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東京都薬物乱用対策推進計画

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東京都薬物乱用対策推進計画
東京都薬物乱用対策推進計画
(平成 25 年度改定)
~薬物乱用のない社会づくりのために~
平成26年2月
東京都薬物乱用対策推進本部
はじめに
東京都薬物乱用対策推進本部は、関係機関が連携して、薬物乱用対策に取り組ん
できました。平成10年6月に「青少年のための薬物乱用防止対策の推進について」
を策定して、平成15年7月にこれを改定しました。さらに、平成21年2月には
「東京都薬物乱用対策推進計画」を策定し、「啓発活動の拡大と充実」、「指導・
取締りの強化」、「薬物問題を抱える人への支援」の取組を推進してきました。
平成10年から現在までの都内における覚醒剤事犯の検挙人員の動向をみると、
高止まりの傾向にあり、検挙人員の約半数を暴力団関係者が占めるほか、外国人に
よる組織的な密売も行われています。また、覚醒剤事犯の検挙人員のうち、約半数
が再犯者となっています。さらに、大麻や麻薬の検挙人員の年代別構成では、20
歳代までの若年層が3割以上を占めるなど、青少年にも薬物の乱用が拡大している
状況がうかがわれます。
また、最近では、合法ハーブ等と称する違法(脱法)ドラッグの乱用が拡大して
おり、「ヘッドショップ」と呼ばれる販売店やインターネット等で、誰にも知られ
ずに容易に購入できるなど、薬物取引が潜在化するとともに、私たちの身近な生活
の場に及んできている実態があります。更に、違法(脱法)ドラッグは、麻薬等の
規制薬物乱用の入口となるゲートウェイドラッグとして使われたり、麻薬・覚醒剤
の代替品として乱用される懸念もあり、指導・取締りの強化と併せて、啓発の強化
が喫緊の課題となっています。
一方、国は、平成25年8月に「第四次薬物乱用防止五か年戦略」を策定し、青
少年等への啓発強化をはじめとする5つの戦略目標に積極的に取り組むとし、特に
留意すべき課題として、「合法ハーブ等と称して販売される薬物等、新たな乱用薬
物への対応」、
「薬物の再乱用防止対策の強化」等を掲げています。法整備の面では、
薬事法等の改正により、平成25年10月から指定薬物の収去権や捜査権が付与さ
れるなど、薬物乱用対策の一層の拡充を図る環境が整いつつあります。
このたび、依然として厳しい都内の薬物乱用の実態に対応すべく、国の動向も参
考としながら、「東京都薬物乱用対策推進計画」を見直し、薬物乱用根絶に向けて
総合的な対策を強化していくために『東京都薬物乱用対策推進計画(平成25年度
改定)』(平成25年度から平成30年度)を策定することとしました。
本計画が、都内の薬物乱用対策をより一層推進させる契機となり、また、地域で
薬物乱用防止に携わっている方々の一助となることを期待します。
平成26年2月
東京都薬物乱用対策推進本部
目 次
第1章 これまでの取組及び薬物乱用をめぐる現状と課題 ・・・・・・・・・・ 1
1
啓発活動の拡大と充実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
2
指導・取締りの強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
3
薬物問題を抱える人への支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
第2章 計画の基本方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
1
国の「第四次薬物乱用防止五か年戦略」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
2
都の計画改定における基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
3
重点的な取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
4
計画の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
東京都薬物乱用対策推進計画(平成25年度改定)体系図 ・・・・・・・・12
第3章 具体的な取組の展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
1
指導・取締りの強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
プラン1 不正薬物流通の取締強化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
アクション1:関係機関の連携等による不正な薬物取引の取締強化・
・・・・・・16
アクション2:コントロールド・デリバリー、通信傍受等の捜査手法の
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
積極的活用 ・
アクション3:インターネットなど多様な販売手法に対応した
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
摘発への取組・
プラン2
違法(脱法)ドラッグを中心とした薬物の乱用実態の
・・18
的確な把握と監視体制の強化
アクション4:新たな薬物の乱用実態・流通実態の把握 ・
・・・・・・・・・・・・・ 19
アクション5:調査研究の推進と規制の迅速化・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
アクション6:違法(脱法)ドラッグを中心とした監視指導体制の強化・
・・・・20
プラン3
依存性のある医薬品等の乱用防止に向けた監視指導の
・・21
充実
アクション7:関係機関が連携し医療機関等に計画的な立入調査を実施・
・・22
アクション8:偽造・変造処方箋対策の充実 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
2
啓発活動の拡大と充実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
プラン4 青少年に薬物を使用させない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
アクション9:青少年の薬物乱用防止意識を向上させる指導・教育の充実・
・25
アクション 10:有職少年・無職少年に対する啓発活動の強化 ・
・・・・・・・・・・27
アクション 11:保護者や青少年を取り巻く地域住民への普及啓発の推進・
・・27
アクション 12:青少年を有害情報から守る ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
プラン5 地域社会全体の薬物乱用防止意識の醸成 ・・・・・・・・・・・・・29
アクション 13:各種運動、キャンペーン、講演会等による多くの人々への
啓発活動の実施 ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
アクション 14:様々な広報媒体を用いた幅広い啓発活動の展開 ・
・・・・・・・・31
プラン6 普及啓発のための支援の充実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
アクション 15:普及啓発を担う人材育成の推進・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
アクション 16:啓発用資材の充実・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
アクション 17:地域の主体的な啓発活動の支援・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
薬物問題を抱える人への支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37
3
プラン7 相談体制の充実強化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38
アクション 18:相談に対する迅速かつ的確な対応・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39
・・・・・・・ 39
アクション 19:相談窓口のサービス内容のわかりやすい情報提供・
アクション 20:相談業務に携わる人材育成の推進・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
プラン8 個々の相談者を地域の支援体制に繋げる ・・・・・・・・・・・・・ 41
アクション 21:薬物依存症治療に関する専門医療の提供・
・・・・・・・・・・・・・ 42
アクション 22:薬物依存症回復プログラムへの参加支援・
・・・・・・・・・・・・・ 42
プラン9 関係機関の連携による回復支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43
・・・・・・・44
アクション 23:地域の一次相談窓口と専門相談機関との連携強化・
・・・・・ 44
アクション 24:再乱用防止に向けた乱用者及び家族への支援の充実・
