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インターネットを利用したNC工作機械の遠隔指導

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インターネットを利用したNC工作機械の遠隔指導
平成 16 年 3 月修了
修士学位論文
インターネットを利用した NC 工作機械の
遠隔指導システム構築と工業教育への適用
Remote Control System of CNC Machine tools by
Internet Technology and
Its Application to Training of Technical High School
平成 15 年 12 月 26 日
高知工科大学大学院工学研究科基盤工学専攻起業家コース
学籍番号:1045036
垣内 和彦
Kazuhiko Kakiuchi
目 次
第 1 章 緒論 本論の目的と構成 ------------------------------------P 2
第 2 章 工業教育における工業高校の位置づけ ------------------------P
2.1 工業教育の必要性 ----------------------------------------P
2.2 工業教育機関における工業高校の位置づけ -------------------P
2 .3 工業高校の教育目標 -------------------------------------- P
2.4 工業高校の課題 ----------- --------------------- ----------P
3
3
6
7
8
第 3 章 工業教育発展のための一方策 -------------------------------P
― 高 知 県 立 高 知 東 工 業 高 等 学 校 に お け る 学 科 改 編 に つ い て
3.1 学科改編の経緯 ------------------------------------------P
3.2 機械生産システム科の教育目標 -----------------------------P
3.3 機械生産シ ステム科の教育内容特徴 ------ -------------------P
3.4 FMS(Flexible Manufacturing System)導入について -------------P
11
―
11
12
13
14
第 4 章 インターネットを利用した NC 工作機械の遠隔指導システム --------P 17
― ネットワークに接続された最新の産業設備 東工業 ITFS(IT ファクトリ・システム)について ー
4.1 ネットワークに接続された最新の産業設備 東工業 ITFS 導入の背景 P 17
4.2 東工業 ITFS の仕様決定にあたって --------------------------P 19
4.3 CAD/CAM システム導入にあたって --------------------------P 27
4.4 平成 13 年度における東工業 ITFS の概要 --------------------P 30
4.5 平成 13 年度における東工業 ITFS による教育内容 -------------P 32
4 . 6 ネ ッ ト ワ ー ク 学 習 装 置 導 入 につ い て - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P 3 5
4.7 東工業 ITFS のインターネットへの接続 -----------------------P 36
4.8 東工業 ITFS の完成による教育効果 -------------------------P 38
第 5 章 東工業 ITFS を利用したケーススタディ -------------------------P
5.1 ケーススタディ①
指導者が遠隔から指導する場合 ------------P
5.2 ケーススタディ②
生 徒が遠隔から操作 ----------------------P
5.3 ケーススタディ③ 東工業 ITFS を利用した地域企業との連携事業 P
5.4 ケーススタディ④
小中学校との連携事 業 --------------------P
39
39
42
44
45
第 6 章 工業高校における NPO 設立計画 ------------------------------P
6.1 東工業 ITFS に対する地域のニーズ ---------------------------P
6.2 NPO について ---------------------------------------------P
6.3 高知東工業高校における NPO 設立計画 -----------------------P
46
47
47
49
第 7 章 インターネットを利用した NC 工作機械の遠隔指導システムを
工業高校の教育に適用することによる教育効果と今後の課題 ---------P 50
7.1 東工業 ITFS 活用による教育効果 ----------------------------------P 50
7.2 高知東工業機械生産システム科と東工業 ITFS の今後の課題 -------------P 52
第 8 章 結論-----------------------------------------------------------P 53
参考文献 ----------------------------------------------------------P 54
資料 --------------------------------------------------------------P 56
1
第1章
緒論
我国の経済・産業は,グローバル化の進展によって,産業の空洞化や企業の国際競争
力低下に直面している.とりわけ中国をはじめとする新興諸国の追い上げにより深刻な
打撃を受けている.我国経済を製造業(ものづくり)から発展させていく上で,我国の
製造業には中国などの新興諸国に真似のできない高度な技術力,製品の開発などが求め
られる.すなわち我が国の製造業には,従来のように決められたものを指示された納
期・品質で安価に製造するという受動的な姿勢から,積極的に顧客のニーズを捉え先端
技術を活用した創造的で高度な製品を追及していくという姿勢へと変化することが求
められているということである.
わが国の経済・産業の発展を達成するためには,これからの産業社会に適応できる人
材の養成・確保が必要となり,工業教育に対する期待が高まってきている.
このような工業教育に対する産業社会からの強い要請にこたえる一つの方策として,
工業高校における工業教育設備の高度化が考えられる.筆者の勤務する高知県立高知東
工業高等学校では,平成13年度において,ネットワークで接続された NC 工作機械群
や3次元 CAD/CAMで構成される最新の産業機械設備を導入した.この最新の産業機械設
備を 東工業 Information Technology Factory System と称し,
東工業 ITFS と略称する.
本研究は,この東工業 ITFS による,インターネットを利用した NC 工作機械の遠隔指
導システムを構築すること,そしてそれを工業教育へ適用して,工業高校の教育の高度
化を図ることを目的とする.
本稿の構成は,次のとおりである.
第 1 章において,研究の目的を明らかにする.
第2章では,中小企業の現状を分析することにより,わが国の産業活性化のためには,
人材育成・工業教育が必要性であるということを示す.特に,工業高校における工業教
育システムおよび教育設備の現状と問題点を分析する.
第3章においては,私の勤務する高知東工業高校における,最近の学科改変,これに
伴う多品種少量生産が可能な自動生産設備である FMS(Flexible Manufacturing
System)実習設備導入による,先端工業技術教育の事例を述べる.
第4章では、さらに時代のニーズに応える,ネットワーク技術を活用した最新の産業
設備である東工業 ITFS(Information Technology Factory System)導入に至る経緯を
述べ,東工業 ITFS の概要を示す.
第 5 章において,この東工業 ITFS を活用した様々教育実践例について報告する.こ
こで,時代に対応した高度な先端技術を高校段階で教育することが有能な人材を生み出
すことができるという結果を出した.
第6章では,さらに工業高校内だけでなく,地域産業との連携の試みである,教育支
援 NPO 設立による,工業教育の高度化や地域産業活性化について考察する.
第7章では,東工業 ITFS による,インターネットを利用した NC 工作機械の遠隔指導
システムを工業教育へ適用することによって,工業高校の教育の高度化がどのように図
られたかを示し,さらに工業高校の指導内容高度化,効率化するための東工業 ITFS の
活用方法を提案する.
最後に第8章で結論を述べ,結びとする.
2
第2章
2.1
工業教育における工業高等学校の位置づけ
工業教育の必要性
2.1.1 わが国産業を支える中小企業
我国の経済・産業は,グローバル化の進展によって,産業の空洞化や企業の国際競争
力低下に直面している.とりわけ中国をはじめとする新興諸国の追い上げにより深刻な
打撃を受けている.それは,従来,製品輸入国であった中国をはじめとするASEAN
諸国等が技術力を向上させ,製品輸出国へ転換したこと,これら諸国の低廉な労務コス
トを活用した日本の製造業各社の海外進出,その結果としての国内産業の空洞化問題で
ある.この状態を放置すると,わが国の製造技術のレベル低下,衰退という深刻な問題
となることが考えられる[1].
一方で,これからのわが国の産業を担う若者の基礎学力不足,論理的思考力の低下,
技術能力の低下が指摘されわが国製造業競争力の基盤であったものづくり技術力の継
承が憂慮されている.
ここで,わが国経済における製造業の位置付けについてみてみると,GDPに占める
製造業の割合は 1970 年の 36%を最高に年々低下してきているものの,2000 年において
もなお 21.6%を占めている.脱工業化による産業構造の転換の必要性が指摘されている
現在においてもなお,製造業の重要性は変わらないと言える.更にこの製造業の内訳を
見てみると、中でも 2001 年における機械金属製品の輸出額は 38 兆円に上り,全体の
78.4%を占めている.この機械金属製品の生産の大きな部分を担ってきたのが,基盤技
術を保有し生産を底辺で支えている中小製造企業である[2].わが国経済において,中小
企業は,どのような地位を占めてきたか非一次産業計で見た従業者規模別の事業所割合
に目を向けると,1960 年から 2001 年に至るまで,従業者 1∼49 人規模の層が常に約 98%
を占めてきており,従業員 300 人未満で見ると,約 99%になるなど,事業所総数のほと
んどを中小規模のものが占めていた[3].
以上のことからわが国経済発展のためには,中小製造企業の活性化が必要であるとい
える.
3
2.1.2
中小企業集積地における中小製造企業の抱える問題点
中小製造企業が集積している代表的地域である大田区のある東京都の中小製造業の
特徴や問題点は,13年版「東京都中小企業経営白書(製造業編)」によって,以下の
ように指摘されている[4].
(1) 製造機能の流出(規模が大きくなるにつれ,工場を都外に)
(2) 「転廃業予定」の企業が増加(転廃業を考えている企業は 14.1%)
(3) 新規創業の冷え込み(平成 7 年以降の創業は全体の 0.6%)
(4) 進む高齢化(経営者の平均年齢は 60.6 歳,従業者の平均年齢の平均値は 49.3 歳)
(5) 小規模企業の経営悪化(「1∼3 人」の 4 割以上が 3 年前より 20%以上の売上減)
(6) 存立事業分野の衰退(「衰退分野」と回答した企業は 43.3%)
(7) 高度集積地企業の優位性が希薄化
(8) IT化対応の現状では,デジタルデバイドの顕在化とITの重要性
(9) 大企業で効果上げるIT活用
以上の問題点の中から,特に高齢化について詳しく見てみると,従業者の平均年齢の
分布は「表 2.1 大田区の製造業従業者平均年齢」に示されるとおりである.
表 2.1 大田区の製造業従業者平均年齢
29歳以下 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上
0.5%
12.80%
36%
36.80%
12.80%
1.10%
13年版「東京都中小企業経営白書(製造業編)」
(図表 9 より)
この表2.1から,高齢化により後継者が不足しており,事業を継続していくうえで
深刻な問題を抱えていることが読み取れる.
このような高齢化の傾向は,同様に製造企業の集積地を抱える東大阪市においても
「図 2.1 東大阪市製造業従業者の平均年齢の推移」に示されるように,同様である[5].
図 2.1 東大阪市製造業従業者の平均年齢の推移
http://www.meti.go.jp/hakusho/chusyo/H09/2-2-47z-2.htm
中小企業白書平成 9 年度版
第 2−2−47 図
(2)都市型集積企業の従業者の平均年齢の推移より
4
更に, 中小企業庁・中小企業総合事業団「中小企業景況調査」(平成 13 年 3 月調査)
によれば、図 2.2 企業の抱える課題 に示されるとおり、中小企業の長期的構造的な問
題点を見ると,製造業や卸売業では「受注量の確保」についで,人材の確保・育成が最も
深刻な問題点であることが示されている[6].
図 2.2 企業の抱える課題
中小企業庁・中小企業総合事業団「中小企業景況調査」(平成 13 年 3 月調査)
以上のことから,製造産業発展のためには,人材育成,が緊急の課題であるといえる.
そして,この製造業発展のための人材育成を担う工業教育の拡充が必要となっている.
5
2.2
工業教育機関における工業高校の位置づけ
科学技術の高度化,高学歴化が進む中,職業教育は高校後の段階で実施すべきである
という声が聞かれる.また近年工業高校を取り巻く環境の変化(設備の陳腐化,生徒の
質の低下)から工業高校の教育力低下の指摘がなされるようになってきている[7].
しかし,表 2.2 工業教育機関卒業者数に示されるように,産業社会に人材を供給する
工業教育機関の中で工業高校の占める人数の割合は最も高いものとなっている[8].
表 2.2 工業教育機関卒業者数
教育機関名
卒業者の概数
工業高等専門学校
8,000
工業短期大学
5,000
職業能力開発短期大学校
10,000
工業系専門学校
70,000
工業高等学校
110,000
文部科学省統計要覧
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/
表 2.2 に示していないが大学工学部卒業者の概数は工業高校卒業者数とほぼ同数であ
る.今後この大学卒業者が製造業に占める割合は増加していくであろうが,工業高校の
卒業者の内,4 年制大学への進学者の大部分が,この大学工学部に進学すると考えられ
ることをあわせると,工業教育に占める工業高校の地位は最も重要であるといえる.
一方,この工業高校から年間 11 万人に上る人材を供給するにもかかわらず、企業経
営者から後継者不足の指摘がなされるのはなぜであろうか.
そこで,以下に,工業高校および工業高校での工業教育を以下に拡充・発展させるか
を考えていく.
6
2.3
工業高校の教育目標の変遷
現在の教育を考える上でその歴史を調べることは不可欠である.以下にその概略を
述べる.
古くから師弟制度によってなされてきた技術教育は,明治になり政府の政策から又,
民間からの要請から学校教育として行われるようになった.これが,現在の工業高校の
母体と考えられる.工業学校は,明治32年 農・商業学校とともに実業学校として規
定され,その設立の理念は,新しい技術の発展,外国技術導入による新しい労働力市場
に要員を供給するためであった.また,その教育の質は,指導的技術者養成のための比
較的程度の高いものであった.
明治末期から大正にかけ産業が軽工業中心から重工業中心に移行する中,実業学校を
含む中等教育機関への進学率増加に伴い,大正9年実業学校より低程度の従弟学校と工
業学校の統合一本化がなされ,工業学校はその性格を専門技術教育機関から実技重視の
低程度の職工を養成する機関へと変えていった.昭和期の実業高校は日中戦争による軍
需産業拡大のための人材供給など国家統制の影響を強く受けている.
昭和22年の学校教育法に基づき同23年高等学校が発足した.この中,中等教育の
一環として普通教育とともに職業教育も同時に行う工業高校学科が設置された.その母
体は明治32年の実業学校令により設置された工業高校と考えられるが,同じ職業教育
を目的とする両者の大きな違いは前者が複線型教育の中で中等普通教育とは区別され
ていたのに対し,後者は単線型の中等教育の一環として普通教育も同時に行うという所
にある[9].
高校発足から現在に到るその変化の流れを高等学校学習指導要領の改訂から大きく
四期に分けることができる.昭和26年版での教育目標は生徒の必要により定めるとあ
り,また制度としては,希望者全入各学科を持つ総合校で小学区制をとっていた.これ
に対し昭和31年版では教育目標は社会の必要により定めるという内容に変わり,入試
を導入した.選択科目の手直しが行われた昭和40年前後に高校多様化の政策が行われ
必修科目増加に伴い生徒の高校入学後の科目選択が制限されるようになった.40年末
から現在に至り多様化の再検討が行われ,また必修科目の減,学習内容減などが行われ
た[10].
更に,工業高校の教育内容の変遷を学習指導要領改訂による工業の専門教科履修単位
数減少の様子は,次のようであった.1970年代における工業学科の履修する工業教
科目は,一般的には,49∼51単位程度であったものが1978年改訂では,6∼8
単位減となった.1989年の改訂では「工業基礎」,
「工業数理」,
「情報技術基礎」,
「課
題研究」を実質上必修とし,更に専門教科目の平均単位数は36∼37単位にまで削減
された.たとえば,1991年度全国の電子機械か46校中141校の工業の専門科目
平均は42.69単位であったものが1995年度での電子機械科183校中173校
の平均専門科目数は37.67単位と5.02単位も削減されている.これにより,各
学科の専門性が希薄になってきた[11].
以上をまとめると,産業発展のためには製造業の活性化が必要でそのためには,これ
からの製造業を担う人材の育成が必要であること,そして産業界に対し人材を供給源す
る工業教育機関として最も重要な地位を占めると考えられる工業高校の教育力の向上
を目指す必要があるということである.
7
2.4
工業高校の抱える課題
2.4.1
縮小されている工業高校
全国工業高等学校長協会「全国工業高等学校要覧」によれば,1991年度から19
96年度にかけて全日制工業高校の学級数は809学級も削減された.工業高校のこう
した縮小は,少子化による高校生全体の減少によるものである.しかし,表 2.3 に示さ
れるように全高校生に占める工業高校生の割合は,1970年の 13.4%をピークにこれ
まで大きく減少している[11].
表 2.3
1955年
工業科
生徒数 人
全高校生に
占める
工業高校生の
割合%
工業教育の復権
2.4.2
全高校生に占める工業高校生の割合
1960年
1970年
1980年
237,328
323,520
565,508
474,515
486,132
414,946
9.2
10.0
13.4
10.3
8.7
8.8
技術教育研究会
1990年
1995年
P-4 表1より引用
工業高校卒業生の動向の推移
工業高校卒業生が「専門的技術的職業」につく割合を文部科学省の「学校基本調査」
から表 2.4 に工業高校卒業生が「専門的技術的職業」につく割合を示す.
