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アニメーション産業研究会報告書

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アニメーション産業研究会報告書
アニメーション産業研究会報告書
∼製作プロダクションによる自立したビジネスの確立に向けて∼
平成14年6月
アニメーション産業研究会
[目次]
1.背景と問題意識
2.優秀なアニメクリエーターの確保・育成についての課題
3.アニメーション産業の構造上の問題点
4.資金調達
5.その他
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1.背景と問題意識
日本のアニメーション産業は、米国・欧州・東南アジア等世界各地で日本の作品
が日常的に放映されているように、近年国際競争力が非常に高くなっており、ゲー
ム産業とならんで我が国の有力な輸出産業として注目されている。また、本年2月、
アニメーション映画「千と千尋の神隠し」が、ベルリン国際映画祭において金熊賞
を受賞するなど、文化的な観点からも海外から高く評価されるようになっている。
さらに、近年ブロードバンドという新しいメディアが普及しつつあるが、アニ
メーションは回線の容量がそれほど大きくないブロードバンド時代の初期の段階で
も映像としてそれほど違和感がないため、ブロードバンド時代が到来する中で他の
映像コンテンツの中でも先駆的な役割を果たすコンテンツとして注目されている。
今後、インフラの整備が進行するにつれて、ブロードバンドのキラーコンテンツと
なることも期待されている。
一方、アニメーションの製作過程の海外移転が進行しつつあり、現在の日本の産
業界全体の問題である「産業の空洞化」がここでも顕著化しつつある。また、日本
のアニメーションクリエーターは一般に厳しい労働環境に置かれており、将来の人
材という基盤が失われつつあるのではないかとの指摘もなされている。
本研究会では、このような問題意識のもとに、現在の日本のアニメーション産業
が抱える現状と課題について検討を行い、対応の方向性について提言するものであ
る。
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2.優秀なアニメーションクリエーターの確保・育成についての課題
(1)現状と課題
日本から海外へ輸出できる数少ないコンテンツとして期待のかかるアニメーショ
ンであるが、業界全体の将来像としては必ずしも楽観視できるものではない。特に、
アニメーション製作プロダクションの中でのクリエイティブな人材の不足は大きな
問題である。動画を中心とした製作過程を韓国、東南アジア等の海外に発注する大
手製作プロダクションが増加しつつあり、国内に動画を描く者が減り、それが原画
製作者にも影響し、従来のアニメーションクリエーター育成の過程が空洞化しつつ
ある。アニメーションを自社で企画開発しようとしても、若いクリエーターは相対
的に減少しつつあり、ゲーム業界と比較して開発力は弱くなってきている。現在放
送されているアニメーション番組の中で、以前に比べ漫画原作が占めている割合が
高くなっているが、これはアニメーション製作のクリエイティブ側が減少し、漫画
のクリエイティブを借りて制作を担当していることも一因と考えられる。
(2)対応の方向性
今後、将来のクリエーターを養成していくためには、アニメーションクリエー
ターを目指す層の拡大を図ることが必要である。このため、アニメーション業界全
体として、人材の育成方策について検討する必要がある。
しかし、たとえアニメーション業界を目指す者がいても、現状ではプロダクショ
ンは自社で人材を養成するための資金的余裕がなく、また有能なクリエーターが存
在しても低賃金や厳しい労働環境を忌避して他の業界に流出してしまう。この状況
を打開するためには、プロダクションが自立したビジネスを主体的に行うことに
よって、適正な報酬を確保する本来あるべきビジネスモデルを確立することが不可
欠である。プロダクションに十分な報酬が行くようになれば、自社内で人材の育成
を行う余裕も生じ、またクリエーターの処遇も改善するものと考えられる。
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3.アニメーション産業の構造上の問題点
(1)現状と課題
日本のプロダクションは、放送局・代理店等の発注者に対して製作したアニメー
ション作品の著作権を保持してきた比較的規模の大きいプロダクションと、著作権
を保持していなかった中小のプロダクションの二つに分けることが出来る。著作権
を保持してきた企業は、商品化や海外への販売について従来から積極的に対応して
いたことから、そのような機能を担当する部門が整備されている場合が多い。さら
に、ブランドとなるオリジナル作品を持つなど企画開発力に優れた場合が多い。し
かし、このようなプロダクションは日本のプロダクション全体から見れば少数派で
ある。
著作権を保持していなかった企業については、放送局、広告代理店等からの発注
を受けて製作する下請け製作企業としての役割を担ってきた。一般にテレビアニメ
については、放送されることが絶対条件であるため放送局の立場が強く、一定の条
件を要求された際には断るのが困難である。また、プロダクションとしては製作ラ
インを空けるわけにいかないため、収支が赤字となっても受注してしまうことが多
い。アニメーション産業全体としてみれば、この下請け構造が一般化しており、強
い立場をもとに著作権を保持する放送局や広告代理店と、その下請けとして製作を
請け負うプロダクションという構造が、我が国のアニメーション産業の一般的な態
様であった。
近年のアニメーションは、BS、CS等による多チャンネル化、ブロードバンド
という新しいメディア、海外市場、あるいは玩具・食品といった多分野に一つの作
