Comments
Description
Transcript
専門家活動報告 - JICAナレッジサイト
<専門家活動報告> 1. 派遣国:モザンビーク共和国 2. 配属機関:農業省土地森林局(DNTF) 3. 指導科目:森林管理能力強化 4. 派遣期間:2010 年 8 月~2014 年 8 月 5. 活動内容、成果: (1)政策支援、国際援助協調 ○国家 REDD+ロードマップ策定 ○REDD+プロジェクト承認規則策定支援 ○国家気候変動戦略策定支援 ○世界銀行・気候変動 DPO 対応支援 ○世界銀行森林炭素パートナーシップ(FCPF)の REDD+準備基金のためのプロポー サル(RPP)、実施計画策定支援 ○FLEGT(FAO-EU 支援による Forest Law Enforcement Governance and Trade プロ グラム)、EIA(DFID、UKAID 等支援による環境 NGO)等からのモザンビーク森林政 策に対するコメントへの対応 ○世界銀行、UNDP、FAO、WFP、DANIDA、GIZ、US-Forest Service、ノルウェイ、 フィンランド、フランス(AFD)他森林・気候変動関連セクター支援ドナーとの援 助協調・調整 (2)交渉支援 ○国連気候変動枠組条約(UNFCCC) 第 16~19 締約国会議(COP)等への参加、国家 意見書策定・提出(2012 年(AWG-LCA ファイナンス)、2014 年(SBSTA 非市場アプ ローチ) ) ・交渉支援 ○REDD+メカニズム、方法論理解促進支援 (3)カーボン・オフセット・プロジェクト支援 ○WFP 国連世界食糧計画と協力し、DNTF を技術支援して、日本のカーボンオフセ ット企業の出資を得て、森林が急速に減少しているガザ州のコミュニティにおい て参加を希望する全住民を対象としたアグロフォレストリーを推進するパイロッ ト・プロジェクトを形成・実施 ○最終結果調査・レポート作成 (4)技術支援調整 ○外務省森林保全無償資金協力、JICA-REDD+のための持続可能な森林資源情報プ ラットフォーム構築プロジェクト、JAXA 京都カーボンプロジェクト、SADC-JICA 森林セクター協力等の支援調整 ○ブラジル IBAMA 等での第3国研修、REDD+ Partnership ハイレベル(閣僚級)会 合・事務レベル会合、REDD+実施現地視察(インドネシア・中央カリマンタン州) 等参加支援 ○本邦企業等による森林セクター活動支援 6. 達成状況: (1)政策支援、国際援助協調 ○「国家 REDD+ロードマップ」の策定により、COP13~19 までのすべての REDD+関 連の COP 決議を解説するとともに、これに即し、かつモザンビークの現行の法制 度・実際の制度実施状況に基づく REDD+の段階的実施における道筋を明らかにし、 関係各省・ステークホルダーが共通の理解に基づき業務を遂行していけるよう DNTF を支援した。本ロードマップについては、DNRI カウンターパートと共に策定 することで能力強化を図り、その他 DNTF 関係部局の意見を集約後、DNTF とともに 協同コーディネーターと位置づけられている環境調整省(MICOA)に共有した。 MICOA の気候変動のウェブサイト、DNTF-JICA 策定中の REDD+モニタリングのため の森林情報プラットフォームにも掲載される予定。 ○世銀が提案し案を作成した REDD+プロジェクト承認規則の策定について DNTF の 各省協議を支援し、1 年半に渡る協議の結果、閣議決定が行われ施行に至った。現 行法と現場組織の実態に則した現実的な規則になるよう DNTF が主張したいくつか の重要な点については確保することができたが、十分に規則に反映されなかった 点については、この規則が具体的に適用される前に実施すべき諸点として上記の 国家 REDD+ロードマップに詳述した。(経緯として、この承認規則の策定は、モザ ンビーク政府が提出し参加国会合で承認された RPP には計画されていないもので あったが、FCPF 基金を送金する条件として世銀がモザンビーク政府に対し、前渡 し資金の一部を利用して早急にこの規則の策定を実施し閣議決定まで行うよう要 請したため、実施されることになった。