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実践的コミュニケーション能力を育成する英語教育
<国際理解教育研究班> 研究主題 実践的コミュニケーション能力を育成する英語教育 ―小学校英語活動から中学校英語科への効果的な接続を図るカリキュラムの構想― ―目 次― Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ 主題設定の理由 ············································ 国際 主題の意味················································ 国際 研究の目標················································ 国際 研究の仮説················································ 国際 仮説検証の内容と方法 ······································ 国際 1 2 2 2 2 Ⅵ 研究構想図················································ 国際 3 Ⅶ 年間計画·················································· 国際 3 Ⅷ 研究の実際 【全体報告】久留米市立牟田山中学校 教諭 小西 郁美 【実践事例1】久留米市立江上小学校 教諭 松枝昌子 ···················· 国際 4 動く楽しさを味わいながらコミュニケーション能力を高める低学年の英語活動の展開 小学第1学年 英語活動 「ふうせん(カラー)であそぼう」 【実践事例2】久留米市立下田小学校 教諭 渡邉美也子 ··················· 国際 10 動く楽しさを味わいながらコミュニケーション能力を高める低学年の英語活動の展開 小学校 第1学年 英語活動 「わたしのからだ」 【実践事例3】久留米市立西国分小学校 教諭 椛島桂子 ····················· 国際 16 動く楽しさを味わいながらコミュニケーション能力を高める低学年の英語活動の展開 小学校 第2学年 英語活動 「これなあに」 【実践事例4】久留米市立日吉小学校 教諭 大久保佐恵子 ················ 国際22 頭を働かせる楽しさを味わいながら身近な英語表現に親しむ中学年の英語活動の展開 小学校 第4学年 英語活動 「動物園へ行こう」 【実践事例5】久留米市立西牟田小学校 教諭 田島孝則 ···················· 国際28 子どもたちが「言いたいこと・話したいこと」を表現しようとする小学校英語活動の展開 小学校 第5学年 英語活動 「Let’s go to eat!」 【実践事例6】久留米市立城南中学校 教諭 山本大輔 ···················· 国際34 積極的に英語で発話しようとする態度を育成する英語活動の展開 中学校 第1学年 英語科 「Unit3グリーン先生の初授業」 Ⅸ 研究の成果と課題 ·········································· 国際40 「小学校英語活動から中学校英語科への 効果的な接続を図るカリキュラムの作成」 ~学年に応じたコミュニケーション活動の工夫を通して~ Ⅰ 主題設定の理由 1 現代社会の要請から インターネットの普及に伴い,私たちを取り巻いている世界の動きは瞬時にして,私たち の家庭へと知らされてくる。日本の政治・社会・経済はもちろんのこと,私たちの身の回りの 生活を考えてみても,国際的な視野なしに日常生活を考えることは不可能に近い。このように 国際化が急速に進展する中で,国際社会に貢献できる日本人の育成は重要な課題であると言 える。国際化に対応するためにはまず言葉の習得が不可欠である。 2 英語科学習の課題から 従来の中学校3年間の英語学習に限ってみると,1学年における初期の段階での子どもの 意欲を継続させることは残念ながら難しい現状にある。授業が回を重ねるにつれ,子どもたち の授業内容の理解度には個人差が表れ,また英語学習への興味・関心にも差が出てくること は,英語に携わる教師の共通の悩みである。そこで,小学校における英語活動においては,入門 期としての英語に触れる子どもたちが,興味・関心を持続させた状態で中学校の英語授業へと つなげていくことが大切である。 3 子どもの実態から 平成18年6月に,久留米市立三潴中学校1年生(136名)を対象に事前アンケートを 行った。三潴中学校生徒を対象とした理由は,現在久留米市立西牟田小学校では6年間英語 教育が行われており,小学校での英語学習が中学校での英語学習に役立っているかについて, 他小学校出身との生徒との比較がしやすいと考えたからである。 実態調査の結果は,次の通りである。 「問:小学校での英語学習は中学校の学習に役立って いますか」についてのアンケート結果は【資 料1】のようになった。 「役立つ」と答えて いる生徒が西牟田小学校出身の生徒に多く, A小 とても まあまあ あまり 全く B小 西牟田 0% 「役立っている理由」として「小学校で習 った単語が出てくるのでわかりやすい」 「リ スニングがわかる」などがあげられる。 また,「役立たない」理由として,「2週間 50% 100% に一度あるかないかだったのであまり覚え ることができない」など回数の少なさをあ げている生徒がいる。以上のことから,小 【資料1:小学校の英語学習は 中学校で役立っていますか】 学校の英語学習から中学校の英語教育への 効果的な接続を図るためには,小学校の英語授業はある一定以上の回数を必要とすることが わかった。 -国際 1- Ⅱ 1 主題の意味 本研究での「カリキュラム」とは 本研究が作成する「カリキュラム」を次のように定義する。 小学校の英語活動の中で,教師がそのカリキュラムを読むことで,指導の目標・ 形態・展開・使用教材を知ることができ,授業を行うことができるマニュアル書 小学校の英語活動においては,音声を中心とした授業であるため,授業を展開する中で,視 覚や聴覚に訴える数種類の教材を準備する必要がある。