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第一部 海を知ろう - 東海大学 海洋学部

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第一部 海を知ろう - 東海大学 海洋学部
第 一 部 海 を知 ろう
地 球 は、その表 面 積 の約 71%
が水 で覆 われています。太 陽 系
の惑 星 の中 で、これほどたくさん
の水 を湛 えているのは、地 球 だけ
です。(注 :氷 の形 で火 星 にも多 く
存 在 しています)このことから、地
球 は「 水 の 惑 星 」とも 呼 ばれ ま す。
地 球 上 に存 在 する水 のほとんど
は 塩 分 を 含 ん だ 海 水 で あ り 、 98%
以 上 は海 水 です。このテキストで、
少 しでも 海 に関 する知 識 が 増 える
ことを願 っています。
この写 真 は、月 から見 た地 球
です。地 球 が丸 いこと、青 いこと、
月 か ら 見 た 地 球 ( NASA)
光 り輝 いていることがよく分 かりま
す。美 しいままに子 孫 に伝 えて行 きたいですね。
☆海洋のすがた
海 の歌 といえば、「♪海 はひろいな
大 きいな 月 はのぼるし 日 はしずむ」
を思 い出 しますね。この歌 にもあるよう
に、広 い、大 きいというのが海 のイメー
ジです。では、どのくらい広 くて、また
大 きいのでしょうか?
一 般 に、海 の表 面 積 は 3 億 6100
万 平 方 キロメートル、海 水 の体 積 は 13
億 7030 万 立 方 キロメートルもあります。
海 は 、 地 球 表 面 の 71% を 占 め 、 平 均
水 深 は 3,800m も あ り ま す 。 最 も 深 い
所 は日 本 列 島 から 2,700km南 方 にあ
るマリアナ海 溝 で、深 さは 11,000 メー
ル も あ り ま す 。 海 に は 動 物 が 15 万
7000 種 、植 物 が 1 万 5000 種 ほど生
も し も 地 球 の 直 径 が 1m だ っ た ら
息 することが知 られています。このよう
海 水 は 6 60 c c だ け
に海 は広 くて大 きいのです。
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ここで視 点 を地 球 全 体 の規 模 に移 してみましょう。必 ずしも海 の水 の量 が大 量 にあ
る の では ない こ と が 分 かりま す 。 こ の 写 真 は 、 東 海 大 学 海 洋 科 学 博 物 館 に 展 示 さ れ て
いる模 型 を示 しています。実 は、地 球 を直 径 1 メートルの球 に縮 尺 すると、この球 の中
一 杯 に入 る水 の量 は約 4,200 リットルに達 しますが、実 際 に地 球 上 に存 在 する水 の量
に換 算 すると、0.66 リットルにしか過 ぎません。このように見 ると、海 の水 の量 は地 球 の
表 面 に極 めて薄 い水 の膜 がはっている程 度 の量 でしかないと言 えます。
☆海 底 地 形
私 たちのすんでいる「陸 地 」から海 に入 っても急 に深 くはなりません。しばらくは陸 の
続 きのように少 しずつ深 くなっていきます。この陸 の続 きのような海 の底 (水 深 200mぐ
らいまで)を「大 陸 棚 (たいりくだな)」と呼 びます。これは海 底 の段 丘 と言 え、その傾 斜
角 は 0.1 度 以 下 です。
陸 棚 を 過 ぎ る と 海 底 は 急 な 斜 面 に な って 、 急 激 に 深 く な っ てい き ま す 。 こ の 急 な 坂 を
「大 陸 斜 面 (たいりくしゃめん)」と呼 びます。これは、2,000m 位 の深 さまで傾 斜 角 4 度
程 度 で続 いています。大 陸 斜 面 が終 ると平 坦 な深 海 底 となり、海 洋 のなかで最 大 の
面 積 を占 めます。この深 海 底 にある長 さ数 百 ~数 千 km にも及 ぶ深 い凹 みが海 溝 (か
いこう)で、この中 で特 に深 い部 分 を海 淵 (かいえん)と言 います。現 在 のところ最 大 の
水 深 は、マリアナ海 溝 にあるビチアス海 淵 の 11,034m です。一 方 、深 海 底 から 2,000