第4章 計画の推進体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
1
計画の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
2
関係機関の役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
東京都薬物乱用対策推進本部
構成図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47
(巻末資料)
・東京都薬物乱用対策推進計画(平成25年度改定)の概要・・・・・48
・参考資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
第1章
これまでの取組及び薬物乱用をめぐる現状と課題
東京都薬物乱用対策推進本部では、これまで、関係機関が連携しながら薬物乱用
のない社会づくりを目指し、
「啓発活動の拡大と充実」、
「指導・取締りの強化」、
「薬
物問題を抱える人への支援」の3点を柱として、様々な取組を行ってきました。
1
啓発活動の拡大と充実
薬物乱用防止の普及啓発については、これまで、学校教育機関に向け、都内の小
学校、中学校、高等学校を中心に、生徒、教員、保護者等に対し、薬物乱用防止の
講習や研修の実施、スマートフォンのフィルタリング(有害サイトへのアクセスを
制限する機能)の普及促進対策の実施、薬物専門講師等の派遣、薬物見本やDVD
等の啓発資材の貸出しなどを行ってきました。
学校教育機関での薬物乱用防止講習会の実施率は、平成20年度から平成24年
度に30%程度上昇し、総回数として5,000回以上にのぼります。
また、中学生を対象とした「薬物乱用防止ポスター・標語募集」事業、高校生を
対象とした「薬物乱用防止高校生会議」事業など、参加型の啓発活動も展開してき
ました。薬物乱用防止ポスター・標語募集事業では、応募作品数が平成20年度か
ら平成24年度の5年間で約27,000点から約40,000点に増加しており、
意識向上の表れの一つとして注目されます。
さらに、平成20年度からは、大学生に対しても入学ガイダンスを活用して薬物
乱用防止講習を実施し、大麻をはじめとした薬物乱用の防止啓発を図っています。
学校に通っていない青少年に向けては、平成20年度から平成24年度の5年間
に、自動車教習所、鉄道主要駅、ネットカフェなど、青少年を中心とした多くの人々
が集まる施設約1,000カ所に啓発ポスターを掲示しました。
このほか、地域社会に対する取組として、関係機関や地域のボランティア等と連
携して薬物乱用防止に関するイベントやキャンペーン、シンポジウム等を実施しま
した。
学校・家庭・地域から多面的な啓発を推進することによって、薬物乱用防止意識
の向上が図られています。
これら啓発の実施に際しては、乱用薬物の変化や啓発対象者の年齢等に応じて、
内容や表現を工夫した啓発用リーフレットやポスター、DVD等を作成して配布・
提供しています。MDMA等の合成麻薬に関する情報を新たに盛り込むほか、平成
24年度には、急速に乱用が広がっている違法(脱法)ドラッグに特化した青少年
向けのリーフレットを作成し、乱用拡大の防止、正しい知識の普及を図っています。
さらに、都の広報媒体のほか、トレインチャンネルや街頭ビジョンなど多様な広
報媒体を活用し、幅広く啓発に取り組んできました。
−1−
これらの取組を推進する一方で、都内の区市町村や近隣自治体との協働を推進す
ることにより、薬物乱用防止に関する情報の共有化を図るとともに、有害情報から
青少年を守ることについて事業者の理解・協力を求めながら、関係機関等が一丸と
なって啓発活動に繋げてきました。
また、学校薬剤師、薬物乱用防止指導員、薬学部の大学生等に向けて研修会を開
催し、人材育成も図ってきました。
このように様々な形で、薬物に関する正しい知識の普及に努め、乱用防止を呼び
かけてきました。
こうした中、平成24年の薬物事犯を年齢別に見ると、大麻事犯、麻薬等事犯は
20歳代までの若年層が3割以上を占めており、青少年にも薬物乱用が拡大してい
る状況がうかがわれます。
さらに、新聞報道によると、違法(脱法)ドラッグの使用が原因と考えられる救
急搬送件数は、平成23年は11件、平成24年1月から5月の5ヶ月間に91件
と急激に増加しており、今後も健康被害発生等の拡大が懸念されます。
中学生や高校生を対象とした意識調査(平成24年度厚生労働科学研究費補助金
(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)分担研究報告書「飲
酒・喫煙・薬物乱用についての全国中学生意識・実態調査(2012年))の結果
においては、違法(脱法)ドラッグを中心とした薬物乱用が低年齢化している状況
も示唆されています。
薬物乱用を防止するためには、不正薬物の需要を絶つことが重要であり、社会情
勢の変化を踏まえつつ、青少年を中心に、対象者の特性に応じた有効な啓発活動の
さらなる強化が課題となっています。
−2−
(件)
45,000
39,739
40,000
38,892
35,718
応
募
35,000
作
31,746
品
数
30,000
26,975
25,000
20,000
H20
H21
H22
H23
H24
(年度)
〔資料 1〕ポスター・標語事業の応募状況(ポスター、標語の合計応募作品数)
【覚醒剤】
19 歳以下
16 人(1.1%)
19 歳以下
8 人(2.9%)
【大麻】
20~29 歳
253 人(16.8%)
覚醒剤
1,503 人
東京都
30 歳以上
1,234 人(82.1%)
大麻
280 人
東京都
30 歳以上
175 人(62.5%)
19 歳以下
3 人(3.8%)
【麻薬等】
20~29 歳
97 人(34.6%)
麻薬等
79 人
東京都
30 歳以上
52 人(65.8%)
〔資料 2〕検挙人員の年齢別構成(平成 24 年 東京都)
−3−
20~29 歳
24 人(30.4%)
2
指導・取締りの強化
不正薬物の指導・取締りについては、関係法令に基づき、密輸・密売・乱用者に
対する取締り等を積極的に実施してきました。
また、巧妙化・潜在化しつつある不正薬物の売買、向精神薬処方箋の偽造・変造、
インターネットを利用した薬物犯罪についても、サイバーパトロール等による取締
りを推進してきました。
麻薬や向精神薬等を取り扱う医療機関における不正使用防止に向けた立入調査
については年間約12,000件、医薬品販売業者や毒劇物営業者に対しては年間
約10,000件の立入検査を実施しました。
近年急速な広がりを見せている違法(脱法)ドラッグについては、平成17年に
「東京都薬物の濫用防止に関する条例」(以下「都条例」という)を制定し、試買
調査や民間機関への委託調査等を活用して流通実態を把握し、試験検査を通じて規
制すべき薬物の早期発見に努めてきました。その結果、平成24年度末までに22
薬物を知事指定薬物として指定するとともに、国への情報提供により41薬物を薬
事法に基づく指定薬物にするなどして、全国的な規制に繋げてきました。
違法(脱法)ドラッグ販売店舗等に対する立入調査及び警告等についても、福祉
保健局、警視庁及び関東信越厚生局麻薬取締部が連携して実施し、抑止効果の向上
に努めました。
特に、違法(脱法)ドラッグについては、麻薬・覚醒剤と同等以上の危険性を有
する可能性があるにもかかわらず、
「合法ハーブ」、
「合法リキッド」等と称し、
「捕
まらない、安全な薬物」と称して店舗やインターネット等により販売されている実
態が見受けられます。
乱用による健康被害事例や、意識がもうろうとした中で車を運転したことにより、
交通事故を引き起こす事例も後を絶ちません。
国は、平成25年3月に、類似する化学構造式の成分を一括規制する包括指定制
度を導入し、平成25年11月現在、881薬物を指定薬物として規制しています。
さらに平成25年10月からは、薬事法、麻薬及び向精神薬取締法が改正され、
指定薬物の収去権や麻薬取締官・麻薬取締員に捜査権が付与されるなど、取締り強
化に向けた体制が整備されつつあります。
薬物乱用を防止するためには、不正薬物の供給源を絶つことも重要です。
また、薬物乱用問題は犯罪の誘発など社会の安全をも脅かすものであり、体感治
安(漠然と感じる治安の善し悪しに関する感覚)の悪化の脅威から都民を守る目的
を含め、今後も、関係機関における摘発や監視指導を引き続き強化することが課題
です。
違法(脱法)ドラッグ乱用防止に向けては、新たに付与された権限を効果的に活
用し、未規制薬物の早期発見・規制を図るとともに、販売店舗等に対する指導・取
締りをさらに強化していくことが課題となっています。
−4−
20
5
15
(数)
(数)
都からの情報提供による
薬事法指定数
都条例による知事指定数
10
15
13
5
5
5
2
0
H20
H21
H22
(年度)
(年度)
H23
H24
〔資料3〕都からの情報提供による国指定薬物の指定数
(人)
25,000
全国
東京
20,000
15,000
10,000
5,000
0
H10 H12
H14
H16 H18
(年)
H20
H22 H24
注:全国の数値は、厚生労働省、警察庁及び海上保安庁の統計資料による(厚生労働省医薬食品局調べ)。
東京都の数値は、関東信越厚生局、警視庁及び福祉保健局の統計資料による。
〔資料4〕過去15年間における薬物事犯検挙者数の推移
−5−
3
薬物問題を抱える人への支援
これまで、薬物相談窓口の周知、本人からの個別相談への対応、再乱用防止プロ
グラムの実施、家族教室の開催、薬物使用による身体的・精神的障害の治療、相談
