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詳細版 - GEC

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詳細版 - GEC
H25 JCM DS 最終報告書
二国間クレジット制度(JCM)方法論実証調査 最終報告書
調査案件名
電気自動車の利用促進
調査実施団体
株式会社アルメック VPI
ホスト国
ラオス人民民主共和国
目
次
1. 調査の背景
(1)
4.9 リファレンス排出量の算定方法
(25)
1.1 ホスト国の JCM の考え方
(1)
4.10
プロジェクト排出量の設定根拠
(28)
2. 調査対象プロジェクト
(3)
4.11
プロジェクト排出量の算定方法
(29)
2.1 プロジェクトの概要
(3)
4.12 モニタリング手法
(32)
2.2 企画立案の背景
(5)
4.13
モニタリング実施結果
(33)
2.3 ホスト国における状況
(5)
4.14
GHG 排出量及び削減量
(43)
2.4 プロジェクトの普及
(7)
5.
3. 調査の方法
(8)
5.1 プロジェクト実施体制/参加者
(45)
3.1 調査実施体制
(8)
5.2 プロジェクト開始時期及び実施期間
(51)
3.2 調査課題
(9)
5.3 方法論適格性との整合性確保
(51)
3.3 調査内容
(10)
5.4 排出源とモニタリングポイント
(52)
4.
(11)
5.5 モニタリング計画
(52)
4.1 JCM 方法論の概要
(11)
5.6 環境影響評価
(54)
4.2 用語の定義
(12)
5.7 利害関係者のコメント
(56)
4.3 適格性要件
(12)
6.同種プロジェクトの実現可能性
(59)
4.4 対象 GHG 及びその排出源
(14)
6.1 日本製技術の導入
(59)
4.5 算定のための情報・データ
(15)
6.2 ホスト国への貢献
(62)
4.6 デフォルト値の設定
(17)
6.3 環境十全性の確保
(62)
4.7 事前設定値の設定方法
(17)
6.4 その他の間接影響
(63)
JCM 方法論に関する調査結果
4.8 リファレンス排出量の設定根拠(17)
JCM
PDD 作成に係る調査結果
(45)
6.5 同種プロジェクトの開発・普及に関する今後
(1)Option 1:現地での実測
(17)
の見込み及び課題
(63)
(2)Option 2:既存データ
(19)
7. その他
(63)
(3)Option 3:カタログ燃費
(22)
(4)新車燃費と実車燃費の考察
(24)
Ⅳ-0
H25 JCM DS 最終報告書
1. 調査の背景
1.1 ホスト国の JCM に対する考え方
ホスト国の JCM に関する考え方(期待や課題等)は、平成 25 年 8 月 7 日環境省発表「JCM 制度に係る日・
ラオス二国間文書の署名について」によると、以下の3点に集約できる。
①双方の JCM に対する期待は、低炭素成長を実現するための投資並びに低炭素技術,製品,システム,
サービス及び社会基盤の普及促進である。
②双方は,JCMを実施していくために必要な資金,技術及び能力向上の支援の円滑化のため,緊密に
協力する。
③双方は,JCMが取引可能なクレジット制度に移行された後,JCMを通じ,途上国の適応努力の支
援への具体的な貢献を目指す。
平成 25 年 8 月 7 日環境省発表「JCM 制度に係る日・ラオス二国間文書の署名について」は、以下の通り。
「2013 年 8 月 7 日、ラオス人民民主共和国において、横田駐ラオス大使とヌーリン・シンバンデット天
然資源・環境大臣との間で、二国間クレジット制度に関する二国間文書の署名が行われた。我が国は、
ラオスとの二国間クレジット制度を通して、ラオス国内における温室効果ガス排出削減に協力すること
により、地球規模での温暖化防止に向けた努力に貢献していく。」
(資料)
日本国とラオス人民民主共和国との間の低炭素成長パートナーシップのための
二国間クレジット制度に関する二国間協力(仮訳)
1.日本側及びラオス側(以下「双方」という。)は,気候変動に関する国際連合枠組条約(以下「条
約」という。)第2条に言及される条約の究極的な目的及び持続可能な開発の達成を追求し,また
2013 年以降も協力して,引き続き気候変動に取り組むため,次のとおり低炭素成長パートナーシッ
プを推進する。
2.双方は,国際連合の下並びに東アジア低炭素成長パートナーシップを含めた,地域的及び二国間
の枠組みでの低炭素成長に向けた協力のため,様々なレベルで緊密に政策協議を行う。
3.双方は,ラオス人民民主共和国における低炭素成長を実現するための投資並びに低炭素技術,製
品,システム,サービス及び社会基盤の普及を促進するため,二国間クレジット制度(以下「JC
M」という。)を創設し,それぞれの国の関連する有効な国内法令に従ってJCMを実施する。
4.双方は,JCMを運営するため,合同委員会を設置する。
(1)合同委員会は,双方の代表者から構成される。
(2)合同委員会の委員の構成を含む合同委員会運営規則は,双方の協議を通じて定められる。
(3)合同委員会は,JCMに関する規則及びガイドライン類,排出削減又は吸収量の定量化のための
方法論,第三者機関の指定に関する要件並びに必要に応じてその他のJCMの実施及び管理に関す
る事項を策定する。
(4)合同委員会は,定期的に会合を招集し,JCMの実施状況を評価する。
5.双方は,JCMの下での緩和事業における認証された排出削減又は吸収量を,国際的に表明したそ
れぞれの温室効果ガス緩和努力の一部として使用できることを相互に認める。
6.双方は,世界的な温室効果ガスの排出削減又は吸収に向けた具体的行動を促進するために,JC
Mの堅固な方法論,透明性及び環境十全性を確保するとともに,JCMを簡素で実用的なものとす
る。
7.温室効果ガスの排出削減又は吸収量の二重計算を回避するため,いずれの側も,JCMの下で登録
Ⅳ-1
H25 JCM DS 最終報告書
された緩和事業を,他の国際的な気候緩和制度の目的のために使用しない。
8.双方は,JCMを実施していくために必要な資金,技術及び能力向上の支援の円滑化のため,緊密
に協力する。
9.JCMは取引を行わないクレジット制度としてその運用を開始する。双方は,JCMの実施状況を
踏まえつつ,取引可能なクレジット制度への移行のための協議を継続し,可能な限り早い段階で当
該協議の結論を得る。
10.双方は,JCMが取引可能なクレジット制度に移行された後,JCMを通じ,途上国の適応努力
の支援への具体的な貢献を目指す。
11.本パートナーシップは,条約の下での新たな国際的な枠組みが効力を生じるまでの期間を対象と
する。双方は,特に,気候変動に関する国際連合の交渉における進展を踏まえつつ,本パートナー
シップのあり得る延長につき検討し,本パートナーシップの期限までに結論を得る。
12.この二国間協力は,双方による書面の同意によって修正され得る。この協力の解釈から生じるい
かなる紛争も,双方間の友好的な協議及び交渉を通じて解決される。
表 1 気候変動に関するラオス政府の行動
1995 年
国連気候変動枠組条約を批准
2000 年
UNFCCC に 第 一 次 国 別 報 告 書 を 提 出
2003 年
京都議定書を批准
2006 年
科 学 技 術 環 境 庁 環 境 局 ( Science, Technology and Environment Agency) を
ク リ ー ン 開 発 メ カ ニ ズ ム ( CDM) の
指 定 国 家 機 関 ( Designated National Authority、 DNA) に 指 定
2008 年
気候変動に関する国家運営委員会
( National Steering Committee on Climate Change) を 設 置
7 分 野 に お け る 専 門 作 業 部 会 ( The Technical Working Groups) の 設 置
気 候 変 動 室 ( National Climate Change Office ) の 設 置
2009 年
国 別 適 応 行 動 計 画 ( National Adaptation Progrramme of Action 、 NAPA)
を承認
国 家 能 力 自 己 評 価 ( National Capacity Needs Self-Assessment、 NCSA)
を承認
2010 年
気 候 変 動 に 関 す る 国 家 戦 略 ( National Strategy on Climate Change 、 NSCC)
を承認
2011 年
天 然 資 源 環 境 省 環 境 局 ( Department of Environment) に
気 候 変 動 室 ( Climate Change Office) を 設 置
2012 年
2 月時点
天 然 資 源 環 境 省 ( MONRE) に 気 候 変 動 局
( Department of Climate Change and Disaster) の 設 置 を 調 整 中
出典:新メカニズム情報プラットホーム
Ⅳ-2
H25 JCM DS 最終報告書
2. 調査対象プロジェクト
2.1 プロジェクトの概要
本プロジェクトは、JICA・ラオス国公共事業交通省が実施した「ラオス国低公害型公共交通システム
導入に向けた情報収集・確認調査」(2012年10月、㈱アルメック)で提言されたEV導入のロードマップ
で位置づけられるモデルプロジェクト事業で、首都ビエンチャン及びルアンパバン市で実施することが
提案されている。
図1
図2
ラオス全土の地図
JICA ラオス EV 普及調査で提案された EV 導入のロードマップ
Ⅳ-3
H25 JCM DS 最終報告書
モデルプロジェクトは、短期・中期の2期に分けて実施する計画である。短期事業では、ICE車に対
する市場競争力がある小型車や導入しやすい政府公用車などを中心に導入し、中期事業ではやや大型の
車両や自家用車への導入を図り、2020年以降は市場メカニズムにより自律的な普及を図れるようモデル
事業にあわせて制度、啓蒙、インフラの整備を図る。
図3
モデルプロジェクトの2段階実施の対象の考え方
短期事業で目標とする導入台数は、以下の通りとした。
表2
技術・製品
EV-Jumbo
バッテリー
交換設備
EV station
電動バイク
仕様
バッテリーパック
200 個とも
100 台
8 個収納/基
6基
2 か所
バッテリーパック 200
個とも
表3
技術・製品
EV-Jumbo
Swap 設備
EV stn
公用車
タクシー
短期モデル事業での導入構想(ルアンプラバン)
導入台数(台)
年間走行距離
(km/year)
合計
2014
2015
2016
仕様
バッテリーパック
800 個とも
8 個収納/基
3 か所
i-miev や Leaf
相当を想定
NV200 相当を
想定
30 台
電動バイク
26,000
6基
2 か所
2 か所
30 台
40 台
100 台
9,000
短期モデル事業での導入構想(ビエンチャン)
導入台数(台)
年間走行距離
(km/year)
合計
2014
2015
2016
100 台
150 台
3基 5基
1か所 1か所
急速充電器
バッテリーパック
400 個とも
100 台
50 台
リファレンス
車両
ICE ジャンボ
160 台を代替
150 台
5基
1か所
400 台
26,000
13 基
3 か所
100 台
100 台
200 台
8,000
50 台
50 台
100 台
20,000
1基
1基
2基
50 台
100 台
Ⅳ-4
200 台
9,000
バイク(100〜
125cc)
リファレンス車
両
ICE ジャンボ
800 台を代替
3 か所
ガソリン乗用
車(1500cc)
ガソリン乗用
車(1500cc)
バイク(100〜
125cc)
H25 JCM DS 最終報告書
2.2 企画立案の背景
ラオスでは、2005 年以降概ね年率 7%を超える堅調な経済成長が続いている。これに伴い、旅客交通
は 2000 年比約 1.5 倍、首都ビエンチャンにおける乗用車登録台数は同 3.4 倍と急速に増加して来てお
り、首都ビエンチャン等都市部では特に朝夕の混雑時に交通渋滞が発生、市民の経済活動に支障を与え
るとともに大気汚染深刻化の原因となりつつある。ラオス経済は、2012 年も約 8%の成長が見込まれて
おり、このペースが続けば、2025 年には首都ビエンチャンの乗用車は約 4 倍に増加、平均旅行速度は
東京都と同程度の約 20km にまで悪化することが予想されている。
このような問題に対応するため、JICA は、2008 年に「ビエンチャン特別市総合都市交通計画調査」
を実施し、道路ネットワーク整備や公共交通機関改善により都市交通機能を向上させることを提案して
いる。これを受け、我が国は無償資金協力により公共バスの供与を決定する等積極的に協力をしてきて
いるところである。
他方、石油を全量輸入に頼るラオスでは、石油依存度の増大は環境や財政に加え、エネルギー安全保
障上も大きな問題となっている。また、ラオス観光は、外貨獲得額の 15~20%を占めるなど主要な産業
の一つとなっているが、多くの観光客が経由する首都や独特の静謐な雰囲気が魅力のルアンパバン等に
おける渋滞、騒音や大気汚染は「Simply Beautiful」を売りにするラオスにとって観光地の観光の魅力を
大きく毀損する原因となりつつある。公共交通機関へのモーダルシフト促進と併せて、より環境に優し
い低公害型交通システムへの転換を図る必要がある。
ラオスは、国内需要比 30 倍以上の包蔵水力を有するクリーンエネルギー資源大国である。水力によ
り発電した電力を運輸交通部門のエネルギーとして活用することで、CO2 排出を伴わない「ゼロ・エミ
ッション交通」モデルを比較的早期に具体化できる可能性がある。交通インフラが初期段階にある現段
階で、電気自動車等次世代を見据えた運輸交通システムを戦略的に整備して行くことにより、高い投資
効果も期待される。
こうしたラオスのクリーンエネルギーポテンシャルを最大限に活用し、電気自動車等低公害型運輸交
通システム導入に向けた EV 導入戦略が JICA 調査により策定されており、それに基づいたモデルプロ
ジェクトの実施段階に至っている。モデルプロジェクトの実施にあたっては、無償資金協力、有償資金
協力、JCM モデル事業化、中小企業海外進出事業化など多様なアプローチを導入していくことになる。
どの事業を適用した場合でも JCM 事業化とすることは可能と考えられることから、そのための方法論
整備とその実証を進めることが必要となっている。
2.3 ホスト国における状況
国産の再生可能エネルギーである電力を利用した電気自動車によるモータリゼーションは、GDP の成長
を加速し、環境を保全し、気候変動の緩和に寄与することにより、ラオスの社会経済開発に大きな効果
をもたらすことから、EV 普及はラオスの基本政策に位置づけられようとしている。
第 7 次国家社会経済開発 5 か年計画(第 7 次 NSEDP)
2011 年 6 月、国民議会にて承認された第 7 次 NSEDP は、具体的には、①安定的な経済成長の確保(GDP
成長率 8%、一人当たり GDP1,700 ドル)、②2015 年までの MDGs 達成、2020 年までの LDC 脱却、③文
化・社会の発展、天然資源の保全、環境保全を伴う持続的な経済成長の確保、④政治的安定、平和、及
び社会秩序の維持、国際社会における役割向上、の 4 点を目標に掲げている。
環境的に持続可能な交通戦略(EST)/公共事業省
EST は経済協力開発機構(OECD)によって提唱された新たな政策ビジョンであり、環境負荷低減の視
点で策定される長期的な交通及び環境分野の開発・実施方針である。基本戦略には、1)交通安全、2)ロ
Ⅳ-5
H25 JCM DS 最終報告書
ジスティクス、3)旅客交通、4)EST、5)EST のための人材育成が含まれている。
気候変動戦略/自然資源環境省
2010 年 5 月策定。重点分野として、1)農業と食糧安全保障、2)林業と土地利用変化、3)水・水資源、
4)エネルギーと運輸、5)産業、6)都市開発、7)公衆衛生が設けられ、気候変動への適応と緩和策を示し
ている。このうち運輸部門の緩和戦略では、「低炭素輸送:代替エネルギー自動車の利用を促進し、環
境的に持続可能な交通戦略を追求すること」とされており、EV 導入は、この戦略に沿ったものとなる。
公害対策/公共事業省
公害対策に関する主な法律は、環境保護法と水と水資源法であり、これらの法律の下、大気質基準、
自動車の排ガス基準、騒音基準がある。環境に関する法律と基準は整備されている一方で、継続的な大
気測定や定期的な騒音・水質の測定は実施されていない。EV 導入の効果評価においても、大気質の改善、
騒音の削減状況等について比較する必要があるが、まずは機器の設備、職員の能力向上が重要な課題の
一つとなる。
再生可能エネルギー戦略/エネルギー鉱業省
ラオスの再生可能エネルギー開発政策は、自給自足用の小型発電所の建設と国家電力網への接続、バ
イオ燃料の生産と市場開拓、その他のクリーンエネルギーの開発に焦点を当て、2025年の全エネルギー
