 振 幅 が そ れ ぞ れ f 及 び a の シ グ ナ ル S(t) が 次 式 で 表 さ れ る 最 も 単 純 な パ ル ス に つ い て 考 え て み る( 図 3.5(a) ). S (t ) a cos(2f 0t ) ( 3. 3) / 2 t / 2 こ れ は 時 間 の 関 数 と し て 表 わ れ て い る が ,こ れ を フ ー リ エ 変 換 し て周波数の関数(スべクトル)で表すと次のようになる F ( ) S (t ) exp( j 2ft )dt a [sin c{f 0 f ) } sin c{ ( f 0 f ) }] / 2 16 ( 3. 4) こ の 関 数 は 図 3.5(b) に 示 す よ う に , 周 波 数 f =± f 0 で 左 右 対 称 で あ る .τ が 大 き く な る ほ ど メ イ ン ス ペ ク ト ル の 幅 が 狭 ま り シ ャ ー プ になる.一般にパルスの帯域幅は次式で定義される. B 1/ 図 3.5 ( 3. 5) 固 定 周 波 数 パ ル ス ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 1 998 ) 17 3.3.2 レンジ分解能とパルス圧縮 3.3.2.1 レンジ分解能 ア ジ マ ス 方 向 に 鋭 く ,レ ン ジ 方 向 に 広 い 放 射 パ タ ー ン を も つ ア ン テ ナ を 真 下 に 向 け る と ,ア ン テ ナ か ら 発 射 さ れ る パ ル ス は 直 下 を 対 称 に 等 し い レ ン ジ 2 か 所 の 地 表 に 同 時 に 到 着 し ,そ こ か ら の 散 乱 エ コーの受信も同時になるので,この 2 か所を区別できなくなる. そ こ で , SAR を 含 め た サ イ ド ル ッ キ ン グ レ ー ダ で は , ア ン テ ナ の 最 大 放 射 の 向 き を ,プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 進 行 方 向 に 対 し て 横 向 き 斜 め 下 方 に し ,片 側 だ け を み る こ と に よ り 等 レ ン ジ 2 か 所 の 曖 昧 さ を 排除している. ア ン テ ナ か ら の ビ ー ム は 図 3. 3 の よ う に 進 行 方 向( ア ジ マ ス 方 向 ) に は 狭 く ,そ の 直 交 方 向( レ ン ジ 方 向 )に は 幅 広 い 地 表 面 領 域 を 照 射 す る . 地 表 距 離 分 解 能 ( r )は 次 式 で 表 わ さ れ て い る . r c / 2 sin ( 3. 6) こ こ で , c:光 速 , θ : 入 射 角 こ の 式 は , ま た 式 (3.5) の 帯 域 幅 の 定 義 を 用 い て , 次 の よ う に も 表される. r c / 2 B sin 18 ( 3. 7) 3. 3.2.2 パルス圧縮 式 ( 3.6 ) , 式 ( 3.7 ) で 示 さ れ る よ う に , レ ン ジ 分 解 能 を 上 げ る に は ,パ ル ス 幅 を 小 さ く す る か ,あ る い は パ ル ス の 帯 域 幅 を 大 き く す れ ば よ い .パ ル ス の エ ネ ル ギ ー は パ ル ス の ピ ー ク 電 力 と パ ル ス 幅 の 積 で 定 義 さ れ る .ピ ー ク 電 力 に は 限 界 が あ る の で ,レ ン ジ 分 解 能 を上げるためにパルス幅を狭くするとパルスのエネルギーが小さ く な り , 逆 に 信 号 対 雑 音 比 ( S/N ) の 低 下 を 招 く こ と に な る . こ れ を 克 服 す る 技 法 と し て パ ル ス 圧 縮 が あ る .パ ル ス 圧 縮 に は ,チ ャ ー ピ ン グ と い わ れ る 線 形 周 波 数 変 調 が 持 ち ら れ る こ と が 多 い .チ ャ ー ピングは,パルス内の周波数 0 ( 2f 0 ) を一定に保つのではなく, 時 間 の 1 次 関 数 と し て 次 の よ う に 変 化 さ せ る( 変 調 す る )こ と で あ る ( 図 3.6a) . 図 3.6 チ ャ ― プ パ ル ス( 日 本 写 真 測 量 学 会 ,1 998 ) 19 0 t ( 3. 8) た だ し ,ω は 角 周 波 数 で 周 波 数 と の 関 係 は ω = 2 π f , 0 は 搬 送 波 角周波数である. こ の よ う に す る と ,パ ル ス 幅 は 大 き い ま ま で ,パ ル ス の 帯 域 幅 を 独 立 に 大 き く す る こ と が で き ( 図 3.6b ) , 式 ( 3.7 ) に よ り 分 解 能 を 向 上 で き る .時 間 と と も に 周 波 数 の 変 化 す る パ ル ス を 地 表 面 に 照 射 す る と ,対 象 物 体 に は 時 間 と と も に 異 な る 周 波 数 が 入 射 し ,そ の 散 乱 エ コ ー も 同 様 に 時 間 と と も に 周 波 数 が 変 化 す る .こ の 散 乱 エ コ ー の 各 周 波 数 成 分 に 時 間 遅 れ を つ け て 足 し 合 わ せ る と ,あ る 1 点 に 強 い シ ャ ー プ な 信 号 を 生 成 で き る ( 図 3.7 ) . 図 3.7 圧 縮 パ ル ス ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 19 98 ) このようにパルス内の異なる周波数成分を合成して高い分解能 を 得 る の が 圧 縮 で あ る .こ の 場 合 ,圧 縮 前 に 二 つ の 隣 り 合 う タ ー ゲ ッ ト か ら の エ コ ー が 重 な り あ っ て も ,あ る 瞬 間 の 各 エ コ ー の 周 波 数 は異なっているので対象物体を分離することができる. 20 チ ャ ー プ パ ル ス の 角 周 波 数 変 化 率 は ,パ ル ス 幅 τ ,帯 域 幅 B を 用 いて, 2B / ( 3. 9) となる.したがって,送信信号は次のように表される. / 2 t / 2 St (t ) exp{ j (0t at 2 )} こ こ で , a /2 ( 3. 10 ) であり,簡単のために信号振幅を 1 とした. 受 信 信 号 は 送 信 信 号 に 対 し て , T D = 2 R/c だ け 時 間 遅 れ が あ る の で , S t (t ) exp{ j[0 (t TD ) a(t TD ) 2 ]} ( 3. 11 ) と 表 さ れ る .パ ル ス 圧 縮 は ,受 信 信 号 と 送 信 信 号 の 相 互 複 素 相 関 を とることによって実現できる.つまり, g (t ) S r (t x) St* ( x)dx / 2 / 2 exp{ j[0 (t TD x) a(t TD x) 2 ]} exp{ j[0 x ax 2 ]}dx exp{ j[0 (t TD ) a(t TD ) 2 ・ / 2 / 2 exp{ j 2a(t TD ) x}dx exp{ j[0 (t TD ) a (t TD ) 2 ・sin{a(t TD ) } /{a(t TD ) } exp{ j (0t a (t TD ) 2 )} ・exp( j0TD ) sin c{a(t TD ) } 21 ( 3. 12 ) 最 初 の exp の 項 は ,高 周 波 の 振 動 成 分 な の で ,こ れ を フ ィ ル タ な どで除けば, g (t ) exp( j0TD ) sin c{a(t TD ) } ( 3. 13 ) と な り , t=T D の 位 置 を 中 心 に 先 ほ ど か ら 再 三 で で き て い る sinc 関 数 の 波 形 ( 図 3.7 ) に 圧 縮 さ れ る こ と が 示 さ れ る . 3.3.3 アジマス分解能・合成開口・アジマス圧縮 3.3.3.1 アジマス分解能 進 行 方 向 に 平 行 な ア ジ マ ス 方 向 の 分 解 能 は ,実 開 口 レ ー ダ( RAR ) の場合, a a Rs h a / cos ( 3. 14 ) で あ る .こ こ で は , a は ア ジ マ ス の ア ン テ ナ の ビ ー ム 幅 で ,R s は ス ラントレンジ距離,h はアンテナの高さ,θは入射角である. 航 空 機 搭 載 レ ー ダ の 場 合 ,実 開 口 方 式 で も ア ジ マ ス 分 解 能 と レ ジ ン 分 解 能 を 同 程 度 に す る こ と は 可 能 で あ る .し か し ,衛 星 搭 載 レ ー ダ の 場 合 , 高 度 が 数 百 km に な る の で 実 開 口 方 式 で は ア ジ マ ス 分 解 能 が 数 km ~ 十 数 km に も な っ て し ま う .例 え ば ,λ = 25cm,h = 800km , d = 10m , θ = 20 o と す る と , a = 21km で あ る . し た が っ て ,衛 星 の 場 合 ,実 開 口 レ ー ダ は 散 乱 計 や 高 度 計 と し て は用いられているが,高分解能の映像レーダとしては不適である. 22 3.3.3.2 合成開口 飛 翔 体 (人 工 衛 星 や 飛 行 機 な ど )が 移 動 し な が ら 電 波 を 送 受 信 し て ,大 き な 開 口 を 持 っ た ア ン テ ナ の 場 合 と 等 価 な 画 像 が 得 ら れ る よ うに,人工的に「開口」を「合成」するのが「合成開口 レーダ」と 呼 ば れ る 技 術 で あ る ( 図 3.8) . 図 3.8 合成開口技術による分解能 ( 国 土 地 理 院 , 2 00 4 ) レーダの進行方向をx軸にとり,レーダが対象物体の真横のとき x =0 , そ の 時 の 対 象 物 体 と レ ー ダ 間 の 距 離 が R0 と い う 単 純 な 幾 何 で こ の 相 対 運 動 を 考 え て み よ う ( 図 3.9 ) . こ の 対 象 物 体 と x に 位 置 するレーダ間の距離 R は次のように表される. R R0 x 2 R0 x 2 / 2 R0 x 4 / 8R03 23 ( 3. 1 5 ) 図 3.9 S AR ア ン テ ナ と 対 象 物 体 の 幾 何 学 的 関 係 ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 19 98 ) x か ら 横 向 き に は ビ ー ム 幅 a ( / d ) の マ イ ク ロ 波 を 送 信 す る と , レ ン ジ R0 で は R0 の 幅 に 照 射 域 が 広 が る . | x | a R0 / 2 な ら ば , 対 象 物 体 は 照 射 さ れ ,散 乱 波 が レ ー ダ に 帰 る .レ ー ダ に 受 信 さ れ る 散 乱 波の位相は往復の伝播を考えれば ( x) 2 2R / 4R0 / 2x 2 / R0 x 4 / 2R03 ( 3. 16 ) と な る . レ ー ダ は 一 直 線 上 を 一 定 の 速 度 v で 移 動 す る の で , x =0 に 時 間 の 原 点 に お け ば x = vt で あ る . レ ー ダ と 対 象 物 体 微 分 よ り , ( x) d ( x) / dt 4v 2t / R0 ( 3. 17 ) 4vx / R0 24 負 号 は ,x <0( レ ー ダ が 対 象 物 に 近 づ く ) で は ド ッ プ ラ 周 波 数 が 正 , x >0( レ ー ダ が 対 象 物 か ら 遠 ざ か る ) で は ド ッ プ ラ 周 波 数 が 負 で あ る ことに対応する. 以 上 か ら , 位 相 φ ( x )は 対 象 物 体 に 対 す る レ ー ダ 位 置 x の 2 次 関 数 ,ド ッ プ ラ 周 波 数 ω ( x )は ,x の 1 次 関 数 で あ る こ と が わ か っ た( 図 3.10).こ れ は レ ン ジ 圧 縮 の 場 合 の チ ャ ー プ パ ル ス と 全 く 同 じ 状 況 ので,アジマス方向についての同様の原理で分解能を向上できる. これは,大きな仮想的なアンテナを合成することに等価なので, こ の よ う な 方 法 を 合 成 開 口 あ る い は 開 口 合 成 と い う .こ の 仮 想 的 な アンテナの開口長は実開口のビームの地表照射幅に等しくなる. (a) ア ン テ ナ 位 置 と 位 (b) ア ン テ ナ 位 置 と ド 相との関係 ップラ周波数との関係 図 3.1 0 ア ン テ ナ 方 向 の 受 信 信 号 ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 1 99 8 ) 25 3.3.3.3 アジマス圧縮 合 成 開 口 に よ る ア ジ マ ス 分 解 能 の 向 上 は ,パ ル ス 圧 縮 と 同 じ で あ る た め , ア ジ マ ス 圧 縮 と も 呼 ば れ る . 式 (3.1 6) と x = vt よ り , ア ジ マス方向の受信信号は次式で表せる. er (t ) exp(( j ( x)) exp( j 4R / ) exp{ j (4R0 / 2v 2t 2 / R0 )} ( 3. 18 ) こ こ で は 簡 単 の た め に 信 号 振 幅 を 1 と し た .ア ジ マ ス 圧 縮 の 方 法 , レ ン ジ 方 向 の パ ル ス 圧 縮 と 全 く 同 じ で あ る .た だ し ,レ ン ジ 圧 縮 時 の 送 信 信 号 に 相 当 す る es (t ) ,1 個 の 散 乱 体 を 観 測 す る 場 合 に 予 想 さ れ る 受 信 信 号 , つ ま り es (t ) er (t ) で あ る . 合 成 開 口 の 時 間 を T S A と す ると,アジマス圧縮出力は, E er (t y )er ( y )dy TSA / 2 TSA / 2 { j[4R0 / 2v 2 (t y ) 2 / R0 ]} exp{ j 4R0 / 2v 2 y 2 / R0 )}dy TSA exp( j 2v 2t 2 / R0 ) sin c(2v 2TSA / R0 ) ( 3. 19 ) 上 式 の exp の 項 は ,高 周 波 で 振 動 す る 項 で あ り ,フ ィ ル タ な ど で こ の 項 を 除 け ば , 圧 縮 後 の 波 形 は パ ル ス 圧 縮 と 同 様 に sinc 関 数 で 表せる.圧縮後のパルス幅はパルス圧縮と同様にメインローブの 0 ク ロ ス 幅 の 1/2 で 定 義 さ れ , 26 t a R0 / 2v 2TSA ( 3. 20 ) であり,アジマス分解能は a vta R0 / 2 LSA ( 3. 2 1 ) となる. こ こ で , LSA は 合 成 開 口 長 で LSA vTSA で あ り LSA R0 / d よ り , a d / 2 ( 3. 2 2 ) が得られる. 合 成 開 口 の 重 要 な 結 論 は ,ア ジ マ ス 分 解 能 が レ ン ジ に も 波 長 に も 無 関 係 で ,一 定 で あ る こ と で あ る .ま た ,理 論 的 に は ,ア ン テ ナ 長 が 短 い ほ ど 分 解 能 が 向 上 す る .こ れ は ,短 い ア ン テ ナ 程 ビ ー ム 幅 が 広がり,その結果合成開口長が長くできるからである. 3.3.4 再生処理 SAR の 受 信 信 号 デ ー タ は , レ ー ダ ホ ロ グ ラ ム で , 干 渉 模 様 を な し ている.このデータから,画像を再生する処理を圧縮処理という. 地 表 に あ る 一 点 P か ら の 受 信 信 号 は ,パ ル ス 幅 に 相 当 す る だ け レ ン ジ 方 向 に 広 が っ て 記 録 さ れ る .ま た ,プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 移 動 に つれて,マイクロ波ビームが P を横切るあいだ,P は次々とやって く る マ イ ク ロ 波 パ ル ス に 照 射 さ れ 続 け る た め ,反 射 信 号 は ア ジ マ ス 方 向 に も 広 が っ て 受 信 さ れ る .