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平成23年度 総括・分担研究報告書

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平成23年度 総括・分担研究報告書
厚生労働科学研究費補助金
難治性疾患克服研究事業
慢性特発性偽性腸閉塞症(CIIP)の我が国における
疫学・診断・治療の実態調査研究
平成 23 年度
総括・分担研究報告書
研究代表者 中島 淳
平成 24(2012)年 3 月
緒言
慢性特発性偽性腸閉塞症は食道から直腸までの全消化管を罹患対象とし時間的空間的にそ
の罹患部位を変化させながら罹患腸管において蠕動能の著明な低下をきたし、器質的閉塞
がないのに機械的腸閉塞様症状を呈する慢性の疾患である。腸閉塞症状の悪化で繰り返す
腸管切除を余儀なくされ短腸症候群による栄養障害に至ることや、罹患部位に小腸が含ま
れる場合は長期わたる腸管拡張により腸管での機能異常、すなわち消化吸収症障害が起こ
り、長期の中心静脈栄養を余儀なくされる状況に至る疾患である。患者は腸閉塞症状に苦
しみ、増悪・再発により何回もの手術を受け、長期の中心静脈栄養管理下に置かれ食事摂
取ができない状況に至り、栄養障害による合併症で死亡することもある。海外では小腸移
植が行われる。これまでこのような文献的背景とは別に実際の患者を診る機会は希少疾患
ゆえに少なかったが、本研究班で慢性特発性偽性腸閉塞症の実態調査を進めるにしたがい、
多くの患者を診療する機会や症例提示を得て実に本疾患が難病であるかをあらためて認識
した。希少疾患ゆえに系統的調査研究が本邦では全くなされていなかったことによる。
本研究班では平成21年度に診断基準(案)を作成し、消化器内科、大腸肛門外科の我が
国における専門家への実態調査を行い、内科系の調査では症状発現から診断確定まで実に
長期にわたることが明らかにされ、まず当該疾患の医師における認知が急務であることが
分かった。このため主に内科医を対象に慢性偽性腸閉塞とは何かの紹介を邦文で啓蒙活動
を行った。一方外科系の調査では、小腸を罹患部位に含む症例の手術例は手術成績が有意
に悪く外科治療は良好な予後に繋がらないことが明らかになった。平成22年度は、1.
国内の患者の疫学調査を科学的疫学手法により、地域、病院規模別に全国調査を行い我が
国の推定患者数などの実態を明らかにすべく着手した。2.外科系の調査で協力いただい
た施設から手術検体を供与いただき本邦における手術症例の病理的解析を行った、具体的
には筋原性、神経原生、カハール細胞の消失による介在性の分類を特異的抗体を用いた免
疫染色を行う手法である。3.平成21年に作成した診断基準は本邦の臨床現場に即して
診断が容易にかつ特異度高くできるように工夫したものであるが、この診断基準案を国内
外の研究者の批判に耐えられるように多くの方からご批判いただき改定を行った。これは
本疾患の診断において海外などでは小腸マノメトリーや消化管シンチグラフィーが臨床現
場で容易に使用可能であるが、本邦では不可能に近い状況であるために、このギャップを
埋めるために本邦の臨床現場でも診断をつけるために作成を試みた経緯がある。しかしな
がら本邦独自で、海外の研究者には通用しないものでは『ガラパゴス化』の危険もあると
考え海外の当該分野の専門家に意見を求めた。特に欧米の専門家より実に熱心な多くのコ
メントをいただき国際的批判に耐えられる診断基準の改定案を作成することができた。
本年度は、1.診療のガイドラインおよび手引きの作成を行った。2.厳密な国内の疫学
調査を完了して推定患者数等のわが国初の成果を得られた。3.診断基準を英文論文で発
進した。4.新しい診断モダリティとして我が国で多くの施設で使用可能な MRI を用いた
小腸運動異常の診断方法の開発を行った。我が国で行える小腸運動異常の検査方法の開発
の意義は非常に大きいと考えられる。4.国内よりご提供いただいた病理検体の検討を行
い病理診断の指針を作成した。5.外科治療の成績で、我が国の検討でも小腸が罹患され
ている場合は腸管切除は効果がないことを論文にて発信した。治療に関してはその当面の
ゴールは今回の調査から症状を除去する対症療法に加え、手術に至る腸閉塞状況の増悪、
すなわち軸念転や、レントゲン所見の悪化をきたさないこと、また小腸の消化吸収障害が
起こらないように早期に適切な減圧および栄養療法の介入が重要であることがより本質的
問題であること示唆された。特に小腸が罹患範囲に入っている症例では手術をできるだけ
避けなければならないことが本研究班の調査で明らかにされた以上、本疾患の治療で成分
栄養療法や中心静脈栄養などの栄養療法が予防・治療ともにおいて重要であると考えられ
た。
このような当面の治療のゴールとは別に内科的根治療法を開発することが急務であると考
えられる。根治で無くても少なくとも外科治療に移行する率を劇的に減らす治療が求めら
れている。現状では国内外の研究でも本疾患の発症原因の解明につながる知見はほとんど
ないが、病因解明が根治療法の開発に必要であると考えられる。1-2年で解決できる課
題ではないが、本研究班を端緒として国内外のネットワークを通して情報交換を行い、我
が国の医学研究の英知を結集していつの日か病因を解明し、根治療法の確立ができるよう
になることを求めてやまない。今回の研究成果が少しでも実際の患者の治療へ寄与される
ことを期待して来年度も継続して研究を継続予定である。今回の研究に際し、調査協力い
ただいた先生方に改めて感謝申し上げます。最後に、本研究の開始より貴重なご助言をい
ただきました癌研有明病院
平成24年3月
研究代表者
中島
淳
武藤徹一郎先生にこの場を借りて感謝申し上げます。
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学診断治療の実態調査研究班
区 分
氏 名
研 究 代 表 者
中島 淳
職 名
横浜市立大学大学院分子消化管内科学
研 究 分 担 者 本郷 道夫 東北大学医学部消化器内科、総合医療学
藤本 一眞 佐賀大学医学部消化器内科
大和 滋
国立精神・神経医療研究センター病院 消化器科
教
授
教 授
教 授
部 長
正木 忠彦 杏林大学医学部消化器外科
教 授
松橋 信行 NTT東日本関東病院・消化器内科
部 長
佐藤 元
国立保健医療科学院政策技術評価研究部
部 長
杉原 健一 東京医科歯科大大学院医歯学総合研究科腫瘍外科学
教 授
稲森 正彦 横浜市立大学附属病院臨床研修センター
講 顧 問 武藤徹一郎 癌研究会付属有明病院
研 究 協 力 者 篠村 恭久 札幌医科大学 第一内科
加藤 元嗣 北海道大学医学部 第三内科 光学診療部
平石 秀幸 独協医科大学 消化器内科
草野 元康 群馬大学医学部付属病院 光学医療診療部
師
名誉院長
教 授
准 教 授
教 授
准 教 授
永瀬 肇
横浜労災病院 消化器内科
部 長
川口 実
国際医療福祉大学付属 熱海病院
教 授
古田 隆久 浜松医科大学臨床研究管理センター・消化器内科
城 卓志
荒川 哲男 大阪市立大大学院医学研究科消化器器官制御内科学
春間 賢
准 教 授
名古屋市立大学大学院医学研究科 消化器・代謝内科 教 授
川崎医科大学 食道・胃腸内科
教 授
教 授
松本 主之 九州大学病院 消化管内科
講 櫻井 宏一 熊本大学医学部附属病院消化器内科
助 教
山本章二朗 宮崎大学医学部附属病院内科学講座 消化器血液学
助 教
竹内 義明 昭和大学病院消化器内科
講 師
渡邊 嘉行 聖マリアンナ医科大学消化器肝臓内科
講 師
二神 生爾 日本医科大学 消化器内科
講 師
原田
医 長
直彦 国立病院機構 九州医療センター
辻井 正彦 大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学
乾 明夫
鹿児島大学医学部付属病院心身医療科
千葉 俊美 岩手医科大学医学部消化器・肝臓内科
吉岡 和彦 関西医科大学香里病院
横山 正
師
講 師
教 授
准 教 授
准 教 授
院 長
横山胃腸科病院
大倉 康男 杏林大学医学部病理学教室
河野 透 旭川医科大学外科学講座消化器病態外科学講座
教 授
大宮 直木 名古屋大学医学部附属病院消化器内科
講 石黒 陽
弘前大学医学部附属病院光学医療診療部
山田 正美 県西部浜松医療センター消化器内科
柴田 近
東北大学大学院生体調節外科学
川原 央好 大阪府立母子保健総合医療センター小児科
准
教
授
師
准 教 授
科
長
准 教 授
副
部
長
渡部 祐司 愛媛大学大学院消化管・腫瘍外科
教 授
河原秀次郎 東京慈恵会医科大学附属柏病院外科
講 師
I. 総括研究報告書
平成 23 年度 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究班
総括研究報告書
研究代表者
中島
淳
横浜市立大学附属病院
消化器内科
教授
研究要旨
慢性の経過で機械的な閉塞機転がないにもかかわらず腸管蠕動運動の低下による腸内
容輸送の障害で腸閉塞症状を引き起こす慢性偽性腸閉塞症は、これまで患者の希少性から
系統的調査研究がされておらず医師における認知が低く、診断・治療も何が適切なのかが
調査検討されてこなかった。また、その病態については未解明の部分が多く、明確な診断
基準や治療法も定まっていない。本邦初の本研究班では当該疾患の我が国における疫学実
態の解明、診断率向上を目指して診断基準作成、適切な外科、内科治療法を明らかにする
こと、病理学的な異常の解明などを目的として研究を行った。H21 年度の本研究班では診断
基準(案)を作成し、国内の消化器内科、消化器外科などにアンケートを送り実態調査を行
った。H22 年度は H21 年度に引き続き、1.偽性腸閉塞症の診断基準案の改良、特に当該疾患
の経験豊富な海外の研究者からの本邦作成の診断基準案に対する批判をいただき国際的に
も認められるような診断基準の改定を行った。2.外科の調査から小腸を罹患部位に含む場
合は手術成績は望ましいものではなくむしろ胃瘻や小腸瘻のほうが経過良好であった。以
上の調査結果は我が国における当該疾患に関する外科治療の適応を考える上で非常に重要
な調査結果であり、希少疾患ゆえに系統的調査がなされてこなかった問題を研究班組織に
より解決した点は大きな進歩であると考えられた。従って今後、当該疾患の外科治療に関
しては小腸を含む場合は外科的腸管切除は避けるべきと考えられた。
H23 年度は 1.本邦における当該疾患の疫学を明らかにした。
患者数は約 1300 人と推定され、
初めて本邦における疫学実態が明らかになった。2.診断基準も peer review の英文誌に掲
載され、その過程で複数のレフリーから有益な指摘を受け改定を試みた。3.多数の本邦手
術例の病理解析を進め、病理診断の指針を提示することができた。4.新しい診断のモダリ
ティーとして小腸の運動異常の診断に MRI がきわめて簡便かつ低侵襲な検査であることを
明らかにした。5.多くの実地診療医のために本疾患の診療のガイドを作成した。6.小児例
はヒルシュスプリング類縁疾患の調査研究班(研究代表
九州大学小児外科
田口教授)
と連携を持つことができた。6.希少性疾患であるがホームページを充実させることで多く
の患者が受診し、また多くの医療機関より診察依頼が来た。
本疾患は希少性の難病であるが、本研究班により着実に研究や診断方法を進歩させること
ができた。今後は治療方法の充実・進歩が大きな課題である。
−1−
のものに分類される.感染症に続発するも
分担研究者:
本郷道夫
東北大学医学部
のとしては世界的には Trypanosoma Cruzi
総合医療学
による Chagas 病が有名である。Chagas
教授
藤本一眞
佐賀大学医学部内科
大和
国立精神・神経センター国府台
滋
病院消化器内科
正木忠彦
教授
病は南米に多く感染部位の神経節を破壊す
部長
る。感染部位により、食道単独、大腸単独、
複数個所などの偽性腸閉塞症が惹起される
杏林大学医学部消化器外科
とされているが我が国ではまれである。
NTT 東日本関東病院消化器内科
A.研究目的
教授
松橋信行
部長
佐藤
H21 年度は、本疾患概念(分類など)の
元
国立保健医療科学院
確立と本邦初の診断基準案作成、海外での
政策技術評価研究部長
当該疾患の状況の文献的調査解析、当該疾
杉原健一
患の本邦における状況の文献的調査、当該
東京医科歯科大大学院医歯学総
合研究科腫瘍外科学
稲森正彦
教授
疾患の本邦における疫学調査、当該疾患の
横浜市立大学臨床研修センター
講師
内科的診断治療の現状調査、当該疾患の外
科的現状調査、本疾患の治療法のアルゴリ
ズム提案、当該疾患の海外での治療法の調
【背景】
偽 性 腸 閉 塞 症 (intestinal
査につき調査を行い、研究初年度の端緒と
pseudo
なる総合的な解析を行った。H22 年度は H21
obstruction)は,消化管運動が障害されるこ
年度に引き続き、診断基準案の改良(本郷)、
とにより蠕動運動が障害される結果消化管
治療指針の検討(藤本、稲森)、確定診断ま
内容物の輸送ができなくなり,機械的な閉
での期間短縮方法の検討(大和)、疫学調査
塞機転がないにもかかわらず腹部膨満,腹
(佐藤)、成果発信(藤本、本郷、杉原)、
痛,嘔吐などの腸閉塞症状を引き起こす症
外科治療成績の実態(正木、杉原)、小児に
候群である。消化管における罹患範囲は食
おける文献的調査解析(杉原、松橋)、国際
道から直腸に至る全消化管に及ぶことが知
的批判に耐えられる診断基準を目指した検
られている。わが国では慢性偽性腸閉塞症
討(中島、杉原、藤本、稲森)、につき調査
chronic intestinal pseudo obstruction
を行った。
(CIPO)は小腸および大腸の罹患範囲での
H23 年度は 1.本邦における当該疾患の疫学
異常として使われることが多い。
を明らかにした。2.診断基準も peer review
CIPO は,腸管筋系や腸管神経系の異常に
の英文誌に掲載され、その過程で複数のレ
よる特発性(原発性)のもの,全身性硬化
フリーから有益な指摘を受け改定を試みた。
症(SSc)やミトコンドリア脳筋症等の基礎
3.多数の本邦手術例の病理解析を進め、病
疾患の影響によるものや,抗精神病薬や抗
理診断の指針を提示することができた。4.
うつ剤などの薬物使用の影響による続発性
新しい診断のモダリティーとして小腸の運
−2−
動異常の診断に MRI がきわめて簡便かつ低
6.小児との連携:小児ヒルシュスプリン
侵襲な検査であることを明らかにした。5.
グ類縁疾患調査研究班と連携を行った。
多くの実地診療医のために本疾患の診療の
7.研究成果の発信:ホームページの充実
ガイドを作成した。6.小児例はヒルシュス
を行った。
プリング類縁疾患の調査研究班(研究代表
九州大学小児外科
田口教授)と連携を持
C.研究結果
[診断基準改定]
つことができた。7.希少性疾患であるがホ
ームページを充実させることで多くの患者
海外では基幹病院では消化管シンチグラフ
が受診し、また多くの医療機関より診察依
ィーや、小腸マノメトリーが消化管蠕動障
頼が来た。
害の診断に用いられ、確定診断に寄与する
が本邦ではこれらの診断モダリティーはほ
とんどの病院で使用できない。一方、鑑別
診断のための消化管器質的病変の除外は内
B.研究方法
1.疫学調査:病院および診療所の規模
視鏡技術の高度に進んだ我が国では比較的
別、全国各地の各施設を無作為に抽出して
容易である。また近年マルチスライス
約 1500 か所に調査依頼を郵送し、回答得た
CT(MDCT)が普及して消化管拡張の定量化な
結果を解析し、疫学的手法により国内の患
ども本邦では比較的容易である。以上より
者数等の疫学数値の推定を行った。
平成21年度は慢性疾患であることより、
2.診断基準の改定:平成 22 年度診断基準
症状と、脳病期間、器質的疾患の除外、消
案の国内からの批判に加え、英文誌に投稿
化管拡張の画像的客観所見、基礎となる全
の際に多くの査読者からの批判を受けた点
身疾患の除外の5点の基づき診断基準を作
を取り入れ改訂を行うとともに、我々の研
成した。この診断基準を用いて、本邦で過
究班で新しく小腸の運動異常を解析できる
去に症例報告された患者の診断感度は 90%
方法として MRI を用いた診断方法が提案さ
以上であった。
れたのを受け、この診断モダリティーを診
この診断基準の目的は「慢性偽性腸閉塞症」
断基準に盛り込んだ。
の名前と概念を知っている医師が容易に診
3.病理解析:免疫染色によって myopathy,
断できることを目的としたもので、あくま
neuropathy, mesenchymopathy の別の鑑別
で早期診断につなげることが目的である。
をどう行うかを検討した。
平成21年度の国内の消化器内科対象の調
4.新しい診断モダリティーの開発:主に
査では診断確定までに数年から10年近く
欧米で普及している小腸運動以上の検査法
が要したことが分かったことから、診断ま
は本邦では実地が困難であることから、我
での期間短縮が重要な課題であると考えら
が国で普及している MRI を用いた小腸運動
れたからである。平成22年度は国内外か
異常の検査方法の開発を行った。
ら多くのご批判を当診断基準案にいただき
5.ガイドラインの作成:診療ガイドの刊
改定を行った。疾患概念に関しては『消化
行を行った。
管蠕動の著明な低下』を盛り込みより病態
−3−
を表すことにした。また、診断基準の症状
物の移送障害)を認めるもので、慢性の経
に関しては昨年の国内内科系調査の結果よ
過をみるもの。
り頻度の高い順にそのパーセントも入れて
提示を行った。海外からは実に多くのコメ
診断基準
ントをいただいた。とくに St Marks 病院の
下記の1)~3)すべてを満たすもの。
MA Kamm 教授(現在オールトラリア
1)6 ヶ月以上前から腸閉塞症状があり、
メルボ
ルン大学)からは腸管拡張のない症例も存
そのうち 12 週は腹部膨満を伴う。
在することに注意すべきである指摘を受け
2)腹部単純 X 線検査、超音波検査、CT
た。これはマノメトリーや消化管シンチグ
で腸管拡張または鏡面像を認める。
ラフィーの検査を行える欧米だからこそ診
3)消化管 X 線造影検査、内視鏡検査、CT
断できる異常と考えられたが、本邦では診
で器質的狭窄・閉塞が除外される。
断不可能である。画像上消化管拡張を除外
すると単なる慢性便秘が多く混入してしま
付記所見・参考所見
うからである。また、イタリアボローニャ
1.慢性の経過(6 ヶ月以上)で 15 歳以上
大学の Vincenzo Stanghellini 教授からは
の発症とする。*先天性・小児は別途定め
急性の偽性腸閉塞である Ogilvie 症候群と
る。
当初診断された症例の中に慢性例に移行し
2.薬剤性・腹部術後によるものは除く。
慢性偽性腸閉塞になる症例が欧州では散見
3.原発性と続発性に分け、原発性は病理
されることをコメント頂き、本邦でもその
学的に筋性、神経性、カハール介在細胞性、
可能性があると考えられた。いずれにして
混合型に分けられる。続発性は全身性硬化
もこのような海外の専門家が非常に多くの
症、パーキンソン病、ミトコンドリア異常
熱心な、経験に基づいたコメント頂き本研
症、2 型糖尿病などによるものがある。
究班で作成した診断基準案が海外の批判に
4.家族歴があることがある。
少しでも耐えられるようにできたと考えら
5.腸閉塞症状とは、腸管内容の通過障害
れた。診断基準の残されたもう一つの課題
に伴う腹痛・腹部膨満。悪心嘔吐、排便排
が画像による腸管拡張の定義である。
ガスの減少を指す。食欲不振や体重減少、
平成23年度は国内の研究者の批判に加え
Bacterial overgrowth による下痢・消化吸
診断基準を英文誌に投稿して批判を仰いだ。
収障害を認めることがある。
また新しい診断方法としてシネ MRI を取
6.障害部位は小腸や大腸のみならず食道
り入れ以下のように改訂を行った。
から直腸に至る全消化管に起こることが知
られており、同一患者で複数の障害部位を
平成 23 年度慢性偽性腸閉塞の改訂診断基
認めたり、障害部位の増大を認めることも
準案
ある。また神経障害(排尿障害など)、及び
精神疾患を伴うことがある。
疾患概念
消化管に器質的な狭窄・閉塞病変を認めな
7.シネ MRI で腸管蠕動低下を認めた場
いにもかかわらず腸管蠕動障害(腸管内容
合、診断はより確定的となる。
−4−
り、免疫組織化学的手法を用いて、myopaty,
[厳密な疫学調査]
neuropathy, カハール介在細胞の異常かな
本年度は全国の各病院、診療所の、地域別、
どの解析をおこなった。
規模別に当該疾患の調査依頼を発送した。
CIPO のより正確な病型診断のためには、
第 1 次調査(有効回答率は 46.3%)から、
通常の HE 染色だけではなく、免疫染色を
2010 年の中断患者を含めた報告患者数は
併用することが必要である。我々は本邦 33
168 人(中断患者を含めないと 156 人)で
例の CIPO 手術症例の HE 染色、免疫染色
あった。それより推計される年間受療患者
を解析した。結果としては、まず HuC/D 抗
数は受診中断中患者を含めると 1240(95%
体染色で Neuropathy を診断し、ここで異
信頼区間 627-1853)人、中断中患者を含め
常なければ次は CD117 染色で
ないと 1142(95%信頼区間 547-1737)人と
Mesenchymopathy を診断、残りを HE 染
推計された。
色を用いて Myopathy であることの確認す
る、という手順が最も推奨されるものであ
った。(以下の図示した手順)
[新しい診断方法]
シネ MRI を用いて患者小腸の蠕動異常の解
析を行った。本検査は簡便かつ、我が国の
多くの施設で実行可能で、非侵襲的かつ繰
り返しできるメリットがある。いかに動画
の一コマを提示する。
[ガイドラインの作成]
当該疾患の診療ガイドの刊行を行った(別
シネ MRI の動画の一コマ
添の資料)
左:正常小腸の運動の一コマ
[小児との連携]
右:CIPO 患者の小腸
小児科領域、特に小児外科領域では慢性特
実際の動画では患者小腸は拡張に加え蠕動
発性偽性腸閉塞症はヒルシュスプリング類
の明らかな異常を認める。
縁疾患の範疇に入り、疾患概念の違いがあ
る。まずは、この違いのすり合わせを行わ
[病理解析]
ない限り共通の病気を症により成人にかけ
平成21年度の外科系調査で手術症例の多
てシームレスに診療することができない。
い施設より切除検体を提供していただき杏
今回は厚生労働省ヒルシュスプリング類縁
林大学の正木教授、大倉教授らが中心とな
疾患調査研究班において以下の疾患概念の
−5−
相動性を提唱した。今後は小児科、小児外
て成分栄養により、経管より長時間持続注
科とのコンセンサスの確立が望まれる。
入を行うことで腸閉塞症状の緩和、吸収不
良障害の低減、さらには手術回避などが検
討されてきたが、慢性偽性腸閉塞において
もその重症度を考慮して上記の3点の改善
予防を目指して成分栄養療法の確立が今後
重要と考える。特に手術症例はその再発予
防に向けこのような予防対策が重要である
と考えられる。
H23 年度は厳密な疫学調査を完了して成
[研究成果の発信]
以下のホームページの充実を行った。
果を得た、国内患者数は同じ希少性難治疾
http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~cip
患の範疇に入る原発性硬化性胆管炎患者よ
o/index.html
りやや多い程度である。生命予後は原発性
D.考察
CIPO は 10 年生存率が 95%を超えており、生
慢性偽性腸閉塞症は、病態については未
命予後は良好である。したがって QOL の向
解明の部分が多く、明確な診断基準や治療
上が急務である。診断基準は国内外の雑誌
法も定まっておらず、認知度も高くないこ
に論文投稿ができ、一定の批判に耐えられ
とが H21 年度の調査でわかった。H22 年度
る内容であること、感度特異度も満足でき
は、疫学調査と疾患概念の普及と発信を行
る内容であること、特別な検査機器を用い
った。
なくとも診断できる点で今後本疾患の診断
外科の調査から小腸を罹患部位に含む場合
にはきわめて有効と考えられる。しかしな
手術成績は望ましいものではなくむしろ胃
がらたゆまぬ改善改訂を行うことは責務で
瘻や小腸瘻のほうが経過良好であった。従
あると考えられた。病理診断は本邦初の系
って小腸を含む場合は外科的腸管切除は避
統的解析を多くの検体で行い診断をどう進
けるべきと考えられた。この知見は本疾患
めるかの指針が示せた、今後は早急に論文
の治療に腸管切除を避けることが治療の大
化を進めたい。本年度の大きな成果の一つ
きな目標であることを提示してくれる重要
が本邦で行えない小腸マノメトリーやシン
な結果であると考える。すなわち内科的治
チグラフィーに代わる診断モダリティー開
療のゴールは症状の緩和とともに腸管切除
発であった。シネ MRI は簡便、非侵襲的で
を回避するための予防戦略はどのようなも
我が国でどの地域でも普及している検査機
のであるかを検討しなければならないこと
器であり、その意義は大きい。今後世界に
を示してくれた。内科的には治療の目標は
向けてその有用性を発信すべきと考えられ
症状寛解に加え、手術回避、消化管消化吸
た。
収機能廃絶による吸収不良症候群の回避の
3 年間の研究からかなり明瞭に本疾患の本
3点であると考える。あくまで個人的な考
邦における実態が垣間見えてきた。またホ
察であるが、クローン病の糸状狭窄でかつ
ームページからの情報発信で全国からの紹
−6−
介患者を診断する機会を得て、改めて当該
Hirokazu Takahashi, Eiji Yamada1, Eiji
疾患が非常に希少かつ難治性疾患であるこ
Sakai, Takuma Higurashi, Yusuke Sekino,
とを痛感した。本研究成果が、この苦しみ
Hiroki Endo, Yasunari Sakamoto,Masahiko
に耐えしのぐ当該患者の少しでも役に立て
Inamori, Hajime Sato, Kazuma Fujimoto,
ることを切望するとともに、さらに診断と
Atsushi Nakajima : An epidemiologic
治療の進歩に対して不断の努力をすること
survey
が医療者の責務であると考えられる。
pseudo-obstruction
of
evaluation
chronic
of
the
intestinal
(CIPO)
newly
and
proposed
diagnostic criteria. Digestion accepted
in 2012
E.結論
慢性偽性腸閉塞症 CIPO の国際的批判に
3. Masaki T, Sugihara K, Nakajima A, Muto
耐えられる診断基準の改定を行い、国内の
T. Nationwide survey on adult type
疫学調査を行った。また新しい診断方法と
chronic intestinal pseudo-obstruction
してシネ MRI の有効性を提示した。国内の
in surgical institutions in Japan. Surg
検体を集めて系統的病理解析を行い、病理
Today. 2012 Feb;42(3):264-71.
