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韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題

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韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題
京都精華大学紀要 第三十六号
−55−
韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題
李
LEE
月 順
Wolsoon
はじめに
韓国に在留する外国人は、1,158,866人(2008年)であり、人口の約2%を占めている。在留
外国人数は年々増加の傾向にあるが、その中には未登録(不法在留)の外国人(223,464人)も
含まれている1。韓国社会は、韓国政府樹立以前から朝鮮半島に暮らしてきた韓国華僑、そし
て、1980年代後半以降、中国やベトナム、フィリピン、インドネシアなどから受け入れた外国
人労働者に加え、結婚移民者や朝鮮にルーツを持つ中国や旧ソ連出身者、脱北者、難民など多
様な背景をもつ人々が暮らす社会となっている。増加しつつある多様な外国人の存在は、これ
までの単一民族によって構成される社会から多民族・多文化社会への移行を意識させることに
なり、「 韓民族 といった概念や定義を改めなおす必要性」とともに、「文化の多様性を尊重す
ることによって、より豊かな共通の文化的価値を創り上げなければならない」2といった変革の
必要性に直面するようになった。
その必要性は、韓国の学校に在籍する外国人の子どもや国民教育によって文化的同一性を強
いられてきた国際結婚の子どもたちの問題に向きあうことであった。教育政策に関して、2006
年「多文化主義的観点からの総合支援政策」として「多文化家庭子女教育支援対策」が策定さ
れた。外国人労働者や国際結婚などによって生まれた子どもたちをめぐる教育問題を政策に採
り上げたのである。
これまで日本で紹介されている韓国の外国人労働者や国際結婚の子どもたちの教育に関して
は、筆者の知る限り、外国人労働者の子どもの法的地位と教育制度の現状を採り上げた研究
(崔佳英、2008)がある。また、外国人政策と関連する教育権に言及した研究(宣元錫、2007、
2009)や在韓外国人に対する韓国語施策とその支援に関する研究(松岡洋子、2008)がある。
本稿では、これらの研究成果、韓国の外国人教育政策と「多文化家庭」の子どもの教育の現
状、韓国よりも早く取り組まれてきた日本の外国人教育と比較することによって、韓国の「多
文化家庭」の子どもの教育の課題を明らかにする。それは、「多文化主義」を理念にかかげた
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韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題
韓国の教育政策の方向性を考える上で、重要な教育課題を提起するものとなる。
1.「多文化家庭」の子どもと韓国華僑
外国人労働者の子どもや国籍結婚によって出生した子どもを「多文化家庭」の子どもという。
「多文化家庭」という言葉は、英語multicultural familyの韓国語訳であるが、家庭内における
世代間における文化的差異や家族の構成員の多様な状況を表す言葉として、国際結婚の家庭お
よびその子どもと外国人労働者の家庭およびその子どもを総称する概念として使われている。
1980年代以降の韓国の外国人政策の中心は、外国人労働者に対する政策であった3。2004年8
月雇用許可制が施行する前の外国人政策は、労働力としての需要・供給システムを中心とする
場当たり的な対応にすぎない政策であった。外国人労働者の受け入れシステムとしては、「外
国人産業研修・研修就業制度4」が存在した。これまでのシステムに変わって創設された雇用
許可制は、合法的に非熟練外国人労働者を受け入れるためのシステムを整備するための制度で
あった。雇用許可制の基本原則は、一つに、外国人労働者を労働力の代替ではなく補完するも
のとして労働市場の動向を踏まえて韓国政府が統御する仕組みになっていること、二つ目に外
国人労働者に対する労働基準法、労働組合法、最低賃金法などの権利保障が適応されること、
三つ目には一時的な滞在を前提とする外国人労働者の受け入れと管理のシステムを定めている
ことである。雇用許可制の施行は、場当たり的な労働者政策によって外国人労働者を巡る労働
環境問題や医療問題などが社会問題化してきたことが背景にある。また、定住する外国人労働
者の増加とともに、家族の呼び寄せや結婚などによって、外国人労働者の子どもの教育が問題
となり、学校の就学や子どもを取り巻く学校での問題が明らかになってきた。
そして、国際結婚によって生まれた子どもたちの多くも学校に就学している。韓国では、国
際結婚による結婚移民者が増加しており、国内の結婚総件数の11.9%(39,690件2006年度)を
国際結婚が占めるようになった。2007年の結婚移民者は、122,552人であり、国籍別の比率は、
中国55%、ベトナム22.1%、フィリピン4.8%、日本4.3%などとなっている。性別の比率は、女
性88%、男性12%と圧倒的に女性が多い。韓国は、1997年「国籍法」が改定され父母両系血統
主義に変更されるまで5、「国籍法」(1948年12月20日)の施行以来、基本的に国際結婚による
子どもの国籍は、父系血統主義に基づいていた。その子どもたちの多くは、原則として「国
民=韓国籍」としての教育の権利は保障されていた。
ところで、韓国には1948年韓国政府樹立以前から定住している韓国華僑6が存在する。韓国
