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Vol. 2 No. 1 December, 2009
北海道大学数学連携研究センター R C I M LETTERS Hokkaido University Vol. 2 No. 1 December, 2009 Published by Research Center for Integrative Mathematics, Hokkaido University 北海道大学 数学連携研究センター 1 RICM LETTERS Vol. 2 No. 1 目次 ◇ 東北大学理学研究科 小谷元子 教授 インタビュー 3 ◇ 数学連携サロンの記録 13 ◇ 数学連携研究センター教員一覧 19 2 北海道大学数学連携研究センター 東北大学大学院 理学研究科 小谷元子 教授 インタビュー 本年 11 月2日から6日にかけて集中講義で大学院理学研究院に来訪された小谷元子教授のインタビューが 11 月5日に行われま した。小谷教授のご専門は幾何。小谷教授は、数学連携研究センターと連携関係にある東北大学応用数学連携フォーラムの主催者を務め られ、また、数学連携研究センターの西浦康政兼務教員が総括、津田一郎センター長がアドバイザーを務める科学技術振興機構のプログ ラムのもとでプロジェクトのチームリーダーを務める等、本センターと縁が深い方でもあります。数学という学問に対する姿勢、応用数 学連携フォーラム、現在進行中の研究プロジェクト等、小谷教授が現在取り組んでいらっしゃる幅広い活動についてお話を伺いました。 なお、本インタビューは数学連携研究センター・センター長である津田一郎教授およびセンター兼務教員である秋田利之准教授の司会で 行われました(文中敬称略)。 野の人に伝える機会を与えていただいていると思って 数学が一番素晴らしい 津田 います。それはとてもありがたいので有効に活用させて 数学連携研究センターで RCIM Letters という いただいています。 広報誌をだしておりまして、そこに今回のインタビュー 津田 記事を掲載させていただきたいと思います。第2回目と 大変だということはない? いうことになります。最初は私が話しますが、具体的な 小谷 話になりましたら秋田先生にお願いしたいと思います。 が、それを社会貢献だと思ってやっているわけではあり 小谷先生はもちろん数学者なんですけれども、今東北 ません。自分は数学をやっていてとても楽しいし、数学 大学の方で大学の顔といいますかディスティングイッ が一番素晴らしい学問だと思っているので、そういうこ シュト プロフェッサー (1) としてご活躍されています。 そうすると矛盾した状態におかれて精神的に そうですね。私は出前授業にも割と積極的です とを若い人、中学生、高校生、それから大学院生に伝える 数学者としての顔と大学の顔とコンフリクトすること 機会があるというのはとても恵まれていて、ありがたい もあるかと思うわけですが、その辺はどのようにお考え と思っています。 ですか。うまく処理されているのかということを、まず 最初に伺っていきたいと思いまして。 小谷 東北大学はディスティングイッシュト プロ フェッサーという名前で 30 人の教授を選んでいます。 2種類のオーガニゼーション能力 北海道大学の数学連携研究センターでもとて ディスティングイッシュト プロフェッサーは、大学の 津田 顔として対外的な講演を行うことがミッションの一つ も近いミッションがありまして、いろんな分野を数学で になっています。また,東北大学は異分野融合を進め新 連結したいということを考えていろんな企画をしてい しい科学を構築することを掲げている大学なのですが、 ます。5月に東北大学の応用数学連携フォーラム (3)(以 そのようなモチベーションのある大学院生向けに分野 下 AMF)と連携させていただいて、その時に小谷先生に こともミッションです。たしか ご尽力いただいて脳科学関係のシンポジウム (4) をして にディスティングイッシュト プロフェッサーというこ いただいたんですが、これは非常に人選、オーガニゼー とでエクストラな仕事もあって、それはそれで時間をと ションがよかった。東北大学の脳科学研究に特徴がある られるということもあるんですが、数学の面白さを他分 ことも関係していると思うのですが、小谷先生がいろ を超えて講義をする (2) (1) 「ディスティングイッシュト プロフェッサー」制度とは、教育、研究、社会貢献などの分野において先導的な役割を担う教授を尊重し、その活動を サポートする東北大学の制度。2008年から開始、任期3年。 (2) 「異分野クロスセッション」講義。平成21年度より開設。 (3) 東北大学応用数学連携フォーラム(AMF)http://www.dais.is.tohoku.ac.jp/~amf/ (4) 東北大学GCOE脳神経科学を社会へ還流する教育研究拠点・北海道大学数学連携研究センター共催、東北大学応用数学連携フォーラム第 8 回 ワークショップ 「数学と脳科学」。 3 RICM LETTERS Vol. 2 No. 1 いろとご尽力していただいたということもあります。私 津田 は非常に感心していて、あそこに集まった飯島さん(飯 れますか。 島敏夫・東北大学理事)も含め脳科学者を集めると相当 小谷 おもしろい研究ができるのではないか、そこに数学とい たくさんいて、私は大まかな指示を与えればどんどんで う核が入ってくると世界にないような発展性のある脳 きあがるようになっています。AMF については、情報 科学ができるのではないか、という印象を強くもったん 科学研究科の尾畑さん(尾畑伸明教授)という大変に企 ですね。そういう意味で小谷先生のオーガニゼーション 画力に有能な方がいて、本当にとてもお世話になってい 能力に非常に感銘をうけました。他の人に聞くと実は昔 ます。私がこんなふうにやりたいとかこの人を呼びたい はそういう能力はおもちではなかったらしいのですが、 というと、あとは尾畑さんがきちんとした形にしてくれ どこでそういった能力を発揮されるようになったので るのが本当にありがたいです。また AMF が 2007 年に しょうか。 ご自分では言いにくいかもしれませんが。 立ち上がったのですが、その時に「東北大学で異分野融 事務面でのサポート要員は大学側から供給さ 全学の委員会関係では優秀な事務スタッフが オーガニゼーション能力については2種類あ 合を進めるのであれば数学がとても大事だ」ということ ると思います。ひとつは研究内容、どういう人に講演し をその当時の研究担当理事に訴えました。そうしたら確 てもらうか等の、つまりサイエンティフィック・コミッ かにそうだと、国際高等研究教育機構融合研究所に数学 ティーとしての能力と、もうひとつは事務的な処理能力 の助教を新たにひとりつけてくださいました。彼女(助 に分けられると思います。前者のサイエンティフィッ 教)が AMF の事務局を務めています。 小谷 ク・コ ミ ッ テ ィ ー に 関 し て は、こ れ ま で も,The 1st JAMS International Symposium, The1st MSJ-SI などと、 なぜか 「第一回」の研究集会を組織する機会を与えても 諸分野との連携 らうことが多くて。私は、数学の講演会とか研究集会の プログラムの部分については一生懸命考える方で、それ 津田 非常にうまくいっているわけですね。今、数学 なりに面白い集会ができたのではないかと思っていま と諸分野の関係ということで数学をさらに広げていく す。今のような分野をまたがったプログラムを組むとい ということが非常に重要なことだと我々も思っている うことに関しては、2005 年くらいから全学の委員会 んですが、小谷先生が理事を務められている日本数学会 に頻繁にでるようになり、特に 2005 年以降、研究企画 内部で数学の新たな展開について試みられていますか、 推進室員をやっています。