つ ま り ,受 信 信 号 は ,レ ン ジ 方 向 に お い て は ,送 信 チ ャ ー プ 信 号 そ の も の が 伝 播 時 間 に 相 当 す る 位 相 変 化 を 受 け た も の と な り ,ア ジ マ ス 方 向 に お い て は ,送 信 チ ャ ー プ 信 号そのものが目標とプラットフォームの相対運動によるドップラ 効果を受けたものになる. こ こ で 圧 縮 に 関 す る 周 波 数 偏 位 は ,レ ン ジ 方 向 と ア ジ マ ス 方 向 で 27 は 5 桁以上違うのでレンジ方向とアジマス方向の圧縮を別々に考え る こ と が で き る . 圧 縮 の 順 序 は レ ベ ル 0(シ グ ナ ル デ ー タ )の SAR デ ー タ ブ ロ ッ ク が レ ン ジ 方 向 の デ ー タ 列 で 構 成 さ れ て い る の で ,レ ン ジ圧縮,アジマス圧縮の順となる. アジマス圧縮の前にデータ並びをレンジ方向からアジマス方向 に 並 べ か え る 処 理 を コ ー ナ ー タ ー ン と 呼 ぶ .ド ッ プ ラ 信 号 の レ プ リ カはレーダとターゲットの幾何学モデルから導く. 地表の1点のスラントレンジはプラットフォームの移動ととも に 時 間 に 関 し て 2 次 関 数 的 に 変 化 す る .こ の 変 化 量 を レ ン ジ マ イ グ レ ー シ ョ ン ( range migration ) と い う . 1 次 の 項 を レ ン ジ ウ ォ ー ク ( range walk ) と よ び , 地 球 の 自 転 に 起 因 す る . 2 次 項 は レ ン ジ カ バ チ ャ ー ( range curvature ) と 呼 ば れ る . レ ン ジ マ イ グ レ ー シ ョンのためアジマス方向に関して,2 次曲線上に広がって記録され た地表のある1点の信号を1ライン上に並べ直す処理がレンジマ イ グ レ ー シ ョ ン 補 正 で あ る .レ ン ジ ウ ォ ー ク と レ ン ジ カ バ チ ャ ー を そ れ ぞ れ 補 正 す る ,レ ン ジ ウ ォ ー ク 補 正 と レ ン ジ カ バ チ ャ ー 補 正 に 分 け て 行 わ れ る こ と も あ る .処 理 過 程 で の SAR デ ー タ を 図 3.11( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 1998 ) に , SAR 処 理 の 流 れ を 図 3.12( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 1998 ) に 示 す . 28 図 3.1 1 処 理 過 程 で の S AR デ ー タ ( 日 本 写 真 測 量 学 会 , 19 98 ) 図 3.1 2 SAR 処 理 の 流 れ ( 日 本 写 真 測 量 学 会 ,199 8) 29 3.4 3.4.1 干 渉 SAR 干 渉 SAR の 原 理 干 渉 SAR ( InSAR ) と は 干 渉 合 成 開 口 レ ー ダ ( Interferometric Synthetic Aperture Radar ) の 略 で あ る . こ れ は , 同 じ 地 点 を 2 ヵ 所 か ら , ま た は 2 時 期 に 観 測 し ,デ ー タ 処 理 す る こ と に よ っ て ,地 殻表面の高さ変動の分布や変動量を詳細にとらえることができる. こ の 方 法 に は 2 種 類 あ る .一 つ は ,同 じ 機 器 を 搭 載 し た 2基 の レ ー ダ に よ る 同 時 観 測 で ,も う 一 つ は 同 じ 衛 星 で ほ ぼ 同 じ 探 査 反 復 軌 道 上 で 異 な る 時 期 に 観 測 す る こ と で あ る .例 え ば 後 者 の 方 法 に 対 し て は ,ALOS の 回 帰 日 数 は 46日 な の で ,原 則 的 に は こ の 日 数 の 倍 数 の 時 間間隔の観測データが利用可能である. 軌 道 に 直 行 す る 平 面 上 で の 2 つ の 衛 星 (ま た は 2つ の 軌 道 ) 間 の 距 離 を ,干 渉 基 線 と 呼 ぶ (図 3.13) .こ れ を ス ラ ン ト レ ン ジ に 垂 直 に 投 影したものが垂直基線である. 図 3. 13 干 渉 S AR の 幾 何 概 念 図 ( Ferretti et al ., 2007) 30 時 間 的 に 変 化 し な い 地 表 の 分 解 能 エ リ ア 中 に ,散 乱 強 度 が き わ め て強い地点が一つあると仮定する. 図 3.14 に 示 し た よ う に , 2 基 の SAR か ら わ ず か に 異 な る 視角でこうした点散乱体を観 測 す る .こ の 場 合 ,各 SAR 画 素 の 干 渉 位 相 は , 2 基 の SAR の 各々から該当のエリアまでの マイクロ波の伝播経路差にの み依存することになる. 点散乱体からもたらされる 図 3.1 4 In SAR 幾 何 学 図 (王 ほ か ,2 00 2 ) 位相変化が仮にあったとして も ,こ の 経 路 差 に よ っ て 相 殺 さ れ る た め ,干 渉 位 相 は そ の 影 響 を 受 けないことになる. A 1 と A 2 は 同 じ 地 表 面 の 点 P を 不 同 時 間 に 観 測 し た SAR ア ン テ ナ , H は A 1 の 水 平 基 準 面 か ら の 高 度 ,R は SAR ア ン テ ナ と 地 点 P の 間 片 道 の 距 離 ,B は 2 つ の ア ン テ ナ A 1 と A 2 を 結 ぶ 基 線 長 , 0 は 直 下 方 向と視線方向の間の角度,αは水平方向と基線の間の角度,zは P 点の標高である. 干 渉 SAR に は ,各 ピ ク セ ル の 信 号 は 複 素 数 で 表 さ れ る .複 素 数 で あ る SAR 画 像 や 干 渉 図 を 見 や す く 表 現 す る た め に ,通 常 は 位 相 φ と 振幅μが用いられる. こ れ ら 信 号・デ ー タ・振 幅・位 相 を 繋 げ る 関 係 は 2 つ の ア ン テ ナ A 1 と A 2 で 受 信 し た 信 号 は s1 と s 2 文 字 で 表 す . 31 s1 (R)=u1 (R)exp(i (R)) ( 3.23 ) s2 ( R R) u2 ( R R) exp(i ( R R)) ( 3.24 ) 受 信 信 号 の 位 相 は 2 つ の 部 分 に 構 成 さ れ る ,一 つ は ア ン テ ナ と タ ー ゲ ッ ト の 往 復 経 路 か ら の 位 相 ,も う 一 つ は 観 測 地 表 の ラ ン ダ ム 散 乱からの位相である. 1 2 2 2 2 2 R arg{u1} ( 3.25 ) ( R R) arg{u2 } ( 3.26 ) 式 ( 3.25 ) と 式 ( 3.26 ) の 中 で , arg{u1} と arg{u 2 } は 観 測 地 表 の ラ ン ダ ム 散 乱 か ら の 位 相 で ,係 数 2 は 送 受 信 の 往 復 経 路 を 表 す .本 研 究では2つの地表のランダム散乱からの位相は観測された2つの 画像位相に貢献することが同じ,軌道からの誤差がないとする. 2 回 観 測 の 入 射 角 が 異 な る た め ,2 つ の 画 像 の 同 じ 地 上 目 標 は 重 ね合わせない.マッチングしてから2つの画像は重ね合わせる. s1 ( R) s2* ( R R) | s1s2* | exp i(1 2 ) | s1s2* | exp( i 4 R) ( 3.27 ) 式( 3.27 )に 示 す よ う に ,A 1 画 像 の 信 号 s1 と A 2 画 像 の 信 号 s 2 の 共 役 複 素 数 を 掛 け る 演 算 に よ っ て ,干 渉 処 理 が 実 現 さ れ ,干 渉 縞 図 が で き ,干 渉 縞 図 の 位 相 は ,信 号 の 経 路 差 を 波 長 で 割 っ た 量 で あ る( s 2* は マ ッ チ ン グ し た A2 の 画 像 値 の 共 役 複 素 数 で あ る ) . 32 実 際 的 干 渉 処 理 に は 三 角 計 算 に よ る 干 渉 位 相 が -π ~ π の 値 を と し , も と も と 幅 広 い 値 を も っ て い る 位 相 情 報 が -π ~ π の 範 囲 に 折 り 畳 ま れ て い る ( wrap ) . 干 渉 SAR で 取 ら れ る 位 相 は -π ~ π の 値 し か と ら ず , 式 ( 3.28 ) の よ う に , 解 い て 元 に 戻 す ( unwrap ) こ と に よ っ て 変 動 量 の 絶 対 値 に 戻 さ な け れ ば な ら な い .N は 整 数 で あ る . 4 R 2N N 0,1,2, ( 3.28 ) 式( 3.28 )は ,レ ー ダ 信 号 を 送 信 し て か ら 受 信 す る ま で に 信 号 が 衛 星 と 地 上 タ ー ゲ ッ ト を 往 復 す る 経 路 長 差 Δ R (m) 中 に 波 長 λ (m) の 波 が 入 る 数 2R / ( 個 )に 2π( radian )を 乗 じ て ,位 相 と し て radian 単位で表したものである.ここで,右辺のΔR 及びλ符号は正であ る か ら ,受 信 信 号 は 送 信 信 号 よ り 遅 れ る た め ,位 相 の 符 号 は 常 に 負 である. 図 3.14 に 示 す よ う に , 余 弦 定 理 を 基 づ い て , 下 の 式 ( 3.29 ) を 得られた. ( R R) 2 R 2 B 2 sin( 0 a) 2 RB z H R cos 0 ( 3.29 ) ( 3.30 ) 式 ( 3.29 ) の 中 で , (R) 2 <<R の た め , 省 略 さ れ , 式 (3.31) を 得 られた. R B sin( 0 a) B2 2R ( 3.31 ) B2 計 算 の 便 利 に は , B<<R で , 式 (3.31) の 中 で の 右 辺 二 次 項 は省 2R 33 略 さ れ , 下 の 式 ( 3.32 ) を 得 ら れ た . R B sin( 0 a) (3.32 ) 図 3.15 に 示 す よ う に 基 線 を 視 線 方 向 に 分 解 し , 式 ( 3.33 ) と 式 ( 3.34 ) の よ う に 視 線 方 向 に 平 行 な 基 線 分 量 B// と 視 線 方 向 に 垂 直 な 基 線 分 量 B を 得 ら れ た . B|| B sin( 0 a) (3.33 ) B B cos( 0 a) 図 3.1 5 基 線 の 幾 何 図 ( 3.34 ) ( 王 ほ か , 20 02 ) 式( 3.34 )に 示 す よ う に ,基 線 B は 基 線 垂 直 分 量 B と 比 例 の 関 係 が あ る こ と を 明 ら か に な り ,基 線 垂 直 分 量 B が 大 き い ほ ど ,基 線 B が大きくになる. 式 ( 3.28 ) , 式 ( 3.32 ) , 式 ( 3.33) の 間 の 関 係 に よ り , 下 の 式 ( 3.35 ) と 式 ( 3.36 ) を 得 ら れ た . 従 っ て , 干 渉 位 相 の 変 化 量 は ,R を 送 信 波 長 λ で 割 っ た 値 に 比 例 し , 式 (3.36)で 表 さ れ る . R B// ( 3.35 ) 4R 4 B|| ( 3.36 ) 式 ( 3.37 ) に 示 す よ う に , こ こ で 得 ら れ た 干 渉 位 相 に は , 軌 道 が 異 な る こ と に よ っ て 生 じ る 軌 道 位 相 orbit , 標 高 の 影 響 に よ る 地 形 位 相 topo , 大 気 水 蒸 気 等 の 影 響 に よ る 大 気 遅 延 位 相 atm , 地 震 な ど の 影 響 に よ る 地 形 変 動 位 相 def が 含 ま れ て い る . orbit topo atm def 34 ( 3.37 ) 3.4.1.1 軌道位相の推定 軌 道 位 相 と は ,地 球 表 面 と 衛 星 と の距離の変化によって生じる位相 変化である. 地 形 の 高 さ 変 化 ,大 気 水 蒸 気 の 影 響,地盤変動がないと仮定すると, こ の 干 渉 位 相 の 変 化 量 は ,軌 道 位 相 のみを含まれる. 図 3.16 に 示 す よ う に , P点 と P ’ 点 の位相は 図 3.1 6 軌 道 ず れ の 幾 何 概 念 図 orbit 4 , , orbio B sin( 0 a) 4 (王 ほ か , 200 2) B sin( 0 r a) となる. P点 と P ’ 点 の 位 相 差 は , orbit orbit orbit 4 [ B sin( 0 r a) B sin( 0 a)] 4 B cos( 0 a) R r R sin r R / tan 0 orbit 4B R R tan 0 ( 3. 38 ) となる. 軌 道 位 相 orbit は 式 (3.38)に よ っ て 表 さ れ る . 基 線 値 が 正 確 に 推 定されば軌道位相を除去できる. 35 3.4.1.2 地形位相の推定 地 形 位 相 と は ,地 表 が 平 坦 で は な く 起 伏( 地 形 )を 持 っ て い る た め に 生じている位相変化である. 軌 道 ず れ ,大 気 水 蒸 気 の 影 響 ,地 盤 変 動 が な い と 仮 定 す る と ,こ の 干 渉 位 相 の 変 化 量 は ,地 形 位 相 の み を 含まれる. 図 3.17 に 示 す よ う に ,地 形 高 さ の 変 化 は △ z, P点 と P’ 点 の 位 相 は topo , , topo 4 4 B sin( 0 a) 図 3.1 7 地 形 高 さ の 変 化 幾 何 概 念 図 (王 ほ か , 200 2) B sin( 0 z a) となる. P点 と P ’ 点 の 位 相 差 は , topo topo topo 4 [ B sin( 0 z a) B sin( 0 a) 4 B cos( 0 a) z R z R sin z z / sin 0 topo 4B z R sin 0 ( 3. 39 ) となる. 地 形 位 相 topo は 式 (3 .3 9 ) で 表 さ れ る . 式 (3 .3 9 ) に 示 す よ う に , 基 線 値 が 既 知 で あ れ ば , ほ か の 干 渉 SAR デ ー タ や デ ジ タ ル 標 高 モ デ ル ( DEM ) か ら 地 形 縞 を シ ミ ュ レ ー ト す る こ と が 可 能 で あ り , こ れ を用いて干渉画像から地形縞を除去することができる. 36 3.4.2 干 渉 SAR に よ る 地 形 標 高 の 測 定 大 気 水 蒸 気 の 影 響 と 地 盤 変 動 が な い と 仮 定 す る と ,こ の 干 渉 位 相 の 変 化 量 は ,地 形 位 相 と 軌 道 位 相 の み を 含 ま れ て い る .次 式 の よ う に表す. 4B z 4B R sin 0 R tan 0 ( 3. 40 ) 第 1 項 は ,標 高 の 影 響 に よ る 地 形 位 相 .第 2項 は 軌 道 が 異 な る こ と によって生じる軌道位相に相等する. 垂 直 基 線 は ,衛 星 軌 道 の 厳 密 な デ ー タ か ら 知 る こ と が で き る .ま た , 第 2項 も 研 鑽 が 可 能 で 干 渉 位 相 か ら 差 し 引 く こ と が で き る . こ の操作をインターフェログラムフラットニング処理と呼んでいる. 図 3.18 は ,伊 勢 湾 岸 付 近 の SAR 画 像 に 対 す る イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 の 例 で あ る .フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 前 の イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム で は , 陸 域 に 軌 道 縞 が 明 確 に 見 ら れ る の (コ ヒ ー レ ン ト ) に 対 し て , 海 域 は そ れ が 見 ら れ な い (イ ン コ ヒ ー レ ン ト ). ア ン ビ ギ ュ イ テ ィ 高 度 ha は , イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム 平 滑 後 の 干 渉 位 相 で 2π の 変 化 を も た ら す 高 度 と し て 定 義 さ れ る . ha R sin 0 ( 3. 41 ) 2 B 例 え ば JERS -1の 場 合 , λ = 23 .5cm , ha 38400 B = 35 o , R = 5 70 km な の で , ( 3. 42 ) 垂 直 基 線 が 1000m の 場 合 , 2 π の 干 渉 位 相 変 化 は 約 38m の 高 度 差 に 対 応 す る .原 理 的 に は 基 線 が 長 い ほ ど 高 度 測 定 は 正 確 に な る .な ぜ な ら ,長 基 線 で 位 相 雑 音 は 高 度 雑 音 が 小 さ く な る た め で あ る .し 37 か し ,垂 直 基 線 に は 上 限 が あ る .つ ま り ,長 基 線 に な る と 干 渉 信 号 に 相 関 性 が 落 ち , 干 渉 位 相 解 析 で 必 要 な 干 渉 縞 (フ リ ン ジ ) が で き な く な る .結 論 と し て ,信 号 対 雑 音 電 力 比( 今 信 号 は 地 形 高 度 ) を 最 大 に す る 最 適 な 垂 直 基 線 が あ る こ と に な る .JERS -1の 場 合 ,こ の 最 適 基 線 は 約 1000m で あ る . 干 渉 位 相 は 2π の 周 期 性 を 持 つ の で , フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 を し た イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム を 用 い る と 標 高 の 相 対 的 な 測 定 が で き る .ア ン ビ ュ ギ ィ テ ィ 高 度 の 整 数 倍 (2 π の 位 相 サ イ ク ル の 整 数 倍 に 相 等 ) 削 除 し た 後 ,フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 を し た イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム 上 の 2 地 点 間 の 位 相 変 化 量 か ら ,実 際 の 高 度 変 化 の 測 定 が で き る .こ の 位 相 干 渉 縞 に 2π の 正 確 な 整 数 倍 数 に 加 え る 過 程 を , 位 相 ア ン ラ ッ ピングと呼ぶ. アンラッピングの技法にはよく知られているものがいくつかあ る .し か し ,位 相 ア ン ラ ッ ピ ン グ は 普 通 単 一 の 解 法 で は な く ,経 験 的手法に基づいてその情報をうまく利用するというべきかもしれ ない. 干 渉 位 相 の ア ン ラ ッ ピ ン グ 処 理 が で き る と ,SAR 座 標 系 で の 標 高 地 図 が 得 ら れ る .こ れ が ,DEM( 数 値 標 高 モ デ ル ) を 入 手 す る 第 一 歩 で あ る .次 に , SAR 高 度 地 図 を ,一 般 に 用 い ら れ て い る 準 拠 楕 円 体 (例 え ば ベ ッ セ ル 楕 円 体 や WGS84) を 参 照 し て ,UTM 等 の 別 の 測 地 系 座標上での値に変換する必要がある. 38 . 図 3. 18 図 3. 18 a : イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム 画 像 (福 山 , 20 09) b :フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 画 像 ( 福 山 , 20 09) 39 3.4.3 干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 の 測 定 地 表 に あ る 点 散 乱 体 の い く つ か が , 2回 の SAR 観 測 の 間 に 例 え ば 地 盤 沈 下 や 地 滑 り ,地 震 な ど に よ っ て ,そ の 相 対 的 な 位 置 が わ ず か に 変 わ っ た と 仮 定 す る .こ う し た 場 合 ,基 線 に 寄 ら な い 次 の 位 相 項 が干渉位相に付け加わることになる. def 4 d ( 3. 43 ) こ こ で ,d は ス ラ ン ト レ ン ジ 方 向 に 投 影 し た 散 乱 体 の 相 対 的 な 変 位である. つ ま り ,イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム フ ラ ッ ト ニ ン グ 処 理 後 の 干 渉 位 相 に は ,大 気 の 影 響 は 発 生 せ ず ,高 度 と こ う し た 地 盤 の 移 動 に 伴 う も のが含まれている. 4 B z 4 d R sin 0 ( 3. 44 ) さ ら に ,数 値 標 高 デ ー タ (DEM) が 利 用 可 能 な ら ,干 渉 位 相 か ら 高 度 か ら 生 じ る 位 相 項 を 差 し 引 く こ と が で き る .こ の 結 果 得 ら れ る の が ,い わ ゆ る 差 分 イ ン タ ー フ ェ ロ グ ラ ム で あ る .こ れ に よ り ,地 盤 の変形や移動した成分を測定することができる. 40 3.5 干 渉 SAR に お け る 誤 差 要 因 干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 検 出 精 度 が 低 下 す る の は 以 下 の 3 つ 原 因 がある. ( a )人 工 衛 星 の 軌 道 位 置 の 推 定 誤 差 ,(b) 標 高 デ ー タ( DEM ) や 地 表 基 準 点 の 誤 差 , (c) 大 気 中 の 水 蒸 気 分 布 に よ る 遅 延 . (a ) に 関 し て は , 2 時 期 の 人 工 衛 星 軌 道 間 の 位 置 関 係 ( 基 線 値 ) と地表のターゲットの位置から厳密にパターンが再現できるので, これを利用して補正する. (b) に 関 し て , 地 形 縞 に つ い て も , 対 象 と な っ て い る 地 表 の デ ジ タ ル 標 高 デ ー タ ( D EM ) が あ れ ば , 同 様 に 幾 何 的 な 数 値 計 算 に よ っ て補正が可能である. 日 本 で は , 国 土 地 理 院 の 50 メ ー ト ル メ ッ シ ュ の 標 高 デ ー タ が 全 国 を カ バ ー し て お り ,現 在 の 干 渉 SAR に よ る 地 表 変 動 検 出 に 十 分 な 分 解 能 と 精 度 を 持 っ て い る . こ の 地 形 縞 除 去 手 法 は , 2 回 の SAR 観 測データを使用するので 2 パス法と呼ばれる. (c) に 関 し て は , 観 測 域 上 空 の 水 蒸 気 の 空 間 分 布 を 推 定 し な け れ ばならないため,詳細な三次元気象データが必要である.しかし, JERS -1衛 星 な ど の 干 渉 SAR 観 測 時 期 に 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 場 合 ,水 蒸 気 の 空 間 分 布 と そ の 変 化 に よ る 大 気 遅 延 を 定 量 的 に 評 価することが大きな課題となる. 本 研 究 で は , 特 に (c) の 問 題 を 明 ら か に す る た め に , 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 時 期 の 干 渉 SAR 観 測 デ ー タ に 対 し て ,水 蒸 気 分 布の影響を評価する方法を検討する. 41 4. 水蒸気影響の解析方法 4.1 類似天気図法 大気の状態は,地球上の場所によって異なるのは当然であるが, 同 一 の 場 所 で も 毎 年 決 し て 一 定 で は な い .し か し ,そ の 変 動 は 毎 年 ある決った幅のなかにあり,1 年の周期で繰り返すのが普通である ( 表 4.1 , 表 4.2 ) . 気候とはある場所または地域において基本的にはこの 1 年の周期 で ,毎 年 順 を 追 っ て 繰 り 返 さ れ る ,最 も 確 率 の 高 い 大 気 の 総 合 状 態 で あ る ( 福 井 ・ 吉 野 , 1979 ) . 類 似 天 気 図 と は 天 気 予 報 の ひ と つ の 方 法 と し て ,今 日 の 天 気 図 と よ く 似 た も の を 過 去 の 天 気 図 か ら 選 び 出 し て ,そ の 気 象 変 化 か ら そ の後の予報を行うものである. そ の 原 理 は 単 純 で ,ふ た つ の 同 じ 天 気 図 が 見 出 さ れ ば ,そ の 後 の 天気変化も同じであろうという考えである. ま た ,類 似 天 気 図 を 求 め る こ と に よ り ,地 形 に よ る 変 化 や 気 候 変 動 ,さ ら に 場 合 に よ っ て は 外 因 に よ る 変 動 さ え 自 動 的 に 含 ま れ た 類 似 天 気 図 が 得 ら れ る と 考 え ら れ ,実 際 の 予 報 に は 極 め て 有 効 な 方 法 と な っ て き た ( 和 田 , 1969 ) . 42 表 4.1 6 月 19 日 と 5 月 6 日 の 30 年 間( 19 71 ~ 20 00 年 ) の日平均値(名古屋) 平均気温 最高気温 最低気温 ℃ ℃ ℃ 6月19日 22.5 26.7 19.2 5月6日 17.3 22.6 12.7 日付 表 4.2 降水量 mm 7.1 5.5 名古屋における観測値 平均気温 最高気温 最低気温 ℃ ℃ ℃ 1998年6月19日 23.6 24.7 21.9 1998年5月6日 20.0 22.9 16.7 日付 降水量 mm 34.5 0.5 本 研 究 の 類 似 天 気 図 法 は こ う し た 天 気 予 報 原 理 に 基 づ い て ,ま ず JERS -1 デ ー タ 取 得 日 ( X と す る ) の 天 気 図 と よ く 似 た 2003 年 以 降 の あ る 日( GPV-MSM デ ー タ が 存 在 .Y と す る )の 天 気 図 を 捜 し 出 す . こ の 異 な る 2 つ の 日( X と Y )の 天 気 状 態 が 同 じ で あ る と 仮 定 し て , JERS-1 デ ー タ が 取 得 さ れ た X の 日 の 気 象 状 態 を Y の 日 の GPV- MSM デ ー タ か ら 復 元 す る . こ れ か ら 大 気 遅 延 量 を 推 定 し , 衛 星 干 渉 SAR に 対 す る 水 蒸 気 分 布 の 影 響 を 評 価 す る . 本 研 究 で は ,1 )2 つ の 日 の 地 上 天 気 図 が 類 似 で あ る と い う 単 純 な 類 似 天 気 図 の 手 法 だ け で な く ,評 価 の 精 度 を 高 め る た め に 次 の よ う な 条 件 も 付 加 し て い る . 2) 2 つ の 日 が 同 じ 季 節 で あ る . 3) 対 象 地 域 で は 地 表 面 観 測 の 気 象 要 素 が 類 似 し て い る . 4) 対 象 地 域 付 近 の 高層気象観測データが類似している. こ う し た 条 件 を 満 た す GPV -MSM デ ー タ は ,JERS-1 デ ー タ 取 得 日 の 気象状態をある程度反映できる. 43 4.2 可降水量の計算方法 可 降 水 量 と は ,地 表 の あ る 面 を 基 点 と し て そ の 上 空 の 大 気 を 大 き な 鉛 直 の 柱( 大 気 柱 )と 考 え ,そ こ に 含 ま れ る 水 蒸 気 や 雲 が す べ て 凝 結 し て 地 上 に 落 下( 降 水 )し た 時 の 降 水 量 の こ と で あ る( 図 4.1 ). 大 気 の 移 動 が 全 く 無 い と 仮 定 す れ ば ,こ れ 以 上 の 降 水 量 は 無 い と 考 え ら れ る 値 で あ る .現 実 的 に は こ の よ う な こ と は な い .実 用 的 に は,大気中の水の総量を表す数値の 1 つとして用いられる. 可 降 水 量 と は ,大 気 中 の 水 蒸 気 を す べ て 降 水 と し て 降 ら せ た と き , 降 水 量 が 何 mm に な る か を 表 す も の で あ る .降 水 量 は 通 常 mm の 深 さ で 表 す が ,正 式 に は ,1 m 2 の 面 積 当 た り に 何 kg が 降 っ た か の 単 位 ( kg/m 2 ) で 表 す . 可降水量とは単位面積あたりの鉛直気柱に含まれる水蒸気量を 水 量 に 換 算 し た 量 で あ り ,式( 4.1 )で 求 め る こ と が で き る( 二 宮 , 2006 ) . wp 1 g ps 0 qdp (4.1) こ こ に ,g は 重 力 の 加 速 度 (m/s 2 ), q は 比 湿 (kg/kg), ps は 地 上 の 気 圧 (hPa ) で あ る . 本 研 究 で は , 各 観 測 日 の 地 上 面 か ら 300hPa 高 度 ま で 可 降 水 量 の 鉛直積算を行って,水蒸気分布を検討する. 44 水蒸気分子 水分子 単位底面積の気柱 単位底面積の水柱 図 4. 1 可 降 水 量 の 概 念 図 ( 二 宮 , 200 6 ) 45 4.3 大気遅延量 4.3.1 大 気 遅 延 の 基 本 原 理 大 気 屈 折 に よ る 大 気 遅 延 は 2 つ の 物 理 的 効 果 に 起 因 す る .1 つ は , マイクロ波が誘電媒質である大気中を通過するために真空中より も減速され,見かけ上伝搬経路が伸びる効果である.もう1つは, マ イ ク ロ 波 の 伝 搬 経 路 が 曲 率 (ray bending) を 持 つ た め , 直 線 よ り 経 路 が 実 際 に 長 く な る 効 果 で あ る ( 市 川 ほ か , 1995) . S G 仰角 図 4. 2 大気屈折の模式図 46 こ の と き , 大 気 の 密 度 は 下 層 ほ ど 大 き い の で , 図 4.2 の 大 気 屈 折 の 模 式 図 に 示 し た S の よ う に 上 方 に 凸 の 伝 搬 経 路 と な る .こ れ ら の 効果による遅延△L は次式で表される. Latm (n( s ) 1)dl [ S G ] ( 4.2 ) L こ こ で ,G は SAR 衛 星 な ど の 電 波 源 か ら 地 上 の ア ン テ ナ ま で の 直 線 距 離 , n(s) は 大 気 屈 折 に よ っ て 曲 率 が 生 じ た 伝 搬 経 路 L 上 の 点 s に お け る 屈 折 率 で あ る .こ の と き , S は L 上 の 微 尐 部 分 ds を 積 分して得られる.右辺第1項が減速の効果であり,実際の電波は L 上 を 大 気 中 の 伝 搬 速 度 c a t m で 伝 搬 す る が ,解 析 の 上 で は 真 空 中 の 速 度 c で 伝 搬 し た と み な さ れ る .し た が っ て ,見 か け 上 伝 搬 経 路 が 伸 び た こ と に な る .そ し て ,残 り の 右 辺 第 2 項 が 伝 搬 経 路 の 曲 率 の 効 果 と な り ,当 然 の 事 な が ら こ の 効 果 に よ る 遅 延 は 天 頂 方 向 で 0 と な る .