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不断の熱意と進化
Unique NYK 不断の熱意と進化 経営戦略を支え、長期的成長をリードする独自の取り組みをご説明します。 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 39 持続的成長をリードする重要課題(マテリアリティ)への取り組み 日本郵船グループは日常業務を通じて各ステークホルダーへの責任を果たす中で、ステークホルダーの視点と、 経営の視点から、 「リスクと機会」を洗い出し、企業価値に重要な影響を及ぼす最優先テーマを 3 つに絞りました。 日本郵船グループのステークホルダー 金融機関 株主・投資家 メディア 行政 NPO・NGO お取引先 地域社会 お客さま グループ社員 Unique NYK 社会・さまざまなステークホルダーへの責任 PDCA* 1サイクル 各事業部門の日常業務における CSR 活動プログラム* 2 社会的責任を果たしつつ、健全な成長を続けるために、 コンプライアンスやリスク管理などの「守りの CSR」ともいえる基礎体力部分の強化と、 お客さまのバリューチェーンの中で物流を担う本業を通じた「攻めの CSR」で 自らの強みを最大限に活かすことの両方をバランスよく実践しています。 *1. Plan、Do、Check、Act *2. 各事業部門が日常業務に即した具体的な CSR 活動項目を設定し、1 年を通した PDCA サイクルで主体的に活動を進めるもの 日本郵船グループの「攻めの CSR」の歴史は 20 年以上 1990 年 地球環境委員会 設置 1992 年 安全推進本部 設置 安全・環境活動推進体制図 2014 年 4 月 1 日現在 安全・環境対策推進委員会(SEMC) 委員長[社長] 2001 年∼ 安全・環境対策推進委員会 安全と環境に関する取り組みをより強化するため地球環境委員会 と安全推進本部の機能を併せ持つ委員会を設立し、安全・環境関連 事項の方針策定、実施のモニター、活動の推進を担う。 n それ以外の主な安全・環境保全活動 1998 年∼ NAV9000 適用開始 独自の安全運航管理システムを導入 2005 年 Save Bunker Project 高騰する燃費削減と CO2 排出の削減を目的とした全社活動 2008 年 環境特命プロジェクト 環境問題を経営上の最重要課題として捉えた、社長直轄の プロジェクト 40 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 安全対策推進本部長 上級環境管理責任者(ECEM) [海務担当役員 1 名] [環境担当役員 1 名] 安全対策推進本部 (運営委員会) 事務局 [海務グループ長] [企画グループ長] 環境対策推進本部 (運営委員会) 事務局 [環境グループ長] [企画グループ長] リスク 環境 安全 人材育成 規制対応に遅れると 事故を起こすと 人材が不足すると ・事業活動停止 ・信頼失墜 ・対応コストが増大 ・物流停滞により経済活動に支障を きたす ・世界的に船員が不足する中、確保で きなれば競争力が低下 Unique NYK ・ビジネスチャンスの逸失 チャンス 環境 P.48 ・燃料消費量削減によりコスト増加 を抑制 ・先進的なイメージが定着し、顧客 ロイヤルティが向上 ・イノベーションの土壌が根付く 安全 P.53 ・付加価値として商談に活用 ・評判につながり、新たなビジネス チャンスを創出(エネルギーバリュー チェーンにおける LNG 輸送や海洋 事業) 人材育成 P.56 ・原油や LNG など取り扱いが難しい 貨物の輸送で引き合いが増加 ・安全に輸送できる技術力を持った 船員の育成 ・人材力がそのまま他社との差別化 になる ・多様な能力を掛け合わせ、新たな 価値を創出 マテリアリティへの取り組みと今後の期待 TMI 総合法律事務所 弁護士 北島 隆次さん 当社グループのこれまでの 今後、当社グループに期待すること マテリアリティへの取り組みについて 今回、 「人材育成」がマテリアリティに加わりま 2008 年より、部門長へのインタビューなどを通 した。人材の流動化が当たり前のグローバル社 じて、CSR の立ち上げに関与してきました。 会では、今後は、育成に加えて、優秀な人材を惹 日本郵船のすごさは、マテリアリティという きつける魅力的な会社づくりも必要になるで 言葉が用いられる前から、自社の CSR の柱を しょう。CSR 活動はともすればルーティンワー 「環境」と「安全」と定め、 それがどの部門にも違 クになりがちです。エネルギー情勢をはじめ、 和感なく受け止められていたことです。その後、 世界のトレンドが目まぐるしく変化する中、企 各部門単位で CSR 推進プログラムを策定し事 業は何を将来に向けてすべきなのかを常に考 業計画との連動をはかり、中期経営計画に売上 え、世の中に新たな問いかけを続ける日本郵船 目標と並んで CSR 推進を明記するなど他社に でいることを期待しています。 先駆けた活動を続けてきました。 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 41 数値で見る日本郵船グループの進化 環境面の進化 環境課題を成長へのチャンスに変える SOx 排出量 –100% リスクと機会 規制対応に遅れると 事業活動停止 対応コストが増大 先進的に取り組む日本郵船グループでは 燃料消費量削減によりコスト増加を抑制 先進的なイメージが定着し、 燃料を重油から LNG へ変換することにより、重油使用時と比較して SOx 排出量を 100%、NOx 排出量を約 80%、CO2 排出量を約 30%、 それぞれ削減できる見込みです。 Unique NYK 顧客ロイヤルティが向上 イノベーションの土壌が根付く Topics 進化し続ける CO2 排出量削減への取り組み 最適経済運航「IBIS プロジェクト」は第 2 ステージへ 2012 年度より、当社コンテナ船隊で、最適 コミュニケーション 経済運航「IBISプロジェクト」が始まりまし モニタリング オペレーター た。気象・海象や本船の運航計画・運航状 態などの情報を本船側と陸上の運航担当者がリアルタイムに 共有し、最適経済運航を追求することで、航海中の CO2 排出 過去の航海データ事例集 ベストプラクティス 環境が刻一刻と変わる中、海上ブロードバンドや SIMS 導入に 迅速に意思決定を行うことが可能になり、確実な成果を挙げ てきました。 フリート比較 実海域性能解析 各船の性能データ ・平水中性能 ・海気象による影響 量を削減しています。天候や寄港地の状況など航海における より、陸上での運航状況のモニタリングが強化され、船陸間で データ蓄積 最適経済運航の仕組み 環境経営指標 環境経営指標(g-CO2 /トン・キロメートル) さらに 2013 年度は、IBIS プロジェクトで得た知見やノウハ 船種 ウを他船種に展開し、それぞれの特性や条件に応じて減速運 原油タンカー 3.40 3.11 3.03 自動車専用船 56.98 47.55 44.15 コンテナ船 14.66 11.17 10.32 航の深度化を図る「IBIS TWOプロジェクト」が始動しました。 エンジン低負荷航行と一定負荷でスピードの平準化をはかる ことを目標とし、各船種・ビジネスに合った取り組みで、燃料 節減、CO2 排出量削減を実現しています。 IBIS:Innovative Bunker & Idle-time Saving SIMS:Ship Information Management System 42 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA 船種 2006 年度 2010 年度 2013 年度 改善率 2006 年度比 2010 年度比 原油タンカー 10.9% 2.6% 自動車専用船 22.5% 7.2% コンテナ船 29.6% 7.6% 数値が減少すると、トン・キロメートル当たりの CO2 排出量が改善したことになります。 NYK Report 2014 CO2 排出原単位(2006 年度比) 「NYK スーパーエコシップ 2030」の CO2 排出量 –18.1% – 69% 2013年度は CO2排出原単位を2006年度比18.1% 削減し、前中期経 日本郵船が 2030 年に実現可能な環境技術を想定し、描いたコンセ 営計画目標である「2006 年度比 10% 削減」を達成しました。 プトシップ「NYKスーパーエコシップ2030」 。未来の環境技術を駆使 した本船では CO2 排出量を 69% 削減することが可能です。 Unique NYK 高い評価を得る日本郵船グループの技術力 「泡」で省エネ。 