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都市経営における市民参加システムの 具体的手法に関する調査

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都市経営における市民参加システムの 具体的手法に関する調査
SURF 研究報告
№199900300104
都 市 経 営 における市 民 参 加 システムの
具 体 的 手 法 に関 する調 査
仙台都市総合研究機構
Sendai Urban Research Forum
ごあいさつ
仙台都市総合研究機構は、市民・大学・企業等の参加を得て仙台市政の長期ビジョン
や政策目標を提示していくこと等を目的として設立された調査研究機関です。
行政、市民、企業等のそれぞれが都市経営のパートナーとして果たす役割とその方
法・仕組やルールについて整理検討し、その具体化を図っていくことが今後の仙台市に
とって最も重要な課題の一つであると考え、平成 10 年度の「市民参加の方法論に関する
基礎調査」に引き続き、平成 11 年度はこれを一歩進めて「都市経営における市民参加シ
ステムの具体的手法に関する調査」に取り組みました。
当機構は設立当初から市民とのパートナーシップ重視の視点に立ち、市民研究員制度
を独自に設けて市民とともに調査研究を行ってきており、本調査もこの制度のもとで行
ったものです。
本調査は、行政における市民参加事業や市民活動支援状況の現状や問題点を調査、分
析するとともに、新しいタイプの市民活動についても調査を行い、都市経営という視点
からみた市民参加の仕組みを検討しております。
本調査報告が、市民と行政のパートナーシップのあり方について関心を持つ市民や実
務に携わる行政関係者はもとより、多くの方々に活用されることを期待しております。
最後に、本調査研究にご協力を下さいました多くの皆様に対しまして、心より厚く御
礼申し上げます。
平成 12 年3月
仙台都市総合研究機構
理事長
久水
輝夫
「都市経営における市民参加システムの具体的手法に関する調査」(目次)
ごあいさつ
要旨
はじめに ································································································ 1
第 1 章 市民活動と行政··········································································· 3
第1節 市民活動の現状と課題······························································· 3
1.仙台市における市民活動の概要 ························································ 3
2.全国における市民活動の先進事例 ····················································· 6
(1)秋津コミュニティ(習志野市) ·················································· 6
(2)さんし会(杉並区) ································································· 8
(3)玉川まちづくりハウス(世田谷区) ············································ 9
(4)真野まちづくり推進会(神戸市長田区) ······································11
(5)真野っこ(神戸市長田区) ························································13
(6)アドプトシステム(徳島県神山町) ············································14
(7)三島グラウンドワーク(三島市) ···············································15
3.市民活動の課題 ·············································································21
第2節 行政の市民活動支援状況と課題···················································24
1.市民活動のインキュベータとしての行政 ············································24
2.仙台市における市民活動支援状況 ·····················································27
(1)アンケートにみる仙台市の市民活動支援状況 ································27
(2)市民局による市民活動支援施策 ··················································34
3.全国における市民活動支援状況 ························································41
(1)都市経営における市民参加に関する調査概要 ································41
(2)まちづくり条例 ·······································································46
(3)TMO ···················································································48
4.行政による市民活動支援の課題 ························································51
第2章 行政活動と市民参加 ·····································································53
第1節 自治体の事務事業と市民参加······················································53
第2節 行政活動への市民参加の現状と課題·············································56
1. 仙台市における市民参加事業の状況
仙台市における市民参加の実態に関する調査(A票)概要 ····················56
2. 自治体アンケートにみる市民参加の仕組み
(都市経営における市民参加に関するアンケート調査概要) ················75
3.全国における市民参加の先進事例 ·····················································80
(1)わくわくまちづくり工房(北九州市) ·········································80
(2)情報公開から情報提供へ(岩手県) ············································81
(3)生涯学習のまちづくり(掛川市) ···············································83
(4)その他の事例 ··········································································87
4.行政活動への市民参加の課題 ···························································89
第3節 企業経営の発想や手法を活かした取組··········································93
1.企業経営手法が行政に求められる背景 ···············································93
2.企業経営における品質管理の歴史 ·····················································93
3.企業経営手法について ····································································95
(1)マーケティングと顧客満足 ························································95
(2)品質管理 ················································································98
(3)企業会計 ················································································103
第 4 節 行政評価·················································································105
1.行政評価の概念 ·············································································105
2.三重県事務事業評価 ·······································································114
3.市民による事業評価検討グループみえ(三重県) ································120
4.業務棚卸(静岡県) ·······································································125
5.北九州市イベント評価 ····································································129
第3章 都市経営における市民参加システム················································133
第1節 市民活動の自律的成長のために···················································133
第2節 市民参加型行政システムの構築のために·······································135
1.市民参加の基本的考え方 ·································································135
2.企業経営のノウハウを活かす ···························································139
3.「市民参加型手法」の活用 ·······························································141
第3節 市民参加型行政システム
1.市民参加事業の位置付け ·································································145
2.市民参加型行政システム ·································································145
3.市民参加を支える 6 つのシステム·····················································149
4.人材育成とまちづくり大学 ······························································153
第4節
都市経営の視点から見た市民参加システム····································158
【付属資料】
○参考文献一覧 ·······················································································163
○アンケート調査表および集計結果····························································165
・都市経営における市民参加に関する調査···················································165
・仙台市における市民参加の実態に関する調査(A票)·································177
・仙台市における市民活動支援状況に関する調査(B票)······························186
○調査研究体制および活動経緯 ··································································197
要 旨
1. 近年、財政の悪化や長引く景気の低迷を直接的な契機として、また、今後急激に進
1. む少子高齢化や情報化の進展等に伴う社会構造の変化をより本質的な背景として、行政改
革が叫ばれ、官民の役割分担の見直しが進められてきている。また、平成 10 年 12 月には
「特定非営利活動促進法」が施行され、NPO活動に対して社会的な注目が高まるととも
に、各地においてNPO活動支援の取組がなされつつある。
そこで本調査は、仙台市の事例を中心に、市民活動と行政の関わりを検証して、市民活
動のあるべき姿や望ましい行政支援のあり方を考察するとともに、行政活動への市民参加
のあり方について調査研究し、行政活動への市民参加システムを提示することを目的とし
た。
調査に当っては、仙台市及び都道府県・政令指定都市に対してアンケート調査を実施す
るとともに、研究員が分担して各地の事例調査などを行い、分析、検討を加えた。
2. 市民活動と市民活動支援についてまとめると、仙台市における市民活動は概して小
2. 規模で未成熟なものが多いが、近年、先進的な活動も起こりつつある。一方、仙台市は市
民活動を行う環境としては比較的恵まれている地域といえる。仙台市における市民活動の
課題は、市民活動を見る市民や行政の意識、市民活動の底辺の薄さにあると考えられる。
当機構が平成 10 年度より実施している仙台市の市民意識調査に見られる今後活動してみ
たいとする層を、いかにして具体的な活動につなげるかが重要である。
今回調査を行った全国における市民活動の先進事例は
①「子縁」を核にした新しいコミュニティ活動
②まちづくり専門家の助言や協力を得ながら住民主体のまちづくりを進める取組
③市民活動団体がネットワークを組み事業展開を行うことで大きな力を発揮している事例
④清掃奉仕活動を行政との契約関係で位置づける事例
などである。
これらの事例に共通することは、一つの成功体験を次の事業展開にうまく結び付けてい
く知恵や柔軟性、行政のさりげないサポート、活動の継続性などである。
3. 行政の市民活動支援状況をみると、ここ数年仙台市では市民活動サポートセンター
3.
の設置や市民活動企画コンペ、市民活動フォーラムの開催など、全国的にも先進的な取組
が行われている。しかしながら、仙台市の一連の施策には、どちらかといえばイノベー
ターの意見に重きが置かれ、市民の大部分を占めるフォロアーの姿が見えにくい。仙台市
の各課に対して行った市民参加・市民活動支援に関するアンケート結果をみると、市民活
動の支援は行っていても支援が活動自体の自立につながっていないこと、金銭的な支援が
長期にわたり見なおされていないこと等の問題点が浮かび上がった。また、都道府県およ
び政令指定都市に対して実施した市民活動支援に関するアンケート調査結果をみると、総
合的な担当部署を有するところが 7 割、ボランティア保険支援4割強、拠点施設整備 4 割、
ボランティアの登録派遣制度が 3 割強等と、比較的多くの自治体で多様な取組が行われて
いることがわかった。
以上のことから、仙台市における市民活動支援の課題について考えると、従来の支援は
ともすれば金銭的支援に偏り既得権化していたのではないかと考えられ、今後は支援目的
の明確化と支援の評価、自立を促す支援が求められるといえよう。
4. 自治体の行政活動への市民参加は、住民ニーズの把握や住民満足度の向上、行政施
4.
策展開のアカウンタビリティ等、様々な視点から求められている。行政活動への市民参加
は、行政・市民の双方にとって必要とされているが、参加の目的や参加形態は各々の事務・
事業の性格により異なる。仙台市における市民参加事業の状況をアンケート調査からみる
と、市民参加で行われている事業は決して多くはなく、また、行われていたとしても行政
主導型のものが 6 割を超えている。しかし、近年、パートナーシップ型および市民主導型
の事業が増加傾向を示している。
前述の自治体アンケートからみると、市民参加を促す制度としてインターネットを約半
数の自治体が活用している。また、審議会委員等の公募は市民の関心が高い参画しやすい
特定テーマで比較的行われており、市民参加型事業は東京都世田谷区で区の事業として行
われているケース等が見られたが全体的には市民参加を促す制度は少ない。その一方で、
情報公開の取組については様々な形での各種の情報提供が過半数の自治体で行われており、
ここ数年で、市民参加の前提条件としての情報提供の環境が大きく整いつつあるといえる。
今回調査を行った事例は、
①市の職員研修所が市民と職員を対象に行ったまちづくりワークショップ
②情報公開から情報提供へをテーマにした積極的な情報提供
③市長のリーダーシップのもと推進する生涯学習のまちづくり事例
などである。
これらの事例が目指すものは、行政の既成概念の打破、トップダウンによる職員の意識
改革といえるもので、行政の積極姿勢や首長のリーダーシップに学ぶ必要がある。
行政活動への市民参加についての課題をまとめると、現状では市民参加は制度的に確立
されておらず、個別の事業において参加が模索されつつ行われているに過ぎない。このた
め、職員・市民とも、人材が育つ状況にはない。市民参加を推進していくためのルールや
基準が必要である。また、市民への情報提供のあり方や広報手段についても、充分とはい
えず改善が必要である。
5. 財政の悪化や行政効率化に関する住民意識の高まりなどから、地方行政機関の経営
5.
改善に企業の考え方やその改善手法の取り入れを考えるところが増えて来ている。一言で
いえば、企業と同じように住民の利益や経済合理性を前提にした自治体経営意識の高まり
である。具体的にはマーケティング手法や顧客満足、品質管理やISO9000 やISO
14000 シリーズの取得、企業会計手法の導入、事業評価の採用などである。特に事業評価
については自治体アンケート調査においても導入意向が強く現われ、急激に浸透しつつあ
ることが窺える。
6. 以上の調査を踏まえ、市民参加型行政システムについて次のとおりとりまとめた。
6.
市民参加事業については『目標・プロセス・成果の共有』が不可欠であり、そのベースに
は『情報の共有』がある。言い換えれば、PDS*サイクルの確立と情報を戦略的に活用し
たコミュニケーション型市政が市民参加の基本となる。
また、このような形で市民参加を支えるシステムとして
①市民活動や各種計画・事業等に関する情報提供システム
②市民の意見を取り入れた行政評価システム
③市民の意見を行政経営の重要なマーケティングツールに位置づけた市民指向型広聴シス
テム
④人材育成のための市民まちづくり大学
⑤市民が行うまちづくり全般を幅広く包括する市民まちづくり活動支援条例
⑥組織改革、品質向上のための行政品質向上運動
の六つのシステムを確立することが必要である。
* Plan(計画)Do(実行)See(検証・評価)の行動サイクル
はじめに
1.調査の目的
近年、財政の悪化や長引く景気の低迷を直接的な契機として、また、より本質的な問題
としては、今後急激に進む少子高齢化等の社会構造の変化を背景にして行政改革が叫ばれ、
官民の役割分担の見直しが進められている。また、政府が行政改革委員会において平成 9
年 3 月に「行政関与のあり方に関する基準」をとりまとめているが、その中でも「民間活
動の優先」を第一に掲げるとともに、
「行政活動の効率化」、
「行政による説明責任の遂行と
透明性の確保」、「定期的な見直しの実施」の 4 つを全般的な基準として掲げ、「民」重視
を明確にしている。一方、平成 10 年 12 月には「特定非営利活動促進法」が施行されNP
Oに対する社会的な注目が高まっている。
本調査は、このような社会の変化を踏まえ、今後の都市経営を推進していく上で市民の
参加は不可欠であり、さまざまな市民の活動が活力ある都市を育てるとの認識に立ち、主
として市民活動と行政の関わりについて「市民活動支援」と「行政活動への市民参加」の
二つの側面から検証するため、その現状と課題や今後の取り組みのあり方について、仙台
市を中心に調査研究を行い、都市経営における市民参加システムを提示することを目的と
している。
2.調査体制およびとりまとめの方法
本調査は、当機構主任研究員と仙台市民より公募により選ばれた市民研究員 5 名、同じ
く仙台市からの職員研究員 2 名の 8 名が調査チームを組み、共同で行った。
調査は、文献調査や平成 10 年度の先行調査を基礎に、仙台市に対するアンケート調査、
都道府県政令指定都市を対象としたアンケート調査を実施するとともに、各研究員が分担
して各地の事例調査などを行い、分析、検討を加えた。研究企画にもとづき各研究員が分
担して調査を行い、その研究内容を持ちより、すり合わせをしながら研究を進めた。
3.本調査における用語の意義
本調査においては「市民参加」および「市民活動」についてそれぞれ次のとおりと考えて
いる。
○「市民参加」
市民活動への参加と行政活動への参加の両者を併せて市民参加とする。参加が直接的か
間接的か、積極的か消極的かなどは問題とせず幅広く「市民参加」と捉える。
○「市民活動」
以下に示す市民の公益的な活動を全て含む。
(個人)
・個人が行うボランティア活動
1
(団体)
・町内会、PTA などの地縁団体
・子育てや介護など特定の関心事について活動を行うテーマコミュニティ
・「特定非営利活動促進法」の認証を受けた NPO 法人
・行政がその組織の立ちあげや維持に積極的に関与している「市民行政共同団体」
2
第1章
市民活動と行政
第1節
市民活動の現状と課題
1.仙台市における市民活動の概要
ア.市民活動団体数
仙台市では 1999 年3月に『市民活動ハンドブック』を作成しており、そこには 504 の
市民活動団体が紹介されている。その活動分野について、同ハンドブックは 11 分野、29
項目に分類しており、およそ市民生活に関する事なら何でも市民活動の領域となっている
状況にある。なお、このハンドブックを作成するにあたりアンケート調査を依頼した団体
数が 1,293 件、そのリストアップにあたっては、仙台市、仙台市ボランティアセンター、
せんだい・みやぎNPOセンターの三者が把握する情報をもとにしているとのことで、実
に 1,300 近くの団体が何らかの形で市民活動を行っていることになる。
イ.仙台市におけるNPO法人の状況
次に、1998 年 12 月に施行された「特定非営利活動促進法」によるNPO法人の認証状
況から仙台市におけるNPO法人の状況を見ると、2000 年 2 月現在で宮城県内のNPO法
人認証申請数は 43 団体(うち仙台市内を主たる事務所所在地とするものは 27 団体、認証
数 33 団体)となっている。これを全国の都道府県別の人口 10 万人当たり法人認証数でみ
ると宮城県は東京、栃木、群馬、高知、三重に次いで全国 6 位となっており、NPO法人
の活動が盛んな地域といえよう。また、県内の認証団体について活動分野別割合を見ると、
福祉関連 45%、環境 19%、まちづくり8%等、時代に即応した団体が多いことが窺える。
(参考
『宮城県政だより』2000 年 1 月号)
ウ.仙台市の市民活動の特徴
−広島との比較調査から−
市民活動地域支援システム研究会が 1996 年 7 月に広島(回答数 288 件)と仙台(回答
数 257 件)の市民活動団体を対象として行ったアンケート調査によると、仙台市内の市民
活動団体は広島と比較して次のような特徴を持っている。
(研究会が自発性、自立性、公開
性、公益性、参加型の 5 つの基準に基づき各種資料からリストを作成、発送件数はそれぞ
れ約 1000 件:回収率広島 28.8%、仙台 25.7%)
○活動の中心となる分野
環境・エコロジー13.6%(広島 8.3%)、地域・まちづくり 11.3%(*18.8%)、国際交
流 10.5%(10.1%)等となっており、環境・エコロジー関連の活動団体の比率が高い。
*以下の(
3
)内は広島の数値
○個人会員数
1∼49 人 42.8%(33.0%)、50∼99 人 15.6%(16.0%)、100∼499 人 14.8%(21.2%)、
500 人以上 3.1%(6.9%)、無回答 23.7%(22.9%)となっており、広島よりも小規模な
団体の比率が高い。
○常勤有給スタッフ数
0 人 71.2%(80.6%)、1∼5 人 6.6%(7.6%)、6∼10 人 0%(1.0%)、21 人以上 0%(0.7%)、
無回答 22.2%(10.1%)となっており、広島よりも常勤有給スタッフ数が少ない団体が多
いと考えられる。
○年間予算規模
10 万円未満 29.2%(24.7%)、10∼30 万円 22.2%(15.3%)、30∼50 万円 8.9%(9.0%)、
50∼100 万円 14.4%(12.2%)、100∼500 万円 11.7%(20.8%)等となっており、広島よ
りも予算規模の小さい団体が多い。
○活動していて感じる問題点(複数回答)
活動資金が足りない 29.2%(29.2%)、活動する人が少ない 30.0%(28.1%)、情報・助
言が欲しい 18.7%(15.3%)、活動場所がない 11.3%(11.5%)、無回答 28.8%(42.4%)
等となっており、資金、人材を問題と感じている団体がやや多い。
○活動していて特に感じる問題点
活動する人が少ない 14.8%(24.3%)、活動資金が足りない 14.4%(21.2%)、活動場所
がない 6.2%(3.1%)、無回答 56.0%(39.9%)等となっており、人材や資金など活動上
の問題点をあまり感じていない団体が多い。
○行政との関係の持ち方
ケースバイケースで考えたい 39.7%(36.8%)、積極的に関係を持ちたい 28.8%(36.5%)、
ほどほどの距離のある関係を持ちたい 12.1%(11.8%)、必要外の関係を持ちたくない 8.2%
(7.6%)等となっており、積極的に関係を持ちたいという団体は 3 割に満たない。
○企業(商店)との関係
協力は必要ではない 30.4%(27.1%)、活動資金の寄付 21.4%(25.0%)、場所の提供
16.3%(16.3%)、企業の広告 6.2%(8.7%)等となっている。また、企業から協力を受け
たことが「ある」が 62.8%(64.7%)、「ない」が 35.4%(30.7%)と、広島と比べて全体
的に消極的である。
○必要な社会的支援
社会的認知がすすむこと 39.7%(37.8%)、情報交換する場づくり 29.2%(33.7%)、資
金援助の仕組 28.8%(33.7%)、企業からの寄付 15.6%(20.5%)、安い事務局スペース
15.2%(19.4%)、ボランティア紹介情報や機関 12.8%(17.7%)、無回答 25.7%(33.7%)
等となっており、社会的認知がすすむことが最も必要と考える団体が多い。
4
広島と全体的に比較してみると、市民活動自体が小粒で未成熟かつ消極的な印象を受け
る。また、大きな問題を抱えている団体が少ない。これは活動がうまくいっているからと
考えることもできるが、小規模で仲間内の現在の活動で十分であるとして、活動の発展を
考えていない結果とみることもできるかもしれない。だとすれば、課題が少ないことは必
ずしも好ましいことではなく、仙台市における多くの市民活動の成長限界を示していると
みることもできよう。
エ.市民活動に対する市民意識
当機構が実施した仙台市民意識調査によれば、現在参加しているサークル活動やボラン
ティア活動は、「ゴミ減量やリサイクル推進」、
「文化・芸術や趣味」、「スポーツや健康づく
り」がそれぞれ 16%程度と多く、今後参加してみたい活動として、「スポーツや健康づく
り」、「高齢者の支援」、
「文化・芸術や趣味」、
「自然や環境保全」等が回答者の 1/3 を超え
公益性の高い活動も含めて市民が様々な活動に対して潜在的な参加意欲を持っていること
が判る。また、ほとんどの項目において前年の回答率を上回っており、市民活動等への参
加、ないし参加意欲が拡大しつつあることが窺える。
表1-1
サークル活動やボランティア活動の現状と意向(複数回答)
現在参加している
今後参加してみたい
平成10年度 平成11年度 平成10年度 平成11年度
スポーツや健康づくり
15%
16%
34%
40%
高齢者の支援
5%
6%
34%
39%
文化・芸術や趣味
15%
16%
35%
38%
自然や環境保全
5%
7%
29%
35%
災害救援・地域安全
4%
32%
ゴミ減量やリサイクル推進
15%
17%
25%
31%
障害者の支援
4%
5%
27%
31%
ボランティア活動支援
6%
29%
学習会など勉強
7%
6%
21%
25%
文化・芸術・スポ−ツの振興
5%
25%
国際交流や国際協力
2%
3%
21%
23%
子どもや青少年の健全育成
6%
7%
18%
22%
まちづくり
4%
4%
20%
22%
平和推進
2%
20%
育児や子育て
5%
6%
16%
19%
人権擁護
1%
19%
男女共同参画社会の形成
1%
1%
16%
16%
その他
1%
2%
無回答
62%
59%
27%
22%
平成 10 年度 N=2,304 人、複数回答
平成 11 年度 N=3,004 人、複数回答
5
2
全国における市民活動の先進事例
今回調査を行った事例は、「子縁」を核にした新しいコミュニティ活動やまちづくりの
専門家の助言や協力を得ながら住民主体のまちづくりの進める取り組み、市民活動団体が
ネットワークを組み事業展開を行うことで大きな力を発揮している事例、清掃奉仕活動を
行政との契約関係で位置づける事例などである。いずれも地域に根ざしながらも、従来の
町内会活動などの地縁活動とは一線を画す新しいタイプの市民活動の事例である。
(1)
秋津コミュニティ(千葉県習志野市)
ア.活動の概要
1980 年に誕生した千葉県習志野市立秋津小学校が、1990 年 4 月同市教育委員会より
「生涯学習指定校」となったが、1992 年 3 月解除となることをきっかけとして、同年 1
月にPTAの有志が中心となって地域住民に呼びかけて「秋津地域生涯学習連絡協議会」
を発足させた。その後、児童数の減少に伴い、秋津小学校の空き教室を活動拠点とする
「秋津コミュニティルーム」を開設(1995 年 5 月)し、同協会は「秋津コミュニティ」
に改称された。秋津地域の生涯学習を推進する任意団体として、実質的なメンバーは役員
10 名ほどである。秋津コミュニティルームの運営は、運営委員会による〈自主、自律、
自己管理〉で、運営委員(7 名)による鍵の貸出し管理利用サークル全員参加の掃除等全
て運営委員会の話し合いにより決定している。「秋津小学校コミュニティルーム」の運営
内容は次の通りである。
・開館時間
朝 9 時∼夜 9 時
・利用団体
29 サークル
・年間利用者数
延べ 12,000 人
・年間経費
約 3 万円(教育委員会予算)
イ.活動の歴史
休館日:年末年始、お盆
地域各種団体
−子どもは地域の宝−
秋津小学校地域には、開校当時から子ども達を「地域の宝」として見守る地域住民の自
主的活動があった。学校に直接関係のないこれらの地域住民の姿から刺激を受け、学校へ
子供を通わせている家庭のお父さん達にも何かをしたいという想いがあった。そこで 91
年当時のPTA会長である岸氏(現秋津コミュニティ会長)が「気軽に参加できる舞台と
踊りやすい脚本があれば」お父さんたちもPTA活動へ参加するに違いないと考え、とり
つきやすいきっかけとして最初に始めたのがうさぎとにわとりを飼育する「飼育小屋」で、
これがきっかけとなり、様々な活動が行われている。
・秋津小学校PTA創立十周年記念事業「飼育小屋づくり」(1991 年)
40 万円の予算で設計から資材調達、工事、竣工式にいたるまで 40 余名のお父さん達が
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毎週土日を利用して飼育小屋を作った。
・創作・秋津オペレッタ(1992 年)
生涯学習研究発表として「飼育小屋づくり」を題材とする、オペレッタを子どもから大
人まで 432 名による参加で上演した。脚本、演出、音楽全てお父さんやお母さん達による
ものである。翌年、地域劇団「蚊帳の海一座」が旗揚げされた。
・授業としてのクラブ活動への地域住民参加(1992 年から)
土曜日のクラブ活動に 40 名の地域の大人達が参加し、子ども達と一緒に楽しんでいる。
大人のサークル活動だった陶芸クラブを子どもたちのクラブ活動に取り入れたり、将棋ク
ラブには、定年退職を目前にした指導員の資格をもっているおじいさんが参加する等、先
生方では十分対応しかねている分野へ、通学児童に関係のない大人も参加することで、秋
津小学校を核とする地域の大人とのつながりも深った。
・低学年用図書室「ごろごろとしょしつ創り」(1994 年)
「飼育小屋づくり」で楽しみを味わったお父さんたちによる手づくり図書室。低学年図
書担当の先生の「もっと子どもたちが本を好きになってほしい」という想いを、お父さん
たちが実現させた。
・学校づくりからまちづくりへ
工作クラブへ参加しているお父さんたちの発案により、バス停留所のベンチ作りを行う
など、学校内活動から地域のまちづくりへと更にその活動の興味を拡げつつある。
エ.特徴
主な特徴は①学校の施設開放による「学校と地域社会が融合した教育」の実践②地域は
人材の宝庫と認識して、地域住民・PTAがクラブ活動への参加からまちづくりまで活動
が発展してきたこと③地域イベントから発展して、授業への応用展開を図る試み④学校施
設の地域開放による社会教育化から地域防災とまちづくりに発展していること、であるが、
様々な活動の中でも特に注目されることは、小学校の余裕教室を地域コミュニティルーム
として開放して、学校の中で地域住民との交流が日常的に図れるようにしていることであ
ろう。
オ.考察
地域の大人が、地域の子どもたちと触れ合いを大切にしながら地域コミュニティを形成
し、まちづくりへ発展していったことは、各地域で行われているまちづくりの住民活動の
一つの基本となりうるのではないか。『子どもは地域の宝』の思いが大人達の共通の認識
であり、時代の流れにとともに未来を創造し活動している住民の積極的な姿勢は、行政を
動かすパワーとなっているように思われる。
秋津コミュニティには、市民活動を行う上でのポイントといえるスローガンがある。
7
『人は強制では動かない』、『できる人ができるときに、無理なく、楽しく』、『自主・
自律・自己管理』の 3 つである。行政が何をしてくれるかではなく、住民が何をするか、
どの様にしたいか、の意志をもって活動することにより、行政を動かす市民活動となるの
ではなかろうか。人材はどこにでもあり、それは地域の宝である。共有できる目標をもっ
てそれぞれが行動をおこした結果として、人が育つのではなかろうか。秋津コミュニティ
にはシステムとしての人材教育よりも大切なものがあるように思われる。
(2)さんし会(東京都杉並区)
ア.活動の概要
昭和 50 年前半、蚕糸研究所が筑波研究学園都市へ移転することとなり、その跡地に当
時環状8号線からの公害に苦しんでいた東京都杉並第十小学校(以降杉十小)を移転させ
るため、昭和 51 年頃から、同小学校のPTAはバザーによる資金集めや各種懇談会出席
など様々な活動をおこなった。
そして昭和 61 年度に、杉十小はグランドを防災公園、プールを区民プールと兼用にす
るなど、塀のない地域に開かれた学校(コミュニティの拠点)として開校された。
その中で、移転当時 PTA 会長であった小池曙氏が、当時特殊な形態であった杉十小とそ
の環境を守りたいと考えて、参加の期間が限定されるPTAではなく、永続性のある地域
住民主体の組織と地域活動の方策を模索した。当初は既存団体(青年会)の協力を得て活
動をおこなっていたが、ほどなく、既に個々に活動をおこなっている人々の存在を知り、
それらの人々を中心に、サポーター的な人を含めてごく短期間に約 50 名の賛同者を得、
昭和 61 年9月第1回発起人会を開いて『さんし会』を立ち上げた。
平成 11 年7月現在、正会員 52 名、賛助会員 12 名、団体会員2団体。
「さんし会」現在の主な活動は以下の通りである。
・月例会〈毎月第2日曜日〉
・公園清掃会〈毎月最終日曜朝〉
・古紙回収(区からの助成金授受)〈毎月第2土曜日〉
・違法駐車防止の協力員活動〈毎月第2、第4金曜日〉
(区からの委託事業(無報酬)、和田三丁目西町会との共同事業)
・「蚕糸の森まつり」参加(毎年3月最終日曜日開催)
・サークル活動(コーラス「すずらん会」)〈毎週水曜日〉
・区より管理を委託されている事業用地(不燃化促進に伴う移転等で余ってし
まい、利用が未定な宅地など)9カ所における「ガーデン作業」
・ 防災、各種まちづくり等のシンポジウム、フォーラムその他各種集会への
参加〈年2∼3回の区内及び近隣の区で実施〉
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・その他友好団体との交流
・「さんし会だより」〈毎月 1 回〉発行(行政に対しての手紙を兼ねる)
イ.特徴・特色
本事例の特徴は、既存のコミュニティとは別に新しい目的のために地域活動組織を設
立・運営しているところである。もう一つは、先進的な小学校を含んだ防災公園を地域の
核として、ガーデン作業や防災協力員活動など、地域住民自らが自分の住んでいる地区の
環境改善活動に参加する場を確保しているところである。
ウ.問題点・課題
本事例は設立から十数年経過し、設立当時からのモチベーションを高いレベルでどう維
持するかが現在の大きな課題となっているようである。
エ.考 察
杉並区が『さんし会』の成功パターンにとらわれず、地域における様々な事情や要因に
あわせて「まちづくり公社」を通し、広く柔軟な支援を区全体に展開している点は特筆す
べきであると思われる。
また「知る区ロード」事業という、市民参加のまちづくり以前に、もっと住んでいる街
に関心を持ってもらおうというイベントを通して、住んでいる街に対する意識レベルの底
上げが行われている。このイベントの運営は役所サイドで行っており、市民参加を意識
(前提と)せずに街に関心を持ってもらうことは、様々な意識のレベルがある住民に幅広
く働きかけるための有効な事業ではないかと考えられる。
『さんし会』の活動自体は、小学校を中心とした複合施設の生活環境維持等を主体とし
たテーマコミュニティとして発足した。しかし、現在の活動内容は多岐にわたり、一般の
PTA、町会、商店振興会などと重なる部分も多く、共同の活動も多く見られる。また、既
存のコミュニティとの共存もはかられており、地域に根を下ろした新しい形、新しい世代
の活動団体であるとの印象が強い。
(3)玉川まちづくりハウス(東京都世田谷区)
ア.事業の概要
「玉川まちづくりハウス」は 1991 年に設立された住民のボランティアによるまちづく
りを手伝う専門家組織の第1号である。この「玉川まちづくりハウス」の誕生は、地域の
住民と専門家の出会いがあったことが、大きなきっかけになったということである。その
専門家とは、現在全国的に市民活動を指導している世田谷在住の林泰義氏などである。
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当時、世田谷区ではまちづくりの方法について、住民、行政、企業などの各団体の「新
しいまちづくりのあり方」を検討するため調査した結果、「住民参加」から「住民主体」
のまちづくりに転換する必要があることの結論を得たと云うことである。それは、アメリ
カのNPOのように、住民のボランティアによるまちづくりを手伝う専門家組織が必要で
あると結論づけられ、玉川まちづくりハウスは林氏などの専門家の協力のもと、スタッフ
3名によってスタートした。1999 年 12 月、特定非営利法人の認証を受け、2000 年 2 月現
在、正会員 22 名、ニュース会員 159 名となっている。
イ.事業開始および収支
1991 年に事業がスタートし、現在スタッフは 7 名(うち一人は専従スタッフ)。1995
年度事業収入は 163 万円。内訳は①各種財団からの助成金および寄付金(約 27 万円)、
②委託調査費・研修会企画運営費・講師料・活動報告資料販売収入(130 万円)、③会費
および寄付金・その他(約6万円)ということである。①の中身は、世田谷まちづくりフ
ァンドからの助成、日本建築士会からの受賞金で、これらは継続的に受けることの出来な
い収入である。②は、行政やその他の組織から委託調査を受けたり、ワークショップの企
画・運営で得た収入である。現在、法人格を得ていないので、直接委託を受けられないが
近く申請するということである。③は会費が殆どであったが、1996 年度は活動記録の販売
で、100 万円の収入を得たということである。
運営は、スタッフの個人的な負担で成り立っている部分が大きい。事務所は家賃や光熱
費はスタッフの持ち出しで、専従スタッフは給与を若干得ているが、非常勤スタッフは全
てボランティアである。経費は通信費、コピー代、消耗品費、フィルム写真代などとなっ
ている。
ウ.活動事例
・ねこじゃらし公園
世田谷区奥沢七丁目公園のことで、本格的な住民参加の方法で作られた公園である。当
初 1986 年に近隣小、中学校のPTAや地元有志で地上を広場形式の公園にし、地下温水
プールを備えたものの請願を区議会に提出したのが始まりで、1991 年、玉川まちづくりハ
ウスの設立と同時に玉川給水所のコンペに地元住民案を作成して入賞し、その後、「あり
きたりではない公園」づくりをするため、5 回のワークショップ活動などを経て完成した。
その後、その管理を区から委嘱されて現在に至っているが、いま、全国各地で住民による
公園づくりが行われていて、この「ねこじゃらし公園」活動が参考になっていると聞く。
・コミュニティ・ガーデン
公共施設の建設予定地を着工までの間、「花と緑を育てる」場所として地域の市民団体
が借りうけて地域の憩の場として管理・運営するというもので、玉川まちづくりハウスも
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活動に関わっている。
この外にも、高齢者住まいの点検、玉川デイ・ホーム基本設計、地区計画づくりなどの
活動を行い、これらの活動によって得たノウハウを一般地域住民等へ提供している。しか
し、基本的にこれらの活動は、無理にしかけてもうまくいかないことから、機が熟するの
を待って一つのプロジェクトとして取り組んでゆく、ということが前提になっているとい
うことである。
エ.考察
東京都世田谷区は、現在全国各地で市民活動を指導している計画技術研究所の林氏がい
る地であり、同氏は当然この地域でも指導しており、市民活動の先進地となっている。
「玉川まちづくりハウス」も林氏の指導のもと今日に至ったということであるが、この外
にも地元に住む多くの専門家が地域のまちづくりに関わっているということである。
活動を通して得たノウハウを売って資金源にしたいと考えているが、現時点では行政関
係からの委託や助成に頼っているのが現状であり、まちづくり活動の自立の難しさが窺え
る。
市民活動は、行政、企業、住民が一体になった活動でないと難しいということの理解の
上に立って考えたとき、住民が攻撃的または主体的に活動するためには、住民自体も行政、
企業に対して戦略、戦術をもって働きかけることが必要なのではないか。「玉川まちづく
りハウス」の機が熟するのを待つのも一つの戦略であろうが、世の中の動きをいち早く察
知して動くこと、布石をしておくことも大切であり、市民活動先進地の今後の動きに注目
したい。
(4)真野まちづくり推進会(神戸市長田区真野地区)
ア.歴史と背景
−「下意上達」による住民運動と「真野地区 20 年将来構想」−
昭和 40 年からの公害反対運動に端を発した真野地区の住民運動が、公害反対運動にと
どまらずにまちづくりを行う住民活動へと発展した背景には、当時のリーダーであった
(故)毛利芳蔵氏のスローガン「上意下達ではない、下意上達による真野地区住民意識の
変化」がある。「市長に何を言ってもやってくれないから、我々はやっているのだという
ことをみてもらおう」という真野のまちづくり運動は、昭和 40 年代前半の「公害追放運
動」後半の「子供の遊び場づくり」、昭和 50 年代前半の「地域医療、地域福祉」後半の
「まちづくり構想」へと発展し、昭和 56 年 7 月、「真野地区 20 年将来構想」によるまち
づくりが始まった。また、20 年後のまちづくりを支える人材育成の場として、真野同志
会が結成された。昭和 45 年に創刊された機関紙「かるも」による企画、「町づくり学
校」では、専門家(大学教授、研究者)による学習会や実践活動を行っており、研究者の
11
調査研究の対象ともなっていた。昭和 56 年に神戸市が「神戸市地区計画及びまちづくり
協定に関わる条例」を制定したが、「真野まちづくり推進会」は同条例によるまちづくり
協議会として最初に認定され、現在に至っている。
イ.活動内容
・構成人員
80 名
(平成 11 年度)
・事業費
80 万円(市補助金 50 万円、自治会補助 30 万円)
月1回定例会を開催し、地域のまちづくりの課題についての検討会議が行われている。
従来は定例会の他に事務局会議や役員会も行われていたが、近年は大きな課題もなく地域
的にも落ちついてきたということで、現在は定例会だけとなっている。現在の主なテーマ
は、公園改修と地下鉄関連事業に関することで、その他地域内の建築行為については、そ
の都度検討を行っている。年間行事としては、春の花まつり、夏は盆踊り大会、冬のチャ
リティ寒もちつきのイベントが、継続して行われている。地元企業は、イベントに協賛・
参加のかたちをとっている。現在では震災後完成した「地域福祉センター」を運営する母
体として「真野ふれあいまちづくり協議会」があり、地域各団体による活動を通して子ど
も達の参加を図り、その参加実践を通した人材育成が行われている。役員間でさぼりがち
の人には、地元の店で酒を酌み交わしながら怒ったり、情報交換をする等してコミュニケ
ーションを図っている。
「真野まちづくり推進会」と行政の関わりは、情報収集や政策提言等まちづくり協議会
に認定された立場を充分に活用して行政を動かしている。その例として、ほぼ要望通りの
「地域福祉センター」がつくられた。
このように積極的な真野住民活動は、まちづくりを推進していく行政にとっても、事業
の展開をスムーズに行えるようにしているのである。
