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「親指ネット」と若者の友人関係の変容
「親指ネット」と若者の友人関係の変容 塩 森 継 紀 林 理 The Effect of the “Thumb Net” on Relationships between Young Adults Tsugunori Shiomori Osamu Hayashi In this research, we present the results of a survey of young adults regarding the way cellular phone usage has altered the concept of friendship. Each subject included in this survey completed a written questionnaire and was given a personal interview. Survey subjects gave low importance to the fact that cellular phones allow another person to be contacted anywhere and at any time. Instead, they expressed the opinion that a more important function of cellular phones is to allow individual communication, or, as they put it, “you can contact a certain person easily.” When the life style of the current generation of young people is taken into consideration, a life style in which time is a less critical factor, the convenience factor of “anytime” communication is not so important. Our survey showed that young adults exchange cell phone numbers readily but that exchange of e-mail addresses is limited to their closer friends. Historically, female students have been part of a letter-exchange culture, that is, they are accustomed to exchanging letters with friends and acquaintances and frequently do so. With the advent of e-mail communication via cell phone, female students have readily adapted to the new technology and now use e-mail as a substitute for letter exchange. Many of those surveyed stated that sending messages is more important than receiving them; in most cases they neither require nor expect a reply. They view their communication as a monologue whose contents and meaning should not be taken too literally. Because sending messages in this monologue style can show an intimate part of their psyche, they are reluctant to send them to people other than their closer friends. For this reason they are cautious about giving out their e-mail addresses. They exchange cell phone numbers, even among members of the opposite sex, as a courtesy, and they recognize these people as “acquaintances.” From this initial level