機関職員への研修等に取り組んできました。
相談窓口の情報に関しては、ポスター、リーフレット、ガイドブック等を作成し、
関連施設において掲示、配布するほか、各関係機関のホームページ等で周知を図っ
てきました。
薬物問題で困っている本人や家族に対しては、電話や面接による個別相談に対応
しています。平成19年度からは、都立(総合)精神保健福祉センターにおいて本人
向けの再乱用防止プログラムを実施し、更正に向けた支援にも積極的に取り組んで
きました。また、家族が対応方法等を学ぶための家族教室も開催し、薬物の問題を
抱える本人や家族への支援を着実に実施してきました。
さらに、相談機関職員向けの研修会、相談事例検討会、連絡会議の開催等により、
関係職員の資質向上や関係機関の情報共有化を図ってきました。都立(総合)精神保
健福祉センターが実施する、薬物問題に携わる関係機関職員研修には、区市町村や
医療機関等から毎年、延べ700名ほどが参加し、最新知識や技術の習得に努めて
います。
都立松沢病院では、依存症専門外来において、薬物依存症患者の専門的治療を実
施しています。
最近では、青少年の違法(脱法)ドラッグの乱用が拡大してきており本人や家族
に対する支援を行う相談体制の充実及び専門的治療の重要性は、ますます高まって
います。
覚醒剤事犯の再犯者率が約半数を占めているなど、再乱用防止対策の一層の推進
が必要です。また、新たに予定されている刑の一部執行猶予制度※の導入に伴い、
今後、薬物事犯で執行猶予付きの有罪判決を受けた者を対象とした不正薬物の再乱
用防止への取組も必要となってきます。
〔資料5〕薬物関連相談件数(件)
平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度
(総合)精神保健福祉センター ※1
保健所 ※2
1,540
1,454
1,429
1,476
2,069
2,766
465
461
595
646
645
426
※1 精神保健福祉センター、中部総合精神保健福祉センター、多摩総合精神保健福祉センターの合計数。
※2 都保健所管分の合計(特別区、八王子市及び町田市を除く。ただし、町田市は、平成22年度まで
都保健所として計上。)
※
刑の一部執行猶予制度
平成25年6月19日公布、刑法等の改正により、3年以内の導入が決定。
薬物使用等の罪により3年以下の懲役等の刑を受けた場合、いわゆる初入者でなくても刑の一部の執行を猶
予することができ、一部猶予期間中は、必ず保護観察に付され、薬物等の使用を反復する犯罪的傾向を改善す
るための専門的処遇を受けることが定められる。
−6−
第2章
1
計画の基本方針
国の「第四次薬物乱用防止五か年戦略」
国は、
「第三次薬物乱用防止五か年戦略」
(平成20年8月)及び「薬物乱用防
止戦略加速化プラン」
(平成22年7月)の見直しを行い、平成25年8月に「第
四次薬物乱用防止五か年戦略」を策定しました。
本戦略では、特に留意すべき課題として、
「合法ハーブ等と称して販売される薬物等、新たな乱用薬物への対応」
「薬物の再乱用防止対策の強化」
「国際的な連携・協力の推進」
が掲げられました。
さらに、「第三次薬物乱用防止五か年戦略」で設定した4つの戦略目標に引き
続き取り組むとともに、特に国際連携の充実を目標に加え、5つの戦略目標が設
定されています。
《第四次薬物乱用防止五か年戦略の5つの戦略目標》
目標1
青少年、家庭及び地域社会に対する啓発強化と規範意識向上による
薬物乱用未然防止の推進
※「青少年」とは乳幼児期から青年期(おおむね 18 歳から 30 歳まで)の者をいう
目標2
薬物乱用者に対する治療・社会復帰の支援及びその家族への支援の
充実強化による再乱用防止の徹底
目標3
薬物密売組織の壊滅、末端乱用者に対する取締りの徹底及び多様化
する乱用薬物に関する監視指導等の強化
目標4
水際対策の徹底による薬物の国内流入の阻止
目標5
薬物密輸阻止に向けた国際的な連携・協力の推進
−7−
2
都の計画改定における基本的な考え方
これまでの都の推進計画は、国の戦略を参考に、薬物から青少年を守る社会づ
くりのため、「啓発活動の拡大と充実」、「指導・取締りの強化」、「薬物問題を
抱える人への支援」を重点に実施してきました。
本計画においては、平成25年度から30年度を計画期間とし、第1章で述べ
た都における薬物乱用の現状と課題を踏まえ、国の「第四次薬物乱用防止五か年
戦略」の5つの目標も参考として、薬物乱用のない社会づくりを目指し、
「指導・
取締りの強化」、
「啓発活動の拡大と充実」、
「薬物問題を抱える人への支援」の3
つの柱を引き続き設定し、さらなる対策の強化推進を図ります。
さらに、国が特に留意すべき課題として掲げた「合法ハーブ等と称して販売さ
れる薬物等、新たな乱用薬物への対応」は、都においても喫緊かつ重要な課題で
あることから、特に違法(脱法)ドラッグ対策を強化し、重点的な取組推進を図
ります。
同じく国が特に留意すべき課題として掲げた「薬物の再乱用防止対策の強化」
についても、さらなる推進を図ります。薬物乱用対策は、一義的には薬物乱用を
未然に防ぐことが重要であるものの、一度、薬物乱用に手を染めてしまった人々
を二度と乱用の道に走らせないための取組についても、より拡充していくことが
重要です。再乱用防止対策推進のために、医療機関、都立(総合)精神保健福祉セ
ンター、保健所、警視庁等の関係機関が一層の連携を図り、各機関の役割や機能
を活かして、薬物乱用者やその家族等を支援する体制を充実します。
−8−
3
重点的な取組
違法(脱法)ドラッグ対策の強化に重点的に取組みます。
違法(脱法)ドラッグは、「合法ハーブ」などと称して販売され、あたかも身体
影響がなく安全であるかのように誤解されやすいものですが、麻薬や覚醒剤等の規
制薬物と同様の成分が含まれており、人体への危険性は、麻薬・大麻・覚醒剤等と
同等又はそれ以上です。
これまで条例に基づく知事指定や薬事法に基づく指定がされてきましたが、化学
構造を一部変えて規制を逃れようとする薬物が海外から次々と流入しています。
これらの違法(脱法)ドラッグを販売する「ヘッドショップ」と呼ばれる店舗は、
渋谷・新宿・池袋等の繁華街だけではなく、都内各地に存在します。
また、インターネット上には、次々と新たな販売サイトが出現しており、容易に
購入できる状況が生じています。
違法(脱法)ドラッグの乱用が、青少年にも広がっている状況を踏まえ、新たな
薬物の流通実態等を迅速かつ的確に把握し、速やかな規制や取締り、監視指導に繋
げるとともに、違法(脱法)ドラッグの危険性についての誤った認識を改め、安易
な使用を防止することが喫緊の課題となっています。
このため、東京都薬物乱用対策推進本部として、「規制」・「監視」・「啓発」の3
つの視点から、違法(脱法)ドラッグ対策に重点的に取り組むこととします。
《違法(脱法)ドラッグ対策の主な取組内容》
・流通実態の把握、新たな分析法の開発等により迅速に知事指定薬物を指定
・国や他自治体に未規制薬物に関する情報を提供し、全国的な規制に繋げる
・試買調査や収去等による違反品の取締強化
・関係機関との合同立入検査や合同捜査の拡充
・青少年が多く集まる場所におけるイベント活動等の実施
・インターネットをはじめとする多様な広告媒体を活用した啓発活動の展開
・青少年の健全育成に向けた地域主体の啓発活動への支援
・青少年が自ら考え同世代に発信する参加型啓発の実施
など
−9−
4
計画の構成
「指導・取締りの強化」、
「啓発活動の拡大と充実」、
「薬物問題を抱える人への
支援」を3つの柱とし、それぞれの柱を支える9つの「プラン」と、それぞれの
「プラン」を実現するための24の「アクション」を設定しました。
また、違法(脱法)ドラッグ対策を強化する取組を盛り込みました。
(1) 指導・取締りの強化
プラン 1「不正薬物流通の取締強化」、プラン2「違法(脱法)ドラッグを中心
とした薬物の乱用実態の的確な把握と監視体制の強化」、プラン3「依存性のあ
る医薬品等の乱用防止に向けた指導の充実」の3つのプランの下に、8つのアク
ションを設定して取り組みます。
(2) 啓発活動の拡大と充実
プラン4「青少年に薬物を使用させない」、プラン5「地域社会全体の薬物乱
用防止意識の醸成」、プラン6「普及啓発のための支援の充実」の3つのプラン
の下に、9つのアクションを設定して取り組みます。
(3) 薬物問題を抱える人への支援
これまでの内容を継続し、プラン7「相談体制の充実強化」、プラン8「個々
の相談者を地域の支援体制に繋げる」、プラン9「関係機関の連携による回復支
援」の3つのプランの下に、7つのアクションを設定して取り組みます。
※
本計画では、原則として「9つのプラン・24のアクション」の全てにおいて、
違法(脱法)ドラッグ対策に積極的に取り組むこととします。その中でも、特に重点
的に取り組む内容については、
「第3章 具体的な取組の展開」の各取組において、
「★」を付しています。
− 10 −
東京都薬物乱用対策推進計画
薬
指導・取締りの強化
物
[1]関係機関の連携等に
プラン1
不正薬物流通の取締強化
[2]コントロールド・デ
[3]インターネットなど
乱
プラン2
用
プラン3
違法(脱法)ドラッグを中心とした薬物の
乱用実態の的確な把握と監視体制の強化
依存性のある医薬品等の乱用防止に
向けた監視指導の充実
[4]新たな薬物の乱用実
[5]調査研究の推進と規
[6]違法(脱法)ドラッグ
[7]関係機関が連携し医
[8]偽造・変造処方箋対
の
啓発活動の拡大と充実
な
[9]青少年の薬物乱用防
[10]有職少年・無職少年