それで東北大学の強い研究と あるいは今後計画はおありでしょうか。 か研究者の情報が自然に入ってきますし、あと 2006、 小谷 7 年くらいから総長室の研究基本戦略グループ代表と 数学の研究者が他分野へ目を開きたい気持ちが強く して東北大学の研究をどうやって強めていくかという なっている雰囲気を感じます。数学会の中の動きでは、 議論をしているので、学内にどういう人がいるか、直接 津田先生もご存じのとおり文部科学省から数学・数理科 わからなければ誰にきけばよいかという情報はかなり 学が諸分野と連携するための委託調査 (5) を受託しまし もっています。また以前から数学を脳科学やネットワー た。ここ数カ月その関連の話が理事会で議論されていま クに利用するということについて興味をもっていたの す。いろんな大学の実情について、大学院生・教員レベル で、そのテーマについて東北大学の研究者の情報を収集 でどんなことを考えているのかというアンケートをす していました。サイエンティフィックな能力については る、そのアンケートの結果をもとにもう少し深めていき そんな感じで少しずつ鍛えられ、最近は特に情報が入り たいという話になっています。 やすくなっているという面があります。 津田 事務能力についてはまだまったくないです。もともと と思います。 最近の数学のセミナー案内とかを見ていると、 今後楽しみにしていますので是非協力したい 日本数学会の学会費を一桁間違えて 10 年分払ったこ とがあるくらいです。実は今はてきぱきやっているよう に見えるかもしれないけれども、それは私にとって結構 数学者になろうと思ったわけ 負担ですね。自然にやっていてきちんとできる方ではな 少し時系列をさかのぼって数学者になろうと いので、きちんとやらなければならないというのは精神 津田 的に負担になっています。 思ったきっかけをお聞きしたいとおもいます。まず、小 (5) 文部科学省委託事業「数学・数理科学と他分野の連携・協力の推進に関する調査・検討~第 4 期科学技術基本計画の検討に向けて~」。 4 北海道大学数学連携研究センター いうことがあると思うんですが、数学の場合にはそのレ さい頃どういうお子さんでしたか。 小谷 小学校の時は人見知りで本を読むのが好きで、 ベルなりに納得する方法があるということだと思うん 算数・計算はとても苦手でした。計算は今でも苦手です ですけれども。数学離れを言われて久しいのですが、ど が。中学校に入って算数が数学になってから好きになり うもそのあたりがあまり生徒たちに浸透していってい ました。いろいろ自分で本を読んで質問をするのが好き ないような、今の小谷先生のお話の感じ方ができる子は な生徒だったので、数学に限らず質問を考えて先生に 潜在的にもっといるのではないかと私は思います。 「数 質問をするのを楽しみにしていました。数学以外の先生 学は暗記モノだ」といったり、数学がきらいだといって に質問をすると、そういうふうに決まっているからと 文系に行くという傾向がますます強くなっている気が か、もう一寸大人にならないとわからない、といわれる するんですが、何が原因だと思われますか。 ことがあったのですが、数学に関してはこちらの考えて いることを論理的に説明できたし、先生からここが違う よときちんと説明してもらえると納得できて満足感が ありました。その時は先生が親切だったということもあ るのですが、今になって思うとそれが数学という学問の 本質なのかなと思います。数学以外の学問はある程度順 番に知識とかを積み上げていかないとアクセスできな い点があるので、中学生位が知りたいとか、これは違う んじゃないかと思っても、なかなかきちんと考えにくい 津田センター長(右)、秋田兼務教員(左) し、先生も説明しきれないところがあったのではないか 2005 年に数学以外の人と話す機会があり、数 と思うんですね。数学だけは知識がなくとも時間をかけ 小谷 て説明すればお互い納得しあえる学問なので、そういう 学って私はこういう学問だと思っていますといったら、 ことが実はとても大きかったのではないか。きちんと納 聞き手にとても驚かれました。その時まで私は「数学は 得できるところが自分の性にあっていたので、それで数 暗記モノ」とは、数学はとても難しく頭をつかって考え 学が好きだったんだろうと思います。 なければならないのだけれども、暗記したらなんとかな 津田 中学校のころから数学が好きだったんですか。 るよ、という逆説的な表現だと考えていました。ところ 小谷 数学と物理が好きでした。 とくに数学ですね。 が、そうではなくて、文字通り、数学は暗記した通りに答 津田 その興味が高校になってさらに広がったとい えなければならない自由度の少ない学問であると今の うことですか。大学を受ける時にはもう数学をやろうと 中学生・高校生は考えていることを知ってとても驚きま 決めて、 ということだったんですね。 した。確かに、中学生・高校生向けの授業の機会にアン 小谷 そうですね。 ケートをみると「数学がこういう学問だと思っていな 津田 その時に職業としての数学者になろうという かった。こういう風に自由に考えられるのか」という回 答が目立ちます。そういうアンケート結果を聞くと、な 意識はありましたか。 職業としての研究者を知っていたわけではな ぜ数学が自由な学問であることを普通の数学の授業で いので。中学校・高校を通じて本を読んだり、ものを考え 教えてないのかと。それで今は、(中高生向けの出前授 たり、調べ物をしたりすることは好きだったのでそうい 業等を通じた)アクセスの機会があるので数学について う職業に就きたいと思っていました。 アピールできたらいいなという風に思っています。 小谷 津田 大学の先生の負担をあまり増やしても困るん ですが、数学研究の経験がある人がちょっと教えるとい うことは、(中高生の数学に対する考え方に)また違っ 数学は暗記モノ? た効果をもつと思うんですよね。イニシエーションにし 今おっしゃったことで非常に重要なポイント てもなんにしても。そのあたりもやっておられるという がいくつかあると思うんですけど、数学という学問の特 ことなので、なにかもう少しそういう考えが広がるとい 徴ですね、どのレベルでもある程度簡潔にわかる、とい いと思ってます。小谷先生が感じられた他分野の人たち うか。たとえば物理なんかにしても原子・分子を子供に の数学に対する感覚はかなり普遍的にあるんですよね。 教えようとしてもなかなか実体概念が身につかないと 僕もいろんな分野の人や小中高校生位の話を聞くと、と 津田 5 RICM LETTERS Vol. 2 No. 1 にかく授業なんかでも教わった通りにやらないとペケ お話が、私にとってはとても不思議で、刺激をうけまし がついちゃうということを聞くものですから、数学とい た。その問題の意味を考えていると、確率論の問題に調 うのは一番自由な学問だというふうに我々は習ってき 和写像が使えることがわかり、砂田先生との共同研究に たし、そういう感覚と真反対のことが今行われていると 発展しました。最初の数年は、私は調和写像の研究が本 いうことに非常に驚いています。ここで議論して解決す 職で、今はたまたま(離散幾何を)やっていますというス る問題ではないけれども、中高校生に対する出前授業と タンスでいたのですが、離散幾何の研究がどんどん継続 かそういうことも我々は少し積極的にやっていかなけ するので、今ではこれ(離散幾何)をやっていこうかなと ればならないのかなという感じはします。 思っています。 小谷 大学の学部での教育では学生は与えられたも 秋田 離散幾何を専門外の人に説明するとしたらど のを学び、大学院になってはじめて自分で能動的に研究 のように説明しますか。 とか勉強するようになる訳ですよね。そういう体験を 小谷 した人が中等教育に携われるようになるといいなと思 をプロットする。プロットしただけでは何もわからな います。自分の体験でもそうですし、まわりで研究者に い。