診断のアルゴリズムを提案した。
4.中島
3年間の総括として本疾患の診療ガイド
症
朝倉「内科学書」偽性腸閉塞
2012 発刊予定
5.中島
を作成した。
淳
淳
偽性腸閉塞症
今日の治療指
針 2012 年度版 医学書院 2012 発刊予定
F. 健康危険情報
H.知的財産権の出願・登録状況
(予定を含む。)
該当なし
該当なし
G. 研究発表
1. 中島淳、坂本康成、飯田洋、関野雄典、
稲森正彦 なぜ胃や腸は痛くなるのか?(機
能 性 消 化 管 疾 患 の 各 論 )
6.Pseudo-obstruction
Modern
1. 特許取得
該当なし
2. 実用新案登録
該当なし
3.その他
該当なし
PhysicianVol.31 No.3 p.331-335 2011
2.
Hidenori
Ohkubo,
Hiroshi
Iida,
−7−
−8−
II. 分担研究報告書
平成 23 年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
分担研究報告書
1.慢性偽性腸閉塞症の診療ガイドラインの作成
分担研究者
藤本一眞
佐賀大学医学部内科
教授
研究要旨: 慢性特発性偽性腸閉塞症は現在では慢性偽性腸閉塞症(Chronic Intestinal
Pseudo-obstruction: CIPO)と呼称するように国際的なコンセンサスが得られている。我が
国においてはその疾患自体を知らない医師が多く、また疾患概念を知っていても実際どの
ように診断や治療を行えばいいのかなどが教科書等の成書に記載がないため当該疾患の診
療は混乱を極めている。今回当研究班で疫学調査や診断基準の作成などを行った成果を実
地医家にもわかるよう、また実地診療で有用なように診療の手引を作成した。
E. 結論
A. 研究目的
慢性偽性腸閉塞症の診療ガイドライン
我が国で初めての慢性偽性腸閉塞症の
の作成
診療ガイドラインの作成を行った。
F. 健康危惧情報
B. 研究方法
なし
研究班のメンバーで執筆者評価者を決
めて作成した。
G. 研究発表
C. 研究結果
1. 論文発表
以下に添付する「診療ガイド」を作成し
なし
て配布を行った。
2. 学会発表
なし
D. 考察
当該疾患が希少性疾患であることと、我
H. 知的財産権の出願・登録状況
が国に当該疾患の研究者は極めて限ら
1. 特許取得
れており一般のガイドライン作成と異
なし
なり、論文や、エビデンスレベルの認定
などが不可能であった。しかしながら数
少ない専門家による peer review を行
2. 実用新案登録
なし
3. その他
い現時点で我が国初であり、また我が国
において提供できる最善の診療の手引
であると考えられた。
−9−
なし
はじめに
平成 21 年度より我が国初めての慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究班が発⾜して本疾患
の本邦における⼤規模疫学調査を⾏い、その実態をおぼろげながら明らかにしてきた。また、本研究班では「慢性偽性腸閉塞」という病気
を知らない、あるいは知っていてもよくわからない医師に向けてわが国の標準的な医療施設で容易に診断ができるような診断基準を作成
してきた。これは本疾患が症状発現から診断確定まで平均 2 年余りかかることを考え少しでも診断までの時間短縮を⽬指すものでもあっ
た。欧⽶のように消化管マノメトリーや消化管シンチグラフィーが⾏えない我が国独⾃のものであるが、この診断基準を海外の本疾患の多く
の研究者にご批判をいただき改定も⾏ってきた。感度特異度も⾼く現時点では満⾜のいくものではと考える。本疾患は消化管疾患の中
で最も重篤な運動異常の疾患であることを考えるとどうしてもその評価は重要となるが我が国で多くの施設で使⽤可能な MRI を⽤いた検
査で運動異常の評価ができるようになりつつある。シネ MRI はマノメトリー法に⽐べると、低侵襲かつ簡便であり、今後広く普及するものと
確信する。治療法に関しては現状では⼤変難しいが、内科的には当⾯どうするかのアルゴリズムを提唱した。また外科治療に関しては⼩
腸を障害されている場合は効果が期待できないが⼤腸限局型は外科⼿術の成績が⾮常に⾼いことも調査で明らかにされた点は⼤きな
進歩である。本診療ガイドは以上のような研究班の成果を実地診療の現場で簡便に使えるようにすることを⽬指して稲森正彦先⽣が中
⼼となって作成された、この場を借りて稲森先⽣には御礼を申し上げる。本書が慢性偽性腸閉塞という難病の診断と治療に少しでも役
に⽴つことを⼼より期待する。
研究班代表
中島 淳
緒⾔
慢性特発性偽性腸閉塞症は⾷道から⼤腸までの全消化管に起こりうる消化管運動機能障害で、物理的な腸管の閉塞がないにも
かかわらず腸閉塞様症状をきたす原因不明の難治性疾患です。本疾患の罹病期間は⻑期にわたり、罹患患者の⽣活の質を極度に低
下させていますが、我が国ではいままで少数の症例報告があるのみで、詳細は不明でした。
そのため卒前卒後を問わず、医療者に対する適切な教育が⾏われておらず、本疾患を診断し治療することができず、罹患患者の⽣活
の質をかえって低下させるという現状がありました。また患者も適切な情報を⼿に⼊れることができず、ドクター・ショッピッングと⾔われるよう
な転医を繰り返す例も⾒受けられました。
今回の研究は当該疾患の現状を全国の医師に調査を依頼して⾏うものでありますが、第⼀にまず本邦における診断基準を定めること
を⽬的と致しました。⽇本では、欧⽶と⽐して CT、内視鏡検査等の形態学的な検査へのハードルが低いこと、そして逆に内圧検査のよう
な機能検査へのハードルが⾼いことを勘案し、実際の臨床の場での診断を検討していける診断基準となるように⼼掛けました。
またその診断基準を基として、全国の先⽣⽅より情報を頂き、病態、疫学、診断、画像検査、病理、治療などについて多くの知⾒が得
られたと考えております。この場を借りて深謝致したいと存じます。
慢性特発性偽性腸閉塞症に関する論⽂は多くはなく、また、⽇常臨床ですぐに役⽴つものは少ない感があります。そうした状況を踏ま
え、第⼀線の臨床医の先⽣⽅が、⽇常診療で慢性特発性偽性腸閉塞症に遭遇されたときに、⾝近において活⽤していただけるものとし
て、今回の⼿引きを作成いたしました。
さしあたり必要な項⽬について、適宜ご参照していただき、⽇常の診療で、少しでも参考にしていただけましたら幸いです。
診療ガイド作成プロジェクトリーダー 稲森正彦
1
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− 65 −
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
分担研究報告書
2. 当該疾患の本邦における疫学調査
(国立保健医療科学院
政策技術評価研究部 部長)
分担研究者
佐藤
元
研究協力者
飯田
洋 (横浜市立大学医学部消化器内科
助教)
研究要旨:慢性偽性腸閉塞については現在、本邦、海外ともに病態も不明な点が多く、
診断基準、治療法も確立していない。偽性腸閉塞に関する文献調査からの実態は知り
得たとして、さらに現時点での疫学について、よりエビデンスのある結果が今後の病
態解明、ひいては診療にとって必要となる。昨年度に引き続き、全国疫学調査を行う
好機を得たため、以下に得られた知見を報告する。
を、大学病院は「医育機関名簿 2009-2010」を
A.研究目的
慢性偽性腸閉塞(CIP)については現在、本邦、海
外ともに病態も不明な点が多く、診断基準、治療
使用した。
法も確立していない。偽性腸閉塞に関する文献調
2) 調査法
査からの実態は知り得たとして、さらに現時点で
調査は郵送法により施行した。2010 年 10 月に依
の疫学について、よりエビデンスのある結果が今
頼状・診断基準・調査票を対象病院に送付し、2009
後の病態解明、
ひいては診療にとって必要となる。
年 10 月から 2010 年 9 月までの 1 年間の受療患者
今回、厚生労働省難治性疾患克服研究事業の一環
数(新患および再来)の報告を依頼した。
「患者あ
として横浜市立大学消化器内科 中島 淳教授を
り」と報告
主任研究者として研究班が組織され、全国疫学調
された病院には、依頼状・診断基準とともに第 2
査を行う好機を得たため、以下に得られた知見を
次調査(患者個人用)を随時送付した。
報告する。
3) 倫理面への配慮
本調査は、横浜市立大学附属病院研究倫理委員会
B.研究方法
の承認を得て施行した。プライバシー保護に万全
1) 調査対象施設・診療科および抽出率
の配慮を施した。
全病院の消化器科、内科、外科を対象として、大
4) 第 1 次調査による年間受療患者数の推計には、
学病院/一般病院の別、病院の病床数で層別化し
難病の疫学調査研究班サーベイランス分科会の提
層化無作為抽出による抽出調査を実施した。全病
唱する方法を用いた。
院のリストは、独立行政法人福祉医療機構 WAMNET
掲載情報より提供された
「全国の病院診療所情報」
− 66 −
C.結果:
第 1 次調査(有効回答率は 46.3%)から、2010
年の中断患者を含めた報告患者数は 168 人であっ
た。それより推計される年間受療患者数は受診中
断 中 患 者 を 含 め る と 1240 ( 95 % 信 頼 区 間
627-1853)人と推計された。168 名の平均年齢は
57.7 歳、
40 歳代にピークがあった。
男女比は 1:1.1
でやや女性に多い傾向であった(表 1)
。通院中の
患者の通院頻度は 1.52/月であった(表 2)
。
D.考察
今回の調査は我が国初の慢性偽性腸閉塞症に対
する調査であり、世界でも前例のない慢性偽性腸
閉塞症に対する疫学調査である。今回の調査で得
られた慢性偽性腸閉塞症の年間受療患者数は、ク
ローン病(2006 年の特定疾患医療受給者証の交付
件数では約 25700 人)に比較すると少ないが、PSC
(2007 年の疫学調査で約 1200 人)
と同等であり、
決して稀な疾患ではないと言える。2009 年に行っ
た消化器内科・外科系施設へのアンケートでも認
知度が低く、症状がありながら診断確定に至って
いない症例が相当数いると推定される。更なる疾
患概念の啓蒙が必要である。
E.健康危険情報
なし
F.研究発表
1. 論文発表
なし
2. 学会発表
なし
G.知的財産権の出願・登録状況
(予定を含む。
)
1. 特許取得
なし
2. 実用新案登録
なし
3.その他
なし
1
− 67 −
慢性偽性腸閉塞症疫学調査
1.慢性偽牲腸閉塞について
□ 知らない。聞いたことない。
□(内容については不確かだが)病名は知っている。
□ (普段念頭には無いが)知識として知っている(概念、診断についてある程度明るい)
。
□(具体的症例を前にした時)病名が鑑別診断にあがる。
□(ある程度)いつも念頭において診療している(未経験)
。
□(ある程度)いつも念頭において診療している(自施設で症例あり)
。
□(ある程度)いつも念頭において診療している(自験例あり)
。
2.慢性偽性腸閉塞について必要な(より詳しい)情報を得たい場合、どこを参照しますか?
□教科書
□学会誌
□論文
□指導医
□その他(
)
3. 患者数推計のために、この 1 年間の患者数についてお尋ねします。2009.1 月から 12 月までの 1 年間で
慢性偽性腸閉塞の患者を診察されましたか?
□ 診察(確定診断)した
□ 診察(擬似症例)した
□ 診察(鑑別診断で疑ったが他病の診断)した
□ 経験なし(一応念頭にあった)
□ 経験なし(念頭になし)
1 年間(2009.1 月~12 月)の診察患者数(のべ人数ではなく、実数でお答えください)
男性
新患
女性
名
(うち中断中
再来
名)
名
(うち中断中
名
(うち中断中
名)
名
(うち中断中
4. おわかりになれば、貴院での担当科の 1 年間の外来人数をお書き下さい。
名(大体で結構です)
御施設名
御芳名
FAX 番号: 045-787-8988
− 69 −
名)
名)
第 2 次調査
アンケート記入に際しまして,空欄部は埋める,もしくは○で選択してください.
記憶にある範囲で構いません.わからない部分は空欄のままご提出下さい.
Ⅰ あなたの病気のことについて
問1.
現在のあなたのことについてお答えください
年齢
歳, 性別 男・女,既婚・未婚,住所
(都・道・府・県)
保険の種別 1.国保 2.社保 3.高齢者医療保険 4.その他
(何らかの障害により)身体障害者手帳を支給されているか 有(
介護保険の認定を受けていますか 有(
等級)
・無
等級)
・無
問 2.病名は何ですか
(腹部症状について)主治医から告げられている病名
その他の病名(合併症)
(あればいくつでもご記入ください)
特に病名に~性,~型などの区別がある場合は,詳しくお書き下さい
問 3.①腹部症状が出現したのは何歳の時ですか、またその時の症状は何でしたか
満
歳(
年
月
日頃)
症状(腹痛・嘔吐・腹部膨満・腸閉塞・便秘・下痢・その他
)
腹部症状で最初に医療機関を受診した時期はいつですか
また,受診科とその際の告げられた病名をお書き下さい
満
歳(
年
月
日頃) 診断された診療科
科
診断された病名
②慢性偽性腸閉塞症と診断されたのは何歳の時ですか
また診断された際の診療科は何科ですか
満
歳(
年
月
日頃) 診断された診療科
科
診断された医療機関は,症状が出現してから何件目でしたか
件目
③慢性偽性腸閉塞症と診断された時の症状を教えて下さい
腹痛(有・無)
,
嘔吐(有・無)
,
腹部膨満(有・無)
,
腸閉塞(有・無)
,
便秘(有・無)
,
下痢(有・無)
④診断後の治療法
食事療法(有・無)
,薬物療法(有・無)
,手術療法(有・無)
,その他(
− 71 −
)
具体的な内服薬(定期的に服薬している薬をすべて記入してください
(
)
問 4.①発病から現在までの経過について最も近いものを一つだけ選んでください
症状の変化 1.変化はない 2.軽快傾向 3.増悪傾向 4.軽快と増悪の繰り返し
② 問 3④の治療の効果はありましたか(有・無)
効果があった場合、最も効果のあったと思われる治療法は何でしたか
食事療法・薬物療法・手術療法・その他(
)
問 5.現在,治療や通院に毎月どの程度の時間(通院時間を含む)や交通費がかかりますか
月
時間程度(1 時間未満は四捨五入、ゼロの場合は必ず 0 とご記入ください)
通勤時間(片道約
分)
交通費(約
円/月)
問 6.現在,平均的な医療費や保険外の医療・薬品代がかかりますか
医療費(約
円/月)
、保険外の医療・薬品代(約
円/月)
問 7.医師から次のような職業生活(家事遂行を含む)についての注意や指示を受けて
いますか
注意・指示事項
受けている
受けていない
就労は原則禁止
1
2
座ってできる仕事に限る
1
2
軽作業程度なら可
1
2
残業は避ける
1
2
勤務時間中の安静・休憩
1
2
ストレスを避ける
1
2
1
2
その他(
)
Ⅱ 仕事のことについて
問 8.現在,仕事についていますか
就いている(勤め,自営業,福祉
最近 1 ヶ月以内で 15 日以上働いた
1
的就労,在宅で内職,家事)
最近 1 ヶ月以内で 14 日以下だけ働いた
2
就いていない
仕事をしたいと思っている
3
仕事をしたいと思っていない
4
− 72 −
問 9.仕事の形態は何ですか(最も近いもの一つに○)
正社員
パート
アルバイト
自営業
福祉的就労
主婦(主夫)
その他
なし
1
2
3
4
5
6
7
8
問 10.これまで病気が原因で,転職または仕事内容の変化がありましたか
変化があった
1
変化はなかった
2
変化があったの場合
仕事を辞めた,仕事(勤務先)を変わった
1
業務・作業負担を減らした
2
変わらない
3
通勤の時間・経路を変えた
4
その他(
)
5
変化があった場合,腹部症状により 1 ヶ月で何日くらい休んだり,軽減したりしましたか
(1 日未満の場合は,1/2,1/3 などを記入してください.また通院に要した日数も含みます)
休んだ
軽減した
仕事
日
日
家事
日
日
外出
日
日
社交
日
日
1 ヶ月のうちに通院に要した日数(
日)
通勤・外出で普段と異なること(途中下車など)が必要だった日数(
収入に変化があった(有・無)有の場合(約
日)
%)
(増えた・減った)
仕事を休む等で失った収入機会(利益)などをお金に換算すると(約
円/月)
差しつかえなければ、昨年度の世帯年収を教えて下さい
[0(無収入) ・ -200 万円未満 ・ 200-400 万円未満 ・ 400-600 万円未満
・ 600-800 万円未満 ・ 1000 万円以上]
問 11.事業主(主婦・主夫の場合は家族)に病名・症状を告げていますか
告げている
1
告げていない
2
告げている場合→告知によって何らかの配慮・協力が得られましたか (はい・いいえ)
− 73 −
平成 23 年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
分担研究報告書
3.慢性特発性偽性腸閉塞症の画像診断
分担研究者
杉原健一
(東京医科歯科大学腫瘍外科
研究協力者
大久保秀則 (横浜市立大学医学部消化器内科)
研究協力者
高原太郎
(東海大学
教授)
工学部)
研究要旨:慢性特発性偽性腸閉塞症の診断には腹部単純 X 線検査や CT などの画像所見が
重要であるが、一方欧米で用いられているマノメトリーやシンチグラフィーは本邦では施
行可能な施設が限られているためあまり実用的でない。近年シネ MRI が非侵襲的検査とし
て消化管蠕動評価に利用されるようになっている。本年度は、現状評価や診断に対する新
たなモダリティとしてのシネ MRI の有効性を検討した。
I.
