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第4章.標準仕様の策定
第4章.標準仕様の策定 4.1 標準仕様策定にあたっての基本的考え方 4.1.1 標準仕様策定の背景 (1)タクシー車両のバリアフリー化の現状 一般のタクシー車両のほとんどはセダン型であるが、現状においてこれはユニバー サルデザインとなっておらず、高齢者が乗降しにくい、車いすのまま乗車できない等 の問題を抱えている。 一方でセダン型以外のタクシー車両の中に「福祉タクシー」がある。これらは主とし て専用の大型1BOX型であり、ユニバーサルデザインではない。しかし、身体障害者・ 高齢者等の移動制約者の病院・施設等への通院等のニーズに対応して、車いす使用者や ストレッチャー使用者が乗降できるリフト等を備えたものであり最近ではリフトだけで なくスロープも使われるようになり、さらに、軽自動車等のスロープ付車両も普及しは じめた。また、タクシーではないが「移送サービス」システム(身体障害者・高齢者に 対して、非営利の組織が会員制などにより自宅から目的地までなどの送迎サービスを提 供するシステム)においても、福祉タクシーと同様の車両が用いられているがこれらの サービスに利用できる車種数には限りがある。 ユニバーサルデザインのタクシー車両の活用例としては、利用者の多目的利用ニーズ にも対応したタクシー事業者の取り組みがあり、1台のタクシーを車いす使用者を含む 身体障害者・高齢者の移動から、健常者の観光・送迎目的などに対応している。 利用者アンケート調査等において、だれもが気軽に利用できるユニバーサルデザイン のタクシー車両の普及が求められている事が再確認された。 (2)福祉車両の現状と標準仕様 福祉車両の市場は、高齢者の増加により車いす専用1BOX等の車いす仕様車を中心 に順調に拡大しつつある。しかし、現在の福祉車両は一般向けの車両をベース車両とし、 それを一部改良したものであり、必ずしもユニバーサルデザインの車両とはいえない構 造部分もある。また、自家用車、タクシーを含む営業車いずれにおいても販売台数が十 分な生産ラインに乗るまでに至っておらず、車種によっては車両価格の高騰を招いてい る。 標準仕様は、ユニバーサルデザインのタクシー車両の生産コストの低廉化とともに、 自動車メーカーの開発促進につながることが期待される。また、長年大きなデザインの 更新のないセダン型のタクシー専用車両において、だれもが利用しやすいように設備、 部位の仕様の改善を図る事が可能である。 105 (3)望ましい車両構造の提示 現在の「交通バリアフリー法」には、タクシー車両の構造要件は含まれていない。 スウェーデンと英国で進められている「タクシーフォーオール」注)の取り組みのよう に、安全性を含む望ましい車両構造を提示することは、各メーカーの開発の方向性に整 合が図られ、異なるメーカーのタクシー車両でもほぼ同じ仕様とする事が可能である。 注)タクシーフォーオール タクシー・フォー・オール(誰でも乗れるタクシー)が意図するシステムは、STS 有資格者、車いす使用者をはじめ、より多くの多様な利用者を想定したアクセシブルな タクシー。EUレベル(トランスポート・プログラムDG Ⅶによる)で、プロジェク トとして 1998 年 2 月から 2000 年 3 月までの開発期間が設けられた。スウェーデンと 英国が共同で取り組んでいる。交通手段として明確なコンセプトを持つこと、アクセシ ブルな車両とすること、ITシステムを活用すること、他のアクセシブルな公共交通機 関との乗り継ぎ等の連携を図ることが主たる課題とされている。 オムニノバ社の「タクシーライダー」は、実用化の段階で、このプロジェクトに使用 するために開発した車両である。 出典:「欧米主要国における高齢者・障害者の移動円滑化に関する総合調査」 2001 年 3 月、交通エコロジー・モビリティ財団 (4)交通バリアフリー法と付帯決議 平成 12 年 5 月 17 日に、「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の 円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」が公布された。