...

Insight2003-2004

by user

on
Category: Documents
36

views

Report

Comments

Transcript

Insight2003-2004
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 2
時代を解くキーワード
2003-2004
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 3
競争時代への問題提起
多様性の中の共存へ――「偶然性」
をどう引き受けるか
大澤真幸・京都大学大学院人間・環境学研究科助教授
競争社会とは自己責任の社会だ、と僕らは思っている。ところ
普遍的な正義の存在を信じられない時代にあって、なお倫理
が実際起きているのは、互いに責任を押しつけ合う
「帰責ゲーム」。
的であろうとしたときに、自己責任の追求は、逆に倫理の極限的
今の競争は、ルールのあるコンペティションを超え、深刻なコンフリ
な崩壊を招く。だから何か別の方法、すなわち偶然性からの逃
クトを生んでしまっている。その最後の形態が「戦争」だろう。
走に対し、いつの間にか偶然性を引き受けてしまう作戦を編み出
競争や戦争が不可避なのは、われわれが「普遍的正義」を信
さないといけない。
じることができない「啓蒙後の世界」を生きているから。たとえ自
これは企業社会でも無関係な話ではない。企業は競争に人を
分が何事かを「正義」
と信じていようとも、それの必然性を論証す
動員する。それをどう促すのか。NHKの『プロジェクトX』が人を
る普遍的論拠はない。つまり、その「正義」はたまたま自分が信じ
奮い立たせるのは、それが一企業の利益を超え、世のため人の
てしまった、偶然の産物でしかない。
ためという崇高な社会的価値を持っていたからだ。しかし、信じ
だから、それぞれが唱える
「主義」は、みんな「たまたま」である。
られる決定的な正義がない今、自分の仕事に価値を見出しにく
しかし、現在の問題は、それにもかかわらず、
「偶然性からの逃
い人々を過酷な競争に駆り立てるにはどうするか。たまたまこれを
走」が起きていることだ。すると僕らが考えるべきは、互いが互い
しているが、そのたまたまに人を動員する。そんな真のプロジェク
の偶然性を承認し合える技術と態度とメンタリティの形成だ。競争
トXがない現代社会で積極的に生きるには、やはり偶然性の受け
は自分の強さを相手に認めさせるゲームだが、強者がときに負け
入れが必要だ。
ても、それでいいと思える競争をしないといけない。
だから帰責ゲームやモラルハザードを起こさない、本来の競争社
ただ、人間は偶然性がさほど嫌いなわけではない。
会への一番のポイントは、互いの「偶然性」を認めること。まず自
例えばスポーツは偶然性と必然性の狭間にあるが、なかでもサ
分の偶然性を受け入れれば、他人の偶然性も受け入れられる。
ッカーは多分に偶然性に支配されるスポーツだ。2002年ワールド
それこそが、多様性の中での共存・信頼という成果を生むに違い
カップで優勝候補のフランスが早々と敗退したように、強者が勝つ
ない。■
とは限らない。必然性を高めたいなら、判定を持ち込んだり、シュ
ートを打つだけでも1点とか、ルールを変えれば実力が反映される。
しかし、それでは面白みがなくなってしまう。
人間はどこか偶然性を愛する面があるわけで、例えばアメリカ
の正義vsイスラムの正義という到底相容れない葛藤の場などでも、
もっと偶然性の平和利用を考えてもいい。普遍的な正義がない以
上、たとえ不満足な結論でも受容できる気持ちを創っておくことが
大事だ。例えば対立している双方が、媒介者を立てて各々自ら
の立場を説明する。必ずしも自分と同じ立場でない人に説明す
る過程で、互いに自分の立場の偶然性を認識せざるを得なくな
る。で、どんな結論が出ても仕方ないか――と。
おおさわ まさち
京都大学大学院人間・環境学研究科助
教授(比較社会学・社会システム論)
1958年長野県生まれ。東京大学大学院
社会学研究科博士課程修了。東京大学
文学部助手、千葉大学講師、助教授。
97年より現職。著書『自由を考える』
『文
明の内なる衝突』
『行為の代数学』
『身体
の比較社会学』
『資本主義のパラドックス』
『見たくない思想的現実を見る』
『性愛と
資本主義』
『虚構の時代の果て』
『社会学
の知33』
『意味と他者性』
『戦後の思想空
間』など。
CONTENTS
多様性の中の共存へ――「偶然性」
をどう引き受けるか
鼎談 競争時代――新たな秩序をどうつくるか …………………………… 01
オピニオン
Insight 025-048 ……………………………………………………………………… 10
Break …………………………………………………………………………………………… 14
Close upエナジー ………………………………………………………………………… 16
News Clip関西電力 …………………………………………………………………… 20
ダ
イ
ジ
ェ
ス
ト
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 4
鼎談 競争時代――
新たな秩序をどうつくるか
小川 進・神戸大学大学院経営学研究科教授
村田晃嗣・同志社大学法学部助教授
内田 樹・神戸女学院大学文学部教授
●競争社会の現状をどう視るか
モノから仕組みの競争時代、
仕組みの背後にある文化が大事
[ポケモンでポン]
ラムネ菓子と、レリーフ付きスタンプ、シ
ールがセットされた食玩。
内田 きょうは「競争社会」について考えます。背景には電力自由化があり、関西電力も
競争社会に組み込まれていくわけですが、その中でどう対応すればいいか。企業社会や国
際関係など多様な観点から話をすることで、何か新しい発見につながれば、と思っていま
す。まず企業の競争について小川さんはどうご覧になっていますか。
小川 私の専門で言えば、競争の仕方には、製品を通じた競争と仕組みを通じた競争が
あり、最近は仕組みを通じた競争が大事になっています。
例えばコカ・コーラが売れているのは、味がいい、つまり商品がいいからだという話もある
が、飲料業界の人の話を聞くと、重要なのは商品よりも自動販売機の数。定価で、お客さ
まに近いところで欠品なく販売する仕組みの方が重要なんだと。そう言われれば私自身、
スーパーで買えば安いのに、気がついたら120円きっちり払って、最後は頭まで下げて
(笑)、
つまり自分で缶を取り出して飲むわけで、やっぱり仕組みが大事だな、と。
パソコンもそうで、一時アップルコンピュータのiMacが売れたが、シェアで言えば、むしろ
デルコンピュータの方が高い。じゃあ、デルのヒット商品はと聞くと、答えられる人は少ない。
デルは、お客さまが自分の欲しい部品の組み合わせを1週間以内にリーズナブルな価格で
届ける――デル・ダイレクトモデルという仕組みを構築した点が重要です。
そのように、モノを売る競争から、仕組みで競う競争へ大きく移っている、というのが私の
見方です。
内田 自動販売機と言えば、外国人が日本に来て一番驚くのは自販機が街路にあること
です。道端に商品と現金を置いてるわけで、自販機ごと盗ろうとすれば盗れる。日本では
そんな「ダイ・ハード」なことを試みる人はいませんが(笑)、ヨーロッパではいくら厳重に鎖で
縛っていても、すぐに壊され、金が盗まれる。
小川 進
おがわ すすむ
神戸大学大学院経営学研究科教授
(イノベーション管理;マーケティング)
1964年兵庫県生まれ。神戸大学大学
院経営学研究科前期課程修了、マサ
チューセッツ工科大学スローン経営大
学院博士課程修了。神戸大学助手、
助教授、2003年より教授。イノベーシ
ョン管理、マーケティング、流通システ
ムなど研究。著書『稼ぐ仕組み』
『ディ
マンド・チェーン経営』
『イノベーションの
発生論理』など。
「大前研一のビジネ
スブレイクスルー」講師も務める。
http://www.b.kobe-u.ac.jp/ogawa2/
自動販売機で売るというビジネスモデルを支えているのは、それを可能にする社会や文
化です。それがないと、同じシステムを例えばフランスに持っていっても、多分成功しない。
商品でなくビジネスモデルで競争するには、文化的・社会的なバックグラウンドが必要だと思
いますが。
小川 例えばコンビニエンスストアは30坪のスペースに2400の商品を置いて、その7割が1
年で入れ替わる。新商品がどんどん投入され、お弁当は1日3回、加工食品は1週間に3回
納品される。重要なのは、30坪でそれだけ効率的に商品を売ろうとすれば、発注した商品
が発注どおりに届かないといけない。ところが、それが難しい。商品がどんどん変わる中で
オーダーし、店に商品が届けば、問屋からの配送係と店の人で検品を行うが、オーダーし
た商品がどんなものか、実はパートの人も知らない。
「ポケモンでポン3本」
とか書いてあって、
Insight
2003-2004
01
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 5
村田 晃嗣 これはポケット菓子か、お茶なのか、わからない。しかし10年ほど前から、コンビニではそれ
むらた こうじ
同 志 社 大 学 法 学 部 助 教 授(英 米 研
究;アメリカ外交史)
1964年神戸市生まれ。同志社大学法
学部卒、神戸大学大学院法学研究科
博士課程修了。91∼95年米国ジョー
ジ・ワシントン大学留学。広島大学専
任講師を経て、99年助教授。のち同
志社大学助教授。第二次世界大戦後
のアメリカ外交・日米関係と東アジアの
安全保障など研究。著書『大統領の
挫折』
(サントリー学芸賞)、
『米国初代
国防長官フォレスタル』など。
http://www1.doshisha.ac.jp/%7Ek
murata/index.html
が簡単にできるようになった。つまり商品にはすべてバーコードが入るようになったので、ス
キャンするだけで商品もオーダー数も確認できる。そうなると、商品を知らなくても店の人だ
けで検品できるから、配送係は納品を済ませると、すぐに次の店に行け、配送効率が上が
るわけです。
こういうことが可能になるのも、検品する人は嘘をつかない、これが大前提。これができ
るのは日本だけなんですね。
内田
そうですね。ファストフード店など、何十人も働く中で正社員はクレーム担当が1人だ
け。あとは商品仕入れからディスプレイ、社員教育、販売戦略に至るまで、時給850円の女
の子がやっている。69円のハンバーガーは、時給850円で正社員以上に働く、モラールの
高いフリーター層が支えている。
しかし、そういうビジネスモデルの背後にある文化の特徴は、割と捨象されてしまう。電力
の場合もそうかもしれませんが、例えばアメリカで成功したモデルを、文化的背景は考慮せ
ず、ぽこっと持ってきたり、日本のモデルをそのまま海外に持っていくとかね。
小川 10年前セブン−イレブンのアメリカの親会社が倒産し、日本の子会社が助けようと日
本の手法をアメリカに持ち込もうとしたが、アメリカ人はみんな懐疑的だった。それは日本だ
からできると。つまり、信頼できて一生懸命働いて、ある程度リテラシーのあるパートがいる
のは日本だけ。カルチャーの差を考慮することがものすごく重要なんです。
競争と協調の国際関係、
競争と協調の国際関係、
文化を巡る対立がクローズアップ
文化を巡る対立がク
ローズアップ
内田 競争、コンペティションは同じルールを共有した上で成り立つが、今は物差しがみん
な違うようなことが起きていて、それがコンフリクトの原因になっています。そこで村田さん、
[ブルデュー]1930∼2002
Pierre Bourdieu フランスの社会学
者。構造主義的決定論(レヴィ=ストロ
ース)
と主体の哲学(サルトル)の二項対
立をのりこえる諸概念を駆使し、人文
社会科学のあらゆる分野を横断した
「超領域の人間学」者。教育文化社会