品を販売・利用していく「マルチユース」の場が拡大している。しかし、このよう
な著作権を保持していないプロダクションは、作品のマルチユースを行う権利も放
送局・広告代理店が保持していることが多く、プロダクションが主体的にマルチ
ユースを行うことができない。また、放送局や広告代理店が行うマルチユースによ
る収入から一定の配分を受けることはあるが、その額は必ずしも十分ではない場合
が多い。
さらに、放送局は自社で保持しているアニメ作品のマルチユースを行う権利を必
ずしも十分に行使していないのではないかとの懸念もある。アニメーションはドラ
マなど他の放送コンテンツに比較してマルチユースに適しているといわれているが、
その特質を積極的に生かせずに他のジャンルのコンテンツと同程度のマルチユース
しか行っていなかったり、あるいは自社の系列局に放送させるのみでそれ以外には
利用させずにコンテンツを囲い込むようなこともあるといわれている。
近年、テレビアニメーションの時間帯の多様化や、多チャンネル化により、製作
のために放送局や広告代理店から提供される資金も減少傾向にあるといわれる。製
作費が十分に出ない中で、プロダクションは厳しい製作環境におかれつつある。製
作費の赤字分を埋める手段としては、マルチユースによって得られる収入を製作費
の不足分に充当するしかないのが現状である。
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・「窓口権」の問題
そもそも著作権法に「窓口権」という概念はないが、現状では放送局がいわゆる
「窓口権」といわれる自社での放送による利用以外の2次的な利用許諾を行う権利
を保持することが多く見受けられ、その窓口のマージンの金額が大きく、プロダク
ションサイドへの配分があったとしても十分とは言い難い場合が多い。さらに、「窓
口権」を放送局が半永久的に保持しようとする傾向もみられる。
著作権法上、「映画の著作物」についての著作権は、「映画製作者」に帰属するも
のとされ(法第29条第1項)、「映画製作者」とは、「映画の著作物の製作に発意と
責任を有する者」(法第2条第1項第10号)とされている。一般にプロダクション
は、作品に対する実際の創作的業務を行うにあたり、製作に必要な資材を調達し、
製作に従事する監督や製作スタッフなどの人員を選定雇用し、それらに対する人件
費その他製作に要する費用の支出をプロダクションの責任と計算において行ってお
り、自己の計算で映画の製作を遂行する主体として、一般に著作権法上の「映画製
作者」としての要件を備えているといえる。しかし、このような著作権がプロダク
ションに帰属すべき場合にもかかわらず、著作権あるいは2次利用に関する権利を
一方的に放送局に帰属させるような行為は、独占禁止法や同法に基づくガイドライ
ンに照らして問題となる可能性が考えられる。たとえプロダクション内で2次利用
を行うための部署が整備されていない場合であっても、2次利用の権利行使を放送
局以外のところに委託することも可能であることに留意すべきである。仮に放送局
には番組に関するプロモーション的な役割があるとしても、たとえば海外での番組
販売は我が国の放送局によるプロモーションとは関係がなく、またインターネット
による自動公衆送信権については放送局による放送とはメディアが異なることに留
意する必要がある。
・「製作委員会方式」について
現状では、アニメーション製作に当たっては関係者が民法上の任意組合や商法上
の匿名組合等の形態により「製作委員会」を組織し、共同で製作出資する形態をと
ることが多くなってきている。この場合、著作権は製作委員会構成員で共有すると
した上で作品の利用許諾業務については製作委員会の構成員に割り振られて担当す
ることが多い。これは、より多くの事業者から資金を調達するとともに、作品に出
資するにあたってのリスクを低減し、かつ出資者の得意な分野において自ら作品の
利用許諾業務を行って利益を得ることが可能である等の利点があるものと考えられ
る。
しかし、現状では、プロダクションが製作委員会の一員として多額の出資を行う
ことは困難である。従って、製作したプロダクションに対しては収益からの十分な
リターンが確保されないことが多い。プロダクションは作品の製作というビジネス
の根本部分に寄与しているため、作品の利用による収益を分配するに当たっては最
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初に創作者としての報酬がプロダクションに確保され、その後に出資者に対する配
分が行われてしかるべきではないか。ただし、この場合は製作過程を透明化すると
ともに、予めプロダクションの側で製作責任を明確にする必要がある。
また、製作委員会の構成員で著作権を共有した場合、構成員の全員の了解を得な
ければ作品を利用することはできない。もし海賊版等の問題が発生した場合であっ
ても全員の了解が得られなければ有効な対策を打ち出すことは不可能となる。さら
に、年月を経て構成員が変化・消滅等した場合、著作権の所在が不明確になる恐れ
もある。このような観点からも、著作権はプロダクション帰属させ、必要に応じて
個別の利用許諾業務を構成員が行うことが適当ではないか。
さらに、製作委員会の構成員は多くの場合流通機能を担う事業者であり、自らの
販売能力を超えて出資することは少ないと考えられる。より多くの製作資金を調達
するためには、業界外(金融機関、一般投資家等)からの資金の導入も検討する必
要があるのではないか。
(2)対応の方向性
①モデル契約書の普及
本研究会では、この著作権に関する問題意識をもとに、プロダクションにとって
理想的なモデル契約書を作成した。この契約書は、プロダクションが著作権者とな
るケースについてのモデル契約書であり、プロダクションが自ら資金調達を行うこ
とによりリスクを取りつつ、著作権を保持して放送局・広告代理店等を介さずに自
らの判断で二次利用・販売することにより十分なリターンを得られる自立した形で
