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第14回公開講演会 「魅力あるキノコの世界」 県立広島大学生命環境

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第14回公開講演会 「魅力あるキノコの世界」 県立広島大学生命環境
第14回公開講演会
「魅力あるキノコの世界」
県立広島大学生命環境学部
森永 力
それではまず微生物の分類を簡単に説明いたします。微生物には大腸の中に
いる大腸菌や納豆の製造に用いられる納豆菌などのバクテリア、お酒、ビール
やパンなどの製造に用いられる酵母、餅やみかんなどの上に生えてくるカビ、
そしてキノコ、そのほかクロレラなどの藻類などが含まれます。酵母やキノコ、
カビは同じ仲間として真菌類に属しますが、今回はキノコを中心に話を進めさ
せていただきます。
キノコは担子菌とも呼ばれ、多くの種類が存在し、シイタケやマツタケなど
目に見えるキノコ(子実体と呼ぶ)を作るものだけでなく、植物病原菌と呼ば
れる担子菌もあり、現在、約 26000 種あると言われています。この中で我々が
キノコと言っているのは世界で 4500 種、日本では 3000 種程度あるといわれて
います。保育社から出版されている本郷次雄先生の本では約 2500 種紹介されて
いますが、実際にはまだまだ沢山存在してします。
さて、キノコを生態的に分類しますと、生きたものにつくキノコと、死んだ
ものにつくキノコの仲間には、植物、動物そして菌に付くものがあります。植
物に付くものでは、植物の根に寄生し腐らせてしまうものや、マツタケのよう
に共生という形で植物と一緒に生活しているものもあります。植物の根に寄生
するキノコについてですが、ナラタケというキノコがあります。このキノコは
林産家にとって非常に厄介なもので、ときに木を腐らせて森を全滅させます。
ナラタケは人工培地で分離し、生育させると培地中に目でみえる太い菌糸束を
形成します。通常のキノコの菌糸は 5μm ほどで肉眼では見ることができないが、
ナラタケは根状菌糸束と呼ばれる非常に太い菌糸の束を形成し、それで植物の
根に巻き付いて栄養を奪い取り、木を枯らせてしまうのです。一方、植物の根
と共生するキノコには、ヌメリイグチ、アミタケなどがあります。アミタケは
アカマツと共生するキノコで、我々の大学の学部がある庄原地方では「ズルッ
コ」と呼ばれ、汁物に入れてよく食べられています。シャカシメジはドングリ
の木の根と共生しているキノコです。共生機構の詳細は明らかになっていませ
んが、キノコが土壌中のリンを吸収して植物に与え、植物からデンプンなどの
光合成産物を得ているというのが一般的な考えで、リンについては、放射性同
位体を用いた実験から明らかになっています。植物と共生しているキノコには、
アンズタケ、ウラベニホテイシメジ、ハエトリシメジなどがあります。ハエト
リシメジはキノコを焼いた臭いでハエを殺すということからこの名前がつけら
れ、トリコノミン酸という旨味のある特殊なアミノ酸も有しています。共生菌
の代表的なものはなんといってもマツタケでしょう。マツタケにはいろいろ種
類があります。①日本のマツタケ、②アメリカの白いマツタケ、③欧州マツタ
ケ:特にモロッコからの輸入が多く、レバノンスギに生える。香りが強く、塩
漬けで輸入、コナラ、シイに生える、④ニセイマツタケ、⑤マツタケモドキ:
松林に生えるがマツタケのような香りはなく、菌糸成長速度がはやい、8cm/1
ヶ月(マツタケは 3cm/1 ヶ月)⑥バカマツタケ、コナラなどに生え、非常に香
りが強い、などがあります。韓国のマツタケは臭いがなく、日本のものと異な
るとよく言われますが、遺伝的には同じであること明らかになっています。ま
た、中国雲南省のものは見た目はよく似ていますが、遺伝的には異なっていま
す。詳しいことはわかっていませんが、中国は広大な国なので、それぞれの地
方で異なる生態があるのかもしれません。マツタケの生産量の推移に関しては、
広島県は平成元年から平成 13 年までは一度抜かれましたが、それ以外は全国一