プラン4
青少年に薬物を使用させない
[11]保護者や青少年を取
い
[12]青少年を有害情報か
プラン5
地域社会全体の薬物乱用防止意識の
醸成
[13]各種運動、キャンペ
[14]様々な広報媒体を用
社
[15]普及啓発を担う人材
プラン6
普及啓発のための支援の充実
[16]啓発用資材の充実
会
[17]地域の主体的な啓発
づ
薬物問題を抱える人への支援
[18]相談に対する迅速か
く
プラン7
相談体制の充実強化
[19]相談窓口のサービス
[20]相談業務に携わる人
り
プラン8
個々の相談者を地域の支援体制に繋
げる
プラン9
関係機関の連携による回復支援
[21]薬物依存症治療に関
[22]薬物依存症回復プロ
[23]地域の一次相談窓口
− 12 −
[24]再乱用防止に向けた
(平成25年度改定)体系図
《24のアクション》
《違法(脱法)ドラッグ対策の主な取組内容》
よる不正な薬物取引の取締強化
・流通実態の把握、試験法の研究・開発等
により迅速に知事指定薬物を指定
リバリー、通信傍受等の捜査手法の積極的活用
多様な販売方法に対応した摘発への取組
態・流通実態の把握
・国や他自治体に未規制薬物に関する情報
を提供し、全国的な規制に繋げる
制の迅速化
・試買調査や収去等による違反品の取締強化
を中心とした監視指導体制の強化
・関係機関との合同立入検査や合同捜査の
拡充
など
療機関等に計画的な立入調査を実施
策の充実
止意識を向上させる指導・教育の充実
・青少年が多く集まる場所におけるイベント
活動等の実施
に対する啓発活動の強化
り巻く地域住民への普及啓発の推進
ら守る
・インターネットをはじめとする多様な広告
媒体を活用した啓発活動の展開
ーン、講演会等による多くの人々への啓発活動の実施
・青少年の健全育成に向けた地域主体の
啓発活動への支援
いた幅広い啓発活動の展開
育成の推進
・青少年が自ら考え同世代に発信する参加
型啓発の実施
など
活動の支援
つ的確な対応
内容のわかりやすい情報提供
材育成の推進
する専門医療の提供
グラムへの参加支援
と専門相談機関との連携強化
乱用者及び家族への支援の充実
− 13 −
第3章
具体的な取組の展開
1 指導・取締りの強化
計 画 内 容
プラン1 不正薬物流通の取締強化
プラン2 違法(脱法)ドラッグを中心とした薬物の乱用実態の
的確な把握と監視体制の強化
プラン3 依存性のある医薬品等の乱用防止に向けた監視指導
の充実
麻薬や覚醒剤、あるいは向精神薬等の乱用をなくすためには、不正な薬物取引を摘
発・排除するとともに、不正薬物を使用・所持する者に対する取締りを強化する必要
があります。
本計画では、関連機関相互の連携を強化し、さらなる情報共有の下、合同立入検査
の拡充等により、不正薬物流通の根絶を目指して、取締り及び監視指導をさらに充実
させていきます。
違法(脱法)ドラッグ対策については、迅速な検査・分析により化学構造を特定し
て未規制の薬物を早期に発見し、生体への影響を評価した上で、都条例の規定に基づ
き、速やかに知事指定します。更に、情報を国に提供することにより、薬事法による
全国的な規制へと繋げていきます。
また、関係機関との連携を強化し、違法(脱法)ドラッグ販売店舗への立入検査や
司法捜査を積極的に実施して、販売店舗等を排除し、違法(脱法)ドラッグの乱用撲
滅を目指します。
処方箋の偽造・変造による向精神薬等の不正入手や、有機溶剤の不正譲渡について
も、監視指導を一層強化し、未然防止を図ります。
− 14 −
プラン
1
不正薬物流通の取締強化
最近の薬物事犯は、外国人密売グループが暴力団と結びつくなど、高度に組織化
される傾向がみられます。
麻薬、覚醒剤等の密売は、繁華街を避け住宅地等で行われるなど巧妙化している
一方で、違法(脱法)ドラッグについては、ヘッドショップと呼ばれる専門販売店
舗で半ば公然と販売されている実態があります。
また、インターネットや携帯電話、SNS、宅配便の利用など、販売手口がます
ます巧妙化・潜在化してきています。
不正薬物の需給を根絶するためには、末端乱用者の取締りに加え、薬物の供給源
である販売組織の積極的な摘発が必要です。
取 組
内
容
アクション1
関係機関の連携等による不正な薬物取引の取締強化
アクション2
コントロールド・デリバリー、通信傍受等の捜査手法の積極的活用
アクション3
インターネットなど多様な販売手法に対応した摘発への取組
− 15 −
アクション1
関係機関の連携等による不正な薬物取引の取締強化
○
関係機関が連携して、新たな薬物密売ルートの発見や密売拠点の把握に努め、
捜査力を集中して、検挙率の向上に取り組みます。
【関東信越厚生局、警視庁】
○
薬物乱用防止対策に関する国際会議等へ積極的に参加し、国内外の関係機関と
の情報交換を推進します。
【東京税関、関東信越厚生局】
○
薬物を不法に所持・使用している外国人に係る情報提供を受けた場合は、警視
庁等関係機関に通報するなど、捜査に協力するとともに、出入国管理及び難民認
定法に違反する外国人の摘発において、薬物の所持等を認知した場合には、警視
庁等関係機関が連携を密にして的確に対処します。
【東京入国管理局、警視庁】
○
関係機関による対策協議会等を開催し、意見交換を通じて連携強化を推進し、
密輸出入の取締りを強化します。
【東京税関、関東信越厚生局】
○
薬物取締りの強化期間を設け、集中的な取締りを行います。
【東京税関、関東信越厚生局、警視庁】
○
薬物事犯捜査に係る関係機関の連携を強化し、薬物需給の根絶を図ります。
【東京税関、関東信越厚生局、警視庁】
★○
警視庁の各少年センターを中心に、覚醒剤や大麻、シンナー、薬事法の指定薬
物等を乱用する少年の早期発見、補導、検挙を実施します。
【警視庁】
★○
違法(脱法)ドラッグ販売店舗等に対し、関連機関との連携による合同立入検
査を拡充実施します。
【関東信越厚生局、警視庁、福祉保健局】
★○
捜査関係機関が合同捜査を実施するなど、違法(脱法)ドラッグに係る事犯等
に対して、積極的な司法対応を実施します。
【関東信越厚生局、警視庁、福祉保健局】
− 16 −
違法(脱法)ドラッグ
販売店舗の店内
アクション2
コントロールド・デリバリー、通信傍受等の捜査手法の積極的
活用
薬物犯罪の捜査において、コントロールド・デリバリー※、通信傍受等の捜査
○
手法を積極的に活用し、徹底検挙することにより、薬物供給の根絶を図ります。
【関東信越厚生局、警視庁】
※
コントロールド・デリバリー
薬物犯罪の捜査において、違法行為が発覚してもすぐには検挙せず、監視を継続して、犯罪の全体像
を明らかにした段階で検挙する捜査手法のこと。
アクション3
インターネットなど多様な販売手法に対応した摘発への取組
★○
インターネット等を利用した犯罪に対処するため、薬物事犯の取締りを強化し、
薬物の供給を遮断します。
【関東信越厚生局、警視庁】
★○
インターネット上に氾濫する違法(脱法)ドラッグ店舗や製品等に関する情報
を統計的に分析・評価するとともに、他自治体及び関係機関との情報共有を図り、
効率的な監視指導を実施します。
【福祉保健局】
★○
広域的に展開する違法(脱法)ドラッグ店舗やインターネット等を利用した販
売に関して、全国の自治体との意見交換等を通じて情報を共有し、監視指導の強
化を図ります。
【福祉保健局】
− 17 −
プラン
2
違法(脱法)ドラッグを中心とした薬物の乱用実態の的確な把握と
監視体制の強化
都では、平成8年度以降、違法(脱法)ドラッグを試買して成分検査を実施し、
薬事法等に違反する製品について、販売中止や回収を指示するなどの措置を講じて
きました。
違法(脱法)ドラッグは、麻薬等の化学構造の一部を変えて、規制を逃れようと
するものであり、次々と新しいものが出回っています。
違法(脱法)ドラッグを排除していくためには、新たな薬物の使用実態や流通実
態を迅速かつ的確に把握し、速やかに必要な規制に繋げていくことが重要です。
取
組
内
容
アクション4
新たな薬物の乱用実態・流通実態の把握
アクション5
調査研究の推進と規制の迅速化
アクション6
違法(脱法)ドラッグを中心とした監視指導体制の強化
− 18 −
アクション4
新たな薬物の乱用実態・流通実態の把握
★○
国内外における薬物の流通実態を把握するため、外部調査機関等を活用し、流
通実態調査を実施します。
【福祉保健局】
★○
違法薬物や規制すべき薬物の早期発見のため、インターネットサイトや店舗な
どを対象として、流通する製品を試買し、成分検査を実施します。
【福祉保健局】
★○
救急医療機関等と連携し、新たな乱用薬物の使用実態の把握に努めます。
【福祉保健局、病院経営本部】
アクション5
調査研究の推進と規制の迅速化
★○
化学構造、生体影響、国内外での流通状況や文献情報を勘案しながら、未規制
薬物の人体に対する危険性を評価し、迅速に都条例に基づく知事指定薬物に指定
し、規制します。
【福祉保健局】
★○
違法(脱法)ドラッグを迅速に分析・特定するための試験法、生体影響を評価
するための試験法等の研究・開発を推進します。
【福祉保健局】
★○
都が有する分析・試験検査技術で得られた知見を、都と同様の薬物濫用の防止
に関する条例を制定している他の自治体に対して積極的に提供し、広域的な規制
に繋げていきます。
【福祉保健局】
★○
国に対して、未規制薬物に関するデータを提供し、薬事法による全国的規制に
繋げるとともに、包括規制のさらなる拡充、薬事法指定薬物を麻薬に指定するこ
と等を要望し、一層の規制強化を図っていきます。
【福祉保健局】
− 19 −
健康安全研究センターによる成分分析
アクション6
