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フレネル項を考慮した多視点画像の反射光解析に基づく 織布の異方性

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フレネル項を考慮した多視点画像の反射光解析に基づく 織布の異方性
「画像の認識・理解シンポジウム 」 年 月
フレネル項を考慮した多視点画像の反射光解析に基づく
織布の異方性反射モデリング
武田
祐樹Ý
フィンクァン フイ ヴィエトÝ
立命館大学情報理工学部知能情報学科
坂口
嘉之ÝÝ
田中 弘美Ý
〒 滋賀県草津市野路東 〒 大阪府大阪市中央区本町 ! "#"
デジタルファッション株式会社
あらまし
織布の異方性反射特性を表現するためには,任意の入射方向に対する任意の視線方向への反射率を表す 自由度の双方向反射分布関数 が必要である.本論文では,
繊維の断面形状と織り構造の違いにより布の光沢感に相違が現れることに着眼し,入射方向を固定し反射光の分布を
観測した少数視点画像から,光の反射と屈折を表すフレネル効果を考慮した反射光解析に基づいて 効率的に を自動生成する方法を提案する.まず,入射方向を布に対し真上からと固定し,布の織り構造の直交二軸性に基づい
て選択された 球の視点範囲内で少数の多視点画像を獲得し反射光の分布を観測する.獲得した観測画像データを
用いて基準異方性反射分布と呼ぶ基準反射モデルを生成する.次に,入射方向を変化させて観測した反射光の分布の
フレネル効果を考慮した解析から,直交二軸性の異方性反射特性を抽出する.得られた特性に基づき,基準反射モデ
ルから高精度の を効率的に生成する.生成した を用いて異方性反射レンダリングを実現し,同素材の
任意に彩色されたドレス着装シミュレーション実験結果から提案手法の有効性を確認する.
キーワード
双方向反射分布関数,異方性反射,画像計測,反射解析,布反射モデル
Ý
Ý
ÝÝ
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は じ め に
コンテンツ化の研究が精力的に進められている.布物体の変形,
最近ではコンピュータグラフィクス ・コンピュータビ
ことが や における重要な課題である.
ジョン 研究により博物館等の所蔵する能装束や衣装等の
様々な布物体のデジタル記録・保存,デジタルアーカイブ化・
光沢や質感は独特で素材に固有なため,これを忠実に再現する
布の異方性反射特性を表現するために,
のモデルの異
方性拡張をはじめとし,直交二軸性の異方性反射を仮定したモ
デル等,様々な異方性反射特性のモデル化やその計測方法につ
いて研究が進められてきた .しかし,布の
縦糸横糸が織り成す複雑な 次元の表面幾何構造を忠実に表現
する異方性反射モデルは提案されていない.
物体表面の反射特性は,任意の光源からの入射光と任意の視
方向への反射光の比率として,双方向反射分布関数 ! "#$ $ により記
述される.布表面の反射光には表面幾何学的構造における光学特
性が含まれており,その質感は,肉眼の分解能を問題とする微小
図
幾何
な部分の集合体の 次元的特性の観察から得られている.そこ
で,布地の微視的幾何構造 % & %' を基にした
布の異方性反射を表す の生成手法が提案された (.
布表面の微視的幾何構造から反射特性を求め,サテンやベルベッ
また,織布の反射特性は,織り構造,糸の撚り,繊維の断面
トをモデル化しレンダリングした結果が報告されている.最近
形状を要素とする微視的幾何構造に関係しており ,異方性
は,さらに糸断面の凸形状による陰影 )*
+,"-
を持つ.織布の反射特性の異方性を表現するためには を つのパラメータでモデル化し高精度の を生成する
が必要である.
手法 が提案されている.しかし,画像計測から自動的にそ
れらのパラメータを抽出する方法は提案されていない.また,
物体表面の反射特性は,任意の光源からの入射光と任意の視
織り構造の質感を表現する表現手法 . が提案されたが,微小
面で起こる " 効果の影響を考慮していない.
