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細胞間同調 - 日本時間生物学会

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細胞間同調 - 日本時間生物学会
E通凶田監苦ã~i司王董藍遁董E請者葺ヨー
細胞間同調
一時間生物学を臨床医学ヘ応用するための 1つのキー・ワードー
太田英伸凶
東北大学病院
周産母子センター
ルシフエラーゼ・ GFPを用いたレポーター システムの開発により、中枢・末梢時計の単
一細胞レベルでの細胞間同調の詳細が明らかになりました 。その結果、特定の環境下で 、
繊維芽細胞あるいは視交叉上核 (
s
u
p
r
a
c
h
i
a
s
m
a
t
i
cn
u
c
l
e
i:SCN) のmRNA計測において、
リズムが消失しているように見えた現象は見かけ上のもので 、「単一細胞ではリズムが維
持されているにもかかわらす 、個々の細胞のリズム位相がバラバラである」ために起こ っ
ていることが明らかになりました 。この「細胞間同調」のコンセプ卜を時差ポケ治療に延
長すると、 1)中枢時計レベルでは、腹部・背部SCN細胞聞の同調、 2)個体レベルでは、
SCNと末梢臓器の細胞間同調に 、研究の焦点か.
浮かんできます 。
2
.
1.はじめに
「同調」という概念は時間生物学において常に研究
のキ ー・ ワードになってきました
。 どのように
1) 2)
I
血清ショ
ック・モデル j による問題提起 8I
Sch
ibl
e
rク
ザ
ル ーフ。
のBal
s
al
ol
コ
r
巴らは、高濃度の1Ul清
(
50% adu
ltho
r
s巴s
er
um) を 繊 維 芽 細 胞 (
r
a
t
1
生物が光 ・温度といった環境サイクルの変化に同調
f
i
brobl
a
s
t)に 2n
寺間投与することにより、細胞中の
するのか?この疑問は、行動リズムを指標に │
時間生
時計進伝子 p
e
r
i
odl(
p
e
r
l)
/pe
r
i
od2(
p
e
r
2
)及 び 転写
物研究が開始された当初から重要な学問的テーマで
e
r
ba/a
l
bu
minD e
J
ement
b
i
n
d
i
n
gp
r
o
t
e
i
n
因 子 rev
した 。 また │
臨床的なテ ーマとしても、海外旅行に
(
dbp
)
/t
h
y
r
o
t
r
o
phemb
r
y
o
n
i
cf
a
c
t
o
r
(
t
e
f
)のmRNA
寺計の新しい環境への同調不和
よって生じる体内 H
がリズムを刻み始めることを報告 しました 。その リ
(
1
1
守差ボケ)を効果的に治療しようとする薬剤開発
が日本を含め各国で精力的に行われています J)- 7
)
。
ズム周 !~J は約 22 . 5 時間で、 J(lL 1
青ショック後
3日間の
リズムを刻むことを硲認しました 。彼らは、この 実
9
9
8年、スイスの S
ch
ibl
e
rグル ープ(ジュネ ー
特に 1
血清シ ョックによる ① 「リズム誘導」、と ②
験により I
ブ大学)から繊維芽細胞を使用した「血清ショッ ク・
個々の細胞聞の「 リズム同調」の 2つの仮説を示し
モデル J
(
一時的な 血清ショックが繊維芽細胞にサ ー
ました 。「リズム誘導」とは 、それまで リズムが存在
カデイアン・ リズムを開始させること )が提唱され
しなかった細胞 に血清ショックによりリズムを励起
1
1
1胞間」同調の 重要性が時間生物学で
るに至り へ 「
キ
し、繊維芽細胞の時計遺伝子 ・転写因 子 にサ ー カ
意識されるようになりました 。 このモデルに対する
デイアン ・
リ ズムが観察できるようにな ったとする
最終的な解答が 2
0
0
4年の末、 Nagosh
i91 • Wel
s
hlOl ら
仮 説 で す。一 方、「 リズ ム 同 調 」 仮 説 で は 、 血 清
からそれぞれ提出されるに 至 りま した。夜、達の夕、
ショック以前においても、個々の細胞には リズムが
ル ー プもこの問題について視交叉上核
存在しているものの、個々の細胞がもっリズム位相
(
s
u
p
r
a
c
hi
asmati
cnuc
lei:SCN) を対象として lr~ り
は異 なると仮定しています。 そのため、シャ ーレ に
組み、この結果が今後の │
臨床 医学 において 示 した可
含まれる培養細胞全体で、 mRNAを測定すると 、結果
能性を 2004-2005年の 一連の研究動向の中でご説明
的には個々の リズムが合算 ・平均化 され、見かけ上
したいと思います。
リズムが存在しないように見えると考えています。
血清ショックによって、この細胞 聞の異 なる位相が
図
h
id
e
oht
a@ma
i
.
