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21 世紀型の地域バス交通マネジメント

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21 世紀型の地域バス交通マネジメント
「21 世 紀 型 の 地 域 バ ス 交 通 マ ネ ジ メ ン ト 」
−住民、行政、事業者による地域モビリティ確保の方策を探るー
“Regional Bus Transport Management to be Suitable for the 21st Century”
Discussion of securing mobility in region cooperated by the inhabitant, the transport provider
and the administration.
講演・討議録
平成 16 年 12 月
(財)計 量 計 画 研 究 所
The Institute of Behavioral Sciences
目
次
はじめに ·························································
1
基調講演 ·························································
3
基調講演1 ························································
3
「21 世紀型の地域バス交通マネジメント」
中 村
文 彦
横浜国立大学大学院
助教授
基調講演 2 ························································ 11
「イエーテボリのモビリティ・サービス
∼ STS とフレックスライン 2 つの重要な社会的ツール ∼ 」
ユングヴェ・ヴェスタールント
ロジスティック ツェントルム
パネル討論 ······················································· 21
司
会
進
行:中 村
文 彦
横浜国立大学大学院
コメンテーター:加 藤
博 和
名古屋大学大学院
助教授
助教授
プレゼンテーション1 ·············································· 21
「地域交通の主体は誰か」
∼「協働の時代」の市民参加の視点から∼
中 谷
英 世
横浜市青葉区民会議
広報委員長
プレゼンテーション2 ·············································· 33
「地域に根ざした NPO が、住民の求めるバス路線を実現」
西 脇
良 孝
NPO 法人生活バス四日市理事長
プレゼンテーション3 ·············································· 43
「市民との協働によるゾーンバスシステムの導入」
泉 山
良 男
∼盛岡市オムニバスタウン計画∼
盛岡市企画部長
プレゼンテーション3 ·············································· 53
「 「おでかけ交通」による地域交通の確保」
∼北九州市における取り組み∼
東
義 浩
北九州市建築都市局計画部都市交通政策課係長
i
参考資料 ·························································· 65
○
当日配付資料
・生活バスよっかいち
「設立趣旨書」
◇ スタッフ
財団法人 計量計画研究所
研究部
交通政策研究室
高橋
勝美
事務局
企画課
谷貝
等
東北事務所
秋元
伸裕
研究部
須永
大介
ii
交通研究室
はじめに
はじめに
この講演・討議録は、平成 16 年5月 24 日
に「高齢者・障害者交通/地域交通のセミナ
ー」の6つのセミナーの1つとして、財団法
セミナー4:
21世紀型の地域バス交通マネジメント
人計量計画研究所 IBS が主催して実施した国
際セミナーの記録である。
「高齢者・障害者交
−住民、行政、事業者による
地域モビリティ確保の方策を探る−
通/地域交通のセミナー」は、日本で初めて
開催された「高齢者・障害者のモビリティと
交 通 に 関 す る 国 際 会 議 」 の 第 10 回 大 会
TRANSED2004 特別セミナー
(高齢者・障害者交通/地域交通のセミナー)
(TRANSED2004)と併行して開催されたセ
ミナーである。
バス交通サービスは、高齢者や障害者等の
このような状況のもとで地域のバス交通サ
移動制約者のみならず市民の日常の足として
ービスを維持、向上させるためには、バスに
重要な交通サービスである。しかし、平成 14
関係する主体である利用者・市民、バス事業
年 2 月の規制緩和によって、バス事業の参入、
者、地方公共団体の各主体が、それぞれの役
撤退の仕組みが変わり、地域にとって望まし
割を自覚、認識し、相互に協力して地域のバ
い水準にバス交通を維持、向上していくこと
ス交通をマネジメントしていくことが重要で
が困難な状況が生じることが想定されている。 ある。昨今は、我が国においてそのような取
り組み事例が見られるようになってきている。
地域のバスサービス 維持・向上
利用者・市民
サービス
提供
利用
サービスメニュー
の提案
地域の負担
評価
バス事業者
バスサービス
目標水準の
実現・推進
サービスメニュー
の提案
図
移動支援策
( 直接実施)
ニーズの
すい上げ
(モニタリング)
利用者
ニーズ
地域の
交通のあり方
地方公共団体
バスサービス水準
目標
住民、事業者、行政の3者による地域モビリティ確保の枠組みのイメージ
-1-
本セミナーは、このような問題認識を踏ま
最後に、このセミナーを IBS が主催する機
え、地域のバス交通サービスを維持、向上さ
会をご提案くださった秋山哲男教授(東京都
せるために取り組んでいる、利用者・市民の
立大学大学院)、並びにこのセミナーの企画立
方と、地方公共団体から事例を紹介してもら
案の際にご指導くださり、基調講演と司会進
い、それぞれの工夫した点や、現行法制度上
行をお引き受けくださった中村文彦教授(横
の問題・課題や、今後の展望、地域バス交通
浜国立大学大学院、当時助教授)、コメンテー
マネジメントのあり方、問題、課題について
ターを快くお引き受けくださった加藤博和助
討議し、今後の我が国の地域交通の問題を解
教授(名古屋大学大学院)、基調講演をお引き
決する糸口を探ることをねらいとしている。
受けくださったユング・ヴェスタールント氏
本書が今後の地域交通の問題を解決するに際
氏(ロジスティック・ツェントルム)、パネリ
して広く活用されることを期待したい。
ストをお引き受けくださった中谷英世氏(横
浜市青葉区区民会議広報委員長)、西脇良孝氏
(NPO 法人生活バス四日市理事長)、泉山良男
氏(盛岡市企画部長)、東義浩氏(北九州市建
築都市局計画部都市交通政策課バス交通係
長)に心からの謝意を表したい。
平成 16 年 12 月 22 日
財団法人
-2-
計量計画研究所
基調講演
基調講演1:「21 世紀型の地域バス交通マネジメント」
横浜国立大学大学院 助教授
中村
文彦
TRANSED 2004
セミナー4 基調講演1
21世紀型の
地域バス交通マネジメント
横浜国立大学大学院
環境情報研究院
助教授 中村文彦
講演の構成
バス交通のマネジメントとは
わが国での変化
海外でのやり方
考察
1.
2.
3.
4.
1.バス交通マネジメントとは
この計画、運営、運行というものに関して
講演の構成を手短に申し上げますと、バス
日本の例を見てみますと、これまでは行政は
交通のマネジメントというのは一体何なのか。 ほとんど何も関わっていません。時々路線の
日本では最近やり方がどうも多様になってい
案を作るときがありますが、効力が全然無い
る。その一方で海外でもおもしろい例がいく
ので実現にはなかなか至っておりません。
つかある。そこで少し考えてみようという順
序でございます。
計画・運営・運行の3段階
最近、私いろいろな資料で申し上げている
• 計画
のは、適切な日本語であるかどうか自信がな
– サービス内容の立案(路線、バス停位置、運行方
式、運行時間帯、頻度、運賃など)
いところもありますが、計画、運営、運行と
• 運営
– サービス実施管理、費用とその負担の管理
3つの局面という言い方をしています。
計画というのはバスの路線、バス停の位置、
• 運行
– サービス実現のための車両と職員の管理
運行の仕方、運行の時間帯、頻度、運賃など
を決めるところです。それに対して、それら
を実際に実施してかかる費用、それから運賃、
その他の収入、補助金などの扱いをするのが
これまでの日本の都市内公共交通
マネジメント、運営の部分です。そして実際
行政
事業者
のバスサービスは、車両、それから運転手さ
計画 ・路線案(効力なし)
自ら考える
ん、職員の管理をきちんとしていかなければ
運営
自ら決める
時に補助金を申請
なにもしない
ならないし、車両を配車して人を割り当てて
運行
いく部分、オペレーションということになり
ます運行があります。
-3-
車両と人の管理
大半が民間ですけども、民間のバスカンパ
はコミュニティーバスを導入していきたいと
ニー、事業者が路線を考え、運営方法も決め、
いうことに対して、武蔵野市の例にならって
時には補助金も申請し、そして日々車両と人
行政が主導で計画を進めていきました。
を管理するというやり方がひとつあります。
右側に書きましたように、今までの事例で
ただ例外がいくつかございまして、道路運
は他の既存路線について行政はタッチしない
送法という法律の 80 条の中にあるものなど
ので、ここは空欄だったのですが、コミュニ
は、その一つであると思っています。例えば、
ティーバスが動いている時間帯はコミュニテ
お客さんが少なくてバス会社がギブアップし
ィーバスを他の路線のバスと区別する必要は
て廃止した路線を行政が引き継いで計画、サ
ない。市民にとってはどのバスも一緒である
ービス、中身を決める。そして車両も職員も
ということから、運営の部分に行政の関与と
行政の方で行い、運営も主導していくような
いう仕組みを入れました。このことは、私自
例もあります。このような場合というのは、
信は大それたことではないと思っていたので
あくまでも例外で基本的には水色の丸のよう
すけれども、具体的に見ると、コミュニティ
に、行政というのは何もしていませんでした。
ーバスが走っている時間帯は路線バスの運賃
が半額以下に下がると言うことになります。
2.我が国での変化
例外の例:80条バス(廃止代替)
ところが 1995 年以降、過疎地ではなく都市
部に行政がかなり乗り込んできた例がありま
行政
す。東京の武蔵野市のムーバスが一番きっか
けづくりになっていると理解しています。こ
計画 廃止路線を引き継い
で立案
れは計画の段階でサービス内容や立案に対し
運営 主導
て行政が主導的な役割を果たし、運営の部分
運行 主導(白ナンバー)
事業者
でも運行時の欠損補助を行う。事業者の方は
何をするかといいますと、計画の所では協議
典型的コミュニティバス
1995年以降
会の助言等を致しますけれども、主導権、主
節は行政にある。運営の所に関しても既存の
行政
バス事業者としてのノウハウは使いますが、
事業者
これも主導権はバス事業者にある。
計画 サービス内容立案で
主導的役割
共同で立案、協議会で
助言
実際の運行、これは配車や人の配置などにな
運営 運行費欠損補助
既存ノウハウを適用
運行
車両と人の管理
りますが、それは事業者が行うということで
地域の他の路線については、事業者が計画、運営、
運行し、行政はノータッチ
す。このように、ある都市の中で行政がここ
(例外:茨城県龍ヶ崎市→後のスライド)
はコミュニティーバスを導入すると決めたと
ころではこのようなやり方をするので、事業
既存路線との整合の試み
龍ヶ崎市(茨城県)のコミュニティバス
者はノータッチでございますが、それ以外の
コミュニティバス
行政
事業者
路線に関しては、先ほどの主題文のように事
業者が計画、運営、運行に携わっています。
計画
いずれにしましても、行政が関わるという
運営
動きが都市部で出てきております。私がお手
運行
伝いした例の中では、東京の東部にあります
龍ヶ崎という町がありますけれども、ここで
-4-
既存路線
行政
事業者
行政主導、市民主体で
主導立案
サービス内容立案
欠損負担 既存ノウハ コミュニティバス運行
ウを適用 時間帯の運賃差是正
へ(欠損補助前提)
車両と人
車両と人
の管理
の管理
かなり大変なことは確かでして、その後いろ
計画主体の多様化
各地の地区内循環バス(無料バスも)
いろな都市の方が見学に来てくれたと聞いて
おります。このように、日中の時間帯の既存
行政
NPO、市民団体 事業者
TMO
計画 承認、黙認or 立案
静観
の路線バスに関しても行政が関与するという
試みも出てきております。
運営 費用支援or
静観
これ以外にも行政と事業者の間に一つ例を
主導的活動or
費用負担
運行
作りました。これは、今日この後もたくさん
車両と人の管
理
お話が出てくると思いますけれども、NPO、市
民団体、TMO(タウンマネジメントオーガナイ
ゼーション)というような完全に行政ではな
運行費補助無の例:上下分離の発想
三郷市(埼玉県)
いグループが計画立案をしてみたり、運営の
自治体
ところの主導的な活動、あるいは、企業の負
担があるものを担ったりするような形も出て
事業者
計画 路線、バス停位置(地元調
整)、ダイヤを決定
きております。実際の車両と人の割り当てに
運営 路線毎に事業者と契約
路線図と時刻表全戸配布
運行費補助はしない
運行
関しては事業者が行っておりますが、運賃が
無料というものも出てきております。
自治体と契約?
車両と人の管理
もう一つ、埼玉県の三郷市におもしろい例
があります。この場合は、自治体がバスルー
トからバス停のロケーション、それからスケ
そして、地域全体のネットワークについてバ
ジュール等を全部決めます。そして運営の段
ス会社とコントラクト、契約を結ぶ時にサー
階でも、契約の意味合いが少し微妙ではあり
ビスの中身や補助金の中身のことについても
ますが、路線ごとに事業者と計画を結び取り
契約をします。業者はその決められた中身に
決めます。バス路線図や時刻表の全戸配布、
ついて車両と人の管理を行うという形で行っ
地元とのバス停の位置の調整になりますがネ
ている例があります。
ゴシエーションなども自治体が行います。
次に、私のここ1、2年のお気に入りがロ
通常はそういうことはバス事業者が行って
ンドンなのですけれども、ロンドンの場合も
いたのですが、自治体が行い、その代わり自
同じように自治体がバス停の位置、バスのバ
治体は運行費の補助はしないというスキーム
スレーンの仕掛けなど全部決めます。バスの
を作りました。これも極めて新しいタイプの
ルートナンバーも系統ごとに入札をします。
一つであると思っております。
つまりこのサービスをいくらで行うか、いく
実はこれ以外にもいろいろな例があります
らの補助金で行うかということで入札をしま
が、以上の例示からもわかりますように、ど
す。
うも様々なメニューが出てきているようです。 自治体の方は一日 100 本のバスを運行すると
いうのは決めますが、それを何人の運転手さ
3.海外でのやり方
んと何台の車両で行うかということは言わず
海外をみますと、実はもっと多様でありま
バス会社に考えてもらいます。
す。公営の交通局を持っていない典型的な場
あまりにケチケチやってしまうと、道路混雑
合ですけれども、多くの都市の場合には自治
でダイヤが乱れてクレームが付きます。だか
体が基本的に立案します。
らといって、たくさんの車両と運転手さんを
用意するとコストが掛かるということで、バ
-5-
ス会社の方は効率的にやろうと工夫をするわ
典型的な欧州都市
(公営交通局でない場合)
けですが、うまく運行できた場合は評価がも
らえます。少しバス会社いじめのところはあ
自治体
るのですが、この仕掛けをしていく中で自治
計画
体としてはネットワークを確保することがで
運営
事業者
自治体主導で立案する
事業者と地域全体の路線網について契約
(サービスの中身、補助金の中身も)
きますし、サービスの質は契約通りにバス会
運行
社が行っている限りは確保できるということ
車両と人の管理
になります。こういうやり方もあります。
今度はヨーロッパの時と同じ形だと思いま
すけれども、イギリスの他の都市では、少し
言い方は違っていますが、自治体主導で立案
して事業者とコントラクト、協定を結びます。
ロンドンのバスの仕組み
クオリティのパートナーシップを結ぶという
自治体
言い方をします。その時に自治体の考え方に
計画
路線、ダイヤ、バス停 参考意見をいうことだけ
位置、優先策を決定 ができる
運営
系統毎に入札制度
補助額変動
車庫位置等考慮して
応募
運行
CS調査、運行評価
調査
コスト最小化の努力
沿ってバスの運営してくれるのであれば、道
路整備をそこのところきちんとやるとか車庫
の確保であるとか、インセンティブ、これは
事業者
ある種の取引なのですね。自治体の言うとお
りにしてくれるのであれば、少し良いことを
してあげるよ。バス会社側からすると自治体
の言うとおりにサービスを企画すると少し良
イギリスの品質協定
いことがあるというやり方をしている例もあ
ると。
自治体
それからこれも私のお気に入りの都市にな
計画
りますが、ブラジルのクリチバでございます。
運営
クリチバの場合もかなり自治体が根っこを
握っております。市長に直結した都市計画研
運行
事業者
自治体主導で立案するが、事業者との契約
(協定締結)で最終決定
自治体から事業者へのインセンティブ付与
(走行路整備の先行実施、車庫確保など)
車両と人の管理
究所が基本的な計画立案をし、その基本方針
をベースにして個別の路線は都市交通局とい
う市の部署が作ります。この場合には何がネ
ックかといいますと、運賃収入は都市交通局
クリチバ(ブラジル)のバスの仕組み
が全部管理します。
それでその後、各バス会社の営業距離と契
自治体
計画
約の履行状況に応じて配分していくことにな
ります。バス会社は東京のバス、あるいはど
運営
こもそうなのでしょうけれど、この辺りはな
運行
んとかバスと決まっているのですが、その中
で一生懸命やらないとたいへんなことになり
ます。
-6-
事業者
都市計画研究所が基本方針を
立案
個別路線は都市交通局が立案
運賃収入は都市交通局が一括 コスト最小化
管理し、営業距離と契約履行状 とCS向上の
況で事業者に配分
努力
車両と人の
管理
4.考察
シアトルでは都心部に関してはバスの運賃は
さてこのように考えていきますと、一つは、
全て無料です。都心の中では何回乗り換えて
自治体による計画立案能力が問われて来てい
もどう乗ろうとも全てタダです。郊外まで乗
るということです。地元の大学が関わるのも
る時はきちんと運賃を払いなさいというやり
良いし、コンサルト支援があっても良いと思
方でございます。
いますが、これはどうも自治体ががんばらな
それからアメリカのデンバーという街です
ければいけないのではないかと思います。
が、都心の真ん中のトランジットモール、モ
ただし、NPO、市民団体がそれをきちんとサ
ール、歩行者専用の空間を走るバスですけれ
ポートする、あるいは成り代わるという方法
ども、ここに関してもここに書きました様に
もあるように思われます。
道路整備と車両購入の費用は沿道が負担して
次に、インフラストラクチュアーの部分へ
います。運行費用も沿道が負担しておりまし
の関わり方についてです。例えばバス停を決
て、例えて言うならば、ショッピングセンタ
める場合の地元についてですが、沿道のお家
ーの中にいろんな店舗、テナントが入ってい
や施設の交渉であるとか、バスターミナルの
てエレベーターがそこにある。そのエレベー
整備であるとか、あるいは車両をどうするの
ターの費用というのは理屈としてはショッピ
かという部分に関しても自治体が関わってく
ングセンターそれぞれの店舗が管理費として
る必要があるのかもしれませんが、自治体が
負担しているわけです。それを 90 度横に見ま
行ってバス会社にそっぽ向かれても良くない
すと、こういう商店街があってそれぞれお店
訳でして、バス会社に対してどうやって動機
がある。お店の方々が少しずつ負担をしてこ
付けをするかというモチベーションの高め方
ういう乗り物の費用を賄う。これは別に何も
も問われてくると思います。
不思議では無いという理解をしております。
そしてもう一つ良くないのがやりっぱなし
ですね。実際、運用を始めたら少し違ってい
た場合は微修正をするということです。バス
役割分担モデルの考察
が非常にいいところ、フレキシビリティと私
• 自治体による計画立案能力
– アイデア出しでの地元大学、コンサルの支援も
は思っていますけれど、微修正をするための
• NPO,市民団体による代替性
• インフラ部分への関与
フィードバックの仕組み、カスタマーズスト
– バス停決定の地元交渉、関連施設整備
– ターミナル部分での利用権確保
– 車両(購入、リース、性能標準対応)
クション、CS 顧客満足度調査などで市民の
方々の意向を評価したりする。このような仕
• 事業者への動機付けの方法
• フィードバックの方法(CS、モニタリング等)
掛けが必要なのではないかと思います。よく
このような話になってくると、そうは言って
もバスは採算性が問題であるとよく言われる
のですが、果たして採算性とは何なのかとい
採算性の新展開
う話になります。
アメリカの無料運行バスの事例
運賃の収入で全てをカバーしなければいけ
• シアトルのマジックカーペット
