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中国経済の現状と課題
2014.1.8 中国経済の現状と課題 財務省財務総合政策研究所 次長 田中 修 Ⅰ.11 月及び 1-11 月期の主要経済指標 (1)物価 ①消費者物価 11 月の消費者物価は前年同期比 3.0%上昇し、 上昇率は 10 月より 0.2 ポイント鈍化した 1。 都市は 3.0%、農村は 3.1%の上昇である。食品価格は 5.9%上昇し(10 月は 6.5%) 、非食 品価格も 1.6%上昇(10 月は 1.6%)している。衣類は 2.0%、居住価格は 2.6%上昇した 2 。 (参考) 1 月 2.0%→2 月 3.2%→3 月 2.1%→4 月 2.4%→5 月 2.1%→6 月 2.7%→7 月 2.7% →8 月 2.6%→9 月 3.1%→10 月 3.2%→11 月 3.0% 前月比では、10 月より 0.1%下落(10 月は 0.1%)した。食品価格は 0.2%下落(10 月 は-0.4%)であった。うち生鮮野菜は 3.8%下落(10 月は-2.8%)し、約-0.12 ポイント の影響を与えた。豚肉価格は 0.5%下落した。非食品価格は同水準(10 月は 0.3%) 、衣類 は 0.6%上昇(10 月は 1.0%) 、居住価格は 0.2%上昇(10 月は 0.2%)であった。 1-11 月期は同 2.6%の上昇である。 食品・エネルギーを除いた消費者物価(コア消費者物価)は、前年同期比 1.8%上昇(10 月は 1.8%) 、前月比 0.0%(10 月は 0.3%)である 3 。1-11 月期では 1.7%となる。 なお、国家統計局は、11 月の前年同期比上昇率 3.0%のうち食品価格の牽引効果は約 1.92 ポイントとなり、このうち食糧価格の上昇は 4.0%、物価への影響は約 0.12 ポイント、肉 類及び肉製品は 5.5%上昇、物価への影響は約 0.41 ポイント(豚肉価格は 5.0%上昇、物価 への影響は約 0.16 ポイント)である。このほか生鮮野菜価格が 22.3%上昇、物価への影響 が約 0.59 ポイント、水産品価格の上昇が 6.5%、物価への影響が約 0.16 ポイント、果物価 格の上昇が 10.6%、物価への影響が約 0.20 ポイントであったとしている。 また、昨年の物価上昇の残存効果は 0.7 ポイント、今年の新たな物価上昇要因は約 2.3 ポ イントである。 直近のピークは 2011 年 7 月の 6.5%である。 国家統計局によれば、2011 年のウエイト付け改定で、居住価格のウエイトは 20%前後 になったとしている。 3 コア消費者物価は 2013 年から公表が開始された。 1 2 1 ②工業生産者価格 4 11 月の工業生産者出荷価格は前年同期比 1.4%下落し、10 月より 0.1 ポイント下落が鈍 化した 5。前月比では 10 月と同水準(10 月は 0.0%)であった。1-11 月期は同-2.0%で ある。 (参考)1 月-1.6%→2 月-1.6%→3 月-1.9%→4 月-2.6%→5 月-2.9%→6 月-2.7% →7 月-2.3%→8 月-1.6%→9 月-1.3%→10 月-1.5%→11 月-1.4% 11 月の工業生産者購入価格は、前年同期比 1.5%下落(10 月は-2.0%)した。前月比で は 10 月と同水準(10 月は 0.1%)であった。1-11 月期は-2.1%である。 ③住宅価格 11 月の全国 70 大中都市の新築分譲住宅販売価格は前月比 1 都市が低下(10 月は 2)し、 3 都市が同水準(10 月は 3)であった。上昇は 66 都市であり(10 月は 65) 、最高上昇率は 桂林 1.3%(10 月の最高は済寧 1.3%)となっている。前月比で下降の都市は 10 月より 1 減少し、上昇は 1 増加した。 前年同月比では、価格が下落したのは 1 都市(10 月は 1)であった。上昇は 69 都市(10 月は 69)である。最高上昇率は、上海 21.9%(10 月の最高は上海 21.4%)となっている。 (2)工業 11 月の工業生産は前年同月比実質 10.0%増となった。主要製品別では、発電量 6.8%増 (10 月は 8.4%) 、鋼材 10.0%増(10 月は 12.3%) 、セメント 10.0%増(10 月は 8.9%) 、 自動車 25.6%増(うち乗用車 19.9%増)となっている。10 月の自動車 25.5%増(うち乗用 車 20.0%増)と同水準である。前月比では、0.76%増となった6。地域別では、東部 9.2% 増、中部 11.6%増、西部 10.0%増であった。 (参考)1-2 月 9.9%→3 月 8.9%→4 月 9.3%→5 月 9.2%→6 月 8.9%→7 月 9.7%→8 月 10.4%→9 月 10.2%→10 月 10.3%→11 月 10.0% 1-11 月期では前年同期比実質 9.7%増となった。主要製品別では、発電量 7.0%増、鋼 材 11.5%増、セメント 9.2%増、自動車 18.1%(うち乗用車 16.6%増)となっている。 (3)消費 11 月の社会消費品小売総額は 2 兆 1012 億元、前年同月比 13.7%増(実質 11.8%増)で ある。前月比では、1.32%増である 7。うち穀物油・食品・飲料・タバコ 14.1%増、アパレ ル・靴・帽子類 9.4%増、建築・内装 25.7%増、家具 24.8%増、自動車 11.6%増、家電・ 2011 年から、 「工業品工場出荷価格」は「工業生産者工場出荷価格」に、 「原材料・燃 料・動力購入価格」は「工業生産者購入価格」に名称が改められた。 5 直近のピークは 2011 年 7 月の 7.5%である。 6 1 月は 0.62%増、2 月は 0.83%増、3 月は 0.71%増、4 月は 0.92%増、5 月は 0.69%増、 6 月は 0.74%増、7 月は 0.88%増、8 月は 0.92%増、9 月は 0.71%増、10 月は 0.85%増で ある。 7 1 月は 0.15%増、2 月は 0.95%増、3 月は 1.31%増、4 月は 1.27%増、5 月は 1.19%増、 6 月は 1.26%増、7 月は 1.23%増、8 月は 1.12%増、9 月は 1.21%増、10 月は 1.18%増で ある。 4 2 音響機器類 19.6%増となっている。自動車は 10 月の 14.2%増より減速した。 (参考)1-2 月 12.3%→3 月 12.6%→4 月 12.8%→5 月 12.9%→6 月 13.3%→7 月 13.2% →8 月 13.4%→9 月 13.3%→10 月 13.3%→11 月 13.7% 1-11 月期の社会消費品小売総額は 21 兆 1320 億元、前年同期比 13.0%増である。都市 は同 12.8%増、郷村は同 14.5%増であった。一定額以上の企業(単位)消費品小売額は 10 兆 6234 億元、同 11.4%増であり、うち穀物油・食品・飲料・タバコ 13.8%増、アパレル・ 靴・帽子類 11.6%増、建築・内装 21.7%増、家具 21.1%増、自動車 10.0%増、家電・音響 機器類 14.9%増となっている。一定額以上のレストランの収入は-1.6%であった。 (4)投資 ①都市固定資産投資 1-11 月期の都市固定資産投資は 39 兆 1283 億元で、前年同期比 19.9%増であった。単 月は前月比では 1.47%増である8。中央プロジェクトは 2 兆 632 億元、13.4%増であり、地 方プロジェクトは 37 兆 650 億元、20.2%増であった。地域別では、東部 18.4%増、中部 23%増、西部 23.1%増となっている。鉄道運輸は 2.4%増(10 月は 4.2%)であった。 (参考)1-2 月期 21.2%→1-3 月期 20.9%→1-4 月期 20.6%→1-5 月期 20.4%→1-6 月期 20.1%→1-7 月期 20.1%→1-8 月期 20.3%→1-9 月期 20.2%→1-10 月期 20.1%→1-11 月期 19.9% 1-11 月期の新規着工総投資計画額は 32 兆 8420 億元であり9、前年同期比 14.3%増(10 月は 14.4%) である。 都市プロジェクト資金の調達額は 43 兆 3419 億元で、前年同期比 20.2% 増(10 月は 20.2%)となった。