華僑は多文化家庭の概念の対象には含まれていない。その意味で、多文化家庭とは、どちらか
というと韓国に最近定住するようになったニューカマーを念頭に置いた言葉である。多文化社
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会への移行を意識するようになるまで、韓国の外国人政策の対象は韓国華僑であり、その政策
は、韓国華僑を拝外・管理の対象とするものであった。韓国政府が樹立されたとき、韓国華僑
は「国民」の範疇から除外されたため、外国人として制度的に差別を受け続けることになる。
韓国華僑は、「外国人の入国出国と登録に関する法律」(1949年11月17日)が制定されると、こ
の法律によって管理と監視の対象となった。この法律は、1963年「出入国管理法」の制定まで
運用された。韓国華僑は、滞在許可の延長許可や出国に際し、再入国許可を受けなければなら
なかった。朴正熙政権時代には、より外国人にたいする厳密な管理が行われた。「出入国管理
法」により、華僑を含む外国人は政治活動を禁止された。一年以上滞在する外国人は、14歳に
なってから60日以内に指紋押捺が義務づけられ、14歳以上の外国人は居留期間延長の際に指紋
押捺が課された。さらに、韓国政府は、韓国人が外国人学校に就学することを防ぐために、外
国人学校にたいし外国団体としての登録を命じた。華僑学校は1972年外国団体に登録した。
1995年12月1日「出入国管理法施行規則」の改定によって、居住許可期間は5年に延長されたが、
韓国華僑の法的地位は、「長期滞在外国人」という扱いであった。永住権取得は、2002年永住
権制度が導入されることによってはじめて可能になった。永住権取得により、「居住」資格の
延長の手続きは不要になり、査証の更新の必要や再入国の査証の必要がなくなった(ただし、
出国後1年以内の再入国の場合)。この時、台湾国籍の韓国華僑は、「永住」資格を取得してい
った7。
2002年「永住」資格という在留資格を新設し、2003年それまで外国人に課していた指紋押捺
を廃止した(ただし、国民の指紋押捺の義務は残されている)。2004年1月「住民投票法」が施
行され、2005年8月「公職選挙法」の改正に伴い、「永住」の在留資格を取得してから3年以上
経過した19歳以上の外国人に選挙権が初めて認められるようになる。外国人は、「永住外国人」
(地方参政権付与)「居住外国人」(住民投票権付与)「その他の外国人」(参政権が付与されな
い外国人)の三つに分類されることになる。2006年地方選挙の実施の際、法律制定後はじめて
選挙権を行使できる資格を持つ外国人6,579人のうち、その多くは台湾国籍の韓国華僑(6,511
人)であった8。
韓国華僑は、分離政策のもとに置かれ、華僑学校で学ぶものが多かった。韓国の学校での外
国人の子どもの教育が問題になるのは、「多文化家庭」の子どもの教育問題が採り上げられる
ようになってからである。
2.韓国の外国人教育政策
9
韓国政府が、2006年「多文化主義」を理念とする統合政策へと転換したことに関連し、教育
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韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題
資源部(日本の文部科学省に相当)は、「多文化主義的観点からの総合支援政策」の視点から
「多文化家庭子女教育支援対策」(2006年5月)を策定し、教育支援にむけた様々な政策を打ち
出した。学校を中心とした教育支援では、①教師用に「教科書指導補完資料」を発刊、配布、
②韓国語学習プログラムや教材開発、その普及、③韓国(KSL・第二言語としての韓国語)班
や放課後学校の運営、④韓国文化の理解や体験活動の運営、⑤多文化家庭の父母の研修および
子どもに関する資料の開発、その普及といった支援がうち出されている。そして、多文化理解
教育を強化するプログラムとして、①関連教科(社会、道徳など)および、改定教育課程に他
文化理解、尊重、偏見の克服および寛容のための習得目標を反映させること。教科書は09年か
ら年次的に開発、普及することを決定。②一般の学生、教師、父母を対象とする国際理解教育
の実施などが挙げられている。
また、教育資源部は、2006年に「多文化家庭子女の教育実態調査報告書」を作成し、多文化
家庭の子どもの問題を分析した。多文化家庭の子どもの問題に関して、国際結婚の子どもと外
国人労働者の子どもの問題をそれぞれ次のように整理している。国際結婚の子どもの問題では、
学校就学の児童・生徒が増加するにつれ、単一民族教育に基づく教育の弊害などの問題が台頭
してきていることである。外国人労働者の子どもの問題では、教育機会から放置されている現
状がみられることから就学の促進をはかるという問題である。さらに、「多文化家庭子女教育
対策」政策がうまく機能していない問題点として、次の5点を挙げている。①「多文化家庭子
女教育支援対策」の具体的な細部の課題に対処する担当部署や推進する際の持続的な管理が不
十分であること。特に、学校に対する指導や管理および監督、評価の体系が確立されていない
こと。②外国人労働者の子どもの就学率を上げるための対策が不十分であること。放課後学校
や韓国語班(KSL)の運営やプログラムが教育庁別に散発的に行われていること。③一般の人
に対する多文化理解を推進する対策が不十分であること。④地域によって取り組みの差がある
こと。⑤プログラムや資料の開発を専門に担当するための組織的かつ専門的な支援体制が不十
分であること。特に、教員の意識改革や養成が不十分であること、である。
一方、「多文化家庭子女教育支援対策」を推進するための体系化をはかり、その目標と具体
的な対応を規定している。目標は、次の二つである。①言語・文化の壁の解消を通じた社会統