学センター(現・ヨーロッパ社会学セン
ター)主宰、コレージュ・ド・フランス教
授。超領域的雑誌『社会科学研究学
報』、言語横断的書評誌『リベール』を
自ら編集。主な著書『ディスタンクシオ
ン』
『実践感覚』など。
02
国際関係論の立場から競争について伺いたいのですが。
村田 国際関係の見方は2つあり、リアリズムの立場に立つ人は、国際政治は国家間の
「対立や競争」の関係と考える。一方、リベラリズムの人は、
「協調」が国際関係の基本だ
と言う。
ただ、リベラリズムの立場に立つ人にとっても厄介なのが、
「絶対的利得」と「相対的利
得」の問題です。例えば日米の経済関係で、日本のGDPが1年で10億ドル増え、アメリカ
が5億ドル増えたとします。そのとき、絶対的利得では両方とも得をしたのに、日米という比
較で考えたとき、多くのアメリカ人は、日本人の方が5億ドル余分に儲けたと考える。つまり
絶対的利得では得をしているが、他人と比べる相対的利得において自分たちは損をしてい
[実存主義]
個的実存、つまりあるがままの人間存
在、個人的存在を中心に置く思想。客
観主義でなく主観主義。人間が自由
に、主体的に、責任を持って活動する
ことで社会は進歩する、と考える。フラ
ンスのサルトルなどが代表的な実存主
義哲学者。
る。つまり、これは嫉妬の問題です。人間は本質的に絶対的利得より相対的利得を重視
[構造主義]
人間は常にある時代、ある地域、ある
社会集団に属しており、その条件(構
造)が人間のものの見方、感じ方、考
え方を規定しているとする思想。つまり
人間は、自分では判断や行動の「自律
的な主体」であると信じているが、実は、
その自由や自律性はかなり限定的なも
ので、自分で思っているほど自由に主
体的にものを見ているわけではないと
いうもの。レヴィ=ストロース、フーコー
(別項)、ラカン
(別項)などが代表。
は競争ではない。つまり、テロリストの側はアメリカを覆してリーダーシップを奪い取るとか、秩
2003-2004
Insight
するわけで、競争と摩擦と対立を基本とする国際政治から抜けきるのは難しい。
国際政治には、軍事力、経済活動、文化や価値という3つのドメインがあり、それぞれに
競争と協調の可能性があります。軍事面では、アメリカが突出して強くなったので、これま
で主権国家間で繰り返されてきた軍事的競争とはかなり異質なものになりつつある。逆に
テロなど、国家でない主体がはるかに小さな軍事力をもってアメリカに挑戦しているが、これ
序をつくろうとしているわけではないから、チャレンジではあるが、競争とは言えない。だから、
軍事レベルでは、純然たる競争は困難になりつつある。
経済面では、ユーロの台頭はじめ多元的な競争と協調がかなり進行しています。
文化については一時、ハンチントンの文明の衝突が注目されたが、皮肉にも今回のイラク
戦争が、その間違いを明らかにした。なぜなら、フランスとドイツという同じ西洋キリスト教文
明圏の国々がアメリカにあれほど反対した。これはキリスト教文明圏とイスラム文明圏の対立
ではなく、価値やイデオロギーを巡る対立、それが国際政治で相当クローズアップされてきた。
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 6
日本に関して言えば、そういう文化の側面でどう競争なり協調していくかの知見や努力
が、実は今までの日本外交に最も乏しかったように感じます。
教養の差が社会階層差にリンクするなかで ンクするなかで
教養の差が社会階層差にリ
日本のGNCに注目が
日本のGNCに注目が
内田
お二人の話を突き合わせると、キーワードとして「文化資本」という言葉が出てきま
す。軍事力や経済力が計量しやすいのに対し、文化は計量しにくい概念とされていました
が、ブルデューの文化資本という概念があるんです。
ブルデューの概念は、フランスの特殊な社会がベースにある。フランスは階層間の文化の
差が大きい。基本的に書字文化の階層とオーラル文化の階層に分かれていて、非識字率
が15%と高い一方で、50年代以降、人文科学、社会科学の分野でとんでもない数のさま
ざまな学術的方法を世界に発信してきた。実存主義、構造主義、ラカン派の精神分析、
フーコーやブルデューの社会学、脱構築とか。ところがこの発信者は、フランス社会のほん
の一握り。それこそ互いにみんな顔見知りという数百人、数千人オーダーの人たちがフラン
スの文化的発信のリソースをほとんど握っている。あとの何千万の一般のフランス人は、そ
れを知らないというような大きな格差があるわけです。
[ラカン]1901∼1981
Jacques Lacan フランスの精神分
析家。1936年「鏡像段階」論を発表、
人間主体を構成する根源的な疎外過
程に注目。
「無意識は一つの言語活動
として構造化されている」として、言語
と人間の関係を正しく探求するために
独自学派・パリフロイト派を樹立。主な
著書『エクリ』
『自我』
『テレヴィジオン』
など。
[フーコー]1926∼1984
Michel Foucault フランスの哲学
者、社会学者。人間主義的進歩史観
に異を唱え、歴史的事象に向き合うこ
とを説く。主な著書に、構造主義のバ
イブルと言われた『言葉と物』をはじめ、
『監獄の誕生』
『狂気の歴史』
『知の考
古学』など。
[脱構築]
deconstruction テキストがAという真
理を伝えようとする時、Bという反論が
必ずその中に含まれているとする論証。
フランスの哲学者でポスト構造主義者
ジャック・デリダ(1930∼)が唱えた。
ブルデューは、そういう教養の差が、社会における権力や威信、情報、財力の差とシンク
ロしてるとして、
「文化資本論」を展開した。これが70年代に日本に入ってきたときは、みん
なピンとこなかった。日本は識字率ほぼ100%、教養の差が社会の階層差にリンクするなん
て、誰も考えてなかった。
ただ、僕の最近の印象では、日本でも文化資本の差と社会階層の差に関連が出てきて
いる。東大の先生に聞きましたが、ゼミの学生を家に呼ぶと、ピアノがあるからとラフマニノ
[ラフマニノフ]1873∼1943
Sergei Vassilievich Rakhmaninov
ロシアの作曲家、ピアニスト、指揮者。
チャイコフスキーの流れを継ぎ、甘美で
感傷的なメロディが特徴。作品は、映
画「逢引き」
「7年目の浮気」などにも
使われた。
フを弾きだす学生がいる一方で、アニメとギャルゲーの話しかできない学生もいて、子供の
頃から吹き込まれ身体化した文化資本の差が非常に大きくなっている。前は一億総中流
で、文化的水準もさほど差はなかったが、今はほんの一部の突出して集中的に文化資本
を浴びてきた階層の子供と受験エリートの間にはっきりと差が出てきた。学力差は、ある程
度勉強すれば追いつけるが、芸術に対する鑑賞眼や美食、ヨットを操船する技術、親子
代々の海外の友人やネットワークなどは、20歳の段階で「お、これはまずい」と個人的に努
力しても、キャッチアップできないくらい差がついている。
経済力も、その根本に個々の社会の文化的成熟度なりリソースの支えがないと難しいが、
日本の従来の枠組みや見方では、まだこの状況をうまく捉えられてない気がします。
村田 少し前にアメリカ人が書いて話題になった論文で『日本のグロス・ナショナル・クール』
というのがあります。つまり、GNPやGDPではなく、GNC――「日本の国民総カッコ良さ」。
それはまさにポケモンとかアニメキャラクター、古着ファッション、ポップミュージックなど日本の
サブカルチャーがアジアや欧米で随分評価されているが、実はそのインパクトを一番理解して
いないのは日本人で、それを外交手段として活用できていない。日本は明治以降は軍事
内田 樹 うちだ たつる
神戸女学院大学文学部総合文化学科
教授(フランス現代思想、映画論、武
道論)
1950年東京都生まれ。東京大学文学
部卒、東京都立大学大学院人文科学
研究科仏文学専攻博士課程中退。東
京都立大学助手、神戸女学院大学助
教授を経て、教授。著書『ためらいの
倫理学』
『「おじさん」的思考』
『期間限
定の思想―おじさん的思考2』
『寝なが
ら学べる構造主義』
『大人は愉しい─
メル友おじさん交換日記』
『レヴィナスと
愛の現象学』など。合気道6段。
http://www.geocities.co.jp/Berkele
y/3949/
国家としてやって挫折し、戦後つい最近までは経済でやってきて今行き詰まっているが、むし
ろ活路は文化にあるという論文です。
だから日本の文化的発信力に期待されてる面は大きいけど、それはポップレベルでの発
信力であり、トップレベルでの発信力は持ってないんですね。
内田
つまりハイカルチャーではないということですね。
小川 確かにポケモンやアニメが発信力になっているのは、非常に日本の特徴が出ている
と思います。つまり日本ほど、いい意味でも悪い意味でも標準化され情報共有の速い国は
ない。もう1つ、言葉に関わるものは弱い。アニメやゲーム、ソフトウェアでも非言語系、ある
いは半導体回路とか、非言語の強さが際立っている。1つの事象がすごい速度で共有化
され普及していく現象と、そこから日本語を抜いたもの。何かそういう特徴がある。
Insight
2003-2004
03
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 7
ファッションにしても、例えば今は「和」が世界的な流行りらしいし、映画では去年「千と千
尋の神隠し」がアカデミー賞をとり、今年は「ラスト サムライ」や「たそがれ清兵衛」がノミネ
ートされるなど、いろんな面で日本が格好いいと思われてるけど、一過性のブームのような
気もします。
インターネットの台頭と総合雑誌の退潮が
言論や思考に影を落とす
言論や思考に影を落とす
インターネットの台頭と総合雑誌の退潮が
村田
それは日本の文化的魅力が増したというより、日本経済が弱くなったことで国際社
会の日本を見る目が寛容になり、経済以外の側面でも日本を見るようになったということだ
と思います。だけど、そういう文化の力を外交に生かすには、日本の経験や努力は乏しく
て、未だに日本語にできないカタカナ語のままの概念が多い点に、この分野での後進性を
感じます。
日本の文化や教養、情報ということで危惧しているのは、インターネットの急速な発展と総
合雑誌の退潮です。これは何か非常に危険な組み合わせに思えます。つまり速度の速い
情報は簡単に入手できるが、じっくりものを考えるという遅い情報が急速に弱くなっていて、
論壇というものが日本社会から消えつつある。速い情報の流通は、いろんな分野でプロと
アマとの区別を薄くする。アマチュアでも学生でも、インターネット検索で情報を集め、北朝
鮮拉致問題にしても、いっぱしのことを言う。しかし、それを20世紀の北東アジアの歴史や
国際関係の文脈で論ずる訓練はできてない。そういう人が氾濫し、プロの権威はなくなっ
た。この徴候は、日本の言論や思考にとってかなり不幸ではないでしょうか。
内田 文脈を読む力は非常に落ちています。通常、ある出来事の評価は、時系列と空間
系列の軸で位置づけるわけですが、そういうマップがないんですね。
情報マッピングの訓練の場になったのが、総合雑誌。僕は小学生のころ『文藝春秋』を
愛読していたけれど、月1回の情報収集だけで政治、経済、文化、世の中の動きが大体
わかるし、冒頭のエッセイからは古典や文学の話なども豆知識的に知ることができた。総
合雑誌には本来、そういう形の、ぎゅっと凝縮されながらも、いろいろな分野・方向にたくさ
んドアが開いてるような機能があった。
そういうのを読んで子供は、世の中は一筋縄ではいかないと思ったが、今、世の中、複
雑だと言うと嫌な顔をされ、
「話、簡単にしてください。だからどうなんですか」と言われる。
みんな、答えを非常に早く求めて、マル・バツや点数をつけたがる。
「あなたのご主人は何
点ですか」とか。そういうことを聞くのは、その人と自分の間に共通の度量衡があるという幻
