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これからの自立支援と 介護予防実践で大切なこと なぜ今日は
2016/7/13 平成28年度介護予防支援従事者研修(岡山市) 資料 これからの自立支援と 介護予防実践で大切なこと ∼リハ専門職からの提言∼ 津山市役所 健康増進課 作業療法士 安本 勝博 なぜ今日は自立支援がテーマ なのでしょう? 1 2016/7/13 • 介護保険の第1条(目的)では、介護サービスを提供 する目的を「(要介護者が)尊厳を保持し、その有す る能力に応じ自立した日常生活を営むことができる よう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに 係る給付を行う」と規定している。 • 介護保険の第2条、2項では「保険給付は要介護状 態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われる とともに医療との連携に十分配慮して行われなけれ ばならない。 • 4項では「可能な限り、その居宅において、その有す る能力に応じ自立した日常生活を営むことができる ように配慮されなければならない。 2 2016/7/13 平成24年度介護報酬改定について (老健 2012年5月号) 特集 介護報酬改定説明会を聞く(抜粋) ○現在の介護保険で行われているサービスを振り 返ったとき、“お世話型の保険”になってしまっている 面があるのではないか。 ○高齢者の方がある機能が衰えてきたときに、「かわ いそうだからやってあげましょう」ではなく、「失われた 機能をどのようにすれば回復できるのか、それ以上 悪くならないで維持できるのか。その機能が失われて も別の残存機能でどういうことができるようになるか」 を考え支援するためにこの保険を使うべきではない か。今回、そのようなメッセージを込めた改定を行っ た。 (宇都宮 啓 厚生労働省老健局老人保健課長) (出所)作業療法全国研修会「作業療法士に期待する役割」 厚生労働省老健局振興課 宮永氏資料 2012.9.29より引用 3 2016/7/13 4 2016/7/13 地域ケア会議 作業療法士 理学療法士 歯科衛生士 管理栄養士 要支援・要介護者を元気に! (例) 市(保険者) 地域包括支援センター 要支援1 など 保健所 専門職種の視点を 入れたプラン作成 ・多職種協働による協議 ・自立を阻害する要因の追求 ・医療との連携 ・インフォーマルサービスの活用 →生活の質の向上を目指す! ・地域課題発見、解決策の検討 ・関係職員のOJTの場 ケアプラン作成者・事業所 等 地域ケア会議 ケアプランの実行・評価・見直し ADL向上→IADL向上→QOL向上 資料:大分県高齢者福祉課 具体的事例(地域ケア会議で検討したケアプラン) 利用者の状態 : 生活の不活発により下肢機能の低下が顕著(要支援2) 利用者の課題 : 入浴ができない 期間 : 6ヶ月 目標があいまい 永遠の目標になる 代表的な目標例 ケアマネが立てた目標 清潔の保持に努める (安全に入浴する) ケアマネが立てた支援計画 6ヶ月後評価困難 デイサービスで週2回風呂に入る このケアプランの問題点 お世話無しには 生活できない デイサービスでは入浴できても 自宅では入浴ができない ケア会議で修正した目標 6ヶ月後評価可能 6ヶ月後 自分で入浴することができる ケア会議で修正した支援計画 デイサービスで下肢筋力の強化と 入浴動作の訓練を行う ケア会議で修正した支援計画 浴室の住宅改修や 入浴補助用具の購入 根本的な原因に対する アプローチと、残存機能の 維持・向上・悪化の防止 お世話型のケアマネジメント ○根本的な課題解決になっていない。 ○介護サービスが生活の不活発を助長 重度化の恐れ 自立支援型のケアマネジメント ○要介護度の改善 ○自立した生活へ 5 2016/7/13 ケア会議のポイント ①この個別ケア会議では、自立支援という介護保険の理念の実現 に向けて、よりよいケアプランを立てることを目的としている ②どうすれば、利用者の生活の質が向上するのか、その人らしい 生活や人生といえるのか考える ③こうなればいいという理想論を語り合う場ではないので、具体的 で現実的に実現可能な提案をお願いしたい ④事例提出者は、状況説明ではなく自立を妨げている、要因(体・ 心・関係性)とその解決策についての報告をお願いする 6 2016/7/13 介護保険で健康になろう! 