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多治見市墓地需要予測及び 今後の市営墓地のあり方の検討 報 告 書
多治見市墓地需要予測及び 今後の市営墓地のあり方の検討 報 告 書 (概 要 版) 平成25年3月 多 治 見 市 目 次 目 次 第 1 章 業務の主旨················································· 1-1 1.1 業務の目的 ······························································1-1 第 2 章 墓地需要の将来予測見直し ··································· 2-1 2.1 墓地需要の将来予測見直しの目的···········································2-1 2.2 墓地需要を予測する算定方式···············································2-1 2.3 利用可能区画数の整理·····················································2-1 2.4 墓地需要の将来予測見直しの結果···········································2-2 第 3 章 墓地の現況と課題··········································· 3-1 3.1 多治見市の墓地の現況調査·················································3-1 3.1.1 市営墓地の現況 ·······················································3-1 3.2 多治見市墓地需要予測にかかる市民アンケート·······························3-3 3.2.1 H20 アンケートの実施概要··············································3-3 3.2.2 アンケート結果の整理と市民ニーズの把握 ·······························3-4 3.3 墓地需要の動向調査·······················································3-6 3.3.1 墓地ニーズの動向 ·····················································3-6 第 4 章 今後の市営墓地のあり方 ····································· 4-1 4.1 市営墓地の基本方針·······················································4-1 4.2 基本方針を具現化するための諸方策(案)···································4-3 ( 1 ) 市営墓地の無縁墓地化を防ぐための適切な利用形態の設定 ··················4-3 ( 2 ) 市営墓地における使用者の定期調査の実施と無縁墓地の整理、再利用 ········4-6 ( 3 ) 民間墓地等への改葬の斡旋と改葬を促すための補助制度の検討 ··············4-8 ( 4 ) 民間墓地への誘導 ······················································4-9 ( 5 ) 多様な市民ニーズに対応する埋葬形式の導入 ·····························4-10 4.3 今後の課題 ·····························································4-13 第1章 業務の主旨 第 1 章 業務の主旨 1.1 業務の目的 本業務は、多治見市における墓地需要に適切かつ円滑に対応するため、平成 19 年度に実施 された墓地需要予測の更新・見直し※を行うとともに、墓地の整備に関する基本方針として 今後の市営墓地のあり方の検討を行ったものである。 多治見市では、平和霊園、北市場霊園、森下霊園の 3 箇所、約 5,200 区画を市営墓地とし て管理運営しているが、社会経済の変化を受けて次のような状況の変化が見られる。 ① 少子高齢化社会の到来や生活様式の変化による墓地に対する市民ニーズの変化 ② 承継親族のいない世帯の増加による墓地の無縁墓地化の懸念 ③ 低所得者や宗派等にも属さず墓地を取得できない方の増加の懸念 本報告書はこのような状況を受けて、多治見市内の市営墓地、民間墓地、地域墓地等の墓 地全体への実態調査と他都市の事例調査等を踏まえ、市営墓地のあり方について検討した。 ※「多治見市墓地の経営の許可等に関する条例」の第 4 条と同規則第 2 条により、原則 5 年に 1 回の墓地需要調査を行うとともに、需要調査の結果に基づき、墓地の整備に関する基本方 針を定めることとなっている。 1-1 第2章 墓地需要予測更新 第 2 章 墓地需要の将来予測見直し 2.1 墓地需要の将来予測見直しの目的 多治見市における既往の墓地需要予測は、「多治見市墓地需要予測調査業務」(平成 19 年 12 月)および「多治見市墓地需要予測にかかる市民アンケート調査業務」 (平成 20 年 12 月) において実施されているが、予測の前提となる既存墓地の調査結果や将来人口予測等の陳腐 化により、現状と乖離している恐れがある。 