l
t
ai
ns
.
t
oho
ku
.
a
c.
j
p
寺│
羽生物学
H
(
〒9
8
08
5
7
4 仙台市青紫区星陵町 1
1
)
VoI
.12.
No
.
l(
2006)
- 3-
同調し、リズムが出現したように見えるというのが、
「リズム同調」仮説です。
ウス由来 12) の繊維芽細胞を用い、ショ ック導入後 1
5
日間という長期間、安定した リズム計測に成功しま
した 。
3
. 末 梢 時 計 ( 繊 維 芽 細 胞 )における細胞間同調
(Nagoshiら 91.Welshら1
01の解答)
4
. 中枢時計SCNにおける細胞間同調(パンダービ
2つの仮説のうち、どちらが正しいのか?この解
答に対する鍵は、同 ーの単一繊維芽細胞のリズム計
ルト大学グループの解答 1
31
)
細胞間同調はまた、末梢時計だけではなく、行動
測を行うことでした。 この観察 によって、リズムが
3枢時計のメカニズム
リスムの形成という 意味で、 1
:
1
止ま って いるのか、あるいは個々の細胞にリズムが
に も 深 く 関 わ って い ま す。 Granados-Fuentesら
存在する状況で細胞毎にリズム位相が異なっている
(
Her
zogグ‘ループ、 Washi
n
g
t
o
nUni
v
e
r
si
t
yi
nS.
t
の か 、 そ の 答 え を 出 す こ と が で き ま す。既 に
Lou
is
) は2
0
0
4年 1月に恒明条件 (LL
)(
3.9x 1 0 17~
Sch
ibl
巴r
グ
‘
ル ー プは、この仮説を発表した 1
9
9
8年
、
6
.
9
x
1
0'Rphotons/s
e
c
)下で行動 リズムが消失した per
自らが投げかけた M究テーマへの解答を得るため、
1:
lu
cラッ トから SCNを 切 り 出 し i
培養を行いまし
dbp::GFPレポ ー ター システムの閲 9
6にI
r
!Zりヵ、かっ
た1。
,
)
1 このとき、培養細胞におけるルシフエラ ーゼ
ています III。 レポ ー ターシステムとは、目的遺伝子
の発光リズムを i
!
J
J
1
定したところ、 SCNにおいてもリ
のプロモ ー ター と蛍光 ・
発光作用をもっ造伝子 (GFP
ズ ム が 消 失 し て い ま し た 。考 察 の 中で彼らは、
あるいはルシフエラ ーゼ:l
uc
i
f
e
r
a
s
e
:l
u
c) を結合さ
Schi
bl
e
rク
、
ル ー プが繊維芽細胞(末梢 H
寺計)のリズ
せた DNA配列を対象となる釧胞 ・個体に造伝子導入
ムに閲して提出したものと同様の{反説を f
是出してい
し、その蛍光強度 ・発光量を計測することにより、
ます。つまり、 LLにおけるラッ トの行動リズムの消
目的辿伝子の活動レベルを問按ー的に評価
i
l
するしくみ
失は、 ① LLがSCNキ
H
I胞 における リズムを止めたため
です。結局、最終的な W
f
o答が得られたのは 、それか
に起こる、あるいは② LLがSCNの個々の釧胞聞のリ
ら 6il~ 後の 2004年 11 月のことで、
ズム位相を脱同調したために起こる、という仮説で
2 つの異なるグ
l
レープから、ほほ同時に発表されました 。 1
1月2
4
E
I
にSchi
bl
e
rク
、
ル ー フ。
のNagoshi
らが Cel誌上に、その
す。
この 2つの仮説に対して、私たちパンダ ー ビルト
前日の 1
1月2
3日に Kayグル ープ(スク リプス研究所)
大学のグ ルーフ。
はper
l:
:
G
F
Pマウスの SCNを対象と
の羽「
巴I
s
hら?が Curr巴n
tBi
ol
ogyに onl
i
nepu
b
l
ic
a
ti
o
n
して、 9
1
平 答 を 試 み ま し た 。p
e
r
l:
:
G
F
Pマ ウ ス は
(
実│
僚の Cur
rentBi
ol
ogy誌上にはそれから 1ヶ月
mousep
e
r
lプロモーターと GFPを結合させた DNA
後の 1
2
月末に)と非常・に近接した日程で発表が行わ
配列を組み込んだ遺伝子操作マウスです。 このマウ
れました 。両グル ー プとも繊維芽キJ
[
J
!