図 1-1
様々な機能が集積している「地域福祉センター」
12
ウ.今後の事業計画と課題
「真野地区 20 年将来構想」のもと、地域住民中心のまちづくりを進めてきた真野地区
も、既に安定期に入っている。今後、特に大きな課題がない状況の中で、その活動の中心
はやはり高齢化対策、老人福祉の方向へ向かっている。「地域福祉センター」の中にディ
サービスセンター、高齢者住宅、児童館がある。近くにはコレクティブ住宅があるなど、
子どもも高齢者も地域の全ての人々が集まることのできる空間は、その課題もクリアでき
るコミュニティとして今後注目されるのではないだろうか。
エ.考察
長田区においては、南部の丸山地区と北部の真野地区が共に住民運動の先進地として注
目されていたが、真野地区においては住民運動が「真野20年構想」というまちづくり計
画を建てたことにより、それまでの住民運動が住民活動によるまちづくりへと移行し、住
民活動が地元に根づいたものと思われる。計画に基づき、目標のある住民活動は、行政側
もまちづくり事業を展開するモデル地区として好都合だったと言える。住民と行政の目標
がうまくかみ合い、住民主導にする事がより良い事業展開ができるケースとして掲げられ
る事例である。行政と住民のパートナーシップは、お互いを信頼して、お互いを上手く活
用しながら歩むことが大切である。計画性のある地域住民活動では、行政に対する単なる
陳情にとどまらないため、行政としても目的のある支援に加えて、まちづくり事業として
積極的に取り組むこととなったものと思われる。住民活動では、行政の支援に頼ることよ
りも、活動目的を鮮明にして行政が共に取り組みたいと思わせることのできるものにする
ことこそが、行政とのパートナーシップが組める住民活動と考えられる。
(5)有限会社真野っこ(神戸市長田区真野地区)
人員構成
代表取締役
宮西悠司
従業員
1名
事業概要
阪神大震災災害本部の解散に伴い、その機能を維持し、タウンマネージメントを行う組
織として 1995 年 11 月に設立した。法人としたのは、責任が地域住民に及ばないようにす
るためである。事業収入は、機関紙「真野っこがんばれ」の売上によるものだけあり、復
興基金を取り崩して運営経費に充てている。当初の目的は、地域のまちづくり活動の事務
局機能を果たすことを想定していたが、今のところ目的通りの活動とはなっていない。
課題
具体的な事業のめどが立たないことが最大の問題で、月2回の機関紙発行とバザー開催
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だけでは経費をクリアできる収入にはならず、今後の事業展開が課題となっている。
考察
持続的なまちづくり活動を支えるためには専従者のいる事務局体制が必要、との思いか
ら生まれたNPO的なまちづくり会社「真野っこ」だが、運営資金という大きな壁を前に
経営は頓挫しつつある。地域限定ゆえに幅広い支援が受けられない状況にあり、住民主体
の地域まちづくりは企業や商店等に直接的なメリットが少ないため資金協力は得られない、
という厳然たる事実が「真野っこ」にはあるように思われる。
(6)アドプトシステム
アドプトシステムは、1985 年にアメリカのテキサス州で「アドプト・ア・ハイウェ
イ」として始まったシステムである。アドプトとは、養子縁組のことで、住民団体や企業
が「里親」になり、ハイウェイの一部区間を「養子」して引き取り道路の清掃や植栽の管
理を担い、行政側はその見返りとして団体名を記した看板をハイウェイ沿いに立てる。
行政にとっては経費節減になり、企業や団体にとっては社会貢献を具体的にアピールで
きるので、双方にメリットがあるシステムである。全米においては 48 州で導入され、約
130 万人のボランティアが参加している。ここでは、国内における先進事例として「アド
プト・ア・ハイウェイ神山会議」(徳島県神山町)を紹介する。
ア.事業概要
徳島県が神山町につくる国際文化村に対し、住民主体の内容提案ができる組織として
「国際文化村委員会」を設置した。委員会では国際文化村にふさわしいまちづくりについ
て度重なる議論を重ねた結果、町内に散乱しているごみ(観光客の置き土産)が問題とな
った。その解決策としてアドプトシステムの導入を行うこととなった。町内の国道を管理
している県に対し、構想を示して理解を求めたが、看板設置について当初理解されなかっ
た。そこで神山町では国際交流協会、青年会、ライオンズクラブ、商工会青年部等からな
る「アドプト・ア・ハイウェイ神山会議」を結成し、平成 10 年6月に4団体、8㎞でス
タートした。事務局は神山町環境課に設置され、平成 12 年1月現在、11 団体3企業の参
加により 29 ㎞の国道、県道、町道の清掃を行っている。平成 11 年 10 月には神山会議で、
徳島県と神山町がアドプト覚書調印「徳島県OURロードアドプト事業」がスタートして
いる。
イ.特徴
ボランティア活動でありながら、参加団体が活動内容を行政と契約し、役割分担を明確
14
にすることに特徴を持つシステムである。
・契約期間
最低2年
・活動内容
年6回の作業を義務付ける。(道路上の散乱ごみ、あき缶の収集と看
板の掃除、道路付近の草刈り)
・神山町負担:ボランティア保険、ごみ袋の費用、ごみ処理
*看板設置代 25,000 円は神山会議が負担
ウ.課題
道路上の作業となるため、参加者の交通安全に配慮し、天候や作業条件等を考慮しなけ
ればならない。最初は清掃しても汚されることもあったが、住民の清掃する姿を見ること
により、最近ではポイ捨てに対する抑止効果も出てきている。
エ.考察
最近、このシステムの導入を計画する自治体が全国に広がっているが、これは必ずしも
行政が主体となって取り組むべきシステムではないのではないか。神山町で成功したのは
国際文化村づくりを住民主体で行いたいという住民の意識がそのベースにあったからだと
考えられる。このシステムはあくまでも自発的な住民活動を前提としているととらえるべ
きはなかろうか。本事例では、道路管理者である県が前例や条例等を理由に当初看板設置
を認めなかったが、そういった行政の市民の提案に対する姿勢を正すことこそ住民は期待
していることを認識すべきである。
(7)三島グラウンドワーク
事業主体
特定非営利法人グラウンドワーク三島
ア.事業の概要
活動の動機
富士山からの湧水が減少して環境悪化が進行した「水の都・三島」の水辺自然環境の再
生と改善を目的とする市内の各種市民団体が中心となり、1992 年 9 月「グラウンドワー
ク三島実行委員会」を結成。市内の各種市民団体が現在までにそれぞれに検討を重ねてき
た街づくり計画や地域の環境改善計画を調整し、相互に連携を取った魅力ある街づくりを
推進するために、地域総参加(市民・行政・企業によるパートナーシップ)による市民活
動として、イギリスで始まったグラウンドワークトラストの事業手法を活用し、地域の環
境改善の実現を図る。
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活動の経緯
1992 年、三島ホタルの会が中心となり「花とホタルの里づくり」〔新谷地区〕に着手。
このとき、三島青年会議所、三島ゆうすい会などが参加するなどグラウンドワークの下地
が出来る。今までばらばらに活動してきた市内の 15 団体がネットワークを図り 1992 年 9
月「グラウンドワーク三島実行委員会」を設立。1999 年 10 月に NPO 法人の認証を受ける。
特定非営利法人グラウンドワーク三島に改称。
活動内容
●地域環境改善事業の推進
・市民提案型
ア)「中郷地域の農業用水親水公園化」
未整備で土水路となっている農業用水路を親水公園として整備し、子供達が魚取りや川
遊びができ、また、ホタルが乱舞する「春の小川」の建設整備の実現に向けて、勉強会や
検討会を開催して、基本計画の取りまとめを行う。
イ)「桜川・御殿川周辺桜小路の再生整備」
赤橋を通る桜小路と鮎川を周遊する通りを水辺の接待茶屋、民芸館、石畳、水飲み場等
の設置により「歴史とせせらぎのある小路」として再生整備し、市内中心部の観光スポッ
トとする構想実現へ向け、勉強会や基礎調査等を実施する。
・市民手作り事業型
ア)「花とホタルの里づくり」
市内各所にある休耕田を選定、活用して、農業用水を浄化誘導することでホタルの住む
環境づくりを進めるとともに、市民手作りによる自然環境教育園の建設を目指す。また、
四季折々の花々が楽しめる花の里も建設し、都市住民と農村との交流の場を整備する。ま
た、市内各所にあるホタルの生息が可能な湧水池を選定し、地域住民と協力しての「ホタ
ルの里づくり」を推進する。
「新谷地区・花とホタルの里づくり」(継続地区・H5 年度∼)
「竹倉地区・ホタルの里づくり」(新規地区・H9 年度∼)
「沢地地区・ホタルの里づくり」(新規地区・H9 年度∼)
「山田地区・ホタルの里づくり」(新規地区・H11 年度∼)
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イ)「三島梅花藻の里づくり」
水の都・三島から消滅してしまった故郷の宝物である三島梅花藻を再生、復活するべく、
佐野美術館湧水池を借地して、増殖基地と観賞場所の整備を進める。また、上流地点にあ
る雷井戸に対しても、周辺の環境整備を行う。
さらに、市内湧水水河川(源兵衛川・桜川等)や湧水池への移植を行う。
「南本町地区・三島梅花藻の里づくり」(継続地区・H7 年度∼)
「菰池公園・三島梅花藻の里づくり」(新規地区・H9 年度∼)
ウ)「市民手作りミニ公園」
市内各所にある三島市や個人所有の遊休地を選定して、町内会やPTA・子供会・婦人
会等周辺住民の参加を要請して、ミニ公園、世界のお花畑、遊び場等市民自身の創意工夫
による活用方法を検討、協議し具体的な建設・整備事業を行う。
「沢地地区・グローバルガーデン」(継続地区・H5 年度∼)
「鎧坂地区・花と緑と憩いのミニ公園」(継続地区・H5 年度∼)
「錦田小地区・ふれあいワーク」(継続地区・H6 年度∼)
「東壱丁田地区みどり野ふれあい園1」(継続地区・H7 年度∼)
「東壱丁田地区みどり野ふれあい園2」(新規地区・H9 年度∼)
「沢地地区・子供水辺自然観察園」(新規地区・H9 年度∼)
「広小蕗地区・線路沿線花のミニ公園」(新規地区・H10 年度∼)
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エ)「フラワー通り演出」
地域住民総出の体制(ワンディチャレンジ等)により、市民が演出した素敵な水辺・路
地・憩い空間の創出を目的に、環境美化活動を推進する。
「桜川・フラワー通り」(継続地区・H6 年度∼)
「一番町地区・鏡池周辺フラワー通り」(新規地区・H9 年度∼)
「御殿川沿いフラワー通り」(新規地区・H10 年度∼)
オ)「故郷の宝物・再生事業」
水の都・三島に昔からあり歴史的に貴重な史跡、建築物、湧水池、水神さん等を対象に
して、市民総出での再生、保全活動を行う。
「菰池地区・鏡池湧水池再生事業
」(継続地区・H6 年度∼)
「市内各所・川端再生事業」(新規地区・H7 年度∼)
「南本町地区・水神さん再生事業」(新規地区・H9 年度∼)
・環境教育型
ア)「環境教育の実践」
川の自然観察、川辺を歩く会、水の勉強会、自然観察会、環境かるた等による子供達への
環境教育を実施し、環境に対する子供達の関心と興味を誘発する。また、子供達を中心と
した「環境改善ボランティアグループの設立」を図り、河川清掃や改善活動等ボランティ
ア活動への参加の拡大を図る。
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●視察・研修会の実施
全国各地の先進的な街づくり活動、地域環境改善活動を展開中の市民団体等との相互訪
問による視察研修、情報交換・交流会等の企画や成功地区(滋賀県甲良町、横浜市、奈良
まちづくりセンター等)の視察、研修を実施する。グラウンドワーク三島の視察受入は年
間 50 件余。
※視察受け入れ方法
市民側の活動状況の視察研修の場合
グラウンドワーク三島事務局と連絡調整し、視察意向申込書、視察受け
入れ通知書に必要事項を記入し、事務局へ申し込む。
対応日時
原則的には毎月土日祝祭日の午後。
対応時間は 3 時間(現地視察含む)程度を限度とする。
平日の場合は午後 7 時以降日程調整により対応可能。
経費
資料代・・・1,000 円/部(パンフレット、活動計画書など)
説明代・・・5,000 円/時間(コアスタッフ 1 名以上で対応、OHPな
どで現在までの活動状況の説明、質疑応答、現地案内など
を含む)
●広報・啓発活動の実施
グラウンドワーク事業に対する市民の関心と理解を深めるために、シンポジウム、セミ
ナー、地域住民との勉強会(出前地域グラウンドワーク勉強会)、パネル展、広報紙(グ
ラウンドワークニュース)の発信、インターネットによる発信、ホームページの開設と更
新等の意識啓発活動を行う。
●財団法人日本グラウンドワーク協会との連携
日本におけるグラウンドワーク事業の実現を目指し「財団法人日本グラウンドワーク協
会」が設立された。そこで、日本で最初にグラウンドワーク事業手法で地域環境改善事業
を推進している本会が協会との連携を図り、その指導・助言のもと、本部と整合性の取れ
た事業展開を進める。また、「全国グラウンドワーク・ネットワーク会議」の連絡室とし
て、全国各地の市民団体との情報交換、交流の場の設定や調整を行う。
●スタディセンターの整備と事務局体制の整備
他地区からの視案、事務業務や事業調整の増大等に対応するために、平成 8 年度に開設
したスタディセンターの機能強化と事務局員の継続雇用を行う。
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●活動マニュアル・ビデオ・プロジェクトファイルの作成
現在までの各地域改善地区の活動概要を、「グラウンドワーク三島実行委員会活動マニ
ュアル」として冊子化してまとめる。また、各活動地区の事業経過を紹介する「プロジェ
クトファイル No.3、4、5」、「三島版グラウンドワークのおすすめ」パンフレットの作
成や、これまでの活動を紹介する「ビデオ」を作成して、他地区におけるグラウンドワー
ク活動の参考資料に供する。
●組織
全体会・理事会・スタッフ会議を設けて、各地域改善プロジェクトを推進する。
参加団体 15 団体(三島ゆうすい会・三島ホタルの会・(社)三島青年会議所・宮さん
の川を守る会・グローバル文化交流協会・中郷用水土地改良区・21 世紀塾・ワイズメン
ズ三島クラブ・建築文化研究会・大通り商店街活性化協議会・源兵衛川を愛する会・桜川
を愛する会・三島商工会議所・三建会・富士ビレッジ楽しいまちづくり委員会)
特徴
「水」・「環境」をキーワードにした、市民が主役のまちづくりである。様々な切り口
でまちづくりに住民が関われる機会を提供している。「市民内発型」の市民活動であり、
そこに行政や企業を取り込み、三者による地域総参加の体制づくりを進めたことが、大き
な特徴である。
ウ.考察
6 年間で 22 カ所の地域環境改善事業の推進、視察・研修会の実施、広報・啓発活動の
実施、活動マニュアル・ビデオ・プロジェクトファイルの作成に取り組んできた。
その結果、水辺自然環境の回復と保全体制の整備、自立した市民の育成、行政や企業との
信頼関係等が実現し、多くの視察者を受け入れるなど、全国的にも新しい市民組織のリー
ダー的存在に成長した。6 年間の実績をふまえ、組織と活動のより以上の継続性と永続性
を確保するため、特定非営利活動法人(NPO)の法人格を取得した。今後は、核となる
コア・スタッフ 1∼2 名の全国公募、行政との新たな関係の構築、受託事業への模索など、
新たな展開が予想される。
20
3.市民活動の課題
(1)財源の問題
市民活動の最大の課題として財源の問題がある。活動目的や使命感が明確であり、継続
的な活動を追及すればするほど片手間の仕事ではなくなり、専従で組織活動に従事する専
門のスタッフや活動拠点となる事務所が必要となる。このうち、事務所については、協力
者や会員個人のオフィスの一部を格安、あるいは無料で提供してもらうということがある。
しかし、マンパワーはボランティアだけでは多くの場合やはり困難が伴う。活動の自立と
財源の自立は不可分の関係にあるといえるが、全国的にみてもNPOをいわば企業経営的
に成功させているところは極めて少ないのが現実である。
今回調査を行った全国的にも最先端の事例といえる神戸の「真野っこ」や世田谷区の「玉
川まちづくりハウス」を見ても、あるいは後述するTMOの事例を見ても、地域に密着し
た市民活動やまちづくり活動を経営的に成立させることの難しさが見て取れる。
補助金等をあてにせず、安定した活動のできる自主財源を持ちたい。例えば、用地買収
後建設されることなく放置されている公共用地を借りて駐車場経営を行えれば、という話
を「真野っこ」で聞いたが、同じように、道路を使ってイベントをしたり、公園を借りて
フリーマーケットを行いたいなどのアイディアは市民活動では良くある話で、遊休化して
いる社会資本やデッドスペースを有効に活用して公益活動の自立を促すという意味で一考
に価するように思う。これは空き店舗の活用にも一脈通じるものがある。
黙っていてももらえるいわゆるシットダウンマネーや直接的な補助金よりも、むしろこ
ういった自助努力を促す支援の仕組やアイディアが市民の側から提示されることこそが必
要なのではないか。アダプトシステムには金銭的関係はなかったが、契約により役割分担
をするという発想の次の段階としては、例えばある公園を無償で管理委託契約を行い、そ
の除草、清掃、メンテナンス等を行う代わりに、そこを活用して受託者が公地利用にふさ
わしい,一定の公益的または社会貢献的事業を行い、収入を得るということもあり得るの
ではないか。事業収入をNPO活動に再投資していくということが明確であれば、理解さ
れうるように思うがどうだろう。
ただし、このような関係をむすぶためには、単に契約を結べば良いというものではなく、
当然のことながら、契約の相手方が信頼のできる相手であり、かつ、契約の内容を確実に
遵守、履行できる相手でなければならない。そう考えた場合、例えば多くの町内会等の地
縁団体、活動目標や活動内容が次々に変わっていく団体、活動に継続性がない団体、会員
数が少ないなど、活動に実態が伴わない団体は排除されざるを得ないだろう。
NPO法人「シーズ=市民活動を支える市民の会」事務局長の松原明氏は「行政のパー
トナーたりうる市民活動」の基準として、事業収益や寄付金、会費収入の広がりがどの程
度あるかを、市民活動の質を見る目安として挙げており、活動実態を見て判断していくこ
21
とが必要としている。つまり、行政のパートナーとしての市民活動の判断基準としては、
NPO法人格を有することはあまり意味を持たないといえる。
こう考えると、市民活動団体の成熟と委託契約の例で示したような形での市民への権限
移譲はなかなか難しく、徐々にしか進まないとみて良いだろうが、市民活動の財源を考え
るための柔軟な支援という意味で、検討できるのではないか。
因みに、名古屋市にあるNPO法人「中部リサイクル運動市民の会」は常勤スタッフ
22 名、年間事業規模は 2 億円であるが、その中核事業は名古屋市と協力して名古屋市栄久
屋大通公園等で定期的に開催するフリーマーケットとのことであり、日本でも可能な考え
方ということができよう。
また、この「市民の会」や長浜市の「黒壁」を考えると市民活動のマネージメントの重
要性が良く判る。企業経営者、あるいは起業家的な資質が市民活動の成長と自立を考えて
いく上では不可欠の要素である。こう考えると市民活動に企業経営や営業、経理といった
実務能力を持った人がもっと関わっていくことも課題の一つといえよう。
(2)仙台市における市民活動の課題
市民活動の活動規模が小さく、存立基盤が脆弱で経営資源の乏しい市民活動ではあるが、
そのことをもって直ちに課題とはいえないし、その状況は特に仙台に限られたことではな
い。仙台市における市民活動を総じて捉えれば、およそあらゆるタイプの市民活動が既に
存在し、行政の支援の手も差し延べられつつあり、ボランティア活動をしてみたいと思え
ば、そのための情報が得られ、自分たちで始めたいとおもえば活動助成も受けやすい状況
ができつつある。その意味では全国的にも恵まれた環境にあるといえるだろう。
市内に事務所を置くNPO法人を見ても、福祉活動等を行う数多くの草の根市民団体が
既に認証を受けている他、NPO活動を支援する「せんだい・みやぎNPOセンター」、オ
フィス古紙のリサイクルを推進する「けやきオフィス町内会」、日本型シニアセンターの確
立を目指す「シニアのための市民ネットワーク仙台」など、多様で先進的な活動があるこ
とが判る。また、NPO法人の認証を受けた団体のうち、いくつかの団体の代表者に大学
教授が名を連ねており、市民活動をリードする指導者にも恵まれている地域ということも
できる。
しかしながら、広島の活動団体との比較でみたように、全体的に活動が小粒で未成熟な
印象を受けること、活動の成長志向が乏しいことはやはり気がかりな点である。また、例
示した団体はいずれもここ数年の間に当地で生まれたもので、未だに社会的認知が高いと
はいえない。つまり、全国的にも知られるような新しい先進的な市民活動がある一方で、
数こそ多いものの大多数の市民活動は小粒で未成熟な段階に留まり、さらに、圧倒的多数
の市民は今後活動してみたいという意欲はあるものの現実的には傍観者に過ぎない、とい
う三層構造である。
22
市民活動を見る市民の意識や住民運動に対するアレルギーを潜在的に持つ行政や企業の
意識、そして、市民活動の未成熟性や土壌の薄さをいかにして克服していくかが大きな課
題といえよう。市民意識調査に見られるように「今後活動してみたい」とする層は多い。
この層をいかにして具体的に活動につなげるか。また、その受け皿にふさわしい市民活動
が増えていくか。いずれにしても、この層が本格的に活動を開始したときに、ボランティ
アや社会貢献活動が当たり前にできる自立した市民社会が訪れるといえるだろう。
(3)企業や事業者との関係
三島グラウンドワークは 15 の市民団体と 16 の企業がそれぞれのコアコンピタンス(中
核的経営資源)を持ち寄ることにより大きな力を発揮していることに大きな特徴があった。
また、秋津小学校の事例でも飼育小屋づくりに多くの職業人としての父親がそれぞれの能
力や経営資源、例えば原材料といった資材、設計や左官等の技術、建設機械などをそれぞ
れが提供し参加していた。翻って仙台の状況をみると、MIMINet のように主として企業
人が個人の立場で参加し、それぞれの企業の経営資源を活かすという事例はあるものの、
企業と市民活動という意味ではその関係はやや希薄である。企業の社会貢献活動がイベン
ト時の協賛金だけというのではなく、企業の持てる経営資源を可能な範囲で提供し市民活
動をバックアップしていくこと、更に言えば、企業人としての市民が個人の立場で市民活
動に参加し、個人の能力や所属する企業の経営資源を無理のない形で市民活動に提供して
いくことこそが極めて重要である。
23
第2節
行政の市民活動支援状況と課題
1.市民活動のインキュベータとしての行政
資金助成や活動のきっかけ、活動の場所などで行政がどのような役割をはたしてきたか
先行調査から考察する。
ここ数年の仙台市の市民活動に関する動きは、
“仙台にNPOあり”と全国からも注目さ
れるものがあった。市民活動が自立していくための問題点を正確に把握し、解決の方向を
見いだしてきた。その結果が、せんだい・みやぎ・NPOセンターの設立、仙台市市民活
動サポートセンターの開設、市民活動企画コンペ、市民活動フォーラムという一連の流れ
を作り上げてきたものと思われる。市民活動をインキュベートするという役割を行政と市
民活動団体、有識者等の協働で作り上げてきた事実を評価したい。
ア.仙台市におけるNPO支援・促進に関わる政策の実現過程
仙台市が、市の重要施策として市民活動の促進を検討し実現してきた過程を、簡単に紹
介しよう。
○「仙台NPO研究会」
1994 年大学教授等が設立した自主的な研究会。仙台市が市民活動の支援・促進に力を入
れることを考え、NPOの力を借りるようになったきっかけとなる。この研究会に数人の
仙台市職員が個人の立場で参加していたが、彼らはNPO促進の重要性を認識して、それ
ぞれの部門でNPO促進策の政策化を試みた。市民局地域振興課では研究会に対して「市
民活動支援の促進方策に関する調査研究」を委託して、NPO支援・促進の方向性に関す
る提案を求めた。これに続いて、企画局企画課では仙台市総合計画の策定に際して「仙台
NPO研究会」代表を審議委員のメンバーに加え、「仙台市基本計画」にその重要性と支援
方針を盛り込ませた。
○「市民活動地域支援システム研究会・仙台委員会」
1995 年設立。地域における市民活動の実態と問題を調査しながら、それぞれの地域に
あった市民活動のソフトプログラムをつくり、出来るところで実際に地域の市民活動推進
センターを立ち上げていこうという実践的な目的をもった研究会。広島・神戸・仙台・大
阪に開設された。3 年次の作業期間を設け、その 1 年次には「みやぎの市民活動をつなぐ
ダイレクトリー(名鑑)
」(267 団体)を作成・発行。市民活動地域支援センター(以下「支
援センター」と略)を立ち上げることを目標に市民活動団体の実態調査を行い、市民活動
への社会的支援方策や支援センターに期待する役割や機能についても調査した(1996 年 7
24
月∼8 月に実施)。1997 年 11 月にはNPO研究会と市民活動支援システム研究会・仙台委
員会は他の組織と共同して「せんだい・みやぎNPOセンター」という中間支援組織を設
立したが、その後はこのセンターが仙台市のNPO支援策や関連条例の策定に大きな影響
を与えてきた。
仙台市は、1997 年には「仙台NPO研究会」のメンバーをはじめとする市民活動実践者
や有識者による「仙台市市民公益活動支援策検討委員会」を設置し、翌 1998 年 2 月に 12
項目にわたる支援施策を盛り込んだ提言を得ている(「仙台市の市民活動支援策に関する提
言」)
。この提言を受けて 1998 年 4 月「市民公益活動支援推進本部会議」を、また、地域振
興課内には市民活動に関わる直接の担当係「市民活動係」を設置した。先の支援策の提案
の中でも、
「(仮称)市民活動サポートセンター」の整備は緊急かつもっとも重要な課題と
して採り上げられ、1998 年第 2 回定例市議会において補正予算により整備に着手すること
が決定した。これを受けて、1998 年 5 月、仙台市は、センターの施設内容や運営方針等に
ついて協議するための「(仮称)市民活動サポートセンター整備市民委員会」を設置した。
「(仮称)市民活動サポートセンター整備市民委員会」においても、
「せんだい・みやぎ
NPOセンター」と協議しながら運営方法を決定した。市民委員会は、多くの市民の意見
を施設整備に反映させるため、市民委員会主催の「みんなで考える市民活動サポートセン
ター」を 3 回にわたり開催し、市民から直接意見や提案をもらう機会を用意した。市民委
員会は 10 ヵ月の間に公開で 17 回開催された。市民委員会は最大限の情報公開と幅広い市
民の参加と合意形成のもとで検討を重ねて報告をとりまとめた(「
(仮称)仙台市市民活動
サポートセンターの整備に関する報告」
)。建設場所と建物は行政が決めるものの、その他
の大半を市民委員会の検討に委ねるという画期的なものであった。また、単に施設内容や
サービスのあり方を提示するにとどまらず、市民活動組織自体が管理運営の主体となるべ
きことや、その組線の選定方法にも言及している。そして、その答申にもとづいて建物の
整備と管理運営主体を決める公開コンペのために取組み、公設民営の市民活動サポート
センターが 1999 年 6 月に開設された。
イ.市民活動支援の対象とされている「市民」像
以上、仙台市の市民活動支援体制を年を追って見てきたが、ここで注目したいのはその
根拠となる答申に登場する「市民」像である。
市民活動支援システム研究会が市民活動地域支援センター(以下「支援センター」と略)
を立ち上げることを目標に市民活動団体の実態調査を行い、市民活動への社会的支援方策
や支援センターに期待する役割や機能についても調査した(1996 年 7 月∼8 月に実施)。発
送した対象団体は 1,000 程度、回収数 257 団体。市民活動団体の活動の問題としては「資
金不足」
、「活動する人材不足」をあげている。また回答の中では、市民活動への社会的支
援方策では資金、情報、安い事務局スペース、ボランティア紹介情報・機関などの個別的
25
な要望よりも、市民の参加が増え、活動に対する社会的認知が進むことへの要望が大きか
った。
社会的認知のために、どのような方策が必要であり、かつ求められているのか、を明ら
かにするため、市民活動支援システム研究会はアンケート用紙の自由記入意見を活用して、
社会的支援方策の枠組みをつくった。結果は、「ネットワークづくり」、「資金支援」の 2
つの地域共通方策に加え、広島では「ボランタリーな市民をつくる」
、仙台では「活動をス
テップアップする」、がそれぞれあがり、地域毎に各 3 方策が必要であり、求められている
ことが明らかになった。広島の「市民をつくる」をベースとした「ボランタリーな市民を
つくる」という方策が仙台にないものとして際立っているといえる。これに対して、仙台
で際立つのは「支援システムをつくる」である。これは、ステップとしての方策とでもい
うべきものである。この内容は、
「支援システムとは」と「行政、企業に期待」からなって
いる。「社会的支援方策」においては、「市民をつくる」という広島の基礎的でポジティブ
な方策と「支援システム」というステップ的方策が必要という仙台の漸進的、現実的な対
応が対照的に浮かびあがってくる。
さらに、地域に支援センターをつくるとしたら、どのような役割と機能が必要であり、
市民活動から期待されているのか、を市民活動支援システム研究会は調査し検討した。支
援センターには、「情報交換できるネットワークセンター」、「資金支援」、「行政とのパイ
プ役」
、「宣伝窓口」が有力な役割や機能として期待されている。そこで、社会的支援方策
の枠組づくりと同様の方法で、その機能について分析し検討を加えた。その結果、支援セ
ンターの機能は、一つは「情報」に関連したもの、二つは「人材」について、三つは「交
流と研修」
、四つは「資金支援と活動基盤の整備」、に整理された。
この調査をもとに、
「名鑑」が発行され、またそれに掲載された団体に対して「仙台市に
おける市民活動団体ヒアリング調査」が行われている。
おそらくこれらの団体に所属し活動している市民は市民参加の意識が高く、既に NPO
などの活動を行っている、いわゆるイノベーター(革新者)層に分類される市民が多いも
のと推測される。市民の大半を占める善意のフォロワー(追随者)層は、無言の層として
存在しているが、ヒアリングの対象外であり、実像を十分に把握されてはいない。
市民活動のインキュベータとして仙台市が市民活動支援に力を注いでいることは間違い
ないが、ともすると一部のイノベーター層の意見により、政策が偏ったものになりかねず、
これを防ぎ支援効果を高めるためには,フォロアーのための施策展開が必要かつ重要とな
ろう。
26
2.仙台市における市民活動支援状況
(1) アンケートにみる仙台市の市民活動支援状況
ア.調査の目的
仙台市における市民活動支援事業の取り組み状況や課題等を把握し、今後の取組の方針
を検討する資料とするためにアンケートを実施した。
イ.アンケート実施概要
アンケート実施対象は、仙台市各課・公所 350 件(部相当の空港港湾対策室、博物館、
科学館、市民図書館、中央市民センターを含み、市立病院の診療科等を除く)とし、市民
活動支援事業を実施している各課、公所に回答を求めた。これに対して、58 課・公所から
104 件の事業について回答が寄せられた。以下アンケートの結果を報告する。なお、アン
ケートの回答内容には不整合やばらつきも見られたため、概略を理解する程度と受け止め
ることが必要であろう。
ウ.調査結果
●
事業予算額
平成 10 年度、11 年度ともに図 1-1 のとおり同様の傾向を示し、少額予算の事業が比較
的多いことが伺える。平成 10 年度では、予算が計上されていない事業を含めた 300 千円
以内の少額予算の事業数は、 課回答事業数の 25.0%、3,000 千円以内の事業数は 51.9%
を占める。一方で、50,000 千円以上の事業も8件ある。
記入なし
15
8
8
それ以上
5
∼50000
∼10000
︵
予
算
額
︶
千
円
16
平成11年度
平成10年度
7
5
4
∼5000
9
5
15
∼3000
5
∼1000
4
∼500
6
5
∼300
15
10
¥0
-
17
5
10
16
N=104
11
15
20
事業件数
図 1-1 予算規模別市民活動支援事業数の分布
27
●
事業開始年度、支援対象、支援活動分野、選定方法、局別
事業開始年度、支援対象及び支援対象活動分野についての調査結果は表 1-2 のとおりで
あり、以前から継続しての事業及び近年開始された事業が多く、平成2∼6年度に開始さ
れた事業が少ないことが窺えた。支援対象に着目すると、地縁団体を対象とした事業は平
成元年度以前から取り組まれているものがほとんどであることがわかる。一方、市民・行
政協働団体(アンケート調査票にはこのような支援対象は設けなかったが、その他という
回答の中身を吟味したところ、行政がその組織の立ちあげや維持に積極的に関与している
取組が多かったので、集計時に設定した)の取組は平成2∼6年度開始分から増加してい
る。また、NPO等は近年急激に取組が増加したことが分かった。活動分野は、「まちづく
りの推進を図る活動」31 件、「環境の保全を図る活動」21 件、「保険・医療又は福祉の増
進を図る活動」15 件の順に事業数が多かった。
表 1-2 事業開始年度、支援対象及び支援対象活動分野
小計
事業開始年度
支援対象
活動分野
2
⑬ その他
⑪ 子どもの健全育成を図る活動
⑩ 男女共同参画社会の形成促進を図る活動
⑨ 国際協力の活動
⑧ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
3
1
3
1
1
1
7
1
⑦ 地域安全活動
6
6
2
14
2
1
⑥ 災害救援活動
7
1
5
⑤ 環境の保全を図る活動
3
2
1
3
④ 文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
4 不明
4
③ まちづくりの推進を図る活動
3 H元年度以前から
② 社会教育の推進を図る活動
2 H2∼H6年度
1 地縁団体
2 NPO等
3 個人
5 市民行政協同団体
6 複合
小計
1 地縁団体
2 NPO等
3 個人
5 市民行政協同団体
小計
1 地縁団体
2 NPO等
4 その他
5 市民行政協同団体
6 複合
小計
1 地縁団体
2 NPO等
5 市民行政協同団体
6 複合
小計
合計
① 保険、医療又は福祉の増進を図る活動
1 H7∼H11年度
4
1
0
0
0
0
2
1
4
1
1
1
1
0
2
1
2
1
1
2
1
2
5
1
3
1
3
4
9
2
1
1
3
13
4
4
0
1
1
3
4
0
0
2
0
2
2
1
3
1
1
2
8
3
0
2
0
0
2
1
0
0
0
0
2
0
0
0
2
0
5
0
3
0
4
1
1
1
2
15
0
13
28
0
31
2
8
3
21
2
22
4
13
3
44
1
2
3
10
16
17
7
2
7
4
37
4
1
1
1
7
104
●
金銭支援
回答のあったうち、金銭支援を実施している事業数は 55 件(52.9%)であった。助成
金の性格、内容、決定方法、件数、合計金額等にはかなりばらつきがあった。しかしなが
ら、助成件数が 51 件以上と対象団体が多い事業のほとんどが、平成元年度以前に開始さ
れたもののようである。多いものは地区敬老会助成事業 4,222 件、集団資源回収事業 1187
件などであった。一団体あたりの助成金額については調査しなかったが、助成件数1件の
事業の金銭支援合計金額からみると、一団体あたり 30 万円を越える支援している事業も
多く見られ、中には一団体あたり 1,000 万円を越え 5,000 万円までの支援をしている事業
が4件確認できた。
表 1-3 事業開始年度、金銭支援の件数および助成金の合計金額
3
4
五千万円を越える
2
2
2
1
5
記入なし
4
五千万円まで
3
一千万円まで
三百万円まで
2
五百万円まで
百万円まで
小計
3 H元年度以前から 0
1
2∼10
11∼50
51以上
記入なし
小計
4 不明
0
11∼50
小計
合計
五十万円まで
0
1
11∼50
51以上
三十万円まで
0
1
2∼10
記入なし
なし
小計
2 H2∼H6年度
金銭支援件数
事業開始年度
1 H7∼H11年度
金銭支援合計金額
合計
20
20
8
1
2
0
3
8
16
0
0
4
0
1
1
0
1
1
1
4
2
3
2
0
5
7
0
0
0
0
7
1
1
1
1
1
3
1
2
1
2
2
1
16
5
4
0
2
4
2
2
5
1
1
2
5
49
0
6
0
3
0 0
6 13
1
1
5
1
1
4
0
9
0
2
20
14
4
6
44
8
4
2
2
16
16
9
2
2
7
1
37
5
2
7
104
支援期間と事業開始年度の関係は表 1-4 のとおりであり、平成元年度以前開始の事業に
期間を定めず金銭支援を継続している事業が多いことが窺える。
29
表 1-4 支援期間と事業開始年度
1 H7∼H11年度
2 H2∼H6年度
3 H元年度以前から
4 不明
合計
15
3
3
1
22
単年度
( 27%
( 5%
( 5%
( 2%
( 40%
)
)
)
)
)
期間を定めず継続
期間限定
1
( 2%
1
( 2%
(
(
2
( 4%
) 6
) 4
) 19
) 1
) 30
(
(
(
(
(
11%
7%
35%
2%
55%
※
●
)
)
)
)
)
記入なし
1
( 2%
(
(
(
1
( 2%
) 23
) 8
) 22
) 2
) 55
合計
( 42%
( 15%
( 40%
(
4%
( 100%
)
)
)
)
)
%は金銭支援事業 55 件に対する割合
支援内容と問題点
支援内容としては、「金銭支援」と「情報提供」が多く、ついで「場所提供」、
「相談」、
「広報活動支援」、「事務局機能引受」が多かった(表 1-5)。
支援してきた市民活動の問題点は表 1-6 のとおりであり、「自立しない」、「事務局の負
担が大きい」、「活動が拡大しない」、
「積極的な活動につながらない」などが問題点として
挙げられた。一方で「金銭支援にたよりすぎ」という回答は4件しかなかった。
表 1-5 市民活動支援事業の支援内容
支援内容
金銭支援
情報提供
場所提供
相談
広報活動の支援
事務局機能引受
活動機会の提供
活動の発表機会の提供
物品提供
継続的な研修機会
単発の研修機会
後援名義
業務委託
その他
表彰
認定・承認
55
49
35
33
31
29
24
22
21
20
19
14
10
9
7
7
件数
( 53%
( 47%
( 34%
( 32%
( 30%
( 28%
( 23%
( 21%
( 20%
( 19%
( 18%
( 13%
( 10%
(
9%
(
7%
(
7%
表 1-6 支援してきた市民活動の問題点
問題点
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
自立しない
事務局の負担大
拡大しない
積極的な活動につながらない
活性化しない
維持できない
その他
目標と成果が見えにくい
既得権化している
人材育成との関係が不明確
新たな市民活動に対応できない
金銭的支援に頼りすぎ
N=104 複数回答
N=104 複数回答
30
件数
28 ( 27%
24 ( 23%
21 ( 20%
18 ( 17%
15 ( 14%
11 ( 11%
9 ( 9%
8 ( 8%
7 ( 7%
7 ( 7%
5 ( 5%
4 ( 4%
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
ある支援内容をしていると回答があった場合にどのような問題点があると回答したかの
割合を示したのが図 1-2 である。
図 1-2 市民活動支援内容と事業の問題点
60
400%
55
350%
支
援
の 300%
内
容
に 250%
対
す
る
200%
問
題
点
の 150%
割
合
100%
%
50
49
40
支
援
内
30
容
件
数
35
33
31
29
24
22
21
20
20
19
︵
14
︶
10
50%
10
9
7
7
認 定 ・承 認
表彰
そ の他
業務委託
後援名義
単 発 の研 修 機 会
継続的な研修機会
物品提供
活 動 の発 表 機 会 の提 供
活 動 機 会 の提 供
事務局機能引受
広 報 活 動 の支 援
相談
場所提供
情報提供
金銭支援
0%
12その他
11金銭的支援に頼りすぎ
10人材育成との関係が不明確
9目標と成果が見えにくい
8新たな市民活動に対応できない
7既得権化している
6積極的な活動につながらない
5事務局の負担大
4維持できない
3活性化しない
2拡大しない
1自立しない
支援内容件数
0
「後援名義」、「認定・承認」、「その他」ついで「金銭支援」では問題点として挙げられた
項目の件数は比較的少なかったが、それ以外の事業では共通して多くの悩みを抱えている
ようである。なかでも「表彰」については「活性化しない」との回答割合が 71%、「事務
局機能の引受」における「事務局の負担大」についても 69%と大きな割合を占めている。
●
自由回答
市民活動支援事業に問題がある場合に今後どのような支援をすべきか、問題がない場合
なぜうまくいっているのかについての自由回答をまとめたのが表 1-7 である。
成功事例の理由で多かったのは、「自主性の尊重」であった。今後の課題としては、「役
割分担の明確化」、「情報の共有化」が多かった。行政の取り組み方針としては、「情報の共
有化」、「自主性・積極性の誘導」が多くあげられた。
31
表 1-7 市民活動支援事業の問題点および成功の理由
大分類
成功事例
中分類
現状
理由
成果
問題点
行政側
市民側
両者
社会状況の変化
今後の方針
課題
行政の取り組み方針
小分類
自主性の尊重
市民意識の高さ
役割分担
目的の明確化と共有化
側面からの支援
交流の場の提供
専門的事業
自主的取り組みへの発展
具体的施策への展開
その他
支援のあり方
縦割り
状況把握不足
参加者の負担が大きい
ボランティア増加に対応できない
自立出来ない
参加者の固定化・高齢化
負担が大きい
参加者不足
技術不足
目的不在
活動が活発でない
情報の共有化不全
マンネリ化
活動主体の意識変化
市民活動状況
住民意識の変化
役割分担の明確化
情報の共有化
行政の取り組み姿勢
支援のあり方
コーディネート役の必要性
協働の必要性
金銭支援のあり方
金銭以外の支援の検討
情報の共有化
自主性・積極性の誘導
側面からの支援
意識啓発
広報活動の尊重
事業の見直し
具体的施策への展開
支援の継続
32
件数
8
6
3
3
2
1
1
1
2
1
1
5
2
1
1
1
4
4
1
1
1
1
1
1
1
2
1
1
10
8
4
2
1
1
1
1
14
14
7
5
4
3
2
2
支援内容
人材育成後の活用
支援環境づくり
開かれた組織にする
ネットワーク構築
事務局機能の移管
事業の定着
広報活動の尊重
活動の活性化を図る
活動の継続を支援
活動機会の提供
広報支援
場所の提供
金銭支援
物品提供
研修
人材育成
業務委託
人材派遣
行政からの提案
その他
2
2
1
1
1
1
1
1
1
6
6
5
4
4
4
2
1
1
1
2
N=65 (複数の分類にまたがる回答はそれぞれの分類でカウントしたため、合計は 65 より多い)
エ.アンケート結果に対する考察
アンケート調査の結果によって見えてきた、仙台市における市民活動支援状況には、い
くつかの特徴があるように思われる。
その特徴は以下のとおりである。
●
取り組みの幅広さ
平成元年度以前から地縁団体を対象としてあつい支援を行っている上に、平成7年度以
降は地縁団体からNPOまで、広い対象を支援対象としての支援事業が盛んになっている。
●
支援の硬直化
一方で、平成元年度以前から実施してきた支援事業は地縁団体対象のものがほとんどで
あると共に、金銭支援の件数が多く、事業費も多いものが目立つ。更に、期間を定めず継
続しているものも多く、旧来からの支援事業の硬直化が見られる。
●
金銭支援の有効性
金銭支援については、他の支援をしている場合と比較して問題点が少なく、有効な支援
手段と言えるのではないか。
●
自立につながる支援になっているか
このような支援状況のなかで、問題点に目を転じると、共通した悩みを抱えているよう
に思える。「自立しない」、「拡大しない」、「積極的な活動につながらない」、「活性化しな
い」、「維持できない」が問題点のなかで上位を占めた。また、今後の取り組みとして「自
33
主性・積極性の誘導」が上位を占めたことは、行政の支援を受けた市民活動が自主的な活
動として定着しない、という悩みを多くの担当者が共有していることを示している。また、
「事務局の負担大」が上位にきていることから、期待する成果が上がらない中で、負担だ
けが増大している状況を垣間見ることができる。
(2)
市民局による市民活動支援施策
仙台市では、平成 11 年度を市民協働元年と位置付け、様々な取り組みを行っている。
その中でも、市民活動支援事業実施の中核である市民局の市民活動支援事業の概要を述べ
る。
ア.市民活動支援施策の概要
仙台市における市民活動支援活動推進の状況は表 1-9 のとおりであり、詳細は第2節第
1項市民活動のインキュベータとしての行政を参照されたい。
今後の施策としては、
「仙台市の市民活動支援施策に関する提言」(平成 10 年2月)に
示された市民活動支援のために必要な施策(表 1-8)のうち、まだ取り組みがなされてい
ない事項については、今後ひとつひとつ実施に取り組む予定である。
表 1-8
「仙台市の市民活動支援施策に関する提言」に示された市民活動支援のために必要な施策
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
市民活動支援機構の設置
仙台市における市民活動支援推進体制の整備
市民活動支援に係る基本方針及び実施計画の策定
コア施設としての市民活動支援センターの整備
サテライト施設としての地域活動拠点の整備
情報ネットワークシステムの構築
市民活動支援条例の制定
市民活動支援財団による助成制度の整備
民間の市民活動支援団体との連携
企業との連携
災害時のボランティアネットワークシステムの整備
市民参加促進のための条件整備
34
表 1-9 仙台市の市民公益活動支援の取組経過
35
イ.仙台市市民活動サポートセンター
●
施設概要
市民活動支援の拠点施設として仙台市が平成 11 年6月設置した。一般市民が活用しや
すい開設時間、利用料金設定となっている。施設の運営は、仙台市が市民公益活動団体に
委託している。
市民活動共同事務室は、机・いす・ロッカーがセットになったブースであり、独自に電
話・FAX・パソコン等を設置することもでき、活動拠点を持たない市民活動団体が事務室
として利用することもできる。この他に、市民活動に必要な物品を保管しておくことがで
きるロッカー、利用団体宛郵便物やFAXの受け取り、会員同士の連絡等に利用すること