モジュール船 「空気潤滑システム」が国内外で数々の賞を受賞 「空気潤滑システム」 とは船底に空気を送 2030 年の船の姿を描いた り込むことによって 「NYK スーパーエコシップ 2030」 泡を発生させ、海水 との摩擦抵抗を減ら 資源開発などで設置されるプラント向けに、半完成品の状態に組み立てられた「モ ジュール」と呼ばれる貨物を輸送する特殊重量物輸送船 主機掃気バイパス方式 主機の過給機から掃気(燃焼用空気)の一部を抜き出して船底に導き、 船舶と海水の摩 擦抵抗を低減させて二酸化炭素(CO2)削減を図るシステム 空気を船底に 送り込んでいる様子 2050 年までにゼロエミッション船の開発を目指し、その中間 す省 エネ 技 術です。 地点となる 2030 年のコンセプトシップとして「NYK スーパー 地球温暖化防止への取り組みが高く評価され、 「2013 年日経 エコシップ 2030」を描きました。燃料電池や太陽光、風力な 地球環境技術賞・最優秀賞」をはじめ、数々の賞を受賞してい どの自然エネルギーを使う一方、船体の軽量化などにより、 「ブロ ます。当社グループでは2010年に外航船で世界で初めて CO2 排出量 69% 削減を目指す未来のコンテナ船です。NYK ア(送風機)方式」による空気潤滑システムをモジュール船2隻 スーパーエコシップ 2030 で描かれている技術のいくつかは、 に搭載し、続いて2012 年 7月に同じく世界初の「主機掃気バイ すでに本船に導入・搭載され、実用化されています。 パス方式」を当社運航船に搭載しました。ブロア方式では平 均約 6% の CO2 削減が確認され、主機掃気バイパス方式では 約 4% ∼ 8% の CO2 削減が見込まれています。さらに、本シス テムは 2014 年 5 月竣工の自動車専用船にも搭載されており、 他船種への実用化を進めていくことにより、地球温暖化の抑 制に努めていきます。 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 43 数値で見る日本郵船グループの進化 安全面の進化 日々の積み重ねが次のビジネスを作る 当社所有船におけるブラックアウト復旧テスト実施率 リスクと機会 事故を起こすと 信頼失墜 物流停滞により経済活動に支障をきたす 100% ブラックアウト(電源喪失)が発生すると、船舶をコントロールする 独自の基準で厳しく管理する日本郵船グループでは 付加価値として商談に活用 機能が失われ、衝突や座礁などの重大事故に発展する恐れがあり ます。そのため当社では、所有船の発電機関連機器の健全性確認、 不具合箇所の発見および乗組員の訓練を目的として、ブラックアウ 評判につながり、新たなビジネスチャンスを創出 Unique NYK (エネルギーバリューチェーンにおける LNG 輸送や 海洋事業) ト復旧テストを 2010 年から毎年実施しています。 3,807 件 NAV9000 改善件数 1998年から当社グループ独自の安全運航管理システム「NAV9000」 を導入。自社船・用船問わず、船舶や船主、船舶管理会社に安全運 航に関する事項を開示し、遵守を求めています。 Topics 国際海上輸送路の治安・安全確保に貢献する国際的活動を支援 国連機関などによるソマリア社会再建活動への支援 2013年より当社は、Shell International Trading and Shipping Company Limited社の提唱に応じ、British Petroleum、Maersk VOICE 外部ステークホルダーからの声 ソマリア沖とインド洋沖の海賊被害は、この 1 年半で大幅に減 少しています。これは船社が BMP に基づく自衛を行い、連絡体 Line、Stena Line、商船三井および川崎汽船とともに、ソマリア 制や海賊に関する知識を深めたことによります。一方で、常に 沖、アデン湾、インド洋における海賊行為沈静化の抜本対策と 存在するソマリア海賊の脅威に対しては、根本的な原因を特 して、 国連開発計画(UNDP)が主導する「ソマリア社会再建プ 定し、国際機関と民間企業が一体となり包括的な取り組みを ログラム」に協賛しています。海賊行為の社会的・経済的原因 となる貧困問題の根本的改善を目指す同プログラムへの参画 継続することが重要です。このような背景の中、2009 年に EU 海軍は「軍民連絡調整プログラム」を導入し、日本郵船は現在 までに 7 名の船長を MSCHOA に派遣しました。このプログラ は、 日本と欧州・アフリカ・中東地域を結ぶ重要な海上通商路、 ムに貢献し続ける日本郵船と EU 海軍との協力体制は他に類 および国際社会の発展に不可欠な資源・エネルギー輸送路の をみないものであり、情報、実地経験および海賊対策の知識の 安全確保に寄与することのみならず、ソマリアならびに海賊行 交換を通じて、相互にとって有 為に苦しむ関係諸国に対する国際貢献に繋がり、極めて重要 益なものとなっています。 な国際的・社会的意義を持っています。昨年は、国連開発計画 が行う「農業・漁業を含む職業の就労推進により生活基盤を Liaison Officer at European Union Naval Force 確立し、 海賊行為に代わる生活手段を提供するプログラム」を Simon Church 支援しました。2 年目となる今年も、具体的な就労推進プログ ラムを選択・決定し、支援していきます。 44 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA BMP:Best Management Practice MSCHOA:Maritime Security Centre Horn of Africa NYK Report 2014 10,000 名超 安全推進キャンペーン参加人数 毎年 7月1日から2カ月間、安全運航の重要性をすべての社員が再確 認します。経営トップをはじめ関係する社員が運航船に足を運び、 安全運航の実施状況を検証するなどします。 神戸ターミナル顧客満足度調査で「満足」と回答した率 Unique NYK 83% 2008年度より、神戸ターミナルを利用するほぼすべてのお客さまを 対象に満足度調査を実施しています。調査結果と今後の取り組み について各社に報告し、お客さまからいただいたご意見やご指摘は 真 に受け止め、安全の確保に向けた改善に役立てています。 グループ運航全船で安全管理を徹底 独自の安全運航管理システム「NAV9000」 チェックではなく、監査される側とする側の間で綿密なコミュ 安全かつ効率的な運航は船会社の使命であり、海難事故によ ニケーションを図り、安全運航を維持・継続するための改善活 る環境への悪影響、経済発展への支障は、絶対にあってはなり 動を促進している品質マネジメントシステムであり、ISO9001 ません。当社グループは、お客さまの大切な荷物を預かってい 適用規格として認証されています。 る責任者であることを認識し、グループ運航全船で安全管理 この活動は、さまざまなビジネスの現場においても、当社の の徹底を基本方針に、1998 年から独自の安全運航管理システ 船舶の安全性を確認し、関係者に安心していただく有効な手 ム「NAV9000」を導入しています。これは、自社船・用船にかか 段となっています。 わらず、お客さまの荷物を運ぶ全ての船舶と、その船主、船舶 管理会社に対し、安全運航に関する当社統一基準を開示し、 遵守を求め、各社独自で定めていた安全基準を統一して管理 ③ 監査実施 お客さま セールスの現場 高い安全性の説明 しています。 船舶監査 NAV9000 の統一基準は国際条約で要求される規則を基盤 会社監査 に、過去に発生した事故の再発防止策やお客さまからの要求 事項などが網羅されています。専任の監査員が本船や船主、船 ⑥ 結果報告 舶管理会社オフィスを直接訪問し、基準が現場で守られてい ⑤ 是正 計画書 ④ 是正要求 データベース ることを確認の上、不十分な項目があれば、 「是正計画書」の 3,000 件以上の改善を確認してきました。監査は一方的な 安全運航の NYK 基準 (約 1,000 項目のチェックリスト) ⑦ 要求事項の 適宜見直し 提出を求め、改善状況を確認し、必要に応じ助言を行います。 2013 年度は年間約 300 隻の船、約 30 社への監査を通じて、 ② 要求の 提示・監査 ① 監査依頼 オーディター (監査員) NAV9000 概要 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 45 数値で見る日本郵船グループの進化 人材育成面の進化 個の育成に多様性を組み合わせ、競争力を向上 リスクと機会 人材が不足すると 世界的に船員が不足する中、確保できなければ競争力 が低下 ビジネスチャンスの逸失 確保・育成・活用に積極的な日本郵船グループでは 原油や LNG など取り扱いが難しい貨物の輸送で引き Unique NYK 合いが増加 安全に輸送できる技術力を持った船員の育成 人材力がそのまま他社との差別化になる 多様な能力を掛け合わせ、新たな価値を創出 Topics 育成の成果 LNG 船に初のフィリピン人船長と機関長が誕生 レッジ」に基づく育成を通じて、フィリピン人にもハイリスク 当社運航の LNG 船で、当社では初となるフィリピン人の船長 船幹部登用への道を開いてきました。 