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華南・アジアビジネスリポート第43号

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華南・アジアビジネスリポート第43号
Mizuho Bank, Ltd., Hong Kong Corporate Banking Division No.1
China ASEAN Research & Advisory Department
43
Vol.
J u n e
2015
ビジネスリポート
Briefs & Editorial
Topics
広東省自由貿易試験区の活用と展望 ····················
3
アジアの人件費高・景気減速を懸念する日本企業 ··········
∼2015 年 2 月アジアビジネスアンケート調査結果∼
6
Regional Business
India インドビジネス最新情報 [15]
インドにおける税制改正
······················
∼税務登録手続き簡素化の流れ∼
11
Vietnam
ベトナムにおける税務調査の概要
·····················
15
インドネシアにおける外国人労働者ビザ問題 ············
19
Indonesia
China 中国ビジネス法律講座 [47]
ストライキ参加者の合法的解雇と注意事項
············
24
····················
29
····················
32
China
新民事訴訟法の解釈にかかる解説
∼小額訴訟手続きについて∼
Macro Economy
アジア経済情報: 台湾
South China - Asia Business Report Vol.43
Briefs
Topics
広東省自由貿易試験区の活用と展望
上海に中国初の自由貿易試験区が設立されてから1年半を
経て、広東、福建、天津に第2の自由貿易試験区が設立され
た。各自貿区は香港・マカオ・台湾との連携や「21 世紀海上シル
クロード」のハブなど、それぞれの地域性を生かした発展目標の
下、今後3∼5年かけてその実現を目指していくことになる。
前海・蛇口、横琴、南沙と3つのエリアからなる広東自貿区では、香港・マカオと連携を深めつつ、クロスボ
ーダー人民元業務の推進と規制緩和を柱とする金融ビジネスの発展をはじめ、物流、製造、サービス業など
さまざまな分野で先行・試験的な取り組みが行われていくことになる。ここでは、広東自貿区における足元の
企業の動きも含め、同自貿区の活用方法と最新動向を解説する。
アジアの人件費高・景気減速を懸念する日本企業∼2015 年2 月アジアビジネスアンケート調査結果∼
今年で第 15 回となるみずほ総合研究所のアジアビジネスアンケート集計結果をもとに、日系企業の動向
を考察する。今般調査では、ASEAN が引き続き日系企業の注目を集めるものの、中国同様、人件費の高騰
が企業の経営課題となっていることが明らかになった。さらに中国のみならず、ASEAN でも景気減速への懸
念が高まっていることもあり、日系企業は東アジアから南アジアなどへと視野を広げつつある。アベノミクス
で円高の是正が進んだことを受け、日系企業は国内の稼働率引き上げやアジア拠点の再編を通し、最適地
生産を模索していくことになりそうだ。
Regional Business
インドビジネス最新情報 [15] インドにおける税
制改正∼税務登録手続き簡素化の流れ∼
ベトナムにおける税務調査の概要
原油価格の値下がりを受け歳入不足が見込まれる
ベトナムでは 2015 年、税務調査の大幅な増加・厳格
化が懸念されている。同国では税制の頻繁な改正な
モディ政権の誕生後、行政手続きの簡素化が進め
どもあり、調査を行う税務担当官が必ずしもすべての
られているインドでは、先に発表された 2015 年度予算
法規制に精通していないことから、企業は困難な対応
案で、中央政府が負荷する付加価値税である物品税
を迫られることがある。
およびサービス税の登録手続き改定が提案された。
税務調査に対し、これを受ける企業は法規制を十
いずれもオンライン申請により、登録証明書などの発
分に理解し、論点を把握するとともに、不合理な指摘
行までの所要期間を短縮するとしているほか、基本税
がないかどうか留意する必要がある。ここではベトナ
率の引き上げなどが盛り込まれている。16 年4月には
ムにおける税務調査の流れと注意すべきポイント、罰
物品税、サービス税とも GST に統合される予定である
金および利息、調査結果に対する抗弁方法などにつ
が、GST 導入に向けた準備の意味合いも含め、当該
いて解説する。
改正の発効などに留意されたい。
Jun 2015 |
1
South China - Asia Business Report Vol.43
インドネシアにおける外国人労働者ビザ問題
新民事訴訟法の解釈にかかる解説∼小額訴
訟手続きについて∼
インドネシアへの赴任に当たって必要な就労ビザの
取得にかかる期間が長期化している。背景には、昨
今年2月に最高人民法院が公布した民事訴訟法の
年から続く各種手続きのオンライン化を受け、現場が
適用に関する解釈の中で、小額訴訟手続きの規範化
混乱していることのほか、外国人へのビザ発給に制
が図られた。これにより、労務関係が明確で、報酬や
限をかけたい当局の意向も見え隠れしている。
経済保証金の支払額などについてのみが争点となる
新規就労ビザの手続きにかかる足元の状況ととも
紛争は小額訴訟が適用され、一審終審制であること
に、長期化の要因でもある審査手続きの厳格化、販
が明記された。今後は訴訟処理の効率アップとコスト
売会社など一部業種における外国人労働者の役職
の低下が期待される半面、大量の小額訴訟が現れる
制限などについて説明する。
ことも考えられ、小額訴訟の実施状況に注意を払う必
中国ビジネス法律講座 [47] ストライキ参加者
の合法的解雇と注意事項
中国でストライキが起きた場合、企業は速やかな収
要があろう。
Macro Economy
アジア経済情報: 台湾
束を図るとともに、ストライキに参加した一部の従業員
をやむを得ず解雇することがある。この際、適切な解
14 年4Q の実質 GDP 成長率は+4.8%と3四半期連
雇を行わないために不当解雇と認定され、巨額の賠償
続で加速し、通年では前年比+3.7%となった。輸出入
金を支払わなければならなくなるケースがみられる。
ともに底堅く推移したことのほか、株価も米国経済の
企業の正常な生産・経営に深刻な影響を与え、労
働規律や社内規則、職業道徳に重大な違反行為があ
復調や半導体メーカーの量産計画発表を好感し、昨
年の最高値を更新している。
ったことを証明できれば、会社の解雇行為は合法的な
今後は輸出の伸びに頭打ち感が出てくるため景気
ものとみなされる。二審で企業側の勝訴が確定した4
はやや減速するとみている。15 年の実質 GDP 成長率
つの事例から、ストライキ参加者の合法的な解雇に当
は同+3.8%、16 年は同+3.5%になると予測する。
たっての主なポイントについて説明する。
Editorial
香港に遊びに来た旧友が再会の挨拶もそこそこに、「ホテルが無料で貸してくれたよ」と取り出したのは
Wifi ルーター。これで待ち合わせの場所も、行き方もすんなり分かったと、上機嫌だ。いつでも何処でもネット
につながっていることが日常化した今、旅先でネットが自由に使えるというだけで、どこかほっとした気持ちに
なるのも無理はない。
香港をはじめ、アジアの国々では空港やホテル、コンビニ、ショッピングモールなど無料の Wifi スポットが
多く、不自由を感じることは少ない。それでも、「かゆいところに手が届く」サービスで、リピーターの心をつか
む戦略には感心するものがある。
翻って、日本に帰省する度に感じるのが無料の Wifi スポットの少なさ。英語の通用度も高いとは言えず、
日本語が不得手な外国人旅行者はさぞ不便だろうと思うことも少なくない。日本でも 2020 年の東京五輪に向
け無料 Wifi スポットの整備などさまざまな準備に取り掛かっているようだが、いち早く日本を訪れてくれる外
国人観光客の満足度を高め、リピーターとなってもらうためにも、ぜひ速やかな取り組みをお願いしたい。
Jun 2015 |
2
South China - Asia Business Report Vol.43
広東省自由貿易試験区の
活用と展望
坂内 和隆 みずほ銀行 香港営業第一部
中国アセアン・リサーチアドバイザリー課
中国初の自由貿易試験区(以下、自貿区)が上海に設立されてから1年余りを経て、今年4
月、広東、天津、福建で第2陣となる自貿区が正式に開設された。中でも広東省自貿区は香
港・マカオとの経済協力・連携深化にかかるモデル地区とされ、外資企業にとっては金融面を
中心に従前の規制緩和を上回る参入障壁の低減や、新たなクロスボーダースキームの導入
などが期待される。本稿では先ごろ公布された広東自貿区の全体計画および当局へのヒアリ
ングなどをもとに、広東自貿区を構成する各区の特徴や足元の企業動向ついて紹介する。
広東は香港・マカオとの協力深化に重点
国務院が発表した全体計画によると、今回開設
された3つの自貿区および上海の計4自貿区の面
積はそれぞれ約 120km2。いずれも保税港区などを
含む複数のエリアから構成され(図表1)、自貿区に
投資する外資企業については、共通のネガティブリ
ストが適用される。
【図表1】4つの自貿区と各エリアの分布
上海自貿区が中国国内における構造改革を推
進するための制度改革・開放を全国に先駆けて試
行する「実験場」と位置付けられるのに対し、第2陣
の自貿区は対外開放促進を軸に、各々の地域性を
重視した役割が設定されている。たとえば広東は
①香港・マカオとの経済協力深化にかかるモデル
地区、および②『一帯一路』構想における『21 世紀
海上シルクロード』のハブ、かつ③全国の新たな改
革開放の先行地域と位置付けられた。また、
福建は台湾との経済協力および『21 世紀海
上シルクロード』沿線国家・地域との協力に
おける要所、天津は「京津冀」(北京市、天
津市、河北省)エリアの協力・発展・対外開放
プラットホームとされ、各区を構成するエリア
ごとの重点産業や主要政策・方針が明らか
にされた。
このうち、広東自貿区は既存の特区であ
る前海深港現代サービス業協力区(以下、
(資料)各区 HP、各種報道等よりみずほ作成
前海)の全域と隣接する蛇口地区、また珠
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3
South China - Asia Business Report Vol.43
【図表2】広東自貿区全体計画の主なポイント
名称
中国(広東)自由貿易試験区
各区の特性



