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通信ネットワーク障害時におけるOSPFの経路切り 替え高速化の検討
電力中央研究所報告 情 報 通 信 通信ネットワーク障害時における OSPF の経路切り 替え高速化の検討 キーワード:OSPF,指名ルータ,故障,遅延,ルータ Dead 間隔 背 報告書番号:R11022 景 電力用 IP 通信ネットワークでは、多様な冗長化を施した通信経路を保有しており、多 重障害発生時にも、切り替えによる経路確保を可能としている。しかし、標準的ルーテ ィング方式である OSPF(Open Shortest Path First、図 1)では、各管理エリア 1) の経路 情報を管理する指名ルータの障害発生検知と、各管理エリアへの経路情報の伝達に時間 を要するため、収容しているアプリケーションに支障を来たす可能性がある。その支障 期間を短縮するには、経路切り替えを高速に行う方式が必要である。 目 的 電力用 IP 通信ネットワークにおいて経路切り替えを高速に行うルーティング方式を 提案する。また、提案方式の経路切り替え時間を机上評価する。 主な成果 1. 経路切り替え高速化のためのルーティング方式の提案 次の特徴を持つルーティング方式を提案した(図 2)。 z 指名ルータを経由するユーザーデータの IP パケットを常時監視することで、指名 ルータの生存確認を行う。これにより、管理トラヒックを不要としつつ指名ルー タの障害を短時間で検知する。 z 管理エリアを一つにし、各管理エリアへの経路情報伝達を不要とした。 2. 提案方式の経路切り替え時間の机上評価 (1) 各障害発生箇所(指名ルータ、その他のルータ、回線、利用するユーザ IP パケ ット)による提案方式の処理時間フローは図 3 に示す通りである。経路切り替え にかかる時間は、必要となる処理の組み合わせにより、ケース A:経路計算+生 存確認+再選出、ケース B:経路計算+生存確認、ケース C:経路計算、に分類 して評価できる。 (2) 提案方式の各ケースの経路切り替え時間を算出した。その結果、最も時間を要す るケース A においても経路切り替え時間は 7 秒程度であり(図 4)、経路切り替え の高速化によりアプリケーションについても迅速な通信復旧が可能となる。 注 1) OSPF が経路管理するネットワーク範囲を管理エリアと呼び、企業内ネットワークでは,それを分割し て分散管理制御する方式が一般的である。 特徴 特徴 ネットワーク全体の経路を指名ルータ が管理 ネットワーク全体の経路を指名ルータが管理 指名ルータが経路管理し,その他のルータが指名 ルータの生存をユーザIPパケットを利用して監視 ルータの 生存をユーザIPパケットを利用して監視 ネットワークを複数の管理エリアに分けて管理 ネットワークを複数の管理エリアに分けて管理 指名ルータ間で経路情報を交換 指名ルータ間で経路情報を交換 指 名ルータ間で経路情報を交換 指名ルータ間で経路情報を交換 ローカル ネットワーク バックボーン ネットワーク ローカル ネットワーク ルータ 指名 指名ルータ 指名ルータ 指名ルータ 指名ルータ 指名ルータ 指 名ルータ 指名ルータ 指名ルータ生存 確認用パケット を定期的に送信 その他の ルータ その 他の その他の ルータ ルータ 管理エリア 管理エリア 理エリア 管 管理エリア 指名ルータに接続されている回 線を通過するユーザIPパケット を利用して生存を通知 経路状態の情報収集 その他の ルータ その他の ルータ ローカル ネットワーク 理エリア 管 管理エリア その他の ルータ バックボーン ネットワーク IPパケット その他の ルータ ローカル ネットワーク 理エリア 管 管理エリア 現状の問題点 提案手法の改善点 名ルータに障害が発生すると、検知に時間 指 指名ルータに障害が発生すると、検知に時間 かかる。 が がかかる。 理エリア内の経路情報を一定時間内収集 管 管理エリア内の経路情報を一定時間内収集 し、各エリアへ 交換するため、全体の経路を し、各エリアへ交換するため、全体の経路を 決 定するまで時間がかかる。 決定するまで時間がかかる。 1 指名ルータの障害を高速検知する。 1.. 指名ルータの障害を高速検知する。 2 指名ルータは集中方式のため、経路情報交 2.. 指名ルータは集中方式のため、経路情報交 換が無く時間がかからない。 換が無く時間がかからない。 図 1 既存方式(分散管理方式) 図 2 提案方式(集中管理方式) 障害発生 経路計算時間と情報伝搬時間 (経路計算) YES その他のルータ のみで障害 NO 提案方式指名ルータ生存確認時間 (生存確認) 指名ルータ 障害無し 障害有り 指名ルータ再選出時間 (再選出) 図 3 各障害に対する処理時間算出のフロー 20 50 再選出 (0.02秒) 経路切り替え時間(秒) 経路切り替え時間(秒) 60 経路計算 40 30 20 改善点 2の効果 生存確認 再選出 (0.4秒) 10 0 既存方式 ケースA,B 経路計算 経路計算 提案方式 ケースA 提案方式 ケースB 改善点 1の効果 生存確認 (0.6秒) 15 10 経路計算 改善点 2の効果 5 経路計算 0 既存方式 ケースC 提案方式 ケースC 図 4 既存方式と提案方式の経路切り替え時間算出結果 ルータ数を 400、既存方式の管理エリア数を 20 とし各管理エリアのルータ数を 20、指名ルータに接続されて いる回線を通過する IP パケットの送信間隔を 0.1 秒とした。ケース A はバックボーンネットワークの指名ルー タで障害が発生した場合、ケース B は障害によりパケットが喪失し指名ルータの生存を誤認する場合、ケー ス C はローカルネットワークのその他のルータで障害が発生した場合である。 研究担当者 土井 博生(システム技術研究所 通信システム領域) 問い合わせ先 電力中央研究所 システム技術研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 03-3480-2111(代) E-mail:serl-rr-ml@criepi.denken.or.jp 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] Ⓒ 2012 CRIEPI 平成24年7月発行 11−009