of relationship, they become progressively better friends with these acquaintances - 43 - by either initiating or receiving phone calls. This forms the basis of a selection process by which further choices are made. However, these results show that these young adults support “shallow and wide” relationships, because of the fact that receiving calls is passive rather than active and allows another person to make one’s own choices. Thus, characteristically they have many acquaintances but few friends who could be described as close or intimate. Many of our survey sample responded that “there have been no changes in my relationships with close friends since I began using a cell phone.” However, more research is needed to establish whether core relationships with close friends have been maintained without changes. 1.はじめに ち確認できない。彼ら自身も、そういう行動の 中で人と親しくなるスピードは、とても速くなっ いつでも、どこにいても、望む相手に連絡が たけれど、友達ごっこをしているだけではない 取れる。昔ならSFの世界でしか実現できなかっ かという気持ちを持っているという見方である。 たことが、今は携帯電話のおかげで誰にでもで 他方、若者の友人関係は、「選択的」であると きてしまう。 いう松田の見方もある。 1 ) 松田の見方を紹介す 電子メール機能を含む携帯電話は、親指で手 る。携帯電話を利用している若者は、誰とでも 早く入力する様から「親指ネット」と呼ばれ、 携帯電話を通じてつきあっているのではなく、 若者世代を中心にして普及は著しい。それにと 特に親しい相手との間でもっともよく利用され もなって若者の間では、友人との人間関係も、 ている。また、番通(発信番号表示)で相手を 手紙と据え置き電話しかなかった親世代とは変 確認し、電話で応答するか決める。たまり場で わってきているという議論がある。その一つは、 誰かが通りかかるのを待つのではなく、携帯電 最近の若者の友人関係は「広いが浅い」。深い 話で連絡をとって会うといった行動は、連絡を 人間関係が築きにくい。浅い人間関係がやみく とる相手や直接会う相手の「選択」である。い もに広がり、もめ事も多い。いつも一緒に過ご つでもどこでも連絡がとれる個人専用の携帯電 す友人の数は多いが、悩みごとなどの相談はせ 話で、今いる場所や現在所属している集団にと ず、お互いに意識して深入りしないようにつき らわれず好きな相手、気の合う相手とつながる。 あっている。そのため、孤独感を感じている。 これは「広い-狭い」、「深い-浅い」という このような若者が身体の一部と思いこむほどの 軸でとらえるより、「選択的」と捉えるほうが 必需品となっているのが携帯電話である。しか 適切であるという見方である。 し、深いつながりがないため、朝起きてから夜 携帯電話で結ばれている若者の友人関係は、 寝るまで友人とコミュニケーションをとろうと 「広いが浅い」なのか「選択的」なのか、あるい している。友人関係を保つためには、まめに連 は他の見方があるのか。本研究では若者自身の 絡をとることが重要と考えている。だから、携 携帯電話利用に関する態度調査から携帯電話に 帯電話を使って、「朝起きたよ」「学校に着い よる友人関係の変容を検討する。質問紙調査と たよ」「これから昼飯」といった、終始ささい 面接調査を行い、両方から検討した結果を報告 な話をしている。そうしなくては友人関係を保 する。 - 44 - 2.調査内容 化があったか」の10項目である。 2.1 3.結果 質問紙調査 2.1.1 調査対象及び調査時期 調査対象は、首都圏の文科系大学生140名、短 期大学生99名、専門学校生74名の合計313名(男 3.1 質問紙調査 3.1.1 普段利用しているコミュニケーショ ン手段 子学生168名、女子学生145名)である。 調査時期は、すべて2000年11月である。