交通バリアフリ ー法は、①公共交通機関の旅客施設及び車両等のバリアフリー化を推進すること、② 旅客施設を中心とした一定の地区において、自治体が作成する基本構想に基づき、旅 客施設、周辺の道路、駅前広場等のバリアフリー化を重点的かつ一体的に推進するこ とを内容としたものであり、同法に基づいて、公共交通事業者が旅客施設や車両等を 整備、導入する際の移動円滑化基準が定められている。 交通バリアフリー法により義務付け等の対象となる車両等とは、具体的には公共交 通事業者等が事業の用に供する鉄軌道車両、乗合バス車両、船舶、航空機を指し、タ クシー、STS(スペシャル・トランスポート・サービス)は対象とならなかった。 交通バリアフリー法の審議に当たっては、衆参両院で5項目からなる付帯決議がな され、そのうちのひとつに次の内容が明記された。 高齢者、身体障害者等を個別に又はこれに近い形で輸送するサービスの充実を図る ため、いわゆるSTS(スペシャル・トランスポート・サービス)の導入及びタクシ ーの活用につとめること。 106 4.1.2 標準仕様の基本的考え方 これまでの望ましい車両構造のガイドラインとしては、平成 2 年 3 月の「心身障害者・ 高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」と、平成 13 年 3 月の 全面改訂版「障害者・高齢者等のための公共交通機関の車両等に関するモデルデザイン」 が策定されており、タクシー車両も対象となっている。 本調査におけるバリアフリー化タクシーの標準仕様の策定にあたっては、「障害者・ 高齢者等のための公共交通機関の車両等に関するモデルデザイン」の内容に新たな設備、 部位項目の追加を行うことにより、全ての人にとって利用しやすいタクシーの開発・普 及につながることをめざした。このため策定する標準仕様は、流しの運行にも利用でき るタクシー車両を念頭におき、この用途に従来から用いられている移乗を前提とするセ ダン型に加え、車いすの乗車が可能なユニバーサルデザインのタイプとして新たに「車 いす乗車型」を設定して対象とした。 一方で、福祉タクシー等に用いられている車いす専用の大型1BOX型についてはユ ニバーサルデザインの車両とはいえない構造部分があることや、車両価格が高いこと等 課題が多いが、これらについては市場の要望や販売車両の増加により、前述の課題は将 来的に解決が図られるものとして本標準仕様の対象とはしない。 本標準仕様は 2005 年の交通バリアフリー法改訂(見直し)の際に参考とする。 全ての人にとって利用しやすい タクシー車両の開発ニーズ 交通バリアフリー法の付帯決議で タクシーの活用が明記される 自動車メーカー バリアフリー化タクシー車両の 車両の開発への 標準仕様の策定 標準仕様の反映 車いす乗車型 タクシーの運行 改良セダン型 タクシーの運行 2005 年の交通バリアフリー法 見直しに向けた検討 図 4-1 標準仕様の役割 107 4.1.3 標準仕様の段階と対象 策定する標準仕様は基本的要件、指針、さらに望まれる開発の方向性の3段階でさだめ る。本標準仕様の対象となる車両は移乗を前提とした「セダン型」注、車いすを使用した まま乗車できる「車いす乗車型」とする。 注:車いす使用者は座席へ移乗する。 ・基本的要件 利用者の移動円滑化に最低必要となる基本的な仕様を示す。 高齢者、身体障害者などの移動円滑化に必要な最低基準とし、「セダン型」と 「車いす乗車型」の2つを仕様とする。 セダン型は車いす使用者である高齢者・身体障害者が座席に移乗しやすいよう に乗降口を広くする。車いす乗車型では手動車いす使用者は車いすを使用したま ま乗車できるよう既存のスロープ又はリフトを装備した車両等とする。 ・指針 交通事業者や車両メーカー等が新たに車両を開発・設計し、あるいは大規模改 造を行う場合、身体障害者・高齢者の利便性向上のために、現状の技術で対応可 能な仕様とする。 ほとんどの手動車いす、電動車いす使用者(JIS規格内でハンドル型電動3 輪、4輪を除く)が車いすを使用したまま乗車可能で、高齢者・身体障害者の大 半が利用可能。 ・さらに望まれる開発の方向性(次世代を目標とした開発の方向性) 身体障害者・高齢者にとってさらに身体的、人間工学的により利用しやすいも のとするために実現が望まれる仕様。 室内車いすスペース、乗降口の広さに応じて大型の電動車いすを使用したまま の乗車も可能。 参考資料.