津山市役所 健康増進課 作業療法士 安本 勝博 どうして悪くなる人 が多いの? 7 2016/7/13 どうして元気にならないんだろう? ①歳を重ねたら、悪くなるのは当たり前だから ②これからは世話してもらおう、という気持ちの 問題が大きい ③ヘルパーさんやデイサービスに色々してもらって 楽な生活に慣れるから ④よくなりたいけど、よくなりたくない! サービス使うことと、 元気で健康に過ごすこと は、少し違うようです 8 2016/7/13 私が元気になるために 介護保険を活用する! →そして気持ちよく 卒業しよう! これからの自立支援・介護予防 で何を目指すのか? 9 2016/7/13 当事者が ( )になる! を支援する 健康とは WHO(世界保健機関) 1946年 健康とは、単に疾患がない、虚弱でないと いうことではなく、身体的、精神的、社会的 に完全に良好な状態 →あなたは健康ですか? 10 2016/7/13 健康とは 健康とは、からだと、こころ と、周りの人との関わりがよ い状態のこと どんな人が、どのような生活をしている人 が、主観的健康感が高いのでしょうか? ①病気がない・痛みがない・睡眠が良い(医学的な心身機能) ②身体運動の習慣がある ③趣味を楽しみ、社会活動に参加して役割を果たしている (よく外出する人) ④家庭や社会・ご近所・友人からの支えがある ⑤自らの人生に生きがいを感じている(自信・活力) ⑥積極的に生活を行っている ⑦経済力がある 石岩、谷村厚子、他:在宅高齢者の主観的健康感に関連する要因の文献的研究.日本保健科学学会誌,16(2):82−89,2013 11 2016/7/13 介護予防から 自立支援を考える 自立って?? 他の援助や支配を受けず、 自分の力で判断したり、身 を立てたりすること ひとりだち 12 2016/7/13 支援者が目指すこれからの介護 保険制度での「自立支援」とは? 津山市が目指すこれからの介護保険 制度での「自立支援」とは 利用者が、自分らしく生きる力・生きがいを自ら選択できる ことを基本として、利用者にとって意味がある目標の達成に 向けて、「自分の役割やできることを維持・継続する」ととも に、「できそうなことをできる・している」にし、健康的な気持ち や笑顔が増えるための支援をいう。たとえ、生活の自立や意 思決定が困難な場合でも、利用者の意思をくみ取り尊重 することで、互助共助を含む多様な支援サービスを活用す ることにより、望む生活の「決定の自立」を支援していくことを いう。 13 2016/7/13 津山市が目指すこれからの介護保険 制度での「自立支援」とは そのためには、支援者は利用者と家族等の思いを聴き、制度 の理解を促し、達成可能な目標設定のための技術を高め、 サービス提供のみにとらわれず、利用者の有する能力や置か れている環境等の的確な予後予測やアセスメントにより、真 に必要な支援内容を利用者や多職種とともに理解共有する ことが重要である。 プラン立案時の大切な視点① ∼自立支援を目指して∼ 対象者の望む生活を知っている そしてその実現が最大の目標であることが わかっている 14 2016/7/13 聞けているかチェック! 第1位 畑で野菜をつくる (草ぬきを含む) 第2位 おしゃべり・会話 第3位 手芸 第4位 テレビを見る 第5位 おいしいものを つくる・食べる 第6位 はなづくり 第7位 グランドゴルフ 第8位 旅行 望む生活を知ることはなぜ大事? 生活目標は,支援者が決めるものでは決してありま せん.なぜならば悩みを忘れたり,幸せな気持ちになれ る活動は当事者にしかわからないからです. その活動を生活目標として設定し,達成していくプ ロセスは当事者にとって充実した生活だといえます. 支援者は当時者が意思決定するために必要な情報 を提供し,望む目標がどうすればうまくできるようにな るかについての知識や技術を持っています. それぞれがオープンに考えを出し合って,試してみる ことをはじめようというわけです. 15 2016/7/13 望む生活を知ることはなぜ大事? ただし,当事者の選択の尊重が当事者の言いなりとい うわけではありません. 当事者には物事を決定したり,結果の責任を引き受け る力があると認めた上で,リスクも責任も当事者と支援 者が一緒に負担しながら,結果の責任は最終的には当 事者が引き受けるのです. 達成が困難な目標の場合の修正もこれにあたります. 望む生活を知ることはなぜ大事? また目標は,ADLやIADLに固執してはいけません. 