こ の 曲 率 の 効 果 は ,仰 角 15 度 以 上 で は 1cm 以 下 の 経 路 長 の 伸 び に 相 当 す る に 過 ぎ な い が ,こ れ よ り も 低 仰 角 で は 急 激 に 増 大 す る . 一 方 ,減 速 の 効 果 は 曲 率 の 効 果 に 比 べ て 3 桁 程 度 大 き く ,仰 角 1 5 度 で は 約 10m に も 達 す る . 衛 星 JERS -1 SAR の 仰 角 は 55 度 で あ り , 小 さ い 曲 率 の 効 果 が 省 略 して,減速の効果が主な誤差要因として大気遅延を検討する. 47 4.3.2 大気遅延量の推定方法 地表点 A から衛星高度 S までの大気が,各々異なる湿度・気温・ 気 圧 を 有 す る 地 表 面 平 行 の N 層 で 構 成 さ れ て い る と す る ( 図 4.3) . そ の と き , 二 層 の 間 で は 以 下 の 条 件 が 成 り 立 つ ( 島 田 , 1999 ) . ni 1ri 1 sin i 1 ni ri sin i ri ri 1 sin i'1 sin i (4.3 ) (4.4 ) こ の 条 件 を ,点 A と 点 S を 固 定 し ,そ の 間 を 連 結 す る な i , i'1 を 求 め る .こ れ ら 2 つ の 角 度 は 隣 り 合 う 層 を 隔 た て て 入 射 角 と 屈 折 角 で あ る .ま た ,こ れ ら は 1 シ ー ン 内 で は ほ と ん ど 変 化 し な い こ と か ら以下の近似が成立する. i i 1 1 ni 1ri 1 1 cos i 1 ni ri i'1 i 1 1 ni 1 1 cos i 1 ni (4.5 ) (4.6 ) そ の 結 果 , 二 層 間 の 電 波 伝 搬 距 離 ( rmi ) は 以 下 で 求 め ら れ る . rmi ri 1 sin i 1 ni 1 ri 1 ri 1 1 sin i cos i 1 ni ri sin i 48 (4.7 ) 各 層 の 電 波 伝 播 時 間 , t mi は t mi 1 ni 1 ri 1 ri 1 ni 2ri 1ni 1 ri 1 1 1 cos i 1 ni ri sin i c c sin i 1 ri (4.8 ) で与えられる. ここに,cは光速である.2 回の観測の差として 4 n 1 2 0 sin 2 0 n m ,i ns ,i ri i 77.6 0.373 p 10 6 e T T2 (4.9 ) (4.1 0 ) こ こ に , 0 は 衛 星 点 に お け る オ フ ナ デ ィ ア 角 , n m ,i , n s , i は マ ス タ ー ,ス レ ー ブ 画 像 の 第 i 大 気 層 の 屈 折 率 , ri は 第 i 層 に お け る 大 気 の 鉛 直 方 向 厚 さ で あ る . ま た 式 ( 4.10 ) は 屈 折 率 の 経 験 式 で あ り , p,T,e は そ れ ぞ れ 大 気 圧 (hPa ) , 気 温 (K) 水 蒸 気 圧 ( hPa)を 表 す . 大 気 遅 延 補 正 は 式 ( 4.9 ) に あ る よ う に ピ ク セ ル 毎 の オ フ ナ デ ィ ア角に依存して,これを考慮することで補正はより効果的になる. 本 研 究 で は , 式 ( 4.9 ) に 基 づ い て GPV-MSM デ ー タ を 用 い て 大 気 遅延量を推定する. 49 図 4.3 地 表 点 A か ら 衛 星 高 度 S ま で の 電 波 伝 搬 ( 島 田 , 19 9 9) 50 5. 解析データ 5.1 メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV-MSM デ ー タ JMA-GPV ( Japan Meteor ological Agency Grid Point Value ) は 気 象 庁 ( JMA ) の 数 値 解 析 予 報 シ ス テ ム ( Numerical Analysis and Prediction System , NAPS ) 等 で 毎 日 作 成 さ れ て い る 数 値 予 報 モ デ ル の 格 子 点 値 ( GPV ) . こ の デ ー タ に は 全 球 数 値 予 報 モ デ ル GPV(Global Spectral Model , GSM) ・ 領 域 数 値 予 報 モ デ ル GPV (Regional Spectral Model , RSM) ・ メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV (MesoScale Model ,MSM)・1ヶ 月 ア ン サ ン ブ ル 数 値 予 報 モ デ ル (SF1)・ 週 間 ア ン サ ン ブ ル 数 値 予 報 モ デ ル ・ 全 球 波 浪 数 値 予 報 モ デ ル GPV 等 の 6種 類 が あ る . 気 象 庁 は GPV- MSM デ ー タ を 2002 年 7 月 か ら 2006 年 2 月 ま で 毎 日 4 回 ( 6 時 間 間 隔 ) , 3 時 , 9 時 , 15 時 及 び 21 時 を 初 期 値 と し て 18 時 間 予 報 デ ー タ を 配 信 し て い る . 領 域 は 北 緯 22.4 度 , 東 経 120 度 ~ 北 緯 47.6 度 , 東 経 150 度 で あ る . こ れ は 地 上 デ ー タ 及 び 高 層 デ ー タ に 分 け て い る .地 上 デ ー タ は 水 平 方 向 が 緯 度 方 向 0.1 度 と 経 度 方 向 0 .125 度 の 約 10km の 格 子 距 離 点 で , 海 面 気 圧 , 風 速 の 南 北 ・ 東 西 成 分 ,気 温 ,相 対 湿 度 ,降 水 量 ,上 中 下 層 の 雲 量 の デ ー タ 要 素 か ら な り ,1 時 間 毎 に 作 成 さ れ て い る .高 層 の 14 層( 975 hPa,950hPa, 925hPa ,900hPa ,850hPa ,800hPa ,700hPa ,500hPa ,400hPa ,300hPa , 250hPa ,200 hPa ,150hPa ,100 hPa )の 各 等 圧 面 デ ー タ は 緯 度 方 向 0.2 度 と 経 度 方 向 0.25 度 の 約 20km の 格 子 で , 3 時 間 間 隔 で 作 成 さ れ , そのデータ要素はジオポテンシャル高度,風速の南北・東西成分, 気 温 で あ る . ま た , 相 対 湿 度 と 鉛 直 流 に つ い て は 300 hPa ま で の 1 0 層 で 与 え ら れ て い る . 2006 年 3 月 以 後 は 毎 日 8 回 ( 3 時 間 間 隔 ) , 0 時 ,3 時 ,6 時 ,9 時 ,12 時 ,15 時 ,18 時 及 び 21 時 を 初 期 値 と し 51 て 15 時 間 予 報 デ ー タ を 配 信 し て い る . 地 上 デ ー タ は 水 平 方 向 が 緯 度 方 向 0.05 度 と 経 度 方 向 0.0625 度 の 約 5km の 格 子 距 離 点 で ,1 時 間 毎 に 作 成 さ れ て い る . 高 層 の 16 層 ( 1000 hPa , 975 hPa , 950hPa , 925hPa ,900hPa ,850hPa ,800hPa ,600hPa ,700hPa ,500hPa ,400hPa , 300hPa , 250 hPa , 200 hPa , 150hPa , 100hPa ) の 各 等 圧 面 デ ー タ は 緯 度 方 向 0.1 度 と 経 度 方 向 0.125 度 の 約 10km の 格 子 で ,3 時 間 間 隔 で 作成される. 本 研 究 で は 2003 ~ 2005 年 の メ ソ 数 値 予 報 モ デ ル GPV -MSM デ ー タ を用いて水蒸気の影響を評価する. JERS -1 SAR の デ ー タ 取 得 は 日 本 付 近 で は ほ ぼ 午 前 10 時 30 分 頃 で あ る の で ,以 下 の 解 析 で は GPV-MSM デ ー タ は 近 接 の 時 刻 で あ る 9 時 の初期値データを用いる. 5.2 衛星データ 濃 尾 平 野 に お け る 1992 年 9 月 か ら 1998 年 9 月 ま で の 32 シ ー ン JERS -1 SAR 画 像 を 用 い た . 32 シ ー ン JERS - 1 SAR 画 像 は 季 節 に よ り ,春 が 8 シ ー ン ,夏 が 9 シ ー ン ,秋 が 7 シ ー ン ,冬 が 8 シ ー ン で あ る ( 表 5.1 ) . 32 シ ー ン 画 像 に 干 渉 の パ ラ ー メ ー タ に よ り 20 シ ー ン を 検 討 す る .干 渉 SAR で 得 ら れ た 変 動 域 は 研 究 地 区 を 網 羅 す る . 図 5.1 は 名 古 屋 ・ 岐 阜 ・ 四 日 市 に お け る 1971 年 か ら 2000 年 の 月 平 均 降 水 量 で あ る .こ れ を 見 る と 冬 は 夏 に 比 べ て 水 蒸 気 量 が 相 対 的 に 尐 な い こ と が 示 さ れ て い る . 図 5.1 に 示 す よ う に , SAR 観 測 に お いて冬の気象状況は夏に比べてよいと言える. SIGMA- SAR プ ロ セ ッ サ ( Shimada, 1999 ) を 利 用 し て 32 シ ー ン JERS -1 SAR 画 像 の 差 分 干 渉 処 理 の 結 果 は 40 シ ー ン の 組 み 合 わ せ に つ い て 成 功 し た ( 表 5.2 ) . 基 線 長 に よ り , 200m 以 下 は 4 シ ー ン , 52 200m ~ 800m は 13 シ ー ン , 800m 以 上 は 23 シ ー ン で あ る . 基 線 長 か ら 見 て み る と , 基 線 長 が 200m 以 下 の と き 軌 道 縞 の な い き れ い な 画 像 が で き ,800m 以 下 の と き に は 軌 道 縞 が 多 尐 残 る が ,比 較 的 き れ い な 画 像 が で き ま し た .基 線 長 が 2000m を 超 え る と 干 渉 画 像 を 作 る こ と は 難 し く な り , 今 回 の 処 理 で は 最 長 の 基 線 長 が 2284 m で あ る . し た が っ て ,2 つ の デ ー タ の 期 間 よ り も ,基 線 長 の 方 が 干 渉画像をつくる上で重要だと考えられる. 2回のレーダ観測から取った画像の干渉度(コヒーレンス)が 2 つ の レ ー ダ の 視 線 方 向 に 垂 直 な 位 置 間 隔( 垂 直 基 線 B )に 大 き な 影 響 を 与 え ら れ ,垂 直 基 線 B が 長 い ほ ど ,2 つ の 画 像 の コ ヒ ー レ ン ス が 落 ち る ( 飛 田 , 2003 ) . か つ て の InSAR の 理 論 及 び 数 学 モ デ ル を 基 づ い て ,長 い 垂 直 基 線 B の 干 渉 ペ ア を 利 用 す る 時 に は 誤 差 が 発 生 す る 可 能 性 が あ る ( 鄭 ・ 福 山 , 2005 ) . 本研究では,大気遅延量を評価するには,濃尾平野を観測した 1998 年 5 月 6 日 ( 春 ) と 同 年 6 月 19 日 ( 夏 ) の デ ー タ を 用 い た . 1998 年 5 月 6 日 と 6 月 19 日 の 干 渉 ペ ア は 基 線 長 が 213m,時 間 間 隔 が 44 日 で あ る . 53 表 5.1 J ERS -1 SAR 画 像 の 季 節 分 布 12 冬 1 2 3 930301 春 4 5 6 夏 7 8 9 秋 10 11 930414 930528 960305 春 970405 970519 980323 980506 930711 930824 950615 960601 夏 960828 970702 980619 970815 980802 920906 921020 931120 秋 951025 970928 971111 980915 921203 930116 冬 940216 950203 951208 970107 971225 980207 54 (mm) 300 250 200 150 100 50 名古屋 岐阜 四日市 0 1 2 3 図 5.1 4 5 6 7 (月) 8 9 197 1 ~ 2000 年 の 月 平 均 降 水 量 55 10 11 12 表 5.2 差 分 干 渉 画 像 に お け る 基 線 長 と 時 間 間 隔 ファイル名 nob001 nob003 nob005 nob009 nob012-2 nob013 nob014 nob015-2 nob016 nob017 nob018-2 nob019-2 nob023 nob024 nob025 nob026 nob030 nob033 nob034 nob039-2 nob041 nob042 nob045 nob046 nob027 nob028 nob029 nob031 nob032 nob036 nob037 nob038 nob040 nob044 nob049 nob050 nob052 nob053 nob055 nob057 slave 980506 980619 980207 970815 970405 970107 980619 980506 980323 980207 971225 971111 980207 980323 951208 930824 970107 950203 960305 971111 971225 971111 980207 971225 930414 930414 921020 950203 950615 960305 960305 980506 971111 971225 971225 931120 950615 931120 960305 960828 master 980619 980802 980323 970928 970519 970405 980915 980802 980619 980506 980323 980207 980619 980915 960601 931120 970519 951025 970519 980323 980619 980915 980915 980506 930528 930711 921203 950615 951208 960828 970107 980915 980506 980802 980915 951208 951025 960305 960601 970107 期間(日) 44 44 44 44 44 88 88 88 88 88 88 88 132 176 176 88 132 264 440 132 176 308 220 132 44 88 44 132 176 176 308 132 176 220 264 748 132 836 88 132 56 基線長(m) 213 589 199 -1188 -987 436 -1726 805 2084 2072 -1749 -88 2284 359 -817 520 -513 -295 823 111 339 472 559 128 596 -1642 -1841 1081 1344 1688 1335 -1512 1988 932 -1388 -1329 -1375 -680 -1462 -358 5.3 高層気象観測年報データ 高層気象観測年報データは日本国内の高層気象観測官署におけ るレーウィンゾンデ観測とレーウィン観測で得られた観測資料及 び そ の 月 統 計 値 資 料 等 を 収 録 し た も の で あ る .レ ー ウ ィ ン ゾ ン デ 観 測 で は 上 空 約 30 km ま で の 気 圧 ,気 温 ,湿 度 ,風 向 ,風 速 の 観 測 を , ま た レ ー ウ ィ ン 観 測 で は 上 空 約 15km ま で の 風 向 , 風 速 の 観 測 を 行 っ て い る .収 録 さ れ た 資 料 は ,指 定 気 圧 面 資 料 ,月 統 計 値 資 料 ,気 温 湿 度 観 測 点 資 料 ,風 観 測 点 資 料 ,イ ン デ ッ ク ス で 構 成 さ れ て お り , それぞれバイナリシーケンシャルファイル形式で月別に収録され ている. 