1 人と機関長 1 人が誕生しました。LNG 船など、当社のハイリ 今回の LNG 船でのフィリピン人船長・機関長誕生はこの取 スク船の船長や機関長職は、これまで日本人、東欧人、インド り組みの具体的成果といえます。今後も統一要件をクリアし 人が務めていましたが、船員に対し国籍を問わず統一された た優秀なフィリピン人船員を、ハイリスク船幹部として順次輩 知識・技術要件を設定した独自プログラム「NYK マリタイムカ 出していく計画です。 質の高い船員育成力が評価され、新規契約が実現 船長メッセージ フィリピン人初の LNG 船の船長になれた ことをとても誇りに思います。 「NYK マリ タイムカレッジ」での研修は非常に有用か つ効率的でした。指導員や訓練施設が充 船長 Wilfredo A. Sales 実しており、日本郵船グループが訓練を重 要視していることを感じます。今後の私の LNG船での実績は、 フィリピン人船員がその役割を果たせる タイオイル・パブリック社のプロジェクト向けに 3 隻目となる 大型原油タンカー TAIZAN での原油輸送を開始しました。 自国での大型タンカー船員養成を目指す同社が、当社の卓越 した船舶管理能力に加えてシンガポールの船員トレーニング センターやフィリピン商船大学などで質の高い船員育成力を 示していることに着目、長期的なパートナーとして評価したこ とにより実現しました。 ことを証明することにつながると思います。フィリピン人船 員にハイリスク船幹部への道を切り開いてくれた日本郵船 に感謝します。 TAIZAN 46 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 当社フィリピン商船大学卒業生数(第 1 期生∼第 3 期生累計) 「The Global NYK / YLK Week」の実施状況(2012年度からの累計) 344 名 371 名 当社グループの船舶職員の多くを占めるフィリピンで 2007 年 6月に 2002年以降、日本郵船グループの世界の拠点から選抜された管理職 開校しました。当社グループが日本で行ってきた船員育成の経験や の社員を対象に年に 1 度東京本社にて集合研修を実施しています。 工夫が育成手法に活かされており、フィリピン海事大学統一試験で Unique NYK は好成績を収めるなど、カリキュラム面でも結果が出ています。 育成体制のさらなる拡充 Management Training Program の実施 と合同開催し、英語で実施するシンガポールに加え、上海に 2002 年度より北米・欧州で展開しているマネージャースキル て同プログラムの中国語(マンダリン)開催を実施。アジアで 研修を、2012 年度からアジアにも広げ、日本郵船のアジア拠 活躍する多くの管理職のマネジメントスキル強化とともに、 点から選抜された管理職社員を対象に年に 1 度シンガポール 個々のキャリアデベロップメントも実施しています。 にて実施しています。また、2013年度は郵船ロジスティクス社 女性が働き続ける環境を整備 海運業初の「なでしこ銘柄」に選定 的とした企業内保育所「郵船チャイルドケア」の設置など、さ 東京証券取引所と経済産業省が共同で選定する 2013 年度の まざまな取り組みが評価されました。 「なでしこ銘柄」に海運業で初めて選定されました。当社は 2001 年に「総合職・一般職」といった職種区分を廃止して人 事制度を一本化するなど、男女の区別なく活躍できる制度や 環境づくりを進めています。また、仕事と家庭の両立支援を目 ESG への取り組みに関する詳細な情報については右記 URL をご覧ください。 http://www.nyk.com/csr/ NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 47 環境 CSR 活動 > 環境活動 □ 環境経営について グループ環境経営の推進 日本郵船グループ 環境経営ビジョンと 3 つの戦略 環境リスクを管理し、環境と経済のベストバランスを目指しながら、地球環境と持続可能な社会に貢献します。 戦略 1 温暖化ガス排出削減の実践 戦略 2 地球環境保全活動による社会貢献の推進 グループ環境経営の強化 戦略 3 環境方針 (2005 年 3 月制定) Unique NYK ① 企業活動が地球環境に与える影響を考慮し、必要な目的・目標を定め、これらを定期 的に見直し、継続的な改善を図ることにより、海洋・地球環境の保全に努めます。 ② 安全・環境に関する法律・規制等の遵守はもとより、積極的な自主基準の制定・運用 に努めます。 ③ 運航船隊の安全確保をはじめ、内陸・内水及び航空輸送を含む全ての輸送モード、並 びにターミナル、倉庫など海・陸・空に広がる輸送サービスの安全確保に努めます。 ④ 省資源、省エネルギー、廃棄物削減、リサイクル等に取組み、特に温室効果ガス、オ ゾン層破壊物質、有害物質等の排出を抑制・防止します。 ⑤ 船舶・航空機をはじめとする輸送機器、荷役機器、資材などの調達による環境負荷を 出来る限り小さくすることに努め、環境にやさしい技術等の採用を推進します。 ⑥ 社内広報活動・環境セミナー等を通じて、社員一人ひとりの環境意識を高め、会社の 環境方針を浸透させます。 ⑦ 社会との対話を密にし、積極的な環境情報開示、環境保全活動への助成 ・支援に努め ることで、広く社会に貢献します。 代表取締役社長 2001 年 9 月 1 日制定 2009 年 4 月 1 日改訂 n グローバルな環境マネジメントシステム体制 用船 船主が備品や乗組員を手配し、安全に航行できる能力を確保した状態で貸し出す船舶 ISO14001 認証 国際標準化機構が発行した環境マネジメントシステムに関する国際規格の総称 グリーン経営認証 認証機関である交通エコロジー・モビリティ財団が、グリーン経営推進マニュアルに基 づいて、 エコドライブの実践、 低公害車の導入など、 一定のレベル以上の自主的な取り組 みを行っている輸送事業者を認証するもの グリーン経営認証取得グループ会社 日本コンテナ輸送㈱、郵船港運㈱、㈱ユニエツクス、旭運輸㈱、海洋興業㈱、横浜共立 倉庫㈱、郵船ロジテック㈱成田営業所、北洋海運㈱(2014 年 2 月 10 日時点) NYK グループ共通の環境方針の下、世界全 6 極と日本で約 150 サイトおよび用船を含む約 800 隻の運航船を対象に ISO14001 環境認証を取得しています。この認証を取得する約 50 社の総 売上げは NYK グループ全体の売上げの約 80% を占めており、 他社には見られない独自のグローバルな体制を構築していま す。またグリーン経営認証を取得している国内グループ会社 もあります。 グローバルな環境活動推進体制とマルチサイトシステム *1 *1. マルチサイトシステム SEMC の委員会 船種別 SEMC:コンテナ船、自動車専用船、タンカー、ドライバルカー、ハンディ、ガス船、重量貨物船、客船 事業別環境対策委員会:港湾、物流 グループ環境経営連絡会 *3 国内主要グループ会社 48 社 燃費節減対策委員会 新造船搭載機器評価・推奨選定委員会 オフィス環境対策推進委員会 *2 安全・環境対策推進委員会(SEMC) 本社 北米地域 16 サイト 東アジア地域 4 サイト 欧州地域 65 サイト 日本 38 サイト (本社含む) 南アジア地域 17 サイト 中南米地域 8 サイト オセアニア地域 ● ISO14001 認証取得サイト ● ISO14001 認証取得予定サイト 48 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA 3 サイト NYK Report 2014 (2014 年 4 月 1 日現在) 企業の各事業所を一括して 認証を取得する認証形態 *2. 安全・環境対策推進委員 会(SEMC) Safety& Environmental Management Committee 社長を委員長とし、グループ 全体の環境活動の方針の策 定やレビューを毎年実施。そ の下部組織として、船種・事 業、案件ごとの小委員会を設 置。また、世界 6 極に同対策 推進委員会を設置 *3. グループ環境経営連絡会 国内の主要グループ会社を 対象にした連絡会。2006 年 より開始し、毎年開催。