うち、国家予算資金が 15.4%増、国内貸出が 17%増、自 己資金が 20.6%増、外資が-5.2%、その他資金が 24.9%増となっている。 ②不動産開発投資 1-11 月期の不動産開発投資は 7 兆 7412 億元で前年同期比 19.5%増である。うち住宅は 5 兆 3112 億元、19.1%増で、不動産開発投資に占める比重は 68.6%である。地域別では、 東部 17.3%増、中部 21.7%増、西部 23.1%増となっている。 (参考)1-2 月期 22.8%→1-3 月期 20.2%→1-4 月期 21.1%→1-5 月期 20.6%→1-6 月期 20.3%→1-7 月期 20.5%→1-8 月期 19.3%→1-9 月期 19.7%→1-10 月期 19.2%→1-11 月期 19.5% 1-11 月期の分譲建物販売面積は 11 億 807 万㎡で、前年同期比 20.8%増(10 月 21.8%) であった。うち、分譲住宅販売面積は 21.3%増(10 月 22.3%)である。地域別では、東部 22.2%増、中部 22.2%増、西部 16.7%増である。 1-11 月期の分譲建物販売額は 6 兆 9946 億元、前年同期比 30.7%増(10 月 32.3%)で 1 月は 1.45%増、2 月は 1.36%増、3 月は 1.58%増、4 月は 1.51%増、5 月は 1.44%増、 6 月は 1.47%増、7 月は 1.49%増、8 月は 1.54%増、9 月は 1.32%増、10 月は 1.42%増で ある。 9 2011 年から計画総投資額のベースは、50 万元以上のプロジェクトから 500 万元以上の プロジェクトに引き上げられた。 8 3 あった。うち、分譲住宅販売額は 31.1%増である。地域別では、東部 33.1%増、中部 31.8% 増、西部 22.6%増である。 1-11 月期のディベロッパーの資金源は 10 兆 9475 億元であり、 前年同期比 27.6%増 (10 月 27.2%)であった。うち、国内貸出が 1 兆 7667 億元、33.8%増、外資が 475 億元、28.0% 増、自己資金が 4 兆 2742 億元、20.8%増、その他資金 4 兆 8592 億元、31.9%増(うち、 手付金・前受金 3 兆 534 億元、32.1%増、個人住宅ローン 1 兆 2657 億元、36.5%増)であ る。 ③民間固定資産投資 1-11 月期の全国民間固定資産投資は 24 兆 8381 億元であり、前年同期比 23.2%増であ る 10。民間固定資産投資は、都市固定資産投資の 63.5%を占める。地域別では、東部 20.7% 増、中部 25.3%増、西部 26.2%増である。 (参考)1-2 月期 24.6%→1-3 月期 24.1%→1-4 月期 23.9%→1-5 月期 23.8%→1-6 月期 23.4%→1-7 月期 23.3%→1-8 月期 23.3%→1-9 月期 23.3%→1-10 月期 23.4%→1-11 月期 23.2% (5)対外経済 ①輸出入 11 月の輸出は 2022.1 億ドル、前年同期比 12.7%増、輸入は 1684 億ドル、同 5.3%増と なった。貿易黒字は 338.1 億ドル、同 73.4%増であった。 (参考)輸出:1 月 25%→2 月 21.8%→3 月 10.0%→4 月 14.7%→5 月 1%→6 月-3.1%→ 7 月 5.1%→8 月 7.2%→9 月-0.3%→10 月 5.6%→11 月 12.7% 輸入:1 月 28.8%→2 月-15.2%→3 月 14.1%→4 月 16.8%→5 月-0.3%→6 月- 0.7%→7 月 10.9%→8 月 7%→9 月 7.4%→10 月 7.6%→11 月 5.3% 1-11 月期の輸出は 2 兆 23.2 億ドル、前年同期比 8.3%増、輸入は 1 兆 7681.7 億ドル、 同 7.1%増であった。貿易黒字は 2341.5 億ドル、同 18.3%増であった。 1-11 月期の輸出入総額では全体が前年同期比 7.7%増であったのに対し、対EU1.8%増、 対米 7.6%増、対日-6.2%11、対アセアン 10.9%増である。 1-11 月期の労働集約型製品のうち、アパレル類前年同期比 12%増、紡績 11.5%増、靴 9.4%増、家具 7.9%増、プラスチック製品 11.7%増、鞄 12.6%増、玩具 8.9%増で、これ ら 7 製品は全部で 11.1%増、全体の 18.8%を占める。電器・機械は同 7.9%増で、全体の 57.3%を占める。 1-11 月期の自動車輸入は、前年同期比 2.2%増であった。 ②外資利用 11 月の外資利用実行額は 84.8 億ドルであり、前年同期比 2.35%増であった。 この統計は 2012 年から公表が開始された。 1-11 月期の日本への輸出は 1368.0 億ドル、日本からの輸入は 1473.1 億ドルである。 11 月の輸出は 2.9%増(10 月は 5.6%)、輸入は 2.3%増(10 月は-3.6%)である。 10 11 4 (参考)1 月-7.3%→2 月 6.32%→3 月 5.65%→4 月 0.4%→5 月 0.29%→6 月 20.12%→7 月 24.13%→8 月 0.62%→9 月 4.88%→10 月 1.24%→11 月 2.35% 1-11 月期では、1055.06 億ドルであり、同 5.48%増であった。 1-11 月期、製造業は 414.58 億ドルであり、同-5.71%、全体の 39.3%を占める。サー ビス業は 542.47 億ドルであり、同 14.04%増、全体の 51.4%を占める。 1-11 月期、国別では、EU68.19 億ドル、同 17.36%増、日本 67.59 億ドル、同 2.29% 増(1-10 月期は 6.31%) 、米国 31.62 億ドル、同 8.6%増である。 1-11 月期、地域別では、東部は 881.64 億ドル、同 5.17%増、全体の 83.8%を占める。 中部は 91.99 億ドル、同 9.52%増、全体の 8.7%を占める。西部は 81.43 億ドル、4.51%増、 全体の 7.5%を占める。 ③米国債保有 10 月末の米国債保有残高は、中国が前月比 107 億ドル増の 1 兆 3045 億ドルであった。2 位の日本は 37 億ドル減で 1 兆 1744 億ドルであった。 (6)金融 11 月末の M2 の伸びは前年同期比 14.2%増と、10 月末より 0.1 ポイント減速し、前年同 期より 0.3 ポイント加速した。M1 は 9.4%増で、10 月末より 0.5 ポイント加速し、前年同 期より 3.9 ポイント加速した。11 月の現金純放出は 846 億元であった。 人民元貸出残高は 71.41 兆元で前年同期比 14.2%増であり、伸び率は 10 月末と同水準、 前年同期より 1.5 ポイント減速した。11 月の人民元貸出増は 6246 億元(10 月は 5061 億 元)で、前年同期より伸びが 1026 億元増加している。1-11 月期では、8.41 兆元であり、 前年同期より伸びが 6600 億元増加している。 人民元預金残高は 103.23 兆元で、前年同期比 14.5%増であった。11 月の人民元預金は 5472 億元増で、前年同期より伸びが 733 億元増加している。うち個人預金は 940 億元増、 企業預金は 3877 億元増であった。1-11 月期の預金増は 11.41 兆元で、前年同期より伸び が 2.18 兆元増加している。 (参考) M2 : 1 月 15.9%→2 月 15.2%→3 月 15.7%→4 月 16.1%→5 月 15.8%→6 月 14.0% →7 月 14.5%→8 月 14.7%→9 月 14.2%→10 月 14.3%→11 月 14.2% なお、1-11 月期の社会資金調達規模は 16.06 兆元であり、前年同期比 1.92 兆元増とな った。11 月は 1.23 兆元であり、前年同期より 1053 億元多かった。うち、人民元貸出は 6246 億元増、委託貸付は 2704 億元増、信託貸付は 1018 億元増、企業債券による純資金調達は 1383 億元増である。 (7)財政 11 月の全国財政収入は 9125 億元で、前年同期比 1254 億元、15.9%増であった 12。