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平成22年度 事業報告書(PDF)

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平成22年度 事業報告書(PDF)
NPO 法人 日本ウミガメ協議会
Sea Turtle Association of Japan
2010 年 10 月~2011 年9月
日本ウミガメ協議会
事業報告書
1.
日本におけるウミガメ関連情報のとりまとめ
1-1
2011 年シーズン(2010 年 10 月~2011 年 9 月)の日本の産卵情報の収集
2011 年度
日本国内の 202 機関・個人より、554 ヶ所の砂浜のウミガメ類の上陸・産卵情報をいただいた。アカウミガ
メは 389 ヶ所の砂浜で 18069 回の上陸、内 327 ヶ所の砂浜で 8986 回の産卵が確認された。また、アオウミ
ガメは 123 ヶ所の砂浜で 1172 回の上陸、内、97 ヶ所の砂浜で 552 回の産卵が、タイマイは 9 ヶ所の砂浜で
38 回の上陸、内、8 ヶ所の砂浜で 26 回の産卵が確認された。また、種の特定できなかった上陸回数は 179
回、産卵回数は 97 回であった。(2011 年 10 月 25 日集計段階)(添付資料 2011 年ウミガメの上陸・産
卵資料)(谷口・亀崎)
1-2
2011 年シーズンの漂着死体情報の収集
期間中、日本ウミガメ協議会に報告された漂着死体は 390 件であった。内訳はアカウミガメ 180 件、アオウ
ミガメ 142 件、タイマイ 33 件、オサガメ 4 件、ヒメウミガメ 1 件、種不明 30 件であった。 (岡本・大内・
谷口)
1-3
2011 年シーズンの標識調査
2010 年 10 月~2011 年 9 月の間に、27 の個人・団体・機関に 6951 個の標識を配布した。標識個体の再発見
情報は 123 個体について寄せられた。種内訳はアカウミガメ 55 件、アオウミガメ 62 件、タイマイ 6 件であ
った。発見状態別では、漁業による混獲 80 件(内訳:定置網 64 件、刺網 4 件、一本釣り 1 件、巻網 1 件、不
明 10 件)、上陸・産卵 16 件、死体漂着 12 件、ダイバーによる目撃 2 件、その他 13 件であった。(岡本・大
内・松沢)
1-4 第 21 回日本ウミガメ会議(田原会議)の開催
2010 年 11 月 26 日から 28 日にかけて標記の会議を愛知県田原市で開催
した。参加者はのべ 800 人を越え盛大に行われた。また、会議初日には、
田原市の小学生約 530 名を対象にウミガメ出前講座が実施された。
海外からの参加者は招待講演者である Devid Owens 博士がアメリカから
来日、ほかにも韓国から Moon Dae-Yeons 氏やが Jung Min-Min 氏が参
加した。会議の中では二つのシンポジウム、15 件の口頭発表、11 件のポ
スター発表や、上記 1-1 から 1-3 の報告・議論を行った。(水野)
1-5 第 22 回日本ウミガメ会議(沖永良部会議)の準備
201 0 年 10 月より和泊町及び知名町に予算申請を行い、2011 年 1 月より会議の体制を構築、準備委員会を
実施しながら、6 月より沖永良部島ウミガメ会議実行委員会を設置した。定期的に実行委員会を開催しなが
ら、会議の内容について協議した。(水野)
1-6
平成 23 年度
徳島県
自然環境協力員育成委託業務(水辺環境)
徳島県内のアカウミガメ上陸・産卵調査等に関わる人材育成事業を行った。徳島県内の住民から協力調査員
を募集したところ、18 名の調査員が集まった。そして、産卵シーズン前の 5 月 21 日(土)に徳島県牟岐町・徳
島県立 牟岐尐年自然の家にて、徳島県のアカウミガメ調査の歴史や調査方法等の講習会(参加人数 25 名)を
調査員及び一般向けに行った。調査結果は日本ウミガメ協議会が収集・まとめを行い、産卵シーズンも終わ
りの 11 月 12 日に徳島県海陽町の阿波海南文化村にて調査結果の報告会(参加人数 18 名)を開催した。報告会
は調査員及び一般の方々にも参加していただき、近年、徳島県の砂浜においてはアカウミガメの上陸・産卵
回数が著しく減尐している現状を確認した。また、その減尐原因を探るため、徳島県でのアカウミガメの砂
浜環境について参加者とともに議論を行った。 (谷口)
1
日本ウミガメ協議会
2
事業報告書
2011 年度
国際的な活動
2-1 第 31 回国際ウミガメシンポジウム(米国
サンディエゴ)に出席
2011 年 4 月 11 日から 16 日まで開催された標記会議に事務局から松沢慶将、石原孝が出席した。なお、石