想があるんですね。
文化というのは、共通の度量衡がない、私とあなたは価値観や言語をうまく共有できて
いないという認識の上に積んでいくものだと思いますが、その最も大事なことが今取っ払わ
れていて、とても危険だと感じます。
●競争時代の新たな「秩序」はどうあればいいか
●競争時代の新たな「秩序」はどうあればいいか
[グロス・ナショナル・クール]
Gross National Cool 米国のジャー
ナリスト、ダグラス・マッグレイが外交誌
『フォーリンポリシー』2002年5/6月号に
寄せた
“Japan's gross national cool”
という論文で提唱した概念。邦訳は
『中央公論』2003年5月号に掲載。
明日はどこが一番か
明日はどこが一番か
それぞれの物差しで自分なりの競争を
それぞれの物差し
で自分なりの競争を
内田 さっき村田さんが競争と協調と言われたが、競争によるネガティブ・ファクターの出現を
自覚しないと、協調という概念は出てこない。そして競争原理の中での勝ち負けと、協調
成果が上がったかどうかは、尺度が違うわけで、マルチスタンダードで見ていかなきゃいけ
ない。だから構造改革にしろ電力自由化にしろ、競争社会のマナーやルールを考えるとき
[ハイカルチャー]
上位文化。文学、芸術、伝統文化、
論壇など。
04
2003-2004
Insight
は、競争することによるメリットとデメリット、競争しないことによるメリットとデメリット、両方をバ
ランスよく見る視点が必要ではないでしょうか。
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 8
小川 私はよく学生に言うのですが、例えば競技で考えると、世の中は100メートル競走じ
ゃない。100メートル競走の1番が世界で1番のように言われるが、そうじゃないと。世の中、
面白いのは、山登りで言えば、今は富士山が日本で1番高い山だけど、明日は六甲山が
日本一かもしれない。今まで市場は、アメリカが1番でかかったが、一夜明けたら中国が1
番でっかいマーケットになっていたりする。明日はどこが1番か――経営学とは、そういう勘
を磨く学問なんだと。要は100メートル競走というのはものすごく限られた世界であって、きょ
うは100メートル走、次は借り物競走、次は○○と変動があること自体が、我々にある意味、
安心して競争させてくれる要因じゃないか。
目標やゴールが既に決まっていると、悲壮な競争になるが、競争というのは、それぞれ自
[高坂正堯]1934∼1996
こうさかまさたか。国際政治学者。京
都大学教授などを歴任。特にヨーロッ
パ政治史を専門とする。主な著書『国
際政治』
『文明が衰亡するとき』
『世界
の中から考える』など。
[トクヴィル]1805∼1859
Alexis de Tocqueville フランスの政
治家・思想家・歴史家。
1831年∼32年、
司法官時代にアメリカ刑務所制度の視
察で渡米。アメリカ民主主義分析の古
典『アメリカのデモクラシー』を著す。
分なりの競争をつくっていけるものだと思っているんです。
「素人の統治」で流動性を担保する米国
「素人の統治」
で流動性を担保する米国
「賢者の統治」で硬直化する日本
「賢者の統治」
で硬直化する日本
村田 経営学に勘を磨く面があるなら、同様に政治学は、根底に諦めと希望のバランスの
問題があります。
高坂正堯先生の古典的名著『国際政治』の副題は「恐怖と希望」です。それは国際政
治の本質を突いている。その本の最後にチェーホフの『往診中の一事件』
という作品が引
用されていて、不治の不眠症に悩む女性を夜中に診察した医者が言う。
「あなたの不眠症
は尊敬すべき不眠症です。なにはともあれ、よい徴候です。まったくのところ、私たちの両親
はいま私たちがしているような会話をすることなどは思いもよらなかったのですからね」。その
後で、
「われわれは懐疑的にならざるをえないが、絶望してはならない。それは医師と外交
官と、そしてすべての人間のつとめなのである」と結んでいる。
そういう諦めと希望のバランスはとても大事で、国際政治における競争も、日本人に最も
欠けているのは、日本の国力の限界に対する諦めです。よく日本外交にはリーダーシップが
ないとか、戦略がないと言われるが、では日本にそれがあれば国際政治でアメリカのような
プレイヤーになれるかと言えば、無理な話です。38万平方キロメートルの狭隘な国土に1億
2000万人の人間が住み、食糧自給率40%、一次エネルギー自給率20%、核兵器は持た
ない国が、アメリカや中国やロシアと同様の大国としてプレイできるわけがない。そういう限
界を前提に競争するという認識が、日本人にははなはだ欠ける。
日本の国力には限界があるという諦めと、それでも立派な指導者や戦略を持てばこの程
度はできるという希望とのバランス。それが欠けるから、一方で日本は何もできないという悲
観論、無気力に陥り、他方で、あたかも日本がアメリカに途方もない影響力を持っていて、
小泉さんはブッシュさんに毅然として言うべきことは言うべきだ、言えば向こうが聞くかのよう
な、大きな誤解に陥る。
内田 確かに諦めは大事です。アメリカのシステムがよくできてると思うのは、諦めを統治シ
ステムに組み込んでいる点。トクヴィルが『アメリカのデモクラシー』で、その特徴として挙げ
たのは、アメリカでは統治者を選ぶとき、クレバーであるより、すぐ交代できることを優先する。
つまり、賢い統治者が長期間、権力の座にあることより、凡庸な指導者が4年に1回交代し、
高級官僚も含めて頻繁に変えることで、システムの健全性を担保する。最終的に正しい統
治がないなら、被統治者が満足する統治がいいわけで、統治する人間とされる人間の価
値観や徳性がシンクロしているのが良いと書いてあって、あ、だからジョージ・ブッシュなのか
と
(笑)。歴史的に見てもアメリカは、自分たちの世界観から飛び抜けて高い見識を持つ人
間よりも、自分たちの目線と同じような人を選び、その人が失敗してもすぐに代える。それが
アメリカ政治の健全性を担保している。
アメリカと日本の違いは、政権交代で官僚組織が入れ替わるかどうか。アメリカは、何十
年もかけて育てた優秀な官僚による賢者の統治ではなく、誰がやってもうまくいくシステムを
Insight
2003-2004
05
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 9
[ジャクソン大統領]在職1829∼1837
Andrew Jackson 第7代アメリカ大
統領。民主党の基礎を築く。従来の
政治指導者が上層階級出身であった
のに対し、民衆の代表であることを強
調、
「ジャクソニアン・デモクラシー」と
呼ばれる民主・平等政治を展開。この
時期トクヴィルはアメリカに渡り「ジャク
ソニアン・デモクラシー」を目にした。
[レイマンコントロール]
Layman Control プロフェッショナル
リーダーシップに対し、素人、一般市民
による統制。
つくった。
「賢者の支配」を期待することよりも、凡人が統治してもクラッシュしない、
「マイナ
スを最小化する」方に頭を使ったのが、アメリカが成功した理由のような気がします。
村田 大統領が代わるごとに高級官僚が代わるスポイルズシステム
(猟官制)
を始めたのは、
トクヴィルがアメリカに行った頃のジャクソン大統領です。彼が選挙で応援してくれた人たち
を公務員として雇う制度を始めた理由は、公務員はごく普通の市民の仕事だ、ということ
でしたからね。
内田 陪審員制度も同じ。死刑に関わる重大な判決は、専門家がすべきでない、一般の
人がやるべきだと。その根本にあるのは、賢い人間が賢く統治することに対する断念です。
村田 アングロサクソンには、レイマンコントロール――素人による統治が根底にある。軍事
でも、シビリアンコントロールという発想はそこから来ている。Civilians have the right to
be wrong――間違うことができる、それが大事だという発想です。
視野狭窄の叩き上げエリートより
放蕩息子の帰還に大転換のチャンスが
放蕩息子の帰還に大転換のチャンスが
視野狭窄の叩き上げエリートより
内田 アメリカの成果主義や競争社会の原理を日本に持ってきたとき、勘違いしてるのは、
その点です。アメリカって、実はそんなにシビアな競争社会ではない。勝っているのも今日
だけとかね。フランスの文化資本のように、一旦後れをとったら絶対に追いつけないものを
基準にするのではなく、基本的には年収が基準。毎年変わるものを基準に階層化するの
は、社会の流動性を担保する上で、ものすごくクレバーな方法です。一見、シビアな社会
に見えますが、実は長くトップにいる人はいない。結果を固定せず、社会自体を絶えず流動
化させるための競争が、日本では急に意味が変わり、競争して一着になった人は生涯一
着の地位と名誉を享受できると考える傾向がある。
日本には、競争社会という概念はなじまないのではないか。つまり、日本人には、賢い
人が上に立つべきという社会認識がありますよね。
小川 ある種のエリート主義みたいな……。
内田 上に立つ人間は徳の高い人間だという、中国伝来の徳治に競争を絡ませると、トッ
プの地位は不可侵になり、社会の流動性を損なってしまう。
例えば世襲経営はよくないと言われるが、逆に2代目、3代目社長は結構いいという意見
もある。要するに大化けする人がいる。ビジネスモデルの大転換は、放蕩息子社長の帰還
みたいなケースが比較的多い。下からの叩き上げでエリートコースまっしぐらという人は大体
面白くなくて、ぽろっと親の遺産が転がり込んだような経営者に面白い人が多い。
村田 経済のリーダーも、昔は経営よりも経営哲学を語る面があったが、今の経営者は、
経営については語るが、経営哲学はあまり語らない。その意味で、経済の指導者も利潤な
ど狭い範囲でプロフェッショナルになっている。それは政治家も同じ。政治家が政局を超え
て哲学を語らなくなった。
各界リーダーがプロフェッショナルになる一方、視野狭窄になっている印象を持ちますね。
内田 叩き上げのエリートは、システムを硬直化させるんですね。つまり、数十年かけて自
分自身をトップに据えたシステムを批判できない。世襲のように競争せず地位に就く人の方
が、システム全体を柔らかくするんじゃないか。
戦後半世紀以上続いた社会の平等主義や民主主義と、賢人支配の思想が、非常にま
ずい形で結合したのが、今の日本システムの破綻のような気がします。
小川 ある競争ルールの中にいる人はそのルールが見えないんですね。つまり、ルールの外
にいる人の方がルールの欠点も見えるので、その人が経営者になれば、ルールを変えやす
い。会社の中でも、既存ルートに乗った人より、外部の人の方が、そのマーケットの成長性
がなくなることに気づいたり、全然違う用途を見つけたりできる。
さりとて中にいると、人間はそんなに信念なりプライオリティを変えられるものではない。例
06
2003-2004
Insight
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 10
えば村田さんがとられたサントリー学芸賞は、経営学者がとっても不思議でない。ところが
我々の分野には日経経済図書文化賞というのがあり、私なんか、自分のお師匠さんが受
賞しているので、経営学者の一番の栄誉は日経経済図書文化賞をとることだと、知らない
うちに思い込んでる。でも、内田さんや村田さんは日経経済図書文化賞と聞いても、それ
が何ぼのもんやと
(笑)。
私は、いつもルールの中に入っている自分を、外からも見なきゃいけないと思っていますが、
それができる人は少ない。自分にとって尊敬する人がいるとき、師が通った道を通りたい気
持ちがある。企業人なら経団連会長になりたいとか勲章が欲しいと思うだろうし、政治家
なら幹事長や首相になりたいとか。そこに行くパスが長ければ長いほど、捨てられない。そ