ができるレターケースの貸し出しも行っている。
市民活動共同事務室及びロッカーの使用期限は1年間以内であり、年1回使用団体を募
集することになっている。
表 1-10 市民活動サポートセンター施設概要
平成 11 年6月
仙台市青葉区本町二丁目8−15
年中無休(年末年始及び臨時休館日を除く)
平日
午前9時から午後 10 時まで
日曜・休日 午前9時から午後6時まで
施設
面積等
交流サロン
約 200m2
情報サロン
約 48m2
親子交流サロン
開設
所在地
開館日
開館時間
利用料金等
無料
無料
200 円(専用使用の場合、1
時間あたり)
セミナーホール
収容人員 100 名(メモ台付い 400 円(1時間あたり)
す)
研修室 1
収容人員 33 名
200 円(1時間あたり)
研修室 2
収容人員 28 名
200 円(1時間あたり)
研修室 3
収容人員 27 名
200 円(1時間あたり)
研修室 4
収容人員 26 名
200 円(1時間あたり)
会議室
収容人員 10 名
400 円(1時間あたり)
印刷作業室(コピー機、印刷
無料(紙は持ち込み)
機、裁断機、紙おり機)
市民活動共同事務室
10 ブース
5,000 円(1ブース、月あた
り)
ロッカー
大 20
500 円(1個、月あたり)
小 80
200 円(1個、月あたり)
レターケース
無料
36
図 1-3 仙台市市民活動サポートセンターの施設
市民活動サポートセンターパンフレットより
●
設置の経緯
「市民公益活動支援のための基本方針(平成 10 年 11 月
仙台市)
」のなかで、基本施策として
定められ、それを受けた(仮称)仙台市市民活動サポートセンター整備市民委員会による「(仮称)
仙台市市民活動サポートセンターの整備に関する報告(平成 11 年2月)」の方針により設置され
た。
●
運営方針
上記「報告」を受けて、以下の機能を担うことを方針としている。運営は市民活動団体へ委託
されている。
活動拠点・事務所機能、情報収集・提供機能、教育・研修機能、相談・コンサルティン
37
グ機能、人材の紹介に関する情報収集・提供機能、調査・研究機能、交流・ネットワー
キング機能、広報・啓発機能、企業と市民活動団体との仲介機能、連絡・調整機能
なお、情報収集・提供機能のうちシステム開発は実施中であり、まだ使用できる状態になく、
教育・研修機能、調査・研究機能、交流・ネットワーキング機能については、平成 11 年度の運営
委託内容に含まれておらずまだ着手していない。今後、これらの機能も充実が図られる予定であ
る。
●
民営について
市民公益活動支援策検討委員会(平成9年度)の提言の中で官営ではなく民営で、との方針が
示されており、それを受けて市民活動団体へ委託するとの方針が示された。運営団体の公募の結
果、現在はせんだいみやぎ NPO センターが運営を受託している。民営のメリットは市民感覚で
の運営が出来る点である。
ただし、委託しているのはソフト面の運営のみで、ハード面の管理は仙台市が行っている。
●
施設利用状況
開設以来、徐々に利用が増加している。特に予約・料金が要らない交流サロンと紙さえ持ち込
めば無料で使用できる印刷機に人気がある。
●
サテライト施設について
「市民公益活動支援のための基本方針」に市民活動サポートセンターの整備とあわせて、市民
センターやコミュニティ・センターなどの地域の市民利用施設に、市民公益活動支援機能を付加
した「市民活動室」を設置することが、記載されている。これに基づき、平成 10 年度より整備が
開始されている。
●
今後の課題
施設の場所がわかりにくい、内部構造が分かりにくいという問題点が市民から指摘されている。
どのような団体を市民公益団体として認めて支援していくのか、の線引きが明示されていない。
今のところ揉め事はないが、今後解決が必要な課題といえよう。
ウ.まちづくり活動企画コンペ
●
事業目的
まちづくり活動をする市民が行政の手を離れて自立することを目的に、地域の課題への取り組
みを支援するものである。
●
事業概要
公開審査(コンペ)方式のまちづくり活動助成制度である。助成の対象となるのは、地域の再
発見、地域文化の振興、地域の活性化、世代間交流、地域福祉、地域の環境改善などの活動の活
動費である。
補助金総額は 500 万円であり、「はじめの一歩」部門と、「もっともっと活動」部門が設定され、
一団体の助成額の上限はそれぞれ 10 万円、50 万円に設定された。
事業は様々な市民活動分野の第一人者によって組織された「まちづくり活動企画コンペ運営委
員会」によって運営され、審査も運営委員会が実施した。
●
実施結果
38
運営委員会では、選定基準の決定および実際の選定を実施した。当初は3回の開催予定だった
が、結果的には5回の開催となった。
募集は市政だより、ポスター、チラシのみで行った。25 件の応募があり、そのうち 14 件(「は
じめの一歩」部門4団体、「もっともっと活動部門」10 団体)に助成を行うことに決定した。敷
居が高かったためか、応募団体はそれほど多くなかった。
平成 12 年春に活動発表会を実施する予定である。
エ.市民活動フォーラム
●
事業目的
①市民活動を知らない人に広く市民活動を紹介すること、②既に活動している団体同士のネッ
トワークをつくること、③市民・企業・行政の協働、④市民公益活動のスキルアップを目的とし
ているが、平成 11 年度の開催にあたっては、①、②に重点をおき、市民活動初心者にも間口を広
げた。
●
事業概要
平成 10 年度より実施している。平成 11 年度は平成 12 年1月 22、23 日に仙台市市民活動サ
ポートセンターおよびエルパーク仙台において開催した。内容は表 1-11 のとおり。
表 1-11 第2回市民活動フォーラム仙台タイムスケジュール
第2回市民活動フォーラムパンフレットより
●
運営方法
平成 10 年度は、せんだい・みやぎNPOセンターと仙台市が実行委員会を組織して運営を行っ
た。
平成 11 年度は一般市民に対して公募を行って実行委員会を組織し、実行委員会に企画・運営を
任せた。仙台市は実行委員と対等の立場で参加・協力を行った。ただし、費用は仙台市からの支
出である。
委員は完全にボランティアで報酬はなし。実行委員会は2週間に 1 回、夜間開催した。会議は
39
市民活動サポートセンターで実施したが、閉館時間まで議論が続くこともしばしばだった。事務
局はお金の管理も含めて市民側(シニアのための市民ネットワーク仙台・杜の伝言板ゆるる)に
置いた。
●
実施結果
入場者は平成 10 年度 900 人、平成 11 年度 1,200 人。市民活動団体コンテストには平成 10 年
度は 11 団体、平成 11 年度は 14 団体が参加した。
平成 11 年度は新しく企画の公募を行った。しかし宣伝期間が短かったため、参加団体を集める
のが大変だった。
事業終了後反省会を実施した。参加者に対するアンケートの集計も含めた事業報告書は、現在
事務局で作成中。
●
問題点
実行委員の中には独自性を持って自由にやりたい人から、仙台市がもっと関わることを求める
人まで様々な人がおり、誰にとってもベストという方法はむずかしい。
●
今後
市民活動初心者を取り込むという目的に対して効果が出ているかどうか、検討して今後の展開
を考えたい。
オ.市民局による市民活動支援施策についての考察
●
縦割り行政と市民活動分野の広がりのギャップを埋める試み
仙台市は従来から様々な市民活動支援施策を実施してきていることがアンケート結果からも明
らかになったが、その支援は縦割り行政と指摘される施策体系のなかで、特定の分野に絞られた
ものがほとんどであった。その一方で、市民活動は行政の枠にとらわれずに様々な分野に広がり
を持った活動を展開するようになってきている。まちづくり活動企画コンペは、分野にとらわれ
ずに市民活動の支援を行うものであり、行政の縦割りと市民活動の広がりのギャップを埋める取
り組みとして今後が期待される。
●
市民活動の初動期支援
まちづくり企画コンペ、市民活動フォーラムに共通しているのが、市民活動の初動期・導入期
を支援しようという考え方である。市民活動フォーラムは、特に市民活動に取り組んでいない一
般市民へのきっかけづくりも目的にしており、まちづくり企画コンペは、そこから一歩進んだ初
動期の市民活動も対象にしている。ある程度の活動段階に入った市民活動団体への支援について
は、それ自体に取り組む市民活動団体も現れるようになっているが、導入期への支援が手薄な現
状では行政がこの段階にある市民に対する支援を行うことは、的を射た取り組みと思われる。
しかし実際には、まちづくり企画コンペの応募団体の多くが、すでに活発に活動をしている市
民団体であったり、市民活動フォーラムの参加者の多くが市民活動団体関係者であったり、とい
う状況も見られている。これらの支援事業が目的にあった支援になっているかどうかを検証する
必要がある。
40
3.全国における市民活動支援状況
(1)都市経営における市民参加に関する調査概要
ア.調査目的
自治体の市民参加の取組状況について幅広い視点から、その現状を明らかにするととも
に、課題について考察する一助とするために実施したものである。主な設問項目は「市民
参加を促す制度」、「市民活動を支援する制度」
、「情報公開」、「行政評価」の 4 点で、以下
はそのうち全体的な傾向と「市民活動を支援する制度」部分についてとりまとめたもので
ある。
イ.調査概要
アンケート調査名:都市経営における市民参加に関するアンケート
調査対象
:都道府県及び政令指定都市(企画担当課宛に送付)59 件
調査時期
:平成 11 年 11 月 15 日∼11 月 30 日
回答数
:35 件(回答率 59%)
ウ.調査結果
○市民活動への期待
市民にどのような分野での活動を期待するかについては「保健、医療又は福祉の増進を
図る活動」が 49%と最も多く、以下、「環境の保全を図る活動」40%、
「まちづくりの推
進を図る活動」31%の 3 分野に集中している。また、分野を特定しないという意見も 34%
と多い。
行政の基本的なスタンスとしては、全ての市民活動が重要であるとしながらも、福祉・
環境・まちづくりの 3 分野は市民生活との関わりや市民の関心が特に深く、市民の身近な
ところでの参加が比較的行いやすいことから当該分野が特掲されたものと考えられる。
図 1-3
市民活動を期待する分野
0
1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
5.環境の保全を図る活動
6.災害時の救援の活動
7.地域安全活動
8.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
9.国際協力の活動
10.男女共同参画社会の形成促進を図る活動
11.子どもの健全育成を図る活動
12.NPO活動を支援する活動
13.行政監視
14.行政への政策提言
15.その他
5
N=35
10
15
17
2
11
2
14
4
0
0
0
1
2
6
0
41
5
14
20
(件)
○市民活動の状況認識
「貴自治体では近年、市民活動が盛んになったとお考えですか」と尋ねたところ、市民
活動が近年盛んになったとする意見が「そう思う」37%、「どちらかといえばそう思う」54%
を併せて 9 割を超え、市民活動が盛んになったとする自治体が多い。
○市民活動を支援する制度
市民活動を支援する制度について 12 項目を例示して尋ねたところ、「市民活動の支援を
行う総合的な担当部署」を設置している自治体が 69%あるほか、「ボランティア保険費用
助成」44%、
「市民活動の支援を行う総合的な拠点施設」40%、「ボランティアの登録派遣
制度」33%などとなっており、比較的多くの自治体で多様な取組が行われている。
それぞれの制度等の取組開始年を見ると、1999 年が 115 件中 20 件ともっとも多く、1996
年以降で 60 件と近年の増加が著しいが、ボランティア保険費用助成や表彰制度など、比較
的古くから行われている制度もある。
それぞれについて見ると、以下のとおりである。
①市民活動の支援を明記した条例−6 件
あらゆる活動を包括する条例が 4 件(ボランティア、社会貢献活動、民間非営利活動、
市民公益活動)で、全て東北地方の自治体である。また、テーマ別の条例が2件(環境、
都市景観)となっている。
②市民活動の支援を行う総合的な担当部署 −24 件(69%)
県レベルでは「生活文化課」、市では「地域振興課」といった名称が比較的多い。しかし
中には「NPO推進室」や「市民活動促進担当課」、「市民活動支援課」という独立型の自
治体や「企画調整課」や「消費生活課」
、「主査」
、「担当」といった埋没型の自治体があり、
自治体間の取組姿勢には隔たりが感じられる。
③公募型の市民公益活動全般の助成制度−6 件
回答が得られたのは全て県で、助成金の性格は基金3件、補助金等3件で、特定テーマ
(河川浄化報償金)1 件を含む。
④まちづくり基金(出資を含む)−4 件
回答が得られたのはいずれも県で、「福祉のまちづくり基金」「ふるさとづくり基金」の
ほか「財団への出資」、
「各広域圏への助成」があった。
42
⑤市民活動の支援を行う総合的な拠点施設−14 件(40%)
名称に「ボランティア」を冠するもの 5 件、
「市民・県民活動」4 件、「女性」2 件、その
他 7 件(NPO活動、生涯学習、男女共同参画、環境、ネットワーク、コミュニティ、ま
ちづくり)
⑥ボランティア保険費用助成−15 件(44%)
名称から判断してボランティア活動全般に対応すると見られるものが 11 件(内2件はボ
ランティア基金、2件は補助対象が県や市町村の社会福祉協議会)で、テーマ別のものが
4 件(道路、河川、災害、地域福祉)となっている。
⑦ボランティアの登録派遣制度−11 件(33%)
防災、森づくり、福祉、国際、自然解説員、災害、生涯学習、教育など、全般的にテー
マ性が強い。
⑧行政職員の派遣制度(出前講座等)−7 件
「出前トーク」等 4 件(内 1 件は「地方分権出前講座」
)、「出前相談」1 件、「ボランティ
アアドバイザー派遣」1 件。
⑨市民(企業含む)活動の独自の認証制度−2 件
「フラワーマスター」
、「地区計画及びまちづくり協定等に関する条例」「都市景観条例」
⑩特定の市民活動に対する公共施設使用料の減免−2 件
特定の施設について回答があった。
⑪市民(企業含む)活動の独自の表彰制度−7 件
一般対象のもの(市民、ボランティア活動、地域活動)と特定の活動をテーマにしたも
の(自然保護、地域文化、男女共同参画社会づくり、花と緑のまちづくり、自主防災活動、
環境保全)があった。
⑫住民協議会等の設立・運営支援−5 件
県社会参加活動推進協議会、市地域振興会、まちづくり助成制度などがある。
⑬その他−13 件
・社会貢献活動促進の基本方針策定3件のほか、秋田いろり塾ネットワーク(秋田県)、新
ひむかづくり運動促進事業(宮崎県)といった「運動推進型」の回答があった。他には、
43
まちづくり啓発事業補助金、文化ファンド、海と渚美化推進協議会、市民活動プラザとい
う回答があった。
○全体的な傾向
・取組数と取組開始年
図 1-4
市 民 参 加 に 関 する 各 種 制 度
回答件数
80
70
参加促進
活動支援
情報公開
行政評価
60
50
40
30
20
10
0
年
∼ 89 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 不 明
回答のあった取組について取組の開始年をみると、図 1-4 のとおりで市民参加の促進に
関する制度はほとんどが 1995 年以降の取組となっている。市民活動の支援制度は 1989 年
以前からおこなわれているが、1996 年以降増加傾向にある。情報公開に関する取組は 1996
年以降急激に増加しており、特にパソコンやインターネットの活用が進んでいる。行政評
価は 1996 年に一部の自治体で取組が始まり、少しずつ広まりつつある。
・自治体別取組状況
図 1-5
回答件数
市民参加の取組状況
30
市民参加を支援する制度数
情報公開取組数
市民参加を促す制度数
25
20
15
10
5
神戸市
横浜市
大阪市
千葉市
川崎市
仙台市
札幌市
鹿児島県
沖縄県
宮崎県
熊本県
香川県
福岡県
広島県
島根県
岡山県
京都府
三重県
44
滋賀県
愛知県
静岡県
岐阜県
長野県
新潟県
山梨県
千葉県
神奈川県
福島県
埼玉県
山形県
宮城県
秋田県
岩手県
北海道
青森県
0
自治体別の取組状況をみると図 1-5 のとおりで、都道府県と政令指定都市の間で大きな
傾向の違いは見られない。取組件数(回答項目数)の多い自治体は北海道 25 件、川崎市
21 件、青森県 18 件、札幌市 17 件、三重県 16 件、仙台市 15 件の順となっており、仙台市
は 6 番目となっている。
これを項目別にみると、市民参加の促進に関する制度は札幌市が 7 件、北海道と川崎市
が 5 件の順となっており、仙台市は 1 件にすぎない。また、市民活動の支援制度は、北海
道が 8 件、静岡県と神戸市が 7 件の順となっており、仙台市は 5 件である。情報公開に関
する取組は北海道と三重県が 12 件、
青森県と川崎市が 11 件で仙台市は 9 件となっている。
この回答から見る限り、仙台市の市民参加に関連する取組は全体的には多いが、市民参加
の促進に関する取組数が少ないということができる。
45
(2)まちづくり条例
市民活動を支援する制度としてある程度確立し、一定の効果を挙げている「まちづくり
条例」について、神戸市のヒアリング調査の結果も踏まえつつ、神戸市、世田谷区、豊中
市、の 3 つの事例について比較検討を行う。
ア.神戸市地区計画及びまちづくり協定等に関する条例(神戸市)
・条例の概要
「神戸市地区計画及びまちづくり協定等に関する条例」(以下、神戸市まちづくり条例と
する)は、1981 年に制定された日本最初のまちづくり条例で、まちづくり協議会という住
民組織を対象とした「まちづくりのルールづくり」と「ものづくり」に対する支援を 2 つ
の柱とした制度である。支援の中心は、アドバイザー・コンサルタント派遣(平成 7 年度
∼11 年度累計 479 件)とまちづくり助成*であり、この支援を通じて各種まちづくりの事
業化と事業化支援を行っている。
*認定を受けたまちづくり協議会は7年間にわたり 30 万円ずつ交付。未認定団体については復興基
金から限度額 300 万円で年間 100 万円交付
・条例の成果と課題、問題点
条例制定以降、19 年間で協議会認定は 13 件(未認定団体を含めると 97 団体)、まちづ
くり協定は7件、地区計画は4件となっている(市内の地区計画は 51 ヵ所)。まちづくり
のルール届け出制により、「何かあれば住民自身が考える場ができたこと」が、大きい成果
ではないかとしている。また、地域リーダーなどの人材育成が課題であり、これに対応す
るために、1995 年「こうべ・すまいまちづくり人材センター」を「こうべまちづくり会館」
内に開設し、支援の一元化と研修等を実施している。なお、こうべまちづくり会館の運営
は(財)神戸市都市整備公社こうべまちづくりセンターが行っている。
・こうべ市民安全まちづくり大学
平成 9 年度に始まったこの大学は神戸市が進める防災・福祉コミュニティのリーダー養
成事業として市民局安全企画課からの委託によりこうべまちづくりセンターが実施してい
る。9 月から 3 月までの半年間で入門講座(専門家による公開講座)を 7 回程度、まちづ
くり講座(ワークショップ)を 6 回開催する。定員は 50 名だが、平成 10 年度は 58 名が
修了し、市民安全推進員として市からの委嘱を受けている。受講料は無料である。
この他区のまちづくり推進課職員を対象とした大学 4、5 回と専門家を対象とした大学 5
回(有料、資料代 20,000 円)を自主事業として開催している。
46
づくりファンド」である。「世田谷まちづくりセンター」の運営は区の都市整備公社内に置
かれているが、まちづくりの専門家や多くのボランティア、民間のまちづくりハウスなど、
との連携により市民主体の様々なまちづくり活動が生まれている。
ウ.豊中市まちづくり条例(豊中市)
・条例の概要
豊中市まちづくり条例は駅前商店街活性化がきっかけとなって 1992 年に制定された条
例で、「みんなの計画、役所の支援」のキャッチフレーズからも窺えるとおり、住民組織で
ある「まちづくり協議会」が行う「まちづくり構想」づくりとその実現のための活動を支
援する内容となっている。支援の内容は、技術的支援としてまちづくりアドバイザーやコ
ンサルタントの派遣と市職員からなるまちづくり支援チームの派遣があり、活動経費の助
成として、「まちづくり協議会」(期間 3 年以内、活動経費の3/4 以内、限度額年 150 万円)
とその前段階である「まちづくり研究会」(期間 2 年以内、活動経費の3/4 以内、限度額
年 30 万円)への助成がある。
支援の枠組みは神戸市のまちづくり条例に近いが、まちづくり実践大学やまちづくりフ
ォーラムなどによる、まちづくり意識の啓発事業やまちづくり支援チームの派遣など、特
に初動期のまちづくり支援に特徴がある。
エ.まちづくり条例の可能性
以上の 3 例は市民の行うまちづくり活動を支援する仕組としては共通だが、その性格や
手法はそれぞれ微妙に異なっている。「まちづくり」が息の長い地道な活動であり、その中
核を担える人材育成こそが重要だとして「まちづくり人材センター」に行きついた神戸市、
初動期まちづくりに力をいれる豊中市、市民の自発性を高め、自発的活動のサポートに徹
する世田谷区、いずれも「活動する市民あってのまちづくり」であり、だからこそ「計画
策定」や「事業」といった目的志向型ではなく、むしろ「活動をしようとする市民を育て、
サポートする」という人材育成型支援を重視しているようにみえる。そう考えると「まち
づくり条例」の存在は市民参加を推進する上でも極めて重要な役割を果たしうるといえよ
う。
(3)TMO
ア.TMOとは何か
TMOはタウン・マネジメント機関の略称で、日本では平成 10 年 6 月に施行された「中
心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」(略
48
称:中心市街地活性化法)に基づいて自治体が策定した中心市街地活性化基本計画を具体
化していくための民間組織として法的に位置付けられた。従来、別々の主体が行ってきた
街路空間の整備や施設設置、必要な小売業種の確保、イベント開催などのまちづくりを、
広い視野から総合的に企画、調整、実施する、即ち中心市街地を運営、管理していく「ま
ちづくり会社」としての役割が期待されている。この役割の担い手としては第三セクター、
商工会、商工会議所などが想定されており、TMO が立案した事業計画には手厚い支援措
置が用意されている。なお、本来の TMO は上記の法律に基づくものに限られず、上記で
期待されたまちづくり或いはまちづくり支援機能を有するものを幅広く意味するものであ
り、法定外の TMO 活動組織も国内にいくつか存在する。
この組織のモデルとなったのは欧米におけるPPP(パブリック・プライベート・パー
トナーシップ)と呼称される公共と民間とのパートナーシップによるまちづくりで、欧米
においては市民参加、プロジェクトプランニングの面で、多くの制度を有し、そしてその
ためのプロフェッショナルも多く存在している。特に米国においては 1974 年、税を財源
とする補助金について、企業会計のシステムを容認(包括的補助金制度)する事で市町村
ヘの補助システムが制度統合されたことでPPPが独自の財源を持つことができるように
なったことから、地方自治体、地元企業家グループ、民間デベロッパー、市民、といった
様々な主体が、多様な形態でパートナーシップを形成し、様々な事業を行っている。
イ.国内のTMO構想の認定状況
1999 年 12 月の時点で、全国で 26 の事業が認定されている。東北関係では会津若松市
の「株式会社まちづくり会津」、遠野市の「遠野商工会」、鶴岡市の「鶴岡商工会議所」な
どがある。
設立形態はそれぞれの都市の置かれた環境によりかわってくるが大別すると以下のよう
になる。即ち、
①地権者、行政、各種団体と地区住民・企業、が協力しあい総合事業会社をつくる。
②行政が中心になり、地元の民間企業の協力を得て開発事業会社をつくる。
③施設所有者などが中心となり、国の支援事業を導入して開発運営会社をつくる。
の概ね 3 ケースが多いようである。
ウ.国内の注目事例
法律が施行されて日が浅く、まだ成果が目に見えるという状況にはないが、市民参加を
少なからず念頭においた法律として注目されるところである。ここでは、そのうちの法の
枠組みに必ずしもとらわれずに積極的な動きを見せている 2 つの事例について報告する。
・株式会社飯田まちづくりカンパニー(長野県飯田市)
49
株式会社飯田まちづくりカンパニーは、市民、商店、企業が中心となって出資し、行政
からも出資協力を得て、市民資本の第三セクターとしてのまちづくりの総合支援会社が立
ち上げられている。その事業領域は①市街地ミニ開発事業②物販飲食事業③イベント・文
化事業④福祉・サービス事業などであり、それぞれの事業がプロジェクト毎に参加者や出
資者を募り事業主体を独立させた形で事業化する事を考えている。
・「株式会社山湊」(愛知県新城市)
株式会社山湊は市民株主を募って市と共にまちづくり会社を設立し、まちづくりの核と
して、利用している。会社が店舗の形態をとっており、喫茶コーナーをはじめオリジナル
商品、地元の工芸作家や、手づくりグループの作品などの委託販売、陶芸、染色、造形な
どの伝統技術の提案、ギャラリーの活用(地元の旅館を有効活用)などを行っている。
今後の事業展開について社長の福田氏は、高齢者のお買い物代行などの有料ボランティ
アをしたり、老人介護のセンター機能を担うことを考えている。
この 2 つの事例は商店街の空洞化を心配する若手商業者の勉強会などがベースにあり、
自発性や活動の主体性という意味で特に注目される。また、市民が自ら出資し株主となっ
てまちづくりに参画していくという仕組や株式会社の形態を採っていることろからも明ら
かなとおり事業採算性がかなり念頭に置かれている。新たな公共の担い手の姿として今後
の活躍が期待される。
50
4.行政による市民活動支援の課題
以上の報告をまとめると、仙台市における市民活動支援事業はかなり充実しているとい
っても差し支えないのではないかと考える。しかしながら、全国と比較した場合に見えて
くる課題や仙台市独自の課題も垣間見える。そこで、以下仙台市を例に、行政による市民
活動支援の課題を考えたい。
(1)
支援事業の目的
課題を考える前に、目的に照らしてどこが問題かを整理するため、行政による市民活動
支援の目的を確認する。
今後の都市経営を推進していくうえで市民の参加が不可欠であることは「はじめに」に
も述べたとおりであり、市民にとって快適なまちづくりや都市経営においては、従来のよ
うにすべてを行政が担当するのではなく、官民が適正な役割分担のもとで協働することが
重要である。そのためには、市民の視点で問題を捕らえ、行政に頼るだけではなく、行政
と対等な立場で発言し、活動できる自立した市民の育成が急務である。
市民活動の支援はそのような意味で、重要な役割を果たすものと思われ、行政が力を入
れるべき分野であるといえる。
(2)
支援事業は過渡期的な措置
しかしながら、一方で市民活動は市民の自発的・主体的な活動であり、そこに行政が過
度に介入することの危険性も認識しておく必要がある。それを怠ると、すべてを行政に任
せておけばいいとする、現在まで続いてきた姿勢が引き継がれ、市民の自発的な活動の芽
をつぶしてしまいかねない。
現状では、仙台市における市民活動は未だ行政の支援を必要としている、との認識のも
と、支援事業を実施している。しかしながら、それは暫定的な措置であり、将来的には市
民活動そのものが、市民活動に関わる市民を養成するという部分をも分担すべきであると
考える。そのような状況の中でこそ、行政は市民と対等の立場で協働事業を実施でき、市
民にとっても行政にとっても理想的といえる関係を築くことが出来るのではないだろうか。
現在のように手厚い支援を継続していく必要があるかどうかは、議論の必要があると思
われる。
(3)
支援事業実施においての課題
以上のような観点から、市民活動支援の問題点を考える。
ア.
支援事業の効果と見直し
事業は常に目的に沿って計画・実施され、その効果が計られねばならない。然るに、仙
台市の市民活動支援事業においては、期限を定めず継続する事業が多くみられる。また、
アンケートから、市民活動支援事業においては、事務量が膨大になるにも関わらず、
「自立
しない」、「活動が拡大しない」等の問題点が読み取れる。これは、事業の評価と見直しが
適正に行われず、市民活動支援事業への投資と効果のバランスがとれていないことを意味
51
していると思われる。このような評価と事業の見直しが行われていない傾向は、金銭的な
支援を行っている場合にも同様にみられる。
市民活動支援事業は行政が行うべき重要な施策であることは、まちがいの無いところで
はある。しかし今後は、事業の必要性と投入する資金と労力に対して、充分な効果が得ら
れる方法を選択したかどうかを検証した上で事業を実施し、また、その視点で事業の見直
しを徹底する必要がある。
イ.
市民と行政の信頼関係の構築
市民活動支援事業は、一方で市民参加型事業の一形態との性格も持つ。異なった主体が
協働で事業を実施するにあたっては、市民と行政の信頼関係が必要である。
そのためには、目的意識と役割分担を明確にして、それを互いの共通認識とし、さらに、
相互に各々の仕事を報告し合わなくてはならない。この過程を怠ると、関わりを持つ主体
それぞれが、独自の考えで行動をおこして全体として収拾のつかない事態に陥り、結果的
に相互の信頼関係を損なう可能性が高い。これは、市民活動支援事業にも当てはまる。
これを防ぐためには市民も行政も、共に相互の情報を提供し合うことが必要である。こ
れと共に、互いに相手の発信する情報を受信すべく努力をすることも必要である。
ウ.
対象団体のレベルに合った支援
仙台市における市民活動支援事業の対象はどのように設定されているのだろうか。仙台
市における仙台市の市民活動支援状況は、全国と比較しても遜色のないものであるが、本
節第1項「市民活動のインキュベータとしての行政」で指摘したように、
「イノベータ−(革
新者)層」からの聴取を基礎として事業を構築してきた経緯があり、「フォロワー(追随者)
層」の意向を充分に反映したとはかならずしも言いきれない。他地域と比較して、仙台市
民の市民参加の意識が高く、既に活動を行っている市民が多い可能性はあるが、仙台市全
体からみれば、そのような市民はまだごく少数であり、多くは「市民活動初心者」である
と推測される。
そこで行政は「イノベータ−(革新者)層」向けの市民活動支援事業だけでなく、「フォ
ロワー(追随者)層」をも視野に入れた施策や対象団体のレベルに合った支援を実施して
いくことが必要であろう。
なお、仙台市においてもその側面を把握し、「市民活動フォーラム」の開催にあたっての
目的「市民活動を知らない人に広く市民活動を紹介すること」を位置づけたり、「市民活動
サポートセンター」の運営方針において「市民活動初心者」を視野に入れた施策を実施し
ているが、これらの施策が正しく機能しているかについても評価することが必要である。
52
第2章
行政活動と市民参加
第1節 自治体の事務事業と市民参加
自治体の事務事業の分類には様々な方法があると考えられるが、ここでは主として事業
の性格と事務の性格に分け、そのそれぞれについて市民参加の必要性を考えてみる。
1.計画策定
市の長期的な将来構想を示す『総合計画』や『環境基本計画』、『緑のマスタープラン』、
『すこやか子育てプラン』など、各種施策の実施に先立ってその全体構想を明らかにする
基本計画が策定される。また、行動指針や取り扱いの方針を定めるケースや、あるテーマ
について委員会などを設置して、単に報告書として議論の内容を取りまとめるものなど、
さまざまなタイプや目的のものがある。
いずれにしても自治体の政策形成過程そのものであり、アカウンタビリティと計画の実
効性向上という、両方の視点から市民参加が欠かせないものとなっている。アカウンタビ
リティの視点からは情報公開の側面が重視されようし、計画の実効性向上の視点であれば
(利害を異にする団体も含めた)関係団体を中心とした「参画」が必須となろう。
また、市民のニーズを把握するという点では、アンケート調査等のマーケティング手法
を通じた参加が必要となるし、テーマが専門的・技術的であったり特殊であったりすれば、
行政への助言・指導という側面から参加を求めるケースも出てくる。
2.公共事業(施設整備等)
道路や公園、区画整理事業や再開発事業、学校や市民センター、清掃工場や火葬場、図
書館、博物館など、自治体にはさまざまな公共事業があり、市民生活に直接的な影響を与
えている。これらの事業については、待ち望まれた施設や道路の場合もあれば、「必要性は
理解できるが自分の家の近くではいやだ」というような施設の建設に反対する住民の運動
が起きたり、利害調整が困難で事業が滞るケースもしばしばある。
市民利用施設については、利用者としての市民の意見を吸い上げた施設とすることで「顧
客満足度」を高めるとともに、完成後の利用促進や施設への愛着を期待することができる。
また、利害調整が困難な施設の場合、例えば、結果的に事業が暗礁に乗り上げて完成が大
幅に遅れたり、事業が途中で中断を余儀なくされた場合のサンクコストを考えれば、当該
事業の初期の段階から議論をオープンにするとともに、市民参加を促すことが賢明な選択
といえよう。
3.施設の維持管理
公共施設を市民の自主的な管理に委ねることは、ニーズにあった木目細かい弾力的な運
53
用が期待できるからと考えられるが、建物の管理の場合は鍵の管理を始め、清掃、小修繕
などその事務量は相当多い。したがって、意識の上で「やってもらっている」、「やらされ
ている」という関係にならないような動機付けや仕掛けが必要である。
公園や道路、河川、海岸、観光地などについて最も問題となるのは、ゴミの投げ捨てや
不法投棄であろう。「財政が悪化し充分手が回らない」行政と「身近な生活環境を自分たち
の手で守る」市民の利害は一致しやすいといえよう。ごみ拾い等の清掃活動や草むしりは
最も誰にでも参加しやすい参加の仕方といえよう。
4.ソフト事業(イベント等)
自治体においては、それぞれの事業課において公共事業や行政施策への理解を求めるこ
と等を目的として、講演会や講座、セミナー、シンポジウム、キャンペーンなどの行催事
が日常的に行われるとともに、普及啓発のツールとして広報誌やパンフレットなどが作成
されている。また、市民センターや博物館等の生涯学習施設や文化施設では、施設の自主
事業として市民向けの講座やコンサート等が開催されている。地域振興や商業振興、都市
セールスを目的とした比較的規模の大きい祭りやイベントもある。
こういったソフト事業は比較的利害の対立が少なく、市民が楽しんで参加できるという
特徴がある。事業目的が普及啓発の場合であれば「顧客の満足度」を高め、理解者、賛同
者を増やし目的を円滑に達成、推進していくためにも、参加を働きかけることが必要とい
えるだろう。施設であれば施設稼働率を高めたり、リピーター確保の視点から参加を考え
ることもできよう。
5.サービス提供事務
地方自治体の基本的機能に、婚姻届等の届出の受理や証明書の交付、各種申請の受け付
けや審査・許認可、税金の賦課・徴収や各種の相談受付、といった窓口における各種業務
がある。市民との接点という、日常的に市民に接する部門であり市民との関わりは大きい。
しかしながら、個人情報を取り扱うことや法律に基づく厳正な執行が求められることか
ら、市民が法律上保障された権利としての「参加」以上に「市民参加」を意識するという
場面はあまりなかったといえよう。ここで特に考えたい「参加」は、施設の使い勝手の向
上や窓口における接客態度の向上、等の面での参加である。日頃行政との接点が少ない一
般の市民がちょっとした窓口での対応の如何によって行政全体に対するイメージを持つと
いうことは、極めて重要なことである。クレーム処理や広聴制度等を通じた「顧客の声」
に対する木目細かい対応が、「顧客満足」を高めるためには不可欠といえよう。
6.内部管理事務
総務や財政といった部門における業務については、組織管理や内部調整、市議会への対
54
応や資源の配分や管理など市民との係わりに乏しく、「市民参加」にはなじまない事務とい
える。しかしながら、補助金や負担金の交付、行政情報の公開など、主としてパブリシテ
ィーという点で参加を推進する必要がある。
55
第2節
1.
行政活動への市民参加の現状と課題
仙台市における市民参加事業の状況
−仙台市における市民参加の実態に関する調査(A票)概要−
(1) 調査の目的と概要
ア.調査目的
本調査は、仙台市の事業における「市民参加」の具体的な取組状況を明らかにするとと
もに、その傾向等を分析・整理し、今後の市民参加のあり方について検討することを目的
として実施したものである。
特に、その事業が、行政と市民がどのような立場をとりながら進められている事業かを
探るための設問としての「事業のタイプ」、市民参加事業を行う「目的」、事業のどの段階
で、どのような参加手法や関わり方でもって市民参加が行われているかを探るための「参
加段階と参加手法」、事業担当者が「市民参加事業を実施するうえでの苦労や工夫」、各課
において「今後市民参加事業を根付かせるために必要だと思うこと」や「職員の理解度や
人材の有無」などを設問の柱に据え、多方面から分析を試みた。そのために設問の項目数
は回答者によっては最大 20 項目にも及んでいる。
回答は、各課における市民参加型事業の有無にかかわらず求めており、市民参加事業型
事業が行われていない場合にも、日常的に寄せられる市民からの意見や要望を業務にどの
ように活かしているかを回答してもらった。
なお、この調査における「市民参加」とは、計画策定に参加したり、審議会で意見を述
べるというような、より積極的な関与だけではなく、行政が企画・運営するイベント等へ
来場したり、アンケート調査への協力といった場合も含んでいる。
イ.調査概要
●アンケート調査名 :仙台市における市民参加の実態に関するアンケート(A票)
●調査対象
:仙台市各課、公所(二種相当)350 件
(部相当の空港港湾対策室、博物館、科学館、市民図書館、中央
市民センターを含み、市立病院の診療科等を除く)
●調査時期
●回答課数(回収)
:平成 11 年 10 月 22 日∼11 月 11 日
:244 課(回答率 70%)
●市民参加事業実施有との回答課数 : 84 課(事業実施率 24%)
●回答事業数
:234 事業
56
(2) 調査結果を分析するにあたって
このアンケート調査を実施する前から、「市民参加」という一見具体的にはみえるものの、
抽象的な言葉に対して職員はそれぞれの現場でどのようにこの言葉を理解し、事業を実施
しているのかとても興味があった。それは同時に、「市民参加」事業実施に対する体系的な
システムや方向性の不在を感じる中で、各担当者は何を頼りに事業を行っているのだろう
かという疑問でもあった。
アンケート調査を終えた今、その疑問はほぼ的中したと感じている。調査票に記入され
た回答内容には、事業担当者の日ごろの苦労や悩みがくっきりと現れているのもが多く、
市民との距離の取り方や、運営方法のみならず、市民参加を行うことの事業効果自身に疑
問を持つ声まであがっていたのである。
従って、このアンケート調査を分析するにあたっては、単純集計からだけではみえてこ
ない問題点等を、極力、クロス集計などの手段により明らかにしたつもりである。また、
記述式で得た自由回答も、複数の分類を行うことなどにより分析を試みた。
一部、アンケート作成上のミスから、市民参加の人数や、合意形成の方法、ワークショ
ップの活用状況など、分析しきれなかった項目もあるが、これらは今後の課題としていき
たい。
(3)調査結果の概要
ア.事業展開の動向(表 2-1,2-2)
●5年区切りで事業開始年度を調査したところ、市民参加が行われている 234 事業の 49%
が直近の平成7∼11 年度に開始されており、続いて平成元年度以前に開始された事業
が 27%、平成2∼7年度に開始された事業が 21%となっている。市民参加型事業はこ
こ5年間の間に急増したといえる。
●事業のタイプ別に見ると、「市民が主体となって企画運営する事業(市民主導型)
」が
全体の 12%、「市民と行政が役割を分担して取り組む事業(パートナーシップ型)
」が
25%、「行政が主体となって企画運営する事業(行政主導型)」62%となっており、市
民参加型の事業は、まだまだ行政が主導する形で行われているという結果である。
●しかし、これを事業開始年度別に分析してみると、近年(平成7年度以降に)開始され
た事業では「パートナーシップ型」が着実に増加して全体の3割を占めるに至り、逆に
「行政主導型」は平成元年度以前に開始された事業では全体の3/4を占めていたにも
かかわらず、平成7年度以降には6割弱にまで落ち込んでいる。
57
表 2-1 事業開始年度
N=234
回答数(件) 割合(%)
平成7年度∼平成 11 年度
114
49
平成2年度∼平成6年度
49
21
平成元年度以前から
64
27
不明
2
1
無回答・無効回答
5
2
234
100
合計
表 2-2 事業開始年度と事業のタイプのクロス集計
事業開始年度
事業の
タイプ
行政が主体となって企画
運営する事業
(行政主導型)
市民と行政が役割を分担
して取り組む事業
(パートナーシップ型)
市民が主体となって企画
運営する事業
(市民主導型)
無回答・無効回答
合計
平成7
年度∼
平成 11
年度
平成2 平成元
年度∼ 年度以
平成6 前から
年度
無回答
不明 ・無効回
答
合計
割 合
(%)
65
33
47
0
0
145
62
34
10
8
2
4
58
25
13
6
9
0
0
28
12
2
0
0
0
1
3
1
114
49
64
2
5
234
100
イ.事業分野別展開(表 2.3∼2.5)
●市民参加型で実施されている割合が高かった事業分野は、「文化芸術・スポーツ」
(20%)、「保健・医療・福祉」(15%)、「まちづくり・地域づくり」(12%)の順であっ
た。「その他」(26%)の回答率も高かったが、その内訳は、
「男女共同参画事業推進」
が2割、その他には「国際交流」「都市景観」「消費生活」「情報化」など様々な分野が
あげられ、市民参加型事業の多様化がみてとれた。
●「その他」の事業分野の除く上記の3大事業について、事業のタイプと事業開始年度を
みると、平成2年度以降に開始された「市民主導型」および「パートナーシップ型」事
業の増加が目立っており、特に「パートナーシップ型」事業の増加が顕著である。本市
における市民参加型事業の展開は、市民生活に密着した分野から、行政と市民が手を取
り合う「パートナーシップ型」という手段で拡大しつつあることが読みとれる。
●「市民主導型」で行われている事業の1/4は、「まちづくり・地域づくり」であり、も
っぱら「行政主導型」で実施されている分野は、「防災・防犯・災害救援」、「都市計画・
58
基盤整備」となっている。
●「市民主導型」と「パートナーシップ型」のいずれかのタイプで行われている事業の割
合が4割以上となっている事業分野は、「まちづくり・地域づくり」、「環境関連」、
「産業
振興」である。
表 2-3 事業分野
N=234
回答数(件)
割合(%)
文化芸術・スポーツ
47
20
保健・医療・福祉
36
15
まちづくり・地域づくり
28
12
環境関連
18
8
教育・青少年育成
14
6
都市計画・基盤整備
14
6
産業振興
10
4
4
2
61
26
2
1
234
100
防災・防犯・災害救援
その他
無回答・無効回答
合計
表 2-4 事業分野と事業のタイプのクロス集計
事業のタイプ
事業分野
行政主導型
パートナー
無回答・
市民主導型
シップ型
無効回答
文化芸術・スポーツ
34
9
3
保健・医療・福祉
23
10
3
9
11
7
環境関連
10
6
2
18
教育・青少年育成
10
2
2
14
都市計画・基盤整備
11
3
産業振興
2
6
防災・防犯・災害救援
4
まちづくり・地域づくり
その他
無回答・無効回答
合計
1
合計
47
36
1
28
14
1
1
10
4
41
10
1
1
145
58
59
10
61
2
28
3
234
表2-5 事業開始年度と事業分野および事業のタイプのクロス集計
事業のタイプ
行政主導型
平
成
7
年
度
∼
平
成
11
事業分野
年
度
文化芸術・スポーツ
19
保健・医療・福祉
10
まちづくり・地域づく
5
り
環境関連
6
教育・青少年育成
2
都市計画・基盤整備
4
産業振興
1
防災・防犯・災害救援
1
その他
17
無回答・無効回答
合計
65
事業開始年度
平
成
2
年
度
∼
平
成
6
年
度
9
6
1
2
3
4
8
33
パートナーシップ型
平
成
7
年
度
∼
平
成
11
年
度
6 4
7 5
3 9
平
成
2
年
度
∼
平
成
6
年
度
5
2 3
5 2
3 1
1 2
3
16 8
1
47 34
1
平
成
元
年
度
以
前
か
ら
平
成
元
年
度
以
前
か
ら
1
1
不
明
2
市民主導型
無
回
答
・
無
効
回
答
平
成
7
年
度
∼
平
成
11
年
度
1
2
2
1
2
平
成
2
年
度
∼
平
成
6
年
度
1
4
2
平
成
元
年
度
以
前
か
ら
1
1
1
無回答・
無効回答
平 無
成 回
7 答
年 ・
度 無
∼ 効
平 回
成 答
11
年
度
1
1
2
2
1
2
1
2
1
1
1
10
1
8
2
1
4
5
1
4
13
6
9
2
1
ウ.市民参加事業に取り組む目的・意図(表 2.6∼2.9)
●そもそも、市民参加事業に取り組むのはどのような目的からかを調査したところ、「普
及・啓発・PR」が 43%と他の項目を大きく引き離していた。続いて多かったのは「そ
の他」(15%)、「市民の人材育成」(13%)、「地域の活性化や商業振興、文化振興」
(13%)であり、全体としては市民のモチベーションを高めることを目的とした事業が
多いと。一方、「計画策定」(7%)や「施設整備・基盤整備」(6%)といったような事
業形成への関わりが深い事業の数は少なく、質的に高いステージへの市民参加には至っ
ていないことが確認できた。
●なお、「その他」の回答には、「河川愛護」、「高齢者の生きがいづくり」など行政事務の
多様化を感じさせるものがほとんどだったが、中には「事業見直しのための市民意見の
集約」といった積極的な回答もいくつかの事業でみられた。
●事業目的と事業分野の関わりについてみてみると(表 2-7)、「まちづくり・地域づくり」、
「都市計画・基盤整備」の分野では、
「計画策定」や「施設整備・基盤整備」といった事
業形成ステージの高い参加があることが分かった。また、「まちづくり・地域づくり」の
事業分野においては、「計画策定」から「地域の活性化や商業振興、文化振興等」まで幅
60
の広い取り組みがなされているのが特徴的だった。
●「普及・啓発・PR」および「市民の人材育成・活用」については、どの事業分野にお
いても、概ね万遍なく実施されている。
●事業目的と事業開始年度の関わりについてみると(表 2-8)、「計画策定」、「市民の人材
育成・活用」、「地域の活性化や商業振興・文化振興等」を目的とする事業は事業開始年
度が新しくなるのに比例して増加しているのに対し、「施設整備・基盤整備」、「普及・啓