消費量の30%を再生可能エネルギーで供給することを目指している。また石油燃料輸入量を削減するた
め、交通分野におけるエネルギー消費量の10%をバイオ燃料に転換することを暫定的なビジョンとして
いる。開発戦略は交通分野における代替燃料の利用も含んでおり、公共事業交通省は、自家用車や公共
交通システム、貨物輸送、航空における代替燃料利用の促進政策の導入の責務がある。
これをサポートすべき政策面では、公共事業運輸省(以下、「MPWT」と呼ぶ。)は、悪化する都市交
通の現状を踏まえ、2011 年 3 月に「The National Strategy & Action Plan on Environments Sustainable
Transport」を策定しており、騒音や排ガス等の抑制、安全確保、公共交通施設の充実等同戦略による
提言を元に、持続可能な運輸交通の実現を目指している。しかしながら、これを実現するための各種促
進政策や制度、安全確保のための規制、関連法令施行のための実施体制が未整備であることから、同戦
略実現に向けた課題は多い。モデルプロジェクトの実施の中で、平行して、緊急度の高いものから政策・
制度・組織の整備を進めていく方針であり、モデルプロジェクト実施の緊急性・重要性は高い。
一方、電気自動車導入上の最大のネックは、車両価格が内燃機関自動車に比して高価であることであ
る。ライフサイクル費用を比較すると電気自動車のほうが小さいが、初期費用が高額になることから消
費者は電気自動車を選択しない。こうした課題に対して、財務相・公共事業運輸省は目下の自動車税制
改正作業の中で、電気自動車に対する税制優遇措置を検討中である。ラオスの現行自動車税制は同一車
種内において、課税標準額が不規則に設定される結果、類似する車両であっても税負担額2倍も異なる
状況になっている。こうしたことが、消費者の購買行動を歪め、資源配分の効率を低下させる結果、経
済損失につながっている。2015 年の ASEAN 経済統合を控え関税撤廃に伴う自動車税制改正にあたっては、
WTO 加盟を果たした現在、こうした恣意的な課税標準額が自動車税制改正の最大の眼目である。
ラオス政府が検討している新税制を見ると、
・自動車税制の基礎となる取引税率は、排気量 3000cc 超で顕著に累進的である
・貨物車とバスという公共性を帯びた交通サービスを提供する自動車は低率とする。(図1)
・環境税率(車齢 6 年以降)は排気量に対して累進的でありグリーン税制の性格をもつ。(図2)
・新車を購入し 10 年間保有した場合の全税額(8%で割引後の現在価値)を新旧税制で比較すると、新
税制では旧税制と異なり排気量に対して累進性が明白であり、グリーン化されている。
Ⅳ-6
H25 JCM DS 最終報告書
これに加えて、電気自動車の減免税措置についても検討が進んでいる。
2.4 プロジェクトの普及
電気自動車に排出削減活動は、サバナケート、パクセーなどラオス国内他都市で展開するのになんら
問題はない。国内各地で類似プロジェクトを展開するためには、ビエンチャンやルアンプラバンのモデ
ル事業を通じて、EV需要を喚起し、国内での組み立てや自動車販売店での取り扱いやサービスネットワ
ークを整備される必要がある。こうした基盤が整備されたのちに、市場メカニズムに基づいて各地で自
律的にEVが普及する段階に移行するとみられる。(ただし、この移行は2020年以降なのでJCM事業化で
きるかは不明だが、日本が支援する排出削減活動としての性格を残しておくのが望ましい。)
電気自動車の利用促進による排出削減活動は、電力のCO2排出原単位の小さい国・地域で実施するの
が効率的である。下表に2009年の各国の電力排出係数を示すが、アフリカ、中央アジア、ネパール、ミ
ャンマーなどが適地といえる。
表4
各国電力の CO2 排出係数
Emission Factors from Cross-Sector Tools
1.3 (Aug 2012)
sorce:http://www.ghgprotocol.org/calculation-tools/all-tools
Country
Paraguay
Iceland
Mozambique
Demo. Rep. of Congo
Zambia
Nepal
Albania
Norway
Tajikistan
Costa Rica
Switzerland
Sweden
Brazil
Kyrgyzstan
France
Armenia
Lithuania
Ethiopia
Georgia
Latvia
Austria
New Zealand
Canada
Colombia
Ghana
Myanmar
Venezuela
Togo
Finland
Congo
Belgium
Slovak Republic
Peru
Namibia
Angola
Cameroon
Other Latin America
Uruguay
Other Asia
United Rep. of Tanzania
Croatia
Ecuador
Spain
Hungary
Panama
Belarus
Denmark
kgCO2/kwh
2009
0
0.0004
0.0005
0.0029
0.0032
0.0043
0.0112
0.0173
0.0292
0.0398
0.0399
0.0431
0.0641
0.0810
0.0899
0.1080
0.1112
0.1183
0.1286
0.1531
0.1632
0.1665
0.1672
0.1753
0.1865
0.1958
0.1986
0.2016
0.2054
0.2068
0.2179
0.2217
0.2363
0.2369
0.2374
0.2427
0.2489
0.2532
0.2681
0.2812
0.2834
0.2896
0.2988
0.3021
0.3022
0.3023
0.3027
Country
Slovenia
Russian Federation
El Salvador
Gabon
Honduras
Guatemala
Argentina
Sudan
Portugal
Chile
Ukraine
Netherlands
Vietnam
Luxembourg
Italy
Bolivia
Kenya
Republic of Moldova
Romania
Japan
Nigeria
Côte d'Ivoire
Germany
Azerbaijan
United Kingdom
Mexico
Pakistan
Sri Lanka
Uzbekistan
Bulgaria
Ireland
Egypt
Philippines
Turkey
Kazakhstan
Qatar
Other Africa
Korea
Dem. People's Rep. of Korea
Nicaragua
United States
Thailand
Czech Republic
Singapore
Mongolia
Tunisia
Jamaica
※ラオス:0.041kgCO2/kwh (本調査推定)
Ⅳ-7
kgCO2/kwh
2009
0.3160
0.3174
0.3188
0.3221
0.3443
0.3491
0.3553
0.3556
0.3682
0.3728
0.3740
0.3745
0.3841
0.3843
0.3864
0.3933
0.3949
0.4001
0.4144
0.4147
0.4157
0.4264
0.4305
0.4434
0.4495
0.4550
0.4577
0.4601
0.4615
0.4634
0.4652
0.4655
0.4782
0.4799
0.4801
0.4940
0.4945
0.4977
0.4989
0.5058
0.5082
0.5134
0.5143
0.5189
0.5354
0.5381
0.5444594
Country
Haiti
Algeria
Jordan
Bangladesh
Dominican Republic
Senegal
Zimbabwe
Islamic Republic of Iran
Yemen
United Arab Emirates
Taiwan, China
Morocco
Poland
Syrian Arab Republic
Malaysia
Bahrain
Eritrea
Serbia
Iraq
Middle East
Israel
Estonia
Netherlands Antilles
FYR of Macedonia
Lebanon
Trinidad and Tobago
Greece
Benin
Gibraltar
China (mainland)
Cyprus
Indonesia
Cuba
Brunei Darussalam
Saudi Arabia
Hong Kong, China
Bosnia and Herzegovina
Turkmenistan
Oman
Malta
Australia
Kuwait
Libyan Arab Jamahiriya
South Africa
India
Cambodia
Botswana
kgCO2/kwh
2009
0.5471
0.5760
0.5805
0.5853
0.5905
0.6145
0.6190
0.6300
0.6305
0.6312
0.6348
0.6384
0.6402
0.6409
0.6486
0.6649
0.6716
0.6803
0.6841
0.6903
0.6949
0.7039
0.7069
0.7099
0.7167
0.7188
0.7224
0.7250
0.7395
0.7426
0.7443
0.7457
0.7515
0.7552
0.7572
0.7630
0.7760
0.7895
0.8425
0.8504
0.8529
0.8696
0.8718
0.9259
0.9514
1.1509
2.0633
H25 JCM DS 最終報告書
3. 調査の方法
3.1 調査実施体制
調査実施に当たっての役割分担等(調査実施団体の役割分担も含む)は、以下のとおりである。
図4
表5
調査実施体制
調査実施にあたっての役割分担
団体の名称
役割
主な調査成果
株式会社
・調査統括
❏プロジェクト設計書(PDD)の作成
アルメック VPI
・業務調整
❏方法論の実証
・ホスト国との折衝
❏方法論が適用される同種プロジェクトの実
・調査結果の取りまとめ
現可能性の検証
・電動バイクを含む電気自動車プロジェ
クトに関する MRV 方法論の開発
❏方法論の開発
・適格性要件の設定
クライメート
コンサルティング
合同会社
・排出削減量の定量化(リファレンス/プロ
ジェクト排出量算定)
・方法論スプレッドシート作成
ルアンパバン(LPB)
公共事業交通部
・本調査に関係する運輸部門等関係者
への協力指示
(DPWT)
・日本国側との調整
株式会社
・導入車両の手配、メンテナンス
❏計測機器の校正
豊田通商エレクトロニ
・通信機能付 GPS の設置及び測定
❏モニタリングレポートに関するデータ取得
クス(タイランド)
・消費電力の測定
・既存車両の燃費測定
(3 か月間の走行距離・給油量記録)
ITS Consultants
・現地業務調整
❏モニタリングデータの蓄積
・モニタリング結果の収集
❏ホスト国の運輸部門に関する基礎データの
・各種基礎的データの収集
整理
Ⅳ-8
❏モニタリングの実践
❏ホスト国の持続可能な開発の検証
H25 JCM DS 最終報告書
3.2 調査課題
本調査を実施する前に課題と認識していた事項、及び調査の過程で判明した課題は以下の通り。
①民間事業者による 100 台規模の EV 導入を実現するための日本支援による事業スキームの構築
ラオスは発電量の 97%は水力発電であり、電気利用はゼロエミッションに近い。また電気料金は 10 円
/kwh 程度と安い。ラオスの中でも LPB は都市規模が小さい、世界遺産都市として静謐な環境保全の必要
性、行政・観光・運送事業者の EV への理解という点で、EV 導入に最も適した都市である。そうした LPB
で民間事業者による EV 事業が開始された。彼らは 12 台の旅客運送用の EV の導入計画をもち、また1
ha におよぶ充電ステーション、車庫・整備工場用地も保有している。
しかし、LPB における Jumbo160 台、Tuktuk400 台に対して僅か 2%に過ぎず、環境改善効果を顕在し、
自律的普及の道筋をつけるには不十分である。関係者の間では 100 台規模での導入を当面の目標とする
ことが共有されつつある。100 台規模での普及のためには車両費だけで1億円程度の投資となり、その
他充電ステーション、バッテリーメンテナンス設備、車庫の整備なども含め、LPB で立ち上がった民間
事業者には荷が大きすぎる。このため民間事業者はもちろん、行政からも日本の支援で 100 台規模の導
入を実現したいという強い要望があることから、何とか実現可能な事業スキームを打立てる必要がある。
②JCM 事業の現地側受け皿組織の設立
今回、導入した EV4台のうち 3 台は e-tuktuk であり、従来の tuktuk ドライバーが乗車し、従来と同
じように、基本的に客待ちし、客の行先までの運行を繰り返している。しかし、e-minibus1台(14 席)
は、循環型やシャトル型の路線サービスを目指しており運行認可は下りていない。これまで LPB にはな
かった路線サービスは自家用車や tuktuk 利用からの転換が見込まれ、世界遺産地区内の交通混雑、路
上駐車、騒音などの面で大きな効果が期待されるが、一方、既存事業者の客を奪うという側面ももつ。
したがって、公営交通企業として tuktuk ドライバーを雇用し、既存事業者への影響を見極めながら運
行を拡大していく必要がある。また、公営企業の場合には、公益性の視点から海外からの支援の対象に
もなりやすい。JCM 事業主体となりうる公営交通企業の早急な設立が必要である。
③持続可能なEV公共交通モデルの確立
初期費用の高い電気自動車を導入するには、走行費用が安い特性を生かして年間走行距離の長い公共交
通が導入の口火を切るのが合理的である。また、現時点でICEとライフサイクル費用が競合しうるのは
小型EVであることを踏まえて、環境性能や安全・快適な輸送サービスの面で問題の多いジャンボ(オー
トバイ改造し、後輪を外してリヤカーを取り付けた疑似三輪車)を代替するのが適切と考えられる。し
かし、ジャンボは車両費用が安く、また1日当たりの実車キロが短いなどの特性があるので、こうした
特性を踏まえて、さらに持続的に発展可能なEV公共交通モデルを確立し、技術進展とあいまってより大
型公共交通の電動化を目指す必要がある。公共交通へのEV導入により普及促進制度・車両の安全確保の
ための規制策なども検討・実施し、自家用EV普及の道筋をつける。
Ⅳ-9
H25 JCM DS 最終報告書
3.3 調査内容
上記「調査課題」を解決するために行った調査内容は、以下のとおりである。
表6
調査課題と、その解決のための調査内容
課題
目標
調査内容
民間事業者による100
JCM事業として100台
EV4台を導入、運行、保管、充電、メンテナンスするこ
台規模のEV導入を実
規模のEV導入を実現
とで、必要なインフラ、関連許認可、設備・機器等を
現するための日本支
する。
小規模に導入し、経験を積む。
MRV方法論の開発・実
MRV方法論を実証運行に適用し、実用性を確認し、必
証
要な修正を行う。
モニタリング体制の
モニタリングを実施するために現地で利用可能な人的
構築
資源を発掘し、モニタリング教習を行い、実際のモニ
援による事業スキー
ムの構築
タリング業務を実施可能な人的ネットワークを構築す
る。
JCM事業の現地側受け
現地側事業主体の特
電気自動車ビジネスに興味をみせる現地の実業家グル
皿組織の設立
定
ープの中から、実証事業へ参加(投資)するグループ
を特定する。また、実証運行の経験を通じて、EV公共
交通体系に果たすべき役割を特定・認識の共有を図る。
(官・民の役割分担や既存事業者との協調)
導入を図る日本製EV
日本製技術の導入を果たすために、JCM事業として導
の特定
入を目指すべき車種や台数を決定し、その要件に見合
う日本製EVを特定し、メーカーからラオスへの導入可
能性を確認する。
国際コンソーシアム
日本製EVメーカー、車両や部品の運搬納入に関わる代
の組織化
理店、現地側EV運行主体、EV充電・管理事業者など、
JCM事業関係者を特定し、役割分担、連携を取り決め
る。
持続可能なEV公共交
日本の支援と現地側
ラオスで安全・安心なEV普及をはたすためには、単に
通モデルの確立
の取り組みによるPPP
電気自動車を輸入するだけではだめで、必要な基準・
(公民連携)によるEV
規制の整備、税制上の優遇、充電インフラ整備、メン
普及活動の枠組みを
テナンス技術・人材の育成など多様な取り組みを同時
つくる
に進めなければならない。このためには、官民の連携、
ODA支援などを活用していく必要がある。基本的な枠
組みを本調査で整理する。
ODAとの連携
ラオスEV普及事業はJICAが2012年より取り組みを開始
している。日本として最も効率的な方法で推進する必
要があり、JICAの意向を把握しつつ、JCMとの連携方
策を検討する。
Ⅳ-10
H25 JCM DS 最終報告書
4.