当初案も世銀が作成し、FCPF 資金で雇用 されたコンサルタントが提示して協議を調整した。 ) ○国家気候変動戦略策定(世銀の英国トラスト・ファンドによる実施)における 各省協議等について支援を行い、森林セクター、REDD+について適切な方針となる よう促進した。MICOA が全てのモザビークへのマルチ・ファンドを受領し、関係各 省に配分する計画となるよう当初主張していたが、カウンターパート機関を支援 して協議し、パーマネントセクレタリーのレベルに上げ、ラインの各省もそれぞ れファンドを受け取って具体的なプロジェクトを実施し、気候変動対策業務を推 進することが必要であることについて理解を得ることができた。 ○世界銀行・気候変動 Development Policy Operation (DPO)対応支援については、 世銀からモザンビーク政府に対し、REDD+に関する政策のうち国家レジストリーの 設置等について一定期間内に実現すべき政策課題として、DPO 融資(IDA クレジッ ト)の条件にすべきとの要請があったが、DNTF の世銀との交渉を支援し 2012 年、 2014 年共を項目からはずすことができた。(モザンビークの状況においては DPO に乗せると十分な各省や関係ステークホルダーとの協議・調整を踏まえずに期限 を守るために政治的に決定せざるを得ない状況になる可能性があったため、DNTF は反対した。 ) ○世界銀行森林炭素パートナーシップ(FCPF)の REDD+準備基金による支援を受け るための提案書(FCPF-RPP)、実施計画策定支援については、2009 年からまず国家 REDD+戦略の策定についてノルウェイの資金援助により英国の研究機関 IIED が案 を執筆していたが、 合意に至らず、 2011 年 6 月に世銀の提案により中断、 国家 REDD+ 戦略の策定より先にまず FCPF-RPP の策定を実施することとなった。IIED が執筆し た案については、現行法に基づき実質的に森林・林業・野生生物を所管している 責任官庁である DNTF による適切な確認がほとんどなされないまま、組織体制・制 度構築について MICOA が権限を持って対応するものとしてまず進められてきてい た。2011 年 8 月、DNTF 次長他と相談し、モザンビークの現行の法規則・実際の森 林管理に即した現実的・持続的な体制の構築を図りうる計画・提案書となるよう 検討し修正した。MRV、REL/RL 等の項目についても、DNTF-JICA の協力が国家 REDD+ 準備のために実施するものとしてモザンビーク政府により位置づけられているこ とを明記した。モザンビークの RPP が採択された 2012 年 3 月の第 11 回参加国会 合(於パラグアイ・アスンシオン)では、世銀のプレゼンテーションで RPP の策 定における JICA の貢献について言及があった。 ○FLEGT(FAO-EU 支援による Forest Law Enforcement Governance and Trade プロ グラム)や EIA(DFID、UKAID 等の資金支援による環境 NGO)による、モザンビーク の違法伐採問題についてのレポート等への対応については、ドナーのネットワー クから早い段階で情報を得て DNTF 局長に共有して、大臣への情報提供、回答レタ ーの作成等に係る専門知識の提供にいて支援を要請され、適宜対応してきた。 ○FAO、GIZ、US-Forest Service、ノルウェイ、フィンランド、AFD 他森林・気候 変動関連セクター支援ドナーとの援助協調・調整については、特に JICA-DNTF の 取り組みと重複を避け、相乗効果を確保しうるよう適宜情報を共有し対応した。 (2)交渉支援 ○UNFCCC 第 16~19 締約国会議(COP)における REDD+交渉・関係会合等への参加、 国家意見書策定・提出(2012 年(AWG-LCA ファイナンス) 、2014 年(SBSTA 非市場 アプローチ) ) ・交渉支援については、DNTF カウンターパートを支援し REDD+メカ ニズム、方法論への理解を促進して交渉に対応するとともに、MICOA を中心とする モザンビーク政府交渉団の要望に応え、情報提供・説明を行い、必要に応じて大 臣・副大臣等ハイレベルのスピーチ原稿作成等について支援し、交渉団全体の能 力強化を図ることにより、国内での各種政策策定が円滑に進むよう労力をかけて 対応した。 ○UNFCCC での REDD+交渉に関して DNTF カウンターパートがアフリカ・グループ、 LDC グループと協調・連携して交渉に対応できるレベルになり、国際的なモザンビ ークの地位を確立・強化した。 ○モザンビーク政府の求めに応じ、我が国が気候変動枠組条約交渉において新メ カニズムの一つとして提案している二国間クレジットメカニズム(JCM; Joint Crediting Mechanism)についてポルトガル語で思料を作成、説明したとともに、 COP19 のフリンジで日本―モザンビーク両政府代表団によるバイ会談を行った。こ の会議を受け環境調整大臣から日本政府からの出張者の派遣によるセミナーの開 催の要望が発出された(2014 年 3 月) 。 (3)カーボン・オフセット・プロジェクト支援 ○WFP 国連世界食糧計画と協力し、日本のカーボン・オフセット企業の出資を得て、 森林が急速に減少しているガザ州の2つの村において、希望者全員の参加による アグロフォレストリーを推進するパイロット・プロジェクトの実施を支援し、最 終結果について参加者全員および近隣のコミュニティ住民の意見を聴取する調査 を実施し、レポートを作成した。 ○DNTF カウンターパートが地に足をつけた REDD+組織体制・制度を構築できるよ う、森林減少の最前線でプロジェクトを実施することにより、住民と密接に関わ りながら現場で必要とされる政策策定に最善を尽くすことができるよう実施し た。 ○2つのコミュニティを対象に 3 年半に渡り往来を重ね住民と経験を共有するこ とにより、当該地域における住民が直面する土地問題、気候変動問題、森林減少 問題等への住民の意識とその変化について学ぶことが可能となった。 (4)技術支援調整 ○外務省森林保全無償資金協力、JICA-DNTF-REDD+のための持続可能な森林資源情 報プラットフォーム構築プロジェクト、JAXA 京都カーボンプロジェクト、 SADC-JICA 森林セクター協力等の支援調整を行った。 ○外務省森林保全無償資金協力については、JICA-DNTF-REDD+のための持続可能 な森林資源情報プラットフォーム構築プロジェクトで有効活用することができる ものを確保するよう調達品目リストの作成、各品目のスペックの確定、入札準備、 通関等にかかる作業について DNTF を支援した。 ○ブラジル IBAMA 等での第3国研修、REDD+ Partnership ハイレベル(閣僚級)会 合・事務レベル会合、FCPF、UNREDD 関連会合、JICA 本邦研修、第 3 国研修(ブラ ジル、タイ) 、REDD+実施現地視察(インドネシア)等への DNTF カウンターパート の参加を支援した。 7. 具体的成果品リスト: ○Mozambique REDD+ Roadmap for Forest Sector (英語(138 ページ) 、ポルトガ ル語(162 ページ)) ○Final Report on One Forest One Community for Food Security Pilot Project (英語、62 ページ) ○FCPF-RPP(FCPF ウェブサイトに掲載) ○国家気候変動戦略(MICOA ウェブサイトに掲載) ○モザンビークの森林・林業の概況(日本語) ○UNFCCC の REDD+交渉についてのモザンビーク国家提案(2012 年、2014 年、英語、 UNFCCC ウェブサイト) 等 <専門家活動報告(詳細情報)> 1. 専門家指導分野およびその関連分野にかかる受入国、協力先、カウンターパー トの配属時点と活動終了時の状況の変化(※) : カウンターパート機関について以下の人事異動があった。 ○2010 年 8 月~9 月、DNRI 部長 Carla Cumba 氏、DNTF 次長 Mandrate Nakala 氏。 局長は 1 年前に他界し空席。 ○2010 年 9 月末、Carla Cumba 氏が FAO に移籍し、DNRI 部長が Joaquim Macuacua 氏に変更 ○2010 年 10 月、1 年以上空席だった DNTF 局長に Dinis Lissave 氏がマニカ州 DPA 局長から抜擢。 ○2012 年 12 月、違法伐採問題への対応責任を問われ Dinis Lissave 氏氏が MPD に 移籍。MPD から Simao Joaquim 氏が移籍し局長に就任。 ○2012 年 12 月 31 日、DNTF 次長 Mandrate Nakala 氏が急逝。 ○2013 年 11 月~2014 年 1 月、DNTF の 3 部長(財務部、森林部、法制部)、1課長 (コミュニティ・フォレストりー課)が交代し、州 SPFFB から数名が DNTF に異動。 C/P 氏名(所属):Carla Cumbe 氏 (2010 年 8 月~9 月)、Joaquim Macuacua 氏 (2010 年 9 月~2014 年 8 月) カウンター・バジェットについては、派遣当初から確保を要請していたが、2012 年当初に農業省予算に貢献していたフィンランドが撤退し予算事情が厳しくなっ たこともあり、なかなか実現されなかった。しかしながら最終年の 2014 年には確 保されるに至った。 2. プロジェクト事業進捗に果たした専門家業務の役割(例:PDM における成果に、 個々の専門家業務および成果がどう関わったか) (プロジェクト専門家のみ) : (個別専門家のため該当なし) 3. 専門家活動計画と達成状況に齟齬があった場合、その理由: 第 4 年次の活動計画には REDD+ Action Plan を策定することを予定していたが、 Roadmap 策定に変更した。これは、準備フェーズ、試行フェーズ、実施フェーズの それぞれにおいて、必要とされる取り組みを COP 決定に即してどの機関がそれぞれ どのような取り組みを進めていくべきかという「道筋の整理」について強い要請が あり、DNTF の考え方を整理・明示し、関係省庁、ステークホルダー間で共有し、 コンセンサスに基づき進めて行く必要性から対応したもの。 4. 専門家指導分野およびその関連分野で、今後プロジェクト目標を達成するため に残された課題(日本‐JICA が今後も取り組むべきか、その際の日本の優位性 は何か、日本に十分なリソースが存在するか等についても記載) (プロジェク ト専門家のみ) (※) : 持続可能な森林経営を実現するためのガバナンスの向上、整備を中心に協力を進め る。付随して、2020 年に始まる予定の気候変動枠組条約の京都議定書の次の議定 書の採択により日本が背負うことになる排出削減義務の一部をカバーし、気候変動 緩和に貢献しつつ住民の気候変動適応を支援する REDD+支援・投資先国の有力候補 として必要な技術的、制度的能力の向上に貢献していくべき。 5. 専門家指導分野及びその関連分野で、今後受入国が取り組む必要があると考え る課題(※) : REDD+ロードマップに沿ったステップバイステップの技術的向上、制度構築の業務 を推進 [準備フェーズ・2009 年~2018 年] ○国家 REDD+戦略の策定(①森林減少・劣化原因の分析、地域の特定、国家的優先 箇所の選定、②セーフガード・ガイドライン/セーフガード情報システムの構築、 (土地所有、森林ガバナンス(REDD+の実施における各機関の役割の明確化、国家 森林計画の策定を含む) 、ジェンダーを含む) 、③国家 REDD+戦略オプションの選定、 投資計画の策定(REDD+試行プロジェクトの選定))○REDD+関連業務で必要となる 国家予算の検討、確保 ○ベネフィット・シェアリングの基準、方策の検討、相談窓口・紛争処理窓口と方 策の設定 ○国家森林モニタリング・システム、国家参照レベル等の構築とガイドラインの策 定 ○REDD+のための国家森林資源情報プラットフォーム/データベースの構築、国家 REDD+レジストリーの構築(国家温暖化ガス排出簿に) [試行フェーズ(試行支払いも可能)・2018 年からを目処] ○国家 REDD+戦略で選定した投資計画に基づく REDD+試行プロジェクトの実施 ○REDD+試行プロジェクトでの学びを元に、準備フェーズで形成したガイドライン、 システム等の見直し・修正を行い、関連規則として策定・閣議決定 [実施フェーズ(結果支払いを伴う) ・2020 年のポスト京都議定書の議定書下で実 施] ○市場メカニズムによるプロジェクト ○その他のメカニズムによるプロジェクト(非市場、新市場) 6. 