合に寄与すること。具体的には、多文化家庭の子どもの学校教育や社会生活における疎外感と
異質感の克服をはかること。②多文化家庭の子どもの場合には、韓国社会に対する帰属意識を
高め、社会の構成員としてのアイデンティティを確立すること。一般の人の場合は、多文化に
対する理解を深めるなかで、文化的偏見を克服すること、である。そして、具体的な対応とし
て、学校を中心とした多文化教育の強化をはかる事業の推進を掲げている。そのための事業の
推進として、ひとつは、多角的に学校教育力を引き上げることが打ち出されている。その具体
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的な政策として、①外国人労働者の子どもの就学率を上げること、②外国人労働者の父母と子
どもの国籍に基づいた多様な教育プログラムの開発と担当教師の研修を活性化すること、③子
どもの状況に基づくパッケージの支援を実施することなどが掲げられている。事業推進の二つ
目には、多文化理解教育を強化することである。その具体的な政策として、民族的、文化的排
他性を緩和し、他文化理解や他文化に対する尊重、偏見の克服および寛容などを育成するため
の教育課程の改編をはかること、が挙げられている。そのための、支援体制の体系化が作成さ
れた。(図1参照)
韓国の外国人教育政策は、「多文化主義的観点」という単一民族意識に変わる新しい理念に
基づいた政策が策定され、その範囲は多肢に渡っている。外国人教育政策として多文化教育を
打ち出したことは、大きな変化である。しかし、その中身をみると「多文化家庭の子ども」に
対する教育支援と多文化理解教育が具体的な政策としてあげられていることから、「反差別教
育」としての多文化教育の理解は弱いものとなっているといえよう。
図1
多文化教育支援体系
予算交付
事業推進現況報告
通達
出所:教育人的資源部『2007年度多文化家庭子女教育支援計画』
地事
域業
教推
育進
セ
ン
タ
ー
構
成
学事
校業
支執
援行
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韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題
3.「多文化家庭」の子どもの教育の現状
教育資源部が、2006年に「多文化家庭子女の教育実態調査報告書」で問題を分析したように、
「多文化家庭」の子どもは、それぞれの置かれている教育状況とその課題は違っている。例え
ば、外国人労働者の子どもの不就学の問題が起こる背景には、国民ではないことから就学義務
を働きかける行政的支援が弱いことがある。その点で、国際結婚家庭の子どもはその多くが、
韓国籍であることから国民としての権利は、保障されている。
国際結婚家庭の子どもの教育問題は、国民教育=単一民族教育というひとつの文化だけを強
要する教育が行われてきたことにある。「実態調査報告書」で指摘された単一民族教育の弊害
とは、子どもの持っている多様な文化を否定し、その子どものアイデンティティの形成を疎外
したり、自尊感情の育成などに影響を与えるという問題である。このことから、国際結婚家庭
の子どもの教育課題は、国民としての教育機会の平等の問題ではなく、子どものもつ多様なア
イデンティティの育成が保障されるような教育である。
そして、外国人労働者の子どもの教育課題は、国民と同等の教育への権利が保障されること
である。外国人労働者の子どもは、外国人であることから義務教育の対象ではなかった。消極
的に学校の就学を認めてきた10が、権利としての教育機会の平等が保障されたものではなかっ
た。そのことが、結果として多くの不就学に置かれている外国人労働者の子どもを生み出して
いる。2006年の外国人登録をしている5歳から19歳までの登録者数は、25,488人である。未登録
の子どもは、6,814人(表1参照)である。外国人学校11に在籍している生徒は、8,341人である。
義務教育の学齢期(5歳から14歳)に相当する外国人労働者の子どもは、14,614人であり、小・
中学校の在籍数は1,330人である(図2参照)。登録をしたまま帰国をするなど、外国人労働者
の子どもの実数を正確に把握するのに限界はあるものの、相当数の子どもが不就学に置かれて
いることがわかる。その子どもの多くは、未登録の子どもである。それは、未登録の子どもは、
外国人登録証など学校就学に必要な書類の提出ができないために不就学にならざるをえないと
いうことがある。そうした状況を改善するため、2001年、2003年教育法施行令第19条第1項の
改正をし、居住事実証明書(賃貸契約書など)を学校就学の書類としても認めるなど、未登録
表1
未登録移住者の子どもの総数
16歳未満
16∼20歳
合計
2003年度
3,850人
1,590人
5,440人
2004年度
4,502人
2,012人
6,514人
2005年度
4,670人
1,543人
6,213人
2006年度
5,015人
1,799人
6,814人
出典:法務部(2006年)
出所:パク・チョヌン「韓国の移住民福祉の実態と宣教的課題」『RAIK通信』第110号、2008年
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の子どもにも就学を認める措置が執ら
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図2 「多文化」の子どもの就学状況
れた 12。また、2006年教育人的資源部
と法務部(日本の法務省)との間で不
法滞在の子どもの追跡などによる取り
締まりをしないことが合意された。こ
の合意は、不法滞在の発覚を恐れる親
が、子どもの学校就学をさせないこと
を防ぐことにあった。しかし、外国籍
の子どもに対する就学通知のようなも