税外 主な収入の内訳は、国内増値税 2486 億元、前年同期比 12.7%増、国内消費税 586 億 元、8.1%増、営業税 1199 億元、4.9%、企業所得税 577 億元、17.5%増、個人所得税 458 億元、12.2%増、輸入貨物増値税・消費税 1281 億元、6.4%増、関税 241 億元、9.2%増、 12 5 収入は 1553 億元、同 39.7%増である。 1-11 月期の全国財政収入は 11 兆 9650 億元で、前年同期比 1 兆 747 億元、9.9%増に達 した。中央財政収入は 5 兆 7083 億元で、同 6.5%増、地方レベルの収入は 6 兆 2567 億元、 同 13.1%増である。 1-11 月期の税収は 10 兆 2877 億元で、同 10%増となっている。 (参考)財政収入: 1-2 月 7.2%→3 月 6.1%→4 月 6.1%→5 月 6.2%→6 月 12.1%→7 月 11%→8 月 9.2%→9 月 13.4%→10 月 16.2%→11 月 15.9% 1-11 月期の全国財政支出は 11 兆 4697 億元で、同 9802 億元、9.3%増に達した 1314。中 央レベルの支出は 1 兆 7746 億元、同 4.7%増、地方財政支出は 9 兆 6951 億元、同 10.2% 増である。 (8)社会電力使用量 11 月は前年同期比 8.5%増であった。 1-11 月期は同 7.5%増である。うち、第 1 次産業は 0.1%、第 2 次産業は 6.9%増、第 3 次産業は 10.8%増、都市・農村住民生活用は 9.4%増であった。 (参考)1-2 月 5.5%→3 月 2.0%→4 月 6.8%→5 月 5.0%→6 月 6.3%→7 月 8.8%→8 月 13.7%→9 月 10.4%→10 月 9.5%→11 月 8.5% Ⅱ.党3中全会 本稿では、習近平総書記が党 3 中全会で行った「改革全面深化における若干の重要問題 に関する党中央決定」の説明内容について、経済関連部分と新設される 2 組織に関連する 部分の概要を紹介する(新華網北京電 2013 年 11 月 15 日) 。 1.全会決定の総体枠組みと重点問題 1.1 総体的枠組み 35 年来、我々は改革という方法を用いて、党・国家事業の発展における一連の問題を解 決してきた。同時に、世の中を認識し改造するプロセスにおいて、旧い問題を解決すると 新たな問題がまた発生し、制度はつまるところ不断の改善が必要である。改革は一度には 成らず、一時苦労しておけば後は楽になることも不可能だからである15。 車両購入税 230 億元、16.3%増である。輸出に係る増値税・消費税の還付は 939 億元であ り、10.2%増である。 13 11 月単月の数値は発表されていない。 14 支出で伸びが大きいのは、文化・スポーツ・メディア 1856 億元、9.9%増、医療・衛 生 6833 億元、13.4%増、社会保障・就業 1 兆 2561 億元、13.3%増、都市・農村コミュニ ティ 9545 億元、20.5%増、省エネ・環境保護 2464 億元、14.1%増である。 15 ゴチックは筆者。 6 (1)重要な考慮点 全会が決定・起草するに際しては、5 つの方面を際立てて考慮した。 ①党・国家事業の発展のための新たな要求に適応させる。 18 回党大会で提起された改革開放の全面深化という戦略的任務を実施する。 ②改革を主線とする。 改革全面深化の新たな措置を際立たせ、一般的な措置・重複する措置・純粋に発展に属 する措置は盛り込まない。 ③重点にしっかり取り組む。 人民大衆が強烈な不満を抱く問題をめぐり、人民大衆の呼び声・期待に応え、重点分野・ カギとなる部分を際立たせ、経済体制改革の牽引作用を際立たせる。 ④積極かつ穏当を堅持する。 改革措置の設計に際しては、胆力は大きく、歩みは穏やかでなければならない。 ⑤時間を 2020 年に設定する。 この期限に基づき段取りよく改革任務を提起し、2020 年までに重要分野・カギとなる部 分の改革で、決定的な成果を得る。 (2)決定の枠組み 枠組みの構造上、全会は当面解決が必要な重大問題を項目に掲げ、各篇に配置した。序 文と結語を除けば、全体は 3 篇、16 章に分かれている。 ①第 1 篇は、第 1 章で、総論に当る。 主として、改革全面深化の重大意義・指導思想・総体的な考え方を詳述している。 ②第 2 篇は、第 2 章-第 15 章で、各論に当る。 主として、経済、政治、文化、社会、生態文明、国防・軍隊の 6 方面から、改革全面深 化の主要任務・重大措置を具体的に手配している。 このうち、経済方面は 6 項目(第 2 章-第 7 章) 、政治方面は 3 項目(第 8 章-第 10 章) 、 文化方面は 1 項目(第 11 章) 、社会方面は 2 項目(第 12 章-第 13 章)、生態方面は 1 項目 (第 14 章) 、国防・軍隊方面は 1 項目(第 15 章)である。 ③第 3 篇は、第 16 章で、組織・指導を論じている。 主として、改革全面深化に対する党の指導の強化・改善を詳述している。 1.2 全会が決定した重大問題・重大措置に関する中央の考慮 (1)資源配分において市場に決定的役割を発揮させ、政府の役割を更に好く発揮させる これは、今回の全会が決定・提起した重大な理論・観点である。なぜなら、経済体制改 革は依然として改革全面深化の重点であり、経済体制改革の核心問題は依然として政府と 市場の関係をうまく処理することだからである。 7 1992 年、14 回党大会は、わが国の経済体制改革の目標は社会主義市場経済体制を確立す ることであり、国家のマクロ・コントロール下で市場に資源配分への基礎的役割を発揮さ せることであると提起した。 この重大な理論上のブレークスルーは、わが国の改革開放と経済社会の発展に極めて重 要な役割を発揮した。このことは、理論の革新は実践の革新にとって重大な先導作用を備 えており、改革の全面深化は、理論の革新により先導されなければならないことを物語っ ている。 20 年余りの実践を経て、わが国の社会主義市場経済体制は既に初歩的に確立したが、少 なからぬ問題がなお存在している。それは主として、 ①市場秩序が不規範であり、不正な手段により経済利益を手に入れようと謀る現象が広範 に存在する。 ②生産要素市場の発展が立ち遅れており、要素の放置と、大量の有効需要が満足していな い状況が併存している。 ③市場ルールが不統一であり、部門保護主義と地方保護主義が大量に存在する。 ④市場競争が不十分であり、優勝劣敗・構造調整を阻害している。 これらの問題をしっかり解決しなければ、完全な社会主義市場経済体制は形成し難い。 14 回党大会以後 20 年余り、政府と市場の関係について、我々はずっと実践の展開と認識 の深化に応じて、新たな科学的位置づけを探し求めてきた。 ①15 回党大会は、 「国家のマクロ・コントロール下で、市場に資源配分への基礎的役割を発 揮させる」と提起した。 ②16 回党大会は、 「更に大きな程度、資源配分における市場の基礎的役割を発揮させる」と 提起した。 ③17 回党大会は、 「制度面から、資源配分における市場の基礎的役割を更に好く発揮させる」 と提起した。 ④18 回党大会は、 「更に大きな程度、更に広範囲に、資源配分における市場の基礎的役割を 発揮させる」と提起した。 このように、我々の政府と市場の関係に対する認識が、不断に深化していたことが見て 取れる。 今回の討論・意見徴取のプロセスにおいて、多くの方面から、理論上政府と市場の関係 をさらに進めて位置付けるべきであり、これは改革全面深化にとって十分重大な作用を備 えているとの提起があった。 各方面の意見と現実の発展の要求を考慮し、繰り返し討論・検討を経て、中央はこの問 題について、理論上新たな表現にする条件が既に成熟しており、資源配分における市場の 8 「基礎的役割」を「決定的役割」に改めるべきだと考えた。 現在、わが国の社会主義市場経済体制は既に初歩的に確立し、市場化の程度は大幅に高 まり、市場ルールに対する我々の認識・統御能力は不断に高まっており、マクロ・コント ロール体系を更に健全化する主観的・客観的条件が備わっている。我々は、社会主義市場 経済体制を整備するうえで、新たな歩みを踏み出さなければならない。 政府と市場の関係を更にうまく処理するとは、すなわち実際上資源配分において市場が 決定的役割を果たすのか、それとも政府が決定的役割を果たすのかという問題をうまく処 理することなのである。 経済を発展させるには、資源とりわけ希少資源の配分効率を高めなければならず、でき る限り少ない資源投入によりできる限り多くの製品を生産し、できる限り大きな収益を獲 得しなければならない。