~4,000m もそびえたち、幅 1,000~4,000 キロメートルも長 く延 びた隆 起 を海 嶺 といい
ます。最 大 の海 嶺 は大 西 洋 中 央 海 嶺 で全 長 6,400km に及 びます。
海 の深 さの平 均 は 3,800m で、富 士 山 がちょうど沈 む深 さになります。ちなみに陸 地
を削 って海 に埋 めてならしたとすると、地 球 の表 面 は 2,400m の深 さの海 で覆 われてし
まうことになります。
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図
地球表面の高さ分布
[小 林 和 男 , 海 洋 底 地 球 科 学 , 東 京 大 学 出 版 会 ( 1977) よ り ]
上 図 は 、 地 球 表 面 の 平 均 的 な高 さ の 分 布 を表 わ してい ま す。 大 陸 に つづく 大 陸 棚
海 域 は、水 深 200m 以 下 の浅 海 が大 部 分 であるのに対 し、深 海 底 は海 面 下 5,000m
近 く あ り 、 こ の 深 海 の 占 め る 割 合 が 大 き い た め 、 海 洋 の 平 均 水 深 は 3,800m に な り ま
す。
☆水 圧 との戦 い
海 溝 の底 では、想 像 し難 いほどの高 圧 がかかっているため、普 通 の潜 水 艦 では海
底 まで到 達 できません。しかし、科 学 者 らが研 究 に研 究 を重 ねてついに海 底 1万 mを
突 破 できる潜 水 艇 を作 り上 げました。この偉 業 を成 し遂 げたのが、スイス人 科 学 者 で
ベルギー・ブリュッセル大 学 教 授 のオーギュスト・ピカール博 士 です。彼 が設 計 した「トリ
エステ 2 号 」は 1960 年 1 月 23 日 マリアナ海 溝 で 10,906m という世 界 最 大 深 度 記 録
をうちたてました。
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水 圧 で潰 れた鉄 球
(東 海 大 学 海 洋 科 学 博 物 館 )
カップ麺 の容 器 を海 中 におろすと、水 圧 のた
めに発 泡 樹 脂 の気 泡 が潰 れて、小 さくなりま
す。深 いほど水 圧 が高 いため、より小 さくなるこ
とがわかります。(東 海 大 学 海 洋 科 学 博 物 館 )
☆光はどこまでとどくの?
海が青いのは?
こんなに深い海の底には、もちろん光は届きません。水温も低く冷たくな
っています。では、光はどこまで届くのでしょうか?光の中には、紫,青,
黄,緑などの色が混ざっています。それが一緒になって、光は白っぽく見え
る の で す 。 と こ ろ が 、 水 中 に 光 が 差 し 込 む と き 、 赤 の 光 線 は 10m も い か な い
う ち に 、 黄 色 は 数 十 m で 減 衰 し て し ま い ま す 。し か し 、青 だ け は 、100m 以 上
も進むことができます。それで、海が青く見えるのです。言い換えれば、海
水に最も吸収されにくい色が「青色」なのです。
しかし、海がいつも青いとはかぎりません。プランクトンが大量に発生し
ているところでは、そこに光が吸収されたり反射したりするので色が変わっ
てくるのです。それで、黒潮のようなプランクトン量が少ない海水は青く、
沿岸部などその量が多いところは、緑から黄色,さらに褐色へ色が移って見
えるのです。また海岸の近くでは、川から運ばれてくる土砂で黄土色や茶色
に、また黒ずんで見えることもあります。
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黒潮域における海の色
群青色の美しい輝きを見せる黒潮
沿岸域における海の色
沿 岸 域 の海 の色 は、緑 がかっています。
赤 く見 えるのはプランクトンの異 常 繁 殖 で海 面 が変 色 した様 子 (赤 潮 )
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☆潮 汐 のはなし
皆 さんは、月 と地 球 の位 置 関 係 に対 してどのような感 覚 をもっていますか? 実 際
の距 離 は下 図 にように地 球 の大 きさのおよそ 30 倍 になります。いままでのイメージと比
べてどうでしょうか?
●
●
海 の満 ち引 きは、月 や太 陽 の引 力 と関 連 しているのを知 っていますか?