のビジネスを行う環境を目指すものである。このモデル契約書を一般に知らしめる
とともに、契約交渉の材料として広く用いられることを目指す。
※なお、参考として、製作委員会方式に関する上記問題意識をもとに、製作委員会方式によるモ
デル契約書も策定した。この契約書においては、プロダクションの出資者としての側面と製作者
としての側面を分けている。すなわち、プロダクションが製作委員会の一員として出資すること
によってリスクをとりつつ、製作者としての報酬(プロデュースフィー)及び出資者としての報
酬を得る。著作権はプロダクションに帰属するが、利用許諾業務については必要に応じて製作委
員会の構成員が担当して行うスキームとなっている。
②独占禁止法の厳格な運用
現在、放送事業は放送法等に基づく免許事業であることから寡占体制にあり、そ
れに対してプロダクションは多数存在している。もし委託事業者たる放送局がその
取引上の優越的な地位をもとにプロダクションに対して一方的に著作権等の権利を
自社に帰属させるようなことがあれば、それは独占禁止法上の「不公正な取引方
法」(昭和五七年六月一八日公正取引委員会告示第一五号)の「優越的地位の濫用」
となる可能性があり、特にこの規定の適用の指針である「役務の委託取引における
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優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」にある「独占禁止法上問題となる
場合」に当たると判断される可能性が高いと考えられる。
しかし、独占禁止法の違反を摘発するには現実には主として被害者たる個別の企
業による訴えが必要であり、被害にあった下請け企業が訴えることは、継続的な取
引を停止されるおそれがあることから一般には困難である。このような観点から、
政府は、独占禁止法を厳格に運用すべきであり、特に公正取引委員会及び中小企業
を所管する中小企業庁は、不公正な取引と認められる個別の事例があれば独占禁止
法に基づいて排除するための是正措置を講じるべきである。
また独占禁止法に抵触する疑いの強い行為であっても法律及び指針の文言解釈の
仕方によって合法となる可能性を含んだ条文となっていることから、必ずしも有効
に機能していないとの指摘もある。上記指針にはこのような問題点があるため、よ
り明確かつ実効的なものにするべく、政府は現行指針の改訂または新たにより実効
的な指針の策定を行うべきである。
③業界団体の強化
現状では、実際に放送局と交渉するに際しては、プロダクションは大抵の場合個
人で折衝している状態であり、組織の整備された放送局と対抗していくことが困難
である。このような観点からみてプロダクションは劣勢であるため、強力な業界団
体を整備して、プロダクションとして組織的に対応していく必要がある
プロダクションの業界団体としては、本年5月、任意団体であった日本動画協会
が法人格を持つ「有限責任中間法人日本動画協会」として新たに発足した。名実共
にプロダクションの業界団体となった日本動画協会が、今後プロダクションの権利
を確立していくための積極的な活動を展開することが期待される。また、本研究会
における議論は引き続き日本動画協会において継続して行われるべきであり、特に
本報告書における各種提言のうち、アニメーション業界としてとして対応すべき事
項については、日本動画協会において引き続き検討を行い、具体化することが望ま
れる。その際、経済産業省は日本動画協会の活動を全面的に支援していくものとす
る。
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4.資金調達
(1)現状と課題
現在、プロダクションがアニメーション製作に関して受け取る対価は、放送局・
広告代理店等からの製作費、あるいはビデオメーカー等の流通事業者を含めた「製
作委員会」から製作費として調達するケースが多い。この場合、現状では流通事業
者から資金を得る場合はマルチユースの窓口業務を流通事業者に押さえられている
ケースが大半であり、プロダクション独自のイニシアチブによる多メディアへのビ
ジネス展開は困難な状況である。
また、製作委員会方式の場合も、製作委員会の構成員で著作権を共有することが
一般的であり、窓口業務も製作委員会の構成員に割り振られており、プロダクショ
ンが著作権を保持して自らビジネスを行うことは困難な状況である。さらに、製作
委員会方式は前述したとおり一般に流通を担当する事業者が構成員となっているが、
このような業界内の資金だけでは製作費が増加する傾向に対して対応することが困
難になると予想される。
もし金融機関や一般の投資家といった業界外の資金を製作資金として導入するこ
とができれば、現状のように権利の切り売りをすることなく、プロダクションが権
利を保持して自らビジネスを行うことが可能である。アニメーション産業が現在の
下請け構造から脱却するには、プロダクションが自社で企画を立て、金融機関や一
般投資家も含めて資金調達を行って製作し、自立したビジネスを行うことが必要で
ある。
現在でも、幾つかの金融機関において、プロダクションに対する投資・融資のス
キームが存在している。しかし、プロダクションの資金需要を満たす十分な資金供
給が行われる体制になっている言い難いのが現状である。特に、近年は比較的大規
模なプロジェクトであれば海外との連携による共同製作や放送権の事前販売によっ
て相当な額の資金供給も行われるようになってきており、それらと比較して国内の
金融機関に対する資金供給体制は必ずしも十分とは言えない。
このため、より多くの投資家の参加を得て、大規模な投資を受けるための受け皿
を整備する必要がある。しかし、現状では、このような大規模な出資の受け皿をつ
くるための法制度が十分に整備されているとはいえない。例えば、信託業法の規定
によれば知的財産権を対象とした信託業を営むことはできない。具体的には、信託