でした。平成 14 年には長野県に抜かれ、平成 18 年には岩手県に抜かれました。
岩手県では岩泉にあるマツタケ研究所が率先してマツタケ山の手入れを行って
きたことが、よい結果に繋がったのだろうと思います。生産量は全国的に下降
しているのが現状です。今年は、広島県庄原市では昨年に比べ 2 倍近い収穫量
が得られ、広島県全体でもまあまあでしたが、逆に、岩手県では不作に終わっ
たようです。
マツタケの研究では、かって広島県立農業短期大学の故富永先生と共同研究
したことがあります。トンネル栽培と呼ばれる栽培法によってマツタケシロを
クーラーで冷やし、収穫量を向上させたこともあります。また、マツタケシロ
中にアミタケが生えると、シロ中のマツタケ菌糸がやられて生産量の低下する
こともわかりました。
植物を腐らせるキノコとしては霊芝が知られ、がん細胞の増殖を抑える漢方
薬として知られています。ウロコタケは、木材の外側の樹皮にあるリグニン部
分を分解せず、内側のセルロース部分を分解するキノコで、セルラーゼという
酵素を多く分泌します。一方で、逆に樹皮のリグニン成分を分解するキノコも
存在します。その他、植物を腐らせるキノコにクリタケ、ヒラタケ、ハラタケ
などがあり、ハラタケは一般にマッシュルームと言う名でスーパーなどで売ら
れています。マッシュルームは生育するに従って、傘が開き、褐色の胞子を形
成して食用には向かなくなるので、市販品は早い段階で摘み取ってしまったも
のなのです。植物を腐らせるキノコにヒトクチタケという生態的にユニークな
キノコもあります。このキノコはマツノマダラカミキリがアカマツに開けた穴
からよく発生します。食用ではありませんが、森の中のアカマツの生死を判断
する指標になっています。
動物に付くキノコには冬虫夏草と呼ばれ、虫を殺すものが知られています。
中でもヤンマタケは、木に止まったトンボを殺して、生育したものです。トン
ボの尾部を観察してみると子嚢が観察され、一瞬のうちに強力な殺虫物質を分
泌しているのではないかと思われます。これら冬虫夏草と呼ばれるキノコの一
群は探すのが非常に困難です。以前、日本菌学会の採集会で訪れた山形県の温
泉宿で玄関に冬虫夏草の標本が40種類以上置かれていて大変驚いたことを思
い出します。一般には上野の科学博物館に行けば、常設展示として沢山の種類
の冬虫夏草をみることができます。また、中国ではがんなどの薬として用いら
れているなど、大変興味深いキノコです。
次は死んだものに付くキノコのお話をします。
キノコは有機物の分解者としての役割を担い、木材や落ち葉を腐らせたり、排
泄物を分解したり、遺体を腐らせたりしています。森の中の小動物の遺体を腐
らせるキノコはアンモニア菌といわれ、京都大の相良直彦先生がネイチャーと
いう有名な雑誌に報告しています。アメリカで殺人事件が起きたときのエピソ
ードとして、森の中で遺体を捜索中にアンモニア菌が地上に大量に生えている
場所があり、その下を掘ったところ遺体が発見されたということです。排泄物
を分解するキノコは、馬糞や牛糞など様々な動物の糞を分解するグループです。
キノコもまた、最終的には自然に還るわけですから、タケリタケやヤグラタケ
のようにキノコを分解するキノコもいます。
これまで生態的にキノコについてお話してきましたが、これから子嚢菌や腹
菌類のキノコについて述べさせていただきます。
子嚢菌に含まれるキクラゲについてです。この仲間には、キクラゲ、アラゲキ
クラゲ、シロキクラゲ、アカキクラゲなどがあります。食用や薬用として広く
知られています。木の枝に付くチャダイゴケは大きさが 5mm ほどしかなく生態
的に非常にユニークなキノコです。5mm しかない子実体の中に偶然に雨粒が落ち
ると、その落下力で子実体の中の胞子を飛ばします。糸状の菌糸が付いている
胞子はその菌糸で植物の葉などに巻き付いて、そこで新たな生活を始めるので
す。腹菌類が虫に担子胞子を運んもらう、いわゆる虫媒キノコとして知られて
います。たとえば、キヌガサタケはアミン類を胞子から発散してハエをおびき
寄せ、胞子を運んでもらっています。中国では、このキノコの子実体に肉を詰
めた料理にして食用にしています。宮島にある広島大学理学部の付属植物園周
