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2 - 素形材センター

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2 - 素形材センター
軽量化のための非鉄金属の適用方法
関 口 常 久 日本大学
我が国の製造業はグローバルな競争や円高などの外部環境が厳しさを増
している。今後、競争力を維持していくためには効率化や創造的開発が
求められている。時代が求めるテーマである軽量・小型化について自動
車を中心に非鉄金属の軽量化について概説する。
1.はじめに
本年(2012 年)1 月 9 日に開催された米国最大の
を進めている。軽量化技術は既存材料の高強度化、
自動車イベント、北米国際自動車ショーで米国大手
材料置換、モジュール化による生産技術開発がある。
のビッグ 3 はこぞって小型・エコを前面に打ち出し
ここでは「軽量化のための非鉄金属の適用方法」と
た。自動車業界は環境問題やエネルギー問題を重要
題して自動車を中心に低比重のアルミニウム、マグ
視し、燃費改善・CO2 排出量削減の軽量化技術開発
ネシウム、チタン、CFRP の適用を紹介する。
2.軽量化の背景
2
文字通り「激動」が続き、誰もが予想しなかった
材料が制している」ことを肝に銘じ、材料と加工技
変化を体験している。今まで当たり前に思っていた
術の重要性を再認識すべきある。鍛造業界も未来に
価値が変わりつつあり、企業の海外移転も止まらず
向かって動き始めている。時代は「高品質の製品を
製造業の衰退が伝えられ、大手家電メーカーは巨額
低価格で」から「価値を生む製品を適切な価格で」
の赤字を出している。製造業に何が起こっているの
の方向に変化している。鍛造製品も他製造品と同様
であろうか?日本企業の強みは部品を集め組立精度
に抜本的な品質・コスト・軽量化や高機能化等の価
や品質が優秀なことであった。しかし、今やこれだ
値の見直しが迫られている。ところで、我が国の鍛
けでは韓国や台湾などに大きな差をつけられなくな
造業界はどのようになっているのだろうか?図 1 に
り、加えて円高により価格競争力も低下している。
鍛造業界のあらましと生産量を示した。
確かに液晶パネルや半導体はハイテク製品であるが
国土も狭く、資源にも恵まれない我が国は技術と
その“カギ”を握る材料や部材、製造設備は家電メー
ものづくりを基盤にして豊かな国を築いてきた。
“強
カーが握っているわけではない。海外の家電企業が
み”で日本と米国、欧州を比較して、米国のマーケ
調達しようと思えば同様のものを簡単に入手できる。
ティング、欧州のエンジニアリング、日本のマニュ
正にスマイルカーブの最も付加価値の低い部分に
フアクチヤリングという見方があるが、我が国のマ
入ったことを自覚しなかったわけである。現状を脱
ニュファクチャリングが揺らいでいる。図 2 は最近
却するには研究開発の促進と材料及び加工技術を抑
の鉄鍛造品の生産量であるが 1997 年をピークとして
えることに尽きる。これには「製品の機能アップは
減少しドイツや北米に追い越されている。これは日
SOKEIZAI
Vol.53(2012)No.8
特集 部材軽量化に挑戦するアルミニウム鍛造技術
鍛造関連団体
鉄鋼・アルミの鍛造業界
鍛鋼品
鍛工品
業界
23社
2400人
50~60万トン
(特社)日本鍛造協会
約230社
140社
420事業所
15,000人
200~210万トン
アルミニウム 鍛造技術開発
協同組合
鍛造技術会
約60社
約10社
ファスナーボルト,ナット200万トン
学会
アルミニウム
44社
1,700人
70,000トン 約70社
400社,13,000人
年間売上げ:5,000億円
+
(一社)日本塑性加工学会
鍛造分科会
内製メーカ:自動車
会社鍛造部門
図 1 我が国の鍛造業界と材料別生産量
品質を具備した
ユーザ産業への
安定供給技術
開発・生産の
リードタイム短縮
品質保証
システムの構築
コスト削減
技術領域
軽量化
自動車産業