違法(脱法)ドラッグを中心とした監視指導体制の強化
★○
関係機関が連携し、薬事監視員、麻薬取締官・麻薬取締員、警察官との合同立
入検査を拡充するなど、店舗への監視指導を強化します。
【関東信越厚生局、警視庁、福祉保健局】
★○ 販売店舗に対して、違法(脱法)ドラッグの収去※や試買調査を積極的に実施
し、違反製品の販売中止・回収等を指示するなど、取締りを強化していきます。
【関東信越厚生局、福祉保健局】
※
違法(脱法)ドラッグの収去
薬事法の規定に基づき、薬事監視員、麻薬取締官又は麻薬取締員が「指定薬物の疑いのある製品」を
店舗等から無償で入手できる。
★○
全国の自治体との違法(脱法)ドラッグに対する監視体制・手法等に関する意
見交換を通じて、連携強化・広域的対応を図ります。
【福祉保健局】
★○
関係機関との情報共有を図りながら、インターネット販売、デリバリー販売な
ど、新たな手法で販売される違法(脱法)ドラッグに対する監視指導を強化して
いきます。
【福祉保健局】
− 20 −
プラン
3
依存性のある医薬品等の乱用防止に向けた監視指導の充実
医療用麻薬や向精神薬などの医薬品、シンナーやトルエンなどの有機溶剤等は、
本来の使用目的に沿って適正に使用すれば、大変有用なものですが、本来の使用目
的を逸脱して乱用されることがないよう、適正な流通・使用を確保していく必要が
あります。
また、向精神薬等を不正に入手する目的で、処方箋を偽造・変造する事例が散見
されます。処方箋の偽造・変造は犯罪であり、再発防止に向けた一層の対策強化が
求められます。
取
組
内
容
アクション7
関係機関が連携し医療機関等に計画的な立入調査を実施
アクション8
偽造・変造処方箋対策の充実
− 21 −
アクション7
関係機関が連携し医療機関等に計画的な立入調査を実施
○
麻薬や向精神薬を取扱う病院・診療所、販売業者、研究者等に対して、計画的
な立入検査を実施し、法令遵守・適正な取扱いを確保します。管理が不十分な施
設等については、重点監視指導を行い、改善の徹底を図ります。
【関東信越厚生局、福祉保健局】
○
麻薬や向精神薬等の取扱量が多い医療機関等に対しては、関係機関による合同
立入検査を実施し、保管・管理の徹底など、盗難や所在不明を防止するための措
置について、指導を強化します。
【関東信越厚生局、福祉保健局】
○
有機溶剤の販売業者等に対しては、一斉監視指導等による集中監視を実施し、
シンナーやトルエンの譲渡記録の徹底など、適正管理を指導します。
【福祉保健局】
アクション8
偽造・変造処方箋対策の充実
○
引き続き、医療機関や薬局と一体となって、偽造・変造処方箋対策を、強力に
推進し、不正入手の拡大防止・再発防止を図ります。
【福祉保健局】
○ 薬局に偽造・変造処方箋が持ち込まれることがないよう、店頭に持込防止の警
告ステッカーを貼付するなど、未然防止に向けた環境整備を進めます。
【福祉保健局】
処方箋の偽造、変造防止を訴えた
ステッカー
− 22 −
2
啓発活動の拡大と充実
計 画 内 容
プラン4 青少年に薬物を使用させない
プラン5 地域社会全体の薬物乱用防止意識の醸成
プラン6 普及啓発のための支援の充実
薬物乱用を防止するためには、不正薬物の需要を絶つことが重要であり、社会情
勢の変化を踏まえつつ、青少年を中心に、対象者の特性に応じた効果的な啓発活動
を一層強化していくことが課題となっています。
今後も、青少年を中心に、啓発対象者の特性に応じて様々な啓発活動を効果的に
展開していきます。
特に、違法(脱法)ドラッグ対策については、違法(脱法)ドラッグに関する
誤った認識を改め、安易な使用による危険性を周知するため、多様な広報媒体を活
用した啓発活動や、大学等と連携した啓発活動を展開し、青少年の乱用防止意識を
醸成する事業を推進していきます。
また、地域に対して薬物乱用防止に関する最新情報や資材等を提供するほか、地
域パトロール等の地域が主体的に行う啓発活動を支援することにより、薬物乱用の
未然防止を図ります。
− 23 −
プラン
4
青少年に薬物を使用させない
薬物の誘惑から青少年を守るためには、青少年自らが、薬物乱用の様々な影響を
正しく理解し、絶対に薬物を乱用しないという強い意志を持つことが大切です。
昨今、スマートフォンやタブレット端末の普及など、情報通信技術の目覚ましい
進歩に伴い、様々な情報をいつでも、どこでも瞬時に入手できる時代となりました。
しかし、インターネット上の情報は、有益なものばかりでなく、薬物乱用を助長
する有害な情報も見受けられます。
また、違法(脱法)ドラッグ等に対する誤った認識により、青少年が薬物の誘惑
に巻き込まれやすい状況にあります。
そのため、小・中学生、高校生のうちに適切な薬物乱用防止教育を行うとともに、
青少年が集まりやすい場所などを活用して普及啓発を行うことが重要です。
大学生に対しても、入学ガイダンス等における薬物乱用防止研修等を活用して、
薬物乱用防止の意識を高める取組が必要です。
さらに、保護者や地域住民等への普及啓発を一層推進し、青少年を取り巻く人々
が薬物乱用防止に関する正しい知識を持って青少年を社会全体で守っていく環境
づくりが望まれます。
取
組
内
アクション 9
容
青少年の薬物乱用防止意識を向上させる指導・教育の充実
アクション 10 有職少年・無職少年に対する啓発活動の強化
アクション 11 保護者や青少年を取り巻く地域住民への普及啓発の推進
アクション 12 青少年を有害情報から守る
− 24 −
アクション 9
青少年の薬物乱用防止意識を向上させる指導・教育の充実
○
公立の小・中学校、高等学校の児童・生徒に対して、学習指導要領に基づき、
薬物乱用防止に関する指導を実施します。
【教育庁】
○
私立学校に対して、薬物乱用防止教育が適切に実施されるよう、講習会等の情
報や資料を提供します。また、私学団体や理事長校長会等にも協力を呼びかけ、
適切な指導への理解を求めます。
【生活文化局】
○
島しょ地域を含む都全域で薬物乱用防止教室、講習会やセーフティ教室を開催
して、これまで以上に指導・教育の充実を図ります。また、キャラバンカーの活
用を推進し、薬物乱用防止教室を強力に支援します。
【関東信越厚生局、警視庁、福祉保健局、教育庁】
○
各学校の協力のもと、薬物乱用防止教室の実施状況を継続的に把握します。
【教育庁】
★○
大学、短期大学、専門学校に対し、きめ細かな啓発・指導の実施を促し、入学
ガイダンス等での薬物乱用に関する知識の普及や啓発資材の提供・貸出、講師派
遣等により、薬物乱用防止に向けた取組を支援します。
【福祉保健局】
キャラバンカーを活用した指導・教育
− 25 −
★○
中学生に自ら問題意識を持たせるため、「薬物乱用防止ポスター・標語」を募
集します。優秀作品は啓発用のポスターやリーフレットなどに活用し、広く薬物
乱用防止を訴えていきます。優秀作品の選考に当たり、青少年の意見が反映でき
るよう工夫するなど、更なる啓発効果の向上を図ります。
【福祉保健局】
★○
高校生自らが薬物乱用の問題について話し合い、同世代に向けてアピールを行
う「薬物乱用防止高校生会議」を開催します。
【福祉保健局、教育庁】
○
より多くの学校に薬物乱用防止に関する普及啓発事業等に積極的に参加して
もらうため、熱心に取り組んだ学校を「薬物乱用防止活動率先校」として表彰し
公表します。
【福祉保健局】
薬物乱用防止ポスター・標語優秀作品展示
身近に潜む負の連鎖
薬物乱⽤防⽌⾼校⽣会議リーフレット
NO! DRUG!
薬物乱⽤防⽌⾼校⽣会議リーフレット
薬物乱用防止高校生会議の活動成果発表
− 26 −
薬物乱用防止高校生会議が作成した
薬物乱用防止リーフレット
アクション 10 有職少年・無職少年に対する啓発活動の強化
★○
学校に通っていない有職少年・無職少年が多く集まる場所を選定して拠点とし、
啓発活動を展開します。また、有職少年・無職少年の薬物乱用の実態把握に努め、
効果的な啓発活動に繋げていきます。
【福祉保健局】
自動車教習所、カラオケボックス、クラブ、
公衆浴場、ネットカフェ、駅 などに掲示し
たポスター
アクション 11 保護者や青少年を取り巻く地域住民への普及啓発の推進
★○
PTAリーダー研修会等の機会に、啓発資材を配布するとともに、東京都公立
幼小中高PTA連絡協議会の協力を得て、保護者層への啓発活動を推進します。
【教育庁】
★○
薬物乱用を許さない環境づくりのため、保護者や地域住民に、薬物乱用防止に
関する講座やセーフティ教室等への一層の参加を呼びかけます。また、年度ごと
に重点テーマを定めるとともに、参加者へのアンケート調査等を行い、啓発効果
の検証に努めます。
【関東信越厚生局、福祉保健局、教育庁】
− 27 −
アクション 12 青少年を有害情報から守る
○
学校での薬物乱用防止教室、保護者会、地域の集まりなど様々な機会を捉え、
有害情報に対するフィルタリング(有害サイトへのアクセスを制限する機能)の
利用を促進します。また、インターネット事業者等に対して、フィルタリングの
告知・勧奨を働きかけるなど、関係機関が連携を密にし、急速なスマートフォン
の普及やインターネット環境の変化に対応していきます。
東京地方検察庁、東京入国管理局、関東信越厚生局、警視庁
生活文化局、福祉保健局、産業労働局、教育庁、
青少年・治安対策本部
○
保護者に対して、「ファミリeルール講座」の開催(年間50回程度)等を通
じて、各家庭でのインターネット利用に関するルールづくりを支援します。また、
フィルタリング利用の普及に向けた取組を実施します。
【青少年・治安対策本部】
○
青少年の薬物乱用を助長するなど著しく犯罪を誘発する図書類を「不健全図書