本章は、多治見市の人口統計データ等の更新により多治見市の将来における墓地需要数を 予測するとともに、資料編で示す「既存墓地の調査更新」による現空き区画数および開発区 画数と対照することで、墓地整備の時期(墓地が不足する時期)を想定することを目的とす る。 2.2 墓地需要を予測する算定方式 墓地需要量の将来予測は、次の 3 つの方式を用いて算定する。 ● (社)全日本墓園協会方式(以下「墓園協会方式」という) 将来の親族世帯数の増加分、平均世帯人員、死亡率など、推計した統計データを使用して墓 地需要量を算定する方法。特徴は、一定期間に新たに成立した世帯の数を墓地需要量の主な 対象として算出している点である。 ● 大阪府方式 世帯数をもとに、居住地への定住性の傾向や墓地の購入意思を考慮したうえで、分家した世帯 が1世帯につき1墓所持つことを仮定して算定する方法。 ● 墓地増加率による推定 過去の墓地増加数と死亡者数をもとに、将来の墓地需要を推定する方法。 2.3 利用可能区画数の整理 多治見市内の墓地において、今後利用できる区画数を下表にまとめた。 空き区画数 開発可能 区画数 利用可能 区画数 平和霊園 13 0 13 北市場霊園 18 0 18 種別 公営墓地 民間墓地 合計 名称 森下霊園 20 0 20 達磨霊園 954 530 1,484 二福寺脇之島霊園 89 0 89 1,094 530 1,624 計 51 1,573 注: 公営墓地の空き区画は、返還届が出され空きとなっている区画を計上した。 民間墓地の空き区画は、規模が比較的大きく、宗派や檀家の制限がない「達磨霊園」、 「二福寺脇之島霊園」を計上した。 地域墓地は、地域性があり空き区画数として見込めないため計上しない。 多治見市における今後利用可能な区画数 墓地需要の各算定方式による結果の値と、上記の値とを対照させ、多治見市の墓地需要の 将来予測見直しを行なった。それらの結果を次頁に示す。 なお、それぞれの算定方式の詳細な方法および過程は、「資料編」に記す。 2-1 第2章 墓地需要予測更新 2.4 墓地需要の将来予測見直しの結果 3つの算定方式により墓地需要の将来予測見直しを行った結果、以下のように予測値に大 きなバラツキが見られた。 需要予測 算定方式 墓園協会方式 大阪府方式 墓地増加率予測 予測値の最小値 墓地需要量 予測値の最大値 不足する予測年 墓地需要量 不足する予測年 今後 10 年間は不足せず 584 区画/年 2015(平成 27)年 390 区画/年 - 447 区画/年 2017(平成 29)年 24 区画/年 - 28 区画/年 今後 10 年間は不足せず 0 区画/年 3つの算定方式による予測値の比較 この結果を踏まえて、墓地需要の将来予測見直しを以下のように整理する。 <墓地需要の将来予測見直しの整理> ○増加した親族世帯数を潜在的な墓地需要者と考えて推計する墓園協会方式につ いては、平成 17 年と平成 22 年の国勢調査の比較で親族世帯数が減少に転じ、 理論と実情とに乖離が見られる。また、予測値の最小値と最大値の開きが大き く、信頼性にも疑問が生じる。 ○大阪府方式は、市民の多治見市への定着志向が高いことが影響し、他都市と比べ て墓地需要量の予測値が過大となる傾向が見られる。 ○墓地増加率予測は、実勢値をもとに予測しているため信頼性は高いが、本来は市 営墓地や市内の民間墓地を所有したいが、諸事情により遠方の墓地に埋葬され た需要量などが見込まれていないと思われるため、墓地需要量の予測値が過小 となる傾向が見られる。 ○したがって、墓地需要の将来予測は、予測値として信頼のおける大阪府方式と墓 地増加率予測のおおむね平均値とし、以下のように設定する。 墓地需要量 =(390+447+24+28)/4 = 222 ≒ 200 区画/年 ○多治見市内にある一般的な墓石型墓地の利用可能区画は 1,624 区画(P.2-1 参照) であるため、墓地は少なくとも今後 8 年間は不足しないと想定できる。 2-2 第3章 墓地の現況と課題 第 3 章 墓地の現況と課題 3.1 多治見市の墓地の現況調査 3.1.1 市営墓地の現況 市内には、平和霊園(多治見墓地公園) 、北市場霊園、森下霊園の3つの市営墓地がある。 以下に各々の市営墓地の現況について詳述する。位置情報は「資料編 P.資-4~5」参照。 平和霊園(多治見墓地公園) 管理運営主体:多治見市 場所:多治見市脇之島町 3 丁目 24 番地 設置年月日:昭和 43 年 4 月 都市公園面積:375,000m2 概 要 区画数:2,463 区画 使用料・清掃料 永代使用料 180,000(4 ㎡)~2,250,000 円(30 ㎡) 永代清掃料 32,960(4 ㎡)~247,200 円(30 ㎡) 空き区画等 空き区画 13 区画 (平成 24 年 12 月末現在) 森下霊園 管理運営主体:多治見市 場所:多治見市笠原町字森下 1648 番地の 50 設置年月日: 墓地面積:8,949m2 概 要 区画数:827 区画 使用料 永代使用料 100.000 円/区画(4 ㎡) 250,000 円/2 区画(8 ㎡) 空き区画等 空き区画 20 区画 (平成 24 年 12 月末現在) 北市場霊園 管理運営主体:多治見市 場所:多治見市金岡町 4 丁目 10 番地 設置年月日: 墓地面積:32,832 ㎡ 概 要 区画数:1,955 区画 使用料・清掃料 空き区画等 永代使用料 50,000 円/㎡ 永代清掃料 8,240 円/㎡ 空き区画 18 区画 (平成 24 年 12 月末現在) 3-1 第3章 墓地の現況と課題 以下に、本業務で実施した「不明者及び返還済区画調査」における市営墓地の結果を示す。 