高機能化
土木・建設機械産業
重電・産業機械産業
造船・船舶産業
航空機産業
その他、将来有望産業
環境対応型
工法の開発
高精度化
小型化
複合一体化
産業分野
軽量化・省エネ・環境適合
図 2 我が国の鍛工品生産量推移
本企業の現地化進展と海外企業の台頭によるもので
ある。日本の人件費、土地建物、通信、電力、流通
などの生産拠点でかかるコストを考えた時、日本の
図 3 鍛造業のビジョンとして取り組む技術開発
鉄道・造船他
10%
鍛工品の需要比率
土木・建機
23%
製造業はより有利な条件を求め海外生産の比率を高
めている。この動きに対処するため日本鍛造協会で
は図 3 に示すように鍛造業の高度化を目指して鍛造
業ビジョンと 10 年後のロードマップを 2006 年に作
成した。技術開発のポイントとなるのが軽量化、省
エネ、環境適合のテーマで、軽量・小型化は最も優
先すべき項目である。図 4 は鍛工品の需要構成であ
るが、アルミニウムも同じような需要構成で自動車
主要需要業界
・自動車・二輪車
・産業・鉄道車両
・土木・建設機械
・家電・電子
・航空機
・船舶
・半導体装置
自動車
67%
図 4 鍛工品の需要構成
が 60 % 超、 土 木・ 建 築 産 業 向 け が 20 % 超 で あ る。
なっているため、自動車の軽量化を中心に話を進め
自動車の需要量が多く、軽量化技術が最優先課題と
ることにする。
3.なぜ軽量化か=背景、方法、メリット=
自動車産業は、従来の環境・安全・快適性から環
よる社会変化である。素材活用の変化は燃費向上と
境・安全・軽量・小型・安価が合い言葉になってい
CO2 排出量削減のための軽量化で、より低比重の軽
る。自動車業界では三つの変化が起こっている。ま
量化材料が増加傾向にある。
ず、素材活用方法の変化、部品の統合化によるもの
自動車はユーザー要望で図 6 のようにモデルチェ
づくりの変化そして無公害車 EV が増加することに
ンジ毎に寸法が大きくなり、衝突安全性への規制等
Vol.53(2012)No.8
SOKEIZAI
3
低燃費、省エネルギー
排ガス規制
法的規制による車重
増加の軽減対策
騒音規制
自動車の変化
・『地球への優しさ』
・低価格化
(需要増大の東アジア対応)
素材活用の変化
軽量化
ものづくりの変化
安全規制
自動車重量税
部品の変化
EVでの社会変化
走行性能、操縦性能
の向上
図 5 自動車を取り巻く環境変化
図 7 軽量化が求められる要因
1050
1000
950
900
850
800
750
700
1965
暦年
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
図 6 自動車はモデルチェンジごとに重くなる
その他
16%
アルミニウム
7%
樹脂
8%
車両重量
1600kg
鉄鋼
69%
図 9 乗用車に使用されている材料比率
車重量税の軽減、走行性能の安定向上がある。
図 8 は各自動車メーカーの軽量化の取り組みで、
自動車の構造や部品設計の見直し、各部に高張力鋼
を使用する方策、部品点数の削減、軽量化材料へ置
図 8 自動車各社の軽量化の取り組み
換がある。実際の材料置換の現状を見てみよう。図
で装備が必要で重量は増加してきた。重量増を放置
鋼材料が 70 %、樹脂・アルミニウムの軽量材料がそ
すると、運動性能が悪くなり、燃費・排ガス規制が
れぞれ 8 % と 7 % でトータル 15 % である。現状では
守れなく軽量化が必然となる。軽量化効果は図 7 の
まだまだ鉄鋼材料が主力なことが判る。では、どの
ように省エネ、排ガス、騒音や安全規制対策や自動
4
SOKEIZAI
Vol.53(2012)No.8
9 は乗用車に使用されている材料比率であるが、鉄
部分を軽量化するのが得策だろう。図 10 は自動車の
特集 部材軽量化に挑戦するアルミニウム鍛造技術
内装, 2
駆動関係, 11
足回り部品軽量化の必然性
パワステアリング, 6
その他, 5
電気関係, 3
タイヤホイール, 32
エンジン, 14
ブレーキ, 23