4.1
JCM 方法論に関する調査結果
JCM 方法論の概要
JCM方法論「電気自動車の利用促進」の概要を下表に示す。
表7
JCM 方法論「電気自動車の利用促進」の概要
項目
要約
GHG 排 出 削 減 手 本方法論は電気自動車の新車を導入し、旅客・貨物運送における化石燃料自動車を
段
代替するプロジェクト活動を対象とする。
リファレンス排 F.1. リファレンス排出の設定
出量の計算
リファレンスシナリオは同様の運送サービス用に供用されたであろう比較可能な自
動車の運行である。リファレンス車両およびプロジェクト車両の同等性は、乗車定
員等の指標により確認できる。
F.2. リファレンス排出量の計算
リファレンス排出量は、下式の通り計算する。:
∑(
)
Where:
REy
Total reference emissions in year y (tCO2)
SFC i
Specific fuel consumption of reference vehicle category i (l/km)
NCV RF,I
Net calorific value of fossil fuel consumed by reference vehicle (MJ/l)
EF RF,I
Emission factor of fossil fuel consumed by reference vehicle (tCO2/MJ)
DD i, y
Annual average distance travelled by project vehicle in the year y (km)
Ni, y
Number of operational project vehicles in category i in year y
プロジェクト排 プロジェクト排出量はプロジェクト運行に係る電力及び化石燃料消費を包含し、次
出量の計算
式の通り計算する。:
∑
⁄(
)
Where:
PE y
Total project emissions in year y (tCO2)
SECPJ,i,y
Specific electricity consumption by project vehicle category i per km
in year y in urban conditions (kWh/km)
EFelect,y
TDL y
DDi,y
CO2 emission factor of electricity consumed by project vehicle
category i in year y (tCO2/kWh)
Average technical transmission and distribution losses for providing
electricity in the year
Annual average distance travelled by the project vehicle category i in
the year y (km)
Ni, y
Number of operational project vehicles in category i in year y
モニタリングす DDi,y:車種iのプロジェクト車両のy年目の平均走行距離 (km/年)
るパラメータ
SECPJ,I,y,:y年目の車種iのプロジェクト車両の電費 (kWh/km)
Ni,y:y年目の車種iのプロジェクト車両運行台数
Ⅳ-11
H25 JCM DS 最終報告書
4.2
用語の定義
JCM方法論の中で設定する用語とその定義は、以下のとおりである。について、それを示すことにより
当該方法論適用プロジェクトにどのような効果をもたらすのかを、記載してください。
表8
JCM 方法論の中で設定する用語とその定義
用語
定義
電気自動車
外部からのエネルギー供給を受けず、または電力発生器を車載しないで、車載電池
(EV)
からのみ電力を供給する自動車をいう。送電網を経由して電力を受け取り、二次電
池(蓄電池)に蓄えて走行時に電動機に電力を供給する二次電池車が一般的である。
二次電池でも車載状態で充電するのではなく、充電済みの電池と交換する自動車も
含む。
内燃機関自動車
内燃機関(ICE)自動車とは、内燃機関を利用して人力交通を代替できるモーターサ
(ICE 自動車)
イクル、自動車、貨物車、バスを指す。
Motorcycle
モーターサイクルとは二輪・三輪自動車またはエンジンで駆動する二輪・三輪を改
造したモーターサイクルを指す。
一般自動車
一般自動車はエンジンで駆動する旅客運送用の自動車で、定員 15 人以下(ドライバ
ーを含む)の自家用車・事業用車両、およびミニバン、ピックアップ、セダン、SUV
を含む。
バス
バスは旅客運送用の定員 16 人以上(ドライバーを含む)の車両をさす。
貨物自動車
貨物自動車は貨物運送用車両で、砂利、土砂、砂、木材、セメント、金属、水、燃
料を運送したり冷蔵トラック、廃棄物運搬車、その他の貨物を運送するトラックを
指す。
4.3
適格性要件
適格性要件は、当該プロジェクトが JCM プロジェクトとして登録されるための要求事項と、方法論を
プロジェクトに適用するための要求事項によることとし、プロジェクト登録時の妥当性確認の時点で客
観的に評価可能な適格性要件の内容とその設定根拠を以下に示す。
① 本方法論は電気自動車を導入し、化石燃料自動車を代替するプロジェクト活動に適用できる。
設定理由:EV への代替とは、1)内燃機関(以下、ICE と呼ぶ。)から EV の更新、2)EV の新規導入、
3)EV の車両更新とする。車両の更新であっても新規導入にあっても、ICE 車と EV の選択肢が存在し、
EV を選択することが排出を削減することになる。JCM では CDM のような追加性要件(技術的バリア、
財務的バリア、一般的慣行バリア)は必要とされない。また、バイオ燃料利用の ICE 自動車からの代
替も考慮しない。
② 本方法論は2輪、3輪及び4輪以上の EV に適用できる。電動アシスト自転車(ペダルをこがな
ければ走行できない)
、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車には適用できない。
プロジェクト車両とリファレンス車両は同等であることを以下の方法で証明し、プロジェクト設
計書記載する。
a) 同一車種である。(例えば、モーターサイクル、バス、タクシー、貨物車、三輪車)
b) 乗車定員、または可能性記載量が同等である。
Ⅳ-12
H25 JCM DS 最終報告書
設定理由:電動アシスト自転車は自転車からの代替と考えられるので、排出削減活動とは考えること
ができないので不適格とする。電動アシスト自転車と電動バイクの違いは、走行時にペダルをこぐ必
要性があるかどうかで判断する。ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)
は、簡素化のため適用対象に含めない。
③対象に含まれる電気自動車は、a) ラオスの関連基準に適合し、b) 車両登録する車両で、c)適正に
廃車手続きを実施することが見込める車両とする。本要件を満たす車両の特定方法は、プロジェ
クト設計書に記述する。
設定理由:本方法論を適用可能な EV は、当該 JCM プロジェクトが環境十全的であり、ラオスの持続
可能な開発に寄与するために、走行安全性確保、交通事故時の保障および車両廃棄時の環境負荷の回
避を確実な車両を対象とし、プロジェクト電気自動車台帳に登録する。
a) ラオスの関連基準に適合
・輸入車に対しては、輸入手続きの中でラオス国公共事業運輸省運輸局が輸出国における型式認証
を確認するなどして輸入許可を得たことをもってラオスの関連基準に適合するものとみなす
・ラオス国内組立車に対しては、ラオス国公共事業運輸省運輸局が原型車の生産国における型式認
証を確認あるいはそれに準じる許認可をもってラオスの関連基準に適合するものとみなす
b) 車両登録する車両
・登録番号(ナンバープレート)と強制保険の加入証を確認する
c)適正な廃車手続き
・適正な廃バッテリー処理が必要な鉛酸バッテリーの場合、購入時にバッテリーのリサイクル料払
込み領収書を確認する。
・Li-ion バッテリーの場合、定置型バッテリーとして再利用することを前提に、自動車販売者が回
収することを確認する必要がある。
④ラオスの系統電力だけを使用する EV であること。
設定理由:ラオス南部地域は全国基幹電力網に連結していない地域があり、また山間僻地では一部に
マイクログリッドが存在する。EV 使用電力の排出係数を設定可能なラオスの系統電力だけを使用する
EV だけを対象車両とする。具体的には、全国グリッドに接続しない地域を使用の本拠とする電気自動
車は対象車両に含めない。
当初は、以下の条件を適格性要件として追加するものとしていたが、
・本方法論の対象は電気自動車で、プラグインハイブリッド車は含まれない。したがって、航続距離は
最高でも 100km 前後なので国外まで走行する可能性はない。方法論を簡素化するために適格性要件から
外す。
道路交通に関する条約(1949 年)に基づいてラオス国外で走行する可能性のある車両(登録済み車
両)は、対象に含まない。
設定理由:COP17(2011 年、ダーバン)で途上国も 2014 年 12 月以降2年ごとに排出削減量および緩
和行動等について隔年報告書を提出することが決まった。排出削減活動は国境を空間的バウンダリー
とする各国別取り組みなので、国外での排出削減を含めないために、ラオス国外で走行可能な登録済
み車両は対象車両に含めない。
Ⅳ-13
H25 JCM DS 最終報告書
4.4
対象 GHG 及びその排出源
本方法論で考慮すべきGHGタイプ及び排出源を示す。
リファレンスシナリオにおける石油掘削輸送に係る排出は、リファレンス排出量の保守性の観点から考
慮しない。給油所のポンプ排出量に相当するCO2排出量をリファレンス排出量とする。
プロジェクト排出は発電時のCO2排出である。ラオスでは水力発電が主体であるが、独立発電事業者に
よる石炭火力発電事業が進んでおり、ラオス側との協議によっては一部の電力を全国グリッドに送電す
る可能性がある。また、渇水期などタイ、ベトナムなどから電力の供給を受けていることから、その排
出分を考慮する必要がある。消費電力量は電力会社と需要側の接点に設置する電力計の読みを基準とす
る。
表9
対象 GHG およびその排出源
リファレンス排出源
GHG 種類
電気自動車等に置き換えられる ICE(内燃機関)自動車の排出
CO2
プロジェクト排出源
GHG 種類
電気自動車等に充電するための発電時の排出
Reference Scenario
CO2
Project Scenario
CO2 Emission
Leakage is negligible
Electricity Generation
Power station
Oil drilling in well
Transmission and distribution
Fuel/ Transport
Electric outlet
Pump in Gas Station
Charging (monitoring)
Fueling (Monitoring)
ICE vehicles
Electric vehicles
Internal Conbustion by Engine
CO2 emission
Zero Emission
図5
リファレンス排出とプロジェクト排出
Ⅳ-14
H25 JCM DS 最終報告書
4.5
算定のための情報・データ
(1) 事前に設定するデータとパラメータ
事前に固定する各データとパラメータの出典は、下表の通り。
表 10 事前に設定するデータとパラメータ
パラメータ
NCVRF,i
データの記述
出典
車種 i が消費する燃料の正
ラオスの固有値または IPCC のデフォルト値
味発熱量 (MJ/l)
ガソリンの正味発熱量(NCVRF,i)はラオスの値が得られない
ため、タイ・エネルギー省による公表値を用いる。
(31.48MJ/liter)
EFRF,i
車種iが消費する燃料の
ラオスの固有値または IPCC のデフォルト値
CO2排出係数 (tCO2/MJ)
ガソリンの CO2 排出係数(EFRF,i)は IPCC のデフォルト値
(69,300kgCO2/TJ)を用いる。
SFCi
リファレンス車種iの燃
車種iの燃料消費量 ( SFCi ) は、以下の3つのオプション
料消費量(l/km)
から順に適用可能性を検討して決定する:
Option (1):
実測に基づく保守的デフォルト値
(本調査における燃費実測成果)
燃費(km/liter)
自動二輪車
57.6
トゥクトゥク
14.2
ジャンボ
35.5
乗用車
12.2
Option (2):
既存データに基づく保守的デフォルト値
(e 燃費データ等を用いた解析結果)
燃費(km/liter)
自動二輪車
44.5
トゥクトゥク
18.2
ジャンボ
35.5
乗用車
13.4
Option (3):
カタログ燃費
プロジェクト地域において一般的に普及している同等車両
の製造者の仕様から得られた燃料消費を使って推定
燃費(km/liter)
自動二輪車
53.6
トゥクトゥク
23.6
ジャンボ
35.5
乗用車
17.3
Ⅳ-15
H25 JCM DS 最終報告書
(2) 事後に設定するデータとパラメータ
プロジェクト開始後に設定する各データとパラメータは、下表の手順にしたがって設定する。
表 11 事後に設定するデータとパラメータ
パラメー
データの記述
出典 / モニタリング方法/項目
タ
DDi,y
車種iのプロジェクト車
車種別に標本を抽出し、月間走行距離を毎月計測し、平均値
両のy年目の平均走行距
を車種別平均月間走行距離とし、毎年1月に前年の車種別年
離 (km/年)
間走行距離を設定する。標本車両は90%信頼区間で10%以内の
誤差率となるように標本数を定め、ランダムに抽出する。
SECPJ,i,y,
y年目の車種iのプロジ
車種別に標本を抽出し、電費を毎月計測し、平均値を車種別
ェクト車両の電費(1kmあ
月平均電費とし、毎年1月に前年の車種別平均年間電費を毎
たり)
月データの走行距離の重み付き平均値として設定する。
(kWh/km)
燃費は月別の運行距離と給油量/電力消費量を運行月報を参
照し設定する。※ラオスではグリッド電力CO2排出係数が極め
て低いため、プロジェクト排出量はリファレンス排出量の3%
程度以下である。このため、電費のモニタリングは行わず、
リファレンス排出量の5%をプロジェクト排出量とすることで
保守性を確保しつつ簡素化する。
Ni,y
y年目のプロジェクト車
年間販売記録またはプロジェクト車両の登録に関する公式デ
両運行台数
ータから設定する。
EFelect,
プロジェクト車両が使用
CDM Methodological tool “Tool to calculate the emission
y
する電力のCO2排出係数
factor for an electricity system, Version 03.0.0”に基
(tCO2/kWh)
づいて算定する。
※ラオスではグリッド電力 CO2 排出係数は極めて低く、プロジ
ェクト排出量はリファレンス排出量の 3%程度以下である。た
だし、ラオスでは発電電力量や輸入電力量の変動が大きいた
め、グリッド排出係数をモニタリングし、プロジェクト排出
量が十分に小さいか確認する。EF は、ラオスにおける発電電
力量と輸入電力量(EDL 等の統計値)、および、各発電ソース
の CO2 排出係数を用いて算定する。
TDLy
電力供給における平均送
EDLの公式発表値。入手できない場合、CDM Methodological
配電損失
tool “Tool to calculate baseline, project and/or leakage
emissions from electricity consumption” (Version 01) に
おけるデフォルト値20%を用いる。
Ⅳ-16
H25 JCM DS 最終報告書
4.6
デフォルト値の設定
本調査で設定したデフォルト値は、下表のとおりである。
表 12 GHG 排出量算定に必要となる情報・データのデフォルト値と設定方法
情報・データ
デフォルト値とその設定方法
NCVRF,i:車種 i が消費する燃料の正味発熱量 (MJ/l)
当該国の固有値(政府ほか公的機関の発表
EFRF,i:車種 i が消費する燃料の CO2 排出係数 (tCO2/MJ) 値)または IPCC デフォルト値
4.7
事前設定値の設定方法
事前設定値の設定方法は、4.8 リファレンス排出量の設定根拠に併せて記述する。
4.8
リファレンス排出量の設定根拠
(リファレンス車両の燃費の設定)
プロジェクトの電気自動車によって代替されるリファレンス車両の燃費は、以下の3種類のオプショ
ンから順に適用可能性および妥当性を検討して決定する。
基本的には、ラオスにおいて現地での実測値をベースに設定したオプション1を用いる。ただし、特
に乗用車について、オプション2あるいはオプション3が適切と考えられる場合には、これら用いること
とする。
表 13 リファレンス車両の燃費の設定オプション
Option 1
本調査におけるラオスでの実測に基づく車種別
現地での実測に基づく保守的デフォルト値
実走行燃費の保守値
Option 2
日本の自動車の排気量と実走行燃費の関係から
既存データに基づく保守的デフォルト値
得られた保守値(回帰式)
Option 3
各車種の代表的な車両のカタログ燃費
カタログ燃費
上記の各オプションについて、本調査において以下のように設定した。
(1)Option 1:現地での実測に基づく保守的デフォルト値
本調査では、代替されると想定されるリファレンス車両の燃費の実測をルアンパバンにおいて行った。
対象車両は、自動二輪車、トゥクトゥク、ジャンボである。測定の概要を表に示す。
対象車両
表 14 燃費測定調査の概要
自動二輪車8台(100cc:6台、125cc:2台)
トゥクトゥク6台(3輪650cc:3台、4輪800cc:3台)
ジャンボ2台(150cc:2台)
測定期間
2013年9月1日〜2013年12月31日
対象都市
ルアンパバン
測定方法
満タン法(給油量および走行距離(オドメーター読み値。トゥクトゥクおよびジ
ャンボのうちオドメーターが無いまたは読めないものはGPSデータ)により算定)
また、OECCが同時期にヴィエンチャンで行った燃費調査(環境省NAMA事業)の結果をあわせて用いた。
Ⅳ-17
H25 JCM DS 最終報告書
対象車両
表 15 環境省 NAMA 事業における燃費測定調査の概要
自動二輪車10台(100cc:4台、125cc:6台)
トゥクトゥク5台
乗用車8台(ガソリン(1800cc、2000cc:各1台)、ディーゼル(1400cc:1台、
2500cc:3台、3000cc:1台)、その他1台)
測定期間
2013年9月17日〜2014年2月28日
対象都市
ヴィエンチャン
測定方法
満タン法(給油量および走行距離(オドメーター読み値。トゥクトゥクはGPSデ
ータ)により算定)
本調査および環境省NAMA事業における燃費測定調査の結果を以下に示す。
なお、本調査と環境省NAMA事業における調査では対象地が異なるものの、ラオス国内の主要な都市で
の電気自動車導入プロジェクトの展開を考え、ここでは両調査の結果を合算した燃費を設定した。この
結果を
表に示す。排出削減量の算定においては、保守性を勘案し、90%信頼区間の上限値をデフォルト値と
して用いる。
表 16 燃費測定調査の結果(本調査)
台数(台)
平均値
標準偏差
自動二輪車
8
56.5
トゥクトゥク
6
ジャンボ
1
(単位:km/liter)
90%信頼区間
下限値
上限値
8.8
51.4
61.6
12.7
2.3
11.2
14.2
35.5
-
-
-
表 17 燃費測定調査の結果(環境省 NAMA 事業)
台数(台)
平均値
標準偏差
自動二輪車
9
51.0
トゥクトゥク
-
乗用車
8
(単位:km/liter)
90%信頼区間
下限値
上限値
11.0
45.0
57.0
-
-
-
-
10.7
2.5
9.2
12.2
表 18 燃費測定調査の結果(本調査+環境省 NAMA 事業)
台数(台)
平均値
標準偏差
自動二輪車
17
53.6
トゥクトゥク
6
ジャンボ
乗用車
(単位:km/liter)
90%信頼区間
下限値
上限値
10.1
49.6
57.6
12.7
2.3
11.2
14.2
1
35.5
-
-
(35.5)
8
10.7
2.5
9.2
12.2
※調査台数の妥当性について
Ⅳ-18
H25 JCM DS 最終報告書
母平均値の推定等におけるサンプル数は下式に基づき決定できる(信頼度90%、相対精度10%の条件下)。
1.6452 ´V 1.6452 æ SD ö
n=
=
´ç
÷
0.12
0.12 è mean ø
2
出典: CDM EB 67 Annex 6 (Best practice examples focusing on sample size and reliability
calculations)
ここで、[標準偏差(SD)/平均値(mean)]は、一般に過去の類似調査事例等をもとに設定するが、
ラオスではそのような例が無いため、日本での事例を参考に設定した(自動二輪車0.20(「みんカラ1」
の代表的な17車種の実測データを解析): 乗用車:0.27(「e燃費2」の462台(1301cc〜3000cc)の実
測データを解析))。この結果から、自動二輪車および乗用車について、それぞれ11台、20台のサンプ
ルが必要と算定された。
なお、今回調査した結果から[標準偏差(SD)/平均値(mean)]を算定し、必要サンプル数を推定
