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建築は「人間」と「自然」とが共に生きていくための架け橋
第5章建築の原点 2009/4/27 修士 2 年川合修士1年中島 建築は「人間」と「自然」とが共に生きていくための架け橋となっていく □はじめに き、その環境は人間にとって有意味となることを表 建築における原点への志向は、人間が周辺環境や自 している。 然との関わり方を自覚的に反省し、よりよい関係性 ゲニウス・ロキでは、建築と場所性とが同時的かつ を新しく構築していこうとする意志の表れである。 双方向的に作用していることを表している。よって では、現在まで原点への志向はどのように移り変わ 二つの概念は、「人間」と「周辺環境」への志向で ってきたのか。そして、今後、それはどのようにな あった。 っていくのであろうか。 □現代における「原点への志向」 □洞窟とストーンヘンジ レンゾ・ピアノの「ジャン・マリー・チバウー文化 洞窟では宗教的儀式が執り行われ(聖なる場)、ス センター」は、円形の平面とダブルスキンになった トーンヘンジは宇宙の動きを示す(聖なる構築物) 煙突の層を持ち、南東からの卓越風に応じて、建物 という、聖なるものとして、「人間」と「世界・宇 の自然換気を促す。また、ノーマン・フォスターの 宙」を繋げる存在であった。 ロンドン市庁舎は、熱損失を緩和できる球体をベー スにし、さらに日射方位の違いによる日射の偏りを □2つの原始の小屋 考慮し非対称に傾斜をつけた形態となっている。こ ウィトルウィウスは、「原始の小屋」において、自 のように、現代は「人間」と「エネルギー」への志 然の摂理に則り改良を加えながら、建築のはじまり 向がなされているといえる。 として位置づけた。また、ロージエは、「原始の小 屋」をあらゆる建築の「原型」と提示した。よって、 □これからの「原点への志向」 2つの「原始の小屋」は、「人間」と「自然環境」 近年はコンピュータの発達によって アーバン・フ への志向であった。 ィジックス とも呼ぶべき理学的、工学的な取り組 みが増えてきており、2009 年度日本建築学会設計競 □ルイス・カーンのルーム 技「アーバン・フィジックスの構想」で注目された ルイス・カーンは、「ルーム」を建築の元初と定義 作品の中には、建築が集まることによって初めて出 し、それは「沈黙」 (人間の事象)と「光」 (自然の 来る自然環境のポテンシャルを生かす提案や、これ 事象)によって成り立っているとした。それらの関 まで、機械頼みだった都市の公共空間を自然とかか 係は、自然法則と共に行動することを表現しようと わらせることで快適にしようという動きがある。ま いう人間の衝動が発想を可能にするというカーン た、近年の建築コンペで取り扱われているテーマの の初期の理論を拡大したものである。よって、「ル 傾向として自然を感じ、自然に呼応する提案が求め ーム」は、「人間」と「光=自然法則」への志向で られていることから、建築単体だけでなく都市の中 ある。 での横断的なアイディアが期待されていると言え る。このように、これからは「人間」と「人工環境」 □実存的空間とゲニウス・ロキ への志向がなされていくといえる。この先建築は 実存的空間では、人間が周辺環境の中で、自分の位 「人間」と「自然」とが共に生きていくために必要 置を定めることができ、その環境と同一化できると 不可欠な架け橋となることができるだろう。