理由に事前の飲水は行わなかった。本研究
研究目的
は横浜市立大学での倫理委員会の承認を
慢性特発性偽性腸閉塞症の診断には腹
部単純 X 線検査や CT などの画像所見が
得て施行した。
2)評価項目
必須であるが、一方マノメトリーやシンチ
グラフィーは侵襲的な上本邦では施行可
平均腸管径・蠕動周期・収縮率を評価項
能な施設が限られているためあまり実用
的でない。近年シネ MRI が非侵襲的検査
目として群間比較した。
として消化管蠕動評価に利用されるよう
になっている。慢性特発性偽性腸閉塞症の
K. 研究結果
実際の患者のシネ MRI 画像を以下に提
現状評価や診断に対する新たなモダリテ
ィとしてのシネ MRI の有効性の検討を行
示する。
上段が健常者、下段が慢性特発性偽性腸
った。
閉塞患者のものである。
J. 研究方法
1)研究対象者
健常者群 8 人と慢性特発性偽性腸閉塞
症の患者群 10 人にシネ MRI を施行した。
なお適切な小腸拡張を得るため健常者群
には事前に飲水 1000ml を負荷したが、患
者群はそもそも腸液が停滞していること
患者群は健常者群と比較して有意に平均
と、症状増悪の可能性が危惧されることを
腸管径が大きく(44.1 ± 17.1 mm vs 11.4
− 74 −
± 4.4 mm, p<0.001)、逆に有意に収縮率が
は多くの施設で施行可能である。シネ
低かった(18.7 ± 20.9 % vs 69.1 ± 19.8 %,
MRI で腸管蠕動低下を認めるだけでは慢
p<0.001)。また蠕動周期に有意差は見ら
性特発性偽性腸閉塞の診断は下せないが、
れなかった(7.54 ± 2.57 s vs7.45 ± 1.58 s,
逆に一度診断が下された患者にシネ MRI
p=0.85)。これは、収縮運動自体は健常者
で腸管蠕動低下を認めた場合、診断はより
と同様な頻度で発生するが、拡張した腸管
確定的となる。慢性偽性腸閉塞患者に対す
径に対して微弱な収縮にすぎず、腸管内容
る現状評価、治療前後での腸管蠕動の比較
物を先進させるという有効な蠕動ではな
など、さまざまな場面で今後の有用性が期
いことを示している。また患者群の中でも、
待される。
比較的蠕動が保たれているタイプ、ほとん
ど蠕動の消失したタイプ、「細動」のよう
M. 結論
な蠕動を示すタイプなど、様々な蠕動パタ
慢性特発性偽性腸閉塞症の現状評価や
ーンが存在することが分かり、シネ MRI
診断に対する新たなモダリティとして、シ
は腸管蠕動の定量的評価のみならず定性
ネ MRI は、低侵襲で放射線被曝を伴わず、
的評価も可能であった。
非常に有効である。
N. 健康危惧情報
L. 考察
なし
O. 研究発表
慢性特発性偽性腸閉塞症の診断には画
像所見が必須である。現時点では腹部単純
3. 論文発表
X 線検査と CT がその主なモダリティであ
4. 学会発表
るが、シネ MRI は高い時間的・空間的分
P. 知的財産権の出願・登録状況
解能を有し、腸管の拡張のみならず、従来
4. 特許取得
のモダリティでは指摘しえなかった蠕動
なし
低下を描出することが可能であった。また、
数か所のポイントのみの評価であるマノ
5. 実用新案登録
なし
メトリーと比較し、シネ MRI はほぼ全小
腸の連続的評価が可能であった。さらに低
侵襲であり、放射線被曝を伴わず、本邦で
− 75 −
6. その他
なし
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
分担研究報告書
4. 続発性慢性偽性腸閉塞症との鑑別
分担研究者
本郷
道夫
(東北大学医学部総合医療学)
研究協力者 関野 雄典 (横浜市立大学医学部消化器内科)
研究要旨:慢性偽性腸閉塞症にはその病因により、明らかな原因が特定できない原
発性と、基礎疾患や使用薬剤による続発性のものに分類される。続発性慢性偽性腸閉
塞症の原因疾患としては、本邦では全身性硬化症が最も高頻度に報告されており、ほ
かに、ミトコンドリア脳筋症や甲状腺機能低下症、糖尿病性神経症などが挙げられる。
続発性慢性偽性腸閉塞症は特発性のものと比較して、基礎疾患の治療により症状の改
善が期待できるものもあり、その鑑別・診断が重要である。
A.背景
しばしば重複していることもあり、CIPO 診
偽性腸閉塞症は発症形式では Ogilvie 症候
療が複雑である理由の一つとされている。
群として知られる急性発症型と、CIPO とい
う慢性・再発性に二分されるが、病因に着
2) 文献からの調査
目すると原因要素が特定できない原発性と、
我々の検討では、医学中央雑誌で検索され
基礎疾患によって引き起こされるものや薬
た、本邦で検討しうるCIPO 121例の内で背
物起因性を含む続発性に分類される。
景疾患としては、全身性硬化症が16%と最
も頻度が高く、続いてミトコンドリア脳筋
B.続発性 CIPO の原因
症5.2%、アミロイドーシス3.5%、甲状腺機
1) 基礎疾患について
能低下症2.6%、Von-Recklinghausen病1.7%、
続発性 CIPO の原因は多岐にわたる。具体
筋強直性ジストロフィ1.7%であった。
的には結合組織関連疾患(皮膚筋炎、SLE、
全身性硬化症など)、浸潤性疾患(アミロイ
3) 疫学調査
ドーシスなど)やミトコンドリア脳筋症、
我々が本邦での疫学調査として、平成21年
糖尿病性神経症、甲状腺機能異常などの内
12月から平成22年2月にかけて、日本消化器
分泌疾患、電解質異常などのほか、抗うつ
病学会に所属する全国378施設を対象とし
薬・抗不安薬や抗精神病薬、オピオイドな
たアンケート調査の結果、患者情報の詳細
どの薬剤起因性のものなど、偽性腸閉塞症
を検討しうるCIPO患者は188例のうち、原
状を引き起こす原因には様々な要因が報告
発性が132例、続発性は52例、不明が5例で
されている。また、これらの疾患・原因は
あった。続発性CIPOの内で背景疾患として
− 76 −
は、全身性硬化症が23例(44%)と最も頻
検査項目としては抗核抗体に関して、
度が高く、続いて皮膚筋炎4例(7%)、MCTD3
nuceolar型の頻度が高く、抗U1RNP抗体, 抗
例(5%)、Sjogren症候群1例などの膠原病
U3RNP抗体, 抗Ku抗体, 抗signal recognition
が目立ち、ほかにアミロイドーシス2例が認
particle抗体などの筋炎関連自己抗体が 早
められた。本邦で外科的治療を行った82例
期消化管発症群の57%に認められたと報告
に関する検討では、原発性72例、続発性8
されている。
例、不明1例、続発性では全身性硬化症が2
例のほか、アミロイドーシス、糖尿病、パ
2) ミトコンドリア病
ーキンソン病、その他膠原病などが報告さ
ミトコンドリア病は細胞核内DNAあるいは
れた。
ミトコンドリアDNAの変異や欠失に関連し
たATP産生能の低下によって引き起こされ
C.続発性 CIPO の診断と鑑別
る疾患群の総称である。ミトコンドリア病
CIPOの診断基準を満たした患者に対して
による機能障害は、エネルギー需要の大き
は、耐糖能異常の検索、結合組織関連疾患
い筋肉、脳、心臓が最も頻度が高いと報告
の鑑別のために抗核抗体や血清CK値の測
されているが、近年では消化管機能異常に
定、甲状腺機能異常の鑑別が必要である。
関する報告も散見される。Amiotによると80
また、Hirschprung‘s 病やセリアック病の鑑
人のCIPO患者の内の19%にミトコンドリア
別には内視鏡的病理組織検査が有用である。
遺伝子異常を認め、ミトコンドリア遺伝子
前述の疫学調査で続発性CIPOの背景疾患
異常を認めるCIPO患者では全例に消化管
として報告頻度の高かった全身性硬化症、
外症状を認め、予後不良の予測因子として
ミトコンドリア脳筋症、アミロイドーシス
報告されている。また、Chinneyの報告では
のCIPO合併について概説する。
15%以上のミトコンドリア病患者が嚥下障
害や便秘などの症状を有し、便秘症例の一
1) 全身性硬化症
部が偽性腸閉塞に至るとされている。
全身性硬化症患者における消化管障害の合
CIPO 症例全例に対してミトコンドリア病
併については、胃食道逆流症の発症が最も
の検索を行うべきである。具体的には、耐
良く知られているが、胃、小腸や結腸など
糖能異常、けいれん、難聴、筋力低下の他、
の障害も報告されており、平滑筋の萎縮お
心伝導障害、脳症などの合併、空腹時血中
よび線維化が主たる病態とされている。
あるいは髄液中乳酸値・ピルビン酸値上昇
Nishimagiらは、302人の日本人の全身性硬化
の検索や好気性運動負荷試験が有用である。
症患者に関する検討で、全身性硬化症発症2
ミトコンドリア病が疑われる場合、筋生検
年以内にCIPOを含めた消化管運動異常を
での ragged-red fiber の有無のチェックやミ
認めた群14例と認めなかった群の比較によ
トコンドリア遺伝子異常の検索による確定
り、早期の消化管運動異常発症群では
診断の後、心電図、心臓超音波検査、脳 MRI、
diffuse cutaneous typeが多く、GERDやmyosis
脳波検査による合併症の評価が必要となる。
の頻度が有意に高いことを報告した。一方、
− 77 −
3) アミロイドーシス
D.おわりに
アミロイドーシスによる消化管運動障害は、
続発性慢性偽性腸閉塞症は特発性のものと
アミロイドの消化管固有筋層への沈着によ
比較して、基礎疾患の治療により症状の改
るものや、自律神経障害を介してのものと
善が期待できるものもあり、その鑑別・診
考えられている。消化管アミロイドーシス
断が重要である。また、早期診断に基づく
では、小腸や直腸などの消化管粘膜の採取
栄養療法の導入により、QOL の維持が期待
検体をCongo red染色、偏光顕微鏡検査を用
される。
いて調べ、小血管壁のアミロイド沈着の有
E.健康危険情報
なし
無を判定することで診断する。Tadaらは
CIPOを発症した16人のアミロイドーシス
患者に対する検討を行い、AA型13名、AL
型2名、AH型1名を同定した。AA12名は比
較的治療に反応を示したものの、AL型の2
F.研究発表
1. 論文発表
なし
2. 学会発表
なし
名と1名のAA患者では経静脈栄養を含めた
治療にも抵抗性を示したと報告している。
アミロイドーシス患者の診療において、特
にAL型やAH型アミロイドーシスにおいて
は消化管運動異常の合併について慎重な検
索が望ましいと言える。
G.知的財産権の出願・登録状況
(予定を含む。)
1. 特許取得
なし
2. 実用新案登録
なし
3.その他
なし
− 78 −
平成 23 年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
分担研究報告書
5.慢性特発性偽性腸閉塞症の病理学的検討
分担研究者
正木忠彦(杏林大学医学部消化器・一般外科
研究協力者
大倉康男 (杏林大学医学部病理学
教授)
教授)
研究協力者 大久保秀則 (横浜市立大学医学部消化器内科)
研究要旨:本疾患の病理に関してはいまだ未解明な部分も多い。全層生検は病態解明に貢
献する可能性を秘めており、治療のため外科的手術が必要である症例に関しては、全層生
検を術前に施行すべきである。本年度は、これまで外科治療を施行した計 33 例の手術標本
を用いて免疫染色行い、本疾患を病理学的側面から検討した。
神経性 Neuropathy、b)カハール介在細胞
A. 研究目的
慢性特発性偽性等閉塞患者の消化管全層
性 Mesenchymopathy、 c)筋性
生検に関しては、これまで手技自体での症
Myopathy、の 3 つに大別されることが分か
状悪化の危険性から慎重な意見も多かった。
っている。本年度
そもそも健常者の全層生検例がこれまで少
なく、当該患者の全層生検に関してはさら
に未解明な部分が多かった。これ自体がこ
は、これまで外科治療を施行した計 33 例
の疾患を混沌とさせている一因でもある。
の手術標本を用いて免疫染色行い、本疾患
しかし、全層生検は病態解明に貢献する可
を病理学的側面から検討、さらには病型診
能性を秘めており、治療のため外科的手術
断の病理診断のためのアルゴリズム(案)
が必要である症例に関しては、全層生検を
を作成した。
術前に施行すべきである、との考え方が欧
米を中心に現在主流となっている。本邦で
B. 研究方法
全国で施行した偽性腸閉塞患者 33 例の
は実施可能な施設が少ないのが現状である
が、近年腹腔鏡下で全層生検を施行する施
実際の
設が徐々に増加している。本研究班の提唱
手術検体を用いて全層標本を作製し、これ
する診断基準では、臨床症状と画像所見が
に対して HE 染色、HuC/D 染色、CD117 染
必須条件とされており、病理学的所見につ
色を行い、病理学的に解析した。HE 染色
いては含まれていないが、免疫染色での診
では主に固有筋層の萎縮、線維化、空泡化
断が可能な施設で外科治療を考慮する場合、
の評価、HuC/D 染色では神経節及び神経節
確定診断のためには行うべき検査である。
細胞数の評価、CD117 染色ではカハール介
現時点では、病理組織学的に本疾患は a)
在細胞の有無を評価した。
− 79 −
C. 研究結果
まず HuC/D 染色を行い、標本 1cm あた
りの神経節細胞数をカウントすると、明ら
かに神経説細胞数が減少しているもの
(N=14)と既報論文の正常者の数とほぼ変
わらないもの(N=16)に大別された。明ら
かに神経節細胞数が減少している 14 例を
神経性とした(cut-off 値は未解析)
。
次に、非神経性症例に対して CD117 染色
そこで、我々の提唱としては、HuC/D 抗
を行うと、やはりカハール介在細胞(ICC)
体染色で神経性を診断し、ここで異常なけ
が明らかに減少しているもの(N=8)と正
れば次は CD117 染色でカハール介在細胞
常発現しているもの(N=8)とに大別され
性を診断、残りを HE 染色を用いて筋性で
た。ICC 減少を認めた 8 例は HE 染色では
あることの確認する、という手順が最も推
明らかな固有筋層の異常はなく、逆に ICC
奨されるものであった。
正常発現例では HE 染色で全症例で筋層内
の空泡化などの特徴的な筋障害の所見が認
以下、病型診断のアルゴリズム(案)を
示す。
められた。したがって、まず特異性の高い
免疫染色、特に HuC/D を先に行い、まず神
経性を診断し、次に CD117 でカハール介在
細胞性を決めれば残るは筋性ということに
なる。HE は最終的な筋性の確認としての
意味合いが強い。14 例の神経性の中には 4
例で筋性、3 例でカハール性との overlap
が認められたが、カハール介在細胞性と筋
性の overlap は 1 例も見られなかった。な
お、3 例はいずれの病型にも分類できない
D. 考察
分類不能型であった。
全層生検標本は、HE 染色のみならず免
疫染色を併用することでより正確な病型診
断が可能となる。現時点でこのアルゴリズ
ムはまだ確立されたものではない。この疾
患のさらなる認知とともに病理標本を増や
すことが病態解明へ大きく貢献するものと
思われる。
− 80 −
E. 結論
外科治療を施行した本邦 33 症例の手術
6. 学会発表
標本を対象として、HE 染色・免疫染色行
1) 正木忠彦、杉原健一、中島淳、
い、本疾患を病理学的側面から検討、さら
武藤徹一郎:わが国における慢性特
には病型診断のアルゴリズム(案)を作成
発性偽性腸閉塞症(CIIP)に対する
した。診断基準では、臨床症状と画像所見
外科治療の実態.第 66 回日本大腸
が必須条件とされており、病理学的所見に
肛門病学会パネル、東京、2011 年
ついては含まれていないが、免疫染色での
11 月 26 日
診断が可能な施設で外科治療を考慮する場
2) Masaki T, Matsuoka H,
合、全層生検は確定診断のためには行うべ
Kobayashi T,Sugiyama M:
き検査である。
Nationwide survey on adult type
chronic intestinal
F. 健康危惧情報
pseudo-obstruction in the
なし
surgical institutions in Japan.
21st World Congress of IASGO、東
G. 研究発表
京、2011 年 11 月 12 日
5. 論文発表
Masaki T, Sugihara K, Nakajima A,
Muto T. Nationwide survey on adult type
chronic intestinal pseudo-obstruction in
surgical institutions in Japan. Surg Today.
2012 ;42(3):264-71.
H. 知的財産権の出願・登録状況
7. 特許取得
なし
8. 実用新案登録
なし
9. その他
なし
− 81 −
平成 23 年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
分担研究報告書
6.慢性偽性腸閉塞症の成人および小児領域における疾患概念の統一の試み
分担研究者
松橋信行
NTT 東日本関東病院
消化器内科
部長
研究要旨: 慢性特発性偽性腸閉塞症は現在では慢性偽性腸閉塞症(Chronic Intestinal
Pseudo-obstruction: CIPO)と呼称するように国際的なコンセンサスが得られている。一方
小児領域、特に小児外科領域においては当該疾患は Hirschsprung 類縁疾患の範疇に包括さ
れており当該患者が小児外科から成長して内科を受診すると突然病名が変更になり違った
病気ではないかと患者に誤解を与えるといった診療上の問題点もある。今回小児から成人
まで同じ疾患をシームレスに扱うことは医療者はもとより患者にとっても重要な課題であ
ると考え小児外科領域の厚労省研究班(Hirschsprung 類縁疾患の調査研究班)と連携を取
り疾患概念のすり合わせを試みることを試みた。まだ緒についたばかりであるが今後連携
を深めて小児から成人にかけてシームレスな医療を行えるコンセンサスを得なければなら
ないと考えられた。
Hirschsprung 類縁疾患とする意見が圧倒的多
A. 研究目的
慢性特発性偽性腸閉塞症に関して小児領域の研
究班と連携して疾患概念の違いは何かということ
数派であることが分かった。現状認識の違い
を以下の表に掲載した。
を明らかにする。また疾患概念のすり合わせを試
みることを目的とする。
B. 研究方法
小児外科・小児科を中心とした Hirschsprung
類縁疾患の調査研究班(九州大学
小児外科
田
口教授)と連携を取り、現状認識とすり合わせの
可能性を検討した。
C. 研究結果
小児科領域では CIPO とすべきであるという
意見や、すでに海外の小児科では CIPO とし
て扱うコンセンサスが得られているとする意
また、班会議で以下のすり合わせの提案を行
見が多数あったが、小児外科領域は
った。
− 82 −
G. 研究発表
D. 考察
7. 論文発表
患者の視点から早急に病名の統一化をはからな
いといけないこと、また症に発症の当該疾患と成
なし
人発祥の当該疾患の違いを明らかにすることなど
8. 学会発表
なし
が急務と考えられた。
H. 知的財産権の出願・登録状況
E. 結論
10.