した結果、自動二輪車および乗用車について、それぞれ11台、20台のサンプルが必要と算定された。
以上により、本調査および環境省NAMA事業を合算することで、自動二輪車の調査台数(合計17台)は
概ね妥当と考える。
(2) Option 2:既存データに基づく保守的デフォルト値
日本の自動車の排気量と実走行燃費の関係を解析し、保守的デフォルト値を設定した。なお、車両の
新しさや自動車の保守管理、道路状況等から日本の自動車の燃費はラオスと比較して一般に燃費が良い
と考えられるため、日本の実走行燃費データを用いることは保守的と考える。
解析方法は以下のとおりである。
a) 乗用車
用いたデータ:日本の代表的な燃費情報サイトの「e燃費」データ2
解析方法
:排気量と排気量カテゴリー別代表実走行燃費の回帰式を算定(各カテゴリーの代表燃
費は保守性を勘案し、平均ではなく90%信頼区間の上限値とした)
※排気量カテゴリー:9カテゴリー(660cc、661cc-1300cc、1301cc-1600cc、
1601cc-1800cc、1801cc-2000cc、2001cc-2499cc、2500cc、2501cc-3000cc、3001cc-)
※代表実走行燃費:各排気量カテゴリーについて、燃費の上位100位までの車種のデー
タを集計し、代表実走行燃費とした(車種数が100に及ばないカテゴリーは全車種を対
象)。
解析結果を次図に示す。
1
2
http://minkara.carview.co.jp/catalog/?vti=2
http://e-nenpi.com
Ⅳ-19
H25 JCM DS 最終報告書
図 6 実走行燃費と排気量の関係(乗用車)
(縦棒は片側 1σ)
データの出典:e燃費(http://e-nenpi.com)
表 19 実走行燃費と排気量の関係(乗用車)
排気量カテゴリー
燃費
データ数
上限
中央値
平均
標準偏差
下限
90%上限値
-
-
660
100
18.1
1.6
18.4
661
1300
980.5
100
14.7
2.8
15.2
1301
1600
1450.5
100
14.6
2.0
14.9
1601
1800
1700.5
55
12.1
2.7
12.7
1801
2000
1900.5
100
11.3
1.5
11.5
2001
2499
2250
92
9.8
2.1
10.2
2500
-
2500
70
9.1
1.8
9.5
2501
3000
2750.5
45
8.0
1.2
8.3
3001
-
3500
52
7.6
1.5
7.9
上記の結果において、90%信頼区間の上限値を採用し、以下の回帰曲線をOption 2におけるデフォル
トとする。
ここに、
FE:燃費(km/liter)
ED:排気量(cc)
次表に代表的な排気量のデフォルト値を示した。
なお、プロジェクトで導入するEVに対応するリファレンス車両の燃費を設定するためには、リファレ
ンス車両の排気量を設定する必要がある。リファレンス車両は、プロジェクト車両と輸送力(乗車定員)
や大きさ(車両総重量)といった点で概ね同等である必要がある。このため、プロジェクト車両の乗車
定員や車両総重量等から、当該国で走行する同等のリファレンス車両を特定し、その排気量を保守的に
設定する。
Ⅳ-20
H25 JCM DS 最終報告書
表 20 既存データに基づく保守的デフォルト値(乗用車)
排気量(cc)
燃費(km/liter)
660
18.2
1400
13.9
1800
12.1
2000
11.3
2500
9.6
b)自動二輪車
用いたデータ:日本の代表的な燃費情報サイトの「みんカラ」データ1
解析方法
:ラオスで多く導入されている自動二輪車(排気量:100cc、110cc、125cc)を対象に、
日本のそれらの車種の実走行燃費データ(表)をもとにデフォルト値を設定した。な
お、デフォルト値は保守性を勘案し、平均ではなく90%信頼区間の上限値とした。
メーカー
ホンダ
ヤマハ
スズキ
表 21 保守的デフォルト値設定に用いたデータ(自動二輪車)
車種
排気量
平均実走行燃費※1
カタログ燃費※2
Wave125i Helm in
125
57.15
-
Wave125i
125
48.29
-
スーパーカブ110 PRO
110
55.27
66.0
スーパーカブ110
110
54.92
63.5
リード125
125
43.88
51.0
リード・EX
110
39.22
50.0
ディオ110
110
42.58
52.0
リード110
110
37.51
50.0
PCX
125
43.73
53.2
スペイシー100
100
34.64
45.0
アクシス トリート
125
33.48
46.0
シグナス125
125
33.32
シグナスX
125
33.00
40.0
シグナスX FI
125
34.11
40.0
シグナスX SR
125
34.18
40.0
アドレスV125
125
38.92
52.0
アドレスV125G
125
36.68
52.0
※1:「みんカラ」に登録されたデータの平均値
※2:定地走行燃費(60km/h平地定速走行時の燃費)。各社のホームページ等より設定。
上記データの解析結果を下表に示す。このうち「90%信頼区間上限値」をデフォルト値とする。
表 22 既存データに基づく保守的デフォルト値(自動二輪車)
燃費(km/liter)
平均
41.2
標準偏差
8.2
90%信頼区間上限値
44.5
Ⅳ-21
H25 JCM DS 最終報告書
(3) Option 3:カタログ燃費
日本の自動車の排気量とカタログ燃費の関係を解析し、保守的デフォルト値を設定した。実走行燃費
はカタログ燃費よりも一般に低く、日本では平均で約3割低いと報告されており(10・15モード比。JC08
モード比の場合は約2割)3、リファレンス車両の燃費についてカタログ燃費を用いることは極めて保守
的である。
解析方法は以下のとおりである。
a) 乗用車
用いたデータ:日本の代表的な燃費情報サイトの「e燃費」データ
解析方法
:排気量と排気量カテゴリー別代表カタログ燃費の回帰式を算定
※排気量カテゴリー:9カテゴリー(660cc、661cc-1300cc、1301cc-1600cc、
1601cc-1800cc、1801cc-2000cc、2001cc-2499cc、2500cc、2501cc-3000cc、3001cc-)
※代表カタログ燃費:各排気量カテゴリーについて、燃費の上位100位までの車種のデ
ータを集計し、代表燃費とした(車種数が100に及ばないカテゴリーは全車種を対象)。
※走行モードとして10.15モードおよびJC08モードがあるが、同車種で比較すると一般
に10.15モードの方が燃費が良く保守的であるため、これを使った。
解析結果を下図に示す。
図 7 カタログ燃費と排気量の関係(乗用車)
(参考までに実走行燃費も示す)
(データの出典:e燃費(http://e-nenpi.com))
10・15 モード燃費の向上による実燃費の推移に関する統計解析、工藤祐揮ら、Journal of the Japan Institute
of Energy, 87, 930-937, 2008」「乗用車の燃費、一般社団法人 日本自動車工業会」
3
「乗用車の
Ⅳ-22
H25 JCM DS 最終報告書
この結果において、以下の回帰曲線をOption 3におけるデフォルトとする。なお、
表に代表的な排気量のデフォルト値を示した。
ここに、 FE:燃費(km/liter)
ED:排気量(cc)
表 23 カタログ燃費に基づく保守的デフォルト値(乗用車)
排気量(cc)
燃費(km/liter)
660
23.6
1400
17.9
1800
15.4
2000
14.4
2500
12.1
b)自動二輪車
用いたデータ:日本の代表的な自動二輪車メーカーの資料(ホンダ、ヤマハ、スズキ)
解析方法
:ラオスで多く導入されている自動二輪車(排気量:100cc、110cc、125cc)を対象に、
日本のそれらの車種のカタログ燃費データ(表)をもとにデフォルト値を設定した。
なお、デフォルト値は保守性を勘案し、平均ではなく90%信頼区間の上限値とした。
解析結果を下表に示す。このうち「90%信頼区間上限値」をデフォルト値とする。
表 24 カタログ燃費に基づく保守的デフォルト値(自動二輪車)
燃費(km/liter)
平均
50.1
標準偏差
7.9
90%信頼区間上限値
53.6
Ⅳ-23
H25 JCM DS 最終報告書
(4)新車燃費および実車燃費に関する考察
本方法論(本対象プロジェクト)においては、リファレンス車両の燃費は、基本的には実際に走行し
ている車両の平均的な燃費を設定する。一方で、場合によっては、新車の燃費をリファレンス車両の燃
費として設定することも一つの方法である。
図8は日本における1990年から2010年までのデータである。この図から、販売モード燃費(新車燃費)
は保有モード燃費や実走行燃費に比べて極めて良い。なお、保有モード燃費は過去20年で12.8%向上(年
率0.6%)している。
本調査で対象とする事業では、リファレンス車両は新車ではなく、既存車両のリプレースの場合が多
いと想定される。このため、基本的には前述のOption1からOption3のいずれかの値を用いる。
一方で、リファレンス車両が新車と特定される事業では、Option1(新車の実走行燃費の実測)また
はOption3(対象とする新車あるいは同等車のカタログ燃費)のいずれかによりリファレンス車両の燃
費を設定することが妥当である。ただし、新車の実走行燃費の測定は、サンプル数の確保などの点で容
易ではないと考えられる。このため、現実的には対象とする新車のカタログ燃費を使わざるを得ないと
考えられる。その場合には、想定される新車を複数選択して平均するなどの工夫が必要である。
図 8 日本の自動車の平均燃費の推移(出典:日本自動車工業会)
Ⅳ-24
H25 JCM DS 最終報告書
4.9
リファレンス排出量の算定方法
リファレンス排出量の算定式及び式中パラメータ内容およびモニタリング手法は、以下の通り。
(1)算定式
リファレンス排出量は、下式により算定する。
∑(
Where
)
REy
Total reference emissions in year y (tCO2/year)
SFCi
Specific fuel consumption of reference vehicle category i (l/km)
NCVRF,i
Net calorific value of fossil fuel consumed by reference vehicle category i (MJ/l)
EFRF,i
Emission factor of fossil fuel consumed by reference vehicle (tCO 2/MJ)
DDi, y
Annual average distance travelled by project vehicle category i (km/year)
NRF,i, y
Number of reference vehicles in category i in year y
(2)事前算定
事業計画をもとに導入台数(NRF,i,y)および年間走行距離(DDi, y)等を以下に示す。また、リファレ
ンス車種等について以下のように想定した。公用車、タクシーびリファレンス車両の排気量は、プロジ
ェクト車両の乗車定員や車両の大きさ等を勘案し、設定した。
表 25 導入台数・リファレンス車両
技術・製品
仕様
導入台数(台)
2014
2015
2016
年間走行距離
リファレンス車両
合計
(km/year)
100
20,000
ジャンボ 160 台
ルアンパバン
e-tuktuk
Prozza pecolo
電動バイク
MilettoLi50
100
30
30
40
100
8,000
バイク(100〜125cc)
100
150
150
400
20,000
ジャンボ 800 台
ヴィエンチャン
e-tuktuk
Prozza pecolo
公用車
i-miev
100
100
200
8,000
ガソリン乗用車(1500cc)
タクシー
e-NV200
50
50
100
20,000
ガソリン乗用車(1500cc)
電動バイク
MilettoLi50
50
100
200
8,000
バイク(100〜125cc)
50
ガソリンの正味発熱量(NCVRF,i)はラオスの値が得られないため、タイ・エネルギー省による公表値
を用いた(31.48MJ/liter)。
ガソリンのCO2排出係数(EFRF,i)はIPCCのデフォルト値(69,300kgCO2/TJ)を用いた。
各リファレンス車両の燃費(SFCi)は、前述の燃費設定結果をもとに以下のとおり設定した。なお、
本調査においては、当該対象地における実測を行ったためOption 1を用いるが、比較のため、Option 2
およびOption 3についても試算した。
Ⅳ-25
H25 JCM DS 最終報告書
表 26 リファレンス車両の燃費
燃費(km/liter)
リファレンス車両
Option 1
Option 2
Option 3
ジャンボ(PJ:e-tuktuk)
35.5
(35.5)
(35.5)
バイク(100〜125cc)(PJ:電動バイク)
57.6
44.5
53.6
ジャンボ(PJ:e-tuktuk)
35.5
(35.5)
(35.5)
ガソリン乗用車(1500cc)(PJ:公用車 EV)
12.2
13.4
17.3
ガソリン乗用車(1500cc)(PJ:タクシーEV)
12.2
13.4
17.3
バイク(100〜125cc)(PJ:電動バイク)
57.6
44.5
53.6
ルアンパバン
ヴィエンチャン
※Option 2:日本車の実走行燃費ベースの保守値。
※Option 3:日本車のカタログ燃費より設定。
※ジャンボのoption2およびoption3の燃費は設定できないため、option1の値を用いた
各燃費オプションを用いたリファレンス排出量の算定結果を以下に示す。
なお、本調査にお手は比較のために3種類のオプション結果を示すが、実際のプロジェクトにおいて
は、ラオスにおける実測値であるオプション1を用いる予定である。
Ⅳ-26
H25 JCM DS 最終報告書
表 27 リファレンス排出量(Option 1)
リファレンス排出量(tCO2/year)
リファレンス車両
2014
2015
2016-2020
合計
ルアンパバン
ジャンボ(PJ:e-tuktuk)
255.6
255.6
255.7
1,789.7
10.2
20.5
34.1
201.2
265.8
276.1
289.7
1,990.4
319.6
798.9
1,278.2
7,509,5
ガソリン乗用車(1500cc)(PJ:公用車 EV)
0.0
143.1
286.1
1,573.6
ガソリン乗用車(1500cc)(PJ:タクシーEV)
0.0
178.8
357.6
1,955.8
17.0
34.1
68.2
392.1
336.4
1,154.9
1,990.1
11,441.8
602.4
1,431.0
2,279.8
13,432.2
バイク(100〜125cc)(PJ:電動バイク)
小計
ヴィエンチャン
ジャンボ(PJ:e-tuktuk)
バイク(100〜125cc)(PJ:電動バイク)
小計
合計
表 28 リファレンス排出量(Option 2)
リファレンス排出量(tCO2/year)
リファレンス車両
2014
2015
2016-2020
合計
ルアンパバン
ジャンボ(PJ:e-tuktuk)
255.6
255.6
255.6
1,789.2
13.2
26.5
44.1
260.2
268.8
282.1
299.7
2,049.4
319.6
798.9
1,278.2
7,509.5
ガソリン乗用車(1500cc)(PJ:公用車 EV)
0.0
130.2
260.5
1,432.7
ガソリン乗用車(1500cc)(PJ:タクシーEV)
0.0
162.8
325.6
1,790.8
22.1
44.1
88.2
507.2
341.7
1,136.0
1,952.5
11,240.2
610.5
1,418.1
2,252.2
13,289.6
バイク(100〜125cc)(PJ:電動バイク)
小計
ヴィエンチャン
ジャンボ(PJ:e-tuktuk)
バイク(100〜125cc)(PJ:電動バイク)
小計
合計
表 29 リファレンス排出量(Option 3)
リファレンス排出量(tCO2/year)
リファレンス車両
2014
2015
2016-2020
合計
ルアンパバン
ジャンボ(PJ:e-tuktuk)
255.6
255.6
255.6
1,789.2
11.0
22.0
36.6
216.0
266.6
277.6
292.2
2,005.2
219.6
798.9
1,278.2
7,409.5
ガソリン乗用車(1500cc)(PJ:公用車 EV)
0.0
100.9
201.8
1,109.9
ガソリン乗用車(1500cc)(PJ:タクシーEV)
0.0
126.1
252.2
1,387.1
18.3
36.6
73.3
421.4
337.9
1,062.5
1,805.5
10,427.9
604.5
1,340.1
2,097.7
12,433.1
バイク(100〜125cc)(PJ:電動バイク)
小計
ヴィエンチャン
ジャンボ(PJ:e-tuktuk)
バイク(100〜125cc)(PJ:電動バイク)
小計
合計
Ⅳ-27
H25 JCM DS 最終報告書
4.10
プロジェクト排出量の設定根拠
プロジェクト排出量の算定の根拠として、ラオスにおけるグリッド電力CO2排出係数の設定の考え方と方
法は、以下のとおりである。
a) 算定の考え方
本事業においてはEDL(Electricite du Laos)のグリッド電力を使用することを想定し、そのCO2排出
係数を設定した。
グリッド電力CO2排出係数の算定については、“CDM Methodological tool "Tool to calculate the
emission factor for an electricity system (Version 03.0.0)”の手法を参考とした。本事業は再生
可能エネルギーを利用した発電事業等ではないため、ここでは当該ツールのAverage OM (operating
margin)4(全電源平均の排出係数)を計算した。
なお、ラオスでは電力の輸出入量が極めて多いため、排出係数の算定においてはこれらの適切な考慮
が必要である。本調査では、EDLによる総発電電力量、IPPからの購入電力量および周辺各国からの輸入
電力量を勘案し、算定した。この考え方の根拠は上記ツールの以下のパラグラフである。
(輸出電力の扱い)
para. 23: Electricity exports should not be subtracted from electricity generation data
used for calculating and monitoring the electricity emission factors.
(輸入電力の扱い)
para.50: For this approach (simple OM) to calculate the operating margin, the subscript
m refers to the power plants/units delivering electricity to the grid, not including
low-cost/must-run power plants/units, and including electricity imports to the grid.
Electricity imports should be treated as one power plant m.
※このパラグラフでは low-cost/must-run を除くと書いてあるが Average OM の計算では除かない。
b) 算定方法
算定式
グリッド排出係数は、“CDM Methodological tool "Tool to calculate the emission factor for an
electricity system (Version 03.0.0)”のSimple OMの計算式を参考とし、各発電所の発電電力量とそ
のCO2排出係数を用いて下式により算定する。
EFelec,y =
å
m
EGm,y ´ EFelec,m,y
å
m
EGm,y
Where
EGm,y
Quantity of electricity generated and delivered to the grid
by power unit m in year y (MWh)
EFelec,m,y CO2 emission factor of power unit m in year y (tCO2/MWh)
m
All power units serving the grid in year y
4
para.66 : The average OM emission factor is calculated as the average emission rate of all power plants serving the grid, using the
methodological guidance as described under Step 4 (section 6.4.1) above for the simple OM, but also including the lowcost/must-run
power plants in all equations.
