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英語での口頭発表はこう乗り切る!

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英語での口頭発表はこう乗り切る!
株式会社 翻訳センター
英語での口頭発表はこう乗り切る!
第 1 回 : 「これで万全!下準備」
学会に英文抄録を送り、口頭発表演題に採択されたら、大きな喜びとともに不安も頭をよぎるかもしれません。
初めての英語口頭発表なら尚更です。でも、せっかくの機会、悔いなく終わらせたいですよね。口頭発表はどのよ
うに準備すればよいのでしょうか? ここでは全 6 回にわたって、英語口頭発表に関するポイントをご紹介させて
いただきます。第 1 回は、採択決定後まず取り組みたい「下準備」についてです。
X 準備は早めに!
英語での口頭発表の準備は、スライド作成、読み原稿の執筆、口頭発表の練習、そして原稿修正と多数あり、
慣れないうちは時間がかかるものです。緊急患者などに追われ、どんどん時間がなくなる可能性もあります。作業
にかかる時間を逆算して、できるかぎり早く準備に取り掛かることが重要です。
X 準備の進め方
以下の表に示す順番で用意していきます。期限はあくまでも目安です。本番は実際より 1 週間前に行われるつ
もりでいるとよいでしょう。もし生まれて初めての英語口頭発表なら、発表の 1 ヶ月程前に読み原稿を完成させ、1
ヶ月間を英語の読み練習にあてるくらいの余裕を持つことが理想です。
口 頭 発 表 の 準 備 手 順
≪スケジュールの一例≫
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
抄録のストーリーの確認
↓
データ確認
↓
典型例の写真等の材料集め
↓
プレゼンテーション・ファイル作成
↓
読み原稿作成
↓
読み練習
↓
プレゼンテーション・ファイル、読み原稿修正
↓
読み練習
↓
発表予行
↓
再修正
↓
発表練習
↓
予想質問、回答練習
↓
本番
(採択通知後速やかに*)
(採録確認後速やかに*)
(採録確認後速やかに*)
(35日前)
(28日前)
(28∼24日前)
(28∼24日前)
(24∼11日前)
(10日前)
(9日前)
(8∼1日前)
(8∼1日前)
* データや典型例の追加が必要かもしれません。
[上松正朗 著、南都伸介 監修 『英語抄録・口頭発表・論文作成虎の巻−忙しい若手ドクターのために−』(南江堂、2006 年)より引用]
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X 今回の『有益な情報』とは?
『聴き手に有益な情報を与えること』が、発表の目的です。今回の発表で強調すべき 『有益な情報』 とは何で
しょう。それを見出すためには、採択された自分の抄録をしっかりと読み直し、どこが良かったから採択されたの
かを把握することが大切です。最も伝えたい内容が明確になるよう論理を組み立て、流れに矛盾がないか十分に
確認します。
下準備が済んだら、プレゼンテーション・ファイル作成と、発表の読み原稿作成にとりかかります。続いて、読み
原稿作成のポイントについて、ご案内いたします。(プレゼンテーション・ファイル作成については、最後に記載す
る参考書籍などをご参照ください。)
第 2 回 : 「読み原稿を作成しよう[1]」
X 必ず読み原稿を作りましょう
プレゼンテーション・ファイルが出来上がったら、次は読み原稿作りです。どんなに英語に自信があっても、かな
りベテランになってフリーでプレゼンテーションしようとする場合でも、一度は読み原稿を作ることをお勧めします。
その理由は、一般演題では時間の制限が厳しいため、短い時間内で十分な情報を伝えるには、あらかじめ読み
原稿を作って時間を計り、無駄を省いておく必要があるからです。アメリカ大統領でもプロンプターを使って原稿を
読んでいます。悔いなく発表するために、必ず読み原稿は用意しましょう。
X どのくらいの分量にするか
A4 ダブルスペース(注)1枚分を、およそ 2.5 分で話すのが目安と言われています(英語スピーチがより流暢な
人であれば、もう少し分量が増えるかもしれません)。ですから 5 分の発表なら 2 枚くらい、10 分の発表なら 4 枚く
らいの読み原稿に仕上げておけばよいでしょう。発表スライドの数もあまり多くせず、1 分間に 2 枚程度が望ましい
とされています。
(注:「ダブルスペース」は「段落」の「インデントと行間隔」の設定における行間「2 行」とは異なります。行間「固定
値」で間隔「24p」と設定してください。1 枚につき 27∼30 行になります。)
X 『聴いて理解しやすい英文』 に
読み原稿を書く際には、『聴いて理解しやすい英文』にするよう心がけましょう。そのためには関係代名詞の多
用を避け、文章を短くシンプルにします。接続詞も、日本語と異なり、逆説の場合を除いてはあまり使用しません。
例えば日本人は therefore を多用しがちですが、前後にかなり厳密な因果関係がある場合以外、入れる必要はあ
りません。
X スクリーンと読み原稿の文章は一致させる
もしスクリーンに文章があれば、それは必ず読み原稿にも入れます。そして読み原稿の文章は、スクリーンの
文章を若干補足するにとどめます。スクリーンに長い文章を示しながら、まったく異なる内容を話してしまうと、聴
衆はついていけなくなり、そのうち聴いてもらえなくなってしまいます。十分に背景を口頭で説明したい場合は、ス
クリーンには文章ではなく、シェーマを示すほうがよいでしょう。
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第 3 回 : 「読み原稿を作成しよう[2]」
X ポインタに頼るより、読み原稿に工夫を
原稿を読みながらスクリーンを指し示すのは厄介です。ポインタで指した後、原稿のどこに戻ればよいのか分
からなくなることや、ポインタで指すことに気をとられて、聴衆とのアイコンタクトがおろそかになってしまうことがあ
ります。そこで、読み原稿に工夫をし、スクリーンのどこを見ればよいか分かるような説明を、予め入れておく方法
があります。例えば以下のような文章を用います。
In the upper right panel, shown is the XXX, in the lower middle, is the YYY.