調査 「以下にあげたコミュニケーションの手段のう は授業中に授業担当者が配布し回収する方法に ち、あなたが普段お使いのものをお答えくださ よった。 い(複数回答)」で回答してもらった利用ツール は 、 多 い 順 に 携 帯 電 話 90.5% 、 据 え 置 き 電 話 2.1.2 調査項目 64.4%、パソコン13.3%、ファクス7.6%、ポケッ 調査項目は、 「対象者の属性」 「居住形態」「コ ミニュケーションの利用ツール」「携帯電話の トベル6.7%、PHS4.8%である(図1)。これ は携帯電話の圧倒的な普及率を示している。 必要性」 「携帯電話利用の頻度・時間・相手」「ワ 「前質問であげたコミュニケーションの手段の ン切りの頻度」「携帯メール利用の理由・頻度・ うち、あなたが最もよく使っていると思われる 相手」「携帯電話の使用料・支払い元」「携帯 ものはどれですか」に対しては、携帯電話77.5%、 電話に対する意識」「携帯電話で話す上での利 据え置き電話7.3%、PHS3.8%、ファクス3.5%、 用と満足の度合」に関する54項目である。これ ポケットベル1.0%、パソコン0.0%である。前 らの調査項目は、日吉、杉山の調査 を参考に、 質問で答えた携帯電話利用者285人のうち244人 さらに新たな質問を加えて作成した。 が携帯電話を最多頻度で利用しており、携帯電 2) 話の利用度が高いことを示している(図2)。 2.2 面接調査 2.2.1 調査対象及び調査時期 3.1.2 調査対象は、首都圏の男子大学生3名と女子 携帯電話がない生活に対する意識 携帯電話がない生活に対する意識(図3)は、 専門学校生6名について、それぞれ集団でおこ 携帯がない生活は「不安であり、持っていたい」 なった。 が43.8%、「不安ではあるが、なくてもかまわ 調査時期は、男子大学生は2000年11月に、女 子専門学校生は12月に行った。 ない」が12.4%、「不安ではないが、持ってい たい」が30.8%、「不安ではないし、なくても かまわない」が4.4%であり、不安を感じるもの 2.1.2 調査項目 が56.2%、必要性を感じているものが74.6%と 調査項目は、「いつ頃からどんな理由で持つ 携帯電話に対する依存度は非常に高い。 ようになったか」「持つようになって便利なと ころはどこか」「持つ前の友人との電話、手紙 3.1.3 携帯電話電話の1日にかける回数 の頻度は」「1日にかける回数と時間」「1日 および1回の通話時間 に出すメールの数」「1ヶ月で使用しない日数」 携帯電話電話の1日にかける回数(図4)は、 「登録している友人の数」 「 固定電話、携帯電話、 5回未満が74.0%、10回未満が15.9%、20回未 メールの使い分けはするか」「忘れて出かけた 満が1.9%、20回以上が0.6%であり5回未満が圧 ときの気持ち」「持つようなって友人関係に変 倒的に多い。 - 45 - 図1:普段利用しているコミュニケーション手段(複数回答) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 携帯電話 100 % 90.5 据え置き電話 64.4 パソコン 13.3 ファックス 7.6 ポケットベル 6.7 PHS 4.8 その他 0 どれも使っていない 0 図2:最多頻度で利用しているコミュニケーション手段 どれも使っていない 0.0% その他 0.0% 無回答 7.0% ファックス 3.5% 据え置き電話 7.3% パソコン 0.0% ポケットベル 1.0% PHS 3.8% 携帯電話 77.5% 図3:携帯電話がない生活に対する意識 無回答 8.6% 携帯電話がない生活は不 安ではないし、なくてもか まわない。 4.4% 携帯電話がない生活は不 安であり、持っていたい。 43.8% 携帯電話がない生活は不 安ではないが、持っていた い。 30.8% 携帯電話がない生活は不 安であるが、なくてもかま わない。 12.4% - 46 - 図4:携帯電話の1日にかける回数 20回以上 0.6% 無回答 7.6% 20回未満 1.9% 10回未満 15.9% 5回未満 74.0% 図5:携帯電話の1回の通話時間 60分以上 1.0% 無回答 7.9% 60分未満 5.7% 5分未満 48.3% 30分未満 37.1% 1回の通話時間(図5)は、1回5分未満が り使わない7.9%、全く使わない4.8%である。 48.3%、1回30分未満が37.1%、1回60分未満 男女別ではではよく使うが男45.2%、女74.5% が5.7%、1回60分以上が1.0%である。1回5 であり女子学生の方が圧倒的に多く利用してい 分未満と1回30分未満を合わせると85.4%とな る。 り、携帯電話利用者の過半数が1回の通話時間 3.1.5 は30分未満である。 