原はアカウミガメの成熟過程と個体群の特性について、松沢はみなべ町千里浜における卵の食害状況につい
てポスター発表した。14 日の昼食時には、シンポジウムの公式関連行事として、第 1 回東アジア地域会合を
開催した。シンポジウムの参加者のうち、日本、韓国、中国、台湾、マレーシア、米国から 25 名が集まり、
それぞれの国と地域での活動や保護の現状について情報共有をはかった。16 日に開催された国際自然保護連
合種の保存委員会 Marine Turtle Specialist Group の会合では、East Asia Regional Group が新設されること
が決まり、松沢が Regional Vice Chair に就任した。(松沢・石原)
2-2
Grupo Tortuguero との協働
メキシコの NGO Grupo Tortuguero と共同で、米国内務省の海外ウミガメ保護助成事業「北太平洋における
アカウミガメの包括的保護事業」を受託し実施している。2010 年度は、特に産卵規模の大きな屋久島におけ
る卵と孵化幼体の保全(特にいなか浜、前浜以外)を、屋久島ウミガメ館と協力して実施した。(松沢)
2-3
韓国との協働
2007 年に韓国国土交通海洋省が海洋動物の保護政策を策定したことに基づき、2008 年に韓国国立水産科学
院鯨類研究所所長の Moon Dae-Yeon 博士を中心としたウミガメ調査研究が開始されて以来、随時、情報交
換を行ってきている。2010 年に第 21 回日本ウミガメ会議に Moon Dae-Yeon 博士と Jung Min-Min 博士が来
日したのを機に、11 月 26 日夜に日本海沿岸で活動している日本側の主だった関係者とともに会合(日韓ウ
ミガメ協力会議)を持ち、今後の両国の協力体制構築の必要性を確認し、今後は情報交換のための会合を定
期的に開催していく行う方向で合意した。(松沢)
2-4
アメリカ合衆国西部太平洋漁業委員会との協働
標記委員会では北太平洋のアカウミガメ個体群の保護のための事業を行っており、亀崎は諮問委員の一人と
して参画している。これに関連して、以下にあげる事業を担当している。
(1)産卵地における卵および孵化幼体の保全
北太平洋のアカウミガメの数を増やすための具体的な活動として、孵化が望めない場所に産卵された卵の移
植や保護柵の設置などを、屋久島、宮崎、みなべの3 ヶ所で実施した(松沢)
(2)混獲軽減のための基礎資料としての漁業情報の取りまとめ
混獲軽減のための基礎資料としての漁業情報の取りまとめ 混獲の現状を理解するため、地域・季節ごとの
漁業の操業状況の聞き取り調査。本年度は九州本土および日本海沿岸の漁港を対象とし、ウミガメ類は主に
定置網に混獲されることを確認した。九州本土では多くの場合海面に開いており、ウミガメが混獲されても
生きたまま放流されることが多いことも確認された。日本海沿岸では定置網の設置密度も関係すると思われ
るが、富山湾・若狭湾内での混獲情報が多かった。(石原)
(3)母浜回帰を念頭においた産卵群のDNAによる識別
母浜回帰を念頭においた産卵群のDNAによる識別 アカウミガメがどのレベルで回帰性を持つのかは、い
くつかの研究例はあるものの明白になっていない。そこで、アメリカ合衆国NOAAの Peter Dutton 博士と
共同研究を行い、より多型の出やすい部位で産卵群間の比較を行う研究を開始した。塩基配列の分析は日本
で行い、データを米国に送って解析した。その結果、各産卵地内では 5-10 年経過しても遺伝子型の出現頻度
2
日本ウミガメ協議会
事業報告書
2011 年度
に大きな違いは現れなかった。また、今回はじめて南西諸島の産卵個体あるいは孵化幼体の DNA 分析を行っ
たところ、南太平洋に分布する遺伝子型が多く認められ、出現する遺伝子頻度は屋久島やより北に位置する
産卵地のそれとは明らかに異なった。(石原)
2-5 在日米軍基地における産卵調査およびアセスメント
08年から沖縄本島内の陸軍施設でウミガメの産卵の可能性がある砂浜での産卵・孵化・環境調査を実施して
いる。本事業年度では、琉球大学ウミガメ研究サークルの協力により、5月末から8月末までほぼ毎朝砂浜を
踏査し、必要に応じてアカウミガメの卵の保護移植をするとともに、砂中温度や砂の堆積等のモニタリング、
脱出孵化調査等を実施した。また、砂浜の環境や今後計画されている工事の影響について影響評価と提言を
行った。(松沢)
3
講演・学会発表・普及啓蒙活動
3-1 講演活動
亀崎直樹
ウミガメ保全米日の違い、第 44 回 TREE セミナー、2/26、東邦大学理学部習志野メディアセンター
水野康次郎
企業との協働による利点と問題点、日本ファンドレイジング大会、2/5 日本財団
ウミガメってどんな生き物?、ハレルヤ幼稚園・鹿児島県子ども劇場 7/12 与論島