のがないことから、不法滞在のため未
登録である子どもにも就学が可能であ
2005
2006
2007
ることを親が知らないことや韓国語で
入学手続きをしなければならないとい
った言葉の問題の障壁によって、不就
学になってしまう場合が多いという。さらに、就学をしても学校内での差別や韓国語の習得お
よび学習支援などの問題などがある。
外国人労働者の子どもが、学校で置かれている状況について分析したキム論文 13を参考に、
実態の一端を知る手がかりとする。この論文は、モンゴル出身の外国人労働者の子どもの学校
での実態を分析したものである。キムは、2005年5月末にモンゴル出身の外国人労働者が集中
して居住している地域のK中学校を訪問し、6月5日から23日までの3週間に渡り1週につき3日
ほど学校を訪れ、観察やインタビューをした。キムによれば、外国人労働者の子どもは、学校
の在籍外として管理され、“われわれ”と“彼ら”というような区分がされている状況である
という。担任教師の多くは、依然として、外国人労働者の子どもに関し、学校に出席させなけ
ればならないといった義務感を持っていないという。また、授業や学校生活に不適応になり、
学校に来なくなる生徒に対し、積極的に生徒との関係を築き、学校適応を促す事例もあるが、
放置されたまま、中途退学になってしまうという。
モンゴル出身の子どもを対象にしたのは、その学校在籍数が、ほかの外国人労働者の子ども
に比べて多いものの、社会的に脆弱性を持っているからであるという(図3参照)。その結果、
判ったことは次の点である。第一に、入学は、学校長の裁量によって許可されている為、許可
された学校に外国人労働者の子どもの入学が集中する。K中学校が、2002年にモンゴル出身の
生徒の入学を受け入れた時、正規の学生ではなく聴講生という資格で受け入れた。当時は、学
校生活の適応で問題がある場合、学校在籍を認めないとった条件を提示したうえで、入学を許
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韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題
可していた。その条件とは次
図3
小・中・高校在学 国籍別外国人労働者の子どもの現況
のようなものであった。
人数
①3年のすべての教育課程
を履修する場合、卒業証
書ではなく修了証を発行
することを原則とする
②学生の成績処理に関し、
成績の順位は記載せず、
点数だけ記載することを
原則とする
③修了証を受け取る場合、
卒業対象にはならず、卒
業証書の似た形式で、記録を残すことを原則とする
④授業料および、学校運営費は、徴収せず、受益者負担に相当する費用だけ徴収することを
原則とする
⑤学校生活において、問題を引き起こしたり、適応がうまくいかない場合や途中で学業を放
棄したり、特に学校生活において、非行に走ったりした場合、本校に送らないように措置
する
⑥同様な事項は、推薦した牧師および、保護者、学生から覚え書きをもらうこと
⑦同様なことが再発時、本校では、定員外の学生として2名以上は、入学を許可しないこと
を原則とする
第二に、卒業資格に関し、校長が責任をとれないということである。外国人の子どもの就学
の受け入れを、校長の判断でしたり、卒業証書を出したりしているものの、こうしたことは簡
単なことではないという。特に、不法在留のモンゴル出身の子どもに対して、K中学では学則
を変更し、入学の許可が可能になったが、卒業証書の発行をすることは、学則上難しいという。
入学に関する法的改定が必要であるという。
そうした問題が生じている原因として、次のことを挙げている14。一つには、外国人労働者
の子どもと国際結婚による子どもの教育課題が違っているにもかかわらず、「多文化家庭」の
子どもという規定として扱われていたため、外国人労働者の子どもが「定員外児童・生徒」と
して扱われていることやそのことから生じている問題を行政が把握できていないことである。
二つ目には、行政と現場との意思疎通ができていないことである。卒業証書に関する通達が別
途に存在するわけではなく、教育委員会の認識は、入学の許可と同時に卒業証書の付与も行わ
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れているというものであった。しかし、実際は、個別の学校の状況に任せるというスタンスで
あったため、校長にその判断を任せる状況があった。第三に、教育人的資源部が、就学の促進
をはかることに力を入れているが、現場で生じているこうした問題の解決に向け、法的に指導
できないという立場をとっていることであるという。
そして、こうした制度的な問題だけでなく、モンゴル出身の子どもが直面している問題に、
アイデンティティに関わる問題を挙げている。K中学に学ぶモンゴル出身の子どもは、学校で
は韓国式名前を持っている。入学を担当する教務部の教師が、入学の際、韓国式名前をつけた
のである。その教師は、学校にうまく適応できるために韓国式名前をつけたということであっ
た。モンゴル出身の子どもは、外見上韓国人と違わないことから、教師たちの中には、モンゴ
ル人であるということを把握できていない教師もいるという。キムがインタビューしたモンゴ
ル出身の生徒は、「韓国人になりたい」と思っており、学校に適応している生徒ほど、モンゴ
ル人だと規定されたくないと思っていたり、学校の同級生にモンゴル人であることを明かした
くないと考えている生徒がいることを明らかにしている。彼らは、できれば、韓国人として生
きていきたいと思っているという。しかし、韓国の学生たちと同じ条件で学校生活を送ってい
ても、卒業資格の問題により韓国の学生と同じように進学できないため、大きな挫折を味わう
ことになる。自ら韓国人だと考えていても、韓国人ではないことを自覚させられるこうした状