携帯電話利用に対する意識 携帯電話利用に対する意識(図7複数回答) 3.1.4 携帯メールの使用頻度 は、「よく当てはまる」に1点「全くあてはま 携帯メールの使用頻度(図6)は、男女全体 らない」に5点を与え、平均得点より高い項目 では、よく使う58.4%、まあ使う21.9%、あま は「長電話する方だ」「身近な人に電話で話すこ - 47 - 8 4 - まあ使う 21.9% あまり使 わない 7.9% 全く使わな い 4.8% 全体 無回答 7.0% よく使う 58.4% あまり使わ ない 13.7% まあ使う 26.2% 全く使わな い 6.5% - 48 - 男性 無回答 8.3% 図6:携帯メールの使用頻度 よく使う 45.2% まあ使う 15.9% あまり使 わない 1.4% 全く使わ ない 2.8% 女性 よく使う 74.5% 無回答 5.5% 9 4 - なかなか会えない人と電話で話すことが多い 電話で悩み事を話すのが好き 長電話する方だ 身近な人に電話で話すことが多い 電話がかかってくるとうれしい いつも電話で話す人は決まっている 目的もなく電話で話すことがよくある 電話で現在の状況を聞くことが多い 電話を自分からよくかける方だ 電話は仕方がなく使っている 1.9 電話は連絡事項だけで済ますことが多い 電話で話すことが好き 0% 9.2 8.6 8.3 24.1 25.1 よく当てはまる(%) 20.6 29.5 25.4 21.3 20.0 15.9 10.5 16.5 19.0 20% 31.4 29.8 - 49 - まあ当てはまる(%) 34.3 38.1 37.8 41.0 44.8 52.7 38.7 37.1 60% あまり当てはまらない(%) 46.3 37.5 40% 25.7 全く当てはまらない(%) 33.0 34.9 42.5 43.2 33.3 23.8 80% 図7:携帯電話利用についての意識 (複数回答) 19.4 19.0 21.3 18.7 21.3 10.2 11.1 8.9 7.9 2.2 3.8 4.1 5.7 4.4 100% 0 5 - 安心感を得ることができる 15.2 電話で相談や悩みごとを話すことができる 緊急の連絡の際にすぐ連絡できる 相手のスケジュールや近況が分かる 天気や季節の世話話ができる 交流を持つことができる 友人にしか聞かれたくない話ができる 12.4 最近購入したものや流行のお店などの情報を交換できる 生活に必要な情報を聞くことができる 14.0 10.5 両親などに話しづらい話ができる 友人が自分の安否を心配しなくなる 元気であるかどうか確認できる お互いに気づかいを伝えることができる 楽しい会話ができる 11.7 14.6 暇つぶしになる 15.6 10.5 12.7 21.9 21.6 22.5 26.3 25.7 26.7 27.9 24.4 23.8 19.7 17.5 20.6 18.1 15.6 13.3 友人を身近に感じることができる 自分のスケジュールや近況を知らせることができる 会わなくてもまめに接することができる 時間を気にせず話すことができる 頼み事ができる 友人の安否について心配しなくなる さびしさを紛らわすことができる 4.4 2.9 家族や親戚などのうわさ話をすることができる コミュニケーションを取っていることの確認ができる 3.2 料金を気にせずに話すことができる 友人であることでの一体感を得ることができる 0% 44.1 35.9 47.3 45.1 51.7 46.3 44.8 44.1 50.5 38.7 35.2 60% あまり役に立たない(%) 51.1 37.8 45.1 47.0 45.4 43.5 52.7 54.3 40% まあ役に立つ(%) 41.9 37.5 44.8 43.2 43.2 - 50 - 60.3 37.5 26.3 非常に役に立つ(%) 26.3 24.8 20% 28.9 24.8 80% 24.4 17.1 無回答(%) 17.5 18.1 15.6 17.8 12.7 19.4 19.7 18.4 21.0 27.6 21.0 27.9 21.0 22.5 25.4 全く役に立たない(%) 28.9 30.2 38.1 31.7 28.3 29.8 23.5 図8:携帯電話利用ついての満足度 (複数回答) 1.0 2.9 3.2 6.7 7.0 9.8 4.4 7.0 3.2 5.1 2.5 5.4 7.3 10.5 2.2 3.2 3.2 5.4 7.9 7.6 4.4 4.1 6.7 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0 6.7 7.3 7.0 7.0 6.7 6.3 6.3 6.7 6.3 6.7 7.0 6.7 6.7 6.3 6.7 6.3 6.3 6.3 7.3 100% とが多い」「電話がかかってくるとうれしい」 「電 話で話すことが好き」であり、携帯電話はモバ ため(F:30歳) (2) ケータイを持つようになって便利なところ イルというよりパーソナルな利用意識が高い。 