グラフとなるようにデータをつなぐ線をひくことに なった方の話を聞いても中学校・高校の頃に誰に出会っ よってはじめて現象の傾向というか本質がみえてくる。 たかが、その人の人生にとって大きな影響をあたえてい それは離散的なデータに隠れている構造をみるという るようです。 ことを実はやっているんですと話します。どうしてこう 研究者相手の場合には、例えば、実験のデータ いう線を引いていいのか、正しい線の引き方かを考えな いで実験結果を出していいのですかというと、ああそう いえばそうですねと賛同してくれます。離散的なデータ 離散幾何とは何か 秋田 に隠れた幾何構造があるので、どういう線を引いたらい いかを論理的に定めるための研究をしていますという 大学に進学して最初はリーマン幾何を専攻さ れたわけですが、 幾何を選んだ理由は ? 小谷 となんとなくわかってくれるようです。 やはり幾何・図形的なものが好きだったという ことと、私の出身大学では、4年生の時にセミナーの本 を選んでそれで専門が決まるのですが、その時に提示 離散と連続 された中で幾何の本を選んだ、という安直な決まり方で す。いい加減に決まったわりには、今から振り返っても 小谷 幾何が一番自分の性にあっていたなと思います。 に録音された音楽はデジタルだから本当はデジタルに 津田 何の本でしたか。 (6) もっと一般の人を対象に説明するときは、CD しか聞こえていないはずなのに、滑らかな音としてアナ です。 小谷 ヘルガソン 津田 読み切れた? がら、なかなかうまく分かってもらえないです。 小谷 いや、セミナーでは全然読み切れませんでし 津田 ログ的に聞こえるのはなぜかという話をします。残念な 今のお話は脳の問題だと思いますが。本当のイ た。ただセミナーとは別に、岩堀ゼミの先輩と自主ゼミ ンスタントっていうのは脳は感知できなくて、時間的に をしばらくやっていたのでだいぶ進みました。 近接する二つの音を脳が異同と順序を区別するために 秋田 そこから現在のご専門である離散幾何に興味 はおおよそ 30 ミリ秒の間隔が必要であって、実際には を持たれたきっかけは。 小谷 30 ミリ秒以内に近接して入ってきた音は順序の区別が 最初は調和写像を研究していました。ある時、 できない。つまり順序を区別するためにはそれだけの時 周期性をもつ調和写像に興味を持ち、それに関連して 間がかかるので、基本的な脳の時間的幅というものはあ twisted ラプラシアンを勉強したいと思い、砂田先生(砂 るわけです。一般の人は普段感じておりませんが、感じ 田利一・現明治大学理工学部教授)に集中講義にきてい 始めると離散と連続という問題は非常に深刻な問題で ただきました。砂田先生に私の研究の話をしたら、ちょ すね。今のお話を聞いていて別の意味で非常に刺激にな うど確率論にこういう問題がありますと言われて興味 りました。 をもちました。当時、身近にいた確率論の先生ともセミ 小谷 ナーをしていたのですが、その確率論の先生が話された かりやすいのかなあ。 その辺の話をちゃんとしてから説明するとわ (6) Sigurdur Helgason 著 "Differential Geometry, Lie Groups, and Symmetric Spaces". Academic Press, New York. 1978. 6 北海道大学数学連携研究センター 津田 話は伺えませんが、ご自身の専門である離散幾何学と、 離散と連続の話はなかなか一般の人には説明 しづらいですね。先ほどのグラフのお話にもどると、統 ある種の物質の数学的構造、別の言葉でいえばリアルな 計でも同じ話をしますね。離散データの話があって、ど 構造とのマッチングが良いとお感じになっていますか。 うつなぐかということをやっている。どうつないでも 曖昧な質問かもしれませんが。 蓋然性はなくて、そこで何か別の量、ある種のエントロ ピーをもってきてそれを最大にするなり最小にするな りという原理を置くわけですね。幾何の場合には何かそ ういういった原理はあるのでしょうか。離散的なものの 背後に連続的な幾何構造があるとだけ言っても線の引 き方は、一意に決まるわけではないような気がするので すが? 小谷 これから進む話だと思いますが、秋田先生もご 存じのように離散群とか離散的なものに隠れている曲 CREST-MathMate ホームページ http://www.mathmate.tohoku.ac.jp/ 率をとらえようという話は最近かなりあります。特に東 材料科学の研究者たちは、経験を積んでいて目 北大学ではそういう研究が盛んです。曲率は、もともと 小谷 は微分幾何的概念で微分を使って定義されていますが、 がよく効くので複雑な問題をうまく扱っています。それ 曲率の理解が進むにつれ、曲率の本質はそういうところ を、もう少し統一的に理解できることがあれば、我々数 にない。離散的なものにも隠れた曲率構造がある、こと 学者にとっても面白いし、彼らにも興味を持ってもらえ が論じられるようになりました。曲線は、結局曲率がわ るのではないかと思うのです。彼らがデリケートなとこ かればいいわけですから、その辺のことが使えたらいい ろを捉えてひとつひとつ手作りでやってる部分を、完全 なと思っています。 に数学できちんと記述できるかというとそれはかなり グラフの場合には比較的には微分幾何とのア 乖離があると思います。数学に求められているのはこう ナロジーがうまくいっていると思いますが、高次元の場 いう指針で考えたらいいのではないかというように問 合にもいろいろ話はありますが、なんというか、混乱が 題を整理をすること、または数学的観点を提供すること あるというか。この場合にはこうやれば OK、 あの場合に であり、CREST-MathMate でやりたいことはむしろそ はああやれば OK というのはあっても、統一的な方法が ういう部分です。プロジェクトに参加している材料科学 まだないような感じですよね。 の研究者たちは実際に物を作るこつについてはエクス 秋田 そうですね。本当にいま秋田先生がおっしゃっ パートです。それを数学で記述することでなく、どうし たように、個々のケースでこうやったらうまくいくとい てこうなっているかという原理の部分を解き明かして う知識が集まってきている段階だと思います。統一的に 欲しいと言っているので、それでいいのかなと思ってま どうやってすっきりさせるかというのはこれからやら す。 小谷 なければならない、一番今面白いところで、すぐにでき る話とは思っていませんが、 私の当面の目標ですね。 K4 結晶構造の予言 「離散幾何学から提案する新物質創成と物 性発現の解明」プロジェクト 津田 津田 それはとても良いコミュニケーションだと思 います。数学というのは非常に抽象化できる学問なの で、たとえば現象があった時に、物理では現象論という 言い方をするのですが、現象論は大事なんだけれども、 小谷先生はいろんなプロジェクトに取り組ん 現象にあまりに密着しすぎて理論を作るとそこから飛 でおられるんですが、その一つに 「離散幾何学から提 (7) 案する新物質創成と物性発現の解明 (以下、CREST- 躍できない部分がどうしてもでてくる。そこを思い切っ MathMate) 」 プロジェクトがあり、その中で物質系の て一旦現象を忘れて抽象化するとよりはっきりと見え 研究者の方たちとの共同研究があります。ここで詳しい る部分があって、見通しのよい予言ができることがあ (7) 「離散幾何学から提案する新物質創成と物性発現の解明」とは科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業のもとに行われている CREST プログラ ムの研究領域 『数学と諸分野の協働によるブレークスルーの探索』 (研究総括:西浦廉政電子研教授・センター兼務教員、アドバイザー:津田センター長) におけるプロジェクト。小谷教授がチームリーダーを務める。