– 運賃収受方法の工夫で都心区域で実現
– 効果は減収と相殺できているか
ないというのをいつも大前提にしてなくても
• バス停停車時間の短縮効果
• 乗り継ぎ抵抗の緩和効果
良いのではないかということです。要するに
• デンバーの1マイルモール(トランジットモール)
– 道路整備と車両購入の沿道負担
– 運行費用の沿道負担
– ショッピングセンター内のエレベータの役割
運賃を取らなくても良いのではないかという
例もあります。
• 無料多頻度で回遊性向上、効果はテナントで負担
例えば私先週シアトルに行ったのですが、
-7-
日本でも実はこれに近いものが出てきてい
まず、主体間の役割分担を再認識するとい
まして、東京の例でございますが、お台場と
うことで、得意な分野を担当する。
いうウォーターフロント、丸の内という東京
次に、今バスは使ってないけども、バスを
駅の近くですね。ここでやはり利用者が無料
使いたいなと少し思っている人たち、バスを
の都心の循環バスがあります。これはそれぞ
使った方がトータルで良いという人たちなど
れ地区の企業が協賛金を払って費用を回収さ
潜在的なニーズを確実に把握する。
れています。
そして目標達成を前提に公立側が最大限の
似たような例はいろいろとありまして、私
努力をする。従来の発想の採算性だけを金科
の住んでいる横浜市でも 100 円で走っている
玉条とはしないということです。
バスというものがありますが、赤字分は地元
そして上限部分、例えば道路のバス停に関
企業も負担しています。それから福島市でも
しては自治体が結構がんばってしまう。バス
無料の事例はありますし、地方のショッピン
ターミナルも都市施設として結構がんばる。
グセンターですけれども無料のバスに近い例
それを使う側は少し違う別な議論をしていく。
がいくつもあります。つまり運賃収入で全て
それを上下に分離すると言いますけれども、
を賄うというところにこだわりすぎると選択
そのような空間上の役割分担が必要です。
肢が減るのではないかと思っております。
これまで道路上で勝手に商売していたのが
では運賃収入だけが収入ではないとして、
バスですとこの可能性は非常に良いと私は思
採算性はどうでも良いかというとそうではな
っていて、実はまだ向き合っていないのです
くて、誰がその費用を負担するのかというこ
が、ただそれにこだわりすぎるのではなくて、
とになります。自治体が負担するということ
道路を活用している公共的なシステムなので
は税金ですから、その合意をどう取るのか、
すから、お互いでサポートをしていこうとい
地元企業に負担してもらうにはどのようにす
うようなモデルもあるのではないかと思って
れば良いのか、どのような理由付けをしたら
おります。
良いのか。これができれば後はどうでも良い
ということではなくて、採算は取れないけれ
ども生産性は高くなければならない。つまり、
同じ費用で最大限のサービスというのも良い
考察:採算性から生産性へ
(運賃収入だけが収入ではない)
• 地元負担の仕組みの整理
– 自治体負担←税金(一般財源) 合意どうとるか
– 地元企業負担→企業の出資判断基準は
ですし、同じサービスをするのであれば一番
安くできた方が良いということです。もちろ
• 採算性→生産性(バスの成否の評価)
– 同じ費用で最大限のサービス供給(生産性)
– 費用負担者が納得できる結果であればよい
– 環境負荷など外部不経済は内部化して評価
ん安全面や環境面も大事ですので、その時に
環境負荷などがきちんと考えられ、それをク
リアした上で、費用、効率性、コスト削減と
いうことはとても大事だということです。い
国内の関連事例
ずれにしましても費用負担が納得できる結果
であれば良いということです。
• お台場と丸の内(東京都) by日の丸リムジン
– 利用者は無料
– 地区の企業の協賛による費用回収
このように考えていきますと、自治体の主
導で不安がある場合など、費用に関しても見
• みなとみらい100円バス(横浜市)
方を変えていくことがとても大事になってく
• 福祉バスで無料事例は多数ある
• 地方SCの無料送迎バス等限定目的事例も
多数ある
– 赤字分は地元企業が(も)負担
るということで、まとめに入らせていただき
ます。
-8-
それではこの後、それぞれに関していろい
まとめ
ろな議論を行っていきたいと思います。
• 主体間の役割分担の再認識
まず海外の事例が出てきますので、それを
– 得意な分野を担当する
– 潜在ニーズを含めたニーズの確実な把握
– 目標達成を前提に効率化の努力
– 従来の発想での採算性を金科玉条としない
– 上下分離スタイルの可能性の検討
もとにお互いもう少し理解を深めていきたい
と思います。
私の講演は以上でございます。どうもご静
• 道路上の商売→道路活用の「公共的」システム
聴ありがとうございました。
-9-
-10-
基調講演2:「イエーテボリのモビリティサービス」
∼ STS とフレックスライン 2 つの重要な社会的ツール ∼
ロジスティック ツェントルム
ユングヴェ・ ヴェスタールント
Mobility Services in Göteborg
STS and Flexline – two important social tools
Yngve Westerlund
[email protected]
Presentation at the IBS Workshop
In Hamamatsu 24 May 2004
本日は私どものイエーテボリの経験をお話
しします。
Early tests of Flexible Transport Services
in Japan 1972 (Nose)
イエーテボリはスウェーデン第二の都市で
す。大きさとしては多分浜松と同じくらい、
人口もほぼ浜松市と同じくらいだと思います。
まず冒頭にあたりまして簡単に2つのモビリ
ティサービスのお話をし、それからビデオを
見て頂きます。6分間のビデオです。その後
にこの二つの評価についてお話ししたいと思
います。
まず、初めて日本に来ましたのは大学を出
このダイヤルライドという形でやっているの
て間がない頃です。イエーテボリの都市で新
は能勢が日本では初ということで見に行きま
しい交通システムのことを学んでおりまして
したけれども、日本語は全く話せなくて一人
日本に来ました。最初に日本のフレックスシ
で遙かに能勢まで出かけていって、無事に帰
ステムを見ようということで、大阪の能勢に
ってくることができたというのは大変うれし
行きました。皆さんの中で見たことのある方
い記憶です。
は挙手をお願いできますか。能勢です。どな
たもいらっしゃらないでしょうか。
ユーザーのニーズ、乗客のニーズというこ
とですが、特に我々が常に考えていますのは
これは非常に興味深いものでした。その時
障害者や高齢者に対する交通です。社会的な
初めてこうしたものを見たのです。世界初で
孤立というのは非常に西洋の諸国では近代社
はありません。アメリカが世界初だったので
会の影となっています。
すが、このデマンドに対して対応していくと
スウェーデンのイエーテボリにおきますと
いうシステムで日本では初めてだと思います。 高齢者の数が全体の 30%、あるいは地域にお
-11-
きましては 60∼70%、一人暮らしの人が非常
て、相乗りということが可能になっておりま
に多いということです。高齢者にとっての一
す。そして様々な人方、高齢者の方々、それ
人暮らしというのは決して良いことではあり
から通院をするというような場合、この場合
ません。社会から孤立してしまいます。社会
には医療費が医療部門の方から出る訳ですし、
そのものがこうして高齢化していくのでしょ
さらにまた障害者の方々の通勤通学は別のと
うが、今日本も同じ状態であると思います。
ころから予算が出ていますが、このコンピュ
超高齢化が進んでいる訳でして、スウェーデ
ーターサービスを使うことによって、このよ
ンにおきましてもそうです。80 歳以上の超高
うに異なる支払者に対してもどの部門がどの
齢者が今後 30 年急激に増えていくという予
方々の交通費を負担するかということが分か
測が立っております。仮説ですが、この交通
るようになっています。
サービスというものをこのような高齢者の
方々に提供することによって、他の部門ない
User Needs
し分野でコストを節減できるのではないかと
いうことです。交通においてのコストをこの
ような形で削減することによって、例えば医
• Social exclusion – loneliness and isolation
a backside of modern society
療費だとか高齢者ケア面でのコストを下げる
• Rapid aging of populations
ことができるのではないかということです。
• Special needs integration for efficient
provision of mobility services
よって社会にとって長期的に便益になるので
はないかといういわば予防措置な訳です。
イエーテボリの交通サービスは大体、全体
の高齢者ケアのコストの1∼2%でしかあり
ません。ですから保険料としてはそれほど高
The fastest growing age group in Sweden ...
くない訳です。このような投資を行うのは。
Number of "older elderly persons" (80+)
比較的受け入れられるようなレベルの将来の
800
700
1000 personer
ための保険と言えるのではないでしょうか。
現在一つありますのは、特別交通サービス
という方法でありまして、スウェーデンでは
600
500
400
300
200
100
19
50
19
60
19
70
19
80
19
90
20
00
人口の5%において、例えば医師の方から書
20
30
0
法律によって義務づけられています。大体、
Source: SCB Dempgraphic prognosis
類をもらいますと、この特別交通サービスが
使えるということになっております。人口の
3%という国もあれば2%の国もありますが、
Hypothesis for Mobility Services
スウェーデンでは5%と大変高い割合になっ
ております。80∼90%が市の税金で賄われて、
補助されています。ボルボ、マルセデス、ト
ヨタといったようなジャンボタクシーである
• Important cross sector
benefits in keeping the
elderly population mobile
• Preventive measure for
elderly and medical care
とか、ないしは車いす対応の車両を使ってサ
ービスを提供しています。
• Mobility services only
1-2 % of elderly care cost
このサービスは非常に高度に洗練されたコ
ンピューターを使った配車装置を使用してい
-12-
さて STS でありますがイエーテボリ市とロ
れからウエストミッドランドは 1 回の往復あ
ンドンの場合は少し似ています。つまりサー
たりのコストがとても小さくて9ユーロとな
ビスの計画は市が行っている。しかしながら
っています。
入札ということで、いろんな民間事業者に入
次に補助金の程度でありますが、住民一人
札をさせて選ぶのです。これはスウェーデン
あたりどの程度かということであります。ス
の他の分野でも同じような形でありまして、
トックホルムの場合には 43、それからウエス
私たちの場合にはロンドンよりも前ないしは
トミッドランドが4ユーロ、それからイエー
同じくらいに行っております。ヨーロッパの
テボリは 48 になります。アメリカは分からな
諸国においてもこのようなモデルを取ってい
いのですが、カナダ、モントリオールでは8
るところもあります。スウェーデンでも共通
ということで、国によってどれだけの補助金
した方法です。全く民間でもって事業者がや
を市が出してくれるかというのが、場所によ
ってくれている。ただその前に市が計画し入
ってかなり違います。
札を行います。
Fare Service – STS
イエーテボリでありますが、人口は浜松と
Special Transport Service in Sweden
同じくらいの規模ですけれども、このような
• 5 % of population unable to use PT
特別サービスの提供者としては世界の第 10
• Requirement by law
位に入っております。昨年このような特別交
• Typically subsidized 80-90 %
通サービスを提供している市はどこにあるか
• Shared taxi or special wheel-chair vehicles
coordinated on regional basis
• Integrated with other transport
(medical etc) through advanced
booking & dispatch systems
というのを調べました。一番大きいものはス
トックホルムです。スウェーデンの首都であ
りまして、人口が 185 万人になります。この
図に示しておりますように、STS の年間の回
数でありますが 450 万回でありました。2番
目がニューヨーク市です。こちらが 220 万回
STS is contracting with operators
で人口は 800 万です。しかしながら大きな都
• About 100 special
vehicles on a daily
basis
• Using some 250 taxis
on the spotmarket out
of a contracted fleet of
1000 cars
• Special 3 day driver
training
市です。そして第3位がイギリスのバーミン
ガム辺りのウエストミッドランドというとこ
ろで、200 万回の特別交通サービスの利用件
数があり、人口は 255 万であります。シカゴ、
ロサンゼルス、フィラデルフィアといったよ
うな市もあり、そして、それらは出ていませ
んけども第7位、第8位がイエーテボリであ
ったと思います。しかし私たちの人口は 56
Some large Mobility Service Providers
万ぐらいなのですが、それでもこの年間特別
Stockholm
New
York
West
Midlands
Chicago
8,0 M
2,55M
3,80M
Göteborg Montreal
交通サービスを 170 件提供しています。1年
Population
0,56M
1,78M
間あたり 3200 万ユーロという運営コストに
STS
Permits
84000
(4,5%)
73400
(0,9%)
45600
(1,8%
38000
(1,0%)
27000
(4,8%)
14200
(0,8%)
STS trips
4,5M
2,2M
2,0M
1,9M
1,7M
1,4M
STS/all PT
1,1%
0,3%
0,6%
0,4%
1,7%
0,4%
STS costs
95M€
108M€
18M€
35M€
32M€
20M€
Cost/trip
21€
48€
9€
18€
19€
14€
Subsidy/inh
43€
NA
4€
NA
48€
8€
なっています。これは一回の往復あたり 19
ユーロというコストになります。他のところ
はストックホルムととても似ていますが、ニ
ューヨークなどはとても高くて 48 ユーロ。そ
-13-
1,85M
この表には載っていませんが日本はどうな
いてはフレックスラインが増えているという
のでしょうか。次の会議では、日本のこのよ
ことです。しかしながらもう少し距離が長く
うな補助金の状態も分かればと思っています。 なるところになると、STS の乗り合いタクシ
このようにスウェーデンは非常に積極的に補
ーが必要です。このフレックスラインという
助金を出しながら、また努力をしながら、こ
のは、例えば通院だとかショッピングセンタ
のような高齢者ないしは障害者といったよう
ーに行くなど地区内に限っていて、市地域全
な方々に優れた交通サービスを提供しようと
体をカバーしている訳ではないからです。
努めて参りました。この STS というシステム
また最近の去年の調査なのですけれども、比
はその中の一つです。
較を行いました。フレックスラインの運行し
私はしかしながらフレックスラインという
ている地域と、通常の交通しかないところ、
方法を発明しました。中村先生が先程おっし
フレックスラインがないところになります。
ゃいましたが、誰が負担をしているにしても
また計画するにしても、もっとも費用対効果
Flexline in Gothenburg
がある形で提供する必要がある訳です。それ
でフレックスラインということになりますと、
ミニバスを使うのですが、それによりこれは
可能になります。
つまり、より多くの複数の往復を一つのこ
の図のような大きなタクシーでもって賄うこ
An advanced flexible mobility service
for elderly and disabled persons
とができます。ミニバスで行うことができる
のです。さらにまた、その医学的に治療を受
けるということが必要なのかは別として、65
歳であったとしたら、このシステムが使える
Modal choice for STS and Flexline in Kortedala 2001-03
STS eligible persons local mobility travel (trips/month)
訳です。
1600
1400
さてこのフレックスラインの計画それから
1200
1000
運営でありますが、要するにこの STS という
800
600
乗り合いタクシーかあるいはこのフレックス
Flexline
400
Fare service (STS-taxi)
Linjär (Flexline)
200
Linjär (Fare service (STS-taxi))
ju
l-0
3
se
p03
no
v03
ju
l-0
2
se
p02
no
v02
ja
n03
m
ar
-0
3
m
aj03
ju
l-0
1
se
p01
no
v01
ja
n02
m
ar
-0
2
m
aj02
n01
ja
2001 年の 7 月にフレックスラインが導入され
ar
-0
1
m
aj01
0
m
ラインを使うかという選択ができたわけです。
まして、図のように利用客が増えてきました。
一方で乗り合いタクシーの方は、もともと
一ヶ月当たりこの地区では 1000 回の往復件
数が今回 400 件まで少なくなっています。つ
User Attitudes
まり、この乗り合いタクシーSTS の利用の方
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
が 60%低下しているということで、大きく低
下していることが分かります。タクシーのコ
ストということを考えますと、このミニバス
のサービス、フレックスラインよりもだいた
い 50∼80%も割高になります。よって効率改
善ということになりますので、この地区にお
-14-
7,5
8,4
9,3
Control Area
(N=290)
Service Route
(N=152)
Flexline
(N=106)
Overall opinion about transport
mode
それから真ん中にあるのはサービスルート
方々を説得して、このような優れたミニバス
と書いてありますけども、この青のところこ
のように、床が低くてそれ程大きなサイズで
れは固定ルートを走るものであります。利用
もない中くらいのバスを開発し、作ってくれ
者に対してその満足度を見ました。そうしま
るように説得して欲しいと思います。
すと、サービスルートという固定のルートの
それから、歩く距離も重要です。バス停ま
サービスの時は 8.4、一方でコントロールエ
でどれくらい歩かなくてはいけないかという
リア、左の方こちらの方は普通のサービスし
ことが重要になり、フレックスラインについ
かない路面電車や普通のバスしかないという
てはとても評価が高いです。200mも歩かせて
ところは 7.5、それから 9.3 というのがフレ
はいけないということです。200m、これは直
ックスラインということであります。この固
線距離にすると 150mくらいでしょうか。
定ルート、真ん中のサービスルートというの
フレックスラインでありますが、昨年は 7
はフレックスラインのようにフレクスブルに
地区に拡大しておりまして、ミニバスが 17
設定しデマンドに対して来てくれるというも
台あります。それから今年でありますが 2 区
のではありません。そうではなくて固定ルー
さらに追加され車両台数も 4 台増えました。
トでしか走っていないというサービスであり
さらに、市全体で 2008 年に全部計画が終了す
ます。このようなシステムで成功するにはド
る時には 35 台くらいになるということであ
ライバーさんがとても重要だということです。 ります。また、年間当たりの往復件数であり
フレックスラインについては 9.8 という点数
ますが 15 万件数となっております。そしてシ
になっておりまして、運転手の方々がその地
ステム全体が完了しますと、やはり 35 万件く
区におきましては、ご老人のベストフレンド
らいの往復件数になるのではないかと考えて
といわれております。高齢者の方々がチョコ
おります。
レートやクッキーを運転手にあげてしまうの
で、運転手はどんどん太ってしまうという状
What is your opinion about...?