況があり、彼らは不安を抱えているという。
キムによると、韓国社会が外国人労働者の子どもの教育の問題により積極的に対応するため
に考慮しなければならないだけでなく、重要な争点を提示しているという。一つには、外国人
労働者の子どもの教育が、権利ではない問題である。すべての子どもに教育を受ける権利があ
ることが明らかであるにもかかわらず、現実には校長が入学の許可を個別に与えているだけで
なく、外国人労働者の子どもの問題に関心がある教師でさえ、彼らに教育を受ける権利がある
ことを認識しているとはいえないという。教師たちにとって重要な基準は、彼らの在留資格が
合法であるか不法であるかという点であり、権利としての入学許可でないことから、教師たち
に外国人労働者の子どもが教育を受ける環境を措置しなければならないという認識をもってい
ないという。例えば、韓国語の能力不足によって、授業が理解できないという問題について、
学校や教師が関心を持って対処しなければならない問題ではなく、生徒が自ら適応すべき問題
であると考えているという。そのまま学校生活を送るのか、中途退学をするのかも生徒個人の
問題であるという認識をもっている。
二点目は、外見では韓国人と区別がつかないことから、モンゴル人の生徒の存在が見えない
ことがある。しかし、韓国人生徒とは明らかに区別されているという。例えば、出席簿の扱い
で、モンゴル人の生徒は、韓国人生徒の10番ほど後に記載される。試験期間には、教師が「モ
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韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題
ンゴル人の生徒は担任教師まで試験用紙を別途手渡すこと」といったメッセージを黒板に書い
ておくといったことがある。問題なのは、モンゴル人の生徒の存在が「見えない」「見ない」
状況があるなかで、一方では明確な区別がされていることであるという。教師は、相対的にモ
ンゴル人の生徒の成績や出席に関心がなく、モンゴル人の生徒に関心を持っていても、韓国人
の生徒と同じような考慮をすることはない。学校生活で受けた差別的な区分は、モンゴル人の
生徒のアイデンティティに重要な影響を与えることが予想され、それは、彼らの母国との関係
を結ぶ上で、また、韓国社会との関係を結ぶ上で、一定の影響を及ぼすだろうという。
三点目は、学校生活にうまく適応している事例もみられるが、適応できないモンゴル人の生
徒も多い。彼らの存在は、学校で浮き彫りになることもなく消息を絶ってしまう中途退学者に
なる。中途退学者は、学校教育の機会をもてないため、相対的に社会的周辺に位置する可能性
があるということである。
キム論文から判ることは、外国人労働者の子どもの教育課題として、国民と同等な教育への
権利が保障される制度的変革だけでなく、教師の意識の変革が重要だということである。「多
文化教育支援対策」が機能していない理由の一つに教員の意識改革や養成が不十分であること
を挙げているが、どのように教師の意識改革や養成をしていくか着目していく必要がある。
4.日本の在日外国人教育からみた類似点と相違点
日本の在日外国人教育の対象はニューカマーの子どもたちが多く学校に在籍するようになる
まで、旧植民地出身者である在日韓国・朝鮮人の子どもであった。在日韓国・朝鮮人の子ども
たちの多くは日本名(通名)で学校に通っていることから、「見ない・見えない・見ようとし
ない」存在であると云われてきた。また、日本語を母語とする世代に移行したことから、日本
語の学習や習得は問題とならなかった。日本人教師にとって、在日韓国・朝鮮人の子どもたち
の存在は、「日本人と同じように扱う」対象であったが、それは、「日本人として扱う」ことで
あった。日本人教師の多くは、日本名を名乗っていることを当然視し、民族差別の現状を、積
極的/消極的に肯定/是認してきた。1970年代に入り、民族差別の現状を教育問題としてとら
える大阪の教師が中心となって、在日朝鮮人教育の実践に取り組んでいった。在日朝鮮人教育
とは、日本人と在日韓国・朝鮮人の子どもたちを対象にした教育実践である。その教師達が教
育課題として採り上げたのは、在日韓国・朝鮮人の子どもが日本名を名乗っていることであっ
た。それは、教師の多くが、在日韓国・朝鮮人の子どもが日本名を名乗っていることを疑問に
思っていなかったからである。在日朝鮮人教育に取り組んだ教師たちは、名前の問題には、植
民地支配という歴史的な問題と日本社会の差別の問題が反映しているととらえた。その実践は、
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日本人の子どもたちと在日韓国・朝鮮人の子どもたちとの人間関係の有り様を問い直し、変え
ていくことを踏まえた教育実践であった。
そして、1980年代以降の国際結婚や難民、中国からの残留帰国者や1989年「出入国管理及び
難民認定法」の改訂によって単純労働者として受け入れた日系ブラジル人やペルー人の子ども
たちなど、ニューカマーの増加とともに多様な背景を持つ子どもたちが日本の学校に多く在籍
するようになると、外国人教育の対象や関心は、主にその子どもたちとなった。ニューカマー
の子どもたちの教育の主要な課題は、日本語教育であった。文部科学省(文科省)は、これら
の子どもを「日本語指導が必要な外国人児童生徒」ととらえ、支援施策を打ち出した。文科省
の調査によれば(2007年度)
、日本語指導が必要な外国人児童生徒は、25,411人である。日本語
指導が必要な外国人児童生徒が在籍している公立学校は、5,877校である。また、都道府県にお
ける施策の実施されている事業をみると、担当教員の研修が最も多く、次に、児童生徒の母語