略称の CREST-MathMate とは、数学 Mathematics と材料 Material の協働を意味する。 7 RICM LETTERS Vol. 2 No. 1 る。それがある種の現象論から出発した理論の醍醐味で 数学からは、これが自然だからとか、対称性が高いとか、 もある訳です。その離れる部分は数学がないと離れられ 自然な条件つけたらこれしかないとか、バランスがとれ ない。そういう意味のきわめて抽象化した部分で、数学 ているとか、少し違う視点を提供できるのかなと思いま が逆にいろんな現象を予測していくということに関す す。 る見通しに関してはどうでしょうか。 小谷 それをまさにやりたいと思っています。 数学者はロマンチスト 津田 数学というのは面白い学問で、すべてがそうで はないんですけれども、振り返ってみると実は自然現象 とか工学とかで今必要な数学はすでに遠い昔に用意さ れている、逆に言うと予測・予言は意識してなされたも のではない、意識しなくても用意されている。いいかえ ると数学者はある種の構造をみているのだと思うんで すけど、数学者のそういう視点というのは学生たちにど うやったらうまく伝わると思われますか。また教育の話 にもどって申し訳ないんですが。特に大学院生位を対象 津田 K 4結晶構造 名古屋大学大学院多元数理科学研究科、内藤久資氏作成 とした場合。 小谷先生が予言されている K4 結晶構造が現実 うするために、問題意識などが学生に伝えにくくなって 小谷 数学は「いついかなるときも正しい」形で話そ につくれるのか、一体どういう物性をもっているのか、 いるところがありますよね。できあがった完成形だけを 素人ながらとても興味があります。 見せます。数学の講義や、論文では、定義があって、定理 数学では、これは自然だとか、なんとなく調和 があって、証明が書いてあって、それでおしまい。その背 がとれているということをベースにいろんなことを考 後にあるモチベーションや展望を語るのは、はしたない えていて、そういう視点で提案するのはとても大切です とされているところがあると思います。それを論文で語 よね。彼ら (材料科学の研究者たち)は、経験に基づいて、 ることが適切かどうかはよくわかりませんが、秘めたる 例えばこの材料でできているなら、これに近い性質を 情熱を話す機会があってもいいのかなとは思います。 もっているこちらの材料で置き換えてもいいとかそう 津田 数学者はロマンチストであると思いますか。 いうふうに試行錯誤で考えることが多い印象ですが、自 小谷 思います。 然さみたいなものに注目することもあってよいと思う 津田 だとしたら、もうちょっとロマンを語ってもい んです。 いと思いませんか。 小谷 津田 それは対称性に着目するのですか。 小谷 小谷 対称性に限らないと思うのですけど、数学の定 あって。 でも語らないのが良しとされているところが 理は、論理的に正しければなんでも定理だけど、みんな 津田 がこれはいい定理だとかたいしたことない定理だとか か感じるところがあるかもしれません。僕は『ガロアの いろいろ言いますよね、その時の感覚は、自然に感じる、 生涯 ― 神々の愛でし人 』(8) というガロアの伝記があっ 腑におちるところに立脚していいます。我々(数学者) てそれを高校生の時に夢中になって授業中も机の下で はそういう訓練ができていますよね。自然は調和がと 読んでました。先生も心得たもので、わざとあてずにい れているものですから、その感覚に立脚して、物事をみ てくれたので、一日で読み切ることができましたけれど ていくことがとても大切だと思うんです。K4 に関して も。 も、そもそも結晶の取りうる構造はいろいろな観点で分 小谷 それはいい先生ですね。 類されていてそれはもういくらでも可能な構造はあり 津田 数学者がああいう別の意味で情熱をもってい ます。でも全部作るわけじゃないと。どれが実在の可能 ろんなことをやっていたというのはわくわくしますね。 性が高く有望でトライする価値があるかということを、 小谷 (8) L. インフェルト著 市井三郎訳 日本評論社、初版、1950 年。 8 少し抑制を効かせながら喋ると学生の方も何 数学者だけではないと思いますが、研究者は表 北海道大学数学連携研究センター 面は穏やかでも内面でふつふつと燃えているものがあ ても全然通じなくて、かなりたくさんの人に話をしたの ると思います。そういうことをみせる機会があるといい です。結局は、模型など眼で見える形で持っていくこと かなと思います。おもてだって表現するのではなくて、 が大切なんだと実感しました。 研究の話をしているときは自然にそういうふうに見え 秋田 ると思うので、そういうところをいろんな人に見てもら 程度の期間みたいなのがあって。 えたらいいかなと思うんですよね。 小谷 そういう期間が結構長く続いたのですね。ある CREST-MathMate プロジェクトに関しては1 講義ってやはり難しいと思います。ステップ・ 年前にさきがけプログラム (10) が開始されてその頃か バイ・ステップで教えなければならない、ある程度整理 らなんとかチームを作りたいなという思いはあって、結 されたものをきちんと教えなければならない部分があ 構準備期間はありました。(本日のインタビューで)一 るけれども、一方で今まさに研究している対象について 番最初に聞いていただいた AMF での活動がきっかけ 少し教えると、先生たちも燃えてきますから、ちらっと になってはいます。AMF に参加するひと達は数学にか その炎が学生に伝わる部分があるかもしれません。 なり期待していると感じたので、本当にこれはやらない 津田 と、期待に応えたいというのがありました。 津田 中には期待が大きいだけに失敗を恐れるひと プロジェクト立ち上げまで もいますが。 秋田 も う 少 し CREST-MathMate プ ロ ジ ェ ク ト に に考えるよりは、問題がでてきたらそこで解決していっ ついて。他分野の研究者と交流するというのと、実際に たらよいという、ネガティブな方を見ていてもしょうが チームをつくって他分野の人と協働するというのはか ないので、ポジティブな方をみてやってしまうタイプな なりレベルが違うと思いますが、そもそものプロジェク ので…、それで雑用がまわってくるんだけど。 小谷 私は大体イケイケな方で、何でもいろいろ慎重 ト立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか。 小谷 はじめは K4 の話があって、数学の観点ではこ ういう構造が見つかったのですが、こういう構造をもっ 文化の違い た物質は実際には存在しますかといろいろな人に聞い 実験家をまとめるのは大変だと思いますが、小 てみました。話だけではなかなか興味を持ってもらえな 津田 かったのですが、実際に模型を作って持って行ったら 谷チームはよくまとまってますね。 興味を持ってくれて、じゃあ作ってみようという話に急 小谷 になりました。たまたま CREST (の研究領域 『数学と諸 失敗したことは結構ありました。特にポスドクの人との 分野の協働によるブレークスルーの探索』分野でのプロ 距離のとり方が数学とは全然違うので難しかったです (9) そうですね。でもやっぱり最初は文化の違いで ジェクト募集) の話があったので進みました。実は、最 ね。数学の場合は、大学院生でもポスドクでも独立の研 近、少し数学が窮屈になってきている気がして、数学の 究者で、その人が面白いと思ったら直接やりとりして、 すそ野を広げることが大切だと感じていたんです。深く 共同研究が成立するというところがありますけど、実験 なっているといえば深くなっているけれども、難しく 系で、特に工学系のポスドクとかは、ラボでのミッショ なっていて、もうちょっと広めていく時期なのかなとも ン達成のために雇用されているので、上の人が面白いと 思っていました。