況にもなっています。とても親切なので、た
8
Drivers
9,2
9,8
いへん人気があります。
7,3
Vehicles
8
9,4
次に車両であります。ミニバス、新世代の
Service Route
(N=152)
Kortedala Flexline
(N=106)
7,1
Walking distance
Regular public
transport (N=290)
8,5
9,3
ミニバスも開発されて参りました。これもと
7,5
Interaction with other
passengers
てもよく評価されています。通常のバスより
)Travel time (door-to-door
も評価が高いということです。ただ問題なの
How often the buses are
running
8,1
9
7,4
8
8,7
7,2
7,1
7,9
1
は、先程ビデオに出てきたような特別な車両
2
3
4
5
6
7
8
9
10
1= Very bad, 10= Very good
が生産されていないということがあるのです。
新しいバスを開発しようとするベンチャーを
始めたのですが、まだ市場の方がそれ程成長
Current expansion of Flexline
していなかったということで、この会社はな
くなってしまいました。こちらの浜松のホテ
ルの外に同じような床の低いバスを見ました。
しかし、現在スウェーデンではこういうバス
が見つかりにくいのです。それ程生産されて
いる訳ではないからです。ぜひ皆さんも大手
のバスメーカーないしは自動車メーカーの
-15-
• 17 minibuses in 7
city districts 2003
• 4 more in 2004
• 150 000 trips/year
• Upgraded ITsupport system
installed in 2004
次に組織体制、運営体制でもありますが、
おります。
これはある意味でロンドンモデルのようなも
新しいサービスを提供する時には、市長や
のです。つまり市が計画を行い、そして民間
市議会の方々がいろいろな政治家としての話
業者に運営、運行を委託するということです。
をします。400 人∼500 人の高齢者の方々がこ
ただ運営委員会というものがあります。市の
の試運転の際に来て下さいました。とても人
各当局や部門が関わっているからです。高齢
気がありましたが、さらにスウェーデンの有
者部門、それから公共交通部門、さらにまた
名なテレビの出演者の方のエンターティナー
高齢者用特別交通部門のいろいろなところが
のショーもあって、大きなデビューとなりま
一緒になって、このような運営委員会という
した。確かにこのようなサービスを始めるの
のを作り、サービスを提供しています。私は、
は大変なことです。でも本当に楽しく、私が
かつて最初の4年間はフレックスラインのプ
これまで行ってきた仕事の中で、最もやって
ロダクトマネージャーでしたが、今はこの運
よかったと思っています。
営委員会の顧問となっておりまして、こちら
の方がたいへんではないので気に入っていま
Organisation
す。明らかに STS と同じように、これはすば
• Integrated effort, many budgets
らしいサービスを提供しています。配車の方
• Steering committé for political support
法、予約サービスも提供し、そしてその車両
• Devoted ”project” manager
や運転手さんも契約によって雇っています。
• Clear responsibilities
他のバスと同じようなことでありますけれど
• Cost sharing models
も、このようにして業者さんを使って運転手
• Follow up – ”the Devil is in the details”
を雇って行っています。医療費、通院に対し
ては、例えば病院担当の厚生部門が支払いを
しています。そのコストは負担している訳で
Flexline Service Planning
ありますが、全般的な市の予算もあり、一方
で障害者の方々に対しては障害者用の予算か
• Mapping of elderly density ( 75+/ sq km)
• STS permits, travel pattern and service costs
• Accessibility analysis (% 75+ <200 m from
regular low-floor public transport stops)
• Loneliness analysis (% 75+ singles/district)
らコストが負担されています。重要なのは細
かいところが実は難しいということです。計
画の細かいところ、詳細のところをきちんと
• Weighing above factors in potential service areas
(normally city districts)
• Estimating relevant supply (vehicles/area)
押さえていかないと上手くいかないというこ
とです。サービスプランについてはあまり詳
しく申しません。しかし CIS を使ってマッピ
ングを行っています。
GIS mapping methods
右図でありますが、高齢者が住んでいる密
度が高いところ、人口密度が高いところが濃
• Concentration of elderly
(75+) in persons per sq km
い赤、それから丸く示しておりますのが、通
常のバス停の周囲半径 150mの範囲でありま
• Buffer zones for public
transport stops (150m)
す。このようなサービス、一般の交通サービ
• Analysis of number/share
of population living within
buffers
スがあるようなところでは提供されていませ
ん。さらに、人口に対してどれだけのサービ
スが提供できているかということも分析して
-16-
このバスの様子をみたり、乗客の方々と話
をしてみると、本当に喜んで下さっているの
高くなるかもしれません。しかしタクシーよ
りは半分くらいになるかもしれません。
が実感できて、やってよかったと心から思っ
ています。
現在、私はイエーテボリで、また別の小さ
フィンランドでもこのサンプルプロジェク
トが実行されました。タクシーの料金の半分
の料金を出したならば、自分が障害者でなく
い開発計画を行おうとしています。このフレ
ても高齢者でなくても使えるということです。
ックスラインというのを乗り換えサービスと
それから、8人乗りで床が低くなっていて
して市外、路面電車の路線につなげていこう
車いすでも乗り込めるような車であります。
というものです。路面電車でありますが、高
このような車両については、ロンドンのタク
い床ではなくてもう少し床を低くしたもので
シーもある程度車いすに対して対応できてい
す。それですと、歩行器を使っても乗りやす
ると思います。さらに、ロンドンのある地区
いということです。全く低いのではなくて高
に行きますと、特にロンドンにおいてはアク
さが真ん中ぐらいの高さということです。
セシビリティ、車いすでも障害のある人でも
たとえば、このフレックスラインに乗って
乗れるということが重要になります。
いて、そこから乗り換えて路面電車に乗り継
新しいこの種のタクシーというのは、相乗
げないかということであります。単にその小
りもできるようなものではないかと思ってい
さい地区だけではなくて、市の中心や大きな
ます。トヨタの小さい車の後ろで他の知らな
病院にもこれで行けるようにしたいと考えて
い人と一緒に座るというのは嫌かもしれませ
います。そして、この種の乗り継ぎについて
んが、大きな快適なスペースがあったとして、
は、高齢者の方々にわかりやすいダイヤを提
それがタクシーの半分の料金で乗れるとした
供したいと思っております。たとえば、ロン
ら、相乗りでも構わないという気持ちになる
ドンの場合ですけども、時刻表については、
のではないかと思います。
文字を大きくしていまして見やすいようにな
The effort is self-rewarding…
っています。眼鏡を掛けていてもきちんとし
た文字、大きな数字の大きな時刻表を使って
いて、私たちも同様な時刻表を作成したいと
思っております。
ではその後どうなるのか、次はどうなるの
かというと、5年後にはフレックスラインが
市全体をカバーすることになるのではないか
と思っています。今年大きな調査を行うこと
になっています。今後これができたらどうな
るかという調査です。
Time for try out…
この種のサービスを提供していくのは、単
に高齢者・障害者の方々のためだけではなく
て、フレキシブルな交通システムは全員のた
めでなくてはならないと思っています。もち
ろん料金となりますと、フレックスラインは
通常のバスと比べると、料金は安くなってい
る訳ですから、通常の人であったらもう少し
-17-
10 年後、例えば若い女性が夜家に帰りたい
けれど、安全でないから外は歩きたくないと
Flexline as Feeder Service
言うような場合など、女性に対してもこのよ
うなフレキシブルな交通システムというのは
とても役に立つのではないかと思っています。
では、これで私の話を終わりにします。何
かご質問があれば喜んでお答えします。あり
がとうございました。
• A feeder service demo
study is underway in
Kortedala
• Transfer to tram lines
in two points where
Flexline has ”schedule”
• Tailored timetable for
suitable tram
connections
Vision to think about….
<質疑・コメント>
おっしゃるとおりです。お金がかかるイ
○中村(司会)
ンフラと思うかもしれません。92 年にこの
ヴェスタールントさんありがとうござい
システムでありますが、市の STS のために
ました。ここで、せっかくの機会ですので
作った時にはボルボが作ってくれたのです
ご質問を受け付けたいと思います。通訳の
けれども、コストは初期投資としては大体
方がいらっしゃいますので日本語で結構で
300∼400 万ドル投資したと思います。しか
ございます。イエーテボリの話、日本の話
しタクシーサービスのかつては配車という
もいろいろでてきましたけれども、ご質問
のがマニュアルにやっていたわけですから、
があれば伺いたいと思います。どなたかご
大変コストが掛かっていた。その回収期間
ざいませんでしょうか。はい、お願いしま
が7∼8ヶ月、そしてタクシー会社の方は
す。
もちろん市を騙すようなことはできない、
きちんと経理をしなくてはいけないという
○質問者
ことで、投資回収期間が7∼8ヶ月だった
今のフレックスラインのバスについてな
時の方がよかったと思います。
のですけども、配車システムなどにかなり
そして、今日コンピューターシステムは
の情報インフラが必要かと思うのですが、
かつて程高いものではなくなってきました
それに関するコストがどれくらいかかった
から、うれしいことです。
かということと、その辺をどこが負担して
いるのかという2点についてお聞きしたい
○中村(司会)
と思います。
では本日コメンテーターをお願いしてお
ります、名古屋大学の加藤先生からコメン
○ヴェスタールント
トお願いいたします。
-18-
○加藤
いうことです。そのような交通システムの
よろしくお願いいたします。
供給の仕方そのものに対する技術革新を、
私ずっとお二人の話をお聞きしておりま
今まで何十年も日本は全くしてこなかった
して、日本のいろいろな公共交通、私は公
わけですから、今やらなければいけないの
共交通という言葉が嫌いで乗り合い交通と
です。もう少し違う言い方をしますと、商
いうようにしているのですけれど、日本の
品開発をしなければならないというように
乗り合い交通をどのように活かしていける
思っております。そのために必要な点が、
かを考えていました。改めて思った点が2
中村先生には非常に不遜な言い方になって
点ありますので、今の段階でお話しさせて
しまうのですが、計画という言葉がありま
頂きたいと思います。
したが、私は計画という言葉は捨てなけれ
まず、やはり基本として、日本のバスと
ばいけないと思っているのです。土木計画
か鉄道とか路面電車とかそういうものを含
とか交通計画の分野の研究者としてこうい
めた乗り合い交通のシステムというものが
うことを言うのはなんなのですが、特にバ
非常に遅れているということを認識してお
ス、乗り合い交通に関しては計画という言
く必要がある。遅れているから乗らない、
葉が非常に空しいという感じを強く受けて
乗らなくなってきているのだということを
いるのです。そうではなくて戦略とか企画
よく認識しておく必要があるということを、
とかそういう発想でいかないと上手くいか
今聞いていて思ったのです。よく言われて
ないと思うのです。要するに計画を組んで
いることですけれども、いわいる規制とい
その通りやっても上手くいくわけがない。
うものがあって、例えば鉄道とバスとタク
この乗り合い交通というのはその主体がい
シーというのはそれぞれ独立のシステムで
て、いろいろなファクターがありますから
あって、お互いの境界ははっきり分かれて
相手も様々な出方があります。その主体が
いて、その間を埋めるような交通機関、交
いろいろな思惑でいろいろな動きをしてい
通手段というものがなかった。ところが実
るわけなので、そういう人たちがどう動い
際の需要というものは連続的にあるわけで、
ているか、それによってどのようにこの乗
鉄道とバス、バスとタクシーの間にいろい
り合い交通サービスをもっと良いものにし
ろな需要がある。それをどのようにして埋
ていくか、もっと人が乗るようになること
めるのかということを考えてこなければい
ができるのか、この街や国に役に立つよう
けなかったけれども、仕組みとしては完全
なシステムにしていくのかなどということ
に分かれていたので、そういうものがイレ
を考えていく。そのようなプロセスが非常
ギュラーにしか出てこなかったということ
に重要になります。そのようなシステムを
が問題です。
考えなくてはならないという時に、実はヴ
今はそういうことを言っていても仕方が
ェスタールントさんの「オーガナイゼーシ
ないので、新しく技術革新が必要です。交
ョン」というスライドがあるのですけれど、
通システムで技術革新というと、新しく車
あれが非常に完璧で、非常に参考になると
を作るとか、あるいは情報システムを入れ
思ったものですから、是非かみしめていた
るとかですね、そのようなことにいってし
だくと良いのではないかと思ったのが、参
まうと思うのですが、そうではなくて、新
考として大きな一点ですね。
しい路線をどのようにして作るかというこ
あともう一点は、中村先生の方のお話な
とです。ダイヤをどのようにして作るかと
のですが、採算性をどう考えるかというこ
-19-
とが一つ問題になります。よく言われるの
ェクトなのですけれども、かなりユーザー
ですが、日本は採算性を重視というか採算
ニーズ分析というものをまず行わなければ
性にこだわっているので良いものがなかな
ならないのです。ユーザーの人たち、個々
かできてこないということです。逆に、ヨ
の利用客の方々ないしは、様々なユーザー
ーロッパやアメリカでは元々採算性などは
組織、あるいは二次的な利用者、つまりバ
考えていないので、公共、行政が主導にな
ス会社、タクシー会社、運転手がどのよう
っていろいろな新しいシステムを作ること
なニーズを持っているかという分析をしな
ができる。そのように言えると思うのです
ければいけない訳で、サンプルプロジェク
けれど、私の印象はむしろ逆です。本当は
トの場合には、スウェーデンだけではなく
採算性がないとやる気が起こらないもので
ていろいろな諸国、イタリアやフィンラン
すから、バス事業者やタクシー事業者が現
ド、アイルランド、そしてやはりベルギー
場でお客さんを乗せて運んでいる、そこに
も入っていました。このような諸国でユー
こそ良い知恵があるはずというのが私の考
ザー分析をしなくてはならなかったのです。
えなのです。それに対して行政が変に関与
どのようなニーズを持っているかというこ
すると逆にやる気をなくしてしまう。せっ
とをいろいろな小グループにインタビュー
かく現場に良い意見があるのにそれが上が
を行いました。こういった人たちとディス
ってこないというのがよく起こるのではな
カッションも行いました。さらに、エンド
いかということです。私自身そういう現場
ユーザー、そして乗用車の方々。例えばひ
をバスの車内などでよく見かけますので、
とつの地区では5千人ぐらいの高齢者の
そうならないようにするにはどうしたら良
方々に対してアンケートを行って、どのよ
いかということも非常に重要です。その時
うなリクエストがあるかということを調べ
に、例えば今回紹介頂いたフレックスルー
たのです。したがって、それだけの分析が
トというのはどのような形で進めていくの
必要です。単にみんなが使いたがらないと
か、その現場、利用者とか、あるいはバス
いう技術やイノベーションを行っても仕方
の運転手とか沿線の住民の方、働いている
がないという訳で、ユーザーアナリシス、
方の意見をどのように取り入れていくのか
ユーザー分析を行うというのがまず第一歩
ということが、成功するかどうかの非常に
だと思っています。
重要なポイントになっていると思うのです。
それについて少しご意見を伺いたいと思い
○中村(司会)
ます。
はい、ありがとうございました。もっと
いろいろとお聞きしたいのですが、時間が
○中村(司会)
押しておりますので、ここで次のセッショ
はい。ありがとうございました。一つご
ンに移らせて頂きたいと思います。
質問が出たのでそれに関してお答えをお願
今一度ヴェスタールント先生に拍手をお
いいたしましょう。
願いします。
○ヴェスタールント
ありがとうございます。このヨーロッパ
のプロジェクトの利点として一点、これは
欧州委員会の方から予算が出てくるプロジ
-20-
パネル討論
プレゼンテーション1:「地域交通の主体は誰か」
∼『協働の時代』の市民参加の視点から∼
横浜市青葉区民会議 広報委員長
中谷
英世
地域交通の主体は誰か
∼「協働の時代」の市民参加の視点から∼
横浜市・青葉区民会議
中谷 英世
私どもの横浜の一地域のバス問題というこ
ことで、横7∼8㎞という範囲の中に入って
とで、お話させていただきます。
くるというように思って頂けたら良いと思い
皆様の中には、横浜市の人口はどれくらい
ます。なお、国道 246 号、東名など大幹線道
かご存じの方もあるかと思いますけれども、
路が東京に向かって走っておりまして、私ど
実に 355 万人です。早く申しますと、県庁な
もは、横浜の中心とはあまり縁がありません。
みの人口を持っている巨大都市でございます。
私が住んでいます青葉区は一番北の端で、
横浜の都心から離れているところですが、人
横浜市 人口355万人
口が 28 万 8 千人と市なみの人口を持っていま
して、面積は 35 万㎡です。私どもとしては、
30 万都市にふさわしい街を作りたいと思い
青葉区
人口28万8千
面積35万㎡
(いずれも市内2
位)
ながら活動をしております。それから街の形
ですが、横浜北部は多摩丘陵の一部に入りま
して、かつてはタヌキしか住んでいなかった
というような森林地帯でございます。右図の
赤い線で示しました田園都市線という東急電
鉄が開発しました路線でございますが、東京
都心の渋谷から南林間まで繋がっています。
多摩丘陵
早く言いますと電車を通すことによって、こ
の辺は住宅地に変わったところでございます。
東急田園都市線
先ほど申しました通り、この地域は全部多
摩丘陵でございまして、この多摩丘陵を通る
国道246号
電車と住宅地の間をバスが結んでいるという
-21-
東名高速
東京の渋谷に行くのに車で 15 分ぐらい、横浜
な田園都市でありましたが、現在の駅前はバ
市内のみなとみらいに行くには 40 分くらい
スとマイカーが数珠つなぎになりまして、特
かかるという様なところであります。
に土日になりますと動きが取れないというよ
私どもの青葉区民会議という組織は、今か
うな状況が出てきております。
ら 30 年前に、時の飛鳥田市長が従来型の自治
それからもう一つ、高齢化が進んでいると
体では物足りないということで、住民が参加
いうことですが、青葉区というところは男性
して論議できる場を作ったらどうかというこ
の平均寿命が日本第三位です。
とから始まったものでございます。
青葉区は誕生しまして 10 年というまだ若
青葉区民会議の取組み
い地域です。現在、約 100 人位の住民が区民
マイカー抑制と公共交通機関利用促進
生活環境・地球温暖化の視点から提言
会議に参加しておりますが、半分が公募、半
分が自治会あるいは福祉団体、地域団体、ス
ポーツ団体という方が集まりまして、いろい
„
„
ろな論議をしております。その中には福祉、
„
住民に便利なバスとはなにか
駅前交通対策の提起
青葉区役所駐車場問題
環境、教育、防災、交通などの5つの部会が
あります。マイカー抑制と公共交通機関の利
用を促進しよう、地球温暖化のエネルギー視
点からも取り組む必要があるのではないか、
巨大都市横浜の青葉区とは(1)
また、住民に便利なバスというのはどういう
„
ものだろうかなどが話し合われております。
先ほどの加藤先生のお話にもありましたよ
東急電鉄が開発した住宅都市
„
うに、バスはバス、電車は電車、タクシーは
タクシーとバラバラな形で進んでいるわけで
„
ございまして、本当に住民にとって必要な便
青葉区制10周年・・横浜で一番若い区
1966年田園都市線の開通で都市化
38年間で人口2万人→28万7千人
東京都からの移住者が中心
開発地順に高齢化が斑模様に進行
男性の平均寿命が日本第3位 80.3歳
利な交通機関というのは一体何だろうかとい
うことを考えていく必要があると思います。
開発前の丘陵(恩田町)
田園都市線開通1966年
それから、もう一つ駅前交通問題というの
があります。開発されてまだ 40 年しかならな
青葉台駅前
いのに、大きな問題が起こっています。この
38年前の青葉区
地域の横浜市にとっての位置づけを申し上げ
ますと、電鉄が開発した住宅土地であること、
電鉄が開通して初めて都市化されたというこ
とです。38 年間で 2 万人の人口が 28 万 7 千
江田駅前
たまプラーザ駅前
人に膨らみ、未だに年に4千人ずつ人口が増
加しています。東京都からの移住者がほとん
どで、東京都に長く住んでいた人たちが、新
しい地域に期待をして引っ越して来たのです
けれども、人口の急増に伴い、様々な問題が
発生してきているということであります。し
現在の青葉区
たがいまして、ご覧の通り開発当時はのどか
-22-
日本の男性の平均寿命は 77 歳でございま
具体的なプランづくりが進まないということ
すけれども、青葉区というところはどういう
になります。ただ都市計画に新しく参加する
わけか 80.3 歳と長寿県の長野県の市町村に
という形がかなり出て参りまして、青葉区の
次ぐ長寿地域です。ただやはり全体と致しま
都市計画マスタープランの策定に住民が参加
しては、横浜市の中では新興住宅地だけにま
して、青葉区民まちづくり会議というものを
だまだ若い方でございます。
作りました。
そしてもう一つの特徴は、山坂が非常に多
いということです。田園都市線が走っている
巨大都市横浜の青葉区とは(2)
周辺は写真のように坂の多い街でありまして、
多摩丘陵の山坂の多い住宅地
„
完全な丘陵地帯で平地が極端に少ないという
ところです。住宅地にはあまりバスは走って
田園都市線駅を中心のバス路線網
遠方団地・学校との大量輸送
„
いません。バスに乗るには坂を下りていかな
いと乗れない状況になっています。
駅前の交通渋滞や放置車問題が深刻化
„
神奈川県下違法駐車苦情No1
そして、田園都市線の駅を中心にしてバス
路線が遠方の団地や大学などを結んでいるわ
けですが、周辺の住民のためよりも遠距離の
輸送の方に重点をおいているということにな
巨大都市横浜の青葉区とは(2)
ります。したがいまして、遠方からのバスや
„
マイカーが集中してくるということで、駅前
„
の道路混雑という問題が発生することになり
ます。
„
多摩丘陵の山坂の多い住宅地
田園都市線駅を中心のバス路線網
遠方団地・学校との大量輸送
駅前の交通渋滞や放置車問題が深刻化
それから、マイカーの利用率が非常に高く
神奈川県下違法駐車苦情No1
なっておりますが、これはまた、公共交通機
関といたちごっこになっているということで
す。バスの方もなかなか乗ってくれないとい
うこともあります。かといって車に乗って来
て便利かというと、駐車場が非常に少ないの
過度のマイカー依存
で駅前にみんな放置することになります。一
方で公共交通機関を利用するには、1㎞乗っ
ても 210 円ということで、高い値段ですから
いつも満車の区役所駐車場
乗らないということにもなりまして、たばこ
スポーツセンター・公会堂の
長時間駐車も無料
を買うにもマイカーでというような状況にな
っております。
それからもう一つ自治体のあり方を見ます
巨大都市横浜の青葉区とは(3)
と、私どもの横浜市は、自治権の希薄な自治
青 葉 区 は 自 治 権 の 希 薄 な行 政 区
„
人 口 355 万 巨 大 都 市 ヨ コ ハ マ の 分 権 化
区役所の権限強化?