松沢慶将
みなべ町千里浜におけるウミガメ保護活動 2010 年、12/22 ライオン大阪工場
人工ふ化放流の意義と課題、アオウミガメ人工ふ化放流事業 100 周年記念シンポジウム、3/4 小笠原
Sea turtles in Japan and adjacent waters、第 31 回国際ウミガメシンポジウム 第1回東アジア地域会合
ウミガメの地磁気コンパス、 5/31 ライオン大阪工場
みなべ町千里浜におけるウミガメ、帝京科学大学サルカメ実習 7/16 和歌山県みなべ町千里観音
4/14
サンディエゴ
若月元樹
黒島の観光と経済、沖縄経済環境研究所よりの依頼、5 月
沖縄国際大学
亀田和成
サンゴについて、黒島中学校生徒に対する講義、12 月
黒島研究所会議室
石原孝
ウミガメの保全について、ビオカフェ、10/24 COP10 熱田会場 CBD 市民ネット生命流域部会・名古屋市ブース
パネリスト「かめ、かめ、かめを語ろう! ~あなたの声で広がるまちづくり~」四国サイコーダイガク コミュニティビジネス学
部主催、2/26 徳島県美波町
島田貴裕・川合理人
ウミガメはどうやってエサを見つけるか?(明暗実験)
日和佐うみがめ博物館サマースクール
徳島
8/8
岡本慶
ウミガメについて、8/25、大阪経済大学
大内裕貴
パネリスト「かめ、かめ、かめを語ろう!
部主催、2/26 徳島県美波町
~あなたの声で広がるまちづくり~」四国サイコーダイガク
コミュニティビジネス学
大嶋大地
アオウミガメとアカウミガメの違いをみつけてみよう!
日和佐うみがめ博物館サマースクール
8/8
徳島
3-2 学会・論文等発表
Kamezaki, N. Historical review of marine turtle. Techno Ocean 2010. 10/14-16. JPN.
Matsuzawa, Y. Current Status of Japanese Loggerhead Turtle. Techno Ocean 2010. 10/14-16. JPN.
松沢慶将・亀崎直樹・石原孝 成熟卵胞を持ちながら産卵しなかったアカウミガメの一例 平成 23 年度日本水産学会春期大会.3 月 東
京( 東日本大震災の影響により中止)
亀田・目崎.2011 .NPO 法人ウミガメ協議会附属黒島研究所収蔵資料目録 造礁サンゴ標本.おきなわ銀行助成事業.Pp. 141
亀田・伊澤・笹井.2010.西表島におけるリュウキュウイノシシによるウミガメ卵への被害状況調査報告書.平成 21 年度海洋博覧会記
念公園管理財団助成.Pp. 22.
谷口・亀崎 熊野灘に出現するウミガメ類、南紀生物 53(1): 65-67
3
日本ウミガメ協議会
事業報告書
2011 年度
Ishihara, T., N. Kamezaki, Y. Matsuzawa, F. Iwamoto, T. Oshika, Y. Miyagata, C. Ebisui, and S. Yamashita. Re-entering of Juvenile and
Sub-adult Loggerhead Turtles into the Japanese Natal Waters. Current Herpetology 30(1): 63-68.
Ishihara, T., and N. Kamezaki. Incidental Sea Turtle Catch by Fisheries in the coastal waters of Japan. Techno Ocean 2010. 10/14-16.
JPN..
Ishihara, T., S. Yamashita and N. Kamezaki. Ecological aspects of maturation of loggerhead turtles in the North Pacific. 31th International
SeaTurtle Symposium. USA. Apr. 2011.
石原・亀崎 ウミガメ類に確認された処女膜の変化.第 49 回爬虫両生類学会 10/9-10 神奈川.
石原 カメ類の繁殖、第 21 回日本ウミガメ会議(予習講演) 11/26-28 愛知
岡本・亀崎
日本沿岸におけるアオウミガメとクロウミガメの形態比較
岡本・亀崎
アオウミガメとクロウミガメー形態は違うのか?
第 49 回日本爬虫両棲類学会
10/9-10 神奈川
第 21 回日本ウミガメ会議、11/27-28 愛知
優谷・亀崎 外傷からみたアカウミガメとアオウミガメに対するサメの攻撃、第 21 回日本ウミガメ会議、11/27-28 愛知
目崎・亀田.2010. 2010 年度黒島周辺海域のスポットチェックの結果と 3 ヵ年の比較.CURRENT.12: 2-3.
