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アイホン株式会社

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アイホン株式会社
アイホン株式会社
早稲田大学広田真一ゼミ
浅井志保
株式コード:6718
投資推奨“SELL”
基準株価(2011/10/6)1,408 円
目標株価
1,155 円
1.ハイライト
・投資判断
ディスカウント・キャッシュ・フロー法(以下、DCF 法)を用いてアイホン株式会社の目標株価を 1,155 円と推
計した。目標株価 1,155 円に対し、現在(2011/10/6)の株価 1,408 円は 21.9%の割高水準にあるため、投資推奨を
“SELL”とする。リニューアル市場において同社は強みである「ロールアップ営業」を行うことが出来ず、大
手競合であるパナソニック電工に対し競争優位性を維持することが困難となる。その結果、縮小する国内住宅向
けインターホン市場で収益を維持・向上させることが難しいと判断した。
・事業戦略:インターホン市場の縮小により、国内住宅向けインターホン事業の売上が低迷している。今後はリ
ニューアル市場と海外市場におけるシェアの獲得を目指す。
・業界動向:近年の新築住宅着工戸数の減少を受け、インターホン業界の市場規模は縮小傾向にある。現在、業
界全体でリニューアル市場の需要喚起に力を入れている。
・財務状況と業績見通し:売上の低迷により、収益性が悪化している。しかし今後海外における生産を増強によ
って売上原価を抑制するため、利益率の回復が予想される。
2.事業内容
アイホン株式会社は 1948 年に愛知県名古屋市に合資会社東海音響電気研究所(1959 年に社名を変更。現在の
アイホン株式会社となる)として創設された。事業の 87%をインターホン事業が担うインターホン専業メーカー
であり、戸建住宅用から集合住宅用、業務用、ケア用と幅広い用途のインターホンを企画から製造・販売・アフ
ターサービスまで一貫して手掛けている(Figure:1 参照)。国内では創業以来 60 年近くインターホン市場のトッ
プに君臨し続け、インターホン業界を牽引してきた。また、1957 年から海外向け輸出を開始し、現在では世界
で 70 を超える国・地域に同社のインターホンを販売している。近年は新築住宅着工戸数の伸び悩みを受け、業
績が低迷している(Figure:2 参照)。
以下で同社の主力事業であるインターホン事業について、3つのセグメントに分け詳しく説明する。
1
Figure1:
Figure2: 売上高推移
売上高内訳
国内事業
・住宅用インターホン事業
同社の中でも最も重要な位置付けである同事業は、戸建住宅と集合住宅で使用される「一般インターホン」
「テ
レビインターホン」
、電子錠や自動火災報知機とインターホン設備を一体化した「セキュリティインターホン」
の 3 分野で構成されている。近年の防犯意識の高まりにより、訪問者を画面で確認出来るテレビインターホンの
需要が伸びている。
・業務用(ケア)インターホン事業
同事業は、学校や官公庁、商業施設等に導入されている「業務用インターホン」と、病院や老人ホームに導入
されている「ケアインターホン」の 2 分野で構成されている。事業の大部分をケアインターホンが占めているた
め、以下では「ケアインターホン事業」と呼ぶ。
海外事業
同社は 1957 年から海外輸出を開始すると、1970 年にはアメリカに子会社を設立し、以後世界 70 の国と地域
でテレビインターホンや業務用インターホンの販売を行っている。これまでの主な販売市場は米国・欧州であり、
アメリカのホワイトハウスやスペインバルセロナのオリンピック記念公園等への製品納入実績がある。2011 年
度にはベトナム工場の新規稼働を開始・シンガポールに販売子会社を設立するなど、現在は新興国への進出に注
力している。
業績ドライバーの選定
同社の売上高の 87%を占め、創業以来事業の中核を担ってきたインターホン事業が今後も主力事業であると
考えられる。その中でも特に、売上の 60%を占める国内住宅用インターホン事業が同社の今後の成長の鍵を握る
と考え、業績ドライバーとして選定した。
2
3.業績見通しと競争上の位置づけ
業界構造を詳しく分析するために、Michael E. Porter の 5forces 分析を行った。(Figure:3 参照)
Figure3: 5forces 分析
新規参入の脅威
「弱い」
:集合住宅用インターホンは、消防法で規定された自動火災報知設備の受信機として
の役割も担っている。そのため、一定基準以上の製品を製造する技術が必要である。また、住宅用インターホン
は市場が飽和し、パナソニック電工とアイホンによる寡占状態となっているため、新規参入の脅威は弱いと考え
る。
買い手の交渉力
「強い」
:インターホンは模倣容易な製品が多く、他社製品との差別化は難しい。そのため他
社製品へのスイッチングコストも低く、買い手の交渉力は強いと判断した。
売り手の交渉力
「弱い」
:売り手は多数存在するため、インターホン業者は安価に原材料を供給してくれる売
り手を選択することが出来る。また、特殊材料を必要としないことからも、売り手の交渉力は弱いと考えられる。
代替品の脅威
業界内競争
「弱い」
:現段階でインターホンの代替品になる製品は存在しないと考えられる。
「強い」
:インターホン市場の売上の 8 割は住宅用インターホンである。そのため、住宅需要に売