主要政策




前海・蛇口:金融、情報など戦略的新興サービスの発展、金融業の対外開放モデル窓口、サービス
貿易の重要基地
南沙:航運、物流やハイエンド製造業発展、総合サービスターミナルの建設
横琴:金融・ハイテク産業の発展、文化教育の開放先導区、ビジネスサービスと観光レジャー基地、マ
カオ経済の多元的発展促進
香港・マカオ企業へのサービス業開放:国際船舶運輸、自費海外留学、内地住民の海外団体旅行
(台湾を除く)、認証・検査、高度医療等
区内-香港・マカオ間の人民元使用拡大:区内企業によるオフショア人民元借入、非銀行業金融機関
によるクロスボーダー人民元業務の取り扱い
香港・マカオ企業への金融業開放:香港・マカオ保険会社の分支機構に対する内資同様の法規適
用、香港・マカオ資本に対する第三者支払サービスの開放等
加工貿易の転換・高度化促進:保税検査・整備業務の展開、外商企業による機電製品の整備・再製
造業務の展開
(資料)国務院「中国(広東)自由貿易試験区全体方案」印刷発行に関する通知(国発〔2015〕18 号)
海横琴、広州南沙の2新区の一部による3つのエリ
展形であり、計画に列記された業種・分野を中心に
アで構成され、珠江デルタの中心部に3つの小自
さらなる規制緩和が図られていくこととなろう。
貿区によるトライアングルが存在するイメージとなっ
ている。
重点政策は原則、各エリアの従前政策を踏襲し
ており、前海であれば金融業や先進物流、サービ
ス業、横琴では観光やレジャー、ヘルスケア産業、
南沙では海運や金融、ハイエンド製造業などの高
付加価値産業を発展させるとし、外資企業への規
中国本土企業は積極的、外資企業は様子見
さて、こうした政府の方針を受け、広東省自貿区の
設立前から、同区への投資に積極的な動きを見せて
いるのが中国本土の企業である。特に、香港と隣接
する前海には、既に2万 8,000 社を超える企業が設
立登記済みで、うち9割以上が本土企業とされる。
制緩和にもこれらを軸とする意向がうかがえる(図
中国本土の企業にとって前海に進出する最大の
表2)。換言すれば、中国がこれまで香港・マカオと
メリットは、オフショア人民元の調達にかかる規制
の間で取り組んできた経済協力協定(CEPA)の発
緩和だろう。中国国内の資金調達環境は一時期に
【図表3】オン・オフ短期参照金利比較
比べ改善したとはいえ、特に中小企業にとってはま
だまだ厳しいのが現状だ。また、足元で中国当局
は景気てこ入れのため利下げを進めているが、そ
れでも昨年は中国本土と香港における銀行の金利
差は最大で3%ポイント程度乖離した(図表3)。こ
うした背景から、調達コストが割安な香港の金融機
関からの資金調達を目論む本土企業の進出が相
次いだと推察され、深圳市の統計によると、新規届
(資料)みずほ銀行香港資金部作成
出ベースで 2013 年に 150 億元だった香港−前海の
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4
South China - Asia Business Report Vol.43
クロスボーダー人民元ローンは 14 年
【図表4】前海における人民元建て外債スキーム
には同 698 億元へと4倍以上拡大し
た。
他方、外資系企業の反応は総じて
芳しくない。外資系企業の場合、中国
の一般地域では規制される海外から
の資金借入枠が、区内に登記・設立
し、実際に経営または投資を行ってい
(資料)「前海クロスボーダー人民元融資管理暫定弁護法」(深銀発
[2012]173 号)ほか
る企業であれば、枠を費消することな
ジネスに活用できている企業はごく一部にとどまり、
く香港の金融機関から人民元を借り入れることが
区内に進出する企業からは、いまだ優遇政策をど
可能だ(図表4)。さらに香港企業の場合、人民銀
うビジネスに活用できるのか不透明という声も少な
行の認可があれば金利優遇措置が適用される可
くないようだ。
能性もある。また、区内企業であれば内資・外資を
問わず、一部業種を対象に企業所得税の減税
(25%→15%)措置も適用されるなど、さまざまな優
遇措置が図られている。
広東自貿区の全体計画では、前海で先行・試行
されている人民元建ての各種クロスボーダースキ
ームを広東自貿区全体に拡大していく意向がうか
がえる。ただ、上海の例を見るまでもなく、せっかく
しかし、たとえば企業所得税減税は、2020 年末ま
の規制緩和や優遇政策も、実際のビジネスにメリッ
での限定的措置で、原則として既存法人の登記移
トがなければ、企業の活用も投資も進まない。計画
転や支店を設立するだけでは適用対象にならない。
にうたわれた「3∼5年の試験的な改革を通じて、
つまり、新規に設立した現地法人しか優遇税率を
国際化、市場化、法治化された事業環境を創出し、
享受できないため、実質的に税務メリットを享受す
開放型経済の新たな体制を構築し、広東、香港、マ
るのは難しいということになる。こうした使い勝手の
カオの高度な協力を実現し、国際経済協力・競争に
悪さが遠因となり、日系を含め外資企業の多くは、
おける新たな優位性を形成」するためにも、外資企
細則の公布や他社動向を見極めるというスタンス
業の投資意欲を喚起する実効性のある取り組みに
が続いている。
期待したい。
規制緩和の進展に期待
上海自貿区によると、同区設立から1年間に新
規進出した日系企業は約 100 社にとどまったとされ
る。クロスボーダープーリングや集中決済・ネッティ
ングなどの資金管理制度を中心に、制度改革・開
放において一定の成果はあったものの、実際のビ
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5
South China - Asia Business Report Vol.43
アジアの人件費高・景気減速を
懸念する日本企業
∼2015 年2 月アジアビジネスアンケート調査結果∼
酒向 浩二 みずほ総合研究所 アジア調査部
みずほ総合研究所では 1999 年度以降、会員企業を対象として、「アジアビジネスに関するアン
ケート調査」を毎年度実施している。本稿は、2014 年度調査(15 年2月実施、みずほ総合研究所
の会員企業のうち資本金 1,000 万円以上の日本国内製造業 4,481 社に調査票を発送、1,158 社か
ら有効回答)を前回の 13 年度調査と比較してまとめたものである。
ASEAN が最注力先の地位を維持するも、収益満
いては、景気減速にもかかわらず収益満足度が
足度の低下が続く
改善傾向をたどった。12 年秋の尖閣諸島問題顕
14 年のアジア地域1の経済状況を振り返ると、中
国では不動産市場の調整や生産能力過剰問題が
在化以降に続いていた、日系ブランド製品買い控
えの動きが収まったことが一因とみられる。
重し と な っ て、 実質 GDP 成長率が鈍化し た 。
12 年度調査以降、日本企業の海外展開におけ
ASEAN5では、名目 GDP で最大のインドネシアで
る最注力先は、中国から ASEAN にシフトしており、
は緊縮政策が続いたことなどから景気が減速し、
今回調査でも ASEAN 最重視の姿勢は続いた。た
同2位のタイは政治混乱の影響を受けて低成長に
だし、ASEAN においても、前述の景気減速に加え、
止まったことなどから、ASEAN5全体の成長率も鈍
図表1 拠点別にみた収益満足度 DI*の推移
化した。一方で、NIES では輸出主導で成長率が高
まった。インドでは近年、低下が続いてきた成長率
2004
06
08
10
12
「満足+ 30
やや満足」
14
(年度)
が上向きに転じた。5月のモディ新政権の発足以
降、内需が若干持ち直したことなどが背景にある。
NIES
ASEAN低下
このような経済環境の下、14 年度の日本企業
のアジア拠点の収益満足度は、NIES・インドでは
収
益
認
識
0
中国
改善、ASEAN では悪化した(図表1)。中国にお
ASEAN
「不満+
やや不満」
-30
(%ポイント)
中国底打ち
インド
1
主な質問は、中国、NIES(韓国、台湾、香港、シンガポ
ール)、ASEAN5(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピ
ン、ベトナム)、インドの 11 カ国・地域を対象とし、一部の質
問は、カンボジア、ラオス、ミャンマー、バングラデシュも対
象とした。
*「満足」と「やや満足」の合計から「不満」と「やや不満」の合
計を差し引くことによって算出。
(資料)みずほ総合研究所「アジアビジネスに関するアンケー
ト調査」。以下、同。
Jun 2015 |
6
South China - Asia Business Report Vol.43
人件費上昇、政治混乱、通貨安に伴う輸入部材
10 年度から 12 年度上期まで1ドル 80 円前後だ
高などの影響もあり、収益満足度が低下している
った円の対ドル為替レートは、12 年度下期以降に
様子が明らかになった。
下落に転じ、14 年度は1ドル 120 円前後で推移し
アジアビジネスへの取り組み∼対アジア輸出を行
う日本企業が増加
ている。このため日本拠点の輸出競争力が改善
したことが、「輸出を行っている」の回答率高止ま
りの背景にあると考えられる。一方で、アジアの
日本企業全般のアジアビジネスへの取り組みを
景気減速、人件費上昇、円安の進展などの諸要
概観するために、回答があったすべての企業にア
因が重なって、新規投資には慎重になっており、
ジアビジネスへの取り組みを聞いたところ、約7割
拠点再編が進んでいることが、「現地にビジネス
の企業が「何らかのアジアビジネスを行っている」2
拠点を設けている」の回答率が低下した背景にあ
と回答した。ビジネスの内訳を時系列3 でみると、
ると考えられる。
「輸出を行っている」の回答率は高止まりしている
が、「現地にビジネス拠点を設けている」の回答率
が5年ぶりに低下した点は注目される(図表2)。
拠点展開は、中国の減少が続く
前述の「現地にビジネス拠点を設けている」と
回答した企業 340 社に対し、どこに拠点を設け
図表2 時系列取り組みトレンド(複数回答)
60
(%)
貿易取引(輸出)を
行っている
貿易取引(輸入)を
行っている
40
現地にビジネス拠点
を設けている
20
一切行っていない
ているかを質問したところ、中国が1位、ASEAN、
NIES、インドが続く順位は前回調査と変わらな
かった。回答率を時系列でみると、中国は低下
傾向が、ASEAN は緩やかな上昇傾向が続いて
いる一方で、NIES とインドは、横ばいから上昇
傾向に転じている様子が窺える(図表3)。
技術取引を
行っている
0
1999
01
04
06
08
10
12
14 (年度)
図表3 アジア拠点状況の推移(複数回答)
(注)時系列データの扱いについては脚注 3 参照。以下、同。
(%)
低下傾向
80
中国
2
アンケートでは、「アジアビジネスを一切行っていない」と
いう回答項目を設け、100−「アジアビジネスを一切行って
いない」=「何らかのアジアビジネスを行っている」とした。
3 本稿における時系列比較は、「資本金 5,000 万円以上
の製造業」に対象データを統一したうえで行っている。そ
のため、07∼14 年度データは、日本企業の分析で採用し
ている「資本金 1,000 万円以上の製造業」の調査結果とは
値が異なる。なお、アンケート調査実施時のサンプル抽出
方法を 02 年度に変更したため、99∼02 年度調査は「無作
為抽出の製造業」、04∼06 年度調査は「資本金 5,000 万
円以上の製造業」がベースとなっている。また、03 年度に
ついては、本調査を実施していないため、データが欠落し
ている。以下、同。
60
ASEAN
緩やかな上昇持続
40
NIES
20
インド
0
2001
04
06
08
10
12
14
(年度)
(注)「インド」は 2006 年調査よりアンケート対象に
加えたため、それ以前のデータはない。
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7
South China - Asia Business Report Vol.43
コスト上昇には「製品の高付加価値化」「機械設
図表4 ASEAN における生産コスト上昇の対応策
(複数回答)
備の導入」で対応
0
ただ、中国と同様に、ASEAN 地域においても
製品の高付加価値化
労働コストが上昇している。最低賃金の引き上げ