発・PR」、「一般広聴」は平成元年度以前から着手されている。
●さらに、事業目的と事業分野と事業開始年度の3項目についてクロス集計を行ったとこ
ろ(表 2-9-1∼3)、平成元年度以前に開始された事業は、「都市計画・基盤整備」以外の
事業分野では、ほぼ「普及・啓発・PR」を目的として行われており、市民参加の目的
が固定化されていたといえる。一方、平成7年度以降に開始された事業は、どの事業分
野においても、「普及・啓発・PR」にとどまらず、取り組みの幅が広がっている。
表 2-6 事業の目的
N=234
回答数
(件)
割合(%)
100
43
市民の人材育成・活用
31
13
地域の活性化や商業振興・文化振興等
31
13
計画策定
16
7
施設整備・基盤整備
14
6
一般広聴
5
2
公共施設の維持管理
0
0
35
15
2
1
234
100
普及・啓発・PR
その他
無回答・無効回答
合計
61
12
6
3
4
4
市民の人材育成・活用
5
7
4
2
6
地域の活性化や商業振
興・文化振興等
19
計画策定
1
まちづくり・地域づくり
保健・医療・福祉
1
11
2
施設整備・基盤整備
26
2
6
1
4
31
4
2
3
16
7
1
2
14
5
5
一般広聴
公共施設の維持管理
その他
0
2
7
無回答・無効回答
合計
2
4
1
36
35
1
28
18
14
14
10
4
2
61
2
合計
1
2
無回答・
無効回答
不明
平成元年度
以前
平成2年度∼
平成6年度
平成7年度∼
平成11年度
表 2-8 事業の目的と事業開始年度のクロス集計
事業の目的
19
1
47
事業開始年度
普及・啓発・PR
43
19
35
市民の人材育成・活用
17
11
3
地域の活性化や商業振
興・文化振興等
17
9
4
計画策定
11
2
3
16
施設整備・基盤整備
9
1
4
14
一般広聴
1
1
3
5
1
31
0
16
無回答・無効回答
合計
100
31
公共施設の維持管理
その他
100
31
1
3
合計
防災・防犯・災害救援
3
無回答・無効回答
産業振興
20
その他
都市計画・基盤整備
20
事業の目的
環境関連
普及・啓発・PR
事業分野
文化芸術・スポーツ
教育・青少年育成
表 2-7 事業分野と事業の目的のクロス集計
4
12
1
2
2
114
35
2
49
64
62
2
5
234
234
表2-9-1
事業の目的と事業分野および事業開始年度のクロス集計
(平成7年度∼平成11年度に開始された事業)
教育・青少年育成
都市計画・基盤整備
産業振興
9
2
6
1
1
2
市民の人材育成・活用
3
3
2
2
4
地域の活性化や商業振
興・文化振興等
計画策定
11
1
合 計
環境関連
9
事業の目的
その他
まちづくり・地域づくり
普及・啓発・PR
事業分野
防災・防犯・災害救援
保健・医療・福祉
平成7年度∼平成11年度
文化芸術・スポーツ
事業開始年度
1
12
43
3
17
6
2
17
3
1
2
施設整備・基盤整備
4
2
2
11
1
2
9
1
1
一般広聴
0
公共施設の維持管理
1
その他
3
1
1
10
16
25 17 16
9
6
5
5
1 30
114
表2-9-2 事業の目的と事業分野および事業開始年度のクロス集計
(平成2年度∼平成6年度に開始された事業)
事業開始年度
平成2年度∼平成6年度
合
計
その他
合 計
防災・防犯・災
害救援
産業振興
都市計画・基盤
整備
教育・青少年育
成
環境関連
まちづくり・地
域づくり
保健・医療・福
祉
文化芸術・スポ
ーツ
事業分野
4
19
2
11
事業の目的
普及・啓発・PR
6
3
市民の人材育成・活用
2
2
地域の活性化や商業振
興・文化振興等
計画策定
7
3
2
1
2
2
1
2
9
施設整備・基盤整備
2
2
1
1
1
一般広聴
0
公共施設の維持管理
1
その他
合
計
1
15
6
4
3
63
3
5
1
0
3
4
10
47
表2-9-3
事業の目的と事業分野および事業開始年度のクロス集計
(平成元年度以前に開始された事業)
4
2
3
10
34
2
市民の人材育成・活用
地域の活性化や商業振
興・文化振興等
計画策定
合 計
3
その他
1
防災・防犯・災害
救援
6
産業振興
教育・青少年育成
5
都市計画・基盤整
備
環境関連
普及・啓発・PR
まちづくり・地域
づくり
事業の目的
保健・医療・福祉
事業分野
平成元年度以前
文化芸術・スポー
ツ
事業開始年度
1
2
3
1
4
2
2
施設整備・基盤整備
1
1
2
4
3
一般広聴
3
0
公共施設の維持管理
その他
1
1
合
7
9
計
3
5
3
1
6
5
4
3
3
6
12
21
63
エ.事業実施過程での市民の参加の段階とその手法等(表 2-10∼13)
●事業実施過程のなかで、市民がどの段階(ステージ)で事業に参加しているか尋ねたと
ころ、全回答数(複数回答)の 43%が「事業実施段階または施設整備段階」と回答して
おり、質的に高い段階である「事業構想または事業計画段階」(16%)、「具体的な事業
の企画段階」(24%)への参加率はまだまだ低い。また、事業実施後に市民に評価をし
てもらい、反省や改善を経るための大切なプロセスと考えられる「事業評価段階」は、
14%にとどまった。
●具体的にどのような「参加手法」で市民参加が行われているかについて、複数回答で答
えてもらったところ(表 2-11)、全体的には「祭り・イベント」、「アンケート調査」、
「審
議会・委員会」、「セミナー・学習会・研究会」の回答が多かった。参加段階との関連と
しては、事業構想や計画などの質的に高い段階へは、「審議会・委員会」と「意見・アイ
ディア募集」が、事業実施段階では、「祭り・イベント」、
「セミナー・学習会・研究会」
が中心となった。
●質的に深い関わりをもつ事業構想や計画への参加が「審議会・委員会」となっているこ
とは、政策形成過程の意志決定部分が、学識経験者等の参加によって決められており、
一般市民の意見はまだまだ反映されていないことを示している。
●次に、具体的にどのような関わり方でもって市民参加が行われているかをみると(表
64
2-11)、「来場者・見学者・一般参加者・回答者」、「意見を述べる・アイディアを出す」、
「実行委員会等スタッフ」としての参加が多く、政策提言、計画立案・調整的な参加は
極めて少ない。
●表 2-12 において、参加段階と事業開始年度の関連をみたところ、近年開始された事業ほ
ど、ひとつの事業が複数の事業実施段階で市民の参加を得ていることが確認できた。し
かし、全体的な傾向としては、平成元年度以前に開始された事業と近年開始された事業
では、「具体的な事業の企画段階」での参加割合が若干増加したのみで、各段階の占める
割合に大きな変化はなく、近年、市民参加の気運は高まってきたものの、質的に高度な
参加への進展には至っていないことが分かる。
●表 2-13 では、参加段階と事業分野のクロス集計を試みた。すると、「保健・医療・福祉」
、
「まちづくり・地域づくり」、「産業振興」、「都市計画・基盤整備」の事業分野では、比
較的高い段階での市民参加が行われており、逆に、「教育・青少年育成」および「文化芸
術・スポーツ」の分野では、まだまだ事業実施段階での参加が主流となっていた。
●「保健・医療・福祉」の分野は、事業評価段階での参加率も高いことから、本市の事業
において、最も Plan(計画)→Do(実施)→See(検証・評価)サイクルが進んだ分野
であることが分かった。
表 2-10 事業への参加段階
N=420(複数回答)
回答数(件)
割合(%)
69
16
具体的な事業の企画段階
101
24
事業実施段階または施設整備段階
182
44
9
2
59
14
420
100
事業構想または事業計画段階
施設運営管理段階
事業評価段階
合計
65
わ
り
方
66
合 計
関
住民説明会・地域懇談会
祭り・イベント
アンケート調査(郵送・配布・留置等)
ヒアリング調査・モニター
意見・アイディア募集
シンポジウム・フォーラム
ワークショップ
審議会・委員会
セミナー・学習会・研究会
社会実験
インターネットの活用
その他
手法合計
13 来場者・見学者・一般参加者・回答
者
14 情報提供者・アドバイザー
15 意見を述べる・アイディアを出す
16 ボランティアとして活動へ参加
17 ボランティア組織として参加
18 講師・演技者・出展者
19 ボランティアとして運営面に参加
20 実行委員等スタッフ
21 共同の事業経営者
22 調査研究を実施し政策提言を行う
23 施設の維持管理者
24 その他
関わり方合計
事業評価段階
1
2
手 3
4
5
6
7
8
法 9
10
11
12
N=1,343
施設運営管理
段階
手法と関わり方
事業実施段階
または施設整
備段 階
参加段階
具体的な事業
の企画段階
事業構想事業
又は計画段階
表 2-11 参加段階と具体的な参加手法および関わり方
10
10
12
4
12
5
3
24
6
0
2
2
90
15
13
11
7
1
21
9
8
26
9
2
1
3
111
16
12
63
21
11
20
27
23
13
46
2
8
9
255
118
0
0
1
0
0
1
0
1
1
0
0
2
6
1
0
5
22
2
0
2
1
11
1
0
1
2
47
20
35
89
63
18
53
44
35
75
63
4
12
18
509
170
8
39
7
8
3
2
25
15
1
0
3
126
15
58
11
8
4
9
50
22
2
0
3
198
17
42
39
21
56
31
50
29
2
0
8
413
2
1
1
1
1
1
2
2
0
2
1
15
1
18
1
0
7
2
15
11
4
0
3
82
43
158
59
38
71
45
142
79
9
2
18
834
表 2-12 事業への参加段階と事業開始年度のクロス集計
事業開始年度 平 成 7 年 平成2年度 平成元年度
度 ∼ 平 成 ∼平成6年
事業への
不明
以前から
11 年度
度
参加段階
無回答・
無効回答
合計
事業構想または事業計画
段階
36
14
17
0
2
69
具体的な事業の企画段階
50
22
22
2
5
101
事業実施段階または施設
整備段階
90
37
51
1
3
182
5
2
2
0
0
9
29
11
16
0
3
59
施設運営管理段階
事業評価段階
合 計
無回答・無効回答
その他
防災・防犯・災害救援
産業振興
都市計画・基盤整備
教育・青少年育成
環境関連
事業の目的
まちづくり・地域づくり
保健・医療・福祉
事業分野
文化芸術・スポーツ
表 2-13 事業への参加段階と事業分野のクロス集計
事業構想または事業計画
段階
8
12
8
6
0
7
8
1
18
1
69
具体的な事業の企画段階
11
19
14
9
6
10
7
0
24
1
101
事業実施段階または施設
39
整備段階
27
21
18
11
8
8
2
46
2
182
施設運営管理段階
3
1
0
0
0
2
2
0
1
0
9
事業評価段階
7
14
2
5
2
2
4
1
21
1
59
オ.市民意見の活用状況と市民参加の活用意図(表 2-14∼15)
●事業を実施する過程でアンケート調査を行っているとの回答があったのは 234 事業中
127 事業(54%)で、半分以上の事業でアンケートを実施していることが分かった。し
かし、表 2-14 によれば、行ったアンケート結果をその後の事業に何らかの形で反映させ
ると回答があったのは全体の1/3程度にとどまっており、また、集められた情報の管
理・活用・共有や、公開に向けての組織的な対応はとられていない。
67
●市民参加の手法で事業を行う意図がどこにあるかと尋ねたところ(表 2-15)、約8割が
「当該テーマに関する市民の幅広い理解と協力を得るための参加である」と答えており、
市民との合意形成や調整を目的としたものは、低い水準にある。
表 2-14 事業においてアンケートを行った場合の活用方法について(複数回答) N=193
回答数(件) 割合(%)
アンケート結果を業務の参考資料として重視しており、事業に
反映させる仕組みがある
アンケート結果を業務の参考資料として重視しているが、事業
に反映させる仕組みづくりには至っていない
集計分析を行い報告書等としてとりまとめ、公開している
67
35
37
19
35
18
アンケートを資料として次年度の予算要求を行っている
14
7
継続的に行い、モニタリングしている
13
7
12
6
9
5
6
3
193
100
事業の5段階評価などによる評価項目を設け、事業の評価デー
タとして活用している
情報をデータベース化し課内などで共有している
その他
合計
表 15
参加の性格
N=234
回答数(件) 割合(%)
当該テーマに関する市民の幅広い理解と協力を得るための参加
である
市民とその場で合意形成を図る、または早期合意形成に向けた
理解を図ることを目的とした参加である
市民との将来の合意形成に向けた事前調整を行うための参加で
ある
無回答・無効回答
合計
186
80
32
14
8
3
8
3
243
100
カ.行政担当レベルにおける市民参加への取り組みの課題等(表 2-16∼19、図 2-1∼2)
●市民参加事業の実施にあたり苦労した点や工夫したことを、自由回答で記入してもらっ
たところ、95 事業に関して回答を得たので、それをまず中分類として「課題」と「工夫」
に分け、次にそれぞれに関して「広報・募集」、「事業の意義・効果」、
「手法(事業の運
営方法や市民との距離のおき方等)
」、「役割」、
「調整」、「役割分担」に小分類してみたの
が表 2-16 である。なお、自由回答には複数の項目にまたがるものもあったため、分類し
た結果の項目数は 126 となっている。
●全体の傾向としては、「課題」、「工夫」の両方において「手法」に関する回答件数が多く
68
なっており、市民参加事業のやり方・進め方等に悩み、多くの課題を抱えながら、その
一方で、各々かなりの工夫を行っていることが分かる。また、「課題」を記述した 69 事
業中、2割弱に当たる事業が「事業の意義・効果」自体に問題認識をもっている点は留
意を要する。
●表 2-16 に事業開始年度をクロス集計し(表 2-17)、表 2-1との関連をみたところ、市民
参加事業への取り組みが増えるほど、それを実施するための課題認識や工夫努力が比例
して増加している。
●次に、表 2-16 と事業のタイプの関連を調べてみたところ(表 2-18)、パートナーシップ
型の事業が最も課題認識と工夫努力を要するとの回答が多く、手間を負担と感じている
ようである。これに反して「まちづくり・地域づくり」を中心とした事業分野で活用さ
れている市民主導型事業は、予想に反して問題意識が少なく、市民参加事業へのこれか
らの取り組み方法を検討するに際して、重要な示唆を与えているといえる。
●事業目的と表 2-16 との関連については、「普及・啓発・PR」が、比較的市民との関わり
が希薄であるにもかかわらず、多くの問題意識を抱えていた。また、「計画策定」と「施
設整備・基盤整備」では、課題認識ばかりで工夫努力がほとんどないという、特徴的な
結果となった。
●計画策定や事業企画段階等、事業への参加段階が早く深い関わりを要するものほど、課
題認識が強く、市民参加事業への取り組みが慎重になる傾向が窺える。
表 2-16 事業実施上の課題や工夫
N=126
小分類
中分類
手法
広報・募集
調整
事業の意
義・効果
役割分担
その他
合計
課題
25
13
15
11
5
0
69
工夫
39
7
1
1
7
0
55
その他
0
0
0
0
0
2
2
合計
64
20
16
12
12
2
126
69
図 2-1 事業実施上の課題
役割分
担
7%
N=69
図 2-2 事業実施上の工夫
役割分
担
13%
広報・
募集
19%
N=55
広報・
募集
13%
事業の
意義・
効果
2%
調整
2%
調整
22%
事業の
意義・
効果
16%
手法
70%
手法
36%
表2-17
18
1
1
11
18
3
2
3
2
2
12
3
合計
2
2
6
8
無回答
工夫 計
その他
合計
広報・募集
事業の意義・効果
手法
調整
役割分担
8
7
14
5
2
36
3
不明
課題 計
工夫
広報・募集
事業の意義・効果
手法
調整
役割分担
平成元年度以
前から
課題
N=126
平成2年度∼
平成6年度
平成7年度∼
平成11年度
事業開始年度と事業実施上の課題や工夫
事業開始年度
中分類
小分類
1
1
1
1
2
10
1
4
25
13
61
31
その他
70
2
15
2
29
1
1
1
2
3
13
11
25
15
5
69
7
1
39
1
7
55
2
126
表2-18
6
1
1
2
広報・募集
事業の意義・効果
手法
調整
役割分担
4
2
12
その他
1
5
9
7
4
26
12
5
11
7
1
36
6
16
1
6
23
21
49
64
表2-19
1
28
1
N=126
1
2
2
4
1
10
1
3
6
2
2
22
2
6
1
4
1
7
1
1
12
8
3
1
7
11
1
4
18
2
13
12
1
40
21
19
2
課題 計
工夫
広報・募集
事業の意義・効果
手法
1
調整
役割分担
工夫 計
1
その他 その他
合計
11
8
8
71
2
1
6
3
2
13
1
7
1
1
10
2
25
合計
7
5
その他
地域の活性
化や商業振
興,文化振興
等
1
3
一般広聴
市民の人材
育成・活用
普及・啓発・
PR
広報・募集
事業の意義・効
果
手法
調整
役割分担
1
13
11
25
15
5
69
7
1
39
1
7
55
2
126
2
1
計画策定
課題
施設整備・基
盤整備
事業の目的と事業実施上の課題や工夫
事業の目的
中分類 小分類
1
合計
工夫 計
その他
合計
1
4
1
無回答
課題 計
工夫
広報・募集
事業の意義・効果
手法
調整
役割分担
パートナ
ーシップ
型
課題
行政主導
型
市民主導
型
事業のタイプと事業実施上の課題や工夫
事業のタイプ
中分類
小分類
13
11
25
15
5
69
7
1
39
1
7
55
2
126
キ.各課における市民参加事業への取り組みの課題と市民からの意見・要望への対応状況
(表 2-20∼23、図 2-3)
●最後に、各課から一部ずつ回答してもらった設問についてみていく。市民参加事業を実
践する課内の人材については、不足を感じている課が過半数を超え、非常に不足してい
ると回答している課もあった。また、市民参加事業の推進に対する職員の理解度につい
ても、課の全職員が理解していると回答したのは4割強にすぎなかった。
●表 2-22 は、各課において市民参加型事業の実質を深め、行政に根付かせていくために必
要だと思うことを自由回答で記入してもらい、回答内容によって「行政および事業のシ
ステム」、「(行政内部および市民の)人材育成」、「行政の意識改革・体質改善」、「情報
提供」、「市民ニーズの把握」、「成果の還元」、
「市民の意識改革」、「その他」の8項目に
分類した結果である。なお、回答があったのは 49 課であったが、複数の項目にまたが
っている回答もあったため、計 82 項目になっている。
●結果は、「行政および事業のシステム」(23%)、「人材育成」(22%)、「行政の意識改
革・体質改善」(20%)、
「情報提供」
(17%)の4点でほとんどが占められており、職員
自身が行政組織や体質等に疑問を感じている姿が明らかとなった。今後の市民参加事業
の進展のためには、これらの解決が急務である。
●日常的に寄せられる市民からの意見や要望に対しては、7割強が何らかのかたちで市民
へのリアクションを行っており、対応ぶりはおおむね良好といえるが、その意見を行政
内部(事業見直しや政策)に活かすシステムが整っているのは、1/3程度となってい
る。本当の意味で市民の意見や要望に応えるためには、担当レベルや課単位にその場そ
の場で対応するのみにとどまらず、行政内部に活かしていくシステムづくりが必要であ
る。
●また、集まった意見や要望を管理・保存する情報管理に至っては、明確な管理対応をし
ているところが1/5にすぎず、データベース化の推進等の検討が待たれる。
表 2-20 市民参加事業を企画立案・実践できる課内の人材について
回答数(件) 割合(%)
人材はいる
40
47.6
人材がやや不足している
35
41.7
人材が非常に不足している
8
9.5
無回答
1
1.2
84
100
合計
72
表 2-21 市民参加の必要性についての課職員の理解度について
N=84
回答数(件) 割合(%)
全員が理解している
49
58.3
一部の職員が理解している
33
39.3
あまり理解されていない
2
2.4
無回答
0
0
84
100
合計
表 2-22 市民参加を根付かせるために必要なこと
N=84
回答数(件)
行政および事業のシステム
19
人材育成
18
行政の意識改革・体質改善
16
情報提供
14
市民ニーズの把握
5
成果の還元
3
市民の意識改革
2
その他
5
合計
82
図 2-3
市民参加を根付かせるために必要なこと
市民ニー
ズの把握
6%
成果の還
元
4%
市民の意
識改革
2%
システム
23%
その他
6%
情報提供
17%
行政の意
識改革・
体質改善
20%
人材育成
22%
73
表 2-23 日常的に寄せられる市民意見への対応について(複数回答)
N=475
回答数(件) 割合(%)
内容上回答が必要なものについては処理期限を定めて回答・対
応している
職務上、事例がほとんどないので特別な対応はしていない
114
25
71
15
内容上回答が必要でなくてもできるだけ見解を示すようにして
いる
文書で寄せられたもののみ保存している
56
12
49
10
市民意見を集約分析し、業務改善に役立てている
45
9
市民意見を集約分析し、関係課と情報共有を行っている
40
8
担当毎に対応しており一元的な管理は行っていない
37
8
36
8
1
−
26
5
475
100
市民意見を集約分析し、事業の見直しや新規事業要望に役立て
ている
すべての市民意見を情報としてデータベース化している
その他
合計
ク.アンケート調査を終えて
近年、確かに市民参加事業数は増加し、全庁的にその必要性や重要性は浸透しつつある
といえる。しかし、この調査からは、数的な増加に満足しているような状況ではなく、質
的にはまだまだ未発達で、様々な壁や課題が山積みであることが明らかとなった。
市民の意見を事業や政策に活かし、市民満足度の高い事業を展開するためには、事業実
施段階での参加にとどまらず、事業構想や計画などの意志決定過程段階から、事業実施後
の評価段階に至るまで、意見を取り入れるシステムが必要である。
そのためには、各担当レベルがそれぞれに暗中模索するのではなく、システムづくりや
人材育成などに対する全庁的な推進体制が不可欠となっている。
同時に、行政には古い体質から脱却して、市民に歩み寄り、共に学び成長していく姿勢
が必要である。もちろん、これは行政だけが空回りしても始まらず、市民に対しても同様
の歩み寄りが期待される。
74
2.自治体アンケートにみる自治体の市民参加の仕組
−都市経営における市民参加に関するアンケート調査概要−
(1)調査目的
このアンケート調査は、自治体の市民参加の取組状況について、幅広い視点からその現
状を明らかにするとともに、課題についても考察する一助とするために実施したものであ
る。主な設問項目は「市民参加を促す制度」、「市民活動を支援する制度」
、「情報公開」、「行
政評価」の 4 点で、以下はそのうち「市民参加を促す制度」と「情報公開」部分について
とりまとめたものである。
(2)調査概要
アンケート調査名:都市経営における市民参加に関するアンケート
調査対象
:都道府県及び政令指定都市(企画担当課宛に送付)59 件
調査時期
:1999 年 11 月 15 日∼11 月 30 日
回答数
:35 件(回答率 59%)
(3)調査結果
ア.市民参加を促す制度
行政運営や事業を遂行していくうえで市民がどのような形で参加しているかについて、
参加を促すための制度や仕組み 8 項目を例示して尋ねたところ(複数回答可)、
「インター
ネットによる意見収集の制度化」を実施している自治体が 46%とやや多かったが、その他
の制度については取組にバラツキが大きい。また、取組開始年を見ると 1998 年が 47 件中
9 件ともっとも多く、1997∼1999 年の 3 年間に集中している。
それぞれの項目について見ると、以下のとおりである。
①市民参加条例−5 件
「市民参加条例」という名称のものはなく、
「公益活動の促進に関する条例」(仙台市)
がもっともこれに近い。他は、「外国人代表者会議」「環境基本条例」などが挙げられてい
る。
②市民参加憲章−2 件
ボランティア活動推進のための指針が挙げられている。
③審議会委員等の一般公募枠設定−5 件
全体的には極めて少ないが、環境保全、男女共同参画、NPO等市民の関心が高い比較
75
的参画しやすいテーマで公募が行われている。また、川崎市においては附属機間等の委員
の公募について指針が設けられている。
④行政オンブズマン制度−6 件
行政全般に係る制度が 3 件、情報公開、福祉関係が各 1 件などとなっている。
⑤公募型の住民協議会−1 件
まちづくり推進組織(川崎市)
⑥インターネットによる意見収集の制度化−16 件(46%)
知事、市長への手紙や県政提案といった名称で広く行われている。
⑦事業の一部にワークショップを義務づけ−2 件
義務づけはないが、多数の事業で実施しているという回答がみられる。
⑧市民参加型事業の事業枠設定−5 件
県レベルでは「自然教室」や「女性議会」といったテーマを持つものが挙げられ、市レ
ベルでは「区のふれあいまちづくり」、「地域セミナー」、
「パートナーシップモデル事業」
といった区単位の特定テーマを持たない事業が挙げられた。
⑨その他−7 件
広聴制度 2 件、基本方針策定2件、美しいまちづくり宣言 1 件、なし2件。
イ.行政への市民参加の課題
行政への市民参加の課題を 12 の項目から 3 つまで選択してもらったところ、
「どのよう
な事業で、どの程度の市民参加を図るべきかのルールがない」が 71%と最も多く、以下、
「市民意見の反映の方法が難しい(成果の活用についてのルールがない)」49%、「行政依
存傾向が強く陳情・要望の域を出ない」31%となっている。(N=35)
76
図 2-4
行政への市民参加に関する課題
0
10
1.政策決定に時間がかかる
20
30
(件)
3
2.どのような事業でどの程度の市民参加を図るべ
きかのルールがない
3.市民参加をコーディネートできる職員が少ない
25
6
4.事業の効果が測りにくい
5
5.行政依存傾向が強く陳情・要望の域を出ない
11
6.参加対象者の選定が難しい
4
7.住民の関心が薄く、参加機会を設ける意義が見
出しにくい
8.市民意見の反映の方法が難しい(成果の活用に
ついてのルールがない)
9.利害関係者以外の声の顕在化が困難
10.住民相互の意見調整が困難である
11.市民活動と行政で実施している事業内容が類
似・重複しており、市民活動を潰しかねない
12.その他
1
17
5
3
1
3
ウ.市民参加の拡大に向けての取組等
市民参加の拡大に向けての取組についての考え方や、全庁的な取組事例、NPO法人の
みを対象とする支援制度などについて自由記入してもらったところ、主な回答は「基本方
針等を策定したり、そのための検討委員会を設置した」というのが 8 件と最も多く、
「県民
税均等割の免除」(3 件)
、「NPO法人運営研修」
(3 件)
、「庁内の連絡協議会」「出会い・
きっかけづくりの場」(2 件)などであった。
この他、「ボランティア活動情報提供システム」、「災害時ボランティアネットワークシ
ステム」、「パブリックコメントの検討」、「NPOを理解するための職員対象の研修会、
NPOと行政が出会う場が少ないこと、協働したい事業の情報が少ないことから双方を仲
介する機能、仕組づくり」、「NPO情報誌」、
「市民公募委員の導入」
、「各区まちづくり協
議会活動」、
「市民健康の森推進事業」などが挙げられた。
エ.情報公開(提供)の取組状況
市民参加と関係の深い情報公開の取組状況について尋ねたところ、
「一般競争入札時に
おける予定価格の事後公開」を 89%の自治体で実施しているほか、「全庁的なパソコンと
庁内LAN導入による情報の共有化」83%、「予算・決算資料の情報提供」69%、「会議(委
員会・審議会等)予定に関する情報提供」66%など多くの自治体で積極的に取り組まれて
いる。また、取組開始年を見ると 227 件中 1998 年が 70 件、1999 年が 53 件とこの 2 年間
で全体の 54%を占め、情報公開と自治体の情報化が同時進行的に、しかも急激に進んでい
ることが分かる。
77
それぞれの項目について見ると、以下のとおりである。
①条例に「知る権利」を明記−11 件 (31%)
「情報公開条例前文に明記」とするものが 3 件、
「情報公開条例改正に併せて」が 2 件あっ
た。
②議会の情報公開−18 件(51%)
「情報公開条例を改正し、実施機関に加える」10 件、「議会独自の条例」4 件、
「要綱対
応」2 件のほか、「行政資料センターで議事録閲覧可能」、「インターネットにより議事録公
開」という回答があった。
③外郭団体の情報公開−17 件(49%)
「情報公開条例に明記されている」3 件、「要綱対応」3 件、「団体独自の要綱、要領」2
件による他、
「議会提出資料」や「入手資料」、「市が保有する資料」等について公開してい
る。公開対象は出資比率 1/2 以上が 2 件、1/4 以上が 1 件で、定款、事業報告書、収支計
算書などが公開資料として挙げられている。
④検討過程情報の公開−11 件(31%)
「情報公開条例に政策形成過程にあるものについても、積極的に情報提供に努める旨を
規定している」、「非公開とできる場合を具体的,限定的に規定」という自治体も中にはあ
るが多くは「情報公開条例に基づき公正又は適正な意思決定に著しい支障が生ずる恐れが
ない限り公開」という対応である。
⑤一般競争入札時における調査基準価格の事前公開−6 件
「建設工事の入札予定価格の事前公表」3 件、「労務価格の一部公開」
「積算基準・設計
単価の公表」などで取組開始はいずれも 1997 年以降である。
⑥一般競争入札時における予定価格の事後公開−31 件(89%)
回答があった 31 件中 30 件が 98 年に取組を開始しており横並びが際立っている。公開対
象は、一定額(250 万円 3 件、100 万円 1 件)以上の建設工事という場合が多いが、入札結
果表という形で落札業者、予定価格等を公開している例や予定価格のほか最低制限価格も
公開というもの、一般競争入札に限らず実施、など各々特徴が見られる。
⑦会議(委員会・審議会等)予定に関する情報提供−23 件(66%)
会議の公開と同義の設問と捉えた「原則公開としている」
、「特定の審議会を公開」といっ
た回答が各々数件あった。報提供手段としては、
「報道機関への資料提供」、「行政情報セン
78
ターへの資料の配架」、
「ホームページへの掲載」、「開催通知の掲示」
、「行事予定表に記
載」などがあった。
⑧広聴に寄せられた意見とこれに対する回答の公開−13 件(37%)
冊子、報告書、広報紙で公開するほか、ホームページ掲載も4件あった。このうち全て
の意見ではなく「県政モニターの提言」を公開するものが 4 件あった。「回答」に言及して
いるものは 4 件で、「個別には回答していない」1 件が含まれる。
⑨各種統計資料、自治体アンケート等のデータベース化と電子媒体での公開−18 件(51%)
統計資料の公開が 14 件と多くアンケートの公開は全世帯アンケート、市民意識調査の 2
件に止まる。貿易統計の CD-ROM での配布、FAX情報提供サービスというものもあった。
⑩予算・決算資料の情報提供−24 件(69%)
一般的な市民向け広報や議案書(予算・決算説明書)の閲覧のほか、「予算編成過程情報
のインターネットによる提供」や「予算見積書公表」、「予算に関して重要施策の概要を閲
覧」というものまで幅広い回答があった。インターネットへの公開は 6 件に止まった。
⑪会議(委員会・審議会等)記録の公開−22 件(63%)
インターネットでの公開や行政情報センターへの配架から窓口公開、開示請求により公
開、一部の会議について公開まで取り扱いにはばらつきがある。
⑫全庁的なパソコンと庁内LAN導入による情報の共有化−29 件(83%)
内容を見ると「庁内LAN導入」が 9 件、「1 人 1 台パソコン導入」が 5 件、電子掲示板
4 件、電子メール 2 件などとなっている。他に「グループウェア導入」
「統計・議会情報・
例規情報の共有化」などとなっている。
⑬その他−5 件
「現在情報公開条例を改定中」2 件のほか、「事務事業目的評価表の公表」「行政資料の
検索情報をインターネットで提供」等の回答があった。
79
3.全国における市民参加の先進事例
(1)わくわくまちづくり工房(北九州市)
ア.事業概要
「わくわくまちづくり工房」は北九州市の職員研修所が企画し、平成 10 年度から始め
た事業で、休日や夜間を利用して職員と市民がともに「学ぶ」という、極めて斬新な「職
員研修」の機会となっている。
工房の目的は
①市民と行政の共同学習の場を提供し、まちづくりについての理論と実践を学ぶ
②共同学習の取組の中から、市民と行政のパートナーシップを形成する。
③共同学習のプロセスにおいて、効果的手法(ワークショップ手法)を学ぶこと
となっている。
本来、職員研修所は市職員の学びの場であり、この学びの場に市民が加わることは、一
見、本来の目的から離れるのではないかと考えられた。しかし、職員の育成は、市民との
語らいや体験から始まるのではないかという視点に立ち『まちづくりの第一歩は、仲間が
居ないとか、やりかたが分からないという人に、何からまずやってみればよいか議論し、
実践しながら進めてゆくことが大切』との考えからこの工房は企画された。
イ.活動内容
活動は月1回、年間6回行われた。平成 10 年度の場合は6月から 12 月にかけて全て土
曜日の午後に開催された。この講座の指導者は、全国各地で市民活動を指導している計
画・技術研究所の林泰義氏で、最初と最後の集中講義を林氏本人が行っている。地域によ
っては林氏に全てお願いしているところもあるようだが、ここでは事務局職員も育てると
いう前提で、林氏の支えのもと実践的に指導してもらっているとのことである。また、議
論だけでなく、実践することに意義があるという考え方のもとで展開している。
1 回の工房は概ね 4 時間で、前半が基本的なまちづくりの様々な課題についての講義と
これを受けての議論、後半はグル−プ活動である。グループ活動は、テーマも活動スケジ
ュールも参加者自身が決め、最終的に報告書としてとりまとめを行う。グループ自身硬直
したものではなく、グループ間の移動ができるようにしている。平成 10 年度の場合は
「地域再発見」、「まちづくりソフト事業」、「まちづくりハード事業」、「環境学習の
すすめ」、「バリアフリーひとづくり」の 5 つのグループ(工房)で活動を行った。
なお、このプログラムは林氏が開発したもので、プログラムとしての完成度が高く、参
加者は短期間で大きな活動成果を残している。職員研修所としては、この講座を2∼3年
80
やって、つぎのステップ・アップを考える、ということを前提に企画されているとのこと
である。
ウ.成果と課題
この「わくわくまちづくり工房」は、自己啓発を前提に問題意識や手作りに関心のある
人、熱意のある人を求めた講座である。従って、夜間や休日に開催されるプログラムに、
職員は休みを返上してこの工房に参加している。定員は 40 名と決めていたが、応募者は
70 名になった。希望者は拒まないことを前提にしているので応募者全ての人に受講して
もらっているが、脱落者もいて最終的には 40 名になったとのことである。
この講座の目的は、いろいろな人と協力して実践することである。しかし、価値観の違
いのある人が多いなどのため、意見のすり合わせと努力に時間がかかる。市民は妥協しな
いし、とことん議論してこれだというものをみつけないと納得しない。だが、お互いを尊
重しながら、我慢し、目的を達成することが大切なことを、この活動で学んだ。それだけ
でも非常に勉強になったとのこと、大きな成果とも云えるということである。
課題としては、この講座で受講した人たちの受け皿がないということがある。しかし、
研修所としては、職員はこの活動で得たノウハウを職場の活動に生かしてゆけばよいし、
市民は自分の住む地域の活動に活用すればよいと考えており、また、それを期待している。
エ.考察
この講座の成否を考えたとき、その評価は難しい。講師の林氏は、市民活動でよく知ら
れた方であり、研修所の職員たちも熱心な人たちであることは、その説明でも充分に汲み
取ることができた。問題は養成した人たちが今後、社会でどのように生き、活かされてゆ
くことができるかということだろう。この講座は実践を前提にしているので、その体験は
..........................
貴重なものといえる。例えば、修了者は北九州市のみならず地域や職場の指導資格者とし
................
て認められるような制度ができればこの講座の行われた意義は大きいのではないか。
また、このような人材育成を行って成果に繋がるまでには、時間がかかることは当然で
ある。根気よく継続的に続けることと、フォローが大切ではないかと考える。
(2)情報公開から情報提供へ(岩手県)
岩手県においては、およそ考えられる極めて広範にわたる情報提供を、県のインター
ネットホ−ムページや情報公開室において開架により行っている。「情報公開」から
「情報提供」へを合言葉に、知事のリーダーシップにより改革が進んでいる。
81
ア.取組の概要
食糧費の不正支出によって損なわれた県民の信頼回復を目的として、情報公開のあり
..
..
方について全面的な見直しを行ったもので、「情報公開」ではなく、「情報提供」施策の
総合的な推進というスタンスで行っている。
主な内容としては、審議会の原則公開(日程の事前広報、会議資料の傍聴人への配布、
会議議事録は発言者の実名入りで公開、HP、開架はA4 版ドッチファイル 25 分冊)、
食糧費の公開(職員氏名も、HP)、25%以上出資している法人の情報公開(開架、58
法人、A4 版フラットファイル)予算要求資料(事務事業評価表、開架)、予算概要資料
(部別、連絡先明記、施策体系と主要事業概要、前年・新年度予算額、A4 版ドッチファ
イル、開架)、公共事業評価(HP、開架)などがある。
イ.情報公開の具体的な成果と課題
情報開示請求の内容が追求型から提案型に変化しつつある。また、各課によって取組
に差がある。審議会委員などから大きな反対はなかったが、事務局判断でHPにテープ
起し生原稿を掲載したところ、発言趣旨が違うということで発言の訂正を求められたこ
とがある。原稿の校正、公開内容(全文か概要か要旨か)については、各課の判断にま
かせている。副次的効果として、これまで発言のなかった委員が発言するようになった。
また、職員には「知事講話」などトップダウンで浸透しており、身内の理論の否定な
どにより意識改革が進んでいる。出資団体はうちにもきたかという感じで、特に抵抗は
ない。
ウ.公開に当たっての問題点、県民の反応等
特別の予算はなく自前でHPに掲載することとしている。部課でHPを開設していな
い場合はFDに入力してもらい、総務学事課の職員がHPに掲載している。県民からの
メールによる意見は数件に止まっており、少ないのが実状である。予算編成過程の公開
に対する県民の反響は、情報公開室の資料閲覧者数は平成9年度が 5,000 人、翌 10 年度
が 7,000 人と増え、コピー枚数は 12,000 枚となっており、関心の高さはうかがえるもの
の、反響はとくにない。予算要求資料は数ヶ月のみの開架に止めた。試行ということで
実施している。また、会議を公開しているが傍聴者は 1 件当たり1人未満と多くない。
現在はHPでだす情報のバラツキを少なくするため、ガイドラインづくりを行っている。
エ.考察
全ての行政情報を可能な限りガラス張りにするという、岩手県の取組は全国的にみて
も高いレベルにあるといえる。県民の反応が少ないということを以って県民の関心が低
い、とマイナスに見るか、信頼されている、とプラスにみるかは難しいが、少なくとも
82
情報提供によって県政が混乱するとか、事務量が激増するといったことはなく、その意
味では情報公開をおそれることはないといえよう。なお、高齢者などの情報弱者に対す
る情報提供という課題が残っているということである。
(3)生涯学習のまちづくり(掛川市)
ア.事業の概要
●
動機
掛川市は茶の生産が産業の柱となっている地域であり、過疎化が進んでいた。各地域が
その土地の特色に従ったまちづくりをすることにより、まちの魅力を増し、「そのまちが
好きだから住む」住民が増加することを期待して、生涯学習によるまちづくりを推進する
こととした。
●
内容
・
自分づくり・人づくりの支援
地域の歴史文化等の紹介や、生涯学習推進市民大会、シンポジウムの開催、生涯学習推
進ボランティアの設置等の人材養成・育成の取組、地域について専門的に学ぶ地球掛川学
研究所の設置や、世界の視点を身につけるための姉妹都市であるオレゴン州の農場・森林
での異文化経験等、様々な学習情報や学習機会、学習の場の提供を実施している。
・
住民主体のまちづくりシステムの構築
『市民総代会システム』
市民総代会システムを 20 年前から取り入れている。自治区三役と市三役・部長で構成
する市全域対象の「中央集会」、その下部に一般市民も参加出来る「地区集会」があり、
集会の場で市民の意見を聞くシステムになっている。ここでの意見・要望は次年度の予算
編成の参考とされる。集会であげられた意見・要望には必ず市が回答を示すことになって
おり、その結果は、情報公開されている。
図 2-5
市民総代会システムのサイクル
中央集会(4月)→地区集会(10,11 月)→予算編成(12 月)
→市長区長交流控帖※(翌年4月)→施政方針(翌年4月)
※集会で出された意見・要望・苦情・アイディアを伝達、記録管理する。
『掛川市生涯学習まちづくり条例』(平成3年3月制定)
地域住民が土地の利用方法を中心としたまちづくり計画を策定し、土地所有者の8割以
83
上の同意を得れば、市と地元住民代表と地権者代表の3者でまちづくり計画協定を締結す
る。協定を締結した区域(特別計画協定区域)は、計画以外の土地利用を認めない。住民
参加で計画が策定されるので、住民相互のチェックが効果を上げることが出来るシステム
である。平成 11 年4月現在で協定を結んだ地区が 10 地区ある。
まちづくり計画策定は、そのために地域住民を核として組織されるまちづくり委員会が
行う。会合は平日の夜や土日に開催し、市職員・コンサルも出席する。メンバーは自治区
の役員より若い現役世代の人が多い(30 歳代から 40 歳代)。
当初は、行政側が特別計画協定促進区域を指定し、その区域についてまちづくり計画を
作成して協定を結ぶというスタイルだったが、近年は問題がある地域について、まず、ま
ちづくり委員会を組織化するという方法にシフトしてきている。
84
図 2-6
掛川市生涯学習まちづくり土地条例の概要
住民主体の土地利用計画樹立
85
・
魅力的なまちづくりのための行政施策
市民募金により新幹線掛川駅設置、掛川城の天守閣の復元等を実現、駅前通の整備、掛川
インターチェンジの設置等。
・
住民と行政の信頼関係の構築
積極的な情報公開等を実施。
イ.特色
生涯学習はひとづくりだけではなく、「まちづくり・ひとづくり」であり、生涯学習活
動で自己を高めた市民がまたまちづくりにもかかわるとの考えのもと、ほとんどすべての
行政施策が生涯学習と結びつけられている。
なお、この運動は現市長(6期目)の当初からの選挙公約であり、市長の強力なイニシ
アチブによって取組が推進されている。
ウ.問題点
「生涯学習まちづくり土地条例」についての問題点は以下のとおり。
① 住民参加が基本であるため、夜間も含めた会合を複数回実施しなければならない。
② 国、県、市の土地利用計画と地域住民の考え方のすりあわせが困難である。
エ.考察
行政側からのヒアリング調査の結果では、生涯学習活動が徐々に市民意識の改革のきっ
かけにはなっているが、まだ住民に十分根付いてはいないとの印象を受けた。市民側の意
識も調査しなけば、掛川市の取組について正しい判定を下すことは困難である。
また、今後指導者の交代があった場合に、市民参加の体制を維持できるかもひとつの課
題であると思われる。
86
(4)その他の事例
ア.県民参加の予算編成でモデル事業(高知県)
高知県は、県民の予算編成に対する関心を高めてもらうために、「県民参加の予算づく
りモデル事業」を実施する。1998 年の議会において「県税収入の一定の割合の使途を住
民に考えていただくことが、予算編成を学んでもらう第一歩になるのではないか」との知
事の答弁を受けて、1999 年度に事業化することとなった。県民が直接参加する事業計画
のある組織で 2000 年度の予算編成に反映させる。県全体を五ブロックに分け住民 10 名程
度参加する検討会をブロック毎に設置し、地域ニーズを反映した施策、事業の立案や予算
見積りに取り組んでもらう、という内容である。
イ.市民参加による市条例作成と成立(大阪府箕面市)
箕面市では、1997 年に市民参加条例を制定し話題になったが、その後この条例の理念
の具現化として市民の市政への積極参加を促そうとしたものと言える。公募市民による研
究会と庁内のワーキンググループの両面から、NPO条例の制定の方向性が出てきたもの
で、17 回に渡る会合を経て提言をまとめた。「条文化する前の段階で市民に検討しても
らい、広く市民の意見を聞こう」ということで、4回の公開検討会が開かれ市民に提示さ
れた。箕面市では、次期総合計画が 2001 年からスタートするため、この策定作業にも公
募市民9名が参加し素案作成にあたっている。
ウ.市民公募によるまちづくり(京都市)
京都市では自治 100 周年記念事業の柱に「市民参加」を掲げ、市のあらゆる施策の基本
に市民参加を位置づけることが 21 世紀のまちづくりには必要とし、具体的な事業提案と
行っている。市民参加推進プロジェクトチームのメンバーを職員から公募により決定し、
「まちづくり塾」を立ち上げる為の人材を、市民、職員どちらも公募という形で決定させ
た。塾の企画も全て公募とし、公開ヒアリング方式をとり、全ての段階において、市民公
開という内容で行われた。7件の塾が決定し、活動費として上限 25 万円まで市から支給
され、全ては自主運営管理としている。市職員が公募という形で参加している事が、市民
と同じ目線で活動を行い、本当の共働きによる実践的まちづくりの研修の場ともなってい
る。京都市では、プロジェクトチームによる職員の自主的とりくみがきっかけとなり、そ
の精神が次第に各部局へ浸透しており市民参加事業が予想を超える広がりをみせている。
87
エ.計画段階から維持管理までの住民参加の土木事業(兵庫県)
兵庫県が「コミュニケーション型県土づくりモデル事業」を立ち上げ、住民主体の河川
整備をすすめている。兵庫県ではこれまでもこの様な事業を行ったことがあったが、思う
ような形にならず、その時の反省を踏まえて、新たに事業を起こす事となった。事業は、
住民に身近で計画を作り易い河川整備を中心に、モデル地区を決め、事業期間は3年程度
.........