上が左右される。新築住宅着工戸数の減少に伴い 2007 年度以降インターホンの市場規模は縮小傾向にあるため、
業界内の競争は激化している。
また、同社が過去に成長してきた要因分析・将来予測を行うために、SWOT 分析を行った (Figure:4 参照) 。
Figure4:
SWOT 分析
3
強み(Strengths)
・商品の品揃え
同社は創業以来、住宅用インターホンに留まらず、業務用・ケア用と幅広いインターホンの販売を行ってきた。
競合であるパナソニック電工は住宅用インターホンに、ケアコムはケアインターホンに、それぞれ特化している。
多様なインターホンを取り扱うメーカーは少なく、同社の特徴と言える。商品のラインナップは 1600 種類にも
のぼり、顧客のオーダーメイド注文にも対応している。近年ではインターホンに多様な機能を組み合わせて高付
加価値化させ、情報通信機器としての用途拡大を行っている。2006 年度には大阪ガスと業務提携を行い、ガス
自動通報機能を兼ね備えたセキュリティインターホン“インターホン連動アイリス”の販売を開始した。他にも
多様な会社と業務提携を行っており、市場の需要に合わせたインターホン作りによって、これまで売上を拡大し
てきた。
・ロールアップ営業
通常インターホンを販売する際、メーカーは直接の販売先である施工業者やインターホンの問屋に対して営業
を行う。アイホンは上記の業者に対して営業を行うだけでなく、家の設計や規格を決める「設計事務所」
「デベ
ロッパー」
「ハウスメーカー」等にも幅広く営業を行う戦略を取ってきた。その結果、家を建設する際に、設計
図の段階でアイホンのインターホンを組み込むことが可能になり、競合他社よりも優位に立つことが出来た。同
社は創業以来約 60 年間この営業方法を続けてきた。同社は従業員の約半数を営業担当として配属することで、
ロールアップ営業を様々な業者に対して行ってきた。
上記の「商品の品揃え」
「ロールアップ営業」という 2 つの強みをアイホンが持ち、競合他社に対して優位な
立場に立てた理由は、同社が「インターホン専業メーカー」であることだと考える。インターホン専業メーカー
であるからこそインターホンの商品開発に注力でき、多くの社員を同事業に対し投入することが可能であった。
その結果、大手競合であるパナソニック電工や東芝ライテックよりも高いシェアを獲得することが可能であった。
弱み(Weaknesses)
・国内住宅事業に依存した収益構造
同社は売上高の 6 割が国内住宅用事業に依存した収益構造である。新築住宅着工戸数の縮小を受け、今後国内
の住宅用インターホンの需要は減少することが予測される。そのため、リニューアル市場・海外市場での成功が
同社の今後の成長の鍵と言える。
機会(Opportunity)
・防犯意識の高まり
1990 年代後半から犯罪率が上昇し、セキュリティ強化の必要性が高まっている。侵入窃盗事件の約 6 割がマ
ンション・一戸建て住宅を対象としたものである。また、(財)都市防犯研究センターの調べによると、空き巣の
約 45%はインターホンで留守を確認してから住居へ侵入している。そのため、録画機能付きテレビドアホン等高
付加価値化したインターホンの需要が高まっている。
・リニューアル市場の拡大
2007 年度以降リニューアル市場の規模は拡大している(Figure:5 参照)。インターホン工業会の発表によると、
インターホンの寿命は一般住宅用で 10 年、病院用・高齢者用で 12 年、集合住宅用で 15 年と定められている
4
(Exhibit: 2 参照)。現在、インターホン業界は劣化診断資格者認定講習会を開催するなど、リニューアル需要の
拡大に向け努力を行っているため、今後もリニューアル市場は拡大すると考えられる。
Figure5: リニューアル市場規模
10000000
8000000
6000000
4000000
2000000
0
(百万円)
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
(出典:矢野経済研究所)
・政府の介護政策
高齢化が進む一方で、病院着工数の減少・高齢者施設の整備数の伸び悩みにより、収益は低迷していた。しか
し、2009 年度に政府によって 3 年間の介護基盤の緊急整備が打ち出され、小規模特別養護老人ホームやケアハ
ウス等の増設が決定された。今回の緊急整備では目標値を達成出来なかったため、同政策は今後も継続して行わ
れることが予想される。よって、今後ケア市場は拡大すると考えられる。
脅威(Threats)
・大手競合他社の存在
同社の最大のライバルはパナソニック電工株式会社である。住まいの設備・建材関係の製品を幅広く手掛け、
知名度・技術力も備えている。そのため、アイホンの強みが喪失した場合競争優位性が失われ、シェアを奪われ
る危険性がある。
4.同社の将来性
5forces 分析・SWOT 分析を踏まえ、同社が今後注力すると宣言している、国内住宅事業・海外事業の将来性
について考察した。
・国内住宅事業
住宅用インターホン事業においては今後、リニューアル市場での需要獲得が同社の成長の鍵となるため、リニ
ューアル事業に注目して考察を行った。
5
優位性の喪失
同市場におけるアイホンの強みは、
「商品の品揃え」と「ロールアップ営業」であった。中でも、創業以来 60
年間行われている「ロールアップ営業」が、同社の最大の強みであり特徴であった。家を建てる際には設計事務
所やハウスメーカーの発言力が強く、これらの業者に営業を行っている同社は収益を獲得していた。しかし、リ