洗顔できるようになることが望む生活ではない当事 者もいるからです. 大切なのは誰が(人)どこで(環境)何をする(活動)を 明らかにし,セルフケアや生産活動,レジャーなど幅広 い目標があることを我々が認め,支援者だけで対応困 難なときは,それに精通した専門職と手を結べばいい のです. 基本的には「したいこと」「する必要のあること」「周囲 から期待されていること」を聞き取りますが,このやり とりからこの人は私を理解しようとしているなと感じら れることも大切です. 16 2016/7/13 生活目標を聞くときのポイント セルフケア ADL・IADLなどの身の回りのことをする 生産活動 仕事や勉強など自分の生活のために何かを作り出 したり、社会に貢献したりする レジャー 趣味や娯楽など楽しみとして行うもの 支援者は、「セルフケア」を目標に したがる 当事者は「生産活動」や「レジャー」 をイメージする 17 2016/7/13 望む生活を知ることはなぜ大事? 全くできそうにない目標が出てきたとき にも動じる必要はありません.その目標に 少しでも近づくためには何をしておく必要 があるのか,もし達成が困難なことが理解 されたときに,修正する作業に関わること の方が大切です 介護保険非認定者と 要支援認定者の 健康と作業(したいこと)の関係 18 2016/7/13 健康とは 健康とは、からだと、こころと、 周りの人との関わりがよい状 態のこと 「したいこと」とは ①よくしていることの中で一番大事なもの ②充実感や幸福感に包まれる ③人や場所、時間と繋がっている ④生活習慣になっている ⑤自分らしいと感じられる ⑥健康になる ⑦社会や家族などに貢献・役割を果たす 19 2016/7/13 結果 介護保険の認定を受けていない人の方が 項目 P値 年齢が若かった P<0.001 私は健康だと感じていた P<0.001 私は幸せだと感じていた P<0.001 したいことが思った通りにできていた P<0.001 したいことをすることに満足していた P<0.001 したいことをすることに生きがいを感じていた P<0.001 したいことを他の人と一緒に行っていた 0.002 したいことが誰かの役に立つと感じていた 0.005 結果 介護保険の認定を受けていない人を、健康と感じて いる人と、感じていない人に分けると 健康だと感じている人の方が 項目 P値 経済的にゆとりがあると感じていた P<0.001 私は幸せだと感じていた P<0.001 20 2016/7/13 結果 介護保険の要支援認定を受けている人を、健康と 感じている人と、感じていない人に分けると 健康だと感じている人の方が 項目 P値 経済的にゆとりがあると感じていた 0.006 私は幸せだと感じていた P<0.001 したいことが思った通りにできていた P<0.001 したいことをすることに満足していた 0.004 研究でわかったことは 私は健康だ と感じられる もっとうまく できるように したいことが うまくできる したいことが うまくできるお手伝い からだを鍛え 何度も練習 やり方を変え 21 2016/7/13 プラン立案時の大切な視点② ∼自立支援を目指して∼ ADL,IADLの 「できること」 「できそうなこと」 「できないこと」の見分けがつく 日常生活活動(動作)ADL:Activities of Daily Living 毎日の生活で、必要な基本的な身体動作 各人ともに共通しており、毎日くり返される 手段的日常生活活動(動作) IADL(Instrumental Activities of Daily Living)≒APDL(生活関連活動) ADL(日常生活活動)を応用した活動 活動の範囲を身の回りから、生活環境へとさらに 広げた活動 22 2016/7/13 活動(ADL) を知る ADL(日常生活動作) IADL(手段的日常生活動作) /Activities of Daily Living /Instrumental Activities of Daily Living ○起居、移乗 ○移動 ○食事 ○排泄 ○更衣 ○入浴 ○整容 ○コミュニケーション ○食事の準備 ○熱源の取扱い ○財産管理 ○電話 ○薬の管理 ○洗濯、掃除 ○買物 ○外出(公共交通機関の利用含む) 社会生活 旅行 生活関連動作 財産 管理 仕事 電話 排泄 食事 身辺ケア 休日 個人 個人 コミュニ ケーション 薬の 管理 飲み会 整容 更衣 外出 洗濯 掃除 入浴 移動 ADL IADL 友人訪問 買物 食事会 食事の 準備 演奏会 23 2016/7/13 年齢とともに難しくなる動作は ①運ぶ ②手を使った ③体を安定させ ④にぎる・ 細かなこと 腕を伸ばす つまむ WAM高齢者・障害者福祉基金事業より 『年齢とともに困る家事とは?』 