慢性特発性偽性腸閉塞症の小児領域における疾
患概念の差異の検討と、小児外科領域の調査研究
班との連携を取り疾患概念の統一化を目指した検
なし
11.
F. 健康危惧情報
なし
なし
− 83 −
実用新案登録
なし
12.
討を行った。
特許取得
その他
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
分担研究報告書
7.慢性偽性腸閉塞症の本邦における患者への発信
分担研究者
研究協力者
大和
滋(国立精神神経センター国府台病院
消化器内科
部長)
関野 雄典 (横浜市立大学医学部消化器内科)
研究要旨:慢性偽性腸閉塞は,腸管に機械的な閉塞機転がないにもかかわらず、腸管蠕動運
動の低下による腸閉塞症状を引き起こす比較的稀な疾患である。実地臨床に当たる医師の診
療経験あるいは認知度も未だ十分でなく、実際に症状を有しながらも偽性腸閉塞症の診断が
なされていない患者も少なくないと考えられる。医師および患者を含めた一般市民への疾患
概念の普及と情報の発信が重要であり、今年度の活動内容について報告する。
A.研究目的
慢性偽性腸閉塞症(Chronic Intestinal
B.研究方法
Peudoobstruction, CIP)は、腸管に機械的
横浜市立大学消化器内科のホームページ
な閉塞機転がないにもかかわらず、腸管蠕
にて慢性偽性腸閉塞症の専用のページにて
動運動の低下による腸閉塞症状を引き起こ
一般市民、患者および医師・研究者への周
す比較的稀な疾患である。その病態は不明
知を行った。
な点が多く、稀少疾患であるためにこれま
(http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~c
で系統的な調査・報告が少なかった。実地
ipo/)
臨床に当たる医師の診療経験あるいは認知
度も未だ十分でなく、実際に症状を有しな
C.研究結果及び考察
がらも CIP の診断がなされていない患者も
2011 年 4 月 1 日から 2011 年 2 月末日ま
少なくないと考えられる。
での集計では、横浜市立大学附属病院への
H22 年度の本報告書において、ホームペー
電話での問い合わせ多数あり、窓口とした
ジを用いた CIP 疾患概念の医師・研究者お
横浜市大内視鏡センター長、中島淳へのメ
よび一般市民への普及活動と、それに対す
ールでの問い合わせも多数あった。
る他医療施設からの紹介、患者自身の直接
他院からの当該疾患の紹介は 10 名、当該
来院について報告した。当該疾患の潜在的
疾患疑いの紹介 6 名であった。また、ホー
な患者の掘り起しと早期介入のためにも、
ムページをみて当該疾患ではないかと疑っ
実地臨床に当たる医師への疾患概念普及と
て直接来院した患者 4 名であった。
一般市民への啓蒙活動の継続が必要である。
直接来院した患者 4 名のうち、研究班が
今年度も更に内容の更新改良の上で、医師、
提唱する診断基準に該当する者は 1 名であ
一般市民,患者への情報発信を行った.
った。患者への疾患概念の普及は十分では
− 84 −
ないことが現状であり、医師への疾患概念
も普及と同時に、一般市民への啓蒙活動は
重要である。
また、本研究班においては研究成果を実
地臨床の現場で簡便に使えるようにするこ
とを目指して「慢性偽性腸閉塞症の診療ガ
イド」を作成し、平成 24 年 3 月に発刊予定
である。
D.健康危険情報
E.研究発表
1. 論文発表
なし
2. 学会発表
なし
F.知的財産権の出願・登録状況
(予定を含む。)
1. 特許取得
なし
2. 実用新案登録
なし
3.その他
なし
なし
− 85 −
このホームページは医師・研究者及び患者さんへ向けての慢性偽性腸閉塞症・慢性
特発性偽性腸閉塞症の疫学や診断治療、さらには新規治療法や病態解明などの調査研
究成果発信のためのホームページです。
− 86 −
慢性偽性腸閉塞症 (CIPO) は機械的な閉塞などの消化管の通過障害がないのにか
かわらず嘔気・嘔吐・腹部膨満・腹痛などの消化管閉塞症状(腸閉塞症状、イレウス
症状)を呈し、レントゲン上では腸閉塞を⽰唆する鏡⾯像や消化管拡張を認め、慢性
の経過をたどる原因不明な希な難治性疾患です。医療機関では腸閉塞[イレウス]と
して⼿術が⾏われることも多々あり、⼿術後切除した腸管に閉塞等の異常がなく初め
てこの疾患であることが分かることも多いようです。この病気のことを知っている医
師も決して多くはなく、知っていても診たことがない⽅も多く、患者さんは複数回の
⼿術を受けたり、医療機関を転々として、⻑い経過ののち診断がつくこともあります。
医学の教科書などにも記載が少なく、患者数が⾮常に少ないためにこれまで国による
系統的に調査研究がされてきませんでした。平成21年度より我が国で初めて当該疾
患の国内の調査研究班が厚⽣労働省により組織されました。本研究班では過去の本邦
での症例報告の調査をもとに診断基準案を策定し、国内の実態調査を内科系、外科系
に分けて⾏い、疫学、診断の実態、外科治療の成績などを調査してまいりました。ま
た邦⽂雑誌などにより医師に向けての当該疾患の啓蒙・認知をはかってまいりました。
CIPO は我が国に⽐べ欧⽶で専⾨の研究者が多く、診断や治療の医療レベルも進ん
でいると考えられ、このような海外の知⾒も紹介することも責務と考え積極的に⾏っ
てまいりました。厚労省の本邦診断基準案は海外の当該疾患の専⾨家に多くのご批判
をいただき改定を重ねてまいっております。CIPO の我が国における診断・治療など
− 87 −
の研究はまさに始まったばかりです。今後必ずや、この病気で悩む患者さんのために
より良い診断・治療法の開発や画期的根治療法が開発されるよう願ってやみません。
厚⽣労働省研究班
研究代表
中島 淳
連絡先 神奈川県横浜市⾦沢区福浦 横浜市⽴⼤学附属病院 消化器内科・内視鏡センター
中島 淳
[email protected] TEL 045-787-2800
− 88 −
FAX 045-787-8988
患者さん向けページ
慢性偽性腸閉塞で治療中の患者様へ
お知らせ
診断や治療での相談は主治医の先⽣を経由してか、直接、[email protected]
までメールいただければ相談に応じます。
病気の話し
慢性偽性腸閉塞症 CIPO は⼤きく分けて⼩児期発症の病気と⼤⼈になってからの発
症の2つの種類があるようです。このコーナーでは成⼈発症の CIPO についての解説
を患者さん向けに話をいたします。理解しやすくするために多少証拠に基づいてない
点もあると思いますがご了承ください。以下質問形式でお話しいたします。
Q1.
慢性偽性腸閉塞 CIPO とは簡単に⾔ってどのような病気ですか?
A1.
CIPO は⼀⾔で述べると腸の動きが悪くなり、⾷べたものが腸の中で停滞して進んでい
かないようになる病気です。腸管の輸送機能が低下する病気です。腸は蠕動運動という周期的
な運動をして腸の中の⾷事を消化しながら押しつぶしたりして運んで⾏きます。しかし、腸の
動きが悪くなると、この運搬能⼒が落ちてきて、どこにも通りが悪いところや塞がっている所
や捻じれている所が無いのに、⾷べたものがたまってきてついには腸が張ってきて腸念転(正
式には腸閉塞と⾔います)のような症状になります。その結果、便秘に加え、おなかの張り、
− 89 −
膨満感、吐き気、実際に吐いたりすることもあります。腸の動きが悪い個所はいろんなところ
が時として悪くなり、悪いところを⼿術できったからといって完治するわけではありません。
病気が進⾏してくると腸が膨らんで圧迫され、そのうち腸の働きとしての栄養の吸収ができな
いようになってきます。結果、体重が減ったりします。腫れた腸は時としてお腹の中で捻じれ
て、腸に⾎液が⾏かなくなりそのため⼿術をせざるを得ないこともあります。⾷事をとると、
おなかが張ったり、痛くなったり、吐いたりと、⼗分に⾷事が取れないときは栄養をチューブ
や点滴でとるようになることもあります。何回も⼿術を受けたりされる⽅がおります、重症例
では⼩腸移植がおこなわれることもあります。
Q2.
この病気はどのような⽅に起こるのでしょうか?何か前兆みたいなものはあります
か?
A2. この病気は強⽪症(全⾝性硬化症)、ミトコンドリア脳筋症、筋ジィストロフィー、甲
状腺機能低下症などなどの種々の全⾝疾患をもとに発症してくる《続発性》と、そのような原
因が無くおこってくる原発性(特発性ともいいます)の2つがあります。続発性の患者さんは
もともとそのような全⾝疾患をお持ちですので、主治医が予測を⽴てられます。また治療に関
してもそのような原疾患の治療を⾏うことになります。
⼀⽅原発性の CIPO はどうして起こるのかが分かりません。ただ⾎の繋がっている親御さん
に同じ病気の⽅がいるときにおこることが知られており、遺伝性があるようです。このよう
− 90 −
な⽅は元来頑固な便秘症で暮らしておられることが多いようです。このような遺伝素因つま
り体質のようなものを⽣まれながらに持っている⽅で、頑固な便秘の⽅が何らかのきっかけ、
たとえば出産などをきっかけとして CIPO を発症するようです。
Q3.
どうやって診断すればわかりますか?
A3. この病気を知らない医師がかなり多いことが問題です。⼀番重要なことは繰り返す嘔吐
や嘔気、頑固な便秘、腹部膨満などの腸閉塞症状を⻑いこと繰り返しており、病院でいろいろ
検査をしたり、⼿術をしても癌などの腸の通りをふさぐような異常がない時にこの病気の可能
性を考えます。医師がこの病気を念頭に置ければ、あとは厚労省の診断基準やシネ MRI など
で検査をすればこの病気であることが分かります(診断できます)。
Q4.
巨⼤結腸症といわれて頑固な便秘で苦しんでいます。CIPO とは違うのでしょうか?
A4. 巨⼤結腸症とはレントゲン上結腸(⼤腸)が拡張している状態を指します、もちろん慢
性の便秘症の⽅でこのようになる⽅もおりますし、CIPO の⽅もおります、また成⼈型
Hirschsprung 病(Short-segment Hirschsprung 病)や、下剤の乱⽤、などいろいろな病気
で起こる状態です。便秘の症状がおありでしたらまずは CIPO でないかを調べてみてはいかが
でしょうか?
− 91 −
Q5.
腸閉塞[イレウス]と⾔われ何回も⼿術を受けましたがよくなりません、実は私は CIPO
ではないでしょうか?
A5. 腸閉塞で何回も⼿術をされる⽅は決してまれではありません。むしろ CIPO のほうがま
れな疾患であると思います。しかし、⼿術をしてもよくならない、切った腸には異常があまり
なかった、症状が変わらないか悪化している、異常な腸の場所がいつも違っている、などある
ときはもともと CIPO であったのではとも考えられます。CIPO であることが分からず原因不
明で複数回⼿術をすることもあります。
Q6.
治療はどうするのでしょうか?
A6. 治療に関して専⾨の医師に相談なされるのがいいと思います。
Q7.
この病気でつらいので早く⼿術をして楽にしてもらいたいと思っておりますが、⼿術を
すれば治るのでしょうか?
A7. 厚⽣労働省の調査や、国内外の研究では腸の異常が⼤腸に限局するタイプでは⼿術によ
って症状がよくなり再発もしないようで成績がよろしいようです。しかし、動きの悪い腸に⼤
腸のみならず⼩腸が含まれる時は⼿術でも症状が緩和されることは期待できないようです。
− 92 −
Q8.
私は CIPO と⾔われているのですが便秘でなくしょっちゅう下痢をします。実は違う病
気ではないでしょうか?
A8. 多くの患者さんが同じ疑問をお持ちのようです。⼀般には腸内細菌は⼤腸にたくさんい
て⼩腸にはあまりおりません、それは⼩腸は蠕動で内容物を⼤腸に速やかに送り込むから⼩腸
の中は掃除されてあまり細菌が多くいないのです。CIPO では⼩腸の動きが悪くなり、⼩腸で
細菌が繁殖してその刺激で下痢になることが多いようです。下痢の状態は CIPO にとっては腸
の中⾝が出ていくので症状がとっても楽になります、しかし他⽅、細菌増殖と下痢によるビタ
ミン不⾜や栄養障害が⽣じることもあり注意が必要です。下痢の後に便秘になることが多く、
治療を間違えるととんでもない腸閉塞の悪化をきたしますので主治医の先⽣によく相談して
下痢の治療をするべきと思います。
Q9.
私はおなかの⼿術後にこの病気になりました、厚⽣労働省の診断基準では『⼿術後は除
く』と記載してありますので私の病気は CIPO でなく⼿術のせいではと思っておりますが。
A9. もともと CIPO の患者さんが診断が難しいために CIPO と分からずに腸閉塞として⼿術
されることがあり、⼿術後、切り取った腸を調べたり、ほかの検査でこの病気であったと初め
てわかることは結構多いようです。⼀⽅厚労省の診断基準では⼿術後は除くとしておりますが、
それはこの病気に似た腸閉塞症状が⼿術後の癒着などで⽣じるので、そのような場合を除くと
しております。
− 93 −
Q10. ⻑年この病気で苦しんでいます、何か患者友の会みたいなものはありませんか?
A10. 今のところ患者さん同⼠の連絡の組織は聞いたことがございません。
Q11. この病気は腸が動かなくなる病気と説明を受けました、今私の腸でどこが動いてどこ
が動かないかを調べる⽅法はありませんでしょうか?
A11. シネ MRI という検査をすればおなかの中の腸の動きが分かります。MRI はたいていの
病院にありますが、⼩腸の検査ができる病院や、放射線技師さんが熟知している病院はそう多
くはないようです。かかりつけの病院でできないようでしたらご連絡いただければ紹介します。
あとは、⼩腸マノメトリー(腸管内圧検査)というものがありますが、この検査ができる病
院も⾮常に少ないようです。
Q12. この病気は徐々に悪化してくると伺いましたが、そのスピードを遅らせる⽅法などあ
りませんでしょうか?
A12. 現時点で模範解答はありません。しかし、腸閉塞症状の悪化から来る⼿術を避けるこ
とは重要ではと思います。また、腸管からの消化吸収障害が来ないように、また吸収不良症状
があっても体重減少などの合併症をきたさないようにすることが病気の状態をよくすること
は間違いないと思います。従って、できるだけ腸を動かす薬を根気よく継続し、⾷事は症状が
− 94 −
悪化するようならきわめて少なく、⼩分けにして、場合によってはエレンタールなどの成分栄
養をできるだけ早く使⽤したほうがよいかもしれません。さらに症状が悪化するなら早めに在
宅 IVH などを⾏うほうが QOL はよろしいかと思います。
Q13. 先⽣は⾷事やエレンタールはできるだけ⼩分けにしてとるようにと⾔いますがどうし
てですか?
A13. CIPO は⾷事を腸の中で運ぶ速度がゆっくりになる病気で、運べる速度、量以上に⾷事
や成分栄養剤をとると腸の中に以下のようなたまりができて⾷事が詰まってしまい腸閉塞症
状が悪化します。従ってできるだけ少量を、特にカスになりにくい⾷事をとることが肝⼼です。
成分栄養としてエレンタールなどを内服している場合も同じでできるだけ少量⼩分けにして
⻑時間かけて服⽤することです。
− 95 −
Q14. ⼤腸型の慢性偽性腸閉塞という病気があるのでしょうか?
A14. ⼤腸型限局型の偽性腸閉塞という病気が知られております。この病気の診断は専⾨医
でないと難しいのですが、もし⼤腸限局型でしたら、CIPO のように⼩腸の異常がなく、吐き
気などの腸閉塞症状も軽いことが多いようです。また、⼿術で結腸を切除することで、症状が
取れ、経過が良いことがわかっております。
シネ MRI とは?
MRI とは Magnetic Resonance Imaging(核磁気共鳴画像法)の略で、磁気を利⽤して⽣
体の断層写真を撮ることができるものです。同様に⽣体の断層写真を撮ることができる CT
− 96 −
は若⼲の放射線被曝を伴いますが、MRI は被曝を伴わないというメリットがあります。ま
た任意の断層像を得られるという特⻑があります。これまで CT や MRI は臨床の現場で数
多く利⽤され、医学の進歩に⼤きく貢献してきました。近年この MRI の分野でシネ MRI
(cine-MRI)という技術が⾮常に進歩してきており、多くの脚光を浴びるようになりまし
た。通常の MRI は瞬間的な「静⽌画」ですが、シネ MRI はいわば「動画」であり、⼀定時
間の内臓の動きを映画(シネマ)のように動画としてとらえることができます。このシネ
MRI を腸管に応⽤することで、特に⼩腸の蠕動運動(内容物を先に送ろうとする腸の動き)
や胃の運動、腸管の拡張程度、癒着、腸管内容物などが⾮常に詳細に分かるようになってき
ました。ただしシネ MRI を⽤いた診断基準は現在のところ明確なものがまだなく、今後は
偽性腸閉塞(CIPO)において、本邦で広く利⽤できる MRI 検査を⽤いたより正確な診断の
普及が望ましいと考えます。シネ MRI は前処置不要で数分で検査を終えることができ、ま
た被曝もないため⾮常に低侵襲な検査法であります。また保険診療が可能です。我々が⾏っ
ている⽅法は造影剤を使⽤せず 16 秒の息⽌めを患者様にしていただき、その間の腸管の運
動を観察するものです。
− 97 −
通常⼤腸は 20 分に 1 回程度の蠕動だけですが、⼀⽅⼩腸は 10-20 秒毎に蠕動して
内容物を絶えず輸送しています。A は健常⼈の⼩腸の⼀部で⼩腸の拡張を認めず、さ
らに 16 秒間の撮影期間中に活発な腸管の収縮拡張運動を認めます。⼀⽅ B は CIPO
の患者様の画像ですが、16 秒の間に腸管の運動は全くなく、また内容物が停滞する
ため A と⽐べて腸管径も著明に拡張しています。なお C もやはり CIPO 患者様の⼩
腸ですが、拡張ははっきりとは認めないものの運動は正常例を⽐較すると⾮常に緩慢
なのが分かります。シネ MRI は簡便なうえにほぼ全⼩腸の運動を観察でき、腸ろう
の造設の際や、治療前後での⽐較など今後活⽤が期待されます。
− 98 −
ただし通常の MRI と同様、①⼼臓ペースメーカーが埋め込まれている⽅、②脳動脈
瘤クリップ術後の⽅、③その他⼿術などで⾦属が体内に埋め込まれている⽅は撮影す
ることができませんので注意が必要です。ご不明な点がありましたらお気軽にご相談
ください。
Q1.
私は以前から腹部膨満、腹痛などに悩まされ、先⽇偽性腸閉塞と診断されました。診断
がついた後もシネ MRI を撮る必要性はありますか?
A1. 偽性腸閉塞は⼿術後 6 か⽉以内に起こる急性型と、⼿術の既往なく 6 か⽉以上症状が続
く慢性型に⼤きく分けられます。特に慢性偽性腸閉塞(CIPO)は、現段階の診断基準では 6
か⽉以上続く腸閉塞症状(そのうち 12 週は腹痛・腹部膨満感を伴う)に加え、CT やレント
ゲン写真で特徴的な所⾒を認めるものと定義されています。このため CT やレントゲン、⾃覚
症状だけで診断⾃体はつくのですが、これだけではどの腸管の動きが悪いのかなどが分かりま
せん。シネ MRI を追加することで、ほぼ全⼩腸の動きが把握でき、どこの腸管が、どのくら
いの範囲にわたって、どの程度動きが悪いのか、などが⼀⽬瞭然となります。シネ MRI は適
切な治療⽅針を決める上でも、また治療前後の腸管蠕動の変化を評価する上でも⾮常に有⽤な
検査といえます。
Q2.
どのようにしてシネ MRI をとるのですか?
− 99 −
A2. 検査に際して特に⾷事を⽌めたり下剤を飲んだりする必要はありません。⼩腸に内容物
がある⽅が評価しやすいので、検査直前に可能な範囲で⽔を飲んでいただきます。
Q3.
他に偽性腸閉塞を診断する⼿段はありますか?
A3.
A1 でも述べたように、現時点での厚労省の診断基準では⾃覚症状・レントゲン・CT だ
けで診断ができるようになっていますが、レントゲン・CT だけでは腸管拡張などの異常がは
っきりせず、実際は偽性腸閉塞であるにもかかわらず診断が下せない場合もあります。このよ
うな⽅にシネ MRI を撮ると蠕動低下が判明し、偽性腸閉塞という正確な診断が下せるように
なることもしばしばあります。ほかに、マノメトリーや胃シンチグラフィーなどが欧⽶では⾏
われておりますが、これらはシネ MRI よりも侵襲的であり、そもそも⽇本ではほとんど普及
しておりません。
Q4.
⼼臓ペースメーカーや脳動脈クリップ以外で MRI が施⾏できないのはどのような場合
ですか?
