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募集型山行計画における会員募集実施の留意点
募集の手引き 募集型山行計画における会員募集実施の留意点 平成 25 年 5 月 1 日 公益社団法人 日本山岳会 常務理事会 □はじめに・・・ 公益社団法人日本山岳会の活動において、支部、委員会、同好会等が、日本山岳会会員を対象として、国内外の登山、 トレッキング、ハイキング等、山行企画への参加者を募集するにあたって、とくに関連づけられる、旅行業法等の法 的観点から留意すべき点をとりあげ、募集の手引きとしてまとめました。 関係者は特段の注意をはらい、活発な山岳会活動のために、適切で適法な山行メンバーの募集を心がけてください。 □「旅行業」とは・・・ ① 報酬を得て、 ② 行為性が指摘される、旅行業務(旅行者のために運送・宿泊サービスの代理・媒介・取次等をすること)を取 り扱うこと、 ③ 事業としておこなうこと、 これら3項目のすべてが該当した場合、 「旅行業」とみなされます。 ◎旅行業は、登録種別により、観光庁長官または都道府県知事に対して、一定の条件を備えた上で事業の登録申請 をし、認可されなければ業務ができません。無登録事業は、旅行業法違反となり、罰金刑の対象となります。 ○募集型企画旅行とは、 「あらかじめ旅行の計画を作成して、旅行会社が募集する旅行」です。一般的に「パッケー ジツアー」と言われています。 ○受注型企画旅行とは、 「すでに確定している旅行者の依頼により、旅行会社が旅行の計画を作成する旅行」です。 いわゆる「オーダーメイド型ツアー」です。 ○営業保証金とは 「旅行業者の債務不履行の際に、国に供託した営業保証金から旅行者が弁済を受けることがで きる制度」のことです。 <旅行業の事業登録の種別と取り扱いができる企画旅行の種類> 種別 基準資産 募集型企画旅行 受注型企画旅行 営業保証金 第1種旅行業 最低額3000万円 海外・国内 海外・国内 7000万円 第2種旅行業 最低額 700万円 国内のみ 海外・国内 1100万円 第3種旅行業 最低額 300万円 不可 海外・国内 300万円 旅行業者代理業 所属する旅行業者以外の旅行業者のために旅行業務を取り扱うことはできない □重要な留意点・・・ 日本山岳会内部において、国内山行を募集する場合、その多くは報酬性がなく、参加費用等幹事役が取り扱う金額 も少ないため、旅行業法上の大きな問題は少ないと思われます。 しかし、海外トレッキングや海外登山募集の企画では、日本山岳会内部の幹事役として、海外旅行の経験が豊富で その地域に詳しい人に依頼する場合や、外部の登山ガイド等が介在し、わずかでもそこに報酬が発生しているととら えられる可能性があります。 「報酬性」 「行為性(旅行業務同等の取扱)」、 、 「事業性」があると判断され「旅行業法違反」 となる場合がありますので気をつけないとなりません。 また、多額の金銭を幹事が窓口でいったん受け取るようなことはぜったいに避けなければなりません。 山行企画を「募集」する場合は、日常的に顔見知りの範囲で募集する場合と、web や定期刊行物等で不特定多数に 発信する募集の場合では、社会的な責任の重さが大きく違い、不特定多数への呼びかけは、それだけ大きな責任を負 うことになります。 「募集型企画旅行」とみなされる、海外での山行やトレッキング企画を検討する場合には、そうした特殊な企画を 責任をもって取り扱える旅行業者に依頼することをお勧めいたします。 まずは、下記の「必読資料」の Q&A について理解を深めていただき、適切な方法において会員募集をすすめるた めの参考資料としてください。 