機械設備の導入
10
20
40
34.2 (%)
32.1
23.6
動向をみると、政情が混乱していたタイは 13∼14
32.1
22.4
25.5
ASEAN域内販売を実施・検討
年にかけて据え置かれているほか、労働力が比
13.8
13.7
輸出先の多角化
較的豊富なフィリピンも 12 年以降、最低賃金は据
30
え置かれている。一方で、日本企業の進出が続
ASEAN域内の他の地域・
第三国への移転を実施・検討
4.1
6.1
き、今後も重視するという回答が伸びているイン
その他
6.1
5.7
2014年度
ドネシア、ベトナムでは2桁ペースの引き上げが
2013年度
増えている可能性が高い。
続いている。
注力地域は ASEAN・中国・NIES が共に低下
賃金上昇に対して、進出企業 196 社がどのよう
日本企業の国際ビジネスにおけるアジアの位
に対応しているのかを選択式で聞いたところ、「製
置づけを概観するために、全回答企業を対象に
品の高付加価値化」「機械設備の導入」「ASEAN
「今後、最も力を入れていく予定の地域」を質問し
域内販売を実施・検討」が上位となった(図表4)。
たところ、ASEAN が1位、中国が2位となった(図
前回調査と比較すると、まず「機械設備の導入」
表5①)。前回調査と比較すると、ASEAN、中国と
が上昇している点が注目される。賃金の上昇の
も回答率が低下するなど、東アジア地域への関
背景の一つに、労働需給のひっ迫があることから、
心が頭打ちとなっている様子が窺えた。
機械設備の導入に踏み切るケースが増えている
さらに ASEAN に最も注力すると回答した企業
とみられる。なお、「ASEAN 域内販売を実施・検討」
が低下した点は気掛かりである。ASEAN の景気
に ASEAN5と CLM の8カ国の中から国別の選択
が減速したため、販売伸長を困難と捉える企業が
を求めたところ、タイ、ベトナム、インドネシアが上
位3カ国となった(図表5
図表5 今後最も力を入れていく予定の国・地域(複数回答)
①全体
②ASEAN 内訳
59.7
58.1
タイ
48.6
44.6
中国
インドネシア
46.2
48.0
NIES
22.2
20.5
8.9
8.0
ミャンマー
5.4
4.9
カンボジア
0
2013年度
(%)
20
12.3
11.6
40
インド
9.0
6.7
欧州
7.8
6.8
60
イの首位は不変であった
高まった一方で、インドネ
シアの回答率が低下し、
2014年度
4.8
4.0
2013年度
38.9
36.2
予定なし
0
と、日本企業が集積するタ
が、ベトナムの回答率が
21.8
23.1
中南米
2014年度
1.9
2.1
ラオス
29.7
32.0
米国
15.0
13.1
フィリピン
41.5
45.1
ASEAN
ベトナム
マレーシア
②)。前回調査と比較する
20
40 (%)
両国の順位が入れ替わる
結果となった。ベトナムは、
近年、インフレの抑制が進
Jun 2015 |
8
South China - Asia Business Report Vol.43
むなどマクロ経済が安定化してきており、「繊維」
ろう。ASEAN では、中国に続いて人件費が高騰し
や「電気機械」などで産業集積が進んでいる点な
ており、マクロ経済の脆弱性から為替変動リスク
どが評価された可能性がある。一方のインドネシ
が顕在化したり、民主主義の未成熟さから政治混
アは、ASEAN の人口・名目 GDP の約4割を占め
乱が顕在化したりしている。これらの投資リスクが
る地域大国であるが、通貨安や保護主義的な政
広く認識されてきたため、回答率が低下に転じた
策などのリスクが残る点が懸念された可能性もあ
と考えられる。
る。
一方で、インドの回答率は上向いた。同国は近
中国から ASEAN へのシフトは続くが、頭打ち感も
「今後最も力を入れていく予定の地域」を時系
列でみると、第1回調査(1999 年度)から一貫して
トップであった中国が、12 年度調査で2位に陥落
し、今回調査では ASEAN との差がさらに開く結果
となった(図表6)。ASEAN は、人口増が続く国が
多いことから市場拡大が期待でき、AEC が設立さ
れる 15 年には原則として ASEAN 域内の関税が
撤廃されるなど市場統合が進むことも、投資先と
しての高評価に繋がっていると考えられる。
ただし、ASEAN の回答率は高水準を維持する
も、3年ぶりに低下に転じた点は留意が必要であ
図表6 日本企業の「今後最も力を入れていく
予定の地域」のトレンド(複数回答)
60
年、経済不振で回答率の低下が続いていたが、
14 年5月に就任したモディ新政権が進めつつある
諸改革への期待が反映されたと考えられる。
15 年度のアジアビジネスをみるうえでの注目点
最後に、今般アンケート結果を踏まえて、15 年
度の日本企業のアジアビジネスをみるうえでの注
目点に言及したい。
第1に、中国に続いて、ASEAN においても人件
費上昇が企業の経営課題になっている点である。
日本企業の投資が ASEAN に向かった背景には、
12 年秋以降の日中関係緊張化に加えて、中国に
おける賃金上昇が、相対的に賃金水準の低い
ASEAN へのシフトを促したことがある。しかし、そ
の ASEAN でも、中国に続いて人件費が上昇して
(%)
中
国
W
T
O
50
いる。特に、タイに続いて日本企業が集積し始め
ASEAN
金
融
危
機
加
盟
40
たインドネシアやベトナムでは、最低賃金の2桁
ペースの上昇が続いており、売上の伸びを上回る
日
中
関
係
緊
張
30
20
10
中国
ペースで生産コストが上昇し、収益を圧迫するケ
NIES
ースも見受けられる。日本企業は、製品の高付加
米国
価値化に加え、機械設備の導入で労働コストを吸
インド
収したい考えだが、中国から ASEAN へのシフトの
欧州
中南米
勢いに水を差すこともありそうだ。
0
1999
01
04
06
08
10
12
14 (年度)
(注)「インド」は 2006 年度調査よりアンケート対象に加
えたため、2005 年度以前のデータはない。
第2に、中国に続いて、ASEAN においても景気
減速に直面するようになっている点である。中国
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9
South China - Asia Business Report Vol.43
の不動産市場・生産能力過剰の調整に伴う景気
倍政権発足以降、アベノミクスの効果により円高
減速は、当面の間続くとみられているが、ASEAN
の是正が急速に進んだことにより、日本は、輸入
においても景気が減速している点は気掛かりであ
製品の価格上昇に直面しつつも、輸出競争力が
る。たとえば、14 年度上期まで政治混乱が続いた
回復し、国内の設備稼働率が引き上げられ、同
タイは、前政権が行った自動車購入優遇策によっ
時にアジア拠点の再編を図る動きが出てきている。
て家計債務比率が高まり、政治混乱収束後も消
成長市場としてのアジアの重要性は高まっている
費が伸び悩んでいる。また、ASEAN 経済の約4割
が、生産の国内回帰も視野に入れつつ、最適地
を占めるインドネシアでは、巨額の経常赤字と高
生産を模索する展開が続くことになりそうだ。
インフレが懸念され、通貨ルピアが下落したこと
から、14 年は金融引き締め政策が続いて景気を
下押しした。15 年に入り、ルピアがやや安定した
ために引き締め姿勢は若干緩和されているが、
15 年中に米国が利上げに踏み切ると見込まれる
なか、再度、通貨防衛のため引き締めが強化さ
れる可能性もある。前述の人件費上昇に加えて、
ASEAN の景気動向・為替動向にも注視する必要
※本稿は酒向浩二「アジアの人件費高・景気減速を
懸念する日本企業∼2015 年2月アジアビジネスアン
ケート調査結果∼」(みずほ総合研究所『みずほリポ
ート』2015 年5月 25 日)の抜粋、転載です。全文は
以下 URL をご参照ください。
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/p
df/report/report15-0525.pdf
があろう。
第3に、日本企業は、東アジアを重視しつつも、
東アジア以外の地域への関心を高めている点で
ある。日本企業は新たに、政権交代で成長期待
が高まるインドなどの南アジア、さらに世界経済
のけん引役となっている米国などへの関心を高
めているようである。一方、日本企業が重層的な
サ プ ラ イチ ェ ー ン を 構 築 し て い る 東 ア ジ ア は 、
ASEAN で 15 年末に AEC が発足し、日中関係も
正常化に向かうなど、明るい兆しがあり、引き続
き重要な拠点になると考えられる。しかし、上記理
由により東アジアへの関心が頭打ちとなるなか、
新規投資に関しては、東アジア以外の地域に目
を向ける姿勢が強まる可能性がありそうだ。
最後に、3年目に入ったアベノミクスが、アジア
ビジネスにも影響を与えてきている点である。安
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South China - Asia Business Report Vol.43
【India】 インドビジネス最新情報 第 15 回
インドにおける税制改正
∼税務登録手続き簡素化の流れ∼
石倉 瞬 エス・シー・エス国際会計事務所グループ
Corporate Catalyst India Pvt Ltd
インドでビジネスを開始する際の障害の一つに、
視察(Physical verification)が要求されており、物品
登録手続きの長期化が考えられる。原則として、当
税の登録には相当の時間がかかっていた。今回の
局が承認プロセスを進めなければ登録手続きが完
予算案と同時に公布された通達によると、適切なオ
了しない。これは普通のことだと思われるかもしれ
ンラインフォームの受理後2営業日以内に物品税
ないが、インドでは登録事項によっては数カ月の期
当局により申請書類が承認される旨が明記される
間を必要とする場合があり、企業がインドでの適切
とともに、登録手続きが次の通り詳細に規定され
なビジネスプランを作成することの阻害要因となっ
た。
ている。モディ政権誕生後、行政手続きの簡素化が
進められており、2015 年2月のインド政府予算案に
おいても、中央政府が賦課する付加価値税である
物品税とサービス税に関して登録手続きが大きく改
善される提案がなされた。本稿では物品税とサービ
ス税の新しい登録手続きについて説明する。
1.物品税の登録手続き
物品税とは、物品の生産・製造に対する租税で
① オンライン申請:登録の申請、登録の抹消、
登録の変更は、特定の申請フォームにより
www.aces.gov.in でのオンライン申請によって
行う。
② 税務番号(PAN:Permanent Account Number)
を基礎とした登録:登録申請者は申請フォー
ムにおいて法人または事業者の PAN の記載
を必須とされる。なお、既存の一時登録者は、
あり、インドにおいて物品の生産・製造を行う製造
当該通達発効後3カ月以内に PAN を基礎と
業者のほか、物品の輸入や流通を担う商社におい
した登録に変更するオンライン申請が必要で
ても登録が必要となる。物品税の登録手続きは、
あり、それを行わなかった場合には失効す
物品税当局より通達が出ており、当該通達に従い
る。
登録手続きが行われる。従前の通達においては、
適切な申請書類の受理から7日以内に物品税の登
録証明書および登録番号が発行されることが記載
されていた。しかし、実際には物品税の登録の申請
をオンラインで行ったあと、当局担当者による現地
③ 申請者の E メールアドレス、電話番号の登
録:申請者は当局担当者とのコミュニケーシ
ョンを目的として、申請フォームに E メールア
ドレス、電話番号を記載する必要がある。
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South China - Asia Business Report Vol.43
④ その他の商業登録:税関登録番号(Customs
Registration Number)、輸出入コード(Import
Export Code) 、州 付加 価値 税 番号( Value
Added Tax Number ) 、 中 央 売 上 税 番 号