「障害者・高齢者等のための公共交通機関の車両等に関するモデルデザイン」 平成 13 年 3 月.運輸政策研究機構 4.1.4 標準仕様の規定の仕方(目標水準へのアプローチ) 標準仕様の検討に当たっては、人間工学、安全性、ユニバーサルデザイン等に配慮し、 その規定にあたってはできる限り根拠や背景を示し、「仕様基準(数値的基準)」を設 定した。一方、現状では「仕様基準」を定めることが難しいもの、機能面から性能規定 とする方が望ましいものは「性能基準」を用いた。 仕様基準 性能基準 表 4-1 仕様基準と性能基準の例 高さ、幅、奥行き、長さ、箇所数(割合)、直径、文字の大きさ、耐荷重、 傾斜角度、温度 等 材質、色、位置、利用しやすい仕様と位置、乗降に支障のない位置、位置を 統一する、案内表示をつける、高さや形状に配慮、充分な幅を確保 等 出典:「障害者・高齢者等のための公共交通機関の車両等に関するモデルデザイン」平成 13 年3月、(財)運輸政策研究機構 108 4.2 利用対象者等の前提条件 (1)利用対象者 身体障害者、高齢者、健常者全ての利用者を対象とする。 (2)車いすで乗車する際の前提条件 交通バリアフリー法の移動円滑化基準では、鉄道、バスなどの車両等に、車いすスペ ースの設置について義務づけがなされているが、車いすについては、車いす使用者とあ るだけで、車いすそのものについては、規定されていない。 本標準仕様の策定に当たって、車いすの諸元は、「障害者・高齢者等のための公共交 通機関の車両等に関するモデルデザイン」平成 13 年3月、(財)運輸政策研究機構の検討 を踏まえて、次の規格内であるものを前提とした。 ・車いすの寸法:最大全長 120 ㎝(使用者の足先等を含む)×全幅 70 ㎝ ×全高 109 ㎝(ISO、JIS 標準寸法) ・車いす使用者頭頂又はヘッドレスト上部までの地上高 :135 ㎝以内(DDA:英国の基準に準拠) ・車いす及び使用者等の重量 :車いす使用者+車いす+介助者を合わせた重量が 200kg 以下 (200kg を越える場合、介助者は車いす使用者と同時にスロープ等を利用し ないこと) ・車いすの最大回転半径:110 ㎝以内(車体投影寸法 120 ㎝以内:幅 120 ㎝の直角路を 曲がれること) ・衝突安全性:車いすが 20Gの衝撃に耐えられること。 ・介助:スロープ等の乗降設備は乗務員が展開、格納し、車いす使用者の乗降は乗務員 が介助する。 注:ハンドル型電動3輪、4輪、及び固定できない構造の車いすは除く。 109 表 4-2 DDA、JIS規格等の車いすの最大寸法 全長 全幅 全高 車いすの分類 (㎝) (㎝) (㎝) DDA(英国) 120 70 135 JIS(手動車いす:大型) 105 63 92 JIS(電動車いす) 120 70 109 道路交通法施行規則 120 70 109 図 4-2 電動車いすの形状および最大寸法(JIS) 注:電動車いすの性能、寸法は、JIS規格(JIST9203)に定められている。その性能は、登板力 10 度以上、 段差乗り越えは、屋外用で4㎝以上(助走あり)となっている。 (3)車両タイプ 「セダン型」に加え、「車いす乗車型」を検討した。なお、従来より福祉タクシー、ボ ランティアの移送サービスに活用されている「リフト付大型1BOX型」は本標準仕様で 検討しないが、「車いす乗車型」に乗車できない大型の電動車いす使用者、ストレッチャ ーの必要な人等は、引き続きこれらを利用する必要がある。 注:「軽自動車」については、本標準仕様の「車いす乗車型車両」には該当しないが、個別の 設備として参考となるものは活用が期待される。 (4)車両の使われ方 車両の利用方法別:流しの運行を視野に入れたタクシー、予約制の福祉タクシー等限定 しない。 110 4.3 仕様項目 安全性、乗降性、居住性、利便性の視点から、身体障害者、高齢者の乗車から降車まで の行動のメカニズム別に、標準仕様の策定に必要となる仕様項目を検討した。 