J
包 を対象にレ
スを使い、視交叉上核 SCNにおける GFPの蛍光強度
ポータ一造伝子を!=Iれ¥単一組
]
1
胞のリズム記録に成
を計 測することにより 、p
e
r
l追伝子の活動 レベ J
レを
功していました 。
個々の神経細胞において割引l
I
i
できます。
Nagoshi
らは、 r
e
v
e
r
bα辿;伝子プロモ ー ター に
実験プロ トコールはマウスを LL
条{
t
l
:
ド(
3
5
0ルク
「ヴィ ーナス 」 と呼ばれる黄色蛍光タンパクを遺伝
ス)で飼育し、 ① 行動 リズムが無周期になった個体
子工学 的に接合させたコンス トラク トを繊維芽細胞
と② サーカデイアン・ リズムが維持されている個体
NIH3T3に遺伝子導入し、個々の細胞の リズム観察
の 2グル ープから SCNを切り出し培養を行い、 GFP
に成功しました 。 この観察により、血清ショック前
信号パタ ー ンを 比較するという単純なものです。実
の個々の市I
J胞 は既に リズムを持ち、その リズム位相
│
僚には行動 リズムが無周期となるマウスを得るため
が異なること、 一方
、 血清ショック後では リズム位
には、 5ヶ月間という長期間の飼育が必要で、した。
相がほぼ同 ー になることを 示 しました 。
また、 Welshらは、 2つのアプロ ーチから N
agoshi
この実験で?!!f,周期とな ったマウスの個体は全体の
9% (
5/5
8)で、その個体数は少なく、サンプル数
防士らと同様の解答を得ています。第一 に、時言 1
辿
を雌保するために、培養笑験に失敗が許されない緊
伝子 bma
l
Jプ ロモ ー ター にレポータ ー遺伝子 l
ucを
張感がありました 。 また、驚いたことに 1
2時間周期
組み込んだ DNA配 列 を 繊 維 芽 細 胞 r
at
1
に 一 時的に
の行動リズムをもっ個体も同械に 9%出現しました
遺伝子導入することにより l
j
i-細胞の リズム観察を
(その当 H
守、ハムスタ ーではマサチュ ーセッツ 州立
行 い ま し た 。第 二 に 、 ノ ー ス ウ エ ス タ ン 大 学 の
大学医学部 S
chwartz夕、ルーフ。
のdel
aI
gl
e
si
aら1:;) が
、
Takaha
shi
ク
ホ
ル ープが作成した p
er2:
:
I
ucknocki
nマ
マウスでは名古屋大学海老原グループが開発した
時I
/
U
生物学
4
VoI
.J
2.No.