対象拠点の所有に関する書類

銀行口座の詳細

会社定款(基本定款および付属定
(Central Sales Tax Number)、会社設立番号
(Company Index Number)、サービス税番号
(Service Tax Registration Number)に関して、
款)、および取締役のリスト

第三者によって申請書類を提出する
ための取締役会等の承認資料
当該物品税の登録より前に発行されている
場合には申請フォームに記載し、また当該申
⑦ 当 局 担 当 者 に よ る 現 地 視 察 ( Physical
請後に発行された場合には申請情報を修正
verification):当局担当者は、オンライン申請
することが必要である。なお、既存の登録者
を受けた日から7日以内に対象拠点の現地
において、これらの商業登録番号を登録して
視察を行わなければならない。現地視察に
いない場合には、当該通達発効後3カ月以
おいてエラーが識別された場合や状況の明
内にこれらの商業登録番号を登録する申請
確化が必要となった場合には、直ちに当該
を行わなければならない。
申請者にその旨を伝え、申請者は通知を受
⑤ 物品税番号および登録証明書:当局担当者
による現地視察および申請書類の精査は保
留としたうえで、適切なオンラインフォームの
受理後2日以内に物品税当局により申請書
類が承認される。物品税番号が記載された
登録証明書は当局のウェブサイト
www.aces.gov.in を通して発行され、当該証
明書は適切な証明力を有し、また発行した
当局担当者のサインは要求されない。
理後 15 日以内に当該指摘事項に対処しな
ければならない。対処できなかった場合に登
録は取り消される。ただし、この場合には申
請者は登録の取り消しに対して理由を表明
する機会を与えられる。当該理由が合理的
な場合には当局担当者は当該登録を取り消
さない。
2.サービス税の登録手続き
サービス税はサービスの提供に対する租税であ
⑥ 書類の提出:申請者は、対象拠点に関する
るが、サービスの提供業者だけではなく、一部のサ
現地視察の際に、自己認証を行った次の書
ービスに関してはサービスの受益者に対して登録
類のコピーを提出する。
することが要求されており、多くの企業において必
要となる登録である。サービス税に関しても物品税

工場の設置計画

登録対象者または登録対象会社の
に適切な申請書類の受理から7日以内にサービス
PAN カード
税の登録証明書および登録番号が発行されること

申請者の写真および個人証明書類
と同様に、従前の通達では必要書類の内容ととも
が記載されていた。なお、サービス税においては原
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12
South China - Asia Business Report Vol.43
則として現地視察等を行わずに登録番号の発行が
行われていたが、物品税に関する登録手続きの整
理とともに、サービス税に関しても次の通り登録手

銀行口座の詳細

会社定款(基本定款および付属定
款)および取締役のリスト
続きが整理された。

① サービス税の登録申請者は、特定の申請フ
申請書類を提出するための取締役
会等の承認資料
ォーム(Form ST-1)により www.aces.gov.in で

のオンライン申請によって行う。
その他の商業登録番号(物品税と同
様)
② サービス税の登録においても、申請フォーム
への法人または事業者の PAN の記載が要
⑤ 対象拠点の現地視察の必要性が生じた場
求され、また申請者の E メールアドレス、電
合には、Additional /Joint Commissioner レベ
話番号の記載も必要記載事項とされる。
ル以上の当局担当者により承認されなけれ
③ 適切なオンラインフォームの受理後2日以内
ばならない。
にサービス税の登録がオンライン上で行わ
⑥ 次 の よ う な 場 合 に は 、 Deputy/Assistant
れる。な お、当局 のウェブサイト
Commissioner によって登録証明書が取り消
www.aces.gov.in を通して発行された登録証
される可能性がある。ただし、この場合には
明書は、物品税の場合と同様に適切な証明
申請者は登録の取り消しに対して理由を表
力を有し、また当局担当者のサインを必要と
明する機会を与えられる。
しない。