と期限をつけている。県としては、枠組を決めないことがこの事業の特色としており、住
民組織によりどの様な、手順で事業を進めてゆくかは、モデル地区によりさまざまである。
尚、法的な規制や費用等の専門的な面でのコーディネーターとして、県職員が参加してい
る。県としては「時間と手間がかかるが、まとまらなければ事業を止める覚悟」という、
我慢強く住民の動きを見守っている。今後は市町や学校との連携を考えており、特に未来
のまちづくりの担手である子供達を事業に取り込みたい、としている。
オ.考察
その他の事例としてここに紹介した4例は行政への市民参加に対する行政サイドの考え
としては、大変開かれたものとして考えられる。行政が、市民参加事業の目的を最初の段
階で正確に伝えている。市民と職員が共に学び目的達成の為に協働し、努力する姿がみら
れる。市民参加の本当の意義を検討して事業に取り組んでいるため、時間や経費を費やす
事、手間がかかる事などは問題としてとらえず、その様なことはあってあたりまえとして
受け入れていることは、従来の行政側にはなかったことだ。行政側の市民参加に対する考
え方が変わる事は市民側にも必ず伝わり、より良きパートナーシップを築きあげられる基
本ではないかと思った。
88
4.行政活動への市民参加の課題
ア.アンケート調査からみた行政活動への市民参加の課題
今回行った自治体アンケート(本節第2項(2))では行政活動への市民参加の課題とし
て「どのような事業でどの程度の市民参加を図るべきかのルールがないこと」を挙げる自
治体が全体の7割(25 件)を超え、多くの自治体共通の悩みとして、参加の基準やルー
ルについて悩んでいる様子が窺える。また、「市民意見の反映の方法が難しい」が 49%
(17 件)と約半数の自治体では市民参加の成果の活用方法について課題を抱えており、
さらに、「行政依存傾向が強く陳情・要望の域を出ない」31%(11 件)と、約 1/3 の自
治体は市民参加の効果にも疑問を抱いているようにも見える。
すなわち、「どんな事業の場合にどの程度の市民参加をやるべきかの基準」を持たず、
市民参加で市民の意見を聞いたものの、それを「事業に反映させる方法が難しく」、市民
参加で出てくる市民の意見にしても「陳情、要望の類で実りが少ない」ことから、市民参
加に消極的にならざるを得ない、という自治体の姿がかいま見えるようである。
その一方で、情報化や情報公開の取組についてはどこの自治体でも力をいれており、市
民の意見を聞くためのインターネットの活用なども含め、情報を公開する、あるいは広く
市民の意見を求める、という意味での市民参加はかなり進んできているといえよう。
イ.各地の取組事例等から見た市民参加の課題
仙台市を含め多くの自治体で、行政活動への市民参加に取り組んでいる。その範囲も、
まちづくりはもとより、土木事業や条例案の作成、予算作成など多種多様であり、様々な
事業で市民参加が進んでいる。しかしなから、そのほとんどが個別のモデル事業的扱いで
の導入であることも事実で、決して市民参加が当然、という状況にはなっていない。それ
は先に見たように市民参加のルール、いわば基本的なシステムが確立されていない為に多
くの壁にぶつかり、その壁を乗り越えるのに時間や費用、労力を費やすために、市民参加
事業が職員にとって重荷になるという姿である。
行政活動への市民参加は、地方分権が大きく進んでいく 21 世紀の自治体経営にとって
不可欠の要素である。それは「行政活動」という形はとりながらも都市経営そのものへの
参加と何ら変わるところはない。手探りの市民参加事業の段階で、参加手法、問題点、成
果などを着実に積み重ね、市民参加の有効性を確立する、あるいは有効性を高めるために
も、早急に市民参加システムを確立しなければならない。そうでなければ、参加事業の成
果は、その場その場で費消され、職員にとっては徒労、市民にとっては市民の能力のつま
み食いや聞きっぱなし、という不満になりかねない。市民参加システムの中に情報公開が
組み入れられることは当然だが、市民参加のスタンスを考えた場合、情報提供という積極
的な内容となってほしいものである。システムを動かすのは言うまでもなく人である。
89
システムを使いこなせる人材をどの様な方法で育成するかも重要なポイントとなる。
以下、3 つの視点から市民参加の課題を整理する。
①行政の市民に対する信頼不足と市民参加事業における行政の一人相撲
市民参加事業に対する行政の期待はなにか。担当職員は参加する市民をどのように理解
しているか。事業に参加する市民は、自分の貴重な時間をさいて参加する。職員は仕事で
参加事業を担当している。事業に参加する市民、参加したいと思っている市民は、仙台市
のことを思い、協力しようと考えている市民である。だとすれば、もっと参加する市民に
対して信頼をもつべきではないか。事業が順調に運ばなかったり、よい成果が上がらなか
ったりするのは、計画や準備が不充分である事に起因しているのではないか。行政に興味
をもち少しでも自分のもてる能力や知識を仙台市のために役立てたいと思い、参加してく
る市民に対する職員の心構えは、中途半端なものであってはならない。行政の事業のすす
め方に対して市民が経験のないのはあたり前であって、その市民を導く職員は心労があっ
て当然という心構えを持って事業に取り組むべきである。市民参加する市民は行政の心強
い味方である。やる気のある市民を導き事業を成功させる為には職員にそれ以上の事業を
成功させる意欲がなければ市民と対等に取り組めないだろう。対等に取り組む姿勢とは、
全ての情報を提供し常に同じ認識のもとに事業を進めてゆく事である。市民参加事業の主
導権をどちらがとるかではなく、対等な取り組みができる場作りをどの様に行うかではな
いか。時流に乗って安易に市民参加を導入するリスクは大きく、行政の一人相撲となって
しまっては参加した市民は行政に対してむしろ不信感を抱くだろう。
行政活動への市民参加は、市民の行政に対する理解や信頼が深まるきっかけともなる。
事業の目的を明確にして、成果を次へつなげられるようなシステム確立も必要になってく
る。行政は、参加した市民の為に何ができるか、何をしたら目的達成できるかを考えてか
ら事業に取り組むべきである。
②市民の知る権利(情報公開)から行政活動への市民参加(情報提供)へ
アンケート結果においても、今や、行政における情報公開は当然の事業となってきてい
る。その為の条例も確立されてきている。情報公開はそもそも行政は誰の為にあるかの原
点にもどり、知る権利をもつ市民の為に行うものである。市民から徴収した税で活動して
いる行政は、その内容を市民の報告する義務がある。結果は当然のことで、事業構想、計
画、経過等、基本的には事務事業全てにおいて公開をすべきと考える。これまでも広報誌
や、マスコミ等を通じて市民に情報は流れてきてはいたが、それは一部行政にとっては都
合の良い結果報告だけであり、行政側の一方通行だったように思う。行政側の義務として
情報公開すればそれで良いという考えであれば従来通りで良いのだろうが、行政活動への
市民参加の必要性が益々出てきている現在では、市民も行政と同じ情報を持ちたいもので
90
ある。事務事業内容により情報公開する手法も違って当然である。今後の行政活動が、よ
り市民の理解を得たいと願うのであれば、ありのままの行政の実情を公開すべきである。
市民が無関心であるために招いた結果は市民にあるのであるから、情報公開は恐れること
なく全てをさらけ出すべきである。どんなに市民にとって必要な事業でも、市民の理解を
得られないものは行政が強引に進めるべきではないし、現在行われている、あるいは進め
ようとしている事業についても正確な情報を提供し広く市民の声を聴く姿勢を見せるべき
である。事業の初期段階での情報公開は、重要な事業ほど必要であり、市民の声を広く事
業へ反映されるべきで、強い声だけでなく、普通の市民の声も公平に収集することで、誤
りのない事業展開ができると考える。これまで公共事業は声の大きな推進派の声に押され
て進むことが多く、市民は無関心を装い黙認してきた責任もあるだろう。しかし行政側に
も普通の市民の意見を聞こうとする、あるいは聴き入れる姿勢がなかったのではないか。
情報公開が進めば、従来の事業の進め方自体が変わっていき、市民の無関心や無責任は許
されなくなってくる。行政の情報が全ての行政機関、地域コミュニティ等から広く提供さ
れるように、仙台市ホームページを充実させるなど、市民が得たいときに得られる情報提
供をすすめるべきである。
③人材育成と市民参加システムの制度的確立
民間企業が新規事業に取り組む際はまず人材確保を図る。人材なくしては新規事業の成
功はあり得ない。行政活動への市民参加事業は行政にとっては新規事業といってよいほど
手探りの状況にあると思われる。これまで行政の行う事業は前例や法律に従って行ってい
れば間違いなかったが、そのマンネリが今日の財政悪化を招いたといいたい。行政に危機
意識がなかったのである。行政の前例踏襲主義や横並び主義は社会の急激な変化について
くることができずにいる。だから、前例のない新規事業である市民参加事業がスムーズに
運ばないのである。仙台市に対するアンケート調査でも人材不足が半数の課から指摘され
ている。人材不足と感じながら市民参加事業を行うのでは、職員への負担が増加するのは
当然である。流れとして市民参加を導入することも必要ではあるが、環境が整わない中で
の導入はとても危険であり、良い結果が出るはずはない。職員の事務負担の増加ばかりが
印象に残り、その環境の中では参加した市民に対する対応も余裕がなくなり、結果として
はマイナスとなることの方が多いと思われる。市民参加事業に取り組む職員と市民が同じ
目線に立ち共に学び育つような北九州市型の人材育成に取り組むべきである。市民参加事
業のシステムの中へも人材育成を取り入れなければならし、学校教育においても、将来を
担う子供達へ「市民意識」を持たせる教育に取り組んで欲しいと思う。
一つ感じたことに行政職員の勉強不足がある。勉強せず、情報も少ない事から、片寄っ
た手法しかとれないのではないか。市民参加事業の知識も能力も整わない中で結果を出す
のは無理であろう。結果を出したいのであれば人材の問題を解決しなくてはならない。
91
先にも触れたが、民間企業の場合、新規事業であればそのためのプロジェクトを組み、
具体的な内容を慎重に決定して行動に移す。その点で、行政の市民参加事業の導入につい
ては、十分な検討と準備を必要とするのではなかろうか。立場の違う人間が共通の目的を
もって活動する、そのための調整には大変な労力と能力を必要とする。全ての事業を成功
へ導き、新たなる行政システムとなる市民参加については早急に、しかし、慎重にそのシ
ステムを構築すべきである。全国の自治体に先がけてシステムを確立し、市民参加事業の
成功と発展、財政悪化からの脱出、そして仙台市民が全国へ誇れる市政が実現することを
願っている。
92
第3節
企業経営の発想や手法を活かした取り組み
1.企業経営手法が行政に求められる背景
近年、経済成長があまり期待できないことなどから、地方行政機関の経営研究は企業を
対象にして拡がりつつあると云われている。その理由は、国際的経済変化とともに企業環
境を含めた国全体の環境変化等によるものと考えられる。しかし、これまでなりゆき任せ
できた「つけ」が、経済成長への期待の少ない現在、活性化を前提にした経営改善策を地
方行政にも求められるようになってきたものともいえるのではなかろうか。今日的な経営
研究には企業を対象にした経営学の外に、官庁を対象にした官庁経営学や病院経営学、学
校経営学、宗教教団経営学、軍隊経営学、労働組合経営学などいろいろある。
しかし、これらの経営学の基本にあるものは、経営の一般原理を生かすことによって成
り立っているということである。つまり、経営のアプローチや原理は共通なものとして取
りあげることができるが、その行動基準としての実践ないしその実践能力形成の研究には、
それぞれの特性がなくてはならないということである。
それは、企業の場合、業種、産業部門などによる特色と相違を知って実践能力を行動に
結びつけることが大切であることを意味している。
企業はそれぞれの特色を持っており、各々に特色のある異なった経営を行っている。す
なわち、無能の経営者は単に型通りの経営原理や理念を模倣努力するのではなく、各々の
経営哲学や信念のもとに、工夫を加えて実践をしているのである。今日、地方行政機関の
多くが財政苦境から脱皮するための手法を企業経営に求めているが、その前に、模倣や人
まねではなく、原理や理念をよりどころにしながら、自分の企業の特色を生かした特殊性
ある「わが社経営」を実践して栄えている企業にこそ、参考にすべき事柄があるのではな
いかと考えられる。
更に言い換えるならば、地方行政機関の経営者にとっては、日本の産業を導いて経済発
展のトリガーになってきた企業経営者の経営思想を学ぶことが大切ではなかろうか。
2.企業経営における品質管理の歴史
今日的に企業経営は、顧客満足を得るためのマーケティングや仕事の品質を重視した考
え方が一般的になってきている。この考え方に到達するまでには歴史的流れがあり、その
流れを理解することが大切ではないかと考える。
第一次産業革命の頃、産業界に「互換性のある概念」が導入されるようになり、やがて、
米国フォード社の車の大量生産などに繋がってゆく。19 世紀末になって近代数理統計学
が生産の場に導入され、それがシューハートの統計的品質管理(SQC)に繋がり、第二次
大戦前にはその普及活動が展開された。第二次世界大戦は、アメリカ政府が良品質の製品
を経済的に大量に生産し、補給するために大学の研究員を動員してさまざまな手法を研究
93
させて統計的品質管理を義務付けた結果、大量生産、大量販売が開花してゆく。この時期
の近代工業は、一つの芸術品をつくるのではなく大量生産が特色で、それは製品品質に許
容差を導入し「ばらつき」を認識して手工業を近代工業に脱皮させた時代で、熟練労働は
勿論のこと、知的労働をも制約していった時代でもあった。
第二次大戦以前の日本の経営は前近代的なもので、戦後GHQは製品調達に当たって品
質向上の目的から日本企業のトップ・マネジメント教育を始めたことが、日本の品質管理
発展の大きな契機になったと云われている。それらと時を同じくして、日本規格協会、日
科技連が設立され、品質管理が国民的運動にまで発展し、工業標準化が進み、JISマー
クやJIS指定工場制度が生まれるようになった。
当初、デミングやジュランが来日して指導した時代は未だSQC(統計的品質管理)の
段階で、1960 年頃を境にしてTQC(総合的品質管理)に変身してゆく。
ちなみにSQCとは品質管理の中で「統計的手法に基礎づけられた部分」を云っており、
TQCは「一企業内の活動を越えて全社的、全国的運動を引き起こし、日本的特色を加え
ながら、国際競争力の増強を目指して発展してゆく」ため、①総合品質管理体制の確立、
②方針管理概念の提唱、③品質保証体制の充実、④マーケット・イン思想の重視(消費者
優先の思想)、⑤トップのQC診断の普及、⑥全国的品質月間の制定、などを柱にして展
開することである。
SQCの段階は多くの人々にいかに決まった品質のものを供給するかといった時期で、
言い換えれば、物不足に対して企業側の考え方を一方的に提供しても許される段階、と云
ってよい時代だった。しかし、時代の流れは需要と供給がバランスしつつ次第に需要者意
識がシビアになってきて、企業間競争とともに消費者指向に変化し、マーケット・インの
思想が必要になってくる。これがTQCの時代である。
以上のような動きの中で、モノ不足の時代からモノあまりの時代に変化して、企業を取
り巻く環境の変化はいっそう厳しくなり外部攻勢もあって、これまでの日本的なTQCを
TQM(総合的品質マネジメント)に変革せざるを得なくなってきた。
TQMとTQCの違いは、経営方針−経営戦略の立案と方針に更に深い関わりをもてる
ようにし、経営の有力な手段としたものがTQMである。それはこれまでのTQCを核と
し、①経営戦略の立案と方策およびその達成の重視、②新商品開発のためのマーケティン
グとの融合、③急速に進歩・発展している情報技術の積極的な活用と情報の質の向上、④
人間性尊重を基本とし、創造性の発揮を重視した人材育成、⑤製造物責任予防(PLP:
Product Liability Prevention)への取り込みの強化、⑥国際規格(ISO9000 シリー
ズ、ISO14000 シリーズなど)との融合、を加えたものである。
これらのことから、次世代品質経営は、顧客満足を基盤にした品質経営システムとなる
のかもしれない。現在、金融の自由化が行われた結果、銀行、証券、保険各社が揺れてい
ることはよく知られるとおりである。欧米では顧客に視点を置いた顧客重視の商品・サー
94
ビスが開発されていると云われるが、日本の金融業界は必ずしもそうではなかった。しか
し、これからは顧客や市場に価値や満足をいかに届けることができるかということが生き
残る重要な条件と云うことになる。
企業や組織は、顧客や市場にいかに価値を提供することができるかということがその存
在理由のはずである。しかし、これらの考え方は営利組織(企業)であれ非営利組織であ
れ、その目的達成のため人、物、金、情報を調達し、合理的なシステムを構築して商品や
サービスを提供・販売し、利益を上げて継続的な営みを続けるようにすることには変わり
はない。
しかし、時には社会に悪影響をもたらすこともあり、過去の経済発展の過程で起こった
公害問題は、自然環境や生活環境に大きなインパクトを与えてきた。これは、企業のみな
らず各組織や受益者双方から排出された汚染物質や廃棄物は大量生産、大量消費、大量廃
棄の悪循環が地球規模で起きていることに対して単に企業のみならず市民参加を含めた行
政などの活動一体化が大切なことを意味している。
時代の移り変わりをみると、人それぞれの考え方を変えてゆかねばならぬことを歴史は
教えている。企業の考え方を導入して地方自治の改革を進めることの必要性は十分認めら
れるが、その必要性は、大きな流れの中で起きている必然性をくみ取りつつ改善展開する
ことが大切なのではなかろうか。
3.企業経営手法について
(1)マーケティングと顧客満足
マーケティングと顧客の関係は企業と消費者との関係であり、テクニカル・エンジニア
リングとニーズの関係でもあり、また、そのゼネレーションでもあろう。
ア.マーケティングの歴史
マーケティングはアメリカで生まれたがその歴史を見ると、初めは物の欠乏していた時
代で、この時期は需要に対して生産量を増やすことがビジネスの目的と考えられていたた
めマーケティングは存在しなかった。
20 世紀に入って物が充分に行き渡り、大量の商品が安い値段で出回り、市場を攪乱す
るようになってきた。そのため価格を維持して市場秩序を取り戻そうとして合併などによ
って産業構造の合理化が進められた。その結果、現在の先進工業国の主要産業の寡占体制
が成立した。この時期には最早ビジネスにとって新しい地域の市場は無く、むしろ市場の
空間的な不足に目を向けられるようになってきた。 そのために、マーケティングが市場
を求める新しい手法として重要視されるようになってきた。企業行動は、価格を主要な競
争手段としていた。そして、企業間での暗黙の協定によって価格が長期に渉って維持され
てきた結果、企業競争の手段はマーケティングにウエイトが置かれるようになってきた。
95
広告や宣伝、販売員の強化、優秀な販売店、流通ルートの確保、そしておまけや懸賞金
つき販売へとエスカレートしていったのはこの時期である。また、市場調査によって市場
を把握し、顧客に購買行動を起こさせるような販売手法も使われた。そしていろいろな代
替品を提供し、顧客は商品選択ができるようにもなってきたが、一方、企業にとっては激
しい競争でもあった。
これらの寡占体制下の企業行動は、単に流通部門の領域だけに止まらず、トップ・マネ
ジメントの下、生産領域も含めたマーケティング活動が統合・調整されたマネジリアル・
マーケティングに発展してゆく。この現代的マーケティングの基礎理念が「消費者指向」
である。
イ.顧客の意識
年ごとに「豊かな社会」と云われる。このごろの消費者はいったいなにを求めているの
か、その姿はなかなか掴みにくくなってきている。
時の流れは技術革新をもたらし、質的レベルアップを可能にして新製品を大量に作るこ
とをできるようにした。その結果、消費者は多くの商品の中から選べるということを可能
にしたが、企業側から見れば、選ばれなければ倒産してしまうことを意味していた。
日本では 1960 年頃「にせ牛肉缶詰事件」が発生した。大和煮やコンビーフを製造販売
しているメーカー20 社の中、牛肉 100%を使っている企業は2社しかなく、鯨肉や馬肉を
混ぜて作っていたということが分かって、その不信感から牛缶の売れ行きが全く止まって
しまったことがあったのである。この事件があって消費者は不勉強や不注意で「知らな
い」のではなく、「知らない」のはむしろあたりまえでしかたのないことと考えたとき、
もし、ごまかし表示によって競争上優位に立てることが認められた場合、経済構造全体に
影響を及ぼすことになり重大な結果になる。このことが商品表示や広告などに消費者の関
心を高める結果になり、品質表示規制の制定などに繋がっていった。消費者運動の高まり
は 1940 年から 50 年にかけては粗悪品追放が中心で、60 年代初頭では表示に向けられて
いたが、後半になると各種の薬害問題や欠陥車問題が浮上して安全性が問われるようにな
ってきた。この間、一貫した消費者反対運動には「値上げ反対」があった。
1962 年、アメリカのケネディ大統領は「消費者の利益保護に関する特別教書」を議会
に送った。それは、①安全性を求める権利、②知らされる権利、③選ぶ権利、④意見を聞
いてもらう権利、の四つの権利を擁護することが国の責任であることを述べている。この
教書の冒頭は、「われわれはすべて消費者である」という言葉ではじまっている。
我が国では 1968 年に「消費者保護基本法」が制定されたが、地方自治法が改正されて
消費者行政は地方自治の責務と定められ、1978 年に「消費者の日」が定められた。
消費者が草の根グループを作って商品に対する不信感から反対運動を起こした始めたの
は、1972 年頃からである。そして、今日まで多くの消費者問題があり、その結果地方公
96
共団体の条例などで「危害防止」、「商品の品質等の表示」などの事業者の責務が規定さ
れ、やがて「製造物責任」の法律制定に繋がってゆく。
これらの動きは、企業側は消費者より多くの情報を持っており強い立場にあるという前
提で、消費者を保護するために考えられ行われてきたことであるが、消費者を顧客として
考える必要のあることは、企業側のマーケティングに立った発想と考えられる。
アメリカのレーガン政権のとき、企業の国際的競争力をつけるために徹底的な顧客重視
と品質重視を打ち出し、その前提に立って企業体質強化を指導して成果を上げている。顧
客重視の必要性は、日本が市場開放に踏み切った頃の昭和50年に産業構造審議会の答申
の中の「いかに企業は顧客に対してよりよきサービスを提供できるか」という提言の中に
も見えているが、顧客とは「満足してきてくれる人」のことを意味している。従って、単
に「使い尽くしてなくしてしまう人」という意味の消費者と顧客とは、その言っているこ
とが異なるように思われる。
これらのことから、今日的お客様対応には、消費者であり顧客である客が「満足して使
い尽くしてくれる人」に対する方法として重要な鍵がある、と云わねばならない。言い換
えると消費には限りがあり、使用側として鋭敏になってきている人々に 100%満足しても
らうためのサービスが提供側に欠かせなくなってくるということであろう。
その対応方法としては、言葉としてだけではなく心から礼を云い、相談に応じ、求めて
いることに対して共に解決策を考え出す共創が必要と云われている。それは相対した関係
ではなく、一体となったときに可能になってくることである。目的を一つにした共同作業
で、完成したときの喜びや競技で勝ったときに共感した喜びと同じであるとともに、名演
技者の素晴らしい演技に感激してくれる客は顧客であって、演技者は企業側でありサービ
ス提供者と考えると、顧客に対する対応の仕方が理解されるのではないだろうか。
ウ.地方自治体のマーケティングと顧客対応
主権在民と云われている今日ではあるが、歴史的に培われてきたお役所意識を一度に変
えることは結構難しいと思われる。いまの社会では、すべての人が消費者であり顧客の時
代であって、日常生活では、ある時はサービスを提供する側であり、ある時は顧客になる
ことがしばしばあることが常と考えるべきである。従って、立場の異なる両者が理解しあ
うためには、お互いの全人格的なことが大切になってくると思われる。しかしそうした中
で行政機関のいままでの対応には市民・住民の多くが不満を持っていることは行政機関も、
一般市民も感じていることであろう。それは情報を発信する側とそれを受ける側との違い
は、発信する側が受け手側に分かりやすく情報を提供することであり、受け手側にはさま
ざまな人が居るというだけではなくて、多くの市民・住民は「何も知らない」のは当たり
前なのだという考え方をもって情報を提供する必要が生じてくる。また、いま、企業が行
っている顧客対応と同じように考えたとき、顧客のいいたいことを「知る」ことが非常に
97
重要になってくる。企業では提供した商品の顧客満足度をパーフェクトにすることは容易
でないと知っていて顧客の希望することを認知することに努力している。しかし、立場の
違いはお互いの理解がないと解けない問題でもあるという前提で、サービスには、あくま
でもカウンセリングのように顧客の立場で顧客を理解して対応することが必要になってく
る。
いま、行政機関の中で、その意味を理解して顧客の立場で住民対応に取り組み始めた地
方自治体が出てきた。
岩手県は、いくつかの企業で得ている「日本経営品質賞」に挑戦している。この賞はま
だ新しく、かって、日本の優良企業の証となり日本の製品がその品質で競争力を得る原動
力になった「デミング賞」に次ぐ賞であって、アメリカのマルコム・ボルドリッジ賞(こ
の賞は日本の品質管理などから学んで考えられたということである)に並ぶものである。
この賞の特色は、顧客が満足するクオリティの改善を全組織レベルで創造的、継続的に行
い、優れた経営システムをもつ組織に与えるというもので、とりわけ顧客満足度を重要視
している。岩手県はこの賞の診断基準として「行政運営外部診断」の評価方法を取り入れ
た結果、「県民満足度」の評価がもっとも低かったということから幅広く県民の意見を収
集し、効果的に企画に取り込むことを行っていて、県民の1割以上にあたる人たちから寄
せられた意見・提言を紹介している。その結果は外部診断料1千万円をはるかに超える効
果が期待されているということである。
個々の顧客を大事にしないといけない時代、企業社会でも地域社会でも同じと考えられ、
注目値すると考える。
(2)品質管理
品質管理の言葉の意味は広く、ここでは日本の品質管理の歴史と経営手法として品質管
理をどのように考えればよいか詳しく述べたい。
ア.日本の品質管理の歴史
第二次大戦後、日本に進駐したアメリカのGHQは、調達製品部品の品質向上の目的で
1946 年頃からトップ・マネジメントの教育指導に当たってきた。当時の日本の経営・管
理は前近代的と考えられていたため、民間情報部CCSがその指導に当たったが、これが
日本の品質管理発展の大きな契機になったと云われている。
その後、日本規格協会や日本科学技術連盟ができて、標準化思想や管理技術の普及に繋
がっていった。その後工業標準化法が制定され日本工業規格(JIS)が整備され品質管
理が大規模な国民運動的発展になっていった。
必要によっては、経営者の自由な判断で審査を受けて工場にJISマークをつけること
も認められ、企業発展のため、これがきわめて有効と考えられるようになっていた。
98
そのような中で東大の石川、朝香教授や東工大水野教授などが研究、教育、啓蒙の中核
になって日本の品質管理を推進していった。
1950 年にはデミングが、1954 年にはジュランが来日して講演や講習会を通して教育、
普及に努めたことも大きな意義があったと云われている。
統計的品質管理(SQC)は製品を経済的に統計的に生産する手法として極めて有効だ
った。この段階では管理図や抜取検査などが重視されたが、その後、統計手法だけを重視
するのではなくてP−D−C−A*のデミング・サークルを「生産の全段階」で展開する
ことが重要になり、それだけではなくて、日本の品質管理の次の飛躍は組織活動のあり方
へと進化してゆく。
*Plan(計画)– Do(実行)– Check(評価・検証)– Action(行動・意思決定)
それまでの組織活動は命令一元化の原則による垂直命令系統が主体であった。今日的に
いわれる縦割り組織が機能の主体と考えられていた時代で、それに対して部門間関係を重
視する考え方が生まれてきた。それは権力主義だけで論じられないことを意味している。
現実に行われている生産活動は調査−企画−研究開発−設計−生産準備−生産−在庫−
販売−サービスという物、情報の流れのサークルで生産される。
従って、それらの部門を担当する部門間のコミュニケーションが極めて大切になってく
る。「次工程はお客さん」と云われている考え方はここから生まれてきた思想である。そ
の意味は従来の縦割組織だけでは品質保証が充分にできなかったことを横のつながりで保
証する活動が重要であることを説いている。
日本の品質管理の発展は、この組織活動のあり方の改善に負うところが大きかった。そ
の意味することは、単に統計手法だけに頼るのではなくて諸々の手段によって改善が進め
られなければならないということである。
1951 年にデミング賞が創設されてからその後、諸団体の講演会、講習会その他の教育、
啓蒙活動、そして表彰制度などによって「全員参加」型の日本独特の品質管理は発展して
ゆき、アメリカと異なる品質管理が作り出されてゆくことになる。
日本の経済発展は、機械化、専門家、管理技術の3つによって生産性が向上した結果と
云われているが、ここには機械の要素と人の要素が組み合わされた科学的経営の必要を知
ることができる。
この時期、アメリカでは検査中心主義であったが、日本では「品質は検査では作れない、
製品をつくる工程で作りこめ」という精神に転じていった。QCサークルが盛んになった
のもこの時期である。
TQCはファイゲンバウムの①不良損失、②評価、③予防、の3つのコストを基礎にし
て生産体系全般の活動を一つのメジャーに統一することの必要性を提言したことが始まり
と云われているが、日本のTQCは前述の「品質は工程で作り込め」という考え方と合体
し、一企業の活動ではなく国際競争力を目指して展開してゆく。その活動方法について日
99
科技連から、
①総合的品質管理体制の確立
②方針管理概念の提唱
③品質保証体制の充実
④マーケット・イン思想の重視(消費者優先の思想)
⑤トップのQC診断の普及(トップの実体把握、現場とのコミュニケーションの密接
化)
⑥全国的な品質月刊の制定
が提唱され実施されていった。
日本の品質管理がアメリカと異なることは、アメリカでは品質管理を特定の技術者の仕
事と考えられていたのに対して、日本の場合は組織全体の国民的運動であるとともに、民
間主導による活動だったということである。
1963 年に発足したQCサークル活動は、ヨーロッパの品質管理機構で発表されて反響
をよんだ。QCサークルの基本理念は①企業の体質改善・発展に寄与する、②人間性を尊
重して生き甲斐のある明るい職場をつくる、③人間の能力を発揮させ、無限の可能性を引
き出す、の3つである。それは自主性を重んじて、自ら勉強し相互啓発する活動でもある。
そして、それらのことはトップの方針にもとずく顧客・品質中心の思想に結びついてゆく
ことになる。
1974 年の石油ショックの時、省資源、省エネルギーに要請に応えて、QCサークルは
遺憾なく効果を発揮した。
一方、この時期の前後には、公害問題、製品責任問題が表面化した時代でもあった。今
日的な問題は、使用する資源量Aと得られる価値量B、そして廃棄物量Cとが有するA=
B+Cの質量保存の法則で検討することができる。しかし、廃棄物Cは資源として再生さ
れない限り廃棄物に終わってしまうだけでなく、自然の還元力の限界を超えたとき公害に
繋がってしまう。
高度発展の過程では、「消費は美徳」と考えられたこともあったが、限られた資源、公
害問題などから必然的に省資源の考え方が生まれてきた。
また、「品質は工程でつくられる」の思想はそれとして、商品が消費者に渡ってから起
きる使用方法や異常になると単に工程でつくられた品質だけではなく製品を開発や設計す
る段階まで遡らないと対応できない問題が明らかになり、やがて品質保証が源流重点思想
に変わってゆく。
こうした中で、日本のTQC活動は、顧客を含めた組織活動とともに進んできたことを
知らなければならない。組織は上位者から下位者に、下位者から上位者に向かうだけのも
のではない。組織の中の人々の活動はその中のことだけではなく、外との関係で成り立っ
てゆく。外の人の力がその組織内の誰かと結びつかない限りその組織の活動には繋がらな
100
い。人から人へ影響力を与えるには、指導力や知識、経験、地位、もの、人格などの全体
と、与えられる側の知識や環境、希望などで決まってくる。ここには認知心理がどのよう
に働いて組織活動に繋がるかと云うことなど、従来の垂直権限重視、ライン・スタッフ組
織のような地位に焦点を絞った組織活動だけでは、顧客を含めた組織活動には繋がらない
ことを意味している。今日、多くの企業の従業員は、不具合が生じたとき必要に応じて相
互関係を保って仕事をしている。機械の保守部門に関係する人は製造部門の人と相談し、
販売部門の人は設計や製造部門の人と連携し顧客との相談に当たることなどは全て組織活
動であり、それは指示・命令で動くものとは異にする組織活動である。従来の権力的な性
格の組織活動では相関関係のあるプロセス活動を阻害し、下位者を疎外する可能性があっ
て、活性化には繋がらない。日本的TQCは統計手法を全体改善の一部の方法として品質
対応や顧客対応に結びつけていったところに、その特徴がある。
このTQC活動は、きょう現在ではTQCの本質を残しながら新しい段階に入ったため、
この言葉は使われなくなってきている。
また、TQCの完成期には、既に品質のみならず消費者優先、顧客満足の考え方が大事
という考え方に到達していた。しかし、それらを前提にして企業が生き残るため、経営全
体に遡って対応する必要にせまられてきた結果生まれたのがTQM(総合的品質マネジメ
ント)である。TQCでいわれる管理とTQMで云われるマネジメントとなにが異なるか
ということは、TQCは管理に主体が置かれ、TQMは経営・管理に主体が置かれるよう
になったということであろう。
イ.品質管理の手法
品質管理の手法としての道具は一般に基本として所謂七つ道具(チェック・シート、グ
ラフ、特性要因図、パレート図、散布図、ヒストグラム、管理図)と云われるものがベー
スにあるが、この他にも新QC七つ道具(連関図、系統図、マトリックス図等)の他、あ
らゆる手法を駆使することがその考え方になっているようである。広く、ものの改善は人
の管理から、と考えたとき、人の管理の改善のために統計手法を取り入れるだけではなく
て、心理的な手法なども必要になってくる。
また、QCなどを含めた英字2文字(または、3文字)で表されるIE、OR、MH、
WFなどの多くの工学手法を含めて改善の道具としているのがTQCだった。今後も、品
質対応、顧客対応の改善の手法には、ありとあらゆる道具を必要に応じて使いこなすとい
うことが大切になるものと考える。
なお、企業では経営の財務改善の意志決定支援システムや長期経営計画にシミュレーシ
ョンモデル(模型実験)を使って検討する手法が使われている。これも道具と考えたとき、
自分の組織活動に合ったシステムを開発することも含めて考える必要があると思う。シミ
ュレーション・システムの考え方は別に新しいことではないが、経営は最後は勘で決まる
101
といわれている。企業の場合、貸借対照表や損益計算書などを使ったシミュレーションモ
デルを作り、作戦をたてて意志決定することによって勘を磨いているところもある。モデ
ルでならいくら倒産してもよいので、行政でも企業でも徹底的に体験に近い経験をして勘
を養ってはどうかと考える。コンピューターによってスピーディに意志決定できる時代に
なってきたことを考えると、シミュレーションは大切な手段ではなかろうか。
ウ.行政機関のQCの導入事例
行政機関で企業が行っているTQC、TQMを導入して業務の効率化を図る必要の提言
などがある。いま、行政機関でもパレート図やヒストグラム、レーダーチャートなどを分
析手法として使っている資料を目にすることはあるが、そのような分析資料がどのように
使われ、組織内部の活動に展開されているか定かでない。TQC、TQMを導入すること
は単にSQCを導入することとは全く異なる。SQCから導入することでスタートしたと
しても、経営の意志決定にまで繋げた展開にするまでは、経営トップの決意、行動がない
限り難しい。それは、QCの活動のもとになる方針がはっきりしていないことや、P−D
−C−Aの意味の理解が充分行き渡っていないこと、そしてなによりも行政は縦割りだけ
の社会という批判に「次工程は誰なのか」ということが分からないため、折角、舗装した
ばかりの道路を、水道工事を担当する部門、ガスを担当する部門の異なりなどから何度も
道路をほじくってめちゃめちゃにしてしまうようなもので、野球のように連携プレーので
きる組織になることが望まれる。いまの時点でSQCの手法をわずかに使っているとして
も、行政機関がTQC、TQMの考え方を導入して改善活動に具体的につなげている報告
や事例は極めて部分的にあったとしても大きな組織活動に繋がった事例は見ることができ
なかった。
近年、ISO(国際標準化機構)が定めた基準に基づいて、第三者機関が顧客の代わり
に企業の品質保証システムを審査する新しい流れがある。ISO9000 シリーズがそれで
ある。ISO9000 シリーズのTQCとの違いはTQCは物の品質を保証する事が前提に
なっているが、ISOは品質を作ることをシステムで保証することが目的で、より顧客向
きといえる。また、TQCはボトム・アップの性格が強いのに対し、ISOはトップ・ダ
ウンの性格が強いといわれている。そのISO審査を地方行政機関で申請しているところ
がある。
兵庫県洲本市ではISO9002 の認証取得を目指し、長野県佐久市はISO9001 を取得
している。ISO9000 シリーズの導入は日本の品質管理の新しい考え方で、行政機関が
顧客である住民・市民に提供するサービスをその組織活動でどのように保証体制を築いて
ゆこうとしているのか興味の持たれることである。ISO9001 と 9002 の違いは品質シス
テム項目が 9001 では 20 項目有るのに対して 9002 は 19 項目と設計管理が一つ少ない。設
計管理は開発と考えられるので、もし行政機関が新たにその地域に合ったサービスを開発
102
して他との差別化を図ろうとするのであれば、非常に期待されることであろう。なお、I
SOには 14000 シリーズ(環境マネジメント)もあり、仙台市は平成 11 年 9 月に取得し
ている。
(3)企業会計
行政の財政改善のために企業が行っている貸借対照表(B/S)を採用する地方自治機
関が増えており、その是非についても論議がある。
かつて、積極的経営と称して投資をした結果倒産した経営者が、「積極的経営をした結
果、棒に残しておかなければならない金を、みんな釣り鐘に投資してしまい、釣り鐘はで
きたが棒がないという結果になってしまった」と云ったそうである。経営のバランスをく
ずす最大の原因は、財務を無視することだと云われている。企業にとって財務のことがな
にもわかっていないということは、航海における羅針盤、飛行機における計器のことがわ
かっていないことと同じである。利益を継続的に得ることが出来ない限り、企業は存続し
得ない。その利益を得るために企業にとって大切なのは、羅針盤としての貸借対照表や損
益計算書である。
一方、官庁会計は例えば家計簿のように、金の出入りだけがわかるシステムといえよう。
もし、収入を全て生活費に回して、貯蓄をしないで収入と支出をバランスさせた生活をし
たならば、高度成長期には収入は直線的に増加してそれに合わせた生活は成り立つ。しか
し、一旦バブルがはじけて収入が減ったとき、いままでの生活をそう簡単に変えることは
できないから必然的に借金が必要となり、それだけが増えてゆくことになる。そのような
理由から利益を前提にして改善活動をしている企業人と、それを意識していない官僚との
意識差が大きな財政赤字の形で現れたとしても不思議なことではない。それは、パーキン
ソンの法則でも説明できることであろう。借金さえも意識に入れないで、帳尻合わせの
「その日暮らしの生活」はやがて破綻をきたす。
現在、東京都を始め、川崎市、神戸市、臼杵市など、企業会計を導入または検討中とい
う地方行政機関は、調査した 670 市 23 区中 1 割に及んでいるといわれている。
企業会計手法の行政機関への導入はまだ始ったばかり。その目的である財政悪化に対す
る改善課題は多く、改善手段として会計から入るのも一つの方法であろうが、それだけで
はなく、トータル的に考えて他の手法も同時導入しないと目的を達成することは容易でな
いであろう。
かつて、企業の改善には「無駄を省いて、贅沢しろ」という言葉がかってあった。改善
活動でP−D−C−Aのサイクルの回っていない組織では無駄を省くことは難しく、無駄
の省き方の知らない組織では贅沢はできない。多くの行政機関は、贅沢をできない時代に
入っており、P−D−C−Aを回して組織的な改善活動を行うことが極めて大切になるの
ではなかろうかと考える。
103
また、顧客満足が大切と云われるがゆえの地域振興策として、顧客の満足すなわち「自
我の欲求」と「自己実現の欲求」を満たすことの出来る施策こそが必要になるのではない
だろうか。それは、単に、市民参加を呼びかけるだけでなく、自分の住んでいる地区の市
民・住民に目標をもたせることが大切で、その一つとして、いま自主的に目標を掲げ活動
している人たちを大事な芽として、行政職員も参加・協力して指導することが、行政機関、
の役割として求められていると思われる。
104
第4節
行政評価
1.行政評価の概念
(1)行政評価とは
近年の景気低迷の影響もあり、ほとんどの自治体のみならず、国の機関においても厳し
い財政状況などから、行政には簡素化・効率化が求められており、仙台市も例外ではない。
また、市民にとって納得のいく行政サービスが目に見える形で提供されることを期待さ
れる中で、情報公開や説明責任(アカウンタビリティ)が重要となってきている。
このような流れの中で、1970年代のアメリカや、1990年代初頭のイギリスで導入され、
大きな成果を挙げている「行政評価」は、行政改革の手法の一つであるとともに、行政と
市民を結ぶ一種のコミュニケーションツールとして期待されている。
また、今まで客観性を持った批評を受けることなく進められてきた事業に対して、行政
評価という光を当てることで、それに携わる行政職員の自己啓発を促す効果についても関
心が持たれ、急激に浸透しつつある。
広義の「行政評価」は、財務管理・行政監察・人事評価・管理評価等様々な行政活動を
評価することと整理できるが、現在日本においては「行政評価」と言うと、客観的な指標
で設定された政策目標の達成度、つまり、政策・施策・事業評価等を指し示すことが多い。
そこで、ここでは一般的に「行政評価」という名称を使用し、政策・施策・事業評価につ
いて述べることとする。
(2)評価における効果と指標
先にも述べたように、日本における行政評価は施策・政策・事務事業評価であり、その
ほとんどは、事業などに起因する効果を評価するものである。その種類としては、
・投資効果:事業そのものに起因するもの
・定量効果:税収や雇用、資産価値の増大、地域経済への波及といった経済効果のように
比較的計測が容易にできる効果
・定性効果:利便性の向上、渋滞緩和、安全性や快適性の向上、レクリエーション機会の
増大などインプットとアウトカムの関係が不明瞭なもの
などがあげられる。
また、効果の測定のため、達成の目標としての指標がある。指標は、具体的に数字を挙
げることで、現在のポジションから目標までのギャップが誰にでもわかりやすく表せるこ
とから、具体的数字を挙げることが望ましいとされる。
アメリカ合衆国オレゴン州では、効果の目標として1987年の「オレゴンシャインⅠ」で
259個の目標指数を、また、1997年から「オレゴンシャインⅡ」という目標指標(アウト
カム指標)を導入した。
その内容は、「成人でたばこを吸わない人の割合」など非常に具体的で、住民にわかり
105
やすく州のありたい姿を説明している。
アンケートの結果から日本においても、様々な自治体で目標指標を検討・設定している
が、よりわかりやすく現実性のある指標づくりをめざし奮闘しているようである。
(3)評価の種類
現在日本でおこなわれている行政評価の種類は大きく分けて3つあると考えられる。
一つ目は、住民を顧客と考え、顧客の期待成果を具体的項目にあげ、目指す目標値を設
定し、その達成度を評価する「施策評価」である。日本では、静岡県の「業務棚卸表」に
代表される。
二つ目は三重県の「事務事業評価」に代表される「執行評価」である。評価方法は活動
単位あたりの効率を測り、改善活動を動機づけしていくもので、企業のTQC等として一
般に知られているものである。
三つ目は公共事業などの「投資的経費の再評価」である。これは、北海道にておこなわ
れている「時のアセスメント」に代表され最も早く定着し、また一般に広く知られる評価
となっている。
仙台市においても平成11年1月に仙台市公共事業再評価委員会を設置し、事業着手後10
年以上経過した事業(31事業)に対し再評価(いわゆる「時のアセスメント」の仙台版)
をおこなている。
宮城県においても、これら3つの評価をカバーする形で、5つの評価を計画・検討して
おり、一部については現在進行中である。
表2-24
宮城県の評価の種類と実行計画
平成10年度
平成11年度
平成12年度
事務事業総点検
本格実施
同左
同左
施策評価
指標の設定
同左
本格実施
執行評価
評価手法の検討
モデル試行
本格実施
大規模事業評価
評価手法の検討、モデル試行
本格実施
同左
事業箇所評価
評価指針の設定と評価の実施
本格実施(公表)
同左
(4)自治体アンケートの結果から
−行政評価と市民参加−
ここで、評価者と評価の対象者の関係を考えてみると、評価には基本的に自分評価と他
人評価がある。自己改革のために自分自身を適切に評価(自分評価)できればそれに越し
たことはない。しかし、現実にはそこに思い入れや個人的な感情といった主観性が存在
してしまうため、客観的な他人評価が必要なのである。基本的には、事業といわれるもの
にエンドユーザーが存在する限り、他人評価が必要であるといえるのではなかろうか。
ここでは、そのような姿勢や取り組みが自治体の中でどのように進んでいるかについて
106
今回実施した自治体アンケート(本章第2節第2項)の結果を抜粋した。
図2-7
行政サービスの受益者たる市民の行政評価への参加方法について