表 2.4
工業高校卒業生が「専門的技術的職業」につく割合
1955年
専門的
技術的職業%
工業教育の復権
25.3
技術教育研究会
1960年
1970年
22.9
4.5
1980年
5.3
1990年
10.4
1995年
9.1
P-4 表1より引用
これによれば,工業高校卒業生が「専門的技術的職業」につく割合は,1950年代2
0%以上占めていたものが1960年代急降下して1968年に至り 3.4%となった.
し
かし1980年後半からは,増加に転じ,1990年代になり 10%程度となり現在に至
っている[11].
8
2.4.3
わが国製造業の基盤を支える機械加工技術
これまでわが国の経済を牽引してきた輸出の主要品目は製造業によるものであり,わ
が国製造業の GDP にしめる割合は,2000年において 21.6%である.中でも2001
年における機械金属製品の輸出額は 38 兆円に上り,全体の 78.4%を占めている[2].
専門高校で工業に関する学科は,1997 年度において全国で2,739の学科がある.
そのうちの大まかな専門領域の割合を 表 2.5 工業高校における専門領域の割合 に示
す[7].
表 2.5 工業高校における専門領域の割合
機械系
29%
電気系
25%
建築系
19%
化学系
8%
デザイン系 その他
4%
15%
中小製造業の製造技術者の養成策に関する検討調査報告書
財団法人 広域関東圏産業生活センター
これに示されるように,産業に占める機械関係の割合を反映して工業高校において重要
な地位を占めるうちのひとつである,機械系の教育に視点をあわせる.製造業を活性化
し,技術の高度化を可能にする製造技術者の育成を工業高校の教育の活性化の面から,
研究を進めるにあたり,ものづくりの基盤を担う機械要素部品の加工にかかわる技術を
教育する機械系学科に焦点を当てた.
工業高校機械系学科で今後育成すべき国際競争力を持った製造技術者像について,機
械加工の面から考える.近年の NC 工作機械の現場への導入が,高精度・高能率生産に
革命的な影響を及ぼした.以後,マシニングセンタや CAD/CAM,オープン制御装置な
どの新技術が登場し,製造業を基盤から支える原動力になってきている.こうした技術
が普及するにつれて,製造技術者には,「新しい技術にすぐ対応でき,最先端の機器を
操作することができ,加工のみならず設計も行える能力」が求められるようになってき
た.更に「高精度加工のための新技術の提案が行える能力」など創造的,自発的なより
高度な技能・技術が要求されることになってきた.生産工程への IT の導入に伴うデジ
タル系の技術に関する知識や,情報機器の製造に必要な微細加工に代表される新しい加
工法の知識が新しい技能として要求されてきている[12].
今後工業教育には,わが国産業の基盤を支える製造技術者として,汎用機器による高
いレベルの基本技能の上に新しい高度な生産技術や生産工程への IT の導入に伴う高度
情報技術に関する知識を身につけた人材の育成が求められている.一方、近年の日本的
労使関係再編により、年功序列や終身雇用制が見直され、人材の流動化進行してきてい
る .それゆえ,これまでにも増して,工業教育を誰もが受けられる環境を維持するこ
とが,重要な課題となっている.
9
2.4.4
少子化の影響による高知県立工業高校の機械系学科縮小の可能性
一方,近年少子化が進む中,筆者の勤務する高知県においても中学卒業者数は年々減
少してくるようになった.下図 2.3 に高知県における中学卒業者の推移を示す.平成 5
年の時点で向こう 10 年間に中学卒業者数は,11,096人から平成 15 年には 8,360
人と 3,000 人程度もの減少が予測された[13].
中学卒業者数 (人)
14000
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
測
)
年
(予
15
H
20
年
H
H
10
年
5年
H
H
1年
中学卒業者数 (人)
図 2.3 高知県における中学卒業者の推移
(出典)高知県教育委員会
とさのきょういく
2003 年 12 月
平成 5 年の時点における高知県の工業高校の中で,機械に関する学科の設置状況は次
の 表 2.6 平成 5 年 高知県立工業高校における機械系学科のクラス数 に示される
ようであった.
表 2.6
平成 5 年 高知県立工業高校における
機械系学科のクラス数
学校名
宿毛工業高校
同
須崎工業高校
同
高知工業高校
高知東工業高校
同
合計
学科名
機械科
自動車科
機械科
造船科
機械科
機械科
電子機械科
クラス数
1
1
1
1
2
2
1
9
このような中学卒業者数の減少を受け,高知県立工業高校の機械系学科のクラス数が
削減されていく懸念が生じてきた.この中でも同一学科である機械科 2 クラスを設置す
る高知工業高校と高知東工業高校は比較的近い距離に存在しており,クラス数の削減は
避けられない状況となった.
現状では,長い伝統を誇り高知県の工業高校の中心的存在とされている高知工業高校
より,私の勤務する高知東工業高校のクラス数削減が現実の可能性として高くなってき
た.しかし平成 5 年の時点での学校規模 1 学年 5 クラス,全校生徒定員 600 名の中規模
学校の形態から規模が縮小された場合,学校の活性化が損なわれ,県下で最も工業生産
において比較優位を持つとされる地域で工業教育が衰退していくのではないかという
ことが懸念された.
そこで,筆者の勤務する高知県立高知東工業高等学校の取り組みを以下に述べていく.
10
第 3 章 工業教育発展のための一方策
―高知県立高知東工業高等学校における学科改変について−
3.1
学科再編の検討の経緯
筆者の勤務する高知県立高知東工業高等学校は昭和37年の創立以来「日本国憲法お
よび教育基本法に基づき平和を希求し勤労と責任を重んじたくましい実践力と創造性
に富み健康で品格ある工業技術者を育成する」という教育目標をかかげ教育活動に励み,
これまで7000名余りの有能な人材を社会に送り出している.
しかし,エレクトロニクスを中心とした科学技術の急速な進展により,産業界は大き
く変化している.そのため,従来からある機械,電気といった工業高校の学科では十分
対応しきれない分野が出てきている.一方,工業高校では,少子化による生徒数減少,
また入学してくる生徒について,多様化する価値観,能力,適性に対応をはかるため設
置学科の再編が必要となってきた.
また,県政の大きな課題でもある南国高知地方拠点都市地域構想に対応して21世紀
の高知県の産業を支える技術者の育成の課題や工科大学設置の動向をも念頭に入れな
がら,本校としても何らかの対応を図らなければならない時期にさしかかり,平成5年
度より学校あげて本格的な取り組みの段階に入った.
県内の産業界においても,技術の高度化,情報化,複合化など多様化している現実を
ふまえながら,平成9年度より機械科2クラスの1クラスを「機械生産システム科」と
して発足できるように学科の再編を検討し,平成6年5月20日(金)学科再編に関す
る要望書を提出した.そして,平成 9 年 4 月高知県立高知東工業高校において機械生産
システム科が設置された.
<資料1>
に高知県立高知東工業高校学科再編のための検討経緯を示す.
11
3.2
機械生産システム科の教育目標
機械系の科目を中心にすえ,電子・電気,情報系の多様な技術を学習し,FMS(無
人化工場モデル)実習などをとおして,機械生産システムに関する技術[14]を修得する
とともに生産工場の経営,管理などについても学習し,産業技術の複合化に対応でき
る総合的な技術を修得した実践技術者の育成を目指す.
学科改変前の機械科のカリキュラムと改変後の機械生産システム科のカリキュラ
ムを表 3.1 および表 3.2 に示す.
表 3.1 機械科カリキュラム
1学年 単位 2学年 単位 3学年 単位
表 3.2 機械生産システム科カリキュラム
1学年 単位
2学年 単位 3学年 単位
国語Ⅰ
国語Ⅰ
国語Ⅰ
4
現代社会
2
地理A
4
数学Ⅰ
4
2
美術Ⅰ
2
保健
2
英語Ⅰ
2
生活一般
工業基礎
機械実習
工業数理
2
工業基礎
3
機械工作
3
2
製図
電気基礎
2
2
ホーム
ルーム
ホーム
ルーム
12
生産システム
Ⅱ
4
工業管理技術
4
2
電気機器
3
3
生産システ
ムⅠ
機械工作
4
機械設計
3
情報技術基礎 電気基礎
3
ホーム
ホーム
ルーム
ルーム
原動機
ホーム
ルーム
機械製図
2
2
2
実習
工業数理
原動機
3
2
3
機械設計
2
課題研究
生活一般
2
機械工作
機械製図
2
情報技術基
機械設計
礎
2
生活一般
機械製図
2
2
2
オーラルコ
ミュニケーショ
ン
2
2
実習
2
3
英語Ⅰ
英語Ⅰ
2
2
2
3
4
2
美術Ⅰ
課題研究
体育
保健
2
機械製図
2
3
体育
4
2
体育
2
機械実習
生活一般
2
化学ⅠA
2
2
英語Ⅰ
物理A
4
2
2
2
2
オーラルコ
ミュニケーシ
ョン
体育
地理A
数学Ⅰ
体育
世界史A
2
4
物理ⅠB
2
2
現代社会
3
4
国語Ⅰ
2
世界史A
物理ⅠB
体育
2
2
数学Ⅱ
化学ⅠA
製図
国語表現
3
原動機
3
2
環境工学
3
2
ホーム
ルーム
3.3
機械生産システム科のカリキュラムの特徴
その他の科目として,生産システムに関する知識と技術を習得させ,実際に活用する
能力と態度を育てることを目標として,生産システムⅠ(2年)・生産システムⅡ(3年)
を設置する.
(1) 生産システムⅠ
NC工作機械やFMS,CAD/CAMなど,生産システムを構成する要素の理論
と実際をコンピュータのソフト,ハードを含めて学習する.
① 計測制御
② CAD理論と演習
③ CAM理論と演習
④ NC工作機械理論と演習
(2) 生産システムⅡ
基本的な機械設備及びコンピュータ制御による自動化設備の原理と構成,
コンピュータ,情報通信技術を活用した生産システム技術に関する原理と方法に
ついて理解させる.
① 工程管理システム
② 生産管理システム
③ CIM(コンピュータ総括生産)
これに加えて,機械生産システム科では,「工業管理技術」において,生産工場の経
営,管理,特許などの知的資産などについて学習し,更には,「環境工学」において,
自然環境との調和にいたる工業生産に必要な事柄をトータルに学習する.
下図 3.1 に機械生産システム科のカリキュラムのイメージを示す.
機械生産システム科
環境
生産管理・原価管理
マーケティング
設計
加工,組立,検査
従来のものづくり
図 3.1 機械生産システム科カリキュラムノイメージ
13
販売
FMS(Flexible
3.4
Manufacturing System)導入について
わが国の産業構造は,規格品の大量生産から多品種少量生産へと変化してきている.
こ の 多 品 種 少 量 生 産 の 自 動 化 を 実 現 す る 生 産 シ ス テ ム が FMS ( Flexible
Manufacturing System)である.新たに設置する機械生産システム科での教育に使用
するために以下のとおり教育用 FMS を導入した.
3.4.1
教育用 FMS 構成機器
教育用 FMS 導入にあたっては,従来の個別生産から発展し自動生産に進歩する過程
をも学習することのできるように考慮した.この教育用FMSの構成機器を表 3.3 に,
また,システムの構成を図 3.2FMS構成図に示す.
表 3.3FMS 構成機器
番号
1
名 称
FMS 制御システム
2
3
統括制御盤
自動倉庫
4
5
6
ロボット
マシニングセンタ
組み立てステーション
7
生徒用
パーソナルコンピュータ
無人搬送車(AGV)
8
1
摘 要
・ FNS 制御パーソナルコンピュータ
OS Windows95
・ ソフトウエア
インテル−ション社製 FIX-MMI
PLC GE Fanuc 製 Series90−30
ハイテク精工 棚数20
パレットサイズ 200×200
Fanuc 社製 LR-Mate 100i
Fanuc 社製 Robodrill α−T10
パレット給排出コンベア
無人搬送車との通信 I/O
OS Windows95
神鋼電機製
FMS 制御システム
2
3
自動倉庫
SLC-50β
4
ロボット
5 マシニングセンタ
光 I/O
8 無人搬送車
(AGV)
図 3.2
FMS 構成図
14
1
1
1
1
1
9
1
7 生徒用
パーソナルコンピュータ
統括制御盤
6 組み立て
ステーション
数量
1
3.4.2
FMS 動作の概要
本 FMS は,連動加工モードにおいて,は次の図 3.3 FMS 動作フローに示すように
動作する.
1 FMS 制御システム
加工スケジュール入力
2 統括制御盤
スタート指令
3 自動倉庫
材料パレット搬出
8 AGV
ロボットまで
パレットを搬送
4 ロボット
マ シ ニ ン グセ ン タ に
材料をローディング
空パレット
5 マシニングセンタ
加工
8 AGV
自動倉庫まで
空パレットを搬送
3 自動倉庫
空パレット収納
完成品パレット搬出
4 ロボット
マシニングセンタから材料
をアン・ローディング
完成品
8 AGV
ロボットまで
完成品パレットを搬送
8 AGV
自動倉庫まで
完成品パレットを搬送
3 自動倉庫
完成品パレット収納
図 3.3 FMS 動作フロー
15
3.4.3
FMS により期待される教育効果
本 FMS により次のような教育効果期が期待される.
① FMS を構成する各機器は単独運転が可能となる仕様にしている.これにより,
ロボット,自動倉庫,自動搬送車(AGV),NC 工作機械など FA(ファクトリオー
トメーション)の代表的構成機器の取り扱いを習得できる.
② マシニングセンタとロボットを組み合わせるという様に,FMS を構成する各機
器を通信機能により接続しセル化することが可能である.これにより,FA の最小
単位である FMC(Flexible Manufacturing Cell)を構築することができる.
③ FMS 制御システムにより,在庫管理,生産管理などの工場管理の学習が行える.
④ ワークの変更による付属品の調整や構成要素の調整・設定作業を通して FMS の
運用方法を学習できる.
平成 9 年の時点では高知県はもとより四国四県に所在する工業高校で FMS を設備し
ている工業高校は他になく、県内外の企業や大学関係者から高い評価を得た.
3.4.4
教育内容充実のために
これからの工業教育には,生徒個人の能力,適正を伸ばし興味・関心・意欲を引き出
し,生涯を通じて社会の変化に対応できる創造性のある柔軟な思考力と,たくましい実
践力を持った生産技術者を育成することが求められている.このような生産技術者を育
成するために,この FMS は,最適の教育システムの一つであると考える.
機械生産システム科では,このFMSに加えて,コンピュータによって制御されるレ
ーザ加工機や放電加工機,マシニングセンタなど最新の加工機械をはじめ,3 次元
CAD/CAM などの先端的な生産技術の指導を目指している.そこで,平成 9 年の機械生
産システム科設立当時において表 3.4 に示される,東工業高校および機械生産システム
科の教育力向上のため,最新の産業設備の導入を将来に向け計画していた.
表 3.4 東工業高校および機械生産システム科の
教育力向上のための最新の産業設備の導入を計画
番号
設
備
名
台数
1
CNC旋盤
2
2
マシニングセンター
2
3
3次元測定器
1
4
射出成形機
1
5
形彫放電加工機
1
6
ワイヤ放電加工機
1
7
レーザー加工機
1
8
CAD/CAM
10
9
パソコンシステム
9
16
第 4 章 ネットワークに接続された最新の産業設備の導入について
―東工業ITFS(IT Factory System)−
4.1 ネットワークに接続された最新の産業設備
―東工業ITFS(IT Factory System)−の導入の背景
昭和 30 年代以前の工業高校は,地元企業に即戦力技術者を送り出す地元企業の中の
テクニカルセンターとしての役割を担っていた.しかし,近年では,工業高校の「即戦
力工業技術者」の輩出という教育的役割は,高等教育機関や工業技術センターなどの設
置,上級学校への進学率の増加により相対的に低下してきている傾向が見られる.機械
生産システム科第 1 期生が卒業した平成 12年において,グローバル化などの経済環境
の大きな変化を工業教育現場においても強く感じられるようになってきた.
これは,下図 4.1 高知県内全工業高校の就職内定率の推移に示されるような雇用情勢
の悪化となって現れてきている[15].
高知県内全工業高校の就職内定率
100
%
95
90
内定率
85
80
75
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
平成
図 4.1 高知県内全工業高校の就職内定率の推移
また,下図 4.2 に高知県内の全高等学校に対する求人事業所の推移を示す.
高知県内の全高等学校に対する求人事業所数の推移
事業所数
3000
2500
2000
求人事業所数
1500
1000
500
0
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14
平成
図 4.2 高知県内の全高等学校に対する求人事業所の推移
17
さらに,図 4.3 は,筆者の勤務する高知東工業高校に対する求人事業所数の推移を示
したものである.現在の求人事業所数は,平成6年を100としてみた場合およそ
1/3であり,危機的水準である[16].