類」として指定し、青少年への販売等を制限します。
【青少年・治安対策本部】
ファミリ e ルール講座の様子
− 28 −
プラン
5
地域社会全体の薬物乱用防止意識の醸成
薬物乱用のない社会を実現するためには、社会全体で薬物乱用に取り組む意識を
醸成することが大切です。
そのために、様々な機会を捉え、繰り返し薬物乱用防止を訴えかけることにより、
意識の向上を図っていきます。
取 組
内
容
アクション 13 各種運動、キャンペーン、講演会等による多くの人々への
啓発活動の実施
アクション 14 様々な広報媒体を用いた幅広い啓発活動の展開
− 29 −
アクション 13 各種運動、キャンペーン、講演会等による多くの人々への
啓発活動の実施
★○
国、区市町村、地域ボランティア団体等と協働し、各種運動、キャンペーン等
を実施します。
東京地方検察庁、東京入国管理局、東京税関、関東信越厚生局、警視庁
生活文化局、福祉保健局、病院経営本部、産業労働局、教育庁、青少年
・治安対策本部
★○
推進本部の各部局が相互のイベント等を活用し、啓発機会の拡大に取り組みま
す。年度ごとにイベント情報を集約し、情報の共有・活用を推進します。
東京税関、関東信越厚生局、警視庁、福祉保健局
教育庁、青少年・治安対策本部
★○
青少年が身近にある薬物乱用の問題について自ら考え、同世代に向けて発信で
きる啓発事業等を更に推進し、違法(脱法)ドラッグ等に対する正しい理解を醸
成します。
【福祉保健局】
★○
学生参加型のイベント等を通して、青少年の意識の醸成を図り、将来の人材育
成に繋げていきます。
【福祉保健局】
「ダメ。ゼッタイ。」普及運動 啓発イベント
− 30 −
アクション 14 様々な広報媒体を用いた幅広い啓発活動の展開
★○ 新聞、テレビ、ラジオ、広報誌(紙)、ポスター、リーフレット、インター
ネット等の多様な広報媒体による啓発活動を実施します。特に、青少年が目にす
る機会の多い広報媒体も積極的に活用して、効果的な啓発活動を展開します。
また、関係部署や関係機関が連携し、各機関等が所管する広報紙による情報提
供、ホームページやSNSによる薬物乱用防止の呼びかけ、イベントのPRなど
を行い、多面的な広報活動を実施します。
東京地方検察庁、東京入国管理局、東京税関
関東信越厚生局、警視庁、生活文化局、
福祉保健局、病院経営本部、産業労働局、教育庁
青少年・治安対策本部
○
埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、
相模原市の九都県市が一体となって協働・連携し、ポスター・パンフレットを作
成・配布するなど、地域の枠を越え、広域的に青少年の健全育成活動に取り組み
ます。
【青少年・治安対策本部】
★○
違法(脱法)ドラッグに関する啓発用ウエブサイトを運営し、薬物の危険性に
ついて情報発信していきます。
また、薬物に興味を持つ人がインターネット上の検索サイトで「合法ドラッグ」
などと入力すると、連動して広告が表示される(キーワード連動広告)ようにす
ることで、このサイトに誘導し、購入や使用を思い留まらせる啓発を実施します。
【福祉保健局】
− 31 −
違法(脱法)ドラッグ
乱用防止リーフレット
違法(脱法)ドラッグ
啓発用ウエブサイト
− 32 −
プラン
6
普及啓発のための支援の充実
学校、地域、団体等における薬物乱用防止啓発を効果的に行うためには、啓発用
の資材等を充実させるとともに、不正薬物の危険性等に対する知識を普及する人材
を確保・育成する必要があります。
また、それぞれの普及啓発活動が効果的かつ持続的に行われることが重要です。
そのため、学校、地域、団体等の取組が活発に行われるよう、引き続き、積極的
な支援を実施します。
特に、違法(脱法)ドラッグについては、青少年に対する啓発支援を強化し、違
法(脱法)ドラッグの危険性に関する正しい知識の普及に努めます。
取 組
内
容
アクション 15
普及啓発を担う人材育成の推進
アクション 16
啓発用資材の充実
アクション 17
地域の主体的な啓発活動の支援
− 33 −
アクション 15
普及啓発を担う人材育成の推進
★○
都が委嘱し地域の普及啓発を担う薬物乱用防止指導員に対し、最新の知識の習
得、意識向上のための研修会を実施します。
【福祉保健局】
★○
都が養成した薬物専門講師に対して実施してきた継続研修(フォローアップ研
修)について、薬物を取り巻く最新の話題や効果的なプレゼンテーション手法の
提供など、総合的な内容で実施し、さらなる資質の向上を図ります。
【福祉保健局】
★○ 学校教職員(保健主任、生活指導主任、管理職等)、保健所職員のほか、関係
機関の職員に向けて、薬物乱用防止に関する研修や情報提供を行い、資質の向上
と情報の共有を図ります。
【東京税関、福祉保健局、教育庁】
○
学校や地域等において講師の派遣を希望する際に、その講師の専門分野、講師
派遣元の連絡先等が確認できる一覧表を作成・提供し、要望に応じた講師の派遣、
講師の得意分野を生かす派遣を実施します。
【関東信越厚生局、警視庁、福祉保健局、教育庁】
★○
普及啓発を担う将来の人材を育成するため、薬学生、医学生や教職課程を専攻
する学生を対象に、入学ガイダンス等での薬物乱用防止に関する知識の普及を図
ります。
【福祉保健局】
− 34 −
アクション 16
啓発用資材の充実
★○
リーフレット、DVD、ビデオ、パネル等の各種啓発用資材の貸出・配布を学
校等に対して行うとともに、貸出・配布先の意見や薬物乱用状況の変化等を踏ま
えて、内容の充実を図ります。
【警視庁、福祉保健局】
★○
社会の状況変化に合わせて、学校教育向けに薬物乱用防止教育プログラム等を
作成するなど、啓発活動を積極的に支援します。
【福祉保健局】
啓発用資材の一例(薬物乱用防止リーフレット)
− 35 −
アクション 17
地域の主体的な啓発活動の支援
○
地域における薬物乱用防止の取組をより活発化させるため、先駆的な取組や、
工夫を凝らした取組などの事例を紹介する事例発表会を開催します。
【福祉保健局】
○
東京都薬物乱用防止推進協議会及び同地区協議会に対し、啓発用資材や情報を
提供するなど、地域活動を支援します。
【福祉保健局】
○
地域で薬物乱用防止に積極的に取り組む団体に対し、共催・後援、啓発用資材
の提供等により活動を支援します。また、不正けしの早期発見に向けた巡回監視
等の市民活動を支援し、不正けしの根絶に繋げます。
【福祉保健局】
○
ボランティア団体、学校薬剤師、行政機関など、薬物乱用対策に取り組む関係
者の連絡会等を開催して情報交換を行い、各地域・関係機関の取組を支援します。
【福祉保健局】
★○
青少年の健全育成に向け、PTAや地域自治会に対し、違法(脱法)ドラッグ
の現状をはじめとした薬物乱用防止に関する最新情報の提供や啓発方法の講習
等を実施し、地域における見守り意識の醸成やパトロールの実施に繋げて、啓発
意識の向上に努めます。
【福祉保健局、教育庁】
都内で自生する不正けしの除去
地域の取組事例
(薬物乱用防止ダンスイベント)
− 36 −
3
薬物問題を抱える人への支援
計 画 内 容
プラン7 相談体制の充実強化
プラン8 個々の相談者を地域の支援体制に繋げる
プラン9 関係機関の連携による回復支援
薬物乱用者やその家族は、深い悩みや不安を抱えることも多く、そのような状態を
良い方向に向かわせるためには、相談体制を充実し、有効な支援体制を構築していく
必要があります。
また、今後、導入が予定されている薬物事犯に関する刑の一部執行猶予制度により、
再乱用防止のための教育・支援がますます重要となってきます。
こうした情勢を踏まえ、相談機関や医療機関をはじめとする関係機関が連携して支
援していく体制の強化を目指します。
− 37 −
プラン
7
相談体制の充実強化
薬物依存症は、本人の身体的・精神的健康の問題のみならず、犯罪の誘発などの
社会的な問題、家族の心身の健康を害するなどの問題、借金など経済的な問題とい
った様々な問題を生み出します。
薬物依存症の問題を見過ごすことなく、乱用に気づいた時点でいち早く対応する
ことが極めて大切であり、専門家に相談することが問題解決の第一歩となります。
このためには、受け皿となる相談体制を強化するための取組が必要です。
取
組
内
容
アクション 18
相談に対する迅速かつ的確な対応
アクション 19
相談窓口のサービス内容のわかりやすい情報提供
アクション 20
相談業務に携わる人材育成の推進
− 38 −
アクション 18
相談に対する迅速かつ的確な対応
○
保健所、都立(総合)精神保健福祉センター、関東信越厚生局、警視庁等の相談
窓口において、本人や家族等からの相談に対して、迅速かつ的確な対応を図りま
す。
【関東信越厚生局、警視庁、福祉保健局】
○
捜査機関に寄せられる情報や相談事案について、事件性の有無に留意しながら
迅速・的確に対応し、乱用者による二次犯罪等の防止に努めます。
【関東信越厚生局、警視庁】
アクション 19
相談窓口のサービス内容のわかりやすい情報提供
○
相談機関へのアクセスを改善するため、推進本部の各部局が相談窓口や具体的
なサービス内容の情報を共有し、ホームページやリーフレット等の各種広報媒体
への掲載、イベントでの紹介などを通じて、相談窓口に関する情報の一層の周知
に努めます。
東京地方検察庁、東京入国管理局
関東信越厚生局、警視庁、生活文化局
福祉保健局、病院経営本部、産業労働局
教育庁、青少年・治安対策本部
○
薬物問題で困っている家族向けのリーフレット等に相談機関を明記して盛り
込み、都民や保健所、区市町村などの関係機関に配布し、相談窓口の周知に努め
ます。