体で、人口 355 万の巨大都市に市長が只一人
でございます。ご存じの通り中田さんという
„
若い市長であります。いずれにしても各区役
„
都市計画に市民参加
都市計画マスタープランまちづくり会議
「青葉区まちづくり指針」
所は出張所ですから、区役所にほとんど権限
„
住民参加の道路つくり
恩田元石川線道路
はありません。地域住民との間ではなかなか
-23-
また、住民参加の形を作るというので、従
先ほどお話致しましたように、田園都市線の
来から予定されていました道路を具体化する
駅を中心にしてバス網が走っておりますが、
ために、地域住民が一緒になって環境にふさ
図中の黄色いところが半径 200m でバスが走
わしい道路づくりをどうしたら良いか、5年
っていない地域です。まだかなりあるという
くらいかけて論議をして進めてきたという経
ことがわかると思います。
緯もあります。
このように、住民が行政と一緒になって参
都市マスタープラン「青葉区まちづくり指針」
交通ネットワークづくり ○バス網
加するという形は出てきております。私ども
鉄道駅と住宅地などをつなぐバス網を形成して公共交
通網を強化するとともに,区の北西部などの最寄り駅まで
15分以内に到達できない地域の交通利便性を向上する
ため,バス路線の再編,拡充,バスベイの設置や交通規
制などを進め,バス交通の改善を図ります。
また,ノンステップバスの導入,バス停付近の改善を進
めるほか,デマンドバスやコミュニティバスなどの導入に
ついて検討し,バス交通の利便性を高め,誰もが利用し
やすい身近な交通手段とし,自家用車に依存しなくても移
動がしやすい環境を整えます。
バスの発着便数の多い青葉台駅については,周辺の交
通環境の改善とバス路線の再編成を検討します。
の区民会議の活動もそれに関連している部分
があります。
それでこの青葉区まちづくり指針の中に書
いてありますが、やはりこの時期に来てバス
路線の再編成と見直しがどうしても必要にな
ってきているということです。デマンドバス
やコミュニティーバスなどの必要性も大きい
のではないかと思います。
住民に便利なバスとは・・・
それから、自家用車の依存にしましても、
„
青葉区民会議シンポジウム
「安くて便利、住民に優し
いバスを考える」
依存しなくても良い環境を作らなくてはなり
ません。その基本になってくるのが既存の鉄
道を通してそれに向かってバス路線を繋いで
„
住民の視点からみた交通網のあり方
„
くると言いますか、駅を中心にしたバス網の
„
形を何とか変えていかないといけないという
„
団地・学校のピストン輸送 住宅生活路線
通勤・通学 お買物・お出かけ支援
駅中心型 巡回型
ことです。つまり現在のバスが生活にふさわ
しい乗り物になっていないのではないかとい
う課題がここで指摘をされているわけでござ
います。
それで私どもは、住民に便利なバスとは何
なのだろうということで、中村先生にお願い
しまして、シンポジウムを開催しました。安
くて便利で住民にやさしいバスを考えるとい
うことで、住民が 200 人くらい参加しました。
中村先生のお話や武蔵野市のムーバスの話、
東急バス関係者、そして市の交通関係者にも
1Km
参加していただき、いろいろな話をしていた
バス路線の無い地区
だきました。関心が非常に高く、早くコミュ
ニティーバスの様な市民のための交通網を作
ってほしいという声が多かったということで
田園都市線
す。ただやはり要望型でありまして、自分で
作るというところまではいっておりません。
この中で私どもが地図を一つ作りました。
青葉区民会議防災交通部会調査
-24-
そして、青葉区は高度差がありますが、山
わけです。
の頂のところあたりの住宅地はバスが走って
このように、コンセンサスづくりなど地域
いません。このようなバスが通っていないと
の問題を解決する際に、自治会の役割が非常
ころは、当然要望が非常に強くなっています。
に大きいといえます。住民もバス路線の開発
私どもの活動の中で、このような地域を調
に一役担えるのだということを分かってもら
査してきましたが、今後さらに、この地域で
えました。ただ駅に近い住民の反発をどうす
どのような路線が必要かということを論議し
るかということが非常に難しいことでした。
ていこうという段階に来ております。
それはなぜかと申しますと、駅の周辺はいず
この中で、注目しているのが自治会の取り
れにしましても交通の過密状態になっていま
組みです。青葉区に隣接する緑区に「みどり
す。したがって、原則としては、この周辺の
台」というところがありますが、そこへの循
住民は反対です。これ以上バスが通ってほし
環路線をどのようにして作っていったら良い
くないと思っています。
かということで、これは実際に自治会が参加
しまして東急バスと話し合いを行いました。
右図の下の方に新しくかなり大きな市営団
自治会の取組み
地ができました。ところが最寄り駅は、田園
„
都市線の青葉台か藤が丘になります。実はこ
こは前から住宅地がありました。この辺りは、
バスが走っていなかった地域でございます。
„
„
„
„
この団地が出来るにあたりまして、市の方か
みどり台循環路線に見るコンセンサス作り
高齢者のために・買い物便利
交通渋滞に拍車→駅に近い住民の反発
進まぬ既存路線の見直し
自分の家の前は「停留所反対」
アンケート調査実施→結果で説得
ら要請もあり、バス会社の方もこの地域でバ
スを走らせたいということになりました。そ
れで循環バスを運行させようということにな
交通過密地区
ったわけです。
しかし、
「梅ヶ丘」という地域に一つ問題が
ございました。この地域をバスが通過するこ
とになるわけですが、その時にこの地域にど
梅が丘自治会
のように迂回路を取ってくれるかということ
が大きな問題になりました。この梅ヶ丘の住
みどり台循環バス
新開発市営団地
宅内に住んでおります自治会長さんが、この
地域にバスを走らせることになると、現在1
時間に4本ぐらいしか運行していなかったの
地域コンセンサスの難しさ
ですが、頻繁に走ってくれれば便利になるの
学校
停は作るな」とか、あるいは駅に近づいて参
高齢化
地域
高台の住宅地
に当たりました。しかし、
「うちの前にはバス
高台の住宅地
ではないかということで、地域の住民の説得
遠隔住宅地・
団地
反対住民地域
駅
高齢化
地域
交通迷惑地域
りますと、駅の周辺が大変な過密状態になり
ますから、この周辺から良い返事がこないな
高齢化
地域
どたいへん苦労しました。結果として、図の
団地
ようにバス路線が走って大変に喜ばれている
遠隔住宅地
-25-
バスはどこから来るかと言いますと、学校
葉台駅前は横浜市の中では交通の問題地域に
や遠隔の住宅地、団地などからどんどんバス
なっており、平成 10 年以来、住民といろいろ
が入っています。そのために、区内の高台の
な形で論議を続けています。
高齢化してきている方々のためのバスが必要
なのですけれども、それがなかなか進まない
深刻化する青葉台駅前問題
ということになっています。したがって、そ
ういう面から総合的な対策がどうしても求め
„
られているというように思っております。
„
この駅前の問題は、解決しなくてはならな
„
いことがたくさんあります。この駅前の道路
狭い駅前道路と
巨大バスターミナル
慢性的な交通渋滞・・・
路線バスも加害者
田園都市線駅を
中心のバス路線網
遠方団地・学校との大量輸送
が非常に狭いということ、それから大きいバ
スターミナルがあるのですが、活用されてい
ないという問題です。といいますのは、遠方
140
からのバス網が非常に発達しているために、
新しい近距離のバスがなかなか運行できない
東方向
西方向
北方向
南方向
青葉台駅発バス台数
一日1615台
120
100
ということです。
台
数
右図は、青葉台駅の一日のバスの発着数で
80
60
すが、一日に大体 1615 台走っておりまして、
40
かなりの台数になります。この黄色いところ
20
が南方向というように書いてあります。実は、
0
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 1
このところが問題であります。ここに青葉台
時刻
の駅がございまして、この南方向に 771 台の
鴨志田団地
バスが走っているわけですが、この道路は2
0
車線しかないという非常に狭い状況でござい
ます。
青葉区の隣りの緑区の先に旭区があり、そ
日体大
青葉台駅ターミナル
バス総数1日1615台
北方向
642台
東方向123台
西方向79台
横
こに若葉台団地がありますが、ここに 387 台
南方向 浜
環
771台状
と約半数のバスが乗り入れております。昼間
四
号
線
は空のバスが 3 台も 4 台も繋がっているとい
若草台団地
へ 387台
う状況になります。このバス運行も新しい方
田園都市線
JR
横
浜
線
法を取り入れなければ、過密状態の解決に結
びつかないといえます。
遠方の団地のために大型の路線があるとい
青葉台駅前住民参加のまちづくり
うことが、青葉区民のプラスになってこない
ということです。したがって、横浜線のあた
¾青葉台バス対策委員会(平成10年)
りを上手く使える様な形にして、新しい路線
¾魅力あるまち青葉台検討委員会(15年)
で回避できないだろうかと要望しております。
このようなことは、一地域の問題ではなく
て、広範囲の総合性のある対策がどうしても
求められていると思っております。実は、青
-26-
¾あんしん安全歩行エリア地区指定(16年)
¾福祉のまちづくり重点推進地域(16年)
最近も「福祉のまちづくり」、「安心歩行エ
行政の役割・立案調整機能
リア地域」など、色々な会議がもたれていま
すが、一向に進まないという悩ましい状態が
„
„
続いております。
„
それで、私どもが行政といろいろな話を進
„
めていく中で感じるのは、武蔵野市の職員が
„
非常に強い情熱を持ってコミュニティバスを
武蔵野市職員の情熱がムーバスを創造
行政区にはない交通政策立案機能
赤字経営ー市役所交通局
横浜市西区(市都市計画局)
∼はまチャンバス市バス試行∼
川崎市の取組み
麻生区・多摩区の民間バス試行
作ってきたということ、職員の情熱が非常に
大きな役割を果たしているということです。
一週5.6km 40分
運行時間9時∼17時
けれども、青葉区役所には、市の出先のため
はまチャンバス
行政の交通政策の専門家がいないのです。さ
らにもう一つ、市の交通局が赤字経営だとい
う問題があります。
そのような状況の中で、初めて横浜市の西
区で「はまちゃんバス」という地域循環バス
の試行が始まりました。このバスは、この地
域が横浜市で一番高齢化が進んでいるという
こと、みなとみらい地区に近くて、利用もか
はまチャンバス運行経費
15年12月15日より運行開始
なり見込まれるということで作ったのであり
平成15年度
利用状況
ます。12 月 15 日から始まりましたが、現在
441人/日
17.0人/循環
収入実験地区選択理由 支出
運賃収入
827万円 運行経費
868万円
(横浜市都市計画局)
かなり好成績ということで、横浜市では、こ
広告料収入
14万円 バスリース料
563万円
○ 駅やバス停から2∼300m以上
計○ 人口集積・高齢化率が高率
841万円
計
1,431万円
れを中心にして今後も考えていきたいという
ことを言っております。
○ 一周5kmの運行路線
運賃210円
(5.6キロ循環)
横浜市の区別の高齢化率のグラフを右図に
みなとみらい21地区は観光100円バス
示しましたが、高齢化率の高い所が優先され
横浜市18区高齢化率
るという問題があります。左から2番目が今
20.00%
18.00%
回「はまちゃんバス」が実現した西区で、私
16.00%
どもの青葉区は右から2番目になります。こ
12.00%
14.00%
10.00%
8.00%
の状況では、自分たちでやらなくては、いつ
6.00%
4.00%
になるかわからないと思っております。
2.00%
都筑区
青葉区
緑区
港北区
鶴見区
戸塚区
泉区
横浜市平均
港南区
瀬谷区
栄区
神奈川区
金沢区
保 土 ヶ谷 区
旭区
りを行っていこうという状況です。
磯子区
ができつつありまして、住民参加でまちづく
西区
それで横浜市では、「協働推進の基本指針」
中区
南区
0.00%
運 行 支 援 会 議 と検 討 委 員 会 の 役 割
はないかということが話し合われました。市
運 行 支 援 会 議
モデル 地 域 の 住 民 、
商 店 街 等 の 代 表
・地 域 の 情 報 を 検 討 委
員 会 に提 供
・バ ス の 運 行 支 援 方
法 、乗 車 人 員 の 確 保 な
どの 検 討
民、行政、さらに企業の役割を認識し合うこ
・利 用 し や す い バ ス に
ついての 提 案
その中で、やはり市民の力が存分に発揮さ
メンバ ー
れるようなまちづくりが実現できるように、
まずは環境づくりをきちんとやっていこうで
目 的
検 討 内 容
とで、連携を深くしていけるのではないかと
・バ ス 利 用 促 進 策 の 検
討 など
検 討 委 員 会
国 土 交 通 省 、警 察 、
地 域 代 表 、横 浜 市
・運 行 計 画 に つ い て 望
ま しい 形 を提 案
・基 本 的 な 考 え 方
・ル ー ト 等 技 術 的 な 検
討
・運 行 状 況 の 検 証 な ど
私どもがこの中で考えていることは、いわ
いう期待が高まっています。
-27-
ゆる道路行政というものに、ソフト面やバス
横浜市「協働推進の基本指針」
の運行などを解決するための知恵が必要にな
∼住民参加・協働の都市経営∼
ってきているのではないかということです。
民の力が存分に発揮されるまちづくり
新しい公共の概念
地域課題の合意形成
ことに、財政難の今、実現することがなかな
か難しい中で、住民がどのような役割を果た
していったら良いのかということです。バス
„
„
の運行につきましても、たとえば、私どもが
„
市民の役割
行政の役割
企業(バス事業者)の役割
駅から向こう側の病院に行く場合に、一度駅
でバスを降りて、また乗り換えて行かなけれ
ばなりません。したがって、片道 420 円もか
協働の時代のまちづくり
かってしまい、乗り継ぎが出来ない現状にな
„
っています。あるいは、区役所までの約 1 ㎞
„
„
位の距離を 100 円くらいの料金で、途中下車
„
を可能にするような工夫ができないか検討し
ております。
„
駅前集中型都市構造の見直し
ハード(道路)からソフト(運行)改善へ
住民・行政・企業 参加型調整機能の構築
世論醸成・・
住民が使いやすい生活バス
過度のマイカー依存脱却
超高齢社会・環境問題・エネルギー問題
いずれにしましても住民が使いやすい生活
バスをどう作るかということが課題であると
思います。
住民参加の交通マネージメントの課題
本日は、勉強させていただくつもりでまい
りました。むしろこれからは、自分たちでや
らなくてはならない時期が来ているとのだと
„
バス路線は誰が決めるのか?
„
バス料金は誰が決めるのか?
„
市民は何が出来るのか?
思います。その辺のことをさらに勉強してい
きたいと思います。
ありがとうございました。
いつも満車状態の区役所駐車場
スポーツセンター・公会堂
の長時間駐車も無料
デマンドバス
青葉台ー藤が丘
早くから東急バスが
遠方の宅地開発でデマンドバスを運行
-28-
<質疑・コメント>
○中村(司会)
なり違ってくると思われます。今お話聞いて
中谷さんありがとうございました。
いて、その2つの関係というのはどのように
それでは加藤先生の方からお願いします。
なっているのかということが少し分かりにく
かったです。
○加藤
それから、具体的にもう一つ言っておきた
私がいつも仕事をしているところは、どの
いのは、少し暴言になるかもしれませんが、
ようにして駅前に集中させるか、どのように
一般的には、行政にこのようなマネジメント
本数を増やしていくかなどばかり考えている
を行ってもらうことは、少なくとも制度的に
ところで、このような恵まれたところが世の
はかなり難しいと思っておいた方が良いとい
中にあるというのが非常にうらやましいと思
うことです。先ほどの武蔵野市職員の「情熱
いました。しかし、恵まれているが故に、こ
がムーバスを創造」というのがありましたけ
のようにバスがたくさん行き過ぎて困るなど
れども、情熱に頼っているということではい
の問題が発生する。これはこれで大変だと思
けなくて、本当はシステムが必要なのでしょ
いましたが、少し気になったのは、やはりま
うが、今のところシステムが上手くできてい
だ本物まで至ってないということです。とい
ないという現状です。というより、それ以前
うのは、今日のテーマでもそうですけれど、
に行政のシステムの進め方そのものが、その
行政と事業者とあるいは市民との間でどのよ
ような情熱によって良い路線を作るというこ
うに協働するかということです。協働するこ
とを許すことが難しい状況になっているので
とは大事であるということは、ありとあらゆ
はないかと考えています。とすると、住民や
る分野で言われているところです。公共交通、
あるいは事業者など、下の方から話が上がっ
乗り合い交通の場合は、それがどのように展
ていかなければなかなか難しいということに
開されるのかということが大事であって、そ
なると思います。私はそのような厳しい認識
こに進んでいかない限り全く先がないことに
をしているのですが、それに対してどのよう
なります。
にお考えか、また、ヨーロッパは日本とかな
さらに問題なのは、乗り合い交通の場合に
り事情が違いますし、私が認識しているこの
は、路線という単位と路線網という単位があ
ような日本の現状に対してヴェスタールント
りまして、このような単位で、どのように協
さんはどのようにお考えかということをお聞
働して良い路線を作っていくのかということ
きしたいと思います。
になります。この地域の住民の皆さんによく
使って頂いてご愛顧頂けるような路線を作る
○中村(司会)
というようなレベルの問題と、青葉区民会議
はい、ありがとうございました。それでは
のレベルになりますが、青葉台駅前に集まっ
発表者の中谷様から一言いただければと思い
てくる人たちのレベルの問題とがあります。
ます。いかがでしょうか。
これは、いろいろな地区から様々な路線から
集まってくるのですが、全体として、そのよ
○中谷
うな人たちとどのような調整が必要になって
今加藤さんからご指摘を受けましたように、
くるのか、どのようにしていくと、渋滞など
地域に密着した自治会の活動としては、この
の問題が解決されていくのかという両方のレ
ようなことを実際に調整していかなければな
ベルの問題になってくるのですが、方法はか
らないということだと思います。私も自治会
-29-
のメンバーの一人なのですが、調整やコンセ
なっているのですが、東京都の区とは違って、
ンサスづくりでは相当汗をかかなければいけ
今年度少し増えましたけども、独自の決定権
ないということです。
がありません。私は西区の浜ちゃんバスの委
それから、先ほども申しましたように、総
員会もお手伝いしましたし、青葉区の巨大な
合的に地域全体の交通政策をどうするのかと
バスターミナルの青葉台駅も手伝いましたの
いう課題です。路線の見直しを行う必要があ
で、私にもたくさん責任はあるのですけれど
るとわかっているけれども、どのようにすべ
も、なかなか横浜市の動きが取りにくい実態
きか、その中心になって動かねばならないの
で、その中での行動はあまり一般化できない
は私ども区民自身であることです。先ほど黄
のでしょうが、ただその中で、住民の意識が
色い地域(バス路線の無い地区)を示した図
高いということを上手く素材として活かしな
を見ていただきましたが、これからどのよう
がら、路線レベル、ネットワークレベルと議
にして見直していくかかなり論議していかね
論を続けていく努力を私は高く評価するべき
ばならないということです。
だと思っています。
それから、困っているのが、まさに交通政
では、ヴェスタールントさんから加藤先生の
策のプロが区役所にいないということです。
質問に対してご意見がありましたらお願いい
交通政策の担当者は、本局の方では都市計画
たします。
局の中に数人いらっしゃいます。いろいろ一
緒にやる時に、その中から来ていただくよう
○ヴェスタールント
な形になりますが、結局 355 万、18 区の住民
ありがとうございます。一言だけ申し上げ
のためにいろいろ動くといっても、そんなに
ますが市民参加は大変重要だと思いますし、
簡単にはできません。結局、西区から実験し
またマスコミの参加も大変重要だというよう
ましょうということで動き始めるのですが、
に考えます。公共の圧力、市民の圧力という
これがなかなか進みません。私どもがいろい
とやはりメディアもマスコミも必要になると
ろ考える中で、東急バスに直接相談をしに行
思います。フレックスラインの導入時には、
こうということになり、具体的に話し合いを
やはり、いろいろな委員会あるいは当局がそ
始めていますが、その中でいくつかの可能性
れぞれ反対意見を述べたこともありました。
が出てきております。これは先ほどの総合的
戦略としては、まず予算を担当している市長
な路線の見直しと、もう一つ、個々の具体的
の右腕になっている人と話をすることです。
な改善に取り組むということになると思いま
お金を持っているので、財布を握っている高
す。市側よりもむしろ東急バスと話し合いを
いレベルの人に賛成を得ることができて、こ
する方が良いのではないかというぐらいの思
れで了解していただければ、すなわち来年の
いで行っております。ただ全体を調整する機
予算化が通るということになれば、物事はぐ
能は行政に求められているかと思います。
んと進みやすいというように思うのです。す
なわち、強い市長、あるいは上の方にどなた
○中村(司会)
か強い力が発揮できる人いる。例えばメイヤ
はい、ありがとうございました。私も横浜
ストン市長であれば、リビングストンであれ
市民ですが、横浜市というと人口がたくさん
ば、ロンドンで市長として大きな力を発揮で
いる割に税収は少なく、しかも横浜市役所は
きたということがあります。ですから、トッ
規模が大きい割に都市交通の対応には、組織
プの人が強い、そしてお金と財布を握ってい
的に課題があると思っています。区の単位に
るということ、すなわち権限を持っている人
-30-
であること、それからマスコミ関係者などの
○中村(司会)
人たちを巻き込むことが需要だと思います。
全く同意見です。そういう方がたくさん出
ありがとうございます。
てくれば、それはそれで良いことですが、そ
れに期待していてはいけないですね。
○中村(司会)
はい、ありがとうございました。それでは、
はい、ありがとうございました。加藤先生
これで中谷さんのプレゼンテーションとディ
のご意見は、おそらく、武蔵野市は情熱でが
スカッションを終わらせていただきます。中
んばったとか、たまたまあの人が市役所にい
谷さんどうもありがとうございました。
たからできたという話ばかりが強調されて、
みなさんがそういうことを期待するようにな
ってしまうのが一番まずくて、それでいいと
いうように思ってしまうことが、もっといけ
ないのだという意味になるかと思います。
○加藤
そういう人たちに頼ると、なかなか広まっ
ていかないのではないかなと思うのです。世
の中にそんなにたくさんすごい人はいないで
すから。
-31-
-32-
プレゼンテーション2:「地域に根ざしたNPOが
住民の求めるバス路線を実現」
NPO法人生活バス四日市 理事長
西脇
良孝
地域に根ざしたNPOが、
住民の求めるバス路線を実現
NPO法人生活バス四日市理事長
西脇 良孝
TRANSED特別セミナー : 平成16年5月24日
「21世紀型の地域バス交通マネジメント」
近年経済活性化の方策として、規制緩和や
1.背景
特区、地方分権などというようなことが叫ば
昭和20年代より続いた、三交バス垂坂路線
(近鉄四日市∼垂坂)が、利用者減による運賃
収入不足より赤字路線となり、平成14年5月31
日に廃止となった。
れておりますが、私どもは、その規制緩和が
アゲインストになりまして困っております。
この廃止路線は、近鉄四日市駅から放射状
に伸びる路線の1つとして、渋滞の激しい国
道1号線を経由しこの地域まで結んでいた。
しかし、モータリゼーションの発達や通勤
通学需要の激減、さらには郊外型のショッピ
ングセンターの出現により乗客減となった。
それで生活バスを発足させた訳です。その背
景と致しましては、昭和 20 年代より民営交通
のバス路線が垂坂から四日市間で運行してお
りましたが、乗客減から赤字路線となりまし
て、平成 14 年の 2 月に廃止になると予告があ
羽津地区全体としては、近鉄電車の近接地域
であり、バスに ついても近接路線が存続する
ことから、交通手段の確保に支 障はないと判
断した。
り、5 月 31 日に廃止となりました。この廃止
路線は、市の中心部の近鉄四日市から交通渋
滞の激しい 1 号線を越えて、私どもの所まで
しかし、羽津いかるが地区は最寄の鉄道駅ま
で約2km離れており、公共交通の空白地域とな
る。よって、地域住民(世 帯数約540戸、人口
約1,700人)にアンケートを実施したら、 152
名からの回答があり、高齢者を中心に「買物や
通院に不便になる」との声が多く、公共交通手
段の必要性が要求された。
走行しておりました。しかしながらモータリ
ゼーションの発達や通勤通学にバスを使用し
なくなったこと、ショッピングセンターの郊
外化ということも影響しまして、バスを必要
としなくなったということであります。
2.現状把握
私どもの活動地区は、最寄りの近鉄の駅ま
2.1 情報収集
1) 住民アンケート
2) 小グループ討議
で約2㎞と近いということ、3㎞位離れてい
る所に近隣のバス路線があるということで、
2.2 求められているもの
1)医療機関への通院移動手段の確保
2)地域活性化
(買い物、交流、通学、通勤、etc.)
