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資料1 - 日本機械学会

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資料1 - 日本機械学会
 合同設計研究会講演 2005年1月20日
モノづくりのための設計工学と
機械工学における位置付け・発展
京都大学大学院工学研究科
吉村允孝
モノづくりのための設計工学
設計工学の機械工学における位置付け
設計工学の発展・展望
研究の履歴
工作機械のダイナミックス
ロボットのダイナミックス
最適設計
生産システム(生産スケジューリングなど)
グループ意思決定
コンカレントエンジニアリング
コラボレーション
宇宙機器システムの最適設計
感性工学
生産形態の変遷 モノづくりにおける設計環境
多品種少量生産
注文生産
顧客が設計に
関与する生産
(1) コンピュータ支援...
人間重視
システムの高度化
少品種大量生産
(2) コンカレント...
(3) コラボレーション
人間生活の質の向上をもたらす製品の例
自動車 バイク
医療機器
電車
カメラ
航空機
介助ロボット
人間生活の
質の向上をもたらす
製品の例
複写機
エレベータ
エスカレータ
住宅
ファクシミリ
家庭電化製品
パソコン 携帯電話
人体スケールを中心とした対象物のスケール配列
原子
分子
スケール スケール
●
小
●
ナノ
マイクロ 人体
スケール スケール スケール
●
●
●
大型機械
スケール
●
巨大システム 地球
スケール
スケール
●
●
大
現在の機械工学のトレンド
マイクロ,ナノ,バイオの研究の隆盛:
よりスケールの小さい世界に新しい展開を求めている.
その小さい世界では,機械工学,電気・電子工学,化学工学,
理学の分野の研究者は同じ対象を見ている
基礎科学の重要性
→
工学の理学化
社会から要求され期待されている工学の姿
環境・資源・安全性のことを十分に配慮した上で,生活を豊か
にする製品を低コストの生み出すことに役立つ技術や学問を研究する
産業を支え経済発展の原動力になり,繁栄に貢献すること
この実現に最も期待が寄せられているのは,工学の中でも機械工学である
製品設計に対する要求のトレンド
[性能,品質,製造コスト]
+
安全
+
環境への影響,リサイクル,快適性,精神的な満足
製品に対する要求事項の高度化と多様化
境 へ の配
自然環
慮
イ
サ
ク
フ
ルへ
の配
ライ
品
感
性
・
工
項
学
慮
事
製
的
学的 質・低コスト 事項
工
品
要求 に
間 能・ 高
の 対す
人 性
実
・ 高
一般消費用
現 る
配
全
機械メーカー
慮
安
顧客
産業用(生産用)
機械メーカー
モノづくりに必要な工学・技術
機械工学は,工学の主要な目的である“モノづくり”における
学問的な基盤を与え,その発展の推進力となるものである.
機械工学出身の学生に対する産業界からの期待:
あらゆる産業界から嘱望されている(本年度の就職担当の経験から)
日本機械学会関西支部設置専門部会
(1) 材料・材料力学分解(第1部会)
材料力学,機械材料
(2) 熱・流体工学部会(第2部会)
流体工学,流体機械,熱工学,内燃機関,動力
(3) 生産・加工・産業機械部会(第3部会)
生産加工,工作機械,金属加工,生産システム,交通機械工学,
荷役工学,化学機械,産業機械,環境工学,精密情報機械
(4) 機素・機械力学・制御部会(第4部会)
機素・潤滑,機械力学,計測・自動制御,バイオエンジニアリング
(5) R&D 部会(第5部会)
技術史,研究開発方法,教育,技術管理,フィロソフィなど
ASME International Design Engineering Technical Conferences
& Computer and Information in Engineering Conference
•
2005 ASME/IEEE International Conference on Mechatronic and Embedded
Systems and Applications (MESA05)
•
20th Biennial Conference on Mechanical Vibration and Noise (VIB)
•
25th Computers and Information in Engineering Conference (CIE)
•
31st Design Automation Conference (DAC)
•
2005 Design for Manufacturing and the Life Cycle Conference (DFMLC)
•
17th International Conference on Design Theory and Methodology (DTM)
•
5th International Conference on Multibody Systems, Nonlinear Dynamics, and
Control (MSNDC)
•
29th Mechanisms & Robotics Conference (MECH)
•
Power Transmission & Gearing Conference (PTG)
•
18th Reliability, Stress Analysis & Failure Prevention Conference (RSAFP)
設計工学の立場
モノづくりに必要な知識や技術を研究し
学ぶ上で,機械工学の中心に位置すべきもの.