【福祉保健局】
− 39 −
アクション 20
相談業務に携わる人材育成の推進
○
都立(総合)精神保健福祉センターにおいて相談に応じる、医師、保健師、福祉、
心理などの専門職員に対し、薬物問題研修を実施します。
また、都保健所においても、都民及び精神保健福祉に関わる関係機関の職員を
対象に講演会等を実施します。
研修に当たっては、違法(脱法)ドラッグ乱用等の最新情報も取り入れた内容
とします。
【福祉保健局】
○
地域の相談機関が関わる薬物関連問題事例へのアセスメントや対処方法を各
相談機関の連携の下で検証するとともに、必要に応じて、外部の専門スタッフが
個別事例に関わるなど、相談業務に携わるスタッフに対して、きめ細かな支援を
行います。
【福祉保健局】
「薬物問題でお困りのご家族の方へ」リーフレット
− 40 −
プラン
8
個々の相談者を地域の支援体制に繋げる
薬物依存症からの回復のために本人や家族ができることは、回復の段階や家族が
置かれている状況等によってそれぞれ異なることから、本人や家族の状況・回復段
階に応じた様々な援助を行います。
取 組
内
容
アクション 21
薬物依存症治療に関する専門医療の提供
アクション 22
薬物依存症回復プログラムへの参加支援
− 41 −
アクション 21
○
薬物依存症治療に関する専門医療の提供
都立松沢病院の依存症専門外来において、薬物依存症患者の治療を行います。
【病院経営本部】
○
都立松沢病院において、薬物・アルコール依存及びその関連疾患により重度の
精神症状を有する患者に対し、専門的医療を提供します。
【病院経営本部】
○
医療及び保護のために入院をさせなければ、自傷他害のおそれがあると認めら
れる中毒性精神障害者に対しては、措置入院制度も活用し、適正に対処します。
【福祉保健局】
アクション 22
薬物依存症回復プログラムへの参加支援
○
都立(総合)精神保健福祉センターにおいて、薬物乱用者本人に対し、認知行動
療法の手法を取り入れた、薬物依存症からの回復に向けたプログラム(再発予防
プログラム)を実施します。
再発予防プログラムは、参加中は、安定した断薬状態が維持されますが、プロ
グラムから脱落しないためのサポートや、プログラム終了後の自助グループ等と
の連携が不可欠です。このため、症例を積み重ねながら事業の評価・検証を行い、
プログラムの充実を図ります。
【福祉保健局】
○
都立(総合)精神保健福祉センターにおいて、本人や家族等からの個別の相談の
ほか、家族に対する教育プログラム(家族講座・家族教室)を実施し、医師によ
る薬物依存症についての講義や、先輩家族によるメッセージ提供などを行います。
【福祉保健局】
○
同じ経験を持つ仲間が相互に助け合う自助活動の情報や、家族同士が悩みを話
し合う集会等を行うことで回復を支援している民間の相談機関に関する情報を
本人・家族の状況等に応じて提供します。
東京入国管理局、東京税関、関東信越厚生局、警視庁、生活文化局
福祉保健局、病院経営本部、教育庁、青少年・治安対策本部
− 42 −
プラン
9
関係機関の連携による回復支援
薬物依存症からの回復には長い時間がかかります。
そのため、回復支援プログラム等を実施している相談機関、医療機関、自助活動
を実施している民間の機関等がそれぞれの役割を踏まえ、互いに連携して、回復に
向けた支援を行っていくことが重要です。
取
組
内
容
アクション 23
地域の一次相談窓口と専門相談機関との連携強化
アクション 24
再乱用防止に向けた乱用者及び家族への支援の充実
− 43 −
アクション 23
地域の一次相談窓口と専門相談機関との連携強化
○
区市町村等の一次相談窓口と、都立(総合)精神保健福祉センター等の専門相談
機関が連携することにより、薬物依存症者等の状況に応じた支援を行います。
【関東信越厚生局、警視庁、福祉保健局、病院経営本部、教育庁】
アクション 24
再乱用防止に向けた乱用者及び家族への支援の充実
○
薬物事犯で検挙された者及びその家族を対象として、薬物からの離脱を目指す
ための定期的なカウンセリング、グループセッション、薬物検査等のプログラム
を内容とした再乱用防止活動を継続して実施し、拡大を図ります。
特に、刑の一部執行猶予制度の施行を踏まえ、効果的な治療プログラムの開
発・普及を推進し、保護司等をはじめとした関係機関・団体が連携して、薬物乱
用者の社会復帰への支援や、家族等への支援を実施するなど、取組の更なる充実
強化を図ります。
【警視庁、福祉保健局】
○
独立行政法人国立精神・神経医療研究センターと連携し、検挙した初犯者及び
その家族の同意を得て、定期的に麻薬取締官が本人及び家族に対して面談を行い、
再乱用防止に向けた指導・助言を継続して実施します。
【関東信越厚生局】
○
関係機関が一体となって、薬物依存症者や中毒者に対する治療、社会復帰支援
を効果的に行うため、薬物中毒対策連絡会議を開催して、覚醒剤中毒者の治療、
社会復帰に対する取組について情報、意見交換を行い、連携強化を図ります。
【関東信越厚生局】
○
児童相談所における非行相談等で薬物の問題があった場合、保健所や医療機関
等の関係機関と連携して対応します。また、女性相談センターにおいて、一時保
護中に医療従事者による教育・助言を実施し、状況に応じた適切な治療に結びつ
けます。
【福祉保健局】
○
本人や家族等からの相談を受け、相談内容に明らかな違法行為が確認された場
合には、捜査を前提とした対応を行い、対象者が中毒者として治療が必要な場合
は、医療機関と連携して対応します。
【関東信越厚生局、警視庁】
− 44 −
○ 麻薬中毒者の更生のため、麻薬中毒者相談員による麻薬中毒治療後のアフ
ター・ケアに重点を置いた相談活動(観察指導)を実施します。また、社会復帰を
望む中毒者には、面談による指導・助言を行います。麻薬中毒者に対する観察・指
導及び一般相談対応を更に推進し、再乱用防止活動に取り組みます。
【警視庁、福祉保健局】
相談機関のリーフレット
− 45 −
第4章
1
計画の推進体制
計画の推進
本計画の推進に当たっては、国の取組を参考にし、都庁内外の関係部署で構成
する東京都薬物乱用対策推進本部が一致協力して取り組んでいきます。
薬物乱用の防止は、地域社会全体で取り組むことも重要です。そのため、地域
等で活動する団体等に対する支援や連携を更に強化していきます。
また、都内区市町村、国及び他の自治体とも十分に情報共有を図りながら推進
していきます。
2
関係機関の役割
○
東京都薬物乱用対策推進本部は、計画を着実に推進するために、違法(脱法)
ドラッグ対策をはじめとする計画の進捗状況と取組の方向性を確認します。
○
福祉保健局健康安全部は、東京都薬物乱用対策推進本部の事務局として、会議
の開催等の事務を担当します。
○
事務局は、関係機関との連絡を密にし、必要に応じて、計画の進捗状況に関す
る情報提供を行います。
○
各関係部署は、年度ごとに計画の進捗状況を点検し、事務局に報告します。
事務局は、報告内容を取りまとめ、東京都薬物乱用対策推進本部・幹事会等の
議事資料とします。
− 46 −
東京都薬物乱用対策推進本部
構成図
(平成26年2月現在)
○
都における薬物乱用対策に関し、関係機関相互の緊密な連絡を図るとともに
総合的かつ効果的な対策の樹立を協力に推進するために設置
(昭和48年 要綱制定)
本
部
会
本
部
長
副知事
副
本 部
長
福祉保健局長
本
部
員
各機関の部長又は課長等
東京地方検察庁
東京入国管理局
東京税関
関東信越厚生局
警視庁
生活文化局
福祉保健局
病院経営本部
産業労働局
教育庁
青少年・治安対策本部
幹
事 会
幹
事
青少年対策部会
青 少 年 対 策 部 会 員
事務局:福祉保健局健康安全部
− 47 −
東京都薬物乱用対策推進計画
これまでの薬物乱用対策と現状・課題
対策
「啓発活動の拡大と充実」、「指導・取締りの強化」、「薬物問題を抱える
人への支援」の3つの柱の下に、9プラン・24アクションの取組を実施
現状
○
○
○
○
違法(脱法)ドラッグの乱用が拡大
薬物事犯の手口は携帯電話やインターネット等を利用し、巧妙化・潜在化
大麻・麻薬事犯の検挙人員の3割以上が20歳代までの若者
覚醒剤事犯の5割が再犯者
課題
○ 不正薬物や新たな乱用薬物を見逃さない指導・取締りの強化
○ 青少年を中心に、対象者の特性に応じた有効な啓発強化
○ 関係機関が連携した再乱用防止への取組強化
第四次薬物乱用防止五か年戦略
国の状況
○ 平成25年8月に第四次戦略を策定
「違法(脱法)ドラッグへの対応」と
「再乱用防止対策」等を特に留意
すべき課題と位置づけ
○ 平成25年10月に薬事法等の改正
(収去・捜査権付与)
① 青少年、家庭、地域社会に対する啓発強化等
② 再乱用防止の徹底
目標 ③ 密売組織、末端乱用者に対する取締の徹底・監視指導強化
④ 薬物の国内流入の阻止
⑤ 密輸阻止に向けた国際的な連携・協力の推進
① 合法ハーブ等と称して販売される新たな乱用薬物への対応
留意
② 薬物の再乱用防止対策の強化
課題
③ 国際的な連携・協力の推進
計画の基本的な考え方
●現行計画の取組をさらに推進
1
現状と課題を踏まえ、「指導・取締りの強化」「啓発活動の拡大と
充実」「薬物問題を抱える人への支援」を引き続き『3つの柱』とし、
現行計画の9プラン・24アクションの取組をさらに強力に推進
2
●違法(脱法)ドラッグ対策の強化を重点的に取り組む
青少年を中心とした違法(脱法)ドラッグ乱用の拡大を踏まえ、
「規制」・「監視」・「啓発」の3つの視点から、重点的に取組む
− 48 −
(平 成 2 5 年 度 改 定 )の 概 要
計画の期間
:
平成25年度 から 30年度
:違法(脱法)ドラッグ
対策の主な取組内容
計画の内容~主な取組~(9プラン・24アクション)
指導・取締りの強化(3プラン、8アクション)
プラン1 不正薬物流通の取締強化
末端乱用者の取締りや、薬物供給源の販売組織の徹底摘発に取り組む
プラン2 違法(脱法)ドラッグを中心とした薬物の乱用実態の的確な把握と監視体制の強化
新たな薬物の使用・流通実態を迅速に把握し、規制に繋げる
プラン3 依存性のある医薬品等の乱用防止に向けた監視指導の充実
処方せんの偽造・変造による医薬品の不正入手を防ぐための対策強化に取り組む
・流通実態の把握、試験法の研究・開発等により迅速に知事指定薬物を指定
・国や他自治体に未規制薬物に関する情報を提供し、全国的な規制に繋げる
・試買調査や収去等による違反品の取締強化
など
啓発活動の拡大と充実(3プラン、9アクション)
プラン4 青少年に薬物を使用させない
青少年への教育・啓発や保護者や地域住民等への普及啓発を一層推進し、薬物乱用の誘惑から守る
プラン5 地域社会全体の薬物乱用防止意識の醸成
様々な機会をとらえて繰り返し乱用防止を訴えかけることにより社会全体の意識向上を図る
プラン6 普及啓発のための支援の充実
薬物に関する知識を普及する人材の育成や、違法(脱法)ドラッグを中心とした啓発資材を提供する
・青少年が多く集まる場所におけるイベント活動等の実施
・インターネットをはじめとする多様な広告媒体を活用した啓発活動の展開
・青少年の健全育成に向けた地域主体の啓発活動への支援
・青少年が自ら考え同世代に発信する参加型啓発の実施
など
薬物問題を抱える人への支援(3プラン、7アクション)
プラン7 相談体制の充実強化
薬物依存者や家族を支える受け皿となる相談体制を強化する
プラン8 個々の相談者を地域の支援体制に繋げる
薬物依存者や家族の状況に応じた回復プログラムの実施、参加支援を進める
プラン9 関係機関の連携による回復支援
回復を支える相談・医療機関等が連携強化し、薬物乱用者の社会復帰や家族への支援を充実する
− 49 −
薬 物 乱 用 の な い 社 会 づ く り
・関係機関との合同立入検査や合同捜査の拡充
参考資料
1
薬物乱用とは
薬物乱用とは、医薬品を医療目的から外れて使ったり、医療目的のない薬物を
不正に使ったりすることです。どのような薬物でも乱用されるわけではなく、中
枢神経系に影響を及ぼす物質の中で、依存※1性のある薬物が乱用される傾向にあ
ります。
薬物乱用が拡大する背景には、(1)インターネットの普及や価格の低下によ
り、薬物が手に入りやすくなっている、
(2)
「ダイエットに効果がある」、
「合法
ハーブは害がない」など誤った考えが広まっている、(3)ファッション感覚な
ど気軽な気持ちで薬物を使用している、(4)友達からの誘いを断り切れず、仲
間はずれを恐れて使用してしまう、などが考えられます。
薬物を乱用すると、「こころ」つまり精神に影響を与えます。一時的に良い気
分、お酒に酔ったような感じ、不安が消えていく感じ、幻覚※2などをもたらしま
すが、その結果、非行や暴力、犯罪などの問題に繋がるおそれもあります。薬物
乱用は、当人だけの問題では済まないのです。
乱用が続くと、不安、イライラ、疲労感・脱力感などが現れて、禁断症状を示
すようになります。それから逃れるためにまた乱用を続けてしまい(依存※1)
、
次第に自分の意思では止められなくなってしまいます。また繰り返し使用してい
ると、1回の使用量や回数が増え(耐性※3)、悪循環に陥ります。
更に、いったん薬物依存症に陥ると、治療には長い時間が必要となります。た
とえ、薬物の乱用を止め、治療によって普通の生活に戻ったようでも、心理的ス
トレス、睡眠不足、飲酒、他の薬物の乱用などがきっかけとなって、突然、幻覚・
妄想などの精神症状が再燃するフラッシュバック現象が起きることがあります。
(※1)何度でも使用したくなること。
(※2)現実にはないものをあるかのように知覚すること。
(※3)使用を繰り返すうちに、それまでの量では効かなくなること。
− 50 −
2
①
乱用される代表的な薬物
コカイン[クラック](麻薬)
通常は「コカイン」と呼ばれる、無色ないし白色の粉又は結晶性粉末(化学調
味料のような外見)で、麻薬に指定されており、強い精神依存性を有する薬物で
す。中毒により死亡する例もあります。コカインを不正に加工したものは
「クラック」と呼ばれています。日本では、法律により規制されています。
(俗称の例)コーク、コーラ、スノウ、ノーズキャンディなど
②
マリファナ(大麻)
「大麻草」から作られるもので、煙草のように細かく刻んだものや、植物から
採れる樹液を圧縮し固形状に固めた樹脂などがあり、様々な名称で呼ばれていま
す。 精神依存性があり、日本では、法律により規制されています。
(俗称の例)グラス、ポット、エース、ガンジャ、ハシッシュ、ブッダスティック、
ハッパなど
③
ヘロイン(麻薬)
「あへん」から作られる薬物で、化学名は「ジアセチルモルヒネ」です。強い
鎮痛作用がある反面、すぐに依存性が生じ、その依存性は極めて強いものです。
日本では、医療における使用を含め全ての使用、製造等が禁止されています。
(俗称の例)スマック、ジャンク、ホース、ダスト、チャイナホワイトなど
− 51 −
④
LSD(麻薬)
強い幻覚作用があり、精神に障害を起こす事例もあります。日本では、麻薬に
指定されており、医療でも使われないため、製造されていない薬物です。薬物の
作用による自殺あるいは殺人等の犯罪を起こしかねないものです。
(俗称の例)アシッド、ペーパー、タブレット、ドラゴンなど
⑤
覚醒剤
一般にアンフェタミン、メタンフェタミンの2種類を指します。見かけは氷
砂糖を砕いたような無色透明の結晶で、匂いはありません。水に溶けやすい性
質を持っており、静脈注射、加熱による吸入、ジュース等に溶かして飲むなど
の方法によって使用されます。強い依存性があり、精神や身体をボロボロにし
てしまいます。大量に摂取すると死に至る場合もあります。日本では、法律で
規制されています。
(俗称の例)アイス、ハーツ、ホワイト、スピード、エス、クリスタルなど
⑥
その他の薬物
MDA(俗称:ラブ・ドラッグ)、MDMA(俗称:エクスタシー)、PCP
(俗称:エンジェル・ダスト)、メスカリン、マジックマッシュルームなどの
多くは幻覚作用を持ち、粉末、錠剤、カプセル、液体など様々な形があります。
これらの薬物は、錯乱状態になり殺傷事件を起こしたり、薬がきれた後でも
突然、錯乱状態の発作を起こすこともある危険なもので、日本では法律で規制
されています。
− 52 −
⑦
シンナー・トルエン(有機溶剤)
シンナーは、塗料のうすめ液として使われる、有機溶剤の混合物です。その
主成分はトルエンです。シンナーやトルエンは、特有な臭いを持つ無色透明の
液体で、揮発性、引火性が高く、乱用すると、頭痛、はきけ、めまい、全身倦
怠感などの症状が現れます。また、脳細胞を破壊するため、乱用を続けると大
脳は萎縮し、たとえ乱用を止めても元には戻らず、歯は溶けてボロボロになり
ます。シンナーやトルエンを長期間乱用すると、吸入していない時でも、実在
しないものが見えるなどの幻覚や被害妄想などが現われ、過度に吸入した場合
には、呼吸中枢が麻痺し、窒息死することもあります。
(左)正常な脳
⑧
(右)萎縮した脳
違法(脱法)ドラッグ
乾燥植物片タイプ
(合法ハーブと呼ばれる)
液体タイプ
(合法アロマと呼ばれる)
粉末タイプ
(合法パウダーと呼ばれる)
「違法(脱法)ドラッグ」とは、法令による定義はありませんが、多幸感、
快感等を高めると称して販売されている製品の呼称です。乱用者の間では「合
法ドラッグ」と呼ばれ、乾燥植物片に薬物がまぶされた「合法ハーブ」、
「脱法
ハーブ」、液体に薬物を溶かしこんだ「合法アロマ」
「脱法アロマ」等、様々な
種類があります。着火して煙を吸引したり、口から摂取するなどして乱用され
ます。
「合法」と呼ばれるのは、これらの薬物が麻薬や覚醒剤等と同等又はそれ以
上の危険性を有していながらも、規制薬物の化学構造の一部を変えることで、
法の規制を逃れようとしているためです。しかし、これらの薬物は、犯罪の要
因になったり、乱用による死亡事故を招くこともあります。また、「合法ドラ
ッグ」として販売されていた製品から麻薬が検出された事例もあります。
− 53 −
⑨
医薬品
医薬品は病気を治療するためのものです。しかし、陶酔感などを求めて風邪
薬や鎮咳薬、睡眠導入薬などを乱用する実態があります。医薬品には、決めら
れた服用量や服用方法、適応症があり、これらを守らないと、病気を治すはず
のものが逆に身体に害を与えてしまうこともあります。また、病院などで処方
される向精神薬などの医薬品は、その人の病状に合わせて医師が処方するもの
であり、自分に処方された医薬品を他人に譲渡することは、思わぬ害を招くこ
ともあり危険です。向精神薬については、法律により、他人に譲り渡すことが
禁じられています。
− 54 −
登録番号(25)352
東京都薬物乱用対策推進計画
〜薬物乱用のない社会づくりのために〜
平成 26 年3月発行
編 集 東京都薬物乱用対策推進本部
発 行 東京都福祉保健局健康安全部薬務課
(東京都薬物乱用対策推進本部事務局)
東京都新宿区西新宿二丁目8番1号
電話番号 03(5320)4511(ダイヤルイン)
印 刷 正和商事株式会社
東京都新宿区中落合一丁目6番8号
電話番号 03(3952)2154
再生紙を使用しています。
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