Isobe,Y., Kato, N., Suzuk, H., Senga, H., Matsuda, M., Kawamura, K., andKamezaki, N. Motion analysis of sea turtle with prosthetic
flippers. Techno Ocean 2010. 10/14-16. JPN.
Hayashi, K., Sato, K., Takuma, S., Narazaki, T., Matsuda, Y. Kawamura, K., and Kamezakki, N. Do artificial fins improve swim capacity of
a forelimb-lost sea turtle?. Techno Ocean 2010. 10/14-16. JPN.
Matsuda, M., Kawamura, K., Sakuma, S., Kanda, K., Kobayashi, K., Miki, A., andKamezaki, N. Development of artificial fins for a sea
turtle. Techno Ocean 2010. 10/14-16. JPN
Watanabe, K., H. Hatase, M. Kinoshita, K. Omuta, T. Bando, N. Kamezaki, K. Sato, Y.Matsuzawa, K. Goto, Y. Nakashima, H. Takeshita,
J. Aoyama, and K. Tsukamoto, 2011. Population structure of the loggerhead turtle Caretta caretta, a large marine carnivore that
exhibits alternative foraging behaviors. Mar. Ecol. Prog. Ser. 424:273-283.
笹井・伊澤・亀田 リュウキュウイノシシ S. scarofa riukiuanus によるウミガメ卵の捕食、第 21 回日本ウミガメ会議、11/27-28 愛知
田中・豊崎・西田・松沢・石原
室戸岬で捕獲されたヒメウミガメの飼育記録の報告、第 21 回日本ウミガメ会議、11/27-28 愛知
3-3 普及啓蒙活動
COP10 関連イベント イルカコンサート前ブース出展 2010/10/24 名古屋
COP10 イベントに出展 2010/10/16-29 日名古屋
エコプロダクツ 2010 2010/12/9-11 出展 東京ビックサイト
カイルアインターナショナルスクールにて 3-5 才児に講演、2011/1/21 千葉県船橋市
四国地区ウミガメ情報交換会開催 2011/1/22、徳島県徳島市白水園
大阪沖州会総会に出席し沖永良部ウミガメ会議をアピール 2011/1/23、大阪
米国西部太平洋区漁業管理評議会主催アオウミガメワークショップ参加 2011/1/25-27、サイパン
キッズラボサイエンスキャンプ・ウミガメ産卵観察指導 2011/6/25-26、和歌山県みなべ町
徳島県アカウミガメ上陸産卵調査講習会を開催 2010/5/21 徳島
イルカ with Friends Vol.7 に参加・出展 2011/7/16、河口湖ステラシアター
平成 22 年度相良自然環境塾 2011/7/29-31 静岡県牧ノ原市
3-4 その他
(1)テレビ番組協力・監修
NHKおはよう日本(10/4 放送)千里浜における食害について 協力
NHK和歌山放送局(11 /5 放送)千里浜における食害について 協力/スタジオ出演
NHKお元気ですか日本列島ぐるっとニュース(10/26 放送)定置網ウミガメ脱出装置開発実験 協力
日本テレビ「世界まる見え!特捜部 Crocodile Island」(7/11 放送)ウミガメ関連部分監修
ABC 放送「ココイロ」(9/26 放送) 前脚を失った悠ちゃん 協力
(2)情報の発信・印刷物の発行
・機関誌「マリンタートラー」の発行
日本ウミガメ協議会の活動を広く周知するた
めに、機関誌「マリンタートラー」第 16 号を発行した(2011 年 9 月 30 日)。
・ウミガメ速報の配信 計 22 回(2010 年 10 月 1 日~2011 年 9 月 30 日) ウミガ