市民の行政評価への参加方法(複数回答)
70%
25
60%
20
%
件数
50%
15
40%
30%
10
20%
5
10%
7 .そ の他
6 .評 価 可 能 な 事 業 に つ い て市 民 ︵モ ニタ ー 等 ︶が 直 接 評 価 を 行 う
5 .意 識 調 査 等 の結 果 を 市 民 の評 価 と
し て取 り 入 れ る
4 .政 策 指 標 設 定 に市 民 の意 見 を 反 映
さ せる
3 .評 価 結 果 に つ い て積 極 的 に広 報 を
行 い理 解 の促 進 を 図 る
2 .外 部 に市 民 代 表 を 含 め た 評 価 委 員
会 や 審 議 会 を 設 ける
1 .評 価 資 料 の公 開 を 持 って参 加 に代
える
0%
0
市民の行政評価への参加方法については、「評価結果について積極的に広報を行い、理
解の促進を図る」が58%と最も多く、以下、「政策指標設定に市民の意見を反映させる」
34%、「外部に市民代表を含めた評価委員会や審議会を設ける」31%などとなっており、
「評価可能な事業について市民(モニター等)が直接評価を行う」11%だけがやや低い評
価となった。ただし、すべて検討中という回答である。
このようなことから、現段階では直接的な市民参加に対する取り組みはまだ少ないとい
える。その理由として、日本においての評価の歴史が浅いこと、また評価の導入が内部改
革を主眼において始められたケースが多いことなどが考えられる。
107
・図2-8
行政評価の取組状況
6.未回答
3%
5.その他
0%
4.考えていない
0%
行政評価の取組状況(回答34件)
1.導入済
35%
3.検討中
44%
行政評価の実施状況を見ると、導入
済、試行中を併せて53%が実施済であ
り、検討中も含めてほとんどの自治体
2.試行中
18%
が何らかの取り組みを行っている。
・図2-9
行政評価の取組開始年
行政評価の取り組み開始年(回答34件)
1996年
5%
未回答
14%
1997年
19%
2001年
8%
2000年
8%
1998年
14%
行政評価の取組開始年をみると1999
年を中心として、ここ数年急激に広ま
1999年
32%
りつつあることがわかる。
・図2-10
対象とする事業(複数回答可)
行政評価の対象とする事業等
20
18
回答数
16
14
12
10
8
6
4
事務事業を対象としている場合が
2
5 .そ の他
4 .施 策 レ ベル
3 .政 策 レ ベル
2 .一 部 の事 務 事
業
1 .全 て の事 務 事
業
0
最も多いが特徴的とまではいえない。
様々な事業を対象としているようで
ある。
108
表2-25
・具体的な評価制度について(政策または施策レベルでの評価を実施している場合に回答)
1.最も上位の評価項目の数
回答5件
(数値目標化あり2件
3件
2.上記指標の性質区分内訳
回答3件
数値目標なし
いずれもあり1件)
(定量化指標あり1件
あり1件
非定量化指標
いずれもあり1件)
3.評価指標の選定・決定方法
回答7件
4.外部の評価委員会の有無
回答8件
(あり4件
なし4件)
5.内部の評価委員会の有無
回答8件
(あり3件
なし5件)
6.目標達成度の検証サイクル
回答8件
(1年毎7件
3年毎1件)
7.評価指標項目の見直しサイクル
回答8件
(1年毎5件
3年毎2件
5年毎1件)
8.評価指標項目の見直し方法
回答8件
9.評価指標に対応する事業体系の明示
回答8件
(行っている6件
行っていない1件
10総合計画と評価の連動について
回答7件
未定1件)
(連動している5件
連動していない1件
11評価指標の公表方法
回答7件
12評価調書、評価結果の公表状況
回答7件
未定1件)
評価項目数については、ばらつきが大きかった。評価指標の選定・決定方法は、庁内のみ
で検討・決定しているものが4件、「庁内で検討し県民の意見を聞いて」や「庁内で選考
したものを外部の審議会で検討のうえ選定」という2段階型、「意識調査、グループイン
タビュー、アンケートによる」という県民主体型に分類できる。
評価指標項目の見直し方法については評価指標の選定・決定方法に準じた回答となって
いる。
評価指標の公表方法は、インターネットが4件、中期計画書で公表が1件、総合計画に
記載1件となっており全回答数が8件であることを考慮すれば、インターネットによる公
表が進んでいることがうかがえる。評価調書、評価結果を公表している自治体は3件にと
どまった。しかし、現在試行段階、検討中段階の自治体が多いことを考慮すれば今後公表
する自治体は増加するものと思われる。
109
行政評価の問題点(3つまで回答可)
図2-11
行政評価の問題点(3つまで回答可)
70%
25
50%
20
15
1 0 .そ の他
9 .住 民 の関 心 が 低 い
8 .評 価 結 果 が 誤 解 や 混 乱 を 招 き か ね な
い
7 .評 価 が 低 い事 業 だ か ら と い って事 業
を 中 止 でき な いも の が あ る
6 .評 価 結 果 に つ い て自 信 が 持 てな い
5 .時 間 と コス ト が か か る
4 .評 価 の意 義 に つ い て内 部 の理 解 が 得
ら れ にく い
3 .内 部 管 理 部 門 の評 価 が 困 難 であ る
2 .評 価 技 術 の蓄 積 が な い
1 .客 観 的 な 評 価 指 標 の設 定 が 困 難
110
40%
件数
%
30%
10
10%
5
0%
0
80%
30
60%
20%
行政評価の問題点としては、「客観的な評価指標の設定が困難」71%と「評価技術の蓄
積がない」54%の2つが特に指摘されている。
これらは、新しいシステムの導入に際し、試行錯誤しながら手法を模索している段階で
あるためと考えられ、データや経験の蓄積とともに減少していくことが予想される。
(5)行政評価の事例
日本においてはまだ評価の導入が始まったばかりか、または準備中である場合が多く、
評価が本格的に実施されている事例は少ない。その中で特に、三重県の「事務事業評価」、
静岡県の「業務棚卸し」は行政評価としての改革・改善がめざましい。また、北九州市の
「イベント評価」、三重のNPOによる「事業評価」は、先進性という観点から興味を引か
れる。これらの4事例については現地調査を行ったことから、後節で詳述することとして、
ここでは海外の先進的な事例をいくつか紹介する。
ア.米国カリフォルニア州サニーベール市
・導入の背景
1970年代に連邦政府から公共安全部がパイロットに指定され導入。
効果が期待されたためプロジェクト終了後も様々な部署へ適用していった。
・導入者(提案者)
市政担当局(特にアシスタントシティマネージャー)
・評価機関
市評議会(ボランティア)
・評価システム
「PAMS(Planning And Management System)=計画管理システム」
コスト、達成状況を細かく管理して効率化をはかり、結果を予算の策定・公務員の給
与に反映。
1990年代に入ってからさらに「OM(Outcome Management)=成果管理システム」
を
上乗せ導入した。
イ.米国オレゴン州
・導入の背景
オレゴン州における主要産業(林業・農業)の不況と財政危機により、州経済の抜本的
改革が必要であった。そこで、行政サービスだけでなく産業構造の改革をもねらって導入。
・導入者(提案者)
州知事
・評価機関
プログレスボード(評議委員会)
・評価システム
「ベンチマーキング:指標の比較分析」
同一の項目に沿って類似機関のパフォーマンスと比べてみて、差異を発見し、かつその
要因を分析する企業経営改革の手法。
111
1987年の「オレゴンシャインⅠ」では259個の目標指数を立て、州のありたい姿を明確
にわかりやすく説明できたため、州民の支持を得ることができた。
1997年には「オレゴンシャインⅡ」という92個のアウトカム指標を新たに導入。
ウ.米 国(連邦政府)
・導入の背景
膨大な財政赤字を背景に、NPR(National Performance Review)といわれる行政改革
を進めているが、その改革を継続推進する仕掛けとして導入。
・導入者(提案者)
デラウエア州選出のロス議員が、サニーベール市の例に感銘を受け提案。それを、GAO
(行政監視院:General Accounting Office)が支援。
・評価機関
GAO(行政監視院:General Accounting Office)
・評価システム
GPRA(Government Performance and Results Act:政府業務の業務評価及び連邦政府
への報告を義務 づける法律)法を1993年に導入。
1999年で準備猶予期間を終える。
エ.英 国
・導入の背景
サッチャー政権時代に地方政府の財政悪化を背景に自治体改革をおこなっていたが、そ
の施策の一つとして1990年代に入りメージャー政権のもとで導入。
・導入者(提案者)
政府
・評価機関
中央レベル:会計検査院(National Audit Office)
地方レベル:自治体監査委員会(Audit Commission for Local Authorities)
・評価システム
市民憲章:ベンチマーク指標を含む一種の「行動目標」
業績情報公開制度:ベンチマーキングによる自治体行政サービスの評価システム(1992
年導入)
112
オ.ジョイントベンチャー・シリコンバレー・ネットワーク
(シリコンバレー:米国カリフォルニア州)
・導入の背景
エド・マックランをはじめとする市民起業家の指導の下、シリコンバレーの経済とコミ
ュニティにとって望ましい姿について討議する中で、シリコンバレーといわれる経済的
地域(行政区に当てはまらない地域)の経済に関する客観的で信頼性のある情報源とな
ろうとしていた。そうした流れの中で、生活の質を測る一連の指標を開発していった。
・導入者・評価機関
ジョイントベンチャー・シリコンバレー・ネットワーク
(非営利の産業界、市民起業家、教育関係、行政から構成されるコンソーシアム)
・評価システム
「シリコンバレーインデックス(Silicon Valley Index)」と呼ばれる小冊子を毎年発行。
「仕事の質」、「仕事の量」といったような15の経済的指標と「教育」、「環境」、「インフ
ラ」等といった16の生活の質に関する数値指標を用いて、読者にわかりやすい用語でシ
リコンバレーの年次報告を独自に行っている。特に目標数値を設けることはおこなって
いないが、指標を市民が決め、それが毎年公表されること自体が大きな意味を持ってい
るといえる。
113
2.三重県事務事業評価
(1)事業主体
三重県
(2)事業概要
北川知事が平成7年度就任当初から、民間企業の考え方を取り入れたシステム構築
(PLAN−DO−SEEのマネジメントサイクル、デザインアプローチ的手法)に関心があり、
「生活者を起点とする行政運営」を目標に始めた「さわやか運動」の具体的な展開イメー
ジとして事業評価システムを導入。これを中核として「長期計画策定・評価システム」、
「予算編成・執行管理システム」との連携を図りながら、改革を進めている。これに、市
町村や県民とのコミュニケーションの基本方向である「広報・広聴政策」、組織機構・定
員管理の基本方向である「組織・定員政策」、人材育成と適正配置等の基本方向である
「人事管理政策」、中長期的な視野での歳入歳出の適正化を図る「中長期財政政策」を密
接に関連させている。当初、職員の意識改革、行政の質の向上を大きな目的とした。
制度導入に際しては、日本能率協会に委託を行い、協会は職員と協力して三重県用に評
価制度を新規開発した。平成7年から平成9年まで3年間7,000万円づつ合計2億1,000万
円の費用がかかったが、そのほとんどは研修費であった。
長期計画策定・評価システム
組織・
定員政策
広
報
事務事業評価システム
・
広
人事管理
聴
政策
政
策
予算編成システム・執行管理システム
中期財政政策
図2-12
さわやか運動における各種政策と事務事業評価システム
114
表2-13 事務事業評価導入から現在まで
さわやか運動」キックオフ大会
部次長級研修
(集団及び個人)
事務事業評価システム
1泊2日×2回
骨格構築
所属長研修
集団及び個人)
1泊2日×2回
70名
政策評価
私の改革構想
H
7
350名
年
事務事業評価
政策展開研修
度
課・所の
改革構想
テキスト編集
H
8
本庁・事務担当者
事務事業評価
(補佐級・係長級)
事務事業
平成9年度
研修・説明会
目的評価表
予算編成
年
度
600名
本庁・地域機関事業
政策体系に基づく
(総合計画)
担当者
基本事務事業単位
三重の
の設定
くにづくり宣言
(補佐級・係長級)
H
9
研修・説明
1700名
事務事業評価
事務事業
平成10年度
年
予算編成
度
目的評価表
事務事業目的評価表(3381事業)の公表
H10年度運用
に関する説明会
政策体系に基づく
基本事務事業の
(総合計画)
三重の
評価
くにづくり宣言
基本事務事
業目的評価表
H
平成11年度
予算編成
事務事業評価
事務事業
目的評価表
基本事務事業目的評価表、事務事業目的評価表ともに公表
(情報公開窓口+インターネット)
115
10
年
度
(3)評価方法と運用スケジュール
実際の評価のための評価表には以下の3つがある。
1)基本事務事業目的評価表:事務事業の上位目的レベルでのプランニング
2)新規事務事業目的評価表:新規事務事業の事前評価
3)継続事務事業目的評価表:継続事務事業の実施結果の評価(毎年)
新規は事前評価、基本と継続は事後評価と考えているが、実際は基本と継続については
予算前に作るので、半分ぐらいで評価する。そのため、予算をとれる評価としてしまう。
評価者は、基本は部課長級、新規・継続は担当課長級が建前だが、実際は職員が書いて
いることも多かった。そこで、平成11年度は評価表及び運用スケジュールの改正を行い、
評価項目の内容も担当部課長級、担当課長級でなければ記入できない内容に改正した。
現在基本と新規は新様式で行っている(予算のときの資料とする)。継続については年
度終了後、新様式にて事後評価を行う予定である。
表2-14
事務事業評価システム現在の運用状況
表2-15
事務事業評価システム新しい運用スケジュール
116
表2-17
情報公開窓口目的評価表複写依頼数(人数・枚数)
※閲覧のみした人数は把握されていない。また、HPアクセス数との関連は不明
図2-18
三重県情報公開室での評価表の公開状況
(6)成果と課題
三重県は平成8年度当時の職員意識改革については、ある程度の成果があったと考えて
いる。(人の目を気にすることで体裁の良いもの、わかりやすいものとする効果があっ
た。)平成11年度からは目的の整理見直しをおこなっている。
携わっている職員からの意見は、有効な活用の方法が見つからず、作業ばかり増えたと
いう否定派がほとんどであり、今後いかに定着させていくかが課題である。活用について
は研修会等をすすめていく方針。
118
(7)考 察
三重県の事務事業評価は、使いこなせれば大変良くできたシステムである。しかし、使
いこなすのが大変難しいと聞いた。それをいかに定着させるかが課題であることは、三重
県自身がよく理解していた。
また、事務事業評価への県民参加は課題ではあるが、現在のシステムは内部評価を前提
としたものであり、今のままでは県民に参加してもらうことは難しい、と県は考えている。
財政改革を発端にした事務事業評価は現在めざましいスピードで改良・改善されている。
住民を顧客、株主ととらえたときに、県民の評価をどれだけ吸い上げることができ、明確
に説明・広報できるかが、今後の行政にとって大きな課題である。三重県の事務事業評価
において、今後どのような形・過程で、また、どの辺まで評価システムに県民参加(外部
評価)を取り入れていくのか、取り入れやすいようにシステムを改良・改善していくかに
ついて強い関心を抱いている。
119
3.市民による事業評価検討グループみえ
(1)事業主体
三重県NPO室
(2)活動の概要
平成10年4月に官設官営でNPO室開設後、市民の参画で「みえNPO研究会の設立」、
「市民活動センターの開設」、「市民活動フォーラムの開催」、「市民活動塾の開催」の4つ
の事業をおこなった。
その後事業が終了したとき、参加したメンバーから結果をどうするか(次の展開につな
げていかなければならない:事業改善)という意見が持ち上がって、ちょうど三重では行
政評価がはやっていたこともあり、この手法はどうかということではじめた。勉強してい
く中で、三重県でやっている行政評価のスタイルではわかりにくいということになり、自
分たちの手で作成をすることになった。
作成された「事業評価システム99」は、NPO・市民活動団体の事業及び行政と市民
の協働事業をより有効に機能させることを目的としている。
中心メンバーの粉川氏は、現在三重県より嘱託として採用されて活動している。また、
グループはコミュニティ・シンクタンク「評価みえ」として、NPO法人格を申請中である。
企画
準備
経験を生かし
適切な役割分担と進行管理。
効率的な運用、常に事業
改善に努力
目的意識のある
実施
評価・検討
冷静な事業の反省
次への経験の蓄積
企画
新たな企画をよりよくするために経験を生かす
図2-19
提案したい新しい事業の進め方
(3)なぜ評価が必要なのか
事業を実施する際に事業を管理する視点がかけていたり、実施後「一生懸命やった」、
「世の中の役に立ったはずだ」などという自己満足だけでは事業の改善は望めない。そこ
で、適切な事業管理の考え方を加えることで、同じ労力で効率的に成果を残すことができ
る。また、事業の管理が外部の人々からわかりやすくなっていることで、理解も得やすい。
図2-20
事業改善における評価システムの位置づけ
120
(4)評価対象
当初、市民と行政の共同事業を対象に考えていたが、それを市民活動にも使えるように
した。施策評価(行政単独事業)もターゲットにしている。
(5)評価項目及び評価者
評価項目は、200項目ぐらい考えてその中から重要度を吟味し、「予算・企画力」、
「実施・運営力」、「市民参加度・公開性」、「地域社会への貢献度」の4グループに分けら
れる20項目としている。また、その中でも「広報の方法」、「広報のわかりやすさ」と、
広報に関する項目が2つあり、これを重要視していることがうかがえる。
評価表は企業の事業評価方法などを参考に、
市民活動参加者自らの手で作成した。評価表
によって導き出される点数はシビアだが、携
わった人々が共通認識をもてる。また、評価
した内容をレーダーチャートにまとめること
で、複数の人が簡単に結果を共有出来るシス
テムとなっている。
図2-21
評価のレーダーチャート
(6)評価システムの位置づけ
「市民による評価システム99」は、事業にかかわった市民が評価者となる内部評価であ
り、第三者評価ではない。代表の粉川氏によれば、第三者評価(外部評価)を否定するも
のではないが、自分で自分がおこなったことを自己改善のために評価するという「評価の
王道」を走りたいという思いからこの手法をとったそうである。
将来的には評価シートをモジュール化し、組み合わせて使えるようにする。現在のこの
評価表(評価システム99standard edition)は、現在考えている評価方法全体のベースの
部分であり、そこに事業のタイプに応じて追加するオプション部分を作成中である。
情報公開、情報基盤への評価
ビ ミ
ジ ッ
ョ シ
ン ョ
の ン
評
事目
内部評価によるマネージメント管理
成
果
前標
の
評管
評
価理
顧客満足度の測定
価
価
図2-22 「市民による評価システム99」の構造
121
「評価システム99」
内部評価によるマネージメント管理を中心にした評価
1999年3月
受益者評価システムへのトライ
評価システム99standard edition に顧客満足度
及び成果評価の測定部分をプラスすることで、
よりきめ細かな評価活動が可能に。
(東紀州フェスタの15イベントを対象にテスト。
参加者の10%を目標にアンケート形式でおこなった。)
1999年11月
「評価システム99PLUS」
内部評価に目標管理・事前評価をプラス
1999年9月
協働事業評価における
協働事業
目標管理・事前評価
チェックシート
※NPO協働事業研究会
(ア)
1999年10月
の発足
集客交流施設評価
成果への評価
(箱もの評価)
※集客交流施設研究ワークグループ
市町村政策評価
※市町村政策評価検討グループ
(イ)
に協力、評価方法を検討
ミッションビジョンの評価
(ウ)
の立ち上げ
2000年2月
図2-23
(ア)
評価モジュールの作成の流れ
1999年3月、三重県職員を中心に発足した会。
「市民による事業評価検討グループみえ」のメンバーも参加。
(イ)
三重県庁内の政策研究会
(ウ)
1999年7月、三重県内の市町村職員や、県職員、NPOメンバー、地方自治を専
攻する大学院生などが集まり結成
122
(7)評価の事例
1998年度におこなった評価事例のうち、下記の3事業に関する各項目の平均点は表2-26
のとおりである。
行政側と住民側の結果に特別大きな違いはみられないが、これは協働に携わった人々に
評価を依頼しており、事業を進める過程でかなりの部分で意識の合意形成がなされた結果
ではないかと考える。
行政と住民には意識や考えに壁があるといわれているが、十分合意形成がはかられれば
これだけ近い評価結果が得られるのだ。
表2-26
1998年度事業における評価結果の平均点
市民活動センター開設準備会
市民活動塾
市民
行政
市民
行政
みえNPO研究会
市民
行政
1-1
事業の施策整合性
5.0
5.0
5.0
5.0
4.0
5.0
1-2
事業の効果予想と事業計画書
3.0
3.0
3.0
3.8
3.0
3.0
3.8
3.0
2.8
3.2
3.6
1-3
予算・
費用対効果と事業規模
3.0
1-4
企画力
企画の際の情報収集
2.8 3.5 3.6 3.7 5.0 3.8 3.4 3.6 3.6 3.6 3.6 3.9
1-5
企画内容の妥当性
3.6
3.2
3.0
2.8
4.4
4.2
2-1
業務実施時期と役割分担
3.8
3.6
3.0
3.8
3.6
4.6
2-2
情報の共有
3.2
3.4
3.0
3.2
4.0
4.0
2.6
3.0
3.6
3.4
2.8
2-3
実施・
人材養成
2.4
2-4
運営力
問題点の吸い上げと業務改善
3.0 3.0 3.2 3.1 2.0 2.8 4.0 3.6 5.0 3.6 4.4 3.8
2-5
事業実施後の振り返り
2.6
2.8
3.0
3.6
2.2
3.2
3-1
企画段階での公開性
4.0
3.6
3.2
2.4
4.0
2.8
事業実施の際のパートナーシップ
3.8
3.4
3.4
3.4
4.2
4.6
広報の方法
3.2
3.6
3.2
3.4
3.2
3.6
広報のわかりやすさ
3.0 3.3 3.0 3.4 3.3 3.2 4.0 3.2 2.8 3.7 3.4 3.6
3-5
事業後の情報公開
2.6
3.4
2.7
2.8
4.2
3.4
4-1
企画意図の達成度
2.8
3.0
3.8
3.2
4.0
4.4
市民の主体性
2.8
3.0
3.8
3.2
3.6
4.2
ネットワークの構築
3.8
3.8
4.0
4.0
4.4
4.2
事業対象者の満足度
2.6 3.0 2.8 3.2 3.8 3.7 3.4 3.5 3.2 3.8 3.4 4.1
事業実施者の達成感
3.2
3-2
市民
3-3
参加度・
3-4
公開性
4-2
地域社会
4-3
への
4-4
貢献度
4-5
3.2
3.0
3.8
3.8
4.2
※「市民活動フォーラム」分は公開方法に条件があるため掲載しない。
123
(8)問題点と課題
地域の行政をよく知っているのはコンサルでも、大学でもない。実際に生活している住
民や、行政職員である。生活者が行政を評価するとき、今までの有識者、オンブズマンと
どう違うのか。生活者としての視点で評価していくために、NPOの活動の評価の視点を
持っていなくてはならない。
しかし、生活者による評価をめざし、また、より簡単で明快なシステムを目指して様々
な試みをしているが、「評価」そのものを真剣に考え詰めていくと難しい話になっていっ
てしまう。
(9)考 察
今後は、「評価」のクオリティと、「評価への参加しやすさ」のバランスをいかにとるかが、
大きな課題である。そのためには、評価をわかりやすいものにすることも一つの方法だが、
住民レベルの底上げが絶対的に必要ではないかと考える。また、それを達成することで三
重発の住民参画、協働、評価がさらにすばらしいものとなっていくだろう。
図2-24 三重県NPO室にてのヒアリングの様子
124
4.業務棚卸(静岡県)
ア.動機と経緯
現知事の行政改革の方針に沿って人事課(後に行政改革室)が着手した。
行政の生産性向上を目的とした行政改革のために、目的を明確にした戦略的な行政運営
(目的志向型行政運営システム)の3本の柱、①戦略的政策展開システム、②組織のフラ
ット化、③業務棚卸表の活用のうちの一つである。
平成7年度から始まった管理職対象の「リエンジニアリング研修」(講師:静岡県立大
学経営情報学部
北大路信郷氏)が業務棚卸表との出会いであり、この研修の中で、業務
棚卸表は課題発見・分析ツールとして活用された。平成9年度までに、研修での取り組み
も含めて本庁のすべての係・スタッフ単位に業務棚卸表を完成させた。
図 2-25 静岡県の行政改革の概要図
「静岡県型行政評価システム−節約から
行政の生産性向上に向けて−(平成 11 年
9月
静岡県行政改革室)」
より
イ.業務棚卸表
業務棚卸表は係レベルの個別の業務ごとに作成し、細かく業務を記載した個表とそれを
とりまとめた総括表がある(表 2-27)。その特色は以下のとおり。
●
任務の樹木構造での表現
行政の仕事内容を、上位の目的とそれを達成するための手段群という数段階の樹木構造
で表現。
●
管理指標の設定
目的達成度の評価指標と、その実績、目標値、達成期間を設定。上位の目的は、需要側
成果の「アウトカム指標」、下位の手段には供給側成果の「アウトプット指標」を使用。
125
●
投入資源を明示
労働量、予算量を記入した。
表 2-27 業務棚卸表
126
ウ.評価・活用
平成9年8、9月に業務棚卸表を基本とした事務事業の見直し(サマーレビュー)を実
施した。平成 10、11 年度の業務に反映されており業務棚卸表を作成した1万2千事業の
うち、3千5百件を改善した。
表 2-28 業務見直し実績
エ.公開
評価結果は県庁・行政センターでの閲覧およびHPで公表している。業務棚卸表はまだ
公表のレベルに達していないと考えていたが、公表によってレベルアップしたと思う。
公表結果については、感想等はあるが具体的な提言などの意見等の反応はほとんどない。
オ.今後の取組
今後さらに行政改革を推進し、組織のフラット化、戦略的政策展開システムを定着させ
ていく。業務棚卸表については、現在業務棚卸表を 400 の組織で別々に作成しており全体
127
としての統一がはかれていないので、管理指標を施策ごとに大括りして県民の目から見て
わかりやすい形にしたい。
カ.考察
業務棚卸表は外部の人間がみても事業がわかりやすく記入されており、利用価値が大き
いのではないかと思われた。しかし、県民からの反応が少ないのは、さらにわかりやすい
評価が求められているからだとも考えられる。内部評価のための手法と外部へ発信する際
の手法は、それぞれ目的に応じた形を選択するべきなのだろう。
また、職員に新しいシステムが浸透、定着していないとのことだった。これから職員の
意識改革が必要であろう。
128
5.北九州イベント評価
(1)事業主体
北九州市
(2)事業概要
八幡製鉄所など大きな事業所の縮小撤退などが相次ぎ、人口が伸び悩み、減少傾向にあ
る中、様々な施策が北九州市内でおこなわれてきた。そうした中で、市長のリーダーシッ
プのもと、既存のイベントを利用して市政をアピールするために導入した。平成6年に提
案(検討委員会設置)、平成7年度より実施。
イベントにおける実施主体である行政担当者が自己改革をするために、また、北九州の
イベント全体のレベルアップを図っていく手だてとして、イベントの効果測定を体系化し
た評価システムを構築。
図2-26
【システムの概要と流れ】
イベント企画
チェックシートの活用
レディメイドあり。オーダーメイド可
外部評価
イベント実施
職員モニター
(イベント担当部署の16人。 一人
アンケート調査
入場者・参加者
3∼4回/年)
反省会
市政モニター
(公募150人中 1イベント75人程度)
(原局、職員モニター、総務局)
市長・助役への
自己評価
中間報告
原局
(原局、総務局)
各データの集積
原局
市長・助役への
総合評価
結果報告
原局
次回イベントへ反映
改善・整理
129
イベント後5日以内
(3)評価システムの目標
以下の8項目に留意してシステムの構築をおこなった。
・誰にでも、どのイベントにも活用できるシステム
・あらゆる面から分析、評価し、問題点を把握できるシステム
・評価結果が次回イベント実施につながるシステム
・行政イベントへの積極的な姿勢と意欲を燃やせる人材育成のシステム
・幅広い視点から、客観的な評価、公正な評価のできるシステム
・イベント実施目的の再認識、軌道修正のための資料になるシステム
・イベント実施主体(局・部・課)の意思統一を図れるシステム
・イベント実施主体(局・部・課)自らの手で改善に取り組めるシステム
(4)対象イベントの選定基準とイベント件数の推移
市主催イベントの中から、年間10件前後総務課がピックアップ。局、区、時期、継続し
ているか、一般市民参加型のイベントであるかを考慮して選定する。単発であっても施設
開館的なものは選定の対象としている。
現実には市政モニターの75人が入れる規模のイベントかどうかも選定の基準となって
いる。連続抽出は2回まで。また、選定基準に予算規模は関係ない。
表2-29
イベント評価対象イベント数
対象イベント数
対象イベント中前年度からの継続数
平成7年
9
−
平成8年
11
5
平成9年
7
1
平成10年
7
1
平成11年
6
−
※対象イベントが減っているのは全体のイベント数が減少傾向にあるためである
(5)導入の効果(予算との連動、事業の見直し状況等)
予算との連動はない。ただしモニター(市政モニターに依頼)には予算も提示してあり、
それを含んだ形での回答と市役所は解釈している。
また、予算が問題となるような大きなイベントは、システムができてからまだない。
2001年には大きな博覧会があるのでこれについては考慮していくものと予想される。
評価が低かった(マイナスの評価が5割を越える)ことはないので、事業を中止したこ
とはないが変更改良して実施となることはあった。
130
(6)評価資料の蓄積(共有化)・公開状況
評価資料については原局(担当課)にて保存。総務課には反省会などの資料は残る。
評価資料の公開はしていない。市役所として、データを加工して使う場合もある。
(7)システムの特徴
・誰にでもでき、わかりやすいシステム
システム導入により、イベントの見直し改善を
・自己評価と外部評価の2本立て
担当局評価、イベントモニター、参加者、市民からみた評価を
・イベント評価の目標化
計画段階からの目標設定と達成度の分析を
・客観的な広い視点からの評価
一人称の評価から二人称、三人称の評価を
・評価結果の蓄積
年度ごとの総合評価、施策目標実現過程の検証を可能に
(8)考 察
早い時期からモニターなどを取り入れ、評価の手法としては先進的な事例だが、評価結
果の次のステップへ活かす過程は、個々の原局(担当課)に任されている。また、それを
北九州市役所全体として検証していない、つまりPDSサイクルが機能していないので、
きわめて不鮮明な結果となる可能性が高い運用状況である。行政職員の自己改善を目標と
しているが、単なる政策アピールにとどまる懸念がある。
ただし、着眼点はすばらしいものであると思われ、今後、各自治体で導入が検討されて
いる第三者評価の方向へ移行されれば、大きく改善される可能性を持った評価である。
131
6.行政評価まとめ
市民参加を考えていくうえで欠かせないのは、「顧客」としての市民という考え方であ
り、アカウンタビリティや顧客満足を促進するために企業経営に学ぶことは今や必須であ
る。また、「事業評価」は事業採算性や効率性、効果等を数値化し客観化することで、そ
の事業の妥当性を検証しようとするものであり、市民参加を考えていくうえで欠かせない
手法であるといえる。
現在、多くの自治体は住民の意見を取り込むために「パブリック・コメント」や、「積
極的な広報」など、様々な手法や指標を検討中である。これらは住民参加の有益性が理解
されつつある結果であると考えてよいだろう。
しかし、様々な事例を検討してもわかるように、多くの自治体でいうところの「行政評
価」は、元々内部改革を主眼に開発導入が進められた手法である。ホームページなどで基
準や結果を公開したり、広く住民の意見を求めても住民参加を主眼においたものではない。
今後住民の意見を吸い上げる一つの手法となっていく可能性はあるが、住民参加を主眼
においた評価システムを考えた場合、「システム」を別のものに作り替えるか、新しいそ
れとする必要がでてくる可能性は否定できない。
その可能性の一つが「シリコンバレーインデックス」でおこなわれた「市民の市民によ
る評価」のシステムではないかと考える。
また、真の意味での「行政評価」を考えたとき、すべての行政活動のすべての段階にお
いて住民の意見を取り込むことは困難であり、また非効率的となることもあるということ
を考えておくべきであろう。
132
第3章
都市経営における市民参加システム
第1節
市民活動の自律的成長のために
1.市民活動情報提供システムの構築
先行調査、あるいは今年度の動向を見ても、多くの市民活動団体が、仙台市内に存在し
ているのが分かる。しかし、それぞれの団体が何をしているのか、行政にも、一般市民に
も知られていないことが多い。市民活動団体へのヒアリングなどでも、活動団体自体が、
認知不足、後継者不足を悩んでいる割合が高い。そこで、市民活動情報提供システムを構
築することを提案したい。たとえば、静岡県の業務棚卸のように、事業の目的、それに対
する行動プラン、いま現在達成した項目、今後の課題などをカード化し、登録すると、そ
れがデータベースとなり、ホームページ上で、検索できる様にしたらどうか。それを見る
ことにより、一般市民が自分の興味のある活動に問い合わせが出来たり、市民活動団体同
士の横のつながりが出来たり、または、行政との折衝なども容易になることが期待できる。
また、各団体の行事、スタッフ募集企業へのお願いなどの告知もこのシステムによって
行う。市民活動団体にとって、おのおのの行事は、自分たちの活動を広く市民に知らしめ
る格好の機会であるが、
それと同時に、少ない人員での宣伝方法にはおのずと限界があり、
幅広い市民への広報は難しいのが現状である。
このシステムの運営・管理は、仙台市の市民活動支援室が担うのが望ましい。全市域、
分野を越えて活動団体の情報を一元化し、発信することによって、リアルタイムな情報の
提供が行われるだろう。
2.市民活動へのきっかけづくりを
仙台市が行っている住民参加型事業の多くは、普及啓発型事業である。これを、効率的、
効果的に、まちづくり活動を担う市民の育成が出来る事業へと転換してはどうか。
例えば、
北九州市の事例などは多いに参考になるのではないか。
仙台市が行っているコミュニティフォーラム 21 委員会事業は、ある程度の評価は出来よ
う。しかしその内容は、各委員会の構成員に任され、最終的には提言書を市長に報告し、2
年の任期を終えている。現在 4 期生だが、この 8 年間に1回 20 人×5 区×4 期=400 人が
参加したに過ぎない。また卒業後も、積極的にまちづくりに関わっているかというとそう
は言えないところがあるのが現実である。これを北九州方式で展開したらどうか。1回の
定員をこのままにしても1回 20 人×5 区×年2回×8 年間=1,600 人の卒業生を輩出する
ことが出来るのである。しかも卒業後の活動の受け皿を整備していれば、まちづくり活動
に関わる人数も増えることが期待される。ある程度の結果を見いだす工夫を考える時期に
来ているのではないだろうか。
133
助成金の見直しも必要である。魅力あるまちづくり推進事業などに助成金を長年受けて
行っている事業が見られるが、助成期間を決め、更改時には事業評価をして延長の可否を
決定するようにしてはどうだろうか。最初はその事業への単なる参加者に過ぎなかった住
民が、自立した市民へ成長して自ら活動を展開できるように、バックアップすることが行
政には望まれる。出来るだけ広く浅く門戸を開放し、多くの市民が参加できるきっかけづ
くりが必要であろう。
3.地域のサポートセンターを
行政は自立した市民活動団体に対して場所・もの(印刷機等 1 団体では高価で買えない
もの)の支援を担うべきである。場所の提供については、管轄を越えた柔軟な姿勢、条例
の改正が考えられる。幅広い年齢層の団体や、複数にわたる活動をしている団体など、従
来の施設の利用法では該当しないことが考えられる。市民活動サポートセンターを新たに
各区に設置することも考えられるが、それよりは既存の施設を活用する形でセンター化さ
せることを提案したい。
各区で裁量を揮える項目の予算は、おまつりなどのイベント費にその多くが占められて
いるが、住民発意の施設改善などのハード整備にも使うなど、真に住民が必要とするサー
ビスを提供することが必要であろう。
134
第2節
市民参加型行政システムの構築のために
1.市民参加の基本的考え方
行政システムに市民参加を取り入れるにあたり、どのようなことがポイントとなるのだ
ろうか。ここでは、市民参加におけるキーワードをいくつかあげながら論じてみたい。
(1)参加はどこにでもある
ワークショップや、NPOなどで行われている活動だけが「都市経営における市民参
加」ではない。例えば、窓口にみえる市民の何気ない一言にも、立派な参加がある。また、
業務を離れて一市民として生活を送る中で、そのヒントが見つかることがあるかもしれな
い。
行政職員がほんの少しだけ心構えを変えるだけで、大きな改善を生む可能性がある。
(2)目的と役割の明確化
現在NPOや都市経営において、これほど市民の力を必要とされているにもかかわらず、
なぜ双方が望むような市民参加が進まないのだろうか。まず、参加する市民側から考えて
みたい。
市民が参加というものをイメージするとき、ほとんどの場合直接参加である。NPOや、
都市経営において求められる市民参加もこの場合が多い。直接参加は時間が拘束され、仕
事や用事を抱えている人にとっては時間を合わせることが難しかったり、職場の理解が得
られにくいなど、負担が大きい。それを乗り越えて継続的に参加するためには、その事業
やイベントに対して、それなりのモチベーションが必要である。たとえば、何か問題意識
をもっている人や、自分の能力を職場や趣味といったもの以外で生かしたい、社会に何か
貢献したいと思う人がいた場合、その人が考える問題を消化できるプログラムか、自分の
能力を本当に生かせるのかなどは、参加を決める場合に非常に大きな位置を占める。また、
参加しても思ったほど自分の必要性が感じられなかったとき、再度参加する確率は低くな
ってしまう。
以上のことから市民参加を求める場合、
・参加が本当に必要なのか、なぜ参加が必要なのか(参加の必要性)
・参加者の負担はどうか(参加することによる負担)
・どんなことをしてもらうのか(役割の分担→責任の明確化)
・その事業のまた、市民参加の目的は何なのか(目的の明確化)
などを、常に考えていく必要がある。
135
(3)参加公開、機会均等の原則
市民参加を求める場合に、より多くの人が参加する機会があることが大変重要である。
これがしっかりとできていなければ、従来からある有識者による委員会方式などとほとん
ど変わることがない。まず参加の間口を広げなければ、市民の参加率はあがらない。また、
すべての市民に機会が均等であるためには、参加が公開されていなければならない。公開
されることでより多くの市民に機会があることが認識され、どこへ行っても「市民参加」
といえば同じ人ばかり集まるといった現象は改善されるであろう。
(4)市民参加の方法
一般的に市民参加には、
・審議会・委員会
・シンポジウム・フォーラム
・ワークショップ
・セミナー・学習会・研究会
・社会実験
(例:平成11年11月に仙台で行われたパークアンドライドの交通実験など)
などがある。そのなかでもワークショップは、合意形成や協働の道具として近年よく使わ
れるようになってきた手法である。
・遊びやゲーム感覚で入っていける
・人数が多くても、いろいろな人(年齢、職業etc)
がいても対応しやすい
・ほぼ全員が参加意識を得られる
などの特徴があり、身近な問題への参加手法としてよい方法の一つだ。仙台市においても、
「手作り公園事業」や、「宮城野文化センター事業」、「長町まちづくり検討会:長町探検
隊」などにおいて導入された。少々準備は大変だが、合意形成の過程が明確になり行政、
市民双方にとってわかりやすい手法である。事業を進める様々な課程で活用できるだろう。
(5)情報提供の仕組み
様々な参加プログラムを用意し準備を重ねても、効果的な広報や、情報の伝達・提供が
できなければ、効果は上がらない。「イベントが終わった後に話を知った。」といったこと
も実際は多い。効率の悪いところへいくら情報を送って、広報活動を行っても成果は上が
らない。市民が情報を受け取る「広報」に力を入れることは大切だが、最大の効率が期待
できるところへ情報を送り広報を行えば、最小の労力で効果があがる。また、どんな情報
をどのように受け取りたいのかをリサーチすれば、より効率的な展開が考えられる。その
136
ような仕組を構築し実践していければ、高い成果をあげることが可能だ。
情報提供の仕組みを構築するうえで必要な自治体内部の情報ソリューションには、以下
のようなステップが考えられる。
STEP1
100%パソコンの導入
STEP2
公文書および統計・データの100%デジタル化
STEP3
各種成果品の100%デジタル化
ここまでくれば、岩手県のようにインターネットを活用して情報公開を行う場合に、新し
くデータを作成することはほとんどなくなり、効率も上がるものと考えられる。
以上をふまえて具体的な方法としては、以下のような内容が考えられる。
・パブリックコメント制度の採用
・ホームページを活用した広報の一元化
ただし、アカウンタビリティ(説明責任)をふまえた担当部課、責任者名などを明記する
ことも必要であろう。
(6)参加による成果の総括と還元
自分たちの意見が、どのようにくみ取られ、生かされるのか、実際に自分たちの生活に
どのようにプラスがあるのかをイメージできれば、さらに参加のモチべーションは高くな
る。さらに、どのように成果に影響し、次へ生かされるのかまでわかればすばらしい。そ
れらは今までの行政やNPO、一般の市民活動にかけていた視点ではないかと思われる。
企業であれば、顧客は製品の改良やサービスのへの反映という形で、株主は配当という形
でその成果の還元を受けることができ、根拠が明確である。市民参加によってどのような
成果が生まれ、自分たちに還元されるのかを知ることはごく自然なことである。
(7)ステップバイステップの市民参加
はじめから一定のレベルを様々な部分に適用し、求めるのは危険を伴う。広く公募する
場合は、まだ一定レベルの市民が集まる可能性があるが、地域限定の場合だったりすると、
期待していた意識レベルの人材が集まらないといったことはよくある話である。企業でも
個人や部署で柔軟性や問題への取り組みに差があるように、市民にも様々なレベルがある。
それをよく理解して、柔軟な対応が必要である。もちろん行政職員側の意識レベルの差も
考えておかなければならない。焦って参加率だけを求めたり、一定レベルを確保するため、
参加にあたり特殊なフィルターにかけすぎると、いつか必ず行き詰まってしまう。市民や
行政職員の経験や意識の底辺があがってくれば、より効率的ですばらしい協働事業ができ
る。その過程では焦らずステップバイステップで取り組む姿勢が必要なのではないか。
しかし、その一方で「誰でも良い」ということにもならない。ある事業目的を達成しよ
うとするならば、(2)に挙げたように目的と役割の明確化が重要であるとともに、その
137
趣旨を正しく理解した上で参加してもらわなければならない。排除、選別という意味合い
ではなく、参加者で企画者側に期待や思惑のズレを未然に防ぎ、市民参加事業を実り多い
ものとするうえでも、事業の意図や目的、条件等を明確にすることが必要である。しかし
それ自体がフィルターとなりうる。公募や広報の工夫が重要である。
(8)その他
参加のノウハウは、参加者と共有すべきである。そうしなければ市民のレベルアップの
速度は上がらない。また、社会的なシステムとして市民参加は定着しないだろう。今は特
別視されているが、将来は一般的なシステムとなるべきである。
様々な参加の形態や市民のポジションを理解して取り入れることのできる柔軟なシステ
ムを構築する事が望まれる。画一的な手法に陥ると世の中や市民のレベルアップに対応で
きなくなる。レベルの高いところには高いなりに、そうでないところは実状に見合うよう
に対応できれば、人材や資金を適正に使用できるはずだ。また、市民の自立を促すことに
もなるだろう。
138
2.企業経営のノウハウを活かす
市民参加型の行政システムを進める上で、企業経営のノウハウを活かせないのだろうか。
この手法であれば、厳しい世の中を生き抜いてきた企業人にも理解を得やすく、参加を促
すことができるのではないか。次にはそういった手法のいくつかをあげた。
(1)ニーズの把握
市民を顧客とする考えは前にも述べた。その市民のニーズを把握することは大変重要で
ある。企業におけるマーケティングは、消費者の意見、趣味、嗜好、所得、購買動機、習
慣、さらに潜在的欲求をも解明するためにあらゆる情報が集められ検討、分析される。行
政システムにもこれを取り入れることで、より市民の理解が得られやすい、参加しやすい
システムを模索していける。
(2)情報のデータベース化
行政における情報は広報も含め、大変受け取りにくいと感じる。これは生活に常に必要
であるにもかかわらず、市民が通常情報を受け取るルートと大きくかけ離れたところから
発信されていることに原因があると考える。また、行政職員側も市民からの情報をキャッ
チしにくいと感じているはずだ。双方の情報をプールし双方に発信するために、データベ
ース化は是非活用したい手法である。デジタル化した情報を一元管理して利用することで、
市民・行政職員間だけでなく、市民同志・行政職員同志などの情報交換にも役立つ。毎週
主催者の違う似たようなイベントが開かれるといったことも少なくなるだろう。
以上をふまえ、まず、「市民意見の情報データベース」を構築してみてはどうだろうか。
市民や各課においても「検索」、「閲覧」、「集計」、「書き込み」等ができ、どこの、誰(匿
名でも可とした方が発言が増えることも)が、いつ、なに(苦情、陳情、要望、相談、提
言、アイディア、照会など)をいったのか、それにどう対応したのかを全庁的なネットワ
..........................