こが競争が持つ残酷さというか、あるいはそういう特性を見抜いた人が次の競争で頭角を
現すことができるような気がします。
多様なファクターの混在が
多様なフ
ァクターの混在が
社会の活力につながる
社会の活力につながる
村田 国際政治の3分野、軍事力と経済力と文化、言い換えれば「力」と「富」と「価値」
の問題は、国内社会にもあてはまるんですね。かつて日本社会は、3つの保有者が分かれ
ていた。権力は侍が持っているが、富は町人、権威は公家や朝廷が持っていて、それは
長い間続いていた。それが池田内閣の頃の高度成長期に、財界人にも名誉を与えようと
叙勲が始まった。それまで経済人は、どんな大企業の社長でも、政治家や学者ほど高い
等級の勲章はもらわなかったのに、そこで富と名誉がかなり一致してくる。力と富と価値が
1カ所に集まり、金持ちは文化資本も持ってるし、社会的地位も高く、権力もあるという現象
が起きている。国際政治でも、アメリカに軍事力はじめ経済や文化・情報の力が集中して
いる。今まで3つの体系で、ある程度ばらつきがあったものが、1つに集中する現象が、国
際政治でも国内社会でも起きている。
内田 力と富と価値、メジャーが3つあればランキングが違うが、確かに日本では今、文化
資本を持つ人間が富も政治権力も持っている。これは社会の活性や流動性、安定性、政
治の満足度から考えると非常にリスキィ。どうにかしてこれを分散させなきゃいけない。
実は僕は大学卒業後、自分で翻訳会社を始めたんです。時代もあったのか急成長して、
ある程度の規模になったとき、会社の中の構成がきれいに3つに分かれた。創業期のベン
チャー精神のある人々、初期に入った学歴もスキルもないけど何か変わった奴ら、会社が
大きくなってから入った一流大学を出た連中。この3層があるときは、非常に良かった。そ
れが僕ら創業者世代が出ていって、高い賃金と安定した地位を求めて入った人がマジョリ
ティになった瞬間、会社の活力は一気に低下してしまった。組織というのは、こうやって滅
びるのかと。上から下まで全員が、高い賃金、安定した地位に価値があると思う人ばかり
になると、つまり全部が同じ価値観を共有するようになると、集団としては死んでしまう。
政治の場合も、企業の場合も、1つの集団の中にどうやって多様なファクターを混在させ
るかは、すごく難しい。
村田 多様性がないのは国とか地域もそう。東京集中の問題が日本の活力を弱めている。
権力の中心は東京にあるにしても、経済も文化も地方の力は非常に弱くなっている。日本
社会の活性化には、この多元化も考えないといけない。
小川 私はよく東京に出張することがあり、東京に行くと「遠いところをわざわざ……」と言
われる。アメリカで東海岸から西海岸に行くことを考えれば、東京と大阪なんて隣なのに、東
京の人は関西をフィリピンとかシンガポールぐらい遠い感覚でいる。東京にいる人は東京しか
見えないんですね。関西に住んでいて、東京やアメリカを行ったり来たりしていると、いろんな
ものが見えるし、また見ざるを得ないので、少なくとも関西人は複数の視点でものが見える。
村田 京都の人は、京都しか見てないかもしれない。
(笑)
Insight
2003-2004
07
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 11
小川
やっぱり
「都」ですからね。
(笑)
●新たな秩序づくりへの課題と方策は何か
●新たな秩序づくりへの課題と方策は何か
質の良い競争へ
質の良い競争へ
選択肢を増やし不安定さ
を持ち込む
選択肢を増やし不安定さ
を持ち込む
内田
そろそろ落ちをつけたいんですが、秩序に関して社会システムの流動性や多様性の
確保が大事という点では皆さん同じだと思いますが、そういう新たな秩序づくりに向けて、
日本社会、国際社会はこれからどうすればいいでしょうか。
小川 例えば最近、神戸大学も法学部はロースクール、我々はビジネススクールという形で
社会人教育を行っていて、応募者が非常に多い。これまでは、大学を出て会社に入ると、
よほど思い切らない限り自分の進む方向は変えられなかった。しかし、こうした流動性を高
める選択肢が増えることで、個々人の生き方に幅が出始めているのは、良い兆しです。
ただ、大学院に入った方で何人かは学者になりたいと言われる。当事者としては、こん
な社会に入ってどうするんだと
(笑)。企業より給料が落ちるし、学生にはインターネットでめ
ちゃくちゃ書き込まれ、自己嫌悪と誹謗中傷の世界に放り込まれるのに、どうしてかなと思
っていたんです。そのとき、たまたま新聞で、
『ベルサイユのばら』の漫画を描いた池田理代
子さんが声楽家になったという記事を見て、そうだ、自分が経営学者だと思うからその生
き方に固執してしまうが、きょうから文芸評論家になると思えば別の観点からものが見える。
そう思った瞬間、今までの固執していた気持ちがスッとなくなり、また新しい自分をもう一回
つくれる気になった。社会人学生が学者になりたいというのも、会社の中でこのままいくと
役員になれるかな、退職金は幾ら……と考えてしまう悪循環を断ち切りたいということなら、
理解できると思ったんです。
話を戻すと、多様性を担保するために、我々が社会人教育などで、そのうちの1つの扉
を開けることができるなら、新しい競争社会への貢献になる。
村田 別の自分ということでは、今インターネットなどを通じてバーチャルな世界ができつつ
ある。インターネットを通じた趣味の交流などが広がれば、フィジカル社会での競争に勝てな
くても、バーチャル世界では大変尊敬される趣味人だったりする。そういう多元性が担保で
[池田理代子]1947∼
いけだりよこ。劇画家、声楽家。東京
教育大学(現筑波大学)文学部哲学科
中 退 。在 学 中から劇 画を描き始め、
1972年週刊マーガレットで、フランス革
命を舞台にした歴史ロマン『ベルサイユ
のばら』連載開始。王妃マリー・アント
ワネットと男装の麗人・オスカルを中心
とした物語が人気を集め、宝塚で舞台
化。
「ベルばら」ブームを巻き起こす。他
の作品『オルフェウスの窓』など。1995
年東京音楽大学声楽科入学、99年卒
業。声楽家に転身し、舞台で活躍。
[ルサンチマン]
恨みや憎しみが心の中にこもって鬱屈
した状態。怨恨。ニーチェの用語。
きれば、負けることが必ずしも全人生の否定につながらなくなるんじゃないですか。
内田 ちょっとね、それには懐疑的なんです。表の仕事でぱっとしない人が趣味の世界に
行ったとき、どれほど権力化して、仕事のルサンチマンを解消するか。それはもっと醜悪な
競争社会だったりする。バーチャル世界で人格がペロッと変わるのは良くない。大事なこと
は、複数の場所に多元的に関わり、それをトータルに総合する人格があることです。
村田 なるほどねえ。
内田 先日、養老孟司先生が、都市と田園の参勤交代が大事だと言ってましてね。それ
は「田舎に帰れ」ではない。都市と田舎を往還し両方で生活する。つまり軸足を2つに置く。
多様性の担保とはそういうこと。一定の節度なり枠を設けた上での多様化が大事です。
小川
やっぱり競争にも質のいい競争と質の悪い競争があるわけで、質のいい競争をしな
いとね。1つは、自分にとってハッピーになれる、やりがいのある競争という選択肢をたくさ
んつくること。2つ目は、不安定さが絶えず持ち込まれるような秩序を、競争についても実
[養老孟司]1937∼
ようろうたけし。解剖学者。北里大教
授、東京大学名誉教授。
「脳」研究の
第一人者。主な著書『バカの壁』
『ガク
モンの壁』
『逆さメガネ』
『からだの見方』
『唯脳論』など。2003年、都市と農山
漁村を人々が活発に「往来」し、双方
の生活文化を楽しむことで、日本がall
right(健全)になることをめざして発足
した「オーライ!ニッポン会議」代表も務
める。
08
2003-2004
Insight
現していきたいと思いますね。
新秩序へのリセットは
既得権益の放棄から始ま
る
既得権益の放棄から始ま
る
新秩序へのリセットは
村田 私は最後に大きなことを言わせていただくと、戦争と平和が国際政治の究極の問
題で、戦争というのは、人が死んで、ものが潰れて、大変悲惨なことだけれども、今までの
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 12
秩序をリセットできる点ではポジティブな効果も持っている。一方、平和を定義することは難
しいが、平和の中の重要な要素として秩序がある。どんな秩序も、それが秩序である限り、
不満を感じる人間が必ず存在し、その不満を物理的な力で表現しようとする人が出てくる。
その意味で、平和は常に紛争や対立の温床であって、これが循環している。
秩序ということでは、20世紀には2度の世界大戦と冷戦、3つの大きな戦争があり、それ
ぞれ終戦後にリセットをやっている。第1次大戦後は国際連盟をつくり、第2次大戦後は国
際連合をつくって、リセットした。問題は、冷戦後、国際政治がリセットしていないことです。
それがこの十数年間の混乱の1つの理由であり、国連改革もそこから来ている。
その意味で、この激動と不安定の中にリセットのチャンスがあるということと、日本にとっ
て言えば、2度の世界大戦後の秩序形成に日本はパッシブな役割しか果たしてないが、今
度の冷戦後の国際政治の秩序づくりに日本がどれだけポジティブに参加できるか。それが
21世紀の日本外交には非常に大きい。
その秩序がどうあるべきかはわかりませんが、2つだけ確かなことがあって、1つはアメリカ
が強引に秩序を押しつけようとしたら、必ずそれに対する強い反発が生まれる。2番目に、
しかしながらアメリカが強い不満を抱く秩序は絶対につくられない。だから、この2つのバ
ランスをどうとるかで、日本がどれだけポジティブな役割を果たせるか、大きな課題に直面し
ている。
内田 リセットというのはすごく大事で、ビジネスの話に絡めると、優秀な経営者の条件は、
自分がつくって成功したビジネスモデルの失敗に他の誰よりも早く気がつくこと。みんなが
「大成功でしたね」と言うときに、このモデルにはこういう欠陥があるから「撤収!」と、自ら撤
収を宣言する。
リセットについても、村田さんがいま示された2つの条件をクリアする方法は1つしかない。
リセットすることで、自分は損をしても、システム全体としては得をするという選択をする。今
の国際社会のトップにいるのがアメリカだとすると、アメリカが自分のつくったモデルの欠点に
先に気づき、それを放棄する形で進めばリセットは成功するが、自分の利益を維持したま
ま、あるいは不利益を他人に押しつける形での国際新秩序の構築はしてはいけない。こん
なことをここで言っても、アメリカの政策決定に関与できるとは思いませんが。
(笑)
小川
でも、企業トップには読んでいただけるんじゃないですか。
内田
そうですね、みんなが素晴らしいと追随し始めたとき、自ら撤収し、リセットできる人
こそ、真のリーダーたり得る、ということでうまく落ちがついたように思います。ありがとうござ
いました。■
編集/田窪由美子
Insight
2003-2004
09
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 13
Insight 025-048
ダイジェスト
文
化
・
文
明
『都市文明』への視点──
その起源と本質の先に
『現代文明』への視点──
イラク戦争が示唆するもの
竹山 聖・建築家;
京都大学大学院工学研究科助教授
2003.02.15・第28号
山内昌之・
東京大学大学院総合文化研究科教授
2003.05.01・第33号
社会事象は時代の文脈で見るべき。イラク市民の新しい実験
都市は日本語で「都の市(いち)
」
、中国語では「城市」
、すなわち
について、ロシア革命と照らし合わせて見るような、歴史的に広
マーケットとして誕生した。都市というと工業都市のイメージが強い
がりを持った複眼的思考こそ、国際世論の形成には必要であ
が、それはたかだか200年のこと。もともと都市は何も生産せず、