メに関わる個人・団体間での連携と情報の即応性を高めるために、電子メール・ファ
ックスなどを利用し、ウミガメの産卵情報を中心とした情報を不定期に配信した。
4
日本ウミガメ協議会
事業報告書
2011 年度
・「うみがめニュースレター」の発行支援 うみがめニュースレター編集委員会が発行している情報誌「う
みがめニュースレター」の原稿を掲載するとともに、発行経費を支援した。事業年度中に No.85、No.86、
No.87、No.88、の 4 回発行した。
・日本野鳥の会広報誌「野鳥」2011 年 9・10 月号 海の生命コーナー(タイマイ)監修
・大牟田一美・熊澤英俊著「屋久島発うみがめのなみだ」海洋工学研究所出版部 2011 年 8 月発行 監修
(3)東京大学大学院大学院生への研究協力
石原孝/島田貴裕/岡本慶/優谷真理/大内裕貴
(4)卒論指導
三根佳奈子(東海大学海洋学部)論文:「西日本で捕獲されたミシシッピアカミミガメの生殖腺重量の季
節変化について」
原三保子(東海大学海洋学部)論文:「高知県室戸の大型定置網において投棄される魚類について」
重村舞(東海大学海洋学部)論文「遠州灘沿岸海域におけるアカウミガメの孵化幼体の捕食者」
(5)インターンシップの受け入れ
佐野純也(日本東京環境工科専門学校 卒業)/辰巳敬哉(神戸大学)/鶴田祐士(大阪府立大学)
浜村えり(大阪府立大学)/東海大学/大阪経済大学/中田綾菜(大阪市立大学) ほか
4
個別プロジェクト
4-1 ウミガメ義肢プロジェクト(悠ちゃんプロジェクト)
2008 年 6 月に紀伊水道にて、前肢をサメに食いちぎられたアカウミ
ガメが混獲された。これを機に翌年 3 月からヒトの義肢を制作して
いる(株)川村義肢の協力の下、ウミガメに人工ヒレを装着するウミ
ガメ人工ヒレ開発プロジェクトを開始した。現在では(株)川村義肢
の他、ウミガメの遊泳速度等の解析していただいている東京大学佐
藤克文氏やウミガメの運動機能に関して解析をしていただいている
大阪大学の加藤直三氏、ウミガメの幸せ度について解析していただ
いている京都大学の阪上雅昭氏に協力を得て、開発を進めている。
今年で 3 年目になる本プロジェクトは、2009 年 10 月 17 日、12 月
4 日、2011 年 4 月 20 日、5 月 27 日、6 月 23 日、7 月 2 日、8 月 7
日、9 月 18 日に人工ヒレ装着試験を行い、人工ヒレは徐々に完成に近づいている。(亀崎・谷口・三根)
4-2 大阪湾ウミガメレスキュープロジェクト
大阪湾内に出現するウミガメ類は、年間十数個体確認されており、水温が低下する時期まで湾内に留まり、
高い確率で事故に遭遇し傷つき或いは死亡する。そこで大阪湾およびその周辺で偶発的に捕獲されたウミガ
メ類を水温が低下する 12 月上旬まで閉鎖性の避難所(神戸空港島人工海水池)に収容し、必要に応じて治療
5
日本ウミガメ協議会
事業報告書
2011 年度
を施す事業を実施した。しかし、2011 年度は大阪湾内で混獲されるウミガメ類はなく、収容にいたらなかっ
た(亀崎・谷口・三根)
4-3 グリンタートルサンクチュアリープロジェクト(三井物産環境基金)
2005 年度、当会が受けた三井物産環境基金の助成事業で、日本近海には海藻・海草を主食とするアオウミガ
メ(Chelonia mydas)にとって重要な摂餌域が存在することが明らかとなった。また、2007 年度の本助成事業
では、全国に約 100 万人いるとされるダイバーからウミガメ類の目撃情報を収集し(ダイバーズプロジェク
ト)、日本沿岸ではアオウミガメが最も多く目撃され、さらに幾つかの海域には、多くの個体が集まって生息
する場所も確認された。しかし、これまでアオウミガメの生息地の中心は、産卵場所となる日本より南の熱
帯海域にあると考えられており、近年、集まってきた西部太平洋からのウミガメに関する情報の中にアオウ
ミガメの重要な生息地を示唆するような資料はない。つまり、これまで熱帯海域の島嶼部の産卵地は重要視
されてきたが、それに加え、西部太平洋の浅海域、特に日本沿岸の藻場がアオウミガメの餌場として重要な
海域である可能性が出てきた。そこで、本助成事業(2010 年より 3 年計画事業)ではこれまでに当会が集積し
たアオウミガメの漂着死体や漁業による混獲に関する情報を整理する。またダイバーズプロジェクトでアオ
ウミガメが多く目撃された海域をさらに詳細に調査を行う。その結果から、本種にとって重要と考えられる