l (2006)
2時間周期の行動リ
で Abeらが、同様に 1
CSマウス 16)、
胞間同調の視
1
これまでの研究を基礎とすると、組1
。 その結果、 当初の 計四
ズムを報告していました )
寺差ボケに対し 2つの定義を与えることが
点、から、 H
とは異なり、 ① サーカデイアン・リズムをもっ伽│体、
できると思います。
②~!\ri 周期リズムの個体、 ③ 12 時間周期のリズムをも
1胞聞のリズム位相が阿部lし
キ
時差 ボケは SCN
1) 1
)い、
=
1
:
っ例 体、の 3グループから得られた SCNを )
GFP信号パタ ー ンの解析を行いました。
ていない現象である 。」
SCN
SCN)と末梢時計 (
寺計 (
時差 ボケは中枢 H
2)1
以外の組織)が同調していない 現象である 。」
最初に行った ②~nri 周期リズムの個体の SCN の観 察
胞のリズムを止め
刻"
LLはSCN
から、第 一 の仮説 I
神経細胞聞の向調が行動リズ
前述したように SCN
る」が否定的であることが分か りました 。培養開始
寺
1
ムの形成に重要で、ある可能性が分かつてくると、 1
信号を
故鋭を覗くと、 GFP
直後、共焦点レーザー顕i
差 ボケに対する 1つの理解として、
4時
放っ制胞を見つけることができ ました 。 その後 2
うことができると思います。実 際、複数の研究者が
4時間周
信号が2
胞がもっ GFP
間の間察で、個 々の刺"
・ マウスを対象に行った明日音サイクルの位相
ラッ ト
LLはSCN細胞のリズ
期で変動することを的認し、 I
長側部
)
胞は、 J
背側部のキ1
後退 ・前進実験から、 SCN
1)の定義を行
ムを止めていない」 ことが分かりました。加えて
U胞に比べ、ゆっくりとしたスピ ードで時計逃伝
キI
の
胞はリズムを刻むものの、その 位相が
刻u
個々の SCN
子の発現パタ ー ンが変化 することが雌かめられてい
バラバラで個々に異なっている ことも雌認しました 。
)
l
背側部と腹 f
ます。Isll9)削細胞 間の脱同調、特に SCN
映像をつないだ高速
寺問に 1度の割合で蝿影した │
1
1
1
部のズレが、時差ボケと呼ばれ る 一連の現象の本体
ムービー から自分が感じた印象は「まる で花火みた
かもしれません。
映
いだ」 というものでした。今まで見た ことのない │
像に驚き、生物現象の奥深さに 感動したことを党え
ucラッ トを対象に、
l
:
2)の定義は 、perl:
'
i
!
l
l
音環境の位相を前進 ・後退させた際、 SCN'J
明H
ています。
搬す品のリズム位相:が異
jJl jJi~ .骨絡筋とい った高山故・ !
また、
培養細胞からは、
団体の SCN
1
一方、リスムをもっ1
なるスピードで反応した観察に 基づいています 211。
1時
4
犬に 2
;
SCNの背側部から腹側部に向ってウェ ーブ1
海外旅行の際、「睡 眠サイ クルは 1週間ほどで順応
信号 を線認しました 。 これは、
間周期で変動する GFP
してきたけれども、便通のリズムはまだおかしし、」
e
c
n
ie
c
神戸大学)の 山口ら 111 がS
以前岡村グループ (
という経験はよくあるのではな いでしょうか?新し
と非常に似た 信号
cマウスの結果・
u
l
:
に発表したperl:
時計の適応スピ ー ドと
い明日音サイクルに対する脳の │
パターンでした 。
腸管の時計の適応スピ ー
2時間周期の
また、当初予定していなかった、 ① 1
vは奥な っている のかもし
れません。
時
41
リズムをもっ個体では、左右そ れぞれの SCNは2
寺差 ボケの新築の効果を動物
1
この 2つの定義は、 1
信号をもつもの
間周期で変動するウェーブ状の GFP
実験を通 し評価する上で、 意外とクリア・カ ッ トな
が交互
時間逆転 し、左右の SCN
21
の、リズム位相は 1
寺差 ボケの新薬をマウス ・ラッ トに投与
見方です。 H
に光るという、これも生物の不 思議さを感じさせる
、
し
決{象でした 。
│
条件下で発生する無周期行動リ
以上のように LL
1) SCN の Il~J' 計 辿伝子リズムの変 化 を追い、
時計逃伝子の リズム
SCNのJ皇・背側領域の │
ズムのマウスでは、生物時計が止まるのではなく、
位相のギャップがどのくらい素早くなく
細川包の リズム{立中日カり tラハラになること
個々の SCN
なったのか?
時計の細胞間同
が明らかになりました 。 これは末梢 l
寺計遺伝子 リズムの位相
1
) SCNと他の臓器の1
2
信号が行動リ
寺音│
からの H
調と類似した結果で、 SCN
関係は、どのくらい素早く元通 りになった
J同調を基礎
M
1胞 I
1
ズムを形成するシステムに対し 、キ
のか?