表 4-3-1 性能 安全性 利用者 乗車 利用者行動に基づく仕様項目の検討 の行動 ドアの開閉 開口部の通過 車いすのまま 乗車 着席 通路の利用 車いすの固定 走行 座席の使用 車いすスペー スの使用 機能性 降車 乗降性 設備(仕様) 乗降口(端部の色、材質、補助ステ ップ、足下照明灯、ドア開閉の音 響案内) 乗降用手すり(位置、色、形状、材 質) 乗降用スロープ、リフト(表面の材 質、耐荷重、安全装置、介助、乗 降方向) 通路、室内高(通路の幅、室内高、 床面の材質) 車いすスペース、固定方法(シート ベルト、床面の材質、介助) 座席(仕様、間隔、大きさ、衝撃吸 収、ヘッドレスト、シートベルト) 車内の手すり(位置、色、形状、材 質) 車いすスペース、固定方法(衝突安 全性、ヘッドレスト、シートベル ト) 車内の手すり(位置、色、形状、材 質) 乗車時に同じ ドアの開閉 乗降口(端部の色、材質、補助ステ ップ、足下照明灯、ドア開閉の音 響案内) 開口部の通過 乗降口床面の地上高(床面の地上 高、ニーリング機構) 乗降口開口部の広さ(開口部の広 さ、ドアの開度) 乗降用手すり(位置、色、形状、材 質) 回転シート 乗降補助用ルーフハッチ 車いす、補装具収納場所 注:仕様項目には、一部標準仕様の対象外のものも含まれる。 111 設定目的 ドア接触、 挟み込み 防止 転倒防止 転倒防止 緊急時の 非難 姿勢保持 急制動、右 左折時の 姿勢保持 急制動、右 左折時の 姿勢保持 円滑な乗 降、乗降時 間の短縮 円滑な乗 降、乗降時 間の短縮 表 4-3-2 性能 機能性 利用者 乗降性 居住性 ・着席 居住性 ・走行 利便性 乗車 利用者行動に基づく仕様項目の検討 の行動 設備(仕様) 車いすのまま 乗降用スロープ(幅、表面の材質、 乗車 勾配、格納場所) 乗降用リフト(リフト面の広さ、格 納場所) 乗降口床面の地上高(床面の地上 高、ニーリン機構) 乗降口開口部の広さ(開口部の広 さ、ドアの開度、車いすのまま乗 降できる乗降口) 車いすスペース、固定方法(スペー スの広さ、位置、車いす方向転換 に必要なスペース、固定方向、床 の形状、材質) 通路の利用 通路、室内高(通路の幅、室内高、 床面の材質) 車いすの固定 車いすスペース、固定方法(スペー スの広さ、位置、車いす方向転換 に必要なスペース、固定方向、床 の形状、材質) 座席の使用 座席(高さ、座面の大きさ、背当て の角度) 車内の手すり(位置、色、形状、材 質) 車いすスペー 車いすスペース、固定方法(固定装 スの使用 置、ヘッドレスト、シートベルト) 車内の手すり(位置、色、形状、材 質) 空気循環 空気清浄器 利用可能なタ 車いすシンボルマーク クシーの確認 空車ランプ 行き先確認 筆談器 走行 座席の使用 車両番号の点字表示 降車 料金の支払い 料金メーター(位置、音声案内) 初乗り運賃の点字表示 注:仕様項目には、一部標準仕様の対象外のものも含まれる。 112 設定目的 車いす使 用者の円 滑な乗降、 乗降時間 の短縮 居住性確 保 車いす使 用者の居 住性確保 走行中の 居住性確 保 車いす使 用者の確 保 アレルギー、内 部障害者 等の対応 移乗又は 車いすを 使用した ままの乗 車可能か 確認 聴覚障害 者の対応 視覚障害 者の対応 視覚障害 者の対応 4.4 標準仕様 「セダン型」「車いす乗車型」「セダン型、車いす乗車型共通」の順に、仕様項目別に 標準仕様を設定した。 4.4.1 セダン型 部位・設備項目 セダン型 乗降口(セダン) 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 標 準 基本的要件 乗降口の広さ 乗降口下の 段差 乗降口の端部 床面の材質 足下照明灯 回転シート 仕 様 指 針 ◎身体障害者、高齢者の乗降 ○乗降補助用ルーフハッチを 設置しても良い。 の円滑化を図るため、乗降 口を可能な限り広くするこ と。 ◎後部ドア開口部下部の、床 面との段差を少なくするこ と。 ◎乗降口の端部は、その周囲 の部分や路面との明度差が 大きいこと等により、身体 障害者、高齢者が端部を容 易に識別しやすいようにす ること。 ◎乗降口付近の床の材質は、 滑りにくい仕上げとするこ と。 ◎夜間においても足下が見や すいように、乗降口にはド ア開口時に点灯する足下照 明灯を設置すること。 ◎肢体不自由者の車いすから の移乗、高齢者等の乗車が しやすいように、シートが 回転して車外に出る機構を 設置すること。 