索餌海域を明らかにする。そのいくつかの海域を(グリーン・タートル・サンクチュアリ:Green Turtle
Sanctuary)として選定し、その海域を保護区とするようダイバーや漁業者、行政さらにアオウミガメが回遊
する関係各国に提言することを目的としている。(谷口・亀崎)
4-4 ウミガメの混獲死低減のための技術開発プロジェクト
本プロジェクトは須磨海浜水族園、在メキシコ NGO grupo tortuguero、漁業者、他機関の研究者との協働で
行われている。実験は 2010 年 9 月 29 日-10 月 3 日に須磨海浜水族園の大水槽で実施し、定置網に見立てた
直方体の網を大水槽内に沈め、そこへウミガメを入れて脱出口から安全に脱出できるかどうかを確認した。
今回、大きく 3 種類、11 パターンの脱出口で実験を行い、そのほとんどでウミガメが脱出できることを確認
した。今後は漁獲対象となる魚をいかに逃がさずにおくかを主な焦点として更なる改良を進めていきたい。
(石原)
6
日本ウミガメ協議会
5
事業報告書
2011 年度
付属施設の活動
5-1 黒島研究所の活動
I-1.主な調査・研究活動
●ウミガメ類の上陸産卵調査(主に黒島西の浜、西表島南岸の各砂浜)
西表島南岸の各砂浜
ウブ浜とサザレ浜におけるウミガメ類の上陸・産卵状況
アカウミガメ
地点名
上陸跡数
アオウミガメ
産卵跡数
上陸
産卵
上陸
産卵
ウブ浜
52
18
0
0
52
18
サザレ浜
135
50
1
1
134
49
●ウミガメ類の標識放流調査
2010 年 10 月から 2011 年 9 月までに合計 124 個体に標識を装着放流。アカウミガメ 11 個体、アオウミガメ 83 個体、タイマ
イ 30 個体。漁師からの買取、タートルネット、産卵個体などを全て含む
●黒島周辺のサンゴのモニタリング調査
黒潮生物研究財団と共同で毎年 1 回行なっている。2010 年の成果は、黒潮生物研究財団の機関紙に掲載
I-2.講演・発表
12 月
5月
黒島中学校生徒に対してサンゴについての講義(黒島研究所会議室)、講演者:亀田和成、依頼者:石西礁湖自然再生
協議会. コーラルリーフウォッチングプロジェクト委員会
黒島の観光と経済(沖縄国際大学)、講演者:若月元樹、依頼者:沖縄経済環境研究所
I-3.論文・報告書
亀田・目崎.2011 .NPO 法人ウミガメ協議会附属黒島研究所収蔵資料目録 造礁サンゴ標本.おきなわ銀行助成事業.Pp. 141
亀田・伊澤・笹井.2010.西表島におけるリュウキュウイノシシによるウミガメ卵への被害状況調査報告書.平成 21 年度海洋博
覧会記念公園管理財団助成.Pp. 22.
目崎・亀田.2010. 2010 年度黒島周辺海域のスポットチェックの結果と 3 ヵ年の比較.CURRENT.12: 2-3.
II. 利用研究者・学生
2010 年
10 月 戸田守
琉球大学熱帯生物圏研究センター
(ウミヘビとキシノウエトカゲの分布・生息状況の調査)
木寺法子 琉球大学 (キシノウエトカゲとウミヘビ調査)
トウ・ミン・チャン 台湾師範大学 (ウミヘビ調査)
一橋和善 慶応大学医学部 ポストドクター(ナマコ研究)
目崎拓真 黒潮生物研究財団(サンゴ調査)
2011 月 国広潮里 甲南大学フロンティアサイエンス学部(研修)
3 月 井口淳子 大阪音楽大学短期大学部音楽学教授(民謡調査)
琉球大学ウミガメサークル (合宿)
7
日本ウミガメ協議会
4月
5月
6月
7月
8月
8月
9月
事業報告書
2011 年度
高橋守 川越高校(ウミヘビ調査)
西川輝昭、学生 2 名 東邦大学理学部教授(ボネリムシ調査)
野村恵一、ほか 9 名.日本造礁サンゴ分類研究会.(サンゴ調査)
栗田正徳・岡本仁 名古屋港水族館(共同研究:タイマイ野生復帰プロジェクト)
日登弘・斉藤智巳・岡本仁 名古屋港水族館
(共同研究:タイマイ野生復帰プロジェクト)
西川輝昭 東邦大学理学部教授(ボネリムシ調査)
国広潮里・松山 甲南大学フロンティアサイエンス学部(研修)
内山・小林 文教学院大学(研修)
亀田承子 酪農学園大学獣医学部(卒論)
琉球大学ウミガメサークル(合宿)
三重大学ウミガメサークル(合宿)
原田 走一郎 大阪大学大学院 (博士論)
佐藤 暁 東京海洋大学(学芸員実習)
鷹尾 真由美 大阪芸大(学芸員実習)
造礁サンゴ標本目録の作成
(収蔵サンゴ標本 1072 点の目録を作成。