サスペンション&
アクスル, 34
自動車の構成部位別
重量割合 %
ボディ, 52
シャーシ, 18
シャーシ関連部品の重量割合 %
シャーシ,足回り
図 10 自動車各部の重量比率
構成部位ごとの重量比率である。重
量構成率の高いボディと走行安定
性に大きく影響する足回り・シャー
シを軽量化すると効果が大きいこ
とが判る。
軽量化を達成するための解決策
は材料置換、高強度化、モジュール
化、小型・中空化が考えられるが
図 11 に示すように既に検討・達成
されている部品がかなりある。今後
の部品軽量化はよりハードルの高
いものになることが予想される。こ
材料置換
軽量化
軽量化技術(採用材料)
プラスチック
アルミニウム合金
マグネシウム合金
材質強化
ステンレス鋼
チタン合金
高張力鋼板
小型化,
モジュール最適化
電動化
こで、部品軽量化の歴史を振り返っ
てみよう。
高強度化
モジュール化
小型化
中空化
部品名
吸気マニフォールド, インテークパイプ, フューエルパイプ, ギヤ, ウィンドウ
,
プロペラシャフト (CFRP), シリンダブロック, ホイール, ボディパネル, ディスクブレーキ (ダンパー), オイルクーラ, , シリンダヘッドカバー, シートフレーム, キーロック, ハンドル芯金
バルブスプリング, サスペンションバネ, フロントガラス(薄化)
排気マニホールド
, シャーシ部品
, 足回り, ABSアクチュエータ, シートフレーム
,
クーリングモジュール
パワーステアリング
エンジンバルブ, カムシャフト(鋳造,パイプ+焼結), スタビライザー
サブフレーム, センターピラーリンフォース
※クーリングモジュールとはエアコン部品のモジュール化
図 11 軽量化方策と検討・使用部品
4.軽量化の歴史
自動車に軽量化の概念が取り入れられると、まず
に示すように 1911 年で、1950 年の生産台数は 7,000
アルミニウムの使用が検討された。これが 100 年前
台 / 年であった。1956 年になると 2.3 万台になりこの
の 1914 年で、米国でアルミ板材を車のフェンダー
頃から急速に発展し、5 年後の 1961 年にはイタリア
に採用したのが始まりである。ダイムラー & ベンツ
を抜き、1964 年にはフランスを抜いた。この頃にな
が四輪のガソリンエンジン車を発明したのが 1886 年
ると高速道路網が整備され、自動車の普及が高まり、
で、アルミニウムの工業生産された年と同じ年であ
生産性の良いダイカスト鋳造や金型鋳造が活発化し
る。自動車発明から 20 年後に早くもアルミニウム採
てアルミニウム材料が脚光を浴びることになった。
用の検討がなされたことになる。
図 13 にサスペンション部品のアルミ化の歴史を示
我が国で最初に自動車工場が建設されたのは図 12
したが高機能化と低コスト化の進歩がうかがえる。
Vol.53(2012)No.8
SOKEIZAI
5
2008年570万台
2000年340万台
1990年200万台 × ×
×
●1914年フォード
1980年50万台
アルミフェンダー採用
2010年480万台
1964年仏を抜く
×
●1911年
1961年伊を抜く ×
日本自動車生産開始
1956年23万台 ××
●1886年
1950年0.7万台
×
アルミ工業化
我が国の自動車生産推移
×
インサイト
1886ベンツ車
1990年NSX
1903フォード車
2010年電気自動車
アルミ化推移、率
3%
4.5%
7%
9.4%予想
1886年自動車発明、アルミ工業化
1903フェンダーアルミ化検討
トピックス
1914年フォード量産開始
1973年石油ショック
低燃費・軽量・小型化
1911日本自動車生産 1960年代伊・仏を
生産台数で抜く
‘50
暦年
歴年
‘60
‘70
‘80
2012年CO2規制強化
本格需要期 μ級工程能力
モジュール化
‘90
‘00
低コスト化
高機能化
対環境対応
デジタル化
‘10
‘20
図 12 自動車生産の変化と軽量化の歴史
図 13 サスペンション部品軽量(アルミ)化の歴史