主な教材としては,ピクチャーカード, CD,絵本,実物などが考えられる。また,小学校の英語活動では ALT とのティームティーチン グがおこなわれるため,ティーチングプランを書く必要がある。以上のことから,小学校の英 語活動を推進していく上で,「これを参考にすれば比較的容易に英語の授業ができる」と考え ることができるマニュアル書は不可欠である。 2 「学年に応じたコミュニケーション活動」とは 本研究では,下記の時数の授業展開を考える。 低学年 10時間 中学年 20時間 高学年 35時間 コミュニケーション活動としては,歌・チャンツ・ゲーム・英会話などを示し,それらの 活動の単語数や英単文の数を学年や子どもの実態に応じて,教師が多くしたり,少なくした りして工夫することを示す。 Ⅲ 研究の目標 学年に応じたコミュニケーション活動の工夫を通して中学校英語科への効果的な接 続を図る小学校における英語活動のためのカリキュラム作成を行う。 めざす子ども像 ・ 英語が好きな子ども ・ 積極的にコミュニケーションをとろうとする子ども Ⅳ 研究の仮説 小学校における英語活動において,①学年に応じたコミュニケーション活動を中心 としたカリキュラムを用いて,継続的に授業を展開すれば,②子どもは英語活動に興 味・関心を持つことができるので,③中学校英語科への効果的な接続を図ることができ るであろう。 Ⅴ 仮説検証の内容・方法 検証の対象 久留米市立江上小学校 第1額年1組 25名 久留米市立下田小学校 第1学年1組 13名 久留米市立西国分小学校 第2学年1組 40名 久留米市日吉小学校 第4学年1組 30名 久留米市立西牟田小学校 第5学年1組 27名 久留米市立城南中学校 第1学年2組 40名 -国際 2- (1) 検証内容・方法 ① 学年に応じたコミュニケーション活動を中心としたカリキュラムを用いることができた か。 ・児童の自己評価アンケートの結果と抽出児を録画したビデオデータの分析から考察する。 ②子どもは英語活動に興味・関心を持つことができたか。 ・児童の自己評価アンケートおよび生徒の発話量から考察する。 ③中学校英語科への効果的な接続を図ることができるであろう。 ・児童の自己評価アンケートの結果から考察する。 Ⅵ 研究構想図 カリ キュラ ムの作成および工夫 積極的にコミュニケーションを図る子ども ・教材の開発 ・ 指導形態の工夫 ・カリキュラム活用 高学年の段階 ・教材の開発 ・ 指導形態の工夫 中学年の段階 ・カリキュラム活用 ・教材の開発 ・ 指導形態の工夫 低学年の段階 ・カリキュラム活用 子どもの実態 Ⅶ 年間計画(抜粋) 回 月 日 曜 内 2 5 26 金 実践把握方法検討・研究仮説・授業仮説決定 研究所 10 9 22 金 椛島研究員検証授業 西国分小 11 9 28 木 山本研究員検証授業 城南中 12 10 13 金 久留米市教育研究所報告会 サンライフ 13 10 27 金 大久保研究員検証授業 日吉小 14 11 10 金 田島研究員検証授業 西牟田小 16 11 24 金 松枝研究員検証授業 江上小 17 12 8 金 渡辺研究員検証授業 下田小 23 2 27 火 研究修了報告会 えーるピア -国際 3- 容 場所 Ⅷ 研究の実際 【実践事例 1】 動く楽しさを味わいながらコミュニケーション能力を高める低学年の英語活動の展開 第1学年 『ふうせん(カラー)であそぼう』 久留米市立江上小学校 教諭 松枝 昌子 実践の概要 本実践は,国際社会を主体的に生きる子どもを育てるために,楽しみながら英語活動をする ことを通して,コミュニケーション能力を高めることをねらいとした授業実践である。 低学年においては,動く楽しさを味わいながらコミュニケーション能力の基礎を培うことが できるような活動の工夫が必要であると考えた。そこで,色を塗ったり,歌を歌ったり,体を 動かすゲームをしたりする活動を取り入れ,子どもたちの英語に対する興味や意欲が高められ るようにした。また,ALT との交流を通して,異文化との出会いを楽しみ,より英語を身近に 感じられるようにした。 キーワード: 1 コミュニケーション能力 ・ 動く楽しさ 指導観 日常生活の中には,たくさんの色があふれている。また,ものの名前はわからなくても色を 使って表現する機会は多い。本題材では,身近な色の英語表現に親しむことをねらいとしてい る。この題材は, 「身の回りの色」という子どもにとって身近な内容であり,指定された色を塗 ったり,色のカードに触ったりと子どもたちが楽しみながら動くことができる活動である。身 近な色の言い方を学習することは,色そのものを表すだけでなく,もののイメージを膨らませ たり,果物や動物などの色を表したりするなど,身近なものを英語で言えるという自信を持つ ことができ,これからの英語活動の内容から見ても大切である。 本活動の指導にあたっては,身近な色をリズムに合わせて言ったり,ゲーム(【タッチカラー ゲーム】 【カラービンゴ】 【カルタ取りゲーム】)をしたり,歌♪『Bingo』を歌ったりして意欲 的に取り組めるようにしたい。 そして,これらの活動を通して,身近な色の英語表現に親しみ,楽しんで英語表現ができる 子どもに育てていきたい。そのために,まず「であう」段階では,虹の色の着色や,ALT の発 音を聞いたり, 【タッチカラーゲーム】をしたりする活動から,色の英語表現に興味を持てるよ うにする。次に「ふれあう」段階では,リズムに合わせてカードの色を言ったり, 【カラービン ゴ】をしたりする活動から,色の英語表現に親しむことができるようにする。最後に「たかめ あう」段階では, 【カルタ取りゲーム】 【色あつめゲーム】をしたり,ALT による大型絵本「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?」の読み聞かせを聞いたりする活動から,楽しみながら 身近な色の英語表現に慣れ親しむことができるようにさせたい。 2 目標 (1) ALT・HRT や友達と英語で話したり,話に耳を傾けたりするなどの活動を通して, 積 極的に人とかかわろうとするコミュニケーション活動の楽しさを味わう。 (2) 歌や【カルタ取りゲーム】などで英語活動の時間を楽しみながら,身近な色を表す英 語表現に慣れ親しむことができる。 -国際 4- 3 活動指導計画(3時間) 時 活 段階 動 内 容 数 1.