④ サービス税のオンライン申請後7日以内に、
権が確認できない
自己認証を行った次の書類のコピーを当局

に郵送し提出することが必要である。

対象の法人または事業者の PAN カ
申請者の写真および個人証明書類
(PAN カード、パスポート、運転免許
証等)

対象拠点の所有に関する書類(所
有権証明資料、賃貸借契約書、所
轄当局からの土地の割当通知等)
オンライン申請後 15 日以内に必要
書類が受理されていない

ード

対象拠点が存在しない、または所有
必要書類が不十分または内容が不
正確である
3.物品税およびサービス税に関するその他の改
正事項
物品税およびサービス税に関しては、上述の登
録手続きのほかにも税率の変更を含めて重要な改
正が提案されている。物品税の基本税率は 12%
(教育目的税を含むと 12.36%)であったが、今回の
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South China - Asia Business Report Vol.43
改正により 12.5%へ引き上げられる提案がなされ
た。また、サービス税に関しても 12%(教育目的税
を含むと 12.36%)から 14%に基本税率が引き上げ
ら れ 、 さ ら に 、 ク リ ー ン イ ン デ ィ ア 課 税 ( Swachh
Bharat)として課税対象のサービスへ2%の追加税
が提案された。一方で物品税およびサービス税とも
に付随する教育目的税および中等・高等教育目的
税は撤廃されることが提案されている。
4.最後に
当予算案では財務大臣のスピーチにおいて 16
年4月1日に Goods and Service Tax(GST)を導入
することが言及された。GST はインド国内で定めら
れている複数の間接税を単一の体系のもとに整理
した包括的な間接税であり、日本における消費税
に相当する。本稿で解説した物品税、サービス税も
GST に統合されることが予定されており、税率の変
物品税の登録の利点は輸入時に支払った関税
更をはじめ改正の一部は、GST 導入のための改正
(CVD1)、または部品購入時に支払った CVD また
であると言われている。GST の制度内容について
は物品税の金額を税務上のクレジットとして保有し、
は、現在 GST 導入のための憲法改正案が下院
物品を製造し販売する際に生じる物品税の納税債
(Lok Sabha)を通過し、上院(Rajya Sabha)におい
務と相殺できることにある(日本において仕入に関
て審議されている状況で、詳細な内容は公表され
する消費税を売上に関する消費税から控除できる
ていない。産業界からの期待としては課税スキーム
仕組みと類似の制度)。当該相殺の仕組みに関し
の合理化・簡素化のほかに、電子登録、電子申告、
て 14 年9月より税務上のクレジットの有効期間が設
電子納税など事務手続き上の効率性の改善も挙
定され、今回の予算案において有効期間が6カ月
げられている。まずはモディ政権による円滑な GST
から1年に延長される提案がなされた。結果として、
の導入が期待される。
取引に関する請求書等の発行日から1年を超える
※次回は第 45 号に掲載します。
場合には、当該税務上のクレジットを認識すること
ができない。なお、当該税務上のクレジットについ
ては、サービス税に関しても同様の取り扱いが行わ
れる。
これらの変更案について、5月 14 日にインド大統
領による承認が行われたが、物品税の税率の変更
以外の改正ついては発効時期は未だ公表されてい
ない。
1
CVD(Countervailing duty)はインド国内で製造された物品
に対する租税である物品税との公平性の観点から導入され
ている関税の一つである。
石倉 瞬 (いしくら しゅん)
日本国公認会計士
エス・シー・エス国際会計事務所
Corporate Catalyst (India)
Deputy Manager
大手監査法人に 7 年間勤務。その間、大手資産運用
会社の投資信託やアジア規模の不動産ファンドの監
査に従事。日本の会計基準のみならず、米国会計基
準や国際会計基準にも精通している。2014 年 1 月より
ニューデリーに駐在し、現地日系企業に対する会計・
税務・法務・労務関連のアドバイザリーサービスや、
新規進出企業への投資アドバイスを行う。
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14
South China - Asia Business Report Vol.43
【Vietnam】
ベトナムにおける税務調査の概要
谷中 靖久 KPMG ベトナム
1. はじめに
2015 年は税務調査の大幅増加が見込まれて
いる。税務調査の活発化は国の歳入確保状況に
左右されることが多いが、15 年は 14 年途中から
続く原油価格の値下がりの影響を受け、歳入確
保に懸念がもたれているからである。ベトナム国
家予算約 420 億米ドルのうち、約 10%にあたる 43
億米ドルが原油関連歳入によると言われている
ベトナムでは必ずしも知識・経験が豊富でない
税務担当官が税務調査を担当することで、企業
の対応が困難になるケースが多い。このような状
況から、ベトナムにおいて税務調査の概要とその
主要論点を理解することは非常に重要である。
2.税務調査の概要
(1) 罰金並びに利息、そしてそれらの時効
が、当該歳入の予算数値において、原油は1バレ
税務調査の対象期間や合計の支払金額に大
ルあたり 100 米ドルを前提にしていると言われて
きな影響を与える罰金や利息、時効の法規制は
いる。15 年5月現在原油価格はやや持ち直しつ
以下のとおりである。
つあるものの1バレルあたり 60 米ドル近くで推移
しており、3月頃は1バレル 40 米ドル近くにまで低
罰金の種類
罰金
追徴税額の 20%
(故意あるいは悪質な場合)追
徴税額の 100%∼300%
利息
0.05%/日(年率 18.25%)
下していた。
原油関連歳入は原油価格の低下を受けて減
金額
少するものの、ベトナム政府は当初予算を維持し
種類
ている。原油価格が当初見込みの半値で推移す
れば原油関連歳入も当初見込みの半額になる可
時効年数
追徴税額、利息
10 年
罰金
5年
能性もあるが、当該歳入不足分についてどのよう
に歳入を確保するか、政府にとって大きな問題と
14 年までは 90 日以降の利息は 0.07%/日で、
なっている。このように歳入不足が見込まれる年
年率にして 25.55%という高額の利息が課せられ
は税務調査件数が増え、厳格化する傾向がある。
ていたものの、15 年1月1日以降は一律 0.05%/
14 年は歳入確保が順調で例年に比べ税務調査
日に低下している。15 年以前に発生した未払税
件数が少なかったことも、15 年に増加しやすい要
務債務に対する利息の取り扱いが問題となるが、
因となる。
この点 15 年1月1日から発効している Circular26/
2015/TT-BTC では以下のとおり規定している。
Jun 2015 |
15
South China - Asia Business Report Vol.43
15 年以前に既に申告し、あるいは税務調査の
指摘により確定しているもののまだ納税していな
い未払税務債務については、14 年 12 月 31 日ま
では 90 日以降 0.07%/日という規定が適用される。
について同時に実施され、省によっては関税も同
時に対象になることがある。
(3) 税務調査の流れ
一方 15 年1月1日時点でまだ申告・税務調査で
税務調査が行われる場合、一般的に税務当局
の指摘を受けていない、すなわち発見されていな
より電話で事前連絡が入り、その後、過去の財務
い未確定の 15 年以前発生の税務債務について、
書類や確定申告書といった書類の提出が求めら
15 年以降に発見された場合には一律 0.05%/日
れ、税務当局内部においてデスクトップレビュー
の利息が適用されることになる。結果として 15 年
がなされる。
以前発生債務についても大部分は一律 0.05%/
日の利息が適用されることになると思われる。
デスクトップレビューの後、正式に税務調査に
入る場合には書面により実施期間や対象税目の
利息が引き下げられたとは言え、1年放置する
通知が税務当局よりなされる。書面による通知な
だけで罰金の 20%に1年間の利息 18.25%を合
しに税務調査に入ろうとする担当官も見受けられ
計した 40%近くの金額を追徴税額に上乗せして
るが、書面による通知は租税管理法通達
支払わなければならないため、多額の追徴税額
Circular156/2013/TT-BTC で定められているた
が発生しないよう、通常の税務申告時のコンプラ
め、書面通知がないことを理由に税務調査の受
イアンスに十分留意する必要がある。
け入れを拒否することが可能である。
(2) 税務調査の一般的な実施頻度及び対象期
間・対象税目
ベトナムの税務調査はおよそ3年から5年に一
度の頻度で行われ、たとえ 10 年ぶりに税務調査
が入ったとしても一度の実施で対象となる期間は
直近から5年間分に限定されることが多い。これ
は上述のとおり、租税管理法上罰金の時効が5
年間(過去においては利息の時効も5年間であっ
た)と定められていることに起因する。規模の大き
い製造業に対してはより多くの頻度で税務調査が
実施されることがある。
ベトナムの税務調査の対象は各省ごとに異な
るが、多くの場合、法人所得税(法人税)、付加価
実地調査は書面による通知に記載されている
日から 10 営業日以内に行われることが規定され
ている。例えば通知日付から3日後に税務調査
が入る場合、10 営業日まで待ってもらうよう交渉
することで、最大 10 営業日の準備期間が認めら
れることもある。書面による税務調査の延期申請
を行うことも可能で、延長申請を受領してから当
局は5営業日以内に認めるかどうか書面により回
答する必要がある。延期理由の代表的な例として、
チーフアカウンタントが産休に入っているため対
応できない場合等が挙げられる。税務担当官が
書面を持っていきなり会社に現れ、税務調査を開
始しようとすることがあるため、このような場合に
は当該主張をすることが有効な手段となる。
値税、外国契約者税ならびに個人所得税すべて
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South China - Asia Business Report Vol.43
税務担当官による実地調査は最大で 10 営業
日行われる。原則は5営業日であり、それ以上の
期間について実地調査を行う場合、担当官は延
長申請が必要となる。この 10 営業日は通算累計
期間であり、税務調査によっては1週間に一度、
午前中だけといったケースもあるため、実際には
数カ月にも及ぶことがある。また実際には 10 営業
日といった制限を気にしない担当官も非常に多い。
現場調査でサンプルベースでのチェックが行われ、
担当官からの質問に対して説明が求められる。
実地調査の中で重大なコンプライアンス違反が
い。もちろんその場合は利息は引き続き加算され
ていくことになる。
15 年4月 20 日に税務総局が各税務当局に対
して発行した決定書 746/QD-TCT によると、企業
は議事録が発行されたその日に署名する必要が
あるという記載がされており、税務調査を受ける
企業は十分留意する必要がある。
(4) 税務調査結果に対する抗弁方法
ベトナムでは税務裁判制度が存在するものの
機能していないため、ほとんど利用されていない。
認められた場合、実地調査延長の措置がとられ、
そのため税務当局の主張に対して抗弁する際に
税務査察と呼ばれる詳細な調査が行われる。通
は、抗弁書と呼ばれる書面を作成し、関係当局に
常は実地調査後、税務調査結果、追徴事項やそ
提出、書面による回答を得る方法が通常である。
の金額を記載した議事録が作成される。議事録
は調査完了日から5営業日以内に発行され、企
業は議事録に署名する必要がある。議事録の内
容検討期間について法規制上特段の定めはない。
議事録への署名を拒否する場合、税務担当官は
5営業日以内にペナルティーを課すための内部
申請を行う。議事録署名後、7営業日以内に最終
の決定書(更正通知)が発行されるが、事案が複
雑な場合、30 営業日以内に発行される。抗弁(下
記参照)は決定書発行から 90 日以内に行う必要
がある。追徴決定後、抗弁するか否かにかかわ
らず、指定期限内に支払いを行う必要がある。指
定期限は法定されていないが、決定書の書式に
10 日以内と記載されているため、実際には 10 日
以内というのが指定期限となっている。抗弁する
場合、一度支払うと当局が抗弁を認めにくくなっ
関税以外の税金は各省の地方税務当局によっ
て管轄され、その上位機関に税務総局(日本の
国税庁に相当)、さらに最上位の財政省が存在す
る。関税調査の場合は地方の税関によって行わ
れ、上位機関は税関総局、財政省となる。抗弁書
はまず地方税務当局(あるいは地方税関)の抗弁
書を検討する部署に送付し、回答を得る。回答に
不服の場合、内容によって税務総局(あるいは税
関総局)または財政省にさらに抗弁することがで
きる。内容により地方税務当局、税務総局、財政
省と最大2回の抗弁が認められる。当該2回の抗
弁を行い、書面による回答がなされた後もなお回
答に不服の場合、税務裁判を行うことが制度上
可能であるものの、上述のとおり利用されること
がほとんど無いのが現状である。
たり、例え抗弁が認められても返金されないリス
クがあるため、現実には支払を留保する企業も多
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South China - Asia Business Report Vol.43
3.まとめ
冒頭にも記載したとおり、ベトナムでは税務調