ニューアル市場でインターホンを販売する際は、地域の電気屋が直接消費者にインターホンの買い替えを勧める
ことが多い。この際、設計事務所やでデベロッパー・ハウスメーカーといった家作りにおいて川上に位置する業
者は登場しない(Exhibit:3 参照)。つまり、リニューアル市場で売上を獲得するためには施工業者や電気屋への営
業が重要であり、アイホンの営業の特徴である「ロールアップ営業」は意味をなさないと言える。他社もこれら
の業者には営業を行っているため、同社の競争優位性は喪失すると判断した。
新たな取り組み
リニューアル市場において売上を拡大するため、同社は新しく“アイホンリニューアルパートナー制度”を構
築した。これはアイホンと協力してリニューアル営業を進めるための代理店・特約店を募り、市場情報の共有を
行う仕組みである。しかし、同様の取り組みは大手競合であるパナソニック電工でも行われている。同社はリフ
ォーム専門ショップのネットワークである「リファインショップ」や「わが家、見直し隊」を作り、家丸ごとリ
フォームをコンセプトにグループ力を活かしたリニューアル需要の獲得を行っている。現在リファインショップ
加盟店は全国 271 店舗、わが家、見直し隊の加盟店は全国 1900 店舗にのぼっている。
アイホンはリニューアル市場では同社の強みである「ロールアップ営業」を行うことが出来ず、競争優位性を
喪失する。また、新たな取り組みであるリニューアルパートナー制度も他社も同様な取り組みを行っているため、
差別化を行うことが出来ない。近年の市場占有率を分析すると、同社は新築着工戸数が減少した 2008 年度以降
シェアを失っていることが分かる(Figure6:参照)。以上より、今後同社は市場において収益を伸ばすことが困難
であると予測する。
Figure6: アイホンの市場占有率
50%
40%
30%
20%
10%
0%
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
6
・海外事業
同社は 2011 年度からシンガポール・上海に販売子会社・駐在事務所を開設し、富裕層マンション・住宅向け
にインターホンを販売すると発表している。中国では欧米志向が強く、欧米風の家の造りを好む傾向がある。ま
た、㈱野村総合研究所の調べによると、高級住宅市場では防犯性を重視する傾向が強い。同社は 2011 年 9 月に
は中国・海南島の大規模リゾートマンションや病院において、大型案件の獲得に成功している。以上より、今後
中国において同社は売上を拡大可能と予測する。
5.投資サマリー
投資判断とその根拠
DCF 法による目標株価 1.155 円に対し、現在株価 1,408 円は約 21.9%の割高水準にあるため“SELL”を推奨
する。国内リニューアル市場においては同社の強みが発揮されず、大手競合他社への優位性を維持することは困
難と予測した。国内住宅向けインターホンの売上は減少するため、現在の株価は割高であると判断した。
6.バリュエーション
企業価値算定にあたってインパクトの大きい財務諸表項目の精緻な予測をもとに、エンタプライズ・ディスカ
ウント・キャッシュフロー法(以下 DCF 法)を用いた結果、目標株価は 1,155 円と算出された。
DCF 法による目標株価算出
DCF 法を用いて目標株価を算出するにあたり、以下のステップを踏んだ。
まず 3 事業(国内住宅事業・ケア事業・海外事業)の 2021 年 3 月期までの売上高の予測から全社の売上高の予測
を行った。次に売上原価の予測を行い、売上高予測から控除することで EBITA の予測を行った。続いて貸借対
照表、損益計算書及びキャッシュフロー計算書の予測を行い、営業フリー・キャッシュフロー(以下営業 FCF)
を算出した。最後に、営業 FCF を別途算出した加重平均資本コスト(以下 WACC)で割引き、同社の目標株価
を算出した(Exhibit4:参照)
。
7.財務諸表分析
競合であるパナソニック電工は多様な事業展開を行っているため、同一事業での比較が困難である。そのため、
類似事業を行っているホーチキ株式会社と財務諸表の比較を行った。
収益性
同社は 2007 年度までは高い営業利益率を維持していたが、新築着工戸数の減少に伴い売上が減少、営業利益
率が大幅に低下した (Exhibit5:参照) 。これは売上高に占める人件費の上昇・新工場設立等の設備投資といった
販管費率の上昇が要因と考えられる (Exhibit6:参照) 。ベトナム工場による生産が 2011 年度 11 月に開始するた
め、今後製造コストの削減による営業利益率の回復が予測される。
7
効率性
総資産回転率は過去 5 年間継続して製造業の基準と言われている 1 を超えており、無駄のない財務体質である
と判断出来る(Exhibit7:参照)。同業他社のホーチキと比較しても高い水準にあり、今後も効率的な経営が行われ
ると予想される。
安全性
同社は無借金経営を掲げており、2005 年度以降有利子負債を抱えていない。この経営方針は今後も継続して
行われると予測される。短期負債に対する支払い余力を示す当座比率は望ましいとされる 100%を超える
(Exhibit8:参照)。また、同業他社と比較しても高い水準にあり、安全性は高いと言える。
8.業績見通し
<売上高予測>
売上高の予測は国内住宅事業とケア事業、海外事業に分けて行い、特に業績ドライバーである国内住宅事業の
売上高予測は精緻に推計した。競合他社に対する競争優位性を失うことで、2021 年度には国内インターホン市