A4. 近年、整形外科などの⼿術で埋め込まれる⾦属の⼤半が MRI を⾏っても⼤丈夫な素材と
なっておりますが、かなり以前の⼿術や材質が確認できない場合は MRI は施⾏できません。
また狭⼼症や⼼筋梗塞で⼼臓カテーテルを⾏った⽅で、冠動脈ステント挿⼊直後の⽅などは⼀
般的に MRI ができません。些細な点でもご不明な点はまず担当医にご相談ください。
− 100 −
Q5.
シネ MRI は保険診療の適応となりますか?
A5. 通常の保険診療が可能です。
− 101 −
平成 23 年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
分担研究報告書
8.当該疾患の診断基準案の発信と国際批判に耐えうる改訂
分担研究者
中島淳(横浜市立大学医学部消化器内科
教授)
研究協力者
大久保秀則 (横浜市立大学医学部消化器内科)
研究要旨:平成 21 年度に当研究調査班で作成した本邦発の慢性特発性偽性腸閉塞の診断基
準(案)に関して、平成 22 年度には当疾患の経験豊富な欧米の専門家から意見・批判をい
ただき、改訂診断基準案を作成した。本年度は、平成 21 年度診断基準案の妥当性の評価に
関する論文を作成したが、この際にいただいた海外専門家からの有意義な批判をさらに組
み込み、より国際性の高いものにするべく平成 23 年度版の改訂診断基準案を作成した。
I.
かりにくいとの指摘を受けた。この点を受け、
研究目的
平成 22 年度の改訂診断基準案に、さらに海外専
診断基準の表記を一部変更し、下記の1)~
3)をすべてみたすもの、と明記した。
門家の建設的意見・批判を取りいれ、より実用的
かつ国際批判に耐えうる診断基準に改訂すること。
b) マノメトリーやシンチグラフィー、消化管全
層生検などの本疾患特異的な検査は、我が国
J. 研究方法
をはじめ、
(発展途上国を含め)多くの国が臨
本年度は、平成 21 年度に初めて作成した慢性特
床現場では使えないものと思われる。したが
発性偽性腸閉塞症の診断基準(案)の我が国への
ってこれらの検査を必須項目としない本診断
有用性を検討し論文を作成した。この際に受けた
基準は今後の海外で広く受け入れられるもの
海外専門家の建設的意見を基に、平成 22 年度の改
である、との高い評価をいただいた。
訂診断基準案からさらに改訂を加えた。
これらの検査は過去の欧米の診断アルゴリズ
ムに含まれているが、必須項目としてではな
K. 研究結果
く、あくまでも診断をより確定的するための
手段としての位置づけである。従って、これ
慢性特発性偽性腸閉塞症の診断の要点は①6 ヶ
月以上前から腸閉塞症状があり、そのうち 12 週は
らの検査を必須事項に加えることは診断基準
腹部膨満を伴うこと、②画像所見で腸管拡張また
が実用的でなくなるため不適切と考え、本年
は鏡面像を認めること、③器質的狭窄・閉塞が除
度もこれらの検査を必要としない診断基準と
外されること、の 3 つをすべて満たすことである。
することを重視した。
c)
診断基準2)に書かれている「画像所見での
<今回受けた海外専門家による意見とその対応>
腸管拡張」とは小腸もしくは大腸いずれを指
a) これまでの診断基準案では、これらの 3 点が
すのか?という指摘を受けた。この点に関し
必須事項であることが明記されておらずに分
ては基本的には主な罹患部位である「小腸」
− 102 −
をさすが、大腸限局型などの特殊なケースも
病、ミトコンドリア異常症、2 型糖尿病などによ
存在するため、あえて両者を区別するような
るものがある。
表現は避け、従来通り「腸管拡張」との表現
4.家族歴があることがある。
を用いることとした。また、その方が一般内
5.腸閉塞症状とは、腸管内容の通過障害に伴う
科医に対しても平易に用いられる診断基準で
腹痛・腹部膨満。悪心嘔吐、排便排ガスの減少を
あると考える。
指す。食欲不振や体重減少、Bacterial overgrowth
による下痢・消化吸収障害を認めることがある。
<今回の変更点のまとめ>
6.障害部位は小腸や大腸のみならず食道から直
a) 診断基準の表記を一部変更し、下記の1)~
腸に至る全消化管に起こることが知られており、
3)をすべてみたすもの、と明記した。
同一患者で複数の障害部位を認めたり、障害部位
b) シネ MRI で腸管蠕動低下を認めた場合、診断
の増大を認めることもある。また神経障害(排尿
はより確定的となる、との表現を付記所見・
障害など)、及び精神疾患を伴うことがある。
参考所見に加えた。
7.シネ MRI で腸管蠕動低下を認めた場合、診断
はより確定的となる。
平成 23 年度慢性偽性腸閉塞の改訂診断基準案
L. 考察
我が国を含め、これまで慢性特発性偽性腸閉塞
疾患概念
症の明確な診断基準を提唱することは本研究が初
消化管に器質的な狭窄・閉塞病変を認めないにも
めてである。海外において、過去に 2 つの診断ア
かかわらず腸管蠕動障害(腸管内容物の移送障害)
ルゴリズムが提唱されているが、
「診断基準」とは
を認めるもので、慢性の経過をみるもの。
異なり、あくまでも診断までのフローチャートを
示すものである。したがって我々の提唱する診断
基準は当該疾患では世界初の試みである。
診断基準
過去の診断アルゴリズムは、系統的な鑑別診断
下記の1)~3)すべてを満たすもの。
1)6 ヶ月以上前から腸閉塞症状があり、そのう
が可能であるという長所がある反面、一般内科医
ち 12 週は腹部膨満を伴う。
には使用しにくいという短所がある。症状発症か
2)腹部単純 X 線検査、超音波検査、CT で腸管
ら正確な診断まで平均 7 年以上を要する本疾患を、
拡張または鏡面像を認める。
より早く診断し適切な治療に結びつけるためには、
3)消化管 X 線造影検査、内視鏡検査、CT で器
より平易で一般内科医に対しても簡単に使用可能
質的狭窄・閉塞が除外される。
なものでなくてはならない。我々が提唱する診断
基準案はこの点を重要視しており、日常臨床でも
付記所見・参考所見
非常に実用的なものであると考える。海外専門家
1.慢性の経過(6 ヶ月以上)で 15 歳以上の発症
の意見も考慮しさらに改訂した診断基準は、我が
とする。*先天性・小児は別途定める。
国のみならず、国際的にも十分使用可能なもので
2.薬剤性・腹部術後によるものは除く。
あると思われる。
3.原発性と続発性に分け、原発性は病理学的に
筋性、神経性、カハール介在細胞性、混合型に分
けられる。続発性は全身性硬化症、パーキンソン
M. 結論
平成 22 年度の改訂診断基準案に、さらに海外専
− 103 −
門家の建設的意見・批判を取りいれ、より実用的
かつ国際批判に耐えうる診断基準に改訂した。
N. 健康危惧情報
なし
O. 研究発表
9. 論文発表
Hidenori Ohkubo, Hiroshi Iida, Hirokazu
Takahashi, Eiji Yamada1, Eiji Sakai,
Takuma Higurashi, Yusuke Sekino, Hiroki Endo,
Yasunari Sakamoto,Masahiko Inamori,
Hajime Sato, Kazuma Fujimoto,
Atsushi Nakajima :
An epidemiologic survey of chronic intestinal
pseudo-obstruction (CIPO) and evaluation of the
newly proposed diagnostic criteria.
Digestion 2012; In press
10.
学会発表
なし
P. 知的財産権の出願・登録状況
13.
特許取得
なし
14.
実用新案登録
なし
15.
その他
なし
− 104 −
An epidemiologic survey of chronic intestinal pseudo-obstruction
(CIPO) and evaluation of the newly proposed diagnostic criteria
Hidenori Ohkubo1, Hiroshi Iida1, Hirokazu Takahashi1, Eiji Yamada1, Eiji Sakai1,
Takuma Higurashi1, Yusuke Sekino1, Hiroki Endo1, Yasunari Sakamoto1,
Masahiko Inamori1, Hajime Sato2, Kazuma Fujimoto3, Atsushi Nakajima1*
1
Gastroenterology Division, Yokohama City University School of Medicine, Yokohama, Japan
2
Department of Health Policy and Technology Assessment National Institute of Public Health,
Wako, Japan
3
Gastroenterology Division, Saga University School of Medicine, Saga, Japan
*
Corresponding Author: Atsushi Nakajima. M.D., Ph.D.
Gastroenterology Division, Yokohama City University School of Medicine
3-9 Fuku-ura, Kanazawa-ku, Yokohama, 236-0004 Japan
Tel; +81-45-787-2640, Fax; +81-45-784-3546
E-mail; [email protected]
Short title:
A nationwide epidemiologic survey of CIPO
Abbreviations
IPO: Intestinal pseudo-obstruction
CIPO: Chronic intestinal pseudo-obstruction
SSc: Systemic sclerosis
CIIP: Chronic idiopathic intestinal pseudo-obstruction
CSIPO: Chronic small intestinal pseudo-obstruction
CCPO: Chronic colonic pseudo-obstruction
ICC: Interstitial cells of Cajal
JSGE: Japanese Society of Gastroenterology
DM: Dermatomyositis
MCTD: Mixed connective tissue disease
SjS: Sjögren syndrome
PPI: Proton pump inhibitor
H2RA: H2 receptor antagonist
Keywords
chronic intestinal pseudo-obstruction, diagnostic criteria, algorithm
− 105 −
Abstract
Background and Aims: Chronic intestinal pseudo-obstruction (CIPO) is an intractable disease
in which clinical symptoms of intestinal obstruction appear without mechanical cause. No clear
diagnostic criteria have been established; therefore, we proposed diagnostic criteria to facilitate
the diagnosis of this rare disease. The purpose of this study was to evaluate the usefulness and
validity of our diagnostic criteria.
Materials and Methods: A questionnaire was sent to 378 institutions belonging to the
Japanese Society of Gastroenterology (JSGE) during the period between December 2009 and
February 2010. We summarized the returned data and performed statistical analysis of the data.
Results: A total of 160 cases were included, and 141 cases (88.1%) fulfilled the criterion of
disease duration of more than 6 months, and 157 cases (98.1%) fulfilled the criterion of the
clinical symptoms of abdominal pain and/or bloating. Furthermore, 154 cases (96.2%) fulfilled
the criterion of the imaging findings. Eventually, 138 cases (86.3%) fulfilled all the criteria.
Conclusion: The proposed diagnostic criteria were useful with a high sensitivity of 86.3% for
Japanese patients. Improved recognition of CIPO and practical use of the criteria are desired.
The criteria should be appropriately modified by many researchers to make them more practical
and internationally applicable.
Introduction
Intestinal pseudo-obstruction (IPO), first reported by Dudley et al. in 1958, is a rare, serious
digestive syndrome characterized by failure of the intestinal tract to propel its contents
appropriately, resulting in recurrent clinical episodes of intestinal obstruction in the absence of
any mechanical cause [1-5]. Acute or chronic abdominal pain and distension are the most
common symptoms of this disease. Furthermore, nausea, vomiting, constipation and diarrhea
are also seen at various frequencies. Based on the pattern of onset, IPO is classified as the acute
or the chronic type. The acute type, especially acute pseudo-obstruction of the colorectum, is
referred to as Ogilvie Syndrome, which encompasses several colonic obstructive syndromes
caused by acute functional transit failure. It is speculated that this syndrome is caused by a
collapse of regulation of the autonomic nerves distributed in the colorectum. Ogilvie Syndrome
is secondary to various diseases, and has been mainly reported to occur after abdominal surgery
[6].
On the other hand, the chronic type is the so-called CIPO. Although there are no specific
laboratory findings, malabsorption due to bacterial overgrowth, anemia, hypocalcemia,
hypolipidemia, folic acid deficiency, iron deficiency and hypoalbuminemia are often observed
due to malnutrition in CIPO patients [2-4]. CIPO may affect the entire gut from the esophagus
− 106 −
to the rectum in the broad sense, but predominantly the small intestine is affected. CIPO can be
categorized as primary or secondary [7]. Primary CIPO includes the myogenic type, neurogenic
type, mesenchymopathic type (arising from dysfunction of the interstitial cells of Cajal; ICC),
and the mixed or unclassifiable type (inflammation). Secondary CIPO includes a subtype that is
secondary to underlying diseases such as SSc or mitochondrial encephalomyopathy, and a
subtype that is related to antipsychotic or antidepressant drug use. The subtype of CIPO that is
not associated with any apparent underlying disease has been called chronic idiopathic intestinal
pseudo-obstruction (CIIP).
At present, the diagnostic criteria for CIPO have not yet been well established around the world.
The Research Group for the Survey of the Actual Conditions of Epidemiology, Diagnosis, and
Treatment of CIIP in Japan (Chief investigator, Atsushi Nakajima), Research Project for
Overcoming Intractable Disease, Health Labour Sciences Research Grant in the fiscal year 2009,
proposed the Japanese diagnostic criteria of CIPO in order to facilitate the diagnosis of this rare
disease by the general physician. The criteria are composed of four mandatory requirements and
an important note for the diagnosis, as shown in Table 1. Recently, Iida et al. investigated the
reported data of a total of 121 Japanese cases of CIPO during the period between 1983 and 2009,
and calculated the sensitivity of the proposed diagnostic criteria [8], under the assumption that
these case reports contained sufficient information about each patient; therefore all cases were
considered to be correctly diagnosed as having CIPO. However, very little is still known about
the pathophysiology of CIPO and the status of CIPO patients in Japan; therefore, we conducted
an epidemiologic survey to assess the present status of this rare disease in the Japanese
population following their investigation of previous case reports. We investigated the
recognition rate of the disease in certified gastroenterology institutions, and also its
epidemiology, including the clinical symptoms and radiological imaging findings in the patient;
then, we evaluated the validity and usefulness of the diagnostic criteria for CIPO newly
proposed by this research group.
Materials and methods
A questionnaire was sent to 378 institutions belonging to the Japanese Society of
Gastroenterology (JSGE) during the period between December 2009 and February 2010. At first,
we enquired whether or not each of the participating institutions was aware of CIPO as a disease
entity or had encountered patients with CIPO. While enquiring about the institutions’
recognition of this disease, CIPO was defined as a disease characterized by recurrent clinical
episodes of intestinal obstruction in the absence of mechanical obstruction, as confirmed by
clinical examinations, including radiological imaging and gastrointestinal endoscopy. Then, the
institutions that had knowledge about this disease entity were asked to fill out the questionnaire,
− 107 −
based on the premise that the gastrointestinal specialists in the institutions had certainly
performed the aforementioned examinations to exclude mechanical obstruction and made a
correct diagnosis for CIPO. The details of the questionnaire are shown in Table 2. Here, the term
‘Dilatation of the bowels on Radiological Imagings’ indicates not only dilatation of the small
intestine, but also that of the colon. We decided to use the simplistic term, ‘the bowels’ because
of the following two reasons; 1) our intention in establishing diagnostic criteria is to facilitate
the diagnosis of CIPO by the general physician without any need for complicated or specialized
discussions, such as ‘which is the dilated bowel, small intestine or colon?’; 2) ‘colon’ should not
be excluded, because special cases such as colorectal localized-type (chronic colonic
pseudo-obstruction: CCPO) sometimes exist.
The closing date for receipt of the questionnaire responses was 19 February, 2010. Then, we
aggregated the data on the type of CIPO (primary or secondary), age at the time of the first
hospital visit, clinical symptoms, radiological imaging findings, duration of disease, and method
of treatment in each patient, and conducted a statistical analysis of the data.
Results
1) Recognition of CIPO and experience with CIPO at each institution
In all, 216 (57.2%) of the 378 institutions responded to our questionnaire, and of these, 200
(92.6%) were aware of CIPO as a distinct disease entity, and 103 (51.5% of those that were
aware of CIPO as a distinct disease entity) had encountered cases of CIPO. None of the
institutions that were unaware of CIPO as a distinct disease entity answered ‘‘have encountered
the CIPO cases’’. The number of cases was zero in 97 (48.5%), one in 52 (26.0%), two in 17
(8.5%), three in 7 (3.5%), four in 1 (0.5%), five in 2 (1.0%), six in 3 (1.5%), seven in 2 (1.0%),
eight in 1 (0.5%), ten in 2 (1.0%), twenty-seven in 1 (0.5%) of the institutions. A total of 213
patients were accumulated from 103 institutions until 19 February, 2010. Of the 213 patients, 53
for whom detailed information (e.g. sex, clinical symptoms) was not available from the
questionnaire, were excluded from this analysis. Eventually, the data of a total of 160 patients
were included in this study.
2) Type of CIPO
Analysis of the data of the 160 cases revealed that 77 (48.1%) were male and 83 (51.9%) were
female, the type of CIPO was primary in 117 cases (73.1%), secondary in 41 cases (25.6%), and
unknown in 2 cases (1.3%), as shown in Table 3. The underlying cause in the cases with
secondary CIPO was SSc in 23 cases (56.1%) and non-SSc in 18 cases (43.9%). Collagen
diseases were prominent among the non-SSc cases, and included dermatomyositis (DM) in 4
cases (9.8%), mixed connective tissue disease (MCTD) in 3 cases (7.3%), and Sjögren
syndrome (SjS) in 1 case (2.4%). The other causes of non-SSc CIPO were amyloidosis in 2
− 108 −
cases (4.9%) and ‘others’ in 8 cases (19.5%).
3) Age at the time of the first hospital visit
The majority of the patients of both sexes were in their 60’s at the time of the first hospital
visit (male: 25.7%, female: 24.1%).
4) Clinical symptoms
Our evaluation of the clinical symptoms in the 160 cases showed that abdominal bloating was
the most common symptom, being recorded in 156 cases (97.5%), and that abdominal pain and
vomiting were relatively common symptoms, being recorded in 107 cases (66.9 %) and 81 cases
(50.6%), respectively (Table 4). In all, 157 cases (98.1%) had at least one of these two
symptoms (abdominal bloating / abdominal pain), which fulfilled the diagnostic criterion 2.
5) Radiological imaging findings
In this survey, we defined positive imaging findings as the presence of dilatation and/or
air-fluid levels of the bowels. Figure 1 is a typical abdominal radiograph of a CIPO patient
showing marked distention of the small intestine with a large amount of intestinal gas. Figure 2
shows a typical CT image of a CIPO case. The number of patients among the 160 patients with
positive imaging findings was 154 (96.2%), and that without positive findings was 3 (1.9%); the
status with regard to this finding was unknown in 3 cases (1.9%) (Table 5). Thus, 154 of the 160
cases (96.2%) showed dilatation of the bowel loops and/or air-fluid levels of the intestine on
plain radiographs or CT images of the abdomen, which is included as a positive diagnostic
criterion.
6) Duration of disease
The number of patients with the criterion of disease duration of more than 6 months was 141
(88.1%), and that with the disease duration of less than 6 months was 16 (10.0%); the disease
duration was unknown in 3 cases (1.9%) (Table 5).
7) Selected method of treatment
Our summarization of the responses to the questionnaire, which was in multiple
answers-allowed form, in relation to the selected method of treatment for each patient in the
total of 160 cases (Table 5), showed that medical conservative (drug) therapy was the most
commonly selected treatment: medical conservative (drug) therapy was selected in 135 cases
(84.4%), diet in 107 cases (67.1%), and surgical treatment in 36 cases (22.5%). A total of 46
cases (28.8%) were treated by other methods, including home parenteral nutrition (intravenous
hyperalimentation) in 33 cases (20.6%), and endoscopic intestinal decompression, ileus tube
placement, and enema in a few cases. One case (0.6%) received no treatment (Table 6). The
most commonly used drugs were mosapride citrate (5-HT4 receptor agonist), probiotics,
daikenchuto (herbal medicine), magnesium oxide, etc. Antacids, such as proton pump inhibitors
(PPI) and H2 receptor antagonists (H2RA) were sometimes used in the cases treated
− 109 −
conservatively.
As a result, 138 patients fulfilled all the diagnostic criteria, and the sensitivity of the proposed
criteria for the diagnosis of CIPO in Japanese patients was 86.3%.
Discussion
CIPO is a serious digestive disease characterized by disturbance of intestinal propulsive
motility, which results in clinical features mimicking mechanical obstruction, in the absence of
any mechanical occlusion [1-5]. Long-term outcomes are generally poor with disabling and
potentially life-threatening complications developing at a high frequency over time [9]. The
diagnosis for CIPO is difficult and often delayed owing to the lack of biological markers and the
symptomatic overlap with several other forms of digestive syndromes associated with similar
gut motor dysfunction, but different natural histories. The delay for correct diagnosis leads to
repeated, useless and potentially dangerous surgical procedures.