1 □必読資料(「旅行業法に関する勉強会」(平成 24 年 11 月 15 日開催)のまとめ) 事例研究<法的問題の有無に関する判断> (監修・弁護士 畑 敬) 1 基礎条件としての日本山岳会 公益社団法人日本山岳会は、創立 108 年で、会員 5000 人超は全国に広がり、各県・地域における支部活動が活 発である。毎月会報誌「山」を発行し、 随時メール・マガジンを発信している。年報「山岳」は通巻 107 号(2012 年 11 月発行)である。 A 顔の見えない間柄には若干問題があり、職場や学校と言いがたい面はあるが、「山登りの趣味の会」という点か らすれば、規模ではなく、質と考え、不特定多数を対象とした募集とは言いがたい側面もある。ただし、会員 外に向けた一般募集をおこなうことには問題がある。また、オーガナイザーの募集行為が認められているのは、 同一職場内での幹事による募集や修学旅行における学校による生徒への募集のように「オーガナイザーが当該 団体の構成員」であって、 「相互に日常的な接触のある団体内部」に対してのみである<旅行業法施行要領第1 の2. 3)(3) >。と、されている点は無視できない。 A 「受注型企画旅行」は、4種類の旅行業登録業者のうち、旅行業者代理業者登録を除き、第 1 種、第 2 種、第 3 種の登録業者はそれを取り扱うことはできるが、「受注型企画旅行」として認められる募集形態は、<旅行業法 施行要領>に示された要件を満たしていなければならない。また、旅行業登録の種別の違いは、企業の財務基 盤等の差異も反映されていることにも留意すべきである。 2 パターン1〈日帰りの募集型登山〉旅行業には該当しない? (イ)募集媒体は、本部会報、メルマガ、または支部会報である。 (ロ)引率者は、集会委員・支部役員等(以下、主宰者という)のベテラン会員である。 (ハ)現地登山口集合・解散で、経費は引率者も含めて、すべて参加者負担とした。 A 該当しない。行為性なし。報酬性なし。 3 パターン2〈1泊2日の募集型登山〉旅行業に該当しない? (イ)募集媒体は、本部会報、メルマガ、または支部会報である。 (ロ)引率者は、集会委員・支部役員等(以下、主宰者という)のベテラン会員である。 (ハ)交通機関は、新宿発着のチャーターバスで、主宰者が手配し、実費を一括支払いした。 (ニ)宿泊施設は、主宰者が手配し、実費を一括支払いした。 (ホ)参加費は、経費合計を人数割で算出し、引率者も同額を負担した。精算書を配布した。 A 該当しない。行為性あり。報酬性なし。 精算後若干の余剰金が生じた場合主宰者側留保金とすることは、形式的報酬にあたる。金額によっては実質的 報酬ではない。 4 パターン3〈1泊2日の募集型登山〉旅行業に該当する? (イ)募集媒体は、本部会報、メルマガ、または支部会報である。 (ロ)引率者は、集会委員・支部役員等(以下、主宰者という)のベテラン会員である。 (ハ)交通機関は、新宿発着のチャーターバスで、主宰者が手配し、実費を一括支払いした。 (ニ)宿泊施設は、主宰者が手配し、実費を一括支払いした。 (ホ)引率者は、経費負担をしていない。 (ヘ)宿泊施設から、手数料を受け取った。 A 該当する可能性がある。 宿泊施設からの手数料受領は旅行業にあたる。引率者が経費を負担せず参加者負担としていることは教科書的 には報酬とみなされる。 実質的に摘発されるか疑問だが、参加者から引率者の報酬性について指摘された場合に返答に困る。 2 5 パターン4〈1泊2日の募集型登山〉旅行業に該当する? (イ)募集媒体は、本部会報、メルマガ、または支部会報である。 (ロ)引率者は、集会委員・支部役員等(以下、主宰者という)のベテラン会員である。 (ハ)交通機関は、新宿発着のチャーターバスで、旅行業者が手配し、一括支払いした。 (ニ)宿泊施設は、旅行業者が手配し、一括支払いした。 (ホ)引率者は、経費負担をしていない。添乗員は同行していない。 (ヘ)宿泊施設とバス会社の手数料は、旅行会社が受け取った。 (ト)旅行業に該当しそうなので、下請け旅行業者を申込み受付窓口として募集し、参加費も包括料金とし、事 後精算書は配布しなかった。 (チ)利用した旅行業者は、第3種登録の会社で、「募集型企画旅行」の実施はできない会社だった。 A 包括料金での一般募集は、第 1 種登録(海外・国内)または第 2 種登録(国内限定)以外の者はできない。したがっ て、第 3 種登録業者がおこなうことは違法となる。 5 -1 上記パターン4で、(チ)が一般募集形態の企画旅行を実施できる、第1種登録会社だったらどうなるか? A 募集主体を第 1 種旅行業者とし、募集広告を当該会社が掲載するのであれば問題ない。あるいは、包括料金を 明示せず、単なる山行募集の形態をとり、参加希望者リストを当該会社<第 1 種(海外・国内)または第 2 種(国 内限定)>に送付し、当該会社と参加希望者とが相対契約をおこなうこともできる。 5 -2 上記で、「手配旅行契約」とした場合はどうなるか? A 手配旅行契約では包括料金は認められていない。 5 -3 上記で、「受注型企画旅行」とした場合はどうなるか? A 旅行業法施行要領第1の2.3)(3) の規定を無視することはできない。 そもそも募集型として参加者を募っているわけだから、「相互に日常的接触のある団体」の内部で参加希望者が 集合した受注型企画旅行として外形だけを整えればかまわない、ということではない。 6 パターン5〈8泊10日の米国ホイットニー山登山〉旅行業に該当しない? (イ)募集媒体は、本部会報紙、メルマガ、または支部会報紙である。 (ロ)引率者は、集会委員・支部役員等(以下、主宰者という)のベテラン会員である。 (ハ)交通機関は、国際航空便及び現地バス等、旅行業者が手配し、一括支払いした。 (ニ)宿泊施設は、旅行業者が手配し、一括支払いした。 (ホ)引率者は、同額の参加費を負担した。旅行業者が派遣した旅程管理者が同行した。 (ヘ)宿泊施設とバス会社の手数料は旅行会社が受け取った。 (ト)旅行業に該当しそうなので、 第1種登録の旅行業者に「募集型企画旅行」として委託した。 A 山行企画:日本山岳会 旅行企画・実施:○○○ツアー社(第 1 種登録) と表示した上で、募集するのであれば問題はない。 6 -1 参加費を主宰者側で預かり、一括して旅行業者に支払うことができるか? 預かった場合に、 「受注型企画旅行」であれば問題はないか? A いかなる場合も旅行企画・実施会社以外が、旅行代金を預かることはできない。 3 ★特別な留意点 (国内山行・海外山行共通) 1.前掲の必読資料に記載した、事例のうち、4 及び5 の事例に該当する募集形態は、旅行業法に違反する可能性 があり、また違法行為とみなされるため、このような募集行為はできません。 2.旅行業者が介在する、 「受注型企画旅行契約」は、旅行業法施行要領第1の2.3)(3)の規定により、「相互に 日常的な接触のある団体内部」 、においてのみ募集ができます。各支部における、支部内限定はともかく、全国 に在住する、全会員を対象として発行される会報等、またホームページ等のウエッブ上での募集はできません。 3.JAC内における、 「同好会」においては、当該同好会内に限定して参加者を募るよう心がけてください。 4.海外山行企画の募集及び実施については、介在する旅行業者が適法に業務にあたることができる、旅行業登録資 格を有していなければなりません。また、募集広告表示についても適法性が求められていますから、前掲の6 の事例を参考としてください。 5.旅行業法にのっとり、旅行業者を介在し、適法におこなう募集型山行においては、当該旅行業者以外の者が参加 費等料金を収受または預かることはできません。 〈参考資料〉 旅行業法施行要領 PDF http://www.anta.or.jp/law/pdf/sekou_youryou-h191217.pdf 4