Ⅳ-28
H25 JCM DS 最終報告書
算定結果
算定に用いたデータとともに、グリッドCO2排出係数の結果を表に示す。
表 30 ラオスにおけるグリッド電力 CO2 排出係数の算定・結果
電力量
Grid EF
CO2 排出量
(MWh)
(tCO2/MWh)
(tCO2)
発電(ラオス国内)
輸入
2,698,786
0.0000
0
タイ
978,144
0.5113
500,125
中国
112,688
0.6323
71,253
36,497
0.5408
19,738
ベトナム
合計
3,826,115
591,116
グリッド CO2 排出係数(tCO2/MWh)
0.154
出典:電力量(Electricity Statistics 2012, EDL)、
Grid EF(List of Grid Emission Factors, IGES)
c) モニタリングについて
ラオスのグリッド電力CO2排出係数は上記のとおり極めて小さい。ただし、水力発電が多くを占めるラ
オスでは発電電力量や輸入電力量の年々変動が大きいため、グリッド排出係数はモニタリングすること
が望ましい。
4.11
プロジェクト排出量の算定方法
プロジェクト排出量の算定式及び式中パラメータ内容を以下に示す。
(1)算定式
プロジェクト排出量は、プロジェクト車両(電気自動車)の運行に係る電力及び化石燃料消費を包含
し、次式により算定する。
⁄(
∑(
)
)
Where
PEy
Total project emissions in year y (tCO2/year)
SECPJ,i,y Specific electricity consumption by project vehicle category i per km in year y in urban
conditions (kWh/km)
EFelect,y CO2 emission factor of electricity consumed by project vehicle category i in year y
(tCO2/kWh)
TDLy
Average technical transmission and distribution losses for providing electricity in the
year
DDi,y
Annual average distance travelled by the project vehicle category i in the year y
(km/year)
NPJ,i, y
Number of operational project vehicles in category i in year y
Ⅳ-29
H25 JCM DS 最終報告書
(2)事前算定
プロジェクト車両の電費(SECPJ,i,y)はカタログ値等により下表のように設定した。
表 31 プロジェクト車両の電費
プロジェクト車両
電費(kWh/km)
ルアンパバン
e-tuktuk(prozza pecolo)
0.1266
電動バイク(milettoLi50)
0.0206
ヴィエンチャン
e-tuktuk(prozza pecolo)
0.1266
公用車 EV(i-miev)
0.1200
タクシーEV(e-NV200)
0.1200
電動バイク(milettoLi50)
0.0206
グリッドCO2排出係数(EFelect,y)は、前述のとおり0.154tCO2/MWhとした。
電力の送配電ロス(TDLy)はEDLの2012年統計値より10.32%とした(Electricity Statistics 2012, EDL)
年間平均走行距離(DDi,y)および走行台数(NPJ,i, y)は前述のとおりである。
以上より、プロジェクト排出量を下表のように算定した。
表 32 プロジェクト排出量
プロジェクト車両
プロジェクト排出量(tCO2/year)
2014
2015
2016-2020
合計
ルアンパバン
e-tuktuk(prozza pecolo)
56.5
56.5
56.5
395.5
電動バイク(milettoLi50)
1.0
1.9
3.2
18.9
小計
57.5
58.4
59.7
414.4
e-tuktuk(prozza pecolo)
56.5
141.3
226.1
1,328.3
公用車 EV(i-miev)
0.0
16.5
33.0
181.5
タクシーEV(e-NV200)
0.0
20.6
41.2
226.6
電動バイク(milettoLi50)
1.6
3.2
6.4
36.8
58.1
181.6
306.7
1,773.2
115.6
240.0
366.4
2,187.6
小計
合計
Ⅳ-30
H25 JCM DS 最終報告書
(3)グリッド電力CO2排出係数が極めて小さい場合のプロジェクト排出量の簡素化について
前述のとおりラオスの2012年のグリッド電力CO2排出係数は0.154tCO2/MWhと小さい。発電電力量や輸
入電力量の年変動が大きいラオスでは排出係数がさらに小さくなる年が想定される。このようなケース
ではリファレンス排出量に対するプロジェクト排出量の割合が極めて小さくなることから、プロジェク
ト排出量の算定の簡素化が望まれる。
ここで、リファレンス排出量に対するプロジェクト排出量の割合が極めて小さい(10%未満)と推定
されるケースでは、保守性を鑑みてプロジェクト排出量をリファレンス排出量の10%と仮定し、排出削
減量を簡易に算定できるものとする。この場合、プロジェクト車両の電費のモニタリングは簡素化のた
め不要とする。
排出係数が0.154tCO2/MWhの場合は、リファレンス排出量に対するプロジェクト排出量の割合は17%程
度であり、上記簡素化は適用できない。リファレンス排出量に対するプロジェクト排出量の割合が10%
未満になるのはおおよそ0.09tCO2/MWh以下のケースである。
ラオスでは、発電電力量や輸入電力量は変動が極めて大きいため、グリッド電力CO2排出係数は基本的
には毎年チェックすることが望ましく、上記条件に合致する場合にはモニタリングおよび排出削減量算
定が簡素化できる。
Ⅳ-31
H25 JCM DS 最終報告書
4.12 モニタリング手法
上記「リファレンス排出量の算定方法」及び「プロジェクト排出量の算定方法」で示したモニタリン
グ手法のうち、特に留意すべき点は以下のとおりである。
(1) 走行距離
プロジェクト車両全数の走行距離をモニタリングすることを基本とするが、JCM事業規模に応じて車
種別に標本を抽出し平均走行距離を推計することもできる。この場合、標本車両は90%信頼区間で10%以
内の誤差率となるように標本数を定め、ランダム抽出する。
排出量の算出に用いるのは車種別平均年間走行距離である。事業用車両の場合、通常、運送事業者が
運行管理用にまとめる月間運行記録簿の数値を集計し、算出する。こうした記録がされない車両に対し
ては、毎年1回の車両メンテナンスサービス時に年月日とオドメーターの読みをプロジェクト車両台帳
に記録し、その情報に基づいて暦年運行距離を推計する。なお、翌年度の推計時に前年度実績値をもと
に必要な補正を行う。事業用車両では、このモニタリング結果をエコドライブ活動に活用できるよう集
計分析方法を指導する。
(2) プロジェクト車両運行台数
プロジェクト対象の電気自動車はすべてプロジェクト車両台帳に登録する。新規登録はもちろん、プ
ロジェクト期間中のモニタリング結果の記録・更新、廃車時の記録抹消など台帳のメンテナンスを日常
的に実施する。排出削減量算定の際は、台帳記載の台数を車種別にカウントする。
(3) 電力消費量
ラオスではグリッド電力CO2排出係数が極めて低いため、プロジェクト排出量はリファレンス排出量の
3%程度以下である。このため、電費のモニタリングは行わず、リファレンス排出量の5%をプロジェクト
排出量とすることで保守性を確保しつつ簡素化する。この簡易法により電力消費量は計測しないことを
基本とする。電力消費量をモニタリングする場合、
i) 車種別に標本を抽出し、電力消費量を毎月計測し、毎年1月に前年の総電力消費量と年間走行距離か
ら年間平均電費を設定する。
ii) JCMプロジェクトが事業所単位の場合、充電ステーションが特定できる場合には、個別車両の充電
量をモニタリングするのではなく、充電ステーションの電力計の読みから充電量を設定することもで
きる。
iii)バッテリースワッピングの場合、各バッテリースワッピングステーションにおけるバッテリーセッ
ト1個・回当たりの平均充電量をモニタリングし、バッテリースワッピング回数を乗じて充電量を算
出する。回数はバッテリースワッピングの際の伝票などから確認する。
Ⅳ-32
H25 JCM DS 最終報告書
4.13 モニタリング実施結果
上記「モニタリング手法」を踏まえ、実際の既稼働案件を利用した実施した実測モニタリングの内容及
び結果を記載するとともに、その結果を踏まえて方法論の改善について検討する。
① モニタリング計画の概要
ルアンプラバンにおいて、リファレンス車両としてバイク、ジャンボ、トゥクトゥク、プロジェクト
車両として電動バイク、e-tuktuk,e-minibus を対象にモニタリングを実施した。モニタリング計画の概
要を以下に示す。
表 33 モニタリング計画概要
Monitoring Plan of Reference ICE vehicles
Monitoring
Distance
category
specification
Sep Oct Nov Dec km/month
Fuel
Electricity
l/month
kwh/month
Remarks
Odometer
GPS
(Public transport vehicles)
Jumbo 1
Jumbo 2
Tuktuk(3wh) 1
Tuktuk(3wh) 2
Tuktuk(3wh) 3
Tuktuk(4wh) 1
Tuktuk(4wh) 2
Tuktuk(4wh) 3
150cc
150cc
650cc
650cc
650cc
800cc
800cc
800cc
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
X
X
X
X
○
○
○
○
○
○
○
○
-
Honda 100cc
Honda 100cc
Honda 100cc
Honda 125cc
Honda 100cc
Chinease
Honda 100cc
Honda 110cc
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
-
(private vehicles)
motorbike 1
motorbike 2
motorbike 3
motorbike 4
motorbike 5
motorbike 6
motorbike 7
motorbike 8
Monitoring Plan of Project EVs
category
specification
Monitoring
Distance
Sep Oct Nov Dec km/month
Fuel
Electricity
l/month
kwh/month
Remarks
Odometer
GPS
(Public transport vehicles)
ST600
TICOST 600
SB 1400
1+7seats
1+7seats
1+14seats
※1
※1
※1
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
※2
※2
○
○
○
○
○
○
-
(private vehicles)
Electric Motor Cycle (EMC1)
Electric Motor Cycle (EMC2)
※1; start from 01/Oct/2013
※2; start from 10/Oct/2013
; monitoring period
Ⅳ-33
H25 JCM DS 最終報告書
② リファレンス車両とプロジェクト車両
以下の表、図にリファレンス車両とプロジェクト車両の概要と給油風景等を示す。
表 34 リファレンス車両(モーターバイク)の概要
図 9 リファレンス車両(モーターバイクの給油風景)
Ⅳ-34
H25 JCM DS 最終報告書
表 35 リファレンス車両(ジャンボ、トゥクトゥク)の概要
図 10 リファレンス車両(4輪トゥクトゥク)の給油風景
Ⅳ-35
H25 JCM DS 最終報告書
表 36 プロジェクト車両の概要
モデ
ル
ST600
仕様
TICOST600
SB1400
EVT Viz
3660*1450*1880mm
3660*1450*1880mm
4960*1430*2000mm
1860*700*1060
車両重量 1020kg
車両重量
車両重量
車両重量
航続距離 120km
航続距離
航続距離
航続距離 60km
最高速度 55km/h
最高速度約 40km/h
最高速度約 38km/h
最高速度約 60km/h
定員1+7名
定員7名(1+7 名)
定員 14 名(1+13 名) 乗車定員
72V/5KW DC motor
48V5KW AC motor
72V5KW DC motor
60V1.5KW DC motor
鉛 6V 190Ah*12pcs
鉛 6V 190Ah*8pcs
鉛 6V 190Ah*8pcs
鉛
中国製
日本製モーター・コントローラー改造
中国製
タイ製
図 11 EV の充電風景
Ⅳ-36
2名
12V*5pcs
H25 JCM DS 最終報告書
③ モニタリング方法
ユーザーは以下のモニタリングシートにオドメーターの読みと給油量を記録し、管理員はモニタリングシートを毎
月初めに前月分を回収し、スプレッドシートに入力し、モニタリング担当マネージャーに提出する。
モニタリングシートを以下に示す。
a)モーターバイクのモニタリング
表 37 モーターバイクのモニタリングシートと記入例
Daily monitoring record sheet in 2013
<November>
0.start of odometer
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Honda SCOUPY-I 125
number plate
New
driver name
1.Odometer
(end of a day)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
vehicle type
4068
4098
4138
4178
4296
4299
4332
4389
4411
4572
4699
4708
4729
4768
4786
4799
4828
4834
4860
4874
4898
4899
4910
4925
4949
4989
5002
5028
5089
5169
5172
Fueling(gasolin)
2.Odometer
3.Fuel Quantity(L)
4.Full
4051
2.94
√
4291
2.94
√
4382
2.32
4686
1.96
4813
2.98
4872
1.96
4936
3.96
5018
1.90
5145
2.96
(when fueling)
5.Remark
√
√
√
モーターバイクのモニタリングはボランティア(文化観光部職員)に、トゥクトゥクはドライバーにお願いした。モニ
タリング開始に先立つ 2013 年 8 月末にモニタリングの教習行った。
図 12 モニタリング教習風景
Ⅳ-37
H25 JCM DS 最終報告書
b)トゥクトゥクのモニタリング
表 38 トゥクトゥクのモニタリングシートと記入例
Daily monitoring record sheet in 2013
vehicle type
E-Tuk Tuk
<November>
number plate
6274
0.start of odometer
1.Odometer
(end of a day)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
3936
3936
4051
4140
4228
4269
4369
4412
4466
4494
4527
4540
4540
4585
4624
4662
4720
4795
4850
4887
4971
4971
5021
5021
5096
5096
5164
5208
5208
5286
5333
driver name
Charging(electric)
2.Odometer
3. Electric
(when charging) Quontity(kwh)
3843
9.50
Remark
4.Full Start charging
finish charging
√
17:30
2:00
3936
4051
4140
4228
4269
4369
4412
4466
4494
4527
12.60
10.70
10.00
7.90
8.00
8.10
8.90
6.00
7.90
3.50
√
√
√
√
√
√
√
√
√
√
21:00
18:30
18:30
18:00
19:50
18:50
17:00
17:00
17:00
17:00
5:00
5:00
5:00
3:00
3:00
3:00
4:00
4:00
4:00
4:00
4540
4585
4624
4662
4720
4795
4850
4887
14.50
5.20
7.60
11.20
5.40
7.30
11.20
√
√
√
√
√
√
√
16:30
17:00
19:00
19:15
19:40
16:30
19:30
3:00
5:00
5:00
6:00
5:00
4:00
2:00
4971
9.70
√
20:00
6:00
5021
15.30
√
16:30
5:00
5096
5164
15.70
5.20
√
√
17:00
19:00
3:00
5:00
5208
5286
11.70
8.80
√
√
18:00
19:00
6:00
5:00
一部のトゥクトゥクや EV にはオドメーターがついていない。こうした車両に対しては GPS を取り付け、運行経路か
ら運行距離を算出した。
図 13 GPS 取り付け風景
Ⅳ-38
H25 JCM DS 最終報告書
今回使用している GPS には通信機能がついているので、リアルタイムに運行状況を把握できる。GPS情報はサ
ーバーに蓄積されるので、データ改変の可能性は極めて小さい。また、オドメーター搭載車両のGPSデータと
比較し、オドメーターの精度を確認する。
図 14 GPS 取り付け車両のリアルタイム位置図
図 15 GPS 取り付け車両の軌跡図(24 時間)
Ⅳ-39
H25 JCM DS 最終報告書
c)電気自動車のモニタリング
表 39 電気自動車のモニタリングシートと記入例
Daily monitoring record sheet in 2013
vehicle type
E-Tuk Tuk
<October>
number plate
Non
0.start of odometer
driver name
1.Odometer
(end of a day)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Fri
Sat
Sun
Mon
Tue
Wed
Thu
Charging(electric)
3. Electric
2.Odometer
(when charging) Quontity(kwh)
Remark
4.Full Start charging
finish charging
10.9
5.00
4.10
4.90
4.40
4.60
3.40
5.00
2.60
3.30
2.50
3.10
4.30
3.40
√
√
√
√
√
√
√
√
√
√
√
√
√
√
18:00
17:45
17:45
17:45
18:15
17:55
18:00
18:30
17:50
17:30
17:30
17:30
17:30
17:30
3:50
4:00
4:30
2:00
2:55
3:30
2:30
2:20
2:00
4:00
3:30
2:30
3:00
3:00
9.50
4.20
4.30
3.70
3.90
4.90
3.70
3.80
4.60
3.30
2.00
6.30
4.00
√
√
√
√
√
√
√
√
√
√
√
√
√
22:00
17:30
17:30
17:30
17:30
17:30
17:30
18:20
18:40
19:00
17:40
18:50
19:10
6:00
5:00
2:00
3:00
3:00
3:00
12:00
2:30
3:00
5:00
2:00
2:00
1:00
電気自動車は、車庫で充電時の充電量を記録した。この電力計は内部の SD カードにすべての充電記録を
蓄積し、またインターネットを介して遠隔でもモニタリングが可能である。
図 16 充電量モニタリングに使用した電力計
④ モニタリング実施結果(ただし、リファレンス車両の走行距離と給油量)を下表に示す。
Ⅳ-40
H25 JCM DS 最終報告書
表 40 モニタリング結果総括表
Su m m a ry o f Mo n i to tri n g R e co rd s
September
category
specification
Plate
Number
Drive
Fuel
October
Fuel
Range consume Economy
km
l/month
km/l
Drive
Range
km
Fuel
November
Fuel
Drive
consume Economy
l/month
km/l
Fuel
December
Fuel
Drive
Range consume Economy
km
l/month
km/l
Range
km
Fuel
Total
Fuel
Drive
consume Economy
l/month
km/l
Odometer
Fuel
Fuel
Range consume Economy
km
l/month
Odometer
Beginning
end
September
December
km/l
ICE with Odometer
Jumbo 1
150cc
0722
1,919
68.2
28.1
1954
49.2
39.7
2223
56
39.7
2364
72.2
32.7
8,723
245.6
35.5
12,472
21,195
Tuktuk(4wh) 1 800cc
Tuktuk(4wh) 2 800cc
0509
4838
1,063
757
69.3
29.3
15.3
25.8
1369
649
128.38
54.13
10.7
12
1328
674
129.06
57.58
10.3
11.7
1281
819
150.8
83.1
8.5
9.9
5,154
2,096
477.54
224.11
10.8
9.4
24,708
28,942
29,862
31,038
Tuktuk(4wh) 3 800cc
0494
Total/Average
762
52
14.7
995
87.6
11.4
1150
99.3
11.6
1407
137.6
10.2
4,465
376.5
11.9
126,936
131,401
2,582
151
17.1
3,013
270
11.2
3,152
286
11
3,507
372
9.4
11,715
1,078
10.9
180,586
192,301
motorbike 1
Honda 100cc
6075
516
10.1
51.1
820
16.54
49.6
617
12.25
50.4
455
13.4
34
2,513
52.29
48.1
58,468
60,981
motorbike 2
motorbike 3
Honda 100cc
Honda 100cc
New/Somsai
1287
588
659
8.2
11.5
71.7
57.3
715
842
11.7
14.68
61.1
57.4
583
1054
8.85
16.46
65.9
64
713
595
14.5
12.3
49.2
48.4
2,668
3,270
43.25
54.94
61.7
59.5
7,141
31,510
9,809
34,780
motorbike 4
Honda 125cc
New/Kissia
1,106
19.7
56.1
1503
26.24
57.3
1127
16.09
70
1121
23.9
46.9
4,883
85.93
56.8
262
5,145
motorbike 5
motorbike 6
Honda 100cc
Chinease
3283
3963
662
13.2
50.2
698
566
13.51
14.58
51.7
38.8
899
424
13.28
9.8
67.7
43.3
784
444
18.4
14.6
42.6
30.4
3,160
1,624
58.39
38.98
54.1
41.7
77,247
12,856
80,407
14,480
motorbike 7
Honda 100cc
2913
992
12.2
81.3
1175
16.82
69.9
902
13.63
66.2
268
15.4
17.4
3,413
58.05
58.8
171
3,584
motorbike 8
Honda 110cc
Total/Average
2165
677
5,200
8.9
84
76.1
62.1
1224
7543
17.24
131.31
71
57.4
165
5771
9.86
100.22
16.7
57.6
188
11.2
16.8
3,350
24881
47.2
439.03
71
56.7
15,945
203,600
19,295
228,481
N/A
N/A
EV
Distance: Gothic ; Odometer, else:GPS
September
category
specification
Drive
Fuel
October
Fuel
Rangeconsumption Economy
km
l/month
km/l
Drive
November
Electricity Electricity
Range consumption Economy
km
kwh/month km/kwh
Drive
December
Electricity Electricity
Rangeconsumption Economy
km kwh/month km/kwh
Drive
Total
Electricity Electricity
Range consumption Economy
km
kwh/month km/kwh
Drive
Electricity Electricity
Range consumption Economy
km
kwh/month km/kwh
WST0-0044
EV(TICOST-600)
-
N/A
N/A
N/A
912
119.7
7.6
1072
126.1
8.5
746.9
100.4
7.4
2,731
346.2
7.9
WT-2370
EV(ST-600)
กจ-6274
N/A
N/A
N/A
875
1 ,4 4 4
240.3
240.3
3.6
6
1134
1466
212.8
212.8
5.3
6.9
1058
1490
221.9
221.9
4.8
6.7
3,067
4,400
675
675
4.5
6.5
WT-1883
EV(SB-1400)
กจ-7370
N/A
N/A
N/A
869
227.8
3.8
1163
219.5
5.3
830.5
163.9
5.1
2,862
611.2
4.7
227.8
9.1
5.2
37.4
1154
437
219.5
6.9
5.3
63.3
820.2
163.9
5
N/A
1 ,1 7 4
340
3,148
777
611.2
16
5.2
48.6
EMC1
N/A
N/A
#DIV/0!