国内屈指のコレクションである)
能田 淳 酪農学園大学獣医学部 (実習生受入挨拶)
III. 遠足・修学旅行の受け入れ
2010 年
11 月 石垣島アースライド参加者来島
12 月 分水高等学校(新潟)修学旅行(9名)
2011 年
4 月 石垣市立登野城小学校5年生
石垣市立平真小学校6年生
5 月 石垣市立名蔵小学校
5 月 箕面自由学園中学校(大阪)修学旅行
6 月 竹富町保育所
Ⅳ
新聞掲載・テレビ出演等
2011 年
1 月 ハリガネウミヘビ発見 八重山毎日新聞・琉球新報
7 月 朝だ!生です。旅サラダ 朝日放送
7 月 りゅうぎん DC 社会貢献事業贈呈式 八重山毎日新聞・琉球新報
8 月 タイマイ野生復帰プロジェクト
NHK 沖縄
7-8 月 coralway7・8 月号 夏休み自由研究特集
Ⅴ
ウミガメ勉強会
(5 月の連休および夏休み中毎日、
一般を対象とした勉強会を開催)
その他
入館者数 7712 人(2010 年 10 月~2011 年 11 月)
マリンガイド・ナイトガイドの開催 随時
ライフジャケットの無料貸出,約 3000 着
2010 年
10 月
12 月
平成 22 年度東筋結願祭記録映像製作(3D撮影)
林野庁ふれあいセンター主催 「自然環境教育促進のための連絡会」
竹富町離島総合センター 参加
環境省モニタリングセンター開所10周年記念式典
環境省自然保護管田村努 国立公園の水中指定について研究所で協議
2011 年
1月
Green Turtle Workshop in Saipan 参加
5月
沖縄県博物館協会参加
ウミガメ勉強会の開催(大型連休中毎日)
6月
沖縄生物学会参加
名古屋港生まれのタイマイ
(本年度より名古屋港水族館と共同で
タイマイ野生復帰プロジェクトを実施)
慰霊の日上映 婦人会
動物取扱責任者講習参加
黒島ビジターセンター管理委員会 黒島伝統芸能館
7・8 月 ウミガメ勉強会開催(7 月 15 日~8 月 31 日)
9月
ビジターセンター運営協議会
Ⅵ.現在実施中のプロジェクト
8
日本ウミガメ協議会
事業報告書
2011 年度
 リュウキュウイノシシによるウミガメ卵の餌摂行動に関する研究(琉球大学理学部 伊澤研究室 共同
研究;海洋博覧会記念公園管理財団助成事業)
 平成 23 年度西表石垣国立公園黒島安全利用推進事業(環境省委託事業)
 タイマイ野生復帰プロジェクト(名古屋港水族館共同研究)
(若月・亀田)
5-2 室戸基地の活動
Ⅰ
インターンシップ生・卒論・修論研究生等の受入
原三保子 東海大学 (卒業研究)H22.4.1-H23.3.31
島崎知美 日本ペット&アニマル専門学校 (研修)H23.6.6-6.9
亀田智美 大阪コミュニケーションアート専門学校(研修)H23.7.24-8.8
Ⅱ
卒業論文等
石原 孝「北太平洋産アカウミガメの性成熟過程における生活史」東京大学 博士論文
岡本 慶「日本沿岸におけるアオウミガメ属 Chelonia の形態変異と保全に関する研究」東京大学
優谷真理「日本近海に生息するウミガメ類の外傷分析―サメ類による捕食痕に注目して」
原三保子「高知県室戸の大型定置網において投棄される魚類について」東海大学 卒業論文
Ⅲ
修士論文
主な調査・研究活動
ウミガメ類の上陸産卵調査(室戸周辺)
室戸定置網で混獲されるウミガメ類の標識放流調査(椎名、三津、高岡漁港)
ストランディング・孵化調査
ブリ魚体測定委託業務
高知県室戸定置網における混獲・廃棄魚問題の解決及び有効利用に向けた研究
Ⅳ
共同研究
アオウミガメの系統学的研究 浜端朊子(京都大学大学院博士課程)
オキナガレガニの系統学的研究 Joe Pfaller(Archie Carr Center for Sea Turtle
Research, University of Florida)
Ⅴ 調査結果
確認されたウミガメ類(個体数)
大敷網(高岡、三津、椎名)アカウミガメ 140 個体 アオウミガメ 43 個体 オサガメ 2 個体
イセエビ刺網
アオウミガメ 6 個体
漂着個体
アカウミガメ 3 個体 アオウミガメ 3 個体 オサガメ 1 個体
上陸産卵個体
アカウミガメ 3 個体
Ⅵ
その他
2011/5/8
5/21
5/22
5/24
6/4
6/6-9
6/6
6/7
6/12
6/14
6/16
6/22
6/24
6/27
7/7
7/8
7/9
SCL700mm 以上の個体へのエコー検査開始