/ の $"" ! % に基づいて,画像
方向への反射光の比率として, により
記述される .図 に,本論文で用いる 幾何関係を示
す.4 軸は横糸方向,5 軸は縦糸方向,6 軸は布の法線方向,
を獲得するためには,膨大な数の計測データを必要とし
は法線ベクトル, は光源ベクトル,
は視点ベクトル,
は正反射ベクトルである.入射角 は と のなす角,入
射方位角 は 45 平面上で 4 軸から の角度,入射方向は
,視角 は と のなす角,視方位角 は 45 平面
上で 4 軸から の角度,視方向は である.また,
と が作る平面を入射面,縦糸方向と横糸方向の中間方向を
ている.これに対し織りの対称性に注目した効率的な計測によ
バイアス方向と呼ぶ.
計測により を求める方法 ( が提案されたが,布の異
方性反射特性を高精細に表現するためには不十分であった.最
近では,全方位型の光学異方性測定装置が開発され,多数の
入射方向と視方向の組み合わせによる計測データから を獲得し可視化する方法が提案された .しかし,高精度の
る手法 0∼ が提案された1
本論文では,繊維の断面形状と織り構造の違いにより布の光
測 定 環 境
図 に,本論文の実験で使用した全方位型光学異方性反射
沢感に相違が現れることに着眼し,入射方向を固定した少数の
測定装置 7, 78 ' ,"$
, を示す.
多視点観測画像から,反射光解析に基づいて織布の異方性反射
画像計測には解像度 × 0 ピクセル,有効画素数約
特性を表す を自動生成する方法を提案する.まず,光
00 万画素のデジタルカメラ *) )0 を使用し
源を布に対し真上から当て,布の織り構造の直交二軸性に基づ
た.光源にはメタルハライドランプ .0/外部調光機能付 の
いて選択された +. 球の視点範囲内で少数の観測画像データを
3)9,.0 を使用した.7, は,光源 軸 カメラ 軸 ス
獲得する.獲得したデータを下に基準異方性反射分布と呼ぶ基
テージ 軸 合計 軸の回転自由度を持つ.これらの自由度を
準反射モデルを生成する.次に,入射光を変化させて獲得した
組み合わせることにより,対象物に対しあらゆる入射方向 視
多視点画像を,フレネル効果を考慮した反射光解析により,直
方向からの計測が可能である.測定は環境光を取り除くために
交二軸性の異方性反射の特性を抽出する.得られた特性に基づ
暗室にて行う.また,撮影した画像の中心 × ピクセル領
き,基準反射モデルから高精度の を効率的に生成する.
域の平均輝度値を反射光とした.さらに,光源条件に依存しな
生成した を用いて,異方性反射レンダリングを実現し,
い反射率を求めるために,標準白色板の反射光に対する織布の
同素材の布物体の任意に彩色された任意視点画像の合成実験結
反射光の比を織布の反射率とする.
果から提案手法の有効性を確認した.
織布の反射特性
物体表面からの反射光は,一般的に鏡面反射成分と拡散反射
対 象 織 布
本論文においては,図 ,# に示すように,シルクライ
クな無彩色 黒色 のポリエステルサテンを対象織布とする.こ
れは撚りがかかっていないフィラメント糸の断面が三角形状で,
成分の線形結合とする 色性反射モデルで表現される 2.鏡
且つ朱子織りであるため,縦糸横糸の直交二軸性に基づく布の
面反射成分は照明光の色を表し,拡散反射成分は物体色を表す.
微視的幾何構造の要因が明らかであり,安定に画像計測できる
従来より,拡散反射成分には 3%# モデルが利用され,鏡
ことが期待されるためである.また,無彩色 黒色 の対象織布
面反射成分は素材に固有の反射モデルが提案されている.
の反射光には,近似的に鏡面反射成分だけが含まれると考えた.
, .,2 に原点からの距離を反射率とし,観測した視方向
にプロットした反射分布データを示す.また,入射角 0 度,(
度,( 度,0 度,( 度の反射分布データをそれぞれ,水色,
白色,緑色,黄色,赤色,青色で彩色し表示した.
入射方向に対する反射分布の方向特性が推定された特徴 とよく似ていることが分かる.例えば図 に示すように,入
射面が縦糸方向の場合,全ての において入射面である 56 平
図
全方位型光学異方性反射測定装置 面図では正反射方向に反射分布のピークが検出され,また 45
平面 布平面 に投影された反射分布は 56 平面 入射面 に対
称であることが観察される.従って,反射分布は縦糸断面形状
の法線分布に依存することが確かめられた.さらに,それぞれ
の図 ,.,2 に示すように, が増大するに従い反射分布
総量が多くなる傾向は, が増大すると反射光に対する屈折光
の割合が減少することを表すフレネル効果の影響と考えられる.
