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電力中央研究所報告 電 気 利 用 電 力 輸 送 産業部門における予備力供給型デマンドレス ポンスのポテンシャル評価 キーワード:デマンドレスポンス,予備力,産業部門,ポテンシャル評価, アンケート調査 背 報告書番号:Y15013 景 変動性の再生可能エネルギー電源の大量連系に対応するため、系統電源が供給してい た調整力の一部を、蓄電池やデマンドレスポンス(DR)など需要側の負荷制御で代替す ることが検討されている。政府は、現在、ネガワット取引の効果を検証する実証事業を 行っている。ポテンシャルや経済性を評価した上で、DR の有用性を判断する必要がある。 目 的 再生可能エネルギーの出力変動対策として予備力供給型 DR を取り上げ、アンケート 調査によって、産業部門における同 DR の導入ポテンシャルを評価する。 主な成果 製造業を中心とする全国の第一種・第二種エネルギー指定管理工場を対象に、自家発 電/生産プロセス・機器/空調機器を用いた予備力供給型 DR への対応可能性に関する 郵送アンケート調査を行った(2015 年 12 月~2016 年 2 月、回答数 1367 件、回答率 17.2%) 。需要抑制/需要造成、夏/冬/春秋、昼/夜、前日/1 時間前/10 分前通知な ど様々な DR 種類や時間断面への対応可否を網羅的に調べたことが特徴である。 1. 自家発電/生産プロセス・機器/空調機器を用いた予備力供給型 DR への対応可能性 自家発電:自家発保有工場の約半分が、発電出力調整によって需要抑制・需要造成 DR に対応可能であり(図 1) 、また 24 時間操業が多いため昼も夜も対応可能である。 3 時間以上継続可能とする回答が多く、長時間にわたり調整力に活用できる。 生産プロセス・機器:DR に対応可能な工場は 2 割程度であり、需要抑制のみ可とす る工場がほとんどであった。DR 対応可能な生産プロセス・機器のうち、件数が多い のは「電気炉、誘導炉、焼成炉」であり、1 件あたりの消費電力が大きいのは「電解」 「電気炉、誘導炉、焼成炉」であった(図 2) 。 空調機器:需要抑制/需要造成 DR に対応可能な工場は各々41%、13%であった。春 秋や夜に空調を使用する工場があり、通年・24 時間の調整力に活用できる。 プロセス・機器単位で工場内の消費電力を監視・制御している工場は 2 割に満たな かった。短時間通知の予備力供給型 DR に対応するためには自動 DR が不可欠であり、 自動 DR を実現する FEMS の導入率を上げる必要がある。 2.日本全体の産業部門における予備力供給型 DR のポテンシャルの推定 アンケート調査結果と統計資料を用いて、日本全体の産業部門における予備力供給型 DR ポテンシャルを推定した(図 3) 。前日から 1 時間前、10 分前と通知時間が短くなる とポテンシャルが急減する。再生可能エネルギー電源対応上重要な春秋季・昼間の 1 時 間前通知 DR ポテンシャルは、本推計では 144.9±127.2 万 kW(需要造成) 、89.3±57.7 万 ii ©CRIEPI kW(需要抑制)であった。これは、待機予備力の必要量(系統ピーク需要の約 5%)の 約 18%に相当する。 今後の展開 我が国に DR 調整量を取引する制度を導入する場合には、料金など制度設計が重要と なる。今後、料金インセンティブを考慮した市場ポテンシャル評価を行う必要がある。 また、周波数制御など他のアンシラリーサービスを供給する DR の可能性も検討する。 事 前 通 知 時 間 100% 42% 60% 40% 79% 53% 20% 19% 0% 100% 24% 前日 13% 16% 18% 7% 13% 20% 6% 1時間前 0% 2% 6% 22% 29% 10% 14% 21% 40% 20% 41% 29% 24% 2% 自 家 発 0% 可能 32% 25% 4% 60% 不可能 28% 40% 80% 44% 無回答 無回答 60% 0% 49% 3% 26% 5% 25% 20% 7% 0% 35% 80% 100% 器 セ生 ス産 ・ プ 機ロ 17% 3% 10% 16% 27% 25% 空 調 前週 3時間前 10分前 無回答 7日間以上 25時間-7日 間まで 13-24時間 まで 3-12時間ま で 2時間まで 図 1 予備力供給型 DR への対応可否、対応可 能な事前通知時間と継続時間 7,000 6,000 3,371 5,000 3,6403,263 3,658 3,576 3,261 4,000 3,000 809 806 907 879 893 851 2,000 1,000 148 138 149 138 144 135 0 -63 -52 -50 -50 -46 -47 -1,000 -2,000 -1,565-756-1,399-737-1,449-720 -3,000 -4,000 -3,584 -3,458 -5,000 -4,135 -3,679 -3,717-3,471 需 -6,000 要 造 -7,000 需 要 抑 制 成 夏 夏 冬 冬 春 春 夏 夏 冬 冬 春 昼 夜 昼 夜 秋 秋 昼 夜 昼 夜 秋 間 間 間 間 昼 夜 間 間 間 間 昼 間 間 間 前日通知 自家発 ※エラーバーは標本調査に起因する推定誤差(95%信頼区間) 25 20 15 10 5 給湯 洗浄工程 生産機械器具製造業 製造工程 蒸留工程 コンベア搬送 メッキ工程 電池 充(電 ) 冷水チラー 黒液濃縮 包装工程 検査装置 金属製品製造業 製造工程 工作機械 充填剤製造 ゴミ処理・ 廃材処理 繊維工業 製造工程 プラズマ照射 たばこ製造 浸炭炉 繊維・織物製造 電動機 気体圧縮機 食料品製造業 製造工程 原料移送ポンプ ゴム製品製造業 製造工程 ゴ(ム混練等 ) 輸送用機械器具製造業 製造工程 照明 ミキサー 粉体混合 飲料・たばこ・ 飼料製造業 製造工程 送水ポンプ ボイラー 酸素製造 炭酸ガス精製 電解 表面研磨工程 化学工業 製造工程 中( 和、再生など ) ホイール製造 紙パルプ製造業 製造工程 圧延機 窯業・ 土石製品製造業 製造工程 石灰製造 冷凍冷蔵 古紙パルプ処理 溶解 線製造 伸線撚線 乾燥工程 エアーコンプレッサー 排水処理 排水ブロワ プレス工程 汚泥処理 集塵機 ブロワ 排気ファン プラスチック製造工程 再(生・ 成形な ど ) 粉砕工程 ミル 電気炉 誘導炉 焼成炉 18000 16000 14000 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 1件あたり平均消費電力(kW/件) 30 図2 10分前通知 空調 図 3 産業部門における予備力供給型 DR ポテンシャル推定値 35 0 春 夏 夏 冬 冬 春 春 秋 昼 夜 昼 夜 秋 秋 夜 間 間 間 間 昼 夜 間 間 間 1時間前通知 生産プロセス・機器 40 DR対応可能な生産プロセス・機器の回答件数 継 続 時 間 2% 5% 80% 需要変化量(MW) D R 対 応 可 否 回答件 数 1件あた り平均消 費電力 DR 対応可能な生産プロセス・機器の回答件数と 1 件あたり平均消費電力 研究担当者 高橋 雅仁(社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域) iii 問い合わせ先 電力中央研究所 社会経済研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 03-3201-6601(代) E-mail:[email protected] 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] © 2016 CRIEPI 平成28年4月発行 ©CRIEPI