113 さらに望まれる 開発の方向性 部位・設備項目 セダン型 乗降口(セダン) 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 姿図・寸法 <回転シート> 回転シート 114 4.4.2 車いす乗車型 車いす乗車型 部位・設備項目 乗 降 口 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 標 準 基本的要件 仕 様 さらに望まれる 開発の方向性 車いすを使用 ◎乗降口のうち 1 カ所は、ス ○車いすのまま乗車できる乗 ◇幅は 80cm 以上、 高さは 135cm 以 降口を 1 以上設け、その幅 ロープ、その他の車いす使 したまま乗車 上がさらに望まし は 75cm 以 上 、 高 さ は 用者の乗降を円滑にする設 できる乗降口 い。 130cm 以上とする。 備が備えられていること。 と広さ 車いす対応の 室内高 乗降口地上高 ◎高齢者の円滑な乗降、車い す使用者が車いすのまま乗 車する際のスロープの勾配 を緩やかにするため、停車 時の乗降口地上高はできる 限り低くすること。 床面の材質 足下照明灯 針 ○車いすのまま乗車できる車 両の室内高は、135cm 以上 とする。 ○停車時の乗降口地上高は、 ◇高齢者、車いす使 30 ㎝以下とする。 用者の乗降を円滑 ○ただし、高齢者、松葉杖使 にするために、停 用者等の乗降補助のため 車時の乗降口の高 に、1段の高さを 20 ㎝未 さは、20 ㎝以下の 満とするために補助ステッ 段差とすることが プ等を設置する場合はこの さらに望ましい。 限りではない。 注 ○横から乗車:スロープの勾 ◇横から乗車:スロ ープの勾配は、10 配は、14 度以下とする。 度以下がさらに望 ○後部から乗車:同上。 ましい。 ◇後部から乗車:同 上。 スロープの 勾配 (詳細はスロ ープを参照) 乗降口の端部 指 ◎乗降口の端部は、その周囲 の部分や路面との明度差が 大きいこと等により、身体 障害者、高齢者が端部を容 易に識別しやすいようにす ること。 ◎乗降口付近の床の材質は、 滑りにくい仕上げとするこ と。 ◎夜間においても足下が見や すいように、乗降口にはド ア開口時に点灯する足下照 明灯を設置すること。 注:停車時の乗降口地上高を低くするために、ニーリング機構を設けても良い。 115 車いす乗車型 部位・設備項目 乗 降 口 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 姿図・寸法 横から乗車の場合 室内高○135cm 以上 乗降口高さ ○130 ㎝以上 ◇135 ㎝以上 乗降口の幅 ○75cm 以上 ◇80cm 以上 ○30cm 以下 スロープ GL↓ 歩道 スロープ 歩道 解説:歩道の幅が2メートル以上、スロープの長さ 1 メートル以下で側面からの車いすの乗降が可能。 歩道のない場合、道路幅員4メートル以上で、かつスロープの長さ 1 メートル以下で車いすの 乗降が可能。 116 車いす乗車型 部位・設備項目 乗 降 口 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 姿図・寸法 後部から乗車の場合 スロープ ○30cm 以下 スロープ 117 部位・設備項目 車いす乗車型 スロープ 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 標 準 基本的要件 仕 様 指 針 さらに望まれる 開発の方向性 スロープ又は ◎乗降口のうち 1 カ所は、ス ロープ、リフト、その他の リフトの設置 車いす使用者の乗降を円滑 にする設備が備えられてい ること。 ○横から乗車:スロープの勾 ◇横から乗車:スロ スロープの ープの勾配は、10 配は、14 度以下とする。 勾配 度以下がさらに望 ○後部から乗車:同上。 ましい。 ◇後部から乗車:同 上。 ○スロープの有効幅は 72cm ◇スロープの有効幅 スロープの幅 は 80cm 以上がさ 以上とする。 注:ただし、車両取付部(75 ㎝ らに望ましい。 以上)はこの限りではない。 ○車いすのスロープからの脱 輪防止のためエッジのある 構造とする。エッジの高さ は車いすのハンドルリムと 干渉しないように留意す る。 スロープ表面 ◎スロープの表面は滑りやす くない素材であること。 の材質 ○スロープの耐荷重は 200kg スロープの 以上とする。注2 耐荷重 スロープの ◎スロープは乗降口から脱落 しない構造とすること。 設置方法 ◎スロープと床面に段差がで きないような構造とするこ と。 