関連する分野の広がりとコラボレーションに必要性
設計工学としての学問の確立
現在関心をもつ分野からの話題と展望
(1) 最適システム設計
(2) コラボレーション
(3) 感性工学・意思決定法
モノづくり支援システム技術
術
製
品
形
3次元
状
援
品質
認
ソリッド
支
設計
スケジュー
モデル ディジタル 識
リング
造
モック
技
生産計画
アップ
ク ,共 用
製
ラピッド 術
デ
ワ ー
ー
モジュール化 ト
プロト
,意 思
ッ
決 タ タイピング
法
設計
ベ
ネ 化
顧
性
意 思 定
報
CAE
適
支
客
QFD
能
情
ニ
最 決 定 援 ス 構造解析
特
法
バ
ィ
感性情報 ー
性
ズ
テ シミュレー
獲
処理
チャ
リ
解
ル リア
ション
得 システム
析
アイデア
技
技
ERP
獲得支援
術
術
PDM (TRIZなど)
企業
術
経営
技
ス
支援
ー
ベ
技術 デ ー タ
技
ー
ー
感性面からの人間固有の三つの能力
より美しいモノ,
より快適なモノ,
より心を豊かにするモノを
“判断”
する能力
人間の
感 性 他人と
新しい
コンセプト,
“共感・共鳴”
新しいモノを
“創生”
する能力
して,より大きな
成果を生みだす
能力
モノづくり支援システム技術
• 製品形状認識技術
3次元ソリッドモデル, ディジタルモックアップ, ラピッドプロトタイピング
• 性能特性解析技術顧客とメーカーの関係および製品に対する要求事項
CAE・構造解析, シミュレーション
• データベース技術
アイデア獲得支援(TRIZなど), PDM
• 製造支援技術
品質設計, スケジューリング, 生産計画, モジュール化設計
• 顧客ニーズ獲得技術
QFD, 感性情報処理システム
• 企業経営支援技術
ERP
意思決定者の感性に訴えより好ましい意思決定に結びつくことが必要
最適設計に対する一つの見方
設計+最適化
だけでは有益とはいえない
(1) 設計者の感覚にあった形で概念設計時点からの
設計の決定を支援すること
(2) どのようにして最適解が得られたかの全体的な
様子を把握できること.
(3) その解の内容を吟味して,理解し,その妥当性を
判断できること
(4) さらなる改善のための方策(さらに望ましい解を
得るための),指針をその結果から求め得ることを
支援しうること
CAD,CAEと最適化の流れ
設計者の
アイデア
ポンチ
絵
概念設計
3次元CAD
単純化モデルCAE
FOA, 単純化
モデル解析
最適設計
詳細設計
3次元CAD
詳細モデル
CAE
最適設計
製品組立モデル
3次元CAD
性能特性の基本特性への分解と階層構造
評価特性の分割と大域的最適化
最終的な評価特性を,いくつかの
副次的な評価特性に分割して,部
分的な最適解から全体の最適解
を見出す.
各階層において共通の入力変数
を持つ評価特性の集合を,最適化
基本単位(Basic Optimal Unit,
BOU)と定義する.
すべての最適化は下位(詳細部分)
のBOUから,1つのBOUを単位と
して順次行っていく.
