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RED 方式の性能向上のための最適パラメータの研究 106159 原田 学
平成 14 年度卒業発表会(日本大学工学部情報工学科) A-3 RED 方式の性能向上のための最適パラメータの研究 Research on the optimal parameters for the improvement of RED performance 106159 1 原田 [竹中研究室] はじめに 近年、インターネット利用者の急速な普及によるトラ ヒックの増加とともに、インターネットの音声、画像メ ディアの利用によるマルチメディア化に伴い、QoS (Quality of Service) 保証の実現が重要課題となっている。 また、インターネットの輻輳防止やユーザ間での公平な 利用を目的として、ルータにおける輻輳制御が提案され るとともに実装されて来ている。こうしたルータの制御 方式の中では、RED (Random Early Detection) 方式[1] が代表的である。しかし、RED 方式では、その制御パラ メータが静的に設定されており、インターネットの動的 なトラヒック変動に必ずしも最適にチューニングされて いるとはいえない。この問題に対処するため、動的なト ラヒック変動に適応する dt-RED (RED with dynamic threshold control)方式[2]が提案されその性能が評価さ れている。しかしながら、dt-RED 方式のチューニング パラメータの数も多く、その調整もそれほど容易ではな い。 本研究は、RED ルータの性能の向上を図るため、その 輻輳制御パラメータのスループット特性に与える影響を 明確にするとともに、ネットワーク環境の変動に対して 安定した性能を保証するパラメータ設定法の確立を図る ことを目的としている。 2 学 ルータにおける輻輳制御方式 2.1 RED 方式のアルゴリズム RED 方式は、平均キュー長を用い確率的なパケット廃 棄を行うことでバースト的(連続的)なパケット廃棄の発 生を防止する。これにより、従来の DT(Drop Tail)方式 において発生するバースト的なパケット廃棄を防止する ため、TCP コネクションのスループット、及び公平性の 向上が期待できる。 RED 方式 における平均キュー長( q )は、パケット到 着毎にローパスフィルタの重み係数(wq)を用い、現在の キュー長(q)から式(1)より求める。これにより、平均キ ュー長の急激な変動を緩和する。 q ←(1−wq) q +wq・q (1) この平均キュー長( q )を最大閾値( max th )、最小閾値 ( min th )と比較し、到着パケットに対して以下のような 処理を行う。 (1) q ≤ min th ならば到着パケットをバッファに全 て格納する。 (2) min th ≤ q ≤ max th ならばパケット廃棄確率 以下の式(2)と(3)を用いて Pa を計算し、その確率 で廃棄する。(count:は廃棄確率を count の増加と ともに緩やかに増大させるために使用される。) Pb ← q− max th max p max th − min th (2) Pa ← (3) 2.2 Pb 1 − count × Pb (3) max th ≤ q ならば到着パケットを全て廃棄。 dt-RED 方式のアルゴリズム dt-RED 方式は文献[2]で提案された RED 方式の改良 方式であり、ルータの輻輳状況により maxth、minth お よび maxp を変動させる。 (1) maxth の制御 平均キュー長( q )が maxth に近づいた場合、maxth を 増加させ、バースト的なパケット廃棄を防止し、輻輳を 回避する。一方、平均キュー長( q )が minth に近づいた 場合、maxth を減少させ平均キュー長を短くすることに よって、全体のパケット廃棄率を大きくし、平均キュー 長を短くすることを目的としている[2]。 (2) minth の制御 平均キュー長( q )が minth より小さい場合には、minth を増加し、リンク利用率の向上を図る。リンク利用率が 増大すると minth を減少させ、確率的なパケット廃棄を 行い、輻輳を回避させる。 (3) maxp の制御 maxp の増加は、maxth の値を大きくしても平均キュ ー長の増加を防止できない場合に行う。これにより、パ ケット廃棄確率を増加させ、平均キュー長の増加を防止 し、輻輳の回避を行う。maxp の減少は、minth の値を 大きくとってもリンク利用率の低下を防止出来ない場合 に行い、パケット廃棄確率を小さくしリンク利用率が向 上する。 3 従来研究と問題点 これまでの研究では、フロー間の公平性に特に着目し、 シミュレーションにより、DT 方式と RED 方式の性能の 評価が行われている[2]。この中で、ネットワークの環境 と輻輳制御パラメータが適応している場合、フロー間の 公平性が保たれる事が示されている。しかし、ルータの バッファサイズや TCP フロー数が変化した場合、固定の 輻輳制御パラメータを用いた場合では、必ずしもフロー 間の公平性を保証できない。 また文献[2]では、dt-RED 方式と、環境ごとに maxth を変動させた RED 方式との比較評価が行われている。 この中で、DT 方式の性能を確認し、dt-RED 方式は、環 境ごとに maxth を変動させた RED 方式と同等以上の性 能がでることが示めされている。 しかし、dt-RED 方式は、2.2 で述べたように、多くの 制御パラメータのチューニングが必要であり、実際の運 用ではその調整が困難であることが想定される。また、 制御パラメータが動的に変動することより、パケット廃 棄確率も変動することになる。