スロープの ◎スロープは使用に便利で、 乗客にとって安全な場所に 格納場所 備えられたものであるこ と。 注 1:ただし、車いすスペースの全長は 130 ㎝とする。 注2:200 ㎏=標準的車いす+車いす使用者+介助者。(200kg を越える場合、介助者は車いす使用者と同時 にスロープ等を利用しないこと) 118 部位・設備項目 車いす乗車型 スロープ 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 姿図・寸法 <スロープの勾配> ◇10 度以下 乗降口地上高 85cm 120cm 歩道の高さ 15cm 6.8 度 25cm ○14 度以下 9.6 度 歩道の高さ 5cm 乗降口地上高 35cm 145cm 25cm 105cm 14.0 度 13.8 度 解説:スロープの勾配は、①スロープの長さ、②歩道の高さ、③乗降口の高さで決定される。 スロープの収納性や強度の確保、さらに製造コストを勘案すると、歩道上でのスロープ の長さは実用上 1m 以下が目安になると思われる。 119 車いす乗車型 部位・設備項目 リ フ ト 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 標 準 基本的要件 仕 様 指 針 さらに望まれる 開発の方向性 スロープ又は ◎乗降口のうち 1 カ所は、ス ロープ、リフト、その他の リフトの設置 車いす使用者の乗降を円滑 にする設備が備えられてい ること。 ○使用できるリフト面(プラ ◇全幅 80cm 以上が リフト面の ットフォーム)の広さは全 さらに望ましい。 広さ 長 110cm 以上、全幅 72cm 以上とする。注 1 リフト面の ◎リフト面(プラットフォー ム)は滑りやすくない素材 材質 であること。 ○リフトの耐荷重は 200kg 以 リフトの 上とする。注2 耐荷重 リフトの格納 ◎リフトは使用に便利で、乗 客にとって安全な場所に備 場所 えられたものであること。 リフト作動時 ◎リフトの左右両側に、リフ ト昇降中に車いす使用者が の安全 つかまっていられるように 手すりを設置するととも に、転落防止板(後退防止用 ストッパ)を設置すること。 リフトの誤作動防止のた め、安全装置(サイドブレー キを引いていないとリフト が動かない等)を必ず取り 付けること。 注 1:ただし、車いすスペースの全長は 130 ㎝とする。 注2:200 ㎏=標準的車いす+車いす使用者+介助者。(200kg を越える場合、介助者は車いす使用者と同時 にスロープ等を利用しないこと) 120 車いす乗車型 部位・設備項目 リ フ ト 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 姿図・寸法 手すり 転落防止板 ○110cm 以上 ○72cm 以上 ◇80cm 以上 ○110cm 以上 121 部位・設備項目 車いす乗車型 乗降用手すり 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 標 準 仕 様 基本的要件 手すりの設置 手すりの色 手すりの形状 手すりの材質 指 針 さらに望まれる 開発の方向性 ◎身体障害者・高齢者の乗降 の円滑化、姿勢保持、立ち 座り、安全確保のために、 乗降口には手すりを設置す ること。 ◎夜間や薄暗い時、又は高齢 ○手すりの色は朱色又は黄赤 者、弱視者の安全のために、 とする。 手すりは容易に識別できる ○手すりとその周囲の部分と の色の明度差をつける。 配色であること。 ◎身体障害者・高齢者が握り ○パイプ径は2∼3cm 程度と やすい形状であること。 する。 ◎身体障害者・高齢者が握り すいように、手すりの表面 はすべりにくい材質や仕上 げであること。 部位・設備項目 車いす乗車型 床の材質、形状 対象:肢体不自由者、高齢者等 標 準 基本的要件 床の材質 床の形状 仕 様 指 ◎床の材質は、滑りにくい仕 上げとすること。 ◎車いす使用者が安楽で適正 な座位姿勢を保てるよう に、固定スペースの床面は 水平にすること。 122 針 さらに望まれる 開発の方向性 部位・設備項目 車いす乗車型 車いすスペース 対象:肢体不自由者(車いす使用者含む)、高齢者 標 準 基本的要件 仕 様 指 針 車いすスペー ◎次に掲げる規格に適合する 車いすスペースを 1 以上設 スの設置 置すること。 