A
C
F
a
B
D
G
b
E
H
c
I
d
最適化基本単位(BOU)
: design variables
: characteristics
e
最適化結果の上階層への伝達
• 下階層の結果を基に初期パレート解集合を作成し、
伝達
上階層に渡す。
A
B
C
初期パレート解集合
C
D
E
D
F
F
G
H
H
I
G
a
b
c
d
e
E
合成
I
適用例∼フライス盤∼
Mot or
目的関数
コスト: ジョイント部の製造費 + 材料費
Ma i n s pi ndl e
Hea ds t oc k
Cut t i ng poi nt
切削点に振動荷重を
精度: 加えた時の相対的な
たわみ
加工面の
+ 幾何学的
あらさ
Bed
能率: 単位時間あたりの切削量
F
Col umn
F
Ta bl e
Z
Ba s e
Y
Sa ddl e
X
J oi nt
設計変数
部材の断面形状、ジョイント部のあらさ、 工作機械の切削速度、送り、切り込み深さ
階層構造図
製造コスト
加工精度
加工能率
最適化順序
加工精度,加工能率,製造コストの3目的問
題におけるパレート最適解
加工能率
加工能率
コスト
コスト
加工精度
Number of Pareto optimum solutions: 794
提案手法による最適解
加工精度
Number of Pareto optimum solutions: 213
通常の方法による最適解
コストの適応度0.7での加工精度と加工能率
のパレート最適解の比較
1.2
Hierarchical optimization
Processing efficiency
加工能率
1
Optimization at once
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
0.2
加工精度
0.4
0.6
Processing accuracy
0.8
1
階層最適化構造におけるパレート最適解の更新
P’
f2
P
Q’
Q
f1
f6
f4
f3
f5
f10
f8
f7
f12
f9
f14
f11
f13
最適解の革新についての説明図
部品最適による
パレート最適解
全体最適による
パレート最適解
P
製品製造コスト Ψ2
コンピュータ支援...
コンカレント...
全体最適解の
ブレイクスルー後
のパレート最適解
解のブレイクスルー
コラボレーション
シナジー効果による
最適解の革新の
方向
Q
製品性能 Ψ1
モノづくりにおけるコラボレーション
それに参加するものが知識・技術の共有化を行い,感動を
共有化することにより最大の価値を生み出すこと
ただ仕事を分担するだけでは,コラボレーションとはいえない
コラボレーションの分類
コラボレーションの種々のタイプ
意思決定者A
意思決定者B
評価特性
作業精度
作業能率
製品製造コスト
意思決定者C
意思決定者D
顧
客
企業A
最適化エージェ
ント
新製品開発
プロジェクト
による設計解
企業B
企業C
設計者1
最適化エージェ
ント
モバイルエージェ
ント
(コーディネータ
ー)
ネットワーク環境での
マルチエージェントシ
ステム
設計者2
製品開発グループでの発想支援
コラボレーションの利点
・知識,情報の共有
一人のデザイナーの持つ専門知識は限られる
複数のデザイナーが互いに専門知識を持ち寄ること
で複雑な設計に対応
・デザイナー間の相互作用によるアイデアの創出
コラボレーションの過程で,デザイナーは互いに影響を
与え合い,発想が刺激される
これまでにないアイデアが生じる可能性
コラボレーションによる集団創造活動
より洗練された
アイデア
アイデア
アイデア
議論
刺激
提示
アイデア
アイデア
議論
提示
アイデア
議論
刺激
提示
この個々のやり取りを
Session:セッションと呼び,
集団創造活動の基本単
位とする
人間の創造活動
集団創造活動モデルの構築にあたって,
初めに洗練と連鎖の二つのプロセスで人間の創造活動をモデル化する
・洗練プロセス
・連鎖プロセス
より洗練された
アイデア
アイデア
アイデア
アイデアの評価・改良
アイデアを評価,改良しより優れたアイデアへと
発展させるプロセス
刺激
知識
新しい
発想
アイデア
その他の情報
受け取った情報から刺激を受け,
新しいアイデアを発想するプロセス
人間の創造活動は連鎖プロセスと洗練プロセスからなるサイクルの集合
セッションの構造
Base action
Counter action(1)
デザイナーの自由な発想を妨げない
Counter action(2)
Counter action(4)
デザイナーはカウンターアクショ
ンを望むタイミング,望む場所へ
と提示することが出来る
Counter action(5)
Counter action(3)
セッションはツリー構造を持つ
Counter action(n)
セッション間の関係
設計を完成させるためには複数のアイデアが必要
複数のセッションが生じる
デザイナーの自由な発想を妨げない
Session5
Session4
自由にセッションを開始し,自由に
セッションを進めることが出来る
Session3
Session2
Session1
設計の進行
「コラボレーション」としてのモノづくり環境
• コラボレーションを支援するシステムの構築
• 「だれ」と「どのように」コラボレーションするかの
戦略の重要性
これを誤ると大失敗を生み,引き返すことが
非常に困難になる.