他分野の役に立ちたいということだけ 思って、「君これやりなさい」といわない限りはやる自 でなく、数学にとっても他分野からの刺激がほしいなと 由がないんですよね。いいのか悪いのかよくわからない 思っていたところもあったので、ちょうどタイミングが のですが。そこが最初わからなくて直接本人に話をもっ よかったのです。 ていっていたのですが、それじゃだめなんだということ 秋田 模型をつくったらその気になったというのは がわかりました。 興味深いですね。異分野の人達をその気にさせるのは結 津田 ボスの許可をとる必要があるわけですね。 構大変な仕事だという印象があります。 小谷 そうですね。理学系の実験室は違うかもしれま 小谷 結構しつこくアタックしました。だいたいは話 せんが、工学部はありますね。ヘッドは柔軟性もあり開 をしても聞いてもらえないし、手書きで絵を書いたりし 放的なので実際のところ気にしていなかったのですが、 (9) 科学技術振興機構における戦略的創造研究推進事業のもとに行われているプログラムの一種。脚注 7 参照。 (10) さきがけとは、CREST と並ぶ科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業のプログラムのひとつ。CREST がチーム型研究を対象としたプログラ ムであるのに対し、さきがけは戦略目標に基づいて未来のイノベーションの芽を育む個人型研究を対象としている。 9 RICM LETTERS Vol. 2 No. 1 学生のほうが先生の許可を取らないと、という意識がす 予算額ではなくて、数学者が予算をとってきたという事 ごく強いので。 実が大事なのですね。 津田 それは確かに医学系、工学系の学生さんはその 小谷 数学者が軸になったプロジェクトがあるとい 意識が強いかもしれませんね。先生たちのほうはあまり いと思うんですよね。数学者以外がとってきたプロジェ 考えていないですけれども。 クトで数学の人参加してくださいと言われても、役に 小谷 また実際のところ、 「じゃあこれやってくださ は立てると思うんですが、埋もれちゃうというか、技術 い」と依頼した場合、実行にお金がかかるわけですね。 スタッフに近い感じになってしまうので。それだと数 我々の場合は、ポスドクの人たちも含め、自分たちの研 学の人がやりたいと思っていることができない部分が 究費でできるわけですが、工学系の場合はそのお金はラ どうしてもでてきますね。数学が興味を追求するために ボのお金なので、そういうこともあって許可をとる必要 は、額は少なくともいいのだけれど数学者がリーダーに があるのだと思います。 なっているプロジェクトがあって他分野の人に加わっ 津田 CREST-MathMate プロジェクトに参加されて てもらうのがいいのだと思います。 いるそれぞれの材料系の先生たちは、自分たちのラボ 津田 をもっているわけですけれども、本来のラボの仕事と ど。 ぜひ、今の点を主張していきたいと思いますけ CREST-MathMate プロジェクトのテーマと必ずしも一 致しないと思いますが、その辺の切り分けはどうしてい るのでしょうか。小谷先生に聞く話ではないかもしれま 今後の研究の方向 せんが。 材料系の先生方は面白い話だと思ってくれて 秋田 今後の小谷先生の研究の方向は。 参加してくれています。もともと彼らはいくつも並行し 小谷 離散的な現象をスケール変換して、連続な現象 たたくさんのプロジェクトをもっていますが、これは面 をとりだすところが面白いと思っています。解析と確率 白いプロジェクトだからということで、エフォートに応 論の深い話になると私はなかなかできないので、今回の じて参加してくれています。CREST-MathMate プロジェ CREST-MathMate プロジェクトでは、解析や確率論のか クトの予算は、数学 (分野のプロジェクト)にとってはと たも加わっています。数学以外の他分野というだけでな ても大きいのですが、彼らにとってはほんとに全然無い く、数学の専門外の人ともいろんな話をして勉強する機 に等しいので、純粋に研究が面白いから参加しているの 会になっていてとてもありがたいです。津田さんによる だよ、と言ってくれています。実際のところ持ち出しで と数学の CREST プログラムは成果主義ではないという やってもらっています。 ことなので、いろいろな分野を統合した新しい数学がで 小谷 津田 予算が少ないのはいいのかもしれませんね。 きたらいいなと高望みに考えています。 小谷 いやあ、どうなんだろう。CREST プログラム 秋田 離散幾何という幾何という名前はついていま に応募した一つの理由は、萌芽研究を始めるのに、やは すけれども、むしろ確率論や他分野の人との関わりが多 り「予算獲得」は重要だからです。たとえ微々たるもの い印象があります。 でも、予算をとってミッションを達成しないといけない 小谷 という所が一つの枷になることは事実なので、萌芽研 論でも偏微分方程式でもの深い結果に、幾何的な観点が 究を推進するチカラになります。こういうプロジェクト 入ったら面白い、逆に幾何的な視点をいれないと私が マネーというのは本当にありがたい。数学に関係するプ やっている意味がないから。わたしが確率論や偏微分方 ロジェクトがもっとできたら他分野との融合は本当に 程式の方面で貢献できるとすれば、彼らが既にやってい 進むと思うんですよね。他分野の人と話しても 「面白い ることを言い換えになるかもしれないけれど、幾何的に ね」 、というそれで終わってしまうことが多いので、私 見たらこういう意味があるんですよと整理してみるこ は CREST プログラムをそういう意味では利用させても とです。その視点をもつことで次の上のステップにすす らっています。CREST に応募したい、 予算とってきまし めたら嬉しいなと思います。だから(名称に) 「幾何」っ た、ミッションもあるしやらなきゃいけません、などを てついていることが大切なんです。 口実として、 実際には自分がやりたいだけなんですが。 秋田 他分野との共同研究でも同じことですが、確率 東北大学の微分幾何は組み合わせ的な構造の 重要な点ですね。今、小谷先生がおっしゃった 背後にある幾何を見ている人が多いと思います。東北大 ように、他分野の人にとって数学者として付き合うのは 学は特にメッカになっていますが、微分幾何全体でもそ 津田 10 北海道大学数学連携研究センター ういう流れがあるように感じます。今の微分幾何は深く 女性も科学する 難しくなりすぎているので、ちょっと広げようという流 れになっているのでしょうか。 津田 今日のインタビューで小谷先生の数学感を少 そうじゃないかと思います。微分幾何も発展す し浮き彫りにできたかなという気がします。最後に私が る方向を模索しているところがあると思います。難しく 若いころから関心のある議題のひとつで聞いておきた 深くなりすぎているところもあって、なんとなく行き詰 いことがあります。女性研究者の問題です。私が物理の まり感があるんじゃないかと思うんですよね。もっと 院生のころから、物理以外の分野では、例えば生化学若 素朴に直感を活かせて、しかも深い結果になりそうなこ 手の会とか、特に生物系では女性の院生は多かったで とをみんな探しているような気がするので。東北大学で す。数学や物理は数が限られていました。生物系の方で は、そういう意味では離散的対象とか、特異空間での幾 は必ず女性研究者の問題というセッションがあって、興 何の分野にいい研究者が揃っているし、 いい環境です。 味があったのでよく参加して、やっつけられるのです 小谷 秋田 多様体でない微分幾何ですね。 が、いろいろ議論しました。数学に女性研究者が少ない 小谷 微分しない微分幾何学者ばっかり、 のは非常に不思議です。物理にしても数学にしても、と (多様体でない微分幾何以外にも)素粒子論か にかく入ってくる学生の数がまず少ない。数学のほうが らの影響という流れもありますね。東北大学が、という 物理より若干多い気はしますが、クラスに 40 ~ 50 人 のではなく、 全体として。 