類似プロジェクト、類似分野への今後の協力実施にあたっての教訓、提言等: REDD+は土地利用の問題そのものであり、土地は、モザンビークにおいては、独立 戦争・内戦の経緯から憲法に規定されているように、最も重要な国家財産・資源で あることから、その取扱/実施については、様々な政治的事象への背景・文化・歴 史を含め広範な視座と理解が必要と考える。森林・土地・環境を巡る国際的情勢が めまぐるしく変化している中、急激な経済的発展を遂げているモザンビークにおけ る日本の協力は、国家主権の尊重に最大限留意しつつ、公平性・透明性を確保した 政府の能力強化を図り、総合的・実質的な開発を支援し、モザンビークの重要な開 発パートナーとしての信頼を獲得していくことが求められていると考える。 7. 専門家指導分野及びその関連分野でのドナー・国際機関の動向(※) : モザンビークにおける気候変動対策にかかる政策面へのドナーの支援はマルチ・バ イ共、環境調整省 MICOA に集中している。 REDD+の実施体制準備(readiness preparation, Phase 1)については、ノルウェ イが英国の環境開発研究機関 IIED に出資し、MICOA を中心に、国家 REDD+戦略ドラ フティング(中断) 、FCPF-RPP ドラフティング(未完のうち中断、JICA アドバイザ ーが DNTF を支援し、DANIDA, UNDP アドバイザー等と協力、MICOA と調整して完成) 支援してきた。 MICOA に資金が下りている FCPF-RPP プログラムに予定されている具体的な業務に ついては、実質的に多くの業務について現行法上、また実際の現場組織や業務を反 映し、DNTF が対応する必要がある。世銀は米国ワシントンから年に数回来訪して の対応であり、JICA がリード・ドナーとして DNTF を支援して対応してきたところ ノルウェイは、現在はモザンビーク中部のマニカ州におけるパイロット・プロジェ クト、調査・研究について IIED を支援し実施しているところ。REDD+パイロット・ プロジェクトについては、Envirotrade が 2008 年から実施しているが、このほか、 FFI(Flora and Fauna International) 、MCI、他 NGO、カーボン投資会社による REDD+ プロジェクト実施要望の提案が相次いでいる。日本企業の投資については、カーボ ン・フリー・コンサルティング社(カーボンオフセット契約件数で日本一の企業) の出資を得て、WFP 国連世界食糧計画との協力で、DNTF への JICA アドバイザーの 支援により、アグロフォレストリー植林によるカーボン・オフセット・パイロット・ プロジェクト「One Forest One Community for Food Security Pilot Project(一 村一林を食料安全保障のために) 」を 2012 年 12 月にガザ州で開始し 2014 年 3 月終 了したところ。ガザ州はカーボ・デルガード州とともに DNTF-JICA 実証調査プロジ ェクト「REDD+のための森林資源情報プラットフォーム整備」による森林モニタリ ング試行の対象地であり、各影響を観察し REDD+プロジェクトへの展開を検討する こととなっている。 モザンビークへは、世界各国からの民間企業による大規模な農業投資、植林投資等 のオファーが殺到したため、2009 年に 2 年間のモラトリアムを発出し、農業省は 適切な投資の受け入れをめざし、国家予算で Zonamento Agro Ecologico (ZAE、農 業生態系ゾーニング)プロジェクトによるゾーニングを急いで実施している状況に ある。 主な各ドナー等の動向については以下を参照されたい。 [バイ] 1) ノルウェイ ○REDD+支援の第 1 フェーズとして、2009 年より GFP プロジェクトとして、イギリ スの IIED が主なコンサルタント業務を請け負い、ブラジル FAS との南南協力の形 態で、国家 REDD+戦略、FCPF-RPP 策定等を推進。IIED はさらに UEM(エドワルド・ モンドラネ大学) 、英国エジンバラ大学、CTV (Centro Tera Viva、モザンビークの NGO)、Indufor(フィンランドのコンサルタント会社)に下請けを出し、現地調査、 トレーニング等を実施。 (US$1.15million) (http://www.growingforestpartnerships.org/sites/growingforestpartnership s.org/files/gfp_South%20South%20REDD%20Progress%20Report%202.pdf ) 2012 年より、フェーズ II としてマニカ州等でパイロット・プロジェクトを実施。 2) イギリス ○民間ベースで Envirotrade による REDD+プロジェクト実施。UE(エジンバラ大学) による ALOS PALSAR を用いたソファラ州、マニカ州での REDD+プロジェクト(上述、 ノルウェイの項参照)のための地域 REL/RL を開発。 DFID や UKAID がイギリスの NGO/ 調査研究機関である EIA に出資し、モザンビークの違法伐採・中国への輸出問題を プレイアップするレポートを発表。 大統領選のセンシティブな時期に合わせて 2013 年 2 月、2014 年 7 月に公表され、政治的動揺を導く結果となっている。 3) デンマーク ○DANIDA が MICOA に専門家及びプロジェクトを配置、気候変動適応、財務管理能 力開発・向上のプロジェクトなどを実施。 4) フランス ○AFD が MITUR(観光省)をカウンターパートにザンベジア州 Gile 国立公園におい て生物多様性プロジェクトを実施してきたが、引き続き RL/REL、MRV を含むフル フレッジの新規 REDD+プロジェクトを 2014 年 2 月より実施中。バイオマス算定も 行う予定で、特にミオンボ林生態系で注目されている土中バイオマスについて重点 的に測定する予定。 5) フィンランド ○1998~2000 年ザンベジア州で RS による森林被覆図作成プロジェクトを実施。 ○かつてはモザンビーク農業省にとって最大のドナーであったが、2012 年 1 月に 農業省への資金供与も含めて一斉引き上げした。DNTF 及びニアサ州、ザンベジア 州にオフィスを構え APRONAF プロジェクトを実施していた。対象は北部 4 州(ナン プラ、カーボ・デルガード、ザンベジア、ニアサ州)。木材生産林における森林イ ンベントリーにより、森林開発コンセッション・システムの改善による、よりよい 木材生産の強化、コミュニティによる森林及び野生生物管理、国家森林計画の策定 等。(予算 11 百万ドル、2010 年~2014 年予定とされていた) http://formin.finland.fi/Public/default.aspx?contentid=80372) ○農業省への資金援助により Zonamento Agro-Ecologico(ZAE)の一部を Indofor により実施。 6) イタリア ○2005~2007 年森林インベントリー+RS により全国 1:1,000,000、マプート州、 マニカ州 1:250,000 の森林被覆図を作成等。 (http://www.whrc.org/education/uganda/pdf/Marzoli-Integrated%20Assessmen t%20of%20Mozambican%20Forests.pdf) ○イタリア人コンサルタントが DNTF 自然資源インベントリー部(DNRI)に DNTF や イタリア大使館のファンドを得て技術支援を行い、現況報告(Sitrep)作成プロジ ェクト( Sistema de Alerta e Monitoria das Queimadas (SAMOQUE))を実施して いる。毎日 MODIS のデータをダウンロードし、温度データにより森林火災とそうで ないものをよりわけ、地域ごとに算出、レポートにとりまとめ作成。