業法第4条において信託業者が扱える財産として知的財産を規定していないため、
信託を活用した資金調達スキームが組めない。この他にも、民法上の任意組合や商
法上の匿名組合の規定において税制上の規定(通達)が不明確である等の指摘がな
されている。このような点を早急に整備ことが必要ではないか。
また、アニメーションは投資による大きなリターンを狙う投資家がいる一方で、
個々の企画またはプロダクションや監督、スタッフといった個人的要素への思い入
れから投資しようと考える個人投資家も存在すると考えられる。このような個人投
資家が安心して投資することができるスキームもまた必要とされている。
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さらに、業界外の資金を用いて製作を行う仕組みを考えていく上では、米国の映
画業界で広く行われている完成保証制度についても検討を行う必要がある。現状の
ような、映画が完成した時が上映する時ということでは、投資家の立場からすれば
ファンドの対象として認めることは困難である。完成保証のスキームが出来れば、
リスクの軽減につながり、投資家が安心して投資する環境が整備される。また、プ
ロダクションにとっても、スケジュールオーバー、製作費オーバー等により劇場上
映できずに損害賠償をされたときに、それをカバーする保険については需要がある。
この完成保証制度を導入する際には、あらかじめプロダクションの側で製作の実績
に関するデータベースを構築し、投資する側や保険側に提供することが必要である
と考えられる。
また、わが国には米国の映画業界に存在するようなプロデューサーがいないとい
われる。米国の映画業界の場合はプロデューサーが自ら選んだ企画・脚本を元に投
資家からの投資を引き出し、それを製作資金として製作を指導、自ら販売してビジ
ネスを行う。しかし、日本の場合、プロデューサーはプロダクションの一社員であ
る。実際にはプロダクションのオーナーが自社の資金の確保という観点から資金調
達を行う場合が多い。自立したビジネスを展開できる知識をもったプロデューサー
が、企画ごとに資金調達を行い、多メディアへのビジネス展開を行って製作費及び
報酬を回収してくスキームにする必要があるのではないか。そのためには、プロ
デューサーが資金調達やビジネスに関する十分な実践的知識を獲得できる場が必要
とされている。
(2)対応の方向性
①信託業法等の法制度・税制の整備
政府は、知的財産権を信託の対象としてを組むことが可能となるよう、信託業法
を改正する等の制度改正を行うべきである。その他にも、民法上の任意組合や商法
上の匿名組合に対する税の適用に関するより詳細な通達の整備等について取り組む
べきである。経済産業省はこの信託を用いた資金調達スキームの有効性や税制につ
いて平成14年度中により詳細な実態把握を行った上で、関係当局に対し制度改正
等の働きかけを行っていくことが必要である。
②個人投資家による投資スキームの整備
個人投資家が個別の企画に投資できるスキームを創出する必要がある。これに関
しては、詐欺的な出資勧誘と区別すべく、政府は金融サービス関連の法制度を整備
して、個人投資家が安心して投資できる環境を整備すべきである。経済産業省は平
成14年度中にこのスキームの有効性や問題点について実態把握を行った上で、必
要な対応策について検討すべきである。
③完成保証
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経済産業省は、平成14年度中に完成保証のスキームに必要な事項について、金
融業界の関係者を含めて検討を行うべきである。同時に、プロダクションは、投資
する側を納得させるための製作に関する資料の作成や、会社の過去の製作実績等に
関するデータベースの構築を行うべきである。
④プロデューサーの育成
アニメーション製作の資金調達及びビジネス展開を行うことのできるプロデュー
サー育成の場を提供することが必要とされている。特に、米国の映画業界で行われ
ている資金調達・製作・配給等の手法を参考にすることが有効であると考えられる。
このため、経済産業省は平成14年度中にプロデューサー育成のためのスキームに
ついて調査・立案を行うべきである。
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5.その他
①海外での海賊版に対する対策
(1)現状と課題
海外における無許可の違法コピー商品が我が国のアニメーション産業の大きな損
失になっている。米国は映画業界の働きかけにより国が主体となって違法コピーが
行われている国に対して交渉を行っている。このような状況に対して、日本におい
ては政府、業界ともに有効な対策が図られていないのが現状である。
(2)対応の方向性
海賊版が横行している国への政府への働きかけや、日本の業界のとりまとめなど、
政府が主体となって海賊版に対する対策を講ずる必要がある。
②映像の光刺激に関する評価指標
(1)現状と課題
映像の光刺激による生体への影響の問題については、日本においては現在放送局
による自主的なガイドラインが制定されている。このガイドラインについてはアニ
メーションについては基準を満たすことが条件とされている一方、広告(CM)につ
いては必ずしも遵守されていないのではないかとの疑念がある。一方、イギリスを
はじめとする欧州諸国で映像の光刺激に関するガイドラインが制定される動きがあ
り、欧州諸国を中心として評価指標の国際標準化を目指す動きもみられる。
(2)対応の方向性
評価指標の国際標準化の動きに対しては、日本のアニメーションの輸出障害とな
らないような妥当な評価指標とするべく、日本においても映像の生体への影響に関
する研究を蓄積するべきであり、政府はその研究に対して助成を行うべきである。
以上
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アニメーション・テレビ放送番組の製作及び放送権の許諾に関するモデル契約書の考え方