学生がいるとすれば女子学生の割合は数学で1割いる 秋田 小谷 みんな刺激というか広がる方向を求めている かいないか、物理は当時2~3%しかいない。時代が変 気がしますね。 津田 わってもそれほどこの傾向に変化が無いようにみえま 物理と数学は昔からある意味で緊密な関係が す。当然(学生の)数が少ないので研究者として育ってい あって、ニュートン力学以降そうなんですけれども。日 く人も少ない。これはある意味もったいない話だ。まず、 本は幸か不幸か、最初は数物学会としてスタートした 女性を大学・大学院のレベルで学生の間にいま以上に何 が、割と早い時期に数学会と物理学会がわかれてしまっ 倍もリクルートできる状況を作る必要があるのではな た。それで、個別のコミュニケーションはあっても全体 いかと思うのですがどうですか。 としてのコミュニケーションが失われました。でも特に 小谷 最近は素粒子とかの分野でつながりがでてきています 一般で言うと欧米諸国は大学入学時点では理系の男女 ね。一方、小谷先生は材料物性と数学との関係を重視し 比はすでに1対1かむしろ女性の方が多いと聞いてい ておられて、あまり皆がやらなかったところだと思うの ます。一方、日本は2対1で女性が少ない。母集団が大 でとても注目しています。ブレークスルーを期待したい きくて初めてということもあると思うので、そこを変 と思います。 えなければいけないのがひとつ。生命科学や化学に関し 小谷 アドバイザーとしてアドバイスどうぞよろし 私は女性研究者育成の仕事もしています。科学 ていうと、女子学生は 30 ~ 40%いるのに教員は少な いという問題があります。支援制度等に代表される環境 くお願いします。 の改善で解決できることも多く、そのための環境整備と システム改革を進めてきました。一方、数学や物理が抱 えている、入ってくる女性が極めて少ないという問題で すが、こちらのほうが深刻かもしれません。数学につい ていえば性差によるハンディはほとんどない。実験系は チームでやらなければいけないので出産とか育児とい うことがあるとなかなかむずかしいところもあるかも しれない。一方、数学はハンディがないにもかかわらず 入ってくるところが少ない。 中学校や高校の段階で、「女性も科学する」様々な形 を見るのがとても大事だと思っていて、東北大学の女子 大学院生が中学校や高校にいって研究の話をして科学 の面白さを伝えるためのサイエンス・エンジェル (11) と (11) サイエンス・エンジェルとは、東北大学が取り組む「杜の都女性研究者ハードリング支援事業」の一環である次世代支援プログラムのひとつ。 11 RICM LETTERS Vol. 2 No. 1 いう活動に取り組んでいます。マリー・キュリーの話を と女性が多いので、小さいころから小学校の先生になり したり、すでに研究者として確立した女性研究者を見せ たいと思う子がでてくるわけで、そういうチャンスがも て、みんなに目指しなさいと言うばかりではいけない。 う少し小さい子にあると良い気がしますが、東北大学は 理系分野で活躍するにはいろんな動機と選択肢があり そこまで年齢を下げて取り組んでいますか。 ます。中高生にとっては、数学・物理・化学という固定し 小谷 た科目だけではなく、大学で行われている科学の研究の 験科学実験も行っています。あともうひとつ大切なのは 多様性を知ることも大切だと思う。私の友人で工学研 お父さん、お母さんの科学に対する意識で、小学生イベ 究科の女性教授は、触感を実現する研究をしていて、そ ントをするとお父さんお母さんも参加されるのがいい れはシャンプーやリンスの開発につながっています。そ ですね。 ういうのは女性ならではの感覚とか好奇心を活かして 津田 多方面にわたってご活躍されていますね。 います。結構みんなおしゃれな感じでやっている。サイ 小谷 大変ですけど、大切だと思うので。 エンス・エンジェル活動はおしゃれが重要だと思ってい 津田 私は、一人の研究者にはいろんな能力があっ て、ロゴや T シャツ、ポスターも可愛くデザインに凝っ て、それを最大限に発揮されると、とてもいい結果が得 ています。 ぜひ、 ホームページをみてください。 られると思っていて、小谷先生の場合にはいろんな分野 サイエンス・エンジェルは、小学生も対象の体 で非常に自然な形で能力が発揮されていて、とても良い と思いました。今後ともどうぞよろしくお願いします。 今日はありがとうございました。 ハードリング事業ロゴ 秋田 ありがとうございました。 小谷 ありがとうございました。 日時: 2009 年 11 月5日(木)10:30 ~ 12:00 場所: 理学部3号館 3F 理学応接室 インタビュー後、数学連携研究センター看板前にて サイエンス・エンジェルプロジェクト HP http://www.morihime.tohoku.ac.jp/sa/index.html 津田 まったく例は違うんだけど、野球をやっている 子供たちにプロ選手が教えると、子供のうちの何人かは すごく強い印象をもって、最終的にプロ選手になるかど うかは別としても、やっぱりずーっと野球に憧れをもっ て育っていくということがあると思う。何かそういう、 子供たちにも感覚的に、学者っていうのは難しいんです けど、こういう職業が女性にあるんだというのを、そう いうのを見せるとね。たとえば小学校の先生とかだと割 12 北海道大学数学連携研究センター 数学連携サロンの記録 昨年開催されたサロン 第1回 中 川 淳 一 2008 年 4 月 第2回 徳 永 浩 雄 2008 年 5 月 多項式環のイデアル族と計算論的学習 第3回 泉 屋 周 一 2008 年 6 月 写像 (関数) の特異点と自然現象 第4回 伊 藤 公 人 2008 年 10 月 Patterns of Amino Acid Substitutions on the Hemagglutinin Molecules of Antigenic Variants of H3N2 Influenza A Viruses 第5回 大 島 伸 行 2008 年 11 月 界面の数学的理解に基づく 火炎モデルの再構築 第6回 縫 田 光 司 2008 年 12 月 ある数学者の研究生活 第 7 回 力学系のスケール変換 加藤毅 准教授 京都大学大学院・理学研究科 1 開催日時:2009 年2月4日(水)114:00-15:30 開催場所:電子科学研究所1階会議室 力学系のくり返し理論は射影することにより記号力学系と関係を持ってきます。 一方で、 記号力学系はオートマトンと関係を持っていますが、 ロトカボルテラ方程式や KdV のような数理物理にあらわれる非線形の方程式が離散化されることでオートマトン と関係を持っており、 その手続きにトロピカル幾何学が用いられています。 一方で、 トロピ カル幾何学は変数変換で折れ線写像と代数多様体とを、 結び付けています。 それらすべての操作はある意味でスケールを変換するものです。 このように、 それぞれ数学 としては違う性質を持っているものどうしが、 スケールの変換をすることで結びついてい ます。 特に力学系のくり返し理論のようにカオスをその性質として持つ対象が、 いくつかの スケール変換のステップを通じて可積分系のような、 剛性をもつ対象と関係してきます。 1 当初 1 月 15 日実施予定が雪のため本日程に実施が延期されたもの 13 RICM LETTERS Vol. 2 No. 1 数学連携サロンの記録(つづき) 第 8 回 Hamilton 系における安定多様体、不安定多様体の 局所的なおれたたみパターンの分類およびそれらの物理的意味 寺本央 助教 北海道大学・電子科学研究所 開催日時:2009 年1月 23 日 ( 金 ) 15:00-16:30 開催場所:理学部8号館 302 セミナー室 安定多様体、不安定多様体は力学系の骨格をなすものであり、力学系における 輸送現象、相空間がどのように引き延ばされ折りたたまれるのかなどを理解する上で要 となる概念である。