る。その際、
「文明の衝突」から脱し「文明の対話」を成功さ
モノ
・人・情報を交換するだけの場。都市の本質はマーケットであり、
せるために、どの異文明にも偏見を持たず接してきた日本の役
それをグローバルに開いていくことが、戦略としては最も正しい。
割と責任は大きい。
*資料室:
「都市文明」の軌跡
*資料室:
「現代文明」の周辺
*読書室:
「都市文明」を読み解く14冊
*読書室:
「現代文明」を読み解く13冊
『日本文化』への視点──
今だから考えたい
日本的なるもの
『アート』への視点──
時代・風土・創造性
山本容子・銅版画家
2003.07.01・第37号
白幡洋三郎・
国際日本文化研究センター教授
2003.04.01・第31号
日本文化というと、歌舞伎や能・狂言、浄瑠璃などがあげられる
絵には時代時代のメッセージが込められてる。すべて芸術は才
が、文化の基本は、もっと大衆的なもの、より多くの人が楽しめる
能の発露であると同時に、時代の証言者としての役割を持って
ものではないか。今までの日本文化交流は、いわば見合いの
いる。だからとにかく本物を観てほしい。間近で観れば発見が
「釣書」
。最初はそれでもいいが、自分を正直に出した方が理解
あるし、どんな途方もないことでも、実際に人間がやったことだ
も深まる。
「釣書交流」
「釣書外交」を辞めることから、新しい日
と実感できる。それがすごい。絵を通して時代を観ると、絵は
本文化、日本の姿が見えてくる。
すごく身近なものになる。
*資料室:
「日本文化」の周辺
*資料室:
「Yo.Yamamoto」の基礎知識
*読書室:
「日本文化」を読み解く12冊
*読書室:
「芸術」を読み解く12冊
『観光』への視点
──ケとハレ、
ケハレの旅物語をつくる
神崎宣武・民俗学者;旅の文化研究所所長
2003.04.15・第32号
政
治
・
外
交
『国家』への視点──
日本的価値の再構築に向けて
佐伯啓思・
京都大学大学院人間・環境学研究科教授
2003.01.01・第25号
今後日本は、グローバリズムの中でどういう国を創るのか。日本
10
日常が続くと、気が枯れてしまうので、非日常的な行為をして、
のように、成熟経済のなかで高齢化と人口減少へと向かう国は
元の気を取り戻す。この「ケ→ケガレ→ハレ→ケ」という循環は、
他にない。だから日本は新しいタイプの社会を創る。それは一つ
農村的な行動様式。都市はハレとケが混在する
「ケハレ」
の空間。
のシステムを設計することであり、壮大な実験だ。国家のビジョン
関西自身が、ケガレからハレ、ケと戻るためには、近代化の過程
に日本的アイデンティティや文化が絡み、我々の思考の中に「日
で薄らいでしまった「ケハレの旅」の物語を組み立て直せばいい。
本的なもの」が還ってくる。
*資料室:
「観光」の周辺
*資料室:
「日本人の国民性」の周辺
*読書室:
「観光」を読み解く12冊
*読書室:
「国家」を読み解く11冊
2003-2004
Insight
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 14
21世紀の新しい秩序・構造づくりに向け、独自の視点・論点を発信するメインコラム。
多様な分野から、
気鋭の論客が登場し、時代を読み解く。
*全文>> http://www.kepco.co.jp/insight/content/column/column_top.html
『地域主権』への視点──
人づくりと地域づくり
橋本大二郎・高知県知事
2003.01.15・第26号
地域主権のあるべき姿には、未だなっていないが、構造改革の
経
済
・
経
営
『価値創造経営』への視点─
─
Going Back to the Basics
榊原清則・
慶應義塾大学総合政策学部教授
2003.03.01・第29号
今、企業には独自の「企業価値」を創る努力が求められている。
基本コンセプト──地方にできることは地方に、は間違いではな
しかしそうした価値創造は「プラスα」の要素。多くの日本企業
い。国の改革を待つのではなく、地方からの改革は既に始めて
はその前にGoing Back to the Basics、もう一度、経営の基本
いる。地域資源を生かせるかどうかは、人次第。リーダーシップ
に立ち返ることが必要だと思う。まずボトムラインの達成、日常的
をとって町を支えていける人材、地域主権を具体化していける人
な情報発信、そして「健全な成長への野心」を持ってチャレンジ
材をつくれるかどうかだ。
を続けることだ。
*資料室:
「地域主権」の基礎知識
*資料室:
「価値創造経営」の周辺
*読書室:
「地域主権」を読み解く11冊
*読書室:
「価値創造経営」を読み解く12冊
『国益』への視点──
国際社会の
競争と協調のなかで
村田晃嗣・同志社大学法学部助教授
2003.11.15・第46号
元気出せ、関西!──
『再生』への処方箋
森永卓郎・UFJ総合研究所主席研究員
2003.03.15・第30号
主権国家にとって、自国の生存や安全、繁栄の維持は基本的
不況が長引くほど、東京型、アメリカ型の市場経済が魅力的に
な「国益」だが、問題はそれをどのような形で実現するか。島
見えるが、決して魂を売ってはいけない。これからは「楽しく生き
国であり、資源小国である日本は、世界益・公益と国益が重な
られる術」を持つ人が勝ち。関西一人勝ちの時代は、すぐそこ
る度合いが高い。そこをはき違え、日本固有の国益の追求に
まで来ている。そんな時代を謳歌するためにも、関西人は「まあ
走ると、世界との協調を攪乱しかねない。偏狭な国益論に陥
ええか」のラテン気質で、明るく、しぶとく、したたかに今を乗り
ることは実は日本の国益に一番反する。
切ってほしい。
*資料室:
「国益」の周辺
*資料室:
「関西再生」の周辺
*読書室:
「国益」を読み解く14冊
*読書室:
「関西再生」を読み解く12冊
グローバル化のなかでの
地域間競争――
『関西州』自立への課題
『CSR』への視点──
企業の社会的責任を考える
八幡和郎・評論家
2003.12.15・第48号
足達英一郎・
(株)日本総合研究所創発戦略センター
上席主任研究員
2003.08.15・第40号
地域自立の必要性は、国内の歴史展開でなく世界的な視野
日本ではCSRというと、メセナやフィランソロピーを想起する企業
から見るべきだ。欧州統合を見てもわかるとおり、世界は国家
が多いが、本来もっと戦略的なもの。企業と社会の持続的な相
でなく道州くらいを単位とする地域間競争の時代に入っている。
乗発展、自主的な投資だ。欧州では下手な規制を負わされな
国際競争力を得るためには、何かについて格別に努力すると
いよう、お荷物を背負ってでもやる姿勢を打ち出している。企業
か我慢するとかすることが不可欠だが、関西にはその覚悟が
にとってはしんどい世の中だが、そこで鍛えられ、力をつけた企
なく甘い夢ばかりを語っているのでないか。
業こそが21世紀に生き残る。
*資料室:
「都市・地域間競争」の周辺
*資料室:
「CSR」の周辺
*読書室:
「都市・地域間競争」を読み解く10冊
*読書室:
「CSR」を読み解く9冊
Insight
2003-2004
11
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 15
*全文>> http://www.kepco.co.jp/insight/content/column/column_top.html
経
済
・
経
営
『リーダーシップ』への視点
──変革へ夢を語ろう
高橋 潔・南山大学総合政策学部助教授
2003.09.15・第42号
社
会
・
生
活
『関西復権』
『関西再生』の
固定観を捨てよう!──
成熟時代への決断を
上山信一・米国ジョージタウン大学教授;
大阪市立大学大学院創造都市研究科教授
2003.06.01・第35号
産業構造転換のうねりの中で、今求められるのは「変革型」リ
日本の大都市も成熟都市へのパラダイム転換を図る時期を迎
ーダー。現状を打破するため、節目節目でビジョンを示し、変革
えている。産業都市の繁栄期に蓄えたアセットを使って、したた
を促す方向に全員の力を集結させることこそ、リーダーの役割。
かに成熟していく。いわば「豊かなる衰退」のあり方が問われ
ビジョンを示すとは「夢」を語ること。目標ではなく夢。到達すべ
ている。成長・復権でなく、成熟・バージョンアップ。それができ
き美しい形として、どのようなビジョンを示せるかが問われている。
れば、関西は21世紀のルネサンスの担い手になれるはずだ。
*資料室:
「リーダーシップ」の周辺
*資料室:
「地域力」の周辺
*読書室:
「リーダーシップ」を読み解く10冊
*読書室:
「地域力」を読み解く13冊
『競争政策』への視点──
切磋琢磨で最善を尽くす
本間正明・大阪大学大学院教授
2003.10.01・第43号
『責任』への視点──
自由な時代のなかで
大澤真幸・
京都大学大学院人間・環境学研究科助教授
2003.07.15・第38号
日本には、競争政策に対する罪悪感──競争は
「弱者切り捨て」
につながるという考え方があるが、今は分配でなく競争が必要だ。
「責任の蒸発」が起きている。みんなが「帰責ゲーム」──責任
競争とは、みんなが切磋琢磨して最善を尽くすこと。自由市場の
という弾が自分の手元で爆発しないようパスし合ううち、不発弾
中で、企業も個人も自分のパフォーマンスを最大限発揮する形で
になってしまう。でも責任を取るとは、
「火のないところに煙を立て
行動するのが、競争市場の哲学であり、切磋琢磨を促す政策こ
る」こと。自分に原因はないが、あると考えてもらっても構わない、
そ競争政策だ。
と、英雄的に原因を引き受けるのが、本来の責任の取り方だ。
*資料室:
「競争政策」の周辺
*資料室:
「責任」の周辺
*読書室:
「競争政策」を読み解く13冊
*読書室:
「自由と責任」を読み解く14冊
競争時代の制度改革──
『では』より
『には』の発想を
高橋伸彰・立命館大学国際関係学部教授
2003.12.01・第47号
『伝統』への視点──
京町家から考える
小島冨佐江・京町家再生研究会理事、
事務局長;京町家友の会事務局長
2003.08.01・第39号
町家は都市型の住宅です。木造の古い家に暮らすのは手間も
12
人間にとって社会の発展にとって、競争は必要なものだ。しか
かかるけど、四季折々いろんなことを感じることが出来ます。例
し何でもかんでも競争すれば良くなるというのは短絡的。どの
えば、夏には葦戸や簾を出して夏のしつらえをして、蒸し暑い京
分野に、どの段階で競争を入れるかは各国、各地域が固有事
都の夏を凌ぐ昔からの知恵が生きています。そういう細やかな
情を考慮して決める問題だ。アメリカ「では」そうでも、日本「に
感性を大事にして暮らしていたい。京都でも町家は減ってるけど、
は」日本の事情がある。
「では」より
「には」の発想こそ大事だ。
住み続けることが、京都の伝統を継承することやと思てます。
*資料室:
「制度改革」の周辺
*資料室:
「京町家(小島家)」拝見
*読書室:
「制度改革」を読み解く13冊
*読書室:
「京町家」を読み解く12冊
2003-2004
Insight
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 16
Insight 025-048
ダイジェスト
『競争社会』のあり方──
共同性の視点から
科
学
・
技
術
電
力
・
エ
ネ
ル
ギ
ー
競争力強化に向けて──
『財務・IR戦略』への視点
石川九楊・書家;
京都精華大学教授;文字文明研究所所長
2003.11.01・第45号
圓尾雅則・
ドイツ証券 株式調査部ディレクター
2003.06.15・第36号
人間は共同の存在でしかあり得ない。とすれば、本来の競争
民間企業である以上、株主が期待するのは投資への見返りだ。
社会とは、みんながそれぞれ喜びをもって生活し、仕事をし、今