従って, の変化に伴う反射分布の変化は,分布方向が縦糸
断面形状の法線分布に依存し,反射率がフレネル効果の影響を
朱子織り サテン
図
ポリエステル断面形状
ポリエステルサテン 対象布
! "
#
得られた反射光から生成した に任意の拡散反射成分を
線形結合し,同素材で任意色の布を再現することができる.
含むと考えられる.
基準異方性反射分布
図 に示すように,基準となる入射角 : 0 の反射分布を基
準異方性反射分布 ; " ;"8 !
"#$ と呼び,4 軸を横糸方向,5 軸を縦糸方向,6 軸
を布の法線方向
,観測した視方向の反射率を原点からの距
離とする球座標系で表現した.ただし 7, の撮影制限により
織布の の生成手法
計測不可能部分は補間してある.また,織り構造の直交二軸の
織布の反射特性は,微視的幾何構造に関係していることから,
対称性と同様に, も 4 軸・5 軸で直交二軸の対称性がある
糸表面で起こる反射分布を推定された .縦糸表面で起こる
反射分布を推定した場合,推定された反射分布は,入射面が縦
ため,視方位角 を の範囲で変化させた各 に対し計測
した.
糸方向,横糸方向では分布方向が異なる.つまり,入射面が横
対象布物体であるポリエステルサテンの織物組織は ( 枚朱子
糸方向の場合,糸表面上の法線が入射面内に分布するため,反
であり表面は縦糸が約 .0<を占めているため,反射分布には縦
射光も入射面に分布する.一方,入射面が縦糸方向の場合,糸
表面上の法線は横糸方向に分布するため,反射光は入射面内の
正反射方向と入射面に対称な方向に分布する.いずれも,糸表
面上の法線分布に従い,反射分布を推定している.
本論文では,入射方向を布表面に対し真上とした反射分布か
ら入射角 ,入射方位角 を変化させた時の反射分布を生成
することにより を生成する.布に対し真上から入射し
た場合,反射分布は に依存せず,反射分布に糸表面上の微
視的構造を表す法線分布情報が含まれている.従って糸表面上
の法線分布情報に基づき,入射方向を布表面に対し真上とした
反射分布と各 に対し を変化させた入射光による反射分布
の相関特性を抽出すれば,任意の入射方向に対する反射分布を
生成することができる.
の計測
入射面が縦糸・横糸・バイアス方向で,入射角 を変化さ
せた場合の反射分布を計測した.入射方位角 は縦糸・横糸・
バイアス方向のそれぞれで, を 0,(,0,(,0,( 度
とした.また各々の入射に対して,視方向は視方位角 が 0
度から (( 度まで ( 度ずつ,視角 が 0 度から . 度まで 度ずつ撮影し,合計 0 組の反射光データを獲得する.図
糸表面で起こる反射が大きく影響していると考えられる. は
反射が横糸方向に強く分布しており,この特徴は縦糸の凸形状
表面による反射が原因と考えられる.このことから,微視的幾
何構造が反射分布を決める要因であることが確認できる.
図 ,.,2 に見られるように, の変化に伴う反射分布
変化を観察するため,図 のように, 上で,6 軸上で 6 値が
最大の点 ,4 軸方向で 4 値が最大・最小の点 , ,5 軸
上で 6 値が最小の点 , の計 ( 点を特徴点とする.また,
入射面が縦糸方向の場合,横糸・バイアス方向と比べて の変
化に伴う反射分布の方向の変化が大きい.従って以下では入射
面が縦糸方向で, の変化に伴う反射分布の変化を解析する.
異方性反射分布解析
図 (,# に示すように,法線ベクトル と一致する光源
ベクトル
Ó の反射分布 上の点を , , , , ,
とし,入射角 が変化した時の反射分布上の点を , ,
, , , とする.これは, 上の , , , ,
が 6,4,5 軸上の最大最小点であるように, ,, ,
, は任意の入射角の反射分布においても特徴点として確
認できるからである.ただし, , は によらず一定であ
るため, : , : である. 上の点 と任意の でも反射分布上にある点 が対応している.ここでは と視
$% 平面
$& 平面
基準異方性反射分布 )
&% 平面
図'
基準異方性反射分布 球座標表示
' (
! !