霊園名 総区画数 調査区画分類 返送区画 平和霊園 2,463 0 6 272 1 3 60 8 空区画 13 13 0 0 0 13 369 359 1 9 332 37 100.0% 97.3% 0.3% 2.4% 90.0% 10.0% 0.0% 0.4% 計 15.0% 16 返送区画 215 196 19 0 205 10 要調査(郵送なし)区画 157 141 14 2 145 12 18 10 6 2 1 17 390 347 39 4 351 39 100.0% 89.0% 10.0% 1.0% 90.0% 10.0% 2.0% 0.2% 40 空区画 計 19.9% 187 151 11 25 147 2 2 0 0 0 2 20 6 4 10 0 20 209 159 15 35 147 62 100.0% 76.1% 7.2% 16.7% 70.3% 29.7% 1.8% 4.2% 要調査(郵送なし)区画 空区画 計 割合 総区画数に対する割合 5,245 調査日 無 64 返送区画 計 有 282 総区画数に対する割合 827 墓石・墓標 C 68 割合 森下霊園 B 288 総区画数に対する割合 1,955 A 要調査(郵送なし)区画 割合 北市場霊園 管理状況 調査区画数 25.3% 返送区画 690 629 30 31 624 66 要調査(郵送なし)区画 227 207 15 5 205 22 51 29 10 12 1 50 968 865 55 48 830 138 100.0% 89.4% 5.7% 5.0% 85.7% 14.3% 1.0% 0.9% 空区画 計 割合 総区画数に対する割合 18.5% 2012.12.1 2012.12.2 2012.11.30 2012.12.1 2012.12.2 2012.12.3 調査区画分類: 返送区画……市が実施した使用者確認調査(郵送)において、本人に届かず返送された区画 要調査(郵送なし)区画……許可書の住所と住民票の住所が異なるなど、郵送先が明確でない区画 空区画、不明区画……返還届が出され空となっている区画、使用者が不明な区画 管理状況: A……管理されている(花がたむけられている、草刈りがされている、シートがかけられている、建立されたばかり、墓石がきれい等) B……AとCの中間で判断に困るもの(草がそこそこ生えている、花はたむけられていない等) C……管理されていない(草で覆われている、墓石がひどく痛んでいる、墓石が除去された形跡がある等) 「不明者及び返還済区画調査」における市営墓地の結果一覧 参考として、近年における市営墓地の公募状況を示す。応募倍率は 3~5 倍であり市営墓地 に対する市民の高いニーズがうかがえる。 平成 13 年度 平和霊園 北市場霊園 合計 募集区 画数 8 11 19 平成 17 年度 応募数 倍率 60 34 94 7.5 3.2 平均 4.9 募集区 画数 7 29 36 応募数 54 53 107 平成 20 年度 倍率 7.7 1.8 平均 3.0 募集区 画数 13 7 20 応募数 倍率 46 31 77 3.5 4.4 平均 3.9 近年における市営墓地の公募状況 これらを踏まえ、市営墓地の現況を以下のように考察する。 <市営墓地の現況> ○平成 24 年 12 月末時点で、市営墓地の空き区画は 51 区画である ○本頁上表に示す管理状況Cと管理状況Bを無縁墓地候補と考えると、全体の墓地 の約 2%(約 100 区画)が無縁墓地化しているおそれがある。 ○本調査は多治見市の調査リストに基づき現地で管理状況を確認したもので、今 後、無縁墓地の確定作業が必要となる。 ○市営墓地の応募倍率は 3~5 倍であり、市民の高いニーズがうかがえる。 3-2 第3章 墓地の現況と課題 3.2 多治見市墓地需要予測にかかる市民アンケート 多治見市における墓地需要推計及び墓地整備に関する中期計画の精度を高めるための基礎 的資料を得ることを目的として、20 歳以上の世帯主 2,000 人を対象として「多治見市墓地需 要予測にかかる市民アンケート調査業務」(平成 20 年 12 月)(以下「H20 アンケート」とい う)を実施した。 3.2.1 H20 アンケートの実施概要 1) 調査項目 1.基本属性 性別、年齢、家族との同居状況、現在一緒に住んでいる家族、現在別に住んでいる家 族、「家」を継ぐ立場にあるか、本市での居住年数、本市での定着意向 2.墓の取得状況 現在利用できる墓の取得状況 墓を持っている場合:取得している墓の形式、今ある墓の改葬(移転)の意向 墓を持っていない場合:墓の取得の意向 墓をもっておらず、必要としていない場合:墓を必要としない理由 3.墓の取得意向 墓を必要とする理由、墓を必要とする時期、墓をつくる場合の場所、墓をつくる上で の心配事、墓をつくる場合の重要条件、墓をつくる場合の希望面積 4.墓の利用意識 自分自身の個人墓の利用意向、墓を利用する家族等の範囲、希望の管理様式、希望の 形式、合葬式墓地等が整備された場合の利用意向、墓の継承者がいない人のための合葬 式墓地等の必要性、墓をつくる場合の墓の使用期限 2) 回収結果 回収数は 997 人、回収率は 49.9%であった。 3-3 第3章 墓地の現況と課題 3.2.2 アンケート結果の整理と市民ニーズの把握 H20 アンケートを質的な視点と量的な視点により整理し、今後の市営墓地のあり方の検討 に向けそれぞれの市民ニーズを把握するとともに市営墓地の問題点を抽出する。 ( 1 ) 質的な視点による市民ニーズの把握 ● H20 アンケート結果の整理 ・ 「墓の継承者がいない人のための合葬式墓地等の必要性」について、57.0%が「必要 である」と回答した。 ・ 「合葬式墓地が整備された場合の利用意向」は、 「利用したいと思う」 「現在の墓地事 情等を考えると利用するのもやむをえないと思う」を合わせると 28.4%であった。 ・墓を求める場合の希望の形式としては、 「日本式墓地」 (墓石型墓地)が 61.4%で最 も高い。 ・墓をつくる上での心配事は、 「取得費用の高さ」が 60.7%で最も高く、次いで「墓 をつくることができるか(墓地不足など) 」が 48.2%、 「墓の管理で子孫に面倒をか けること」が 30.7%、「維持・管理のための負担」が 30.3%、「将来無縁墳墓とな る可能性等」が 10.1%であった。 ● 質的な市民ニーズ ・約 6 割が日本式墓地を希望しているが、合葬式墓地については約 6 割が必要、約 3 割が利用意向ありとの回答から、何らかの事情により合葬式墓地を利用することに ついて理解は進みつつあると考えられる。 ・墓をつくる上での心配事として、「取得費用の高さ」や「維持・管理のための負担」 が上位にあがり、金銭的な負担や定期的な管理を続けられるか不安に思っている人 が多い。 ・約 3 割が「子孫に面倒をかけること」 、約 1 割が「将来無縁墳墓となる可能性」を心 配事にあげており、子どものいない夫婦や独身者等承継者がいない人、子供があっ ても将来管理してくれるかを不安に思っている人がいることがうかがえる。 <質的な市民ニーズ> ○日本式墓地の希望者は約6割 従来からの日本式墓地のニーズ ○しかし、安価な墓にしたい は高いものの、合葬式墓地への 子孫に負担を掛けたくない 墓を継承する人がいない ○合葬式墓地は約6割が必要と考える ○合葬式墓地の利用意向は約3割 3-4 理解が進み、承継を前提としな い墓地の必要性が高まってきて いる。 第3章 墓地の現況と課題 ( 2 ) 量的な視点による市民ニーズの把握 ● H20 アンケート結果の整理 ・ 墓をつくる場所として多治見市内を希望する人は 84.0%であった。 ・ 墓を持っていない場合に墓の取得意向を持つ人は、現在と将来の意向を合わせて 65.8%であった。 ・ 墓を必要とする時期は、「5 年以内」の場合 16%の人が、「10 年以内」の場合 23% の人が該当する。 ・ 希望の管理形式として、「公営の墓地」は最も多く 37.9%であり、民間墓地等は 24.5%、「特にこだわらない」は 32.3%であった。 ・ 墓をつくる上での心配事として、 「墓をつくることができるか(墓地不足など) 」と 答えた人が 48.2%と高い割合を示した。 ● 量的な市民ニーズ ・墓がない人の中で多治見市内に墓をつくりたいと考える人は約 8 割、墓の取得意向 がある人は約 7 割、10 年以内に墓を必要とする人は約 2 割あり、多治見市内の墓地 需要は高い。 ・ 公営墓地を求める希望者は約 4 割に達し、高いニーズを示している。その要因とし て、価格が手頃なこと、無宗教・無宗派の気軽さが考えられる。 ・ 一方、民間墓地を希望する人、特にこだわらない人を合わせると、約 5 割の人は公 営墓地以外でもよいと考えられ、民間墓地などに対する高いニーズも読み取れる。 ・ 心配事として「墓をつくることができるか(墓地不足など) 」をあげる人が約 5 割 に達し、将来の墓地不足を心配する人が多いことがうかがえる。 <量的な市民ニーズ> ○ 将来的には墓が必要 ○ 多治見市内に墓をつくりたい 将来的な多治見市内の墓地需要は ○ 公営墓地を利用したい(約 4 割) 高いが、市営墓地ですべて対応す ○ 公営墓地以外でもよい(約 5 割) る必要はない ○ 将来墓が不足しないか心配 3-5 第3章 墓地の現況と課題 3.3 墓地需要の動向調査 3.3.1 墓地ニーズの動向 近年は、高齢者単身世帯数の増加、地縁・血縁関係の絆が失われていく中で、孤独死や無 縁社会などが社会問題化し、葬送のあり方が問われ始めている。また、少子化の進展によっ て、跡継ぎ(祭祀主宰者=承継者)の確保が困難になり、跡継ぎを必要としない墓地のあり 方も模索され始めてきた。さらには、家族の役割を担うよりも個人の自己実現を重要と考え る傾向や、結婚しても子供を持たない夫婦、結婚をしない人の増加、離婚率の上昇など、家 族観にも変化が生まれ、墓地のあり方も多様化しており、問題をさらに複雑化させている。 以上のような背景を受けた近年の墓地ニーズを整理すると、以下のようになる。承継を前 提としないお墓の需要、リーズナブルなお墓へのニーズの高まり、合葬式墓地に対する抵抗 感の希薄化などは、多治見市の市民アンケートにおいても同様のニーズが浮き彫りになって いる。 <近年の墓地ニーズ> ○承継を前提としないお墓の需要が高まっている ○リーズナブルなお墓へのニーズが高まっている ○合葬式墓地に対する抵抗感の希薄化が進んでいる ○自然に還りたいという志向が高まっている ○居住者の都心回帰に伴い、墓地の都市部での需要が増加している 3-6 第4章 今後の市営墓地のあり方 第 4 章 今後の市営墓地のあり方 「墓地需要の将来予測の整理」においては、墓地は少なくとも今後 8 年間は不足しないと 想定できた。しかし、その後に墓地不足が発生するような事態がいつの日か到来することは 想像に難くない。 