場における同社のシェアは 2011 年度の 31%からまでに 24%まで低下することが推定される。その結果、他事業
においては売上拡大を達成するものの、全体の売上高は 291 億円に低迷すると推計した。(Figure7:参照)
Figure7: 売上高予測
国内住宅事業
市場規模×シェアのモデルから予測を行った。
・市場規模
インターホン市場全体と住宅市場(新築+リニューアル(うち防犯))に強い相関関係があったため、住宅市場の伸
びとインターホン市場の伸びを比例させた(Exhibit9:参照)。住宅需要については、以下の手順で算出した。
① 新設住宅着工戸数は市場予測通りに推移すると仮定した。
8
② リニューアル市場については、2014 年度まで市場予測通りに成長、以後は同一成長率で推移すると推定した。
また、市場予測は金額ベースであったため、住宅リフォーム推進協議会のアンケートを元に過去 5 年間のリ
フォーム金額の平均を算出し、リニューアル戸数を推計した。
③ 推定したリニューアル市場のうち、防犯目的でリフォームを行った戸数を住宅リフォーム推進協議会のアン
ケートを元に算出した(Exhibit10:参照)。
以上①+②を足し合わせることで住宅市場の市場規模を算出した(Exhibit11:参照)。住宅市場が 1%成長した際
のインターホン市場の成長率を過去 5 年間の平均で算出し、予測した住宅市場を元にインターホン市場の市場規
模を算出した。
・シェア
同社は競争優位性を失うことから、今後インターホン市場内でシェアを他社に奪われると予測した。直近のシ
ェア低下率を算出し、今後も同一水準でシェアが縮小していくと予測した(Figure8:参照)。
Figure8: インターホン市場の推移とアイホンのシェア予測
海外事業
海外事業は、欧米とその他地域に分けて売上高の予測を行った(Exhibit12:参照)。
・欧米地域
欧米においては今後リニューアル市場が主力となることが想定される。過去の売上高に国内住宅事業の売上高
と相関があったため、今後も国内住宅事業の売上高と同水準で推移すると予測した。
・その他地域
現在はベルギー・フランス・ドイツ・オーストラリア・サウジアラビア・チリ・中国が含まれている。同社は
2011 年度にシンガポール・上海に販売子会社と駐在事務所をそれぞれ設立し、富裕層マンション・住宅向けに
販売すると述べている。そこで、中国の新築住宅着工戸数に比例して売上高も増加すると予測した。日本では人
口が 1 億 3000 万人に到達した時点で新築住宅着工戸数はピークを迎え、その戸数は 190 万戸であった。同様に
中国でも人口がピークの 15 億人を迎える 2015 年度以降、新築住宅着工戸数 2200 万戸を上限に需要は減少する
と考え、以後は国内住宅事業と同一の成長率を用いて算出した。
9
ケア事業
市場規模×シェアのモデルから予測を行った(Exhibit13:参照)。
・市場規模
高齢者人口の増加と共に老人介護施設・ケアハウスの需要が増大し、ケア事業も成長すると考えた。政府の介
護基盤の緊急整備政策が行われた直近 2 年間の成長率の平均を算出し、65 歳以上の人口が 1%以上増加する 2017
年度まで同成長率で成長すると推測した。以後は一定に推移すると予測した。
・シェア
同社はケア用インターホン市場においてこれまで安定したシェアを維持してきた。今後も同水準でシェアを維
持していくと予測したため、過去 5 年間のシェアの平均を使用した。
その他事業
その他事業は過去安定した収益を上げているため、今後も一定推移していくと考えた。そこで、直近 3 年間の
売上高の平均を取り、売上を予測した。
<売上原価の予測>
市場規模の縮小・競争の激化により価格競争が発生し、同社はコストカットの必要性に迫られている。近年製
造原価の低い海外での製造に力を入れており、リーマンショックの影響を受けた 2008 年度を除き、売上高総利
益率は 2006 年度以降微増している(Exhibit14:参照)。また、2011 年度からベトナム工場での生産も開始し、更
なる生産の効率化を宣言している。以上から今後も売上原価は減少していくと考え、売上原価の過去 5 年の減少
率の平均を取り、売上原価を算出した(Exhibit15:参照)。
9.リスク要因
・政府の施策:高齢化社会加速により、政府によって介護政策が打ち出され、収益が増大するリスクがある。ま
た、首相・政権交代等により、介護基盤の緊急整備が打ち切りになり、ケア事業の売上が伸び悩む可能性がある。
・品質問題の発生:製品に品質問題が発生した場合、同社製品に対する信用は低下し、売上が低迷するリスクが
考えられる。
・為替リスク:同社は製品の製造をタイやベトナムで行うことにより、製造原価の抑制に努めている。これらの
工場で生産したインターホンを世界各国に輸出・販売している。そのため、為替の変動により収益が変動する可
能性がある。
・自然災害リスク:地震や台風等の大規模自然災害が発生し、生産拠点・販売拠点に影響が出る可能性がある。
その一方、震災等で住宅が倒壊し、新設住宅需要が高まる可能性も考えられる。特に 2011 年 3 月 11 日に発生し
た東日本大震災の影響により、今後新設住宅着工戸数が増加し、収益が増大する可能性がある。
・カントリーリスク:同社は現在 70 の国と地域に事業を展開している。そのため、海外各国の政治、経済の動
向あるいは戦争・テロの発生等の影響により、売上が変動するリスクがある。
10
APPENDIX
Exhibit1 : 週次株価推移
(yahoo ファイナンスを元に作成)