掃除 洗濯 調理 買い 物 24 2016/7/13 社会生活 旅行 生活関連動作 財産 管理 仕事 電話 排泄 食事 身辺ケア 休日 個人 個人 コミュニ ケーション 薬の 管理 飲み会 整容 更衣 外出 洗濯 掃除 入浴 移動 ADL IADL 友人訪問 買物 食事会 食事の 準備 演奏会 できること・できそうなこと できないことの見分けがつくためには(1) 生活のどんなことが 難しいのかその人の 状態から想像できる 25 2016/7/13 考えてみよう! 左手がまったく使えない 場合、ADL・IADLでどん なことが難しくなる? 左手が使えないと・・・ (食事) ・食器の固定 ・お茶漬けを食べる ・ナイフとフォーク (更衣) ・ボタン、紐、ベルト ・ネクタイ ・ブラジャー ・ズボン上げ下げ (入浴) ・右手の洗体 ・顔、頭を洗う (排泄) ・ペーパーを切る (整容) ・右手の爪切り ・歯磨き粉をつける ・髪をくくる ・アクセサリーをつける (調理) ・皮むき ・袋をやぶる ・炒めるときの固定 ・缶きり ・ビンの蓋あけ 26 2016/7/13 想像することで・・・ 「難しい!」 =「最近まで何とかやっていたのに 出来にくくなった」 =「まったく出来なくなったわけじゃないけど・・・」 「できそう」を見つける第一歩!! つまり・・・ できる できそう できない 続くよう見守り できる!さらに しているに! かわりに! 27 2016/7/13 できること・できそうなこと できないことの見分けがつくためには(2) 1つのADLは 細かく分けられることを 知っている! トイレを例に トイレ動作をなるべく 細かく各動作ごとに分 解してみよう 28 2016/7/13 私の場合は・・・ ①寝返る⇒②起き上がる⇒③立ち上がる⇒④扉まで歩く⇒ ⑤引戸を開ける⇒⑥トイレの扉まで歩く⇒ ⑦トイレの電気をつける⇒⑧開き戸を開ける⇒⑨中に入る⇒ ⑩振り返って扉を閉める⇒⑪便器に近づき向きを180度かえる⇒ ⑫ズボンをおろす⇒⑬パンツをおろす⇒⑭棚の本を手に取る⇒ ⑮本を見ながら排泄⇒⑯本を置き後始末⇒⑰確認!⇒ ⑱パンツをあげる⇒⑲ズボンをあげる⇒ ⑳向き180度変えて水を流す⇒ ㉑向きを180度変えてドアへ移動・・・・・・ できそうを見つけるコツ トイレに行く 小目標 中目標 大目標 ・扉の開閉 ・ズボン下着の脱衣 ・便器から立つ ・後始末 ・着衣 ・便器に座る ・手を洗う 等 ・ドアノブに手を伸ばす ・扉を引く ・スリッパを履く ・便器に近づき向きを変える ・両手でズボンを下ろしやす いように手をかける ・トイレットペーパーに手を伸ばす ・紙を巻き取る ・紙を切る ・おしりに手をまわす ・水を流す ・蛇口をひねって水を出す ・両手をこする ・タオルでふく ・電気を消す などなど 29 2016/7/13 分解できると・・・ すべてができない わけじゃないこと に気付く プラン立案時の大切な視点③ ∼自立支援を目指して∼ 「できそう」を「できる」 「している」にしていくための 具体的方法を多く知っている 30 2016/7/13 できそうをできるにする方法 ①回復モデル(その人の心身機能を変える) ②習得モデル(練習して上手くなる) ③代償モデル(環境を変える) ・道具を使う ・やり方を変える ・環境を調整する 回復?習得?代償? 洗濯 調理 買い物 配膳 旅行 就労 回復モデル (訪リハ・デイ) 習得モデル (ヘルパー中心に) 代償モデル (行政OT・ヘルパー 訪リハ・福祉用具業者 ケアマネ) 31 2016/7/13 できそうをできるにするポイント その①:身体機能のトレーニングで良くならないか その②:練習してうまくできるようにならないか その③:道具や環境の調整・整備は必要ないか 体力 動作 環境 これらを総合的に判断していくつも の改善方法を検討します 人はその気になって考えて やってみれば、もっと健康な 自分になれる (That man, through the use of his hands as energized by mind and will, can influence the state of his own health) (1962 Mary Reilly) 32