ÊÜÝ ,Î と ÎÓ の関係
Normal
N
点ベクトル Ó が交わる点を とし,任意の反射分布と視点
ベクトル が交わる点を とする.また,
Ó は と
L
θi
θr
θ0
Incident Plane
表す.
Y
図 に見られるように, の変化で 上の Ó と の対
応は Ó と ÜÝ で作られる平面内で考えればよいことが分か
Reflected Ray
Vo
R
V
る.ただし,ÜÝ は光源ベクトル
ける.
図 (# に示すように,入射面,布平面,および 4 軸と の
中間ベクトルと ÜÝ が作る平面である中間面の つの平面にお
いて, に対し各 における反射分布の反射率と分布方向を
解析する.また,反射率データにフレネル効果の影響が見られ
ることからフレネル項 に ) - . の近似式 を用いる.
: = ここで, : は物体微小面の屈折率, は微小面の法
¼
線を表すハーフベクトルであり,
=
= Rxy
幾何における
ÎÓ
図 * 異方性反射の幾何関係
* (
ル項・微小面形状・微小面形状による陰影・ ・視方向 から
なるモデルであるが,そのモデルからフレネル項・ ・ を抽
出した項を式 とする.
入射面における反射分布解析
まず,入射面で入射角 の変化に対する特徴点 の方向と
反射率を考察する.図 に入射面における反射分布を示す.図 に, の反射率 ,各 に対する の反射角 : ¼
及び反射率 ¼ : , から推定した の反
射率 ¼ : ¼ を表す.
¼
¼
図 より,反射率が最大になる の は とほぼ一致す
ることが分かる.つまり : と近似できる.また, の増
における点 に対し,
> :
β
加に伴う ¼ の変化は ¼ で近似できる.以上より ¼
¼
と の反射分布の関係式 を導出した.
と表される.また,ある入射方向 ,視方向 ,
X
β0
に対する正反射ベクトル
を 45 平面に投影したベクトルである.
図 ( のように, の変化に伴う Ó と の対応づけは つの角度 と を考える. は ÜÝ と の間の角度で, は ÜÝ と Ó の角度である.この つの角度を の変化に対
して特徴点を追跡する際に比較することで Ó と を対応づ
:
φo
:
¼
> 次に,図 . に示すように,入射面において の変化に対す
る特徴点 ,, とその間の反射分布上の点 の分布を考
と定義する.-9? モデル は,反射率がフレネ
察する.ここで, , は 45 平面上にあるため, : ,
:
である. は 上の任意の点 を通る Ó と ÜÝ
間の角度である. は を通る と ÜÝ 間の角度である.
図 + 入射面における点 の追跡
+ , !
/ , 6
ρ
o
o
F0
ρF
5
ρ
4
Reflectance
図 / 布平面における点 の追跡
o
6
0
ρ
F0
o
ρ
Reflectance
3
2
1
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
F2o
ρF
5
o
4
2
F2
3
2
1
90
Incident angle [degrees]
0
0
図 - 入射面における反射
10
20
30
40
50
60
70
80
90
Incident angle [degrees]
- (
!
図 0 布平面における反射
0 (
射率 ¾ : , から推定した の反射率
¾ :
¾ ¾ ¾
を示す.
図 0 より,反射率が最大になる の は とほぼ一致
することが分かった.つまり : である.また, の増加
に伴う ¾ の変化は ¾ と近似できる.従って と ¾
¾
の反射分布の関係式 を導出した.
図 . 入射面における反射分布の対応付け
. (
! !
の変化に対して, , は不変であるが, は に変
化させる.つまり , においては : である.また,
から 間の反射分布は から 間に縮小され, か
ら 間の反射分布は から の範囲に拡大する.この つ
の範囲の拡大および縮小変化が線形に近似できると仮定し, ¾
:
> 次に,布平面における の任意の点 と :
0 におけ
る反射分布の任意の点 を考察する.図 に の特徴点 ,
, とそれらに対応する , , を表している. の
変化に対して, , は不変であるが, は に移動する.
と の関係を式 ( で表す.従って式 ( は と の関係を
0 における の
このことから,布平面において と :
表している.