それらの交差の様相は、古くはポワンカレによって考察され、ポワ ンカレは制限 3 体系に於いて不安定固定点から伸びる安定多様体と不安定多様体が無限 回交差し、それらの交差点が集積点を持つことから、その系に Hamiltonian と独立で非 自明な解析的積分が存在しないことを示した。この制限 3 体系の場合には、系のポワン カレ面は 2 次元平面となり不安定固定点から伸びる安定多様体、不安定多様体の次元は 1 次元である。それらの折り畳みパターンは一方向への引き延ばしおよび折り畳みという Smale の horseshoe の描像によってよく理解される。しかし、多次元系における安定多 様体、不安定多様体の交差および折り畳みの様相は、発表者が知る限りほとんど知られ ていない。 本講演では、それらの多様体のうち、法双曲的不変多様体から伸びる補次元 1 のものに着目し、多次元系の場合にどのような折り畳みパターンが生じうるのか、および、 それらの折り畳みパターンがどのような物理的意味を持ちうるのかをある化学反応を模 した 3 自由度をもつ Hamilton 系を例にとり議論する。また、この議論を高次元空間へ一 般化するにあたっての展望および現在直面している問題点に関しても議論する。 第 9 回(複雑系セミナー共催) Random Dynamical Systems and Self-organized Criticality in Complete Neuronal Networks Manfred DENKER, Professor Department of Mathematics The Pennsylvania State University 開催日時:2009 年3月 10 日 ( 火 ) 15:00-16:30 開催場所:電子科学研究所会議室 We propose a random dynamical system as a model to describe neuronal activity in complete networks. We discuss the probabilistic law for the avalange size and prove the power law of 3/2 in this model by approximation via branching processes. The talk is based on work of A. Levina. 14 北海道大学数学連携研究センター 数学連携サロンの記録(つづき) 第 10 回 簡約リー群の無限次元既約表現に対する 幾何学的不変量,モデル,双対性をめぐって 山下博 教授 北海道大学大学院・理学研究院 開催日時:2009 年3月 24 日 ( 火 ) 16:00-18:00 開催場所:理学部4号館 508 交流室 コンパクトでない簡約リー群の無限次元(ユニタリ)表現論は、局所コンパ クト群が十分沢山の既約ユニタリ表現を持つことを示した Gelfand-Raikov による結果 (1943 年)を理論的な裏付けに、Gelfand-Naimark、Bargmann、Harish-Chandra が Dirac の影響を受けて斉次ローレンツ群の既約ユニタリ表現をそれぞれ独立に分類・構 成したこと(論文はいずれも 1947 年に発表)を契機に、特に 20 世紀後半以降に急成 長をとげてきた。リー群・リー代数の表現論は数学においては比較的新しい研究分野で あるが、解析的整数論、微分幾何、数理物理、微分方程式、代数解析、函数解析、調 和解析、不変式論、組合せ論など、数学における多くの分野と横断的に関わりながら、 豊かな理論を産みだしてきた。 このサロンでは、 講演者自身の研究テーマに係る視点から、 簡約リー群・リー代数の無限次元表現の世界の一端を紹介したい。特に、簡約リー群の 冪零軌道が関わる既約表現の幾何学的不変量(随伴多様体・等方表現 ) 、保型形式のフー リエ級数展開と関わる表現のモデル(一般ホィッタッカー模型) 、簡約デュアルペアに関 する表現の双対性(テータ対応) 、という 3 方面のテーマについて研究の現状を紹介し、 ユニタリ最低ウェイト表現に対してこれらの 3 つが本質的に関係する様子を解説する。 参考文献: [1] 平井武・山下博、表現論入門セミナー:具体例から最先端にむかって、遊星社、 2003。 [2] 山下博 ( 述 )・阿部紀行 ( 記 ), 簡約リー群の表現と冪零軌道,Lecture Notes in Mathematical Sciences, Vol. 3, The University of Tokyo, 2008. [3] H. Yamashita, Cayley transform and generalized Whittaker models for irreducible highest weight modules, in:“Nilpotent orbits, associated cycles and Whittaker models for highest weight representations”, Astérisque 273 (2001), pp. 81-137. [4] H. Yamashita, Isotropy representations for Harish-Chandra modules, in:“Infinite Dimensional Harmonic Analysis III”, World Scientific, 2005, pp. 325-351. [5] N. Abe and H. Yamashita, A note on Howe duality correspondence and isotropy representations for unitary lowest weight modules of Mp(n,R), to appear in Journal of Lie Theory. 15 RICM LETTERS Vol. 2 No. 1 数学連携サロンの記録(つづき) 第 11 回 材料強度と材料組織形成のマルチスケール数理 毛利哲夫 教授 北海道大学・工学研究科 開催日時:2009 年5月 12 日 ( 火 ) 16:30-18:30 開催場所:電子科学研究所会議室 強靭な合金材料の開発は、大は超高層ビルディングやパイプライン、宇宙船や 航空機等の先端輸送機器から、小はパソコンの筐体に至るまで、社会を支える基板材料 の問題として、材料工学における喫緊の課題である。 言うまでもなく合金の基本構造、即ち、結晶構造はミクロな電子の振る舞いにより決定 され、マクロな実用材料の強度は弾性論を始めとする連続体力学の範疇で論じられるも のである。 しかし、合金の強度を決定しているのは単なる原子間の結合力ではなく、結晶 に含まれる転位線といわれる欠陥の多様な挙動による。転位線は結晶の 1cm3 当たり全 長 106 〜 1012cm も含まれるものであるが、このような転位線が互いに相互作用しなが ら、析出物や結晶粒界等で形成される内部組織の中を運動することによって材料の変形 が生じている。従って、材料の強度を制御・設計するためには、内部組織の最適化と転 位運動の制御が必須である。 析出物、結晶粒界等の内部組織は、光学顕微鏡や通常の透過型電子顕微鏡で観 察できるスケール領域のものであり、その形成過程においてはナノ・ミクロ領域におけ る原子や電子の振る舞いが直接反映されるものではない。従ってシュレディンガー方程 式を厳密に解くことはこの領域の現象の記述・解析には実効性を持たない。又、転位の 振る舞いは決定論的なものであり、通常の熱力学・統計力学をそのまま適用することは できない。しかし一方において、転位線と内部組織の相互作用は、原子配列にまでさか のぼって結晶格子の離散性を陽に考慮せずしては本質が理解できない。