として出力されていることを示 唆しています (しか
この 2つの細胞問 ・組織間同調をクリアできる薬
から行動システムへの出力機
条件下での SCN
、 LL
し
寺差 ボ ケ の 薬 の 候 補になるのではないでしょう
がH
術の詳細については検討が不十 分です)。
/GFPといったレ
uc
l
:
時計遺伝子:
か?その意味では、 │
ポーターシステムをもっ遺伝子 操作動物が薬の効果
. 時 差 ボ ケ の 治 療 は ど こ に ? SCN内の細胞間
5
同調を考える方向と末梢時計を 考える方向の 2
を判 定する上で今後も重要な実験対 象となるかもし
れません。
つヘ?
.物学
'
I
W
寺I
H
l2.No.J (2006)
.
Vo1
5-
(1)腹側部・背側部 SCNの同調 メカニスム
腹 側 部 ・背 側 部S
CNの同調メカ ニ ズムについて
Al
b
u
sら (
Bl
o
c
k& Me
j
ie
rクループ)が行った GABA
F
ズム周期を発生」という仮説が 意識されてい ます)。
次に彼らは新生仔マウス SCNをバラバラに分離した
1
単一千
1
1
胞 をマルチ電極上に蒔き、培養を 行いま
経創u
の研究は非常に興味深いものです (
2
0
0
5年 3月に
した (分散培養)。そして、細胞外電位のリズム を野
Cu
r
re
n
tB
i
o
l
o
g
yに報告 1)
9)
。彼らは、明 H
音サイクル
生型 (
C
5
7
B
I
I
6
)、VIPKOマウス、 VIPAC2RKOマ
を変化 させ 6時間の位相後退をラッ トに 負荷した後
ウスの 3タイプで観察し、 個 々の SCN
細胞の リズム
に、脳から SCNを取り 出 し 初 代 培 養 の 急 性 実 験
の有無、 リズム位相を調べま した 。 その結果、 V
IP
KOマ ウスと VIPAC2RKOマウスでは共に、約 70%
(
SCNを取り出した直後に記録を開始 ) を行いまし
た。その際、カッターによって 腹側部と背側部の
の培養剤n
胞のサーカデイアン・リズムが 消失し、残
SCNを切り分け別 々に培養 を開始し、 SCN神経の綱J
I
り30%の リズムのある 細胞の リズム周期は 2
4時間以
J
I
包活動を 細胞外電位をJ=l'
J
し、記録 しました 。その結果、
外 の周 期 を含む広 範囲に披 っていま した (
一方、野
分割された SCNの領域がそれぞれサ ーカデイ アン ・
生型で リズムを示 したも のは全体の 7
0
%の培養細胞
リズムを 刻み、か つ腹 f
阿部SCN
の リスムが背 側 音1
で した )。
SCNに比べ早いスピ ー ドで、新しい 6U
寺間の位相後
退のスケジュ ールに 適応していくことを線認 しまし
た。 これと同じ現象が、 GABAaア ン タ ゴ ニ ス ト
更 にA
tonらは、 VI
PAC2Rア ゴ ニ ス トのRo2
5.
1
5
5
3を一 日に 一度投与 し
、 V
IPKOマ ウスから得た
SCN.
K
j
U
J
胞のサ ーカデイ アン ・リズムを回復できるこ
b
ic
u
c
u
li
neを投 与ーすることに より、Jl別!
I
音1
I・背側部
SCNをカ ッタ ーで 切 り分 けて いない ー まとまりの
SCN培 養 細 胞 においても観察されま した。 この背
VIPAC2RKOマウスから待た SCNキ
1胞 に 毎 日 投 与
f
W
I.J
血f
l
!
f
l
SCN聞の相互連絡を絶 ったモデル実験およ
、
びb
i
c
u
c
ul
l
i
n巴投与実験が同様の結果だ、 ったことから、
ター (
VIPAC2R)の存在がリズム回復に必要なこと、
VI
Pが細胞間同 調に 貢献しリズムを回復させている
GABAがJ
J
刻l
i
f
l
部 SCNと背側部 SCN
のリズム位相を結
可能性を 示 しました 。 しかし、 A
tonらの 実験では、
び付け ている可能性 が指摘されました。 また山口
新生仔マウス SCNの「分 Wd培養で行われているた
とを 示 し ま し た 。加 え て 、同 様 に Ro2
51
55
3を
しでも、リズムが回復しないことから、 V
IPレセ プ
ら1)
7の新生{
子per
l
:l
u
cマウスの SCNを用いた 初代培
め、腹f
l
!