本 研 究 で は , 1992 年 か ら 1998 年 ま で の 気 象 庁 の 発 行 し た 高 層 気 象 観 測 年 報 デ ー タ を 利 用 し て い た .日 本 で は ,高 層 気 象 観 測 年 報 デ ー タ を 観 測 す る 地 点 が 20 カ 所 だ け で あ る . こ の デ ー タ は 相 対 湿 度 が 地 表 面 か ら 300hPa ま で が 11 層 に 分 割 さ れ , 6 時 間 毎 に 生 成 さ れ て い る . JERS -1 の デ ー タ 取 得 は 日 本 付 近 で ほ と ん ど 午 前 10 時 30 分頃である. 日本全国には高層気象の観測地点が尐ないので濃尾平野には観 測 地 点 が な く ,濃 尾 平 野 に お け る 水 蒸 気 影 響 の 研 究 は 難 航 し て い る . 濃 尾 平 野 の 一 番 近 い 観 測 点 は 潮 岬 で あ る .濃 尾 平 野 に お け る 大 気 影 響 の 研 究 は ,潮 岬 の 9 時 の デ ー タ を 利 用 し た .図 5.2 は 日 本 に お ける高層気象の観測地点を示した. 57 図 5.2 高層気象の観測地点 58 6. 地 盤 変 動 解 析 へ の InSAR の 適 用 6. 1 干渉画像 濃尾平野は日本の中央に位置し,有数の平野である.養老山地・ 尾 張 丘 陵・伊 勢 湾・木 曽 三 川 な ど の 多 様 な 地 質 条 件 は 地 域 の 気 候 変 化 に 大 き な 影 響 を 与 え る .干 渉 画 像 で 示 さ れ る 地 域 は 濃 尾 平 野 の 中 心 部 に 位 置 し て お り ,西 北 部 の 養 老 山 地( 標 高 約 898m )以 外 は ほ ぼ 平 坦 で あ る ( 図 6 .2) . 水 蒸 気 分 布 の 違 い に よ る 大 気 遅 延 を 検 討 す る フィールドとしてきわめて有効な地域の一つである. 本 研 究 で は ,上 に 述 べ た 方 法 に よ る 大 気 遅 延 量 評 価 と し て ,濃 尾 平 野 を 観 測 し た 1998 年 5 月 6 日 と 同 年 6 月 19 日 の JERS- 1 SAR デ ー タ を 用 い た .デ ー タ 処 理 は ,SIGMA-SAR プ ロ セ ッ サ( Shimada, 1999 ) を 利 用 し た . 差 分 干 渉 画 像 ( 図 6.1) は 西 北 部 と 東 南 部 で 位 相 変 化 が大きく,視線距離が伸びていることを示している. 6.2 GPV -MSM デ ー タ の 選 択 以 下 で は ,1998 年 5 月 6 日 と 1998 年 6 月 19 日 の 干 渉 画 像 を 例 と し て , GPV-MSM デ ー タ を 利 用 す る 類 似 天 気 図 法 に つ い て 検 討 す る . GPV-MSM デ ー タ を 選 択 す る 手 順 は 次 の 5 つ の 過 程 か ら な る . 1) JERS -1 の 観 測 日 ( X ) の 地 上 天 気 図 の 用 意 . 2 ) 2003 年 以 降 で 類 似 の 天 気 図 ( Y ) の 抽 出 . 3) X , Y 両 日 の 名 古 屋 で 地 表 気 象 デ ー タ の 比 較 . 4) 観 測 日 ( X ) の 潮 岬 で の ラ ジ オ ゾ ン デ 高 層 気 象 観 測 デ ー タ と 3)で 見 出 し た 日( Y )の GPV-MSM デ ー タ を 925 hPa ,850hPa , 800hPa の 各 等 圧 面 で 気 象 要 素 の 比 較 . 5) 最 類 似 日 を 決 定 し Y の 日 に お け る GPV-MSM デ ー タ の 取 得 . 59 図 6.1 濃 尾 平 野 で 1998 年 5 月 6 日 と 1 998 年 6 月 19 日 の JER S - 1 S AR 観 測 結 果 が 計 算 さ れ た 差 分 干 渉 画 像 . UTM 座 標 に 読 み 込 ん だ . 60 図 6.2 差 分 干 渉 画 像( 図 6 .1 )に 示 し た 領 域 の 地 形 図 . 等 高 線 の 間 隔 は 100 m, 図 中 の 数 字 の 単 位 は m, 白 色 は 海 で あ る . 61 上 に 述 べ た 手 順 1)で 得 た 1998 年 5 月 6 日 と 1998 年 6 月 19 日 の 天 気 図( 図 6 .3,図 6.4)に 示 す よ う に ,1998 年 5 月 6 日 の 天 気 は , 日 本 の 南 海 上 に 梅 雤 前 線 が 停 滞 し , 東 海 地 域 は 曇 り で あ る . 1998 年 6 月 19 日 は , 各 地 に 大 雤 を 降 ら せ た 梅 雤 前 線 上 の 低 気 圧 が 日 本 列島を横断して三陸沖の方へ進んだ. 手 順 2) で は , 2003 年 か ら 2005 年 に か け て の 地 上 天 気 図 を 用 い て ,1998 年 5 月 6 日 の 天 気 パ タ ー ン に 対 す る 4 ,5,6 月 ,1998 年 6 月 19 日 の 天 気 パ タ ー ン に 対 す る 5, 6, 7 月 の 類 似 し た 天 気 図 を 見 出 す .見 出 し た 類 似 天 気 図 の 日( Y )の 気 象 デ ー タ を 表 6.1 及 び 表 6.2 に 示 す . 名 古 屋 の 気 象 観 測 点 は 研 究 地 域 の 東 南 部 に 位 置 す る . 手 順 3) で 1998 年 5 月 6 日 と 1998 年 6 月 19 日 の 名 古 屋 で の 地 表 面 気 象 観 測 デ ー タ ( 気 温 ・ 海 面 気 圧 ・ 水 蒸 気 圧 ) を , 手 順 2) で 見 出 し た 日 の 地 表 面 気 象 デ ー タ と 比 較 す る と( 表 6. 1 ,表 6 .2 ),気 温 ・ 海 面 気 圧 ・ 水 蒸 気 圧 の 地 表 面 気 象 観 測 デ ー タ に つ い て , JERS -1 デ ー タ 取 得 日 ( X ) と そ れ ぞ れ の 手 順 2) で 見 出 し た 日 ( Y ) の 気 象 要 素 の 差 は 変 化 が 大 き い . そ の う ち , 気 温 の 差 が 5℃ よ り 小 さ い 日 , 或 い は 海 面 気 圧 の 差 が 5hPa よ り 小 さ い 日 を 見 出 し , 類 似 の 日 ( Y ) と し て 表 6.3 と 表 6.4 で 示 す . 手 順 4) で 気 象 庁 が 提 供 す る ラ ジ オ ゾ ン デ に よ る 高 層 観 測 デ ー タ (高 層 気 象 観 測 年 報 ) を 用 い て , 1998 年 5 月 6 日 と 1998 年 6 月 19 日 と 手 順 3 ) で 見 出 し た 日 の 潮 岬 で の 高 層 観 測 デ ー タ を 925 hPa , 850hPa , 800hPa 等 圧 面 で 気 象 要 素 ( ジ オ ポ テ ン シ ャ ル 高 度 , 気 温 , 水 蒸 気 圧 )と 比 較 す る .潮 岬 は 研 究 地 域 に 最 も 近 い 高 層 気 象 観 測 点 で あ る .1998 年 5 月 6 日 と 2004 年 5 月 27 日 の 高 層 気 象 デ ー タ に お け る , 各 気 圧 面 の 気 温 差 は 2.1~ 4.4℃ で , 平 均 値 が 3.3℃ で あ り , 62 ジ オ ポ テ ン シ ャ ル 高 度 の 差 は 平 均 値 が 10.6m で あ る .水 蒸 気 圧 の 差 は 3 .3~ 6 .6hPa で ,平 均 値 が 4.8 hPa に な る( 表 6.3).し た が っ て , 他 の 日 の 気 象 要 素 と 比 べ て , 1998 年 5 月 6 日 に 対 し て 2004 年 5 月 27 日 の 高 層 気 象 要 素 は 最 も 類 似 し て い る . 同 様 に , 1998 年 6 月 19 日 に 対 し て 2005 年 7 月 12 日 の 気 象 要 素 が 他 の 日 よ り ,類 似 性 も 認 め ら れ る ( 表 6 .4) . 即 ち , 1998 年 6 月 19 日 と 2005 年 7 月 12 日 の 気 温 差 は 0.4~ 2.1 ℃ で ,平 均 値 が 1 ℃ 未 満 で あ り ,ジ オ ポ テ ン シ ャ ル 高 度 の 差 を 平 均 す る と 2m 以 下 で あ る . 水 蒸 気 圧 の 差 は 0.4 ~ 2. 3hPa で , 平 均 値 は 1.3 hPa で あ る . 手 順 5)で は ,1)~ 4 )の 手 順 に よ り ,天 気 図 ・ 地 表 気 象 デ ー タ ・ 高 層 等 圧 面 気 象 デ ー タ を 総 合 的 に 精 査 す る .気 象 条 件 が 最 も 類 似 す る 日 と し て ,1998 年 5 月 6 日 に 対 し て は 2004 年 5 月 27 日 が ,1998 年 6 月 19 日 に 対 し て は 2005 年 7 月 12 日 が 選 択 し た (図 6.5 と 図 6. 6).こ れ ら の 天 気 図 か ら わ か る よ う に ,2004 年 5 月 27 と 1998 年 5 月 6 日 , 2005 年 7 月 12 日 と 1998 年 6 月 19 日 の 天 気 図 は 類 似 し て いる. 63 図 6.3 1998 年 5 月 6 日 の 天 気 図 64 図 6. 4 19 98 年 6 月 1 9 日 の 天 気 図 65 図 6.5 1998 年 5 月 6 日 の 気 象 条 件 と 最 も 類 似 す る 2004 年 5 月 27 日 の 天 気 図 . 66 図 6.6 1998 年 6 月 19 日 の 気 象 条 件 と 最 も 類 似 す る 2005 年 7 月 12 日 の 天 気 図 . 67 表 6.1 1998 年 5 月 6 日 の 地 表 面 気 象 観 測 デ ー タ( X )と 手 順 2 )で 見出した日(Y)の地表面気象データの比較. 日付 5/6/1998 (X) 4/2/2005 4/12/2005 5/17/2005 5/26/2005 5/2/2004 5/27/2004 (Y) 4/28/2003 5/10/2003 5/11/2003 5/12/2003 5/23/2003 P 1023.7 1022.7 1019.2 1020.9 1017.1 1025.9 1022.2 1023.4 1021.7 1024.4 1025.4 1018.7 T 20.6 9.3 12.1 17.8 19.5 18.7 23.3 18.8 18.1 17.7 18.6 21.9 E 19.2 5.4 4.8 12.6 13.2 15.1 16.9 11.1 11.2 11.5 12.2 16.6 (Y-X) ΔP ΔT ΔE 1.0 4.5 2.8 6.6 2.2 1.5 0.3 2.0 0.7 1.7 5.0 11.3 8.5 2.8 1.1 1.9 2.7 1.8 2.5 2.9 2.0 1.3 13.8 14.4 6.5 6.0 4.1 2.3 8.1 8.0 7.6 7.0 2.6 X : JE RS -1 の 観 測 日 , Y : GP V-M SM の 存 在 す る 日 ,Y - X : 観 測 日 と 選 択 し た 日 の 各 地 表 面 気 象 要 素 の 差 の 絶 対 値 ,P:海 面 気 圧 ( hPa), T : 気 温 ( ℃ ) , E : 水 蒸 気 圧 (hP a), Δ P : 海 面 気 圧 の 差 ( h P a ) , Δ T : 気 温 の 差 ( hP a) . 温 の 差 (℃ ), Δ E : 水 蒸 気 圧 の 差 (hP a) . 68 表 6.2 1998 年 6 月 19 日 の 地 表 面 気 象 観 測 デ ー タ( X )と 手 順 2 ) で見出した日(Y)の地表面気象データの比較. 日付 6/19/1998 (X) 5/6/2005 5/18/2005 6/11/2005 6/22/2005 7/10/2005 7/12/2005 (Y) 5/4/2004 5/16/2004 5/31/2004 6/26/2004 7/1/2003 7/5/2003 P 1007.4 1007.4 1014.1 999.8 1002.4 1006.6 1005.6 1004.9 1008.7 1008.7 1006.2 1007.1 1007.2 T 21.9 18.7 18.8 22.7 22.8 25.2 23.8 19.4 17.7 28.1 25.0 23.7 23.3 E 25.5 18.3 13.0 23.7 24.4 26.9 26.8 21.4 18.8 27.8 26.0 23.7 19.5 69 (Y-X) ΔP ΔT ΔE 0.0 6.7 7.6 5.0 0.8 1.8 2.5 1.3 1.3 1.2 0.3 0.2 3.2 3.1 0.8 0.9 3.3 1.9 2.5 4.2 6.2 3.1 1.8 1.4 7.2 12.5 1.8 1.1 1.4 1.3 4.1 6.7 2.3 0.5 1.8 6.0 表 6.3 1998 年 5 月 6 日 の 高 層 気 象 観 測 デ ー タ ( X ) と 手 順 3) で見出した日(Y)の高層気象観測データの比較. 日付 5/6/1998 4/2/2005 5/17/2005 5/2/2004 5/27/2004 4/28/2003 5/10/2003 5/11/2003 5/12/2003 (X) (Y) 4/2/2005 5/17/2005 5/2/2004 5/27/2004 (Y-X) 4/28/2003 5/10/2003 5/11/2003 5/12/2003 A 858 828 830 869 856 852 826 842 858 925hPa T 17 8.9 10.6 14 14.9 12.9 11.7 11.7 12.2 E 18.6 10.5 11.3 12.6 14.2 10.9 11.1 12.7 12.4 A 1577 1522 1531 1576 1566 1556 1529 1545 1561 ΔT 8.1 6.4 3 2.1 4.1 5.3 5.3 4.8 ΔE 8.1 7.4 6 4.4 7.7 7.5 6 6.2 ΔA 55 46 1 11 21 48 32 16 ΔA 30 28 11 2 6 32 16 0 850hPa T 13.5 3.5 8.4 9.1 10.1 8.1 7.6 7 8.4 E 15 6.7 4.9 7.3 8.4 6.9 9.6 10 9.3 A 2086 2012 2033 2076 2067 2054 2027 2042 2063 ΔT 10 5.1 4.4 3.4 5.4 5.9 6.5 5.1 ΔE 8.3 10.2 7.7 6.6 8.1 5.4 5 5.8 ΔA 74 53 10 19 32 59 44 23 800hPa T 11.1 0.8 11.1 6.4 6.7 5.1 5.2 4.5 7.8 E 12.7 4.5 0.7 4.5 9.4 2.8 8.2 8.4 10 ΔT 10.3 0 4.7 4.4 6 5.9 6.6 3.3 ΔE 8.2 12 8.2 3.3 9.9 4.5 4.3 2.7 A: ジ オ ポ テ ン シ ャ ル 高 度 (m) , T : 気 温 (℃ ) , E : 水 蒸 気 圧 ( hPa ) , Δ A : ジ オ ポ テ ン シ ャ ル 高 度 の 差 (m) , Δ T : 気 温 の 差 ( ℃ ) , Δ E : 水 蒸 気 圧 の 差 (hP a ) . 70 表 6 .4 1 99 8 年 6 月 1 9 日 の 高 層 気 象 観 測 デ ー タ ( X ) と 手 順 3)で 見 出 し た 日 ( Y ) . の高層気象観測データの比較. 