現在、GIS シ ステムの自動化や DNRI スタッフのキャパビルを行っており、うまく回るようにな れば DNTF ホームページ等で公表していく予定。日本の環境無償で納入される予定 のデータベース、PC、ソフトウェア等をフルに活用し、JICA プロジェクトで構築 する予定の REDD+モニタリングのための森林資源情報プラットフォーム内にデータ ベースを作り、REDD+関連情報とうまく連携・連動させる予定。 7) EU ○エドワルド・モンドラネ大学をカウンターパートに、2011 年より REDD+FLAME プ ロジェクトを実施(モザンビークの他、インドネシアとブラジルで実施) 。ナンプ ラ州の保全地域を対象に、TerraSAR-X 等を用いたリモート・センシングによるバ イオマス変化分析等。2013 年 2 月最終報告会を実施。(http://redd-flame.info/) ○2012 年、FAO に出資し、FLEGT のプロジェクトを公募した。これに採択されたエ ドワルド・モンドラネ大学が執筆したレポートが 2013 年 12 月に完成し、翌年 2 月 に公表された。本レポートについては、EU-FAO の公式見解ではないとされている が、違法伐採対策やガバナンスの取り組みについて事実を反映していない点があ り、DNTF から FAO-EU-エドワルドモンドラネ大学に修正協議を申し入れていたが、 2 月 24 日、FRELIMO 党大統領候補選挙の直前に突然 FAO からプレスリリースされ、 大統領候補だったパシェコ農業大臣がより不利になる圧力となってしまった。 8) アメリカ ○USAID が DNTF と CENACARTA にオフィスを構え、イギリス人、ブラジル人、モザ ンビーク人のコンサルタントにより Millennium Challenge Account プロジェクト の Land Tenure Project を実施、援助額は 68 百万ドル。北部 4 州(ナンプラ州、 カーボ・デルガード州、ニアサ州、ザンベジア州)の 12 郡 8 都市で SPOT、Quickbird を使った地上調査・リモート・センシングにより 1:250,000、1:50,000 地図を作 成。また、DUAT(土地の権利書)のない住民、コミュニティに法に基づいた事実関 係の確認により権利を確定し権利書を交付し、地理情報をデータベース化してい る。GPS、パソコン、ソフトウェア、車等の機材供与やトレーニングも実施。 (REDD+ との直接的な関係はないが REDD+森林情報プラットフォームに入れるデータの一つ として協力が可能)2013 年 9 月にプロジェクトを終了し、その後オランダ・スウ ェーデンが後継プロジェクトとして土地所有権のマネージメントに関するプロジ ェクトを実施。 ○USAID が SPEED プログラム(Support Programme for Economic and Enterprise Development)を実施。このプログラムの対象分野に農業、土地などが含まれてい る。投資家にとって不利/不適切な法の改正を促したり、不利/不適切な法が策定 されないようモザンビークによりよいビジネス環境を構築する目的で実施されて いる。このプロジェクトにより、DNTF に対し「土地法」の改正を要請したり、モ ザンビーク議会農業分科会が農業政策に沿って提案した「農業・食料安全保障・栄 養」の廃案を要請したりしている。 ○USDA Forest Service(米国農業省林野局)がマングローブ林におけるバイオマ ス蓄積調査のプロジェクトを UEM、WWF と協力して推進中。また、ニアサ州におい て REDD+MRV 関連プロジェクトを実施したい意向を伝えられた。しかしながら、予 算規模は US$200,000 程度とのことで、大規模なプロジェクトを検討しているわけ ではなく、JICA 実証調査プロジェクトまたは DNRI のインベントリー活動の一助に なれば活用してほしい、という申し出であり、必要に応じて対応することとしてい るところ。 7) GIZ(SADC への広域協力) ○SADC 広域プログラムとして REDD+MRV 支援のプロジェクトを開始しており、モザ ンビークも対象とする 4 か国 の一か国として選定された。