査の件数が増加し、また担当官の姿勢もより厳格
になる傾向にあり、移転価格の税務調査も 13 年
から本格化している。
ベトナムでは税制が頻繁に改正され、調査を担
当する税務担当官もすべての法規制に精通して
いないことが多く、不合理な指摘や、過去の税制
が適用される対象年度において現在の税制を適
用して追徴を指摘するといった誤りもみられる。税
務調査を受ける企業が法規制を十分把握してお
らず、当局の指摘が不合理であるとわからない場
合にはこうした指摘も受け入れてしまうことにもな
りかねない。頻繁に改正される法規制を適切に理
解し、事前に十分、論点を把握しておくことが重要
であろう。
※次回は第 45 号に掲載します。
谷中 靖久
(たになか やすひさ)
公認会計士
KPMG ベトナム
大阪市立大法学部卒。2003 年 10 月に 朝日監査法人
(現有限責任 あずさ監査法人)東京事務所入所。日
本国内において主にソフトウェアメーカー、製造業等の
会計監査(米国及び日本国会計基準)に従事。2011
年 7 月より KPMG ハノイ事務所に赴任し、現地の日系
企業に対する投資、会計・税務、法務、人事等のアド
バイスを提供している。
Jun 2015 |
18
South China - Asia Business Report Vol.43
【Indonesia】
インドネシアにおける
外国人労働者ビザ問題
子田 俊之 フェアコンサルティング インドネシア
はじめに
インドネシアへの赴任が決まり、最初に頭を悩
ませることになるのがビザの問題です。多くの場
合で、予定していた通りにビザ取得は進みません。
また昨今、ビザ発給にかかる時間は長くなる傾向
にあり、以前は入国前の準備から1カ月程度で済
んだ手続きが、15 年に入ってからは3カ月以上を
Index 312, 317 等)になります。Visa on Arrival を観
光用のビザ、それ以外のビザを就労可能ビザと
認識されている方もいるのですが、労働移住省の
担当者によると、就労可能なビザは Limited Stay
Visa のうち Index 312(以下就労ビザ)だけになり、
それ以外のビザでは就労は許可されていないと
のことです。
要するようになっています。この遅延の直接的な
Visa on Arrival、Single Visit Visa、Multiple Visit
原因は、省庁の許認可手続きのオンライン化が
Visa の違いは有効期限と複数回の出入国が可能
進められている中で、ビザの発給についても、昨
であるかどうかになり、特に目的に違いがあるも
年より相次いで各種手続きの新システムが稼働
のではありません。Multiple Visit Visa は最長1年
し、現場が混乱していることにあると報じられてい
の有効期限、複数回の入国が可能(1回の入国
ます。しかし、ビザ発給の現場をみると、システム
は最長で 60 日)なビザです。Visa on Arrival、
化による混乱、遅延だけでなく、外国人に対して
Single Visit Visa は 30 日あるいは 60 日の有効期
ビザを制限する当局側の姿勢が垣間見えてきま
限、1回の入国のみ許可され、出国と同時に消滅
す。本稿では、ビザ取得手続きについて説明する
するものになります。これらのビザでは就労はで
とともに、ビザ発給の遅延および、昨今のビザ行
きませんが、ビジネス上の会議、トレーニング、セ
政について解説します。
ミナーは許可されています。オフィスでデスクを持
ビザの種類と就労ビザ
って執務すること、工場に立ち入って製造ラインで
作業をすることなどは就労の概念に当てはまり、
外国人がインドネシアを訪問する際、主に4種
これらの作業を就労ビザを持たずに行う場合は
類のビザでの訪問が考えられます。この4種類の
違法就労となり、罰則の対象となります。一方、就
ビザとは、Visa on Arrival(到着ビザ ‒ Index 213
労ビザは申請する外国人の役職、技能等に応じ
と呼ばれるもの)、Single Visit Visa(一時訪問ビザ
て6カ月、または1年の有効期限での発給がなさ
‒ Index 211)、Multiple Visit Visa(数次訪問ビザ ‒
れ、数次出入国許可(MERP−Multiple Exit Re‒
Index 212)、Limited Stay Visa(一時滞在ビザ ‒
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South China - Asia Business Report Vol.43
Entry Permit)手続きを経ること事で、有効期限内
をシステム稼働させ、4月には③VTT の手続きが
の複数回出入国が可能になります。
システム稼働を開始しています。しかし結果として
インドネシアへの訪問で問題になることが多い
のが、新規機械の据え付け、機械の不具合対応
等の業務での訪問です。これらの業務は就労と
みなされます。そのため、当然、就労ビザの取得
を行い、入国することが適切な手続きとなります。
しかしながら上述の通り、就労ビザ取得手続きに
は最低1カ月、最近では3カ月を要することもあり、
緊急性の高い上記のような業務に対応すること
が難しいケースが多くあります。そのため、違法
就労に該当することを知りながら、到着ビザでこ
れらの作業を行わざるを得ない方も多いと推測さ
れます。
は、②TA01 の手続きは従来3日程度で完了して
いたものが、3週間程度を費やすようになり、③
VTT は従来5日程度を見込んでいたものが、2週
間程度を費やす手続きとなってしまっているなど、
システム化の目的とは逆行する結果となっている
のが現状です。これは、システム稼働準備が技術
面、運用面で十分でないままに稼働を開始したこ
とによる、現場の混乱が原因であると言われてい
ます。システムサーバーダウン、システムへアップ
ロードしたはずの書類の消失、ウェブサイトの処
理遅延など、事前に十分に予測できたであろう技
術的な問題が次々と発生しているようです。これ
【表】 新規就労ビザ取得手続きフロー
就労ビザ取得手続き
新規就労ビザの取得のためには大きく分けて7
つの手続きを経る必要があります(表)。外国人
① 外 国 人 雇 用 計 画 書 ( RPTKA − RENCANA
PENGGUNAAN TENAGA KERJA ASING)を労働
移住省へ申請
↓RPTKA 承認
が就労ビザの準備に入る場合、表の①∼④まで
②労働移住省からの推薦状(TA01)発行申請
の手続きを赴任前までに行うことになります。この
↓労働移住省から入国管理総局に
TA01 が回付
手続きに費やす期間、特に①∼③の手続きに大
きな遅延が生じており、3カ月程度かかってしまっ
ているのが現状になります。
許認可システムのオンライン化
インドネシアでは、行政許認可申請のオンライ
ン化が推し進められています。14 年 10 月に発足
したジョコウィ政権にとっても、省庁手続きの簡素
化は優先事項に挙がっていると考えられ、手続き
時間短縮、明確化、管理可能性の向上、システム
統合(ワンストップサービス)等を目的にし、次々と
省庁システムを稼働開始させている状況です。ビ
ザ発給についても 15 年2月より②TA01 の手続き
③入国管理総局にビザ発行許可(VTT−VISA
TINGGAL TERBATAS)申請
↓同総局から在日インドネシア公館に
「ビザ(VTT)許可書」電送
④在外インドネシア公館でのビザ取得
↓取得から 90 日以内
⑤インドネシア入国
↓入国後 30 日以内
⑥入国管理局で一時滞在許可、数次出入国許
可 ( KITAS − KARTU IZIN TINGGAL
TERBATAS 、 MERP − MULTIPLE EXIT RE‒
ENTRY PERMIT)取得
↓外国人労働者雇用補償金
(DKPTKA)」を指定銀行へ納付
⑦ 就 労 許 可 ( IMTA − IZIN MEMPEKERJAKAN
TENAGA KERJA ASING)取得
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South China - Asia Business Report Vol.43
がシステム移行の過渡期に生じている状況であ
パスワードの設定が義務付けられました。当該シ
るのか、もしくは今後も定常的に続くものであるの
ステム ID の登録もオンラインで行われるため、既
かという点については、行政側の担当者を含め、
存の会社を含め、登録手続きに殺到している状
予想ができないというのが現状であるようです。
況で、サーバーの処理が追い付いていないようで
ビザ発給手続きの複雑化
す。また、システム ID の登録後2週間以内に、出
入国管理総局の職員が実地調査を行い、会社の
ビザ発給手続きのシステム化による混乱も遅
実在性の確認、既存の外国人労働者のビザの提
延の原因ではありますが、これ以外にも手続き期
示要求、あるいは居合わせた外国人の面談など
間が長くなっている原因があります。上記する、
が行われています。システム ID の取得だけでも
新規就労ビザ取得のための7つの手続きは以前
かなりの時間をロスすることになります。これに追
より変わるものではありませんが、個別にみてい
加して、システム移行前までは VTT の申請が毎
くと、当局の審査が厳格になっている手続きがあ
日可能であったところ、新システム稼働後は毎週
ります。
月曜日にのみ申請を受け付けるという運用に変
まず、①RPTKA - 外国人雇用計画申請の手
続きですが、従来に比較して、詳細に外国人の雇
用理由、当該外国人の技術を継承するインドネシ
ア人の記載を求めるようになってきています。技
術移転先のインドネシア人は顔写真と ID の記載
を求められます。外国人を雇用する前のインドネ
シア人スタッフの雇用が厳格に要求されるように
なってきていると言えます。
更になっており、これも手続き遅延の原因になっ
ています。今後、新システムが安定した際に、以
前のように毎日の申請が可能になるのかどうか
は、未だ明らかになっていません。
政策としての外国人雇用制限
インドネシア政府は直接的には外国人の雇用
を制限するということは表明していません。しかし
ながら、従来より一貫して、外国人にインドネシア
また、RPTKA を提出する際、労働移住省による
人への技術移転を求めるという政策が採用され
インタビューがより頻繁に行われるようになってき
ており、昨今、この政策の帰結と考えられるビザ
ています。会社の業種に限らず、初めて外国人を
発給行政に対する締め付けが顕著になってきて
雇用する会社、および外国人を3人以上雇用しよ
います。外国人雇用に関する規制である、13 年
うとする会社はすべて RPTKA の申請に際し、労
12 月の「外国人雇用手続きに関わる労働移住大
働移住省へ出頭し、インタビューを受けなければ
臣規定(No.12 Year2013)」では以下が明記されて
ならないという運用になっているようです。インタ
います。
ビュアーのアポイントを調整するだけでも手続き
が延びてしまうことになります。
次に、③VTT の手続きですが、システム移行に
外国人雇用にあたって、当外国人は
1) 役職に応じた学歴を保有していること
あたり、すべての会社にシステム ID の登録および
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South China - Asia Business Report Vol.43
2) 役職に応じた能力証明書および5年以上
の職歴を有すること
3) 技術移転をする旨の表明書の提出
4) インドネシア語でコミュニケーションが可能
であること
が求められます。この規制のすべての観点が
全ての業種の会社に対して厳格に適用されては
いないというのが現状ですが、例えば、14 年末に
労働移住省よりビザ発給に際してインドネシア語
能力試験を行うという表明があったこと(現実的な
運用については未だ発表されていません)、
RPTKA に具体的な技術移転先インドネシア人の
記載を求めるといったところは、当該規制に沿っ
た運用であると考えます。
上記に追加し、最近は外国人労働者の役職に
つき、特定のものに制限する(例えば、Manager と
し て の 役 職 は Marketing Manager 、 Financial
Manager に限る)、同一の役職での複数人の申請
は認めない、といった形で、必要以上の外国人雇
用は認めないといった指導が行われています。厳
しい制限がされているのがサービス会社、販売会
社およびコンサルティング会社の外国人雇用で、
これらの業態で働く取締役、Manager 以外の外国
人には1年の就労ビザを発給しない(6カ月就労
ビザに限定される)という通達が労働移住省から
出されています。また、実際には Manager ポジショ
ンについても役職が限られてくるようです。これら
の業態は、技術移転の対象となるような高度な技
術が必要とされていないというのが当局の論理で
ンサルティング会社は今後、既存の外国人駐在
者を含めたビザ更新に悩むことになりそうです。
6カ月就労ビザの問題点
1年就労ビザと6カ月就労ビザの違いは単純に
有効期間だけではありません。最も大きな違いは
更新手続きができるかどうかです。1年就労ビザ
は5回までの継続更新が認められておりますが、
6カ月就労ビザは更新不可となっており、期限が
過ぎると新規申請をすることになります。新規申
請には前述するように最大で3カ月程度の申請期
間を要し、また、在外公館への出頭が必要になり
ます。当該申請期間中は当然、就労ビザを持た
ない状態になりますので、期限前に一度出国し、
到着ビザで入国、勤務せざるを得なくなりますが、
このような状態は不法就労となります。
また、この様に、短期間のうちに出入国を繰り
返す行為により、空港のイミグレーションカウンタ
ーでトラブルに巻き込まれるケースも発生してい