徳島アカウミガメ講習会参加
椎名にて混獲したアカウミガメ♂(SCL797)から精子を採取、実験用に高岡にてストック開始
台風接近のためストックしていたアカウミガメ♂放流
椎名地区常会総会に参加
日本ペット&アニマル専門学校島崎知美さんインターンシップ
東洋町生見海岸にて産卵痕跡調査
八坂神社夏祭りに参加
アカウミガメ♂(SCL869)交尾実験用に高岡にストック
東洋町甲浦漁港にて混獲されたアオウミガメ(SCL416)の標識放流
室戸市佐喜浜にてアカウミガメのストランディング調査
東洋町生見海岸にて上陸痕跡調査
中土佐町小々草海岸にてアカウミガメのストランディング調査
椎名バス停前の浜にてアカウミガメ 2 個体分の上陸痕跡調査
元小学校にてウミガメに関する出前授業
三津にて昨年屋久島で産卵したアカウミガメ混獲
室戸市ジオパーク推進協議会より依頼を受け、協議会が関わっている室戸をフィールドとした研究
9
日本ウミガメ協議会
7/10
7/14
7/17
7/21
7/24-8/8
7/25
7/26
7/31
8/3
8/8
8/9
8/20
9/13
事業報告書
2011 年度
論文リストを提供
椎名バス停前の浜にて産卵調査、河口中央の砂州での産卵だったため植生帯際へ移植
椎名バス停前の浜にて上陸痕跡調査
椎名バス停前の浜にてアカウミガメストランディング調査
高岡漁港にてアオウミガメストランディング調査
大阪コミュニケーションアート専門学校亀田智美さんインターンシップ
椎名バス停前の浜にて上陸調査
高岡にて溺死混獲されたアカウミガメ腹腔内より卵 23 個を採取し、孵卵開始
椎名にて溺死オサガメ混獲、腐敗のため沖で投棄
高岡漁港内にてオサガメのストランディング調査
日和佐うみがめ博物館カレッタのサマースクールで出前授業
室戸市奈良師海岸に上陸後帰海出来ずにいたアカウミガメを放流
椎名漁港にて 1 年分の天草出荷作業手伝い
三津にて溺死オサガメ混獲、腐敗のため沖で投棄
(石原・大嶋・川合)
5-3
海山基地の活動
三重県北牟婁郡紀北町海山区島勝浦で操業する島勝大敷での混獲調査を継続した。主に定置網漁業者に種
類と頭数の記録を依頼し、後日現地を訪れた際に聞き取りを行った。2010 年 10 月から 2011 年 2 月の間に
アカウミガメ 8 個体、アオウミガメ 10 個体が混獲された。(石原)
5-4
みなべ基地の活動
6 月 13 日から 9 月 13 日まで、みなべ町教育委員会から支援を得て、みなべウミガメ研究班(代表:後藤
清理事)および青年クラブみなべと共同で、千里の浜における夜間パトロール調査を実施し、産卵メスの個
体識別および産卵巣へ食害対策用の竹網・金籠の設置を行い、その後 9 月上旬まで、随時、孵化率調査を実
施した。また、この期間を通じて、周辺の砂浜(岩代浜、小目津浜、南部浜)での痕跡調査を昼間に実施し
た。なお、食害対策および孵化調査については、株式会社ライオン大阪工場の皆様の協力を得た。(大内・
松沢)
5-5
奄美支部の活動
沖永良部島ウミガメネットワークと連携し、日本ウミガメ会議(沖永良部会議)の準備をおこなった。また、
6 月から 9 月までの産卵期間においては、鹿児島県の奄美諸島内において、ウミガメ類の上陸産卵痕跡調査
及び漂着調査(奄美大島と周辺島嶼部)、各地でウミガメの調査活動するメンバーのサポート(標識装着や
水中定点カメラ設置による行動観察等)、行政や個人間での情報交換、講演(幼稚園及び小学校)などを実
施した。(水野)
5-6
4/26
5/25
5/25
5/27
7/12
7/16
7/19
7/21
8/29
9/ 4
9/16
東京事務所の活動
事務所開設
日本経団連 2011 年度総会記念講演会参加
今国会で新寄付税制&NPO 法改正の実現を!5・25緊急院内集会参加
IUCN にじゅうまるプロジェクト活動内容会議
IUCN 日本委員会にじゅうまるプロジェクト全体会議
IUCN 親善大使イルカさんのコンサートにて出展
東京大学ワールドカフェ参加
新寄付税制・改正 NPO 法成立を祝う会(市民活動を支える制度をつくる会主催)参加
IUCN 日本委員会にじゅうまるプロジェクト全体会議
セブン-イレブン記念財団 環境市民活動助成金セミナー参加
エコプロダクツ 2011 説明会参加
(石原)
以上
10
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