各社 の環境への取り組みについ て情報共有を図り、取り組み が評価された会社に対し報 奨を行っている CO2 排出量の削減 n ハイブリッド過給機、世界で初めて実船に搭載 日本郵船は 2006 年から環境経営指標を算出し、船舶の運航 2011年5月竣工のばら積み船「SHIN KOHO」に世界で初めて 効率を把握しています。2013 年度は CO2 排出原単位を 2006 実船搭載したハイブリッド過給機船内電源供給システムは、 年度比 18.1% 削減し、前中期経営計画「More Than Shipping 従来の過給機の基本機能に加え、タービンで発生した余剰な 2013」の目標の 1 つであった「2013 年度までに 2006 年度比 回転力を発電に利用することも可能で、通常の航海時には CO2 排出原単位を最低 10% 削減」を達成しました。これから ディーゼル発電機の代わりにハイブリッド過給機にて船内電 も、 「More Than Shipping 2018」にある「2018 年度までに 力をすべて賄うことができるため、 さらなるCO2排出量削減に 2010 年度比燃費効率 15% 改善」を達成するべく、さらなる効 つながります。本システムは優れた船舶海洋工学の学問的業 率運航に取り組んでいきます。 績や新技術の開発を表彰する公益社団法人日本海洋工学会 環境経営指標 (IMO ガイドラインに準拠) = 環境負荷 (海上輸送による CO2 排出量) 事業付加価値 (海上輸送重量トン・キロメートル) IMO:International Maritime Organization 国際海事機関。海運・造船に関する技術的問題や法律的な問題について政府間の協力 の促進や条約の策定などを行っている国連の専門機関 (発明考案など) を受賞しました。そ の平成24年度同工学会賞 の後、2013年度には、ケープサイズばら積み船2隻にも搭載し ました。すでに、本システムの自動車専用船への搭載も決定し ており、今後も環境技術の開発・導入に積極的に取り組んで いきます。 n 環境データの適正開示 n「NYK GROUP CO2 e-calculator」 当社は、信頼性の高い環境負荷データの把握と、積極的な開 お客さまから輸送中の CO2 排出量に関するお問い合わせが 示に取り組んでいます。その一つに、船舶で発生する物質が環 増加していることを受け、コンテナ船貨物と国際航空貨物の 境へ与える環境負荷データを CSI へ開示しており、2013 年に 輸送中に生じるCO2排出量を算出するシステムを日本郵船グ は正確なデータを提供していることを第三者認証機関 LRQA ループ会社の郵船ロジスティクス㈱と開発しました。 より認証されました。CSI への環境負荷データの認証は邦船 グループ各社ホームページへの公開以来、国内外の多くの 社では初めてとなります。また、気候変動問題への対応取組の ユーザーにご利用いただいています。検索ルート、排出量の 情報開示を評価するCDP の日本企業500社を対象とした調査 計算係数などを定期的にアップデートしており、ユーザーか で、2013 年は 100 点満点中 98 点を獲得し、気候変動情報開示 らは「簡単な操作によって、海、陸、空すべての経路の CO2 排 の先進企業として CDLI に 2 年連続で選定されました。 出量を算出でき、実際の輸送に近い計算値が表示されるため 助かっています」などの声が寄せられています。 CSI 2007 年設立のスウェーデンの NPO 団体 Clean Shipping Project が開発した指標で、 20 項目の環境に関する質問で構成されている LRQA:Lloyd s Register Quality Assurance Limited CDP 機関投資家の代理人として、企業に対して気候変動問題への対応取組の情報開示を 要求するプログラムを運営している CDLI:Carbon Disclosure Leadership Index 「NYK GROUP CO2 e-calculator」画面 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 49 Unique NYK n 環境経営指標 環境 省エネルギーへの取り組み n 次世代省エネ蛍光灯「E・COOL」 電力、長寿命、高輝度など、省エネルギーと経済性の両面で優 日本郵船は、運航している自動車専用船に㈱オプトロムの次 れた特性を持っています。既存の蛍光灯に比べて約40% の省電 世代省エネ蛍光灯「E・COOL」の利用を2012年度に開始しま 力が見込まれており、自動車専用船 1 隻のすべての照明を した。2012 年度は 6 隻で約 1 万 3,000 本、2013 年度までに 22 「E・COOL」に交換することで航海中の CO2排出量が最大1% 程 隻で約5万2,000本を導入しました。 「E・COOL」は、液晶モニ 度削減されます。今後は既存船のみならず新造船へも積極的に ターなどに使われてきた冷陰極蛍光ランプを利用し、低消費 「E・COOL」の導入を進める予定です。 Unique NYK 大気汚染防止 n LNG 燃料転換への第一歩 n 船舶停泊中の陸上電力の利用 船舶に使用する燃料は、現在化石燃料(重油)を使用していま 2007 年 11 月米国ロサンゼルス港にて、電力受電装置(AMP) すが、液化天然ガス(LNG)へ燃料転換することで、重油使用 を搭載した当社運航船 NYK Atlas が陸上からの本格的な電 時と比較してCO2排出量を約30%、NOx排出量を約80%、SOx 源供給を初めて成功させて以来、他の大型コンテナ船にも順 は 100% 削減することが可能と見込まれています。当社は 次導入しています。 2011年10月に燃料グループ内に専任チームを設置し、燃料転 これは陸上の施設から電力を受け取るための装置で、接 換に関する研究、技術開発を進めてきましたが、2013年12月、 岸・荷役中のコンテナ船の必要電力を陸上から供給すること 重油とともに LNG を燃料として使用可能な Dual Fuel エン により、相対的に発電効率の低い船内発電機の使用を抑え ジンを搭載した LNG 燃料タグボートの建造に着手することを て、CO2 、NOx、SOx、PM などの大気汚染物質の放出量を低 決定しました。LNG 運搬船を除いて LNG を燃料とする船舶の 下させるものです。 建造は、外航船・内航船を通じて日本で最初になります。当該 2013 年 11 月にはコンテナ型 AMP がロサンゼルス港とオー 船舶の建造と運航を通じてさらなる知見を蓄積し、大型船へ クランド港のターミナルに常設され、AMP が搭載できるよう 展開していきます。 AMP:Alternated Maritime Power Dual Fuel エンジン 天然ガスと重油の双方を燃料として使用できる主機。ガスモードでの運航時には環境 規制ガスの排出低減が可能となる 船の接岸中に船内の発電機を止めて、陸上電源から必要な電力の供給を受けること で、大気汚染物質の排出量を削減できる装置 NOx 窒素酸化物。光化学スモッグや酸性雨などの原因の一つといわれている有害物質 SOx 硫黄酸化物。大気汚染や酸性雨などの原因の一つといわれている有害物質 PM 排気微粒子。呼吸器疾患など人の健康に影響を与える原因の一つといわれている有 害物質 LNG タグボート オークランド港にて陸から電源供給を 受ける NYK Apollo コンテナ型 AMP 50 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 改造された当社運航コンテナ船が寄港した際には、その船上 n SOx 対応(low-sulfur 燃料) に AMP を搭載して、停泊中は陸上から電力を受け取っていま 硫黄分を含む燃料油を燃焼させると SOx が発生します。船舶 す。今後は、両港への入港船全てが AMP を使用することを目 から発生する SOx を低減させる IMO の規制では、2012年に一 標に、改造工事や配船を検討していく予定です。 般海域での燃料油の硫黄分濃度の上限値が4.5% から3.5%と なりました。また、さらに厳しい規制が適用されている指定海 域では、2015 年からは硫黄分濃度 0.1% 以下の燃料油の使用 燃料油を燃焼させると温室効果ガスの1つである NOx が生成 が義務付けられます。当社では、これらの規制を遵守すること されます。IMO は、船舶から発生する NOx を低減させるため はもとより、就航船の搭載機器の改造や建造仕様の変更な の規制を発効しており、2011 年からは 2 次規制を始めていま ど、必要な対策を検討するタスクフォースを立ち上げ、安全運 す。当社は対策の一環として、NOx の発生を軽減できる電子 航と環境保全の両立に取り組んでいます。