日付 6/19/1998 5/6/2005 7/10/2005 7/12/2005 5/4/2004 5/16/2004 6/26/2004 7/1/2003 7/5/2003 (X) (Y) 5/6/2005 7/10/2005 7/12/2005 5/4/2004 (Y-X) 5/16/2004 6/26/2004 7/1/2003 7/5/2003 A 747 726 752 747 737 767 745.0 734 750 925hPa T 21.1 13.2 21.5 21.5 16.7 18.5 21.1 16.1 19.4 E 24.5 15.2 24.4 24.9 18.8 20 22.0 16.3 21.6 A 1477 1437 1483 1478 1455 1489 1475.0 1454 1478 850hPa T 17 11.2 18.8 17.4 13.8 14.9 17.5 15.3 18.5 E 19.4 13.3 18.5 17.1 15.8 15.9 17.6 17.4 18.5 A 1993 1943 2003 1996 1965 2001 1992.0 1968 1998 800hPa T 13.4 10.7 16.5 15.5 11.6 12.9 14.6 13.5 15.9 E 14.9 12.9 14.6 16.2 12.8 14.6 14.3 15.5 15.5 ΔA 21 5 0 10 20 2.0 13 3 ΔT 7.9 0.4 0.4 4.4 2.6 0.0 5 1.7 ΔE 9.4 0.2 0.4 5.7 4.5 2.5 8.2 2.9 ΔA 40 6 1 22 12 2.0 23 1 ΔT 5.8 1.8 0.4 3.2 2.1 0.5 1.7 1.5 ΔE 6.1 0.9 2.3 3.6 3.5 1.8 2 0.8 ΔA 50 10 3 28 8 1.0 25 5 ΔT 2.7 3.1 2.1 1.8 0.5 1.2 0.1 2.5 ΔE 2 0.3 1.3 2.1 0.3 0.6 0.6 0.6 71 6. 3 水蒸気分布の復元 こ こ で は , 2004 年 5 月 27 日 と 2005 年 7 月 12 日 の GPV- MSM デ ー タ を 用 い て ,1998 年 5 月 6 日 と 1998 年 6 月 19 日 の 水 蒸 気 の 分 布 を 復元する. 図 6.7 と 図 6.8 の 黒 線 枠 内 の 範 囲( 以 下 で は 研 究 地 域 と 呼 ぶ )は 図 6.1 に 示 し た 領 域 と 同 じ で あ る . 各 観 測 日 の 地 上 面 か ら 300hPa 高 度 ま で 水 蒸 気 量 の 鉛 直 積 算 ( 図 6.7 ) に よ る と , 2004 年 5 月 27 日 と 2005 年 7 月 12 日 の 水 蒸 気 分 布 は か な り 異 な っ て い る .研 究 地 域 内 で の 2005 年 7 月 12 日 の 平 均 可 降 水 量 は , 2004 年 5 月 27 日 の 約 3 倍 に な っ て い る .図 6.7b か ら 図 6.7a の 可 降 水 量 を 差 し 引 い て , 2 つの観測日における可降水量の差を求めた.研究地域内では可降 水 量 の 差 の 分 布 は 不 均 一 で ,西 部 か ら 東 南 部 に 増 加 す る 傾 向 が あ り , 西 北 部 の 最 小 値 (39kg/m 2 )と 東 南 部 の 最 大 値 (45kg/m 2 )の 差 が 6kg/m 2 に な る ( 図 6.8). 図 6. 9 は , (a) 2004 年 5 月 27 日 と (b) 2005 年 7 月 12 日 の 北 緯 34.9 度 線 上 に お け る 高 度 975hPa か ら 500hPa ま で の 比 湿 の 経 度 の 鉛 直 断 面 分 布 を 表 す .北 緯 34.9 度 は 研 究 地 域 の 中 央 の 緯 度 に 当 た る . 2005 年 7 月 12 日 の 各 層 の 比 湿 量 は 2004 年 5 月 27 日 よ り 大 き い . 両 日 の 比 湿 量 は 高 度 に よ っ て 減 尐 す る 傾 向 が あ る .水 平 方 向 の 比 湿 の 変 化 は 両 日 と も 下 層 で 大 き く ,850hPa 以 上 い ず れ の 日 も 緩 や か で あ る .し か し ,2004 年 5 月 27 日 は 700hPa 面 以 高 で も 変 化 が 大 き く な る . 2004 年 5 月 27 日 は ほ ぼ 全 層 に わ た っ て 南 風 が 見 ら れ る ( 図 6. 9a).一 方 ,2005 年 7 月 12 日 は ほ ぼ 全 層 で 西 風 で あ る( 図 6.9b ). 2 つ の 観 測 時 期 に お け る 比 湿 の 差 の 断 面 分 布 を 図 6.10 に 表 す .こ の う ち , 両 日 の 比 湿 差 は , 地 表 面 か ら 925hPa 面 ま で 増 加 し , 925hPa 面 か ら 700hPa 面 に か け て 最 大 に な り , 700hPa 面 以 高 で 減 尐 す る 傾 72 向 を 示 す .500 hPa 面 の 値 は 4g/kg に な る .一 方 ,水 平 方 向 で は ,地 表 面 か ら 925 hPa 面 ま で 減 尐 す る 傾 向 が あ り , 地 表 面 で は 変 化 が 大 き く ,925hPa 面 で は 小 さ く な る .925 hPa 面 か ら 700hPa 面 に か け て 変 化 も 大 き く ,700 hPa 面 以 高 で 変 化 は 小 さ い .東 部 の 比 湿 は 西 部 よ り著しく大きくなる. 各 観 測 日 の 北 緯 34.9 度 に お け る 高 度 975hPa か ら 500hPa ま で の 屈 折 指 数 の 鉛 直 断 面 図 を 図 6.11 に 示 し た . 各 観 測 日 の 屈 折 率 の 鉛 直 変 化 は ,図 6.9 に 示 し た 比 湿 の 鉛 直 変 化 の パ タ ー ン と ほ ぼ 同 様 で あ る .水 平 方 向 に は 下 層 で 変 化 が 見 ら れ る が ,図 6.9 に 示 し た 比 湿 と比べて変化が小さい.2 つの観測時期における屈折率の差の断面 分 布 を 図 6.12 に 示 し た .両 日 の 屈 折 率 の 差 は 図 6.10 に 示 す 比 湿 の 差の空間変化パターンと類似している. 73 (a)2004 年 5 月 27 日 図 6.7 各 観 測 日 に お け る 地 上 面 か ら 30 0hPa 高 度 ま で の 鉛 直 積 算 水 蒸 気 量 の 分 布 .( a) 2004 年 5 月 27 日 . ( b) 200 5 年 7 月 12 日 . 黒 線 枠 内 の 範 囲 は 図 6 .1 に 示 し た 領 域 と 同 じ で ,図 中 の 数 字 の 単 位 は k g/m 2 で あ る . 74 図 6.7 (b) 2005 年 7 月 12 日 75 図 6 .8 2 00 5 年 7 月 12 日 と 2 00 4 年 5 月 27 日 の 可 降 水 量 差の分布. 黒線枠内の範囲は研究地域である. 76 (a)2004 年 5 月 27 日 図 6. 9 各 観 測 日 の 北 緯 34. 9 度 に 沿 っ て 97 5hP a か ら 5 00h P a ま で の 比 湿 の 鉛 直 分 布 図 . ( a ) 2 004 年 5 月 2 7 日 . (b ) 2 005 年 7 月 12 日 . 等 比 湿 線 の 間 隔 は 1g /kg で , 図 中 の 数 字 の 単 位 は g/kg で あ る . 77 5 0 0 6 5 5 0 7 8 9 6 5 0 1 0 7 0 0 ー - 孟ー 二ー 園 田 ・ ・ 門= ーー ー ーや 7 5 0 8 0 0 1 ~己コ 8 5 0 9 0 0 9 5 0 了 ・ . . ・ ・ 4 1 6 1 3 6. 4E 1 3 6 . 6 E 1 3 6 . 8 E 1 3 7 E 1 3 7 . 2E 1 0吋 i t u d e( d e g r e e ) 図 6.9 ー ー ー ー ー ー ー ー・ 20m/s (b) 2005 年 7 月 12 日 78 図 6.1 0 北 緯 34 .9 度 に 沿 っ て 2005 年 7 月 12 日 と 2 004 年 5 月 27 日 の 比 湿 差 の 鉛 直 分 布 図 . 79 ( a ) 2 004 年 5 月 2 7 日 図 6 .1 1 各 観 測 日 の 北 緯 34 .9 度 に 沿 っ て 9 75h Pa か ら 50 0 hPa ま で の 屈 折 指 数 の 鉛 直 分 布 図 .( a )2 00 4 年 5 月 27 日 . (b) 20 0 5 年 7 月 12 日 .図 中 の 数 字 の 単 位 は N U で あ る . 80 500 550 200 600 650 220 . . . . . . ー 、 ' ・ ー .. f ﹃ ハU AU ( o a ζ 240 260 260 寸f - ωζ ハU RU vζ 。 一 、 . . . / 280 800 , , - 850 ー 砕 . ..・. 320 900. 340- ー 950ト360 360 1 3 6 . 4 E 1 3 6 . 6 E 136.8E 137E 137.2E 1 0吋 i t吋 e ( degr e e ) B 図 6.1 1 ( b) 2005 年 7 月 12 日 81 図 6.1 2 北 緯 34 .9 度 に 沿 っ て 2005 年 7 月 12 日 と 2004 年 5 月 27 日 の 屈 折 指 数 差 の 鉛 直 分 布 図 82 6. 4 大気遅延量の推定 研 究 地 域 で , 式 (4.9)に 2004 年 5 月 27 日 ( 1998 年 5 月 6 日 の 最 類 似 日 )と 2005 年 7 月 12 日( 1998 年 6 月 19 日 の 最 類 似 日 )の GPV-MSM デ ー タ を 適 用 し て ,JERS-1 SAR 観 測 方 向 の 大 気 遅 延 量 の 偏 差( 平 均 値 よ り )を 求 め , 大 気 遅 延 量 の 空 間 分 布 を 再 現 し た の が 図 6.13 で あ る .西 北 部 と 東 南 部 に 大 き な 変 化 が 存 在 し ,両 日 の 大 気 遅 延 量 の 最 大 偏 差 は 約 38mm に な る .国 土 地 理 院 発 行 の 50 メ ッ シ ュ の 数 値 標 高 モ デ ル (DEM) デ ー タ と GPV デ ー タ を 用 い て ,SAR 観 測 方 向 の 地 形 標 高 に よ る 大 気 遅 延 量 を 求 め , 図 6.14 に 示 し た . 地 形 標 高 に よ る 大 気 遅 延 量 は 研 究 地 域 の 西 北 部 に の み 分 布 す る .水 蒸 気 水 平 方 向 変 化 に よ る 大 気 遅 延 ( 図 6. 13) と 地 形 標 高 に よ る 大 気 遅 延 ( 図 6.14) を 合 成 し た 大 気 遅 延 分 布 を 図 6.15 に 表 す .大 気 遅 延 分 布 図( 図 6.15) は西北部と東南部で変化が大きくなることを示している. 6. 5 水蒸気による大気遅延の補正 図 6.16 は 1998 年 6 月 19 日 と 1998 年 5 月 6 日 の 差 分 干 渉 位 相 図 ( 図 6.1 ) に 対 し て , 求 め た 水 蒸 気 水 平 方 向 変 化 に よ る 大 気 遅 延 と 地 形 標 高 に よ る 大 気 遅 延 を 補 正 し た 結 果 で あ る . 図 6.16 に 示 す よ う に ,図 6.1 で の 西 北 部 と 東 南 部 の 位 相 が 大 幅 に 減 尐 す る こ と が 見 ら れ る .し か し , 西 北 部 で 位 相 の 残 留 が 見 ら れ る .こ れ は 地 盤 沈 下 が発生する可能性がある. 83 図 6. 13 大 気 遅 延 量 の 水 平 分 布 の 偏 差 図 .図 中 の 数 字 の 単 位 は mm, 等 値 線 の 間 隔 は 10mm , 白 色 は海である. 84 図 6. 14 地形標高による大気遅延図.図中の数 字 の 単 位 は mm ,等 値 線 の 間 隔 は 10m m ,白 色は海である. ある. 85 図 6. 15 大気遅延量図 86 図 6. 16 大気遅延量補正図 87 7. 濃尾平野における地盤変動の状況 7. 1 濃尾平野の概要 濃尾平野はかつての美濃の国の南西部から尾張の国の西部にま た が っ て い る こ と か ら ,濃 尾 平 野 と 名 付 け ら れ て い る .濃 尾 平 野 の う ち ,木 曽 川 左 岸 地 域 を 尾 張 平 野 と も 呼 ぶ .そ の 東 南 部 に は 名 古 屋 市 が あ り ,周 り の 市 町 村 と 共 に 名 古 屋 都 市 域 と 呼 べ る ほ ど の 人 口 と , 経済的な発展をしている. 一 方 ,右 岸 地 域 は 美 濃 平 野 と 呼 ば れ る .北 部 に は 岐 阜 ・ 大 垣 の 都 市 域 が ,伊 勢 平 野 と の 境 に は 桑 名 都 市 域 が 広 が っ て い る .そ れ ら の 中 間 地 帯 に ,輪 中 を 含 ん だ 農 業 地 帯 が あ る .こ の 平 野 は 大 き く み る と 東 高 ・ 西 低 の 地 形 を し て い る .平 野 の 中 で 洪 積 段 丘 が 占 め る 割 合 は 総 面 積 の 約 1 割 で あ る .そ の ほ と ん ど は 東 部 に 広 が る .こ れ に 対 し て 西 部 は ,木 曽・長 良・揖 斐 の 木 曽 三 川 が 集 ま る 低 湿 地 帯 を な し , 洪積段丘は養老山地の山麓部に急傾斜の幅の狭い複合扇状地が尐 し 残 っ て い る だ け で あ る . 面 積 全 体 の 9割 近 く を 沖 積 平 野 部 が 占 め ており,扇状地・自然堤防・三角州がよく発達している. 上 に も 述 べ た よ う に ,濃 尾 平 野 は 洪 積 層 と 沖 積 層 か ら な る 水 成 堆 積 平 野 で あ る ( 福 山 , 2005 ) . 7. 2 濃尾平野の地形・地質 濃 尾 平 野 は 西 を 養 老 山 地 , 東 を 尾 張 丘 陵 と し て , 東 が 高 ま り ,西 が 低 下 す る 東 高 西 低 の 濃 尾 傾 動 地 塊 運 動 の 進 行 の 結 果 ,平 野 西 側 部 分 で は 沖 積 層 ,洪 積 層 が 厚 く 分 布 し ,軟 弱 地 盤 を 形 成 し て い る .一 方 東 部 は 隆 起 を 反 映 し て ,尾 張 丘 陵 な ど の 洪 積 台 地 ,さ ら に は 猿 投 山 な ど の 山 地 が 発 達 し て い る ( 図 7.1 ) . 88 濃尾平野の第四紀層を除く深部地質構造については十分解明さ れ て い る と は 言 え な い の が 現 状 で あ る が ,温 泉 ボ ー リ ン グ 等 の 深 層 ボーリング資料等をもとに概略が推定されている.それによると, 中 古 生 層( 美 濃 帯 の チ ャ ー ト や 砂 岩・泥 岩 )や 花 崗 岩( 白 亜 紀 後 期 に 貫 入 )を 基 盤 と し て そ の 上 位 を 中 新 統( 平 野 南 西 部 で 砂 岩 泥 岩 互 層を主とし凝灰岩を伴う浅海成層として広域に分布(高田ほか, 1979 )が 覆 い ,東 海 湖 形 成 時 に 堆 積 し た 東 海 層 群 及 び そ れ に 続 く 第 四 紀 以 降 の 地 層( 弥 富 累 層 ,第 三 礫 層 ,海 部 累 層 ,第 二 礫 層 ,熱 田 層 ,第 一 礫 層 ,濃 尾 層 ,南 陽 層 )が 堆 積 し て い る .こ れ は 濃 尾 傾 動 地塊とともに氷河性の海面変動により形成されたと推定されてい る ( 図 7. 2) . 濃 尾 平 野 は 西 縁 を 養 老 断 層 系 ,南 縁 を 天 白 河 口 断 層 に 限 ら れ て お り ,平 野 下 に は 養 老 断 層 系 に 平 行 な 伏 在 断 層 が ボ ー リ ン グ 資 料 か ら 推 定 さ れ て い る .こ れ ら の 内 ,岐 阜 - 宮 線 ,大 藪 - 津 島 線 ,大 垣 - 今 尾 線 に つ い て は ,平 成 9 年 度 に 実 施 さ れ た「 尾 張 西 部 地 域 活 断 層 調 査 報 告 書 」( 愛 知 県 , 1998 ) の 結 果 , い ず れ も 累 積 性 を 持 つ 大 き な 上 下 変 位 が 無 い こ と が 確 認 さ れ て い る .