l
'背 f
H
l
I
SCNのカ ップ リン グに VI
Pに関わって
養の慢性実験 (培養開 始 2週 間後に 記録を 開始)に
いるか否か、直接の解答を得る ことはできません。
おいては、カッターによ って腹似I
J
音1
I・背側部SCNを
加 えて VI
Pリズムが新生仔ラッ トと 大人ラッ トで具
切り 分け 、別 々に培養を 開始したとこ ろ、背 側 音1
1
なる点も考えると 制、できれば大人の VI
PKOマウス、
SCNのリズムが消失しました 。 SCN細胞の発達レベ
VIPAC2RKOマ ウスを対象に SCNの 構 造 が 保 た れ
ルの違い (
対象が大人と新 生仔)及び慢性実験系で
る「器官」培養 で同様の 実験を行うことができれば
は実験開始直後に比較し細胞数 ・キ
1
1
1
1
抱梢築が変化す
ベス トのように思います。
ることから 22)、急性培養・慢性培養の 2つの実験系の
SCN全体における 個 々の細胞間同 調がより問題と
単純な 比較は 難しい ですが、腹側 古1
I
と背側部S
CNの
なるのは、恒明環境によ って SC
Nが光の影響を より
リズムを同調さ せ るの には、 単 純に GABAを ター
強く受けている人工環境で、時 差 ボケとは若干異な
ゲットに薬剤開発を行うだけでなく、背骨!日目SCN
の
る病態生理J
l
か
と 考察 します。例えば、対 象となるの
リズム形成メカ ニズムを明らかにする必要があ るか
はI
CU (集中治療室).NI
CU (新生児集中治療室)・
もしれません。
宇宙ステ ー ションといった人工環境です。 この場合、
また A
t
onら (
He
r
z
ogボ
ク ル ー プ)が2
0
05
年 3月に
JJ~ ff!ll 部 SCN と背側部SCN 問のリズム{立相のズレを考
Natu
reNeu
r
o
s
c
ien
ceに報 告 した VIPとそ の レセ プ
タ- VI
PAC2Rに関する 研究却 も腹側部 SCN・背側
えた治療より、恒明環境で乱れた SCN
全体の細胞間
同調を整える治療が必要となる ことと思います。 そ
部SCN
の同調メカニズムを考える上で 示唆に富んで
の意味で、 SCN
全体の細胞を同 H
寺に向調開始させる
います。彼らは、 VIPKOマウス、 VPAC
2RKOマ ウ
薬剤 開発が必要かも しれません。 また、同様な効巣
スの約 60%
がその行動に単一 のサーカデイアン ・リ
は、規則正しい明日音周 期を導入することによっても
ズムを 刻まず 2
4
時 間以外の周期も加えた 複数の リズ
得られる可能性があり ます。薬剤による副作用のリ
ムを刻むという観察結果 から、 VIP
が細胞間同調に
スクを減らすことも考えると、 光治療といった非薬
関わ っているという{反説を十余討しました(この背景
剤治療の可能性を 丁寧 に検討することが実際は現実
には rSCN
細胞聞の同調が乱れる→行動に複数のリ
的な選択かも しれませ ん。
1
1
寺1日生物学
- 6-
¥
l01
.
12.