Whole-gut transit scintigraphy and antroduodenal manometry are often performed in Western
countries to evaluate gastrointestinal motility disorders [2]. In 1999, Di Lorenzo C proposed an
algorithm for the evaluation of patients presenting with signs and symptoms suggestive of
pseudo-obstruction [10]. According to this algorithm, diagnosis of CIPO needs exclusion of
mechanical obstruction by an abdominal x-ray series and/or contrast x-rays in patients with
chronic signs and symptoms of bowel obstruction, and also exclusion of potential underlying
causes of pseudo-obstruction. Manometory, scintigraphy and exploratory surgery with
full-thickness biopsy are not absolutely necessary for the diagnosis, but may help confirm the
diagnosis. On the other hand, Brian E. Lacy have proposed yet another diagnostic algorithm
[11]. For the diagnosis of CIPO, patients should have had symptoms for at least 6 months, and a
stepwise approach is used to make the diagnosis of CIPO, generally including laboratory studies,
radiological studies to exclude mechanical obstruction, tests to measure the gastrointestinal
transit time, and if necessary, specialized tests of gastrointestinal motility, such as esophageal
and antroduodenal manometry. In summary, previous algorithms emphasize that the diagnosis
for CIPO requires at least chronic symptoms of bowel obstruction and exclusion of mechanical
obstruction, and if necessary, manometry, scintigraphy, etc. to confirm the diagnosis.
On the other hand, full-thickness biopsy of the small bowel should be performed in all patients
with severe dysmotility of unknown etiology who are scheduled to undergo surgery for any
reason, because of its potential to elucidate the pathophysiology of CIPO. Adoption of this
procedure has revealed that neurogenic CIPO can be classified into two major forms, including
degenerative neuropathy with hypoganglionosis, characterized by evidence of damage and/or
marked reduction of the ganglion cells in the intestinal wall and inflammatory neuropathy
characterized by myenteric infiltration by inflammatory cells, and that myogenic CIPO is
− 110 −
characterized by fibrosis or vacuolization of the inner circular muscle and/or longitudinal
muscle of the intestine [12-14]. Although full-thickness biopsy may not be absolutely necessary
for the diagnosis, it is an important procedure that helps to confirm the diagnosis of CIPO.
As mentioned above, gastrointestinal motility function tests, including whole gut transit
scintigraphy and manometry, and exploratory surgery with full-thickness biopsy of the small
bowel are important; however invasive in terms of tolerability in patients. This is the reason
why we were prompted to develop diagnostic criteria that would not necessitate the use of these
special examinations.
Although a few diagnostic algorithms have been reported, no clear diagnostic criteria for
CIPO have been established anywhere in the world. Iida et al. revealed that it took an average
over 7 years from the initial symptoms before a correct diagnosis of CIPO could be established,
and therefore emphasized the importance of a greater degree of awareness about this disease
among physicians and the necessity of the establishment of diagnostic criteria in order to
shorten the period from the initial symptoms to correct diagnosis [8]. Therefore, Hongo et al.,
who were co-researchers of the Survey Group, drafted interim diagnostic criteria based on
reference to several textbooks and case reports. In addition, they discussed the usefulness of the
interim diagnostic criteria with other collaborators specialized in gastrointestinal motility
disorders, soliciting their opinions by e-mail, and laid down the proposed diagnostic criteria as
shown in Table 1. In this study, we investigated the clinical features of 160 patients and
examined the validity of the proposed diagnostic criteria by calculating their diagnostic
sensitivity in these patients. All the registered patients were diagnosed as CIPO based on the
findings on plain abdominal X-ray, CT imaging, gastrointestinal endoscopy, and where
necessary, barium enema and small-bowel follow-through. None of the patients underwent
manometry, scintigraphy or exploratory surgery with full-thickness biopsy. Of the 160 patients,
138 patients fulfilled all the diagnostic criteria, and the sensitivity of the proposed criteria for
the diagnosis of CIPO in Japanese patients was 86.3%. If the criteria included only ‘No
evidence of structural disease’ (criterion 4) and ‘Showing at least one of abdominal pain and
abdominal bloating in the previous 12 weeks’ (criterion 2), they would have shown higher
sensitivity, but lower specificity, because patients with chronic constipation might be included
as false-positives. However, most of these false-positives could be excluded based on criterion-1
of ‘Onset of one or more symptoms of bowel obstruction at least 6 months prior to the
diagnosis’ and criterion-3 of ‘Dilatation and/or air-fluid levels of the bowels on plain abdominal
X-ray, echo and/or CT images’.
The recognition rate of CIPO is not more than 92%, even in specialized gastroenterology
institutes in Japan, which is not optimal. There seems to be an even poorer recognition rate
among physicians and surgeons who are not specialized in gastroenterology. The recognition
− 111 −
rate of CIPO in foreign countries also does not seem to be too satisfactory, given that no
large-scale epidemiological studies have been reported and no clear diagnostic criteria for CIPO
have been established. A greater awareness of the clinical features of CIPO among physicians
would help limit unnecessary surgical procedures to the minimum.
Both the proposed diagnostic criteria and previously described diagnostic algorithms have their
own advantages and limitations. Previously described diagnostic algorithms are superior in
terms of their allowing systematic differential diagnosis; however, they are difficult to use for
general physicians, and need specialized invasive examinations. On the other hand, the
proposed diagnostic criteria are superior to the previously described algorithms in terms of their
ease of use for the diagnosis of CIPO by the general physician without specific examinations,
and also their ease of use in clinical practice; however, inferior to the previously described
algorithms in that they do not provide a stepwise diagnostic approach or systematic differential
diagnosis. New diagnostic algorithms are needed that can complement the shortcomings of the
proposed diagnostic criteria and can be used in combination with them.
The main limitation of this study is the lack of a previous gold standard with which to compare
the results, and the lack of assessment of fulfillment of the criteria among other gastrointestinal
motility disorders. The most important aim of establishing the diagnostic criteria is to shorten
the interval from the initial symptoms to correct diagnosis and referral to a specialist, and to
minimize the performance rate of unnecessary surgical procedures. Improved recognition of
CIPO and practical use of the diagnostic criteria are urgently desired. In addition, further
investigation is required to determine whether or not the proposed diagnostic criteria might also
show a high sensitivity for patients in other countries. The proposed diagnostic criteria should
be appropriately modified by consultation with many researchers to make them more practical
and internationally applicable.
Acknowledgement
This work was supported in part by Health and Labour Sciences Research Grants for Research
on Intractable Diseases from Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan to A.N.
Conflicts of Interest
None
References
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− 113 −
Figure legends
Figure 1 Abdominal radiograph: marked distention of the intestine filled with a large amount of
intestinal gas.
Figure 2 Abdominal CT: markedly dilated intestinal loops and multiple air-fluid levels are
observed. Small intestinal gas occupies the greater part of the abdomen.
− 114 −
Table 1.
Diagnostic criteria for CIPO proposed by the Research Group of the Ministry of
Health, Labour and Welfare
Definition of chronic intestinal pseudo-obstruction (CIPO)
Chronic bowel obstruction not explained by structural abnormalities
Criteria for chronic intestinal pseudo-obstruction (CIPO)
Must include all of the following four points:
1. Onset of one or more symptoms of bowel obstruction* at least 6 months prior to the diagnosis
AND
2.
One or both of the following for the previous 12 weeks
a. Abdominal bloating
b. Abdominal pain
AND
3.
Dilatation and/or air-fluid level of the intestine on abdominal X-ray, echo and/or CT imaging
AND
4.
No evidence of structural disease (including by upper and lower gastrointestinal endoscopy,
computed tomography, barium enema, and small-bowel follow-through) that could explain the
dilatation and/or air-fluid level of the intestine
* Symptoms of bowel obstruction include: abdominal pain, nausea, vomiting, abdominal
bloating, abdominal fullness, lack of gas and/or passing gas
Important Notice
1. Congenital and/or onset under 15 years old must be excluded. Only adult onset is included
2. Surgical history, except surgery for CIPO, within the 6 months prior to the diagnosis must be
excluded to rule out Ogilvie syndrome
3. To define CIPO at two levels: primary CIPO or secondary CIPO. Primary CIPO consists of
three types: the myogenic type, neurogenic type and idiopathic type. Secondary CIPO
consists of two types: the systemic sclerosis (SSc) type and unclassified type
4. Family accumulation may exist
5. Neuropathy such as problems with urination may exist
6. Some psychosocial disorder may be present
− 115 −
Table 2.
I.
Patient questionnaire sent to 378 institutions belonging to the JSGE
Patient information
Sex :
Male
Age (y. o) :
II.
-14
15-19
20-29
Female
30-39
40-49
50-59
60-69
70-79
80-
Clinical presentations at the first hospital visit
Abdominal pain
for the previous 12 weeks :
Yes
No
Yes
No
Yes
No
Yes
No
More than 6 months
Within 6 months
Primary
Secondary
Secondary to SSc
Secondary to others
Vomiting
for the previous 12 weeks :
Abdominal bloating
for the previous 12 weeks :
Dilatation of the bowels on
Radiological Imagings :
Disease duration :
Type of CIPO :
If secondary CIPO :
III.
Treatment
Selected method of treatment :
Diet
Medication
Mosapride
Erythromy
Medication drugs :
Domperid
Daikenchuto**
Multiple answers allowed
Polymixin
Pantothenic
H2RA
No treatment
Metocloprami
Itoprid
Other laxatives
PPI
Others
Somatostatin
Probiotics
Magnesium
Dimethico
Surgery
Kanamy
Sulpiride
Metronidaz
Calcium polycarbophil
Loperamide
Albumin tannate
Mucosal protective drugs
Note: * Mosapride is the 5-HT4 receptor agonist. ** Daikenchuto is the Herbal medicine.
− 116 −
Table 3.
Disease type of a total of 160 CIPO cases
Classification of CIPO
Case (%)
1) Primary CIPO
117 (73.1)
2) Secondary CIPO
41 (25.6)
a) SSc
23 (56.1)
b) Non-SSc
18 (43.9)
DM
4 (9.8)
MCTD
3 (7.3)
SjS
1 (2.4)
Amyloidosis
2 (4.9)
Others
8(19.5)
3) Unknown
Note:
2 (1.3)
SSc; Systemic sclerosis, DM; Dermatomyositis,
MCTD; Mixed-connective tissue disease, SjS; Sjögren syndrome
Table 4.
Clinical presentations at the first hospital visit [n=160]
Clinical presentations
Clinical symptoms
Cases (%)
Yes
No
Unknown
Abdominal pain
107 (66.9)
53 (33.1)
0 (0)
Vomiting
81 (50.6)
79 (49.4)
0 (0)
Abdominal bloating
156 (97.5)
4 (2.5)
0 (0)
Abdominal pain and/or bloating
157 (98.1)
3 (1.9)
0 (0)
Radiological imaging findings
Yes
No
Unknown
Dilatation and/or air-fluid level of the bowel
154 (96.2)
3 (1.9)
3 (1.9)
More than 6 months
Within 6 months
Unknown
141 (88.1)
16 (10.0)
3 (1.9)
Disease duration
The number (%) of the CIPO cases that fulfilled all the diagnostic criteria, including abdominal pain
and/or bloating, and dilatation and/or air-fluid level of the bowel, and disease duration of more than
6 months, was 138 (86.3).
− 117 −
Table 5.
Selected method of treatment [n=160]
Treatment
Cases (%)
Medication
135 (84.4)
Diet
107 (67.1)
Surgery
36 (22.5)
Others
46 (28.8)
Home parenteral nutrition
33 (20.6)
Endoscopic decompression
4 (2.5)
Ileus tube placement
2 (1.3)
Enema
1 (0.6)
No treatment
1 (0.6)
Table 6.
Medication drugs used for treatment [n=160]
Drugs
Case (%)
Drugs
Case (%)
Mosapride citrate*
101 (57.4)
Metronidazole
18 (10.1)
Daikenchuto**
83 (51.1)
Itopride
16 (9.0)
Magnesium oxide
69 (43.1)
Dimethicone
12 (7.4)
Probiotics
62 (42.0)
Calcium polycarbophil
11 (6.9)
Erythromycin
41 (26.6)
Kanamycin
10 (5.9)
Proton pump inhibitor (PPI)
45 (24.7)
Somatostatin analogue
7 (4.3)
Pantothenic acid
36 (23.9)
Loperamide
5 (2.7)
Metoclopramide
34 (23.4)
Sulpiride
5 (2.7)
Mucosal protective drugs
23 (12.3)
Polymixin B
3 (2.7)
Domperidone
20 (11.2)
Albumin tannate
3 (1.6)
H2 receptor antagonist (H2RA)
19 (11.2)
Other laxatives
Note: * Mosapride is the 5-HT4 receptor agonist. ** Daikenc
− 118 −
45 (25.0)
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究
分担研究報告書
9. 慢性特発性偽性腸閉塞症の適切な治療指針の検討
分担研究者
稲森
正彦 (横浜市立大学附属病院臨床研修センター 講師)
研究要旨:これまで本疾患の治療法に関しては対症療法が中心に行われてきたが、その治
療指針に関する十分な検討はなされていない。今回、我々は国内外での現状から、現在選
択される内科的、外科的治療の現況把握と、段階的な治療指針の作成を行った。
剤性などは原疾患の治療や原因薬物の中止
A.はじめに
慢性偽性腸閉塞症は、器質的な閉塞起点
によって症状改善が期待できる群である。
を認めないにも関わらず、消化管内容の通
ただし、多くの慢性偽性腸閉塞症患者は治
過障害を認める疾患群であり、再発緩寛を
療可能な基礎疾患を持たないのが現状であ
繰り返しつつ、長い期間をかけて進行性に
る。
QOL の低下を引き起こすことを特徴とする。
その原因により特発性と、強皮症、糖尿病
第二段階
や薬剤性などの続発性に分類されるが、慢
以前に本邦で唯一偽性腸閉塞の適応症が
性偽性腸閉塞症は異なる疾患群の総称であ
あったシサプリドであるが、現在は販売中
ることからも、これまで国内外で診断基準
止になっている。従って、現状では患者の
が確立しておらず、治療法についても十分
症状に応じて便秘症あるいは下痢症として
な検討がなされていなかった。
の一般的な治療を行うことが第一段階とな
る。
具体的には
B.治療指針
下剤としてのマグネシウム製剤
腸内細菌のコントロール目的の乳酸菌製剤
治療第一段階
慢性偽性腸閉塞症の診断がなされた場合、
などが選択される。
当該患者の併存疾患や投薬歴などから、特
発性か続発性かを判断する。続発性慢性偽
第三段階
性腸閉塞の内、原疾患の治療への対応で偽
上記の基礎治療に反応がない場合、消化
性腸閉塞症状の改善が期待できる者は、そ
器疾患の診療経験の豊富な専門医への転送
の治療を最優先とする。具体的には、糖尿
あるいは相談が望ましい。第二段階で使用
病、甲状腺機能低下症や一部のアミロイド
された薬剤に加えて、症状に応じて下記薬
ーシス、感染症や腫瘍に併発したもの、薬
剤の併用が行われる。
− 119 −
各種緩下剤
上記治療に抵抗性を示す場合、病変が範囲
ジメチコン
により、外科的治療が検討される。病変が
消化管運動促進薬としてのモサプリド、大
広範囲におよぶ大腸小腸型の慢性偽性腸閉
建中湯、パントテン酸、メトクロピロミド、
塞では治療効果が乏しい例が多いが、大腸
イトプリド、スルピリド
限局型の慢性偽性腸閉塞症ではその原因疾
などが選択される
患によらず比較的良好な治療成績が報告さ
れており、外科的治療の適応となる。具体
的には、結腸切除術あるいはストマ造設術
が選択される。海外では腸管移植が最終的
第四段階
第二、第三段階の治療が奏功しない多くの
な治療法として報告されているが、合併症
場合、交代性の便秘下痢を認めるようにな
や長期予後の面から十分な治療効果が見込
る。この場合、薬剤コントロールに難渋す
まれるに至っていないのが現状である。
ることが多く、当該疾患の診療経験の豊富
な消化器病専門医への転送が望ましい。使
用される薬剤としては第二、第三段階の薬
C.おわりに
慢性特発性偽性腸閉塞の全国調査の結果
から、治療のアルゴリズムの素案につき提
剤に加えて
案を行った。疾患概念,診断基準の普及と
ポリカルボフィルカルシウム
共に,病型病期にあわせたこれらの治療の
止痢薬としてのタンニン酸アルブミン、ロ
今後の評価が必要であろう。
ペラミド
消化管運動促進薬としてのエリスロマイシ
D.参考文献
ン
1)Howard DM. Pseudo-obstruction. Bockus
などが選択される。
Gastroenterology
5th
edition
1995;
1249-1267.
第五段階
2)Dwight
これらの治療に抵抗性を示す場合、当該疾
Diagnosis
and
Management
患の診療経験の豊富な消化器病専門医の管
Patients
With
Chronic
理のもと、時に入院加療が必要となる。こ
Pseudoobstruction.
れまでの薬剤に加えて
2006; 21:16-22.
HS,
Steven
PH,
Nutr
John
of
MW.
Adult
Intestinal
Clin
Pract.
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腸内細菌のコントロール目的にポリミキシ
pseudo-obstructive
ン B、メトロニダゾール、カナマイシン
Gastroenterol 1986; 15:745-762.
ソマトスタチンアナログ製剤
4)Giorgio RD, Sarnelli G, Stanghellini V,
低残渣の経腸栄養剤
et al. Advances in our understanding of
などが使用される。
the pathology of chronic intestinal
− 120 −
syndrome.
Clin
pseudo-obstruction.
Gut
2004;
Gastroenterology.2006;130:S29-S36
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5)Stanghellini
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pseudo-obstruction:
natural
Management.
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manifestations,
and
management.
Neurogastroenterol
Motil.
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6)Connor FL, Lorenzo CD. Chronic
E.健康危険情報
なし
F.研究発表
1. 論文発表
なし
2. 学会発表
なし
intestinal
Pseudo-obstruction:Assessment and
− 121 −
− 122 −
III. 研究成果に関する刊行一覧表
研究成果に関する刊行一覧表
雑誌
執筆者氏名
論文題名
雑誌名
巻
ページ
(号)
出版年
Iida H, Kato S, Sekino Y,
Sakai E, Uchiyama T, Endo
H, Hosono K, Sakamoto Y,
Fujita K, Yoneda M, Koide
T, Takahashi H, Tokoro C,
Goto A, Abe Y, Kobayashi
N, Kubota K, Gotoh E,
Maeda S, Nakajima A,
Inamori M.
Early effects of oral
administration of
omeprazole and roxatidine
on the intragastric pH.
JZUSB
Sakamoto Y, Sekino Y,
Yamada E, Higurashi T,
Ohkubo H, Sakai E, Endo
H, Iida H, Nonaka T,
Fujita K, Yoneda M, Koide
T, Takahashi H, Goto A,
Abe Y, Gotoh E, Maeda S,
Nakajima A, Inamori M.
Effect of sumatriptan on
gastric emptying: a
crossover study using
BreathID system.
World J
in
Gastroe
press.
nterol.
2012
Suzuki K, Uchiyama S,
Imajyo K, Tomeno W, Sakai
E, Yamada E, Tanida E,
Akiyama T, Watanabe S,
Risk factors for colonic
Digesti in
Endo H, Fujita K, Yoneda
diverticular hemorrhage:
on.
press.
M, Takahashi H, Koide T,
Japanese multicenter study.
Tokoro C, Abe Y,
Kawaguchi M, Gotoh E,
Maeda S, Nakajima A,
Inamori M.
2012
− 123 −
13(1)
29-34
2012
Masaki T, Sugihara K,
Nakajima A, Muto T
Nationwide survey on adult
type chronic intestinal
pseudo-obstruction in
surgical institutions in
Japan
Surg
Today
42(3)
264-71
2012
中島淳
便秘に伴う腹痛、腹部膨満感
と大健中湯
Modern
Vol.31
Physici
265
No.2
an
中島淳、坂本康成、飯田
洋、関野雄典、稲森正彦
なぜ胃や腸は痛くなるのか?
(機能性消化管疾患の各論)
6.Pseudo-obstruction
Modern
Vol.31
Physici
331-335 2011
No.3
an
中島淳
私はこう治療する 今月の
テーマ『外来で遭遇する慢性
下痢患者の診断と治療』
診断と vol.99 1076治療
no.6
1079
2011
稲森正彦、中島淳
FD-六君子湯 明日の診療に漢
方をいかす-西洋医学と漢方
第99
診断と
765-
医学の融合 Ⅰ.日常診療で
巻・第
治療
769
まず使ってみたい漢方ベスト
5号
チョイス15
2011
飯田洋、関野雄典、馬渡弘
典、野中敬、遠藤宏樹、稲
森正彦、中島淳
特集Ⅰ 小腸疾患の診断と治
療の進歩
消化器 53
p.7-11
内科
(1)
2011
中島淳、大久保秀則、飯田
洋、高橋宏和、稲森正彦
慢性犠牲腸閉塞症
消化器
Vol.9
医学
2011
− 124 −
15-27
2011
関野雄典、稲森正彦、飯田
洋、坂本康成、野中敬、児
矢野繁、中島淳
臨床研究 慢性犠牲腸閉塞症
患者におけるミトコンドリア
病診療の実態
2151(17
診断と Vol.99 5)2011
治療
No.12 2157(18
1)
Sakamoto Y, Kato S,
Sekino Y, Sakai E,
Uchiyama T, Iida H,
Hosono K, Endo H, Fujita
K, Koide T, Takahashi H,
Yoneda M, Tokoro C, Goto
A, Abe Y, Kobayashi N,
Kubota K, Maeda S,
Nakajima A, Inamori M.
Effects of domperidone on
gastric emptying: a
crossover study using a
continuous real-time 13C
breath test (BreathID
system).