車いすスペー ◎車いすスペースは、車いす の進入しやすい位置に設け スの位置 ること。 車いす固定ス ○車いすを固定するスペース ペースの広さ は、 長さ 130cm 以上、 幅 75cm 以上、高さ 135 ㎝以上とす る。 車いす使用者 ○車いす使用者の外への視界 を、座席利用者同様に確保 の視界の確保 する。 車いすの方向 ◎車内には車いすが介助によ り転回できるスペースを確 転換に必要な 保すること。 注 スペース 注:回転盤を使用する場合はこの限 (側方からの りではない。 乗車) 注:第5章参照 123 さらに望まれる 開発の方向性 部位・設備項目 車いす乗車型 車いすスペース 対象:肢体不自由者(車いす使用者含む)、高齢者 姿図・寸法 <車いすスペース> ○130cm 以上 ○75cm 以上 スロープ 歩道 ○75cm 以上 スロープ ○130cm 以上 124 部位・設備項目 車いす乗車型 車いす固定方法 対象:肢体不自由者(車いす使用者含む)、高齢者 標 準 基本的要件 仕 様 指 針 さらに望まれる 開発の方向性 車いす固定装 ◎車いすを固定することがで ○車いす使用者が走行中も車 いすに着座する場合には、 きる設備が備えられている 置 前向き固定、後ろ向き固定 こと。固定装置は、固縛、 を問わず、車両内の固定装 開放に要する時間が短く、 置は 20Gの衝撃に耐えら かつ確実に固定できるもの れる強度とする。 であること。 ○車いす使用者が走行中も車 ◇車いす側の装置と 車両側の装置がワ いすに着座する場合には、 ンタッチで固定で 前向き固定、後ろ向き固定 きる装置を開発す を問わず、車いすが 20Gの ることがさらに望 衝撃に耐えられる強度とす ましい。 る。 ○車いす側にフック等の固定 場所を明示する。 ヘッドレスト ◎車いす使用者向けのヘッド ○前向き固定、後ろ向き固定 レストを用意すること。 を問わず、ヘッドレストの (頭部後傾 注1 高さ、角度等の調整ができ 抑止装置) るようにする。 注 2 シート ◎車いす使用者の安全を確保 ○前向き固定:3点式とする。 後向き固定:3点又は2点 するために、シートベルト ベルト 式とする。 を設置すること。 車いす側の安 全性、固定装 置取り付け 注1:ヘッドレストは、車いす、車両側のいずれかに用意されていること。 注 2:車いす使用者の後頭部が最も突出した部分の少し下から、頚の少し上を支えられるよう、位置調整がで きるようにする。 125 部位・設備項目 車いす乗車型 車いす固定方法 対象:肢体不自由者(車いす使用者含む)、高齢者 姿図・寸法 <4点式車いす固定ベルト、3点式シートベルトの例> 側 面 上 面 126 前 部 後 部 4.4.3 セダン型、車いす乗車型共通 セダン型、車いす乗車型共通 部位・設備項目 座 席 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 標 準 仕 様 基本的要件 座席の仕様 指 針 さらに望まれる 開発の方向性 ◎床面からの高さ、奥行き、 背当ての角度、座面の角度 等を配慮し、座りやすく、 立ち上がりやすいものとす ること。 部位・設備項目 セダン型、車いす乗車型共通 車内の手すり 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者等 標 準 基本的要件 手すりの 設置 手すりの色 手すりの 形状 手すりの 材質 仕 様 指 針 ◎身体障害者・高齢者の走行 中の安全確保のために、車 内に手すりを設置するこ と。 ◎夜間や薄暗い時、又は高齢 ○手すりの色は朱色又は黄赤 者、弱視者の安全のために、 とする。 手すりは容易に識別できる ○手すりとその周囲の部分と の色の明度差をつける。 配色であること。 ◎身体障害者・高齢者が握り ○パイプ径は2∼3cm 程度と やすい形状とすること。 する。 ◎身体障害者・高齢者が握り やすいように、手すりの表 面はすべりにくい材質や仕 上げとすること。 127 さらに望まれる 開発の方向性 部位・設備項目 セダン型、車いす乗車型共通 車いす、補装具収納場所 対象:肢体不自由者、視覚障害者、高齢者 標 準 仕 様 基本的要件 指 針 さらに望まれる 開発の方向性 車いす収納ス ◎車いす使用者が座席に移乗 ○ 収 納 ス ペ ー ス は 、 長 さ 105cm × 幅 35cm × 高 さ した場合のために、折りた ペース 90cm 以上とする。 