ークとして整備し、言いっぱなし、聞きっぱなしにしないためのインフラ整備である。た
だし、個人情報に関するデータは注意を要するため、しっかりとした決めごとが不可欠で
ある。また、情報弱者に対する配慮は当然のことながら必要だ。
(3)CS(Customer Satisfaction)やQC(Quality Control)手法の導入
市民を顧客と考えるとき、窓口へ来た市民や苦情を述べる市民、事業へ利害関係がある
市民だけが顧客ではない。町を歩いている人、隣に住んでいる人なども顧客と考えるべき
である。広義では、観光客なども顧客と考えるべきだ。そのような考え方を定着させられ
れば、企業で取り入れられている顧客重視CSなども根付き、行政サービスの質も向上し
てゆくだろう。さらに、QC法などを取り入れることによりより洗練された効率のよい都
市経営が可能となる。
139
いずれにしても、都市は生きており刻一刻と変化し続けており、よりベストな状態を保
つためには継続的な業務改善が必要だ。その手法の一つとして、「市民対応マニュアル」
を作成するのはどうだろうか。たらい回しをなくし、対応の全庁的統一を図るために策定
し、関係機関への通知、処理に要する時間、事務決済区分とは別の市民対応責任者の明確
化(企業であれば部長、案件の重要性によっては取締役という場合もある)、文書管理等
を共通項目として、照会や苦情項目であれば各部署毎に対応マニュアルを作成する必要が
ある。
(4)企業経営の手法を学ぶ
企業は利益を上げるために様々な手法を導入、実践してきた。その手法を学ぶためには
行政職員の一般企業への派遣(一年程度・少なくとも半年以上)を進めることが有効な手
段ではないかと考える。また、市民からの登用を進めていき内部から観察してもらうこと
も企業経営手法の早急な浸透に役立つと考える。
140
3.「市民参加型手法」の活用
ここでは、近年頻繁に使われるようになってきたワークショップと、比較的最近注目さ
れるようになってきたパターンランゲージという「市民参加型手法」の手法を検討し、そ
れぞれの特徴と、どのような場面での活用が効果的かを提案する。
(1)ワークショップ
ワークショップは臨床心理学の手法として始まり、その利用は発展途上国における識字
運動などにも及んでいる。1960年代にはアメリカでローレンスハルプリンが、「住民参加
によるデザイン」に取り入れていた。
市民参加の方法の中で、ワークショップが特徴的に取り上げられる理由の一つは、合意
形成や総意をまとめ上げる手法として優れているからである。参加者の目の前で効果的に
意見を記録し、まとめ上げていく「ファシリテーショングラフィックス」をはじめとして、
「グループディスカッション」、「旗揚げ式アンケート」、「地図上体験ゲーム」、「カメラ
ウォッチング」、「KJ法」などコミュニケーション型、ビジュアル型、疑似体験型の手法
がある。
またJ.L.クレイトンによれば、ワークショップの手順は大きく以下のとおりである。
①オリエンテーション:主催者がワークショップの目的と構造を説明し、次のグループ
活動を行う上で、必要な情報を参加者に簡潔に説明する。
②グループ活動
:目的を達成するための課題を遂行したり、ゲームへ参加するな
ど組織的な活動を行う。
③全体討議
:各グループの成果を全体で討議・評価し、最重要項目に優先順
位を与える。
【ワークショップの事例】
京都鴨川公園ワークショップ
1998年に京都府が主催で行った行政事業。正式には「鴨川公園出町地区ワークショッ
プ」という。同年8月より5回開催された。
第1回(8月6日)
地域住民と行政、有識者などからなる実行委員会のメンバーにワー
クショップを理解してもらうためのプログラムを実行。簡単なゲー
ム(ランダムなグループ分け)や、ポストイットに書き出した問題
点などをグルーピングするKJ法などを経験。
第2回(10月27日)
参加者を「周辺のアクセスを調べる」や、「景観を調べる」など目
的を持ったグループにわけ、現地を調査。現況の問題をポストイッ
トに書き出して報告。
第3回(11月22日)
前回までのコメント、問題点を元に公園のイメージ付け、方向性を
141
決める作業を6グループに分け行う。
第4回(12月3日)
「カード」を使い、今までの意見を再確認しながら4グループに分
かれ、地図上に配置する作業を行ってデザイン案を作成する。
第5回(2月7日)
今までの結果をベースに、「基本設計のたたき台」として、模型と
パースを作成したものを提示。現地にテープをはり、地域住民の参
加者に歩いて体感してもらう。
クレイトンの手順によれば第1回が「オリエンテーション」、2・3回が「グループ活
動」、4・5回が「全体討議」となる。
このワークショップの優れている点は、初回にワークショップを理解してもらうための
ゲームを行い、参加者に道具(ワークショップ)を事前に体験してもらっている点と、毎
回違った規模のグループ分けを行うことで参加者が同じグループに固まってしまわないよ
うに配慮している点である。このような手法であれば、参加者自身が意識の共通項を見い
だしやすいと考えられ、住民にも数回の参加をお願いするだけで十分な成果が上げられる。
(2)パターンランゲージ
パターンランゲージは、カリフォルニア大学のクリストファー・アレクサンダー教授に
より考案された。様々な問題やポイント(パターン)を一連(シークエンス)の順序(ヒ
エラルキー)としてとらえることから始まる。個々の問題やポイントにはそれぞれ相互関
係があり、問題の重要性によって順序立てられる(問題の構造化)という考えである。
ただし、その順序立ての方向は大きなものから小さなものへという「トップダウン」で
はなく、小さなものから大きなものへという「ボトムアップ」となっている。
順序立てた「一連の流れ(ランゲージ)」は、その問題やポイントごとに別の「一連の
流れ」と関連があり、全体としてネットワーク構造をしている。ネットワークはある大き
さで自由に取り出せ、新たな「一連の流れ」となる。例えば、小さなネットワークは「建
物」や「公園」、大きなネットワークは「まち」や「都市」など対応するものがある。同
じものでも周囲の環境が違えば、それぞれのネットワークがそこには存在する。つまりそ
れぞれの個性が存在していると言うことである。
このようなネットワーク構造で「まち」などをとらえたとき、構造のある部分がかけて
いたり、つながりがうまくいかなかったりすることに気がつく。パターンランゲージはこ
れを順序立てて合意形成をおこないながら、問題解決をしてゆく手法である。
中埜博氏によれば、パターンランゲージによる「参加のまちづくり」の方法は次のよう
なフローチャートに表現される。
142
第1期
1
3
ターゲットエリア発見のプロセス
2 問題の構造化
住民の直接ヒアリングの実施
問題別にヒアリングの実施
4
明確化された問題についての解決策として
のパターンと既存のパターンランゲージ
とのすりあわせ
5
6
まちづくりパターンランゲージの完成
問題別に行政・民間の団体とワークショップ
第2期
1
2
7
問題解決拠点の設定
(ターゲットエリア)
具体化されたターゲットエリアについての戦略設定プロセス
ターゲットエリアについて重点的に第1期同様のプロセスを実施
ターゲットエリアのパタンランゲージを
レベルごとに分解問題別ヒエラルキーをつける
3
全体像計画シュミレーションと予算見積もり
(コストのチェック)
4
パターンランゲージによるマスタープランの完成
(ターゲットエリアのレベル別戦略・見積もり予算)
図3-1
パターンランゲージのフローチャート
【パターンランゲージの事例】
和歌山県白浜町「しらら湯共同浴場計画」
①
「浜通り商店会活性化実施計画策定事業報告書:白浜商工会(平成4年)」において、
60頁の「まちづくりパターンランゲージ」のリストを作成。
②
①の中から、しらら湯をターゲットエリアと定める。
③
50人ほどの関係者を集め約一週間、直接ヒアリングを実施。
④
「浜への通り抜け」「松の木との共生」など問題解決パターンを40位抽出。
⑤
パターンをボトムアップし、「浜に立つ共同浴場」、「浜と商店街を結びつける」、「半
143
地下駐車場」、「しらら湯と海の関係」、「しらら湯」、「浴槽」、「管理」、「海水浴」とい
う8つの項目に構造化、「しらら湯のパタンランゲージ」をつくる。
⑥
役所、住民と共に現地において配置計画の確認のうえ、基本設計図の作成
⑦
内部空間について直接の関係者に批評を受け、全体を決定。
中埜博氏のフローチャートによれば①・②は第1期、③は第2期の1、④・⑤は第2期
の2、⑥は第2期の3、⑦は第2期の4となる。
当初住民のなかには、しらら湯のみ建てても関係がないと考える人もいたがパターンラ
ンゲージによるまちづくりのプロセスを経験することにより、商店としらら湯が結びつい
ていることを実感するようになった。
この手法は、問題と改善方法について合意形成を図りながらまとめ上げていけるもので
あるが、住民参加の場合、要望が数多くでて予算がふくらんでしまう傾向にある。これは
白浜で計画に携わった中埜博氏も指摘しており、常に予算と結びつけたフローチャートは
不可欠である。
(3)手法の活用
ワークショップは、「参加によるまちづくり」に絞られて考案されたものではない。し
たがって、応用範囲も広くあらゆる場面で使用可能なツールである。
一方パターンランゲージは、もともと「まちづくり」を含む建設系の計画プロセス用に
考案されたものである。しかし、ワークショップも「まちづくり」をテーマにした事例の
場合、パターンランゲージのプロセスの一部とほとんど変わることがない。
大きく違いを見せるところは、そのプロセスに関わる専門家の立場とテーマの設定方法
である。ワークショップはファシリテーターと呼ばれる「世話役」を重要視しており、参
加者とファシリテーターの関係が大きなキーポイントである。一方、パターンランゲージ
は、計画から設計・施工まで一連で専門家(世話役・まとめ役)が関わることを推奨して
おり、そのなかでクライアントと専門家の絆が深まることを重視している。また、ワーク
ショップがあらかじめ具体的なテーマ設定をする事が多いのに対し、パターンランゲージ
では具体的なテーマ設定をプロセスの中で見つけていくということが多い。
このようなそれぞれの特徴があり、これを考慮すれば「公園整備」、「イベント」など、
ある程度決まったテーマを持つものに対してはワークショップを、「まちづくり」「環境美
化」などといったテーマが大きく様々な要素が絡み合うものなどはパターンランゲージを
活用することが、事例の内容からすれば適切な選択である。ただし、いずれの手法につい
ても、質の高い世話役の存在がかかせないことは共通しており、それが重要なポイントで
ある。
このような手法を適切に用いながら「市民参加」を活性化させると共に、協働・共創の
場を作り出すことが今後の大きな方向性ではないかと考える。
144
第3節
市民参加型行政システム
1.市民参加事業の位置付け
市民参加の必要性については、2 章 1 節において事業のタイプ別にまとめたところであ
るが、行政の側が事業に市民を参加させたい、あるいは参加してほしいとする動機には「住
民満足度の向上」や「アカウンタビリティ」、
「住民ニーズの把握」、
「市民の知識、経験、
アイディアの活用」などがあり、これらは一口でいえば、「住民サービスの向上」のためと
いうことになろう。また、「普及・啓発」や「人材育成」が事業目的となっているものがあ
るが、これは個人の意識改革や地域の担い手育成を通じて「地域福祉の向上」を目指すと
いう意味で、やや間接的な参加と捉えることができよう。
市民参加事業というとどうしてもボランティア的な参加やワークショップなどへの直接
的な参加をイメージしやすく、「行政と市民が一緒になにかをすること」と考えがちになる
が、直接的な参加は、参加したいという市民のニーズと時間設定や回数、経費などの参加
できる条件があって初めて成り立つものである。そもそも、市民の関心の低い事業や期限
があって参加が物理的に困難な事業もある。
また、全国における市民参加の状況についてみると、情報公開の流れやNPO支援体制
の整備についての行政の対応は進んでいるが、市民参加事業に対する行政の関心は今一つ
といった感がある。「地方分権の担い手としての市民」という議論があるものの議論のレベ
ルに止まり、市民にどのような権限や財源を委譲すべきかということは、個人レベルでの
「市民の成熟」と行政のパートナー足りうる担い手としての「市民組織の成熟」と歩調を
合わせながらしか進まないだろう。
市民参加事業がいまだにモデル事業的に行われている現状や市民活動支援の問題点が
「行政依存」ということなども考えあわせると、
「行政主導の市民参加」が「市民活動への
行政参加」へとシフトしていく道のりは、なお険しいといわざるを得ず、市民参加事業の
事例を積み、その成果や課題を検証するともに、ノウハウやスキルの蓄積を進めることが
当面の課題といえよう。
2.市民参加型行政システム
−市民参加事業はPDSサイクルの確立から−
(1)企画(PLAN)段階
市民参加型行政システムとはどのようなものだろう。全ての事業を参加型でやることは
できないだろうし、その必要性もないだろう。しかし、参加したいという市民がいた場合
には参加可能な仕組としておくことが重要だろう。つまり、必要な情報が容易に得られる
情報提供システムを構築することが最も重要と考える。できるだけ事業の初期段階におい
145
て、事業の概要を知ることができる体制を構築することが重要である。従来の公共事業に
係る住民の不満の多くは情報が少ないこと、決まったことの説明に過ぎないことへの不信
であることからすると、積極的な情報提供の必要性は高い。直接参加できる、できないと
いうより、むしろ、情報をオープンにし、意見を聴取するという姿勢こそが必要ではない
か。例えば、小規模改修工事の場合、工事に先だって時間に余裕を持って現場に担当者や
連絡先を明記した告知看板を建て、利用者ニーズを聞くなど、市民や利用者の意見を聞こ
うと思えばやれることはいくらでもあるのではないか。
(2)実施(DO)段階
市民参加型事業が一般的になっていかない最大の理由に、時間と経費の問題がある。確
かに従来の「事業+α」で市民参加を考えたり、やってもやらなくとも良いこととして市
民参加を捉えると、市民参加は「お荷物」以外の何物にもならないだろう。時間と経費の
問題は確かに大きい。この問題のうち時間については「要領よく実施すること(例えば、
ワークショップは 5 回という経験則がある)」
、
「市民参加分に見合う事業のスクラップ」、
「事業企画の早期立案とスケジュール管理の徹底」、「情報の使いまわし」、「市民の能力活
用」などにより相当程度負担を軽減することができるだろう。また、経費については「講
師等の内部調達」、「市民の能力活用」等により幾分は解消できるだろう。市民参加事業に
対するインセンティブが組織的に与えられていることも重要で、市民参加事業に対する上
司の理解や全庁的な推進体制も必要である。今回の市民活動支援に関するアンケートで市
民協働事業に係る事務局負担の大きさが明らかとなったが、「市民の能力活用」のあり方に
ついては、極めて不十分で役割分担についても、ほとんどまともな議論もなされずに「事
務局は行政」で「市民はお客さん」にしていなかっただろうか。「市民の言いっぱなし」、
「行政の聞きっぱなし」を変えるためにはお互いの意識改革が不可欠だが、行政の問題意
識の低さが今日の状況を招いた主たる要因といえるだろう。
(3)評価(SEE)段階
事業の成果については、市民と行政の間の認識ギャップが大きいとともに行政側の問題
意識の欠如が大きな課題といえる。自ら評価するということがほとんどなかったことは、
行政評価がほんのここ数年の話題であることからも逆説的にあきらかであるし、市民参加
の評価や成果についても、ほとんどきちんとした検証がなされてこなかったというのが実
情であろう。行政の側では「市民のニーズに基づいた事業」という認識や「住民の意見を
反映させた事業」という認識を持ち、事実そのとおりであったとしても、その事実が市民
にまったく伝わっていなかったり、市民の側ではそう思っていないとすればこれは悲劇と
いうよりも喜劇に近いかもしれない。評価がきちんとなされることは、事業のループを完
結させるために不可欠であり、市民参加事業の場合は、それを市民に還元して初めて事業
146
が完結したことになる。
以上のPLAN−DO−SEEのサイクルを確立していくことが市民参加事業の中心的
課題となる。このそれぞれの段階における留意点とキーコンセプトを図示すると次図のと
おり。キーコンセプトは目標の共有、プロセスの共有、成果の共有ということになるし、
これを担保する基本理念として「情報の戦略的活用によるコミュニケーション型市政の継
続的な推進」が重要である。
147
図 3-2
−市民参加事業は PDS サイクルの確立から−
・事業企画の早期立案
・市民参加の目的の明確化
・市民との役割分担の明確化
・参加手法の選択
目標の共有
PLAN
成果の共有
プロセスの共有
SEE
DO
情報の共有
・事業成果の確認、市民還元
・公募、広報活動
・参加者の意見集約、事業評価
・経過報告、事業プロセスの公開
・改善、中止等の検討
・プロジェクトマネージメント
・市民が参加できる事業に関する情報の集約と一元的な管理
・市民参加事業に関するノウハウ、情報の集約と蓄積
・広報誌とインターネットの役割分担による情報の活用
・市民参加事業の成果や課題などの情報集約と一元管理
・情報の戦略的活用によるコミュニケーション型市政の継続的な推進
148
3.市民参加を支える 6 つのシステム
−コミュニケーション型行政が市民参加の基本−
ここで想定する市民参加システムは、そのまま都市経営システムと呼び変えが可能なも
ので、次の各システムが有機的に連動し、総体として効果を発揮するものである。従って
その重要性に変わりはないが、市民参加という視点を重視すれば、まず、情報基盤の整備
と公聴システムの整備が優先すべき課題といえよう。
①情報提供システム
情報化の進展スピードは極めて早く、行政がインターネットや電子メール、ホームペ
ージなどの情報ツールを活用する動きは今回のアンケート調査からみても明らかであり、
今後も最強の情報ツールとして、その役割を強めていくことは間違いない。特に情報の確
度や信頼性という面で行政に寄せられる市民の期待は大きく、行政の持つこの経営資源を
活かして情報提供を行っていくことが市民参加を考えていくうえで極めて重要である。
以下に挙げる 3 つの情報提供システムは、主として市民と各種情報の共有を図ることを
目的として構築するものであるが、行政内部における情報共有や事業スケジュール管理、
市民事業も含めた総合的なスケジュール管理を行うことも目的としている。
また、この情報提供システムの前提条件として、行政の情報化推進および基盤整備が不
可欠のものとなる。
すなわち、全ての市民利用施設や出先機関を含めた全庁的なパソコンの導入とインターネ
ットを介した情報提供システムの構築が両輪とならなければ大きな力を発揮することはで
きない。
ア.市民活動情報提供システム
○市民活動団体プロフィール情報(活動目的、活動内容、個人会員数、法人会員数、会
費、決算資料等)
○活動情報(広報誌掲載、一般公開事業紹介、事業結果報告)
○活動資源関連情報(活動参加者募集、活動ニーズ情報、活動シーズ情報)
イ.行政事業情報提供システム
○市民参加事業の一元的な紹介(4 月)
○市民が参加できる講座・イベント等の一元的な紹介(各月)
○各種委員会・審議会等の情報公開の促進
○外郭団体の情報公開の促進
○各課における主要な事業の概要とスケジュールの情報提供
ウ.各種計画、条例等の素案段階での情報提供と意見聴取の制度化
(パブリックコメント制の導入)
149
②行政評価システム
行政評価は民間企業に一般的に取り入れられている数値による目標管理を行政にも導入
しようとするもので、様々な意義や役割はあるが、ここでもっとも強調すべきは『市民と
都市の目標を共有する』という視点である。現実とあるべき姿を市民とともに直視し、共
有することで始めて行政と市民が同じ目線に立つことができる。その意味では、個別の事
業評価よりもむしろ都市の理念を具現化する政策評価が最も重要といえよう。
○市民意見を取り入れた政策評価(できるだけ目標は絞り込む)の導入
○定期的な事業の見なおし(事業サンセット制の導入)
○市民意識調査の継続的な実施、分析と市民モニター制度の拡充・強化
○市民参加事業の評価と成果の共有
○事務事業評価の実施と達成目標、評価表、評価基準、評価結果の公開
③市民指向型広聴システム
市民から寄せられる様々な意見や要望は毎年膨大なものとなっているが、現状では各セ
クションが事業遂行の必要に応じて収集し、消費され、蓄積されることは少ない。しかし、
こういった意見は市政を進めていくうえで最も重要な情報である。統計データや意見、要
望、アンケート調査資料などについては、データベース化し、常に検索、加工、更新でき
る体制を構築することはもとより、市民に対してその成果の還元が図られなければならな
い。そして、これは、パソコンの普及に代表される情報革新によって急速に廉価、かつ容
易なものになっている。
市民の意見を「行政経営」の最重要のマーケティング・ツールとして位置付け、この対
応を全庁的に徹底させること、業務改善委員会もしくは市民意見検討委員会を設置するこ
と、市民意見をデータベース化し業務改善や政策形成に活かすこと、結果を市民に返すこ
と、この全てが一連の「情報の流れ」となる「市民指向型広聴システム」を構築し、市民
意見に対するPDSサイクルを確立する。責任の所在を明確にし、言いっぱなし、聞きっ
ぱなしと決別する。
○市民意見データベースの構築
○対応時間、対応結果等の公開
○市民意見の分析、業務改善や政策形成への反映
④市民まちづくり大学(人材育成)
市民活動やまちづくりを担い、合意形成やファシリテーターのスキルを持つ市民と行政
職員の人材育成の場として設置する大学である。詳細は別途、次項に記す。
150
○市民まちづくり大学カリキュラム等情報提供システム
○同大学と職員研修所、OJTが連動した人材育成システム
○合意形成等のノウハウとスキルを持つ人材の養成と活用
⑤市民まちづくり活動支援条例(市民活動支援)
都市計画や福祉、まちづくり全般を幅広く包括する条例である。組織化の前段階である、
住民勉強会等に専門家や行政職員の派遣する第 1 段階。組織化を支援する第 2 段階。計画
策定を支援する第 3 段階、事業化を支援する第 4 段階からなる。基本コンセプトは神戸市
等と同様とし、ソフト事業、ハード事業を問わず、まちづくりや地域づくりに意欲を持つ、
町内会や市民活動団体などを専門知識と資金面の両方から支援する仕組みとする。現行の
魅力あるまちづくり推進事業予算を「市民のやる気に投資する仕組み」としてリニューア
ルさせることを想定している。
○まちづくりアドバイザー等の派遣
○組織化支援
○活動認定
○活動助成
⑥行政品質向上運動(TQC)(顧客指向型、内部改善型)
行政自身の内部改善、意識改革にための活動、行政評価や市民指向型広聴システムと密
接に結びつくが、組織改革、品質向上の側面が強い。
○モラルアップ運動
○職員提案、市民提案表彰制度の拡充
○業務の構造化と品質管理
○外部評価、外部監査の導入
151
図 3-3
−コミュニケーション型行政が市民参加の基本−
市
民
行
政
情報提供システム
条例による
情
報
行政品質
向上運動
包括的支援
システム
行政評価システム
市民指向型広聴システム
まちづくり大学による人材育成システム
152
4.人材育成とまちづくり大学
(1)人材育成の理念、まちづくりの理念
市民参加を考えていくうえで最も重要な視点は、「日本をどのような社会にするか」とい
うことである。既に戦後の経済成長を支えた年功序列型賃金も終身雇用制も過去のものと
なり、急激な少子化と高齢化は現実の不安となっている。経済成長やエリート校、大企業
といった目標や価値観が音を立てて崩れ去り、これに替わる価値観は未だに共有されてい
ない。しかし、モノからココロの時代へといわれて久しく、物質的な豊かさだけだはない
豊かさが確かな価値を持ちつつある。
この新しい価値観の鍵となるのが、市民参加だと考える。「生きがい」や「やりがい」が
行動規範となって、重層的な市民活動のネットワークが構築される。時にはコミュニティ
ビジネスの形をとったり、時には地域起しやまちづくりの活動となったり、あるいは地域
経済の推進力となる市民起業家となったりする。このような市民の活力こそが、これから
の日本社会には必要とされているし、現実にその芽は育ちつつある。市民参加を考えるう
えで「市民が主役の新しい市民社会をつくる。そのための人材を地域社会で育てる。
」とい
う基本的な姿勢が求められると考えている。
とはいえ、現実を直視すれば、人間関係は単純化し、地域の自治能力は弱り、コミュニ
ティ意識は希薄化しているのが今日の状況である。このような状況下において、他者への
奉仕を基本とするボランティア活動や市民活動を推進していくということは、実はそう容
易ではない。
「地縁活動」を補完するものとして「知縁コミュニティ型」や「子縁型活動」
が育ちつつあるとはいっても、どこの場合でも活動の中核を担う人材は不足しており、こ
のような活動が簡単に成長するとみるのは早計であろう。市民のボランタリーな活動に公
共の担い手としての役割と責任を期待する行政が、活動の主体、あるいは中核となる人材
の育成に力を入れること、本人がなんらかの活動動機を持ち、市民活動の必要性を理解し、
実際に行動を起し、活動しつづけるための場を提供していくことの重要性は増していると
いえるだろう。
行政の人材育成策としては、例えば長浜市の「まちづくりはひとづくり」というビジョ
ンや、掛川市の「生涯学習まちづくり」というビジョンがある。行政と市民が共有できる
都市のビジョンが示されること。そして、ビジョンを実現するための手段として体系的な
人材育成事業が実施されることが必要だと考える。これまでの仙台市のまちづくりのビジ
ョンとしては「健康都市宣言」があるが、この間の仙台市をめぐる環境変化を考えれば例
えば「市民参加都市宣言」といった新たな都市のビジョンを検討することが必要ではない
か。
153
(2)活動の動機
モティベーションを高めるための方策としては一般に「責任」、「競争」、「興味」の 3 つ
の要素があるといわれている。このうち「競争」は市民活動の動機に据えることは難しい
だろう。「責任」については責任を自覚してもらうことは重要だが、自発的な活動につなが
るかは疑問がある。そう考えると、「興味」を活動の動機として考えることがもっとも可能
性があるように思う。
趣味や関心、仕事や家族の状況によって「できる活動の範囲」や「してみたい活動」「試
しにしてみてもいい活動」は大きく異なってこよう。仙台都市総合研究機構で行っている
仙台市民意識調査においても若者であれば芸術、文化、スポーツ等の関心が比較的高いし、
子育て世代なら育児や教育、壮年期以降比較的時間に余裕がでてくれば福祉やまちづくり
など様々な分野に幅広く関心が寄せられていることが明らかとなっている。すなわち、時
間的余裕とライフステージ、興味関心によって活動は異なってくるということである。ボ
ランティア活動の本質が自発性にあることを考えれば、「興味や関心」、「趣味」「仕事上の
特技や知識、関わり」から入っていくことは重要である。
次にいくつかの側面から学習機会の提供の必要性を検討してみたい。まちづくりは実践
であり、実践が重要なことは当然だが、例えば北九州市で行っている「わくわくまちづく
り工房」の場合、「学習による総合化」やワークショップ等を通じての「問題の構造化」、
フィールドでの実践的学習による「具体化」、が一体的に行われることにより、参加者に強
いモティベーションを与えることに成功していることなどからも明らかなように、成人の
場合でも学習の果たす役割は極めて大きいと考えられるからである。
(3)学習機会の類型
一つ目は『知識習得型』である。例えば自然保護活動を行う前提として動植物の名前や
特性を学んだり、まちづくり活動の前提として郷土史や学習したりすることはボランティ
ア活動とは直接関わりを持たないが、活動に不可欠な知識であるということができよう。
二つ目が『技能習得型』である。これはある活動目的があって必要性を感じている人を
対象とするもので、それが個人的動機であったとしてもボランティア活動に結びつきやす
い学習である。例えば「寝たきり老人の介護」や「森林管理技術」、
「自然素材を用いたク
ラフトづくり」や「英会話」等、資格に近いものも多い。
三つ目が『指導者養成型』である。身につけている「知識」や「技能」をいかにして活
かすかという「伝え方」や「活かし方」の研修や、コミュニケーションや合意形成に関す
る研修である。例えば「インストラクター」や「インタープリター」、「ファシリテ−ター」
などの養成講座や「ワークショップ」や「ディベート」に関する講座等である。
四つ目が『組織管理型研修』である。主として市民活動団体やその代表者を対象とする
もので、「経営」、「財務」
、「組織管理」、「マーケティング」など組織運営上の知識習得に関
154
するものである。
五つ目が『シンクタンク型』である。ある特定テーマについて文献や関係法規、統計デ
ータ、先進事例を調べたり、アンケート調査やヒアリング調査を行ったりという行為を実
際に行う場合と、そういった調査に必要とされる知識や技術の学習を行う場合があろう。
最後に『人材育成型・自己啓発型』がある。活動の動機付けとなる「自己実現」や「自
己革新」の意義や目的などを学習し、「モラール」を高めたり、「活動」することの意義を
自分自身で発見するものである。
(6)学習機会の供給状況
以上、6 つのタイプに分けてボランティア人材育成に必要とされる学習機会を考えて見
たが、次にその担い手、即ち機会の提供者について考えてみたい。基本的な立場としては、
ボランティア団体や大学等の教育機関も含めて「民間で行っていること」、「民間でできる
こと」には手を出さないということとしよう。
一つ目の『知識習得型』はカルチャースクールなどで学べる部分も多いが「地域」的な
テーマとなるとほとんど学習機会はないといえよう。従って「地域学習」については「教
える側」も「教えられる側」も地域住民となるケースが考えられる。
二つ目の『技能習得型』については、一部の分野についてはカルチャースクールや通信
教育、専門学校などで習得が可能である。しかし、「地域に根ざした技能」や「失われつつ
ある技術、伝統」、マーケットの規模が極めて小さい技能等については意識的に提供する必
要があろう。
三つ目の『指導者養成型』は市民活動の中核を担う人材に必須のものであるが、学習機
会のみならず専門書や教科書も極めて少ないのが現状である。つまり、「教えることのでき
る人が少ない」のである。意識的に「指導者」を確保し、次の「指導者」を養成していく
必要がある。
四つ目の『組織管理型研修』は様々な出版物もあり、大学の講座や企業の職場研修など
でもごく一般的に見られるものだが、それまでの人生経験の中で縁がなかった人にとって
は知識が乏しく、難解とみられがちな分野であろう。また、財源に恵まれない市民活動団
体が比較的高額の授講料等を支払って大学の講座を受講したり専門サービス業を利用する
というのも考えにくい。
五つ目の『シンクタンク型』は従来、調査・研究を行う機関以外の一般人には無縁の知
識や技能であったが、市民の自治意識の向上や一般的な高学歴化の状況等から政策提言型
市民活動が芽生えつつあるとともに、より科学的、実証的な分析が行政にも市民にも求め
れていることから、その必要性は増しつつある。しかし、学習機会も専門書や教科書も少
ないのが現状である。
六つ目の『人材育成型』は本来、「道徳」の部分や「躾」の部分もあり家庭や学校で身
155
につけることができそうだが、実際のところ様々な活動で「勉強会」を行っており、「なぜ」
「なんのために」を考えることは常に重要な意味を持っている。私的な勉強会や塾、セミ
ナーなどの形で行われることはもちろんであるが、開かれた学習機会は以外に少なく、ま
た、ともすれば宗教の布教活動などと混同され、敬遠される懸念もあり、信頼できる学習
機会は少ないといえよう。
このように考えてくると、一部の分野においてはボランティア人材を育成するための学
習機会があるが、全体的にみれば質量ともに圧倒的に不足しているのが実情であり、市民
の学習ニーズに併せた学習機会の提供の必要性は高まりこそすれ失われるものではない。
これまでの各種講座が今一つボランティア人材の育成に繋がっていなかったとすれば、そ
れは、体系的な学習機会となっていなかったことと、市民ニーズに合致していなかったた
めであり、人材育成を中核に据えたカリキュラム体系が必要といえよう。
(7)「仙台市まちづくり実践大学」構想
−行政が学習機会を設定していく上で考慮すべきこと−
一つ目は「市民」の人材活用である。現に市民活動をおこなっている人、団体の知識や
経験を活かすことは必須の条件で、講師などとして積極的に登用すべきである。このこと
は、活動の認知促進や当該活動への興味、関心を持つ人の把握、講師謝礼という形での活
動のサポートに繋がるものである。なお、その場合の謝礼は大学教授と同等となるのは当
然である。
二つ目は多様なプログラムの複合である。各課がその事業目的だけにとらわれて単発的
に講座を行うことが、期待したような成果に結びつかない原因だとすれば、各局各課の連
携により事業を再構築し「市民まちづくり大学」として市民人材育成事業を再編、整備す
ることが必要である。例えば一つの講座は月 1 回、半年開催程度とすれば参加者の負担も
比較的小さくて済むものと考えられる。
三つ目は市民の費用負担と市民の評価である。従来ともすれば行政のイベントは無料で
行われてきたが、受益者が明確であり、民間との競合も講座の一部について懸念されるこ
とから、受講料は有料が当然である。「安かろう悪かろう」でなく、「金を払っても参加す
る価値がある講座」を工夫することこそ重要である。この場合、市民に割り引きしたり、
受講数によって割り引きすることは問題ない。
(8)「市民まちづくり大学」に期待される効果
①市民の選択肢の拡大
様々な講座を選択、受講できることから市民の生涯学習意欲が高まる。
②広報の一元化
156
「大学」に収斂して各種の講座を組むことからPR効果が高い。
③市民参加機運の醸成
④市民ネットワークの拡大
受講者相互の交流により人的ネットワークの拡大が期待できる。
⑤人材育成の一元化
各課でバラバラに取り組むよりも効率的な取組みができる。
⑥市民と行政職員がともに学習することで、「協働」の土台づくりができる。
この「大学」に行政職員が講師や受講生の立場で数多く参加していけば、自然と市民と
の間に多様なネットワークを構築することとなり、「協働」のベースとなる「顔の見える
関係」や「市民の立場に立つ意識」も自然に培われることとなる。
⑦独自の認定で受講にインセンティブを与える。
「大学」の外部に市民代表を含めた「運営委員会」を設け、一定の講座受講者に独自の
資格を授与するとともに、市においても職員をふくめ、資格取得者の表彰や優先活用を
図ることにより、受講にインセンティブを与える。
自発性を尊び、正しく評価し、推進する姿勢が明確であれば、市民だけでなく、職員の
やる気を高めることにも大きい役割が期待できる。
⑧「学都」の資源活用
仙台市には数多くの高等教育機関が集積し、「大学」運営に関する人材には極めて恵まれ
ているということができる。大学関係者が関係する政策提言型NPO法人が比較的多い
のも仙台市の特徴で、NPOに理解や関心を持つこうした人材を活かしていくことは当
該NPO法人の支援にも繋がり、「学都仙台」の新たな価値としても大きな期待ができる。
(9)検討課題
「大学」を検討していく上での課題としては、
①カリキュラム構成をどうするか
②大学等との連携と役割分担をどのように図っていくか
③「大学」全体のコーディネートをどこで行うか
④講座内容にふさわしい講師がいるか
⑤受講料をどの程度とするか
といった課題が考えられるが、例えば初年度は「ワークショップ基礎講座」等いくつかの
指導者養成型講座のみを実施することとして順次、拡大していけばよいのではないか。
「大学」の最終的な目標は「市民が市民を育てる環境を地域社会の中につくりだすこと」
である。今回提示した「大学」は、自己の責任において市民活動が拡大再生産していける
社会構築のためのステップとして位置付けられるべきものといえよう。
157
第4節
都市経営の視点から見た市民参加システム
1.行政と市民の合意に基づく都市づくり
都市経営という視点から見た場合、都市そのものの形成は、都市行政を執行する行政機
関の施策によってかなりの程度その方向が定まるであろうことは否定できないが、都市の
存在目的はそこに住む住民の幸福と合致すること、すなわち、住民の願いや希望を汲み上
げて住民の納得があって施策展開していくことが基本的な考え方となろう。しかし、住民
の短期的希望と都市経営の長期的視点から来る食い違いや解釈の違い、建前と本音の違い
などから出てくるトラブルによって、行政と住民との間でなかなか合意を導きだすことが
できないこともしばしばある。これらの食い違いを、単に問題として処理するには疑問が
ある。例えば身近な事例としては仙台のゴミ処理場建設、全国的には成田空港建設問題が
あり、沖縄の基地問題、また、吉野川の河口堰問題など、事例は多数見受けられる。お互
いの立場に立って利害を論じ、認め合った時に妥協点が生まれることは、歴史的にはヨー
ロッパの統合問題などからも学ぶことができる(ヨーロッパは紀元前から統合することを
理念としていたが、その統合手段が宗教や暴力的な行為のため幾度も破綻する。今日にな
ってようやく「話し合いの統一」に帰結したのがヨーロッパ共同体である)。それは、異
なった立場の人との合意に至るまではいろいろな葛藤があり、それから逃げては問題が解
決しないことを意味している。しかし、合意を得るために時間が許さない場合もあり、そ
う簡単ではない。しかし、互いの立場を認めつつ、葛藤を恐れずに努力する姿勢が基本的
に大切なことである。
2.調査の結びに代えて
(1)根気が求められる市民活動
市民活動の現状を先進地の成功事例で調べたとき、その多くは、行政と一般市民との関
係がうまくできていることが第1に挙げられる。活動の発端は、行政が下地をつくったと
ころに市民が乗ったケースもあるし、市民が進めていたことに行政が合わせたケースもあ
り、どちらが言い出したかということは問題ではない。異なった立場の人たちがお互いの
立場を認め合ってサポートし合った結果のことである。市民活動団体と行政が初めからう
まくいっているのはむしろまれな例で、どちらかといえば市民活動の実績があって行政が
協力するケースが多いように思える。目的が共有できていれば、その手段において葛藤は
あっても克服できようが、目的が一致していない場合や、葛藤することを避けた場合、そ
してキャタライザーの居ない場合などは成功を期待することは難しい。いずれにしても継
続こそ力なりで、市民活動も根気のいる仕事といえる。
158
(2)仙台市の支援傾向
仙台市の市民活動に対する取り組みは、インキュベーターとして一応の役割は果たして
いるが、市民と行政の目的意識や自主性には問題があるように感じられる。従って、行政
と市民による活動は目的をよく確認し、その目的を共有化することがその第一歩と考える
と共に、その前提として大きな公益性を持った自立的な考え方が必要であることを認識す
ることが大事である。
アンケート調査で、いままでの行政支援は主に狭い地域に限って活動していた団体に対
して行われていたようだが、市民活動がより広域活動に広がりはじめており、行政がそう
いった市民活動を積極的にサポートする動きに転じてきているような印象を受ける。
市民と行政が協同で行う事業の支援根拠がいまひとつはっきりしていないようだが、そ
れは、定性的な目的と定量的な目標が「期待される結果」として共有のものになっていな
いためと、その実行方法にあると考えられる。
(3)自治体の支援状況
全国的に見て、各自治体の支援の多くは、福祉などの狭い意味のボランティア活動に向
けられているが、一部に「ものづくり」「アドバイザー・コンサルタント派遣」など市民
の能力を高める支援を行っているところもある。地域の活性化、市民活動の活発化には人
の能力を上げるための支援が大切のように考える。
(4)行政主導とパートナーシップ
仙台市の市民参加事業の6割以上が行政主導型である。そのようななかで、パートナー
シップの考え方は今後も重要な思考であり、徐々にではあるが、それに携わる行政職員の
意識の変化が感じられる。意識の変革は環境の変化で進められる。その環境の変化は、自
然環境の変化だけではなく、リーダーの考え方によっても変わってゆく。パートナーシッ
プが必要と強く感じた人が、身をもってパートナーシップを行動で示したとき、その配下
にある人はその影響を受けるであろう。なお、パートナーシップは市民活動に限らず重要
な思考である。
(5)行政サイドの対応
全国的に見て地方自治体の情報公開は進んでいるものの、自治体サイドに対する市民参
加を促す制度化を考えている自治体は少ないようである。
自治体側から市民参加を促す進め方には、知事や各自治体のリーダーシップによる情報
公開による討論や、職員研修所などの人の育成部門が自主的にやる気のある職員・市民を
平等に募り、プロの指導のもとで市民参加活動を指導しているところなどいろいろある。
一方、自治体の中にはあまりに積極的な進め方をしたために、却って市民の創造力を失
159
わせているような印象を受けるところもあり、行政のリーダーシップには、市民の土壌や
民心を掴むバランス感覚が求められるといえよう。
また、行政側にとっては市民に仕事を委託することは権限の委譲に繋がり、権限を委譲
することの不安から「市民に任せられない」という考えが生じることも推察される。しか
し、日常的なルーチンワークの仕事は、下位者に任せるということが上下組織活動の考え
方で大切なことで、行政と市民グループの関係を上流と下流の組織活動と考えた時、責任
は行政につきまとうということと、それを受ける市民は責任の重要さを義務と考えて忠実
に受けることが大切である。また、行政側は可能な限り、市民を信じ、市民のできる仕事
は市民に移した方がよいと考える。それができなければ、市民参加はいつまでたっても行
革に結びつかず、負荷ばかりが大きいということになりかねない。既に、市民活動が担っ
ている分野に行政が新規参入し、市民活動の芽をつぶしたり、市民のやる気をそぐ、など
ということがあったとすれば行政側にその意図が仮になかったとしても、市民参加による
地域形成を図る具体的目標から見れば、その結果責任は極めて重いといえよう。
(6)自治体の体質改善
自治体の経営合理化が自治体の内外から問われている今日、企業経営の手法を導入する
自治体が急速に増えている。比較的注目されている方法は事業評価と企業会計のようであ
る。しかし、経営体質の改善が結果として大きな広義の利益に繋がることを考えた場合、
組織全体を巻き込んだトータル的な考え方のTQC、TQMやISO9000 のような方法
で改善を進めることが、長期的には得策のように考える。特に外部監査や外部評価を考え
方に組み込み、身内の論理にならないような仕組みが必要である。
(7)市民活動は市民の自立的活動
都市経営を前提とした市民参加システムを考えたとき、市民が自律的に成長するために
は、市民の創造的活動を尊重することが大切である。そして、その自立のためにいかにサ
ポートするかということが自治体の課題でもあろう。
160
付 属 資 料
【参考文献一覧】
1. 「まちものがたり蚕がつくったまち」
2. 「行政評価の時代」
上山信一著
NTT 出版 1998/3
3. 「あすの三重 NO.114 1999 夏季」
4. 「成功する行政イベント」
1992/2
杉並区まちづくり公社
三重県
北九州イベント研究会
5. 「市民参加の方法論に関する基礎調査」
1997/7
1999/3
仙台都市総合研究機構
6. 「あなたのまちをデザインする 61 の方法」まちづくり研究会
7. 「パタン・ランゲージ」クリストファーアレクサンダー著
鹿島出版会
1984/12
8. 「パタンランゲージによる住宅の建設」クリストファーアレクサンダー著 鹿島出版会
9. 「まちづくりの新しい論理」クリストファーアレクサンダー他著
鹿島出版会
1991/11
1989/8
10. 「まちづくりキーワード事典」三船康道+まちづくりコラボレーション著 学芸出版社 1997/3
11. 「造景 No.9」
建築資料研究社
12. 「プロセスアーキティクチュアNO.4」
13. 「学校を基地にお父さんのまちづくり」
14. 「TQM 発想による創造的行政運営」
1978/2
㈱プロセスアーキティクチュア発行
岸裕司編集
(株)太郎次郎社
地方行政活性化研究会
1999/3
(株)ぎょうせい
1997/7
15. 「行政の役割を問い直す」
行政改革委員会事務局
16. 「日本経営品賞審査基準書」1999 年度版
1997/3
大蔵省印刷局
日本経営品賞委員会
1999/2
17. 「仙台市の市民活動支援に関する提言」 仙台市市民公益活動支援策検討委員会
市
仙台
1998/2
18. 「市民・企業の公益活動と官民パートナーシップに関する基礎研究」 仙台都市総合研
究機構
1996/3
19. 「政策評価の方法とシステムについて」
20. 「自治体の政策形成と住民参加に関する調査」
21. 「市民活動ハンドブック」
1999/3
埼玉県自治研修センター
(財)埼玉総合研究機構 1999/3
22. 「日本のサポートセンター」
仙台市 1999/3
1998/3
市民活動地域支援システム研究会
23. 「平成 9 年度・グラウンドワーク三島実行委員会・事業計画」
24. 「生き物緑地活動を始めよう∼環境 NPO マネジメント入門」風土社
163
アンケート調査表および集計結果
都市経営における市民参加に関する調査
本調査は自治体経営、地域経営又は都市経営(以下、都市経営という)に住民又は市民
(以下、市民という)がどのように参加、活動しつつあるかについて自治体の取組みから
明らかにしようとするものです。
1.市民活動への期待
貴自治体では市民にどのような分野での活動を特に期待しますか。下記の項目から主な
ものを 3 つまで選んで○をつけてください。
1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
5.環境の保全を図る活動
6.災害時の救援の活動
7.地域安全活動
8.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
9.国際協力の活動
10.男女共同参画社会の形成促進を図る活動
11.子どもの健全育成を図る活動
12.NPO活動を支援する活動
13.行政監視
14.行政への政策提言
15.その他
2.市民活動の状況認識
貴自治体では近年、市民活動が盛んになったとお考えですか。
1.そう思う
2.どちらかといえばそう思う
3.どちらともいえない
4.どちらかといえばそう思わない
5.そう思わない
6.わからない、把握していない
3.市民参加(活動)を支援する制度
165
貴自治体では市民参加を支援する制度がありますか。下記の項目のうち該当するものが