Exhibit2: インターホンの買替え時期
(出典:インターホン工業会 HP)
Exhibit3: 新築市場とリニューアル市場の違い
インターホン納入に発言力持つ業者
11
Exhibit4: DCF モデル
売上合計
売上原価
販売費及び一般管理費
EBITA
みなし税
NOPLA T
減価償却費
グロスキ ャッシュフロー
運転資金の増加
設備投資
総投資額
営業F CF
割引率
現在価値
現在価値合計
永久成長率
割引率
継続価値
事業価値
非事業用資産
企業価値
有利子負債
少数株主持分
株主資本価値
発行済株式数
理論株価
2,012
31,201
18,222
12,451
528
40.55%
314
553
867
(36)
264
228
639
1.05
608
5,283
1.40%
1.72
10,468
15,751
8,944
24,695
0
824
23,871
20,674,128
1,155
2,013
31,050
18,089
12,417
544
40.55%
323
550
874
(74)
263
189
684
1.10
620
国債金利
リスクプレミアム
β
rE
rD
税率
有利子負債(百万)
純資産(百万)
税引き後WACC
割引率
発行済み株式数
2,014
30,925
17,972
12,389
564
40.55%
335
548
883
(63)
262
199
684
1.16
591
2,015
30,825
17,871
12,366
588
40.55%
350
546
896
(52)
261
209
687
1.22
565
2,016
29,905
17,295
12,157
453
40.55%
269
530
799
(388)
254
(134)
933
1.28
730
1.17%
5.26%
0.734
5.03%
0.00%
40.55%
0
38,584
5.03%
1.050
20,674,128
12
2,017
29,799
17,192
12,133
474
40.55%
282
528
810
(55)
253
198
612
1.34
456
2,018
29,719
17,104
12,115
500
40.55%
298
527
824
(44)
252
208
616
1.41
437
2,019
29,498
16,935
12,064
498
40.55%
296
523
819
(101)
250
149
670
1.48
453
2,020
29,297
16,779
12,019
499
40.55%
297
519
816
(93)
248
156
660
1.56
424
2,021
29,118
16,636
11,978
504
40.55%
300
516
816
(84)
247
163
653
1.63
399
Exhibit5: 営業利益率
Exhibit7: 総資産回転率
12.00%
1.60
1.40
10.00%
1.20
8.00%
1.00
6.00%
4.00%
アイホン
0.80
アイホン
ホーチキ
0.60
ホーチキ
0.40
0.20
2.00%
0.00
2007
0.00%
2007
2008
2009
2010
2008
2009
2010
2011
2011
Exhibit6: 販管費率
Exhibit8: 当座比率
45.00%
600.00%
40.00%
500.00%
35.00%
30.00%
400.00%
25.00%
アイホン
300.00%
20.00%
ホーチキ
15.00%
200.00%
10.00%
100.00%
5.00%
0.00%
0.00%
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2007
13
2008
2009
2010
2011
Exhibit9: 住宅市場とインターホン市場の関係
1400000
66000
1200000
64000
1000000
62000
60000
800000
600000
58000
住宅需要
56000
インターホン市場
400000
54000
200000
52000
0
50000
(戸)
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
(百万円)
Exhibit10: 防犯目的でリニューアルを行う人の割合
8.0%
7.0%
6.0%
5.0%
5 年間の平均値である
4.0%
6.9%を採用した。
3.0%
2.0%
1.0%
0.0%
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
(住宅リフォーム推進協議会アンケート調査を元に作成)
14
Exhibit11: 住宅市場の推移予測
1200000
1000000
800000
600000
400000
200000
0
(戸)
(矢野研究所/住宅リフォーム推進協議会の調査を元に作成)
Exhibit12: 海外事業売上高予測
10000
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
その他
欧米
(百万円)
15
Exhibit13: ケア事業売上高予測
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
(百万円)
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