経済産業省文化情報関連産業課
・経済産業省では、平成13年5月よりアニメーション製作プロダクションからなる「アニメー
ション産業研究会」(座長:東映アニメーション 泊社長)を発足させ、放送事業者とアニメー
ション製作プロダクションとの間の契約関係について議論を重ねてきた。このモデル契約書
は、この研究会の成果の一つとして、アニメーション製作プロダクションとしてリスクに応じた
リターンを得られる自立した形でのビジネスを行う環境を目標とした契約形態を提示するも
のである。
・著作権法上、「映画の著作物」の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の
著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該「映画製作者」に帰属するものと
され(第29条第1項)、「映画製作者」とは「映画の著作物の製作に発意と責任を有する
者」であるとされている(第2条第1項第10号)。本モデル契約書は、アニメーション製作プ
ロダクションが「映画製作者」であると判断されるケースについて、モデル的な契約内容を
抽出したものである。なお、上記要素を実態に即して総合的に判断した結果、放送事業者
が「映画製作者」となるケースについては、このモデル契約書のスコープ外であることに留
意する必要がある。
・また、本モデル契約書は、アニメーション製作プロダクションとしてリスクに応じたリターン
を得られる自立した形でのビジネスを行う環境を目標とした契約形態を提示したものであ
り、実際に締結される個別の契約についての統一的なあり方を示すものではく、したがっ
て実際に契約書を作成する際の加筆修正やこれとは異なる契約書の作成を妨げるもので
はない。
・なお、本モデル契約書は、今後の著作権法の改正等に応じて適宜見直しを行うものとす
る。
「アニメーション・テレビ放送番組の製作及び放送権の許諾に関する契約書」
株式会社○○テレビ局(以下、「甲」という)と株式会社製作会社(以下、「乙」と
いう)とは、テレビ放送用アニメーション・シリーズ作品「作品名」(以下、「本件作
品」という)の製作及び放送権の許諾に関し、以下のとおり契約を締結する。
第1条(定義)
本契約において、次の用語の意義は、以下に定めるところによる。
(1)本件作品とは、乙が製作する別紙1欄のアニメーション作品をいう。
(2)本件素材とは、甲の放送に使用される別紙2欄の原盤及び関連資料をいう。
(3)放送とは、甲及び甲が再許諾した局が地域内で行う地上波によるテレビ放送
をいい、同時再送信による有線テレビジョンの放送を含むものとする。但し、
その他の公衆送信及びインターネットその他のネットワークによる送信は、
この用語に含まれない。
(4)放送権料とは、甲が本件作品を放送するために乙より許諾される独占的権利
に対する対価をいう。
(5)二次利用権とは、本件作品を、本契約第3条に定める権利の範囲以外の目的
で利用する権利をいう。
(6)窓口業務とは、二次利用を第三者に許諾し、二次利用料を徴収し、これを配
分する業務をいう。
第2条(目的)
乙は、自己の責任と費用負担によって本件作品を製作し、甲に対し甲の放送に必
要な本件素材を納入する。
2.乙は、甲に対し本件作品を地域において放送する独占的権利を許諾し、甲は、乙
に対し本件作品の放送権料を支払う。
第3条(甲の権利の範囲)
乙は、甲に対し、以下に定めるとおり本件作品を放送する独占的権利を許諾する。
(1)放送局 甲、甲のネットワーク局及び甲が放送権を再許諾した局
(2)地域 日本国内に限る。
(3)期間 始期 年 月 日
終期 本件作品最終話の初回放送日の翌日より起算して満2年
6カ月
(4)話数 全26話
(5)放送回数 各話につき期間内に2回。但し、回線障害、停電等の放送事故に
より又は重大事件の報道その他やむを得ない事由により本件作
品の各話の全部又は一部を放送できなかった場合は、甲乙協議の
うえ放送回数に算入しないことができる。
第4条(権利関係)
本件作品にかかる著作権、所有権その他の全ての権利は、別段の定めある場合を
除き、乙に帰属する。
2.乙は、甲に対し、本契約に基づき、本件作品を甲、甲のネットワーク局及び甲が
放送権を再許諾した局より放送するための独占的権利を許諾する。
第5条(二次利用)
本件作品の二次利用権は乙に帰属する。
2.乙は、二次利用権の窓口業務を乙自ら行い、又は窓口業務を第三者に委託する
ことができる。
第6条(保証)
乙は、甲に対し以下の各号を保証する。
①乙は本件作品に使用された原著作物(原作、脚本、台本等を含む)その他の著作
物について、正当に著作権者の許諾を得ており、かつ、本契約の存続期間中その
許諾が失効又は解除される事態の発生しないこと。
②本件作品のプロデューサー、監督、演出家、キャラクターデザイナー、声優等の
実演家その他本件作品の製作に参加した者が、本件作品の製作に参加することを
約束しており、本件作品にかかるすべての著作権が有効に乙に帰属していること。
第7条(楽曲の使用料)
本件作品の放送に使用される楽曲の著作権使用料は、甲が負担する。
第8条(権利譲渡の禁止)
甲及び乙は、本契約に基づいて取得した権利あるいは契約上の地位を、相手方の
書面による承諾なしに第三者に譲渡することはできない。ただし、甲又は乙が、信
用保証協会及び中小企業信用保険法施行令(昭和25年政令第350号)第1条の
2に規定する金融機関に対して売掛債権を譲渡する場合にあってはこの限りでは
ない。
第9条(素材の納入)
乙は、次の各号に掲げる素材を甲の指定する場所に期日までに納入するものとし、
甲はこれに協力する。
①甲指定の仕様によるビデオテープを各話2本。但し、甲がこの数を超えるテープ
を希望する場合、当該テープの作成に要する費用は甲の負担とする。
②放送用フォーマットを記入したキューシートを1組。
③本件作品に使用された既成音楽著作物及び委嘱音楽著作物の楽曲名、著作者名及