また、当社運航船 制御エンジンの搭載を推進しています。電子制御エンジンは、 からの SOx 排出量の把握をすることで、さらなる削減に取り 燃料噴射と排気弁の開閉を電子制御にて最適化することで、 組んでいきます。 NOx の発生を軽減できます。2013 年度は 9 隻の電子制御エン ジン搭載船が就航し、2014 年 3 月末現在 56 隻に搭載していま SOx、NOx の排出量 (千トン) す。さらに IMO の指定海域では 3 次規制が導入される見込み で、対応するべく EGR システムなどの新技術の研究も進めて います。 350 300 250 200 EGR システム 10 150 排ガスの一部をエンジン吸気に戻すことにより NOx 排出低減を図る技術 SOx 11 12 13(年度) NOx 生物多様性の保全 日本郵船グループと生物多様性の関係性マップ 企業と生物多様性イニシアティブ (JBIB) 開発の 大気への化学物質 排出 CO2、NOx、SOx など 「企業と生物多様性の関係性マップ」 を参考に作図 は日本郵船グループの取り組み INPUT OUTPUT ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 環境経営指標 低硫黄燃料油使用 エネルギー資源・ 自然資源利用 SPAS* SIMS*2 NYK e-missions’ IBIS プロジェクト IBIS TWO プロジェクト 海、燃料油、潤滑油など 1 ● ● 船を 運航する ● ● ● 水域への化学物質・ 汚染物質排出 日本郵船 グループ スズ、 バラスト水など ● ● ● ● スーパーエコシップ (省エネ船の設計) ダブルハル化 (タンカー) 電子制御エンジン 搭載 太陽光発電 ● ● ● ● ● ● MT-FAST*3 LNG 燃料船 造る 船を 調達する エネルギー資源利用 船を 処分する ● リサイクル ● 土壌への化学物質排出 大気への化学物質排出 大気への化学物質排出 土壌への化学物質排出 水域への化学物質排出 ● *1. SPAS:Ship Performance Analyzing System BRIDGE*4 水エマルジョン燃料装置 船体・プロペラ清掃 排ガスエコノマイザー 太陽光発電利用 バラスト水の適正管理 バラスト水処理装置 *5 設置 安全運航 (NAV9000) ビルジシステム シリコン塗料(スズフリー) 耐腐食鋼板 売る 水域への化学物質排出 *2. SIMS:Ship Information Management System *3. MT-FAST プロペラ前方に複数の翼を取り付けることで、プロペラの回転から生まれる旋回 流による損失エネルギーを回収する省エネ装置 EGR システム 陸上電力の使用 船底空気潤滑システム 環境に配慮したヤードでの 解体 (NYK 標準フォーム使用) *4. BRIDGE 最新の気象・海象予測情報を船舶へ配信するシステム *5. バラスト水処理装置 バラスト水(船舶がバランスを保つため保持する海水であり、通常荷揚港で船底 のタンクに注水し、荷積港で排出される)とともに運ばれた海洋生物を処理し、 生態系を乱すことのないようにするシステム NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 51 Unique NYK n 電子制御エンジン(NOx 対応) 環境 n 生物多様性保全への取り組み 当社独自の解撤売船契約書を用い、引き渡し後はその契約に 当社は船の調達から処分までのライフサイクル全工程が生物 基づいた、安全・環境への対応状況を適宜現場視察し確認し 多様性に影響を与える可能性があることを認識し、事業活動 ています。 と生物多様性の関係を示すマップを作成しています。これに より船舶の調達・運航・解体の各段階での生物多様性への影 響を把握しています。環境配慮技術の開発、船舶への搭載、お よび事故による環境破壊を防ぐ独自の安全運航管理システム 「NAV9000」の導入など、ハード面・ソフト面の両方から生物 2013 年度海洋汚染事故 海難による漏洩 1件 機器など故障による漏洩 7件 作業手順ミスによる漏洩 3件 上記 11 件は、適切に報告・処理されています。 多様性保全への取り組みを行っています。また当社は 2009 年 Unique NYK に「経団連生物多様性宣言」推進パートナーズ、2010 年より n 東北大学への研究調査協力 「生物多様性民間参画パートナーシップ」に参加しています。 当社は1982 年から約 30 年間、地球規模の温室効果気体の分 これからも同宣言および行動指針に沿った事業活動を行うこ 布と変動の実態を明らかにするための東北大学の研究に、 とで、生物多様性保全に努めていきます。 および日本 – 北米間を往復している2 日本 – オーストラリア間、 隻のコンテナ船を提供し、海上での大気採集に協力していま n バラスト水処理装置 す。これらの観測から、北半球と南半球で温室効果ガスの濃 海洋環境に影響を及ぼす水生生物の越境移動を防止するた 度に違いが見られ、濃度勾配は季節や年によって変動するこ めに、IMO において、2004 年にバラスト水管理条約が採択さ とが明らかになりました。今後も東北大学の研究、調査に協 れました。現在、その発効に向けた各国の批准が進んでいま 力を続けていきます。 すが、当社では、バラスト水管理条約の発効に先駆けて、2010 年 9 月に自動車専用船 Emerald Leader に国土交通省の型 式承認を受けたバラスト水処理装置を当社運航船として初め て搭載しました。2014 年 3 月末現在、46 隻への搭載が完了し ており、今後も条約の批准状況に注視しながら自動車専用船 TOPICS 外部ステークホルダーからの声 提供いただいた観測データにより研究に成果 コンテナ船は外国航路を定期的に往復するため、地球規模の やばら積み船など、保有・管理する船舶への搭載を進めてい 観測を展開する上できわめて優れたプラットフォームです。私 きます。 たちは日本郵船にご協力いただき、1982年から日本 – オースト ラリア間および日本 – 北米間を往復するコンテナ船で大気採 取を継続してきました。これらの観測によって、北半球高緯度 n シップリサイクル から南半球中緯度にかけての温室効果気体の分布と変動の実 船舶が解体される際の、労働災害や環境汚染を最小限にする 態が見事に捉えられています。得られた観測結果を基に、温室 ために、IMO において 2009 年にシップリサイクル条約が採択 効果気体の放出源や吸収源に関する研究を行い、さまざまな され、発効に向けた各国の批准が進んでいます。当社グループ は、当該条約で定められた、船上に存在する有害物質の量・設 置場所などを記載したリストを作成し、本船への配備を進め ています。実際の解撤にあたっては、 「安定的な解撤スペース の確保」と「環境に優しい解撤実施」を基本に、IMO ガイドラ インなどを考慮した独自の解撤方針を定め、環境だけではな く労働安全にも配慮した解撤ヤードを選定しています。また、 52 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 知見を得てきました。例えば、大気中の CO2 濃度はエルニー ニョ現象や火山噴火によって経年増加率に変化が現れること が知られていますが、その原因が主に陸 上生物圏にあることを明らかにすること ができました。 東北大学大学院理学研究科 大気海洋変動観測研究センター 青木 周司 教授 安全 CSR 活動 > 安全活動 □ 海での取り組み □ 陸と空での取り組み 海・陸・空での安全への取り組み n 陸̶港湾・ターミナルでの安全への取り組み 日本郵船グループでは、安全運航の確保が当社グループにお 国内の自営ターミナル(東京・横浜・神戸)とグループ会社に ける事業活動の基盤であると認識し、社長を委員長とする おいて、事故を未然に防ぐことを安全対策の基本に緊急連 「安全・環境対策推進委員会」を設置し海陸の関係者が一丸と 絡体制の強化、事故原因の解析や情報の共有を継続的に なって継続的な取り組みを進めています。安全運航の現場最 行っています。ターミナルからの報告や情報を基に各ターミ 前線である船舶が遠く離れた環境にある海運においては、関 ナル安全担当者との合同安全推進会議を定期的に開催し 係者の間で目標を確実に共有し、PDCA サイクルによる地道 て、事故防止策の共有化・標準化を進めています。安全と無 な活動を持続することが最も重要であると考えています。そ 事故が最善のサービスであるという意識を持って、グループ のため、事故・トラブルの情報はデータベース化され、安全運 会社を含めた全スタッフが日頃から活動を見直し、安全への 航の達成度を遅延時間で計るとともに、トラブルに内在する 取り組みを常に前進させることに努めています。 