したがって、そのような事態の到来を見すえて、これからの墓地のあり方についての検討 を行う。 4.1 市営墓地の基本方針 これまでに整理した整備課題を踏まえ、以下のように市営墓地の基本方針を設定する。 基本方針1 : 多治見市全体としての墓地の空き区画を確保する ・ 市営墓地の無縁墓地化を防ぐための新しい利用形態を導入する ・ 既存の市営墓地の空き区画や無縁墓地を有効に活用し、市民に提供する ・ 新規の墓石型墓地の需要は民間墓地へと誘導する 墓地需要予測より明らかなように、今後の墓地需要の増加に対応すべく多治見市全体とし て空き区画を確保する必要がある。ただし新たな市営墓地を建設することは難しいことから、 市営墓地での墓石型墓地の増設は行わず、既存墓地の空き区画や無縁墓地などをハード・ソ フトの両面から有効活用し、市民へと提供していくことが重要である。 そして、今後発生する従来からの墓石型墓地に対する需要は民間墓地へと誘導し、官民の 連携により、バランスよく墓地需要に対応していくことが求められる。 基本方針2 : 官民の連携による新たな墓地形態の導入 ・ 官民の連携により、多様化する市民ニーズに応える新たな墓地形態の導入を推 進する ・ 承継問題に不安を抱える市民が多くなってきていることから、承継を前提とし ない墓地への市民ニーズに応える ・ 低所得者層などに配慮し、安価な墓地を求める市民ニーズに応える 少子化や高齢化など社会経済情勢の変化に伴い、多様な埋葬形式や管理のあり方など、お 墓に対するニーズも大きく変化している。そのため、官民の連携により、多様化する近年の 墓地ニーズを捉え適切に対応することが必要である。単身者(独居)や低所得者の墓地需要 のような福祉的な意味合いが強いものについては、市で対応を検討する必要がある。 4-1 第4章 今後の市営墓地のあり方 「市営墓地の基本方針」を踏まえた多治見市の墓地行政の取り組みと流れ(案)を以下に示す。 多治見市の墓地行政の取り組みと流れ(案) 凡 例 ハード施策 市内に墓地を所有する者 ソフト施策 今後、墓地を必要とする者 承継者あり お墓にお金をかけられる 宗派等に属している ニーズ 課 題 単身者、承継者がいない、承継したくない お墓にお金をかけられない 宗派等に属さない 墓地の適正な 維持管理 市営墓地 運営形態 民間墓地 民間墓地利用 墓石型墓地や多様な 民間霊園等を望む ニーズ 福祉的対応が必要 所有者の確認作業 所有者 公募があった場合 市営の墓石型墓地を望む 不明 無縁墓地(市営墓地内) 確認済 定期調査による承継者の確認 所有墓地の返還 死後の供養 無縁墓地の調査・確定作業 使用者の条件設定 無縁墓地の 解消 無縁墓地化 の防止 福祉的なニーズに対 応する墓地の供給 ・承継を前提としない ・安価な利用料金 ・宗派問わない なし 承継者 墓地埋葬法の手続きによる改葬 改葬の誘導 補助制度の検討 あり 福祉的ニーズに対応する 埋葬形式の提案、紹介 民間の永年供養墓等を望む 民間墓地へ改葬 改葬 返還 空き区画の発生 合葬式墓地を望む 適切な使用料金等の設定 更新制度の導入 空き区画の公募・活用 使用区画の継続利用 民間への合葬式墓地建設 の働きかけ 市民への合葬式墓地必要 性の周知・啓発 少子高齢化に伴う 承継者の不在化 将来の無縁墓地 化の予防 定期調査による 承継者の確認 合葬式墓地の建設 ・合葬式墓地への転換 (官・民による) 合葬式墓地の需要 ・ 敷地・空間を高度利用できる埋葬形式の導入 合葬式墓地の需要 ・ 承継を前提としない使用権・埋葬形式の導入 4-2 第4章 今後の市営墓地のあり方 4.2 基本方針を具現化するための諸方策(案) 基本方針を具現化していくための具体的な提案を以下に展開する。 ( 1 ) 市営墓地の無縁墓地化を防ぐための適切な利用形態の設定 無縁墓地化を防ぐために、有期限制使用料、有期限更新制使用料、期限付き清掃料(更 新制)など、今後募集する利用者に対して定期的に承継の把握を行うことができる利用 形態を検討する。 <無縁墓地化を防ぐための利用形態(案)> ○使用料を更新制として、更新時に承継の状況を確認する。 ○市が合葬式墓地等の改葬先を建設した場合は、更新するか合葬式墓地に改葬する かの選択肢を用意する。 現行 募集状況 使用料 管理料 使用料更新制(案) 合葬式墓地ができた場合 不定期(H13,H17,H20) ・永代使用 ・10~30 年の有期限制 ・期限後は更新もしくは ・料金: とする 合葬式墓地への 改葬 180,000 円/(4 ㎡)~ ・横浜市のメモリアルグ を選択 2,250,000 円(30 ㎡) リーン(芝生型墓地) ・1 ㎡当たり 45,000 円 は、永年使用 90 万円 ~75,000 円 に対し、30 年使用は 45 万円の半額に設定 されている ・永代清掃 ・年ごとの徴収、または ・料金: 5~10 年間分を一括徴 32,960 円(4 ㎡)~ 収し、その都度更新 247,200 円(30 ㎡) ・1 ㎡当たり 8,240 円 備考 無縁墓地化を防ぐための新たな利用形態の展開例 使用料等の更新制は、既存の永代使用者にも導入することが、無縁墓地化、墓地の荒 廃を防止する上で望ましいが、既存使用者の理解を得るのは困難なため、今後に公募す る区画から導入する。また、市民の理解を得るためには、今後の墓地形態等の考え方を 説明し、使用者を含めた市民の意見を聴取する必要がある。 4-3 第4章 今後の市営墓地のあり方 参考とした他都市の墓石型墓地の募集状況及び使用料・管理料の事例を以下に示す。 