るようです。1年就労ビザの更新の際にも、1カ月
程度の手続き期間がありますが、新規発給手続
きに比較して不透明性は低く、出国の必要もあり
ません。6カ月就労ビザは更新を前提としては設
計されておらず、そもそも出張者に対する短期就
労ビザという位置づけであり、長期駐在者が取得
するものではないと考えます。しかしながら、ビザ
発給の締め付けにより、6カ月就労ビザしか発給
を受けられない駐在者が多くなってきているのが
現状です。6カ月就労ビザの更新時の問題は、今
後多く発生してくると考えます。
あるとも捉えられます。サービス業、販売会社、コ
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South China - Asia Business Report Vol.43
最後に
以前よりインドネシアの就労ビザは発給のため
の手続きが煩雑で、不明確な部分も多いものでし
た。そしてシステム移行、行政指導等の要因が重
なり、現在、さらに不透明感が増しています。この
ような状況で、適切でないビザで入国せざるを得
ないケースは今後も増えることが予想されます。
ビザ問題は個人に帰する問題であり、個人が違
反等の指摘を受け、トラブルに巻き込まれる可能
性もあります。多くの問題は行政側に問題の所在
があるというのが率直なところですが、駐在員一
人ひとりがビザの制度、当局の姿勢について事
前に適切に理解し、問題に備えることも、重要で
あると考えます。
※次回は第 48 号に掲載します。
子田 俊之
(こた としゆき)
日本国公認会計士
PT Fair Consulting INDONESIA
システムコンサルティング会社にて約 5 年間、複数の基幹
業務システム導入プロジェクトに従事。公認会計士試験に
合格後は、あらた監査法人の金融部にて多くの外資系大手
金融機関に会計監査及び内部統制監査を実施。監査法人
在任中には米国プライスウォーターハウスクーパースに赴
任し、米国での業務経験を得る。現在、システム及び会計に
関する知識と経験を活かし、インドネシアにおいて、クライア
ントの視点に立った幅広いサービスを提供している。
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South China - Asia Business Report Vol.43
【China】中国ビジネス法律講座 第 47 回
ストライキ参加者の
合法的解雇と注意事項
陳 偉雄 広東広信君達法律事務所
はじめに
中国の経済成長に伴い、国内では物価が高騰
し、労働者にとって生活コストの負担が大きくなっ
一、北京の判例:姜氏と北京 XXX ゴルフクラブ有
限公司の労働紛争1
案件の概要
ています。また、労働者の権利意識も絶えず強く
なり、各地において毎年、労働報酬や福利厚生な
どを要因としたストライキ事件が発生しています。
ストライキの発生は企業の正常な生産・経営の秩
序を乱すだけでなく、巨額の経済的損失につなが
るケースもあります。
原告の姜氏は 2008 年6月 26 日から被告であ
る北京 XXX ゴルフクラブ有限公司(以下「会社」)
に入社し、キャディーを担当していた。姜氏は 10
年4月 14 日から 16 日まで会社に対しストライキを
組織・扇動し、あるいは不当手段で上司を脅し、
会社の秩序を重大に乱し、上司の承認を経ずに
速やかにストライキを収束させるため、会社は
出勤しないなどの理由により会社から雇用契約を
社員と協議を行い解決するとともに、やむを得ず
解除された。会社は裁判所に 10 年4月 14 日から
一部のストライキ参加者を解雇し、その他の社員
16 日までのストライキに関する録画資料を証拠と
に警告する場合もあります。しかし、解雇を適切
して提出し、姜氏が上司の忠告を聞かずに職場
に行わないと、会社の解雇行為が仲裁機関や裁
であるゴルフ場に戻らなかった状況を反映したシ
判所に不当解雇と認定され、会社はさらに巨額の
ーンも提供した。姜氏は一審判決を不服として控
賠償金を支払うリスクがあります。
訴し、会社に不当解雇による賠償金の支払いな
ここでは、どのようにストライキ参加者の合法
的な解雇を行うかについて、北京、上海、広州、
どを要求した。
判決の概要
深圳などの関連判例案を精査した上、当該判例
案に対する分析を行います。
姜氏は会社と労働紛争が発生した後、会社は
業務への復帰を勧告したが、姜氏は依然として他
の社員と合同でストを行い、会社は正常な経営が
できなくなった。姜氏の当該行為は社内規則への
1
案件番号:[2011]一中民字第 05139 号
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South China - Asia Business Report Vol.43
重大な違反であり、契約解除による賠償金の請
た後、楊氏らは車で2時間以上、工場の入り口を
求は法的根拠がなく、裁判所は支持しないと認定
塞いだ。会社が公安部門に通報し、政府の関連
し、控訴を棄却した。
部門が事件の処理に訪れた。会社は監視ビデオ
分析・意見
で上述の社員らが大騒ぎする行為を記録した。同
日夜、会社は楊氏などが行った暴力行為、および
上述の北京の判例によると、社員がストライキ
会社の入り口を塞いだ行為が、会社の正常な経
を組織・参加して、会社の経営に悪影響を及ぼし
営秩序に重大な影響を及ぼしたとして、楊氏らを
ており、社員のストライキに組織・参加した行為が
解雇し、解雇の理由も労働組合に知らせた。会社
社内規則に重大な違反をしたことを企業が証明
は楊氏らが起こした事件の処理に関わった労働
できれば、当該違反を理由に企業が社員を解雇
部門や公安部門から、事実に関係する証明書を
した行為が合法的であると裁判所に認定されるこ
取得した。楊氏らは一審判決を不服とし、会社に
とになります。社員がストライキを組織・参加した
不当解雇による賠償金の支払いを請求して控訴
場合、企業は録画などでストライキ関連の事実、
した。
および企業の経営に及ぼした影響を証明できる
証拠を収集した方が良いと考えられます。
二、上海の判例:楊氏と XXX(上海)有限公司の
労働紛争2
案件の概要
原告の楊氏は 10 年4月 19 日から被告である
XXX(上海)有限公司(以下「会社」)に入社し、金
型製作の作業を担当していた。職場は会社の第
2工場にあった。13 年 11 月 13 日、楊氏など 20
数人は勤務時間内に職場を離れ、会社の第1工
場に入り込んで、生産経理である鄭氏を殴り、怪
我を負わせ、鄭氏は病院で治療を受けた。会社
は監視ビデオで楊氏など 20 数人による上述行為
を記録しており、鄭氏の怪我の状況についても写
真を撮った。13 年 11 月 14 日午後、楊氏など 20
数人は再び職場を離れ、数台の自動車を使い、
第1工場に集まった。守衛が楊氏らの進入を断っ
判決の概要
楊氏ら 20 数人は勤務時間内に仕事を停止し、
勝手に職場を離れて、第1工場で殴り合いの事件
を起こし、さらに第1工場入り口を塞いだ行為は、
会社の正常な生産経営の秩序に重大な影響を与
え、労働規律および職業道徳において重大な違
反行為に該当する。会社の契約解除行為は法律
に合致すると裁判所は認定し、楊氏などの賠償
金支払請求を支持しなかった。
分析・意見
上海の判例でも、社員がストライキを組織・参
加して、企業の正常な生産経営の秩序に重大な
影響を与え、労働規律や職業道徳上、重大な違
反行為をしたことを証明できれば、会社の解雇行
為が合法的であると裁判所に認定されることにな
ります。企業は録画などで社員の暴力行為などに
かかる証拠を収集するほか、ストライキ事件の中
で殴られ怪我を負った社員の写真や病院診断書
2
案件番号:[2014] 沪二中民三(民)終字第 935 号
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South China - Asia Business Report Vol.43
なども収集できます。政府の関連部門が当該事
社の就業規則に違反しており、就業規則に基づ
件の処理に関与した場合、政府部門から事件に
き警告から契約解除の処罰を下すことができる。
関する証明書などを取得すれば、証拠資料の証
また、就業規則は既に公示しているため、会社お
明力を補強することができます。そして、解雇行
よび社員に拘束力を有する。陳氏などが賃金の
為の合法性を確保するため、従業員を解雇する
集団協議に不満を持ちストライキを行った行為は
前に、法に基づいて解雇の理由を労働組合に通
賃金集団協議書に違反しており、労働組合と会
知することも必要です。
社には平等な協議制度があるにもかかわらずス
三、広州の判例:陳氏と広州 XXX 有限公司の労
働契約紛争3
案件の概要
トライキに参加し、会社の正常な生産計画の執行
に影響を与えた。これは重大な違反行為に該当
すると裁判所は認定し、陳氏の控訴を棄却した。
分析・意見
原告の陳氏ら 78 名の社員は前日の賃金の集
団協議の結果に対し不満を持ち、13 年6月 26 日
に被告である広州 XXX 有限公司(以下、「会社」)
の業務手配に従わず、集団で出勤を停止し、会
社の生産業務の遂行に重大な影響を与えた。会
社は陳氏が就業規則および賃金集団協議書に
違反したことを理由に解雇した。会社は現地の労
働部門から、上述のストライキ事件の発生状況を
記載した証明文書を取得した。会社の就業規則
には、社員が部門の業務手配を不服とする場合、
社員に警告ないし契約解除の処罰を下すことが
できると規定されている。会社は就業規則をすで
に社員に公示し、労働組合と賃金集団協議書を
締結しており、平等な協議制度を規定していた。
陳氏は一審判決を不服とし、会社に不当解雇に
上述の広州の判例を見ても、会社は社員がス
トライキを組織・参加して、会社の正常な生産計
画の執行に影響を与え、社内規則に重大な違反
行為をしたことを証明できれば、会社の解雇行為
が合法的であると、裁判所に認定されることにな
ります。会社は政府部門からストライキ事件の発
生状況に関し記載された文書を取得して、社員の
ストライキ参加行為を証明することができます。ま
た社内規則の有効性を確保するため、社内規則
を社員に公示することが非常に重要です。さらに、
賃金集団協議書に労働組合との平等な協議制度
を規定し、ストライキ行為を禁止するような内容を
記載した方が会社に有利となることが分かりま
す。
よる賠償金の支払いなどを請求して控訴した。
四、深圳の判例:鄧氏と XXX 社の労働紛争案4
判決の概要
案件の概要
陳氏が6月 26 日に会社の業務手配に基づき労
原告の鄧氏は 1996 年7月1日に被告である
働を提供せず、業務手配を不服とした行為は、会
XXX 社(以下、「会社」)に入社し、2007 年5月1日
3
4
案件番号:[2014] 穗中法民一終字第 4306 号
案件番号:[2012] 深宝法松労初字第 396 号
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South China - Asia Business Report Vol.43
に会社と無固定期限労働契約を締結した。12 年 8
法 25 条に合致し、賠償金を支払う必要はないと
月3日から会社で 1,000 人以上が参加するストラ
裁判所は認定した。
イキ事件が発生し、会社は翌日の午前中、証拠
収集のため守衛にストライキ参加者を撮影させた。
分析・意見
その結果、社員が反発し、鄧氏が数百名の社員
上述の深圳の判例からも、社員がストを組織・
をリードして守衛室を囲み、守衛室に入り込み、
参加して、会社の経営に悪影響を及ぼしており、
守衛を引っ張り出して殴ろうとし、守衛にカメラを
社員が社内規則に重大な違反をしたことを証明
引き渡すことと、写真の削除を要求した。当該事
できれば、会社の解雇行為が合法的であると、裁
件により会社の入り口が塞がれ、車両および人
判所に支持されることが明らかです。立証責任を
の出入りができなくなり、会社の経営および評判
履行するため、会社は労働組合を独立の第三者
に悪影響をもたらした。社員がストライキを行った
として、社員のスト事件に対し調査を行わせ、調
期間、現地の政府管理部門、労働部門、公安部
査レポートを提出してもらうことができます。社内
門などは社員に職場復帰を促したが拒否された。
規則の有効性を確保するため、社内規則の内容
会社は労働組合を中立の第三者とし、労働組合
を社員に教育して、且つ社員が社内規則の教育
は関係者を調査し、録画資料を確認した後、スト
を受けた証拠を保存する必要があります。解雇手
ライキ事件に対し客観的なリポートをまとめた。会
続きについても、従業員を解雇する前、法により
社は就業規則に基づき鄧氏と契約解除をするこ
解雇の理由を労働組合に事前に通知することも
とを決定し、労働組合に通知し、労働組合より同
必要です。
意を取得した。会社は 11 年に社員に対し就業規
則の教育を行っている。鄧氏は一審判決を不服と
し、会社に不当解雇による賠償金の支払いなどを
請求して控訴した。
判決の概要
まとめ
上述の判例から、ストライキ参加者の合法的な
解雇にあたっては、労働契約法 39 条の(二)号に
規定された「使用者の規則・制度に甚だしく違反し
た場合」を活用できることが分かります。また契約
会社で一部の社員がストライキ事件を起こした
解除を行う前に、規則制度を整備すること、およ
後、鄧氏は積極的にストライキに参加し、その他
び規則制度の有効性を確保するため、以下の点
の社員をリードして守衛室を囲んだ。労働組合が
に留意されることをお勧めいたします。
独立の第三者として、鄧氏がストライキに参加し、
他者をリードして守衛室に入り込んだ事実を調査
し、まとめた調査報告書は客観的なものであり、
信用し証拠として採用できる。鄧氏は社内規則お
よび労働規律に重大な違反をしたため、会社の