理論・実践がいずれも証明していることは、市場により資源を配 分することが最も効率のよい形式だということである。 市場が資源配分を決定することは、市場形成の一般ルールであり、市場経済の本質はす なわち資源配分を市場が決定する経済である。社会主義市場経済体制を健全化するには、 このルールを遵守し、市場システムが不完全で、政府の関与が多すぎ、監督管理が不十分 であるという問題の解決に力を入れなければならない。 「資源配分において市場に決定的役割を発揮させる」と位置付けたことは、全党・全社 会が政府と市場の関係に関する正確な観念を樹立することに資し、経済発展方式の転換に 資し、政府の機能転換に資し、消極・腐敗現象の抑制に資するものである。 当然、わが国が実行しているのは社会主義市場経済体制であり、我々は依然としてわが 国井の社会主義制度の優越性を発揮し、党・政府の積極的役割を発揮することを堅持しな ければならない。資源配分における市場の決定的役割は、決して全面的役割ではない。 社会主義市場経済を発展させるには、市場の役割を発揮させるのみならず、政府の役割 をも発揮させなければならない。しかし、市場の役割と政府の役割は、機能的に異なる。 全会は、政府の役割を更に好く発揮させることについて明確な要求を提起し、科学的なマ クロ・コントロール、有効な政府のガバナンスが社会主義市場経済体制の優位性を発揮さ せる内在的要求であることを強調している。 全会は、マクロ・コントロール体系を健全化し、政府の機能を全面的正確に履行し、政 府の組織構造を最適化することについて手配を進めることを決定し、政府の職責・役割は、 主としてマクロ経済の安定を維持し、公共サービスを強化・最適化し、公平な競争を保障 し、市場の監督管理を強化し、市場秩序を擁護し、持続可能な発展を推進し、共同富裕を 促進し、市場の失敗を補完することであると強調した。 9 (2)基本経済制度を堅持・整備する 公有制を主体とし、多様な所有制経済が共同で発展する基本経済制度を堅持・整備する ことは、中国の特色ある社会主義制度という重要な支柱を強固にし発展させることに関わ るものである。 改革開放以来、わが国の所有制構造は徐々に調整され、公有制経済と非公有制経済は、 経済の発展・雇用の促進等の方面でのウエイトを不断に変化させており、経済社会の発展 活力を増強してきた。このような情況下、いかに公有制の主体的地位を更に好く体現させ 堅持し、基本経済制度の有効な実現形式を更に模索するかは、我々の面前に置かれた重大 課題である。 全会決定は、いささかも動揺することなく公有制経済を強固にし発展させ、公有制の主 体的地位を堅持し、国有経済に主導的役割を発揮させ、国有経済の活力・コントロール力・ 影響力を不断に増強しなければならないと強調している。 全会は、15 回党大会以来の関連論述を堅持・発展させ、混合所有制経済を積極的に発展 させることを決定し、国有資本・集団資本・非公有資本等が株を持ち合い、相互に融合し ている混合所有制経済が、基本経済制度の重要な実現形式であり、国有資本が機能を発揮 し、価値を維持・増加させ、競争力を高めることに資すると強調している。 これは、新情勢下で公有制の主体的地位を堅持し、国有経済の活力・コントロール力・ 影響力を増強するための有効な方途・必然的な選択である。 全会決定は、国有資産管理体制を整備し、資本の管理を主として、国有資産の監督管理 を強化し、国有資本の授権経営体制を改革することを提起した。 国有資本の投資・運営は、国家の戦略目標に奉仕しなければならず、国家の安全・国民 経済の命脈に関わる重要業種・カギとなる分野に更に多く投資し、重点的に公共サービス を提供し、将来性のある重要な戦略的産業を発展させ、生態環境を保護し、科学技術の進 歩を支援し、国家の安全を保障しなければならない。 一部国有資本を切り分けて社会保障基金を充実させる。国有資本の収益について公共財 政への上納のウエイトを引き上げ、民生の保障・改善に更に多く用いる。 国有企業は、国家の現代化を推進し、人民の共同利益を保証する重要なパワーである。 長年の改革を経て、国有企業は総体として既に市場経済と融合している。同時に、国有企 業は問題を累積させ、弊害も存在しており、更に改革を推進する必要がある。 全会決定は、一連の的確な改革措置を提起した。これには、次のものが含まれる。 ①公益的企業への国有資本の投入を増やす。 10 ②国有資本が継続して株を支配している自然独占業種については、政府と企業の分離、政 府と資本の分離、経営の特許(フランチャイズ) 、政府の監督管理を主要内容とする改革 を実行し、異なる業種の特徴に応じて、ネットワークと運営を分離し、競争的な業務を 開放する。 ③協調的に運営され、有効にバランスが制御された健全なコーポレートガバナンス構造を 整備する。 ④プロフェッショナルな経営者制度を確立し、企業家の役割を更に好く発揮させる。 ⑤長期に有効な奨励・制約のメカニズムを確立し、国有企業の経営・投資の責任追及を強 化する。 ⑥国有企業の財務・予算等重大な情報の公開推進を模索する。 ⑦国有企業は、市場による選抜・招聘のウエイトを合理的に増やし、国有企業の管理人員 の報酬水準・職務待遇・交際費・業務消費を合理的に画定し、厳格に規範化しなければ ならない。 これらの措置は、国有企業が現代企業制度を整備し、経営効率を高め、社会責任を合理 的に負担し、その役割を更に好く発揮することを推進するものである。 基本経済制度を堅持・整備するには、 「2 つの『いささかも動揺させない』 」を堅持しなけ ればならない。全会は、多くのレベルから提起された、非公有制経済の発展を奨励・支援・ 誘導させ、非公有制経済の活力・創造力を奮い立たせる改革措置を決定した。 ①機能面の位置付け 公有制経済と非公有制経済は、いずれも社会主義市場経済の重要な構成部分であり、い ずれもわが国経済社会が発展するための重要な基礎である。 ②財産権の保護 公有制経済の財産権を侵犯してはならず、非公有制経済の財産権も同様に侵犯してはな らないことを明確に提起した。 ③政策待遇 権利・機会・ルールの平等を堅持し、統一した市場参入制度を実行することを強調した。 非公有制企業が国有企業改革に参加することを奨励し、非公有制資本が株式を支配する 混合所有制企業が発展することを奨励し、条件の整った私営企業が現代企業制度を確立す ることを奨励する。 これは、非公有制経済の健全な発展を推進するものである。 (3)財政・税制改革の深化 財政は、国家ガバナンスの基礎・重要な支柱であり、科学的な財政・税制は資源配分を 最適化し、市場の統一を擁護し、社会の公平を促進し、国家の長期にわたる秩序安定を実 現する制度保障である。現行の財政・税制は 1994 年の分税制改革の基礎の上に、徐々に整 11 備・形成されたものであり、政府の財政力の増強と急速な発展という Win-Win 目標の実現 にとって重要な役割を発揮している。 情勢の発展・変化に伴い、現行の財政・税制は既に、中央と地方の権限を合理的に区分 し、国家のガバナンスを整備するという客観要求に完全には適応しなくなっており、経済 発展方式の転換、経済社会の持続的で健全な発展の促進という現実需要に完全には適応し なくなっている。わが国経済社会の発展における際立った矛盾・問題も財政・税制の不完 全さと関係している。 今回改革全面深化では、財政・税制改革は重点の 1 つである。これは主として予算管理 制度の改善、税制の整備、権限と支出責任が適応する制度の確立等にわたるものである。 全会決定は、次のように提起した。 ①全て規範的で公開・透明な予算制度を実施し、中央の権限と支出責任を適度に強化し、 国防・外交・国家安全・全国統一された市場に関わる規則・管理等を中央の権限とする。 ②一部の社会保障、地域をまたがった重大プロジェクトの建設維持を中央・地方の共同権 限とし、権限関係を徐々に調整する。 ③中央は移転支出の按排を通じて、一部の権限・支出責任を地方に委託することができる。 ④地域をまたがりその他地域にかなり大きな影響を及ぼす公共サービスについては、中央 は移転支出を通じて一部の地方の権限・支出責任を負担する。 これらの改革措置の主要目的は、権限を明確にし、税制を改革し、税負担を安定させ、 予算を透明化し、効率を高めることにある。これは、経済発展方式の転換・公平で統一さ れた市場の確立・基本公共サービスが均等化された現代財政制度の推進に資するものであ り、中央・地方の財政力と権限が釣り合った財政・税制を形成し、中央と地方の双方の積 極性を更に好く発揮させるものである。 