びタイミングを記入したミュージック・キューシートを1部。
④JASRAC所定の音楽著作物使用報告書(楽曲表)を1部。
⑤甲の放送に使用される台本を1部。
⑥テーマ音楽の録音テープを1本。
⑦その他、広報宣伝のための素材を含む、甲が本件作品を放送するために必要な素
材。
第10条(検査)
甲は、乙から前条所定の素材の納入を受けたときは遅滞なくその内容、音声その
他本件作品の放送に必要な検査を行い、その結果を納入日から14日以内に乙に通
知する。
2.乙は、乙の責に帰する瑕疵により前項所定の検査に合格しなかった場合には、甲
の放送に支障を与えないよう直ちに当該瑕疵を修補する。
3.本条1項所定の検査期間中に甲が検査を終了しなかったとき、又は検査結果を通
知しなかったときは、検査に合格したものとみなす。
第11条(危険負担)
納入前に生じた本件素材の滅失又は損傷による損害は、乙の負担とし、納入以後
に生じたこれらの損害は、甲の負担とする。
第12条(放送権料の支払)
本件作品の放送権料は、1話につき金○○円(消費税別)とする。
2.前項に定める放送権料の支払は、乙の甲に対する放送用素材の納入に基づいて行
われる。
3.支払の対象となる話数は毎月月末をもって締切り、甲は、乙に対し締切日までに
納入した話数の放送権料を各締切日より30日以内に支払うものとする。支払は、
銀行振込により行われる。
第13条(延滞金)
前条に定める放送権料の支払が30日以上延滞した場合には、甲は、乙に対し支
払い金額に年○○パーセントの割合の延滞金を加算して支払う。
第14条(放送に伴う改変)
甲は、本件作品を甲、甲のネットワーク局及び甲が放送権を再許諾した局より放
送するにあたり、テロップその他の方法により、本件作品を害さない合理的範囲に
おいて広告、告知その他甲が必要とする事項を挿入することができる。
第15条(表示)
本契約の存続期間中、甲は、本件作品の放送及び放送の広告宣伝物に以下を表示
する。
製作著作:乙
第16条(放送の中止)
甲は、番組編成上の都合その他やむをえない事由により本件作品の放送を事前に
乙に通知して中止することができる。甲が乙に対し放送中止の通知をしたときに乙
が製作中の作品をもって本件作品の最終話とし、甲は、その話数までの放送権料並
びに通知の時点で乙が後続の話数の製作のためすでに支出していた実費を乙に支
払うものとする。
2.前項に該当しない事由(不可抗力、第三者の責に帰すべき事由等)により本件作
品の放送が不能または中断した場合には、これによって発生する費用の負担は、当
事者間で別途協議する。
第17条(守秘義務)
甲及び乙は、本契約に関して知り得た相手方の技術上、業務上の情報を秘密に保
持し、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく第三者に開示、漏洩してはな
らない。但し、次の各号の一に該当するものはこの限りでない。
①知得する前に、既に公知となっているもの。
②知得する前に、既に自己が保有しているもの。
③知得した後に、自己の責めに因らず公知になったもの。
④正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく入手したもの。
⑤相手方の秘密情報とは無関係に、独自に開発したもの。
第18条(契約期間)
本契約の有効期間は、締結日に開始し、本件作品のシリーズ最終話の初回放映日
より起算して満2年6カ月を経過する日まで存続する。
第19条(権利保全)
甲及び乙は、本件作品に関する権利を第三者から侵害され又は侵害される恐れが
あることを知った場合は、直ちに善後策を協議し、適切な措置を講ずるものとする。
第20条(契約解除)
甲及び乙は、相手方が次の各号の一に該当したとき、何らの通知、催告その他の
手続きを要することなく、本契約の全部又は一部を解除することができる。
①破産、整理、特別清算、民事再生手続き若しくは会社更生手続きの申立を受け、
若しくは自ら申し立てるとき、又は解散決議をするとき。
②手形又は小切手の不渡処分を受ける等支払停止又は支払不能の状態に陥ったと
き。
③差押、仮差押、仮処分、競売、租税滞納処分その他公権力の処分を受けたとき。
④本契約若しくはこれに附帯する約定を継続しがたい重大な背信行為を行ったと
き。
2.甲及び乙は、相手方が本契約の全部又は一部に違反したときは、相当の期間を定
めて催告し、この期間内に是正されないときは本契約の全部又は一部を解除するこ
とができる。
3.甲及び乙は、相手方が本契約の全部又は一部に違反することにより損害を被った
場合には、本契約の存続期間中に限り、第12条に定める対価の金額を限度として
相手方に当該損害の賠償を請求することができる。
第21条(素材の返還)
本契約に基づく既定の放送が終了した場合には、甲は、その時までに納入された
全ての本件素材を乙に返還する。
2.本契約が解約され又はその他の理由で終了した場合には、甲は、その時までに納
入された本件素材を直ちに乙に返還するものとする。
3.前項の場合でも、甲は、乙に既に支払った放送権料の返還を求めることはできな
い。
第22条(協議)
本契約に定めのない事項及び本契約の各条項の解釈について疑義が生じた事項
については、甲乙誠意をもって協議のうえ解決するものとする。
第23条(合意管轄)
前条の協議にもかかわらず、本契約について訴訟の必要が生じた場合には、○○
地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名捺印のうえ各1通を保管する。
平成 年 月 日
甲 (住所)
(テレビ局) (印)
乙 (住所)
(製作会社) (印)
別 紙
1.本件作品
(1)題名:「作品名」
(2)形式:テレビ放送用アニメーション・シリーズ作品
(3)仕様:甲指定の仕様(例:D2仕上げ)
(4)放送枠:1話につき30分
(5)放送予定話数:全26話
(6)原作:○○
2.本件素材