4 か国は、ミオンボ林 +国境管理(マラウイ+ザンビア)、バキア林(ボツワナ)、モパネ林(モザンビー ク)とこの地域特有の森林生態系を代表する国を選定。モザンビークにおいては DNTF はマニカ州北部、テテ州に分布するモパネ林を配分、2013 年より 3 年間の計 画で実施されている。モザンビークにおいては、他の SADC 諸国を招きインベント リーに関する研修などが実施されている。 [マルチ] 1) 世銀 ○REDD+に関しては FCPF RPP が 2012 年 3 月に承認され、2013 年 3 月署名、2013 年 4 月より本格実施予定。FCPF-RPP 準備資金の一部を利用して法律専門家を雇用し、 早急に REDD+投資の承認ができるようモザンビーク政府に「REDD+プロジェクト承 認規則」制定を要請。 ○2012 年、2014 年に気候変動対策政策 DPO(REDD+関係もターゲット)を提案し、 IDA クレジット資金供与による制度改革を推進しようとしてきたが、モザンビーク 政府は REDD+を DPO 項目に入れることを拒否したため除外された。土地 DPO につい ては 2012 年の枠組みで若干の地税の増税などが 2013 年の制度改革項目として入れ られ、DNTF は作業の遅れで約束の期日に間に合わず政治的対応が必要となった(制 度改革項目を指定した期間内に実施しないと約束の借入金が国庫に送金されない 仕組みのため) 。 ○国家気候変動戦略(英国のトラストファンド)策定を実施。 2) UNDP (GEF) ○気候変動適応関係のプロジェクト(NAPA、沿岸保護(UNFCCC LDC ファンド))実 施している。 ○日本の AAP(アフリカ適応プログラム)により UNDP に雇用された専門家が MICOA のアドバイザーとして気候変動政策の推進を支援。2013 年 3 月の任期終了に際し、 気候変動政策のアドバイザーとして MICOA 国際協力局に協力。 3) WFP ○WFP の食料安全保障戦略プログラム「脆弱なコミュニティの気候変動適応」に沿 い、モザンビーク大統領のイニシアティブ「One Child One Tree, One Leader One New Forest」を推進するプロジェクト:「One Forest One Community for Food Security Pilot Project」を DNTF、JICA と共に実施。日本企業(Carbon Free Consulting)が出資した、アグロフォレストリーによるカーボンオフセット(カシ ュー木による吸収)プロジェクト等を実施。対象地においては継続的な試験的モニ タリングを実施予定。 4) REDD+ Partnership ○JICA-DNTF の働きかけにより名古屋での生物多様性 COP10 の際(2010 年 10 月) 開催された閣僚会合よりメンバー国として登録、参加。 5) CIFOR ○ドイツ人研究者がモザンビークの REDD+の取組状況について論文を発表(2011) 。 (http://www.cifor.org/publications/pdf_files/infobrief/3402-infobrief.pd f)。JICA の取り組み等についても記載。同研究者はガバナンスの問題(違法伐採 と中国への輸出)について異なる角度からの分析を行った論文も発表している (http://www.cifor.org/publications/pdf_files/wpapers/wp93german.pdf#sear ch='seila+WertzKanounnikoff+sino')。 6) WWF ○Blue REDD+プログラムを実施(EU の出資)マングローブ林のバイオマス調査等 を実施。 8. 供与、携行機材リスト(プロジェクト専門家以外) : 携行機材:樹高測定器(レーザー、ポール)、検縄、GPS、レコーダー、双眼鏡 ※項目に関して、派遣期間(派遣期間が1ヵ月以下等極めて短期の専門家)および専門家種別(政 策支援型等別途セクター分析レポートの提出を成果として求められる専門家)によっては、記 載省略もしくは要点のみの記載で可とする。