財政・税制改革は 1 つのプロセスが必要であり、段階的に完成させる必要がある。中央 は既に現行の中央・地方の財政力構造の総体としての安定を維持しつつ、中央と地方の収 入区分を更に調整しなければならないことを明確にしている。 (4)都市・農村の発展が一体化した健全な体制メカニズムの整備 都市・農村の発展のアンバランス・不協調は、わが国経済社会の発展に存在する際立っ た矛盾であり、小康社会の全面的な実現、社会主義現代化の推進加速のために解決しなけ ればならない重大問題である。 改革開放以来、わが国の農村の概観には驚天動地の変化が発生した。しかし、都市・農 12 村の二元構造を根本的に変わっておらず、都市・農村の発展格差が不断に拡大する傾向は 根本的に改まっていない。この問題を根本的に解決するには、都市・農村の発展一体化を 推進しなければならない。 全会決定は、体制メカニズムを健全化し、工業をもって農業を促進し、都市が農村を牽 引し、工業と農業が互恵関係にあり、都市・農村が一体となった新しいタイプの工業・農 業・都市・農村関係を形成することにより、広範な農民が現代化プロセスに平等に参加し、 現代化の成果を共同で享受するようにしなければならない、と提起した。 全会決定は、都市・農村の発展が一体化した健全な体制メカニズム整備のための改革措 置を提起した。 ①新しいタイプの農業経営システムの構築を加速する。 主として、農業における家庭経営の基礎的地位を堅持し、土地請負経営権が公開市場に おいて専業大農家・家庭農場・農民合作社・農業企業に流通することを奨励し、農村での 共同化による経済発展を奨励し、工商資本が農村で企業家経営に適合した現代的飼育業を 発展させることを奨励する。農民が土地請負経営権によって株式参加し、農業の産業化経 営を発展させることを認める。 ②農民に更に多くの財産権利を賦与する。 主として、法に基づき農民土地請負経営権を擁護し、農民集団経済組織のメンバーの権 利を保障し、農家の宅地用地の用益物権を保障し、農家の財産権の抵当・担保・譲渡のテ ストを慎重かつ穏当に推進する。 ③都市・農村の要素の平等な交換と公共資源のバランスのとれた配置を推進する。 主として、出稼ぎ農民の同一労働同一賃金を保障し、農民が公平に土地のキャピタルゲ インを分割享受できることを保障する。農業保険制度を整備する。社会資本が農村建設に 投入されることを奨励し、企業・社会組織が農村で各種事業を起業することを認める。都 市・農村の義務教育資源の配分を統一的に企画し、都市・農村住民基本年金保険制度、基 本医療保険制度を整理・合理化し、都市・農村の最低生活保障制度の統一的な企画による 発展を推進する。都市の基本公共サービスが常住人口を全てカバーすることを着実に推進 し、都市に転籍した農民を都市の住宅・社会保障体系に完全に組み入れる。 (5)国家安全委員会の設立 国家の安全と社会の安定は、改革・発展の前提である。国家の安全と社会の安定があっ てはじめて、改革・発展を不断に推進できるのである。現在わが国は、対外的には国家主 権・安全・発展の利益を擁護し、対内的には政府の安全と社会の安定を擁護する二重の圧 力に直面しており、各種の予見可能なリスク・予見し難いリスク要因が顕著に増大してい る。 13 しかも、我々の安全活動のメカニズムは、国家の安全の擁護という需要に適応できてお らず、強力なプラットホームを作り国家安全工作を統一的に企画する必要がある。国家安 全委員会を設立し、国家安全活動に対する集中・統一的な指導を強化することは、急務で ある。 国家安全委員会の主要職責は、国家安全戦略を制定・実施することであり、国家安全の 法治建設を推進し、国家安全活動の方針・政策を制定し、国家安全活動における重大問題 を検討・解決することである。 (6)中央は改革全面深化領導小組を設立する 改革の全面深化は、複雑な系統のプロセスであり、1 つあるいは複数の部門にだけ頼って いては、往々にして力不足となり思うようにできなくなる。このため、更にハイレベルの 指導メカニズムを確立する必要がある。 全会決定は、中央が改革全面深化領導小組を設立し、改革の総体設計、統一的な企画・ 協調、全面的な推進、実施の督促に責任を負わせることを提起した。これは、党が全局を 総覧し、各方面を協調させる指導核心の役割を更に好く発揮させ、改革の順調な推進と各 改革任務の実施を保証するためのものである。 領導小組の主要職責は、全国的な重大改革を統一的に手配し、各分野の改革を統一的に 企画・推進し、各方面のパワーを協調させて改革推進の合成力を形成し、督促・検査を強 化し、改革の目標・任務の全面実施を推進することである。 2.討論において注意すべきいくつかの問題 今回の全会の任務は、全会決定が提起した改革全面深化の考え方・方案を討論すること である。ここで、私は皆さんにいくつかの要求を提起する。 (1)改革推進への信念・勇気を増強する 改革開放は、わが党が新しい時代の条件下、人民を率いて進める新しい偉大な革命であ り、現在中国の最も鮮明な特色であり、わが党の最も鮮明な旗印である。 35 年間、わが党は何に依拠して民心を奮い立たせ、思想を統一し、パワーを凝集してき たのか?何に依拠して全人民の創造精神と創造活力を奮い立たせてきたのか?何に依拠し てわが国の経済社会の急速な発展を実現し、資本主義との競争において比較優位を勝ち得 たのか?依拠したものは、すなわち改革開放である。 将来に向けて、発展が直面する各種の難題を解決し、各方面からくるリスク・試練を解 消し、中国の特色ある社会主義制度の優位性を更に好く発揮し、経済社会の持続的で健全 な発展を推進するには、改革開放を除いて他に道はない。 14 現在、改革開放の問題について、党内外・国内外は関心を払っており、全党の上下と社 会の各方面の期待は高い。改革開放は新たに重要な関頭に達した。我々は改革開放におい て、いささかも動揺してはならず、改革開放の旗印を引き続き高く掲げなければならない。 中国の特色ある社会主義の道という正確な方向をしっかりと堅持しなければならない。 全党は改革の信念を確固とし、更に大きな政治的勇気と知恵、更に有力な措置と方法を もって改革を推進しなければならない。 (2)思想を解放し、事実に即して問題を処理することを堅持する 改革開放の旗印を高く掲げ、立場や態度だけではだめで、実際の措置を伴わなければな らない。行動は最も説得力がある。中央は、党 18 期 3 中全会という有利な機会を用いて、 改革全面深化について手配を進めることを決定したが、これは戦略的選択である。我々は このチャンスをしっかり掴んで、改革全面深化において新たなブレークスルーを得るよう 努力しなければならない。新たなブレークスルーのためには、更に思想を解放しなければ ならない。 思想観念の障害と利益固定化の障壁を突破するには、思想を解放することが最も必要で ある。改革を深化させる問題においては、思想観念の障害は、往々にして体制外ではなく 自分の体制内から来るのである。思想を解放しなければ、我々は各種の利益固定化という 根本原因の所在を見極め難く、ブレークスルーの方向・注力点を正しく探し出すことは難 しく、創造的な改革措置を打ち出すことは難しい。 このため、必ず自己革新の勇気と度量をもって、あれこれの規定・制限を跳躍し、部門 利益の掣肘を克服し、積極・主動の精神をもって改革措置を検討・提起しなければならな い。 改革措置の提起は、当然に慎重でなければならず、繰り返し検討・論証しなければなら ないが、このために過度に慎重となり、二の足を踏み、敢えて何も行おうとも試そうとも しないようなことがあってはならない。改革を行えば、現行の政策構造・体制運営が何ひ とつ打破されないということはあり得ず、当たり障りなく何のリスクもないということは あり得ない。十分な論証・評価を経て、実際に符合しさえすれば、行うべきであり、やる べき事は大胆にやらなければならない。 (3)大局から出発して問題を考慮することを堅持する 改革の全面深化は、党・国家事業の発展の全局に関わる重大な戦略的手配であり、ある 分野・ある方面だけの単体の改革ではない。 「全局を謀らぬ者は、1 領域を謀ることもおぼ つかない」 。皆さんは異なる部門・単位から来ており、皆が全局から問題を見なければなら 15 ない。まず、提起された重大改革措置が全局の需要に符合しているかどうか、党・国家事 業の長期にわたる発展に資するかどうかを見なければならない。