高知東工業高校に対する求人事業所数
(平成6年を100とした)
120
100
80
60
40
20
成
14
平
成
13
平
成
12
平
成
11
平
成
10
平
成
9
平
成
8
平
成
7
平
平
成
6
0
図 4.3 高知東工業高校に対する求人事業所数の推移
この状況を打開すべく,平成 12 年,高知東工業高校では,高知県教育委員会の指導
のもと,以下を目的として 3 章で述べた,表 3.4 に示す産業設備の導入を具体化し平成
13 年度完成を計画した.
①地域や産業界とのパートナーシップの確立を目指し,技術革新に対応した産業設備
を導入し,ものづくりによる自ら学び,自ら考え,判断し,行動できる資質や能力を養
い,将来の高知県産業界やわが国の科学技術創造立国を担う人材「環境に配慮し,資源
を大切に使うことを含め創造的で行動力に満ちた実践的な技術者」の育成を図ること.
②高知工科大学や地域の製造企業との技術交流に工業高校の施設設備を活用するこ
と.
この設備導入により工業高校における工業教育にイノベーションをもたらし[17],これか
らの新しい社会に対応した,知識労働者[18]としての,生産技術者の育成を目指した.
すなわち、従来工業高校の機械系学科においては,産業のあらゆる分野に適応できるよ
うに,機械工学全般にわたる内容が教育されていることに対して,高知東工業高校機械
生産システム科における教育は最新の加工設備を導入した教育を目指すがゆえに,指導
内容の絞込みが行われているという点において破壊的であるといえる.しかしこのこと
は,従来の工業高校機械系学科の教育方法を否定するものではなく一つの工業教育方法
を提案することであり,実際当東工業高校においては,「機械科」と「機械生産システ
ム科」が共存しているのである.
18
4.2
導入する最新の産業設備の仕様決定にあたって
―東工業ITFS(IT Factory
導入設備の仕様決定にあたって
4.2.1
System)−
地元企業へのアンケート
導入設備の仕様を決定するための参考とするために,地元企業 73 社(インターンシ
ップ受け入れ先企業)に対してアンケート調査を行った結果 33 社の有効回答数を得た.
アンケート調査は,企業の設備状態と今後の工業高校教育に対する要望,意見などを①
機械・実習設備等について,②学習面(どんなことを学ばせるか),③教育制度面・そ
の他の3点を中心に自由記述をいただいた.その詳細を以下にまとめる.
(平成 12 年 11
月実施)
(1)
設備状態について
図 4.4 地元企業の機械設備率 より本校が導入を計画した機械設備(7 機種)のうち NC
旋盤とマシニングセンタ及び CAD/CAM を除く機器の設備率が比較的低いことが分かった.
しかし,レーザー加工機やワイヤー放電加工機に関して,現在は設備していないが今後
導入を検討するという企業が何社かあるなど,潜在的な教育・訓練に対する需要のある
ことが感じられた.
各企業の機械設備率
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
19
C A D/ C A M
図 4.4 地元企業の機械設備率
レー ザ ー 加 工 機
ワ イ ヤー放 電 加 工 機
形彫放電加工機
射出成形機
3次 元 測 定 機
マ シ ニ ング セ ンタ
C N C旋 盤
0.0%
図 4.5 より,
「コンピュータネットワークを導入しているか」という質問に対しては,
導入を「している」,
「検討中」を合わせると 81%の企業でコンピュータネットワークの
必要性があることが分かる.その理由としては,「CAD/CAM 等の製造支援システム
(39.4%)」,
「インターネットによる受注発注システム(39.4%)」を検討している事に挙げ
られる.つまり,ネットワークに対しての知識・技術を取り入れることが必要であるこ
とがわかる.
コンピュータネットワークを導入しているか
導入を全く考
えていない
3%
導入をあまり
考えていない
16%
導入を検討
中
16%
導入している
65%
図 4.5
地元企業の実態<PC ネットワーク>
図 4.6 より,
「本校の設備を利用したいか」という質問に対しては,
「大変利用したい」
,
「利用を考えてもよい」を合わせると 57%の企業で本校の設備を利用することに積極的
であることが伺える.その理由としては,「製造技術の研究開発(33.3%)」,「社員研修等
(18.2%)」である.
本校の設備を利用したいか
利用しようと
は思わない
45%
全く利用した
くない
大変利用し
0%
たい
10%
利用を考えて
もよい
45%
図 4.6
本校に導入する機械設備を利用したいか
この結果から,工業教育の社会的ニーズの変容が伺える.そこで,自由記述より,企
業の工業教育に対するニーズを取り上げ,以下に示す.
20
(2)
①
工業教育に対する企業のニーズ
機械・実習設備等について
「最新実習機器の導入」3社,「CAD/CAM,FMS,測定機器の導入」,「多品種少量
生産から変種変量生産への移行に対応した実習設備の導入」という時代の変化に対応し
たより実践的な実習機器の導入を期待した意見が多かった.その中には,「本校を利用
して自社での機械導入を検討する参考にしたい」,
「利用可能であれば,社員の研修機関
として本校を利用したい」などという積極的な意見もあった.反面,「基礎的な実習機
器を使えるようにするだけで良い」,
「古い機械のメンテナンスができるようにして欲し
い」という意見も若干あった.
②
学習面(どんなことを学ばせるか)
「初歩的な技術よりも新しい設備に触れさせ,実践的な実習に取り組んで欲しい」
,
「自
動生産,工程設計,工程管理などの学習」
,
「環境,情報教育の充実」という現場で即戦
力となる力を身につけて欲しいという意見があった.また,「ものづくりを通した創造
力や忍耐力などの人間形成や問題解決能力の育成」,
「資格取得のための授業の実施」な
どの意見もあった.
③
教育制度面・その他
社会人として常識人として,あいさつや言葉遣いなどの躾教育を行えるようにして欲
しいという意見が最も多かった.また,インターシップをより強化し,企業として工業
技術者の育成に力を貸したいという意見もあった.
(3)
まとめ
これらのアンケート結果から分かるように,本校の新たに導入する産業設備に対して
地元企業の期待度は比較的高かったことが分かった.この結果から,本校の新たに導入
する産業設備が地元企業へどのように生かされるか,3点挙げることができる.1つに
は,新しい実習機器や実習施設を地域企業は,社員研修や製品開発,共同研究などに利
用可能である.このことは,地元の学校という意識を地域企業や工業高校生が持つこと
ができ,広い意味での地域連携が可能となる.2つには,実際の現場で使うような先端
機器を実習で学習することで身につけた生徒は,企業としては即戦力となり,人材育成
のための教育・訓練の負担が軽減される効果があると考えられる.3つには,各実習機
器を扱えることだけではなく,システム化された生産,ものづくりを考える上で自動生
産,工程設計,工程管理などの学習は,企業にとってはグローバルな視野を持った技術
者を獲得できるメリットがある.
情報化白書 2002[19]に示されているように,近年の産業は IT 化され,ユビキタスネッ
トワーク社会[20]に入っており,生産現場においては,工作機械がネットワーク化,シス
テム化され統合的に運用されているケースが今後は多くなることが想定される.産業教
育に対するニーズを考え,従来の個々の工作機械等に対する技術習得のみならず,生産
システム全体を捉えた運用技術をも学習することが必要となっている.そこで,ITFS は,
それぞれの産業設備をネットワークで接続し統合的に管理運営できるシステムを構築
し,「生産のネットワーク化・グローバル化に対応できる技術者の育成」を目指した.
21
4.2.2
目標とする実習課題とそれに適応する設備
新たに導入を計画する産業設備により,最新の加工機械及び情報技術を利用した新し
い生産方法を学習するうえで,プラスチック製品を製造する射出成形金型などは,実習
課題として最適である.多品種少量生産品である金型は付加価値が高く,機械製造産業
において最も重要な基幹要素であり,かつ最近の IT 技術の進展や最新の加工技術を有
効に活用できる分野である.また,製品の設計段階から加工の準備,金型を使った成形
技術,更に流通やリサイクルまで,その技術はモノ作り全てに関わっている.
わが国はこの金型製造で,世界の43%のシェアを持ち圧倒的な競争力を持っている.
この誇るべき金型製造の技能・技術によって,日本は,ものづくりでこれまで世界のト
ップに立ってきたといわれている[21].
この金型作り等を通して CAD/CAM による設計から最新の加工機械による加工技術,
ネットワークを用いた生産の自動化や生産管理に至る一連の新しいものづくりの概念
を身につけた知的技術者の育成を目指す.
実習課題としては自動車のボディー部品などの大きなもの,或いは,あまりに微細な
ものは製作が困難で不適当である.比較的小型で価格の安い設備により製作できる製品
が実習課題として適当である.射出成形金型では,射出体積10cm3∼20cm3程度
の製品が比較的小型で価格の安い設備により製作できるので実習課題として適当であ
る.この程度の製品を成形する射出成形機の中でネットワーク対応機能を持つ最小の製
品における金型寸法は,330×330×230∼370×370×200mm 程であ
る.従って,各設備は370×370×230mmの大きさの金型部品を余裕を持って
加工する,或いは測定できる能力が必要である.
22
4.2.3
ネットワーク対応仕様とした背景
従来,本県における教育機関への CNC 工作機械等の設置は,部分的には CAD,CAM との
連携が図られてはいたが,総じてそれぞれがスタンドアロンで使用するように導入され
てきた.しかし,今後の生産現場においては,工作機械がネットワーク化,システム化
され統合的に運用されようとしている.したがって,産業教育に対するニーズを考えた
場合,従来の個々の工作機械等に対する技術習得のみならず,生産システム全体を捉え
た運用技術をも学習することが必要となってくる.また,高知県産業教育審議会答申に
おいても,工業教育については,工業技術のエレクトロニクス化や製造技術のシステム
化など,生産現場での技術革新に応じた教育内容やマルチメディア,高度情報通信技術
等,ITの進展に対応した教育内容の充実と発展を図らねばならないとしている[22].
昨今の製造業を取り巻く環境は,
「長引く不況」や「親企業の海外進出」
,
「海外からの安
価な輸入品の増加」など非常に厳しいものとなっている.同時にわが国の産業の根幹であ
る製造業の国内生産に占める割合が低下するとともに,ものづくり基盤技術の伝承も困難
になってきている.これらの局面を打開し,製造業が発展を遂げるためには,インターネ
ットをはじめとするIT技術を戦略的に活用し,ラインの自動化から NC 工作機のコン
ピュータ化やネットワーク化など,生産活動そのものの効率を上げ生産性を向上させ,
また QCD(品質・コスト・納期)を改善するために,受注から出荷までの,ものの流れと,
情報の流れを管理するシステム構築等の取り組みが必要である.ネットワーク技術を活
用した製造企業のあり方として,インターネットを利用した「仮想工業団地」や「協同
設計製造」などの新しい生産方法が各地で試みられ成果を挙げている.
本校に隣接する高知工科大学においては,高知県内の製造企業及び高知県と協同で,
インターネットを利用した設計製造技術(web ベース CAD/CAD 装置,web ベース生産加
工技術,web ベース受注発注,生産管理システムなどを統合した web ベース分散設計製
造技術)の研究が進められている[23].
そこで,新たに導入する産業設備は,一連の製造過程にある工作機械や装置を LAN で
接続し統合的に管理運営できるシステムとした.
このネットワーク化された産業機械の実用性を検証するための実験を行いその結果
を精密工学会2000年秋季大会において発表した[24].
23
4.2.4
(1)
インターネット利用による放電加工機の遠隔制御実験
はじめに
放電加工機の変化する加工状態をモニタリングし,それをインターネット通信により
遠距離にまで伝送し,加工状態を監視するとともに,必要に応じて直接機械を操作する
ことができるようにしたシステムを応用し,バーチャル加工空間を実現するためには解
決すべきいくつかの課題があり,その一つが,データ転送速度の短縮である.このデー
タ転送時間についての調査を行った.
(2)
研究装置の概要
図 4.7 に示すように,本装置は,パソコンで直接ワイヤ EDM を操作することができる
機能(DNC),および加工電圧,加工速度をモニタすることができる機能とを持った DNC/VF
モニタと,遠隔操作されるワイヤ EDM で構成されている.DNC/VF モニタとインターフェ
イス I/F1,I/F2はともに IP アドレスが設定され,ソケット通信が実行される.DNC/VF
モニタ側は,学内 LAN と専用回線を経由し,ワイヤ EDM 側からは,ISDN および I/F1,
I/F2を経由してインターネットにそれぞれ接続されている.一方最短時間でデータ伝
送を行うために,研究室 LAN で接続する経路もあり,この二つの経路は切り替えられる.
また,ワイヤ EDM からは,加工中の加工電圧および加工速度のデータが送信され,VF モ
ニタで時々刻々加工状態がモニタリングできるようになっている.
6Mbps
回線
Router
Provider
Campus
LAN
ISDN
Internet
access
point
研究室LAN
Hub
IP Number 1
Telephone
Cable
CC(1)
CC:
Conversion
Computer
[Remote site]
IP Number 2
CC(2)
Wire
EDM
[Machine
Site]
図 4.7 インターネット利用による放電加工機の遠隔制御実験装置の概要
24
(3)
①
調査の方法
インターネット経由
DNC/VF モニタから学内 LAN を経由し,一旦外部のインターネットに出てワイヤ EDM
「自動/手動切り替え」を操作する.
(a) 実際に機械が反応するまでの時間を測定した.
(b) DNC/VF モニタに完了信号が帰ってくるまでの時間を測定した.
②
LAN
インターネットを経由せず研究室 LAN でワイヤ EDM を直接操作する信号を送り,
上記(1)インターネット経由と同様に測定した.
(4)
データ
調査は,インターネット経由,については朝,昼,夕方,夜と1日4回行い,時間帯
ごと30のデータを採取し,その平均値を表 4.1 にまとめた.研究室 LAN でのデータ転
送時間については時間帯にかかわらずほぼ一定であるので,一つのデータとして,その
平均値を表に記入した.
表 4.1
自動/手動切り替え操作による応答時間
時間帯
a) 機 械 が 反 09:00~
応するまでの
14:00~
時間
18:00~
4.39
(
(5)
(1) ネ ッ ト 経 (2)LAN
(秒)
由(秒)
2.81
(1)―(2)
(秒)
1.58
4.32
1.51
4.42
1.61
23:00~
4.14
1.33
(b) 完 了 信 号 09:00~
が帰るまでの 14:00~
時間
18:00~
7.57
23:00~
5.84
1.73
9.07
3.23
7.66
1.82
7.63
1.79
調査結果
インターネット経由のデータから時間帯により通信速度が変化することがわかる.し
かし,遠隔操作に対するタイムラグは,おおむね 1 秒から 2 秒であり,実習装置として
は十分実用的であることがわかった.
25
4.2.5 ネットワーク対応仕様の詳細
新たに導入する産業機械群の内,マシニングセンタおよびNC旋盤はネットワークに
対応した以下の機能を持つ仕様となるように決定した.他の機械設備もこれに準じた機
能を持つよう仕様を決定した.
(1)稼動状況の表示
接続された全ての機械の状態をグラフィカルにリアルタイム表示する.また履歴の
表示もおこなえること.表示する状態とは,次のとおり
① 自動運転モードで自動運転中/停止中
② 手動運転モード
③ アラーム
(2)自動運転中の加工状況の表示
稼動状況の表示画面から,NC旋盤とマシニングセンタにおいては,パソコンシステム
から個々の機械を選択し,以下の項目が表示できること.
① 運転モード・自動運転
② 運転モード・編集
③ 運転準備完了
④ ドア開閉
⑤ 自動運転中には次の内容を表示すること
・サイクルスタート中
・フィードホールド中
・切削送り速度
・主軸回転数
・現在選択されている工具番号
・選択されている座標系番号
・選択されているプログラム番号
・実行中のプログラム内容
・絶対座標値/機械座標値
⑥ アラーム表示
(3)データの入出力
① NCデータ
② 工具データ
③ パラメータ
(4)自動運転操作
① プログラム番号選択
② サイクルスタート
③ フィードホールド
④ 主軸オーバーライド
⑤ 送りオーバーライド
⑥ リセット
(5)本機側で遠隔操作 可/不可 の選択ができること
(6)遠隔操作中であっても本機側で自動運転停止操作及び非常停止操作ができること
(7)ネットワークカメラによって機械本体及び周辺が監視できること
26
CAD/CAM 装置(システム) 導 入 について
4.3
平成13年度に地域や産業界とのパートナーシップの確立を目指し,新しい技術革新
に対応した各種産業設備の導入が決まり,その設備の中の中核を担うシステムとして,
三次元CAD/CAMシステムを位置づけた.将来を見通した三次元CAD/CAMシ
ステム導入のための仕様決定の経緯について述べる.