No.
l(
2006)
ヒト SCN
の刺[j胞間同調を非侵襲的に雌かめること
3枢時計にお ける r
半年は、末梢 .1
:
1
*
1
1J胞間同調」の
、F
u
n
c
t
i
o
n
al
は技術的に難しいのが現状です。 PET
メカニズムに関する研究が一斉に発表された時期で
MRI (
肱I
RI)において、分子生物学的プロ ーブを使
した 。 またそれは今後「時差ボケ」という│臨床的な
用すれば原理的に可能かもしれませんが、現在の
テーマを別の角度から考える材料を提供したように
MRIの解像度は視交叉上核の}j夏 ・背側を見分けるほ
引 現在、瓜IlR
Iを使用し
ど性能は高くないようです 2。
個人的に感じています。
て個々の細胞レベルの活動を記録した砂│
究は報告さ
れていますが、対象は主にげっ歯類で、分子生物学
今回の原稿は 、自分がパンダービル卜大学でポス
ドクとして勤務していた 2003~2005 年に、
自分の 研
究テ ーマに関連して職場の上司・同僚と日 l
説話して
的プローブの安全性の確立にはまだ時間がかかりそ
いた内容をまとめた形になっています。 アメリカで
うです 2九
仕事をして学んだことは、各研究分野には歴史的に
重要とされている テーマ、またそこから新たに派生
(2)SCNと末梢時計の同調 メカニスム の評価
したテーマが存在し、それらを意識しながら研究す
の位相関係を
一方、ヒトにおいて SCNと末梢時音│
ることが大事だということでした 。 こうい った研究
時計遺伝子を含めて解明することは原理的に可能か
テーマにはその分野の根本的な疑問が存在すること
のサーカデイアン ・リズムをメラ
と思います。 SCN
を、遅ればせながら実感しました 。今後は 、時間 生
できると仮定して 、末梢 H
奇計
トニン ・リズムで評価i
物学に限らず、今まで学んだ発達心理学 ・新生児医
m・
血液サンプル 2oJで評価するこ
のリズムを皮府生検 :
学 においてもテーマ性という感覚を大事にしていき
とにより位相関係を決めるという方法です。上回グ
たいと思います。 このような 意識は、定期のミ ー
ループが動物モデルで提案した複数の時計遺伝子パ
テイングやコーヒ ー を飲むような休み時間に、自由
ターンから 一点のサンプリングで生物時計の時刻を
な雰囲気のデイスカッションを行うことにより培わ
i
す る方法は、検査対象となる方のス トレス を減
評価l
れたように思います。 その意味で、自分の直属の上
らすことができるという意味で非常に魅力的です則
。
司だったマックマーン先生と研究室の同僚、またパ
0
0
5年 7月の
このメカニズム解明のターゲ ッ トは、 2
ンダービルト大学の時間生物学グループのページ先
S
c
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e
n
c
eの特集「私達の知│らない 1
2
5の疑問」の 1つ
11
1
奇先生そ してポスドク仲間・
生 ・ジョンソン先生 ・1
寺
言│
ーを同調させるの
に選ばれた「何が臓器の生物 H
大学院生・大学生の方々に深く感謝の意を表します。
か ?J制 の答えにつながることと思います。以前よ
また、この;場をお借りしてアメリカ滞在中、私達の
寺計をつなぐものとして、ヒトではコ
りSCNと末梢 H
捌究をサポートして頂いた日本の 多くの 研 究 者の
!8類ではコルチコステロンとい っ
ルチゾール、げつ1
方々にお札を申し上げます。本当にありがとうござ
た副腎皮質ホルモンがその役割を果たしているので
いました 。
はないかという期待の元、過去に幾つかの研究 31)32)
が発表されていますが、残念ながらはっきりとした
解答は得ら れていません。
Nと末梢時計の位相関係を調べる技術
加えて、 SC
一後書 きー
その後も進展が続いています
2回日本時間生物学会の発表に合せ
この原稿は第 1
細胞間同調 j にお
て準備しましたが、その後 rSCN
寺言│
のリズム
には直接結びつきませんが、ヒ卜末梢 H
IP
/GRPの役割について進展があり、新たに付
ける V
[
J
J
Iする技術は、 S
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グルーフ。
のBrownらに
を計 i
け力[1えさせて頂きます。
よって最近報告されて います ヘ 彼らは、時計遺伝
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sグ、ル ープ(マンチェス
特に興味深いのは、 P
l
1プロモータ ーにルシフエラーゼを接合させ
子 Bma
ター大学)の Brownら刊の報告です。彼らは、「大人 J
たコンストラクトをレンチウイルス ・ベクタ ーに組
み込み、採取したヒ卜表皮細胞 ・単核球・毛根ケラ
l
吸引電極」と呼ばれ
VIPAC2RKOマウスを対象に r
るおも しろい方法で、 SC
N培養細胞の安定した細胞
チン生成細胞に迫伝子導入することに成功していま
外電位リズムの計測に成功しています。 レポ ー ター
す。 この技術を使 った ヒト 表皮細胞からのリズム 計
動物の弱点は、行動という生理メカニズ、ムを制御す
4.