あいさつをする。 で 2.本時のめあてをつかむ。 いろを あらわす えいごを しろう。 3.虹の色塗りをし,色の英語表現を知る。 ① あ red, orange, yellow, green, blue, pink, purple, brown , black, white 4.歌♪『Bingo』を聞く。 5.【タッチカラーゲーム】をする。 う Touch something red. 6.あいさつをする。 1.あいさつをする。 2.前時の復習をし,本時のめあてをつかむ。 いろあてクイズに ふ えいごで こたえよう。 3.色あてクイズをする。 (1)チャンツにあわせて言う。 What color ? ① れ あ Pink. (2)色あてクイズをする。 4.【タッチカラーゲーム】をする。 う Touch something red. 5.【カラービンゴ】をする。 ALT : What color ? Children : Green. 6.あいさつをする。 1.あいさつをする。 2.前時の復習をし,本時のめあてをつかむ。 た いろんな いろを えいごで いえるようになろう。 3.色の名前を英語で言う。 ① か 本 め (1) チャンツに合わせて言う。 What color ? Blue. brown. … (2) 【カルタ取りゲーム】をする。 時 あ う Children : What ALT : pink. … color ? (3)【色あつめゲーム】をする。 Child A: What Child B: Yellow. color ? ※一番上のカードが黄色であれば Child A は, Child B に黄色いカードを渡す。 4.絵本「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?」の読み聞かせを聞く。 5.あいさつをする。 -国際 5- 4 授業仮説 身近な色を表す英語を使った【カルタ取りゲーム】・【色あつめゲーム】の活動を設定 すれば,動く楽しさを味わうとともに色を表す英語に慣れ親しむことができるであろう。 5 指導の実際と考察 (1)対象: 江上小学校 1年1組 (2)期間: 平成18年11月 23名(2名欠席) (3)題材名: 「ふうせん(カラー)であそぼう」 (4)展開 HRT の支援 児童の活動 段階 1 始めのあいさつをする。 1 Hello. I’m fine. で 笑顔であいさつする。 1 笑顔であいさつする。 Hello. Hello. I’m fine. How are you? 前時の復習をし,本時の 2 2 あ I’m ok. ALT の支援 クイズや歌で子ども 2クイズや歌で子どもの の意欲を高める。 めあてをつかむ。 意欲を高める。 (1)色 ・ 果 物 あ て ク イ ズ を す (1)色に着目させるように (1)クイズを出す。 う (2)♪『Bingo』を歌う。 ○ What 果物の一部分を見せる。 る。 What fruits ? (2)楽しく表現できるよう (2) 笑顔で,手拍子をしな に,手拍子をしながら歌 手拍子をしながら楽し がら歌う。 うように促す。 く歌う。 (3)本時のめあてをつかむ。 (3)ALT とデモンストレー (3)HRT と デモンストレ ションをする。 いろんな いろを り,発音に気をつけて英語 ふ えいごで いろいろな色を聞いた 3 3 color ? ーションをする。 いえるようになろう。 チャンツやゲームを 3 進める。 チャンツやゲームを 進める。 で言ったりする。 (1)チャンツに合わせて,色の (1)色カードを指しながら (1)チャンツに合わせて発 言い方の練習をする。 れ What color ? red. blue, … チャンツのリズムに合 わせて発音するよう助 言する。 音する。 What color ? red. blue, … (2)【カルタ取りゲーム】をす (2) 言 わ れ た 色 カ ー ド を (2) 色 カ ー ド を 見 せ な が 取っているか分かるよ る。 1 回目…1 人で あ 2 回目…2 人組で ○ 言われた色のカードを 取る。 ○ う ら,答えを言う。 うに,カードを挙げて見 Children: What color ? せるように指示する。 ALT : pink. … ○ 質問の前に,「1, 2,3」の声をかける。 ○ 最初は,ゆっくり, わかりやすく言う。 ○ 最後にカードの数が多 だんだん普通の早 さで答える。 いほうの勝ち。 (3)【色あつめゲーム】をする. (3)ゲームの仕方や英語表 (3)子どもたちと一緒にゲ -国際 6- Child A: What color ? Child B: yellow. ○ Child A が一番上に 現が分からない子には, ームを楽しみながら, そばについて助言する。 分からない子には表現 を教える。 持っているカードが黄 色 で あ れ ば , Child A は,Child B に黄色いカ ードを渡す。 ○ た 最後にカードの数が 多いほうの勝ち。 か 4 絵 本 「 Brown Bear, 4 Brown Bear, What Do You See?」の読み聞かせを聞く。 め 絵本の紹介をし,どん 4 絵本「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?」の読み聞か な色が出てくるかを聞 き取るように助言する。 せをする。 あ 5 う ① あいさつをする。 5 あいさつをする。 5 あいさつをする。 Thank you. Thank you. Good-bye. Good-bye. Good-bye. See you later. See you. See you. であう段階 子どもたちは,前時までに【タッチカラーゲーム】や【カラービンゴ】などのゲームを通し て,色を表す英語に親しんできている。 本時では,【色・果物あてクイズ】を通して前時の復習をし,本時のめあてをつかませた。 【色・果物あてクイズ】 拡大した果物の写真をゆっくり見せて,果物と色の名前を答えさせていった。 果物は1学期に学習した内容であったが,その名前の多くが日本語でも使われていることから, スムーズに答えることができた。クイズ形式にした点,他のトピック(果物)と関連させた点 から効果的であったと考える。 