引 力 は 物 体 の 重 さ が 重 い ほ ど 、 ま た物 体 同 士 の 距 離 が 近 い ほど 強 く は たらき ま す。
ですから、月 の引 力 は月 に面 した地 球 表 面 (の海 )と反 対 側 の地 球 表 面 (の海 )では
大 きさが異 なります。この差 が、潮 の満 ち引 き(潮 汐 )を引 き起 こします。
地球
太陽は距離が離れているので、月の引力の約半分。満月や新月の時は、地
球,月,太陽が一直線に並び、月と太陽の引力が重なる時に、海面はもっと
も変化します。このときを大潮といいます。上弦や下弦のときは、月と太陽
の引力が打ち消し合うので海面のふくらみはもっとも小さくなります。これ
を小潮といいます。
ですから、天文学の知識を借りて月や太陽の動きを予測することで潮の満
ち干が予報できます。このような予報を潮汐予報と呼びます。かなりの高い
精度で予報が可能となります。誤差の要因は、気象変動に伴う気圧変化や、
風、地震に伴う地殻変動などです。
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☆津波
津 波 は、海 底 火 山 の爆 発 や、海 底 の地 すべり地 震 による海 底 の陥 没 や隆 起 によっ
て 、 急 に 海 底 が 上 下 す る と 、 そ の 付 近 の 海 水 が 落 ち こ ん だ り 、 持 ち上 が っ た りし て 起 こ
るものです。
日 本 は 昔 か ら 津 波 に お そ わ れ る こ と が 多 く 、 津 波 ( Tsunami ) と い う 言 葉 は 、 日 本 発
の世 界 共 通 語 として使 われています。津 波 は海 が深 い間 は波 高 (はこう)も小 さく、あ
まり目 立 ちませんが、海 岸 近 くに迫 ると、海 底 が浅 くなるため急 に波 高 が大 きくなり、怖
しいほどの勢 いで、陸 地 に押 し寄 せ大 きな被 害 を起 こします。
津 波 の被 害 :1896 年 (明 治 29 年 )の「明 治 三 陸 地 震 津 波 」は最 大 波 高 38.2m(綾
里 湾 )で、2万 2000人 の命 を奪 い、1万 戸 以 上 の家 屋 が流 失 や全 半 壊 しました。これ
は日 本 の津 波 史 上 最 大 の被 害 です。外 国 の地 震 で日 本 に被 害 が起 こった例 として
は、1960 年 の「チリ地 震 津 波 」です。地 震 発 生 から 23 時 間 後 に日 本 を襲 ったこの津
波 は、死 者 140 人 以 上 の被 害 をもたらしました。また、記 憶 に新 しいところではスマトラ
沖 地 震 に伴 う津 波 があります。 この津 波 では 50 万 人 以 上 の人 が亡 くなりました。
Wi k i p e d i a よ り 引 用
タイでの様子
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☆海 水 の成 分
海 水 浴 に行 くと、海 水 がずいぶんしょっぱいことがわかりますね。海 水 には、ナトリウ
ム ( N a + ) や 塩 化 物 (Cl - ) を は じめ と し て天 然 に あ る 92の 元 素 の す べてが 溶 け てい ま
す 。 それ が長 い 時 間 かけ て岩 石 が 風 化 (雨 水 が岩 石 から化 学 成 分 を溶 かし出 す) し、
塩 素 が 海 に運 ばれ た結 果 、 海 水 が 塩 を含 むようになったの です。これ が塩 辛 さ の原 因
です。世 界 中 の海 水 の塩 分 は約 3.5%です。ですから、1リットルの海 水 を蒸 発 させると、
約 35gの塩 が残 ります。
3大 洋 の塩 分 を比 較 すると、大 西 洋 が3.53%,太 平 洋 は3.49%,インド洋 が3.
48%となっています。北 極 海 、南 極 海 は2.55%ですが、これは氷 が融 けたり海 水 の
蒸 発 が 少 な い 海 域 の た め 塩 分 が 低 く なる の で す 。 逆 に 淡 水 の 流 入 が 少 な く 海 水 の 蒸
こうかい
発 が盛 んなところでは塩 分 が高 くなります。現 在 世 界 で最 も塩 分 が高 い海 が紅 海 (エ
ジプトと サ ウジアラビアの 間 に ある) であ ることも、 その 地 理 的 条 件 から理 解 できると思 い
ま す 。 全 く 泳 げ な い 人 でも 決 し て おぼ れ る こ と が ない と い い わ れ る 死 海 は 、 平 均 的 な海
水 塩 分 の 約 9倍 で、 31.5%だ そうです。 これは、死 海 に注 ぐ ヨルダン川 が周 りの 陸 地 の
蒸 発 塩 を溶 かし込 んで注 ぐ ため で、 死 海 の 底 に は十 数 mもの塩 の 層 が でき ている と 言
われています。
な お 、 全 海 洋 の 水 分 が 蒸 発 し て 塩 だ け 残 っ た と す る と 、 地 表 全 体 が 50 m ~ 87.7 m
( 自 然 の 状 態 で塩 が 残 ったか、 しき つめ た状 態 で計 算 し たかに よって違 い ま す)の 厚 さ
の塩 でおおわれることになるのです。そうなると、青 い地 球 どころか真 っ白 い地 球 になっ
てしまいます。
マ リ ン ス ノ ー (Marine Snow) :
海 水 中 を沈 降 する粒 子
深 さ800mくらいになると、生
物 の数 はぐっと少 なくなります。
そして、雪 のような白 いものが舞
ってきます。これは日 本 の研 究
者 によって「マリン・スノー」と名
づけられ、現 在 国 際 用 語 として
使 われています。海 水 を目 の
細 かいフィルターで濾 すと、動
物 プランクトンや植 物 プランクト
ンの死 骸 (しがい) の破 片 や、
甲 殻 類 (こうかくるい)の顎 (あご)
であるとか、ケイ藻 類 の破 片 な
どが見 つかります。マリンスノーは、プランクトンにより直 接 作 り出 されたもの、プランクト
ンの死 骸 またはその分 解 物 や、小 さな粒 子 が物 理 的 に集 合 したものです。
マ リ ン スノ ー は 海 の 表 層 の も の ほ ど 大 き く 、 深 海 に い く に した が い 小 さ く な る 傾 向 が み
られます。
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