辺にも毎年出てきます。NHK が取材に来たこともあります。朝、薄日が差し始め
ると卵状の構造体から一気に子実体が出てきます。以前は竹林にのみ生育する
ので、竹と共生しているのではないかと考えられて、人工栽培は難しいと思わ
れていました。しかし、前述の富永先生の研究により、竹の葉や竹を畑に埋め、
その中に種菌を接種して60日ほどで子実体のできることがわかり、竹との共
生は否定されました。余談ですが、アメリカ大統領が最初に中国を訪れた際に
出された料理がこのきのこの料理だったそうです。現在は、量産化が進み、中
国のどこで乾燥物が簡単に手に入ります。
その他、藻類と菌類が共生した地衣類という微生物のグループもあります。
山の崖や岩場などにコケのように生えている生き物です。地衣類はこれまで産
業的はあまり注目されていませんでした。しかし、10年ほど前ぐらいから、
某建設会社がビル内の空気の浄化の研究を行っています。ビルの玄関内に池を
つくり、その中の岩に地衣類を生やすと、地衣類の藻類が光合成を行いビル内
の二酸化炭素を消費し、酸素を放出するわけです。菌類と共生していることに
よって餌を与える必要もないので管理の必要もないのです。現在も研究が行わ
れ、大変期待されています。
続いて、毒キノコの話に移ります。
ドクツルタケは我々の大学のキャンパス内でもよく見られます。毒性物質はア
マニチンといい、遺伝子 DNA から mRNA への転写酵素の阻害物質として知られて
おり、簡単に言えば遺伝子が働かなくなり、1本食べれば死んでしまいます。
このアマチニンは試薬として販売されており、遺伝子関連試薬や薬に使用する
動きもあります。10mg、3万円で売られています。このキノコの菌糸をフラス
コで培養してもアマニチンは生産されないので、キノコを作ったときにしか作
られない二次代謝産物だと考えられます。このように、研究的には面白いキノ
コですが非常に危険なキノコでもあります。ヒトヨタケは草地にも生えますが、
多くは牛糞や馬糞に生えます。食糧難だった昔には、馬糞上に生えたヒトヨタ
ケを食べていたと、本郷先生の図鑑には載っています。実際、中毒を起こし悪
酔い状態になります。通常、我々が飲酒したときアセトアルデヒドが蓄積しま
すが、アルコールデヒドロゲナーゼで分解します。ヒトヨタケを食べるとキノ
コに含まれているコプリンがアルコールデヒドロゲナーゼの酵素活性を阻害す
るため、アセトアルデヒドが蓄積されたままになり、二日酔いに似た症状にな
るわけですが、死ぬことはありません。ベニテングタケやテングタケにはイボ
テン酸が含まれ、食べてから 20~30 分後にこのイボテン酸により幻覚や精神撹
乱などの症状が出てきます。実際、京都大の探検部で、学生がこのキノコを食
べたところ、赤い絵の具で意味不明の絵を書き出したという事例もあります。
死には至りませんが、強い幻覚を引き起こすキノコです。ヒカゲシビレタケや
ワライタケはシロシピンという物質を含んでいます。私が広島大学に勤めてい
たころ、お墓の裏に生えていた小さなキノコを食べておばあさんが倒れたとい
う連絡を保健所から受けたことがあります。これらのキノコも死には至りませ
んが、強力な幻覚を伴うキノコで、日本のどこでも採集できます。インターネ
ットで販売されていたマジックマシュルームというキノコもこのキノコです。
メキシコには 1 週間踊り明かすお祭りがありますが、このキノコを食べ、幻覚
の極致に入り、踊り狂うそうです。ところが、筑波大の学生がインターネット
で購入したこのキノコを食べて幻覚状態になり、屋上から飛び降りという事件
が起きました。その後も似たような事件が数件起き、現在では麻薬の一種に登
録され、購入できなくなりました。しかし、タイの小さな島では今でもヒッピ
ーがオムレツなどに刻んで入れて、このキノコを食べています。胃腸障害を引
き起こすキノコには、クサウラベニタケ、ツキヨタケがあります。ツキヨタケ
は最近でも野生のシイタケと間違って食べられるキノコです。ツキヨタケは、
おがくず培地で人工栽培してキノコを作り、そのキノコを暗室に持っていくと、
その名のとおりキノコが光ります。ご存知の通り、オワンクラゲの発光物質の
研究がノーベル賞に輝きましたが、それとは全く別の物質であることが分かっ