を話せる相談員の派遣、就学案内の発給、担当教員(常勤)の配置などとなっている。市町村
の実施状況では、児童生徒の母語を話せる相談員の派遣が最も多く、次に、就学・教育相談窓
口の設置、就学案内の発給、受け入れに際し、特別な配慮を行っている学校(拠点校、センタ
ー校など)の設置などを実施している市町村が多い。市町村が、外国人児童生徒の就学に関す
る実務的な事業を担っている。
文科省は、外国人児童生徒に対する支援施策として次の5点を掲げている。①外国人児童生
徒などにたいし、日本語指導を行う教員の配置、②日本語指導者等に対する講習会の実施、③
就学ガイドブックの作成・配布、④帰国・外国人児童生徒受入促進事業として、地域の支援体
制のモデルのあり方や不就学の外国人の子どもの就学促進に関する調査研究の実施、⑤JSL
(第二言語としての日本語)カリキュラム実践事業などである。文科省は、こうした施策を打
ち出しているものの、体系的な在日外国人教育政策があるわけではない。ニューカマーの子ど
もに対する日本語指導の基本は適応教育である。
日本の外国人教育が、子どもの教育への権利を保障するという立場から行われてきたとはい
えない。文科省の基本方針は、在日外国人の子どもの学校就学は、義務ではなく、就学を希望
する限りにおいて受け入れるというものである。すなわち、在日外国人の子どもは、義務教育
の対象ではなく、日本の学校就学は、恩恵・配慮なのである。例えば、文科省は、ニューカマ
ーの子どもの不就学15の状態を放置し、正確な人数の把握や実態調査に取り組んでこなかった。
在日外国人の不就学の問題は、総務省行政評価局の通知「外国人児童生徒の教育に関する行政
評価・監査結果に基づく通知」(2003年8月)や「外国人集住都市会議16」での不就学対策に関
する提言などで早くから指摘されていた。そうした中、文科省が、在日外国人の子どもの不就
学の事態調査に取り組んだのは、2005年度からである。在日外国人の子どもの不就学の問題を
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韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題
放置してきた一つの要因として、国民ではない在日外国人の子どもは就学義務の対象にはなら
ないという文科省の姿勢があった。
ところで、韓国の「多文化家庭」の子どもの教育と日本の在日外国人の教育を比較して、類
似点と相違点を整理してみたい。類似点のひとつは、外国人の子どもは教育への権利が保障さ
れていないことである。韓国(1991年)や日本(1994年)はそれぞれ「子どもの権利条約」を
批准している。しかし、「子どもの権利条約」の理念である権利の主体として外国人の子ども
の教育への権利の保障ではない。権利の主体は「国民」に限定され、外国人の子どもの教育は
恩恵や配慮にすぎない。その結果、韓国や日本では、学校教育から排除され、不就学になる外
国人の子どもの問題が起こっている。日本では、ニューカマーの子どもだけでなく、定住外国
人17である在日朝鮮人4世(韓国籍)も不就学になる不安を抱えている。この子どもが在籍して
いた京都市の公立中学校の校長から「在日外国人には就学義務はないので除籍できる」といっ
た発言がなされ、結果として「退学届け」を提出させられるということ18や、大阪市の公立中
学校への就学を希望したタイ国籍生徒の編入を拒否し、申請書を渡さず放置していたというこ
と19が起こっている。
二つ目は、韓国のモンゴル出身の子どもの学校での名前が韓国式名前に変えられるという問
題を採り上げたが、日本でも在日韓国・朝鮮人の子どもだけでなく、ニューカマーの子どもの
名前の問題が起こっているのである。例えば、日系ブラジル人の子どもが、保護者や子どもが
よくわからないまま学校就学に際して名前の選択を強いられ、「本名」でない「学籍簿の名前」
が、学校での名前になるということがある20。
次に、相違点のひとつは、韓国政府が、「多文化主義」を理念とした外国人政策をもとに教
育政策を打ち出しているのに対し、日本では、体系的な外国人教育政策がないことである。日
本の外国人教育は、在日朝鮮人教育のように教師の取り組みから始まり、市民やNGO、一部
の自治体など外国人教育をめぐる取り組みが広がってきた。韓国が、「上からの」外国人教育
が政策として打ち出されたのに対し、日本は、「下からの」外国人教育の取り組みが行われて
きたといえよう。
二つ目は、韓国華僑と在日韓国・朝鮮人の教育問題に対する関与の違いによる、外国人教育
の蓄積の差である。韓国華僑は、「長期滞在外国人」という法的地位で処遇され、徹底した分
離政策のもとで暮らしてきた。韓国華僑の子どもは、華僑学校で学ぶものが多かったこともあ
り、外国人の子どもの教育問題が論議されるようになったのは、「多文化家庭」の子どもが学
校に在籍するようになってからである。韓国の学校における外国人の子どもの教育問題はそれ
まで存在しなかったか、あったとしても問題にすらされなかったと思われる。一方、在日韓
国・朝鮮人は、朝鮮学校や韓国系学校など民族学校で学ぶ子どもたちもいたが、その多くは日
京都精華大学紀要 第三十六号
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本の学校で学んできた。日本の学校で、在日韓国・朝鮮人の子どもは同化教育の対象であった
が、在日朝鮮人教育の実践や差別の問題、権利の獲得に向けた運動など、外国人教育の問題や
課題を提起してきた。その蓄積は、ニューカマーの子どもの教育の問題を、これまでの実践の
連続性でとらえる視点を提供している21。
おわりに
韓国における「多文化家庭」の子どもの教育を政策や現状からみると、韓国における教育の
変革は、まだ端緒についたところであるといえる。これまでの外国人政策の中心は、外国人労働