真に前に向かって展望し、 あらかじめ思索し全局を謀らなければならない。このようにしてこそ、最後に形成される 文件が真に党・人民の事業発展の要求に符合できるものになるのである。 改革の全面深化には、トップダウン設計と全体計画が必要であり、各改革の関連性・系 統性・実行可能性の検討を強化する必要がある。我々は、胆力は大きく、歩みは着実でな ければならないと述べている。このうちの「歩みが着実でなければならない」とは、即ち 統一的に企画・考慮し、全面的に論証し、科学的に政策決定しなければならないというこ とである。 経済・政治・文化・社会・生態文明の各分野の改革と党の建設・改革は密接に連携し、 相互に交わり融合しており、いかなる分野の改革であってもその他の分野を牽引すること になる。同時に、その他分野の改革と密接に組み合わせることも必要である。もし各分野 の改革がうまく組み合わさっていなければ、各方面の改革措置が相互に波及し、改革の全 面深化を推進し難くなり、無理に推進しても、効果は大きく減殺されることになる。 Ⅲ.中央経済工作会議 12 月 10-13 日、党中央・国務院共催により中央経済工作会議(以下「会議」)が開催さ れ、2014 年の経済政策の基本方針が決定された。会議では、習近平総書記が重要講話を行 い、内外経済情勢を分析し、2013 年の経済政策を総括し、2014 年の経済政策の総体要求・ 任務を提起した。李克強総理は講話の中で 2014 年のマクロ経済政策の方向を説明し、2014 年の経済政策について具体的手配を行い、かつ総括講話を行った。本稿では、会議の概要 とポイントを紹介する(新華網北京電 2013 年 12 月 13 日) 。 1.現状認識 (1)国内経済の現状 今年に入り、極めて錯綜し複雑な情勢下、我々は 18 回党大会精神を貫徹実施し、鄧小平 理論・ 「3 つの代表」重要思想、科学的発展観を導きとして、経済政策に対する党の指導を 強化した。①小康社会の全面的実現と中華民族の偉大な復興の実現という中国の夢に人心 を凝集させること、②科学的発展観という主題と経済発展方式の転換加速という主線、③ 経済発展の質と効率を高めるという中心をめぐり、国内・国際の 2 つの大局を統一的に企 画して、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、経済の大勢を把握し、コ ントロールの一定の程度を維持し、最低ラインを維持するという考え方を堅持した。マク ロ政策を安定させ、ミクロ政策を活性化させ、社会政策で底固めをしなければならないと いう考え方に基づき、各方面の政策を着実にしっかりと実施し、経済社会の発展は、安定 16 の中で前進を得て、安定の中で好転し、良好なスタートを実現した。 経済運営は総体として平穏であり、農業生産は再び豊作を獲得し、構造調整は新たな進 展をみて、改革開放は力を増し、人民の生活は引き続き改善され、社会の大局は調和がと れ安定している。とりわけ重要なことは、党 18 期 3 中全会は、①経済発展方式の転換加速、 ②経済発展の新たな動力の育成、③経済の持続的で健全な発展の実現のために、行動綱領 を確定 16した。 これらの成績を得たことは、党中央の科学的政策決定・正確な指導の結果であり、全党 と全国の各民族・人民が非常に苦労・奮闘し、共同で努力した結果であり、成果は得難い ものであり、格別に大切にする必要がある。 情勢が安定の中で前進を得て、安定の中で好転していることを肯定すると同時に、我々 は、①経済運営に下振れ圧力が存在し、②一部業種の生産能力過剰問題が深刻であり、③ 食糧安全保障の難度が増大しており、④マクロの債務水準が引き続き上昇し、⑤構造的な 雇用矛盾が際立ち、⑥生態環境が悪化し、⑦食品・薬品の質が憂慮され、⑧社会の治安状 況がよくない等の際立った問題がなお緩和されていないことをも、はっきりと認識しなけ ればならない。 (2)2014 年の世界経済情勢 2014 年の世界経済は緩慢な回復態勢が続くが、不安定・不確定要因も存在する。新たな 成長動力源はなお不明瞭であり、大国の金融政策、貿易・投資構造、大口商品価格の変化 の方向にはいずれも不確定性が存在する。2014 年の世界経済情勢の不確定性・複雑性を十 分考慮し、チャンスをしっかり掴むよう努力して、各種のリスク・試練に落ち着いて対応 しなければならない。 現在及び今後の世界経済情勢を観察するには、国際金融危機という大背景と関連づけな ければならない。国際金融危機の影響は長期性を備えるものであり、国際市場の争奪は更 に激烈化しており、この勢いに乗じて事をなし、思考を転換しなければならない。 自身の事を冷静・着実にしっかりと行い、改革・イノベーションを大いに推進し、発展 の強大な動力と内需の巨大な潜在力を発揮させなければならない。経済発展方式の転換・ 経済構造調整・改革開放を主動的に行うことによって、経済発展・国際競争における主動 権を勝ち取り、政治関係が友好・経済貿易ルールが有利・発展余地が広大という、良好な 環境の創造と擁護に努力しなければならない。 2.2014 年の経済政策の基本的考え方 (1)2014 年の意義 2014 年は党 18 期 3 中全会精神を全面的に貫徹実施し、改革を全面的に深化させる第 1 16 ゴチックは筆者。 17 年であり、改革の任務は重大で非常に困難である。2014 年は第 12 次 5 ヵ年計画の第 4 年 目に入り、第 12 次 5 ヵ年計画を全面的に達成することにとって、極めて重要である。 (2)2014 年の経済政策をしっかり行うことへの総体的要求 18 回党大会及び 18 期 2 中全会・3 中全会精神を全面的に貫徹実施し、安定の中で前進を 求めるという政策の総基調を堅持し、改革・イノベーションを経済社会発展の各分野・各 段階に貫徹させ、マクロ経済政策の連続性・安定性を維持し、市場の活力を奮い立たせる よう力を入れ、発展方式の転換と構造調整を加速し、基本公共サービス体系の建設を強化 し、民生の改善に力を入れ、経済発展の質・効率を確実に高め、経済の持続的で健全な発 展、社会の調和・安定を促進しなければならない。 (3)2014 年の経済政策の核心 最も核心は、安定の中で前進を求め、改革・イノベーションを行うことの堅持である。 着実に根を下ろして着実に戦い、一歩一歩陣地を固めながら進撃して17、安定の中での好 転という発展態勢を強固にし、経済社会の大局の安定を促進し、改革の全面深化のために 条件を創造しなければならない。 同時に、改革全面深化を積極的に推進し、問題指向を堅持し、ブレークスルー・イノベ ーションに勇気を奮い、改革によって、発展、発展方式の転換・構造調整、民生の改善を 促さなければならない。 「安定」も「改革」も弁証的に統一され、相互に相手の条件となるものである。また「静」 と「動」では、 「静」には一定の力がなければならず、 「動」には秩序がなければならない。 カギは、この両者の間の程度をうまく把握することである。 (4)2014 年のマクロ経済政策 ①持続的で健全な発展と GDP 成長の関係を全面的に認識しなければならない。 発展を GDP の増大と単純化してはならず、チャンスをしっかり掴み GDP の合理的な成 長を維持するとともに、経済構造調整を推進して、経済発展の質・効率を高め、再び後遺 症をもたらすことのないような速度の実現に努力しなければならない。 ②積極的財政政策と穏健な金融政策を引き続き実施しなければならない。 財政支出構造を更に調整し、節約を励行して、資金の使用効率を高め、構造的減税政策 を整備し、営業税を増値税に改めるテストの対象業種を拡大しなければならない。 マネー・貸出及び社会資金調達規模の合理的な伸びを維持し、資金調達構造・貸出構造 を改善・最適化し、直接金融のウエイトを高め、金利の市場化と人民元レートの形成メカ ニズムの改革を推進し、金融の運営効率と実体経済へのサービス能力を増強しなければな らない。 17 要するに、一歩一歩着実・慎重に事を進めろという趣旨。 18 積極的財政政策と穏健な金融政策の実施にしても、その他各政策の実施にしても、いず れも改革の全面深化と緊密に結びつけ、改革の精神・考え方・方法を用いてマクロ・コン トロールを改善し、コントロールの中に改革を住みつかせなければならない。 有効需要の発揮に努力し、消費の基礎的役割・投資のカギとなる役割・輸出の支えとし ての役割を十分発揮させ、成長を牽引する消費・投資・外需という「トロイカ」をしっか り掌握しなければならない。 