4.3.1
はじめに
現在の工業製品のほとんどは,何らかの形でCAD/CAMシステムを用いての設
計・開発・生産によるものが多い.従って,CAD/CAMシステムは高い付加価値を
持つ製品を設計・生産するための合理化・省力化システムであり,航空機宇宙産業,自
動車,一般機械,車両,造船,電気・電子,建築,土木などあらゆる分野で利用されて
いる.また,最近のシステムは,単に平面の図面作図を省力化や各種NC工作機械に対
応した数値制御データ作成にとどまることなく,CAE/CATが統合してCIM(コ
ンピュータによる統合生産)の中核として発展充実していくと考えられる.そして,こ
の分野に携わる技術者の育成が深刻な問題となっている.
高知東工業高校では,平成13年度に地域や産業界とのパートナーシップの確立を目
指し,新しい技術革新に対応した各種産業設備の導入が決まり,その設備の中の中核を
担うシステムとして将来を見通した三次元CAD/CAMシステムの位置づけがなさ
れている.
4.3.2
CAD/CAMシステムの現状
(1) 利用状況
本校には,機械科,機械生産システム科,電子科,電子機械科,理工学科の5つの科
がありそれぞれ工業技術の習得に力を入れているところである.CADの利用としては,
各科2,3年次の製図の時間で 2 次元 CAD 取り入れているところである.
(2)
新しい三次元CAD/CAMシステム導入後の利用計画
本校では,先に示したように本年度に地域や産業界とのパートナーシップの確立を目
指し,新しい技術革新に対応した各種産業設備の導入が決まり,その設備の中の中核を
担うシステムとして将来を見通した三次元CAD/CAMシステムの位置づけがなさ
れている.
特に機械生産システム科においては,1 年次の工業基礎実習においてNC工作機械の
基礎を学習し,2年次のNC工作機械実習の中ではもちろん,新たに導入される形彫放
電加工機,ワイヤー放電加工機の学習を取り入れ,3年次には,今までに学習した内容
を基に,金型を製作し,射出成型機によりプラスチック製品を製作する方針が示されて
いる.
この流れの中で,CAD/CAMシステムは,2年次で新たに三次元CADを教科「生
産システムⅠ」で取り入れ,3年次では教科「生産システムⅡ」
,
「製図」において,金
型作成のために必要な各NC工作機械の加工データを作成,プラスチック製品の射出成
型金型を製作するという一連の作業を学習する計画である.
4.3.3 本校が望む三次元CAD/CAM
27
(1) 本校の三次元CAD/CAM教育の位置づけ
機械生産システム科においては,基本的機械加工技術を身に付け,高度化する生産シ
ステム・生産様式の変革に対応できる実践技術者の育成を目標とし,設計・製図では製
品を加工するのに必要な図面作成の基礎を学習させる.さらに,製図,生産システムⅠ,
ⅡにおいてCAD演習及びCAD/CAM演習を行うことにより,生産システム及び加
工プロセスを学び創造力を養う.
さらに,本校の他の学科においてもそれぞれの専門分野において必要とされるCAD
学習を取り入れものづくりの要としての三次元CAD/CAMシステムの有効利用を
はかる.
(2)
地域のニーズ
全国的FA化の進展は,高知県下(四国地域)においても同様で,製造業における設
計・生産分野での情報化が一段と進行している.CAD/CAM/CAE/CAT,N
C工作機械及びロボットなどが導入され,自動化及び省力化が図られている.
高知県においては,中小企業が多く,CAD/CAM/CAE/CATに対する関心
は高く,製品の高付加価値化,納期の短期化,省力化及び省人化への有効な手段として
高く評価され,既に多くの企業において何らかの形で導入されている.また,未導入の
企業についても,導入に向け積極的に検討されている.
しかし,中小企業では,人材育成や新しい技術の習得に対しゆとりがなく,社内教育
を推進できる企業が少ないのが現状である.
こうした現状に対して本校では,新しく導入される産業設備を利用した高度な技術習
得のための教育・訓練の提供といった地域企業への支援業務を近隣の大学や職業訓練学
校とタイアップし拡大することも考慮しなければならない.
4.3.4
三次元CAD/CAMシステムの仕様決定の基本方針
産業界では,製品納期の短縮化・高付加価値化に伴う高度情報化がIT革命とあいま
って一段と進展している.最近の機械工業における設計分野では,コンピュータによる
応力解析や熱伝導解析・意匠設計やシミュレーションなどのCAE/CATシステムに
よる製品開発の省力化・信頼性の向上が進んでいる.
また,生産分野では数値制御加工機による生産から,コンピュータを駆使し設計情報
を直接加工情報に変換して生産するCAD/CAMを中心とした生産システムへ急速
に移行している.一方,こうした状況に対応できる実践技術者が不足しており,産業界
では生産技術の高度情報化に対応のできる実践技術者の育成,在職者の高度な能力開発
が叫ばれている.
本校の望む三次元CAD/CAMシステムの導入にあたっては,こうした産業界の現
状に即した実戦的なシステムでなければならない.土木・建築系の学科がない本校とし
ては,ものづくりの基礎である機械系三次元CAD/CAMを整備基本方針とし,新し
く導入される産業設備であるNC旋盤,MC工作機,レーザ加工機,型彫放電加工機,
ワイヤー放電加工機,三次元測定器,射出成型機を駆使して設計から製造にいたるFA
化の中核的なシステムとして設計,解析,加工データの作成,シミュレーション及び製
品形状の自動測定や評価等の作業において,実務的に充分な機能・能力を有する必要が
ある.
28
近年,日本の多くの製造業は製品開発のリードタイムの短縮と開発コストの低減のた
め,生産システムの大幅な見直しを行っている.
その中心的なコンセプトは,製品設計から製造までの三次元CAD/CAMデータに
よる有機的なデータ結合である.設計段階でデザインされたCAD/CAMデータによ
り,詳細設計,試作,生産準備及び金型製造への正確な情報伝達と迅速なフィードバッ
クが可能となる.
また,概念設計では,フィーチャーモデリングやパラメトリックモデリングなど,ソ
リッドモデリング技術をベースとし,複雑な形状定義が必要な場合は,サーフェスモデ
リング技術が必要となる.
設計から製造までの全行程の形状表現に対する要求を実現するためには,この両方の
機能を密接に結合されたハイブリッド・モデリング技術に対応したものでなければなら
ない.また,これらのデータ結合手法としてオープンソリッドモデリングにより,他デ
ータフォーマットと変換の共有化・効率化ができることも重要である.
一方,生産サイクルの短縮化,生産コストの削減を実現するための最適設計として,
試作品を使った各種の実験を数値解析によりシミュレーションを行い,より信頼性の高
い製品を開発することが重要になる.このためCAEシステムは操作が簡単でかつ教育
的な理論が修得でき,構造解析や機構解析などの解析システムをCAD/CAMシステ
ムと関連させた実践的なシステムとして提供できることが重要である.
一方,産業界では市場の多様化に対応するため,工業製品は複雑化し,商品開発のス
ピードアップが求められている.こういった状況に対応するため,デジタル化した測定
データから曲面を創生する技術,三次元CADデータから直接試作品を作成するラピッ
ドプロトタイピング技術なども必要である.
また,CAMシステムは,製造業が直面しているグローバルな競争に打ち勝つため,
さらなる高速かつ高能率加工を実現できるシステムが必要である.
また,新しい加工技術の確立とともに,それを自動化する技術加工設計技術が可能な
インテリジェントCAMでなければならない.
このような考えのもと本校に導入する三次元CAD/CAMシステムは,高度な教育
訓練による実践技術者の養成,産業界における生産技術の高度情報化に対応のできる実
践技術者の育成,在職者の高度な能力開発への支援セミナーなど多様な産業界のニーズ
に即応できるものでなくてはならない.そのためには教育訓練の効果を上げるための電
子教材や教育支援システムも当然必要になってくる.
また,今後6年間の教育ニーズやコンピュータ技術関連の変化を考慮したシステムで
あることも重要である.
<資料
2>に,高知東工業高校CAD/CAM装置仕様書の詳細を示す.
29
4.4
平成 13 年における東工業ITFS(IT
Factory
System)の概要
以上の検討により仕様を決定し平成 13 年度において表 4.2 東工業 ITFS 構成機器に
示すそれぞれの機種が導入された.
それぞれの NC 工作機械群や3次元 CAD/CAD で構成される産業設備は LAN で接続され
GE Fanuc 社製機械制御ソフトウエアーである Cimplicity がインストールされたサー
バにより統括制御され,LAN に接続されたクライアント・パーソナルコンピュータから
遠隔監視・操作を行うことができる.この最新の産業機械設備を東工業 IT Factory
System と称し,東工業 ITFS と略称する.
平成13年度における東工業 ITFS のLANの接続を図 4.8 平成13年度における東
工業ITFS概要図に示す.
表 4.2 東工業 ITFS 構成機器
番号
設
備
名
CNC旋盤
1
メーカー・機種名
仕
様
滝澤
主軸動力5.5kw
TC-10
工具 12 本
台数
2
最大加工径φ170
マシニングセンター ファナック
2
主軸回転数 15,000rpm
Robodrill α−T14C
テーブル移動ストローク
2
500×400
3次元測定器
3
ミツトヨ
Crysta
射出成形機
4
測定物高さ545mm
Puls
504 最大質量180kg
日精樹脂
締め付け圧力200kN
ES200-SE
タイバー間隔
1
1
260×260
形彫放電加工機
5
ワイヤ放電加工機
6
レーザー加工機
7
CAD/CAM
8
三菱電機
軸ストローク
EA-8
300×250×250
ファナック
軸ストローク
α−0B
320×220×180
三菱電機
発振機 CO2
ML2512LZ
テーブル2440×1220 1
ダッソーシステムズ
CAM において5軸加工の
CATIA
NC プログラムを生成可能で
9
GE
各機械の遠隔操作または遠隔
ファナック
機械制御ソフトウエア
Cimplicity
30
1
1kw
あること
パソコンシステム
1
監視が可能となること
クライアント
パーソナルコンピュータ
Cimplicity
HUB
ITFS サーバー
Cimplicity
HUB
3D CAD/CAM
ダッソーシステムズ
CATIA 40 台
HUB
HUB
マシニングセンタ 2 台
NC 旋盤 2 台
ワイヤ放電加工機
形彫放電加工機
射出成形機
レーザ加工機
3 次元測定機
監視カメラ
監視カメラ
監視カメラ
監視カメラ
図 4.8
平成 13 年における東工業ITFS概要図
31
4.5
4.5.1
平成 13 年における「東工業ITFS」による教育内容
機械生産システム科の実習概要
新たに導入した設備「東工業ITFS」を用いて機械生産システム科では,以下のよ
うに実習を行う.
(1)1年次工業基礎
① 旋盤,フライス盤実習に於いては,既存の汎用機械と共に新たに導入する CNC
旋盤,マシニングセンタを使用して機械加工の基礎,基本を学習する.
② 電気・情報Ⅰに於いては,新たに導入するパソコンシステムを使用してネット
ワーク技術の基本を学習する.
(2)2年次実習
① 諸機械Ⅰ及びⅡにおいては,新たに導入する CNC 旋盤,マシニングセンタ,
形彫放電加工機,ワイヤー放電加工機を使用して CNC 工作機械のプログラミン
グや操作を学習する.また,ネットワークを利用したデータの転送,遠隔監視・
操作の基本をあわせて学習する.
② 溶接においては,1年次学習したガス切断を踏まえ最新の技術であるレーザに
よる鋼鈑の切断技術を学習する.また,ネットワークを利用したデータの転送,
遠隔監視・操作の基本をあわせて学習する.
③ CAD においては,1年次に学習したドラフタによる製図,また教科・生産シ
ステムⅠの授業で学習する2D CAD を基に新たに導入する3D CAD を学習
する.
(3) 3年次実習
① 諸機械Ⅲにおいては,新たに導入する3次元測定器で,これまで製作してきた
金型部品などの課題を測定し金型を組立,射出成形機によってプラスチック製品
を製作する.
② CNC 工作機械実習においては,新たに導入する各種機械を使用して金型部品
を製作する.加工データは教科・生産システムⅠ,Ⅱ及び製図の授業で3D
CAD/CAM を使用して作成し,ネットワークを利用して各加工機械に転送する.
③ 制御実習においては,既存の制御実習装置によりシーケンス制御を学習したう
えで,新たに導入するパソコンシステムと付属する生産管理システムまた,遠隔
監視・操作機能により生産管理の基礎を学習する.
(4)3年次課題研究
課題研究においては,生徒一人一人が新たに導入する設備のいずれかを選択し年
間を通して学習する.地域との連携事業は主にこの時間を利用して行う.
この他,この新たに導入した設備「東工業ITFS」は教科・生産システムⅠ,Ⅱ
及び製図の授業に於いても適宜使用する.
また,機械生産システム科以外の機械科,電子機械科,理工学科,各学科に於いて
も,利用可能である.
新たに導入した設備「東工業ITFS」を用いた実習の内容及びこれに対応する専門
教科・科目を表 4.3「機械生産システム科の実習概要」に示す.
32
表 4.3 機械生産システム科の実習概要
学年
1年
実技・実習名
新たに導入する実習設備
(実習時間 3h×
5週)
旋盤(工業基礎)
CNC 旋盤
フライス盤(工業基 マシニングセンタ
礎)
溶接(工業基礎)
既存設備
鋳造・鍛造(工業基 既存設備
礎)
電気・情報Ⅰ(工業 パソコンシステム
基礎)
対応する専門教科科
目
製図
機械設計
情報技術基礎・電気基
礎
CNC 旋盤・マシニングセンタ
FMSⅠ
製図
形彫り放電加工機・ワイヤ放電 機械設計
生産システムⅠ
加工機
既存設備
溶接
CAD
レーザー加工機
3D CAD/CAM
諸機械Ⅰ
2年 諸機械Ⅱ
諸機械Ⅲ
CNC 工作機械
3年
FMSⅡ
制御
3次元測定器・4射出成形機
CNC 旋盤・マシニングセンタ
形彫り放電加工機・ワイヤ放電
加工機
3D CAD/CAM(CAE)
既存設備
生産システムⅠ
製図・機械設計
生産システムⅡ
工業管理技術
電気・情報Ⅱ
パソコンシステム(生産管理シ 情報技術基礎・電気基
ステム)
礎
既存設備
課題研究
新たに導入するすべての設備
各実習及び工業基礎は3時間×5週間,合計15時間である.
課題研究は3時間/週の授業を通年で行う.
33
4.5.2
機械生産システム科のカリキュラムの特徴
機械生産システム科における教育目標は,平成 9 年の学科改編当時の「機械系の科目
を中心にすえ,電子・電気,情報系の多様な技術を学習し,機械生産システムに関する
技術を修得するとともに生産工場の経営,管理などについても学習し,産業技術の複合
化に対応できる総合的な技術を修得した実践技術者の育成を目指す.」から平成 14 年度
より「東工業ITFS」導入を契機として「FMSなどの様々な実習を通して,最新の
生産システムに関する技術を学習し,加えて,生産システム構築に必要不可欠なネット
ワーク技術を中心とした情報処理技術を学習する.また生産工場の経営,管理,更に環
境問題についても学習し,産業社会の進歩,複合化に対応できる実践的技術者の育成を
目指す.」のように改めた.「東工業ITFS」導入による教育目標の変更の特徴を
図 4.9 にまた,H15年度よりの機械生産システム科カリキュラムを表 4.4 に示す.
平成 9 年学科改変当時
多品種少量生産
平成 14 年「東工業ITFS」導入
多品種少量生産
生産の自動化
生産の自動化
経営・マーケティング
経営・マーケティング
図 4.9
+ネットワーク化
「東工業ITFS」導入による教育目標の変更の特徴
表 4.4 機械生産システム科カリキュラム(H15年度より)
1学年 単位
2学年 単位
3学年 単位
国語総合
国語総合
国語表現Ⅱ
2
現代社会
2
地理A
2
数学Ⅰ
2
数学Ⅱ
2
物理Ⅰ
3
体育
2
保健
1
英語Ⅰ
2
実習
3
製図
3
生産システムⅠ
2
工業技術基礎
2
機械設計
3
機械設計
2
電気基礎
3
製図
2
工業管理技術
2
家庭基礎
3
製図
2
OCⅠ
3
実習
1
美術Ⅰ/音楽Ⅰ
2
課題研究
2
保健
3
英語Ⅰ
2
体育
1
体育
2
理科総合A
2
数学Ⅱ
3
数学A
2
世界史A
3
電気基礎
2
生産システムⅡ
3
3
情報技術基礎
3
環境工学
3
2
34
4.6
ネットワーク学習装置導入
高知東工業高校機械生産システム科のカリキュラムを特徴づけるネットワーク技術
の教育を充実させ東工業ITFSを有効に利用するため,平成 14 年度において「ネッ
トワーク学習装置」を導入した.
4.6.1
ネットワーク学習装置導入目的
ここ数年の情報通信技術の急速な発達によって新たにネットワーク技術をより身に
付けた技術者が必要とされるようになった.ネットワーク技術者の需要は,従来の情報
技術関連業種のみに留まることなく 1 次産業から 3 次産業まで全ての産業分野において
必要とされることとなった.これは政府の IT 政策によるところも大きいが時代の要求
そのものであるともいうことが出来る.