(1) 甲指定の仕様(例:D2仕上げ)によるビデオテープ
(2) 放送用フォーマットを記入したキューシート(ランニングタイム表)
(3) 本件作品に使用された既成音楽著作物及び委嘱音楽著作物の楽曲名、著作者
名及びタイミングを記入したミュージック・キューシート
(4) JASRAC所定の音楽著作物使用報告書(楽曲表)
(5) 台本
(6) テーマ音楽の録音テープ
(7) 宣伝及び広報のために必要な素材
確認 甲 乙
[参考]
(製作委員会方式)
「アニメーション作品の製作及び利用に関する契約書」
株式会社●●(○○プロダクションの出資会社)(以下、「甲」という)、株式会社
▽▽(以下、「乙」という)、株式会社□□(以下、「丙」という)、株式会社◇◇(以
下、「丁」という。なお甲乙丙丁を総称して「出資者」という)及び株式会社○○プロ
ダクション(以下「戊」という)は、アニメーション・シリーズ作品「作品名」(以下、
「本件作品」という)の製作及びその利用等(以下「本事業」という)に関し、以下の
とおり契約を締結する。
第1条(定義)
本契約において、次の用語の意義は、以下に定めるところによる。
(1) 本件作品とは、別紙1①のアニメーション作品をいう。
(2)本件素材とは、別紙1②の本件作品の素材をいう。
(3)窓口業務とは、本件作品の利用を許諾し、その収益を配分する業務をいう。
第2条(目的)
出資者は、本契約に定める条件に従い、本件作品を共同して製作することに合意す
る。
2.本事業の遂行主体を民法上の組合として、各出資者を組合員としてここに組成し、
「(作品名)製作委員会」(以下「製作委員会」という)と称するものとする。甲
(又は乙、丙、丁)を製作委員会の幹事会社(業務執行組合員)とすることに、全
出資者は同意する。
3.幹事会社により代表される製作委員会は、本事業を遂行する権利を有し、義務を負
う。
第3条(幹事会社)
甲(又は乙、丙、丁)は、製作委員会の幹事会社として、次の業務を行う。
① 本件作品の企画開発からポストプロダクションの終了に至るまでの諸
連絡事務
② 本件作品の製作、配給、放送その他の利用に関する諸事務の遂行
③ 本件作品に関連する出金と入金、および出資者への分配金の支払
④ その他上記各号に関連する、あるいは本事業遂行に必要ないし有益と認
められる、一切の事柄
第4条(出資)
出資者は、下記の金員を払い込むことにより本事業に対して出資するものとする。
[参考]
(製作委員会方式)
各出資者の出資比率は下記に記されたとおりとする。
出資者 出資金 出資比率
甲 金 円(消費税別) %
乙 金 円(消費税別) %
丙 金 円(消費税別) %
丁 金 円(消費税別) %
第5条(予算)
本件作品の実際の制作業務については、製作委員会が戊に委託する。なお、製作委
員会は戊に対し以下の対価を支払う。
制作委託費:金 円(消費税別)
第6条(制作業務)
戊は本件作品の制作業務主体となるものとし、企画開発・制作組織編成、ならびに
制作予算の立案・執行・管理、制作現場の指揮・監督、ならびに著作権・著作隣接権
の集約、処理等を責任を持って行い、 年 月 日までに本件作品を完成さ
せ、本件素材を製作委員会に引き渡すものとする。
第7条(権利の帰属)
1. 本件作品の著作権は戊に帰属する。
2.製作委員会の所有する財産は、出資者全員の共有とし、各出資者の持ち分は出資比
率に応ずるものとする。
3.出資者は前項に規定する財産に対する自己の持ち分について、譲渡その他の一切の
処分行為をなすことができない。
4.出資者は、本契約に別途規定する他は、本契約に規定する製作委員会の清算の開始
前に共有にかかる財産の分割を請求できない。
5.製作委員会の所有する財産は、出資者全員の名において、幹事会社が出資者のため
に適当と考える方法で管理するものとする。
第8条(表示)
出資者は、本件作品の著作権表示をする場合は、原則として以下の表示をすることを
合意する。
c 戊・製作委員会
⃝
第9条(収支管理)
幹事会社は、本事業遂行の過程で生じる経費その他の諸債務につき、随時その合理
[参考]
(製作委員会方式)
的判断に従って、これを出資金から出金の上支払う。
2.幹事会社は出資者のいずれかから会計に関する説明および関係書類の閲覧請求を受
けた場合、これに応じなければならない。
第10条(権利利用)
本件作品の利用についての窓口業務を担当する者(以下、「窓口業務者」という)
は、別紙2のとおりとする。窓口業務者は本件作品の利用希望者の選定、対価、期間
等を決定し、事前に甲に報告する。また、窓口業務者は第三者より利用の申立てがあ
った場合は、別途契約を締結した上で、第三者に許諾を与えることができる。
2.各利用形態において、著作物使用料(印税)が発生する場合は、各窓口業務者が関
連著作権団体の規定に従い支払う。
3.窓口業務者は、利用により得られる収益から、利用に要した直接経費及び窓口手数
料を引いた後、戊への制作報酬および本件作品の原作者等への報酬を控除し、その残
額を出資比率に応じて各出資者に分配するものとする。これらの手続きの詳細及び戊
への制作報酬、原作者等への報酬の収益に対する割合については、別途定める。
第11条(権利譲渡の禁止)
出資者は、本契約に基づく「出資者たる地位」を、他の出資者全員の書面による承
諾なしに第三者に譲渡することはできない。
2.上記の「出資者たる地位」を譲り受けた者は、かかる地位の譲渡を行った出資者の
本契約に基づく一切の権利義務を一般的に承継するものとする。
第12条(清算)
製作委員会は、次の各事由が存する時に終了し、以後は清算手続に移行する。
①本契約期間の満了の場合
②事由の何たるを問わず、幹事会社を含む全出資者の一致により製作委員会の終了
の合意をした場合。
2. 清算手続に移行した場合には、幹事会社が清算人となる。
3. 清算人は、製作委員会の債務を全て弁済し、残余財産があれば各組合員に出資の割
合に応じて分配する。なお、戊の本件作品の著作権者としての地位は清算手続によ