3.2014 年の経済政策の主要任務 (1)国家の食糧安全を確実に保障する 自身を主体とし、国内に立脚し、生産能力を確保し、適度に輸入し、科学技術を支えと する国家食糧安全戦略を実施しなければならない。 自身が食べる分は自身に頼り、国内資源を集中して重点を維持し、穀物を基本的に自給 し、自身の分の食糧の絶対安全を確保しなければならない。 量と質を共に重視することを堅持し、農産品の質と食品の安全を更に重視し、生産の根 本からの対策と生産・販売の全プロセスの監督管理を重視する。 永続的な発展を重視し、農業の発展方式を転換し、節水農業・循環農業を発展させる。 食糧安全保障能力をしっかり建設し、農業インフラ建設を強化し、農業科学技術の進歩 を加速する。 (2)産業構造の調整に力を入れる 生産能力過剰の解消とイノベーション駆動による発展の実施に、力を入れて取り組まな ければならない。 資源配分において市場に決定的な役割を発揮させることと、政府の役割を更に好く発揮 させることを有機的に結びつけ、市場競争を通じて優勝劣敗を実現する。政府は環境保護・ 安全等の基準によるハードな規制を強化し、法執行を強化して、生態環境の破壊に対して は厳重に懲罰しなければならない。 生産能力過剰解消の根本的な出口はイノベーションであり、これには技術・製品・組織・ ビジネスモデル・市場のイノベーションが含まれる。戦略的新興産業の発展に力を入れ、 伝統産業の最適化・グレードアップを加速する。環境を創造することにより、企業を真に イノベーションの主体とする。 政府は知的財産権の保護の強化、企業のイノベーションを促進する租税政策の整備等を しっかり行わなければならない。奨励を強化し、人材をうまく用いることにより、発明家・ 革新者にイノベーションの収益を合理的に享受させ、技術成果の転化を阻むボトルネック を打破する。 19 (3)債務リスクの防御に力を入れる 地方政府の債務リスクをコントロール・解消することを経済政策の重要任務とし、短期 的な対応措置と長期的な制度建設を結びつけ、地方政府の債務リスクを解消する各政策を しっかり行わなければならない。 根源からの規範化を強化し、地方政府の債務を部類別に分類して全て予算管理に組み入 れ、政府の借入手続を厳格化する。責務の実施を明確化し、省・区・市政府は当該地域・ 地方の政府債務について責任を負わなければならない。教育・考課を強化し、思想面から 不正確な政治業績指向を正す。 (4)地域の協調発展を積極的に促進する 地域発展の総体戦略を引き続き深く実施し、地域政策を整備・刷新し、政策ユニットを 縮小し、地域を越え、亜地域的な計画を重視し、地域政策の精確性を高め、市場経済の一 般法則に基づき政策を制定しなければならない。 主体的機能区制度を断固として実施することにより、自然条件が異なる地域を主体的機 能区の位置づけに基づいて発展を推進させる。小康社会を全面的に実現するには、各地の 発展を基礎としなければならない。 貧困扶助の堅塁攻略をしっかり戦い抜くことにより、貧困地域の大衆の生活を不断に改 善する。貧困地域は、貧困扶助対象者の生活水準向上を、政治業績判断の主要な考課指標 としなければならない。貧困扶助政策は、科学的に計画し、土地の事情に合わせて適当な 方法を採用し、重点にしっかり取り組み、精確性・有効性・持続性を高めなければならな い。 (5)民生の保障・改善をしっかり行うことに力を入れる 引き続き、最低ラインを固守し、重点を際立たせ、制度を整備し、世論を誘導するとい う考え方に基づき、教育、雇用、所得分配、社会保障、医薬・衛生、住宅、食品安全、安 全生産等を統一的に企画し、民生改善のための各政策を確実にしっかり行わなければなら ない。 雇用政策をしっかり行うことを際立たせて位置付け、大学等卒業生の就職と生産能力過 剰解消によって出現する一時帰休者の再就職政策に重点的にしっかり取り組む。 住宅問題をしっかり解決することに努力し、国情に適合し、発展段階の特徴に符合した 住宅モデルを模索し、低家賃住宅・公共賃貸住宅等社会保障的性格をもつ住宅の建設・供 給を増やし、バラック地区をしっかりと改造する。特大都市は土地供給構造の調整を重視 し、住宅用地の比率を高め、土地容積率を引き上げなければならない。 環境対策と生態保護の活動・投資・政策を強化し、地域が連携した防止・コントロール を強化し、根本的対策を強化し、大気汚染の対策措置を真に実施に移す。 20 (6)対外開放水準を不断に高める 伝統的な輸出の優位性を維持し、技術と大型プラントの輸出が関連業種への輸出を牽引 する作用を発揮させ、新たな比較優位性・競争優位性を創造し、国内の発展方式の転換・ 構造調整に必要な設備・技術等の輸入を拡大する。 制度建設とルールの保障を重視し、自由貿易地域交渉の推進を加速し、投資協定交渉を 着実に推進する。安定・透明・公平な投資環境を作り上げ、投資者の合法な権益を確実に 保護する。 海外進出に対する指導・サービスを強化し、対外投資の精確な情報を提供し、対外投資 の審査・許認可プロセスを簡略化する。 シルクロード経済帯(バンド)の建設を推進し、戦略・計画を早急に制定し、インフラ の相互接続を加速する。21 世紀海のシルクロードを建設し、海上の主要航路の相互接続を 強化し、相互の利益紐帯を緊密にする。 4.その他留意点 ①安定の中で前進を求めることを堅持し、安定成長・構造調整・改革促進を統一的に企画 して、合理的区間における経済成長の平穏な運行を維持しなければならない。 民生優先を際立たせ、社会の公正を促進する。物価の安定を維持し、改革推進と構造調 整のために良好な環境を創造する。経済発展方式の転換を加速し、質・効率の向上・グレ ードアップを促進し、経済の持続的で健全な発展を推進する。 ②経済社会の発展の予期目標とマクロ政策の黄金均衡点をしっかり把握し、コントロール の方式・手段を不断に整備しなければならない。 ③資源配分において市場に決定的役割を発揮させることをめぐって、重要分野・カギとな る部分に力を入れて実質的な進展を得なければならない。 ④内需拡大の長期有効なメカニズムを構築し、力を入れて消費需要を増やす。 ⑤現代農業の発展を加速し、農業の安定的発展と農民の持続的な増収を促進する。 ⑥イノベーション駆動による発展戦略を深く実施し、産業構造の調整・グレードアップを 促進する。 ⑦サービス業の発展の加速・ウエイトの引上げ・水準の向上を推進する。 ⑧生態文明の建設を加速し、持続可能な発展を推進する。 ⑨新しいタイプの都市化を積極かつ穏当に推進し、都市化の質の向上に力を入れる。 ⑩制度建設を加速し、民生を保障するセーフティネットを編み上げる。 5.改革の全面深化 改革全面深化に対する党の指導を強化しなければならない。党 18 期 3 中全会が行った決 定は、わが党が新たな時代の条件下で改革を全面深化させるための総手配・総動員であり、 決定が確定した任務を達成する時間は迫っている。 21 (1)学習を強化し、精神を完全に理解し、全会が提起した新思想・新論断・新措置を全 面的に正確に理解して、全党・全社会が思想・行動を全会精神と中央の要求に統一させ ることを推進しなければならない。 (2)大局を把握し、着実に推進し、「胆力は大きく、歩みは穏やかでなければならない」 を堅持し、戦略的には勇気をもって進取の精神で、戦術的には着実に根を下ろし着実に 戦わなければならない 18。 ①正確に改革を推進する。改革は社会主義制度の自らの手による整備・発展である。 ②精確に改革を推進する。中央の要求に基づき、推進する。 ③順序立てて改革を推進する。時機がまだ成熟しておらず、条件がなお備わっていない条 件下で一斉に立ち上げることを避ける。 ④協調して改革を推進する。改革の関連性・結合性を重視し、最大の総合効果を勝ち取る。 (3)実効を重視し、人民から信頼され、「言葉は誠実に、行動は果断」であるようにし、 小さな勝利を積み重ねて大勝となすことにより、庶民が実際のメリットを得られるよう にし、市場の環境・起業の条件・幹部の作風が日々好転していると全社会が感じられる ようにしなければならない。 (4)情況を区分し、分類して推進しなければならない。 ①方向が明らかで効果が速やかに現れる改革、地方・部門が授権により扱ってよいものに 属する改革については、2014 年ないし近いうちに推進を加速してよい。 ②関係方面が広範で中央の政策決定が必要な改革については、改革案を早急に検討・提起 し、具体的な改革戦術を制定し、全面的に統一企画し審査決定した後、2014 年の適切な 時期に推進してよい。 ③認識がまだ深まっていないが推進しなければならない改革については、大胆に模索し、 テストを先行させ、ルールを見つけ出し、共通認識を凝集させて、全面推進・展開のた めに経験を累積し、条件を創造する。 ④全会が提起した推進が必要な制度面の建設については、法律の改正・整備が必要なもの も検討を強化し、できるだけ速やかに始動しなければならない。 党中央は既に中央改革全面深化領導小組の設立を決定し、党中央政治局・党中央政治局 常務委員会の指導の下で活動している。各地方・各部門はいずれも改革に責任を負う機関 を指定し、主要な領導同志が自ら取り組まなければならない。 全党・全国各民族・人民は、習近平同志を総書記とする党中央の周囲に緊密に団結し、 心を一つにして着実に活動し、この会議の各手配を真剣に実施し、経済社会の持続的で健 全な発展のために共同して奮闘しなければならない。 18 一歩一歩着実に進めなければならない、という趣旨。 22 5.今回の会議のポイント (1)会期 12 月 10-13 日、4 日間という異例の長さであった。2012 年は、会議の簡素化という習 近平総書記の意向を受け、従来の会期 2.5 日が 2 日に短縮されていた。 会期が延びた詳しい経緯は明らかにされていないが、12 月 12-13 日に中央都市化工作 会議が開催されており、これが会期に影響した可能性がある。 (2)経済の抱える問題 ①経済運営に下振れ圧力が存在し、②一部業種の生産能力過剰問題が深刻であり、③食 糧安全保障の難度が増大しており、④マクロの債務水準が引き続き上昇し、⑤構造的な雇 用矛盾が際立ち、⑥生態環境が悪化し、⑦食品・薬品の質が憂慮され、⑧社会の治安状況 がよくない、点が列挙されている。 (3)安定の中で前進を求め、改革・イノベーションを行う 人民日報社説 2013 年 12 月 14 日(以下「社説」 )は、これが今回の会議の核心だとする。 社説は両者の関係を次のように補足説明している。 「安定の中で前進を求め、改革・イノベーションを行う。両者は相互補完である。 安定の中で前進を求めることは、根本である。安定の中で前進を求めてこそ、改革の全 面深化のために有利な外部条件を提供できるのであり、改革の任務を順調に推進できるの である。もし経済が大きく上下すれば、発展の質・効率に影響を与えるのみならず、改革 の進捗にも影響を与え、改革の難度を増すことになる。 改革・イノベーションは、牽引である。改革・イノベーションを行ってこそ、経済社 会の持続的で健全な発展のために次々と絶えることのない動力を注入できるのであり、中 国経済の発展を長期に制約する深層レベルの体制メカニズムの障害を更に突破し、 「安定」 を確保し、 「前進」を実現できるのである。 安定の中で前進を求め、改革・イノベーションを行うためのカギは、程度をしっかり把 握するということである。二の足を踏んではならず、功を焦ってもならない。胆力は大き く、歩みは穏やかでなければならない」 。 (4)マクロ経済政策 「発展を GDP の増大と単純化してはならない」と GDP 成長率至上主義を戒め、成長率 については「再び後遺症をもたらすことのないような速度」でよいとしている。2008 年リ ーマン・ショック時に発動した大型景気対策が、生産能力過剰・地方政府債務の増大・住 宅価格の上昇・インフレをもたらしたことへの反省であろう。 また、 「合理的区間における経済成長の平穏な運行を維持しなければならない」とし、マ クロ・コントロールの方式・手段を不断に整備して、経済社会の発展の予期目標とマクロ 23 政策をうまくバランスさせるとしている。 これは李克強総理の持論であり、経済に上限(インフレ率)・下限(成長率・雇用)を設 け、経済が合理的区間にある間は景気対策を発動せず、経済構造調整・経済発展方式の転 換に専念し、経済が上限に近付けば景気引締め策、経済が下限に近付けば景気刺激策を発 動するというものである。なお。会議では「物価の安定を維持する」との記載はあるが、 2014 年の上限・下限の具体的数値は明示されなかった。 さらに、マクロ・コントロールの中に改革の精神・考え方・方法を組み込んでいくとし ている。 (5)財政政策 積極的財政政策を維持することとされた。税制改革では、営業税を増値税に改めるテス トの対象業種を拡大するとしている。財政部としては、この改革を第 12 次 5 ヵ年計画の最 終年度である 2015 年に完成させることを目標としている。ただ営業税は地方税であり、増 値税は共有税(国 75%、地方 25%)であるため、単純に営業税を増値税に改めれば、国と 地方の財源配分に変動が生じることになる。したがって、増値税のあり方の見直しも必要 となろう。 また「地方政府の債務リスクをコントロール・解消することを経済政策の重要任務とす る」し、省・区・市政府は自分の地域の政府債務に責任を負うこととされた。対策として は、短期的な対応措置と長期的な制度建設が示されており、安易な借入を禁じるとともに、 今後建設地方債の発行が議論されることになろう。 (6)金融政策 穏健な金融政策を維持することとされた。金融制度改革としては、金利の市場化と人民 元レートの形成メカニズムの改革が明記されている。 (7)食糧安全保障 これまでは、農業政策は農業経営の現代化・農民の所得向上の観点から語られてきたが、 今回は食糧安全保障が強調されている。食糧の自給率が低下傾向にあることに危機感があ るのであろう。なお、国務院発展研究センター農村経済研究部の葉興慶部長は、食糧には 穀類・豆類・イモ類が含まれるとし、小麦・稲については経済・技術の観点から比較優位 性が維持できるだろうとしている(新華網北京電 2013 年 12 月 13 日) 。 (8)産業構造調整 生産能力過剰の解消とイノベーションが強調され、 「生産能力過剰解消の根本的出口はイ ノベーションである」とされている。このため、知的財産権保護の強化・企業のイノベー ション促進する租税政策の整備が挙げられている。 24 また、過剰生産能力の解消は当然リストラを伴うため、雇用対策の部分では、従来の大 学卒業生に加え、一時帰休者の再就職対策が盛り込まれた。これは国有企業改革が本格化 した 1998 年以来のことである。 (9)改革の仕分け 習近平総書記の持論である「胆力は大きく、歩みは穏やかでなければならない」が強調 され、時機が熟さず、条件が具備していない条件下で、改革を一斉に立ち上げてはならな いとする。具体的には、改革の手順を 4 分類している。 ①方向が明らかで効果が速やかに現れる改革、地方・部門が授権により扱ってよいものに 属する改革:2014 年ないし近いうちに推進を加速してよい。 ②関係方面が広範で中央の政策決定が必要な改革:改革案を早急に検討・提起し、具体的 な改革戦術を制定し、全面的に統一企画し審査決定した後、2014 年の適当な時期に推進 してよい。 ③認識がまだ深まっていないが推進しなければならない改革:大胆に模索し、テストを先 行させ、ルールを見つけ出し、共通認識を凝集させて、全面推進・展開のために経験を 累積し、条件を創造する。 ④全会が提起した推進が必要な制度面の建設:法律の改正・整備が必要なものも検討を強 化し、できるだけ速やかに始動しなければならない。 したがって、2013 年 11 月の党 3 中全会で決定された改革の諸項目は、この 4 分類に仕 分けされ、③④に該当するものは 2015 年以降に先送りされることになろう。特に法整備が 必要なものは、2015 年の全人代以降に順次立法・法改正がなされていくものと思われる。 なお。国家情報センター経済予測部の祝宝良主任は、 「①政府が更に権限を簡素化・開放 し、②小型・零細企業に対する税の減免を強化し、③民営中小銀行を設立し、④国有企業 の利益上納率を引き上げ、⑤資源価格を改革し、⑥公立病院を改革する等の方向は既に非 常に明確になっており、2014 年に重大な進展が期待される」としている(新華網北京電 2013 年 12 月 13 日) 。 中央改革全面深化領導小組が、今後どのような改革のタイムスケジュールを示すが注目 される。 (10)その他 主体的機能区制度の位置付けにより地域の発展のあり方を区分すること、低家賃住宅・ 公共賃貸住宅の建設・供給の増加、大気汚染対策、自由貿易地域・投資協定交渉の推進、 シルクロード経済帯(バンド) ・海のシルクロードの建設、サービス業の発展の加速・ウエ イトの引上げ・水準の向上、都市化の質の向上、民生を保障するセーフティネットの構築 などが挙げられている。 25