5時間のサーカデイアン ・リズム
測により、 平均 2
1
経細胞由来の電気信号を直接評価できない点で
るや1
が報告されています。
す。その意味で、 Brownらの研究は生物時計の分子
メカニズムと行動システムの橋渡しの研究とも 言 え
6
. まとめ
振り返ってみると、 2004年末 ~2005 年初めという
H
剖m
生物学
音条 件
ます。彼 ら は VIPAC2RKOマ ウ ス に は 恒 H
(
DD)において行動 リズムが消失するタイプとリズ
VoI
.
l2
.No.l (
2006)
7
ムが持続するタイプの 2グループが存在する点に 着
胞が AVP分泌細胞が多い SC
N背 側 部 (
正雌には s
he
l
目し、それぞれの SCN
培 養細胞の細胞外電位リズム
領域との 表現) に存在することを 示 した点など、非
を評価しました 。 その結果、行動リズムが消失する
常に 示唆に 富 んだ興味深い報告にな っています。
マウスでは、細胞外電位リズムも消えていること、
一連の論文の流れを敢えて短い 言葉 でまとめると、
行動リズムが持続するマウスでは細胞外電位リズム
「
個 々 の SCN
キ
I
l
IJ
J
包 問 の カ ッ プ リ ン グ に は VIP
/GRP
も維持されていることを硲認しました 。 これは私た
が
、 SC
NJ
J
i
l側・背側部のカ ップリングには GABAが
ちのチ ー ム(パンダーピルト大学)の恒明条件ドの
関係している Jというデータが少なくとも提出され
pe
r
l:
:GFPマウスの結果を連想させるもので、恒明
ていることになります。
条件においても VIP
分 泌 ・VIPAC2R機 能 の 変 化 が
キ
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J
!
包間同調に影響することを 示唆しているかもしれ
ません。 更に Brownらは、細胞外電位リズムの消 失
培 養細胞に
し た SCN
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GRP)を投与し、 VIPAC2RKOマウスの SCN培養
細胞にリズムを回復させることに成功しました 。 こ
の結果から、 VIPとGRPの 2つの神経伝達物質がリ
ズムの維持に関わ っていることを示しました 。
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、、
ク ループ (
ケンブリッジ
同様のテーマを H
大 学)の Maywoodら叩 が 、 レ ポ ー タ ー・ マ ウ ス
[
VPAC2RKOマ ウ ス X perlょl
ucマ ウ ス ] (
以下
VPAC2RKO::
l
uc
マウスと 表記しますつを用い検討
参考文献
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SCN培 養 細 胞 の 発 光 パ タ ー ンを CCDカメラを用い
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.
べ、リズムを刻む SC
N細胞の個数は少なく、その振
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keda M,Yokota S.
7)Moriya T,Yoshi
日も 1/1
0以 下 に な っ て い る こ と を f
確認しました
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yama M. S
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(しかし、このプロトコールでは、 「
新生仔」マウス
を使用していることに少し注意が必要だと思います。
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nら23) '
Br
ownら川 の報告 によると、 DD下の 「大
人JVPAC2RKOマウスでは行動リズムが消失する
タイプと行動リズムが持続するタイプの 2つが存在
していました。 Maywoodらは、行動計測できない
新生仔マウスを対象としているので、この 2グル ー
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.YamazakiS,LowreyPL,Shimomura
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3)Ohta H
の 他 にも、 Maywoodらの論文は、 B
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kク、、ループ
(
ノtー ジ、
ニア大学)の L
undkvistら叫が以前報告 した
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{
1I胞内 Caイ オ ン 濃 度 が リ ズ ム 維 持 に 重 要 な 点 を 再
十余討し、 VIPAC2Rが SCN
キ
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I胞 のJ
J
英電 位 の コ ン ト
ロ ー ル に 関 与 す る 可 能 性 を 示 し た 点 、 VPAC2R
KO::
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