って影響を受けない。
第13条(守秘義務)
出資者は、他の出資者から秘密と指定され開示を受けた情報を、その当事者の事前
の書面による承諾を得ることなく第三者に開示、漏洩してはならない。但し、次の各
号の一に該当するものはこの限りでない。
[参考]
(製作委員会方式)
①知得する前に、既に公知となっているもの。
②知得する前に、既に自己が保有しているもの。
③知得した後に、自己の責めに因らず公知になったもの。
④正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく入手したもの。
⑤相手方の秘密情報とは無関係に、独自に開発したもの。
第14条(委員会債務の弁済)
製作委員会の債務は、幹事会社がまず委員会の財産をもって弁済するものとする。
2.前項による弁済後も債務が残存する場合には、各出資者はその出資比率に応じて、
これを弁済する義務を負うものとする。
第15条(幹事会社の辞任および解任)
幹事会社は、正当な事由ある場合に限り、他の出資者に対して30日以上の事前の
通知をなして、辞任することができる。
2.幹事会社は、第4条に従って幹事会社が出資しない場合に限り、他の出資者の全員
一致により解任されるものとする。
3.幹事会社が出資者たる地位を喪失したときは、当然に幹事会社たる地位も喪失する。
4.幹事会社が辞任し、解任され、その他その地位を喪失した場合には、他の出資者は
その全員一致により、後任の幹事会社一名を出資者の中から選任するものとする。こ
の場合、後任者が選任されるまでは、従前の幹事会社は、幹事会社としての権利を有
し、義務を負うものとする。
第16条(各出資者の脱退及び除名)
出資者は、やむを得ない事由がある場合に限り、他の出資者に対し○日以上の事前
の通知をもって、製作委員会を脱退することができる。なお、いずれかの出資者が第
18条に定める事項に該当した場合には、同出資者は自動的に製作委員会を脱退した
ものとみなす。
2.出資者が本契約で定められた金銭の支払を怠り、その他本契約の義務を履行しない
場合には、幹事会社は、同出資者を製作委員会から除名することができる。
3.本条により脱退ないし除名がなされた場合においては、その時点における脱退ない
し除名がなされた出資者の持ち分を製作委員会の財産の状況に従って計算をなし、払
い戻す(ただし、脱退または除名の当時において未だ結了していない事項については、
その結了後に計算をなす)。なお、脱退ないし除名及びその持ち分の払い戻しに関し
て生じた一切の費用は、脱退ないし除名された出資者が負担するものとし、幹事会社
はかかる費用を控除して持ち分を払い戻すものとする。脱退または除名によって、脱
退ないし除名された出資者がそれ以前に製作委員会に対して負担していた債務は影
[参考]
(製作委員会方式)
響を受けない。
第17条(契約期間)
本契約の有効期間は、本契約締結時から○年間とする。
第18条(契約解除)
出資者は、他の出資者のいずれかが次の各号の一に該当したとき、何らの通知、催
告その他の手続きを要することなく、本契約の全部又は一部を解除することができる。
①破産、整理、特別清算、民事再生手続き若しくは会社更生手続きの申立を受け、
若しくは自ら申し立てるとき、又は解散決議をするとき。
②手形又は小切手の不渡処分を受ける等支払停止又は支払不能の状態に陥ったと
き。
③差押、仮差押、仮処分、競売、租税滞納処分その他公権力の処分を受けたとき。
④本契約若しくはこれに附帯する約定を継続しがたい重大な背信行為を行ったと
き。
2.出資者は、他の出資者のいずれかが本契約の全部又は一部に違反したときは、相当
の期間を定めて催告し、この期間内に是正されないときは本契約の全部又は一部を解
除することができる。
3.出資者は、他の出資者のいずれかが本契約の全部又は一部に違反することにより損
害を被った場合には、相手方に当該損害の賠償を請求することができる。
第19条(協議)
本契約に定めのない事項及び本契約の各条項の解釈について疑義が生じた事項に
ついては、出資者間で誠意をもって協議のうえ解決するものとする。
第20条(合意管轄)
前条の協議にもかかわらず、本契約について訴訟の必要が生じた場合には、○○地
方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約締結の証として本書○通を作成し、甲、乙、丙および丁がそれぞれ記名捺印の
うえ各1通を保管する。
平成 年 月 日
[参考]
(製作委員会方式)
甲 (住所)
(印)
乙 (住所)
(印)
丙 (住所)
(印)
丁 (住所)
(印)
戊 (住所)
(印)
[参考]
(製作委員会方式)
別紙1
①本件作品
(1)題名:「作品名」
(2)形式:テレビ放送用アニメーション・シリーズ作品
(3)仕様:製作委員会指定の仕様(例:D2仕上げ)
(4)時間:1話につき30分
(5)話数:26話
②本件素材
(1)宣伝及び広報のために必要な素材製作委員会指定の仕様(例:D2仕上げ)
によるビデオテープ
(2)ミュージック・キューシート
(3)音楽著作物使用報告書(楽曲表)
(4)台本
(5)テーマ音楽の録音テープ
(6)宣伝及び広報のために必要な素材
[参考]
(製作委員会方式)
別紙2(窓口業務)(例)
○甲が窓口業務を担当するもの
・自動公衆送信権
・海外利用権(海外における劇場配給権、ビデオグラム化権、テレビ放送権、商品化権)
・
・
・その他、他の出資者の窓口業務に属さないもの
○乙が窓口業務を担当するもの
・地上波放映権
・
・
○丙が窓口業務を担当するもの
・国内ビデオグラム化権(ビデオグラムとは、あらゆるタイプのビデオカセット、ビデ
オディスク、その他映像を再生することを目的とする一切の記録媒体および将来開発
される録画物をいう。)
・
・
○丁が窓口業務を担当するもの
・
・
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