Hepatog
astroen 58(106
637-41
terolog )
y
2011
Nonaka T, Kessoku T,
Ogawa Y, Imajyo K,
Yanagisawa S, Shiba T,
Sakaguchi T, Atsukawa K,
Takahashi H, Sekino Y,
Sakai E, Uchiyama T, Iida
H, Hosono K, Endo H,
Sakamoto Y, Koide T,
Takahashi H, Tokoro C,
Abe Y, Maeda S, Nakajima
A, Inamori M.
Does postprandial itopride
intake affect gastric
emptying?: a crossover
study using the continuous
real time 13C breath test
(BreathID system).
Hepatog
astroen 58(105
224-8
terolog )
y
2011
Sakamoto Y, Kato S,
Sekino Y, Sakai E,
Uchiyama T, Iida H,
Hosono K, Endo H, Fujita
K, Koide T, Takahashi H,
Yoneda M, Tokoro C, Goto
A, Abe Y, Kobayashi N,
Kubota K, Maeda S,
Nakajima A, Inamori M
(Corresponding author).
Change of gastric emptying
with chewing gum:
evaluation using a
continuous real-time 13C
breath test (BreathID
system).
Journal
of
Neuroga
stroent
17(2)
rology
and
Motilit
y
174-9
2011
Nonaka T, Kessoku T,
Ogawa Y, Imajyo K,
Yanagisawa S, Shiba T,
Sakaguchi T, Atsukawa K,
Takahashi H, Sekino Y,
Sakai E, Uchiyama T,
Iida H, Hosono K, Endo H,
Sakamoto Y, Fujita K,
Yoneda M, Koide T,
Takahashi H, Tokoro C,
Abe Y, Maeda S, Nakajima
A, Inamori M.
Effects of histamine H2
receptor antagonists and
proton pump inhibitors on
the rate of gastric
emptying: a crossover study
using a continuous realtime 13C breath test
(BreathID system).
Journal
of
Neuroga
stroent
17(3)
rology
and
Motilit
y
287-293 2011
− 125 −
Iida H, Endo H, Sekino Y,
Sakai E, Uchiyama T,
Hosono K, Nonaka T,
Sakamoto Y, Fujita K,
Yoneda M, Koide T,
Takahashi H, Tokoro C,
Goto A, Abe Y, Gotoh E,
Maeda S, Nakajima A,
Inamori M (Corresponding
A new noninvasive modality
for recording sequential
images and the pH of the
small bowel.
Hepatog
astroen 59(114
10
terolog )
y
Sakamoto Y, Sekino Y,
Yamada E, Ohkubo H,
Higurashi T, Sakai E,
Iida H, Hosono K, Endo H,
Nonaka T, Ikeda T, Fujita
K, Yoneda M, Koide T,
Takahashi H, Goto A, Abe
Y, Gotoh E, Maeda S,
Nakajima A, Inamori M.
Mosapride accelerates the
delayed gastric emptying of
high-viscosity liquids: a
crossover study using
continuous real-time 13C
breath test (BreathID
system).
J
Neuroga
stroent 17(4)
erol
Motil
A review of the reported
Iida H, Inamori M, Sekino
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Clin J
Y, Sakamoto Y, Yamato S,
pseudo-obstruction in Japan
Gastroe 4
Nakajima A,
and an investigation of
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Sherriff-Tadano R,
Matsuura E, Takashima T,
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ORIGINAL ARTICLE
Nationwide survey on adult type chronic intestinal
pseudo-obstruction in surgical institutions in Japan
Tadahiko Masaki • Kenichi Sugihara •
Atsushi Nakajima • Tetsuichiro Muto
Received: 7 April 2011 / Accepted: 20 May 2011 / Published online: 12 January 2012
Ó Springer 2012
Abstract
Background No appropriate management of chronic
intestinal pseudo-obstruction (CIP) has been established.
Patients and methods The clinicopathological parameters
of 103 cases collected by a nationwide questionnaire study
were reviewed.
Results The CIP cases were primary in 86 (83%) cases and
secondary in 15 (15%) cases. The age of onset of the primary
type was significantly younger than that of the secondary type
(p = 0.011). The diseased segments of the bowel were the
large bowel in 60 (58%), the small bowel in 17 (17%), and
both in 23 (22%) cases, respectively. Abdominal distension
and pain were common symptoms regardless of the types of
the diseased bowel; however, constipation was frequently
Presented at the Japan Digestive Week 2010, The 52nd Annual
Autumn Meeting of the Japanese Society of Gastroenterology in
Yokohama, Japan (October 13th to 16th, 2010).
T. Masaki (&)
Department of Surgery, Kyorin University, 6-20-2 Shinkawa,
Mitaka City, Tokyo 181-8611, Japan
e-mail: [email protected]
K. Sugihara
Department of Surgical Oncology, Tokyo Medical and Dental
University, 1-5-45 Yushima, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8519,
Japan
e-mail: [email protected]
A. Nakajima
Department of Gastroenterology, Yokohama City University,
3-9 Fukuura, Kanazawa-ku, Yokohama 236-0004, Japan
e-mail: [email protected]
T. Muto
Cancer Institute Hospital (Ariake), 3-10-6 Ariake,
Koto-ku, Tokyo 135-8550, Japan
e-mail: [email protected]
123
seen in the large bowel type (p = 0.0258). Vomiting and
diarrhea were seen with marginally higher frequency in the
small bowel type (p = 0.0569, 0.0642). Surgical treatment
was most effective in the large bowel type, less effective in
the small bowel type, and least effective in the large and small
bowel type. The prognosis of the primary CIP was significantly better than that of the secondary CIP (p = 0.033).
Conclusions The segments of the diseased bowels should
be considered in determining the indications for surgical
treatments in CIP patients.
Keywords Chronic intestinal pseudo-obstruction Surgical treatment Total colectomy
Introduction
Chronic intestinal pseudo-obstruction (CIP) is a rare, but a
disabling disease that significantly affects patients’ quality of
life [1]. Abdominal pain and distension are common symptoms, and nausea, vomiting, constipation, and diarrhea are
also seen with various frequencies. The etiology and cause of
CIP is not clarified, and no appropriate management strategy
has been established [1]. The idiopathic type CIP (CIIP) is
noted in most pediatric cases and small bowel transplantation
has been attempted recently in Western countries [2]. However, adult type CIP has not been extensively studied.
Therefore, a nationwide survey was conducted to evaluate the
clinicopathological characteristics of adult type CIP in Japan.
Patients and methods
A questionnaire form was sent to 421 qualified colorectal
surgeons belonging to Japan Society of Coloproctology
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265
(JSCP) in December, 2009. The details of the questionnaire
are shown in Fig. 1.
The study concept was approved by the institutional
ethical committee in Yokohama City University, to which
one of the co-authors (A.N.), who received the intractable
disease research program grant from the Ministry of
Health, Labour and Welfare of Japan, belonged.
Two hundred four (48%) surgeons responded by June,
2010, and 166 (81%) of them recognized CIP. One hundred
three cases were collected from 57 surgeons (28% of
responders). The number of cases was one in 37, two in 10,
three in 3, four in 4, five in 2, and ten in 1 institution. CIP was
defined according to the criteria shown in Table 1. Gender,
age of onset, type of CIP (primary or secondary), segments of
the diseased bowels (small intestine, large intestine, or both),
the treatments before and after consultation at each institution, symptoms at consultation, the effects of surgical treatment, pathological findings in the resected specimens
(neurogenic or myogenic abnormalities), and the patient’s
prognosis were reviewed. The clinical and pathological
parameters were compared with reference to the type of CIP
and the classification of the diseased bowel.
Statistical analysis
The Chi-squared test was used for comparing the distribution of categorical data, and Student’s t test was used for
continuous variables. The PASW Statistics 18 software
package (SPSS, Chicago, IL) was used for these analyses,
and p values \0.05 were considered to be statistically
significant.
Quantification theory section 3 (Hayashi’s quantification methods) was used to show the associations among the
categorical data in the questionnaire. The categorical data
were scored and plotted on a 2-dimensional scattered graph
using the Excel Questionnaire software package, Taiko
Ver.4.05 (ESUMI Co., Ltd., Tokyo, Japan) to visualize the
associations between various categories. Categories were
assumed to be likely to coexist when the plots of the categories were located in the same area. The survival time
was calculated from the age of onset until the age of the
last follow-up or death of any cause. The survival curves
were plotted using the Kaplan–Meier method, and the
survival rates were compared using the log-rank test.
Results
Demographic parameters
Fig. 1 Details of the questionnaire
The types of adult CIP were primary in 86 (83%) cases and
secondary in 15 (15%) cases. The causes of the secondary
123
266
Surg Today (2012) 42:264–271
Table 1 Definitions of CIP
Clinical presentations:
1. More than 6 months’ duration of obstructing symptoms of the gut
2. At least 3 months’ duration of abdominal pain and distension
Radiological findings:
1. Bowel dilatation or air-fluid levels shown by abdominal X-ray, ultrasonography, or computed tomography
2. Absence of any lesions occluding the gut shown by contrast radiography, endoscopy, or computed tomography
Additional findings:
1. Age of onset C15-year old (congenital cases should be excluded)
2. Acute intestinal pseudo-obstruction (Ogilvie syndrome) should be excluded
3. Classified into primary and secondary cases. Primary cases are classified into neurogenic, myogenic and idiopathic types. Secondary cases
are classified into systemic sclerosis (SSc) associated and non-SSc associated types
4. Presence of familial occurrence is not mandatory
5. Obstructing symptoms indicate abdominal pain, distension, nausea, vomiting, constipation, or cessation of flatus
6. Neurogenic disorders such as dysuria, or psychiatric disorders may accompany in some cases
cases were systemic sclerosis (SSc) in 3 cases and others
(non-SSc) such as amyloidosis, diabetes mellitus, or Parkinson disease in 8 cases. The age of onset of the primary
type was significantly younger than that of the secondary
type (p = 0.011), and among the secondary type the age of
SSc cases was younger than that of non-SSc cases. The
diseased segments of the bowel were the large bowel
(the large bowel type) in 60 (58%) cases, the small bowel
(the small bowel type) in 17 (17%) cases, and both (the
large and small bowel type) in 23 (22%) cases. The age of
onset was not significantly different among the types of the
diseased bowels (Table 2).
Figure 2 shows the associations between symptoms at
consultation and the types of the diseased bowels in the
primary CIP cases. Abdominal distension and pain were
common symptoms regardless of the types of the diseased
bowels; however, constipation was frequently seen in the
large bowel type (p = 0.0258). Vomiting and diarrhea
were seen with marginally higher frequency when the
small bowel was involved (p = 0.0569, 0.0642).
Figure 3 shows the scatter graph of each category
among the types of the diseased segments and symptoms at
consultation. Categories are likely to coexist when the plots
of the categories are located in the same area. Nausea and
vomiting tended to occur simultaneously. Furthermore,
abdominal pain, distension and constipation tended to
occur simultaneously. There was also a close association
between constipation and the large bowel type.
Treatments
The treatments before and after consultation were shown in
Table 3.
Most were treated with medication therapy, but psychotherapy was rarely done before and after consultation.
Surgical treatment was done in about two-thirds of cases
123
Table 2 Demographic parameters
Gender
Men
46 (45%)
Women
56 (54%)
Unknown
1 (1%)
Type
Primary
86 (83%)
Secondary
15 (15%)
SSc
3 (20%)
non-SSc
8 (53%)
Diseased segment
Large bowel
60 (58%)
Small bowel
17 (17%)
Both
23 (22%)
Unknown
3 (3%)
Age of onset (years)
Type
Primary
43 ± 3
Secondary
60 ± 5
p = 0.011
Diseased segment (years)
Large bowel
50 ± 3
Small bowel
41 ± 5
Both
42 ± 5
NS
after consultation in this series. The details of surgical
treatment are summarized in Table 4. Total colectomy was
the procedure of choice for the large bowel type. Figure 4
shows the efficacy of surgical treatment according to the
classification of the diseased bowels. Surgical treatment
was most effective in the large bowel type, less effective in
the small bowel type, and least effective in the large and
small bowel type.
Thirty-two of 86 primary CIP cases involved the small
intestine. These cases were assumed to be chronic idiopathic
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267
Fig. 2 Symptoms at consultation in the primary CIP cases L-type, the large bowel type; S-type, the small bowel type; L ? S-type, the large and
small bowel type
Fig. 3 Symptoms at
consultation and the types of the
diseased bowel L-type, the large
bowel type; S-type, the small
bowel type; L ? S-type, the
large and small bowel type
123
268
Surg Today (2012) 42:264–271
Before consultation
After consultation
Yes
22 (21%)
35 (34%)
No
56 (54%)
55 (53%)
Unknown
25 (24%)
13 (13%)
intestinal pseudo-obstruction (CIIP). Twenty-one of these
cases underwent surgical procedures either before or after
consultation. Table 5 shows the associations between the
surgical procedures performed and their effectiveness for
symptomatic relief. Gastrostomy or enterostomy effectively
relieved symptoms, while resection (partial or massive) or
colostomy was not effective.
Yes
64 (62%)
82 (80%)
Pathological abnormalities
No
17 (17%)
14 (14%)
Unknown
21 (21%)
6 (6%)
Table 3 Details of treatments
Diet therapy
Medication therapy
Figure 5 shows pathological abnormalities with reference
to the types of diseased bowels in primary CIP. The frequency of neurogenic abnormalities was less in the small
bowel type than in the other types, but there were no statistically significant differences. Myogenic abnormalities
were rarely seen in the large bowel type, but there were no
statistically significant differences among the types of CIP.
Psychotherapy
Yes
4 (4%)
5 (5%)
80 (79%)
17 (17%)
94 (93%)
2 (2%)
Yes
22 (21%)
67 (65%)
No
76 (74%)
35 (34%)
5 (5%)
1 (1%)
No
Unknown
Surgical therapy
Unknown
Prognosis
Table 4 Surgical procedures after consultation
Total colectomy
23
Sigmoidectomy
8
Hartmann
3
Left colectomy
8
Ileocecal resection
2
Fecal diversion only
9
Partial resection of the small bowel
3
Massive resection of the small bowel
Sphincterotomy
3
3
Adhesiolysis
2
Probe laparotomy
Total
1
65
Fig. 4 Effectiveness of surgical treatment and the types of the
diseased bowel L-type, the large bowel type; S-type, the small bowel
type; L ? S-type, the large and small bowel type
123
With a mean elapsed time after disease onset until last
follow-up or death at 47 years in the primary type and
15 years in the secondary type, the prognosis of the primary CIP was significantly better than that in the secondary
CIP (Fig. 6). The causes of death were postoperative
complications, chronic heart failure, and liver failure in one
case each, and pneumonia in 2 cases in the primary CIP,
while amyloidosis in 2, non-SSc collagen disease and
sepsis in one case each in the secondary CIP.
Discussion
Chronic idiopathic intestinal pseudo-obstruction is a rare,
but a disabling disorder, and the clinicopathological characteristics and optimal management are poorly understood.
Adult CIP patients typically pass unrecognized for long
periods of time before a correct diagnosis is obtained [1].
This was the first nationwide survey on adult CIP.
Although JSCP qualified colorectal surgeons noticed the
profile of CIP, the number of CIP cases collected was still
limited. The precise incidence or prevalence of CIP in the
Japanese population was not elucidated because this was a
questionnaire study. Further epidemiological study will be
needed to clarify these details.
The diseased bowel segments were not clearly specified
in most of the previous publications on CIP [1, 3–5]. A few
other reports included the presence of dilated small bowel
in the inclusion criteria of CIP [2, 6]. Therefore, no consensus has been reached on this issue. This study did not
specify the segments of dilated bowel, and 60 cases of the
large bowel type CIP were collected. There might be some
arguments that the large bowel type should be diagnosed as
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Table 5 Surgical procedures
and effectiveness in probable
CIIP cases
269
Procedures
Before consultation
After consultation
Effectiveness
Yes
Gastrostomy ? Appendicostomy
1
1
Enterostomy
2
1
Enterostomy ? Cecostomy
1
1
Colostomy
1
No
Unknown
1
1
Partial resection
Small bowel
2
Small and large bowel
2
2
2
Large bowel
3
2
Unknown
1
1
1
Massive resection
Small bowel
Small and large bowel
1
Large bowel
1
Bypass
1
Probe laparotomy
1
Internal sphincterotomy
CIIP Chronic idiopathic
intestinal pseudo-obstruction
Unknown
1
1
1
5
6
1
1
1
2
1
2
Fig. 6 Prognosis and the types of CIP
Fig. 5 Pathological findings and the types of the diseased bowel
L-type, the large bowel type; S-type, the small bowel type; L ? Stype, the large and small bowel type
idiopathic megacolon or chronic constipation with colonic
dilatation; however, the diagnostic criteria of these entities
per se have not been determined yet [7, 8]. More comprehensive discussion will be needed to clarify this issue.
This study suggested that there are three clusters of
symptoms in CIP. The first is abdominal pain, distension,
and constipation. Constipation is closely associated with
the large bowel type CIP. The second cluster is nausea and
vomiting, which may be associated with the small bowel
type CIP. This association has been reported [1]. The third
123
270
symptom is diarrhea, which may be associated with the
large and small bowel type CIP (extensive type CIP).
Diarrhea is often secondary to small bowel bacterial
overgrowth, and can be corrected by antibiotics [1, 2].
The histopathological features of CIP are categorized
into neuropathic, mesenchymopathic, and myopathic forms
based on abnormalities of the enteric nervous system,
interstitial cells of Cajal (ICC), and smooth muscle cells,
respectively. These abnormalities may cause gut dysmotility either individually or in combination [3]. The distribution of each histopathological abnormality in CIP
patients has not been clarified yet. The overall frequencies
of neurogenic and myogenic abnormalities were 39 and 6%
in the primary CIP; however, no mesenchymopathic
abnormalities were described. The association of ICC and
gut dysmotility disorders is quite a new concept [9, 10],
thus this histopathological feature was not described in the
previous cases. A new immunohistochemical study is now
in progress in Japan to further investigate this concept.
Surgical treatment for CIP is controversial [4, 11, 12].
Surgical treatment was performed in about two-thirds of
patients after consultation in the current series. Although
this figure is comparable to those reported previously [5,
13], there may be a selection bias because the current
questionnaire study was conducted among colorectal surgeons. Notwithstanding, this study clearly showed that
surgical treatment was most effective in the large bowel
type CIP, less effective in the small bowel type CIP, and
least effective in the large and small bowel type CIP.
Furthermore, as shown in Table 5, resection or colostomy
was not effective, but gastrostomy or enterostomy was
effective in probable CIIP cases. Gastrostomies and
enterostomies can effectively decrease vomiting and
abdominal distension due to decompression of dilated
bowel loops. Enterostomies can also be useful for infusion
feeding. Bypass operations or resections may be beneficial
in rare cases with localized involvement of the gastrointestinal tract. However, those cases often turn out to be a
progressively diffuse disease after surgery. Therefore, the
benefit of surgical intervention is transient in most cases
[1]. The segment of diseased bowel should be taken into
account in determining the indications for surgical treatment in CIP patients.
The prognosis was significantly better in the primary
CIP than in the secondary CIP. Operation-related mortality
was seen in only one patient with the primary small and
large bowel type. Therefore, surgical procedures can be
performed safely in CIP patients if the surgical indication is
critically determined. Transplantation is attempted in
Western countries in CIP children when all other therapeutic interventions have failed [1, 2, 14–16]. The 1-yearpatient survival rates were greater than 80% after isolated
small bowel transplantation. However, the results were not
123
Surg Today (2012) 42:264–271
satisfactory after multivisceral transplantation. Patients
who are stable on total parenteral nutrition (TPN) are best
managed without transplantation because the survival rates
are similar to those of post-transplantation [5]. None of the
adult CIP patients underwent transplantation in the current
series, and TPN was the treatment of choice in patients not
responding to other therapeutic options.
In conclusions, the correct diagnosis of the diseased
bowel segments is mandatory for accurate determination of
the indications for surgical treatment of CIP patients.
Acknowledgments All of the authors expressed sincere thanks to
Prof. Tatsuo Teramoto, President of the JSCP and all of the JSCP
colorectal surgeons for giving them a valuable chance to conduct this
study. Supported by an intractable disease research program grant
from the Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan.