歌♪『 Bingo 』 色には関係のない歌であるが,子どもたちに歌ってみたい曲を聞き,選んだのがこの曲だっ た。クラスは,英語活動の始まりのテーマ曲になっている。子どもたちが大好きなテンポのよ い歌で,ただ歌うのではなく, ‘B,I,N,G,O’の歌詞をリズムに合わせて手拍子を取り入れたこ とにより子ども達が楽しんで歌っている姿が見られた。 本時のめあて「いろんないろをえいごでいえるようになろう」 HRT と ALT によるデモンストレーションから,めあてをつかませた。 HRT :What color ? ALT :Green. HRT は,黒板に貼っている緑色のカードを指しながら,ALT に質問し,次は,HRT と ALT が入れ替わって質問する。そして,ALT が子どもたちに 10 色の色のカードを指して質問し, それを答えさせることにより繰り返していろいろな色を発音することができたのはよかった。 -国際 7- ② ふれあう段階 チャンツ リズムに合わせて,色の言い方の練習をした。子どもたちは,リズムに合わせて ALT のにつ けて発音していた。スピードを速くすると,楽しんで発音していた。何度も繰り返して,まね をしても不自然にならないので,子どもたちも安心して発音することができていた。 【カルタ取りゲーム】 10色のカードを机の上に並べて,ALT が言った色のカードを素早く取り,取ったカードを 挙げて見せる。1回目は一人で行ったが,普段から聞き慣れた色やよく知っている色などはす ぐに分かるが,あまり耳にしない色や ALT の発音が聞き取れない色のときは,隣の友達のカー ドを見ていた子どももいた。(写真1)2回目は2人組で行った。子どもたちは ALT の発音を よく聞き取り,カードを挙げていた。 (写真2)しかし,なかなかカードが取れず悔しがってい る子もいた。また,同時に手を置いた時には,お互い譲ったりする場面も見られ,いつもとは 違ったペースで活動がすすんでいった。2人組でゲームをする時に,カードを1セットしか準 備しなかったので,なかなか取れず,不満そうにしている子もいた。一人1セットずつのカー ドでゲームをすると改善できると思われる。 写真1 言われたカードを挙げる 写真2 ペアでカルタ取りゲーム 【色あつめゲーム】 10枚の色のカード中から好きな色を5枚選び,たぐって順番を変えた。はじめは,隣の友 達同士からゲームを始めた。(写真3) Child A : What color ? Child B: Pink. このように,一番上に持っているカードの色を聞き,相手がカードの色を言い当てたらその カードを渡すというものであった。ルールを理解している子は,相手が言った色を聞き取り, カードを渡すことができていた。“What color?”と全員が質問することはできたが,5枚の中 の一番上のカードの色が当たらずに悔しがったり,色の名前が聞き取れなくて困ったりした子 もいた。分からないときは質問者が教える場面なども見られた。 次は,クラスをオープンにし,それぞれ相手を見つけてゲームを行った。(写真4) 写真3 隣の友達同士からゲーム開始 写真4 友達を見つけて色あつめゲーム -国際 8- “Hello”で握手をし,“Thank you”で終わるというあいさつを忘れないように助言した。 どの子も,ためらわずに,友達を見つけ笑顔でゲームを楽しんでいる様子が見られた。ゲーム のルールが難しいと思った子もいて,最初は,スムーズにいかないペアーもあった。質問する 側と答える側と両方することになるので,とまどっていたことが考えられる。 ③ たかめあう段階 大型絵本「Brown Bear, Brown Bear, What do you see?」 子どもたちは,動物の英語の表現はよく分からなくて も,絵をしっかりと見て聞いていた。知っている色の英 語が出てくると後につけて言う子もいた。 また,子どもたちの大好きな動物が登場することもあ り,楽しみながら色を表す英語表現を振り返ることがで 写真5 大型絵本の読み聞かせ きた。ALT の“What do you see?”という言葉がなんとなく分かってきて,「次は,なんの動 物がでてくるかな?」とわくわくしながら絵本に見入っていた。 (写真5)このことは,これま での色の言葉が十分に定着し,インプットが行われたものと思われる。 6 成果と課題 (1)実践の成果 ○ 授業後の子どもたちのアンケートでは,『英語活動は好きですか。』に 25 名の子どもたち が「好き(「とても」21 名,まあまあ 3 名)」と答えていた。主な理由は,「みんなでゲームが できるから」 「歌ったり踊ったりするのが好きだから」 「新しい英語が出てくるから」 「英語を話 せるようになるから」などが挙げられる。このように,低学年の子どもたちは,身近な英語表 現についてゲームをしたり歌ったりなどの体を動かしながら,繰り返し活動をすることで英語 を楽しむことができ,そのことが結果に表れているものと考える。 ○ 最初は自身がなさそうに話していたり,身近な英語表現として使っている色も ALT の発音 だと聞き取れなかったりする場面もあったが,①元気よく英語を話すことができた(89%15 名 /23 名)②色を英語で言えるようになった。(97%:15 名/8 名)という結果が見られた。低学 年では,まず英語に対する興味を持たせ,ALT や HRT そして,友達と一緒に体を動かしなが ら英語表現をする楽しさを味わわせることが大切である。本時後のアンケートでは,ALT と楽 しく英語の学習をできた子が 100%(23 名/23 名)だった。このことから,動く楽しさを味わ うことと通して英語表現を身につけることができたと考えられる。 ○ 低学年では,特に「聞く」ことを大切にして,ALT の発音(チャンツ),大型絵本の読み 聞かせを位置づけたことは,ネイティブな英語に耳を傾けさせる点からも有効であった。 (2)課題 ○ 低学年の子どもたちの実態に合った英語活動の流れや,ゲームや歌など動く楽しさを味わ わせることができる活動の工夫をしていくこと。 ○ 自分の考えをはっきりと言うことができ,そして,相手を受け入れる雰囲気を大切にでき る,安心して学習できる学級作りをしていくこと。 ○ 学年に応じたコミュニケーション活動を中心としたカリキュラムを実践し,さらに見直し をしていくこと。 -国際 9- 【実践事例2】 動く楽しさを味わいながらコミュニケーション能力を高める低学年の英語活動の展開 第1学年 『わたしのからだ』 久留米市立下田小学校 教諭 渡邉 美也子 実践の概要 本実践は,国際社会を主体的に生きる子どもを育てるために,楽しみながら英語活動をする ことを通して,コミュニケーション能力を高めることをねらいとした授業実践である。 低学年においては,動く楽しさを味わいながらコミュニケーション能力の基礎を培うことが できるような活動の工夫が必要であると考えた。そこで,チャンツで身体の名前を言ったり, 歌を歌ったり,身体を動かすゲームをしたりする活動を取り入れ,子どもたちの英語に対する 興味や意欲が高められるようにした。また,ALT との交流を通して,異文化との出会いを楽し み,より英語を身近に感じられるようにした。 キーワード:コミュニケーション能力 1 ・ 動く楽しさ 指導観 子ども達は,幼稚園や保育園の時に,歌♪『Head,Shoulders,Knees,and Toes』の歌を 習っていて,身体を動かして楽しそうに歌う。本題材では,身体の英語表現に親しむことをね らいとしている。この題材は, 「身体」という子どもにとって身近な内容であり,身体のカード を取ったり,身体の部分にタッチしたりと子どもたちが楽しみながら動くことができる活動で ある。身体の言い方を学習することは,英語と日本語の似ている発音や違う発音への興味や, 身近なものを英語で言えるという自信を持つことができ,これからの英語活動の内容から見て も大切である。 本活動の指導にあたっては,身体の部分をリズムに合わせて言ったり,ゲーム(【サイモンセ ッズゲーム】 【カード取りゲーム】 【ボディータッチゲーム】)をしたり,歌♪『Head,Shoulders, Knees,and Toes』を歌ったりして意欲的に取り組めるようにしたい。そしてこれらの活動を 通して,身体の英語表現に慣れ親しみ,楽しんで英語表現ができる子どもに育てていきたい。 そのために,まず「であう」段階では,ALT の発音を聞いたり【サイモンセッズゲーム】をし たりする活動から,身体の英語表現に興味を持てるようにする。次に「ふれあう」段階では, 【カード取りゲーム】をしたり,歌♪『Head,Shoulders,Knees,and Toes』を歌ったりす る活動から,身体の英語表現に親しむことができるようにする。最後に「たかめあう」段階で は, 【ボディータッチゲーム】をしたり,絵本「「Brown Bear,Brown Bear,What Do You See?」 の読み聞かせを聞いたりする活動から,楽しみながら身体の英語表現に慣れ親しむことができ るようにさせたい。 2 目標 (1)歌やゲームを通して,身体を動かしながら身体の英語表現に慣れ親しむことができる。 (2)身体の英語表現を使った【サイモンセッズゲーム】や【カード取りゲーム】などのゲー ムを楽しむことができる。 -国際 10- 3 計画(3時間) 時 段 数 階 活 動 内 容 1.あいさつをする。 2.本時のめあてをつかむ。 で からだをあらわすえいごをしろう。 3.身体の英語表現を知る。 ① あ head,shoulder,knee,toe,eye,ear,mouth,nose, チャンツで自分の身体にタッチしながら練習する。 う 4.歌♪『Head,Shoulders,Knees,and Toes』を聞く。 5.【サイモンセッズゲーム】をする。 Simon says,touch your nose. 6.あいさつをする。 1.あいさつをする。 2.前時の復習をし,本時のめあてをつかむ。 ふ からだをあらわすえいごをつかって,カード取りゲームをしよう。 3.歌♪『Head, Shoulders,Knees,and Toes』を歌う。 れ 4.チャンツに合わせて言う。 head,shoulder,knee,toe,eye,ear,mouth,nose, ② 自分の身体にタッチしながら練習する。 あ 5.【カード取りゲーム】をする。 う Children : What card? ALT : Head. 6.あいさつをする。 1.あいさつをする。 2.前時の復習をし,本時のめあてをつかむ。 た からだをあらわすえいごをつかって,ボディータッチゲームをしよう。 歌♪『Head,Shoulders,Knees,and Toes』を歌う。 ③ か 3.身体の部分を英語で言う。 (1).チャンツに合わせて言う。 本 head,shoulder,knee,toe,eye,ear,mouth,nose, め 自分の身体にタッチしながら練習する。 時 あ (2)【カード取りゲーム】をする。 Children : What card? う ALT : Head. (3)【ボディータッチゲーム】をする。 ALT: Touch your nose. 身体の部分をタッチする。 4.絵本「Brown Bear,Brown Bear,What Do You See?」の読み聞かせを聞 く。 5.あいさつをする。 -国際 11- 4 授業仮説 身体を表す英語を使った歌♪『Head,Shoulders,Knees,and Toes』やゲーム【ボ ディータッチゲーム】などの活動を設定すれば,動く楽しさを味わうとともに身体を表 す英語に慣れ親しむことができるであろう。 5 指導の実際と考察 (1)対象: 下田小学校 (2)期間: 平成18年12月 (3)題材名: 1年1組 13名 「わたしのからだ」 (4)展開 段 HRT の支援 児童の活動 ALT の支援 階 1 で 2 あ 始めのあいさつをする。 1 笑顔であいさつする。 1 笑顔であいさつする。 Hello. Hello. I’m fine thank you. I’m fine thank you. 前時の復習をし,本時の 2 クイズや歌で子ども 2 めあてをつかむ。 Hello. How are you? の意欲を高める。 (1)Yes,No,クイズをする。 (1)身体にタッチする。 クイズや歌で子ども の意欲を高める。 (1)正しく発音したり,他 のカードを発音したり う する。 (2)歌♪『Head,Shoulders, (2)楽しく表現できるよう (2)笑顔で,身体にタッチ Knees,and Toes』を歌 に,身体にタッチしなが う。 ら歌うように促す。 しながら歌う。 ○身体にタッチしながら歌 う。 (3)本時のめあてをつかむ。 からだをあらわすえいごをつかって,ボディータッチゲームをしよう。 3 ふ 身体を表す英語を聞いた 3 り,身体を表す英語を言っ チャンツやゲームを 3 進める。 チャンツやゲームを 進める。 たりする。 (1)チャンツに合わせて,身体 (1)身体のカードを指しな (1)チャンツに合わせて, れ の部分の言い方の練習をす がら,チャンツのリズム る。 に合わせて発音するよ Head,shoulder,knee, Head,shoulder,knee,… うに助言する。 発音する。 … (2)【カード取りゲーム】をす (2)言われた身体のカード (2)最初は,身体のカード を取っているか分かる を見せながら,慣れて 1 回目…1 人 ように,カードを上げて きたら身体の名前を言 2 回目…2 人 見せるように指示する。 った後に,絵カードを ○質問の前に, 「1,2, 見せる。 る。 あ ○言われた身体のカードを 取る。 う 3」の声をかける。 Children: What card? ALT: Head. ○数が多いほうの勝ち。 -国際 12- (3)【ボディータッチゲーム】 (3)ゲームの仕方や英語表 (3)子どもたちと一緒にゲ をする。 現が分からない子には, ームを楽しみながら, ○ALT が 発音した身体の そばにいき助言する。 分からない子には英語 部分をタッチして,チー 表現を教える。 ム全員が正解の時に身体 ○ALT とデモンストレ ○HRT とデモンストレ のペンダントをもらう。 ーションをする。 ーションをする。 ALT: Touch your nose. ○早く全部(8つ)集めた チームの勝ち。 4 絵本「Brown Bear, 4 絵本の紹介をし,どん 4 絵本「Brown Bear, た Brown Bear,What Do You な色が出てくるかを聞 Brown Bear,What Do か See?」の読み聞かせを聞く。 き取るように助言する。 You See?」の読み聞か め せをする あ う ① 5 あいさつをする。 5 あいさつをする。 Thank you. Good-bye. Thank you. Good-bye. See you. See you. 5 あいさつをする。 Good-bye. See you. であう段階 子どもたちは,前時までに【サイモンセッズゲーム】や【カード取りゲーム】などのゲーム を通して,身体を表す英語に親しんできている。本時では, 【Yes,No,クイズ】,歌♪『 Head, Shoulders,Knees,and Toes 』を通して前時の復習をし,本時のめあてをつかませた。 ア 【Yes,No,クイズ】をする。 HRT が身体をタッチして,ALT がタッチした身体の部分の発音をしたら「Yes」,別の身体 の部分を発音したら「No」と答えていくクイズをした。子ども達は耳をすまして ALT の発音 を真剣に聞いていた。身体の部分と身体を表す英語がはっきり結びついている子どもは,意欲 的にクイズに答えていたが,まだ曖昧な子どもは周りの反応を確かめながら答えていた。例え ば,クイズに正解だったら一歩前に出るといったように,正解か不正解かの判定をはっきりし た方がよかったようだ。そうすることで, 【Yes,No,クイズ】に対する子ども達の意欲がさら に高まったし,全員参加のクイズになったと思われる。 イ 歌♪『Head,Shoulders,Knees,and Toes』を歌う。 歌♪『Head,Shoulders,Knees,and Toes』は, 歌詞に身体の部分が出てくるので,子ども達は身体 にタッチしながら歌った。ただ歌うのではなく動作 を取り入れたことにより,子ども達が楽しんで歌っ ている姿が見られた。(写真1) ウ 本時のめあてをつかむ。 本時のめあて「からだをあらわすえいごをつかっ て,ボディータッチゲームをしよう。」は,HRT と ALT によるデモンストレーションからつかませた。 -国際 13- 写真1 歌を歌っている子ども達 ② ふれあう段階 チャンツや【カード取りゲーム】 【ボディータッチゲーム】を通して,身体を表す英語を聞い たり身体を表す英語を言ったりさせた。 ア チャンツに合わせて,身体の部分の言い方の練習をする。 チャンツのリズムに合わせて,身体の部分の言い方の練習をした。子ども達は,身体でリズ ムをとりながら ALT の真似をして発音していた。また,子ども達はリズムを楽しんでいて,ス ピードを速くするように要望してきた。チャンツは,リズムに合わせて何度も繰り返して練習 をすることができるので,子ども達は,身体を表す英語の発音を確かなものにしていった。身 体のカードを指しながら,チャンツのリズムに合わせて発音するように助言したが,慣れてき たら身体のカードを一枚ずつはがしていくという方法を取り入れたらいいようだ。 イ【カード取りゲーム】をする。 ALT が言った身体のカードを素早く取り,取ったカードの数が多い方が勝ちという【カード 取りゲーム】をした。1回目は2人組で一組のカードで,2回目は2人組で二組のカードで行 (写真3 )カー った。 ( 写真2)子ども達は,ALT の発音をよく聞き取りゲームを楽しんでいた。 ドに同時に手を置いた時は,お互いに話し合ったりジャンケンをしたりしていた。二組のカー ドで行ったことは,一組のカードでは取れなかった子どももカードを取るチャンスが増えるの で有効だ。 写真2 カード取りゲーム 写真3 ALT の指示を待つ ウ【ボディータッチゲーム】をする。 ALT が発音した身体の部分をタッチして,チーム全員が正解の時に身体のペンダントをもら い,早く全部(8つ)集めたチームが勝ちという【ボディータッチゲーム】をした。チームは, 3人組の4チームにした。子ども達は,ペンダントを早く集めたいので ALT の発音を聞き取ろ うと真剣にしかも意欲的にゲームに参加していた。 ( 写真4)(写真5)しかし,1チームがゲームを している時他の3チームは見ているだけだったので,二人組になってお互いの身体をタッチす るとか全員が丸くなって隣の人の身体をタッチするとかすれば,全員が一度にゲームに参加で きよりゲームを楽しむことができたと思われる。 -国際 14- 写真4 ③ ボディータッチゲーム 写真5 ボディータッチゲーム たかめあう段階 絵本「Brown Bear,Brown Bear,What Do You See?」の読み聞かせを聞かせた。(写真6) 最初に絵本の紹介をし,どんな色が出てくるか を聞き取るように助言した。知っている色の英語 が出てくると,喜んで ALT の後につけて発音した り知っていることを確かめるように教師の顔を覗 き込んだりしている子どももいた。身体を表す英 語表現はこの絵本には出てこないが,絵本の読み 聞かせは,サイレントピリオドという点で有効だ と思う。 6 成 写真6 果 と 課 題 絵本の読み聞かせ (1)実践の成果 ○ 授業後の子ども達のアンケートでは,『英語の学習は好きですか。』に13名中10名が 「大好き」と答えていた。英語の学習が好きな理由は,「ゲームが楽しい」「歌が楽しい」 「英語がおもしろい」である。このことから,低学年の子ども達が興味をもって楽しく活 動できるようなゲームや歌を仕組んだことは有効であると言える。1名だけ「あまり好き じゃない」と答えているが,授業中ゲームに意欲的に取り組む姿が見られた。 ○『元気よく英語を話すことができましたか。』に13名中 11 名が「はい」,『モルガン先生と 楽しく英語の学習ができましたか。』に 13 名中11名が「はい」と答えていた。ゲームや歌な ど身体を動かしながら身体を表す英語表現をすることで,子どもたちは,動く楽しさを味わい ながら身体を表す英語表現を身に付けることができたと考えられる。 ○ 英語表現を無理に覚えさせるようなことはしないで,チャンツやゲームなどで繰り返し練 習する中で自然に英語に親しませていくことが不可欠である。チャンツやカードでの練習を繰 り返し行ったことは,身体を表す英語に慣れ親しむ上で有効である。 ○ 絵本の読み聞かせを行ったことは,余韻をもって終わることができるので効果的である。 (2)課題 ○ 英語に慣れ親しむような学年に応じたコミュニケーション活動の工夫をしていくこと。 ○ HRT の役割として,ゲームなどの活動が楽しくスムーズに行える学級作りをすること。 ○ 中学校英語科への効果的な接続を図るためには,学年に応じたコミュニケーション活動を 中心としたカルキュラムの実践と見直しを継続していくこと。 -国際 15- 【実践事例 3】 動く楽しさを味わいながらコミュニケーション能力を高める低学年の英語活動の展開 第2学年 『これなあに』(動物) 久留米市立西国分小学校 教諭 椛島 桂子 実践の概要 本実践は,国際社会を主体的に生きる子どもを育てるために,楽しみながら英語活動をする ことを通して,コミュニケーション能力を高めることをねらいとした授業実践である。 低学年においては,動く楽しさを味わいながらコミュニケーション能力の基礎を培うことがで きるような活動の工夫が必要であると考えた。そこで,チャンツで動物の名前を言ったり,歌 を歌ったり,体を動かすゲームをしたりする活動を取り入れ,子どもたちの英語に対する興味 や意欲が高められるようにした。また,ALT との交流を通して,異文化との出会いを楽しみ, より英語を身近に感じられるようにした。 キーワード:コミュニケーション能力・動く楽しさ 1 指導観 子どもたちは,1 年生の社会見学で動物園に行き,いろんな動物に興味を持って見ていた。 また,その時のことを楽しんで絵に表していた。本題材では,動物の英語表現に親しむことを ねらいとしている。この題材は, 「動物」という子どもにとって身近な内容であり,動物のカー ドを取ったり,動物のお話を聞いたりと子どもたちが楽しみながら動くことができる活動であ る。動物の言い方を学習することは,英語と日本語の似ている発音や違う発音への興味や,身 近なものを英語で言えるという自信を持つことができ,これからの英語活動の内容から見ても 大切である。 本活動の指導にあたっては,動物の名前をリズムに合わせて言ったり,ゲーム(【アニマルバ スケットゲーム】【神経衰弱】【カルタ取りゲーム】)をしたり,歌♪『Animal talk』を歌った りして意欲的に取り組めるようにしたい。そしてこれらの活動を通して,動物の英語表現に親 しみ,楽しんで英語表現ができる子どもに育てていきたい。そのために,まず「であう」段階 では,ALT の発音を聞いたり,【アニマルバスケット】をしたりする活動から,動物の英語表 現に興味を持てるようにする。次に「ふれあう」段階では,【アニマルビンゴ】をしたり,♪ 『Animal talk』を歌ったりする活動から,動物の英語表現に親しむことができるようにする。 最後に「たかめあう」段階では, 【カルタ取りゲーム】をしたり,絵本「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?」の読み聞かせを聞いたりする活動から,楽しみながら動物の英語表現に慣 れ親しむことができるようにさせたい。 2 目標 (1)チャンツやゲームを通して,動物の英語表現に慣れ親しむことができる。 (2)動物の英語表現を使った【アニマルバスケット】や【カルタ取りゲーム】などのゲーム を楽しむことができる。 -国際 16- 3 計画(3時間) 時数 活 段階 動 内 容 1.あいさつをする。 で 2.本時のめあてをつかむ。 どうぶつの名まえの えいごを しろう。 3.動物の英語表現を知る。 ① あ Lion, dog, cat, mouse, elephant, tiger, bear, panda, rabbit, 4.歌♪『Animal talk』を聞く。 5.【アニマルバスケット】をする。 What's this? (It’s a ) lion. dog, mouse … う 6.あいさつをする。 1.あいさつをする。 2.前時の復習をし,本時のめあてをつかむ。 ふ どうぶつの名まえを えいごで 言おう。 3.歌♪『Animal talk』を歌う。 れ 4.【神経衰弱】をする。 ○カードを裏返しにして並べる。班で一人ずつカードを 2 枚めくりながら, ② その絵の動物を英語で言う。2 枚のカードの絵が同じ時,そのカードをもら あ う。2 枚のカードの絵が違う時,次の人の番になる。 う 5.