者を対象にしたものであり、「多文化家庭」の子どもの教育問題を教育政策に打ち出してから
数年しか経ていない。外国人労働者の子どもの入学資格や卒業資格の問題などが起こっている
背景には、教育政策が教育現場まで浸透していないことがある。そして、日本の在日外国人教
育と比較して、類似点と相違点の考察をした。
以上のことから、明らかになった韓国における教育課題は次の点である。ひとつは、政府主
導の多文化主義に基づく統合主義が、
「同化的社会統合政策」に陥らないために、
「多文化家庭」
の子どもの教育を権利として位置づけなければならない。単一民族論が強かった韓国が、社会
政策の理念に多文化主義を掲げたことは、未だ、単一民族論の呪縛から抜け出せていない日本
に比べて、大胆な方向転換をしたといえよう。韓国の社会政策の理念である多文化主義が単に、
「同化的社会統合政策」の言い換えとして使われないためには、「多文化家庭」の子どもが教育
への権利の主体であることが前提になければならない。韓国では、不就学にある「多文化家庭」
の子どもの就学率を上げることを政策課題にしているが、権利の主体であるという前提のもと
に、不就学の子どもに対する教育政策が施行されなければならない。「多文化家庭」の子ども
の学校就学の問題は、平等な教育への権利の保障とも関わる教育課題でもある。
二つ目は、「多文化主義的観点からの総合支援対策」が有効に機能するためには、多文化理
解教育にとどまらない反差別教育としての多文化教育の必要性である。「多文化家庭」の子ど
もをめぐる差別の問題に取り組み、学校文化の変革を促すための多文化教育が行われなければ
ならない。その象徴的な問題として、名前の問題がある。モンゴル出身の子どもにみられる学
校就学に際して「韓国式名前」が、教師によってつけられることをどのように考えるかである。
その点では、日本の在日外国人教育は、参考になるだろう。日本での最初の在日外国人教育で
ある在日朝鮮人教育は、在日韓国・朝鮮人の子どもの「日本名(通名)」の問題を中心に教育
実践が取り組まれてきたからである。韓国において、教育現場からの外国人教育の実践の蓄積
を促すための教師の意識変革や養成が課題となる。
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韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題
ところで、日本では、2009年7月8日「外国人登録法」の廃止を含む「出入国管理及び難民認
定法」改定案と「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関す
る特例法改正案」が成立した。この新たな「改定法」が意味するものや問題点について次のよ
うな指摘がある22。特に問題であるのは、国家による外国人情報の継続的一元管理システムで
あり、治安・監視、管理制度をより強化させるとともに、「移住労働者の受け入れ政策」や
「適法な外国人住民基本台帳を含むいわゆる社会統合的政策」の基底となる点であるという。
具体的な問題点のなかで、教育と関連してくる問題点として①難民申請者(仮滞在許可者を除
く)を含む非正規滞在者は、「外国人住民基本台帳制度」による自治体行政サービスからの対
象から排除されること、具体的には、非正規滞在者の子どもの学校就学や健康などの保障外に
置かれてしまうこと、②外国籍住民の中で、在留資格による選別が行われ、相互の分断、階層
化が強化され、日本語能力と納税義務を柱とする「選別された優良外国籍マイノリティ」に対
する「同化的社会統合政策」が行われること、が指摘されている。体系的な外国人教育政策を
持たなかった日本が、社会統合政策を視野に入れ始めたといえる。
この様な日本の外国人政策の問題点を留意しながら、統合政策として「多文化主義」を理念
に掲げた韓国で、「多文化家庭」の子どもの教育課題がどのように政策に反映されていくかと
いうことは、極めて重要である。今後は、本稿で明らかにした、韓国における「多文化家庭」
の子どもの教育の課題について、さらに研究を進めていきたい。
1 韓国法務部 2 ハン・ゴンス「歴史的背景から見た韓国の多文化社会」『KOREANA』vol.15.No.2夏号、韓国国際交流
財団、2008、10頁
3 韓国の外国人政策に関し、宣元錫「韓国の移住外国人と外国人政策の新展開」(情報化・サービス化
と外国人労働者に関する研究Discussion Paper No.7 、一橋大学大学院社会学研究科・総合政策研究室、
2007年4月)を参照している。
4 中小企業の労働力不足を補うために導入された1993年「産業技術研修制度」。1年間の「研修」であっ
たが、1996年から2年に延長され、2年を終えた後、1年間労働者として働ける「研修就業制度」1998
年が導入された。2007年廃止。
5 父母の出身国の国籍法が父母両系血統主義の場合、二重国籍者となるが、韓国の「国籍法」では、22
歳になるまでどちらかを選択する必要がある。
「国籍法」第二条(出生による国籍の取得)①次の各号の一に該当する者は、出生と同時に大韓民国
の国籍を取得する。
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一 出生当時、父または母が大韓民国の国民である者
二 出生する前、父が死亡したときは、死亡した当時の大韓民国の国民であった者
三 父母ともに明らかでないとき又は国籍がないときは、大韓民国で出生した者
6 韓国華僑に関して、王恩美『東アジア史のなかの韓国華僑』三元社、2008年を参照している。中華民
国国籍の韓国華僑の人口は、21,357万人である。(2003年度『出入国管理統計年報』)
7 2003年韓国華僑の在留資格は、居住11,352人、永住9,967人、永住配偶者38人となっている。