このような状況の中で,本校における情報技術教育は従来のハードウェア技術,ソフ
トウェア技術を中心に進めてきたが,これに加えてネットワーク技術教育が必要となっ
てきている.本校において実施した地元産業界へのアンケート調査の結果を見ても産業
界のネットワーク化は急速に進んでおり,ネットワークの構築・保守技術を身に付けた
技術者の養成は急務であると考えられる.
4.6.2
ネットワーク実習内容
ネットワークの伝送媒体,接続形態,通信方式,伝送方式,通信制御方式,通信機器,
通信プロトコル等については 2 年生における「生産システムⅠ」,3 年生における「生産
システムⅡ」において座学にて学習する.しかし,実際にネットワークを構築しなくて
は理論だけの学習では,十分なネットワークの構築・保守技術を身に付けることは不可
能である.そこで 2 年生における「実習」,3 年生における「実習」の中にネットワーク
実習を取り入れ実際にネットワークを構築し保守を行う学習を行い実践的なネットワ
ーク技術を身に付けることを目指す.ネットワークシステムの概要を図 4.10 に示す.
図 4.10 ネットワークシステム概要
35
4.7
「東工業高校 ITFS」のインターネットへの接続
H13 年度導入産業設備「東工業高校 ITFS」のインターネットへの接続について述べる.
4.7.1
背景
技術革新に対応した,将来の高知県産業界を担う人材の育成を図ることを目指し,本
校では図1に示す産業設備「東工業高校 ITFS」を平成13年度に導入した.これらの機
械群は校内でネットワーク化され,遠隔操作が可能である.つまり,以前までのスタン
ドアロン型で「ものをつくる(けずる・はかる)」ではなく,複合化されている.しか
し,平成 13 年の導入時点ではでは校内のみ遠隔操作が可能であり,学校外(県外・国
外)からのアクセスは不可能である.
この設備をインターネットに接続することにより「地域の企業や学校,更には県外や
外国の企業や学校にネットワークを介して本校の機械設備 ITFS を使ってものづくりを
してもらうこと」ができる.例えば,地域の小学校からネットワークで本校の ITFS に
アクセスし,バーチャル工場見学が可能になったり,自分の書いた絵を送信し,それが
本当に機械加工されるところを見学できたりすることが可能になる.「ネットワークを
介したものづくり教育」は,工業高校の特色を生かした,開かれた学校づくり事業の一
環としての存在をも意味する.これらのことが実現できれば,自宅にいながら工場を管
理できるといったことが可能になる,新たな工業生産方式の技術革新であるといえる
「インターネット生産方式」を確立する実証実験となる.
4.7.2
インターネット接続設備の概要
東工業 ITFS のインターネットへの接続設備の概略図を以下の図 4.11 に示す.
また,図 4.12 に,平成 14 年インターネットへの接続が完了した東工業 ITFS の構成を
示す.
インターネ
インターネット接続設備
CATV モデム
ブロードバンドルー
タ
3D
CAD/CAM
東工業ITFS
シンプリシティ
ネットワーク
実習
CATIA
図 4.11
インターネット接続設備の概略図
36
サーバーPC
Kochi-CATV Net
モデム
ルータ
DMZ,VPN 機能
INTERNET
東工業 ITFS 構成機器
Server PC
Client PC×5
台
CIMPLICITY
CIMPLICITY
Windows
/FIX32NT
Windows2000
DMZ PC 2台
CIMPLICITY
Windows XP
HUB
FANUC
ROBODRIL
L
α-T14IC①
FANUC
ROBODRIL
L
α-T14IC②
TAKISAWA
旋盤
TC-10①
TAKISAWA
旋盤
TC-10②
Web カメラ
Web カメラ
Web カメラ
Web カメラ
FANUC
ROBOCUT
α-0iB
三菱レーザー
加工機
2512LZ-1510
日精樹脂
射出成形機
ES200-2E
三菱型彫放電
加工機
EA8
HUB
HUB
三菱
PLC
Web カメラ
Web カメラ
Web カメラ
ミツトヨ
3 次元測定器
CrystaPlaus504
HUB
Web カメラ
FMS 実習
Server PC
Web カメラ
FIX32
3D CAD/CAM
ダッソーシステムズ
CATIA
40 台
FANUC
FANUC
ROBODRILL
ROBOT5 軸
LR Mate100i
α-T10C
HUB
神鋼電機
Client PC×9 台
Windows98
Network-PC
Server
PC
PC-FA
無人搬送車
SLC-50β
Network 実習
Network-PC
教師用
自動倉庫
5 段×4 列
20 区画
Network-PC×9台
生徒実習用
HUB
図 4.12
平成 14 年インターネットへの接続が完了した東工業 ITFS の構成
37
4.8
産業設備「東工業ITFS」完成による教育効果
本校には,機械科,機械生産システム科,電子科,電子機械科,理工学科の5学科が
ある.それぞれが新規導入機械の活用を図り,授業展開を行っていく.
今回新たに技術革新に対応した産業設備「東工業ITFS」導入により,本校に於け
る日常の工業教育,特にネットワーク技術を中心とした情報処理技術,生産工場の経営,
管理等に関する指導内容の高度化が図られる.
「理科教育及び産業教育審議会答申」[25],「H15 年度新学習指導要領」等では,専門
高校と地域や産業界とのパートナーシップ,高等教育機関との連携及び特色ある教育の
展開が求められている.新たに導入する設備は,県内にある各工業高校(特に遠隔地に
ある学校)との連携は当然のこととして,ネットワークを介して地域社会に対し公開す
ることが可能となり,
「開かれた学校作り事業」の一環として,
「ものづくり」を通した
地域産業及び地域の小中学校,更には高知工科大学などの高等教育機関との連携事業推
進に活用できる.
地域社会との連携事業によって,以下①∼④に示す教育効果が期待できる.
①
地域の企業とのパートナーシップ
地域の製造企業と産業教育の連携事業の一例として地域産業活性化に貢献すること
ができる.同時に工業高校にとっては,製造企業で現実に使われている技術に生徒が直
に接することができ新たな教育効果が期待できる.今後ますます製造現場でのIT化が
進むなか,今回本校がネットワークシステムを構築し,育成していく人材は,企業が期
待する「即戦力」技術者として十分応えられるものである
②
小中学校との連携事業
南国市無線 LAN を利用した中高連携授業は,小中学校生徒に対して工業技術の PR と
なり,工業技術に対する理解・浸透を進めることができる.
③
高等教育機関との連携
高知工科大学などとの技術交流により工業高校の教育内容のレベルアップが図られ
る.
④
本校の教育内容の充実
技術革新に対応した産業設備 ITFS をインターネット接続装置によりインターネット
に接続することによって,本校に於ける工業教育,特にネットワーク技術を中心とした
情報処理技術,生産工場の経営,管理等に関する指導内容の高度化が図られる.コンピュ
ータネットワークの運営管理技術,今回導入した産業設備「東工業ITFS」を活用し
た生産管理技術など,これからの社会の要求に応えられる技術を習得する教育内容の充
実が図られる.これらの取り組みを通して,高度な専門的知識,技術・技能を有する「新
しいものづくり基盤産業の担い手」となる人材を育成することを目指した教育内容の充
実が図られる.
38
第5章
インターネット利用による NC 工作機械の遠隔操作指導システム
地域の学校や企業が,インターネットを介して東工業 ITFS のルータにアクセスし,
DMZ 機能を使って公開用に指定した PC から Cimplycity(統括制御ソフト)を立ち上げる
ことにより,遠隔操作が可能となる. この東工業ITFS(ITファクトリ・システ
ム)の遠隔操作指導システムを活用した NC 工作機械の実習指導事例をケーススタディ
として述べる.また,東工業ITFSを構成する最新の産業設備を用いた地域の企業と
の連携,小中学校や高等学校との連携事業,更には,高等教育機関との連携についてい
くつかの事例を示す.
5.1
ケーススタディ①
指導者が遠隔から指導,生徒は機械の側で指導を受ける
地域の大学や企業の高度な技術を持った指導者が,この機能を使い,実践的で高度な
NC工作機械のプログラミングおよび操作について本校生徒や教員を指導する場合が
考えられる.ネットワークを活用した製造技術の学習として捉えることもできる.
5.1.1
東工業高校機械生産システム科2学年のNC工作機実習
平成 15年 10 月24日,東工業高校機械生産システム科2学年のNC工作機械実習を
筆者自身が遠隔から行った.使用する機械はマシニングセンタとNC旋盤である.経験
の浅い教員が東工業ITFSの側にいてマニュアルを見ながら実習する生徒を指導す
る.その様子を指導者である筆者が,遠隔から東工業ITFSの機能を利用して機械の
動作状況をモニタしながらインターネットのメッセンジャーサービスなどの通信シス
テムにより助言を与える.
遠隔実習実施後のアンケートによれば通常の実習ではよく理解していなかった生徒
のなかに遠隔実習によって理解が増したと応える生徒がみられた.
自由記述には,表 5.1
遠隔実習自由記述に示されるような意見がみられた.
表 5.1 遠隔実習自由記述
肯定的
便利だと感じた
CIM に興味を持った
面白い,興味がもてる
これから必要だと思う
否定的
必要だと思わない
通常の実習より疲れる
通常の実習より疲れるとした生徒は,コミュニケーションのためのメッセンジャーな
どの通信システムが使い辛いからとのことであったが,おおむね肯定的印象を持ったよ
うであった.
今回,東工業 ITFS の機能を検証する実証実験として初めて遠隔からの NC 工作機械
の操作実習指導に東工業 ITFS を使用したが,より詳細な検証が必要である.
39
5.1.2
NC工作機械の操作実習における東工業ITFSの教育効果検証実験
NC工作機械の操作実習における東工業ITFSの教育効果を検証するために,平成
15 年 12 月 16 日,次のように実験を行った.
(1)実験方法
NC工作機械(マシニングセンタ)のプログラミングおよび加工操作実習を以下の 3
つの方法で行い,実習を行った被験者に対してアンケート調査を行い,【理解度】,【教
授方法】,
【とりかかり】
,
【安全面】の 4 つのデータからNC工作機械の操作実習におけ
る東工業ITFSの教育効果を検証する.
①
スタンドアロン型:一般的な NC 工作機械本体の加工操作
NC工作機械本体の操作盤に直接NCデータを入力して,その操作盤を通常のと
おり操作して課題製品を加工する.
②
校内LANからの遠隔操作:教員は生徒のそばで指導
生徒は,NC工作機械を直接操作するのではなく別室のクライアントPCでプロ
グラムを作成し遠隔からNC工作機械を操作して課題製品を加工する.
③
遠隔からの指導:教員は生徒の側からではなく遠隔から指導する
生徒は,NC工作機械を校内LANから遠隔操作するが,その際教員も,遠隔か
ら生徒を指導する.
以上①∼③の実験方法,質問項目等の詳細を<資料
3>
に示す.
(2)被験者:高知東工業高校 機械生産システム科 1 年生 9 名
普通旋盤やフライス盤などの汎用工作機械の基礎的な技能・知識は持っているが,
NC工作機械の操作経験はまったくない.
(3)実習課題
50mm×70mm×10mmのアルミ材にアルファベットの文字“A”
を加工する.実習課題を<資料4>に示す.
(4)アンケート調査項目
実験方法①∼③とも以下の同じ項目についてアンケート調査を行った.いずれも5
件法による加点方式をとった.
Q1 NC工作機械の操作の理解度はどのくらいですか.【理解度】
Q2 教え方はどうでしたか.【教授方法】
Q3 NC工作機械操作のとっつきやすさは,どうでしたか.【とりかかり】
Q4 安全面はどうでしたか【安全面】
Q5実習の感想を自由に述べてください.【質的データの抽出及び補足部分】
40
(5)結果
回答のそれぞれの平均点をレーダーチャートにまとめると以下の図 5.1 のような
結果が出た.
安全
理解度
5
4.5
4
3.5
3
2.5
2
教授
a.スタンドアロン
b.LAN
c.遠隔
とりかかり
図 5.1 東工業ITFSの教育効果検証実験レーダーチャート
さらに二つの条件の値に差があるかどうかを確認するためにT検定を行った結果,
【理解度】
に関しては,[スタンドアロン-遠隔] の間で8%(P=0.080),
【教授方法】 に関しては,[ LAN-遠隔]の間で7%(P=0.068),
【とりかかり】に関しては[ LAN-遠隔]の間で3%(P=0.028),
【安全面】
に関しては[スタンドアロン-LAN],[スタンドアロン-遠隔]いずれも
4%(P=0.035)で有意な差が見られた.
なお,詳細結果は<資料 4> 遠隔実習アンケートに示す.
これらの結果より,以下の結論を得た.
スタンドアロンでの NC 実習の教育効果は,理解度においては他の方法に比べて良
いものの安全面では他の方法と比べて劣っていることが分かる.自由記述からは,文
字の入力方法や修正方法に不便さを感じる意見が多かった.
② LAN 使った NC 実習の教育効果は,とりかかりやすさにおいては他の方法に比べ
てよい結果が出た.自由記述からも「パソコンで入力するので簡単であった」
,
「キー
ボードで打つことの手軽さ」,
「新しい方法で機械を動かしているという感じで面白か
った」などという意見があった.また,安全面についても,すべての対象者が安全で
あると確認しており,自由記述においても遠隔から WEB カメラから見てボタン操作
を行うことで安全を確認している.つまり,生徒たちにとって,パソコン上からの
NC 工作機械実習は,取り組み易さを持っており,学習の導入部分で他の方法よりも
教育効果があると期待できる.
③ 遠隔での NC 実習の教育効果は,安全面での高い評価はあるもののその他の項目に
おいては他の指導方法に比べて低い評価であった.しかし,教育効果を示す『理解度』
においても5段階評価での平均値は3.2であり十分実用的であるといえる.また他
の指導方法に比べて低い評価となったことは,自由記述から,インターネット通信の
不具合により,音声を聞き取りにくかったということが指摘されており,このことが
原因であったと思われる.これらを改善する方法が今後の検討課題となる.
①
41
5.2
ケーススタディ②
生徒が遠隔から操作,指導者は機械側で監視・指導
図 5.2 に示すように,指導者は,東工業ITFSの側にいて外部から操作する生徒の
指導を行う.他の教育機関のまた,企業の研修機関としての利用が考えられる.東工業
ITFSを構成する産業設備は,教育設備としては設備率の低い,しかし今後教育機関
において指導が必要となってくる機械である.遠隔操作機能を学校間連携事業などに用
いることで施設設備の有効利用が図られる.
インターネット
高知工業高校
東工業高校
図 5.2 学校間連携による遠隔操作実習
5.2.1
学校関連携による遠隔実習計画
平成 15 年 11 月14日,高知工業高校よりの依頼を受け,定時制機械科 4 年生を対象
に,課題研究において東工業ITFSを利用したNC工作機械の遠隔実習を行った.
5.2.2 遠隔実習手順
図 5.3 は,東工業 ITFS の NC 工作機械の遠隔操作手順のイメージである.
①CAD で加工図
を作成
③インターネットから ITFS に
アクセスして使用する加工機を
選択する
②CAM により NC データを
作成
④Web カメラを見ながら加工機を遠隔操作
する
図 5.3
東工業 ITFS 遠隔操作手順
42
5.2.3
遠隔実習後のアンケート
高知工業高校定時制機械科4年生に対する東工業ITFSを使用したNC工作機械
遠隔実習を行った後,アンケート調査を行い,図 5.4 に示される結果を得た.
Q1.
Q2.
Q3.
通常のNC工作機械実習は日ごろからよく理解できるか?
ネットワークを介した指導によりよく理解できるようになったか?
ネットワークを利用した遠隔実習について自由記述
理解できない
やや理解できな
い
やや理解できる
十分理解できる
5
4
3
2
1
0
Q1 通常のNC
実習
はよく理解でき
ているか
Q2 遠隔操作
NC実習
はよく理解でき
たか
図 5.4 学校間連携による遠隔実習アンケート
日ごろは全く理解できなかったがこの東工業 ITFS による遠隔実習により NC 工作機
械の操作が理解できるようになったとする意見が見られた.
表 5.2 学校間連携による遠隔実習アンケート自由記述
肯定的
否定的
便利だと感じた
これから必要だと思う
面白い,興味がもてる
わかりやすかった
将来性がある
パソコンの使い方がわからなかった
自分自身でもっと操作したかった
表 5.2 学校間連携による遠隔実習アンケート自由記述に見られる「もっと自分自身で
操作したい」という意見は,この東工業 ITFS を利用した遠隔操作実習を継続してやり
たいということであった.