あればいくつでも○をつけてください。また該当するものについてはその名称と設置年(制
定年)をあわせてご記入ください。また、例示以外の事例で特記すべき事例があれば 13 に
ご記入ください。
1.市民活動の支援を明記した条例
2.市民活動の支援を行う総合的な担当部署
3.公募型の市民公益活動全般の助成制度
4.まちづくり基金(出資を含む)
5.市民活動の支援を行う総合的な拠点施設
6.ボランティア保険費用助成
7.ボランティアの登録派遣制度
8.行政職員の派遣制度(出前講座等)
9.市民(企業含む)活動の独自の認証制度
10.特定の市民活動に対する公共施設使用料の減免
11.市民(企業含む)活動の独自の表彰制度
12.住民協議会等の設立・運営支援
13.その他
4.市民参加を促す制度
貴自治体では市民参加を促すための制度や仕組みがありますか。下記の項目のうち該当
するものがあれば、いくつでも○をつけてください。検討中の場合も併せてご記入くださ
い。また該当するものについてはその名称と設置年、制定年、実施予定年等をあわせてご
記入ください。例示以外の事例で特記すべき事例があれば 9 にご記入ください。
1.市民参加条例
2.市民参加憲章
3.審議会委員等の一般公募枠設定
4.行政オンブズマン制度
5.公募型の住民協議会
6.インターネットによる意見収集の制度化
7.事業の一部にワークショップを義務づけ
8.市民参加型事業の事業枠設定
9.その他
5.行政への市民参加の課題
行政への市民参加の課題としてどのようなことがありますか。下記の項目のうち主なも
166
のを 3 つまで選んで○をつけてください。
1.政策決定に時間がかかる
2.どのような事業でどの程度の市民参加を図るべきかのルールがない
3.市民参加をコーディネートできる職員が少ない
4.事業の効果が測りにくい
5.行政依存傾向が強く陳情・要望の域を出ない
6.参加対象者の選定が難しい
7.住民の関心が薄く、参加機会を設ける意義が見出しにくい
8.市民意見の反映の方法が難しい(成果の活用についてのルールがない)
9.利害関係者以外の声の顕在化が困難
10.住民相互の意見調整が困難である
11.市民活動と行政で実施している事業内容が類似・重複しており、
市民活動を潰しかねない
12.その他
6.市民参加の拡大に向けての取組
市民参加の拡大に向けてのお考え、全庁的に取り組んでおられる事例やNPO法人のみを
対象とする支援制度等がございましたらご教示願います。
(自由回答)
7.情報公開(提供)の取組状況
貴自治体における情報公開の取組状況についてお尋ねします。下記の項目のうち該当す
るものがあれば、いくつでも○をつけてください。また該当するものについては取組開始
年と具体的な取組内容(試行・金額要件等)をあわせてご記入ください。例示以外の事例
で特記すべき事例があれば 13 にご記入ください。
1.条例に「知る権利」を明記
2.議会の情報公開
3.外郭団体の情報公開
4.検討過程情報の公開
5.一般競争入札時における調査基準価格の事前公開
6.一般競争入札時における予定価格の事後公開
7.会議(委員会・審議会等)予定に関する情報提供
8.広聴に寄せられた意見とこれに対する回答の公開
9.各種統計資料、自治体アンケート等のデータベース化と電子媒体での公開
10.予算・決算資料の情報提供
11.会議(委員会・審議会等)記録の公開
167
12.全庁的なパソコンと庁内LAN導入による情報の共有化
13.その他
8.行政評価と市民参加
近年、アカウンタビリティーなどの視点から行政評価の必要性が言われていますが、行
政サービスの受益者たる市民の行政評価への参加方法についてどのようにお考えですか。
下記の項目のうちあてはまるものすべてに○をつけてください。
1.評価資料の公開を持って参加に代える
2.外部に市民代表を含めた評価委員会や審議会を設ける
3.評価結果について積極的に広報を行い理解の促進を図る
4.政策指標設定に市民の意見を反映させる
5.意識調査等の結果を市民の評価として取り入れる
6.評価可能な事業について市民(モニター等)が直接評価を行う
7.その他
8−1.行政評価の取組状況について
貴自治体における行政評価の取組状況についてお尋ねします。下記のそれぞれの項目に
ついて、該当するものに○をつけてください。また(
)内や記入欄には具体的な取組内
容などの状況についてご記入ください。なお、導入に向けて具体的な検討を行っている場
合は取組開始年に予定年をご記入の上、その検討内容についてご記入願います。
①取組状況
1.導入済
2.試行中
3.検討中
4.考えていない
5.その他
6.未回答
②取組開始(予定)年
1996
1997
1998
1999
2000
2001
未回答
168
③対象とする事業等(複数回答)
1.全ての事務事業
2.一部の事務事業
3.政策レベル
4.施策レベル
5.その他
8−2.具体的な評価制度について
*この設問は、政策又は施策レベルでの評価を実施している場合、ご回答下さい。
1.最も上位の評価項目の数
2.上記指標の性質区分内訳
3.評価指標の選定・決定方法
4.外部の評価委員会の有無
5.内部の評価委員会の有無
6.目標達成度の検証サイクル
7.評価指標項目の見直しサイクル
8.評価指標項目の見直し方法
9.評価指標に対応する事業体系の明示
10 総合計画と評価の連動について
11 評価指標の公表方法
12 評価調書、評価結果の公表状況
8−3.行政評価の問題点
行政評価にはどのような問題があるとお考えですか。下記の項目のうち主なものを 3 つ
まで選んで○をつけてください。(検討中の場合は予想される問題点についてご回答願いま
す。)
1.客観的な評価指標の設定が困難
2.評価技術の蓄積がない
3.内部管理部門の評価が困難である
4.評価の意義について内部の理解が得られにくい
5.時間とコストがかかる
6.評価結果について自信が持てない
7.評価が低い事業だからといって事業を中止できないものがある
169
8.評価結果が誤解や混乱を招きかねない
9.住民の関心が低い
10.その他
170
都市経営における市民参加に関する調査(集計表)
本調査は自治体経営、地域経営又は都市経営(以下、都市経営という)に住民又は市民
(以下、市民という)がどのように参加、活動しつつあるかについて自治体の取組みから
明らかにしようとするものです。
1.市民活動への期待
貴自治体では市民にどのような分野での活動を特に期待しますか。下記の項目から主な
ものを 3 つまで選んで○をつけてください。(N=35)
1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
17 件
(49%)
2
3.まちづくりの推進を図る活動
11
4.文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
5.環境の保全を図る活動
2
14
6.災害時の救援の活動
4
7.地域安全活動
0
8.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
0
9.国際協力の活動
0
10.男女共同参画社会の形成促進を図る活動
1
11.子どもの健全育成を図る活動
2
12.NPO活動を支援する活動
6
13.行政監視
0
14.行政への政策提言
5
15.その他
(31%)
(40%)
14
(内 12 件は分野特定せず
34%)
2.市民活動の状況認識
貴自治体では近年、市民活動が盛んになったとお考えですか。(N=35)
1.そう思う
13 件 (37%)
2.どちらかといえばそう思う
19
3.どちらともいえない
1
4.どちらかといえばそう思わない
0
5.そう思わない
1
6.わからない、把握していない
1
3.市民参加(活動)を支援する制度
171
(54%)
貴自治体では市民参加を支援する制度がありますか。下記の項目のうち該当するものが
あればいくつでも○をつけてください。また該当するものについてはその名称と設置年(制
定年)をあわせてご記入ください。また、例示以外の事例で特記すべき事例があれば 13 に
ご記入ください。(N=35)
1.市民活動の支援を明記した条例
6件
2.市民活動の支援を行う総合的な担当部署
24
3.公募型の市民公益活動全般の助成制度
6
4.まちづくり基金(出資を含む)
4
(69%)
5.市民活動の支援を行う総合的な拠点施設
14
(40%)
6.ボランティア保険費用助成
15
(44%)
7.ボランティアの登録派遣制度
11
(33%)
8.行政職員の派遣制度(出前講座等)
7
9.市民(企業含む)活動の独自の認証制度
2
10.特定の市民活動に対する公共施設使用料の減免
2
11.市民(企業含む)活動の独自の表彰制度
7
12.住民協議会等の設立・運営支援
5
13.その他
13
4.市民参加を促す制度
貴自治体では市民参加を促すための制度や仕組みがありますか。下記の項目のうち該当
するものがあれば、いくつでも○をつけてください。検討中の場合も併せてご記入くださ
い。また該当するものについてはその名称と設置年、制定年、実施予定年等をあわせてご
記入ください。例示以外の事例で特記すべき事例があれば 9 にご記入ください。
(N=35)
1.市民参加条例
5件
2.市民参加憲章
2
3.審議会委員等の一般公募枠設定
5
4.行政オンブズマン制度
6
5.公募型の住民協議会
1
6.インターネットによる意見収集の制度化
16
7.事業の一部にワークショップを義務づけ
2
8.市民参加型事業の事業枠設定
5
9.その他
7
(46%)
5.行政への市民参加の課題
行政への市民参加の課題としてどのようなことがありますか。下記の項目のうち主なも
172
のを 3 つまで選んで○をつけてください。(N=35)
1.政策決定に時間がかかる
3件
2.どのような事業でどの程度の市民参加を図るべきかのルールがない
25(71%)
3.市民参加をコーディネートできる職員が少ない
6
4.事業の効果が測りにくい
5
5.行政依存傾向が強く陳情・要望の域を出ない
11(31%)
6.参加対象者の選定が難しい
4
7.住民の関心が薄く、参加機会を設ける意義が見出しにくい
1
8.市民意見の反映の方法が難しい(成果の活用についてのルールがない) 17(49%)
9.利害関係者以外の声の顕在化が困難
5
10.住民相互の意見調整が困難である
3
11.市民活動と行政で実施している事業内容が類似・重複しており、
市民活動を潰しかねない
1
12.その他
3
6.市民参加の拡大に向けての取組
市民参加の拡大に向けてのお考え、全庁的に取り組んでおられる事例やNPO法人のみを
対象とする支援制度等がございましたらご教示願います。
(自由回答)
「基本方針等を策定したり、そのための検討委員会を設置した」というのが 8 件と最も多く、
「県民税均等割の免除」
(3 件)
、「NPO法人運営研修」(3 件)、「庁内の連絡協議会」「出
会い・きっかけづくりの場」(2 件)
、などが主なものある。
7.情報公開(提供)の取組状況
貴自治体における情報公開の取組状況についてお尋ねします。下記の項目のうち該当す
るものがあれば、いくつでも○をつけてください。また該当するものについては取組開始
年と具体的な取組内容(試行・金額要件等)をあわせてご記入ください。例示以外の事例
で特記すべき事例があれば 13 にご記入ください。(N=35)
1.条例に「知る権利」を明記
11 件 (31%)
2.議会の情報公開
18
(51%)
3.外郭団体の情報公開
17
(49%)
4.検討過程情報の公開
11
(31%)
5.一般競争入札時における調査基準価格の事前公開
6
6.一般競争入札時における予定価格の事後公開
31
(89%)
7.会議(委員会・審議会等)予定に関する情報提供
23
(66%)
8.広聴に寄せられた意見とこれに対する回答の公開
13
(37%)
173
9.各種統計資料、自治体アンケート等のデータベース化と電子媒体での公開
18
(51%)
10.予算・決算資料の情報提供
24
(69%)
11.会議(委員会・審議会等)記録の公開
22
(63%)
12.全庁的なパソコンと庁内LAN導入による情報の共有化
29
(83%)
13.その他
5
8.行政評価と市民参加
近年、アカウンタビリティーなどの視点から行政評価の必要性が言われていますが、行
政サービスの受益者たる市民の行政評価への参加方法についてどのようにお考えですか。
下記の項目のうちあてはまるものすべてに○をつけてください。(N=35)
1.評価資料の公開を持って参加に代える
10 件
(29%)
2.外部に市民代表を含めた評価委員会や審議会を設ける
11
(31%)
3.評価結果について積極的に広報を行い理解の促進を図る
20
(58%)
4.政策指標設定に市民の意見を反映させる
12
(34%)
5.意識調査等の結果を市民の評価として取り入れる
10
(29%)
4
(11%)
6.評価可能な事業について市民(モニター等)が直接評価を行う
7.その他
11
8−1.行政評価の取組状況について
貴自治体における行政評価の取組状況についてお尋ねします。下記のそれぞれの項目に
ついて、該当するものに○をつけてください。また(
)内や記入欄には具体的な取組内
容などの状況についてご記入ください。なお、導入に向けて具体的な検討を行っている場
合は取組開始年に予定年をご記入の上、その検討内容についてご記入願います。
①取組状況(N=35)
1.導入済
12 件
(34%)
2.試行中
6
(17%)
3.検討中
15
(43%)
4.考えていない
0
5.その他
0
6.未回答
1
②取組開始(予定)年(N=34)
1996
2件
1997
7
1998
5
174
1999
12
2000
3
2001
3
未回答
5
③対象とする事業等(複数回答)(N=34)
1.全ての事務事業
19 件
2.一部の事務事業
7
3.政策レベル
11
4.施策レベル
13
5.その他
3(内未定2件)
8−2.具体的な評価制度について
*この設問は、政策又は施策レベルでの評価を実施している場合、ご回答下さい。(N=8)
1.最も上位の評価項目の数
回答5件
(数値目標化あり2件
2.上記指標の性質区分内訳
数値目標なし 3 件 いずれもあり 1 件)
回答 3 件
(定量化指標あり 1 件 非定量化指標あり 1 件
いずれもあり 1 件)
3.評価指標の選定・決定方法
回答7件
4.外部の評価委員会の有無
回答 8 件 (あり4件
なし4件)
5.内部の評価委員会の有無
回答8件
(あり3件
なし5件)
6.目標達成度の検証サイクル
回答8件
(1 年毎7件
3年毎 1 件)
7.評価指標項目の見直しサイクル
回答8件
3年毎2件
5年毎1件)
(1 年毎5件
8.評価指標項目の見直し方法
回答 8 件
9.評価指標に対応する事業体系の明示
回答 8 件
(行っている6件
10 総合計画と評価の連動について
行っていない1件
未定1件)
回答 7 件
(連動している5件
11 評価指標の公表方法
回答 8 件
12 評価調書、評価結果の公表状況
回答 7 件
8−3.行政評価の問題点
175
連動していない 1 件 未定 1 件)
行政評価にはどのような問題があるとお考えですか。下記の項目のうち主なものを 3 つ
まで選んで○をつけてください。(検討中の場合は予想される問題点についてご回答願いま
す。)(N=35)
1.客観的な評価指標の設定が困難
25 件 (71%)
2.評価技術の蓄積がない
19
3.内部管理部門の評価が困難である
7
4.評価の意義について内部の理解が得られにくい
6
5.時間とコストがかかる
9
6.評価結果について自信が持てない
0
7.評価が低い事業だからといって事業を中止できないものがある
4
8.評価結果が誤解や混乱を招きかねない
5
9.住民の関心が低い
2
10.その他
4
176
(54%)
仙台市における市民参加の実態に関する調査(A票)
【記載上の留意点】
1.貴課、又は貴課で所管する外郭団体において市民が参加する事業を実施している場合
下記の設問にお答え下さい。該当する事業がない場合は設問 13 についてのみご回答願
います。
2.複数の事業がある場合にはお手数をおかけしますがこの質問票をコピーして、事業毎
にご回答願います。なお、例えば、市民センターの講座等のように類似の事業を数多
く実施している場合、設問 1 の事業名に(他○○件)と明記の上、まとめてご記入いた
だいて構いません。
3.この調査は平成 10 年度と平成 11 年度(実施予定のものを含む)の事業を対象として
います。まず、初めに【事業区分と回答内容について】をご回答の上、指定された年
度の事業内容をご回答願います。継続事業で事業内容に変更がある場合は年度別に○
を付け、それぞれ別葉にてご回答願います。
4.設問 10 以降については課として1部のみ回答を記入して下さい。
【事業区分と回答内容について】(該当するものに○をつけてください)
事業区分
回答内容
1.平成 10 年度で終了した事業
平成 10 年度分の事業内容について回答
2.継続事業で内容変更あり(10 年度事業)
平成 10 年度分の事業内容について回答
3.継続事業で事業内容に変更なし
平成 10 年度分の事業内容について回答
4.継続事業で内容変更あり(11 年度事業)
平成 11 年度分の事業内容について回答
5.平成 11 年度新規事業
平成 11 年度分の事業内容について回答
1.事業名
2.事業予算額
平成 10 年度
千円
177
平成 11 年度
千円
3.事業開始年度
1.平成 7 年度∼平成 11 年度
3.平成元年度以前から
2.平成 2 年度∼平成 6 年度
4.不明
4.事業分野(いずれか 1 つに○)
1.保健・医療・福祉
4.文化芸術・スポーツ
7.産業振興
2.教育・青少年育成
5.環境関連
8.都市計画・基盤整備
3.まちづくり・地域づくり
6.防災・防犯・災害救援
9.その他(
)
5.事業のタイプ(主催がどこかにはこだわらずに一番現状に近い性格のものに○)
1.市民が主体となって企画運営する事業
2.市民と行政が役割と責任を分担して取り組む事業
3.行政が主体となって企画運営する事業
6.事業目的(最も近いもの 1 つに○)
1.計画策定
5.市民の人材育成・活用
2.施設整備・基盤整備
6.地域の活性化や商業振興、文化振興等
3.公共施設の維持管理
7.一般広聴
4.普及・啓発・PR
8.その他(
)
7.参加段階と参加手法等
①
市民参加は事業のどの段階でおこなわれましたか。全ての該当項目に○を付けて下さ
い。
②
①で○を付けた各項目について実施した参加手法等の番号全てを右欄に記入してくだ
さい。
参加手法等(下表 1∼24 から該当番号を記入)
参加段階
1.事業構想又は事業計画段階
2.具体的な事業の企画段階
3.事業実施段階又は施設整備段階
4.施設運営管理段階
5.事業評価段階
市民参加手法(実際に行ったこと)
市民の具体的な関わり方
1.住民説明会・地域懇談会
2.祭り・イベント
3.アンケート調査(郵送・配布・留置等)
13.来場者・見学者・一般参加者・回答者
14.情報提供者・アドバイザー
15.意見を述べる・アイディアを出す
178
4.ヒアリング調査・モニター
5.意見・アイディア募集
6.シンポジウム・フォーラム
7.ワークショップ
8.審議会・委員会
9.セミナー・学習会・研究会
10.社会実験
11.インターネットの活用
12.その他(
③
16.ボランティアとして活動へ参加
17.ボランティア組織として協力
18.講師・演技者・出展者
19.ボランティアとして運営面へ参加
20.実行委員等スタッフ
21.共同の事業主催者
22.調査研究を実施し政策提言を行う
23.施設等の維持管理者
24.その他(
)
)
事業においてアンケートを行った場合の活用方法について(該当するもの全てに○)
1.集計分析を行い報告書等として取りまとめ、公開している
2.継続的に行い、モニタリングしている
3.事業の5段階などによる評価項目を設け、事業の評価データとして活用している
4.情報をデータベース化し課内などで共有している
5.アンケートを資料として次年度の予算要求を行っている
6.アンケート結果を業務の参考資料として重視しているが、事業に反映させる仕組みづくりに
は至っていない
7.アンケート結果を業務の参考資料として重視しており、事業に反映させる仕組みがある
8.その他(
)
8.参加の性格(いずれか 1 つに○)
1.市民とその場で合意形成を図る、又は早期合意形成に向けた理解を図ることを目的とした参
加である
2.市民との将来の合意形成に向けた事前調整を行うための参加である
3.当該テーマに関する市民の幅広い理解と協力を得るための参加である
次の設問は設問 8 で 1 又は 2 と回答された方のみお答え下さい。
8−1.参加者の募集、呼びかけ状況
①
活用した広報媒体(該当するもの全てに○)
1. 市政だより
4. インターネット
7. テレビ・ラジオ
2. 市政だより(区版)
5. 雑誌・ミニコミ紙
8. 町内会(回覧版)
3. チラシ・ポスター
6. 新聞
9. その他(
②
応募状況(人数を記入してください)
179
)
募集(延べ)人数
③
名
・
参加(延べ)人数
名
選考方法(該当するもの全てに○)
1.先着受付順
3.書類選考
5.地域団体の推薦・地域代表
2.抽選
4.部内で人選
6.その他(
)
8−2−1.合意形成過程におけるワークショップの活用について
1.活用した
①ワークショップを活用しましたか
2.活用していない
②活用した場合のワークショップ技法名
③活用した場合のワークショップの回数
回
1.専門家
④活用した場合のワークショップの指導者
2.市職員
8−2−2.合意形成過程における情報提供の方法について
次の項目から実際に行ったこと全てに○を付けてください
1.事業概要の事前配布
4.複数案の提示
7.施設条件の明示
2.事業概要の当日配布
5.代替案の提示
8.事業の必要性についての説明
3.チラシ・新聞等の発行
6.類似施設の紹介
9.その他(
)
8−2−3.市民意見の反映について(いずれか 1 つに○)
1.原案どおり承認された
5.計画の大幅な変更があった
2.修正箇所等があった(5 箇所未満)
6.計画の全面的見なおしを行った
3.修正箇所等があった(6 箇所∼10箇所)
7.そもそも市民との協働事業である
4.修正箇所等があった(11 箇所以上)
8.その他(
9.市民参加事業の実施に当たり、苦労した点や工夫していることがありますか、また、平
成 10 年度からの継続事業で 11 年度の実施にあたり、変更した点や特に工夫したことがあ
りましたらお書きください。
180
)
設問 10.以降については、課として1部のみ回答をご記入願います。
10.市民参加型事業を企画立案・実践できる課内の人材について
1.人材はいる
2.人材がやや不足している
3.人材が非常に不足している
11.市民参加の必要性についての課職員の理解度について
1.全員が理解している
2.一部の職員が理解している
3.あまり理解されていない
12.今後、貴課において市民参加型事業の実質をより深め、行政に根づかせていくために
はなにが必要だとお考えですか。ご自由にお書きください。
13.市民意見への対応について
貴課においては日常的に市民からの意見や要望に対してどのように対応し、業務に活
かしておられますか。該当するもの全てに○をつけ、4.については保存期間を明記してく
ださい。また、選択肢以外で特に工夫している事などがありましたら 10 にご記入下さい。
1.内容上回答が必要なものについては処理期限を定めて回答・対応している
2.内容上回答が必要でなくともできるだけ見解を示すようにしている
3.全ての市民意見を情報としてデータベース化している
4.文書で寄せられたもののみ保存している(保存期間
年)
5.市民意見を集約分析し、業務改善に役立てている
6.市民意見を集約分析し、事業の見直しや新規事業要望に役立てている
7.市民意見を集約分析し、関係課と情報共有を行っている
8.担当者毎に対応しており一元的な管理は行っていない
9.職務上、事例がほとんどないので特別な対応はしていない
10.その他(
貴課名
)
局
★
課 ご担当者名
ご協力ありがとうございました
181
電話
★
市民参加の実態に関するアンケート(A票)単純集計
調査概要
調査時期 平成11年10月22日∼11月11日
回答依頼課・公所数
350課・公所
回答課数 244課
うち市民参加事業実施 84課 234事業
事業区分 N=234
1 平成10年度で終了した事業
2 継続事業で内容変更あり(10年度事業)
3 継続事業で事業内容に変更なし
4 継続事業で内容変更あり(11年度事業)
5 平成11年度新規事業
6 無回答・無効回答
10
9
125
39
29
22
3 事業開始年度 N=234
1 平成7年度∼平成11年度
2 平成2年度∼平成6年度
3 平成元年度以前から
4 不明
5 無回答・無効回答
114
49
64
2
5
4 事業分野(いずれか1つに〇) N=234
1 保健・医療・福祉
2 教育・青少年育成
3 まちづくり・地域づくり
4 文化芸術・スポーツ
5 環境関連
6 防災・防犯・災害救援
7 産業振興
8 都市計画・基盤整備
9 その他
10 無回答・無効回答
36
14
28
47
18
4
10
14
61
2
5 事業のタイプ(一番現状に近い性格のものに) N=234
28
1 市民が主体となって企画運営する事業
58
2 市民と行政が役割を分担して取り組む事業
3 行政が主体となって企画運営する事業
145
4 無回答・無効回答
3
6 事業目的(最も近いもの1つに〇) N=234
1 計画策定
2 施設整備・基盤整備
3 公共施設の維持管理
4 普及・啓発・PR
5 市民の人材育成・活用
6 地域の活性化や商業振興,文化振興等
7 一般公聴
8 その他
9 無回答・無効回答
16
14
0
100
31
31
5
35
2
7 参加段階と参加手法
① 市民参加は事業のどの段階で行われましたか(複数回答) N=234
1 事業構想または事業計画段階
69
2 具体的な事業の企画段階
101
3 事業実施段階または施設整備段階
182
4 施設運営管理段階
9
5 事業評価段階
59
182
② ①で〇を付けた各項目について
実施した参加手法の番号すべてを
手
法
関
わ
り
方
右欄に記入してください N=1343
1 住民説明会・地域懇談会
2 祭り・イベント
3 アンケート調査(郵送・配布・留置等)
4 ヒアリング調査・モニター
5 意見・アイディア募集
6 シンポジウム・フォーラム
7 ワークショップ
8 審議会・委員会
9 セミナー・学習会・研究会
10 社会実験
11 インターネットの活用
12 その他
手法合計
13 来場者・見学者・一般参加者・回答者 14 情報提供者・アドバイザー
15 意見を述べる・アイディアを出す
16 ボランティアとして活動へ参加
17 ボランティア組織として参加
18 講師・演技者・出展者
19 ボランティアとして運営面に参加
20 実行委員等スタッフ
21 共同の事業経営者
22 調査研究を実施し政策提言を行う
23 施設の維持管理者
24 その他
関わり方合計
1 事業構想
または事業
計画段階
10
10
12
4
12
5
3
24
6
0
2
2
90
15
8
39
7
8
3
2
25
15
1
0
3
126
2 具体的な 3 事業実施 4 施設運営 5 事業評価
事業の
段階または 管理段階 段階
企画段階 施設整備
段階
13
11
7
1
21
9
8
26
9
2
1
3
111
16
15
58
11
8
4
9
50
22
2
0
3
198
12
63
21
11
20
27
23
13
46
2
8
9
255
118
17
42
39
21
56
31
50
29
2
0
8
413
0
0
1
0
0
1
0
1
1
0
0
2
6
1
2
1
1
1
1
1
2
2
0
2
1
15
0
5
22
2
0
2
1
11
1
0
1
2
47
20
1
18
1
0
7
2
15
11
4
0
3
82
③ 事業においてアンケートを行った場合の活用方法について(該当するものすべてに○) N=19
1 集計分析を行い報告書等としてとりまとめ、公開している
2 継続的に行い、モニタリングしている
3 事業の5段階評価などによる評価項目を設け、事業の評価データとして活用している
4 情報をデータベース化し課内などで共有している
5 アンケートを資料として次年度の予算要求を行っている
6 アンケート結果を業務の参考資料として重視しているが、事業に反映させる仕組みづくりには至っていない
7 アンケート結果を業務の参考資料として重視しており、事業に反映させる仕組みがある
8 その他
8 参加の性格(いずれか1つに〇) N=234
1 市民とその場で合意形成を図る、または早期合意形成に向けた理解を図ることを目的とした参加である
2 市民との将来の合意形成に向けた事前調整を行うための参加である
3 当該テーマに関する市民の幅広い理解と協力を得るための参加である
4 無回答,無効回答
183
次の設問は設問8で1または2と回答された方のみお答えください。
8-1 参加者の募集
① 活用した広報媒体(該当するものすべてに〇) N=84
1 市政だより(全市板)
14
2 市政だより(区版)
5
18
3 チラシ・ポスター
4 インターネット
6
5 雑誌・ミニコミ紙
5
6 新聞
7
7 テレビ・ラジオ
9
8 町内会(回覧版)
6
9 その他
14
③ 選考方法(該当するものすべてに〇) N=45
1 先着受付順
2 抽選
3 書類選考
4 部内で人選
5 地域団体の推薦・地域代表
6 その他
7
3
2
6
11
16
8-2-1 合意形成過程におけるワークショップの活用について
① ワークショップを活用しましたか N=40
1 活用した
7
2 活用していない
27
3 無回答・無効回答
6
② 活用した場合のワークショップの技法名 N=7
ブレーンストーミング
KJ法
その他
無回答
3
1
1
2
④ 活用した場合のワークショップの指導者 N=7
1 専門家
2
2 市職員
5
8-2-2 合意形成過程における情報提供の方法について(実際に行ったことすべてに〇) N=82
1 事業概要の事前配布
15
2 事業概要の当日配布
18
3 チラシ・新聞等の発行
8
4 複数案の提示
12
5 代替案の提示
1
6 類似施設の紹介
2
7 施設条件の明示
6
8 事業の必要性についての説明
18
9 その他
2
184
8-2-3 市民意見の反映について(いずれか1つに〇) N=37
1 原案どおり承認された
8
8
2 修正ヵ所等があった(5ヵ所未満)
2
3 修正ヵ所等があった(6ヵ所∼10ヵ所)
0
4 修正ヵ所等があった(11ヵ所以上)
5 計画の大幅見な変更があった
1
6 計画の全面的な見直しを行った
0
7 そもそも市民との協働事業である
16
8 その他
2
9 市民参加事業の実施にあたり苦労した点や工夫していることがありますか、また、平成10年度からの
継続事業で11年度の実施にあたり、変更した点や特に工夫したことがありましたらお書きください。 N=95
⇒本文参照
設問10以降に付いては、課として1部のみの回答をご記入願います。
10 市民参加型事業を企画立案・実践できる課内の人材について N=83
1 人材はいる
40
35
2 人材がやや不足している
8
3 人材が非常に不足している
11 市民参加の必要性についての課職員の理解度について N=84
1 全員が理解している
49
33
2 一部の職員が理解している
3 あまり理解されていない
2
12 今後貴課において市民参加型事業の実質をより深め、行政に根付かせていくためには何が必要だ
お考えですか。ご自由にお書きください。 N=49
⇒本文参照
13 市民意見の対応について(複数回答) N=475
1 内容上回答が必要なものについては処理期限を定めて回答・対応している
2 内容上回答が必要でなくてもできるだけ見解を示すようにしている
3 すべての市民意見を情報としてデータベース化している
4 文書で寄せられたもののみ保存している
(保存期限 1年)
(3年)
(5年)
(10年)
(無回答)
5 市民意見を集約分析し、業務改善に役立てている
6 市民意見を集約分析し、事業の見直しや新規事業要望に役立てている
7 市民意見を集約分析し、関係課と情報共有を行っている
8 担当者毎に対応しており一元的な管理は行っていない
9 職務上、事例がほとんどないので特別な対応はしていない
10 その他
185
114
56
1
49
(18)
(7)
(16)
(2)
(6)
45
36
40
37
71
26
仙台市における市民活動支援状況に関する調査(B票)
【記載上の留意点】
貴課、又は貴課で所管する外郭団体において平成10年度中に行った市民活動(行政が活動
の立ち上げに積極的に関与している活動や、当該事業が結果として市民活動の支援に結びつい
ているものも含む)支援事業についてお答え下さい。複数の事業がある場合にはお手数でもこ
の質問票をコピーして、事業毎にご回答願います。また、予算を計上していない業務について
は 1 枚にまとめてご記入いただいて結構です。なお、該当がない場合、回答は不要です。
1.事業名
2.事業予算額
平成 10 年度
3.事業開始年度
(参考)平成 11 年度
千円
1.平成 7 年度∼平成 11 年度
3.平成元年度以前から
2.平成 2 年度∼平成 6 年度
4.不明
千円
4.事業目的
5.支援対象(いずれか 1 つに○)
1.地縁団体(名称
2.NPO 等
)
(ここでは市民の自発的意思により組織され、公益活動等を行う団体とする。)
3.個人
4.その他
(
)
6.支援対象としている活動分野(いずれか 1 つに○)
1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
8.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
9.国際協力の活動
10.男女共同参画社会の形成促進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 11.子どもの健全育成を図る活動
5.環境の保全を図る活動
12.NPO活動を支援する活動
6.災害救援活動
13.その他(
)
7.地域安全活動
7.支援対象の選定方法又は支援の根拠(いずれか一つに○)
1.公募
4.行政主導の組織であり選定等はない
2.条例(条例名
)5.なし
)6.その他(
3.補助金交付要綱等(要綱名
186
)
8.支援方法
(1)金銭的支援(該当しない場合は(2)に進んでください)
①助成金の種類
1.補助金
3.交付金
5.その他
2.負担金
4.貸付金
(
1.団体支援
②助成の性格
③助成件数及び金額合計
2.事業支援
3.その他(
2.定額
)
千円(平成 10 年度)
件
1.総事業費の一定率(
④金額の決定方法
)
割・限度額
(限度額
千円)
千円)
3.その他(
限度額
千円)
1.単年度
⑤支援期間
2.期間を限定している(期間
年間)
3.期間を定めず継続している
(2)その他の支援(いくつでも○をつけてください。( )内には具体例をご記入下さい)
1.単発の研修機会
6.後援名義
2.継続的な研修機会
7.物品提供(
)12.事務局機能引受
3.表彰
8.場所提供(
)13.活動機会の提供
4.認定・認証
9.活動の発表機会の提供
5.相談
11.情報提供
10.広報活動の支援
14.業務委託
15.その他(
)
9.これまで行って来た支援の結果としての市民活動に問題があるとすれば、どのような点で
すか。該当するものを全て選んで○をつけてください。
1.活動が行政の支援から自立しない
7.住民の既得権化している
2.活動が拡大しない
8.新たな市民活動に対応できない
3.活動が活性化しない
9.市民活動の目標と成果が見えにくい
4.活動が維持できない
10.人材育成事業と市民活動の関係が見えにくい
5.事務局(行政)の負担が大きい
11.金銭的な支援に頼りすぎている
6.積極的な活動につながらない
12.その他(
)
10.前問において問題があるとした場合、それでは今後はどのような支援をすべきだとお考え
ですか、また、問題がないとした場合、なぜ支援がうまくいっているとお考えですか、そ
れぞれについてご自由にお書きください。
貴課名
局
課
★
ご担当者名
ご協力ありがとうございました
187
電話
★
仙 台 市 に お け る 市 民 活 動 支 援 状 況 に 関 す る 調 査 ( B 票 )
1 アンケート実施概要
(1) 実施対象
仙台市各課,公所(二種相当) 350 件
(部相当の空港港湾対策室,博物館,科学館,市民図書館,中央市民センターを含み,市
立病院の診療科等を除く)
(2) 実施期間
平成 11 年 10 月 22 日から 11 月 11 日まで
(3) アンケート回収状況
104 件(58 課)
2 集計について
アンケート回答を別紙アンケートデータ修正方針にしたがって修正した上で活用した
3
回答局
記入局
収入役
総務局
企画局
財務局
市民局
健康福祉局
環境局
経済局
都市整備局
建設局
下水道局
青葉区
宮城野区
若林区
太白区
泉区
消防局
水道局
交通局
ガス局
教育局
回答事業数
備考
0
0
5
0
13
9
15
5
4
5
1
11 宮城総合支所含む
3
3
8
1
1
3
0
0
17
188
4
集計結果
2.事業予算額
事業予算額
0
∼300
∼500
∼1,000
∼3,000
∼5,000
∼10,000
∼50,000
それ以上
記入なし
平成 10 年度
平成10年度
11
15
5
6
17
5
4
7
8
15
3.事業開始年度
1
2
3
4
事業開始年度
H7∼H11年度
H2∼H6年度
H元年度以前から
不明
千円
平成11年度
10
16
4
5
15
9
5
5
8
16
(参考)平成 11 年度
千円
N=104
1.平成 7 年度∼平成 11 年度
3.平成元年度以前から
2.平成 2 年度∼平成 6 年度
4.不明
事業数
44
16
37
7
N=104
5.支援対象(いずれか 1 つに○)
1.地縁団体(名称
2.NPO 等
)
(ここでは市民の自発的意思により組織され、公益活動等を行う団体とする。)
3.個人
4.その他
(
支援対象
1 地縁団体
2 NPO等
3 個人
4 その他
5 市民行政協働団体
6 複合
)
事業数
24
32
7
2
31
8
N=104
※5,6 はデータ集計過程で追加した項目
189
6.支援対象としている活動分野(いずれか 1 つに○)
1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
8.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
9.国際協力の活動
10.男女共同参画社会の形成促進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 11.子どもの健全育成を図る活動
5.環境の保全を図る活動
12.NPO活動を支援する活動
6.災害救援活動
13.その他(
)
7.地域安全活動
支援活動分野
1 保険,医療又は福祉の増進を図る活動
2 社会教育の推進を図る活動
3 まちづくりの推進を図る活動
4 文化,芸術又はスポーツの振興を図る活動
5 環境の保全を図る活動
7 地域安全活動
9 国際協力の活動
10 男女共同参画社会の形成促進を図る活動
11 子どもの健全育成を図る活動
13 その他
事業数
15
13
31
8
21
2
2
5
3
4
N=104
その他と回答した事業
問6-13 その他内容
情報化の促進を図る活動
活動分野は限定していない
分野は問わない
7.支援対象の選定方法又は支援の根拠(いずれか一つに○)
1.公募
4.行政主導の組織であり選定等はない
2.条例(条例名
)5.なし
)6.その他(
3.補助金交付要綱等(要綱名
問7 選定方法,支援根拠
1
2
3
4
5
6
7
8
公募
条例
補助金交付要綱等
行政主導の組織であり選定等はない
なし
その他
講座終了者
その他金銭に係らない基準
事業数
10
7
31
19
23
3
5
6
190
)
N=104
※7,8 はデータ集計過程で追加した項目
8.支援方法
金銭支援の有無
あり
なし
事業数
55
49
N=104
(1)金銭的支援(該当しない場合は(2)に進んでください)
①助成金の種類
助成金の種類
補助金
負担金
交付金
その他
1.補助金
3.交付金
5.その他
2.負担金
4.貸付金
(
)
事業数
40
2
2
11
N=55
問8(1)①5その他内容
奨励金
印刷費
事業費
報償金
報償費
清掃のお礼として謝礼金
諸謝金(門扉開閉及び所内管理)
交通費補助
報賞費(奨励金)
②助成の性格
助成の性格
団体支援及び事業支援
団体支援
事業支援
その他
回答なし
1.団体支援
2.事業支援
事業数
1
21
30
2
1
問8(1)②3その他内容
交通費
191
N=55
3.その他(
)
③助成件数及び金額合計
助成件数
千円(平成 10 年度)
件
事業数
0
1
11∼50
2∼10
51以上
記入なし
4
25
6
6
9
5
N=55
助成件数の最小
0
助成件数の最大 4222
単位(千円)
助成金金額合計
事業数
0
∼300
∼500
∼1,000
∼3,000
∼5,000
∼10,000
∼50,000
それ以上
記入なし
3
6
3
6
13
5
4
9
2
4
N=55
金額合計の最小
¥0
金額合計の最大 ¥214,376
1.総事業費の一定率(
④金額の決定方法
2.定額
(限度額
3.その他(
金額の決定方法
1一定率
2定額およびその他
3定額
4その他
記入なし
N=55
その他内容
事業費の一部
1世帯580円
総事業費の一定率を基準に(1割弱)内容を審査会で評価する
印刷物作成にかかる経費のうち印刷費分
事務費+活動費
助成対象事業経費内
要綱に定めた算出額で
一基あたり2千円、一世帯2基まで
事業費
魅まち事業4千万円の枠内
192
千円)
千円)
限度額
事業数
5
1
19
29
1
割・限度額
千円)
経費と参加者会費との差額
会員数により3段階
公園面積で支給額が変更
事業ごと総額
定額+公園面積割額
児童、生徒数に応じて
予算要求時に財政査定
月2回まで
1回の活動につき500円
1.単年度
⑤支援期間
2.期間を限定している(期間
年間)
3.期間を定めず継続している
支援期間
支援期間
単年度
期間限定
継続
記入なし
事業継続期間
事業継続期間
単年度
期間限定
継続
記入なし
事業数
22
2
30
1
N=55
3
2
49
1
N=55
事業数
(2)その他の支援(いくつでも○をつけてください。( )内には具体例をご記入下さい)
1.単発の研修機会
6.後援名義
2.継続的な研修機会
7.物品提供(
)12.事務局機能引受
3.表彰
8.場所提供(
)13.活動機会の提供
4.認定・認証
9.活動の発表機会の提供
5.相談
支援内容
金銭支援の有無
1単発の研修機会
2継続的な研修機会
3表彰
4認定・承認
5相談
6後援名義
7物品提供
8場所提供
9活動の発表機会の提供
11.情報提供
10.広報活動の支援
14.業務委託
15.その他(
事業数
55
19
20
7
7
33
14
21
35
22
193
N=104
)
10広報活動の支援
11情報提供
12事務局機能引受
13活動機会の提供
14業務委託
15その他
31
49
29
24
10
9
その他の内容
内容
ごみの無料処理
回収作業人員3名、車輌1台
人員6名、車輌2台
回収作業人員5名、車輌1台
人員5名、収集車1台
回収作業人員8名、車輌3台
アドバイザー派遣
コピー機使用
9.これまで行って来た支援の結果としての市民活動に問題があるとすれば、どのような点で
すか。該当するものを全て選んで○をつけてください。
1.活動が行政の支援から自立しない
7.住民の既得権化している
2.活動が拡大しない
8.新たな市民活動に対応できない
3.活動が活性化しない
9.市民活動の目標と成果が見えにくい
4.活動が維持できない
10.人材育成事業と市民活動の関係が見えにくい
5.事務局(行政)の負担が大きい
11.金銭的な支援に頼りすぎている
6.積極的な活動につながらない
12.その他(
問題点
1自立しない
2拡大しない
3活性化しない
4維持できない
5事務局の負担大
6積極的な活動につながらない
7既得権化している
8新たな市民活動に対応できない
9目標と成果が見えにくい
10人材育成との関係が不明確
11金銭的支援に頼りすぎ
12その他
事業数
28
21
15
11
24
18
7
5
8
7
4
9
194
)
N=104
その他の内容
内容
行政への陳情・要望から脱却しない
開始したばかりで評価は定まらない
行政活動の方に問題がある
行政活動の方に問題がある
一律支給的な事業でしかない
自主活動が始まったばかりで、今後の状況を保健婦が見守っている
対象者の入れ代わり
メンバーがリーダーに依存している。
施設の不足
195
調査研究体制および活動経緯
【調査研究体制および活動経緯】
○調査研究体制
高橋 三也
主任研究員
芦立 千佳子
荒 洋子
荒川 志保
杉野目 陽子
鈴木 貞朔
西山 浩一
山崎 晃
(アドバイザー:
市民研究員
市民研究員
職員研究員
職員研究員
市民研究員
市民研究員
市民研究員
佐藤善建 調査研究部長)
○研究活動経緯
調査期間:平成 11 年 5 月∼平成 12 年3月
平成 11 年
5∼6 月
6.1
6.30
7.21
8.19
9.9
9.20
9.14∼15
9.17
9.18∼19
9.24∼25
10.1∼2
10.6
10.8∼9
10.22∼11.11
11.10
11.15∼30
12.8
平成 12 年 1.12
1.26
2.23
3.8
3.22
調査研究準備
市民研究員委嘱
第1回研究会
第2回研究会
第3回研究会
先進地視察調査 岩手県
第4回研究会
先進地視察調査 静岡県・掛川市・三島市
勉強会
講師:市民活動を支える制度をつくる会(C's)事務局長
松原明氏
テーマ:自治体とNPOのパートナーシップについて
NPOフォーラム 99 東北会議に参加
先進地視察調査 神戸市
先進地視察調査 北九州市
第5回研究会
先進地視察調査 三重県
「仙台市における市民参加の実態に関する調査」を実施
第6回研究会
「都市経営における市民参加に関する調査」を実施
第7回研究会
第8回研究会
第9回研究会
第 10 回研究会
第 11 回研究会
第 12 回研究会
197
都 市 経 営 における市 民 参 加 システムの
具 体 的 手 法 に関 する調 査
№199900300104
仙台都市総合研究機構
平成12年3月発行
〒980-6107 仙台市青葉区中央1丁目3番1号
アエル7階
TEL
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FAX
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印刷製本
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