関係は以下の式 で表現できる.
:
= & 0 : : &
: :
(
以上より,入射面において 上の点 と任意の の反射
分布上の点 を対応づけることができる.
:
= & 0 : : & : :
以上より,布平面において 上の と任意の の反射分
布上の点 を対応づけることができる.
布平面における反射分布解析
任意平面における反射分布解析
入射面と同じように布平面での入射角 の変化に対する特
入射面と布平面の関係式が,図 ( における ÜÝ を通る任意
徴点 , , , の変化について考察する.図 2 に,布
平面で同様に成り立つことを検証するために,図 (# に示すよ
平面における反射分布を示す.ただし, と は 5 軸に対
して対称であるため, のみを考慮する.図 0 に, の
反射率 ,各 に対する の反射角 : ¾
及び反
うに,4 軸と の中間ベクトルと ÜÝ が作る平面である中間
面で入射角 の変化に伴う反射分布変化を解析する.図 に示
すように,入射面において の変化に伴い : の関係が成
図 布平面における反射分布の対応付け
(
! り立ち, を通る
図 中間面における点 の追跡
, ! Ó に対応した は ÜÝ に近づき,反射
6
率の変化は ¼ である.同様に図 2 に示すように,布平
¼
ρ
o
のことが ÜÝ を通る任意平面で成り立つならば 上の任意の
0 における反射分布の任意
点 ,任意の特徴点 と :
ρ
4
Reflectance
面において , に対しても同じことが言える.そこで,こ
Fo
ρF
5
¼
o
F
3
2
の点 の関係は式 .,2 で表現できる.
1
:
:
0
> = 0
10
20
.
30 40 50 60 70
Incident angle [degrees]
80
90
図 中間面における反射
(
! & 0 : : & :
:
2
以上のことを確かめるために,
Ó 0 と ÜÝ が作る平面
で解析する.図 はその平面での の点 と点 の中間
0 で視方向が は同一平面上にあるため以下の関係式 , が成り立つ.
:
射率 : を表している.その結果,この平面では
, と , に対して式 .,2 の関係が成り立つことが
:
分かる.
実 験 結 果
点であり,反射率が最大となる点 とその点を通る Ó ,点
と を表している.図 に, の反射率
,各 の点を表す.また,
Ó ,ÜÝ と に対
する の反射角 ,及び反射率 , から推定した の反
以上より,入射面が縦糸方向の場合の反射分布解析を行った
結果,入射面が縦糸方向の場合は,入射面がバイアス・横糸方
向の場合と比べ, の変化に伴う反射分布の分布方向の変化が
大きいことが分かる.縦糸方向の入射光と反射分布の相関特性
本手法は,入射方向を布に対し真上に固定して ; を獲
得し,任意の入射方向に対する反射分布を生成する.入射面
が縦糸,横糸,バイアス方向に対する反射分布を計測し,本手
が任意の入射方方位角に対し成り立つと仮定し,実験結果から
法による推定値と比較した.実験環境は 1 で述べた環境を用
有効性を確かめる.
いた.また,; " 社の ,' を使用し,本手法より生成した
以上より,任意の
Ó と ÜÝ が作る平面で式 .,2 の関
係が成り立つと結論付ける.
を実装したドレス着装シミュレーションを行った.
図 (, は本手法により生成した に, 色性反射モ
の生成
デルに従い任意の拡散反射成分を線形結合し,同素材の布物体
これまでから, を用いて任意の入射方向に対する反射分布
の任意に彩色されたドレス着装シミュレーション結果を表して
を生成できることから我々は を以下の式 0 で表す.
いる.シルクライクな光沢を持つ布画像が生成できたことより,
十分に異方性を表現できたと考える.また,図 に,本手法
:
=
> を用いて生成した と実測値の比較による精度評価を示
0
ただし, は視方向, は入射方向, は拡散
反射成分, は
Ó が 方向の ; の反
射率で図 (# はこの関係を表している.点 は,入射方向は
す.比較条件は,入射方向 が 0, , ,
視方向が視角 : であり視方位角 が 0 から の範囲
である.入射面が縦糸・バイアス・横糸,いずれにおいても異
方性を表す反射率のピークが つあり,反射率のピーク値が方
向,反射率共に十分に実測値と一致していることが確認できる.