5.2.4 ケーススタディ②生徒が遠隔から操作,指導者は機械側で指導する場合のまとめ
生徒が遠隔から操作,指導者は機械側で指導する場合として、学校間連携が考えられ
る.インターネットに接続した東工業 ITFS をまず高知工業高校との連携事業に活用し,
実用性が確認された.次に近隣の義務教育機関,高等教育機関に広げ,更には地域の製
造企業との連携へと発展させ,本校の教育内容の充実を図り,地域産業の活性化に貢献
できる活動を行っていきたい.このためには,これを実行するための組織づくりが必要
となる.
43
5.3
ケーススタディ③
ITFSを利用した地域企業と連携事業
ある企業からの依頼で新製品をデザインし高知工科大学のRPを使って試作し製品
を提供した.また,ある企業にはレーザー加工機とネットワークを利用したビジネスを
提案する等,東工業ITFSを構成する機器を利用した地域企業と連携事業を次のとお
り試行的に行っている.
5.3.1
T社との連携事業
同社さまには,東工業ITFS導入に関するアンケート調査にご協力いただいた.更
に,高知県産業振興センターの主催する「IT推進ステップアップセミナー」や「高知
県産業フェア」などに参加することにより交流が生まれた.まず,同社が発売するアプ
リリケーション・ソフトウエアのパッケージデザインを提供することでパートナーシッ
プを深め,そしてこれまでに,次のような事業協力活動を行ってきた.
(1)
新製品の設計
3次元CADにより第3学年の生徒数名が同社の計画する新製品の設計を行った.
製品は手のひらに乗る程度の大きさのプラスチックケースである.完成した3次元図面
をプリントアウトして提供するとともに,CADデータを高知工科大学に転送し同大学
の持つRP(ラピッドプロトタイピング)での試作品製作を仲介した.
(2)
NC旋盤による試作品の製作
同社は機械加工部門を待っていないため製品の試作はすべて外注している.正式な試
作品ではなく製品企画・構想段階の部品試作に当東工業ITFSを活用する試みを行っ
た.
試作品の製作は,メール転送された図面をもとに,教員がNC旋盤,マシニングセン
タを使用して行った.
5.3.2
E社との連携事業
「高知県産業フェア」などで同社の方と接触を持ち製品試作の依頼を受けた.
同社においても前述T社と同じく,正式な試作品ではなく製品企画・構想段階の部品試
作に当東工業ITFSを活用する試みを行った.
製品はレーザー加工機を用いて製作した.事業支援活動の対価としては,同社の販売
する製品の中から当東工業高校におけるレーザー加工機による実習のための材料の支
給を受けた.
44
5.4
ケーススタディ④
小中学校との連携事業
「開かれた学校づくり事業」,
「平成 15 年度エネルギー教育実践校」,
「中高連携事業」
などの一環として,本校の機械設備を使用して図 5.5 手回し発電機キットおよび
図 5.6 手回し発電 CAD 図に示すような『手回し発電機キット』を製作し小中学生を対象
とした次のようなイベントで製作教室を開催した.以下にその例を挙げる.
①「南国市理科教室(7/23)」,参加者 約40名
②「中高連携事業(8/9)」,参加者 約30名
③「南国市親子教室(8/23)」,参加者 約50名 図 5.7
④「高知市介良地区文化祭・アートタウン介良(10/23)」参加者
約50名
図 5.8
生徒が課題研究において製品を設計し,課題研究や放課後に東工業ITFS利用して
部品を製作した.製作教室においては生徒が子供たちを指導した.製作教室開催中には
インターネットに接続したパーソナルコンピュータをプロジェクタでモニタして東工
業ITFSを紹介した.
これまで,この事業には合計 150 名以上の受講を得た.事後のアンケートによると,
「ものづくりに興味がもてるようになった」,
「工業高校の設備が見学できてよかった」,
「機会があればまた参加したい」という意見が多く,マスコミにも取り上げられ,反響
は大きかった.ITFS の目的のひとつである地域の中の工業高校の役割を果たせているの
ではないかと考える.
図 5.5 手回し発電機キット
図 5.7
図 5.6 手回し発電機 CAD 図
図 5.8 ④「高知市介良地区文化祭・アー
トタウン介良(10/23)
,
」
③「南国市親子教室(8/23)」
45
第6章
工業高校における教育支援・産業支援型NPOの設立計画
東工業ITFS導入時のアンケート調査にも現れている地域産業界からの当東工業
ITFSに対するニーズは,これまでの産業支援活動を通して確認された.また,当東
工業高校を訪問された企業の方や大学関係者から,3次元CAD/CAMや東工業IT
FSを構成する最新の産業設備を利用したいとの声が多く聞かれている.このいわば教
育支援活動に対する要望に応える活動や産業支援活動を円滑に行うための体制作りが
必要となってくる.その一つの方策としてNPO設立が考えられる.
6.1
東工業ITFSに対する地域のニーズ
高知東工業高校周辺には高知工科大学をはじめ,高知工業高等専門学校,職業能力開
発短期大学校などの教育機関が存在し活発な研究・教育活動を行っている.この中で,
高知東工業高校の産業教育設備は機械部品加工用としては,群を抜いたものとなってい
る.
平成 15 年度において,高知工科大学の研究に協力して次のような,実験装置部品の
製作などを行った.
① 知能機械システム工学科より
・マシニングセンタによるアルミ製部品の製作
・NC旋盤によるステンレス製部品の加工
・NC旋盤によるウレタン製部品の製作
・汎用旋盤による鉄製部品の製作
・レーザ加工機による板金部品の製作
② 電子・光システム工学科より
・レーザ加工機による板金部品の製作
・レーザ加工機による材料加工実験
・ソーラパネル実験装置の製作
以上の製作活動は高知東工業の教員および生徒が行ったが,高知工科大学の学生から
は,自分たちも直接機械設備を操作して実験装置製作などに当りたいとの強い要望が出
されている.また,実験装置製作に当っては、加工機のある場所に移動することなく,
時間的に迅速に行いたい,という要望が出された.つまり東工業 ITFS の特徴である遠
隔操作機能に対するニーズが寄せられた.
46
6.2 NPOについて
6.2.1 NPO
NPOとは(nonprofit organization),さまざまな非営利活動を行う組織であり,株
式会社など,営利組織とは違って,収入から費用を差し引いた利益を関係者に分配でき
ない組織を意味する.
アメリカ,ジョンズ・ホプキンス大学ノレスター・サラモン教授らが中心となって行
ってきた非営利セクター国際比較プロジェクト(The Johns Hopkins Comparative
Nonprofit Sector Project : JHCNP)では,NPOであるための要件として以下の5項目
をあげている[26].
① 利潤を分配しない(not profit distributing)
② 非政府(nongovernmental,private)
③ フォーマル(formal)であること.
④ 自己統治(self governing)していること.
⑤ 自発性(voluntary)の要素があること.
以上の定義を用いても,NPOと営利企業,NPOと政府・公的企業の境界が完全に確
定するわけではない.
6.2.2
わが国におけるNPOの状況
各国の総就業者に占めるNPOの就業者の割合を先に述べた JHCNP から引用して下
図 6.1 に示す.また、わが国NPOの経常支出額は,22兆円,国内総生産の4,5%
を占めるといわれている.
12.5
14
12
10
8
6
4
2
0
7.8
6.2
4.9
4.9
3.5
コ
日
本
イ
ツ
ド
キ
シ
メ
フ
ラ
ン
ス
リ
ス
メ
ア
ン
オ
ラ
イ
ギ
リ
カ
0.4
ダ
%
総就業者に占めるNPO就業者の割合
図 6.1 各国の総就業者に占めるNPOの就業者の割合
(出典:The Johns Hopkins Comparative Nonprofit Sector Project
)
このほか,わが国NPOの経済的効果はさまざまな資料によって示されている.
2002年5月産業構造審議会NPO部会によれば,NPOの経済効果は,GDPの5.
0%,雇用では4.6%を占めると報告されている.
いずれにせよ,NPOのもつ生産額,雇用力はわが国経済において看過出来ないレベ
ルであるといえる.
47
6.2.3
産業支援NPO
わが国のさまざまなNPOの活動のうち「福祉」分野が圧倒的に多い現状である.
しかし,ベンチャービジネス,コミュニティビジネス,地域の中小企業などの事業をサ
ポートするNPOも数を増やしつつある[27].
特定非営利活動促進法第二条「特定非営利活動」の内容を示す別表(第二条関係)に
は,以下の17の活動分野が規定される[28].
1 保健,医療又は福祉の増進を図る活動
2 社会教育の推進を図る活動
3 まちづくりの推進を図る活動
4 学術,文化,芸術又はスポーツの振興を図る活動
5 環境の保全を図る活動
6 災害救援活動
7 地域安全活動
8 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
9 国際協力の活動
10 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
11 子どもの健全育成を図る活動
12 情報化社会の発展を図る活動
13 科学技術の振興を図る活動
14 経済活動の活性化を図る活動
15 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
16 消費者の保護を図る活動
17 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡,助言又は援助の活
動
2002年12月18日,
「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律」が成立し,
新たに経済活動の活性化を図る活動の分野も追加された.これにより,産業支援型NP
Oの重要性が認知された.改正により追加されたのは次の5分野である.
11
12
13
14
15
16
子どもの健全育成を図る活動
情報化社会の発展を図る活動
科学技術の振興を図る活動
経済活動の活性化を図る活動
職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
消費者の保護を図る活動
このように,新たに活動領域が追加されたことにより,工業高校において,地域企業
との連携事業を産業支援NPO設立により継続的に行い工業教育の充実を図ることが
できる可能性が生まれてきた.
48
6.3
産業支援NPO
−東工業ITFS−
6.3.1 目的
企業,研究機関等の実験装置の開発,製造,販売,及び科学教育支援のための教材の
開発,製造,販売また,インターネットを介して遠隔操作可能なNC工作機械などの産
業設備の操作教育指導などの事業を通じて我が国の産業技術の発展及び科学教育発展
に貢献する事を目的とする.また,高知工科大学などの地域の高等教育機関の所有する
研究成果と高知県立高知東工業高等学校の製造技術を連携させる事により,学際領域を
含む新しいコンセプトの製品の開発,製造,販売を行う.更に,一連の業務を通じて高
知工科大学もしくは高知県立高知東工業高等学校に所属する生徒,学生を社員として雇
用することにより業務の実践から生み出される活きた工業的実践教育も目的とする.こ
の工業的実践教育効果により,社会で指導的な役割を果たせる人材の養成が期待できる.
6.3.2 事業内容
事業内容は,以下のとおりである.
① 企業,研究機関等の実験装置の企画,開発,製造,販売および職業教育の実施
② 機械装置及び,機械部品の企画,開発,製造,販売
③ 科学教育支援のための教材の企画,開発,製造,販売および科学教育の実施
④ 研究,開発に伴うコンピュータシステム,ソフトウェア等の企画,開発,販売
⑤ 前各号に不帯する一切の業務
6.3.3
組織
この法人の設立当初の役員は,次に掲げる者とする.
理事長
高知県立高知東工業高等学校長
副理事長
高知県立高知東工業高等学校機械生産システム科長
副理事長
高知県立高知東工業高等学校機械科長
理事
高知県立高知東工業高等学校電子科長
同
高知県立高知東工業高等学校電子機械科長
同
高知県立高知東工業高等学校理工学科長
監事
高知県立高知東工業高等学校事務長
6.3.4
特定非営利活動法人定款例
設立を計画する特定非営利活動法人[東工業ITFS]の定款案を<資料 5>に示
す.
49
インターネットを利用した NC 工作機械の遠隔指導システムを工業高校の教育に
適用することによる教育効果と今後の課題
7章
7.1
東工業ITFS活用による教育効果
東工業ITFSによるインターネットを利用した NC 工作機械の遠隔指導システムを
工業高校の教育に適用することによって,次のような教育効果を得た.
7.1.1
教育内容の高度化達成による就職内定率の向上
先に述べたように近年高校卒業生に対する求人の激減により一般的には就職内定率
も低下傾向が見られる[17].下図 7.1 に高知県の高校卒業生の就職内定率の推移を示す.
一方,最近になり東工業 ITFS は,高知県内外の工業高校や大学から見学のために訪
問を受けるようになってきている.更に,平成 15 年 8 月には,CAD/CAM などのハイ
テク製品を製造する国際的企業からの視察を受け,同社の全国規模の広報誌[29]に東工業
ITFS とこれを利用した遠隔実習システムが紹介されるなど,産業界から高い評価を受
けるようになってきている.このように最先端の製造技術とITをあわせて活用できる
製造技術者の育成が効果を挙げていることが内外に認められてきた結果,高知県立高知
東工業高校機械生産システム科の就職内定率は,図 7.2 に示されるように,おおむね1
00%を維持している.
100
90
普通科
農業科
工業科
商業科
全体
%
80
70
60
50
40
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14
卒業年度 平成
図 7.1 高知県の高校卒業生の就職内定率の推移
高知県高等学校就職対策連絡協議会
平成 15 年 3 月公立高等学校卒業者の進路状況調査結果
機械生産システム科卒業生の就職率
%
120
100
80
就職希望率
就職率
60
40
20
0
11
12
13
卒業年度 平成
14
図 7.2 高知県立高知東工業高校機械生産システム科の就職内定率
平成 15 年 12 月高知東工業高校機械生産システム科調査
50
7.1.2
高知県立高知東工業高校機械生産システム科卒業生の職場定着率
高卒者に対する求人数激減に伴い,就職することが非常に厳しくなっている一方で,
高卒就職者の離職率も高い水準で推移している.図 7.3 に示す新規学卒就職者(高校卒)
の離職率の推移を見ると,就職後1年以内に約4人に1人が離職,また,3年以内では
約半数の者が離職している状況である[30].
高知県立高知東工業高校機械生産システム科では,平成 9 年の学科改編以来 1 期生か
ら 4 期生まで合計 140 名の卒業生を送り出してきた.図 7.4 に卒業間もない 4 期生
を除く 1 期生から 3 期生までの卒業生のうち就職した卒業生の職場定着率を示す.全国
平均と比較して高い職場定着率であるといえる.中小企業基盤技術研究会 中小企業の
「ものづくり力」強化に向けた展望と課題 など様々な調査結果にも見られるように多
くの企業で人材育成の必要性を重要視していることが指摘されている.この人材育成に
おいて若者の職場定着率向上は最も重要な要素の一つである.
図 7.3 新規学卒者の離職率の推移
(出所) 厚生労働省「新規学校卒業就職者の就職離職状況調査」
http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2001/010702g.htm
100.0
80.0
60.0
40.0
20.0
0.0
年
卒
卒
成
平
平
成
12
13
年
年
卒
11
成
平
図 7.4
学校推薦による就職者
/卒業者数%
定着率 %
業
業
1年以内離職者率%
業
%
高知東工業高校機械生産システム科卒業生の職業定着率
高知東工業高校機械生産システム科卒業生の職業定着率
(平成 15 年 12 月高知東工業高校機械生産システム科調査)
51
7.2
東工業高校機械生産システム科と東工業 ITFS の今後の課題
工業高校の教育の充実度を示す重要な指標の一つとして,入学志願者数が考えられる.
図 7.5 に高知東工業高校の入学志願者数の傾向を一次入学試験の競争倍率で示す.
昨年まで比較的堅調であったが,平成 15 年度入試において定員割れとなった.
高知東工業高校一次入学試験倍率
1.4
1.2
倍率
1
全学科平均
0.8
機械生産
システム科
0.6
0.4
0.2
0
H11
H12
H13
H14
H15
図 7.5 高知東工業高校 1 次入学試験競争倍率の推移
(新聞報道されたデータより筆者が作成)
近年若者の製造業離れ,ものづくり離れが問題になってきている一方で IT の活用
で新しいものづくりが生まれつつあり,知的作業としてのものづくりの面白さを感じる
若者が広がりつつあると考えられる.中小企業基盤技術研究会の調査によれば工業高校
のカリキュラムについて次のような希望があることが指摘されている[12].
①
②
③
コンピュータやネットワークのどの最新の情報技術
いろいろなものづくりの実際
CDA/CAM を用いた最新の設計法
高知東工業高校機械生産システム科および高知東工業高校全校挙げてこれら要望に
応える取り組みをアピールし,更に教育内容を充実させ,技術者を志望する中学生の確
保に努めていきたい.
今後の高知東工業の工業教育の魅力化を図る上での検討課題として,5 軸加工機の導
入や光造型機などの RP(ラピッド・プロトタイピング)の導入,また現在ネットワーク
に接続されていない FMS のネットワーク化などが挙げられる.これらは,単にハードで
ある設備を導入するということではなく,地域社会とのこれまでの連携の取り組みを生
かした人的なネットワークをも利用し工業教育の活動幅を広げていくといった意味で
ある.5 軸加工機については,高知県工業技術センターが平成15年度導入している.