こ れ ら の 構 造 線 を 横 切 っ て 行 わ れ た 平 成 11 年 度 に 行 わ れ た P 波 反 射 法 地 震 探 査 の 結 果 に お い て も ,基 盤 上 の 堆 積 層 に 明 瞭 な 不 連 続 は 認 め ら れ な か っ た .ま た , 養 老 断 層 系 の 南 東 延 長 方 向 に は 伊 勢 湾 断 層 が ,天 白 河 口 断 層 の 南 西 延 長 方 向 に は 四 日 市 - 桑 名 断 層 系 が 存 在 す る ( 愛 知 県 , 2002 ) . 89 図 7. 1 濃 尾 平 野 の 地 形 概 念 図 ( 坂 本 , 1984 ) 90 図 7. 2 7. 3 濃 尾 傾 動 地 塊 の 断 面 図 ( 牧 野 ほ か , 19 90 ) 濃尾平野の地盤沈下の状況 濃 尾 平 野 に お け る 地 盤 沈 下 が 注 目 さ れ た の は 1959 ( 昭 和 34) 年 秋 の 伊 勢 湾 台 風 の 被 災 か ら で あ る .そ の 後 地 域 を 漸 次 拡 大 し ,1973 ~ 74 年 に ピ ー ク を 迎 え た が , 地 下 水 揚 水 の 規 制 強 化 等 に よ り 現 在 で は 沈 静 化 傾 向 に あ る . 本 地 域 で 1972 ~ 1999 年 の 最 大 累 積 沈 下 量 は 約 1.8m に 達 し , 沈 下 域 は ほ ぼ 全 域 に 及 ぶ ( 図 7.3 ) . 91 図 7.3 197 2~ 199 9 年 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動 92 7.4 地盤沈下のメカニズム 一 般 に 地 盤 沈 下 の 原 因 は ,( a)軟 弱 な 地 盤 の 自 然 圧 密 に よ る 沈 下 , (b ) 断 層 な ど の 活 動 に よ る 地 盤 変 動 に 伴 う 沈 下 ,(c) 工 業 用 水 ・ 農 業 用 水・消 雪 用 水・冷 房 用 水 等 の 地 下 水 の 過 剰 揚 水 に よ る 沈 下( 図 7.4). (d ) 天 然 ガ ス の 汲 み 上 げ に よ る 沈 下 .( e)建 築 物 な ど の 表 面 載 荷 重 に よ る 軟 弱 地 盤 の 局 所 的 沈 下 な ど で あ る と 考 え ら れ て い る .( a) と (b ) は 自 然 的 原 因 で あ り , (c ) ・ (d) ・ (e ) は 人 間 活 動 が 原 因 で あ る . 松 澤( 1978 )は 濃 尾 平 野 で は 濃 尾 傾 動 地 塊 の 傾 動 運 動 に よ る 地 盤 の傾動沈下があることを指摘した. 図 7. 4 地 下 水 汲 み 上 げ に よ る 地 盤 沈 下 ( 千 葉 県 庁 , 201 0 ) 93 7.5 7.5. 1 GIS に よ る 地 盤 沈 下 の 解 析 水準測量データ 水 準 測 量 デ ー タ は 東 海 三 県 地 盤 沈 下 調 査 会 (愛 知 県 , 三 重 県 , 岐 阜 県 ,国 土 地 理 院 ,国 交 省 中 部 地 方 整 備 局 ,名 古 屋 市 ,名 古 屋 港 管 理 組 合 , 四 日 市 港 管 理 組 合 ) に よ る 1960 ~ 1999 年 の 水 準 測 量 成 果 を 用 い て い る . 水 準 測 量 成 果 の 観 測 点 は , 濃 尾 平 野 全 域 で 1600 カ 所 近 く に の ぼ る ( 図 7.5 ) .水 準 測 量 デ ー タ の 領 域 は 北 緯 34°50′ ~ 35°30 ′ , 東 経 136° 30′ ~ 137 °08 ′ の 範 囲 に 及 ぶ . 7.5. 2 解析方法 東 海 三 県 地 盤 沈 下 調 査 会 に よ る 1960 ~ 1999 年 の 水 準 測 量 成 果 に 対 し て ,約 千 数 百 カ 所 の 観 測 点 を 地 理 コ ー ド 化 し ,各 地 点 で の デ ー タ特性を調べて有効性などを検証した上で濃尾平野における地盤 沈下のデータベースを作成した. ま た , GIS ソ フ ト ウ ェ ア GRASS に 含 ま れ る 二 次 元 の 張 力 付 き ス プ ラ イ ン 補 間 法 を 用 い て ,各 観 測 地 点 の 地 盤 高 変 化 量 か ら ,各 年 間 の 変 動 量 に つ い て 二 次 元 の 面 (ラ ス タ ) デ ー タ を 作 成 し 等 変 化 量 分 布 を得た. さ ら に ,各 年 間 に 対 し て 得 た 地 盤 高 変 動 の 空 間 分 布 を 数 年 ~ 数 十 年 に わ た っ て 統 合 化 す る こ と に よ り ,そ れ ぞ れ の 期 間 に お け る 累 積 変 動 量 を 求 め た ( 福 山 , 2004) . 94 図 7. 5 濃 尾 平 野 全 域 観 測 点 ( 伊 藤 ・ 福 山 , 20 02 ) 95 7.5. 3 経年変化 図 7.6~ 7.10 に ,1975 ~ 1979 年 ,1980 ~ 1984 年 ,1985 ~ 1989 年 , 1989 ~ 1993 年 ,1994~ 1998 年 の 各 4 年 間 に お け る 地 盤 高 の 変 動 量 分布を示す. 4 年 間 に お け る 地 盤 高 の 変 動 量 分 布 は 1975 か ら 1998 年 ま で の 各 年 間 の 地 盤 高 変 動 の 空 間 分 布 を 4 年 に わ た っ て 統 合 化 し て ,求 め た 累積変動量である. 1975 ~ 1979 年 の 図 7.6 を 見 る と , 1980 年 代 以 前 は か な り の 沈 降 が 続 い て い る 地 域 が あ る .木 曽 三 川 や 庄 内 川 の 河 口 ,名 古 屋 港 周 辺 で 広 い 範 囲 で 高 い 沈 下 量 を 示 し て い る .そ の 一 方 で ,急 激 な 膨 張 が 生 じ て い る 地 域 も 存 在 し て い る .四 日 市 市 の 東 部 や 名 古 屋 の 西 部 な ど の 地 域 で 著 し い 隆 起 を 示 し て い る . こ れ は 1970 年 代 前 半 か ら 各 行 政 機 関 の 地 下 水 揚 水 の 規 制 強 化 等 に よ り ,地 下 水 位 の 回 復 に よ る 急激な膨張が発生していると考えられる. 1980 ~ 1989 年 の 図 7.7 と 図 7.8 に よ れ ば , 1980 年 代 以 降 は , 沈 降 は 全 体 的 に 鈍 化 の 傾 向 を た ど り ,養 老 断 層 以 南 な ど で は 緩 や か な 隆 起 が 起 こ っ て い る .し か し ,依 然 と し て 木 曽 三 川 河 口 か ら 輪 中 地 帯にかけて沈降が持続している. 1989 ~ 1998 年 の 図 7.9 と 図 7.10 に 示 す よ う に ,1990 年 代 に な る と ,名 古 屋 な ど の 都 市 域 で も 隆 起 が 認 め ら れ ,比 較 的 大 き な 沈 降 は , 以前沈降が激しかった地域からその周辺部に移動する傾向がある. 各 4 年 間 の 地 盤 高 変 動 図 を 検 討 し て み る と ,濃 尾 平 野 で 持 続 的 な 沈 下 域 ・ 隆 起 域 が 存 在 し て い る が ,年 を 経 る ご と に 沈 降 量 と 隆 起 量 の ど ち ら も 減 尐 す る 傾 向 が あ る .最 も 沈 降 の 激 し い 地 域 が 木 曾 三 川 の 河 口 付 近 か ら ,北 部 の 中 流 域 付 近 へ 次 第 に 移 行 し て い る こ と も 見 ら れ て い る .今 後 は ,詳 細 な 定 量 的 検 討 や 原 因 究 明 は 大 き な 課 題 に 96 なっている. 地 盤 沈 下 と は 自 然 的 ・ 人 為 的 な 要 因 に 分 け て い る .自 然 的 要 因 と は軟弱な地盤の自然圧密による沈下や断層などの活動による沈下 を 指 摘 す る が ,地 下 水 の 大 量 揚 水 な ど に よ る 人 為 的 要 因 に よ る 地 盤 沈 下 も あ る . 濃 尾 平 野 で は , 19 72 ~ 1999 年 の 最 大 累 積 沈 下 量 は 約 1.8m に 達 し ,沈 下 域 は ほ ぼ 全 域 に 及 ぶ .こ れ ほ ど 大 き な 地 盤 沈 下 の 最 も 重 要 な 要 因 は ,軟 弱 な 堆 積 層 の 自 然 圧 密 や 濃 尾 傾 動 盆 地 運 動 に よ る 自 然 的 原 因 だ け と し て 説 明 が つ か な く ,こ れ は 戦 後 の 高 度 経 済 成 長 な ど と 共 に 地 下 水 使 用 量 の 急 増 が あ り ,地 下 水 の 過 剰 汲 み 上 げ に よ る 圧 密 収 縮 の 加 速 で あ る と 考 え ら れ て い る ( 福 山 , 2003) . 97 7.5. 4 地盤沈下と土地利用変化 図 7.11 は , 中 部 圏 に お け る 1997 年 の 宅 地 利 用 動 向 調 査 を も と に 作 成 さ れ た 濃 尾 平 野 に お け る 土 地 利 用 図 で あ る .今 回 の 解 析 で は 土 地 利 用 状 況 を 簡 潔 に 示 す た め に ,森 林 ,農 地 ,工 業 用 地 ,住 宅 地 域,水系,道路の 6 種類に分類している. 図 7.12 は , 土 地 利 用 の 各 カ テ ゴ リ と 地 盤 高 変 動 量 の 関 係 を 示 し て い る .こ の 図 に 示 す よ う に , 水 域 や 農 地 で 沈 降 量 が 大 き く ,住 宅 域 や 工 業 用 地 で は 沈 下 は 相 対 的 に 小 さ い 傾 向 が 見 ら れ た .水 域 で 比 較 的 大 き な 沈 降 量 を 示 す 原 因 と し て は ,基 礎 工 事 が 深 く 打 ち 込 ま な い堤防等の表面載荷重による軟弱地盤の沈下であると考えられる. そ れ に 対 し て 工 業 用 地 で は ,一 般 に 基 礎 工 事 が 地 盤 沈 下 に 関 係 の な い( 地 下 水 位 の 変 動 の 影 響 を 受 け な い )支 持 層 に 到 達 さ せ ,深 く 打ち込まれ,構造物を支えるため沈降量は比較的小さい.しかし, こ う し た 地 点 を 含 む 周 囲 の 地 盤 が 沈 下 す る が ,支 持 層 で 支 え ら れ て い る 建 物 は 沈 下 し な い た め ,周 辺 地 盤 よ り 相 対 的 に 高 い 位 置 に な る 抜上がりを起こすと考えられる. 98 図 7.6 197 5 ~ 197 9 年 の 4 年 間 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動 99 図 7.7 198 0 ~ 198 4 年 の 4 年 間 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動 100 図 7.8 198 5 ~ 198 9 年 の 4 年 間 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動 101 図 7.9 19 8 9~ 199 3 年 の 4 年 間 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動 102 図 7.1 0 19 94 ~ 19 9 8 年 の 4 年 間 の 濃 尾 平 野 の 地 盤 高 変 動 103 図 7.1 1 濃 尾 平 野 に お け る 19 97 年 の 土 地 利 用 ・ 被 覆 分 布 (福 山 , 20 03 ) 104 図 7.1 2 濃 尾 平 野 で 197 7 ~ 19 97 年 の 各 土 地 利 用 の 地 盤 高 変 動 (伊 藤 ・ 福 山 , 20 02 ) 105 8. 考 察 8.1 干 渉 SAR の 大 気 遅 延 各 JERS -1 SAR 観 測 日 の 天 気 は , 1998 年 5 月 6 日 は 曇 り で , 1998 年 6 月 19 日 は 雤 で あ る .両 日 の 水 蒸 気 分 布 は 均 一 で は な く ,図 6 .1 の差分干渉位相に水蒸気分布による大気遅延が大きな影響を与え ている可能性がある. 8.2 類似天気図法 手 順 2) で 類 似 の 天 気 図 を 見 出 す に は , 主 に 等 圧 線 の 空 間 分 布 と 梅雤前線の位置を比較する. 大 気 中 に 含 ま れ て い る 水 蒸 気 量 は ,温 度 に よ っ て 限 界 が あ り ,最 大 量 が 決 ま る . 手 順 3) と 手 順 4) で は 気 象 要 素 を 比 較 す る 際 に , 各気象要素のうち気温が最も重要である. 手 順 3)で ,地 表 観 測 デ ー タ を 比 較 す る と き に , JERS-1 デ ー タ 取 得 日 と そ れ ぞ れ の 手 順 2) で 見 出 し た 日 の 気 温 ・ 海 面 気 圧 ・ 水 蒸 気 圧 の 差 は 変 化 が 大 き く( 表 6.1,表 6.2),GPV-MSM デ ー タ の 類 似 す る 日 を 見 出 し に く い .気 温 差 5 ℃ ,海 面 気 圧 差 5hPa を 閾 値 に 設 定 す る.この閾値は経験値である. 手 順 4)で 高 層 観 測 デ ー タ を 比 較 す る と ,1998 年 5 月 6 日 に 対 し て ,2004 年 5 月 27 日 の 各 気 象 要 素 が 類 似 し ,2004 年 5 月 2 日 も 類 似 し て い る ( 表 6.3) . 同 様 に 1998 年 6 月 19 日 に 対 し て , 2005 年 7 月 12 日 と 2004 年 6 月 26 日 の 気 象 状 態 も 類 似 す る( 表 6 .4).最 も 類 似 す る 日 を 選 択 す る た め ,四 日 市 の 地 表 面 気 象 観 測 デ ー タ と 浜 松のラジオゾンデの高層観測データを参考にした. 手 順 5) で 最 類 似 日 を 決 定 す る と き に , 風 向 ・ 風 速 デ ー タ を 参 考 にした. 106 一 方 ,衛 星 SAR デ ー タ と GPV-MSM デ ー タ の 取 得 時 刻 は 決 ま っ て い る た め ,同 じ 日 に 同 じ 場 所 で 取 得 す れ ば ,取 得 時 間 の 差 も 約 一 時 間 半 が 存 在 し て い る . こ の 取 得 時 間 の 差 は , GPV- MSM デ ー タ だ け で は な く ラ ジ オ ゾ ン デ の デ ー タ ・ GANAL の デ ー タ で も 存 在 し て い る . 以 前 の 研 究 に は ,そ の 時 間 差 に よ っ て 気 象 条 件 が 変 化 せ ず ,異 な っ た 時 刻 の 大 気 物 理 量 が 類 似 す る と 仮 定 し た ( 島 田 ,1999; 大 塚 ・ 小 林 ,2002).し た が っ て ,詳 細 な 三 次 元 気 象 観 測 デ ー タ を 用 い て SAR 電 波 の 大 気 遅 延 の 影 響 を 評 価 す る の に ,類 似 法 は 一 つ の 重 要 な 方 法 といえよう. 本 研 究 で は ,大 気 の 屈 折 率 を 定 め る 気 圧 ,温 度 ,水 蒸 気 圧 な ど の 気 象 要 素 を 重 要 な パ ラ -メ ー タ と し て , JERS -1 の 観 測 日 の 気 象 要 素 と 最 も 類 似 し て い る GPV -MSM デ ー タ の 日 を 見 出 し た .そ の た め ,選 択 し た GPV-MSM デ ー タ と JERS -1SAR デ ー タ の 取 得 時 間 の 差 は 約 5 年 間 で あ る が ,GPV- MSM デ ー タ は ,JERS -1 デ ー タ 取 得 日 の 気 象 条 件 を 反 映 し 得 る .類 似 天 気 図 法 の 精 度 を 高 め る に は 今 後 の 研 究 が さ ら に 必要である. 