Conflict of interest
All of the authors have no conflict of interest
Appendix
The following surgeons contributed to patient enrollment
in this study: Tomoo Shatari, MD (Japanese Red Cross
Mito Hospital); Nobumichi Takeuchi, MD (Ina Central
Hospital); Kazuhiro Sakamoto, MD (Juntendo University);
Masato Kusunoki, MD (Mie University); Kazutaka Narii,
MD (Saiseikai Yokohamashi Nanbu Hospital); Tetsuro
Higuchi, MD (Tokyo Medical and Dental University);
Kazuhiko Yoshimatsu, MD (Tokyo Women’s Medical
University Medical Center East); Norio Saito, MD
(National Cancer Center East); Tomohisa Furuhata MD
(Sapporo Medical University); Takanobu Sugase, MD
(Koga General Hospital); Kenji Nakagawa, MD (Nakagawa Geka-Ichoka Hospital); Kazuo Hase, MD (National
Defense Medical College); Masafumi Inomata, MD (Oita
University); Shodo Sakai, MD (Nozaki Tokushukai Hospital); Takayuki Ogino, MD and Hirofumi Ota, MD (Osaka
Saiseikai Senri Hospital); Yoshihisa Shibata, MD (Toyohashi Municipal Hospital); Shintaro Akamoto, MD
(Kagawa University); Toshimitsu Toyohara, MD (Fukunishikai Hospital); Kazuhiko Yoshioka, MD (Kansai Medical
University); Junichi Tanaka, MD (Showa University
Northern Yokohama Hospital); Hideo Watanabe, MD
(Watanabe Hospital); Tsuneo Iiai, MD (Niigata University); Isao Hirayama, MD (Saiseikai Maebashi Hospital);
Masaru Udagawa, MD (Toride Kyodo General Hospital);
Tetsuya Kobayashi, MD (Jikei University School of
Medicine); Kimiharu Mikami, MD (Fukuoka University
Chikushi Hospital); Hiroshi Iino, MD (Yamanashi University); Nagahide Matsubara, MD (Hyogo College of
Medicine); Yoshio Ushirokouji, MD (Tokyo Kyosai Hospital); Kazuhiro Toyoda, MD (Higashihiroshima Medical
Surg Today (2012) 42:264–271
Center); Masayuki Node, MD (Takaoka Municipal Hospital); Osamu Kimura, MD (Yonago Medical Center);
Kunio Takeuchi, MD (Tone Chuou Hospital); Riichiro
Nezu, MD (Osaka Rosai Hospital); Yasuyo Ishizaki, MD
(JA Onomichi General Hospital); Toshiharu Umemoto,
MD and Satoshi Arakawa, MD (Fujita Health University
Banbuntane Hotokukai Hospital); Seiichiro Shida, MD
(Shimada Hospital); Kiyoshi Maeda, MD (Osaka City
University); Mitsuyoshi Ota, MD (Yokohama City University); Heita Ozawa, MD (Kitasato University); Yasuhisa
Yokoyama, MD and Tadashi Yokoyama, MD (Yokoyama
Gastroenterogical Hospital); Hisanaga Horie, MD (Jichi
Medical University); Nobuhiro Nitori, MD (International
University of Health and Welfare Mita Hospital); Hidekazu
Oishi, MD (Ishinomaki Municipal Hospital); Hideki
Yamakoshi, MD (Kouhoku Koumon Clinic); Shoichi
Hazama, MD (Yamaguchi University); Hironori Samura,
MD (Ryukyu University); Fumio Tokumine, MD (Asato
Daicho-Koumon Clinic); Eisuke Kondo, MD (Japanese
Red Cross Narita Hospital); Michinaga Takahashi, MD
(South Miyagi Medical Center); Toru Kono, MD (Asahika
Medical University); Yoshihiko Takao, MD (Sanno
Hospital); Miyoji Wakabayashi, MD (Hokusoushiroi Hospital); Shusaku Yoshikawa, MD (Kenseikai Nara Dongo
Hospital); Chikashi Shibata, MD (Tohoku University)
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123
消化器医学 Vol. 9 2011
症状があり,その後出産や手術(腹部とは限ら
表 2 ない)などを契機に CIPO を発症することから,
あくまで個人的な推測ではあるが CIPO は遺伝
的に腸管運動,特に蠕動の低下などを背景に持
ち慢性に緩徐に進行する慢性疾患で,その初期
には長期にわたり慢性便秘を呈するが生体の代
償機構により日常生活上問題なく生活ができる
時期(ハネムーン期,asymptomatic period)を
経て,腸管に何らかのストレス負荷がかかるこ
とでその代償機構が破たんして症状が顕在化す
るものと考えられる。
ひとたび症状の顕在化
(=
CIPO 発症)が起こると,腸管の拡張などでさ
らに蠕動低下や,消化管輸送能力の低下という
悪循環に陥り疾患の進行とともに広範な消化管
に機能異常(特に消化吸収障害)
を起こすように
なるものと考えられる。ひとたび本疾患が発症
すると消化管内容物の輸送障害により,図 1 に
示すように障害消化管
(胃,小腸,大腸など)
に
より異なった症状や,障害を呈し重篤化してい
く。
Q 疫 学
医学中央雑誌で,
慢性,
偽性腸閉塞をキーワー
ドとして全年(1983 ∼ 2009 年)検索して 104 報,
121 例が得られた。得られた報告例を集計する
と以下のようになり,表 2 に示す。患者は 0(出
患者(n=121)
年齢:中央値(範囲)(歳)
性別:女性(%)
初発症状から診断までの期間:
中央値(範囲)(年)
症状
腹部膨満感(%)
嘔吐(%)
腹痛(%)
便秘(%)
下痢(%)
罹患部位
食道(%)
胃(%)
十二指腸(%)
小腸(%)
47(0 ∼ 84)
72(59.5)
2(0 ∼ 60)
90(81.0)
46(41.4)
38(34.2)
30(27.0)
29(26.1)
14(12.3)
13(11.5)
25(22.1)
75(66.3)
大腸(%)
直腸(%)
病因
61(53.9)
全身性硬化症(%)
ミトコンドリア脳筋症(%)
アミロイドーシス(%)
甲状腺機能低下症(%)
Von-Recklinghausen 病(%)
19(16.6)
筋強直性ジストロフィー(%)
2(1.7)
1(0.8)
6(5.2)
4(3.5)
3(2.6)
2(1.7)
められた。
1.厚労省研究班による本邦の内科系
調査
生直後)∼ 84 歳で,どの年齢層にも起こる。平
平成 21 年 12 月より平成 22 年 2 月にかけて日
均年齢は 43.6 歳,中央値は 47 歳であった。男
本消化器病学会に所属する 378 施設に対してア
性 49 人,女性 72 人と女性がやや多い傾向がみ
ンケートを送付し,まず本疾患に対する認知度
られた。家族歴がはっきりしているものは 5 例
ならびに症例経験の有無を調査し,経験を有
(4.2%)
であった。
する施設には症例調査票の記入を依頼した
(図
続発性の誘因のうち判明しているものとして
2)
。
は,全身性硬化症
(以下 SSc)が 19 例
(16.6%)と
アンケートを送付した 378 施設のうち,216
最も多く,ミトコンドリア脳筋症 6 例
(5.2%)
,
施設
(57%)
より回答を得た。
本疾患について
『認
アミロイドーシス 4 例
(3.5%)
,甲状腺機能低
知している』としたのは 200 施設
(92%)であり,
下 症 3 例(2.6 %)
,Von-Recklinghausen 病 2 例
そのうち 103 施設
(51%)が
『症例経験あり』と回
(1.7%),筋強直性ジストロフィー 2 例
(1.7%)
答した。
『認知していない』と回答した施設で
であった。合併症としては,巨大膀胱,神経因
『症例経験あり』とした施設はなかった。CIPO
性膀胱などの膀胱機能障害が 20 例
(17%)に認
を認知している 200 施設における経験症例数
17
消化器医学 Vol. 9 2011
表 3 平成 22 年度 慢性偽性腸閉塞の改定診断基準
(案)
疾患概念
消化管に器質的な狭窄・閉塞病変を認めないにもかかわらず腸管蠕動障害(腸管内容物の移送
障害)を認めるもので,慢性の経過を経るもの
診断基準
6 カ月以上前から腸閉塞症状があり,そのうち 12 週は腹部膨満を伴うこと
画像所見
1.腹部単純エックス線検査,超音波検査,CT で腸管拡張または鏡面像を認める
2.消化管エックス線造影検査,内視鏡検査,CT で器質的狭窄,あるいは閉塞が除外できる
付記所見
1.慢性の経過(6 カ月以上)で 15 歳以上の発症とする *先天性・小児は別途定める
2.薬物性,腹部術後によるものは除く
3.原発性と続発性に分け,原発性は病理学的に筋性,神経性,カハールの介在神経の異常
による間質性,混合型に分けられる。続発性は,全身性硬化症,パーキンソン症候群,
ミトコンドリア異常症,2型糖尿病などによるものがある
4.家族歴のあることがある
5.腸閉塞症状とは,腸管内容の通過障害に伴う腹痛(67%),悪心・嘔吐(51%),腹部膨満・
腹部膨隆(96%),排ガス・排便の減少を指す.食欲不振や体重減少,Bacteria overgrowth
による下痢・消化吸収障害などを認める
6.障害部位は小腸や大腸のみならず食道から直腸に至る全消化管に起こることが知られて
おり,同一患者で複数の障害部位を認めたり,障害部位の増大を認めたりすることがある。
また,神経障害(排尿障害など),および精神疾患を伴うことがある
らが,本邦,海外ともに確立された診断基準案
(98%)であった。画像所見では,181 例
(96%)
がないため,本邦や海外の症例報告と教科書を
の症例で拡張が認められ,診断基準案を満たし
参考に暫定の診断基準案を作成した。診断にあ
ていた。以上より中島班らの診断基準案を満た
たり特殊な検査を採用すると実地診療での有用
すものは 164 例であり,感度は 87.2%であった。
性が少なくなるので症状からアプローチするよ
うに配慮されている。またマノメトリーなどの
本邦では普及していない検査法を使わなくても
3.国際的批判に耐えられる診断基準
案の改定のこころみ
診断できるように配慮されている。暫定の診断
2009 年研究班による全国の消化器内科専門
基準案を分担研究者,研究協力者に e-mail にて
医対象のわが国初の全国調査によりわが国にお
送付し意見を募り,診断基準案を本郷らが策定
ける当該疾患の実情がおぼろげながらわかって
した。
きた。全国調査によると,回答を得た施設の約
前項の内科系調査で返送された 213 症例のう
半数で症例の経験があり,決して極めて稀な疾
ち詳細を判別できる 188 例について診断基準
患ではないことがわかった。今回当該疾患に関
案との整合性について検討した。病悩期間は,
して過去 5 年に熱心に論文報告を行っている世
167 例
(89%)が 6 カ月以上の病悩期間という基
界の研究者 6 名に日本の診断基準案に関する批
準を満たしていた
(表 3)
。受診時の症状は,腹
判をいただくことができた。海外の研究者から
痛は 127 例
(67%)
,腹部膨満は 181 例
(96%)の
は,①症状で重要なのは腹痛でなく腹部膨満,
症例で認められた
(表 3)
。診断基準案で重視し
② Ogilvie 症候群回復後の再発もあるので定義
た,腹痛または腹部膨満を認めた症例は 185 例
から省くべきでない,6 カ月以内の急性から慢
19
消化器医学 Vol. 9 2011
a
b
c
図 3 慢性偽性腸閉塞症の画像所見
(臥位正面)
a. 胸部単純 X 線写真,b. 腹部単純 X 線写真,c. 腹部単純 CT 写真での腸管拡張像
性に移行する症例もあるので 6 カ月以内を排除
しなければならないと考えられる。このような
しない,③腸管拡張は必ずしも確定診断の必要
本邦での当該疾患での診療基盤の整備の延長線
条件として位置づけられてはいない,など多く
上に国際的データの共有を含めた患者の利益に
の意見をいただいた。国内調査,および海外の
つながる研究が開花するものと確信するもので
意見から今回新たに診断基準案の改定を行っ
ある。
た。厚労省研究班では腹部単純 XP や CT など
による消化管の拡張を診断の必須条件としたが
海外の研究者からの意見で消化管拡張所見のな
い症例もあるとのご指摘を受けたが,そのよう
な稀な症例まで考慮すると一般実地診療では有
Q 診 断
1.厚労省研究班診断基準と診断のた
めの各種検査法
用性の低い診断基準となるためこの項目は必須
厚労省研究班により提唱された平成 22 年度
と考えた。一方症状に関しては診断基準作成時
の CIPO の診断基準を表 3 に示す。IPO に特有
は腹痛を重視したが,国内調査の結果,腹部膨
な血液検査所見はなく,細菌の異常繁殖による
満が 96%に認められ,腹痛の 67%を大幅に上
吸収不良や,摂食不良による栄養障害により,
回った。診断基準から腹痛を除き腹部膨満のみ
貧血,低カルシウム血症,低コレステロール血
とすると感度が上がる一方で慢性便秘などが間
症,葉酸欠乏,鉄欠乏,低アルブミン血症など
違って本疾患と診断されてしまう危惧があるが
がみられることがある。
「6 カ月以上前からの腸閉塞症状」と
「画像診断
胸腹部単純 X 線所見では,急性期は小腸から
での腸管の拡張および鏡面像」の項目で大半は
大腸までガスで充満する所見を呈し,機械的閉
除外できるものと考える。
塞との鑑別は困難である(図 3-a,b)
。機械的閉
われわれが厚労省研究班で作成した本邦初の
塞の有無についての診断は,消化管穿孔を避け
診断基準案はわが国において実地医家が本疾患
るため,水溶性造影剤であるアミドトリゾ酸ナ
を認知できるよう,また容易に診断でき専門機
トリウムメグルミン
(ガストログラフィン ®)を
関へ紹介できるよう作成されたものであるが,
用いた消化管造影検査を行う。病変が十二指腸
本邦での国内調査をもとに,
より実態を反映し,
に存在する時には,胃排出遅延と関係している
かつ感度特異度の高いものにしなければならな
といわれる巨大十二指腸症がみられることがあ
い。また,いわゆる「ガラパゴス化」
に陥らない
る。一部では空腸憩室がみられるが,CIP との
ように,本邦独自の臨床実態を反映する診断基
因果関係は不明である。
準ではあるが,海外の当該領域の専門家委の批
腹部 X 線 CT(図 3-c)に示すが,X 線 CT は閉
判を受けて,より国際的に通用するものに改定
塞機転の有無の確認,拡張小腸の特定の他,腹
20
消化器医学 Vol. 9 2011
表 5 薬物療法
Metoclopramide
まず最初に使うべき薬物,食前就眠前の投与が効果的,パーキンソン病があるとき
は使えない。
Domperidone
上部消化管症状の改善に有効。
Cisapride
症状改善効果が高いが市場から撤退して使用が制限されている。マノメトリーで神
経原性に有効性のエビデンスあり。
Mosapride
わが国で最も使用されている。エビデンスがない。
Tegaserod
本邦では使えない 5-TH4 agonist,副作用で市場から撤退。
Erythromycin
tachyphlaxis やモチリン受容体の減少をきたすので長期投与は向かない。本薬物の
投与は症状増悪した時に限る。腹痛の増悪などの副作用があることがあるので事前
に説明をすべき。
Octerotide
小腸の運動低下,特に強皮症の場合に効果高い。短期間の投与では強皮症症例では
Bacteria overgrowth の抑制や症状改善に効果あるエビデンスあり。原発性の場合は
Erythromycin との併用で効果あるとする報告あり。
Neostigmine
コリンエステラーゼ阻害薬で急性増悪に有効?しかし不整脈の副作用。
Antibiotics
bacterial overgrowth に関して各種薬剤をローテーションして使う方法が確立して
いる。
大建中湯
エビデンスはないが下部消化管の腸閉塞症状の改善に有効?ただし,単剤では便秘
になるので下剤との併用を調節することが多い。
表 6 栄養療法
進行例では体重減少や栄養障害が必発するので栄養療法は重要である。
Gastroparesis がある症例では小腸のみの症例に比べ経口摂取が困難になる。
第 1 段階は低脂肪,低残渣,乳糖除去,の食事を少量頻回投与を試みる。
さらにはビタミン,カルシウム,鉄,葉酸の経口投与,V-B12 の筋肉注射など。
第2段階では EnteralFeeding
エレンタールなどの成分栄養剤を経口摂取できればできるだけ分割摂取で割合を増やす。
次に naso-jejunalfeeding を試みる(これがもっともすぐれた治療),
Gastroparesis がある症例では胃管を併用することで胃の減圧が可能。
経管の受容性が低いときは Gastrostomy や Jejunostomy(Gastroparesis がある場合)
も選択される(ileostomy では水電解質管理に注意が必要)。
第3段階は TPN/HPN
短期および長期の管理を使い分けて体重維持に努める。
感染症・肝障害などの合併症対策が要。
しれない。非代償期では消化管機能廃絶の遅延
便秘薬・下剤などを併用して症状緩和を図る。
や手術阻止に向けて以下のような治療を行うの
厚労省研究班の全国調査では本邦では図 7 に示
がよろしいのではと考える。
すような内科的治療が行われていた。表 5 に薬
(1)食事は低残差で,できれば早期からエレ
物療法の一覧を,表 6 に栄養療法の概略を示す。
ンタールなどの成分栄養を状況に応じて割合を
外来での治療で注意することは,症状に加
変化させつつ導入することが望ましい。
(2)腸
え,体重変化である。原因としてはイレウス症
閉塞症状の改善に関しては各種 prokinetics や
状による食事量の減少,Bacterial overgrowth
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消化器医学 Vol. 9 2011
表 7 小児と成人での認識・現状の違い
内科・外科
小児外科
認知なしが多い
広く認知
不詳
十分な検査をすれば診断に苦慮しな
い
患者の重症度
成人発症は小児に比べ軽症が多い?
重症が多い
治療
急性増悪では機械的イレウスに準じ
て手術されることが多い。栄養療法
が考慮されることは少ない
重症例が多いためか、栄養療法や
TPN/HPN が行われる。腸ろうなど
で対応してできるだけ手術は避ける
方向
疾患概念
慢性偽性腸閉塞として独立した疾患
概念
Hirschsprung 類 縁 疾 患 の 中 に 位 置
する
病理
原則病理検索ができないことが多く 原則病理診断は必須で神経節の異常
主 に 機 能 面 で 診 断 Myopathy, の差異で分類
疾患の認知
診断
neuropathy, interstitial(Cajar)
type etc
予後
?
?
による栄養障害,消化吸収障害による栄養障
が多いことからその認知度は医師の間で高い,
害などがあるが,意外と見逃されやすいのは
この点が成人と大きく異なる。この比較表を表
Gastroparesis によるもの。体重減少が看過で
7 にまとめた。
き な い 状 況 な ら エ レ ン タ ー ル な ど で enteral
図 8 は小児と成人の対応を試みた。小児で
feeding を 長 時 間 か け て 行 う か, 部 分 的 IVH
は神経節の異常のある
(→神経節の先天的欠損
管 理 と す る( 夜 間 の み と か )
。Gastroparesis
のため腸管蠕動不全を生じる)Hirschsprung
の 時 は PEG 経 由 で の Jejunal tubing(PEG-J
病と神経節の異常のない
(→神経節は存在する
Gastrostomy drainage jejunal feeding tubes)
が腸管蠕動不全をきたす)Hirschsprung 類縁
な ど を 考 慮 す る。 成 分 栄 養 剤 は Bacterial
疾患とに大きく分類する。Hirschsprung 類縁
overgrowth の治療効果も報告されている。本
疾患はさらに神経節細胞の数の正常である群
疾患で重要なことは手術回避と腸管の消化吸収
と数の減少する群に 2 つに分類される。神経
機能廃絶の回避であるが,成分栄養をできるだ
節細胞の正常群には 3 つの疾患が知られてお
け早い時期に開始することが根治療法のない現
り,①生後間もなく発症する慢性特発性偽性腸
状では最も望ましい治療法ではないかと考え
閉 塞 症
(Chronic Idiopathic Intestinal Pseudo-
る。
obstruction; CIIPs)
,②出生時より発症の重症
Q小児領域と成人発症との疾患概
念の違いと整理
型偽性腸閉塞症である Megacystis Microcolon
Intestinal Hypoperistalsis Syndrome
(MMIHs)
,③罹患範囲も限局され手術によ
り 比 較 的 予 後 良 好 な Segmental dilatation of
小児科,特に小児外科において慢性偽性腸閉
intestine などがある。
塞は Hirschsprung 類縁疾患の中に位置づけら
小児での Hirschsprung 類縁疾患の中で CIIPs
れている。小児発症では先天性が多く,難治例
は成人の原発性慢性偽性腸閉塞と非常に疾患
25
消化器医学 Vol. 9 2011
診断と治療社,東京,176‒180(2010)
断と治療 98 : 1461‒1465(2010)
2)中島 淳,坂本康成,飯田 洋ほか:なぜ胃
7)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研
や 腸 は 痛 く な る の か? Pseudo-obstruction
究事業 慢性特発性偽性腸閉塞症(CIIP)の
Modern Physician 31 : 331‒335(2011)
我が国における疫学・診断・治療の実態調査
4)De Giorgio R, Sarnelli G, Corinaldesi R et
al:Advances in our understanding of the pathology of chronic intestinal pseudo-obstruc-
研究班 平成 21 年度総括・分担研究報告書 中島班(主任研究者:中島 淳)
8)西野一三:消化器症状を主徴とするミトコン
ド リ ア 病 MNGIE. 医 学 の あ ゆ み 199 : 268‒
tion. Gut 53 : 1549‒1552(2004)
5)Stanghellini V, Cogliandro RF, de Giorgio R
271(2001)
et al : Chronic intestinal pseudo-obstruction:
9)Rudolph CD, Hyman PE, Altschuler SM et al
manifestations, natural history and manage-
: Diagnosis and treatment of chronic intesti-
ment. Neurogastroenterol Motil 19 : 440‒452
nal pseudo-obstruction in children: report of
(2007)
consensus workshop. J Pediatr Gastroenterol
6)坂本康成,稲森正彦,飯田 洋ほか:偽性腸
Nutr 24 : 102‒112(1997)
閉塞(急性を除く)の診断と治療の実際.診
* * *
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