Exhibit14: 売上総利益率の推移
Exhinbit15: 売上原価予測
42.00%
41.50%
41.00%
40.50%
40.00%
39.50%
39.00%
38.50%
38.00%
37.50%
37.00%
30000
25000
20000
15000
10000
5000
0
(百万円)
2006
2007
2008
2009
2010
2011
16
Exhibit16: 貸借対照表
連結BS (百万円)
資産の部
現金及び預金
余剰資金
受取手形及び売掛金(純額)
在庫
その他流動資産
流動資産合計
有形固定資産合計
無形固定資産合計
のれん
その他無形固定資産
投資その他の資産
投資有価証券
長期貸付金
固定資産合計
資産合計
負債の部
支払手形及び買掛金
短期借入金
1年以内返済予定長期借入金
未払法人税等
その他流動負債
流動負債合計
社債
長期借入金
新規借入
その他固定負債
固定負債合計
負債合計
純資産の部
資本金
資本剰余金
利益剰余金
自己株式
その他株主資本
株主資本合計
その他包括利益累計額
少数株主持分
純資産合計
負債純資産合計
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
11517
12612
11373
14292
12441
9592
2,615
36165
5296
0
0
0
8,039
7346
0
13,335
49500
10658
8559
2,929
34758
6052
0
0
0
8,126
7110
0
14,178
48936
9008
7478
3,258
31117
5500
0
0
0
8,398
7159
0
13,898
45015
7507
6022
3,443
31264
5312
0
0
0
8,840
7762
0
14,152
45416
13563
0
7974
6367
3,373
31277
4931
0
0
0
8,944
7645
0
13,875
45152
13,563
0
7,959
6,339
1
27,862
4,922
0
0
0
8,944
7,645
0
13,866
41,728
11,264
0
7,920
6,293
1
25,478
4,898
0
0
0
8,944
7,645
0
13,842
39,320
11,125
0
7,888
6,253
1
25,267
4,878
0
0
0
8,944
7,645
0
13,822
39,089
10,977
0
7,863
6,217
1
25,058
4,862
0
0
0
8,944
7,645
0
13,806
38,865
10,826
328
7,628
6,017
1
24,801
4,717
0
0
0
8,944
7,645
0
13,661
38,462
11,155
0
7,601
5,981
1
24,738
4,700
0
0
0
8,944
7,645
0
13,644
38,382
10,941
0
7,581
5,951
1
24,473
4,688
0
0
0
8,944
7,645
0
13,632
38,105
10,725
0
7,524
5,892
1
24,142
4,653
0
0
0
8,944
7,645
0
13,597
37,739
10,604
0
7,473
5,838
1
23,916
4,621
0
0
0
8,944
7,645
0
13,565
37,481
10,470
0
7,427
5,788
1
23,686
4,593
0
0
0
8,944
7,645
0
13,537
37,223
1951
0
0
929
2,937
5817
0
0
1523
0
0
434
3,152
5109
0
0
1238
0
0
47
2,703
3988
0
0
977
0
0
233
2,714
3924
0
0
1,562
1561
7379
1,634
1634
6743
1,624
1624
5612
1,571
1571
5495
1498
0
0
230
3,162
4890
0
0
0
1,678
1678
6568
1,491
0
0
230
3,162
4,883
0
0
2,299
1,678
3,977
8,861
1,481
0
0
230
3,162
4,873
0
0
139
1,678
1,817
6,689
1,471
0
0
230
3,162
4,863
0
0
148
1,678
1,826
6,689
1,463
0
0
230
3,162
4,855
0
0
151
1,678
1,829
6,684
1,416
0
0
230
3,162
4,808
0
0
0
1,678
1,678
6,486
1,407
0
0
230
3,162
4,799
0
0
214
1,678
1,892
6,691
1,400
0
0
230
3,162
4,792
0
0
216
1,678
1,894
6,686
1,386
0
0
230
3,162
4,778
0
0
121
1,678
1,799
6,577
1,373
0
0
230
3,162
4,765
0
0
135
1,678
1,813
6,578
1,362
0
0
230
3,162
4,754
0
0
146
1,678
1,824
6,578
5389
5383
31688
-1263
0
41,197
-96
1020
42,121
49500
5388
5383
33019
-1264
3
42,529
-1235