5.自動車における素材活用の方向性
6
5.1 自動車に使用される素材
求められている。自動車にどのような材料がどの程
CO2 排出量削減と燃費改善の要求が強まり、自動
度使われているのかを見ることにしよう。自動車は
車には安全性を犠牲にしないで車両の軽量化が求め
ボンネットからドア、ルーフまで、外観部分の多く
られている。軽量化といえば、これまではコストダ
が鋼板で覆われている。軽量化が急務となり各種の
ウンのために肉厚を薄くするといった努力がなされ
新材料が注目されているが、今でも車両質量の 7 割
てきたが、これからはコスト低減をにらんで、燃費
近くを鉄鋼が占めている。
を改善する新素材の活用で“積極的な軽量化”が
鉄は強度が高いだけではなく、加工性にも優れた
SOKEIZAI
Vol.53(2012)No.8
特集 部材軽量化に挑戦するアルミニウム鍛造技術
材料で、正に 産業の米 というべき素材で、自動車
機である。図 14 はエアバス A380 と最も新しいボー
の生産に欠かすことはできない存在である。鉄の次に
イング B787 の構成材料を比較したものである。エ
多くの重量を占めるのが樹脂である。耐熱性や表面硬
アバスは乗客数 500 人で機体重量は 360 トン(0.72 ト
度は問題があるが軽く、成形性に優れ、熱可塑性樹
ン / 人)でアルミニウムが 60 %、複合材 20 %、チタ
脂の PP(ポリプロピレン)は安価なためバンパーやイ
ン 7 % が材料構成である。一方、最新鋭機のボーイ
ンストルメントパネルなどの部品に使用されている。
ング B787 は乗客数 300 人であるが機体重量は 154 ト
軽量化材料の代表格のアルミ合金は鉄と樹脂の中
ン(0.51 トン / 人)と軽量化され、一人の乗客輸送は
間的な特性があり、鉄より軽いが樹脂より重く、強
0.2 トンも軽くなっている。これを達成したのが軽量
度は鉄より劣るが樹脂より優れている。鉄からアル
化材料の多用である。複合材が 50 % と多く用いられ、
ミニウムに代替した部品として、シリンダーヘッド、
アルミニウムは 20 % に減少してチタンも 15 % と増
シリンダーブロック、変速機ケース、ホイール、ピ
加している。これほど極端でないにしても、自動車
ストン、サスペンションなどがある。
もエアバス A380 の材料構成に近づき、将来は複合
乗用車の材料の使われ方は判ったが、トラックは
材が多用されるボーイング B787 に近づくものと考
どうなっているのだろうか。トラックは総質量の
えられる。
2 割強を占める架装部分がアルミ合金中心であるた
航空機鍛造品の一例を図 15 に示したが、ここに示
め、乗用車よりもアルミ比率が高く見えるが、架装
す構造部材を鍛造するには大型プレス( 4 万トン級)
部分を除くと鉄系素材が質量の 7 割を占めている。
が必要である。我が国の鍛造技術をもってしても無
トラックは耐用年数を迎えるまで使用されるので生
理であったが、2013 年には 5 万トンプレスが稼働さ
涯走行距離が長く、多くはディーゼルエンジンのた
れる。
め高い圧力と振動に耐え得る構造でなければならな
い。このため、強度、剛性に優れた鉄素材をより多
く使用せざるを得ないわけである。
5.2 軽量化材料の適用と問題点
5.2.1 アルミニウム、マグネシウム、チタン、
CFRP の適用
軽量化達成のために低比重、高比強度合金の軽量
化材料は今後どのように使われるのだろうか?この
時に参考になるのが、軽量化が最も進んでいる航空
その他,1%
図 15 航空機用大型鍛造品
その他
5%
アルミ
20%
複合材
20%
アルミ
61%
チタン
7%
鋼材
10%
複合材
50%
鋼材
11%
乗客数:300人
乗客数:500人
エアバスA380、機体重量361トン
チタン
15%
ボーイングB787-8、機体重量154トン
図 14 航空機に見る材料置換
Vol.53(2012)No.8
SOKEIZAI
7
5.2.2 軽量化材料の特徴と適用
軽量化
(1)軽量化材料の特徴