リスクを都度評価することで改善活動の方針を決定していま す。これら方針や対策は、文書および定期的に実施する安全 n 空̶航空部門での安全への取り組み 推進キャンペーンによって船に届けられ、また、NAV9000 によ 航空機運航の安全を維持するには、事故が起こる前に実施す る監査活動により現場において確実に実行されています。 る未然防止対策が大変重要です。そのため、日本貨物航空㈱ では、不安全事象や、それに至る前のヒヤリハット事例の収集 n 陸̶物流部門での安全への取り組み に力を入れています。収集された情報は、リスクマネジメント 郵船ロジスティクス㈱では、2012 年度の事故報告の分析を の手法に則って、根本原因の特定と、 リスク評価が実施されま 行い、倉庫内従業員および訪問者の安全強化を 2013 年度の す。リスク評価とは、発生頻度と影響度によってリスクの大き 最重要課題と位置づけました。具体的な施策として、 (1)郵 さを判定することで、対策の検討や、対策実施後の効果確認 船ロジスティクス(YL)標準として設定した歩行帯規格への に使用されます。2013 年度では、各事務所の投函箱や社内 準拠による車両と歩行者の動線最適化、 (2)ハザードマップ イントラネットを通じて投函されたヒヤリハット事例などを 作成による危険地帯の再認識の 2 点についての活動をワール 含め、約 200 件の事例がリスク評価され、再発防止やより大き ドワイドに展開しています。年度内の実施を目標としていま な事象の未然防止に役立てられています。 すが、期間の終了を待たず、対象拠点の過半で対応が完了し ています(2014 年 2 月末日現在)。 直接の目的は安全確保になりますが、結果として高品質な オペレーションを実現することで、顧客ビジネスを支えてい くことにつながる重要な取り組みのひとつと考えています。 業務の相互理解を目的として実施された職場 1 日体験会の様子 YL標準歩行帯。線幅や色、 一時停 止のフットマークなどの規格を定 め、設置ガイドラインを発行 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 53 Unique NYK n 海̶船舶運航での安全への取り組み 安全 n 海上における安全運航のための PDCA サイクル PLAN(計画) 安全推進体制 緊急対応ネットワーク 社長を委員長とする安全・環境対策推進委員会において、毎 世界中のあらゆる海域で発生する事故・トラブルに備え、世界 年、前年度の活動レビューを行い、年間目標や活動方針を決 4 拠点体制で緊急対応のためのネットワークを構築してい 定しています。当委員会で決定された活動方針は、船種別な ます。 どに設けられた小委員会で具体化し、安全活動として実行に 移しています。 北米 Unique NYK 安全推進体制図 ロンドン 2014 年 4 月 1 日現在 安全・環境対策推進委員会(SEMC) 委員長[社長] 欧州・アフリカ 安全対策推進本部長 東アジア 上海 東京 香港 南アジア シンガポール オセアニア シドニー ニューヨーク ロサンゼルス サンパウロ 中南米 上級環境管理責任者(ECEM) [海務担当役員 1 名] [環境担当役員 1 名] 安全対策推進本部 (運営委員会) 事務局 [海務グループ長] [企画グループ長] 環境対策推進本部 (運営委員会) 事務局 [環境グループ長] [企画グループ長] お客さまサプライチェーンの一翼を担う安全運航 新造船搭載機器評価・推奨選定委員会 当社においては、技術本部長を中心に新造船搭載機器評価・ 推奨選定委員会を運営し、船舶機器の評価を実施していま ディーゼル主機関の信頼性比 す。 2013年度の本委員会では、 較、ディーゼル発電機の修繕コスト比較、ボイラーの構造比較 などを評価しました。 PLAN(計画) 安全推進体制/緊急対応ネットワーク/ 新造船搭載機器評価・推奨選定委員会 ACT(改善) トラブルの原因究明と目標達成に向けた改善/ 津波アラートシステムの開発 ACT(改善) フィードバック委員会 当社 ECDIS 運用基準「NYK Standards for 当社においては、運航船から報告される機器の状態や、不具合 Navigation using ECDIS」を策定 などの情報を集約し、船がより安全で効率的に運航できる方法 これまで紙製の海図が世界中で利用されてきましたが、2012 を日々検討しています。重要な情報については他の運航船にも 年 7 月 1 日に発効した SOLAS 条約の改定に伴い、ECDIS の搭 提供し、さらに改善が必要な内容については改善案をメーカー 載/使用が段階的に義務化されました。当社においては、 安全 と一緒になって検討したり、新造船に新しい仕様を盛り込んだ に寄与すべく前倒しでほとんどの船に ECDIS が搭載されてい りしています。現在は当業務をシンガポールオフィスで実施し ます。しかし ECDIS の機器の取り扱い説明書はあっても関連 ており、同シンガポールにある当社インハウスの船舶管理会社 する具体的な運用基準が述べられたものはあまり整備されて と協働して、各案件に現場の目線で取り組んでいます。 いなかったため、 当社では ECDIS の各種設定の標準値や航海 54 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 DO(実行) 事故対応訓練 に防ぐ行動、 環境維持を常に心がけるようにするための活動で 社員の事故対応能力を高めるために、定期的に訓練を実施し す。当社では 2006 年から、この活動を乗組員だけでなく、当社 ています。より現実的な訓練にするため、船の種類や船型、事 グループのパートナーである船主や船舶管理会社にも展開し、 故、トラブルの内容は毎回変えて行います。また、訓練には本 見過ごしがちな事故の予兆を初期の段階で発見し、事故の芽 船や船舶管理会社に加え、官公庁やお客さまなど多くの関係 を摘み取る「DEVIL Hunting !」活動としています。今では年 者にも参加していただいています。2013 年 12 月には、第四管 間 6 万件以上の報告を受けています。 油流出を想定した事故対応訓練を実施しました。訓練のレ ビューにも重点を置き、そこで得られた意見を基に事故対応 DEVIL Hunting ! DEVIL は、Dangerous Events and Irregular Looks(不安全行動や不安全状態)の略。 重大事故に至らないように、前兆や要因などを初期の段階で排除することを目的とし た活動 体制の強化を図っています。 ニアミス報告件数 2013 年度ニアミス要因 (件) ニアミス 3000 活動 ニアミス3000活動は、ハインリッヒの法則に基づき、現場であ (%) 80,000 説明不足 意志伝達不足 整理整頓不足 見過ごし 2% 1% 3% 知識不足 5% 60,000 る船上において乗組員が自らの安全意識を高め、事故を未然 1% 集中力欠如 1% 40,000 達成のための PDCA サイクル 安全意識 の欠如 20,000 58% 18% 0 08 DO(実行) 手順 不履行 09 10 11 12 整備不良 13(年度) 11% 安全推進キャンペーン(P.45)/事故対応訓練 ニアミス 3000 活動/海賊防止対策(P.44) CHECK(点検) CHECK(点検) NAV9000(P.45)/遅延時間で安全を計る 遅延時間で安全を計る 日本郵船では、船舶の安全運航の達成度を計るため、事故・ト ラブルによって運航が止まった時間を指標として取り入れ、 遅延時間の ゼロ 化を目指し、海・陸一丸となって目標達成 に取り組んでいます。 術について基準を策定し、当該装置を使用したより安全な航 行達成を目的とする、当社 ECDIS 運用基準「NYK Standards for Navigation using ECDIS」を策定、2013 年 3月より各運航 船に順次配布して、現場において有効に活用されています。 ECDIS Electronic Chart Display and Information System 電子海図情報表示装置 遅延時間の推移 (隻) (時間) 1,000 35 800 30 600 25 400 20 200 15 93 0 ■ 運航隻数 10 11 1 隻当たりの遅延時間(右軸) NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA 12 13(年度) NYK Report 2014 0 55 Unique NYK 区海上保安本部と合同で、 プロダクトタンカーでの衝突・貨物 人材育成 CSR 活動 > ステークホルダーとともに □ グループ社員とともに HR 理念 「国内外グループ各社の多様な人材を、グローバルなフィールドでたゆみなく育成する」 幅広い事業分野で、さまざまな国籍を持つ日本郵船グループの社員に向けて、一人ひとりが、その持てる能力を最大限に発揮できる ようにと、HR(Human Resources)理念を 2005 年に定めました。