8 王恩美によれば、韓国社会の制度的差別構造は徐々に改善されているものの、依然として就職差別や
昇進差別が残っているという。また、韓国社会では国民を対象とした「住民登録制度」が身分認定シ
ステムとして作用しているが、外国人登録番号がそれに変わるシステムとして作用していないため、
社会生活を営む上で制度的な不自由さを余儀なくされているといった差別が、まだ、問題として残っ
ているという。王前掲書、463頁。
9 『 2 0 0 7 年 度 多 文 化 家 庭 子 女 教 育 支 援 計 画 』 教 育 人 的 資 源 部 ( 教 育 福 祉 政 策 課 )、 2 0 0 7 年 5 月
(『2007
10
』
(
))
2008年2月まで、一時的に外国人労働者の子どもや国際結婚のために親と同伴で入国した子どもに対
しては、小学校の就学を認めるという政策をとっている。
11
教育人的資源部の許可を受けている外国人学校は33校であり、許可を受けていない学校も含めると約
70校ある。
12
崔佳英「韓国における外国人労働者の児童・生徒の教育権」『相関社会科学』第18号、2008年、87頁。
13 キム・ジョンウォン「国内モンゴル出身外国人労働者の子女の学校教育の実態分析」『Korean
Journal of Sociology of Education』第16巻第3号、教育社会学研究、2006年(
」 『 Korean
Education』第16巻第3号、
14
「
Journal of Sociology
of
、2006年)
崔前掲書。90頁。
15 田中宏によると、2007年度義務教育段階の5歳∼14歳の外国人登録者131898人のうち、日本の小・中
学校と外国人学校の在籍者数91940人をのぞく、約4万人が不就学として考えられると指摘している。
16
2001年5月7日外国人の多く住む13都市で結成。外国人住民に関わる施策や活動状況に関する情報交換
や問題の解決に積極的に取り組んでいくことを目的として設立。
17
日本に生活の根拠を置き、市民・住民として暮らしている外国人。留学生や仕事などでの長期滞在者
を除く在留資格である特別永住者、永住者、定住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者など約130万
人。(2004年在留外国人統計総数約200万人の約7割)他、在留資格を持たないものの日本社会に生活
の根拠を置き暮らしている外国人とその子ども。
18
2006年在日コリアン四世義務教育退学裁判
−70−
19
韓国の学校における「多文化家庭」の子どもの教育と課題
2009年一部教師の反対によって、就学を希望するタイ国籍の生徒に区役所に提出する入学申請書を渡
さなかった。大阪市教育委員会から指導を受け、申請書を渡したものの、「対応マニュアルの作成な
ど条件が整わないと受け入れられない」「ほかの学校に行けばいい」といった発言が教師の一部から
出され、編入後2週間、クラスも決められなかった。
20
リリアン・テルミ・ハタノ『マイノリティの名前はどのように扱われているか』ひつじ書房、2009年、
11頁∼13頁。
21
中島智子によれば、ニューカマー教育に見られる母語・母文化の場の提供と生徒のアイデンティティ
確立への熱意や「民族講師」の存在など、大阪における在日朝鮮人教育の土壌がニューカマーの高校
生への対応に活かされているという。
22 丹羽雅雄「新たな在留管理法制と民族的マイノリティの子どもの達の教育権」民族教育フォーラム
『民族的マイノリティの子どもたちの教育権』での報告、2009年8月30日。
〈参考文献〉
田尻英三、田中宏、吉野正、山西優二、山田泉『外国人の定住と日本語教育』ひつじ書房、2004年
中島勝住「韓国におけるマイノリティの学校―華僑学校研究の可能性」教育の境界研究会『教育解放』第
8期第4号、2007年12月
中島智子「連続するオールドカマー/ニューカマー教育」志水宏吉編著『高校を生きるニューカマー』明
石書店、2008年
松岡洋子「韓国の移住外国人に対する韓国語施策および支援事情」『移住者と受入住民の多文化的統合を
視座として共通言語教育』日本学術振興会平成16年度∼19年度科学研究費補書金 基盤研究(B)(1)
研究成果報告書、2008年3月
パク・チョヌン「韓国の移住民福祉の実態と宣教的課題」RAIK通信第110号、在日韓国人問題研究所、
2008年11月、10頁
ソ・ヒョク「多文化家庭の現況及び韓国語教育支援方案」『人間研究』/
「
」(Multicultural Family and Korean Language Education)『
No.12』
2007年
宣元錫「動き出した韓国の移民政策」『世界』岩波書店、2009年11月
李月順「在日朝鮮人の民族教育と在日朝鮮人教育」朴鐘鳴編『在日朝鮮人の歴史と文化』明石書店、2006
年
李月順「教育基本法「改正」と在日外国人の子どもの教育」『書評』126号、関西大学生活協同組合編集委員
会、2006年9月
京都精華大学紀要 第三十六号
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異文化間教育学会『異文化間教育No.21』アカデミア出版会、2005年
文部科学省「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入状況等に関する調査(平成19年度)」
www.mext.go.jp_menu/houdou/20/08/08073011/001/001.htm
『2007
』
『
』 www.moj.go.kr
韓国国際交流財団『Koreana』Vol.15,No.2夏号2008
(
)2007年
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