高機能化
図 16 ∼図 18 に軽量化材料のアルミニウム、マグ
低環境
負荷の
製造法
ネシウム、チタンの特徴・改良点と適用製品を示し
た。いずれの材料とも改良点の課題は低コスト化、
高強度化と安価な加工法の開発に集約できる。
高精度化
低コスト化
軽量
新規技術開発
用途開発
F1自動車部品
高比強度
(2)軽量化材料の適用
高温強度
軽量化材料のアルミニウム、マグネシウム、チタ
ン、CFRP を使用する場合にどのような配慮が必要
低熱伝導度
高耐食性
チタンの特徴
生体適合性
医療用器具
人工関節
図 18 チタンの特質と適用製品例
アルミニウム
押出しフレーム
軽量化
高精度化
だろうか?この課題を考える前に各材料の特性を把
握することにしよう。各軽量化材料の鉄鋼との特性
高機能化
低環境
負荷の
製造法
比較を表 1 と図 19 に示した。ポイントは比強度と比
弾性率で、強度、弾性率を比重で除した値で数値が
新規技術開発
用途開発
軽量
低コスト化
9
8
高い方が効果的である。
7.8
鉄鋼材料と比較して軽量化材料はいずれも数値が
7
6
比 重
高比強度
4
2.7
3
アルミの特徴
非磁性
耐食性良好
高く有利で、CFRP はいずれの数値も高く軽量化効
4.5
5
1.8
2
1.6
1
0
Fe
Al
Mg
Ti
CFRP
軽量化材料
図 16 アルミニウムの特質と適用製品例
果が一番で、チタン、アルミ、マグネと続く。次に
軽量化材料の特徴を生かし具体的に部品適用を考え
てみよう。図 20 は足回り部品の要件と製法をまとめ
たものである。ナックルアームとロアーやアッパアー
ムそしてフレーム類では要求される機能、負荷応力、
軽量化
高精度化
Mgの改良点
方法もプレス成形、鍛造、鋳造と部品によって製造
高機能化
法を選択する。例えばナックルはホイールやアーム
類に保護され直接縁石などの障害物に触れないため
低環境
負荷の製造法
新規技術開発
用途開発
軽量
必要強度、設置スペースが異なる。そのため、製造
中程度の強度があれば良く、コスト面から鋳造で製
低コスト化
造される。またアーム類は直接障害物に触れるため
に高強度が必要で鍛造が用いられる。フレーム類も
同様であるが鍛造では大型設備が必要で高価になる
高比強度
ため鉄プレスや真空ダイカストで製造される。
Mgの特徴
耐くぼみ性
振動吸収性
自動車を軽量化する場合には応力の入力状態や設
図 17 マグネシウムの特質と適用製品例
置スペース、障害物との接触の有無で製法が決定さ
表 1 各種軽量化材料と鉄鋼の特性比較
物性値
比重
引張強度
ヤング率
比強度
比弾性率
材料
g/cc
kg/mm2
kg/mm2
103mm
103mm
使用部品
8
SOKEIZAI
鋼
SNCM 鋼
7.8
140
21000
18
27
クランクシャフト
ギアボックスのシャフト
ギア類
ドライブシャフト
ステアリングシャフト
Vol.53(2012)No.8
アルミニウム
A7075-T6
2.7
56
7000
21
26
シリンダーブロック
シリンダーヘッド
ピストン
ラジエター
ブレーキキャリパー
マグネ合金
AZ91
1.8
30
4500
17
25
ギアボックスの
ハウジング
各部のカバー類
ホイール
吸気マニホールド
チタン合金
CFRP
Ti-6Al-4V
カーボン / エポキシ
4.5
1.6
110
160
11000
11000
24
100
25
70
コンロッド
モノコック・フレーム
バルブ
ボディカウル
サスペンション用 ダクト
スプリング
サスペンション
ボルト類
アーム(F1)
エンジンのマウント・
ブラケット
特集 部材軽量化に挑戦するアルミニウム鍛造技術
120
7.8
5
4
3
2
4.5
2.7
1.8
1.6
60
40
18
21
Fe
Al
17
24
Mg
Ti
0
Al
Mg
Ti
軽量化材料
80
CFRP
70
70
60
50
40
27
26
25
25
20
10
0
Fe
Al
Mg
Ti
CFRP
軽量化材料
鉄 1kg 当たり換算エネルギ費
Fe
比弾性率