ICE without Odometer
September
category
specification
Drive
Fuel
October
Fuel
Rangeconsumption Economy
km
l/month
km/l
Drive
Fuel
November
Fuel
Drive
Range consumption Economy
km
l/month
km/l
Fuel
December
Fuel
Drive
Rangeconsumption Economy
km
l/month
km/l
Fuel
Total
Fuel
Drive
Range consumption Economy
km
l/month
km/l
Fuel
Fuel
Range consumption Economy
km
l/month
km/l
WT-3821
Jumbo
สก-0129
N/A
N/A
N/A
1518.3
117.06
13
2197
155.05
14.2
2051.4
126.6
16.2
5,767
398.71
14.5
WT-1467
WT-0597
TUKTUK
TUKTUK
สก-0673
สก-0643
N/A
N/A
N/A
N/A
N/A
N/A
893.55
1735.97
74.05
135.57
12.1
12.8
1554
2515
82.4
159.14
18.9
15.8
1501.6
2036.4
109.1
138.5
13.8
14.7
3,949
6,287
265.55
433.21
14.9
14.5
WT-2372
Taxi-van
กก-0509
N/A
N/A
N/A
1096.69 N/A
#VALUE!
WT-1726
Jumbo
สก-0190
N/A
N/A
N/A
2313.16 N/A
#VALUE!
4 N/A
532
Ⅳ-41
#VALUE!
60.83
8.7
#DIV/0!
88.7
0
0
0
532
149.53
#DIV/0!
3.6
H25 JCM DS 最終報告書
モニタリング結果から事後設定するパラメータを、以下のとおり事前設定した。
表 40(続き)
モニタリング結果
プロジェクト
年間走行距離
電費 kwh/km
Km/年
0.1266
20,000
ガソリン乗用車(1500cc)(PJ:公用車 EV)
0.12
8,000
ガソリン乗用車(1500cc)(PJ:タクシーEV)
0.12
20,000
0.0206
20,000
リファレンス車両
ジャンボ(PJ:e-tuktuk)
バイク(100〜125cc)(PJ:電動バイク)
⑤
実測モニタリング結果を踏まえて、方法論の以下の点を改善する。
1)ラオスは国民所得が低いので、ガソリン価格も相対的に高いので満タン給油すると高額になるので、
一定額分を給油する場合が多い。したがって、満タン法によるモニタリングが難しいので、月単位より
も年間の燃費(km/L)を計測し、毎月燃費は参考値とする。また、レシートを収集することで正確を期
すためにレシート収集のインセンティブを用意するのが望ましい、レシートの収集漏れはリファレンス
燃費を向上するので、保守的と考えることができる。
2)電力消費量も計測ミス(読みのミスや転記ミス)の可能性があるので、まずは消費電力量のモニタリ
ングの必要のない簡易法によるプロジェクト排出量の算出を基本とする。どうしても消費電力量をモニ
タリングする必要のある場合は、電力計の SD カードへの記録機能(日時・充電量)を用いて、年間電
力消費量を記録・集計する。この場合、充電ごとに充電車両の ID も合わせて入力可能な電力計を使用
するのが望ましい。
3)オドメーターのない車両は、プロジェクト車両としない。ただし、老朽化したジャンボなどの EV 転
換は JCM として中核的な事業なので、リファレンス車両として燃費を計測する必要性が生じる。GPS の
場合、電波状態により軌跡の連続が途切れることがあるので、オドメーターを取り付けて走行距離を計
測するのを優先すべきだ。
4)計測機器の校正
計測機器はオドメーター、給油機があるが、機器の校正実態は不明である。モニタリングにおいては計
測機器の生産国、製造年月、型式名を記録しておく。
(参考資料)
アジア各国の法定計量:カンボジア、ラオス、パプアニューギニア
・まだ発展途上にあり、法定計量と計量標準が未分化。同じ国家計量機関が全ての計量管理を担当している。
またその機関の職員数も少ない(~20名程度)。
主要な計量器に関する検定は、地方自治体と協力しながら行われているが、型式承認は未対応。計量器の
ほとんどは輸入品。
計量に関する社会基盤を独力で整備して行くことは難しく、人材、予算、技術、若手の教育に関して、外国
からの支援への要望が強い。
日本、ヨーロッパ(ドイツ)、中国、韓国、UNIDO(国連工業開発機関)などから多くの支援を受けている。特
にパプアニューギニアについては、オーストラリアとの結びつきが強い。
(出典:APLMF 法定計量研修から見た海外計量事情、産業技術総合研究所計量標準管理センター、松本毅、2008 年 10 月)
Ⅳ-42
H25 JCM DS 最終報告書
4.14 GHG 排出量及び削減量
(1)算定式
次式により算定する(標準算定式)。
ERy = REy – PEy
ここに、
ERy
Emission reductions in year y (tCO2/year)
REy
Reference emissions in year y (tCO2/year)
PEy
Project emissions in year y (tCO2/year)
前述の「グリッド電力CO2排出係数が極めて小さい場合」に相当する場合は、以下の簡易式により算定
する(リファレンス排出量に対するプロジェクト排出量の割合が10%以下と推定されるケース)
(簡易式)
ERy = REy – PEy
= REy – 0.10×REy
= 0.90×REy
(2)事前算定
本調査においては比較のために、燃費の設定方法に応じた3種類のオプションの結果を示すが、実際の
プロジェクトにおいては、ラオスにおけるリファレンス車両の燃費の実測値を用いたオプション1を用
いる予定である。
Ⅳ-43
H25 JCM DS 最終報告書
表 41 排出削減量(リファレンス排出量:Option 1)
排出削減量(tCO2/year)
プロジェクト車両
2014
2015
2016-2020
合計
ルアンパバン
e-tuktuk
199.1
199.1
199.1
1,394.2
9.2
18.6
30.9
182.3
208.3
217.7
230.0
1576.0
e-tuktuk
263.1
657.6
1,052.1
6,181.2
公用車 EV
0
126.6
253.1
1,392.1
タクシーEV
0
158.2
316.4
1,729.2
電動バイク
15.4
30.9
61.8
355.3
278.3
973.3
1,683.4
9,868.6
486.8
1,191.0
1,913.4
11,244.6
電動バイク
小計
ヴィエンチャン
小計
合計
表 42 排出削減量(リファレンス排出量:Option 2)
排出削減量(tCO2/year)
プロジェクト車両
2014
2015
2016
合計
ルアンパバン
e-tuktuk
199.1
199.1
199.1
1,393.7
12.2
24.6
40.9
241.3
211.3
223.7
240.0
1,635.0
e-tuktuk
263.1
657.6
1,052.1
6,181.2
公用車 EV
0
113.7
227.5
1,251.2
タクシーEV
0
142.2
284.4
1,564.2
電動バイク
20.5
40.9
81.8
470.4
283.6
954.4
1,645.8
9,467.0
494.9
1,178.1
1,885.8
11,102.0
電動バイク
小計
ヴィエンチャン
小計
合計
表 43 排出削減量(リファレンス排出量:Option 3)
排出削減量(tCO2/year)
プロジェクト車両
2014
2015
2016
合計
ルアンパバン
e-tuktuk
199.1
199.1
199.1
1,393.7
10.0
20.1
33.4
197.1
209.1
219.2
232.5
1,590.8
e-tuktuk
163.1
657.6
1,052.1
6,081.2
公用車 EV
0
84.4
168.8
928.4
タクシーEV
0
105.5
211.0
1,160.5
電動バイク
16.7
33.4
66.9
384.6
279.8
880.9
1,498.8
8,654.7
488.9
1,100.1
1,731.3
10,245.5
電動バイク
小計
ヴィエンチャン
小計
合計
Ⅳ-44
H25 JCM DS 最終報告書
5. JCM PDD 作成に係る調査結果
5.1 プロジェクト実施体制及びプロジェクト参加者
(1)基本的な枠組みの検討
2014EV モデル事業を実現するためには、現状では日本の資金援助獲得が最も実現性が高い。日本の支援事
業には、JICA 民間提案型普及・実証事業や環境省 JCM 設備補助事業の適用が考えられる。各事業とも設備
導入・実証後は設備を現地側に引き渡すことになるが、引受側の要件が事業ごとに異なる。したがって、事業組
成段階から要件に合致するプロジェクト実施体制を整えておく必要がある。
項目
概要
実施主体
/補助対
象
補助率
補助対象
事業費
上限額
所有権
適用可能
性
表 44 JCM 事業として適用可能性のある支援事業概要
JICA 無償資金協力
環境省一足飛び事業
JICA 民間連携
開 発 途 上 国 の 経 済 社 一 足 飛 び 型 発 展 と は 民間提案型普及・実証
会 開 発 に 資 す る 計 画 先 進 国 が か つ て 歩 ん 事業は、事業を通じて
だ資源浪費型発展の
に必要な資機材、設備
途上国の経済社会開
轍を踏むことなく、経
および役務(技術およ 済 発 展 に よ り 生 活 レ 発につながる製品・技
び輸送等)を調達する ベ ル を 向 上 さ せ な が 術をお持ちの中小企
資金を供与するもの
らも低炭素社会・循環 業の海外展開に向け
型社会・自然共生型
・一般プロジェクト無償
た普及活動及び実証
社
会
を
同
時
に
達
成
す
・公共輸送用車両調達
活動を支援するもの。
る形の発展のこと。
環境分野事業と位置
環境省は JCM を都
市・地域に丸ごと適用 付け。事業期間は1~
す る こ と で 低 炭 素 化 3年
を拡大することで一
足飛び型発展を支援
する考え
1)一足飛び型発展の 日本の中小企業
ラオス政府
実現に向けた資金支
援(基金約 42 億円)
JICA が行う海外投融
資などの資金協力・投
100%贈与
100%
資金融などのプロジ
ェクトのうち、排出削
減効果の高い事業を
5-10 億円(?)程度か
支援するための基金。 原則として、1 件あた
補助率は、事業の内部 り 1 億円を上限金額。
収益率(IRR)を見て なお、収入を発生せし
判断する。運用開始時 め る 活 動 は 業 務 委 託
期は 2014 年 4 月
契約の対象外。
2)
一足飛び型発展の実
ラオス政府/機関
本事業で活用した資
現に向けた資金支援
機材については、事業
(ADB 拠出金約 18 億円)
実施後相手国政府関
ADB が実施するプロジェ
連機関に JICA より無
クトで採用が進んでい
償譲与し、相手国政府
ない日本の先進技術が
関連機関が独自に資
プロジェクトで採用さ
れるように、技術導入コ 機 材 の 維 持 管 理 を 行
ストを賄うため、ADB に います。
設置する信託基金に拠
出する資金。資金の使途
を日本の技術の導入コ
ストにのみ充てる「日本
縛り」をかける。
基金設置は 2014 年 6 月
Ⅳ-45
LPB 事業
e-tuktuk100 台
約1億円
JCM 設備補助
二国間クレジット制
度の活用を前提とし
て、途上国において我
が国企業が有する技
術等を活用する CO2 排
出削減事業へ補助。
事業期間は3年。
日本(法人登記)の民
間団体(外国法人と国
際コンソーシアムを組むこと
は可)
事業者に対し初期投
資費用の1/2を上限
として設備補助
5-10 億円(?)
補助事業の実施によ
り取得した財産(取得
財産等)については取
得財産管理台帳を整
備し、その管理状況を
明らかにしておく。財
産処分のときは、あら
かじめ環境省の承認
を受ける必要がある。
LPB・VTE 事業
2014/15 年度分
約5億円
H25 JCM DS 最終報告書
・JCM 設備補助以外の JICA 事業は、すべてラオス政府への贈与となるので、EV の所有権もラオス政府
とするのが基本と考えられる。また、事業費には車両費以外にも充電設備等のインフラ整備事業用の資
金も含めて考える。一方、人材育成、制度、基準、啓蒙などソフト整備には、技術協力プロジェクトの
実施可能性を検討する。
・政府機関の幹部職員への支給車(公用車)の所有権は、政府か職員個人か、要確認。いずれにせよ日
本の資金援助を入れる場合には、カンパニーカーとして所有者は政府、使用者は個人、保有税免税、走
行費用や保険料負担は個人といった枠組みとするのが望ましい。
・tuktuk やタクシーといった公共交通用車両もカンパニーカーと同様に所有者は政府、使用者は運行会
社または個人事業者とし、保有税を含む保有費用、走行費用は事業者側負担とするとともに、償却費分
相当など適切な水準の負担を求める。
EV 普及実証事業実施体制(FY2014)
EVPTU in DPWT
EV Lease Agreement
EVPT Operator
Employment
EV
from
Aid Agency
EV maintenance & lease fee
Drivers
(Tuktuk Assoc)
EVPT:EV Public transportation
EV Property Owner
持続可能な EV 公共交通モデル
New Vehicles
Subsidy
in
initial
investme
nt
Expansion
of
Services
Reinvest
-ment for
Better
Service
Increase
in
Revenue
O&M Budget
Operation System
図 17 持続可能な EV 公共交通モデル構築に至る実証事業の位置づけ
Ⅳ-46
H25 JCM DS 最終報告書
・JCM 設備補助事業の場合には、50%補助なので残り負担の主体をどこにするかが重要である。
イ 国際コンソーシアムの代表企業となる日本企業が負担し、リース料の形で償却する
ロ 現地側パートナーとしてのラオス政府が負担する。JICA 事業と同様に公共交通の場合、運行事業
者に適切な水準の負担を求める
ハ 現地側パートナーとしてのラオスの民間投資家が負担する。この場合、実質的にはラオスの民間
投資家に対する補助とみなされるのが問題か?