つまり材料強度 の問題はミクロ領域における統計力学・量子力学と、マクロ領域における連続体力学の 適用領域の「狭間」にあり、有効な記述の手法が欠落しているのが現状である。 我々の研究室で行っている弦モデルに基づく単一転位線の挙動の解析、拡散反 応方程式に基づく転位の集団挙動の計算、規則─不規則変態に対するクラスター変分法 及びフェーズフィールド法の計算などを示し、材料強度の予測に対するマルチスケール 解析の重要性や問題点を指摘する。 16 北海道大学数学連携研究センター 数学連携サロンの記録(つづき) 第 12 回 (電子研学術講演会兼) 多自由度ハミルトン系における不変多様体を用いた遷移率の計算 山口義幸 助教 京都大学大学院・情報学研究科 開催日時:2009 年5月 20 日 ( 水 ) 11:00-12:00 開催場所:電子科学研究所1階 セミナー室 1 ポテンシャルの峠を境に2つの異なった状態を持つ系を考える。例えば化学反応系 では、峠の片側が反応物、もう片側が生成物に対応する。 このような系では、与えられた 初期状態が峠を越えられるかどうか、すなわち遷移するかどうかを知ることが重要となる。 十分発達したカオス系においては遷移率を統計的に近似することができ、反応状態 理論や RRKM 理論などが開発されている。 しかしカオスが発達していない摂動系では、遷 移率を求めるためには統計的理論ではなく力学的理論が必要となる。 力学的理論には lobe picture と tube picture という2つの手法があり、双方とも不変多様 体を用いた手法だがそれぞれに長所と短所がある。 Lobe picture は、Melnikov 関数を用い て遷移率の計算を実行できるが、一般に3自由度以上の系には適用できない。 一方、tube picture は3自由度以上の系にも適用できるが、Melnikov 関数を用いる際に困難が生じる。 そこで本発表では、(1) lobe と tube の関係を明らかにし、(2) 2つの手法の長所を 合わせた手法について考察する。 また、得られた手法の妥当性を数値計算によって検証す る。 数学連携研究センターロゴ 17 RICM LETTERS Vol. 2 No. 1 数学連携サロンの記録(つづき) 第 13・14 回(偏微分方程式セミナー共催) 微視的格子モデルとフェーズフィールド法の粗視化と第一原理計算 毛利哲夫 教授 北海道大学・工学研究科 第 13 回 開催日時:2009 年6月8日 ( 月 ) 16:30-18:00 第 14 回 開催日時:2009 年7月 27 日 ( 月 ) 16:30-18:00 開催場所:理学部3号館 202 室 我々の研究室では、この数年間にわたり、規則—不規則変態を対象にして第一 原理マルチスケール計算を行ってきた。離散格子の自由エネルギーをクラスター変分法 (Cluster Variation Method; CVM)1,2) を用いて定式化し、スケールの大きな内部組織レ ベルの時間発展過程を Time Dependent Ginzburg Landau (TDGL) 方程式で算出しよう というものである。この方法では、TDGL 方程式の homogeneous free energy density term に CVM の自由エネルギーを導入することになるが、離散格子と内部組織というよ うにスケールの異なる領域の自由エネルギーを整合的に記述するためには粗視化が必須 である。Kikuchi-Cahn によって行われた先駆的な計算を、より一般的な場合に拡張する ことで以下のような粗視化を試みた 3)。 まず、結晶格子を cell に分割し、cell の位置を与える global coordinate と cell 内の原子面を指定する local coordinate の二つの座標系を導入する。CVM 自由エネ ルギーに出現するクラスター濃度を結晶格子面に対して定義すると、全系の自由エネ ルギーは各結晶面からの寄与の和として書き表すことができる。この自由エネルギー を global coordinate の周囲で展開し、さらに、クラスター濃度の gradient 項のない homogeneous state の周囲で展開すると(いずれの展開においても 3 次以上の高次項は 消去する) 、gradient energy coefficient は定数ではなく、温度や局所的な原子配列を含 んだ形で定式化される。これは、電子状態の計算で求まるクラスター有効相互作用エネ ルギーの導入に際して整合的な形式になっており、電子・原子レベルの情報を内部組織 に反映させた第一原理計算が可能となる 4,5)。 本セミナーでは、クラスター変分法の概要、クラスター相関関数の定式化、 TDGL 方程式へ CVM 自由エネルギーを導入する際の粗視化に関して述べる。 参考文献: [1] R. Kikuchi, Phys. Rev. 81 (1951), 998. [2] クラスター変分法、菊池良一、毛利哲雄、森北出版 (1997) [3] 大野宗一、北海道大学博士論文 (2004) [4] Tetsuo Mohri, Munekazu Ohno and Ying Chen, J. Phase Equlibria and Diffusion 27 (2006), 47-53. [5] Tetsuo Mohri, Statistical Thermodynamics and Model Calculations in Alloy Physics, Chapt. 10, ed. W. Pfeiler, WILEY-VCH (2007), 525-588. 18 北海道大学数学連携研究センター 数学連携研究センター教員 センター長 津 田 一 郎 数学一般(含確率論・統計数学)、計算論的神経科学、 電子科学研究所 教 授 相 川 弘 明 理学研究院 教 授 基礎解析学 石 川 剛 郎 理学研究院 教 授 幾何学、大域解析学、実代数幾何学、特異性の幾何学と トポロジー、光学や制御理論に現れる特異点の研究 泉 屋 周 一 理学研究院 教 授 幾何学、応用特異点論 龔 剣 萍 理学研究院 教 授 ソフトマター科学、バイオレオロジー、医用生体工学・ 生体材料学 郷 原 一 壽 工学研究科 教 授 生物物理学、力学系 小松崎 民 樹 電子科学研究所 教 授 化学物理・生物物理、応用数学(カオス力学系、情報理論、 時系列解析) 坂 上 貴 之 理学研究院 教 授 数理流体力学、数値解析学、非線型数学 神 保 秀 一 理学研究院 教 授 応用解析学 寺 尾 宏 明 理学研究院 教 授 代数学、超平面配置 利根川 吉 廣 理学研究院 教 授 偏微分方程式、変分法、動的界面問題 中 村 玄 理学研究院 教 授 基礎解析学、数学一般 ( 含確率論、統計数学) 西 浦 廉 政 電子科学研究所 教 授 非線形解析、数理モデリング、力学系 毛 利 哲 夫 工学研究科 教 授 材料数理学、計算材料科学 山 下 博 理学研究院 教 授 表現論、代数学 秋 田 利 之 理学研究院 准教授 トポロジー 伊 藤 公 人 人獣共通感染症 リサーチセンター 准教授 計算機科学、バイオインフォマティクス 電子科学研究所 准教授 非線形力学系、複雑系数理学 行 木 孝 夫 理学研究院 准教授 数学一般(含確率論・統計数学)、デジタルライブラリー 李 振 飈 電子科学研究所 准教授 非平衡統計力学、生物物理モデリング、化学物理、 非線形力学、時系列解析論 山 口 裕 電子科学研究所 助 教 計算論的神経科学、複雑系 複雑系数理学 兼務教員 佐 藤 譲 19 RICM LETTERS Vol. 2 No. 1 編集・発行 北海道大学数学連携研究センター RCIM Letters 編集委員会 http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/center/index.html.ja 発行日 2009 年 12 月 22 日 20