80
20
1
0
30
100
100
比強度 kg/mm2
比重
9
8
7
6
14
12
10
8
6
4
2
0
CFRP
Fe
軽量化材料
Al
Mg
Ti
軽量化材料
CFRP
図 19 軽量化材料と鉄鋼材料の特性比較
車輪を支持する「関節」の役割を持つFF車用ナックル、
キャリア類は、ホイールやアーム類に保護され、直接障害
物に触れないので、強度要件は中程度 コスト面から鋳
造品が主流となっている。将来的には、軽量化のため鉄
鋳造からアルミニウム鋳造へと製法が変化
Ⅰ群
Ⅱ群
トヨタ自動車提供
Ⅲ群
衝突時の曲げ変形能(縁石に乗り上げたり、衝突したときなどに、簡単に折れないこと)を重視し、省
スペース収めるため、鍛造品が主流である。その中でも、高級FR車ではアルミニウム鍛造を採用
群
要件
機能
強度
Ⅰ群
特性
製法
スペース
現号
中
鉄鋳造
中
省
鉄鍛造
衝突時の スペース
曲げ変形能
が重要
鉄鍛造
・車輪を支持
Ⅱ群
ハイマウント
ナックル
アーム
Ⅲ群
・車輪を支持
・ばね下部品を支持
大
大
ばね下部品を支持する「骨格」
衝突時の
エネルギー吸
収が重要
将来
アルミ鋳造
アルミ鍛造
鉄プレス
大型
鉄プレス 真空ダイカスト
(中空)
鉄プレス
図 20 足回り部品の必要要件と製法選定
れ、素材には単純な素材強度だけでなく構造体とし
(3)軽量化材料加工上の問題点
ての強度や剛性が求められる。図 21 は外部応力の種
軽量化材料の室温での強度と伸びの関係を図 22
類と部品形状の関係であるが、曲げ応力が作用する
に示した。鉄鋼と比較してアルミニウムやマグネシ
部品では断面係数が重要になる。このため、部品形
ウムの曲線(伸び率)に大きな差がある。現状の鉄
状は断面係数を大きくするためパイプや I ビームで
鋼材料から軽量化材料に変換するとき加工が厳しい
複雑形状になる。この関係を表 2 に示した。
コーナ部に割れやシワなどの欠陥が発生し現有設備
が使えない問題が発生する。
Vol.53(2012)No.8
SOKEIZAI
9
部品形状の重要性
σ=P/A・・・(1)
‘σ=M/Z・・・(2)
3
‘δ
max=PL /48EI・・・(3)
‘
物差しの撓み曲線
EI・・・曲げ剛性
P:荷重 A:断面積
M:曲げモーメント
Z:断面係数
I :断面2次モーメント
E:ヤング率
強度計算
図 21 外部作用応力の種類と要求断面性能
表 2 断面性能を大きくするのに有利な形状
何故パイプか異形状か
同じ曲げ強度を持つ種々の断面形状,Zが同じ
形状
形状
何故パイプか異形状か
諸値
諸値
同じ曲げ強度を持つ種々の断面形状,Zが同じ
面積
形状
cm2
面積 諸値 cm2
54.8
54.8
同じ重量で
38.1
374
49.0
374
89.4
374
89.4
1.1
89.4
291
38.1
291
69.6
291
1.4 69.6
69.6
1.11.1
1.4 1.4
49.0
重量
N/m
418
54.8
面積
cm2
重量
N/m
418
価格
/m 100(基準)
重量
N/m
418
同じ重量で
価格
/mm 1001(基準)
(基準)
可能な長さ
価格
/m 100(基準)
同じ重量でm
四角形のIとZ
m
可能な長さ
可能な長さ
I=bh3/12
2
Z=bh /6
四角形のIとZ
I=bh3/12
円柱のIとZ
Z=bh42/4
/6
I=πr
49.0
1(基準)
1(基準)
38.1
21.2
21.2
20.0
162
153
21.2
20.0
162
38.6
36.5
162
153
2.6 38.6 2.7
38.6
36.5
2.6
2.6
2.7
形状複雑化
260
240
220
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
マグネシウム
280
6N01‑T 5
σ0.2
245
210
応力 〔MPa〕
応力 〔N/mm2〕
アルミニウム
鉄鋼のσ-ε線図
0
0.2
引張り
175
140
圧縮
105
70
6N01σ-ε曲線