事業規模が 10 億円といった規模の場合、自己負担額が 5 億円規模となるので、ラオスの民間投資家
には荷が重い。また、国際コンソーシアム代表の日本企業にしても、長期で収益率が小さい本事業は事
業性が低いと判断される。残りは、ラオス政府が負担する方法しかない。この場合には、車両の所有権
を現地政府側がもつことになるので、JICA 事業とほぼ同じ枠組みで事業を実施できる。
国際コンソーシアム
国際コンソーシ
アム
50%補助
代表企業
調達納品
日本の商社
有償又は
無償貸出
オペレーター
ラオス政府/政府企業
50%支払
代表:日本企
業
国際コンソーシアム
日本 EV メーカ
現地投資家
ー
日本商社
ラオス政府
現地 Dealer、他
図 18 JCM 設備補助事業の枠組み案
・現地組み立てのための工場や充電ステーションの設置
国際コンソーシアムの現地投資家や現地ディーラーが設置する。次世代型 EV 以外の LSEV は現地組み立
てを基本とする。工場・充電ステーション設置のための初期投資および運営費用の負担・回収について
も検討を要する。
・100%補助の場合、実証事業終了後の EV 保有は相手国政府になる。しかし、政府機関が所有できるのは公用
車であり、公共交通用の tuktuk、バス、タクシー車両なども所有できるよう所有者と使用者の分離、あるいはそう
した車両を所有するための公的セクターの設立などを検討する必要がある。
・50%補助の場合、自己負担分 50%を国際コンソーシアムがどう負担し、回収するか、つまり事業スキームを検
討する必要がある。ここでは、国際コンソーシアムが必要な資源を持ち寄り、メインテナンスリース事業を実施する
ことを基本とする。
Ⅳ-47
H25 JCM DS 最終報告書
EV 公有型
政府または公的セクターが EV を所有し、運行会社、車両メンテナンスサービス、充電サービスにサービスを委
託する。
電力供給
オペレーシ
ョン
車両メンテ
政府
EV 所有
出資
公的セクター
(充電含む)
道路交通
充
電 イン フ
インフラ
ラ保有
道 路 イン フ
ラ管理機関
図 19 EV 公有型 JCM 事業の場合のプロジェクト関連組織の役割分担
EV maintenance lease 型
国際コンソーシアムまたは SPC(特別目的合弁会社)が車両を所有、車両メンテナンスサービス、充電サービス
を提供する。
オペレーシ
電力供給
ョン
車両メンテ
EV 所有
国際コンソーシアム又は SPC
(充電含む)
道路交通
充 電 イン フ
インフラ
ラ保有
道 路 イン フ
ラ管理機関
図 20
EV メンテナンスリース型 JCM 事業の場合のプロジェクト関連組織の役割分担
なお、国際コンソーシアム設立には、ホスト国側のコンソーシアムメンバー候補との間で、2020 年まで
の MRV と法定耐用年数までの設備保持等、様々な義務と資金分担等、合意した上で、協定書を締結する
必要がある。
※法定耐用年数
運送事業用車両:排気量 2L 以下 3 年、その他 4 年
一般車両(4輪以上):660cc 以下 4 年、その他 6 年
一般車両(2又は3輪):3 年
Ⅳ-48
H25 JCM DS 最終報告書
(2)メンテナンスリース事業の概要
メンテナンスリースとは、車両の調達から、定期点検・車検・諸税支払・事故時対応などを含め、車
両のライフサイクルに関するほぼ全てをパッケージングしたシステム。車両管理業務が大幅に削減でき
る上、コストダウンも実現可能な最もパフォーマンスの高いシステムであることから、現在では日本に
おけるオートリースの大半がメンテナンスリースとなっている。
車両管理:購入、維持・管理、点検・整備
車検、事故、売却
メンテナンス
リース会社
メンテナンス・リース
車両維持費:車両代、税金、メンテナンス費
登録費用、自賠責保険、任意保険
図 21 メンテナンス・リース事業の概要
EV メンテナンスリース事業者は、EV を所有し利用者にリースするとともに、EV 車両の保管、充電、
バッテリースワッピングサービス、車両メンテナンス、モニタリング等、必要なサービスを有料で提供
する。こうしたサービスを EV メンテナンスサービスと呼ぶ。なお、EV の所有権を EV メンテナンスサー
ビス事業者を持つ場合が EV メンテナンスリースに相当する。EV の所有権は利用者にあり、利用者が必
要なサービスを求めて EV メンテナンスサービス事業者を利用することもできる。
EV メンテナンス・リース(EV-ML)
EV メンテナンス・サービス(EV Maintenance Service Provider : EV-MSP)
車両保管
充電
バッテリー
車両メンテ
モニタリン
スワッピング
ナンス
グ
EV 車両
図 22
利用者
利用者
(車両オペレータ)
(EV 所有者)
道路インフラ
道路インフラ
管理機関
管理機関
EV メンテナンスリース事業者、メンテナンスサービス事業者と利用者の関係
Ⅳ-49
H25 JCM DS 最終報告書
EV メンテナンス・リース事業は、財務上(ファイナンスリース)と車両管理上のメリットがある。
〇財務上(ファイナンスリース)のメリット
・経費を全額損金として計上できる。
(リース資産として資産計上、減価償却が必要となる場合がある。)
・コストの均等化・明確化
・資金の有効活用
〇財務管理上のメリット
・車両管理業務の削減
車両の維持・管理に関わる煩雑な業務をリース会社が代行することと、利用者の業務負荷が軽減され
るため人材の有効活用が可能となる。
・車両の稼働率アップ
保守サービスが定期的に実施されるため、より安全により効率よく車両を利用することができる。ラ
オスはまだ、管理能力が未熟なので、公共交通企業に車両管理サービスを提供し、車両の運行効率を改
善し、車両の状態を高水準に維持し、質の高い公共交通サービスを提供することが可能になる。
(3)EV 用充電器管理者
EV 用充電器管理者(EV Charging Facilities Management Unit)は、公共用充電設備を設置・管理す
る。管理の中心は道路管理者が設置した充電器(道路付属物?)の運用・管理とする。
表 45 設置・運用の基本的な考え方
公共用
普通充電
急速充電
設置場所の管理者
道路管理者/公共施設管理者
又は道路占用として道路管理者の許可を得た設置者
自家用
設置場所の管理者
設置場所の管理者
急速充電器は、「電気自動車用急速充電器の設置・運用に関する手引書(平成 22 年 12 月、CHAdeMO
協議会)」に準じて、設置、運用する。自家用充電器の設置・運用についても研究し、ラオス用の設置・
運用ガイドラインを策定し、Web 公開するとともに、広報・啓発キャンペーンを実施する。MPWT・DOT
の外郭団体とし、毎年、広報事業を受託するとともに、充電器の運用事業を行うとともに、公共充電ス
テーション web 案内を構築・メンテし、稼働率向上を図る。
Ⅳ-50
H25 JCM DS 最終報告書
(4) プロジェクト参加者
現時点で予想されるプロジェクト参加者は、以下のとおりである。ただし、当面は個人の自家用 EV は
対象に含めず法人(リース事業者や政府を含む)が所有する EV を対象とする。
表 46 プロジェクト参加者の想定
EV オペレーション
公営事業の場合
民営事業の場合
備考
公共交通事業者
交通事業者または
Tuktuk 協会
個別利用者
公営交通企業、個人利用者
EV 所有
政府/公的セクター
EV-ML 又は
国際コンソーシアム(車両、部
EV メンテナンスサービス
EV-MSP
EV-MSP+個別所有者
品、バッテリー、充電、メンテ)
充電インフラ
道路管理者
EV-MSP
(又は EV-MSP)
モニタリング
コンサルタント
コンサル又は EV-MSP
5.2 プロジェクト開始時期及び実施期間
プロジェクト開始時期:2014 年
実施期間:6 年間
5.3 方法論適格性との整合性確保
プロジェクト車両台帳を作成し、適格性要件との整合を確保する。
表 47 方法論適格性要件と JCM 事業の整合性確保の方法
適格性要件
適合性確保
1)本方法論は化石燃料ベースの車両から、EV
・オドメーターがあり作動していることを確認する。
へ代替するプロジェクト活動に適用できる。 ・プロジェクト車両台帳を作成し、適格性要件との整合
2)本方法論は2輪、3輪及び4輪以上の EV
を確保。モニタリング事業者事務所に常備する。
に適用できる。電動アシスト自転車(ペダル
車種、型式番号(写真とも)、主要な仕様、
をこがなければ走行できない)、ハイブリッ
原産国、メーカー
ド自動車、プラグインハイブリッド自動車には適
販売者・EV メンテナンスリース事業者
用できない。
EV メンテナンスサービスプロバイダー名称
3)対象に含まれる電気自動車は、a)ラオスの
販売条件(品質保証期間等、バッテリーリサイクル、
関連基準に適合し、b)車両登録する車両で、
廃車手続き代行等)
c)適正な廃車手続きが見込める車両とする。
登録番号、所有者(住所、氏名、連絡先)
本要件を満たす車両の特定方法は、プロジェ
使用の本拠、プロジェクト参加年月日・退出年月日
クト設計書に記述する。
走行距離履歴
道路交通に関する条約(1949 年)に基づい
充電量(消費電力量)履歴(必要に応じて)
てラオス国外で走行する可能性のある車両
年間排出削減量履歴
(登録済み車両)は対象に含めない。
国際交通を認められる自動車の登録(証)の有無
ラオスの系統電力だけを使用する EV
Ⅳ-51
H25 JCM DS 最終報告書
5.4
プロジェクト排出源とモニタリングポイント
ここでは、簡易法によるモニタリングを想定し、モニタリングポイントを検討する。
簡易法はグリッド電力排出係数がきわめて小さい場合、プロジェクト排出量を計算することなく保守的
にリファレンス排出量の 10%と想定する削減量の算定方法である。この場合、プロジェクト開始後のモ
ニタンリング項目は、プロジェクト車両の走行量のみに簡略化できる。
プロジェクト車両は、毎年少なくとも1回は、EV メンテナンス・サービスセンターでメンテナスサービ
スを受けることとして、その際、オドメーターの読みを年月日とともに記録する。排出削減量算定の当
該年の走行距離は、直近の 12 か月値を使用し、翌年には誤差分を修正する。EV メンテナンス・サービ
スセンターがモニタリングポイントとなる。JCM プロジェクト実施都市には、少なくとも1か所の EV メ
ンテナンスサービスセンターを設置し、プロジェクト車両台帳の新規登録、更新、廃棄手続等を記録し、
保管する。
5.5 モニタリング計画
モニタリング実施体制の構築に必要な項目について検討する。
(1)モニタリング実施体制
モニタリング体制は、下図のとおりとする。
EV 利用者/EV-ML(リース事業者)
メンテナンス・サービスのために EV 持ち込み(年1回)
EV-MSP(モニタリングポイント)
新規登録またはオドメータの読みを専用帳票に記録
モニタリング(台帳記入)
電子ファイル化し、モニタリング事業者に送付
モニタリング事業者
モニタリング報告書を作成
モニタリング報告書
排出削減量の検証のために送付
第三者機関
図 23 モニタリング実施体制
Ⅳ-52
H25 JCM DS 最終報告書
(2)必要な人員、設備、費用
・モニタリングポイントとなる EV メンテナンスサービスセンターは、オドメーターの読みの記録など通常のサービス
の中で実施可能な業務であることから、モニタリング用に特段の人員、設備、費用は要しない。
・モニタリング事業者は、モニタリング報告書の作成方法について専門家の作成したマニュアルを使って学習す
る。
・モニタリング報告書自体は用意されたスプレッドシートに入力するだけなので難しい点はないが、適格性要件
への適合の証明用にプロジェクト EV 台帳を集計・分析する必要がある。また、想定外の事象に対して検証に耐
えるように的確な対応を判断できるような水準まで能力開発の必要がある。モニタリング費用は、プロジェクトホス
ト(国際コンソーシアム)から受領することを基本とす
・プロジェクトホスト(国際コンソーシアム)は、モニタリング費用の支払いを JCM クレジットから充当することが基
本であるが、当面は取引可能なクレジットではないので、別途、調達する必要がある。
(3)必要な帳票の設計
以下の帳票を設計し、モニタリングに使用する。
①プロジェクト EV 台帳
車種
型式番号(写真とも)
主要な仕様
原産国
メーカー
販売者・EV メンテナンスリース事業者
EV メンテナンスサービスプロバイダー名称
販売条件(品質保証期間等、バッテリーリサイクル、廃車手続き代行等)
登録番号
所有者(住所、氏名、連絡先)
使用の本拠
プロジェクト参加年月日・退出年月日
走行距離履歴
充電量(消費電力量)履歴(必要に応じて)
年間排出削減量履歴
国際交通を認められる自動車の登録(証)の有無
②プロジェクト車両台数内訳(車種別、型式別、所有者別、新規登録年月別、・・・・)
③車種別年間走行距離集計表(車種別台数、車種別平均年間走行距離とも)
④廃車一覧表
Ⅳ-53
H25 JCM DS 最終報告書
5.6 環境影響評価
電気自動車導入は、基本的に環境影響は無いものと考えられる。ただし、廃車後のバッテリーを適切に
リサイクル、廃棄するようにバッテリー・リサイクルシステムが必要である。
特に、
鉛バッテリーは充電回数が 300 回程度と少なく、
また充電密度が小さいので廃棄量が大きくなる。
また、バッテリー液中の鉛が土壌汚染を引き起こす恐れがあることから、リサイクルが必要である。リ
サイクル方法は、購入時に EV 購入者はバッテリーリサイクル券を購入し、車両に常備しておく。廃車
時には販売店に車両を持ち込みリサイクル券を提示することで、販売店はバッテリーを回収する。販売
店は廃バッテリーを適切に保管し、年に数回、バッテリーメーカーあるいはバッテリーリサイクル事業
者に回収を依頼する。この間の記録は保管し、行政機関の監察時にいつでも提示できるよう資料を整理
しておく。こうした手順を制度化するとともに、違反者に対する公表、事業停止命令など行政罰の権限
の付与も盛り込む。車体側は一般の自動車の廃車処理と同じ手順とする。
リチウムイオンバッテリーは、廃車後も充電容量は新品の 80%程度を保持しているので、エネルギーマ
ネジメントシステムにおける定置型バッテリーと使用可能なので、販売店を通じて回収ネットワークに
のせる。
(1)バッテリーリサイクル制度
我が国のバッテリーリサイクルの基準関係としては、廃棄物処理法以下がある。使用済みバッテリーは、
廃棄物として法の規定の則した適正な処理が必要とされる。一方、使用済みバッテリーは貴重な資源を
含んでいるため、適正に処理することで新たなバッテリー生産の原料としてリサイクルしている長い歴
史がある。
使用済み産業用バッテリーの処理方法は、以下の二つの方法がある。
1)お客様が廃棄物処理事業者へ直接委託する場合
「廃棄物処理法」では排出事業者(お客様)は自らの事業に伴って生じた廃棄物について処理責任があ
ると明記されている。お客様が直接廃棄物処理業者と委託契約を行い処理することができる。処理する
にあたっては、処理費用が発生し、お客様の負担になる。
2)広域認定によるリサイクルシステム(お客様が蓄電池メーカーへ委託する場合)
一般社団法人電池工業会の会員である産業用蓄電池メーカー各社は、広域認定制度(廃棄物処理法第
15 条の 4 の 3 産業廃棄物の広域的処理に係る特例)において環境省より認定を取得している。お客様
は、蓄電池メーカーへ処理を委託することができるので、蓄電池メーカーと委託契約を締結することに
より、収集運搬事業者および処理業者と契約する必要がない。また、広域認定制度では、産業廃棄物管
理票(マニフェスト)を交付しなくても良いことになっている。広域認定制度での蓄電池の処理の場合
には簡易管理票を使用する。
Ⅳ-54
H25 JCM DS 最終報告書
図 24 我が国の廃棄バッテリー処理手順
(資料:一般社団法人電池工業会パンフレット、使用済み産業用蓄電池の適正な処理について)
ラオスの場合には蓄電池メーカーが存在しないので、
「お客様が廃棄物処理事業者へ直接委託する場合」
が相当する。しかし、リサイクル費用の負担を避ける不法投棄が横行しかねないこと、リサイクルバッ
テリーの需要を増やし、バッテリーリサイクル産業の育成を図るために、バッテリー販売事業者を特定
し、販売時にバッテリーリサイクル費用を事前徴収、使用済みバッテリーの回収、リサイクルバッテリ
ーの販売を行わせるのが望ましい。バッテリー販売事業者はリサイクル費用を徴収したバッテリーの品
番を記録し、持ち込まれた使用済みバッテリーを識別し、未払いバッテリーについては、リサイクル費
を徴収する。
また、リサイクル費用の負担を避け、不法投棄を招かぬよう、法整備と罰則規定、および新品バッテリ
ー価格>リサイクル費+再生バッテリー価格となるようにする。無理な場合には、一部補助を検討する。
(2)リサイクルの手順
バッテリー解体業者まで運ばれた使用済バッテリーは解体・分別され、有用性の高い巣鉛(巣鉛:バッ
テリーを解体して得られる電極板等の鉛原料)については精錬業者に売却後、精錬され再生鉛としてバ
ッテリー製造事業者等に販売されている。また、バッテリーの解体時に排出されるプラスチックについ
ては、販売又は廃棄物処理されており、廃酸については、中和処理等がされている。
Ⅳ-55
H25 JCM DS 最終報告書
図 25 使用済みバッテリーの再資源化の方法
(出典:自動車用バッテリーの回収・リサイクル推進のための方策について報告書、平成17年12月
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会自動車用鉛蓄電池リサイクル専門委員会)
5.7 利害関係者のコメント
LPB の民間事業者が主導する EV 運行会社は、Laogreen という会社を設立した。資本金は 25 万ドルで、
B&E40%、I 氏 20%、A 氏 20%、その他 20%である。10 月1日から4台で実証運行を開始した。12 月 31 日
の実証運行終了をもって車両台数を増強し、本格運行を開始した。現在、電動ミニバス 6 台、電動 tuktuk6
台、電動ジャンボ(荷台付)2 台を保有し、路線バス運行 6 路線、tuktuk 協会と競合しないためにター
ミナルや主な tuktuk プールに配車せず、ホテル宿泊客利用のタクシーサービス用として 8 台を運行し
ている。路線バスは1乗車 3000-5000kip の定額運賃、ドライバーは車両をレンタルするのではなく給
与制で、運賃収納の適正化を期すために車両後部にカメラを設け、乗車人数を確認するなど、ある意味
画期的な運行システムを導入している。撮影した画像は SD カードに収められ、事務所でマネージャー
がチェックする仕組みである。ドライバーには運送人数に応じたボーナスも支払われている。1月度輸
送人数は 6000 人で、定額で好評で、広く周知することにより今後も利用客数の増大が見込まれる。充
電ステーションは、出資者がもつ土地(約1ha)を確保し、既設の建物を当面の充電ステーション兼車
庫として利用することになり、充電用コンセント5個と分電盤を設置した。また、車庫の拡張、事務所
の改築、砕石入れなどを行った。今後、100 台程度まで増強の構想を練っており、日本側への支援要請
を強く求められている。
1)MPWT(公共事業交通省)
・ビエンチャンには 4000 台のトゥクトゥク・ジャンボがあるので、その EV 置き換えの道筋が見えて
きて、大変喜ばしい。
・要望事項(1)の実証用の既存車両置き換えのための3輪輸入許可については、公共事業運輸大臣の同
意が必要なので、矢島から直接、大臣に説明してほしい。金曜日に場をセットする。