自治体名 岐阜市 大垣市 各務原市 募集状況 募集なし(H25.3 現在) H24.10~11(墨俣北霊園) 募集なし(H25.3 現在) ・永代使用 ・1 ㎡当たり 168,000 円 ~280,000 円 使用料 管理料 ・なし ・永代使用 ・永代使用 墨俣北霊園 ・1 ㎡当たり 200,000 円 2.25 ㎡ 500,000 円 3.00 ㎡ 600,000 円 3.45 ㎡ 650,000 円 ・1 ㎡当たり 墨俣北霊園 188,406 円 ~222,222 円 羽衣霊園 270,000 円 青野霊園 108,000 円 ・年 1,000 円/区画 ・年 2,000 円/区画 瞑想の森 備考 自治体名 美濃加茂市 土岐市 恵那市 募集状況 募集なし(H25.3 現在) 募集なし(H25.3 現在) 募集なし(H25.3 現在) ・永代使用 1 区画 50,000 円~100,000 円 ・1 ㎡当たり 不明 ・永代使用 5㎡ 42,500 円 10 ㎡ 85,000 円 15 ㎡ 127,500 円 ・1 ㎡当たり 8,500 円 ・なし ・なし 使用料 管理料 駄知墓地公園 備考 自治体名 中津川市 高山市 募集状況 募集なし(H25.3 現在) H24.11 ・永代使用 4 ㎡以内 30,000 円 4~5 ㎡ 40,000 円 5~6 ㎡ 50,000 円 ・1 ㎡当たり 7,500~8,300 円 ・なし ・永代使用 ・1 ㎡当たり 30,000 円 使用料 管理料 ・永代使用 丸山共同墓地 1 区画 150,000 円 その他の市営墓地 3.3 ㎡ 2,000 円 ・1 ㎡当たり 丸山共同墓地 不明 その他の市営墓地 600 円 ・なし ・年 450 円/区画 備考 他都市の墓石型墓地の募集状況及び使用料・管理料(その1:岐阜県内の自治体) 4-4 第4章 今後の市営墓地のあり方 自治体名 東京都 横浜市 横須賀市 募集状況 H23.7 H24.9~10 H20.10 ・永代使用 1.85 ㎡ 1,494,800 円 5.9 ㎡ 4,767,200 円 ・1 ㎡当たり 808,000 円 ・永代使用 1 区画 900,000 円 ・30 年使用 1 区画 450,000 円 ・1 ㎡当たり 不明 ・年 8,000 円/区画 ・永代使用 4.0 ㎡ 865,000 円 ・1 ㎡当たり 216,500 円 メモリアルグリーン (芝生型墓地) 市営公園墓地 使用料 管理料 備考 自治体名 募集状況 使用料 管理料 ・年 1,200~3,600 円/ 区画 小平霊園 市原市 H24.12~H25.1 ・年 420 円/㎡ ・年 5,040 円/区画 高松市 募集状況 H20.11 管理料 備考 H24.12、H25.3 ・永代使用 3.0 ㎡ 547,000 円 ・1 ㎡当たり 182,333 円 自治体名 使用料 八千代市 ・永代使用 ・1 ㎡当たり 72,000 円 ~179,000 円 海保墓苑 備考 ・年 7,350 円/区画 市営霊園 (芝生型墓地) 大阪市 H24.7~8、H24.10~11 H25.2~3 ・永代使用 3.025 ㎡ 550,000 円 ~688,000 円 ・1 ㎡当たり 181,818 円 ~227,438 円 ・20 年分 270,00 円/区画 泉南メモリアルパーク (芝生型墓地) ・永代使用 4.0 ㎡ 200,000 円 6.0 ㎡ 450,000 円 ・1 ㎡当たり 50,000 円~75,000 円 ・5 年分 4.0 ㎡ 10,500 円/区画 6.0 ㎡ 15,750 円/区画 平和公園墓園 他都市の墓石型墓地の募集状況及び使用料・管理料(その2:合葬式墓地をもつ全国の自治体) <他都市の墓石型墓地の募集状況及び使用料・管理料の考察> ○使用料は取り上げた事例の大半が永代使用で、定期使用(期限制)が導入されて いるのは横浜市のメモリアルグリーン(芝生型墓地:30 年)のみであった。 ○使用料は「1 ㎡当たり」で設定している自治体が多い ○管理料は「なし」「1 年単位」「5 年単位」「20 年単位」と自治体によって様々 で、徴収する場合の単位は大半が「1 区画当たり」であった 4-5 第4章 今後の市営墓地のあり方 ( 2 ) 市営墓地における使用者の定期調査の実施と無縁墓地の整理、再利用 定期的に市営墓地の利用実態を把握し、利用されている区画、空き区画、管理されて いない区画、無縁墓地等の量的把握に努める。また、定期調査の結果、管理されていな い墳墓について無縁墓地と確認されたものは返還を求め、空き区画として再利用を図る。 1) 使用者の定期調査の実施と無縁墓地の整理、再利用の流れ 使用者の定期調査を実施した上で、発見された無縁墓地は、以下の法令による手順を 経て改葬した後、空き区画として有効活用することが考えられる。 ① 定期調査の実施と使用者の特定調査 無縁墓地の定期調査及び現地調査などを実施し、使 用者を特定するための調査を実施。 ② 無縁墓地の改葬公告 以下の 2 種類の公告方法で改葬を公告。 官報への掲載:官報に無縁墓地の改葬公告を掲載 立看板の設置:墓の区画内の見やすいところに、 官報と同じ内容の立て看板を 1 年間設置 ③ 改葬許可の申請 使用者が不明であることを証明した書面に、官報の 写しと立看板の写真を添えて申請。 申請までに公告してから最低でも 1 年の期間が必 要。 ④ 無縁墓地の改葬 無縁墓地の改葬を実施。 遺骨や墓石を移すために 30~50 万円/基の費用が 発生。 ⑤ 空き区画として活用 空き区画として有効に活用。 無縁墓地の改葬と有効活用の手順 4-6 立看板の設置例 出典:宮崎市墓地基本計画(案) 第4章 今後の市営墓地のあり方 2) 無縁墓地を防ぐための対策例 無縁墓地化を防ぐための対策例を以下に示す。 <無縁墓地を防ぐための対策例> 参考:宮崎市墓地基本計画(案) ○墓地使用許可書に「使用権の承継手続きの重要性」をわかりやすく目立つように 掲載する。 ○生前でもお墓の承継手続きを可能にするなど、現実にお墓を管理している人が使 用者となれるように制度を変更する。 ○できるだけ各墓地に墓守を設け、各墓地(事務所)でも手続きができるようにす る。 ○墓地の維持管理に必要な経費を数年に1度徴収するなど、墓地に関する経費負担 の必要性を理解してもらう。その際に、管理料の納付書に、承継手続きに関す る啓発物や手続き書類等を同封する。 ○承継手続きに関するパンフレットを作成したり、ホームページ等を活用し、無縁 化の現状や問題点等を広く周知する。 ○墓石業者などお墓に関する事業者との連携を図り、トラブルのない承継手続きの 啓発や手続き代行を行う。 ○お墓や葬送をテーマにした講演会やシンポジウムなどを定期的に開催する。 3) 無縁墓地の遺骨の扱い方 無縁墓地の改葬を実施する時点で民間では受け皿がない可能性があるため、市営墓地 内の余剰地に、遺骨を合同で埋葬する小規模の合葬式墓地または納骨堂などを設置し、 それらへの改葬を行うことを検討する必要がある。 4) 無縁墓地の改葬手続きの課題 官報への改葬公告や立看板を1年間設置するだけで十分な期間を確保したと言えるか は、慎重な検討が必要である。実際には承継者と成り得る人がいないかの調査と、意向 の確認等の手続きを並行して進めていくことになる。無縁墓地の改葬手続きの方法は、 市で合葬式墓地を建設し改葬する等、受け皿も併せて検討する必要がある。 4-7 第4章 今後の市営墓地のあり方 ( 3 ) 民間墓地等への改葬の斡旋と改葬を促すための補助制度の検討 空き区画数の確保のため、必要に応じて市営墓地の承継者のいない使用者に対し、民間墓 地等への改葬を斡旋する。また、市営墓地での改葬を促すために、市で合葬式墓地建設の検 討や改葬する使用者の負担を軽減するための補助制度などを検討する。 1) 改葬の斡旋と改葬を促すための補助制度の検討 承継者に不安がある永代使用者に対しては、必要に応じて民間墓地等への改葬を斡旋 し、市営墓地内の空き区画の確保を図ることが考えられる。 改葬を斡旋する手法としては、以下のような手法が考えられる。 <改葬を斡旋する手法(案)> ○市営墓地利用者アンケートによる改葬ニーズの把握と掘り起し ○補助制度など、改葬を促すためのインセンティブ(動機づけ)の提示 ○改葬の流れや改葬するメリットなどを説明するパンフレットやホームページ などによるPR 2) 民間墓地への改葬の斡旋 承継に不安があることだけを理由に、民間墓地への改葬を斡旋することは、やむを得 ない場合を除いて、できる限り避けなければならない。 やむを得ず民間墓地への改葬を斡旋する場合には、 以下のことに留意する必要がある。 <民間墓地への改葬を斡旋する際の留意点> ○市営墓地を求める市民に対して、市営墓地の現状を丁寧にわかりやすく説明す る。 ○民間墓地への改葬を斡旋する際には、特定の民間墓地に偏らないよう、客観的 な情報のみを伝達することに留意する。 ○民間の合葬式墓地がある場合は、合葬式墓地に改葬する選択肢があることを示 す。 4-8 第4章 今後の市営墓地のあり方 ( 4 ) 民間墓地への誘導 市営墓地と民間墓地の役割を明確化し、さらに民間墓地との連携を図ることで、墓石型墓 地への新たな墓地需要に対して民間墓地へと誘導する。 1) 民間墓地へと誘導する際の留意点 民間墓地への誘導を図る上では、以下のことに留意する必要がある。 <民間墓地へと誘導する際の留意点> ○市営墓地を求める市民に対して、市営墓地の現状を丁寧にわかりやすく説明す る。 ○合葬式墓地がある場合は、合葬式墓地の選択肢があることを示す。 ○その上で、それでも墓石型墓地を好む市民に対しては、民間墓地を取得するこ とをお勧めする。 ○民間墓地をお勧めする際には、特定の民間墓地に偏らないよう、客観的な情報 のみを伝達することに留意する。 4-9 第4章 今後の市営墓地のあり方 ( 5 ) 多様な市民ニーズに対応する埋葬形式の導入 官民の連携により、従来型の墓石型墓地に比べ、安価で空間効率にも優れる合葬式墓 地などの墓地形態の導入を推進し、多様化する市民ニーズへの対応とともに区画数拡大 の面でも有効に作用させる。 また、樹木・樹林型、慰霊碑型墓地など、空間効率に優れた合葬式墓地の導入も視野 に入れ、多様化する市民ニーズに対応する。 1) パターン1:官主導による多様な市民ニーズへの対応 樹木・樹林型、慰霊碑型墓地など、空間効率に優れた合葬式墓地を市営墓地として導 入し、区画数の確保とともに多様化する市民ニーズに対応することが考えられる。合葬 式墓地を導入する場合の市営墓地は、土地余力が若干ある平和霊園を対象として建設可 能性を検討する。 1.合葬式墓地の埋葬形式 多治見市に望まれる合葬式墓地の埋葬形式は、以下の理由により、樹林・樹木型墓地、 慰霊碑型墓地であると考えられる。 墓地形式 樹木・樹林型墓地 慰霊碑型墓地 ・平和霊園内の緑地を有効活用で きる。 ・立体型と比べると敷地面積が必 要である。 ・設置場所の選択肢が広い。 ・土中への埋葬のため、大きな造 成を伴わない。 ・大きな構造物がなく、最も経済 的である。 ・土中に埋めるので埋葬数も増や しやすい。 ・最も自然に馴染んだ景観となる。 ・平和霊園内の区画地以外の限ら れた余剰地を活用できる。 ・地上部はモニュメントが主体で 施工が容易である。 ・地下であるため、敷地面積は少 なく済む。 ・空間効率が良い。 ・圧迫感は少なく、モニュメント として景観の向上に寄与できる 提案理由 多治見市に望まれる合葬式墓地の提案 4-10 第4章 今後の市営墓地のあり方 比較内容 事例数 設置場所 構 造 使用料・ 使用期間 管理料 埋蔵方法 樹木・樹林型 ・自治体が運営するものは東 京都と横浜市の 2 例しかな い。 ・全国的には寺院が経営する ものが増えている。 慰霊碑型 ・最近、自治体が運営する ものが増えている。 ・広い墓地の一角に設置さ ・同左 れている。 ・樹林地、シンボルツリー、 ・地上 モニュメント等 土中埋蔵施設 ・地下 納骨施設、合葬室 等 ・東京都と横浜市の 2 例は ・いずれも定期使用で、期 慰霊碑型も併設されて 間は 10 年間、20 年間、 いるが、いずれも樹木・ 30 年間とまちまちであ 樹林型の方が高い。 る。 ・ 永 代 134,000 円 ~ ・2,000 円~10,000 円(年 140,000 円 換算) ・不要~永代 60,000 円 ・不要、年間 620 円、永代 50,000 円~60,000 円と まちまちである ・樹林、樹木下の土中の共 ・定期使用中は個別の収納 同埋蔵施設に入れるタ 施設に埋蔵される。 イプと、骨壺を直接埋蔵 ・定期使用後は他の遺骨と するタイプがある。 一緒に共同の合葬室に 埋蔵される。 施工性 ◎ ・園内の緑地を有効に活 用できる。 ・場所の選択肢が広い。 ◎ ・立体型と比べると敷地 面積が必要である。 ・土中への埋葬のため、 大きな造成を 伴わな い。 ○ 経済性 ◎ ・大きな構造物がなく、 最も経済的である。 ○ 土地利用 ○ 評 価 埋葬数 景観性 納骨堂・立体型 ◎ ◎ ・土中に埋めるので埋葬 数も増やしやすい。 ・敷地の形状に制約を受 ける ・最も自然に馴染んだ景 観となる。 ◎:平和霊園 において最も有効である ※ ◎ ◎ ・区画地以外の余剰地を 活用できる。 ・空間効率が高い。 ・地上部はモニュメント が主体で施工が容易 である。 ・地下構造物の施工が必 要となる。 ・地下構造物が必要で、 樹木・樹林型に比べ費 用がかかる。 ・地下であるため、敷地 面積は少なく済む。個 別の埋葬数は施設規 模に左右され限定さ れる。 ・ 圧迫感 は少な く、 モ ニュメントとして景 観の向上に寄与でき る。 ○:平和霊園において2番目に有効である 4-11 ・同左 ・地上 納骨堂建屋、納骨 壇等 ※地下に合葬室がある事 例もある。 ・いずれも定期使用で、期 間は 20 年間、1~30 年間 とまちまちである。 ・3,950 円~5,250 円(年 換算) ・今回の事例は皆不要で あった。 ・同左 ・同左 ◎ ・建屋の整備が必要とな る。 ○ ○ ◎ △ ・建屋の整備が必要で、 整備・管理費が最もか かる。 ・空間効率は良いが、個 別 の 埋 葬 数 は 施 設規 模 に 左 右 さ れ 限 定さ れる。 ・景観への配慮が最も必 要。 ・場所によっては建屋が 圧迫感を与える。 △:平和霊園において他より劣っている 参考とした公営合葬式墓地の事例を資料編「資料3 公営合葬式墓地の事例考察 ・他に比べ自治体が運営す る事例は多い。 公営合葬式墓地の事例」に示す。 第4章 今後の市営墓地のあり方 2) パターン2:民間主導による合葬式墓地の導入 民間の合葬式墓地を導入する場合では、合葬式墓地の埋葬形式、合葬式墓地の墓地容 量の推定、合葬式墓地の管理運営、合葬式墓地を設置する場合の事業スキームなどは、 官主導による対応とおおむね同様となる。なお、設置する場所は民有地となる。 以下に、民間主導により合葬式墓地を建設する場合において、行政が担うべき役割や 施策などの案を整理する。 <民間主導の場合に行政が担うべき役割や施策(案)> ○官民連携による合葬式墓地導入に向け、多治見市における合葬式墓地導入のあり 方について研究する。 ○民間向けに市民ニーズの変化や合葬式墓地の必要性をアピールする。 ○民間が合葬式墓地を建設する際の補助金・助成金制度などを検討し、合葬式墓地 導入に向けたインセンティブ(動機づけ)を与える。 ○民間墓地経営への新規参入を促すための市の相談体制を整備する。 4-12 第4章 今後の市営墓地のあり方 4.3 今後の課題 これからの墓地のあり方を具現化するために、解決していかなければならない課題を以下 のように整理する。 <これからの墓地のあり方を検討するための課題> 市民に対する課題 ○無縁墓地化を防止するために使用料や清掃料の有期限制を採用する場合は、使用 者の理解を得ることが必要である。 ○市営墓地での改葬を斡旋する際には、改葬する使用者の負担を軽減し、促すため の補助等ができないか検討する必要がある。 ○無縁墓地の改葬にあたっては、市で合葬式墓地を建設し改葬する等、受け皿の検 討が必要である。 ○合葬式墓地などの新しい埋葬形態の周知と啓発を図るとともに、墓地整備に対す る理解と協力を得ることが必要である。 合葬式墓地を導入する場合の課題 ○合葬式墓地を設置する場合は、現代の市民ニーズに応えた、魅力があり、かつ低 廉な合葬式墓地を設置していくことが必要である。 ○市が建設する場合は、遺骨の取り扱いや管理方法、使用者の管理方法、永代使用 料等の料金設定と減免等の制度の有無について、先進事例を研究し検討する必 要がある。 市営墓地の管理・運営に対する課題 ○市営墓地が有すべき信頼性や安心感を満たす管理・運営を持続していくことが必 要である。 ○効率的・効果的な質の高い管理・運営に努めることが必要である。 4-13