1
real data
estimated data
Reflectance
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
50
100
150
200
250
300
350
300
350
phi [degrees]
縦糸方向入射の誤差
図 ' 任意に彩色されたドレス着装シミュレーション
1
' ) ! !
!
real data
estimated data
Reflectance
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
50
100
150 200 250
phi [degrees]
バイアス方向入射の誤差
1
real data
estimated data
図 *
Reflectance
0.8
任意に彩色された柄つきドレス着装シミュレーション
* ) ! !
!
0.6
0.4
0.2
また,表 に,入射面が縦糸・バイアス・横糸方向で反射率が
0
0
ピーク値をとる反射方向 と反射率 の誤差解析の結果を
50
100
150 200 250
phi [degrees]
300
350
横糸方向入射の誤差
示す. 誤差は (<未満であり,十分な精度と言える.一方,
図 + 入射方向を変えた場合の誤差
+ 1 !2
!
の誤差は入射面が横糸方向の場合を除き,約 (<以内で収
まる.なお,入射面が横糸方向において誤差が 0<となってい
るピーク点,及び入射面が縦糸方向における 0 度付近は計測
表 誤差解析
,
1 )
が不安定であり実測値の信頼性が低いことが誤差の要因と考え
られる.
°
ここで本手法の計測効率性を考察する.計測効率性について
は従来の画像計測に基づく手法では,入射方向を 度ずつ計測
した場合,20 20 : .00 通りの入射方向と,視
縦糸方向
方向は物体の上半球の範囲を計測する必要があった.一方,本
入射
手法では入射方向を一方向で視方向は + 半球の範囲の計測で
十分であることから .00 : 00 に計測数
を圧縮できる.例えば :( では,圧縮率は +2 である.
バイアス方向
入射
横糸方向
入射
推定値
実測値
0
0
0*
0
.0
+0
0
00
*
0
.0
*0
誤差 3 推定値
0
'
0
/
0'.
0'+0'..
0.
0*00
0/
実測値
誤差 3
0'*
0'.'
0'.
00
0'
0--
+*
'
'
*0
**
0.
ま と め
我々は,繊維の断面形状,糸の撚り,織り構造を含む織布の微
視的幾何構造に基づき,織り構造の直交二軸の対称性に基づく
効率的な観測から得られた織布の反射データから を自動
生成する手法を提案した.また実験結果より,織布の異方性反
射を表現するために本手法が十分に有効であることを確認した.
今後は物体表面の微小面形状による )*
+,"-
を考
慮した高精度な を生成する研究を進める予定である.
文
献
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$% 平面
&% 平面
! 表示
図 - 縦糸方向入射における反射分布
- !
(
! ! !
>
!
$& 平面
$% 平面
&% 平面
! 表示
図 . 横糸方向入射における反射分布
. !
(
! ! !
>
!
$& 平面
$% 平面
&% 平面
! 表示
図 / バイアス方向入射における反射分布
/ !
(
! ! !
!
45
4'5
4*5
4+5
4-5
4.5
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武田祐樹,豊田伸作,松田悠,田中弘美,竹村伸太郎,坂口嘉之 7
”多視点画像の反射光解析に基づく布の異方性反射モデリング7 ”
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45 武田祐樹,豊田伸作,田中弘美,竹村伸太郎,坂口嘉之7 ”画
像解析に基づく布の異方性反射モデリング7 ” G :"
J グラフィクスと :) 合同シンポジウム 00' 予稿集,
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45 竹村伸太郎7 坂口嘉之7 三ツ井茂7 国松敦7 山内康晋7 千原国広7
”異方性反射特性の計測と可視化手法の提案7 ” 計測自動制御学
会7 第 - 回パターン計測シンポジウム7 00
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7 ” 情報処理学会研究会報告
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4*5 安田孝美7 鈴木克知7 横井茂樹7 鳥脇純一郎7 稲垣勝彦7 ”異方性
を考慮した布地の光反射モデル7 ” 第 * 回 =;:) < 論文
コンテスト論文集7 *"7 =A /./
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4.5 呉寧,安田孝美7 鈴木克知7 横井茂樹7 ”織目の表面構造に注目
した反射モデルによる織布質感表現手法7 ” 画像電子学会誌,
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