・要望事項(2)の実証用に輸入する EV の税減免は了解した。
・要望事項(3)の次年度調査への協力支援も了解する。
Ⅳ-56
H25 JCM DS 最終報告書
・EV が本格的に導入され、EV 組立も国内で実施できるようになれば画期的だ。
・最初に公的資金を活用して設備導入し、詳細なビジネスモデルを立案し、その後民間ビジネスが本
格的に展開する流れも PPP(公民連携)といえる。
・公共交通車両は、ビエンチャンバス公社での導入失敗のように単なる導入だけではためで、しっか
りしたメンテナンスが必要で、そのためには良質な輸送サービスをおこない、旅客運送収入があがり、
運送事業、車両メンテナス事業ももうかる、ウィンウィンの関係を築く必要があるので、公共セクタ
ーとの関わりをもちながら事業を進める PPP が望ましい。
(注、必ずしも第3セクター的な運営主体で
はなく、事業の上流部分で公共側の視点をとりこんんでビジネスモデルを構築し、民間ビジネスが展
開するという意味のようだ。
)
2)JICA
・JICA 調査3年目は、モデルプロジェクトの実施に向けて中小企業提案型実証・導入事業の実施を考
えている。一方、GEC 調査は方法論実証が完了し、JCM 設備補助事業にむけて国際コンソーシアムによ
る PS 調査の実施が考えられている。モデルプロジェクトはビエンチャンとルアンプラバンでの実施を
計画しているので、両事業で適切な役割分担と連携が必要である。LPB 事業は実施体制は出来上がっ
ており、事業規模は EV-Jumbo100-200 台の規模である。一方、VTE 事業は事業実施体制はあるが、こ
れまで、この体制による EV 導入はまだ実施されていないが、EV-jumbo 度輸入台数は 1000-4000 台規
模と、はるかに大きい。両方の事業で日本製 EV を導入することが目標となる。
・日本製 EV の適用性を実証するために、まず JICA 事業として LPB に日本製 EV を導入し、GEC 事業で
は VTE で国際コンソーシアムによる JCM 事業実施に向けた PS 調査を実施する方向性を確認した。
・ただし、JICA 事業が採択されなかった場合には、GEC 事業を LPB も含めて実施できるような柔軟性
をもたせられないだろうか。LPB での EV 化事業を空白にはできない。
3)LaoGreen
・12 月いっぱいで GECJCM 事業による試験運行を終え、その後増強した車両を含めて 14 台(EV-Jumbo
6台、E-minibus6台、人貨両用車2台)で旅客運送事業を本格的に開始した。なお、人貨両用車 2 台
は繁忙期の応援以外には使用していない。旅客運送事業の現状と問題点は、以下のとおり
・事務所には Manager1人、accountant1人、Driver9 人が所属している。
・現在の土地の売却話があるので、その時には郊外に移転する可能性がある。
・路線バス事業は、バス6台で4路線を運行している(朝・晩は6ルート、日中は4ルート)
。6ルー
ト運行するためには、もう2台が必要。大きな問題はなく事業売り上げも安定してきた。
・1月の利用客数は 5282 人で、路線別では 643 人、833 人、2481 人、1325 人である。
・tuktuk 協会や DPWT サイドからも、特に問題は指摘されていない・
・1乗車 3000kip(一部 5000kip)で安いので好評だ。今後も需要は拡大する。
・運転主は固定給与に乗客数が多いと 10%程度の割り増しがつく体系だ。
・運賃収入を正確に申告させるために、バス車両にカメラをとりつけ、その映像を事務所でチェック
している。
・tuktuk 事業は、tuktuk 協会との競合をさけ、旅行会社・観光会社の貸切主体でサービスしている。
運転手込みで、USD20./day。Skylove とおなじくらいの値段だ。8:00-17:00 の運行で、市内のみを運
Ⅳ-57
H25 JCM DS 最終報告書
行範囲として、滝にはいかない。
・頭金 US$2000 で 80,000kip/日、頭金なしの場合には 100,000KIP/day でなら運転手に貸し出しても
かまわない。
・やはり、tuktuk 協会との調整ができないので、EV-jyumbo も貸切運送事業としてうんようせざるを
得ない現状がある。目指すべきは、JICA 主導で市内 Jumbo の EV-Jumbo への転換事業である。リース
料 80K-100K/day は 80 万円程度の中国製 EV なので、Pecolo でも同様の水準で貸し出し可能なビジネ
スモデルを構築する必要がある。結局、1日2シフト制ということになる。
4)DPWT(LPB)
・EV のバッテリーが3年もつといっても、1年で寿命がくることはないか。
・Next Step で導入を目論む車両は Li-ion バッテリーなので、3年持つ可能性は高い。寿命といって
も容量が 70%程度におちるだけなので、HEMS 用バッテリーなどとして活用の道が開ければ、EV 使用後
も残存価値があることになる。太陽光パネルなどの導入とあわせた Li-ion バッテリーの活用策を検討
したい。EV 都市 LPB からゼロエミッション都市 LPB へのパラダイムシフトが必要になる。
・EV-Jumbo の認知度も上がってきており DPWT にも欧米の観光客から直接、EV-Jumbo に乗って観光し
たいとの問い合わせが来たことがある。
・EV-Jumbo のドライバーを tuktuk 協会から出さないことが、やはり問題になっている。
・また、LaoGreen の車両には登録番号のない車両がある。また、必要な許認可、路線番号の表示など
をしっかりするように Laogreen を指導している。
・来年度事業が採択されるように期待するし、支援もする。
5)LPB トゥクトゥク協会
・ラオグリーン事業については、路線バス事業が客の要望に応じて路線から外れて運行する場合があ
る。トゥクトゥク事業者としては、定路線運行を徹底することを望む。
・ラオグリーンの路線バス運賃 3,000KIP/回は安すぎると思う。5,000kip くらいが適正ではないか
・路線バスおよび EV-Jumbo 事業の免許手続き、車両の登録(ナンバープレート)ができていない車両
があるので、しっかりやってほしい。
・EV-jumbo ドライバーは協会に加盟してほしい。年 US$20.0 程度の会費をおさめ、運行回数や売り上
げが会員間で平準化することに協力してもらう必要がある。
(解説)トゥクトゥク事業のカルテルに参加することへの要請である。バス、タクシーのいずれにせ
よ事業近代化を目指す時にぶちあたる最初の壁である。運賃水準を高めに維持し、少ない需要をドラ
イバー間で均等に分かち合おうとの約束である。しかし、今後導入する EV は車両価格がガソリン車よ
り高いので既存事業者と同水準の売り上げでは初期投資分の回収ができないので事業性がなくなって
しまう。基本的には、会費を納めて既存事業者と協調するが、運賃は低めにして需要を拡大、実車キ
ロを伸ばすことで事業性を確保するとともに、市民のモビリティ向上に資するようにする必要がある。
そのためには、料金表を定めガソリン車事業者もこの料金表に従い、売り上げを拡大していくことが
必要である。どうしても難しい場合には、路線バス事業に特化し、EV-Jumbo も乗合バスサービス用と
して使用することも考えられる。
・トゥクトゥク事業に参入するには。車両は商用車検に合格し、ドライバーは旅客運送事業用運転免
Ⅳ-58
H25 JCM DS 最終報告書
許証(DPWT 発行)を保持している必要がある。
・トゥクトゥク協会長の見方では、現状、需給はバランスしている。
・20 台の EV-Jumbo が導入されれば、ガソリン車のドライバーから乗り換え希望が出てくる。
6)LPB 情報文化観光部
・Laogreen のバス運行は 3,000kip/回で大変安く、好評だ。旅行者も運賃が明快なので使いやすい。
・今後導入する EV も US$10,000 以下ならば、採算性があるのではないか。
・路線バスは路線別に車体の色を変えたら、旅行者にもわかりやすい。
・また旅行者用の1日フリー乗降切符なども導入したらいい。
6.同種プロジェクトの実現可能性に関する調査結果
6.1 日本製技術の導入
本プロジェクトは、ルアンプラバンの観光事業者が長期的にルアンプラバンの環境を保全し、観光地としての魅
力を維持・増進するために EV 事業会社を設立し、EV 導入・普及を目指している。導入車両に日本製基幹部品
を使用することで、良好な EV 品質を確保可能である。また、鉛電池(開放型)を使った EV はバッテリーを中心と
したメンテナンスが重要であり、充電ステーション・整備工場の整備、ならびに従業員の EV 教育が必要であり、
例え民間主導の事業であったとしても、そうしたインフラ部分で日本が貢献できないか検討する。
(1)日本製技術等が導入されるための JCM 方法論の適格性要件
日本製技術が導入されるための JCM 方法論は、適格性要件 3 に示される。
要件3:本方法論を適用できるプロジェクト活動に含まれる電気自動車は、a)ラオスの関連基準に適合
し、b)車両登録する車両で、c)適正に廃車手続きを実施することが見込める車両とする。本要件を満た
す車両の特定方法は、プロジェクト設計書に記述する。
(2)適格性要件化した理由及び根拠
ラオスでの普及対象とする EV は、1)
Li-ion バッテリー、高出力モーターを搭載し、高速走行可能
な EV(次世代 EV)、2) 鉛酸バッテリー、低出力モーターを搭載する低速走行の EV(LSEV)である。
1)の次世代対応型 EV は日本や欧米の EV メーカーが世界市場に供給するグローバル商品である。現時点
では日本製自動車が世界市場をリードしており、またラオス市場に興味を示す欧米系メーカーもないこ
とから、ラオスで需要が顕在する場合には日本製技術が導入される可能性が高い。
一方、LSEV は各国で国内市場向けに小規模に生産・販売される車両が多い。例えば、ラオスには中国
製 LSEV の導入実績があるが、車両の売り切りでアフターサービスが一切ないため、バッテリー寿命と
ともに利用されなくなるケースもある。日本の EV 技術は、車両、インフラ、人材の三位一体による EV
システムの輸出であり、この点で市場優位性がある。また、輸入電気自動車の品質保証、アフターサー
ビスを担保するために電気自動車の輸入許可基準の制度化が必要である。
(3)ラオスの EV 普及状況
ラオスでは、既に安価な電力に目を付けた事業者が電気自動車による公共交通サービスを開始してい
る。
1) ビエンチャン
ビエンチャンには中国製LSEV(12人乗り)13台が導入されバス公社で乗合バスとして使用されて
Ⅳ-59
H25 JCM DS 最終報告書
いる。しかし車体の劣化、バッテリー寿命、EV管理技術が十分でなく、実働率は低い。
2) サバナケット
サバナケートでも中国製LSEV(12人乗り)が約10台導入され路線運行している。
3) ルアンプラバン
世界遺産都市ルアンパバン市でもEVによるtuktukタクシーや観光客向けホテル送迎サービスが
開始された。12月14日にはルアンパバン市で行われた仏教催事には電気自動車14台が導入され、副
首相をはじめとした要人移動に使用された。その後、この車両を使用して電動tuktuk8台、電動ミ
ニバス6台の運行が2014年1月から始まった。
4) その他
これ以外に、ルアンプラバンやパクセーで観光用のカート(EV)が少数みられる。電動バイクは、か
つて普及した時期があったということだが、現在は主に北部で少数ではあるがペダル付き電動自転車を
学生が使用している。次世代 EV は未導入の段階である。
(出典:ラオス国低公害型公共交通システム導入に向けた情報収集・確認調査、2012年10月、JICA・アルメック)
図 26 ラオス国内における電気自動車導入の動き
Ⅳ-60
H25 JCM DS 最終報告書
(4) 日本の技術の具体例
導入モデ
ル例、価
格
仕様
Suzuki e-Let’s, e-Let’s W
Prozza miletto Li500
Terra A4000i(未発売)
30-40 万円
45 万円、A1000 開発中
定員:1名
重量:72Kg,80kg
航続距離:30km,60km
バッテリー:Li50V14Ah/5h,x2
電動機定格出力:0.6kw
19 万円+充電器(2万円)
miletto EV100 開発中
1名
52kg
47km,40km
Li-ion 48V15Ah
0.35kw, 0.5kw
ペダル付
EV100、航続距離 100km 発表
TICOST600
e-trike from Prozza/Terra
TTET e-tuktuk(QQ-T3)
80-100 万円
ST600/TICOST600
3860*1430*1940mm
車両重量 830kg
航続距離 120km
最高速度 60km/h
定員1+7名
72V/5KWDC/48V5kwAC
鉛 6V 190Ah*12pcs/8pcs
Pecolo:90 万円
最高速約 40km/h
定員7名(1+6名)
40km(充電 3.5 時間)
Li-ion バッテリー48V、5kw
スワッピング方式
50 万円
5kw
48V
日本製部品
鉛バッテリー
スワッピング方式
導入モデル例、
2名
118kg
65km
Li-ion 48V40Ah
1kw 未満
普及版として開発中のモデルは
鉛バッテリー
価格
仕様
関連設備等
サイズ(mm)
車両総重量(kg)
価格(万円)
最高速度(km/h)
モーター種類
定格出力(kw)
電圧(V)
普通充電設備、バッテリースワップ設備、車庫
日産リーフ(モデル X)
三菱 i-miev(G グレード)
ST-600(中国製)
4445x1770x1545
1795kg、定員 5 名
376
145km/h、200km/充電
三相交流同期
80kw、バッテリー 24kwh
360V、Li-ion 電池
3395x1475x1610
1330kg、定員 4 名
290
130 km/h、180km/充電
永久磁石式同期型
25 kw、バッテリー 16kwh
330V、Li-ion 電池
3660x1450x1880
1550kg、定員 8 名
80
55 km/h、110km/充電
直流
5 kw、バッテリー 190Ah
72V、鉛酸電池
Ⅳ-61
H25 JCM DS 最終報告書
6.2 ホスト国への貢献
本プロジェクトは、ラオスにおける電気自動車普及を目指した第1歩としてのモデルプロジェクトと
位置付けられる。本事業が成功し、本格的な普及の道筋が確かなものとなることにより、以下の便益が
期待できる。
1) 交通騒音低減による都市環境改善。特に世界遺産保護地区内の静穏性の回復
古都・世界遺産都市には欧米・アジアなど各国から旅行者が集まる。ルアンプラバンは都市観光としてよりも避
暑をかねてくつろぎを求めてくる旅行者が多い。都市規模が小さいので自動車交通による排気ガスよりも騒音の
環境負荷が大きい。沿道で自動車単体の走行音を簡易測定すると4輪自動車が 60dB、バイク 65dB に対し、ジ
ャンボは 70dB もあり、市民から騒音で環境を悪化させている元凶との声が強い。電気自動車導入により騒音負
荷を軽減し、観光地の魅力を増進し、観光客数の増加、地域経済・外貨収入の増大など経済的便益の拡大に
寄与できる。
2) 化石燃料輸入減少による GDP 増大、外貨支払い減少、通貨安定
化石燃料の輸入減少は輸入額の減少による貿易収支の改善、GDP の拡大のみならず、外貨支払いを減少す
ることで通貨の安定に寄与する。
3)バッテリー製造・電気自動車組み立てなど電気自動車関連産業の立地と関連雇用
バッテリー製造では多くの電力を消費するのでラオスはバッテリー製造適地である。電気自動車の普及にあわ
せてバッテリー製造工場の立地可能性が高まることが予想される。また、電気自動車の需要が継続的に見込め
るようになると、コスト節減・税負担回避のために組立工場の国内立地可能性が高まる。こうした工業機能の立地
は関連雇用を創出し、従業員の技能習得によりラオスの技能水準の向上に寄与する。
6.3 環境十全性の確保
EV 充電ステーション、整備工場は、市街地中心から約 2KM の地点に設置することになった。面積は約 1ha、
このうちの 50%程度を利用できる見込みである。周囲はわずかの住宅と農地であり、整備・運用に伴う周辺環境
への影響は限定的である。唯一、バッテリーメンテナンスに伴う鉛の土壌汚染対策を講じる必要がある。我が国
ではすでに確立した技術なので、関連企業の進出を含めて、リサイクル技術の移植を講じる。
図 27 ステーション・整備場の位置と用地の現況
Ⅳ-62
H25 JCM DS 最終報告書
6.4 その他の間接影響
環境面以外の間接的な悪影響について、記載する。
本プロジェクトは、ラオスにおける電気自動車普及を目指して、実施した JICA 調査で提言された普
及戦略の第1ステップのモデルプロジェクト(民間主導普及コンポーネント)と位置付けられる。本事
業を成功させ本格的な普及の道筋を確かなものとするため、以下の便益について今後検討する。
・交通騒音低減による都市環境改善。特に世界遺産保護地区内の静穏性の回復
・電気自動車率先導入による観光都市としての差別化と観光振興・観光収入増大
・化石燃料輸入減少による GDP 増大、外貨支払い減少、通貨安定
・バッテリー製造・電気自動車組み立てなど電気自動車関連産業の立地と関連雇用
(悪影響)
・低速自動車が交通流に混入すると円滑な道路交通の支障になる恐れがある。低速電気自動車(LSEV)
は走行可能な区域、路線区間を指定することにより、悪影響を惹起しないようにする必要がある。
・LSEVはその低速走行性から衝突安全性に関する保安基準の適用を除外されている。LSEVについては、
スピードリミッターによる最高速度制限、また、30~40km/hの最高速度として、それ以上の速度で走行
できる車両はLSEVに含めず、一般車と同様の保安基準へ適合することを義務付ける必要がある。
・粗悪な電気自動車の普及を抑えるために、品質保証やアフターサービスの整った販売店での購入を義
務付けるのが望ましい。
6.5 同種プロジェクトの開発・普及に関する今後の見込み及び課題
・表3各国電力のCO2排出係数に示す国のうち排出係数が小さい国はEV導入によるCO2排出削減ポテン
シャルが高い国である。パラグアイ、ザンビア、ネパール、アルバニア、タジキスタン、コスタリカな
どが該当する。
・こうした国の自家用車保有率が低く、また石油製品輸入額が多い国は、ラオスと同様、EV導入効果が
高く、好適地と考えることができる。
・日本技術のEVは大手自動車メーカーが製造するリチウムイオンバッテリーで駆動する次世代型電気自
動車が中心であったが、近年、フィリピンのe-trike普及事業や国内のモビリティニーズの多様化につれ、
中小企業を中心に鉛バッテリーを使ったLSEVが開発されつつある。こうした中小企業の海外進出は日本
の技術輸出の底上げとなるので、支援制度を活用して推進していく意義の高い事業である。
・プラント設備輸出といったJCM事業と異なりEV普及事業は、いわば小規模プラント(EV)を不特定
多数のユーザーに向けて導入する事業であり、モニタリングや設備の処分等に特有のむずかしさがある。
・こうした特性は、省エネ製品の一般普及事業にも通じることから、特有のむずかしさを克服する考え
方を整理・制度化することで、小規模ではあっても普及件数を伸ばすことで地球温暖化対策推進に寄与
することができる。
7. その他
特になし
Ⅳ-63
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