ています。手足のしびれを引き起こすキノコにドクササコがあります。このキ
ノコも食べても死には至りませんが、手足のしびれが1週間以上続き、七転八
倒します。これも秋には日本中でよく見かけるキノコです。
ここからは産業重要なキノコについてお話いたします。まず食用キノコにつ
いてです。食用キノコにはシイタケ、エリンギ、ヤナギマツタケ、フクロタケ
などがあります。中でもフクロタケは東南アジアでよく栽培されているキノコ
です。タイでは有名なスープであるトムヤンクンには欠かせないキノコです。
世界で最も沢山栽培されているキノコはマッシュルームで、二番はシイタケ、
三番はフクロタケ、その次がエリンギとなっています。
日本ではマッシュルームはあまり栽培されていませんが、ヨーロッパでは生で
野菜の一種として食べています。ヨーロッパではマツタケの香りを靴下の臭い
匂いと感じる一方で、トリフを珍重するように地方や国によってキノコの好み
が異なるのも面白いことです。
キノコは野生のものを採って食べたり、栽培して食べたりしますが、キノコ
の菌糸をタンクで培養して酵素を生産させ、それをいろいろなことに利用して
います。例えば、コレステロールオキシダーゼという酵素は宝酒造(株)でキ
ノコの菌糸を用いて生産されていますが、この酵素は成人病予防の血液検査で
コレステロール値を測定するのに用いられています。その他、コレステロール
エステラーゼ、リポプロテインリパーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ビリルビ
ンオキシダーゼなども種々のキノコの菌糸を用いて生産され、成人病の検査試
薬として活躍しています。また、チーズの製造工程に用いられている凝乳酵素
も一部、キノコの酵素を用いています。チーズは牛乳中に乳酸菌を入れ、ヨー
グルト状にしたのち、凝乳酵素で固めます。今まではこの酵素を子牛の第4胃
から抽出してので、値段も高くつき、チーズは高級品とされていました。しか
し、東京大の有馬先生のグループがムコールというカビが凝乳酵素を生産する
ことを見出し、チーズが安くできるようになりました。また、一部の企業では
特許の関係で、このムコール酵素を使わず、キノコの酵素を使用しています。
続いてセルラーゼと呼ばれるセルロースを分解する酵素についてですが、毛糸
の毛羽などを取り除くために洗剤に入れられています。この酵素もキノコが生
産します。例えば、キノコを野外で採集して研究室に持ち帰り、その菌糸を分
離し培養すれば、このような酵素を得ることができます。このように、キノコ
の生産する酵素は我々の身近なところ、活躍しているのです。
酵素以外のキノコの有する生理活性物質について述べます。
皆さんご存知のように、制癌剤として知られているものの中に、キノコの多糖
類βグルカンがあります。しかし、最近の研究でβグルカンは癌細胞を殺すの
ではなく、マクロファージを賦活化する物質として認定され、薬ではないとし
て保険対象薬からはずされてしまいました。βグルカンは薬としてはずされま
したが、抗腫瘍物質として今でも様々なところで使用されています。その他、
シイタケ胞子から抽出されるエリダテニンはコレステロールを低下させる物質
として、また、カワラタケのクレスチンやマイタケの抗腫瘍性物質、ハナビラ
タケ、ヤマブシタケの多糖類も市販されています。中でも、アガリクスは有名
な抗腫瘍性物質を作るキノコとして有名でしたが、キリン(株)の市販したアガ
リクス製品の中にアガリチンという物質が多量に含まれていて、それで中毒を
引き起こしたということで一次生産がストップしました。その後、再生産され
ていますが。薬用効果のあるキノコのブクリョウは、マツの根に菌核を形成し、
パヒマンという多糖を生成しますが、ツムラ(株)はこの菌核を中国から輸入し
ています。メシマコブは桑の木に生えますが、かって東広島市の外科医が桑の
木を用いて人工栽培に成功しました。そして、そこに留学していた韓国人が母
国にその技術を持ち帰り、今では韓国で盛んに栽培され、ドリンク剤として売
られています。ヤマブシタケ、霊芝、冬虫夏草も薬用効果のあるキノコとして