羽津地区全体としては交通に支障がないので
はないかということから、市への存続を訴え
3)地域密着型のバス路線
ましたが、結果的には廃止となりました。
-33-
けれども、私どもの地区の一部から、やは
通ニーズを開拓して、バスを活用した新しい
り交通手段が無くなるのは困るという声が多
まちづくりや福祉の増進に寄与していきたい
かったので、どの様な内容か意見を聞くアン
ということであります。
ケートを実施いたしました。そのアンケート
結果では、60 歳以上の高齢者の方々や車を運
転できないような主婦の方などから、やはり、
お医者さんに行く時や買い物に行く場合には
三交バス(四日市∼金場∼羽津山路線)利用者アンケート内容まとめ(アンケート者152名)
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
交通手段がなくなると困る、何とかならない
かという声が多く上がって参りました。具体
的にはどのようなことが問題なのか、どのよ
うな要望があるのかというところを情報収集
男性 通院
男性 買い物
男性 通勤
男性 その他
女性 通院
女性 買い物
女性 通勤
女性 その他
10∼19 20∼29 30∼39 40∼49 50∼59 60∼69 70∼79
80∼
人 歳
しました。住民からのアンケート、さらに、
いろいろな方からたくさん意見を聞くという
ような小グループの討議を行って参りました。
その中から、やはり医療機関への通院手段
三交バス(四日市∼金場∼羽津山路線)
利用者アンケート内容まとめ
を確保して欲しい。バスは、地域の活性化、
(アンケート者 152 名)
通学通勤、その他様々な地域の活動に必要で
はないか。それからバスに乗らなくなったと
いうことから、もう少し地域密着型のバス路
線が望まれているということが分かりました。
次に、右図は、アンケート結果をもとにグ
ラフ化したものですが、このグラフからもよ
くわかりますように、60 歳以上の高齢者、特
に女性の方が非常にバスが必要であるという
3.ねらい
3.1 自動車を使えない人の移動手段を確保する
結果が表れております。
(公共交通との融和)
そういうことから、ねらいと致しまして、
1) 障害者、高齢者、独居老人の弱者救済
2) 高齢者の機能低下防止と活性化
3) 地域の生活機能の活性化
一つは自動車を使えない人の移動手段を確保
3.2 バス運行の維持・安定化を図るため、バス
会社、協賛事業者・商店、自治体(市)、
地域住民が協働しあって、NPO運営
事業体組織を設置する。
するということです。公共交通が、障害者の
方々、高齢者の方、独居老人の方など、いわ
3.3 地域の新たな公共交通ニーズを開拓し、
もってバスを活用した地域活性化と福祉
の増進に寄与する。
いる支援を求めている方々の手助けにならな
いかということです。それが、高齢者の機能
低下防止と活性化ということにつながり、介
護保険を早く利用するようにならないように
4.活動内容と結果
元気老人を作っていくという地域の生活機能
4.1
の活性化をねらいとしております。
ベース作り
1)先進事例調査
二つ目には運行の維持・安定化を図るため
2)運営資金
にバス会社、協賛事業者・商店、自治体、地
(1)地域沿線の事業者・商店に地域貢献
として賛助金(月ぎめで)をお願いし、
8社より50万 円を協賛していただいた。
域住民が協働し合って NPO を運営してバスを
走らせるというような組織を作っております。
そして三つ目として、地域の新たな公共交
-34-
・バス社内・外、停留所に宣伝をする
次に活動内容と結果ですが、一つはベース
民のニーズがあるということを市にわかって
づくりとして先進事例の調査を行いました。
いただき、市の予算が通りきまして、月約 30
コミュニティーバスというのは、すでにたく
万円の補助を頂いております。
さん走っておりますので、どのようなバスづ
それからバスの運行ルートづくりでござい
くりをしたら良いのかというような勉強であ
ますが、これもやはり足の弱い方や高齢者の
ります。
方に利用しやすいようにということで、バス
それから運営資金です。これは一番ネック
停を 200m∼300mごとに設けるなどという
になるところです。この運営資金につきまし
ようなことを行っております。できれば、ど
ては、地域に根づいた商店や病院などにお願
こでも自由に乗り降りできる路線にしたかっ
いに行きました。単に協賛金を出して下さい
たのですが、いろいろ法規上の制約がありま
と言いましても、そのバスに乗って頂いたお
して実現しておりません。
客さんに、例えば商店で買い物したり、病院
図のような回数券や応援券ですが、これを
で医療費を支払っても対費用効果で考えます
一般のお店で作りますと高くなりますので、
と全くペイしない訳なのですが、そこは是非
自分たちでパソコンを使いながら作っており
とも地域に貢献していただきたいということ
ます。
を何度もお願いしたのです。何とか8社より
月極で約 50 万の協賛金を頂いております。協
(2)運賃・
100円/1回
・ 回数券 : 1,000円/11枚つずり
・ 応援券(全区間フリーパス)
(月末に注文取り、宅配)
賛金を出していただいたところには、バス停
などに事業者名を出させていただきまして、
1,000円/1ケ月、5,000円/6ケ月、
10,000円/12ケ月
宣伝をさせていただいております。
それから運賃は無料としたかったのですが、
やはり、バスを自分達が維持・運営・管理を
(3)市補助金 ・
30万円/1ケ月
3)バス運行ルート作り(バス停設置):
地域密着型
していくという主旨から、無料では意味がな
いということで、みなさんから 100 円を頂こ
うということで行っております。
生活バス よっかいち
: 応援券
回数券としては 11 枚つづりを千円という
ことにしました。それから応援券ですが、こ
れは一般的に言う定期券と同じで、全区間フ
リーパスで、1 ヶ月は千円、半年で 5 千円、1
年で 1 万円と非常に格安で行っております。
それを 1 家族に 2 枚を渡しております。とに
かくバスを利用していただきたいという思い
から、このような運賃を設定しております。
生活バス よっかいち
: 回数乗車券
当初は市の補助もすぐには出なかったので
すが、私どもは平成 14 年の 11 月から試験運
行しました。試験運行は協賛金だけで行った
のですが、三重交通さんの御厚意で5ヶ月間
半年間続けることができました。
乗客数も一日平均 70 人程度の方に利用し
て頂いたということから、やはり地域での市
-35-
右図に示すのは、以前のバス路線です。四
始めましたが、日本で始めて NPO がバス運営
日市の中心街で近鉄四日市駅から国道 1 号線
を行っているということで、他県の行政の視
を経由しまして、県道を通って約 10 ㎞位のと
察やインタビューなどを 40 件ほど受けまし
ころになります。いわゆる今までのバスは四
た。
日市を中心に放射線状に出ていたのですけれ
運行日数といたしましては、週に月曜から
ども、やはり時代の流れで乗客は減っていっ
金曜の 5 日間行っておりまして、平均で 70∼
たということです。各路線も同じようなこと
80 人の利用があります。これは無料の時も有
が言えます。廃止になる前、バス会社も赤字
料の時も変わっておりません。それから特別
路線なので何とか市に補助をしてもらって存
運行としまして、市が運営いたします福祉施
続できないか検討してきたのですが、近鉄路
設へ毎月第三土曜日に運行しております。
線があるとか、近隣のバス路線があるとかと
次の表は、毎日の乗降客数をデータにした
いうことから、全体としてはあまり影響が出
ものですが、これをもとに、いろいろな分析
ないだろうということで、市にはとりあげて
を行っております。
もらえませんでした。したがって、我々の場
バス路線比較
所は、少しエアポケットとして困っていると
いう地域になっている訳です。
そういうことで、組織づくりと致しまして
は、「S-BUS」のバス運営協議会を地域で立ち
上げました。交通事業者である三重交通さん
や行政の方も巻き込みまして、行政からは補
助金を出していただく、交通事業者の方から
運営経費を抑えて頂くなど、いろいろなこと
で 3 者が運行協定を持ちまして、図のような
組織づくりを行いました。平成 15 年 3 月 27
日に、バス路線の免許も 21 条で取得し、運行
しております。
4.2
運営組織作り
4.3
「S−BUS」運行協定運営協議会設置
4.4
バス路線免許(21条)取得(H.15.3.27)
4.5
NPO法人生活バス四日市設立(H.15.4.1)
4.6
他県の行政や自治体からも注目されている。
NPO 法人としては、平成 15 年 4 月 1 日に設
S−BUS
運営協議会地域
運賃収入
立しております。当初から NPO 法人を狙った
補助金
運行経費
訳ではないのですが、このバス路線の免許に
交通事業者
(三重交通)
しても行政から補助金を頂くにしても、やは
運行協定
四日市市
りそれなりの団体でなければ無理であるとい
うことで、その対策としてどうしたら良いか、
各段階でいろいろネックが出てきました。そ
5.運行実績
1)運行形態(バス29人乗り1台)
5日間/週 (月∼金)土日は休み、5往復/日
れで、NPO 法人というのがやはり社会的に認
められる、陸運局もバスの免許を許可するに
2)運行
・試行期間 : 平成14年11月1日∼平成15年3月
(会員募集、乗車データ採取、アンケート収集)
(無料)
乗車人員 平均70人/日
・有料運行 : 平成15年4月1日∼ 乗車人員
平均70∼80人/日
しても行政がバックになるような団体でなけ
ればむずかしいなど、世の中規制緩和といい
ながら、何かをしようとすれば規制されると
いうことで、いろいろハードルがありました。
そういうことから、このような方法で運行を
-36-
3)特別運行 市が運営する西老人福祉センター(温
泉、カラオケなどあり)へ無料送迎(毎月第3土曜
日)し、利用者に喜ばれている。
次のグラフは通常の運行が始まってからの
生活バス四日市 H.16年2月度
H.16年2月度 乗降調査まとめ
もので、有料です。毎日の乗降者数を表して
いるグラフですが、平成 15 年度は、1 年間で
約 2 万人の乗車人員になっております。
このような活動から、今後行うべきことと
しては、まず安定した運営資金を確保してい
かなければならないと思っております。バス
停も良いものにしていきたいですし、乗りや
すいバス構造にもしていかなければなりませ
ん。また高齢者に優しい、どこでも乗り降り
可能なバス停にしたいですし、福祉目的でバ
スを移動の手段としても活用することも考え
ております。
地域の自治体、社会福祉協議会などとも連
携していかなければなりません。また将来的
に若い人に引き継いでいかなければならない
ことでもあります。
「生活バスよっかいち」は、普通の路線バ
スにステッカーを貼って運行しております。
スーパーサンシ大矢知の近郊や介護保険施設
も通っております。社会保険病院前では、玄
バス乗降人員推移グラフ
関までドアツ−ドアということで病院まで入
160
11月1日は平均値より除く
140
っております。(次頁写真上2段参照)
乗
車
人
員
数
また、買い物バスと西老人福祉センター行
きのバスでは、足の不自由な方や少し介助が
120
100
80
60
40
祭日 祭日
20
必要な方がいらっしゃる場合には、ボランテ
0
ィアとして手助けを行っております。
(次頁写
1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 9日
H.14.11月度
H.14.12月度
H.15. 1月度
H.15. 2月度
H.15. 3月度
H.15. 4月度
H.15. 5月度
H.15. 6月度
H.15. 7月度
H.15. 8月度
H.15. 9月度
H.15. 10月度
真下2段参照)少し省略しましたが、以上で
終わらせていただきます。
祭日
祭日
祭日
正月1∼3日は平均値より除く
148
72
56 68 44
12 16 20
57 80
58 76
81 48 72 79
47 103
76 53 77
95 93 80 94
83
106
83 109 79 75
55 91 105
88 53
36 84
61
53 50
58 77
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日
56 91
79 58
57 68 62
55
73
83 58 63
54 90
82 88
84 63 87
81
95 79 94
83 76 97
57
67
68
76
45 78 80
76 80
89
69 99 83
98
62 93
84 55 73
71 67 66
53
38 70 47
103 68 55
70
78 73
58 78 96
83
95 93 77
52 90
34
79 78
57
72
77
63
44
82
55
94
54 68
60 67 56
60
78
92 62 68
76 87
80 83
88 78 53
70
43 94 76
74 48 91
82 85 50
93 53 74
80
114 64 62
81 45 92
82
97 79
71 47 104
92
81 85 72
67 102
80
89 102
76
72
43
77
77
62
68
70
33 83
55 51 80
63
88
70 54 59
70 89
83 115
84 91 70
97
76 43 47
83 74 92
68 49 64 34 81
49 64 93
49 75 77
64 77 69 64
83 77 50 102
79
65 52
80 108 65 76
74 87 94
82
87 76
99 101 93 66 93
88 83
120
77 80 88
50 43
54 76
108
47
66
91
66 77
81
55 87
平
均
72
63
64
65
74
68
76
81
81
84
81
78
バス乗降人員推移グラフ
6.今後行うべきこと
140
120
乗
車
人
員
数
1)安定した運営資金確保のため、利用者の増大、協賛
事業者・商店の継続と入会推進。
2)バス停 :・雨やどり可能なもの
・環境美化(花、etc.)