35
0.4
0
0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40
0.6
0.8
1.0
1.2
ひずみ 〔%〕
図 22 軽量化材料の引張強度と伸び(σ−ε曲線)
Vol.53(2012)No.8
36.5
形状複雑化
鉄鋼
SOKEIZAI
153
2.7
断面性能アップ
(断面係数アップ)
断面性能アップ
(断面係数アップ)
Z=πr3/4
円柱のIとZ
I=πr4/4
Z=πr3/4
10
20.0
AZ31σ-ε曲線
AZ31σ-ε曲線
歪み %
歪み 〔%〕
特集 部材軽量化に挑戦するアルミニウム鍛造技術
60
400
全伸び
いる加工機械が使用できない問題があ
びの差で発生する。図 23 に示すよう
に全伸びは均一伸びと局部伸びで形成
され、加工性に影響するのは局部伸び
公称応力 MPa
るが、これは引張試験における局部伸
均一伸び
300
40
200
局部伸び 鋼板
均一伸び
100
の大きさである。アルミニウムやマグ
全伸び
0.1
0
加工では問題が発生する。これを解決
0.2
均一伸び
30
20
局部伸び
10
アルミ
0
‑200
0
ネシウムは局部伸びが小さいため室温
するには高温加工するか結晶粒をはじ
50
局部伸び
伸び %
軽量化材料の加工に鉄鋼で使用して
0.3
0.4
0.5
0.6
公称歪み %
B:局部伸びの温度依存性
GDC
7%
5.3 コストダウンと部品の採用率
真空DC
4%
2500
材料置換して軽量化に大きな効果が
チクソ
7%
あってもコストが上がるようでは自動
2000
車に採用されない。アルミニウムサス
かが決まる。
円/kg
鍛造品単価
料との機能 / コストで採用するかどう
押出
4%
鍛造
67%
アルミ鍛造品の価格
ペンションが採用されルようになった
功したからである。特に現状の鉄鋼材
200
100
図 23 アルミニウムの局部伸び、均一伸びと温度依存性
ある。
のは図 24 のようにコストダウンに成
0
温度 ℃
A:加工性を左右する局部伸びの鋼とアルミの比較
めとする組織を微細化するのが得策で
RT
‑100
高圧鋳造
11%
1500
アルミニウムサスペンションの製法比較
①
1000
②
③
500
鉄鍛造品の価格
0
暦年
図 24 アルミニウム足回り部品のコスト変化
6.まとめ
アルミ化は鋳物部品から始まり、鍛造でのコンプ
れた。これはアルミニウムの加工性に問題があるこ
レッサー部品、サスペンションと進み、ボディは現
とを述べたが、現在はサーボプレスの出現で可変ひ
有設備が活用可能なハングオンの後付部品が採用さ
ずみ速度の加工ができるようになり、材料の成形性
を気にしないで成形可能になりつつある。図 25
はアルミニウムが自動車に採用された経過と今
後を示したものである。最大で自動車総重量の
アルミ化率30%
オールアルミ車体
及びサスペンション車体
車体国家区部への適用
サーボプレスで鉄・非鉄の成形自由に
アルミ化率10~15%
アルミ化率3~10%
複雑なハングオン車体部品への適用
機能部品、二次構造部品への適用
ハングオンで部分アルミ化
サスペンション部品のアルミ化
鋳物・ダイカスト部品の適用拡大
2000年
図 25 自動車へのアルミ採用と今後のイメージ
30 % がアルミ化されると推測される。
参考文献
1 )軽金属協会:自動車委員会資料,軽金属協会 H/P,
経済産業省(METI)H/P
2 )平尾栄滋:自動車の高性能化,㈱ 山海堂,2002
年 2 月,308
3 )日本エアロフォージホームページ,http://www.
japan-aeroforge.com/
4 )工業材料編集部:新素材・新材料のすべて,日刊
工業新聞社,1986 年 11 月,178
5 )広田民郎:自動車の製造と材料,㈱グランプリ出
版,2007 年 2 月,228
Vol.53(2012)No.8
SOKEIZAI
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