これを東工業 ITFS に接続し利用する方法を研究するなどして,東工業 ITFS の機能を向
上させていくことを目指し,工業教育の充実に努めたい.また,産業支援 NPO を設立し,
運営することにより,地域社会とのパートナーシップを確立し,東工業 ITFS をはじめ
とする,産業教育備を利用した活動を通して地域産業界発展のために貢献していきたい.
52
第8章
結論
1.最新の工業教育設備である「東工業 ITFS」によるインターネットを利用した
NC 工作機械の遠隔指導システムを構築することができた.そして,この IT 技術を活
用した生産技術教育の実用性を確認することができた.
2.NC 工作機械の遠隔指導には,コミュニケーケーションのための通信システムの整
備が重要であることが明らかになった.
3.学科改編や多品種少量生産,また IT を活用した工業教育設備を導入する取り組み
を通して、あたらしい工業高校の教育方法を示すことができた.
4.最新の工業教育設備を活用した地域の企業や教育機関との連携事業を実践すること
ができた.
5.工業高校において教育支援・産業支援型 NPO 設立を計画し,実現の可能性を確認
した.
53
参考文献
[1]
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「海外展開が進む中での地域中小企業の競争力に関する調査」2003 年 pp.1
[2]
財団法人広域関東圏産業活性化センター
「中小企業の製造技術者の養成策に関する検討調査報告書」2003 年 pp.3
[3]
[4]
中小企業庁
「中小企業白書」
2003 年
第2部
第1章
第1節
東京都産業労働局「東京都中小企業経営白書(製造業編)」13年版
( http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2001/07/60B7Q400.HTM )
[5]
中小企業庁
「中小企業白書」平成 9 年
第2部
第2章
第2節
[6]
中小企業庁
「中小企業白書」
第2部
第1章
第1節
[7]
財団法人 広域関東圏産業活性化センター
「中小企業の製造技術者の養成策に関する検討調査報告書」2003 年
[8]
[9]
[10]
[11]
[12]
2
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pp.29
文部科学省統計要覧
( http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/ )
社団法人全国工業高等学校長協会八十年史編集委員会
「八十年史」社団法人全国工業高等学校長協会 1999年
小林
一也
「資料日本工業教育史」
実教出版
高校職業教育検討委員会
「高校工業教育の復権」 技術教育研究会
2001年
1998年 pp.5
中小企業基盤技術研究会
『中小企業の「ものづくり力」強化に向けた展望と課題』平成12年 pp.65
[13]
高知県教育委員会
[14]
人見勝人
「とさのきょういく」No.29
「入門編生産システム工学」
2003 年 12 月
共立出版
1991年 pp.23-pp.45
[15]
平成15年3月 高知県高等学校就職対策連絡協議会
「平成15年3月公立高等学校卒業者の進路状況調査結果」
[16]
高知県立高知東工業高等学校ホームページ 進路指導部資料
( http://www.kochinet.ed.jp/higashikogyo-h/ )
[17]
クレイトン・クリステンセン 著 伊豆原弓 訳
「イノベーションのジレンマ」 翔泳社 2000年
54
pp.6
[18]
P.F.ドラッカー 著 上田惇生 訳 「ネクスト・ソサエティー」
ダイアモンド社 2002年 pp.19 pp.30 pp.144
[19]
(財)日本情報処理開発協会 「情報化白書2002」
コンピュータ・エイジ社 2002年 総論 pp.4
( http://www.jipdec.jp/chosa/hakusho2002/ )
[20]
野村総合研究所
「ユビキタス・ネットワークと市場創造」 野村総合研究所 2002年 pp.25
[21]
馬場
練成 「大丈夫か日本のもの作り」 プレジデント社
2000年 pp.62
[22]
高知県産業教育審議会
[23]
小林和彦 長尾高明 他 「インターネット利用加工工場についての一考察」
電気加工学会全国大会 講演論文集 1999年10月
「高知県産業教育審議会答申」平成12年9月
[24]
垣内和彦 小林和彦 長尾高明 他
「インターネット利用による放電加工機の遠隔制御実験」
精密工学会 2000年秋季大会 講演論文集 2000年10月
[25]
理科教育及び産業教育審議会「理科教育及び産業教育審議会答申」
文部科学省 平成10年7月
[26]
NPO 研究フォーラム
[27]
[28]
「NPO が拓く新世紀」 清文社
1999年
pp.6
pp.16
産業支援型NPOの活用による地域産業振興に関する調査委員会
「産業支援型 NPO の活用による地域産業振興に関する調査」
財団法人広域関東圏産業活性化センター 2003 年 第 2 章
山内直人
「NPO 入門」
日本経済新聞社
1999年 pp.173
[29]
ダッソーシステムズ社
PLM NETWORK Vol.20 2003年 pp.39
[30]
高卒者の職業生活の移行に関する調査研究会
『「高卒者の職業生活の移行に関する研究」最終報告』文部科学省・厚生労働省
平成 14 年 3 月 pp.4
55
<資料
1>
高知県立高知東工業高校学科再編のための検討経緯
最近の技術革新の進展は目ざましく産業構造や就職構造に大きな変化をもたらして
きている.その結果,工業教育は機械,電気,情報技術といった個々の分野だけでなく,
これらを基礎技術として,将来に向かって技術の融合化や副業かなど多様化に幅広く対
応できることが求められている.また,企業では人件費を減らし,品質管理を徹底して,
製造品のコストダウンを計り,競争力を高めることが必須の条件となっている.県内企
業においても,生産の自動化・省力化を真剣に進めているが,これを実現するのがFM
C(自動加工機械)や FMS(Flexible Manufacturing System)であり,この生産
技術に対応できる技術者を養成することが重要となっている.
本校卒業者の主たる進路である県内各企業においては,全般的に生産の自動化への取
り組みが緒に着いたばかりであり,本校としてのそのニーズにこたえていかなければな
らない.このため,機械科2クラスの1クラスを「機械生産システム科」に再編し,F
MS実習装置等を活用した自動化技術や工場の経営・管理などの生産システムに関する
実践的技術者の養成に取り組みたいと考える.
高知県は県勢浮揚のため,高知県工業振興策,さらに南国高知地方拠点構想によるオ
フィスパーク事業,土佐山田町のハイテク工業団地などの諸施設策を計画しており,大
規模な企業誘致が予想される.この機械科の再編がこれからの構想にも応えられるもの
となる.
[1]
①
②
③
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
平成5年5月27日(木)運営委員会において学科再編の検討を行う.
生徒急減期を迎えて工業高校を取り巻く状況の分析について
具体的に進めていくにあたっての留意点について
具体的な対応について
6月 5日(月)運営委員会において職員会議に提言する内容の検討を行う.
6月10日(木)職員会議において運営委員会より科の再編について提案し,
5学科5クラスの再編を検討していくことを決定する.
6月21日(月)運営委員会で科の再編委員会を設置し具体的作業に入ることを決
定する.
6月22日(火)臨時職員会議で科の再編委員会設置を了承される.
6月22日(火)第1回再編委員会
6月24日(木)第2回再編委員会
6月28日(月)運営委員会において,2回の再編委員会報告に基づく内容につい
て確認し,職員会議に提案することを決定する.
運営委員会提案事項
① 3学科5クラスより5学科5クラス,残りの2つの科の内容,性格等について
② 教育課程編成の基本について
③ 具体的教育課程案について
[9]
7月5日(水)臨時職員会議,科の再編についての運営委員会提案事項を検討する.
(提案事項をさらに各科にて検討を深める.)
[10] 11月22日(月)再編委員会
[11] 12月 6日(月)再編委員会
[12] 12月14日(火)「総合学科」について県立和歌山高等学校視察
[13] 平成6年1月24日(月)再編委員会
56
[14]
[15]
[16]
[17]
[18]
[19]
[20]
[21]
[22]
[23]
2月14日(月)再編委員会
2月24日(木)職員会議において機械科,電子科,電子機械科,機械生産シス
テム科,理工学科と再編を決定し,各科の教育課程を確認する.
3月18日(金)職員会議において
平成7年度より具体化がはかられるよう平成6年度の取り組みの方向を検討する.
3月28日(月)∼3月29日(火)「生産システム科」京都府立工業高等学校,
「機械システム科」鳥取県立鳥取工業高等学校を視察
平成6年10日(火)運営委員会において科の再編に関する最終案を一部修正し
確認する.
平成6年5月20日(金)学科再編に関する要望書の提出.
平成7年4月 理工学科の開設
平成7年5月 機械生産システム科学科再編に関する要望書提出
平成8年3月 FMS(Flexible Manufacturing System)導入
平成9年4月 機械生産システム科開設
57
<資料
2>
CAD/CAM 装置(システム) 仕様の詳細
「CAD/CAM装置」
仕様一覧
当該設備は,次に示す仕様を満たすものであること.
品
ハード部
統合型3次元
デスクトップ型
パソコン
名
格
等
CPU
Intel@Pentium4/2.0GHZ 以上またはこれと相当品
メモリー
512MB 以上搭載/最大 2GB 以上
内蔵FDD
3.5インチ,3モード(1.44/1.2/0.72MB)
内蔵HDD
18GB以上 10,000rpm/min 以上
内蔵CD−ROM
読出:24 倍速以上
グラフィックス
UXGA 以上,1600 万色以上表示可能,ビデオメモリ
64MB 以上
数量
25
OpenGL 対応 nVIDIAQuadro2Pro 以上
M
A
C
/
D
A
C
装置
ディスプレイ
ディスプレイ
キーボード/マウス
109 日本語キーボード,スクロール又は 3 ボタンマウス
LANカード
10BASE-T/100BASE-TX(自動認識),本体内蔵
サウンド
サウンドブラスター互換等の音源を有すること
スピーカ
ディスプレイ又は本体に内蔵
サイズ
21 インチカラーCRT 以上 画素ピッチ 0.24 以上
解像度
UXGA 時リフレッシュ 75Hz 以上,アパチャーグリル管使用
サイズ
19 インチカラーCRT 以上 画素ピッチ 0.24 以上
解像度
UXGA 時リフレッシュ 75Hz 以上,アパチャーグリル管使用
1
24
ト
フ
ソ
部
OS
Windows2000プロフェッショナル
25
CAD/CAM ソフト(最新版)
日本語表示,3次元抽画,別紙2∼4のとおり
25
サーバー
ハード部
デスクトップ型
パソコン
CPU
Intel@PentiumⅢ/1.0GHZ 以上またはこれと相当
品
メモリー
256MB以上(増設メモリも可)
内蔵FDD
3.5インチ
内蔵HDD
20GB以上
内蔵CD−RW
読出:32 倍速,書込 16 倍速,書き換え 10 倍速以上
キーボード/マウス
109 日本語キーボード,スクロール又は 3 ボタンマウス
LANカード
10BASE-T/100BASE-TX(自動認識),本体内蔵
無停電電源装
置
ディスプレイ
ト
フ
ソ
部
周辺装置
部
規
バックアップ時間は10分以上可能であり,管理ソフ
トを含む
サイズ
15インチカラーCRT 以上
解像度
1024×768 以上が表示可能
Windows2000Server
OS
レーザープリンタ
クライアントアクセスライセンス
解像度
印刷機能等
レーザープリンタ
1
解像度
印刷機能等
モノクロ,縦・横 600dpi 以上,A4版 25 枚/分以上,
用紙A3∼はがきサイズ, 2段給紙トレイ付
(EPSON LP8900 同等品以上)
カラー,縦・横 600dpi 以上,A4 版カラー8 枚/分以
上
用紙A3ノビ∼はがきサイズ (EPSON LP8800C 同
等品以上)
58
1
1
20
1
1
スキャナー
プロジェクター
スクリーン
OAデスク
1 納入期日 平成14年3月30日
カラー,A3以上 (EPSON ES8500 同等品以上)
1
SXGA,XGA 対応 2000ルーメン以上
1
(EPSON ELP5600 同等品以上)
100 型ホワイトマット (映像センター CF-100 同等品以
1
上)
1800*700*700,引出付(ナイキ NED187F-AWH 同等
13
品以上)
納入場所 高知東工業高等学校 機械工場南棟3階指定場所
2 本装置は,指定場所へ搬入・据付を行い,電源接続,調整及び関連機器との接続等機械が正常に稼働
する一切の事柄を含む.
3 本装置は,LAN 回線(10BASE-T/100BASE-TX, スイッチング HUB カスケード(UpLink,必要数))で接続し,
更に別に示す東工 ITFS(別に示す参考資料1,2参照)に LAN 接続し,工作機械等(制御システム
(FANUCCIMPLICITY 等),CNC旋盤(滝澤),マシニングセンター(FANUC)等)と有機的に接続・データ
交換ができること.
4 上記完了後は,操作説明・設定・装置利用・運用・教育・自学自習等のマニュアル・テキストを提出するこ
と
5 本装置設置後は,使用説明・講習(10 日間以上)を行うこと.詳細は機械設置校と打ち合わせによる.
6 今回導入のハード部はメーカー現行機器(新品)とし,カスタムメイドは不可とする.
7 室内の機器配置・設定等は学校側の指示に従うこと.
8 搬入スケジュール等を作成すること.
9 導入・稼働後1年間は,電話・FAX・メール等のサポートを実施すること.
10 CAD/CAM ソフトは,ダッソー社 CATIA v5,セイコーインスツルメンツ社 U-GRAPH を参考仕様としており,この製
品と同等品以上のものとする.
59
<資料
1
3>
遠隔実習課題
加工課題
基本的なNC工作機械のプログラム作成とそのプログラムによる加工を行う.
使用機械:Fanuc 社製 Robodorill α−T14iC
制御装置:Fanuc 社製 Series16i
①
加工課題
例題
完成図
O****
G40G49
T7M06
① G90G54G00X0Y0
② ( G43 )H7Z30.0
M03S( 3000 )
③ G00X-15.0Y-15.0M08
④ G01Z( -0.2 )F( 200 )
⑤ (
)(
)
⑥ (
)(
)
⑦ G00Z3.0
⑧ (
)(
)
⑨ G01Z(
)
⑩ (
)(
)
⑪ G00Z30.0M09
G28Z0M05
M30
例題プログラム
例題加工図
1
11
2
5
8
3
7
4
10
9
6
例題立体図
60
<資料
4>
遠隔実習アンケート
質問項目(方法①∼③とも同じ質問項目)
Q1.NCの操作の理解度はどのくらいですか.
大変理解した − やや理解した − 普通 −
5
4
3
少し理解した
2
Q2.NCの操作の教え方(方法)はどうでしたか.
大変良い − やや良い − 普通 − あまり良くない
5
4
3
2
−
全く理解していない
1
−
全く良くない
1
Q3.NCの操作でのとっつきやすさはどうでしたか.
大変とっつきやすかった − ややとっつきやすかった − 普通 − あまりとっつきやすくなかった − 全くとっつきやすくなかった
5
4
3
2
1
Q4.NCの操作での安全面はどうでしたか.
大変安全であった − やや安全であった − 普通 − あまり安全でなかった − 全く安全でなかった
5
4
3
2
1
Q5.今回の実習の感想を自由に述べなさい.
<実験結果>
<基本データ>
a.スタンドアロン
被験者
1
2
3
4
5
1
NO.
1
3
5
5
2
5
2
4
3
4
1
3
3
5
5
5
2
5
4
5
4
2
4
3
5
4
4
4
5
2
6
5
3
5
5
3
7
4
3
4
4
4
8
4
5
3
5
5
9
4
5
2
5
5
AVG
4.2 4.1 3.8 3.7
3.9
SD
0.7 0.9 1.2 1.6
1.2
SE
0.2 0.3 0.4 0.5
0.4
AVG:平均,SD:標準偏差,SE:標準誤差
b.LAN
c.遠隔
2
3
4
5
3
5
4
4
4
5
5
5
4.4
0.7
0.2
4
3
5
4
5
5
5
5
5
4.6
0.7
0.2
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
0
0
61
5
1
2
3
4
1
3
3
4
3
5
4
5
4
3.6
1.2
0.4
2
3
2
4
3
4
5
5
4
3.6
1.1
0.4
1
4
2
4
2
5
3
4
4
3.2
1.3
0.4
5
5
5
5
5
5
5
5
5
5
0
0
5
<資料
5>
第1章
特定非営利活動法人[東工業ITFS]定款
総則
(名称)
第1条 この法人は,特定非営利活動法人[東工業ITFS]という.
(事務所)
第2条 この法人は,主たる事務所を高知県南国市篠原1590番地に置く.
第2章 目的及び事業
(目的)
第3条 この法人は,
[①・地域の製造企業,学校等]に対して,
[②・科学技術教育の
提供,研究開発支援]に関する事業等を行い,もって公益の増進に寄与することを目
的とする.
(特定非営利活動の種類)
第4条 この法人は,前条の目的を達成するため,次の種類の特定非営利活動を行う.
11 子どもの健全育成を図る活動
12 情報化社会の発展を図る活動
13 科学技術の振興を図る活動
14 経済活動の活性化を図る活動
15 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
(事業)
第5条 この法人は,第3条の目的を達成するため,次の事業を行う.