コラボレーションの実行可能性の評価
α
β
Knowledge of
designer α
α
Knowledge of
designer β
β
Common
knowledge
Combining knowledge sets
Φ=
min{ Sα , S β }
max{Sα , S β }
コラボレーションの相手企業の選択問題
Candidate
partner P1
Candidate
partner P2
Primary
company P0
Adopted Partner
Candidate
partner Pl
Candidate
partner Pi
Candidate
partner PN
開発プロジェクトへのヒューマンリソースの最適配置
品質・価格競争の激化により経営資源を得意分野へ集中投資
採用する開発プロジェクトの適切な選択
and
重要性が増加
各開発プロジェクトへの適切な人材配置
現状: 各開発プロジェクトの実行に必要なスキルにのみ着目
but !
ヒューマンリソースは人間である
モチベーションやキャリアパスをも考慮した人材配置が不可欠
企業組織におけるプロジェクトの形成
企 業
部門A
部門B
● ● ●
ヒューマンリソースa1
ヒューマンリソースb1
ヒューマンリソースb2
ヒューマンリソースb3
●
●
●
●
●
●
ヒューマンリソースa3
プロジェクトi
リソース配置アルゴリズム 目的関数
Maximize
f1(x) : 各Projectにおける必要スキルの充足度
Resourceの能力(rskilljk)とProjectにおける必要量(pskillik)とを比較
f2(x) : 各Resourceに望まれるキャリアパスの満足度
Section managerが与えるキャリアパスに対する満足度(cplanji)
f3(x) : 各Resourceのモチベーション
「自己実現(rsatji)」と「外部環境(rcompjl)」の2側面より評価
最適解の革新についての説明図
部品最適による
パレート最適解
製品製造コスト Ψ2
コンピュータ支援...
全体最適による
パレート最適解
P
コンカレント...
全体最適解の
ブレイクスルー後
のパレート最適解
解のブレイクスルー
コラボレーション
シナジー効果による
最適解の革新の
方向
Q
製品性能 Ψ1
製品設計に対する人間工学・感性工学適用の概念図
環 境
視覚
触覚
製品C
製品B
製品A
感性評価の一つの流れ
n個の設計
代替案の準備
SD法による
感性評価
主因子分析による
評価結果の整理
評価マップ
の作成
評価要因の感性的
特徴の把握
カップ搬送マニピュレータ
B●
マニピュレータ
カップ
A●
マニピュレータの代替設計例
(a)2自由度 (b)3自由度 (c)4自由度
(ⅰ)リンク機構の自由度
B
B
A
A
(a)直線運動
(b)曲線運動
速度v
(ⅱ)エンドエフェクターの運動軌跡
時間t
(b)非対称パターン
0
(a)対称パターン
(ⅲ)エンドエフェクターの速度パターン
マニピュレータモデルに対する評価マップ例
機械的な
0
Z2
0
モデル1
0
モデル9
2自由度マニピュレータ
4自由度マニピュレータ
1
2
ずっしり
0
モデル3
とした
モデル4
モデル7
2
モデル5
モデル
88
モデル6
3
3自由度マニピュレータ
人間的な
3
モデル1
5
モデル2
Z1軽快な
モノづくりにおける「感性」の重要性
モノづくりにおける本質的な相違: 個人(民族,
世代,...)がもつ感性
築いてきた文化,歴史,文明をモノづくりに生か
す
支援システムはできるだけ人間の感性を引き出
すものであるべき
感性面からの人間固有の三つの能力
狭い意味の感性
より美しいモノ,
より快適なモノ,
より心を豊かにするモノを
する能力
新しい
コンセプト,
新し い モノを
モノづくりの基本
する能力
他人と
して,より大きな
成果を生みだす
能力
コラボレーション
の目標
日本人の感性
• 和の精神を尊ぶ
→コラボレーションの基本
• 他の文化・文明を取り入れて独自のものを創り上げる
→モノ創成の基本
• 自然を愛する・繊細な美意識をもつ・簡素の美を尊ぶ
→精神的に満足度の高いモノ創成の基本
おわりに
これからの設計工学の姿:
モノづくりに必要な知識や技術を研究し
学ぶ上で機械工学の中心に位置すべきもの
他の機械工学分野,他の工学分野ばかりでなく.
経済・経営学,心理学などとのコラボレーションが必要である.
“核”をもちながら,どんどん広がる学問・技術である.
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