よく知られ、冬虫夏草は特に中国のチベットに棲息する蛾の幼虫に生育するも
のが最高級とされています。
最後に私の研究室の仕事を3つ紹介させていただきたいと思います。
1 つ目は木質バイオマスからのバイオエタノール生産の研究です。
木材はセルロース、ヘミセルロース、リグニンからなっていますが、セルロー
スは 50%、ヘミセルロースは 20%でキシランとグルコマンナンを含んでいます。
リグニンは広葉樹で 20%、針葉樹では 30%ぐらいの割合だといわれています。
我々は木質バイオマスからアルコールを生産するために、木材の分解を行って
います。物理的処理では、ボールミルで粉砕するか、蒸気やγ線などの放射線
で破壊します。化学的処理としては、苛性ソーダ、亜硫酸ソーダによる分解が
あります。しかし、化学的処理では処理後の廃液が大きな問題となります。生
物学的処理では、セルラーゼ、キシラナーゼ、リグニナーゼという酵素を用い
ますが、廃液を出さない環境にやさしい分解を行うことができます。そこで、
我々はキノコの酵素を用いて木材を分解できないかと、研究を行っています。
木材の外側にあるリグニンは非常に複雑で硬い構造をしていて、自然界では微
生物による木材の攻撃を防いでいます。しかし、キノコは木材上に生育してい
るので、木材を分解する能力を持っているわけです。これは他の微生物にはな
い能力であります。
2 つ目はキノコ廃菌床を用いたダイオキシンの分解です。
通常、市販のキノコは、おがくずを栽培ビンに入れ、滅菌後、種菌を接種して
培養します。培養温度や培養期間はキノコにより異なりますが、ブナシメジの
場合は 25 度、約 60 日間です。キノコが形成されるとキノコの部分だけ収穫し
販売されますが、ビンの中のおがくずと菌糸部分(廃菌床という)は捨てられ
ています。日本一大きなキノコ栽培会社であるホクト(株)ではこの廃菌床が 1
日に 3.8 トン排出され、農家に堆肥の材料として提供したり、焼却処分してい
ます。キノコ栽培に使用されるおがくずは日本では、アカマツやスギを使用し
ています。しかし、これら針葉樹の樹液はフェノール化合物を多く含み、抗菌
作用が強いため、キノコ栽培には適していません。そのため、毎日おがくずに
水をかけて樹液を抜く作業を約 2 ヶ月間行ってから使用しています。ホクト(株)
では針葉樹のおがくずを使わず、トウモロコシの芯(コーンコブ)を粉砕して
使用しています。コーンコブはキシラン(キシロースの高分子)から成ります
が、この廃菌床を堆肥化したものは、樹液成分が無く、農家の方々にも好まれ
ています。我々はホクト(株)のブナシメジ廃菌床を用いてダイオキシンを 60%
分解することに成功しました。現在長野県では、ホクト(株)から出た廃菌床を
畑に埋め、ダイオキシンやPCBの分解を行いながら野菜などの栽培をしてい
ます。我々の発表後、日本にあるベトナム大使館から我々の方法でダイオキシ
ンを分解できないかと相談を受け、現在ベトナムでのダイオキシン分解を行っ
ています。ベトナムはベトナム戦争時、米軍によって大量の枯葉剤(ダイオキ
シン)が散布されており、これらの汚染地帯を中心に廃菌床を埋めています。
3 つ目の研究ですが、10 年ほど前から文部省の援助により、タイのキノコ図鑑
作製を行ってきましたが、タイのカセサート大学や山口大学の研究者らの協力
を得て、発刊の運びとなりました。タイのキノコで特徴あるものを紹介します
と、オオシロアリタケがあります。種類は十数種類あって分類は複雑です。シ
ロアリが巣の中でキノコを栽培し、その菌糸を餌にして食べています。シロア
リがその巣を放棄して別の場所に移ると、菌糸が成長して、地上部にキノコが
現れてくるわけです。まだまだ、沢山のキノコがタイにも存在していますが、
これからも調査していきたいと思っています。
キノコの魅力ある世界を紹介させていただきました。どうもご清聴有難う御
座いました。
世界のマツタケ
① 日本のマツタケ、②アメリカの白いマツタケ、③欧州マツタケ
④ニセマツタケ、⑤マツタケモドキ、⑥バカマツタケ
⑦不明
タイのキノコ、オオシロアリタケ
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