電力会社はもっと「儲けること」に敏感であるべきだし、将来的
までの自分より一歩でも前に進もうと思いながら生きている者た
なリスクの排除にも積極的に動くべき。 IR戦略で大切なのは、
ちの共同体。無益な競争、社会に害をもたらす競争を克服し、
PRと混同しないこと。IRはアピールの場でなくリレーションシップの
本当の意味での共同性、社会の質を高めていくような切磋琢磨
場。外部の声、外部の眼を知ったうえで経営判断を下すために
の競争ができるようにしよう。
こそ、IRがある
*資料室:
「競争社会」の周辺
*資料室:
「財務・IR戦略」の周辺
*読書室:
「競争社会」を読み解く11冊
*読書室:
「財務・IR戦略」を読み解く11冊
超微細──
『ナノテクノロジー』が拓く世界
『原子力』への視点──
社会との親和性を考える
川合知二・大阪大学教授;
産業科学ナノテクノロジーセンター長
2003.05.15・第34号
鳥井弘之・東京工業大学原子炉工学研究所
教授;日本経済新聞社論説委員
2003.09.01・第41号
ナノテクノロジーは、突然現れた技術ではない。時代の必然だ。
原子力技術と社会の親和性を考えると、電力会社と市民、両
日本のナノテクは世界トップクラスであり、ナノテクの時代になっ
方が変わらなきゃいけない。電力会社は、原子力についてきち
たことは日本にとっては福音。ナノと材料が最も強いが、次のス
んと社会と議論すべきだし、市民の側には、合理的に冷静に議
テップとしてはナノとIT、ナノと環境、ナノとバイオという融合領域
論ができる知的基盤を持つことを求めたい。原子力は「一病息
をうまく進めることが大事だ。ナノテクは日本にとって
「元気の素」
災」――課題を抱えることで、より社会に受け入れられるための
なのだから。
努力につながる。
*資料室:
「ナノテクノロジー」の周辺
*資料室:
「原子力と社会」の周辺
*読書室:
「ナノテクノロジー」を読み解く9冊
*読書室:
「原子力」を読み解く10冊
『エネルギー文明』への視点
──日本の固有性のなかで
新井光雄・
ジャーナリスト
(元・読売新聞編集委員)
2003.02.01・第27号
『自由化』
と電気事業経営
──変えるもの、守るものの
見極めを
今村英明・ボストン・コンサルティング・グループ
ヴァイスプレジデント
2003.10.15・第44号
近年のエネルギー政策を左右している「自由化」
「環境」
「社会
性」は、いずれも重要ではあるが、あくまで付加的な意味の重
今は改革の時だから、ある程度乱暴なことをしないと変わらな
要さ。やはり政策の基盤は「安定供給」。日本のような資源小
い。但し8割は乱暴にせず、決められたことをきちっとやる。そ
国は、エネルギーや食糧問題に関する限り、無軌道に政策を
こを誤解すると将来に禍根を残す。電力会社は顧客の声を聴
揺るがすべきでない。
「守旧派」と言われても、守るべきものを
き、社内でのコミュニケーションを深め、変えるべきは変え、守る
守るのは大切なことだ。
べきは守るということを、しっかり見極めながら進めてほしい。
*資料室:
「エネルギー文明」の基礎データ
*資料室:
「電力自由化」の周辺
*読書室:
「エネルギー文明」を読み解く12冊
*読書室:
「電力自由化」を読み解く12冊
Insight
2003-2004
13
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 17
Break
ダイジェスト
おじさん的常識
外見と美の研究
内田 樹・神戸女学院大学教授
村澤博人@顔・化粧文化研究所
①いまどきの若い者について
①東アジアのなかでも……
2002.11.01・第21号
2002.11.15・第22号
フリーターやじべたに座り込む連中、当今の若者たちは、来る
もともと日本には「顔じゃない、心だよ」
と、内面と外面を分けた
べき
「あまりぱっとしない日本の未来」に順応すべく、貧しく、つ
上に外見を軽視してきた歴史的推移がある。かつ、内面を表
つましい生き方のモデルを模索しているように見える。そして、
に出すことをはしたないと嫌ってきた武士階級の価値観が伝統
日本が向かっているその「方向」についての若者たちの未来予
的に存在したために、未だに「顔が見えない日本人」から脱出
測は、大きく外れていないように思える。
できないでいる。
②対話について
②横顔の美が日本人にはない
2002.12.01・第23号
2002.12.15・第24号
対話が始まるためには条件がある。私とは知的形成過程も違うし、
日本人は正面中心に、平面的に見がちなのに対して、韓国・
その考え方が深いようにも広いようにも思えない人間と
「対話をし
中国人は斜め横や真横など、顔を立体的にとらえる傾向があ
ろ」
と言われても無理。但し、
「怒らせるとやばそう」
と思う人間に
る。日本人は『紫式部日記』時代に中高(正面から見て真ん
対しては、とりあえず「祝福」の言葉を送り返すことにしている。
中=鼻が高い→美人)
という言葉を登場させて以来、正面中心
③教養について
の見方から変わっていないように見える。
2003.01.15・第26号
「何だか分からないこと」は無視するのが、いまどきの若者のか
2003.02.01・第27号
たくなな習性である。熟考したり、人に訊いたり、調べたりとい
小泉首相を見かけた友人から「ファンデーションを塗ってメークし
う習慣は、存在しないらしい。情報洪水の中で、子どもたちは
てたよ」と聞いた。選挙のポスターだけでいい顔を見せる時代
もう限定的な情報をゆっくり玩味するという習慣を失ってしまっ
から、日常的にどう見せるかが、政治家にも要求される時代と
なったようだ。
「顔じゃない、心だよ」の20年ほど前とは隔世の
たのではないか。
④葬儀について
14
③男も顔の時代
感がある。
2003.02.15・第28号
④小顔ブーム――顔は小さくなったのか
私は近親者だけで営む「密葬」が好きではない。家族のひとり
2003.03.01・第29号
ひとりは、家庭以外では、他の家族が見たことのない「顔」を
「小顔」は「痩身」
と同様、女性にとって最大の関心事の一つとな
持っている。近親者も知らなかった「聞いてビックリ」の話が披
った。かつては顔が大きいことは「役者顔」
と表され、舞台に立
露されるのが、ほんらいの葬儀の意義。弔いの儀礼には、故
っても客席から顔の表情が読み取りやすいという意味で、ほめ言
人が生前袖擦り合ったすべての人が参集するべきである。
葉だったが、いまは似合うファッションが少ないと否定されてしまう。
⑤正論について
⑤外見に対する研究――化粧学は夢?
2003.03.15・第30号
2003.04.01・第31号
慨世のご高説をたれる人間を信用することができない。正論家
もはや、外見は関係ないという時代に終止符が打たれ、外見
の正しさは「世の中がより悪くなる」ことによってしか証明できな
もその人のアイデンティティとして尊重され、外見の回復により
い。したがって、正論家は「世の中がより悪くなる」ことを無意
QOL(Quality of Life)
を高める活動が表に見える時代となっ
識に望む。
「世の中をより住みやすくすること」よりも「自説の正
た。人はなぜ化粧するのか、さまざまな自由度を得た21世紀の
しさを証明すること」を優先する人間を私は信用しない。
現代人にこそ、欠かせないテーマのはずだ。
2003-2004
Insight
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 18
現代日本を、根強く残る定説(不易)
と、
いまどきの風俗(流行)の両面から読み解く連載コラム。
*全文>> http://www.kepco.co.jp/insight/content/break/break_top.html
流行前線:ちょっとミステリーな話
日常の哲学的考察から見えるもの
黒崎 緑・ミステリ作家
森岡正博・大阪府立大学総合科学部教授
①防御服の謎?
①片思いが重層する虚構空間
2003.04.15・第32号
2003.05.01・第33号
この春は、防御マスクを付け、防御服を着て外を歩いている人
堀江に立ち並ぶのは、ヨーロッパの小洒落た店々のようであり
を、たくさん見かける。私が恐れているのは、次の世代のこと。
ながら、実際にはどこにも存在しない虚構空間。若い経営者た
あと5年、10年経ったら、花粉症人口は爆発するのではないか。
ちが、おしゃれな雑誌を熟読して想像した、脳内ヨーロッパがこ
それまでに何とかしないと、日本の春を楽しむことは、できなく
こにはある。この「片思い」が重層する虚構空間こそ、現代日
なってしまうだろう。
本の都市が見せるもっとも甘美で、残酷な一側面ではないか。
②動物病院の謎?
②レコードのほこりが開く新世界
2003.05.15・第34号
2003.06.01・第35号
患畜の数よりもはるかに人のほうが多い。ペット一匹に対し、付
いまの若者は、レコードのほこりの「プチプチ音」がいいと言う。
き添いが最低二人は来ているからだ。セラピー・アニマルとして、
雑音のない方がいいに決まっているという
「高度経済成長」時
動物たちによる癒し効果も注目されている今、動物たちも、飼っ
代の神話は、もはや通用しないのか。技術が未熟だった時代
てる人も、ストレスが溜まることがありませんようにと思ってしまう。
へのノスタルジーの方が、最先端技術の快楽よりも上位に置か
③失礼なメールの謎?
2003.06.15・第36号
れる時代になったのか。
③犬に服を着せる人間の執念はどこまで行くのか
「○○について教えろ」
と、要求を1行書いただけの名前のない
2003.07.01・第37号
メール。腹立たしく感じていたら、私は小学生です、というメール
「できることなら、小さくて、ずっと成長が止まっていてくれるような
があった。なるほど、自己紹介がなけれは、相手の性別、職
犬がほしい」
。子どものまま成長しないペットを、遺伝子操作によ
業はまったくわからない。メールの向こうの顔は、闇の中である。
って作成することは、それほど難しいことではないはずだ。その技
④夏服を着た女たちの謎?
術はまずペットで応用され、そしてその先に待っているのは……。
2003.07.15・第38号
④一度も体験したことのない過去に入り浸る若者たちは
夏服で下着をどうするかは大問題。2003年夏に現れたこの謎
いったい何を求めているのか
の商品、ヌードブラ、ヌーブラなどと名付けられたシリコン・ブラで
2003.08.01・第39号
ある。究極のブラジャーの形に思えるが、美を追究する女性に
若者たちは、自分が一度も体験したことのない過去を、あたかも
終わりはない。アーウィン・ショーの時代から、女性はどんどん進
それが自分たちの記憶であるかのように懐かしがる。親の世代
化しているのだ。
の甘酸っぱい記憶を、いまここで生きようとする若者たち。そこに
⑤強い阪神タイガースの謎?
充満しているのはたしかに「ノスタルジー」の視線なのだが……。
2003.08.15・第40号
⑤世界の中心で文明を暴き続ける断尾犬
ミステリーにおいて大切なのは、逆転の発想、どんでん返しで
2003.09.01・第41号
ある。それを作るためには、作品全体を見渡す大局観が必要
生ける「ぬいぐるみのクマ」にするために、強制的に断尾された
となる。星野監督が大局観を持っているのが、タイガース絶好調
プードル。優雅で、間接的で、構造的な暴力がそこにある。
の一因。その結果、今シーズンのどんでん返し、優勝が生まれ
たのかもしれない。
「断尾」はまさに「無痛文明」が生き生きと発露する現場。トイプ
ードルは、われわれの文明の根底に横たわる闇を、これからも
暴き続けていく。
Insight
2003-2004
15
Insight/p16-表3 04.4.6 6:00 PM ページ 1
Close up エナジー
ニュー・エディション
エネルギー自由化、
「電気vsガス」
「電気vs電気」
の闘いは?