899
42,193
48936
5388
5383
32769
-2474
2
41,068
-2584
919
39,403
45015
5388
5383
32947
-2475
0
41,243
-2218
896
39,921
45416
5388
5383
32614
-2880
1
40,506
-2746
824
38,584
45152
5,388
0
32,280
-2,880
1
34,789
-2,746
824
32,867
41,728
5,388
0
32,044
-2,880
1
34,553
-2,746
824
32,631
39,320
5,388
0
31,813
-2,880
1
34,322
-2,746
824
32,400
39,089
5,388
0
31,594
-2,880
1
34,103
-2,746
824
32,181
38,865
5,388
0
31,389
-2,880
1
33,898
-2,746
824
31,976
38,462
5,388
0
31,104
-2,880
1
33,613
-2,746
824
31,691
38,382
5,388
0
30,832
-2,880
1
33,341
-2,746
824
31,419
38,105
5,388
0
30,575
-2,880
1
33,084
-2,746
824
31,162
37,739
5,388
0
30,316
-2,880
1
32,825
-2,746
824
30,903
37,481
5,388
0
30,058
-2,880
1
32,567
-2,746
824
30,645
37,223
17
Exhibit17: 損益計算書
連結PL (百万円)
売上高
売上高成長率
売上原価
売上総利益
売上総利益率
販売費及び一般管理費
減価償却費
人件費
その他販売費及び一般管理費
販管比率
営業利益
営業利益率
営業外収益
受取利息
受取利息配当金
その他営業外収益
営業外費用合計
支払利息(社債利息含む)
その他営業外費用
経常利益
経常利益率
特別利益
特別損失
税金等調整前当期純利益
法人税等合計
少数株主損益調整前当期純利益
少数株主利益
当期純利益
当期純利益率
2007
41337
10.09%
24299
17037
41.21%
12624
636
4,882
7,106
30.54%
4413
10.68%
374
103
75
196
258
6
252
4530
10.96%
4
55
4479
1602
2,877
70
2808
6.79%
2008
41604
0.65%
25511
16093
38.68%
13467
669
5,102
7,696
32.37%
2625
6.31%
1091
144
82
865
419
8
411
3297
7.92%
4
306
2995
1014
1,981
68
1913
4.60%
2009
35635
-14.35%
21307
14328
40.21%
13369
726
5,079
7,564
37.52%
958
2.69%
437
112
77
248
259
8
251
1136
3.19%
8
255
889
472
417
25
391
1.10%
2010
30691
-13.87%
18036
12654
41.23%
11968
594
5,190
6,184
39.00%
685
2.23%
361
63
74
224
327
6
321
720
2.35%
9
101
628
33
595
32
562
1.83%
2011
31261
1.86%
18301
12960
41.46%
12465
554
5,361
6,550
39.87%
494
1.58%
369
56
78
235
261
6
255
603
1.93%
0
187
415
241
174
27
146
0.47%
2012
31,201
-0.19%
18,222
12,980
41.60%
12,451
553
5,361
6,537
39.91%
528
1.69%
369
56
78
235
255
0
255
642
2.06%
0
187
455
185
271
27
244
0.78%
18
2013
31,050
-0.48%
18,089
12,961
41.74%
12,417
550
5,361
6,506
39.99%
544
1.75%
363
50
78
235
255
0
255
652
2.10%
0
187
465
188
276
27
249
0.80%
2014
30,925
-0.40%
17,972
12,952
41.88%
12,389
548
5,361
6,479
40.06%
564
1.82%
363
50
78
235
255
0
255
671
2.17%
0
187
484
196
288
27
261
0.84%
2015
30,825
-0.32%
17,871
12,954
42.03%
12,366
546
5,361
6,459
40.12%
588
1.91%
362
49
78
235
255
0
255
696
2.26%
0
187
509
206
302
27
275
0.89%
2016
29,905
-2.98%
17,295
12,610
42.17%
12,157
530
5,361
6,266
40.65%
453
1.52%
362
49
78
235
255
0
255
560
1.87%
0