3)乗降し易い構造(ノンステップ、車いす乗車可能 )
バスの導入。
4)高齢者にやさしいどこでも乗降可能なフリーバス停
の導入。
5)福祉目的でバスを移動宅老所として活用したい。
6)地域自治体、社会福祉協議会との連携。
100
80 祭日
60
祭日
祭日
年末
祭日
年末
正月
0
H.15. 4月度
H.15. 5月度
H.15. 6月度
H.15. 7月度
H.15. 8月度
H.15. 9月度
H.15.10月度
H.15.11月度
H.15.12月度
H.16. 1月度 H.16. 2月度
H.16. 3月度
-37-
祭日
祭日
正月
20
7)将来的に若い人に引き継ぐ体制つくり。
祭日
祭日
40
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日
平
均
81 48 72 79
47 103
45
76 53 77 76
95 93 80 94
83
106 69
83 109 79 75 98
55 91 105
50 60 103
80 91 64 66 95
13 30
44
60 80 65 59
68
76
81
81
84
81
78
80
74
68
74
76
78 80
80
89
99 83
62
79
65
84
83 58
54 90
82
84 63
81
95 79
93 83 76
95
69 89
86 49 90
86
63 70
88
87
94
97
80
82
66
78 73
58 78 96
83
95 93 77
52 90
34
52 91 76
53 91
59 57
55 78 81
63 92 62
44 76 87
80
82 88 78
55 70
43 94
94 74 48
97
66 65
50 85 108
84
68 82
83
53
76
91
71
79
73
77
97 79 77
71 47 104
92
62
81 85 72 68
67 102
80 70
76 98 59 109
73 81
75 61 83
81 60 96
70 54
70 89
83
84 91
97
76 43
83 74
59 79
115
70
47
92
54
84 54 83
60 102
70 66
65 52
80 106 65 76
74 87 94
82
87 76
99 101 93 66 93
88 83
120
77 80 88
78 83 67 110
92 94
65
64 58 74 76
80 72 71
47
66
91
66 77
81
55 87
43 32
97
生活バスよっかいち走行風景
:スーパーサンシ大矢知店前
生活バスよっかいち外観
生活バスよっかいち走行風景:ヴィラ四日市横
生活バスよっかいち走行風景: 四日市社会保険病院前
生活バスよっかいち車内風景
西老人福祉センター行きバス車内
西老人福祉センター行きバス降車風景
西老人福祉センター行きバス降車風景
西老人福祉センター行きバス車内
-38-
<質疑・コメント>
○中村(司会)
○質問者
どうもありがとうございました。それでは、
自家用車が減らない理由として、自動車と
ただ今の西脇理事長の発表に対しまして、フ
いうものは一回買ってしまうと乗れば乗った
ロアの方から何かご質問があれば挙手をお願
だけ得をするシステムになっていることであ
いします。
ると思っています。それで、その点からバス
を活性化する意味でも、やはりそのようなシ
○質問者
ステムを作れば良いのではないかという意味
細かい質問になって恐縮ですが、NPO 組織
で、このバスの応援券を買ってしまうと乗っ
の現時点の構成と、なぜこのような機関を設
ただけ得をするというのはとても良いシステ
けられたのか、どのような方が中心になって
ムだと思っています。それで、質問なのです
動かれたのかという、団体の設立経緯などを
が、乗車するお客さんの利用形態の比率、現
お聞かせ願いたいと思います。
金利用、それと回数券利用、それからこの応
援券で乗って下さるお客様、その比率がもし
○西脇
分かりましたら教えて頂けますでしょうか。
団体の設立は、バスの廃止を聞きまして、
やはり地域に公共の足がないと困るというこ
○西脇
とによります。地域の自治会、当時私は自治
現在、運賃収入としては月に大体 10 万円く
会の副会長をやっておりまして、自治会とし
らいになります。内訳としましては、応援券
てもなんとかしたいと。それからバス会社さ
による乗り降りが大体 5∼6 万円、それから車
んの方も単にバスを廃止するということだけ
内の回数券が 5 千円、あとは現金になります。
ではなく、何とかならないかと。また行政も
意外と現金が多いです。やはり高齢者になり
やはり補助金はすぐには出せないということ
ますと応援券を落としたり、忘れたりという
で、補助金を出し易くするための実績作りと
ことが多いようです。
して、試験運行のバスを走らせていますが、
これからどんどん赤字路線廃止の要請が増え
○中村(司会)
てくるということで、そういうバスが無くな
それでは加藤先生お願いします。
るのは困る、公共のバスはこれからも存続し
なければいけないし、逆に言えばもっと増や
○加藤
していかなければならないというように、バ
少し関わりました関係で、内情もいろいろ
スへの思い入れの強い人が集まって来ました。
わかるところありますので、今の事例のポイ
最終的にはその方々は NPO 法人の中で理事と
ントを少し申し上げたいと思います。一つは、
して入って活動しております。
先程私は、一般的な行政に期待してはいけな
いというようなひどい言い方をしたのですけ
○中村(司会)
れども、これはアンチテーゼのようなもので、
ありがとうございました。お手元の資料に
このシステムがどうして成り立っているかと
も書いてありますので、ご覧いただきたいと
いうことをまず組織的に解明したいと思いま
思います。それでは、続いて前の方お願いい
す。
たします。
一つは、もちろん底堅い需要がこの地域に
-39-
あるということです。このような乗り合い交
があるかということをきちっと形で示し、P
通が必要であるというニーズです。ただそれ
Rして、それに対する対価をどのように受け
だけですと乗らないのですが、それを形にす
取るかという戦略があるということなのです。
るためのもう一つの力が必要になります。そ
西脇さんの話からは、そのへんのことは当た
れを具体的に言いますと、キーパーソンとい
り前のようにやっていたように聞こえるかも
うことになると思います。情熱とか熱意とい
しれませんが、そのことはたいへん深い戦略
う話も出てきましたけれども、キーパーソン
なのです。なおかつ、応援券の話も出ました
というのはそれだけでもダメで、ある程度こ
けれども、応援券も応援という名前を付けた
れに関わる主体がまんべんなく必要であると
ところにポイントがあって、これを買う人は
いうことです。たとえば、市民に偏っていて
生活バス四日市を応援して下さる、そして文
はいけません。ここでは、沿線企業の方も、
句も言って下さい、みんなでこのシステムを
バス会社の方も参加されましたし、行政の方
高めあっていきましょうという意味が込めら
も入られました。しかもみんなボランティア
れているのです。
です。自分の立場をいったん隠して、このバ
実際に、そういう動きになっているような
スを実現させるためにがんばろうということ
仕組みをどのように作るかということですが、
で活動しています。そのように隠してはいる
難しいのは、先程の青葉区と全く逆で、この
のですが、当然本職はそちらですから、ノウ
生活バス四日市のエリアというのは非常に恵
ハウはあるわけです。ですから、その中で仮
まれていないエリアであるということです。
想的にそれぞれはこのように考えているので、
恵まれていないエリア故にやりやすい面もあ
こういうところは気をつけた方が良いという
って、恵まれているといろいろとニーズが多
話し合いもきちんとできてきます。
すぎてどれにどう対応したらいいのかと難し
一番冒頭に、戦略企画という話をしたので
い問題も出てきます。それから商売ができる
すが、それがこの運営をどうやっていくかと
ところもありますから、バス会社もそう簡単
いう会議の中に出てきたのです。そのことが
にうんとは言わないところもあるだろうと思
非常に強かったと思います。なおかつ、住民
います。どちらもそれぞれ難しいところがあ
のニーズや企業の考え方を把握してくれるプ
りますが、そういうことをよく考えていただ
ロの方もいました。したがって、そういうと
き、この生活バス四日市の経緯をよく理解し
ころからニーズをどうやってくみ上げるか、
ていただきたいと思います。それぞれの地域
もう一つ、組織的だけではなくお金をどのよ
でこのようなことをどうやってやろうかとい
うにくみ上げるかになります。月 10 万円でど
う時に、他力本願でないところが非常に重要
うやってできるのだというように思われてい
になります。お願いに上がるのではなくて、
る方もいると思います。実は、それでは全体
自分たちで作っていくということが非常に大
の運営費の 1 割くらいしかなりません。要す
事になります。
るに、収支率 1 割です。後の 9 割は行政から
自分たちで作っていく時に、きちんと戦略
の補助金、企業からのお金で賄っています。
を持って作り上げ、守り育てるということを
この時に、この NPO 法人はどのような戦略
どのように行ったら良いのかということを、
を取っているかというと、どうやって出させ
その地域の特性あるいはその地域にどのよう
るかということを考えています。どうやって
な人がいるのかということをよくみながら進
出させるかということは、この取り組みが社
めていくことが大事であると理解してくれた
会的にあるいは企業活動的に、どれだけ意義
らと思っています。
-40-
○中村(司会)
はい、ありがとうございました。では生活
バス四日市
西脇理事長のプレゼンテーショ
ンを終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。
-41-
-42-
プレゼンテーション3:
「市民との協働によるゾーンバスシステムの導入」
∼盛岡市オムニバスタウン計画∼
盛岡市 企画部長
泉山
良男
∼市民との協働によるゾーンバスシステムの導入∼
盛岡市オムニバスタウン計画
平成16年5月24日
岩手県盛岡市
それでは地域のバス交通につきまして、オ
対策を講じておりますが、なかなか良い効果
ムニバスタウン計画を推進する中で取り組ん
が得られず、このような状況を解決する方法
だ経験を中心にお話をしたいと思います。
として、平成 12 年2月にオムニバスタウンの
盛岡市は、岩手県の県庁所在地として発展
地域指定をいただきまして 15 年度までの5
してきておりますが、古くは西暦 803 年に征
ヶ年間でバスの利用促進を図る様々な整備を
夷大将軍坂上田村麻呂が蝦夷征伐の前進基地
行うこととした訳でございます。
として城を築いたことに始まります。その後
盛岡市の交通状況
山梨県甲斐源氏の南部氏が 16 世紀末に河川
に囲まれました場所に盛岡城を築城し南部
四百年の城下町で道路が狭い
追いつかない道路整備
20 万石の城下町が形成され、現在の街の基礎
ができたところでございます。
住宅地の郊外化
マイカー通勤の増大
朝夕の渋滞が年々悪化
バスの定時運行ができない
当時は城を外敵から守るということで、河
悪循環の遮断!
川にあまり橋を架けない、狭い道路や曲がっ
バス離れ
た道路にするなどの工夫がなされたり、戦災
マイカーの削減方策
バス利用環境の整備
にほとんど遭わなかったこともありまして、
その後の自動車の増加や住宅の郊外化に道路
整備などが追いつかないということで、年々
盛岡市オムニバスタウン計画の施策体系
交通渋滞が悪化しております。また、冬には
降雪量はそれほど多くありませんが、道路が
凍結し渋滞に拍車をかけまして、通勤通学に
相当な時間を必要とするというようなことに
なっております。
そのため、時差出勤やノーマイカーなどの
-43-
オムニバスタウン計画の内容でございます
の実証運行を開始した松園地区について、お
が、ゾーンバスシステムを中心と致しまして、
話をさせていただきたいと思います。
運行体系の改善や走行環境の改善、利用条件
松園地区は都心部から約7㎞のところにあ
の改善の他、バス停留所の整備やバスロケー
りますが、アクセス道路が2本しかないこと、
ションシステムの採用などの施策で構成され
都心部で道路整備が遅れているということか
ております。
ら、通勤通学時の交通渋滞による影響を大き
また役割分担と致しましては、施設整備は
く受けています。そこでニュータウンの入り
社団法人岩手県バス協会、バスの運行は2つ
口にミニバスターミナルを設けまして、ニュ
のバス事業者、実証運行やPRは市が、バス
ータウン内を廻る支線バスと都心部に向かう
レーンの延長や PTPS の導入は岩手県警察本
幹線バスとの機能分担を行うことにしました。
部が担当し、国と県からの補助金を活用して
行いました。
次に、ゾーンバスシステムの全体計画です
役 割 分 担
が、冒頭でお話ししましたとおり、河川に囲
オムニバスタウン計画
まれた地域から都市が発展しましたので、市
バス協会 ⇒
バス事業者 ⇒
盛岡市
⇒
警
察
⇒
役所の近くの岩手公園に盛岡城の跡がござい
ますが、おおむね河川を境に松園地区、都南
地区、太田地区、青山地区の 4 つの地区に分
けてゾーンバスを構想いたしました。
○支援
施設整備
バス運行
実証運行・PR
バスレーンの延長
公共交通車両システム(PTPS)導入
国、県、警察、JR
松園地区は、昭和 40 年代に県の住宅供給公
社が開発したニュータウンですけれども、平
成に入りましてからもさらに北側が開発され、
人口2万人を超える住宅地となっております。
ゾーンバスシステムの全体計画
東北自動車道
(至青森)
東北新幹線
平成 13 年7月に実証運行を開始しました。
松園地区
青山地区
それから、都南地区ですが、平成4年に都
南村を合併いたしましたが、当時 4 万 3 千人
秋田新幹線
国道46号
の日本一人口の多い村で、国道 4 号線を中心
市役所
市中心部
太田地区
に一体的な市街地が続いているという地域で
都南地区
すが、平成 14 年 10 月に実証運行を実施して
(至仙台)
国道4号
おります。
それから太田地区は、現在田園地帯ですが
地域振興整備公団の新都市開発などが行われ
松園地区におけるゾーンバスシステム
ている途中ですので、今後の開発状況をみな
がら実証運行を計画することとしております。
それから4つ目の青山地区は、背後に 5 万
3 千人と現在日本一人口の多い村であります
滝沢村と隣接をしておりますが、平成 15 年
10 月から実証運行を実施しております。
今回は市民との協働によるゾーンバスシス
テムの導入ということで、最初にゾーンバス
-44-
ゾーンバス運行前の状況は、ニュータウン
の中でバスが頻繁に来るところと空白地帯の
松園地区のゾーンバス運行前の状況
ようにバスが来ないところがありました。ま
た、車内の混雑が激しい便があったり、途中
1 ニュータウンの中でバス運行水準に
地区内格差があった
の停留所で満員のため乗れなかったりすると
2 朝の特定便に利用が集中し、車内混雑が激しい
いうようなことがありました。また長い路線
3 長い路線を運行するため、
始発便からの定時運行ができない
を運行するため、始発便であっても定時に来
4 市中心部へ向う途中の幹線道路で
数珠繋ぎ運行が見られた
ないというようなこともありました。
そこで、ゾーンバスシステム運行のメリッ
トとしては、まずニュータウン内で増発や新
規路線の設定など需要に応じたダイヤ修正が
可能になること、それから利用者が用途に応
ゾーンバスシステム導入のメリット
じた便の選択が可能になること、運行改善に
1 郊外部において、増発や新規路線設定など
需要に応じたダイヤ編成が可能
より効率的なダイヤ編成が可能になること、
2 用途に応じたバス便の選択が可能
特定便に偏った車内混雑の解消が図られるこ
3 数珠繋ぎ運行の改善により、
効率的なダイヤ編成が可能
となどがあげられると思います。
ニュータウン内での運行経路ですが、新規
4 特定便に偏った車内混雑の解消
路線、それから循環路線の設定を計画しまし
た。特に、循環路線を含む支線バスにつきま
しては、1 回 100 円、降りたところから乗っ
松園ゾーンバス運行経路図
た場合は帰りの運賃が無料になるというよう
な仕組みを作りました。これは、ニュータウ
ン内の商店や公共施設に用事がある場合 100
円で済むことにした訳です。
それから、基幹バスと支線バスとに機能を
分けることから、ミニバスターミナルで乗り
継ぐことを基本としております。しかしなが
ら、長い間そのまま一つの路線として運行し
てきたこともありまして、ミニバスターミナ
ルで乗り換えを要しない直通バス、それから
時間短縮を図るための急行便を設けておりま
基幹バスと支線バス
す。また途中から満員で乗れない地区の解消
(郊外部) ・支線バス ・直通バス ・急行便
のため、途中始発便も用意しております。
計画立案にあたりましては、バス協会やバ
ターミナル(駐輪場)
ス事業者と一緒に地域に入って説明会を開催
しております。地元の町内会との共催の形で、
懇談の座長は地元の代表の方にお願いするよ
・途中始発便
(基幹バス) (各バス停停車) (ノンストップ) 途中バス停
( 都
うにしました。
-45-
心
部 )
大きくは実証運行開始までに 3 回の説明会
の下水道処理場の一部を割愛して整備しまし
を開催し、1 回の説明会をのべ 4 会場で行っ
た。面積は約 2 千 7 百平方メートルで、8 バ
ております。それまでバス事業者が住民と懇
ースの他に待機分として 3 バース用意してお
談する機会が全くなかった事もありまして、
ります。
計画以前のことについて厳しい意見も多く出
松園ゾーンバスの計画立案の手順
されました。たとえば、都心部に比べて運賃
が高い、バスが古い、運転手のマナーが悪い
平成12年 7月 第1回地元説明会
(計画の趣旨と運行概念)
などというようなことです。計画に関しまし
平成12年11月 第2回地元説明会
(地区の課題と運行改善等)
ては、ミニバスターミナルで乗り換えが必要
なことについて多くの意見がございました。
平成13年 5月 第3回地元説明会
(運行計画∼ダイヤ・利用方法等)
これまでは全く乗り換える必要が無く利用し
平成13年 7月23日 実証運行開始
ていた訳ですから、新しい試みに対する不安
がありました。ニュータウンが開発されてか
ら 30 年以上も経過し、入居当時の方々が高齢
松園ゾーンバス実証運行の経過
化してきているということもあり、荷物を持
平成13年7月23日 実証運行開始
った場合などの乗り換えがたいへんであると
第1次利用者アンケート、苦情等
いうようなことでございます。
いろいろな意見がありましたが、平成 13
年 7 月 23 日に実証運行の開始を致しました。
9月30日 第1次ダイヤ改正
(所要時分の見直し、直通便の設定、
21時以降のダイヤ削減)
・ 利用者及びモニターアンケート、地元懇談会
その後、利用者アンケートを実施したり、電
12月22日 第2次ダイヤ改正
・ 第2次アンケート、地元懇談会
話等による苦情などを踏まえ、ダイヤ改正を
平成14年4月30日 本格運行・第3次ダイヤ改正
2 回行っております。利用者アンケートの中
には、やはり時間通りにバスが来ないという
ことやバスターミナルで支線バスと基幹バス
松園ゾーンバスに対する主な意見
との乗り継ぎが上手くいかないというような
ことがあげられておりました。この中には反
・ 時間どおりにバスが来ない
対に時間通りにバスが出発してしまうことへ
・ バスターミナルでの支線バスと基幹バスの乗り継ぎ不良
・ 前のシステムに戻してほしい
の苦情も含まれております。というのは、帰
・ バスターミナルに案内人を設置してほしい
りの基幹バスが事情があって遅れているのに、
・ 乗り継ぎが不便なので、直通便を運行してほしい
それを待たずにバスターミナルで支線バスが
・ 住宅地を運行する夜遅い便はうるさくて困る
な ど
時間通りに出発してしまうといったことです。
また乗り継ぎに対する不満も引き続きありま
したし、今までバスが通っていなかったとこ
松園バスターミナルの状況
ろや便数が多くなったところ、夜遅い便が増
発されたところでは、騒音や排気ガスなどに
・ バスターミナル施設
対する苦情もありました。これらの問題に誠
実に応えるため、さらに地元懇談会を開催し
ながら、ダイヤ改正の形で改善を進めてきた
ところです。
松園のバスターミナルにつきましては、市
-46-
・ 朝の利用状況
次に右図は、ゾーンバスによる利用者数の
をさらに把握しながら、改善に努めていかな
状況ですが、盛岡でも、年々バス利用者は減
ければならないというように思っております。
少する傾向にあります。基幹バスでみると、
松園ゾーンバスにおける利用者数の変化
実証運行前の前年度比 3%減少していたもの
H11∼H12
利用者数の変化(基幹バス区間)
が、運行後の比較では 4%増加するという結
H12∼H13
H13∼H14
(人 /月)
300,000
果になっております。
250, 000
同じく右に示す円グラフは、マイカーから
200, 000
バスへの転換の可能性を把握するために、通
150, 000
常マイカーで通勤している方々にモニターを
100, 000
依頼し、一定期間バスによる通勤をしていた
50,000
0
だきアンケートによる評価をして頂いた結果
8月
10月
12月
2月
4月
6月
H13年8月∼H14年6月の月当合計と11ヶ月平均 H12/H11=0.97 H13/H12=1.04
です。これにつきましても、バスへの転換の
可能性としては、「時々なら利用しても良い」
マイカー通勤者(モニター)の今後のバス利用状況
を含めて 70%の方々から転換しても良いと
いうお返事を頂いております。
どちらともいえない
全く利用したいと思わない
次に、通勤時間帯・車内人員の変化という
5%
ことで、混雑具合を見てみますと、実施前の
大いに利用したい
5%
20%
15%
あまり利用したくない
平均値は 35 人から実施後は 15 人へと減少。
そして、最大値は 59 人から 35 人というよう
時々なら利用してよい
に緩和されていることがわかります。
55%
また所要時間につきましても、経由地によ
っても異なりますが、4∼10 分程度の短縮が
図られております。
出勤時間帯・車内人員の変化(西松園一丁目通過時)
実施後
それから課題であった定時性の確保、所要
時間の短縮にあたりましては、市内で初めて
実施前
35
平均値
15
公共車両の優先システムが導入されました。
実施区間内の 32 基の信号機のうち 22 ヶ所に
59
最大値
つきまして光ビーコンを設置し、朝 7 時から
9 時までの急行便の優先的な通行を図ってお
35
0
ります。これによりまして、バスの所要時間
10
20
30