次代を担う人材の育成を目指して、 1. 異文化や異質な考え方に対する包容力と柔軟性 2. 明確な目標を自ら設定し、周囲を引っ張っていくことができるリーダーシップ 3. 専門分野に止まらず広い視野を持って全般的な管理業務もこなせるマネジメント能力 の育成に力を注いでいます。 Unique NYK 人材育成 n NYK ビジネスカレッジ 得するための船員教育プログラム「NYK マリタイムカレッジ」 日本郵船グループでは、グループ社員の総合力強化を目指し のもと、自社運航船に乗組む船員に要求される知識・技術の た研修体系「NYK ビジネスカレッジ」を充実させています。 として定め教育しています。OJT 要件を 「NYK Requirements」 2013年度は60種以上の研修に延べ2000名以上のグループ社 としては 5 隻のキャデット船による新人教育をはじめ、各船に 員が参加しました。加えて e ラーニングには国内外合わせて 自社開発の e- ラーニングツール NYK-STARS を導入し、船 7,800 名以上が参加し、CSR、環境などをテーマとした当社グ 上でのスキルアップを図っています。また陸上においては、世 ループの取り組みについて学んでいます。 界各地の研修所およびマンニングオフィスで統一の教材・カ また、次世代を担う人材育成の強化を目標に、視野を広げ、 リキュラムを用いた講義・実習を行っています。 リーダーシップ、マネジメント力を育成・伸張させるため、若手 から中堅を対象とした階層別研修を実施しています。モノ運 びを通じてステークホルダーの皆さまに貢献できるグループ 社員育成のために、今後もさらに内容を充実させていきます。 n 船員教育プログラム より高いレベルでの安全・経済運航を達成するための一番の は、 ハードでもシステムでもなく、 それを動かす「ヒト」です。 当社では、陸上および船上での幅広い技術や高い専門性を習 独自の教育制度「NYK マリタイムカレッジ」概念図 キャデット船 各国の船員養成機関で学課を修了したキャデット(幹部候補生)の、船上訓練用設備 を備える船舶 NYK-STARS:NYK-Shipboard Training and Assessment Record System キャデット用の Cadet STARS などの目的別、 自動車専用船用の PCC STARS などの船 種別と、さまざまな種類がある マンニングオフィス 船舶管理会社支店および船員派遣代理店 TOPICS 外部ステークホルダーからの声 人材育成を通じた基盤強化に期待 SMBCサステイナビリティ評価融資において、貴社の評価を担 当させて頂いた折、最も印象に残ったのは、安全運航の実現に 優秀な船員の確保・育成を必須とする貴社の考え方でした。 貴社では独自の船員教育プログラムを提供するとともに、フィ NYK 統一基準 職位ごとに必要とされる知識・技能を定めた要項 リピンに設立した船舶管理会社支店を通じて、船員に陸上で NYK 統一基準に基づき、 効率的技能向上のための、各種訓練プログラムを整備 す。こうした配慮は、優秀な船員の確保につながり、貴社の競 船上訓練 陸上訓練 独自開発した 教育ソフト STARS を導入 各種シミュレーターを 利用した高度な訓練を実施 DADAS(Dos and Don t at Sea Program) 知識・技能の習得度合いについて、 自己確認するためのツール 56 OJT:On the Job Training NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 の職域も設けることで、船員が長く働ける環境を整備していま 争優位性に資するものと判断しました。人材への取り組みは 効果が現れるまでに時間を要しますが、今後も船員などへの 配慮を通じて「人材」という競争基盤を 強化していくことを期待します。 ㈱日本総合研究所 創発戦略センター ESG アナリスト 長谷 直子さん n The Global NYK / YLK Week の実施 くDNA研修の役割も担って 2002 年以降、日本郵船グループの世界の拠点から選抜された います。グローバル企業と 管理職の社員を対象に年に一度東京本社にて集合研修を実 して、社員の多様性と挑戦 2012年度以降は郵船ロジスティクス社と 施しています。また、 する気概を尊重し、人材育 合同開催し、日本郵船グループで働けて良かったとすべての 成に力を注ぎ、夢と誇りを 社員が思えるような会社であるよう、両社長との直接対話や、 持って働ける日本 郵 船グ より企業理念や NYK グループ・バリューなどを浸透させてい ループを目指しています。 The Global NYK / YLK Week の様子 YLK:郵船ロジスティクス 働きやすい職場づくり 進めています。ワークライフバランス推進委員会では、時間外 当社グループでは、 日本郵船グループ企業行動憲章に基づき、 労働と休暇取得日数の全社/部署毎のモニタリングのほか、 すべての社員に平等な機会が与えられ、差別やハラスメント 残業が多い部署・社員・上長へのヒアリングや、早帰りを推奨 のない職場環境づくりに取り組んでいます。NYK グループ人 する館内放送、会議のスリム化などを実施しています。 事スタンダードの各社への展開や、新入社員研修や新任チー ム長研修、海外赴任者研修、CSR 研修において人権の時間を 設け、社員の意識向上にも取り組んでいます。また、人事グ ループ内のハラスメント相談窓口や、社外有識者による対応 を含めた「郵船しゃべり場」を設け、随時相談を受ける体制も 整えています。 ワークライフバランス推進委員会 1968年に時間外労働削減を目的に労使で設置した特別委員会を2001年に「時間の達 人委員会」と名称変更のうえ、ワークライフバランス推進に向けた取り組みを強化。さ さらに、2008 年 4 月より労使および第三者委員としてグループ長クラスの社員数名か らなるワークライフバランス推進委員会とした ワーク・ライフ・バランス施策(抜粋) 育児休業 最長で子が 2 歳 2 カ月になるまで取得可能 介護休業 n 女性活躍推進 当社では 2001 年には「総合職・一般職」といった職種区分を 通算 1 年間まで取得可能。休業開始日から2 年以内であれば 2 分割が可能 育児・介護フレックスタイム・短時間勤務制度 ①フレックスタイム制度:妊娠中・小学 6 年までの子を育てる社員、介護 廃止し、人事制度を一本化し、男女の区別なく活躍できる制 に従事する社員②最大 1 日 2 時間までの短時間勤務:小学 1 年までの子を 度・環境づくりを進めてきました。 育てる社員、介護に従事する社員 仕事と家庭の両立支援として、2002 年に都心で初めての企 配偶者転勤休業 配偶者が海外転勤の際、最長 3 年間まで取得可能。 (国内転勤について 業内保育所「郵船チャイルドケア」を設置しました。待機児童 は、2013 年より3 カ年限定) 問題の心配なく各人のキャリアプランに合わせた復職が可能 郵船チャイルドケア(企業内保育所) です。2008 年に配偶者が国内・海外転勤の際に最長 3 年間休 業可能な制度を導入するほか、法定を超えた育児・介護休業、 フレックスタイム制度、短時間勤務制度など、さまざまな取り 組みを実施しています。 女性管理職比率は 2007 年度に 10% を超えて以降順調に推 移しており、女性役員も2 名就任しています。また2013 年度よ り「キャリア業務室」を設置し、さまざまな推進策の検討、実 施に取り組んでいます。 n ワークライフバランスの推進 当社では仕事と私生活のバランスをとりながら、社員一人ひ 2002 年 4 月開設。法定基準を上回る保育士を配置 n 社員の安全管理 当社グループでは、地震などの災害発生時に社員の安否を 確認し、災害時の事業継続・早期再開するための安否確認シ ステムを導入しています。あらかじめ登録された国内の居住 地や勤務地で震度 6 弱以上の地震が発生した場合、安否確 認メールが自動発信されます。メールを受信した社員は本 人や家族の安否などを報告し、その後自動集計された状況 報告が所属部署ごとに送付されます。今後も非常時に備え、 定期的な安否確認訓練を実施していきます。 とりが持てる力を最大限に発揮できるような仕組みづくりを NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 57 Unique NYK n 人権の尊重 社会貢献活動 CSR 活動 > 社会貢献活動 社会の課題解決に向けて 日本郵船グループは、企業理念に基づき、自社の経営資源を活かしながら社会の課題解決に積極的に取り組んでいます。 