(1)特定非営利活動に係る事業
①
②
③
④
⑤
企業,研究機関等の実験装置の企画,開発,製造,販売および職業教育の実施
機械装置及び,機械部品の企画,開発,製造,販売
科学教育支援のための教材の企画,開発,製造,販売および科学教育の実施
研究,開発に伴うコンピュータシステム,ソフトウェア等の企画,開発,販売
前各号に不帯する一切の業務
(2)その他の事業
①[寄付された物品等の販売事業]
2
前項第2号に掲げる事業は,同項第1号に掲げる事業に支障がない限り行うものと
し,その 収益は,同項第1号に掲げる事業に充てるものとする.
第3章 会員
(種別)
第6条 この法人の会員は,次の2種とし, 正会員をもって特定非営利活動促進
(以下「法」と いう.)上の社員とする.
(1)正会員 この法人の目的に賛同して入会した個人,法人及び団体
(2)賛助会員 本会の事業を賛助するために入会した個人,法人及び団体
62
法
(入会)
第7条 正会員の入会については,特に条件を定めない.
2 正会員として入会しようとする者は,理事長が別に定める入会申込書により,理事
長に申し 込むものとし,理事長は,正当な理由がない限り入会を認めなければなら
ない.
3 理事長は,前項のものの入会を認めないときは,速やかに,理由を付した書面をも
って本人 にその旨を通知しなければならない.
(入会金及び会費)
第8条 正会員は,総会において別に定める入会金及び会費を納入しなければならない.
(会員の資格の喪失)
第9条 正会員が次の各号の一に該当するに至ったときは,その資格を喪失する.
(1)退会届の提出があったとき
(2)本人が死亡し,又は正会員である法人又は団体が消滅したとき
(3)継続して2年以上会費を滞納したとき
(4)除名されたとき
(退会)
第10条 正会員は,理事長が別に定める退会届を理事長に提出して,任意に退会する
ことがで きる.
(除名)
第11条 会員が,次の各号の一に該当するにいたったときは,総会の議決により,こ
れを除名することができる.この場合,その会員に対し,議決の前に弁明の機会を
与えなければならない.
(1)この定款等に違反したとき.
(2)この法人の名誉を傷つけ,又は目的に反する行為
をしたとき.
(拠出金品の不返還)
第12条 既納の入会金,会費及びその他の拠出金品は,返還しない.
第4章 役員及び職員
(種別及び定数)
第13条 この法人に次の役員を置く.
(1)理 事 5人以上10人以内
(2)監 事 1人以上3人以内
2 理事のうち,1人を理事長,2人を副理事長とする.
(選任等)
第14条 理事及び監事は,総会において選任する.
2 理事長及び副理事長は,理事の互選とする.
3 役員のうちには,それぞれの役員について,その配偶者若しくは三親等以内の親族
が一人を 超えて含まれ,又は当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が役
63
員の総数の3分の1 を超えて含まれることになってはならない.
4 監事は,理事又はこの法人の職員を兼ねることがで
きない.
(職務)
第15条 理事長は,この法人を代表し,その業務を総理する.
2 副理事長は,理事長を補佐し,理事長に事故あるとき又は理事長が欠けたときは,
理事長が あらかじめ指名した順序によって,その職務を代行する.
3 理事は,理事会を構成し,この定款の定め及び理事会の議決に基づき,この法人の
業務を執 行する.
4 監事は,次に掲げる職務を行う.
(1)理事の業務執行の状況を監査すること
(2)この法人の財産の状況を監査すること
(3)前2号の規定による監査の結果,この法人の業務又は財産に関し不正の行為又は
法令若し
くは定款に違反する重大な事実があることを発見した場合には,これ
を総会又は所轄庁に報
告すること
(4)前号の報告をするため必要がある場合には,総会を招集すること
(5)理事の業務執行の状況又はこの法人の財産の状況について,理事に意見を述べ,
若しくは
理事会の招集を請求すること
(任期等)
第16条 役員の任期は,2年とする.ただし,再任を妨げない.
2 補欠のため,又は増員によって就任した役員の任期は,それぞれの前任者又は現任
者の任期 の残存期間とする.
3 役員は,辞任又は任期満了後においても,後任者が就任するまでは,その職務を行
わなけれ ばならない.
(*注:法人運営の円滑化を図るため,定款第 14 条において役員を総会で定める旨
を明記している場合に
限り法第 24 条第2項の規定に基づき,第 16 条第 2 項として次の規定を置くこ
とができる.
「2 前項の規定にかかわらず,後任の役員が選任されていない場合には,任期
の末日後最初の総会が終
結するまでその任期を伸長する.」)
(欠員補充)
第17条 理事又は監事のうち,その定数の3分の1を超える者が欠けたときは,遅滞
なくこれ を補充しなければならない.
(解任)
第18条 役員が次の各号の一に該当するにいたったときは,総会の議決により,これ
を解任す ることができる.この場合,その役員に対し弁明の機会を与えなければ
ならない.
(1)心身の故障のため,職務の遂行に堪えないと認められるとき
(2)職務上の義務違反その他役員としてふさわしくない行為があったとき
64
(報酬等)
第19条 役員は,その総数の3分の1以下の範囲内で報酬を受けることができる.
2 役員には,その職務を執行するために要した費用を弁償することができる.
3 前2項に関し必要な事項は,総会の議決を経て,理事長が別に定める.
(職 員)
第20条 この法人に,事務局長その他の職員を置く.
2 職員は,理事長が任免する.
第5章 総会
(種別)
第21条 この法人の総会は,通常総会及び臨時総会の2種とする.
(構成)
第22条 総会は,正会員をもって構成する.
(権能)
第23条 総会は,以下の事項について議決する.
(1)定款の変更
(2)解散
(3) 合併
(4)事業計画及び収支予算並びにその変更
(5)事業報告及び収支決算
(6)役員の選任及び解任,職務及び報酬
(7)入会金及び会費の額
(8)借入金(その事業年度内の収入をもって償還する短期借入金を除く.第50条に
おいて同
じ.)その他新たな義務の負担及び権利の放棄
(9)事務局の組織及び運営
(10) その他運営に関する重要事項
(開催)
第24条 通常総会は,毎年1回開催する.
2 臨時総会は,次の各号の一に該当する場合に開催する.
(1)理事会が必要と認め招集の請求をしたとき
(2)正会員総数の5分の1以上から会議の目的である事項を記載した書面をもって招
集の請求
があったとき
(3)第15条第4項第4号の規定により,監事から招集があったとき
(招集)
第25条 総会は,前条第2項第3号の場合を除き,理事長が招集する.
2 理事長は,前条第2項第1号及び第2号の規定による請求があったときは,その日
から5日以内に臨時総会を招集しなければならない.
3 総会を招集するときは,会議の日時,場所,目的及び審議事項を記載した書面をも
って,少 なくとも5日前までに通知しなければならない.
(議長)
65
第26条
総会の議長は,その総会において,出席した正会員の中から選出する.
(定足数)
第27条 総会は,正会員の2分の1以上の出席がなければ開会することができない.
(議決)
第28条 総会における議決事項は,第25条第3項の規定によってあらかじめ通知し
た事項と する.
2 総会の議事は,この定款に規定するもののほか,出席した正会員の過半数をもって
決し,可 否同数のときは,議長の決するところによる.
(表決権等)
第29条 各正会員の表決権は,1人(1法人,1団体)1票とする.
2 やむを得ない理由のため総会に出席できない正会員は,あらかじめ通知された事項
について 書面をもって表決し,又は他の正会員を代理人として表決を委任すること
ができる.
3 前項の規定により表決した正会員は,第27条,第28条第2項,第30条第1項
第2号及 び第51条の適用については,総会に出席したものとみなす.
4 総会の議決について,特別の利害関係を有する正会員は,その議事の議決に加わる
ことがで きない.
(議事録)
第30条 総会の議事については,次の事項を記載した議事録を作成しなければならな
い.
(1)日時及び場所
(2)正会員総数及び出席者数(書面表決者及び表決委任者がある場合にあっては,そ
の旨を付記すること.)
(3)審議事項
(4)議事の経過の概要及び議決の結果
(5)議事録署名人の選任に関する事項
2 議事録には,議長及びその会議において選任された議事録署名人2人以上が署名,
押印しな ければならない.
第6章 理事会
(構成)
第31条 理事会は,理事をもって構成する.
(権能)
第32条 理事会は,この定款で定めるもののほか,次の事項を議決する.
(1)総会に付議すべき事項
(2)総会の議決した事項の執行に関する事項
(3)その他総会の議決を要しない会務の執行に関する事項
(開催)
第33条 理事会は,次の各号の一に該当する場合に開催する.
(1)理事長が必要と認めたとき.
(2)理事現在数の3分の1から会議の目的である事項を記載した書面を
66
もって招
集の請求があったとき.
(3)第15条第4項第5号の規定により,監事から招集の請求があったとき.
(招集)
第34条 理事会は,理事長が招集する.
2 理事長は,前条第2号及び第3号の規定による請求があったときは,その日から1
4日以内に理事会を招集しなければならない.
3 理事会を招集するときは,会議の日時,場所,目的及び審議事項を記載した書面を
もって, 少なくとも5日前までに通知しなければならない.
(議長)
第35条 理事会の議長は,理事長がこれに当たる.
(議決)
第36条 理事会における議決事項は,第34条第3項の規定によってあらかじめ通知
した事項 とする.
2 理事会の議事は,理事総数の過半数をもって決し,可否同数のときは,議長の決す
るところ による.
(表決権等)
第37条 各理事の表決権は,平等なるものとする.
2 やむを得ない理由のため理事会に出席できない理事は,あらかじめ通知された事項
について 書面をもって表決することができる.
3 前項の規定により表決した理事は,前条及び次条第 1 項の適用については,理事会
に出席した ものとみなす.
4 理事会の議決について,特別の利害関係を有する理事は,その議事の議決に加わる
ことがで きない.
(議事録)
第38条 理事会の議事については,次の事項を記載した議事録を作成しなければなら
ない.
(1)日時及び場所
(2)理事総数及び出席者数(書面表決者にあっては,その旨を付記すること.)
(3)審議事項
(4)議事の経過の概要及び議決の結果
(5)議事録署名人の選任に関する事項
2 議事録には,議長及びその会議において選任された議事録署名人2人以上が署名,
押印しな ければならない.
第7章 資産及び会計
(資産の構成)
第39条 この法人の資産は,次の各号に掲げるものをもって構成する.
(1)設立当初の財産目録に記載された資産
(2)入会金及び会費
(3)寄付金品
(4)財産から生じる収入
(5)事業に伴う収入
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(6)その他の収入
(資産の区分)
第40条 この法人の資産は,これを分けて特定非営利活動に係る事業に関する資産,
その他の 事業に関する資産の2種とする.
(資産の管理)
第41条 この法人の資産は,理事長が管理し,その方法は,総会の議決を経て,理事
長が別に 定める.
(会計の原則)
第42条 この法人の会計は,法第27条各号に掲げる原則に従って行うものとする.
(会計の区分)
第43条 この法人の会計は,これを分けて特定非営利活動に係る事業に関する会計,
その他の 事業に関する会計の2種とする.
(事業計画及び予算)
第44条 この法人の事業計画及びこれに伴う収支予算は,理事長が作成し,総会の議
決を経な ければならない.
(暫定予算)
第45条 前条の規定にかかわらず,やむを得ない理由により予算が成立しないときは,
理事長 は,理事会の議決を経て,予算成立の日まで前事業年度の予算に準じ収入
支出することができる.
2 前項の収入支出は,新たに成立した予算の収入支出とみなす.
(予備費の設定及び使用)
第46条 予算超過又は予算外の支出に充てるため,予算中に予備費を設けることがで
きる.
2 予備費を使用するときは,理事会の議決を経なければならない.
(予算の追加及び更正)
第47条 予算議決後にやむを得ない事由が生じたときは,総会の議決を経て,既定予
算の追加 又は更正をすることができる.
(事業報告及び決算)
第48条 この法人の事業報告書,収支計算書,貸借対照表及び財産目録等の決算に関
する書類 は,毎事業年度終了後,速やかに,理事長が作成し,監事の監査を受け,
総会の議決を経なければならない.
2 決算上剰余金を生じたときは,次事業年度に繰り越すものとする.
(事業年度)
第49条 この法人の事業年度は,毎年4月1日に始まり翌年3月31日に終わる.
(臨機の措置)
第50条 予算をもって定めるもののほか,借入金の借り入れその他新たな義務の負担
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をし,又
は権利の放棄をしようとするときは,総会の議決を経なければならない.
第8章 定款の変更,解散及び合併
(定款の変更)
第51条 この法人が定款を変更しようとするときは,総会に出席した正会員の4分の
3以上の 多数による議決を経,かつ,法第25条第3項に規定する軽微な事項を
除いて,所轄庁の認証を得なければならない.
(解散)
第52条 この法人は,次に掲げる事由により解散する.
(1)総会の決議
(2)目的とする特定非営利活動に係る事業の成功の不能
(3)正会員の欠亡
(4)合併
(5)破産
(6)所轄庁による認証の取消し
(7)・・・・
2
前項第1号の事由によりこの法人が解散するときは,正会員総数の4分の3以上の
承諾を得 なければならない.
3 第1項第2号の事由により解散するときは,所轄庁の認定を得なければならない.
(残余財産の帰属)
第53条 この法人が解散(合併又は破産による解散を除く.)したときに残存する財
産は,法 第11条第3項に掲げる者のうち,[ ① ]に譲渡するものとする.
(合併)
第54条 この法人が合併しようとするときは,総会において正会員総数の4分の3以
上の議決 を経,かつ,所轄庁の認証を得なければならない.
第9章 公告の方法
(公告の方法)
第55条 この法人の公告は,この法人の掲示場に掲示するとともに,高知新聞に掲載
して行う.
第10章 雑則
(細則)
第56条 この定款の施行について必要な細則は,理事会の議決を経て,理事長がこれ
を定める.
1
2
付則
この定款は,この法人の成立の日から施行する.
この法人の設立当初の役員は,次に掲げる者とする.
理事長
高知県立高知東工業高等学校長
副理事長
高知県立高知東工業高等学校機械生産システム科長
副理事長
高知県立高知東工業高等学校機械科長
理事
高知県立高知東工業高等学校電子科長
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同
高知県立高知東工業高等学校電子機械科長
同
高知県立高知東工業高等学校理工学科長
監事
高知県立高知東工業高等学校事務長
3 この法人の設立当初の役員の任期は,第16条第1項の規定にかかわらず,成立の
日から平成16年度に開催する通常総会終了時までとする.
4 この法人の設立当初の事業計画及び収支予算は,第44条の規定にかかわらず,設
立総会の定めるところによるものとする.
5 この法人の設立当初の事業年度は,第49条の規定にかかわらず,成立の日から平
成16年3月31日までとする.
6 この法人の設立当初の入会金及び会費は,第8条の
規定にかかわらず,次に掲げる額とする.
(1)入会金
正会員1,000円 賛助会員1,000円
(2)年会費
正会員1,000円 賛助会員1,000円
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謝辞
私が,高知工科大学大学院起業家コースで研究をするに当たり,多くの方々からご指
導ご鞭撻いただいた.
直接ご指導いただいた指導担当教官であられる小林和彦教授には,高知工科大学大学院
起業家コース教授としてだけではなく,知能機械システム工学科教授として工学的な見地
から,さらには高知県産業教育審議会会長としてのお立場からさまざまなご指導をいただ
いた.副担当教官である長尾高明教授には研究の初めにおいて研究の方向付けをいただき,
更に加工機の知能化について深いご指導をいただいた.また,加納剛太教授,馬場敬三教
授はじめ高知工科大学大学院起業家コースの先生方には講義だけでなく研究を進めるに
当って多くの助言や励ましをいただいた.
私の勤務する高知県立高知東工業高等学校の歴代の校長先生はじめ普通科を含む各
科の先生方や小松博事務長をはじめとする事務職員の方々には多大なご協力をいただ
いた.とくに,私自身の所属学科である機械生産システム科の土方聖士学科長をはじめ
とする先生方には、公私にわたりご協力いただいた.
高知県教育委員会事務局工業担当指導主事小松茂久先生をはじめとする高知県教育
委員会事務局の諸先生方,職員の方々には学科改編,実習設備導入などにおいてご指導
や,ご支援援,ご協力をいただいた.
高知工科大学知能機械システム工学科小林教授研究室に所属する修士2年白倉友也
君をはじめとする学生諸君には,研究を進めるに当たり,実験の際などに,ご協力をい
ただいた.
電子光システム工学科修士2年前田康彦氏,知能機械システム工学科修士1年北村晋
介氏には、論文を仕上げるに当たり貴重なご意見をいただいた.
そのほか関係各位にこの場を借りて心からの感謝の意を表したい.
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