The device used in the measurement, as demonstrated in the middle panel, ….
The red arrow shows….
Arrows indicate….
こうすれば、ポインタで指さなくても聴衆は楽にスクリーンをフォローでき、タイムロスが少なく、短時間でかえっ
て多くのことを伝えることができます。演者も気持ちにゆとりをもって発表できるでしょう。
X スクリーンに映したものは、きちんと説明を
細かな表を映して、 The results are shown in this slide (結果はスライドのごとくです)
と言った後、すぐに次
の画面に移るようなことは避けましょう。スクリーンに映したなら、それが何を示しているか、きちんと説明するよう
にします。グラフの場合、「縦軸は何、横軸は何、カラムは何」ということを読み上げ、聴衆がフォローできるように
します。
The graph demonstrates the changes in ….
The vertical axis represents XXX, and the horizontal axis, YYY.
Open bars indicate XXX, and solid bars indicate YYY….
X <ここまでやると、さらに安心>
発表の冒頭で、座長に対する紹介のお礼と、聴衆に対する呼びかけを行いますが、初めての英語発表では極
度の緊張に襲われ、言葉がすぐに出なくなることもあるようです。そこで、 Thank you, Dr. XXX, ladies and
gentleman といった出だしの文章や、最後の、 Thank you for your attention, lights on, please なども、読み原
稿に書いておくほうが安心です。座長は chairman と呼びかけるよりも名前で呼びましょう。相手の名前を呼ぶこと
で、個人を尊重していることを表現できます。
慣れないうちは、読み練習に入る前に、周囲の慣れた人に読み原稿をチェックしてもらったほうがよいでしょう。そ
の後、時間を計って読み練習を行い、読み原稿を加筆修正していきます。ある程度完成したら、英文校正をかけま
す。そして読み練習と、本番を想定したリハーサルも行います。次回は、読み練習についてご紹介いたします。
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第 4 回:「読み練習とリハーサル[1]」
英文校正をかけた読み原稿をもとに、読み練習を行いましょう。
X 声に出して練習しましょう
発表原稿ができただけで安心してしまっては不十分です。読み練習は必ず声に出して行いましょう。読み練習
をしながら、不適切なところ、読みにくいところを直していきます。自然なスピードで読み、時間を計り、きちんと制
限時間内に収まるように仕上げます。また、他の人にも聴いてもらい、分かりにくい点などを指摘してもらいまし
ょう。
X 単語の言い換え
原稿を読んでみて、どうもしっくりこない部分や、聴いてもらった人によく理解されない点があったら、自分にとっ
て発音しやすい同義語に置き換えるという方法があります。電子辞書のシソーラスを使って検索しましょう。例文
をみて、内容にふさわしい単語であるかを確認してください。以下は言い換えの例です。
acquire
administered
conception
discontinued
examination
inconclusive
necessity
separated
→
→
→
→
→
→
→
→
get
given
idea
stopped
test
unclear
need
divided
X 再校正
読み練習後、かなり原稿を修正した場合は、再度 英文校正をかけたほうが安心です。業者によっては、同じ原
稿の再校正なら、割引価格(例えば翻訳センターは3割引)などで受け付けています。
X 録音を活用しましょう
ぜひ自分の発表をデジタルレコーダーなどで録音して、プレゼンテーション・ファイルを見ながら聞きなおしてみ
ましょう。聴衆の立場に立って、できるだけ客観的に自分の発表を確認します。また、作成した読み原稿を Native
English speaker に読み上げてもらい、その音声データを参考にして練習すれば、よりいっそう伝わる英語で発表
することができるでしょう。
『発表は中身で勝負』 と、英語の発音にこだわらない考え方もあると思います。しかしせっかく苦労して準備す
る貴重な機会、聴衆に 『聴きづらいな』 と思われては損失です。どうせなら聴きやすい発音とイントネーションで、
より多くの聴衆に訴えましょう。
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第 5 回 : 「読み練習とリハーサル[2]」
読み練習を重ねたら、本番を想定したリハーサルを行いましょう。
X リハーサル
ある程度練習したら、会議室など演台のある大きな部屋で、一度はリハーサルを行ってください。ここからはイメ
ージトレーニングです。まさに発表しようとする自分を想像しながら、演台に上がりましょう。仮想の座長に向かっ
て挨拶をし、聴衆に挨拶をします。ばかばかしいようですが、本番で過剰に緊張しないために大切ですから、照れ