災害被災地や途上国の支援として実施している輸送協力とグループ社員による社会貢献活動の一部をご紹介します。 社会貢献活動 基本理念・活動方針 日本郵船は、地球社会とともに生きる「良き企業市民」として主体的に社会の課題に取組み、その 活動を通してすべてのステークホルダーにとっての企業価値の向上を目指します。 活動方針 Unique NYK 1. 社員のボランティア活動の推進 2. 未来の地球社会への「投資」 3. 地域社会との共生 n 継続的な輸送 1 2 自転車輸送(14 年間) 輸送ルート 日本→アフガニスタン、 ガーナ、ザンビア、カンボジア • 累計で3万3,574台の自転車を無償で輸送 1 3 © ジョイセフ 4 2 1 ランドセル輸送(10 年間) 輸送ルート 日本→アフガニスタン • 累計で 12 万 4,997 個のランドセルを無償で輸送 © ジョイセフ 3 絵本輸送(10 年間) 3 飲料水輸送 輸送ルート 日本→カンボジア、 輸送ルート 日本→カンボジア ラオス、タイ • 累計で 17 万 2,947 冊の絵本を無償で輸送 © シャンティ国際ボランティア会 TOPICS • 飲料水約19万5千リットル(18TEU) を輸送 © 日本ユネスコ協会連盟 グループ社員によるボランティア活動 東日本大震災ボランティア 2011 年より当社グループ社員、役員、OB、OG 総勢 405 名を東日本大震災被災地ボランティ アへ派遣しています。 これまでの瓦礫撤去を主としたボランティアから、2013 年度はより地元に密着した街づく りやコミュニティ再構築、産業の再興などの自立支援を目的とした活動を行い、地元の人々 との作業や交流を通して、復興の現状や今後の支援について理解や考えを深めました。ま た、地域福祉を支援するための募金や、物産販売会を行うとともに、上映会や講演会の開催 など、さまざまな形での支援の機会を設けました。 今年で 3 年目となるボランティア活動も、復旧ボランティアから復興ボランティアへシフト してきていますが、これからも継続的に復興支援に取り組んでいきます。 58 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 ボランティア活動風景 2013 年度輸送協力実績 国際協力 NGO ジョイセフ 再生自転車の海外譲与活動 輸送先 n 災害支援活動 輪送数 ザンビア、ガーナなど 4 カ国 2,250 台 *1 *1. 2000 年度以降延べ 33,574 台 想い出のランドセルギフト 輸送先 輪送数 アフガニスタン 5 東日本大震災ボランティア *2. 2004 年度以降延べ 12 万 4,997 個 (公社)シャンティ国際ボランティア会 絵本を届ける運動 輸送先 輪送数 カンボジア、ラオス、 タイ(ミャンマー難民キャンプ) 5 Unique NYK 輸送ルート 米国→日本 • 津波で米国に漂着した実習ボートを無償 で輸送 1 万 9,068 個 *2 1 万 4,706 冊 *3 *3. 2004 年度以降延べ 17 万 2,947 冊 ※地図上のルートはイメージです。 実際の輸送経路とは異なります。 2013 年度災害支援実績 災害名・支援内容 金額 * 2013 年 5 月 四川省地震 支援金 2013 年 11 月 フィリピン台風(ハイエン) 支援金 2014 年 2 月 赤い羽根 3.11 いわて沿岸地域 応援募金 4 フィリピン台風(ハイエン) 48 万 8,748 円 1,284 万 3,598 円 53 万 3,857 円 * 会社寄付、グループ社員の募金を含む 輸送ルート 日本→フィリピン • テント 960 張り(10TEU)を無償で輸送 • 飲料水約15万5千リットル(18TEU)を無 償で輸送 • 衣類 165トン(19TEU)を無償で輸送 ©CIVIC FORCE TOPICS 外部ステークホルダーからの声 社会貢献活動から見える企業理念 n 海外グループ社員による社会貢献活動 雑草除去ボランティア 国 ベルギー • 自然保護区での雑草除去ボランティア コンテナ寄贈 国 豪州 ターミナル見学 国 シンガポール • 日本人学校小学 5 年生総勢 230 名に ターミナル見学会実施 中国(青島) • 20 フィートコンテナを小学校に寄贈し、 NPO によって遊具に改造 • 公園での清掃活動実施 児童養護施設を訪問 Earth Week の取り組み 国 メキシコ • 子どもの日に児童養護施設を訪問 国 ダーが関わり、ステークホルダーを第一に考えているからこそ、 今回の報告にあるような社会貢献活動に尽力されているのだ と思います。果たすべき役割として輸送という事業の効率化を 継続的に実施され、同時に、果たすことのできる役割として国 清掃活動 国 輸送という事業は、モノを運ぶことを通じて、人と人とをつなげ る活動であると考えます。そこにはさまざまなステークホル 米国、カナダ 際的な支援や援助を、輸送を通じ率先して行動に移す。この結 果、文字どおり人々を支え、社会から必要とされる存在となって いるのだと思います。今後も国や人種の枠を超えた活動、さら にはコミュニティの発展につながるような報告を期待します。 • 環境にまつわるチャリティ募金、 イベント、コンテストなど実施 子ども支援 国 インド • スラム街に住む子どもたちの勉強を サポート SGS ジャパン㈱ 認証サービス事業部 サステナビリティ報告書保証(SRA) 主任審査員 都倉 知宏さん NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 59 競争優位を生み出す仕組み CSR 活動の推進体制 本社に広報 CSR グループを設置し、本社の各グループには CSR タスクフォースメンバーを任命、また国内外グループ会 CSR 活動推進体制図 2014 年 4 月 1 日現在 経営企画本部 社にはCSR担当者を任命し活動を進めています。広報 CSRグ 経営企画本部長 ループは日本郵船グループ全体の CSR 活動の取りまとめや、 活動推進・サポートにあたるとともに、統合レポートの作成、 担当役員 CSR 研修、SRI 調査の対応など、ステークホルダーからの要請 を把握し、社会からの期待と信頼に応えられる企業グループ 広報 CSR グループ グローバル・ コンパクト 推進委員会 (人事グループと 共同設置) Unique NYK となるため、社内変革と社内外への情報発信に努めています。 海外に関しては、各地からの CSR 活動報告を取りまとめた を発行し情報共有を図るとともに、 『Global CSR Newsletter』 本社 国内グループ会社 海外グループ会社 各地域の活動の報告や、本社からの提案事項に関して意見交 CSR タスクフォース メンバー (37 部署) CSR 担当者 (主要グループ会社 51 社) 地域を統括する CSRコーディネーター (4 拠点) サブ CSR コーディネーター (2 拠点) 換を行っています。 国内では、主要グループ会社 51社に CSR 担当者を設置。海 外では、世界 4 拠点に CSR コーディネーター、2 拠点にサブ CSR コーディネーターを配置し、各地域の特性や取り組むべ き課題に沿った CSR 活動を推進しています。国内外の CSR 担 当者は、本社や、ほかの担当者と情報を共有しながら、活動を 展開しています。 SRI 調査 Socially Responsible Investment(社会的責任投資)の観点から見た調査 4 拠点 東アジア、南アジア、欧州、北米 2 拠点 オセアニア、中南米 グローバル・コンパクト推進委員会 当社グループにおける国連グローバル・コンパクト (以下、 GC) GC の「環境」分野への取り組みは環境グループ、 「腐敗防止」 分野への取り組みは法務グループおよびフェアトレード推進 グループが中心になって推進しています。 60 NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA NYK Report 2014 是正措置の決定・実施 研修を実施し、この分野での理解促進を図っています。なお、 調査 組みを推進します。2011 年度から、国内外のグループ会社に グローバル・コンパクト推進委員会 権」および「労働基準」に関する GC 原則1から6に対する取り 調査結果の集計および分析 「人 の下、人事グループおよび広報 CSR グループで構成され、 推進状況の調査 ︵人事労務・人材育成に関する調査︶ GC 推進委員会を設置しました。本委員会は、人事グループ長 グローバル・コンパクトの周知、 研修の実施 の推進と人権侵害の調査・対応を目的として、2010 年に グローバル・コンパクト推進プロセス