これにより、dt-RED 方 式では高い公平性を期待することが出来ないと推測でき る。 そこで、本研究では、様々なネットワーク環境で、RED 方式のパラメータがどのような影響を与えるかを明らか 平成 14 年度卒業研究発表会 A-3 4 NS シミュレータによる評価 4.1 評価対象パラメータ シミュレーションによる事前評価により、文献[1]に示 された RED 方式の基準値パラメータでは、必ずしもフ ロー間の公平性を実現することはできないことを確認し た。しかし、この評価よりルータにおけるバッファサイ ズに応じて maxth の変動させることにより、RED 方式 の公平性が向上することを確認できた。 そこで、本研究では maxth とバッファサイズの関係に 着目して RED 方式の性能評価を行う事にする。 4.2 シミュレーション構成 サイズに応じて maxth を変動させた RED 方式の公平性 が高いことがわかる。またその中でも、maxth をバッフ ァサイズの 80%に設定すると公平性が高い。 1 fairness index にし、ネットワーク環境の変化に対応できるパラメータ 設定法を明らかにすることを研究のねらいとしている。 0.95 0.9 0.85 0.8 0.75 100 maxth 15 図.2 シミュレータには、カリフォルニア大学バークレイ 校で開発されたネットワークシミュレータ ns-2 1b9a[3] を用いる。 TCP Source 1 1000 10000 buffer size maxth 30 maxth 80 公 平 性 の 評 価 (BW=1.5[Mbps], 伝 播 遅 延 時 間 =4[msec],buffer size=100,1000,10000) ボトルネックリンク帯域が広帯域になると、maxth に 関係なく公平性が高いことがわかる。また、この環境下 でも公平性の値が小さな変動であるが、バッファサイズ の 80%に設定した maxth の RED 方式の公平性が高い。 Buffer B(packets) fairness index 1 100(Mbps),2(msec) Drop Tail/ RED Router Destination TCP Source 2 B W( Mbps), t(msec) 100(Mbps),2(msec) 0.99 0.98 0.97 0.96 0.95 100 100(Mbps),2(msec) 1000 buffer size maxth 15 maxth 30 10000 maxth 80 TCP Source 100 BW:ボトルネックリンクの帯域 t:伝搬遅延時間 RED:初期のパラメータ max_th=15(packets), min_th=5(packets) 図.1: max_p=0.1,w_q=0.002 ネットワークトポロジー TCP Source を 100 本設置し、それぞれ 100Mb/s の送信レ ートと 2msec の伝播遅延時間としたものをルータに接続する。 ルータから Destination へのリンクをボトルネックリンクとし、そ の帯域と伝播遅延時間の値を変化させることにより、様々な 環境を想定する。この環境で、RED 方式の閾値である maxth を基準パラメータ値 15 からバッファサイズの 30%、80%と変 動させていき maxth とバッファサイズの関係を評価する。 4.3 公平性の評価基準 公平性の評価指数として Fairness Index 値[4]を用い る。Fairness Index 値は以下のように定義される。n を フロー数、 xi (1 ≤ i ≤ n ) を n 個の ack 数とする、n 個 のサンプル値の公平性をあらわす指標 される。 (∑ xi ) n f = f i =1 n f は以下で定義 2 n∑i =1 xi 2 図.3 公平性の評価(BW=15[Mbps],伝播遅延時間 =4[msec], buffer size=100, 1000, 10000) (1 ≤ i ≤ n) (4) は0以上1以下の値を取り、1に近いほど公平性が高 い。 4.4 評価結果 ボトルネックリンク帯域が 1.5Mbps の環境では、既 存値パラメータの RED 方式の公平性より、各バッファ ボトルネックリンク帯域に関係するネットワーク環境 では、制御パラメータである maxth をバッファサイズの 80%に固定することにより、高い公平性を実現すること が確認できた。 5 むすび RED 方式のチューニングパラメータである maxth を、 バッファ数に比例してある程度大きくすると既存の RED 方式より公平性が向上することを明らかにした。そ の中でも、maxth をバッファサイズの 80%に設定するこ とが有効的である。 今後は、RED 方式の他のパラメータについても評価す るとともに、様々なネットワーク環境で評価を行い、実 環境で用いる事のできる RED 制御パラメータを明らか にする必要がある。 参考文献 [1]Sally Floyd and Van Jacobson Random Early Detection Gateways for Congestion Avoidance IEEE/ACM Transactions on Networking, V.1 N.4, August 1993 [2]長谷川 剛、他著 バックボーンルータにおけるR EDの動的閾値制御方式 電子情報通信学会技術研究 報告(NS2001−11)、April2001 [3]The Network Simulator -ns-2 http://www.isi.edu/ns nam/ns/ [4]R.Jain,”throughput fairness index :An explanation,” ATM Forum Contribution 99-0045,February1999.