規則制度を整備する場合、ストライキを組
織・扇動・参加した行為が会社の規則制度
に重大な違反をする行為に属すと明確に
規定する。
契約解除の処理は労働契約法 39 条および労働
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
規則制度の有効性を確保するため、規則
制度の内容が法律法規に合致していること
のほか、民主的な手続きを通して当該規則
制度を制定・修正し、労働組合と協議して
議事録(参加者のサインが必要)を残し、さ
らに教育やマニュアルの配布などの手段で
従業員に公示・告知する。
規則制度の整備及び有効性の確保以外にも、
労働組合と集団契約書を締結している会社は、
集団契約書の中にストライキ禁止などを約定する
ことができます。
これとともに、従業員がストライキに参加した事
実を証明できる証拠を収集することも非常に重要
です(例:政府部門の証明、本人の始末書、労働
組合の証明、録画、関係者の証人証言など)。
契約解除の手続きを行う上では、社内規則で
規定された処罰の手続きを順守し、事前に解雇
の理由を労働組合に知らせることにもご注意くだ
さい。
上述の分析・意見がストライキ参加者の解雇に
あたり、また企業の雇用管理の改善のお役に立
てば幸いです。
陳
※次回は第 47 号に掲載します。
偉雄
広東広信君達法律事務所
パートナー弁護士、日系企業部主管
中国広東省広州市生まれ。1990 年中山大学法学部
卒、広州市司法局での勤務を経て日本へ留学。2001
年に成城大学法学研究科で博士号(民法)を取得す
るまでの9年間を日本で過ごし、その間東京の法律
事務所に勤務。現在は地元広州において主に中国に
進出中の日系企業に対して日本語で法律サービスを
提供している。民商法、会社法、国際投資、国際貿
易、知的財産権、労働争議の処理等を専門とし、民
法(特に契約法)関連を得意分野とする。
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South China - Asia Business Report Vol.43
【China】
新民事訴訟法の解釈にかかる解説
∼小額訴訟手続きについて∼
潘 立冬、楊 金海 敬海法律事務所
1 はじめに
2013 年1月1日、旧法を基に大幅な修正が加え
られた改正「中華人民共和国民事訴訟法」 (以下、
「新民事訴訟法」)が正式に施行された。特に、小額
訴訟制度に関する法律規定が初めて制定されたこ
とは大きな変化であり、一審で終審する小額訴訟
手続きに法律依拠を提供した。小額訴訟手続きと
は、基層法院(中国における最も下級の裁判所)お
よびその派遣法廷が審理を行う事実関係、権利義
務関係が明白で、争点が少なく、係争額が一定額
以下の単純民事案件である。実際の法実務を通し
て、小額訴訟制度の必要性は十分に確認されてき
たが、新民事訴訟法では小額訴訟手続きに対して
十分な規定がなされず、具体的な操作方法につい
ては不明確な点が多かった。これに対し最高人民
法院は 15 年2月4日に施行した「『中華人民共和国
民事訴訟法』の適用に関する解釈」 (以下、「解
釈」)において、小額訴訟の規範化を図る新たな規
定を設けた。ここでは、解釈の重要ポイントである
小額訴訟手続きに関する規定について解説する。
員平均給与の 30%以下の案件については強制的
に小額訴訟手続きを適用して審理を行うことを明確
にした。これにより、小額訴訟手続きの適用条件を
備える案件について、裁判所または当事者がその
他の手続きの適用を選択する権利が排除された。
また、同条は小額訴訟手続きに対する一審終審制
の適用を明確に規定した。これまでは単純案件で
も1年以上裁判が継続することがあり、これにより
司法資源が不要に浪費されてきたが、小額訴訟に
ついて強制適用および一審終審制が明確にされた
ことで、今後訴訟処理効率が高まると同時に、当事
者が負担する訴訟コストも低下することが期待でき
る。
3 小額訴訟手続きの適用案件を明確化
新民事訴訟法第 157 条、第 162 条および解釈第
271 条では、小額訴訟手続きの適用案件を明確に
した。即ち、(1)事実関係、権利義務関係が明確で、
争点が少ない単純民事案件、(2)係争額が各省、
自治区、直轄市の規定する前年度の従業員平均
給与の 30%以下の民事案件、(3)基層法院および
2 小額訴訟手続きの強制適用および一審終審制
その派遣法廷が審理を行う第一審民事案件である。
について
解釈はさらに上述(1)に規定する案件の定義を明
解釈第 271 条では、小額訴訟手続きの適用につ
いて、簡易手続きの適用条件に合致し、かつ、係争
確にし、第 274 条において以下の金銭支払紛争に
小額訴訟を適用することを規定した。
額が各省、自治区、直轄市の定める前年度の従業
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South China - Asia Business Report Vol.43
① 売買契約、借款契約、リース契約に関する
紛争
② 立場関係が明確で、支払額、期日、方法に
ついてのみ争議を有する慰謝料、養育費、
上述の規定により、小額訴訟の適用範囲がさら
に明確となり、小額訴訟の適用についてより詳細な
判断基準が提供された。
4 小額訴訟手続きにおける挙証期限を明確化
扶養費に関する紛争
③ 責任が明確で、支払額、期日、方法につい
てのみ争議を有する交通事故損害賠償お
よびその他の人身損害賠償に関する紛争
新民事訴訟法第 65 条において初めて、民事訴
訟案件における挙証期限に関する規定が設けられ
たが、その具体的な期限については明確に定めら
れていなかった。これに対し、解釈は第 277 条にお
④ 水道、電気、ガス、熱エネルギーの供給契
約に関する紛争
いて、「小額訴訟案件の挙証期限は人民裁判所が
確定する、または当事者が協議を行い人民裁判所
⑤ 銀行カードに関する紛争
の許可を得て確定することができるが、通常、7日
⑥ 労働関係が明確で、労働報酬、労災医療
を超えてはならない。被告が書面の答弁を要求す
費、経済補償金または賠償金の支払額、
る場合、人民裁判所は被告の同意を得て合理的な
期日、方法についてのみ争議を有する労
答弁期間を確定することができるが、15 日を超えて
働契約に関する紛争
はならない。当事者が出廷し、挙証期限および答
⑦ 労務関係が明確で、労務報酬の支払額に
弁期間を必要としないことを表明した場合、人民裁
ついてのみ争議を有する労務契約に関す
判所は直ちに開廷審理を行うことができる。」と規
る紛争
定し、挙証期限を明確にした。
⑧ 不動産、電気通信等のサービス契約に関
5 小額訴訟手続きにおける異議申立制度を改善
する紛争
(1)管轄異議申立における上訴権を否定
⑨ その他の金銭支払いに関する紛争
新民事訴訟法では、一審通常手続きにおける管
また、解釈第 275 条において、以下の紛争には
小額訴訟手続きを適用してはならないと規定した。
① 人身関係、財産権利確認に関する紛争
② 外国に関る民事紛争
③ 知的財産権紛争
④ 評価、鑑定を必要とする紛争または訴訟
前の評価、鑑定結果に異議を有する紛争
⑤ その他の一審終審制を適用するのに適さ
ない紛争
轄異議申立の裁定に対する上訴制度について具
体的な規定を制定したが、小額訴訟手続きについ
ては明確に規定されなかった。そのため、実務にお
いては、当事者が訴訟手続きを長引かせるために
管轄異議を提出し、司法資源が不要に浪費される
状況が多く発生し、小額訴訟手続きの立法目的で
ある「迅速な立案、迅速な審査、迅速な結審」の達
成を困難にしていた。この状況を改善するため、解
釈は第 278 条において、「当事者が小額訴訟案件
の管轄について異議を提出した場合、人民法院は
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South China - Asia Business Report Vol.43
直ちに裁定を下さなければならない。裁定は即日
上述規定により、審理手続きの迅速な決定が促進さ
発効する。」と規定した。即ち、管轄に対する異議申
れ、司法資源が有効に活用されることが期待できる。
立の裁定について、小額訴訟手続きでは上訴権を
有さないことを明確にしたのである。
6 まとめ
解釈は、新民事訴訟法において明確に規定され
(2)審理手続きの移行に関する規定を明確化
なかった小額訴訟手続きについて詳細な規定を行
新民事訴訟法は第 163 条において初めて、簡易
い、小額訴訟手続きの実務効率に対する要求を満
手続きから通常手続きへの移行が可能であること
たしたものと言える。小額訴訟手続きに対する明確
を明確にした。その具体的な操作ついて、解釈は
な規定が設けられたことにより、小額訴訟手続きの
第 280 条において「当事者が訴訟請求の追加また
適用範囲にある貸借、売買等の契約紛争および労
は変更、反訴の提出、当事者の追加等を申請した
働紛争等案件の処理に当たっては、よりスピーディ
ことにより、案件が小額訴訟案件の条件に合致しな
ーな対応がなされることとなり、企業にとってはコス
くなった場合、簡易手続きのその他の規定を適用し
ト管理、資金回収効率の上昇、生産経営の安定に
て審理しなければならない。通常手続きを適用して
ついて一定の保証が得られる等のメリットがあると
審理すべき案件については、通常手続きへの移行
言えるだろう。ただし、小額訴訟手続きの実務状況
を裁定する。」と規定した。また、解釈第 281 条では、
は、複雑、かつ、多様であり、解釈の施行に伴って
審理手続きに対する異議申立権を肯定し、その異
新たに大量の小額訴訟案件が現れることが考えら
議提出期間を開廷審理前と規定した。これまでは、
れるため、当該手続きの実施状況および注意事項
当事者が開廷後に審理手続きについて異議を提出
については引き続き関心を寄せていく必要がある。
することがあり、異議が認められた場合、新たな司
※次回は第 46 号に掲載いたします。
法手続きに基づき再度審理を行わなければならず、
司法資源が不要に浪費される事態が起きていたが、
敬海法律事務所
W ANG J ING & CO. La w Firm
潘 立冬
楊 金海
パートナー弁護士
弁護士
ニューヨーク州弁護士
中山大学法学部卒、同大学院法学研究科修了(国際法
専攻)、1998 年弁護士登録。米セントルイス•ワシントン大
ロースクール修了(保険法、銀行商事法、会社法等を専
攻)。商法、海商・海事、国際貿易、中国商取引等を得意
分野とし、中国における著作権、商標登録等の知的財産
保護戦略、保険・金融分野に関する法的アドバイス、また
外資企業の中国法人設立、労働契約、就業規則の作
成、労使紛争の解決、仲裁・訴訟に多数従事している。
黒龍江省鶏西大学日本語学科、及び中山大学法学
部卒業。日系企業にて計 17 年間、法務・人事業務に
従事。国家司法試験合格後、2011 年より敬海法律事
務所に勤務。日本語能力と長年に渡る日系企業での
勤務経験を活かし、労務管理、社内規則制度確立、
労働紛争解決、会社法実務、契約書起草・確認等の
リーガルサービスを華南地区の日系企業を対象に提
供している。
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South China - Asia Business Report Vol.43
【アジア経済情報】
台 湾
∼2015 年、16 年も+3%台後半の成長に∼
伊藤 信悟、中澤 彩奈 みずほ総合研究所
2014 年4Q の景気は加速
前期比年率▲3.5%とマイナスに転じた。ただし、上
14 年4Q(10∼12 月期)の実質 GDP 成長率は前
述のとおり、3Q の伸びが同+19.3%と高水準だっ
期比年率+4.8%と、3Q の同+4.4%から緩やかに
たことの反動という性格が強く、しかも減少幅も小さ
加速し、3四半期連続の加速となった(図表1、14 年
なものにとどまった。投資の堅調さが続いていると
通年では前年比+3.7%)。
みなしてよいだろう。
財貨・サービス輸出は前期比年率+4.0%と、3Q
一方、個人消費は2四半期連続で減速し、前期比
に iPhone6 発売の追い風を受けて同+9.6%と高い
年率+2.6%となった(3Q は同+3.3%)。9月に廃油
伸びをみせたにもかかわらず、底堅さをみせた。財
を原料とする食用油の流通が発覚し、食品の売れ行
貨・サービス輸入は、同▲2.0%とマイナスの伸びに
き悪化やレストランからの客離れが起きたためだ。4
転じたものの、航空機調達や半導体メーカーによる
Q 前半に食品安全問題や米国株安の影響で株価が
積極的な設備投資が原因で3Q の伸びが同+
軟調に推移したことも(図表2)、消費者マインドの悪
14.5%と上振れたわりには、今期の減少幅は小さか
化を通じて消費の減速をもたらしたと推察される。
った。ここにも景気の底堅さが表れている。なお、上
なお、株価(加権指数)は、米国経済の復調や半
記のとおり、輸出と比べて輸入の減速幅が大きかっ
導体メーカーによる先端設備での量産計画発表な
たため、実質 GDP 成長率に対する純輸出の寄与度
どが好感される形で上昇基調をたどり、旧正月休暇
が大幅に高まった(+4.6%PT、3Q は▲2.8%PT)。
明けの3月 24 日には、昨年の最高値(7月 15 日:
総資本形成(総固定資本形成+在庫品増減)は
図表1 実質 GDP 成長率
15
(前期比年率、%)
10
9,569.17)を更新した(9,629.37)。
図表2 株価指数(加権指数)
純輸出
総資本形成
政府消費
個人消費
実質GDP
9,800
(1966年=100)
9,600
9,400
9,200
9,000
5
8,800
8,600
0
8,400
8,200
▲5
8,000
14/07
▲ 10
12
13
(注)寄与度はみずほ総合研究所推計。
14
(年)
14/09 14/11 15/01 (年/月)
(注)直近は 2015 年 2 月 26 日。
(資料)Bloomberg
(資料)台湾行政院主計総処
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輸出の伸びの頭打ちで、景気はやや減速へ
ただし、台湾経済は今後やや減速するだろう。そ
民進党の政権奪還観測の高まりと対中政策の行方
に注目
2月14 日、最大野党の民主進歩党(以下、民進党)
の主因は輸出にある。米国を筆頭に先進国経済が
回復に向かうものの、最大の輸出先である中国の
の蔡英文主席が、16 年の総統選(大統領選に相当)
減速が予測されるうえ、iPhone6 に相当するような IT
への出馬を表明した。他に立候補はなかったため、
関連輸出の力強いけん引役が見当たらない状況で
蔡主席が民進党の総統公認候補になることが確実
ある。それゆえ、16 年にかけて、輸出の伸びに頭打
な情勢だ。足元、民進党が信任度で与党の国民党
ち感が出てくると考えられる。
を引き離している上(図表4)、蔡主席の支持率が国
一方で、15 年は内需が景気の下支え役を果たす
民党の有力者よりも高いとの世論調査が出ているこ
だろう。まず、緩やかながらも投資の加速が期待で
とから、民進党が政権を奪還しそうだとの観測が高
きる。財政健全化のための公共投資削減、住宅の
まっている。
割高感を背景とした民間建設投資の弱含みという悪
こうした中、民進党の対中政策への関心が高まっ
材料はあるが、半導体や液晶パネルメーカーなど
ている。馬政権は中国政府と「1つの中国」の原則を
が設備投資を積み増す見込みだからである。また、
共有しており(「92 年合意」)、それを基盤に対中経
食品安全問題の影響緩和に加え、雇用・所得環境
済交流を拡大させてきたが、民進党は「92 年合意」
の改善に支えられる形で(図表3)、個人消費もやや
を受け入れていないため、対中関係の先行きを懸
持ち直すと考えられる。ただし、16 年には民間設備
念する声が上がっているのだ。他方、14 年3月の大
投資のピークアウトや輸出の弱含みによる雇用・所
規模な学生運動で示されたように、対中経済依存度
得環境の改善ペース鈍化などにより、内需の勢い
が高まり、中国の統一攻勢に対して脆弱になること
が幾分弱まるだろう。
を懸念する声も強い。蔡主席率いる民進党の対中
経済は減速するも、ゲタの関係で 15 年の実質
政策の全体像はまだ定まってない。国民党との差
GDP 成長率は 14 年実績から 0.1%PT 上昇して同+
別化を図りつつも、バランスのとれた対中政策を打
3.8%に、16 年は同+3.5%になると予測する。
ち出せるかどうかが試されている。
図表3 失業率
6.5
(%)
図表4 国民党・民進党に対する信任度
50
(%)
45
6.0
40
5.5
35
30
5.0
25
4.5
20
4.0
国民党
10
民進党
5
3.5
2009 10
(注)季節調整値。
15
11
12
13
14 (年)
(資料)台湾行政院主計総処
0
09/4 09/9 10/1 11/6 12/4 12/10 13/1 15/2 (年/月)
(資料)TVBS 民意調査中心「政党形象民調」2015 年 2 月 11 日
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Back Issues
2014 年 10 月発行 第 36 号
・日台アライアンスの現状と今後の展開
・中国・平潭総合実験区∼中台経済交流のプラットホーム∼
・Thailand: 現状の軍政下におけるタイの税務・会計
・Vietnam: 法人税法改正に伴う事業拡張と税優遇に関
する議論
・Malaysia: マレーシアにおける移転価格税制
・India: インドの税制 [50]仲介サービスにかかるサービ
ス税の改正点∼2014 年インド予算案より∼
・China: 解説・中国ビジネス法務[15]上海自由貿易区
の最新動向
・China: 外商投資項目の認可および届出管理弁法」の
新傾向解説
・HK: オフショア所得の取り扱い∼Advance Ruling Case
No.54 の考察∼
2014 年 11 月発行 第 37 号
・活発化するオフショアマーケットでの社債発行
・中国の経済動向∼政策対応により 15 年も+7%台の
成長維持へ∼
・Vietnam:ベトナムにおける不動産事業法の改正草案
・ India:インドビジネス最新情報 [12] インド新会社法:各種取
締役の要件∼居住取締役、独立取締役、女性取締役∼
・Singapore / China: 独禁法違反リスク最小化に向けた E
ディスカバリー
・Philippines: フィリピンの投資環境
・China: 中国ビジネス法律講座 [46] 労災保険に関する
最新の司法解釈
・HK: 香港における地域統括会社の設立に関する諸問題
・HK: 国際税務講座 [30] 香港での飲食ビジネスは儲か
るのか
・アジア経済情報:インド
2014 年 12 月発行 第 38 号
・日台「滬港通」いよいよスタート∼問われるオフショア人
民元センター・香港の役割∼
・中国子会社からの海外送金および関連問題にかかる
留意点
・Indonesia:インドネシア新健康保険制度の解説
・Cambodia:カンボジア進出の際の税務上の留意点およ
び税務調査対策
・Malaysia:マレーシア 2015 年度予算案
・India:インドの税制[51]日本人駐在員を派遣する際に
考慮すべき税務リスク∼PE リスクを中心に∼
・China:解説・中国ビジネス法務[16]中国独占禁止法執
行の最新動向(1)
・China:新「馳名商標の認定および保護規定」の解説
・China:最近の中国トラブル事例集∼会計税務、登記関連∼
・アジア経済情報:ベトナム
2015 年 1/2 月発行 第 39 号
・Malaysia:マレーシアへの進出と税制の概要
・Vietnam:ベトナムにおける最新の税優遇事情
・India:インドビジネス最新情報[13] 日印社会保障協定
∼日本、インドでの税金の取り扱い∼
・Taiwan:台湾における従業員および駐在員のコスト
・China:債権回収における訴訟・仲裁の活用
・Hong Kong:香港競争委員会によるガイドライン案の発表
・Macro Economy:アジア経済情報: アジア概況
2015 年 3 月発行 第 40 号
・中国におけるクロスボーダー資金管理規制の緩和
・マレーシアにおける地域統括会社の活用
・Vietnam:ベトナムにおける投資法および企業法の改正
・Thailand:タイの法令・制度改正の動向∼2014 年から
2015 年に向けて∼
・India:インドの税制 [52]インドにおける APA 制度
・China:解説・中国ビジネス法務 [17]独占禁止法執行
の最新動向(2)
・China:広東省企業集団契約条例
・Taiwan:最近の台湾トラブル事例集
・Philippines:フィリピンと華南における加工貿易ビジネス
の比較
・Macro Economy:アジア経済情報: シンガポール
2015 年 4 月発行 第 41 号
・決済通貨ストラテジーの見直しによる新たなメリット
・ASEAN への挑戦∼二極化する日系企業の ASEAN 投
資動向∼
・India:インドビジネス最新情報[14]2015 年度インド政府
予算案∼直接税に関する改正∼
・Vietnam:ベトナム現地法人と日本本社の役員を兼務す
る場合の個人所得税の申告の実務及び課題
・Singapore:シンガポール 2015 年度財政予算案∼税制
改正を中心に∼
・China:「外国投資法」意見募集稿∼外国投資分野の重
大な改革∼
・China:中国『反腐敗』運動をめぐる企業の対応∼贈収賄
防止に向けた傾向と対策∼
・アジア経済情報:アジア経済概況
2015 年 5 月発行 第 42 号
・日中金融協力と東京市場への期待
・2015 年「中国国有企業改革」のゆくえ∼混合所有制は
チャンスとなるか∼
・Vietnam:ベトナムにおける最近の移転価格調査動向
・Malaysia:マレーシアを取り巻く GST の最新情報∼2015
年 4 月 1 日の導入を受けて∼
・India:インドの税制 [53]インドにおける個人所得税
・China:解説・中国ビジネス法務 [18]中国環境保護法
の改正(1)
・China:中国海外送金にかかる新基準の影響
・アジア経済:インドネシア
・2015 年香港賃金動向
・2014 年下期為替市場の回顧と 15 年為替相場の見通し
∼ドル円およびオフショア人民元を中心に∼
バックナンバーのご用命は、巻末記載の連絡先もしくは営業担当者まで、お気軽にお申し付けください。
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South China - Asia Business Report Vol.43
みずほ銀行
香港営業第一部
中国アセアン・リサーチアドバイザリー課
TEL (852) 2102-5486
直投支援部 (日本)
TEL (03) 3596-6810
産業調査部アジア室 (シンガポール)
TEL (65) 6416-0344
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