くさがらずに行ってください。
X 呼吸を意識して
発声前にまず呼吸を整えましょう。人前で話すのは、個人差はあるにせよ誰にとってもストレスですから、発表
直前は過換気になりがちです。そこで練習中から意識的にゆっくり息をはき、呼吸を整えるようにしましょう。腹筋
と横隔膜を使った、腹式呼吸を行います。深く呼吸することで、緊張を和らげることができます。
X アイコンタクト
アイコンタクトは非常に重要です。原稿を暗記して、聴衆を見ながら口演できれば理想的ですが、英語での発
表では、やはり手元の原稿に頼ることもあるでしょう。原稿を見ながら発表を行う場合でも、原稿に目を奪われっ
ぱなしで全く顔を上げないのでは、自信がないようにみえて信用されません。原稿の区切りごとに必ず顔を上げ、
聴衆の顔を見ましょう。このとき原稿をさりげなく指で押さえておくと、元に戻りやすいです。会場の四隅のやや内
側あたりの席の人に、順次まんべんなくアイコンタクトすれば、会場の人たちは皆自分に注目して話してくれてい
るように感じます。ポインタを用いる場合、スクリーンばかり見て話さないようご注意ください。
原稿の棒読みと受け取られないよう、十分な練習を行い、自信をもって本番に臨みたいですね。
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第 6 回(最終回) : 「いよいよ本番!」
会場での心得についてまとめてみました。
X 早めに会場入りして準備を
本番前には必ず早めに会場に着き、できるだけ前のほうの席を確保します。質問をすることを考えると、会場の
前方で座長の反対側、フロア用のマイクロフォンの少し後ろが最も良い席です。自分の順番が近づいたら、次演
者席の近くに座ります。後ろのほうから急いで登壇することは避けます。もし可能なら前日の休憩時間に同じ会場
の演壇に立ち、会場を見渡してみましょう。会場の大きさに慣れることができます。
X 他の演題に質問しよう
せっかく遠路はるばるお金と時間をかけて参加するのですから、ぜひ他の演題で質問してみましょう。英語でも
日本語でもよいので簡単なメモを取りながら聴くと、質問しやすくなってよいと思います。慣れないうちは、質問の
文章をメモに書いてから訊いてもよいでしょう。慣れれば頭の中でできるようになります。
X 本番は練習のように、練習は本番のように
いよいよ自分の番です。練習通り、腹式呼吸で緊張をほぐし、体の正面を聴衆に向け、聴衆とのアイコンタクト
を心がけながら発表しましょう。マイクスタンドを使っても構いませんが、マイクを手に持つと、背筋を伸ばして良い
姿勢で発表することができ、自分自身にも周囲にも余裕を感じさせる効果があります。背筋を伸ばすと演台と目と
の距離は離れてしまうので、読み原稿は読みやすい大きめの文字で用意しましょう。前もって読み練習を十分行
い、口をついて出てくるくらいになっていれば安心です。
本 番 で の 心 得
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
前日までに会場の下見をする。
↓
当日は時間に余裕を持って到着し、パソコンのチェックをすませる。
↓
演壇の近くに座る。
↓
腹式呼吸。
↓
スライドの切れ目で必ず聴衆を見る(アイコンタクト)。
↓
聴衆のために有意義な情報を提供するのだという気持ちを持つ。
↓
発表を楽しむ。
[上松正朗 著、南都伸介 監修 『英語抄録・口頭発表・論文作成虎の巻−忙しい若手ドクターのために−』(南江堂、2006 年)より引用]
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X 質疑応答のポイント
発表が済んだら、再び緊張が張り詰める質疑応答です。深呼吸をし、落ち着いてよく聴きましょう。質問されて
いる間、日本語の単語でもよいので、すばやくメモをとりましょう(そのための紙とペンを演壇に持って上がるのを
忘れずに)。質問に対する答えは、結論を先に述べてから、説明や根拠を加えます。まずは That s a very good
question. や、 You raise a very interesting point. と答えておき、この間に考えるという方法もあります。もしも相
手が長々と質問してきて、聴き取れなくなってしまったら、 I m sorry. I can t follow your questions. Would you
please summarize your points?
とお願いします。どうしても質問を理解できない場合は、座長に助けを求めまし
ょう。
X 発表をぜひ楽しんで!
英語口頭発表はストレスも多く大変ですが、やり遂げた後の充実感は格別だと思います。聴衆が自分の発表に
関心を示し、共感し、「今日はためになった、来てよかった」と思ってくれたら、どんなに嬉しいことでしょう。万全に
準備を行い、発表を楽しむ気持ちで臨めたら最高ですね。
[参考書籍:『英語抄録・口頭発表・論文作成虎の巻−忙しい若手ドクターのために−』 南都伸介 監修、上松正朗 著、2006 年、南
江堂/『流れがわかる学会発表・論文作成 How to』 佐藤雅昭・和田洋巳・中村隆之 著、2004 年、メディカルレビュー社]
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