相談室」
(0120-869101=ハローキュウトウイチバン)
を設置。
こうした施策が相俟って、今や関西では新築戸建て住宅の
オール電化割合は20%を超えるなど、オール電化住宅の普及
が急ピッチで進んでいる。
そして「採用いただいたお客さまに喜んでいただくことが、
次の契約につながる」。関西電力で家庭を専門に受け持つ
森本孝・リビング営業部長は、これからの活動課題として、電
化採用顧客に対するアフターフォローの充実を挙げ、攻める姿
勢を崩さない。
オール電化住宅、新築戸建ての2割以上
ソリューション営業で迎え撃つ
電力会社が「オール電化」をテレビCMでアピールすれば、
一方、家庭用以上に競争が激化しているのが、産業・業務
ガス会社はすかさず家庭用ガス発電で対抗する。電力、ガス
用市場だ。2000年に電力小売市場が部分自由化され、大工
などエネルギーの規制緩和と技術革新によって、規制分野の
場や大規模商業施設など大口顧客が電気の購入先を自由
家庭用でもエネルギー間競争が激しさを増してきた。
に選択できるようになったのに続き、2004年4月からは中規模
ひと昔前まで家庭用エネルギーといえば、調理や給湯はガ
の工場なども自由化対象に。2005年4月には一般家庭などを
ス、暖房もガスか灯油。電気のシェアは低迷を続けていた。
除く約6割の市場が自由化され、新規参入事業者(PPS)や
しかし近年、機能面で優れたIHクッキングヒーターやエコキュ
既存の電力会社間での競争が激しくなると予想されている。
ート
(省エネ給湯機)、電気床暖房などが登場。もとより電気
これを迎え撃つ関西電力の小谷弘明・エネルギー営業部長
には、ガスにない「安全性」という切り札もある。あとは「電
は「価格はもちろんだが、これからは営業パーソンのソリューシ
気=コスト高」のイメージをどうするかだ。
ョン力が勝負」
と意気込む。省エネ、コストダウンなどエネルギ
関西電力が新料金メニューとしてオール電化割引「はぴeプ
ー使用を巡る課題を掴み、解決策を提案することで顧客の信
ラン」をスタートさせたのが2000年。契約数は倍々ペースで伸
頼を得、繋ぎ止めを図りたい考えだ。このため、火力、工務、
びてきたが、それでもイニシャルコストが負担という顧客の声が
建築部門出身の技術者200人以上を「エンジニアリング グル
あり、電気温水器などのリース制度「はぴeパッケージ」も開始
ープ」として支店・営業所に配置。
「エネルギー消費の現場を
した。もちろん、オール電化に関心はあるが、どこに聞けばい
知る」スタッフを営業の最前線に移し、いっそうのソリューション
いかわからない、という声に対してはフリーダイヤル「電化ライフ
力の向上を図っている。■
オール電化割引「はぴeプラン」契約数
150,000
自由化の範囲
100,000
88,900
業務用
特別高圧電力
2,000kW
48,000
50,000
自由化対象
産業用
132,000
(口数)
高圧電力B
19,500
500kW
業
務
用
電
力
2001.3
2002.3
2003.3
2004.1
*関西電力調べ
約36%
約26%
約14%
約23%
低圧電力
従量電灯A
一般家庭用 等
Insight
6,000V
電
力
50kW
従量電灯B
2003-2004
2万V∼
高圧電力A
0
16
2,000kW以上
50kW未満
大規模工場、
町工場、
コンビニ、家庭 オフィスビル等
2007.4
2000.3∼自由化
検討開始予定
200V
200V
/
100V
電
灯
500kW以上
50kW以上
小規模工場等 中規模工場、
中小ビル等
2005.4∼
自由化予定
2004.4∼自由化
*数値は全国のもの
Insight/p16-表3 04.4.6 6:00 PM ページ 2
日本の電力市場に規制緩和の風が吹き始めたのは1990年代前半。
以来10年、電力会社は自らの生き残りを賭け、競争力強化や事業開拓に努める一方、
エネルギーの安定供給、地球環境保全といった重要課題にも立ち向かってきたが、その成果は果たして……!?
電力エネルギーを取り巻く動きと関西電力の取り組みをクローズアップ。
*関連サイト>> http://www.kepco.co.jp/insight/content/close/closeup_top.html
もう一つのビジネス、
「光の国」づくりはどこまで
進んだか?
四重苦を超えて「新生」
2000年、関西電力は情報通信事業のコア会社としてケイ
・
オプティコムを設立。アステル関西の営業譲渡も受け、経営資
源を集中投入できる環境を整えると、次々に斬新なサービス
を打ち出した。まず2001年、FTTH(fiber to the home)
に
よるブロードバンドサービスを開始。当時FTTHは、料金が高
い、エリアが狭い、開通までに時間がかかる、コンテンツが少
通信ビジネス20年
ない、の「四重苦」と言われていたが、ケイ
・オプティコムは月額
関西を光の国へ──。関西電力グループの情報通信会社、
料金をNTTの半額程度に設定、サービスエリアも一気に関西
ケイ
・オプティコムが掲げるこのキャッチフレーズには、関西電力
の世帯カバー率70%をめざし、四重苦の解決に道を開いた。
が持つ光ファイバー網を地域の財産とし、関西を世界屈指の
コンテンツの品揃えも、ブロードバンドコンテンツ=エンタテインメン
ブロードバンド先進地に育てたいとの理想が込められている。
トという
「常識」を脱し、教育や健康、医療など「生活に必要な」
関西電力が情報通信分野に参入したのは、1985年の通
コンテンツを開発。英会話スクールのNOVAと提携した「お茶の
信自由化がきっかけだ。電気事業で培った通信技術・ノウハ
間留学」や、画像診断などヘルスケアサポートなど、独自の生活支
ウや人材、光ファイバーをはじめとする通信設備などの経営資
援サービスの提供により、FTTHは「マニアのための特別なサー
源の有効活用が目的だった。また電電公社の独占市場に参
ビス」から「普通の人が普通に使うサービス」へ変貌しつつある。
入し競争環境をつくることでユーザーの利便性を高め、ひい
2003年12月、ケイ
・オプティコムはOMPと合併した。その最
ては関西の発展に貢献したいという想いもあった。
大の目的はサービスメニューのフルラインナップ化──企業向
志高く参入した当初、関西電力は、企業向け固定通信は
けサービスに特化してきたOMPと、住宅地を中心に展開して
大阪メディアポート
(OMP)、携帯電話は関西セルラー電話、
きたケイ
・オプティコムのサービスを統合することで、より多様な
ポケットベルは関西テレメッセージ、PHSはアステル関西と、サー
ユーザーニーズに応えることが狙いだ。
ビスごとに事業会社を設立。その数、一時は十数社。しかし
「光ファイバーは究極の伝送手段だ」――関西電力で情報
情報通信の技術進歩と環境変化は激しく、単一のサービスや
通信事業戦略を統括する稲田浩二は、20年前から抱き続け
ハードウェアに頼る事業はやがて行き詰まる。新電電として、
ているその予感が現実化してきたことに笑顔を見せる。紆余
NTTという巨像に挑んだOMPは苦戦、ポケットベルは事業か
曲折を繰り返してきた関西電力の通信事業は、2003年度初
ら撤退、PHSも音声サービスでは携帯に敗れ、一時期はもう
の黒字を計上する見通しだ。関西を光の国へ。新生ケイ
・オ
ダメか、と思われた。
プティコムの誕生により、理想はまた一歩実現に近づいた。■
関西電力グループの情報通信事業展開
FTTHサービス加入者推移
100,000
(地域とIPサービスに特化した総合情報通信事業)
個人向けサービス
企業向けサービス
FTTH、ADSL
アプリケーションサービス
インターネット
マンション
ワイヤレス
インターネット
VoIP、光CATV、ASP
ブロードバンドコンテンツ等
超高速IPバックボーン
ネットワーク
高速
インターネット
接続
IP-VPN、
広域イーサ
集
(件)
合
住
80,000 宅
向
け
60,000 サ
ー
ビ
ス
40,000 開
始
︵
01
20,000 ・
6
︶
0 ↓
2001
6
戸
建
て
向
け
サ
ー
ビ
ス
開
始
︵
02
・
4
︶
↓
9
12
2002
3
6
9
12
2003
3
6
9
2004年
12 2月
無線LAN
*
PLC
(電力線搬送通信)
*実験中
関西一円65,000km
光ファイバーネットワーク
キャリア向け
足周り
回線提供
Insight
2003-2004
17
Insight/p16-表3 04.4.6 6:00 PM ページ 3
*関連サイト>> http://www.kepco.co.jp/insight/content/close/closeup_top.html
とは実証済み。
プルサーマル再始動、
原子力の安全・安心は
確保できるか?
こうしたことから日本でも1999年には、他電力会社に先駆
けて、関西電力が高浜発電所で実施を予定していた。
データ不正を経て、品質保証を徹底
ところがその矢先、高浜発電所で使うMOX燃料製造を委
託していたBNFL(英国原子燃料会社)で燃料データ不正が
準国産エネルギー創出計画
判明、計画は中断してしまった。BNFLの作業員が品質検査
「なんとか原子燃料サイクルを完結させ、
『日本はできる』
こと
の際、決められたダブルチェックを行わず他の測定済みデータ
を証明したい」。関西電力原子燃料部長の高杉政博は、5年
を流用。つまり品質検査の重要性の認識が欠けていたわけ
ぶりのプルサーマル計画の再開を前に、静かにその想いを語る。
だが、関西電力も、品質保証を国内の元請けメーカー任せに
「プルサーマル」
とは、プルトニウムを原子力発電所(サーマル
したことを強く自戒し、問題の再発を防ぐため品質保証活動
リアクター)の燃料として使うこと。原子力発電の燃料はウラン
を全面的に改善。メーカーの指導・監督を強化するとともに、
だが、使用済燃料にはプルトニウムや燃え残ったウランが含ま
関西電力自身が組織的な品質保証活動が行えるよう、社内
れており、これらを再処理すれば繰り返し使える。しかも再処
のシステムやルールを改めた。そして2003年10月、関西電力
理して取り出したプルトニウムは、資源小国の日本にとって極
はこうした改善状況を国や地元福井県などに報告。2004年2
めて貴重な準国産エネルギー。日本が原子力政策の基本に
月には原子力安全・保安院から、必要な品質保証体制を構
据える「原子燃料サイクル」──エネルギー安定確保のためウ
築していることが認められ、3月には福井県等地元からプルサ
ラン資源を繰り返し有効利用すること──を完結させるうえで
ーマル計画を進めていくことについて了解を得られた。
も、プルサーマルの実現は重要課題だ。
今後、関西電力は、地道な対話や情報公開を通じて地元
しかしプルサーマルには拒絶反応を示す人もいる。ウランと
違い放射能レベルの高いプルトニウムは、それに応じた扱いが
資源小国日本が国際社会を生き抜くには技術力は不可欠
られがち。だが、
「別に目新しい技術ではない」という高杉の
だ。日本が資源もなく技術もない国に成り下がるのか、それと
言葉どおり、既にヨーロッパでは1960年代からプルサーマルを
も技術力で自前の資源を生み出すのか、すべては再び動き
実施。十分な実績はあるうえ、現在の原子炉の中でも、ウラ
出した関西電力のプルサーマル計画、そして原子燃料サイクル
ンがプルトニウムに転換して燃えており、技術的に問題ないこ
の完結にかかっている。■
原子燃料サイクル
エネルギー自給率
二酸化
ウラン
成型加工
工場
ウラン濃縮
工場
(%)
MOX燃料
ウ
ラ
ウラン鉱山 ン
鉱
石
Insight
製錬工場
75
50
38
15
20
イタリア
日本
0
4
145
50
102
66
9
25
ドイツ フランス アメリカ イギリス カナダ
「IEA/Energy Balances of OECD Countries 2000−2001」をもとに作成
再利用
(回収プルトニウム)
回収ウラン
イエローケーキ
153
112
100
低レベル
放射性廃棄物
処分施設
使用済
燃料
MOX燃料
工場
六フッ化ウラン
転換
工場
原子力
発電所
︵放
低射
レ性
ベ廃
ル棄
︶物
*100%を超えている部分は、輸出を示す
エネルギー自給率(原子力含む)
エネルギー自給率(原子力除く)
150
燃料集合体
二酸化ウラン
六フッ化ウラン (劣化ウラン)
2003-2004
2007年頃には高浜発電所での実施にこぎ着けたい考えだ。
必要で、核兵器との関連から、どうしても危ないイメージで見
再転換
工場
18
の理解と協力を得ながら着実にプルサーマル計画を進め、
再処理
工場
使用済
燃料 リサイクル
燃料備蓄
センター
使用済
燃料
放射性廃棄物
(高レベル) 高レベル
放射性廃棄物
貯蔵管理施設
(使用済燃料
中間貯蔵施設)
MOX燃料の利用実績(装荷体数、2002年12月末現在)
2,000
(体)
1,500
*新型転換炉「ふげん」での772体と軽水炉での6体の合計
1822
1420
*
778
1,000
500
高レベル
放射性廃棄物
処分施設
0
289
280
91
70
10
7
6
3
フランス ドイツ ベルギー スイス アメリカ イタリア インド オランダ 日本 スウェーデン
出典:資源エネルギー庁「原子力2003」ほか(2003年3月)
Insight/p16-表3 04.4.6 6:00 PM ページ 4
Close up エナジー
ニュー・エディション
地球への愛、
「環境ラベル付の電気」
って?