40
60 (人)
50
※ 実施前は平成12年5月の実測値、実施後は平成13年10月の実測値
が 5 分 5 秒短縮され、バスの停止回数が 2.9
回減少しておりまして、PTPS の効果が現れて
松園地区から盛岡バスセンターまでの所要時間
いることがわかります。
実施後(直通便)
平成 13 年 7 月に実証運行を開始し、2 度の
実施前
松園二丁目
37
31
東県営アパート
ダイヤ改正を行いながら、平成 14 年 4 月に本
35
東松園二丁目
格運行を実施しておりますが、その後の利用
32
東松園三丁目
39
34
松園中学校前
より便利になったと回答した方が約 50%、不
41
33
北県営アパート
39
34
北松園二丁目
便になったと回答した方が約 35%となって
42
36
0
10
20
30
所要時間(分)
-47-
44
38
小鳥沢一丁目
おります。今後におきましても利用者の意向
45
35
東松園四丁目
者アンケート調査によりますと、導入する前
39
38
40
50
それから、利用者アンケートを含めまして
このゾーンバスの評価としましては、利用者
公共車両優先システム(PTPS
)の運用状況
公共車両優先システム(PTPS)の運用状況
の快適性や利便性の向上につながったという
1 導入の目的
・ 利用者の利便性向上
・ 大量公共輸送機関の利用促進
・ バス運行の定時制確保 ・ バスの信号停止時間の短縮
2 実施内容
・ 区間 松園バスターミナル∼盛岡バスセンター間 6.7km
・ 区間内信号基数 32基
・ 優先通行対象車両 午前7時∼午前9時の急行バス 9便
3 整備内容
警察)PTPS用ソフトウェア、光ビーコン設置 22ヶ所
単独信号機の集中制御化 8基
バス事業者)PTPS
バス車載機 104基
こと、また、厳しい経営の中でオムニバスタ
ウン計画に参加したバス事業者にとりまして
は、わずかではありますが、利用者の増加・
運賃収入の増加につながったことが特筆され
るものとなっております。
その後、松園地区に続いて都南地区でゾー
ンバス実証運行を行いました。地元説明会等
でいろいろ意見交換をしながら運行ルートな
公共車両優先システム(PTPS
)の効果
公共車両優先システム(PTPS)の効果
どを策定しましたけれども、4 ヶ月の実証運
1 バスの所要時間の短縮
行終了後、路線によりましては利用者が少な
所要時間が5分5秒(16.5%)短縮された
いため本格運行に移行しなかったケースもあ
(30分46秒 ⇒ 25分41秒)
ります。
2 バスの停止回収の減少
いずれにしましても、まだまだ市内での交
停止回数が2.9回(23.9%)減少した
通渋滞が緩和されておりませんので、様々な
(12.1回⇒9.2回)
施策を講じなければならないと考えておりま
す。マイカー削減のための施策、公共交通ネ
ットワーク構築のための検討、それからバス
路線の再編成、住民へのPR活動など、オム
ニバスタウン計画の評価を行いながら、でき
松園地区バス利用者の評価
ることから取り組んで参りたいと考えており
・ バス利用環境について、5年前と
比べると約50%が「便利になっ
た」と回答
ますので、今後ともご指導を賜りたいと存じ
ます。
・ 反面、約35%が「不便になった」と
回答
バスターミナルでの乗り継ぎ
本数減
定時性 など
なおPRになりますが、私どもは今年の 10
月7、8日に盛岡市でオムニバスサミットを
開催することになりまして、地元で準備を進
とても便利になった
ある程度便利になった
あまり変化は無かった
不便になった
8%
35%
42%
15%
課題の整理 ⇒ 不便から便利へ
めております。お越しいただきまして、さら
にご意見等を頂ければ幸いでございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
松園ゾーンバスの評価
ゾーンバスの今後
・ 郊外部でのフレキシブルな運行が可能となった
・ 利用者が普通便、急行便(ノンステップ便)、直通便などを用
途別に選択することが可能になった
渋滞緩和
・ 特定便に偏った車内混雑が緩和された
⇒ マイカー削減
・ バスターミナルでの定時発車が可能となり、数珠繋ぎ運行
が改善された
⇒ 公共交通ネットワークの構築
・ 不満足な人はいるものの、利用者は増加した
⇒ バス路線の再編成
・ 平成15年の収入が対前年比で3.8%増加した
⇒ 有効性を確認し、次のステップへ
-48-
<質疑・コメント>
リティサービスがあるのでしょうか。また、
通常のバス以外に何か障害者用のタクシーで
○中村(司会)
あるとか、障害者向けの特別な車両サービス
どうもありがとうございました。それでは、
といったものが盛岡市にはありますか。
ただ今の泉山さまのご発表に対してご質問を
お受けしたいと思います。
○泉山
一つだけ私から聞いてもよろしいでしょう
盛岡市としては、特に障害者向けの施策は
か。
ございません。今回のオムニバスということ
で、低床バスの導入については、バス会社の
○中村
方に 5 年間で 20 台ほど導入していただいたの
利用者が若干増えたという話でしたが、増
ですが、こちらの浜松に来て遠州鉄道さんの
えた人は何から転換して来たのですか。マイ
バスを見ましたら、低床バスではなくて、超
カーからなのか、そうではない可能性もある
低床バスと側面に書いてありましたのでびっ
かとは思いますが、おわかりになる範囲でお
くりしました。今まで超低床バスという概念
願いします。
が私には全くなかったものですから。実は、
今のところ低床バスということで導入してい
○泉山
るところでして、なかなか障害者向けのバス
私どもの方でも一つ大きなものとして、マ
やタクシーということになりますと、まだ普
イカーからの転換ということを目指しており
及されていないという状況です。
ましたので、その後調査をすれば良かったの
ですが、理由はあまりわからない状況です。
といいますのは、ニュータウンの出入り口で
○中村(司会)
交通調査を行っておりますが、それが隣接町
はい、ありがとうございました。では加藤
村から来ている車もありまして、必ずしもニ
先生の方から手短にお願いします。
ュータウン内の人の車かどうかがわからない
という実態でございます。的確な調査ができ
○加藤
ていない状況ですが、いずれにしても、定時
一つは質問、一つは問題点をあげさせてい
性のあるバスができたということで、ニュー
ただきます。
タウンはもちろん、さらには近くの沿線から
ます質問としては、協働ということが謳っ
の利用客が加わって増えているのではないか
てあるのですが、具体的にどこが協働なのか
というように推測をしております。
よくわからないということです。もしアンケ
ートや説明会を協働というのなら、協働とい
○中村(司会)
う言葉はいらないというのが一点です。
ありがとうございました。フロアからの質
それから、私自身 1 年前ぐらいに盛岡に行
問はございませんでしょうか。他にご質問の
きまして、この松園のバスターミナルを見た
ある方はございませんでしょうか。
のですが、非常に怒りを覚えながら、このシ
ステムは本当にこれで良いのかと思いました。
○ヴェスタールント
少し感想を申しますと、最初に私が言いまし
お尋ねしたいのですけれども、盛岡市には
たように鉄道、バス、タクシーと硬直化した
障害者のための施策として、どのようなモビ
縦型の体系には限界があり、それを破るため
-49-
にこのようなシステムを導入していかなけれ
組織の方と綿密にいろいろな場面を考えなが
ばならないということです。この幹線・支線
ら、さらには、どのように意見を収集してい
バスのシステムというものは、本来は、幹線
くかということも含めて、連携を図りながら
バスはバス以上、more than バスでなければ
進めていくという意味で、協働という言葉を
いけない。それから支線バスは less than バ
使わせて頂いている訳です。
ス以上でないといけない。これはバス未満に
また、幹線バスと支線バスというように作
なっていないといけないにもかかわらず、ど
って、最初は大きく機能分担ということを目
ちらもバスになっている。まだバスのレベル
論んだ訳ですが、やはり実態は、なかなかま
なのです。幹線バスはもっと高速性、定時性、
わりの地域事情等もありまして、必ずしもお
高頻度、快適性を追求しないといけないし、
話の通り幹線バスが高速性になっていないな
一方で、支線バスは非常に分かりやすいこと
ど様々な問題が発生しております。
ですが、家の前まで行ってくれたり、頻度は
それから、当初計画した計画自体が、住民
それ程低くないなどというようにならないと
の方との懇談によって少し違う形になってき
いけないのですが、実際にはそうなっていな
たということもあります。いずれこの計画の
かった。支線バスは 30 分に 1 本というところ
中で、一つはやはり今までバスというものは
もあるでしょうし、普通のバスが同じように
住民との関わりではなくて、一般的に事業者
走っているということで、システムそのもの
が決めてきたという経緯がある訳ですが、こ
は良いと思うのですけれど、やはり細部を見
れが行政も入って、さらに住民も入った形で
るとかなり問題があると私自身は考えていま
バスの問題を議論するというようになったと
す。現在のところ増加率は 3%という数です
いうことは、一つの前進だというように思っ
が、30%、300%と乗客を増やしていかなけれ
ております。
ばならないと思っています。そのために、今
したがって今後についても、いろいろ改
後どのようなことを考えていかなければなら
善・改革をするということで地元の方といろ
ないのか、あるいは協働ということをどのよ
いろ話し合っておりますので、今の加藤先生
うに使っていくのかということをお伺いした
のお話も含めてさらに、改善に向けてがんば
いと思います。
りたいというように思っております。
○中村(司会)
○加藤
言葉は多少きついようですけれども、まだ
実は、幹線バス、支線バスと分けるという
まだ課題があるという受け止め方としてお応
ことが、協働を作る上で非常に良い土台にな
え頂くようお願いしたいと思います。
るのです。ですから、それをぜひ使っていた
だきたいと思います。私の言い方が良くなか
○泉山
ったかもしれませんが、これから非常に発展
協働という使い方ですが、先程、四日市さ
する余地はあると思いますのでがんばって下
んでは自ら行っているというお話でしたけれ
さい。
ど、まだそういうところまでいっていないと
いう部分が確かにあります。ただ、私どもで
○中村(司会)
は、町内会という自治組織が約 335 ありまし
はい、ありがとうございました。
て、当然ニュータウンにも自治組織がありま
幹線・支線というのを最初に始めたのは、
す。バスの運行にあたっては、そういう自治
昭和 50 年の関東バスなのですけれども、大阪
-50-
市は少しゾーンバスのやり方を変えつつあり
私も盛岡はまだまだ時間が掛かってもかま
ます。地方都市の中で幹線・支線と明確にあ
わないと思いますので、試行錯誤繰り返しな
るという試み自体がそれ程多くない中で、事
がら動かしていただければと思っております。
業者を交えて行うということは非常に大事だ
それでは、これで泉山さんの発表を終りに
ということです。
させていただきたいと思います。ありがとう
ただ、加藤先生がおっしゃったように、や
ございました。
はり地元とどう関わっていくのかというとこ
ろが課題で、やりとりを聞いていて気になっ
たのですが、当初の幹線のイメージが幹線ら
しくなくなり、支線のイメージがまたまた支
線らしくなくなる。想像としては概念を発揮
しているのだけれど、舞台に移していくとそ
れが結局元のバスからなかなか抜け出せない
でいることになる。それを改善するためにい
ろいろやっていかないといけないという課題
に直面されているのではないかという気がし
ております。
-51-
-52-
-53-
プレゼンテーション4:
「 「おでかけ交通」による地域交通の確保」
∼北九州市における取り組み∼
北九州市建築都市局計画部都市交通政策課 係長
東
義 浩
「おでかけ交通」による地域交通の確保
∼北九州市における取り組み∼
北九州市 建築都市局 都市交通政策課
私ども都市交通政策課の中には、バス交通
ざいます。
係という係がありまして、現在そこに属して
非常にアジアに近いということで、まちづ
いる身です。バス交通係というのは、もう 2
くりの方向性もアジアに開かれたまちを目指
年になりますが、もともと道路運送改正法を
していこうというようなことを考えておりま
きっかけとしまして、平成 14 年の 4 月にでき
す。また、近代製鉄の発祥の地でもございま
た組織でございます。これは、市民の足を支
す。
えるバス交通が今まで事業者まかせになって
この北九州市の特徴は、非常に高齢化率が
いたことに対して、今後は行政も積極的にこ
高いということです。現在、高齢化率はすで
のバス交通に関与していこうという意思表示
に 20%を超えていて、これからは超高齢化の
でもあります。しかし、私ども北九州市は、
社会になっていくのではないかという状況で
市営バスを抱えていることもあり、どうもバ
ございます。
ス交通係というと交通局の一部ではないかと
いうことで、「時刻表について教えて欲しい」
北九州市の位置
などという交通政策からかけ離れた問い合わ
せの電話があるのもまた実情です。
本日は、市の概要を少しお話ししてから、
ウラジオストック
ウラジオストック
私ども北九州市における地域交通の一つの手
大連
大連
段であります「おでかけ交通」について、そ
平壌
平壌
京城
京城
仁川
仁川
東京
東京
の特徴と今後の課題という点に触れさせて頂
釜山
釜山
こうと考えております。
上海
上海
北九州市は、浜松市から見ますと西の方に
約 700 ㎞位離れておりまして、人口 100 万人、
面積的には浜松市より少し大きめで 490 ㎢ご
-54-
北九州市
City
City of
of Kitakyushu
Kitakyushu
大阪
大阪
浜松
浜松
500km
1000km
北九州市はご存じの通り 5 つの都市が合併
した都市でありまして、交通体系は、東西に
北九州市の全域
鹿児島本線、南北に日豊線、日田彦山線、そ
響灘環黄海圏ハブポート(建設中)
して都市モノレールが走っております。また、
若松区
戸畑区
北九州学術研究都市
小倉駅
市の西部の南北には筑豊電鉄という私鉄が走
門司区
小倉北区
八幡西区
っております。このように交通の主軸はある
新北九州空港(建設中)
都市高速道路
八幡東区
九州自動車道
のですが、まちの発展が旧 5 市中央部からど
小倉南区
東九州自動車道(整備中)
んどん建設されていったという過程がありま
して、実はこの中央部を結ぶ軌道形を補う意
味でも非常にバス交通は重要だと考えており
ます。
北九州市公共交通戦略プラン
右図は、公共交通戦略プランです。先程、
基 本 理 念
加藤先生が戦略とおっしゃったのですが、私
利用しやすく快適な公共交通を創造し、人、まち、環境にやさしいまちづくりを目指す
基 本 方 針
どものまちではこういうバス交通を道路運送
法の改正をきっかけにして、どのような戦略
を立てていって、できるだけ利用して頂くた
施策
めにどのように関わっていくかということを
考えています。
目標 1
目標 2
目標 3
公共交通
ネットワークの構築
公共交通の利便性
を高める対策の
充
実
新たな生活交通
手段の確保
方針1
方針2
方針3
方針4
方針5
公共交通
ネットワークの
再編
交通環境
の改善
利用しやすさ
の改善
TDM(交通
需要マネジメント)
施策計画
生活交通対策
□交通結節点
□公共交通
ネットワークの再編 □バス停環境
□料金体系
□バス走行性
■日常生活の
□新サービス
の改善
交通手段の確保
□情報案内充実 □バスレーン拡充
平成14年2月
まず特徴と致しましては、自動車が非常に
普及している。しかも少子恒例化が進んでい
北九州市内の交通空白地域
る。公共交通が不便な地域が市内には存在す
る。また環境面にも配慮する。大きく分けま
すとこの 4 つの視点を考慮しながら市民生活
の利便性の向上、また市自体を活性化させて
いくということを目的にこのプランを作って
おります。
今日ご紹介いたします「おでかけ交通」は、
【空白地域抽出条件】
◆駅勢圏
1000m
◆バス停圏
300m
◆エリア面積 10ha以上
この中で目標3にございます新たな生活交通
凡 例
主要バス路線
空白地域(平地)
空白地域(高台)
手段の確保というところを実践したものです。
このプランを作る際に、どのような形で交
通手段を確保していくのかを考える前提条件
「おでかけ交通」の概要
として、少し言葉は悪いのですが交通空白地
【運行目的】
住民の日常生活や外出を支援する生活交通の確保
域を想定してみました。鉄道駅を中心にして
【対象地域】
①路線バス廃止による公共交通空白地域
②高台地区等の医療機関や公共施設への移動が
困難な地域
大体1㎞範囲は何とか公共交通が保たれてい
ます。それからバス停圏ですが、これは 300
mの範囲を、それからエリア面積を 10ha と仮
【運行手段】
地域・交通事業者・本市の連携のもと、採算性を
考慮し、ジャンボタクシー、小型バス等で運行
定し、このような抽出条件を与えて、どれく
らい公共交通の不便な地域があるかというの
を示したのが右図になります。
-55-
大体この図中でこの条件の場合は 49 地域あ
続いて運行までの経緯ですが、平成 11 年に
ります。凡例の白抜きの部分が平地部、緑で
高台地区の特にお年寄りの方々の生活交通を
塗ってあるのが高台部の対象地域になります。
確保するような方法はないかという提案があ
この中で、さらに絞りをかけますと、人口が
りました。これは地元からの提案でありまし
ある程度集積していないと公共交通を確保し
て、それに対して私ども行政が協力したとい
ても、既存のタクシーを利用する方が有利な
う経緯があります。それからこの要請をもと
ケースも出てきますので、大体標高 50m くら
に、平成 12 年 10 月に枝光地区で試験運行を
いを一つのボーダーラインにして、人口で絞
開始しております。それから同年 12 月には清
り込むと大体 20 地域ぐらいになってくるか
田地区というところでも試験運行をしており、
と思われます。これはあくまでも一つの条件
この試験運行を続けてみて枝光地区はもう少
ですので、いろいろな絞り方があると思いま
し様子を見た方が良いということで、試験運
す。たまたまこれを一つの参考にしますと 20
行の延長をしております。
地域になるということです。
「おでかけ交通」の特徴(実施のフロー)
予算的にもう少し何らかの助成をするにし
地 域
ても、このくらいの地域であれば許容できる
のではないかということを考えて、
「おでかけ
<体制づくりから運行まで>
おでかけ交通運営委員会を組織
協議・調整
助言・指導
需要見込み検討(アンケート、動態調査等)
選定
交通」を行っております。
NO
北
九
州
市
実はもう一つおでかけ交通開始までの流れ
交
通
事
業
者
YES
事業化断念
計画の策定
運行計画の検討
調整
がありますが、後ほどご説明させていただき
実施の判断
関
係
機
関
地域の利用意向調査等
実施の判断
NO
事業化断念
関
係
機
関
調整
YES
YES
ます。
おでかけ交通の運行(運行協定締結)
お出かけ交通は、あくまでも目的は住民の
運行業務
初期投資への助成(1地区最大300万円)
日常生活や外出を支援する生活交通の確保に
あるということで、対象地域につきましては
「おでかけ交通」の運行の経緯
道路運送法の改正に伴う予想される路線バス
平成11年
平成12年10月
平成12年12月
平成13年4月
廃止地域、それと特に高台の公共交通の不便
な地域を対象としています。運行の手段につ
きましては、地域と交通事業者と市の 3 者が
連携してやっていくシステムにしておりまし
(平成14年2月
平成14年4月
平成15年4月
平成16年2月
て、このシステム自体は昨年の4月から本格
的な運用を開始しております。
高台地区の生活交通提案
枝光地区 試験運行 開始
清田地区 試験運行 開始
枝光地区 試験運行 延長
清田地区 バス路線新設
道路運送法改正)
枝光地区 本格運行 移行
廃止路線対策として運用開始
桜丘校区 試験運行(∼3月)
それから特徴ですけれども、これはフロー
の形で描いてありますが、真ん中に地域があ
「おでかけ交通」運行地区
ります。あくまでも地域が中心、地域が自分
たちの足を確保するためにこの交通を走らす
のだという自覚をもつことです。市はそれを
有形、無形にサポートします。交通事業者も
運行という形でサポートします。このような
流れを中心に考えています。
実際は、かなりの面で行政がお手伝いをし
て行かなければならないのも事実です。
-56-
しかし清田地区については幸いにしてバス
えております。1 日の運行便数は、全部合わ
事業者が目をつけ、一般の路線バスとして運
せますと 69 便になります。ここはたまたまこ
行が続いている状態です。枝光地区につきま
のように利用者が多いものですから 100 円の
しては、平成 14 年 4 月から本格運行に移行し
運賃で運行が可能となっています。100 円に
ております。ここで蓄積しましたノウハウを
運賃を設定したのは、実はよその都市でたく
もとにして、15 年 4 月に生じた廃止路線の対
さん 100 円バスが走っている時期に合致した
応策ということで運用を開始しております。
こともあり、その流行に乗ったという現実も
それから最近では桜丘という地区で試験運行
ございます。
を行っております。現在本格運行しておりま
すのは右図の 4 地域になりますが、先程の枝
光地区、それから少し郊外部になりますが合
枝光地区での運行に至った経緯
馬・道原地区、平尾台地区、木屋瀬・楠橋・星
八幡東区(旧八幡市)の土地利用の特徴
平野部
工場立地
高台(斜面)部
住宅立地
ヶ丘地区地域で運行を行っております。
枝光地区の特徴を少しお話しますと、もと
もと枝光地区が属していましたのは八幡東区、
旧八幡市というところですけれどもかなりの
高台地区です。
右図に見えます海は洞海湾ですが、これを
中心に平地部には工場が立地をしております。
そして、その工場を取り巻くように斜面地に
住宅が立地しており、枝光地区もその一部と
枝光地区での運行に至った経緯
いうような状況です。これが特徴的な写真で
枝光地区の特徴
◆生活道路が狭幅員
◆車社会以前の市街地
◆住民の高齢化率が高い
◆比較的コンパクトな地区
すが、非常に幅員の狭い道路があって、こう
いうのり面に住宅が張り付いており、駐車場
公共交通が不便
車庫無し住宅が多い
交通弱者が多い
生活に必要な施設が集積
がないということです。この既成の住宅地自
体が車社会が到来する以前の住宅地なもので
すから、このような状況になっています。
それから住民の高齢化が常に高く、交通弱
者が多いということです。そして、比較的コ
ンパクトな地域に生活に必要な施設である商