8.3 水蒸気の影響評価 GPV-MSM 水 蒸 気 デ ー タ か ら 両 観 測 日 の 地 上 面 か ら 300hPa 高 度 ま で の 可 降 水 量 の 分 布 を 定 量 的 に 再 現 し た ( 図 6.7, 図 6.8) . 2004 年 5 月 27 日 の 水 蒸 気 分 布 は 東 南 か ら 北 部 に 増 加 し て い る . 2005 年 7 月 12 日 の 水 蒸 気 分 布 は 西 北 部 か ら 東 南 部 に 増 加 す る 傾 向 が あ る . 2 つの観測時期における可降水量の差は空間的に非常に不均一で, 2005 年 7 月 12 日 の 空 間 分 布 の パ タ ー ン と 類 似 す る . 水 蒸 気 量 が 多 い 2005 年 7 月 12 日 は ,水 蒸 気 分 布 に よ る 大 気 遅 延 に 大 き な 影 響 を 与 え て い る と 推 定 さ れ る .可 降 水 量 1 .5mm は 大 気 遅 延 量 1cm に 値 す 107 る ( 藤 原 ほ か , 1998) . 図 6. 8 の 研 究 地 域 で の 可 降 水 量 分 布 の 最 大 差 は 6kg/m 2 (6mm) に な る . 即 ち , 水 蒸 気 水 平 分 布 の 違 い に よ っ て 約 40mm の 大 気 遅 延 量 を も た ら し て い る 可 能 性 が あ る . 観 測 日 に お け る 各 気 圧 面 で の 比 湿 と 屈 折 指 数 の 分 布 は ,ほ ぼ 一 致 し て お り ,高 度 変 化 が あ り ,局 所 的 な 水 平 方 向 の 変 化 も 著 し く 発 生 し て い る ( 図 6. 9,図 6.1 1) . 比湿と屈折指数における鉛直構造の二日間の差における高度変 化 は 簡 単 な 線 形 関 係 に は な く ,非 常 に 複 雑 な 変 化 を 示 し て い る( 図 6. 10,図 6 .12 ) . 各観測日の比湿と屈折指数は高度によって減尐する傾向があり ( 図 6.9, 図 6.11 ) , 両 日 の 差 は , 高 層 で は 決 し て 小 さ い と は 言 え な い .600 hPa 面 で は ,両 日 の 比 湿 差 は 約 6g/kg で ,屈 折 指 数 差 が 約 25NU に な る と ,地 表 面 で の 値 は ほ ぼ 同 じ に な る .両 日 の 比 湿 差 と 屈 折 指 数 差 は 500hPa 面 の 値 も 小 さ く な く ,無 視 で き な い .こ れ は 2005 年 7 月 12 日 に お け る 比 湿 と 屈 折 率 の 高 度 に よ る 減 尐 率 が , 2004 年 5 月 27 日 と 一 致 し な い た め で あ る . 本 研 究 で は ,900hPa 以 高 の 大 気 の 鉛 直 変 化 は 考 慮 し な い が ,標 高 が 高 い 山 地 を 対 象 と す る 大 気 遅 延 の 研 究 に と っ て は ,こ れ ら の 結 果 は重要であろう. 一 方 ,水 平 方 向 で は ,比 湿 と 屈 折 指 数 に お け る 鉛 直 構 造 の 二 日 間 の 差 は , 地 表 面 か ら 700hPa 面 に か け て 変 化 が 大 き い こ と が 示 さ れ る ( 図 6. 10, 図 6.12 ) . GPV -MSM の デ ー タ の 解 析 か ら , 両 日 の 水 蒸 気 の 水 平 分 布 に 主 な 影 響 を 与 え て い る の は ,700hPa 高 度 以 下 の 大 気 中 水 蒸 気 で ,両 日 の 水 蒸 気 量 の 分 布 は 空 間 的 に 非 常 に 不 均 一 で あ る . し た が っ て ,水 蒸 気 の 水 平 分 布 変 化 だ け で は な く ,本 研 究 地 域 で は西北部の小さい山地の標高による大気遅延も差分干渉位相に大 108 きな影響を与える. 研究地域で 1 シーンを通しての水蒸気水平分布による大気遅延の 最 大 偏 差 は 約 38mm で あ り , 東 南 で 著 し く 大 き い こ と が 示 さ れ ( 図 6. 13) , 可 降 水 量 の 差 の 空 間 分 布 パ タ ー ン ( 図 6. 8) と よ く 類 似 し ている. 研 究 地 域 の 西 北 で 地 形 標 高 に よ る 大 気 遅 延 量 も 発 生 し , 海 抜 0m を 位 相 基 準 面 と し た と き , 海 抜 898m の 山 地 で 推 定 し た 大 気 遅 延 は 約 53mm で あ る ( 図 6 .14 ) . し た が っ て ,図 6.1 の 西 北 部 で の 位 相 変 化 は ,標 高 変 化 に よ る 大 気 遅 延 ,東 南 部 は 水 蒸 気 の 水 平 変 化 に 伴 う 大 気 遅 延 に よ っ て 生 じ て いることが考えられる. GPV-MSM デ ー タ を 用 い て , 観 測 日 の 水 蒸 気 の 空 間 分 布 を 分 析 し , 水 蒸 気 に よ る 大 気 遅 延 を 定 量 的 に 評 価 で き る こ と を 示 し て き た .図 6.16 に 示 す よ う に ,大 気 遅 延 補 正 は 効 果 的 で あ る .し か し ,西 北 部 で 位 相 の 残 留 が 見 ら れ る .そ の 原 因 と し て は 以 下 の 3 つ が 考 え ら れ る . 1 ) 地 盤 沈 下 が 発 生 す る 可 能 性 が あ る . 1998 年 の 水 準 測 量 に よ る 地 盤 高 の 変 化 量 分 布 ( 図 8.1 ) は 西 北 部 で 地 盤 沈 下 が 発 生 す る こ と を 示 し て い る .2)JERS -1 の 観 測 日 と 見 出 し た 日 の GPV-MSM デ ー タ の 気 象 要 素 が 近 似 し て い る が ,あ る 程 度 誤 差 が 存 在 し て い る た め で あ る .3)GPV -MSM デ ー タ の 精 度 は JERS -1 SAR デ ー タ と 比 べ て 解 像 度 が粗いためでと考えられる. 気 象 庁 は 2006 年 3 月 か ら 地 表 面 は 水 平 格 子 間 隔 約 5 km メ ッ シ ュ , 高 層 各 等 圧 面 は 約 10 km メ ッ シ ュ で GPV-MSM デ ー タ を 提 供 し て い る . 今 後 ,も っ と 詳 細 な GPV -MSM デ ー タ を 用 い れ ば ,水 蒸 気 分 布 の 影 響 の評価精度を高めることができるであろう. 109 図 8.1 1998 年 の 水 準 測 量 に よ る 地 盤 高 の 変 化 量 分 布 図 110 8.4 水準測量の補完検討 衛 星 干 渉 SAR デ ー タ を 用 い た InSAR 解 析 は 「 地 形 が 平 坦 」 「 沈 下 地 域 が 空 間 的 に あ る パ タ ー ン (等 変 動 曲 線 が 大 き さ 1km 以 上 く ら い の 楕 円 形 等 )」 「 沈 下 速 度 が あ る 程 度 大 き い ( 年 間 数 cm 程 度 以 上 )」 等 の 条 件 を 満 た す 場 合 ,InSAR に よ り 地 盤 沈 下 が 十 分 に 観 測 で き る ことがわかってきた. 濃尾平野はこれらの条件をすべて満たして お り ,地 盤 の 変 動 分 布 や 変 動 量 を 把 握 す る こ と が で き ,従 来 の 水 準 測量等による地盤沈下監視の補完的な手法として期待できる. し た が っ て ,濃 尾 平 野 は ,人 工 衛 星 干 渉 SAR デ ー タ を 用 い た 地 盤 沈下の新たな研究調査手法のフィールドとしてきわめて有効な地 域の一つと考えられる. 衛 星 画 像 に よ る 地 表 面 変 動 解 析 の 特 徴 は ,高 精 度 で 詳 細 な 地 盤 変 動 を 検 出 す る こ と が で き ,広 域 の 観 測 が 可 能 で き る こ と が 大 き な 特 徴である. 面 的 な 補 完 法 と い う 点 で は ,高 密 度 画 像 が 地 表 面 の 変 動 傾 向 を 詳 細 し ,地 盤 変 動 の 中 心 や 範 囲 を 容 易 に 推 定 可 能 で あ る .今 後 ,本 研 究 を 生 か し て ,四 日 市 に お け る 西 北 部 や 伊 勢 湾 岸 東 南 部 の 水 準 点 が な い 場 所 が ど の よ う な 変 動 を し て い る か ,そ れ が 広 域 の 変 動 と 関 連 があるかを補完することができる. 時 間 的 補 完 と い う 点 で は ,過 去 に 撮 影 済 の 蓄 積 さ れ た 画 像 を 解 析 す る こ と に よ り 長 期 の 履 歴 を 観 測 す る こ と が 可 能 で あ る .ま た ,条 件が整えば,短期間の変動解析も可能である. 従 来 の 水 準 測 量 に よ る 地 盤 沈 下 推 定 量 と ,InSAR デ ー タ 解 析 か ら 求 め ら れ る 地 盤 沈 下 量 と を 比 較 検 討 す る こ と が で き れ ば ,InSAR に よ る 推 定 精 度 の 評 価 だ け で な く ,水 準 測 量 の 精 度 や 分 解 能 に つ い て も言及できる. 111 9. 結 論 本 研 究 で は 詳 細 な 三 次 元 気 象 デ ー タ が な い 時 期 の 衛 星 干 渉 SAR の 観 測 デ ー タ に 対 し て , GPV- MSM デ ー タ を 用 い て 水 蒸 気 分 布 の 影 響 を 評価する方法について検討した. GPV-MSM の 水 蒸 気 分 布 を 用 い て 大 気 水 蒸 気 分 布 の 影 響 を 除 去 す れ ば,これまで検出が困難であった微小な地盤沈下も検出できる. 類似天気図法は,詳細な三次元気象データの存在しない時期の JERS -1 な ど の 衛 星 干 渉 SAR に 対 し て 水 蒸 気 の 影 響 評 価 に 有 効 に 利 用できる. GPV-MSM の 水 蒸 気 デ ー タ か ら 推 定 し た 大 気 遅 延 量 の 分 布 は , 空 間 的 に 非 常 に 不 均 一 で , 研 究 対 象 地 域 の JERS-1 SAR の 1 シ ー ン で 大 気 遅 延 量 水 平 分 布 の 最 大 差 は 約 38mm と な る こ と が 示 さ れ た . 干 渉 SAR に よ る 地 盤 変 動 の 検 出 精 度 を 高 め る た め に 水 蒸 気 の 水 平 変 化 を 評価することが重要である. GPV-MSM デ ー タ を 適 用 し て 求 め た 大 気 遅 延 量 と 差 分 干 渉 SAR 位 相 の 空 間 分 布 の バ タ ー ン と 類 似 し て い る .ま た ,GPV- MSM デ ー タ の SAR 干渉処理への有効性を確認した. GPV-MSM デ ー タ が 提 供 さ れ る よ う に な っ た 2003 年 以 後 の ALOS 衛 星 な ど の 干 渉 SAR に 対 し て も,本 研 究 の 成 果 を 生 か す こ と が で き る . 本 研 究 で は 各 水 準 点 の 位 置 を 地 理 コ ー ド 化 し , GIS で 作 成 し た 地 盤高のラスターデータを用いた地盤高変動の経年変化や土地利用 と の 直 接 的 な 関 係 な ど に つ い て の 解 析 し か 行 え な か っ た .研 究 地 域 の 土 地 利 用・被 覆 の 各 カ テ ゴ リ と 地 盤 高 の 変 動 量 の 関 係 を 検 討 し た . 本 研 究 地 域 に お い て ,確 か に 地 盤 沈 下 は 沈 静 化 の 傾 向 に あ る こ と が わ か っ た .場 所 に よ っ て は ,地 下 水 位 の 回 復 に よ る 除 荷 膨 張 や 濃 尾傾動盆地運動によって地盤の上昇している地域である. 112 こ の 地 域 の 地 下 構 造 は 圧 密 の 最 終 期 に い た っ て い な い .今 な お 地 盤 沈 下 が 緩 や か な が ら 進 行 し て い る 地 域 で あ り ,再 び 過 剰 な 地 下 水 揚水などを行えば大規模な地盤沈下が起こる可能性が高いと考え ている. 本 研 究 の 成 果 を 生 か し て ,従 来 の 水 準 測 量 に よ る 地 盤 沈 下 推 定 量 と ,InSAR デ ー タ 解 析 か ら 求 め ら れ る 地 盤 沈 下 量 と を 比 較 検 討 し て , InSAR に よ る 推 定 精 度 の 評 価 だ け で な く ,水 準 測 量 の 精 度 や 分 解 能 に つ い て も 言 及 で き る . さ ら に , InSAR 解 析 結 果 は ,水 準 測 量 等 が できない地域でのリモートセンシングによる地盤沈下量の推定も 可 能 と な る .こ れ に よ り ,従 来 の 水 準 測 量 成 果 に 加 え て ,よ り 有 機 的で総合的な地盤沈下監視が実現できると考えられる. 本 研 究 の 成 果 を 生 か す こ と が で き る .つ ま り ,干 渉 SAR に よ る 地 殻 変 動 検 出 の 精 度 を 高 め る に は ,大 気 中 の 水 蒸 気 の 空 間 分 布 や そ の 変 化 に よ る SAR 伝 播 屈 折 の 遅 延 量 を 定 量 的 に 評 価 す る 必 要 が あ る が , 本 研 究 は こ れ に 対 し て 最 新 衛 星 の 干 渉 SAR デ ー タ 解 析 の 精 度 向 上 に 大きな貢献をなし得るものと考えられる. 113 謝辞 本 研 究 の 全 過 程 を 通 じ ,懇 切 丁 寧 な る ご 指 導 ,ご 鞭 撻 の ほ ど を 頂 きました三重大学大学院生物資源学研究科の福山薫教授に深く感 謝するとともに,心から御礼申し上げます. 研究に対するご指導や御助言をいただきました立命館アジア太 平 洋 大 学 の サ ン ガ・ン ゴ イ・カ ザ デ ィ 教 授 に 心 よ り 深 く 感 謝 を 申 し 上げます. 本 研 究 は ,高 知 女 子 大 学 の 大 村 誠 教 授 及 び 三 重 大 学 大 学 院 生 物 資 源学研究科博士後期課程大学院生伊藤太子氏の多大な協力をいた だき,心より深く感謝を申し上げます. 三重大学大学院生物資源学研究科の諸先生方に有益な御意見や 励ましをいただき,厚く御礼を申し上げます. 三 重 大 学 生 物 資 源 学 部 環 境 解 析 学 研 究 室 の 院 生 ,学 生 の 皆 様 に も 有 益 な ご 意 見 ,ご 協 力 を い た だ き ,心 よ り 深 く 感 謝 を 申 し 上 げ ま す . 合 成 開 口 レ ー ダ の デ ー タ 解 析 に は ,宇 宙 航 空 研 究 機 構 地 球 観 測 利 用 推 進 セ ン タ ー の 島 田 政 信 に よ り , 開 発 さ れ た SIGMA- SAR processor を 使 用 さ せ て い た だ き ま し た . こ こ に 心 よ り 深 く 感 謝 の 意を表します. 日 本 へ 留 学 し て よ り 12 年 の 歳 月 が 流 れ た . 長 期 間 に わ た り 研 究 を 続 け さ せ て く れ た 両 親 ,家 族 ,親 戚 に 最 後 に 心 よ り 深 く 感 謝 を 申 し上げます. 114 参考文献 愛 知 県 ( 2002 ) 濃 尾 平 野 地 下 構 造 調 査 報 告 書 . 愛 知 県 ( 1998 ) 尾 張 西 部 地 域 活 断 層 調 査 報 告 書 . 出 口 知 敬 ・ 津 宏 治 ・ 丸 山 裕 一 ・ 加 藤 雅 胤 (2006) L バ ン ド 干 渉 SAR を用いた局所的地盤変動計測-トルコ共和国ゾングルダック炭 坑 へ の 応 用 - . 日 本 リ モ ー ト セ ン シ ン グ 学 会 誌 , vol.26, no.5, pp.391 -398 . 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