ン。京都議定書の基準年である90年度と比べると、使用電
力量が18%増加したにもかかわらず、CO2排出量は14%削減
されている。これを電気使用量1kWhあたりのCO2排出量で
見ると、90年度比で26%減。6年連続で国内電力会社中、
最も低いレベルを達成したうえ、欧米主要国と比べても、原子
力や水力比率の高いフランス、カナダに次ぐ低いレベルとなっ
「系統電力」が環境ラベルの認証取得
関西電力の電気は環境ラベル付!──2003年7月、関西電
ている。
この実績は、従来から関西電力が地球環境問題を重要な
力の「系統電力」が「エコリーフ環境ラベル」の認証を取得した。
経営課題と認識し、長期的視野に立った息の長い活動を続
エコリーフ環境ラベルとは、製品の原料調達から廃棄・リサ
けてきた結果である。95年からは「ニューERA(イーラ)戦略」
イクルに至るライフサイクル全体での環境負荷データを第三者が
と称し、夜間電力の利用促進や原子力発電の推進など、温
認証し開示するもの。主にOAメーカーなどがパソコンやプリン
室効果ガス削減のための総合的な対策を実施。なかでも化
タなどの製品について取得しているが、
「系統電力」のように、
学吸収法による高効率なCO2分離・回収技術の開発に取り組
エネルギーサービスの分野で無形の製品が認証を取得するの
んでおり、この成果は、日本だけでなく欧米・アジア諸国など
は初めてだ。
多くの国で特許が認められている。併せて回収したCO2を炭
*
地球温暖化をはじめ環境問題が深刻化するなか、消費者
の環境意識は徐々に高まり、企業や自治体によるグリーン調
層に固定化する技術などのCO 2有効利用技術開発にも取り
組んでおり、諸外国からの期待も高まっている。
達も本格化。企業にはより信頼性の高い環境情報の開示が
今後も、2003年4月に全面施行されたRPS法(電気事業者
求められている。今回、関西電力がエコリーフ環境ラベルを取
に対し、新エネルギー等で発電される電気の一定量以上の
得したのも、関西電力の電気の環境優位性を第三者認証の
利用を義務づける法律)
を踏まえて、新エネルギーの普及促
形で公開し、
「電力市場の自由化が進むなか、選択ポイントの
進によりいっそう取り組むなど、引き続き「ニューERA(イーラ)
一つとして『環境性』が考慮されることになる」
(環境部長・須
戦略」を推進していく。■
田泰一朗)
という思いがある。
1kWhあたりCO2排出量、90年度比26%減
では、環境ラベル付の電気とは一体どの程度、環境にやさ
しいのか? 2002年度実績で見ると、CO2排出量は3684万ト
*「ニューERA戦略」関西電力が95年から進めている温室効果ガス削減のた
めの総合的な対策。夜間電力利用のご提案や新エネルギー開発など「社
会全体のエネルギー利用の効率化」
(Efficiency)、原子力発電の推進や火
力発電の熱効率維持向上など「電力供給における温室効果ガス排出量の
削減」
(Reduction)、マングローブ生態系修復植林技術の開発など「地球
温暖化防止に向けた海外での取組み」(Activities Abroad)を推進している。
各国の発電端CO2排出原単位(2001年)
kg-CO2/kWh
0.7
0.61
0.6
0.50
0.5
0.47
0.47
0.4
0.34
0.3
0.22
0.23
0.2
0.1
0.05
0.0
フランス カナダ 関西電力 日本 イギリス イタリア ドイツ アメリカ
「Energy Balances of OECD Countries 2000−2001」の資料をもとに作成
日本は電気事業連合会調べ 関西電力は2002年度実績
Insight
2003-2004
19
Insight/p16-表3 04.4.6 6:00 PM ページ 5
News
Clip
2003
関西電力
*全文>> http://www.kepco.co.jp/insight/content/imadoki/imadoki_top.html
2003.01●世界最高レベルの高温耐熱特性の超合金、開発
2003.02●「コンプライアンス・マニュアル」策定
●世界最高効率のガスコージェネレーションシステム開発
●タイで電力事業に進出
東南アジアビジネスの足がかりに
東南アジアのエネルギー需要が急増するなか、関西電力は、タイ
国ロジャナ・パワー社株39%を取得し、タイで電力事業に進出。タ
イ電力公社への電力卸販売とともに、古都アユタヤにあるロジャナ
工業団地内の企業に電力と蒸気を販売。同団地には関西はじめ
日本企業が多数進出しており、これら企業にも
「関西電力ブランド」
の電気を届けようというものだ。
2003.05●マーケティング事業会社「かんでんCSフォーラム」設立
●屋上緑化事業「モスワークスかんでん」設立
2003.06●かんでんジョイライフ、老人ホーム事業でパナホームと提携 ●シリコンカーバイ
ト製インバータを開発
●お客さま対応体制の強化に向け、組織改正
2003.07●ネット家電のインテリジェント制御へ「情報住宅プロジェクト」
開始
●ブータン王国におけるCDM事業、政府より承認
●系統電力が「エコリーフ環境ラベル」認証を取得
2003.08●関電エコメルツ、再生工場竣工 2003.10●「やってみよう!オール電化」キャンペーン実施(∼12月)
●土壌浄化の事業会社「関電ジオレ」設立
2003.03●原子力施設・自主点検作業の適切性確保に関する総点
検、最終報告書を提出
●2003年度経営計画発表
●中国「高速電力線通信」実証実験に参画 2003.04●「くらしのでんきフェア2003」開催(∼6月)
●CO2から医薬中間体を製造する技術を開発
●「グリーン購入大賞(優秀賞)
」電力業界初の受賞
●MOX燃料の品質保証活動を国や地元福井県などに報告
2003.12●新生ケイ
・オプティコム、スタート
●珠洲原子力発電所計画、凍結
●大阪発電所、廃止
●中国で発電設備のコンサルティング業務を受注
●ヘルスケアサポート事業会社「関西メディカルネット」設立
巨大市場に売れるノウハウ
健康が気になる人に
加速する経済成長と軌を一にして、エネルギー基盤の整備を急ぐ
癌を早期に発見できるPET(陽電子放射断層撮影法)
を中心に3
中国。関西電力は欧米系コンサル会社2社を抑え、中国の政府
大生活習慣病の高度健診から高度医療機関の紹介まで、関西
系卸電力会社・綏中(スイゾン)発電有限責任公司より、石炭火力
電力グループの情報通信ネットワークを活用して、健康管理を一元
発電設備保守点検のコンサルティング業務を受注した。また、ほぼ
的にサポートする、会員制ヘルスケアサポート事業会社「関西メディ
同時期に、中国広東省の湛江(ジャンジャン)
オリマルジョン火力発
カルネット」を設立。8月には「PET画像診断センター」
もオープンし、
電所から、建設中の発電所の設計・試運転支援コンサルティング
9月1日からサービスを開始した。
業務も受注。今後の中国でのビジネス展開に向け、大きな一歩を
踏み出した。
2003.04●フィリピン・サンロケ水力発電所、運転開始
2003.05●電気料金、カード支払いサービス拡大 ●発電効率世界最高レベルの燃料電池を開発
分散型電源開発で先行
自動車だけでなく、家庭用小型電源から火力発電所の代替用とし
ても期待される燃料電池。なかでもSOFC(Solid Oxide Fuel Cell:
固体酸化物形燃料電池)
は、安定性や環境性に優れ、発電効率
が高いうえ、コージェネレーションシステムとして実用化すれば、他の
どの分散型電源よりもランニングコストが安い電源として既存システム
に置き換わる可能性を持っている。関西電力は、2003年5月に低温
作動SOFCの1kW級発電「モジュール」を開発、40%という世界最高
水準の発電効率を達成(のちに50%を達成)
。2004年1月にはインバ
ータや排熱回収機能を備えた発電「システム」
としても最高効率を達
成した。今後、2006年度末を目途に中型店舗・小工場等向けの数
十kW級システムの実用化・商品化をめざしている。
20
2003-2004
Insight
時代
Insight/p16-表3 04.4.6 6:00 PM ページ 6
『Insight』登場者一覧(2002∼2003年)
50音順/肩書、役職名は配信・発行当時のものです
浅野史郎・宮城県知事
高橋 潔・南山大学助教授
麻生圭子・エッセイスト
高橋伸彰・立命館大学教授
足達英一郎・日本総合研究所創発戦略センター上席主任研究員
竹山 聖・建築家;京都大学大学院助教授
新井光雄・ジャーナリスト
(元・読売新聞編集委員)
鳥井弘之・東京工業大学教授;日本経済新聞社論説委員
石川九楊・書家
中西輝政・京都大学教授
一條和生・一橋大学大学院教授
中西 寛・京都大学大学院教授
猪木武徳・大阪大学大学院教授
野村宗訓・関西学院大学教授
今村英明・ボストンコンサルティンググループ ヴァイスプレジデント
橋爪紳也・大阪市立大学大学院助教授
植草一秀・野村総合研究所主席エコノミスト
橋本大二郎・高知県知事
植田浩史・大阪市立大学助教授
畑中鐵丸・弁護士
上山信一・米ジョージタウン大学&大阪市立大学大学院教授
古田隆彦・現代社会研究所所長
内田 樹・神戸女学院大学教授
本間正明・大阪大学大学院教授
大澤真幸・京都大学大学院助教授
前田 昇・高知工科大学大学院教授
小川 進・神戸大学大学院教授
町田宗鳳・東京外国語大学教授
金井壽宏・神戸大学大学院教授
松岡正剛・編集工学研究所所長
金子熊夫・外交評論家
松原隆一郎・東京大学大学院教授
香山リカ・精神科医/神戸芸術工科大学助教授
圓尾雅則・ドイツ証券 株式調査部ディレクター
苅谷剛彦・東京大学大学院教授
宮崎哲弥・評論家
川合知二・大阪大学教授;産業科学ナノテクノロジーセンター長
村澤博人・顔・化粧文化研究所所長
神崎宣武・旅の文化研究所所長
村田晃嗣・同志社大学助教授
黒崎 緑・ミステリ作家
森岡正博・大阪府立大学教授
小島冨佐江・京町家再生研究会 理事・事務局長
森永卓郎・UFJ総合研究所主席研究員
紺谷典子・日本証券経済研究所主任研究員
薬師寺泰蔵・慶應義塾大学教授
佐伯啓思・京都大学大学院教授
山内昌之・東京大学大学院教授
榊原清則・慶應義塾大学教授
山本容子・銅版画家
佐倉 統・東京大学大学院助教授
八幡和郎・評論家
澤口俊之・北海道大学医学研究科教授
四方哲也・大阪大学大学院助教授
白幡洋三郎・国際日本文化研究センター教授
わかぎゑふ・女優/演出家/エッセイスト
メールマガジン『時代を解くキーワード・Insight』
http://www.kepco.co.jp/insight/
*バックナンバーはこちらから。配信申込、随時受付
誌 名●『時代を解くキーワード・Insight』
(いんさいと)
配 信 対 象●全国のオピニオンリーダー
(学者・研究者、
マスコミ・ジャーナリスト、政治・行政関係者、企業人など)
仕様・体裁●ノーマルテキスト
配 信 日●月2回(1日と15日) 創刊:2002年1月1日 *無料配信
発 行●関西電力株式会社 地域共生・広報室 広報宣伝グループ
発行人/多田恭之 編集人/岡田重樹;佐口哲之
〒530-8270 大阪市北区中之島3丁目3番22号 電話06-7501-0240
編 集●株式会社エム・シー・アンド・ピー Insight編集室
時代を解くキーワード
Insight/Cov-p15 04.4.6 5:58 PM ページ 1
時代
この冊子は再生紙を使用しています
2004.03
Fly UP