187
373
151
222
27
195
0.65%
2017
29,799
-0.36%
17,192
12,607
42.31%
12,133
528
5,361
6,244
40.72%
474
1.59%
363
50
78
235
255
0
255
582
1.95%
0
187
395
160
235
27
208
0.70%
2018
29,719
-0.27%
17,104
12,615
42.45%
12,115
527
5,361
6,227
40.76%
500
1.68%
362
49
78
235
255
0
255
608
2.04%
0
187
421
171
250
27
223
0.75%
2019
29,498
-0.75%
16,935
12,562
42.59%
12,064
523
5,361
6,180
40.90%
498
1.69%
362
49
78
235
255
0
255
605
2.05%
0
187
418
169
248
27
221
0.75%
2020
29,297
-0.68%
16,779
12,518
42.73%
12,019
519
5,361
6,138
41.02%
499
1.70%
361
48
78
235
255
0
255
605
2.07%
0
187
418
170
249
27
222
0.76%
2021
29,118
-0.61%
16,636
12,482
42.87%
11,978
516
5,361
6,101
41.14%
504
1.73%
361
48
78
235
255
0
255
610
2.09%
0
187
423
171
251
27
224
0.77%
Exhibit18: キャッシュフロー計算書
CF計算書
当期純利益
減価償却
のれん償却額
売上債権の増減額
たな卸資産の増減額
仕入債務の増減額
その他営業活動
営業CF
有形固定資産の増分
投資その他の資産
その他投資活動
投資CF
FCF
短期借入金の増減額(△は減少)
長期借入金の増減額(△は減少)
株主資本の増減額
配当金の支払額
その他財務活動
財務CF
現金同等物の増減
期首現金
期末現金
2007
2,808
636
0
-329
-1,851
370
-908
726
-852
259
2008
1,913
669
0
1,783
1,033
-428
-809
4,161
-1,425
-87
2009
391
726
0
1,650
1,081
-285
-716
2,847
-174
-272
2010
562
594
0
1,501
1,456
-261
1
3,853
-406
-442
2011
146
554
0
-467
-345
521
67
476
-173
-104
2012
244
553
0
15
28
-7
3,372
4,205
-544
0
2013
249
550
0
39
46
-11
0
873
-526
0
2014
261
548
0
32
41
-10
0
872
-528
0
2015
275
546
0
25
35
-8
0
874
-531
0
2016
195
530
0
235
200
-47
0
1,112
-385
0
2017
208
528
0
27
36
-8
0
791
-511
0
2018
223
527
0
20
31
-7
0
793
-514
0
2019
221
523
0
56
59
-14
0
845
-488
0
2020
222
519
0
51
54
-13
0
834
-488
0
2021
224
516
0
46
50
-12
0
824
-488
0
-593
133
-1,512
2,649
-446
2,401
-848
3,005
-277
199
-544
3,661
-526
347
-528
344
-531
343
-385
727
-511
279
-514
279
-488
358
-488
346
-488
337
0
0
51
-449
400
2
135
11,382
11,517
0
0
-181
-400
-973
-1,554
1,095
11,517
12,612
0
0
-1,293
-559
-1,788
-3,640
-1,239
12,612
11,373
0
0
306
-693
301
-86
2,919
11,373
14,292
0
0
-499
-384
-45
-928
-729
14,292
13,563
0
0
-5,481
-480
0
-5,961
-2,299
13,563
11,264
0
0
-6
-480
0
-486
-139
11,264
11,125
0
0
-12
-480
0
-492
-148
11,125
10,977
0
0
-14
-480
0
-494
-151
10,977
10,826
0
0
81
-480
0
-399
328
10,826
11,155
0
0
-13
-480
0
-493
-214
11,155
10,941
0
0
-15
-480
0
-495
-216
10,941
10,725
0
0
2
-480
0
-478
-121
10,725
10,604
0
0
-1
-480
0
-481
-135
10,604
10,470
0
0
-3
-480
0
-483
-146
10,470
10,324
19
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