店街や病院などが集中しているというように、
枝光地区の運行概要
このような交通が運行するのに非常に有利な
状況でした。人口は 2 万人ぐらいで、既に高
齢化率が 25%を超えておりまして、非常にタ
ーゲットが多いということもあり、試験的に
運行をしてみようということになりました。
一つ事業継続のためのポイントになるのは、
ここでの運行主体が地元のタクシー会社であ
ることです。これが地元に密着した交通を作
る時に有利な方向に働いたのではないかと考
-57-
◆運行主体 :地元タクシー会社
◆地元主体 :枝光第1・2・3自治区会
◆運行時間帯:8∼18時台(日・祝日運休)
◆運行車両 :ジャンボタクシー2台で5ルート運行
(9人乗り(運転手含め10人乗り))
◆運行状況 :2ルート(23便と7便)で1台
3ルート(16便と20便と3便)で1台
◆運
賃 :100円(大人・小人均一)、回数券発行
右図は、この枝光地区です。写真では少し
枝光地区の運行状況
見にくいのですが、先程の高台のエリア、手
前が工場のエリアです。それからこれはバス
停の表示ですが、商店街の中の時刻表の表示
なのでかなりラフな手書きのものになってお
ります。それから乗り場については路面表示
を行っております。以上のような状況です。
枝光地区では、非常にお年寄りが多いもの
ですから、冬場に乗客数が伸び悩みます。そ
れをどのようにして伸ばすかということで、
地域と事業者と市の 3 者が連携しながら、今
地域・事業者・市の連携
年の冬に回数券の販売促進キャンペーンを行
いました。
次図が枝光地区の平面図ですが、先程お話
回数券販売促進キャンペーン
(回数券販売状況)
ししました工場地がこちらで、この辺りから
ずっと斜面の住宅地になっているという状況
です。
回数券販売促進キャンペーン
(事前打合せの1コマ)
ここに最新のデータを入れておりますが、
この赤くなっているところですけれど、300
人未満からずーっと伸びていて、現状では
400 人強の方が利用されております。以下の
枝光地区運行車両
及び運行ルート図
グラフからもおわかりいただけますように、1
月にこれだけ急激に落ち込むものですから、
これをカバーするにはどうしようかというこ
(ジャンボタクシー)
とで、先程の促進キャンペーンを行っており
ます。また、グラフで高めのところがありま
すが、予備車両が 1 台あり、通常 2 台で運行
しているのですが、この予備車両を投入して
少し凌いだという時期にこのように利用者が
多くなっています。
利用特性ですけれども、このように地元の
枝光地区での利用状況
住 民 の 利 用 数 が 多 く 、 20,000 人 の 人 口 で
5,000 人のサンプルが取れているという状況
枝光やまさか 乗合ジャンボ タクシー年度別利用状況
人(平 均 /日 )
50 0
473
です。また、非常に高齢者の利用率が高く、
本格実施
46 8
467
453
45 0
422
414
大体9割位がお年寄りで、その内のほとんど
44 0
432
450
43 1
418
410
433
443
434 4 4 3
429
408
40 0
35 0
427
423
406
409
397
386
が女性です。そして、利用目的は通院や買い
428
418
○第 2回 運行内 容の見直し(H13.9)
1 号車・荒 手ル ート便数の 見直し
・枝光ル ート便数の 見直し
2 号車・日 の出 ルートの終 発延長 によ る便数の見 直し
・山王ル ートの見直 し(福祉セ ンター経由の 増便)
・山王ル ートのバス 停 位置の 変更
・山王、藤 見ルート便 数の見 直し
357
340
3 87
403
353 3 6 5
3 91
4 08
3 84
356
324
3 13
30 0
物が 9 割位を占めている状況です。このよう
25 0
に、おでかけ交通のシステムが上手く機能す
2 98
○第1回運行 内容の 見直し(H 13.4)
■回数 券の導 入
1号 車・枝光 ルートの 新設
・枝 光ルートの 新設の 新設に伴 う荒手 ルートの減 便
2号 車・日の 出ル ートの延伸
・各 ルートの便 数の見 直し
282
270
平 成12年 度
平 成13年 度
平 成14年 度
平 成15年 度
20 0
ることがわかりましたので、平成 14 年の 4
15 0
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
月
月から運行補助なしで運行をしております。
-58-
このように枝光地区で上手く機能したこと
頂いて成り立っていることから、収支のバ
に味を占めまして、バス路線の廃止対策とし
ランスが重要であると考えています。
てもこの手法を取り入れようということで、
残りの3地区でも始めています。路線バスの
枝光地区の利用特性
廃止対策としての3地区の概要ですが、マイ
◆高齢者の利用率が非常に高い
◆利用目的は買い物、通院が9割以上
クロバスを使ってみたりジャンボタクシーを
年齢別おでかけ交通利用の有無
(地域住民アンケート調査)
使ってみたりと各地区によりそれぞれ運行形
90歳以上
態が異なります。
80代
70代
利
用
し
た
利
用
し
て
い
な
い
60代
それから先程申しました行政の支援として
50代
40代
は、車両を買うのにお金がいるということで
初期投資に対して助成を行っております。初
※N:回答者数
利用者の交通目的
(利用者アンケート調査)
回答者総数
=119人
N=5135
全体
業務
1%
N=19
N=247
通学
1%
その他
3%
N=912
N=1109
N=992
通勤
2%
N=663
30代
N=477
20代
N=319
10代
N=296
通院
20%
買い物
73%
N=140
10歳未満
0%
50%
100%
期投資の負担の全てを事業者に求めるのは難
しいということで、このような初期投資の一
部について補助するようなシステムにしてお
ります。それからこれも非常に重要でして、
枝光地区試行実験の結果
運行継続のためには走ったら終わりというこ
◆試行当初から利用者増加等により採算面が改善
◆「おでかけ交通」は、高齢者の日常生活を支える
交通手段として定着
◆3者が各々の役割を果たすことが可能
とではなくて、ずっと3者で協議を続けてお
ります。私どもの係はバス交通係といいなが
住 民
: より一層の利用促進
交通事業者:経費節減等の経営努力を継続
行 政
:運行継続のための協議・調整等の支援
ら、ほとんどおでかけ交通に忙殺されており
まして、係の名前を変えた方が良いのではな
いかというくらいになっているのが現状です。
本格運行開始(H14.4.1∼
運行補助なしで運行)
先程の運行形態は3者3様だというのは次
頁の表を見ていただいてもおわかりかと思い
路線バス廃止対応3地区の運行経緯
ます。詳細はお手元の資料にございますので
◆平成14年3月にバス事業者が3地区での路線バ
ス廃止(H15.3月まで)を発表
◆「おでかけ交通」導入のため、タクシー事業者
への運行協力を要請
◆地域住民・行政・事業者で運行計画等を協議
割愛させていただきます。
終わりになりますが、おでかけ交通の効果
や課題についてお話したいと思います。
まず効果ですが、今のところ交通不便地域
本格運行開始(H15.4.1∼)
の解消や路線廃止対策としては非常に有効で
・小倉南区合馬・道原地区
・小倉南区平尾台地区
・八幡西区木屋瀬・楠橋・星ヶ丘地区
あるというように捉えております。それから
もちろん交通弱者、お年寄りの生活交通手段
として非常に機能しています。さらには、行
政の最小限の関与と負担で何とか乗り切れる
路線バス廃止対応3地区の運行概要
のではないかと言う見通しができたというこ
とです。基本的には、ハード面で民間の事業
■各地区で異なる運行内容
をお手伝いする公設民営的な考え方で事業を
■既存路線バス網を配慮した計画
地域住民、事業者が歩み寄り実現可能な運行計画を設定
既存バス路線との重複を極力避けるため、路線バス末端停留
所までのルート設定、重複区間で停留所は設置しない等配慮
行えたのではと考えています。
■行政の支援は初期投資費用の一部(300万円限度)
今後の課題ですが、現在は安定的な事業継
運行補助は行わない
■運行継続のための3者協議は存続
続のために、運賃収入だけで賄っているわけ
行政は協議の調整役
ではなくて、いろいろな企業の協賛金なども
-59-
最近の新しい話題として、まだ実現していま
せんが、試験運行を行ってみたのが、全然上
路線バス廃止対応3地区の運行形態
手くいかないということになった時に、地元
運行主体
の方が町内会費を出して足りない分を賄い、
合馬・道原地区
平尾台地区
■観光バス会社
タクシー会社
(タクシー会社系列)
■タクシー会社 の2社運行
木屋瀬・楠橋・星ヶ丘地区
観光バス会社
(タクシー会社系列)
八幡南地区
東谷地区
地元運営主体 合馬・中谷地区
おでかけ交通運営委員会
おでかけ交通運営委員会 まちづくり協議会
平・土日:7∼18時台
平日:6∼17時台
平日:9、17時台のみ
※日・祝日運休
運行時間帯
(11∼14時運休)
土・日・祝日:9∼17時台
※土・日・祝日運休
(3∼11月、春・夏休のみ)
さらに協賛金も集め、自分たちの手でこの交
通を走らせようという計画が持ち上がってお
運行形態
ります。我々もこの計画には期待をしている
運行本数
ところでございます。それから計画して実行
運 賃 等
してチェックして運行するというサイクルを
■乗合タクシー(4人)
ジャンボタクシー(9人)
1台で運行
■フリー乗降区間有り
■マイクロバス(29人)1台
2ルート:各11便
■平日:2便
■土・日・祝日:6便
3ルート
(各7便と5便と6便)
■大人200円(均一)
小学生以下150円
(3歳未満無料)
■回数券、定期券発行
■180円(大人、子供均一)
■大人300∼500円
※小学生未満無料
小学生以下200∼300円
■回数券発行
■回数券発行
■マイクロバス(24人乗り)
ジャンボタクシー(9人乗り)
各1台交互運行
■フリー乗降区間有り
運行開始日 平成15年4月1日
利用者主目的 通勤・通学、通院等
平成15年4月1日
通院、買物、観光等
平成15年4月1日
通院、買物、通勤・通学等
何回も何回も繰り返しながら行っていかない
と上手くいかないというのが実感でございま
合馬・道原地区
運行車両及び運行ルート図
す。また、この事業は既存のバス事業者さん
の路線と競合しないようにと気をつけて行っ
(マイクロバス)
ていますが、なかなか難しい面がございます。
最後になりますが、これまではどちらかと
いうと私どもは、都市交通政策課ですから交
(ジャンボタクシー)
通政策の視点からアプローチをしてまいりま
した。しかし、今後は、実際利用されている
方は高齢者ということで、やはり高齢者福祉
からの視点でのアプローチも必要ではないか
と考えております。
非常に雑ぱくな内容になりましたけれども、
この制度自体は昨年の 4 月から運用を開始し
平尾台地区運行車両
及び運行ルート図
(ジャンボタクシー)
たばかりでして、まだよちよち歩きのひよっ
子でございます。今後も運行しながら何とか
システムとして完成した制度にしていきたい
と思っております。
(乗合タクシー)
本日の話はホームページ上でも掲載してお
りますので、もしご興味のある方がいらっし
ゃいましたら、私どもの市のホームページを
ご覧下さい。ありがとうございました。
木屋瀬・楠橋・星ヶ丘地区
運行車両及び運行ルート図
おわりに(効果や課題など)
(マイクロバス)
【実施の効果】
◆交通不便地域解消、路線廃止対策として有効
◆交通弱者の生活交通の手段として機能
◆行政の最小程度の関与と負担
【今後の課題】
◆安定的な事業継続の確保
◆PDCAサイクルによる運行計画の継続的な検討
◆関係機関との調整
◆高齢者福祉の視点からのアプローチ
-60-
<質疑・コメント>
○中村(司会)
○東
ありがとうございました。それではただ今
おっしゃる通りです。
の東さんのご発言に対しまして、どなたか質
問などございますか。
○加藤
その展望を聞かせていただきたいと思いま
○加藤
すが。
今の北九州の例というのは、盛岡の例と全
く逆になりますね。盛岡の場合は、路線網と
○東
しては幹線・支線バスとしてデザインされて
実は、全くもって先生のおっしゃるとおり
いるのですが、それぞれの中身はあまりよく
で、本当は上司の方から指令が出ておりまし
ない。逆に北九州の場合は、支線バスに近い
て、その辺をしっかり整備するようにと言わ
システムだと思うのですが、協働をそれなり
れています。
に一生懸命やっておりますし、それなりに利
今回は非常にバラ色の話をしましたので、
用されていると思うのですけれども、北九州
バラ色の話ばかりではないことを付け加えさ
市全体で見ますと、民営バス、市営バス、J
せていただきます。先ほどお話しました廃止
R、モノレールとバラバラです。
路線は、もともと既存のバス事業者の路線網
私はこのような路線に非常に興味があるの
の中に組み込まれていた部分で、盲腸部分が
で、行けばその存在がすぐわかると思うので
取られたような状況なのです。我々が廃止代
すけれど、半年前に北九州市に行った時に、
替で対応する際に最初に考えたのは、今まで
民営バス、市営バス、JRはたくさん乗りま
利用していたお客さんが、そのままこのバス
したが、このような「おでかけ交通」の存在
に移行すると考えて、ある程度積算し、この
は全く意識もしませんでした。今回の話をい
レベルなら採算性の確保ができるとはじいて
ただいた時に、そういえばあったかなという
みたのですが、実際やってみると、大体7割
ような状況で全くわかりませんでした。
「非常
くらいのお客さんしか利用しないのです。完
にローカルなマイナーな生活交通というのは
全にもくろみが狂ってしまいました。
それでいい」という議論もあるかもしれませ
その理由の一つは、既存のバス事業者のサ
んが、公共交通はやはり路線網がきちっとコ
ービスが良いことです。大手の会社に 65 歳以
ーディネートされてないと 100%の力を発揮
上のお年寄りには 1 年間 36500 円払えばバス
できないと思うのです。
に乗り放題というチケットがありまして、廃
ここでは特に廃止代替ということが問題で、
止以前からそれを利用される方が結構多かっ
このようなことを行う時に、既存の事業者は
たようですが、実はそこまで分析ができなか
手を出しにくい、あるいは出したがらない傾
ったのです。ところが、このように路線網が
向になるので、そういう既存のものとは非常
途切れることによって、2回運賃を払わなけ
に切り離されたシステムになりがちです。多
ればいけないことになります。そうすると、
分北九州市もそうなったことが大きいと思う
3回外出していたところが2回になったり、
のですが、そのあたりの大きな壁を抱えてい
2回のところが1回になったりというように、
ると思うので、バス交通係の本当の大きな仕
利用回数が少なくなるというような影響は、
事は、それであると私は思います。
やはり大きかったと思います。個人的には何
とも言えないのですが、例えば他都市の事例
-61-
を見てみますと、バスの乗り継ぎ料金割引を
シャルがある中で、いろいろなご苦労されて
行政が補助するというようなところもあるよ
いる都市なのだと思います。
うです。ですから、もう少しそのようなとこ
この中で、バスは廃止路線からかなり積極
ろを勉強して、乗り継ぎ抵抗というものを減
的に果敢にやっていたという意味では高く評
らしていくようなシステムを考えていかなけ
価できますが、加藤先生のコメントと同じく、
ればいけないのではないかと思いながらも、
これを全体に行っていくという次の段階のと
やはりなかなか事業者間の調整という壁は厚
ころでどうやっていくのか、外の人間として
いというのが現状です。あまり答えになって
は楽しみなことでございます。中の方はご苦
いないのですが、確かにそういうジレンマを
労なことだと思いますけれども、ぜひこれか
抱えているということだけおわかりいただけ
ら注目していきたい都市の一つだと思います。
ればと思います。
それでは以上をもちまして、北九州市の取
り組みの発表を終わります。東さんどうもあ
○中村(司会)
りがとうございました。
よろしいでしょうか。このバス交通係で市
全体を通して会場からご質問がありました
全体のバスをどうしていこうかというような
らお願いいたします。
議論は始められそうでしょうか。
○質問者
○東
質問というより感想でございますが、3点
まだ表にはなっていないのですけれども、
よろしいでしょうか。イエーテボリのヴェス
他都市では、市営交通を廃止するというよう
タールント先生からご紹介がありましたデマ
な話がいろいろなところで議論されていると
ンドバスですが、私どものグループ会社で
思うのです。やはりそういう波というのは、
1970 年前後に導入を致しました。デマンドバ
我々の市も避けて通れないだろうなという話
スというものを導入した目的は、コスト削減、
をしています。本市の場合は特殊な事情があ
ローカル線を維持するためのツールであると
りまして、5市合併以前から市営交通がある
いうことでしたが、今日のお話では、新たに
のが旧若松市のエリアだけで、市域全体に市
都市の再生のための新たな需要を掘り起こす
営バスの路線が広がっているのであれば上手
ための路線としてのツールとして利用が盛ん
く行えるのかもしれないのですが、一地区に
であり、そのためのキーワードが IT を利用し
偏っている現状から、まだ議論に時間がかか
たものであるということは非常に参考になり
るのではないかというように考えております。
ました。
また新しい路線を引かれる5つの事例、ス
○中村(司会)
ウェーデンを含めましてご紹介いただきまし
はい、ありがとうございました。北九州と
たが、スウェーデンの事例では、難しい面も
いうのはモノレールを入れて、それで小倉駅
ありますが非常に理論的に整理されておられ
に直結していないところを非常にものすごい
ました。我が国の事例におきましては、民間
工夫した制度で直結し、さらに、実は日本で
活力で路線を引かれるケースでは非常にコン
有数のバス専用道路がある。午前中のセッシ
センサスにする方が、当然私どもも大いに参
ョンでご紹介がありましたが、私も見に行き
考になります。行政主体の例と致しましては、
ましたが、やはり加藤先生も見に行かれたの
私ども事業者に取りましては、非常に頼もし
だと思いますが、バスを上手く活かすポテン
いというか安心感のある事例であります。そ
-62-
れぞれ5つの事例について大変参考になりま
お話を伺いました。幹線・支線という概念と
したので、今後の教訓に活かしていきたいと
いうのはスウェーデンでもこの数年広く確立
思います。
されてきた概念で、幹線と支線などが多くの
3番目でございますが、高齢化社会を迎え
分野で成功してきております。もちろん何ら
て高齢者のバスを引く仕事というのは、非常
かの形でコミニュティバスサービスとの組み
に幸せというお話がありましたけれども、こ
合わせも全体としてもっと統合化することが
れは同感でして、私どももそのような路線を
必要であると感じました。また最後の東さん
引いた時に地域のご高齢者の方に感謝をして
の話ですけれども、自治体側におきましても
いただきました。このような仕事が本当にで
いろいろなニーズを明らかにするということ
きるというのは幸せであると考えています。
で、例えば GIS であるとかいろいろなもの、
以上、感想です。
例えば 300m の半径というもの一つの尺度と
する。我々もそうしたことはやっています。
○中村(司会)
そういう話をいろいろと非常に興味深く伺い
はい、ありがとうございました。およそお
ました。いろいろ進捗もあるということで興
時間になっておりますので、最後に全体を通
味深く、またこれからも皆様よくがんばって
しましてヴェスタールント先生にコメントを
いただきたいと思います。最後にご招待あり
頂いて、このセミナーの締めとさせて頂たき
がとうございました。
たいと思います。
○中村(司会)
○ヴェスタールント
ありがとうございました。私の方から特に
私にとりまして非常に興味深い話を拝聴致
まとめを長々と話すつもりはございませんが、
しました。日本のこともいろいろ学びたいと
それぞれの発表へのコメントを加藤先生にお
思って一生懸命聞かせていただきました。多
話頂いたことを始め、協働といった言葉は何
くの場合に、スウェーデンとは大きく違いま
なのか、あるいは、全体を考える、部分を考
す。制度的にも組織的にもいろいろ難しい問
える、企画戦略、いろいろなキーワードが出
題がある。それは、やはりスウェーデンと日
てきました。
本では直面している問題が違うと思います。
そのあたりを参考に、これから先もまだま
最初の二つのお話、それぞれローカルコミニ
だこのような議論が続くのかなと思いつつも、
ュティ型のバスに関しましては、スウェーデ
良い事例を上手く活かして育てていくという
ンでここ 15 年から 20 年ぐらいいろいろ議論
ことを、我々一人一人が努力していく時期に
している話とも絡みがあると思います。様々
来ているのではないかと思っております。
なニーズ、そして利用というものを組み合わ
これで本日の午後のセミナーを終わりにし
せるということ、たとえば、横浜の事例など
たいと思います。
ですと、支線というものが必要ですし、支線
参加していただきましたパネリストの皆様、
のサービスはすなわち通勤通学にも必要にな
それから会場の皆様、ヴェスタールント先生、
ります。それから他のものも必要です。した
皆様に感謝の意を表して拍手で終わりたいと
がって、組み合わせだと思うのです。私の方
思います。どうもありがとうございました。
でお話ししましたのは、高齢者だけを中心に
したまた障害者ということになると思います。
盛岡に関しましては興味深いということで
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-64-
参考資料
当日配布資料
生活バスよっかいち
「設立趣旨書」
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セミナー会場の様子
●開会
●基調講演1
●基調講演2
参-1
●基調講演2
参-2
●プレゼンテーション1
参-3
●プレゼンテーション2
参-4
●プレゼンテーション3
参-5
●プレゼンテーション4
参-6
●質疑・コメント
参-7
●会場の様子
参-8
「 21 世 紀 型 の 地 域 バ ス 交 通 マ ネ ジ メ ン ト 」 講 演 ・ 討 議 録
-住民、行政、事業者による地域モビリティ確保の方策を探るー
平成 16 年 12 月 発行
◆ 発行所
財団法人 計量計画研究所
〒162-0845
東京都新宿区市谷本村町2番9号
Tel 03-3268-9911 Fax 03-3268-9919
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