注 たんだ車いすの収納スペー スを確保すること。 補装具収納ス ◎車内に杖等の補装具を収納 するスペースを設置するこ ペース と。 注:標準型自操用手動車いすを折りたたんだ時の最大寸法に対応できる収納スペース。折りたたみ機構で高さが 短くならない車いすの収納を想定。 部位・設備項目 セダン型、車いす乗車型共通 料金案内 対象:視覚障害者、肢体不自由者、高齢者等 標 準 基本的要件 仕 様 指 料金メーター ◎料金メーターは、後部座席 からも見やすい位置に設置 の位置 すること。 初乗り料金の ◎視覚障害者のために、初乗 り料金を点字で表示するこ 点字表示 と。 料金の 音声案内 針 さらに望まれる 開発の方向性 ◇視覚障害者のため に、音声によって 料金が確認できる ような装置を設置 することがさらに 望ましい。 128 部位・設備項目 セダン型、車いす乗車型共通 料金案内 対象:視覚障害者、肢体不自由者、高齢者等 姿図・寸法 <料金メーターの位置> 129 部位・設備項目 セダン型、車いす乗車型共通 その他の設備、表示 対象:聴覚障害者、視覚障害者、肢体不自由者等 標 準 基本的要件 車両番号表示 仕 様 指 針 さらに望まれる 開発の方向性 ◎視覚障害者のために、タク シー会社名、車両番号を知 らせるため、これらの情報 の点字案内を行うこと。 注1 筆談器 ◎聴覚・言語障害者とのコミ ュニケーション円滑化のた めに、筆記用具や書き消し が簡単な電子的もしくは機 械的な筆談器を備えるこ と。目的地を指示するため の地図を常備することも有 用である。 注2 車いす標示に ◎車外に車いすシンボルマー ○乗 車 可能 な車 い すの 大き さ、形状等について車外に クステッカーを貼り、移乗 よる乗車案内 明示する。 又は車いすによる乗車が可 能であることを明示するこ と。 姿図・寸法 <点字シールの例> 注1:乗車した車両番号は、忘れ物の問い合わせ等の際に活用できる。 注2:使用頻度の高い手話は習得することが望ましい。例:「ありがとうございます」「お待ち下さい」等。 130 部位・設備項目 セダン型、車いす乗車型共通 その他の設備、表示 対象:聴覚障害者、視覚障害者、肢体不自由者等 姿図・寸法 <筆談器> <車いすタクシーのマーク> 131 4.5 標準仕様の課題 標準仕様に関して今後も継続して検討すべき点を整理した。 ①デザインの標準化、共通化 今後の継続した設備の標準化、仕様の改良により、利用者にとっての更なる利便性、 安全性の向上を図ることが必要である。 ②車両へのスムースな乗車 利用者が円滑に乗降できる仕様の継続した検討が必要である。 例えば、視覚障害者は、「セダン型」に比べて「車いす乗車型」の乗降口の方が広 く、「室内高にゆとりがあり、白杖を折らなくてよいので便利」等と評価している。 車いす使用者の乗降時間短縮のためには、次の点を継続して検討する必要がある。 ・側方から乗車する場合の方向転換。(モックアップ、ノアの回転盤等で検討した) ・扱いやすいスロープの開発と格納方法の検討。(ノア、セレナで試作した) スロープの勾配をゆるやかにするためには、車両の地上高だけでなく、歩道の高さ、 道路幅員等の道路環境整備が求められている。 ③車いす使用者の安全確保 車いすのまま乗車する場合の安全確保について、次の視点から継続した検討が必要 である。 ・車いす固定装置の開発と車いす側からの開発のアプローチ。 ・事故発生時の強い衝撃に耐えうる強度のある安全性の高い車いすの普及促進。条 件を満たした車いすへの推奨シールの交付の検討。 ・簡便に装着でき、従来どおりの安全を確保できるシートベルトの開発。 ④情報提供 利用者への情報提供の拡充が求められている。 例えば、車いす使用者、高齢者に対する、利用可能な車いすの大きさ、移乗しやす い設備等についての車両、タクシー乗り場への表示、予約時の案内、視覚障害者が場 所を問わずタクシーを利用しやすく、弱視者が認識しやすい案内表示等が考えられる。 ⑤その他 本標準仕様の、軽自動車の車いす仕様車、リフト付バン型車両等への適用検討、「車 いす乗車型」と「セダン型」タクシーの地域特性(身体障害者・高齢者人口、地形等) 別運行形態等についても今後検討していく必要がある。 132