はどこか ・いつでもどこにいても連絡取れる(全員) 3.1.6 携帯電話利用に対する満足度 ・家族、時間に関係なくかけられる(全員) 携帯電話利用に対する満足度(図8複数回答) ・携帯電話というより自分個人の電話という感 は、「非常に役に立つ」に1点「全く役に立た ない」に5点を与え、平均得点より意識が高い じがする(全員) ・ケータイは主に待ち合わせの時よく使う(全 項目は「緊急の連絡の際にすぐ連絡がとれる」 員) 「自分の近況やスケジュールを知らせることが ・ケータイがないときは、待ち合わせで待つの できる」「元気であるかどうか確認できる」「楽 は30分が限度、ケータイを持つようになって しい会話ができる」「会わなくともまめに接す からは何分、何時間でも待てる。来ることが ることができる」であり、緊急時の連絡がとれ、 分かっているから。待ち合わせの場所も時間 近況を知らせることができ、会わなくともつな もケータイがないときとくらべてルーズに約 がっているという意識において多くの満足を得 束できるのがいい。(全員) ている。 (3) ケータイを持つ前の友達との電話、手紙の 3.2 面接調査 3.2.1 頻度はどのくらいか 女子専門学生の面接調査 ・電話:1~3回/月(A、B:19歳、C:20 〔出席者〕A、B:19歳、C:20歳、D:22歳、 歳、D:22歳) E:28歳、F:30歳の6人 1~2回/週(E:28歳、F:30歳) ・手紙:1~2回/月(A、B:19歳、C:20 (1) いつ頃からどんな理由でケータイを持つよ 歳、D:22歳、F:30歳) うになったか 1~2回/週(E:28歳) ・高校3年。それまではPHS。持つようになっ たきっかけは、友達みんながケータイを持っ (4) ケータイを1日何回かけますか、1回につ ていて、PHSからケータイにかける場合、ケー タイからケータイにかけるよりも2倍位通話 き何分話しますか ・1日5回未満、1回につき5分未満(D:22 料が高かったから(A:19歳) 歳、E:28歳、F:30歳) ・高3の時、部活で帰りが遅くなるようになっ ・1日5回未満、1回につき30分未満(B:19 たので、家との連絡のため(B:19歳) 歳、C:20歳) ・高校卒業の時、卒業祝いに買ってもらった。 ・1日10回未満、1回につき30分未満(A:19 みんな持っていたから(C:20歳) 歳) ・高校卒業して1年位たってから、友達が持っ ていて、自分だけ持っていなくて連絡とりづ (5) ケータイで1日何通メールを出しますか らかったから(D:22歳) ・1日5通未満(A、B:19歳、C:20歳、E: ・1年前から、友人からぜんぜん連絡がとれな いと言われたから(E:28歳) 28歳、F:30歳) ・1日10通未満(D:22歳) ・3年前から。友人との連絡を取りやすくする - 51 - (6) まる1日ケータイを使わないことがあるか、 あるとしたらその頻度はどのくらいか 化があったか ・「いつもつながっている」という感じがして ・ケータイを使わない日はない(A:19歳) 安心感がある反面、それがわずらわしく感じ ・月に1~2日使わない(B:19歳、C:20歳、 ることもある(A:19歳) D:22歳、E:28歳) ・発信器をつけられているみたいで、監視され ・月に5~7日(F:30歳) ている感覚がある(C:20歳、D:22歳) ・ケータイという物では「つながっている」感 (7) ケータイに登録している友人の数は何人か じはしない(A、B:19歳、E:28歳、F: ・50~100人(C:20歳、D:22歳、E:28歳、 30歳) F:30歳) ・ケータイの番号だけ教える人、メールアドレ ・150人位(A、B:19歳) スも教える人と分ける。メールアドレスは親 しい人でないと教えない(全員) (8) 固定電話、ケータイ、ケータイメールの使 ・ケータイを持つようになって、交友関係は広 い分けはするか くなったが、それによって友人関係が変わっ ・使い分けする(全員) てきたとは思わない(全員) ・固定電話は、特定の人で悩み事など重い話、 話が長くなるとき、相手が確実に家にいると 3.1.2 男子大学生の面接調査 き(全員) 〔出席者〕G、H:20歳、I:21歳の3人 ・ケータイは親しい友人で、家族にでて欲しく ないとき、声が聞きたくなったとき、会うな (1) いつ頃からどんな理由でケータイを持つよ どの約束するとき、緊急な用事があるとき(全 員) うになったか ・3年前の冬、安くなったから(G:20歳) ・メールは固定電話、ケータイよりプライベー ・高校のときはPHS、ケータイは今年の2月安 トな感じが強い、内容は軽い話、あいさつが わり、約束の確認、暇つぶし、メールは確実 くなったから(H:20歳) ・去年の1月、家族との緊急連絡、非常用のた じゃないから万一届かなくてもいい内容(全 め(I:21歳) 員) (2) ケータイを持つようになって便利なところ (9) ケータイを忘れて出かけたときどんな気持 ちになるか はどこか ・いつでもどこにいても連絡取れる(全員) ・子供を忘れた気分で、不安でしょうがない ・携帯電話というより自分個人の電話という感 (A:19歳) じで使える(全員) ・忘れたことを引きずり不安になる(B:19歳) ・ケータイは主に待ち合わせの時よく使う(全 ・孤立した気分(C:20歳) 員) ・忘れたことを引きずらないけど連絡あったら こまると思う(D:22歳) (4) ケータイを1日何回かけますか、1回につ ・あまり気にならない(E:28歳、F:30歳) き何分話しますか ・1日5回未満、1回につき5分未満(G:20 (10) ケータイを持つようになって友人関係に変 - 52 - 歳、I:21歳) ・1日20回未満、1回につき5分未満(H:20 歳) 化があったか ・ケータイを持つようになって連絡は取りやす くなったけど、ケータイが友人との親密さに (7) ケータイに登録している友人の数は何人か 影響しているとは思わない。ケータイに関係 ・20人位(G:20歳) なく親しい人とは親しい(全員) ・10人位(H:20歳) ・ケータイは男同士では便利な道具だけど、男 女間では監視装置になってると感じることも (8) 固定電話、ケータイ、メールの使い分けは ある(H:20歳) するか ・会わない人にはケータイはかけない(G:20 4.終わりに 歳) ・友人とは会う連絡だけで、ほとんどやりとり しない(I:21歳) ・ケータイは昔の固定電話と同じで、会うため の連絡用(全員) 視する者は少なく、「特定の相手と容易に連絡 できる」といういわば個人的通信手段という側 ・ケータイでは長話はしない、「どこにいる?」 「今日ひま?」 「会おうか?」といった短 若者の携帯電話に対する態度は「どこにいて も連絡できる」といういわゆるモバイル性を重 面を重視する回答が多かった。行動の時間的制 い 約が少ないという若者の生活状況からすれば、 連絡、なぜなら相手の表情、反応がわからな 「常時」は便利ではあるものの、さして切実な問 いから(H:20歳) 題とはなっていないことの結果と考えられる。 若 ・メールはまったくやらない(G:20歳、I: 21歳) 者の間では携帯電話の番号は非常に気軽に交換 される傾向がある。しかしメールアドレスは事 ・メールは一方通行で自分の感情を伝えるため 情が異なり、ある程度親しい関係の間に限って に、言葉や表現を考えるのがめんどうなので 交換されている。メールの使用頻度が高い女子 ほとんどしない。たまに縁が切れないように 学生の場合、携帯電話の出現前から手紙文化が あいさつがわりに出すときもある(H:20歳) あり、その代替手段として使用されていると考 ・女はケータイのない時代は結構手紙のやりと えられる。この種のメールは発信することに意 りしてたと思うけど、前から男は手紙書かな 味があり、返事はあまり期待していない。いわ い。だから、ほとんどの男はメールは使わな ばメールは「ひとりごと」であると考えられる いと思う。手紙は以前も今も年に1回だせば ので内容は軽い。しかし「ひとりごと」は、自 いい方だし。年賀状も出さない(全員) 分自身の内面を見せることにもなるので、限ら れた親しい相手にしか出さなくなっている。メー (9) ケータイを忘れて出かけたときどんな気持 ルアドレスを教えることに慎重になっているの はその結果と考えられる。携帯電話の番号は相 ちになるか ・ケータイがないと少し不安を感じるがまあな 手の性別に関わりなく儀礼的に交換し、教えた 相手は「知り合い」と認知している。「知り合 くてもいい(G:20歳、I:21歳) ・ケータイがない生活は不安で、生きていけな い」から発展して「友人」としてつき合うかど うかは、その後実際にかかってくるか、あるい い(H:20歳) はかけるかしてから「選別」して決めている。 (10) ケータイを持つようになって友人関係に変 その意味で一定の選別が行われている。しかし - 53 - 「かかってくる」という非常に受動的な基準で 選別が行われていることは「広いが浅い」関係 の形成を支持する結果であるとも言える。しか しながら、据え置き電話、携帯電話、メールと の使い分けや、携帯電話番号だけ教える相手、 メールアドレスまで教える相手と選別したり、 また「知り合い」から「友人」にするにも選別 することに象徴されるように、若者の友人関係 は総じて、 「選別的」関係であると考えられる。 また、男女とも深く交流する友人が増加したわ けではなく、「知り合い」が増大していること が特徴である。本調査の回答者はいずれも「深 い友人関係に変化はなかった」としている。こ れが実際に核となる人間関係は維持されている ことなのかという点についてはさらに検討が必 要である。 5.引用文献 1) 「若者の友人関係と携帯電話利用」松田美 佐 2000年 社会情報研究No4 P111~ 121 2) 「親子関係における携帯電話の利用と満足 研究」日吉昭彦、杉山 学 コミュニケーション学研究 2000年 第2号 成城 P67 ~95 - 54 -