【アニマルビンゴ】をする。 Children : What s this? ALT : (It’s a ) lion. dog, mouse … 6.あいさつをする。 1.あいさつをする。 2.前時の復習をし,本時のめあてをつかむ。 た なんのどうぶつか えいごで 言おう。 3.動物の名前を英語で言う。 ③ 本 か め (1) チャンツに合わせて言う。 What s this? (It’s a ) lion. dog, mouse … (2) 【カルタ取りゲーム】をする。 時 あ う Children : What s this? ALT : (It’s a) lion. dog, mouse … (3) 【動物あつめゲーム】をする。 Child A: What's this? Child B: (It’s a ) lion. 4.絵本「Brown Bear,Brown Bear,What Do You See?」の読み聞かせを聞く。 5.あいさつをする。 -国際 17- 4 授業仮説 動物を表す英語を使った歌♪『Animal talk』やゲーム【カルタ取りゲーム】などの活動を 設定すれば,動く楽しさを味わうとともに動物を表す英語に慣れ親しむことができるであろ う。 5 指導の実際と考察 (1)対象: 西国分小学校 (2)期間: 平成18年9月 (3)題材名: 「これ 2年1組 40名 なあに」 (4)展開 HRT の支援 児童の活動 段階 1 始めのあいさつをする。 1 Hello. I’m fine. で 笑顔であいさつする。 1 笑顔であいさつする。 Hello. Hello. I’m fine. How are you? 前時の復習をし,本時の 2 2 あ I’m OK. (1)動物あてクイズをする。 クイズや歌で子ども 2 の意欲を高める。 めあてをつかむ。 ALT の支援 (1)クイズを出す。 (1)絵の一部分を見せる。 What's this? (2)♪『Animal talk』を歌う。 (2)楽しく表現できるよう (2)動物のまねをしながら う ○ に,振り付けをしながら 動物のまねをしながら 歌うように促す。 歌う。 (3)本時のめあてをつかむ。 (3)ALT とデモンストレー (3)HRT と デモンストレ ションをする。 なんのどうぶつか 3 歌う。 何の動物か聞いたり,動 3 物の名前を英語で言ったり えいごで ーションをする。 言おう。 チャンツやゲームを 3 進める。 チャンツやゲームを 進める。 する。 (1)チャンツに合わせて,動物 (1)動物カードを指しなが (1)チャンツに合わせて発 ふ の言い方の練習をする。 らチャンツのリズムに 音する。 (It’s a) lion. dog, mouse … 合わせて発音するよう (It’s a) lion. dog, 助言する。 (2)【カルタ取りゲーム】をす (2) 言 わ れ た 動 物 の カ ー (2)最初は,動物のカード れ あ る。 ドを取っているか分か を見せながら,慣れてき 1 回目…1 人 るように,カードを上げ たら動物の名前を言った 2 回目…2 人 て見せるように指示す 後に,絵カードを見せる。 3 回目…班 る。 る。数が多いほうの勝ち。 3」の声をかける。 Children: What's this? ※言われた動物のカードを取 ○質問の前に,「1,2, ALT: (It’s a) lion. … (3)【動物集めゲーム】 Child A: What's this? う Child B: (It’s a) lion. ○A が持っているカードが (3)ゲームの仕方や英語表 (3)子どもたちと一緒にゲ 現が分からない子には, ームを楽しみながら, そばにいき助言する。 分からない子には表現 を教える。 -国際 18- lion だったら,B に渡す。 ○最後に数が多い人の勝ち。 絵 本 「 Brown Bear, 4 4 Brown Bear, What Do You See?」の読み聞かせを聞く。 た か 絵本の紹介をし,どん 4 聞き取るように助言す Brown Bear, What Do You See?」の読み聞か る。 せをする な動物が出てくるかを め 絵本「Brown Bear, あ う ① 5 あいさつをする。 6 あいさつをする。 5 あいさつをする。 Thank you. Good-bye. Thank you. Good-bye. Good-bye. See you. See you. See you であう段階 子どもたちは,前時までに【アニマルバスケット】や【アニマルビンゴ】などのゲームを通 して,動物を表す英語に親しんできている。 本時では,【動物あてクイズ】,歌♪『Animal talk』を通して前時の復習をし,本時のめあ てをつかませた。 【動物あてクイズ】 動物の絵の一部分から,動物の名前を答えていく。 動物は子どもたちにとって身近であり,発音が似ているものや違うものにも興味がある子も おり,比較的スムーズに答えていた。 ♪『Animal talk』 本時で1年ぶりに ALT と再会するということもあり,ALT にこの歌を聞かせ何の動物が出 てくるのかあててもらうようにした。子どもたちは猫や犬になりきって動いたり,泣き声を真 似したりして歌っていた。動きが小さいこともあり,昨年度のような活発な活動には至らなか った。しかし,子どもたちは ALT に何の動物が出てくるか当ててもらおうと,大きく 口を開けて歌っていた。ウォーミングアップのために歌わせる時は,テーマと違う内容の(子 どもたちの興味がある歌)でも構わないと思う。 本時のめあて「なんのどうぶつか えいごで 言おう。」 HRT と ALT によるデモンストレーションから,めあてをつかませた。 What’s this? It’s a lion. ② ふれあう段階 チャンツ リズムに合わせて,動物の言い方の練習をした。子どもたちは,リズムに合わせて ALT の真似をして発音していた。黒板に掲示している絵を裏返しにしたり,抜いたりして,ゲーム 性を高めた。何の絵があったかを思い出しながら発音することができていた。CD によるチャ -国際 19- ンツのリズムに合わせて活動を行ったのだが,ALT との打ち合わせが不十分で,活動の途中で CD が終わってしまうことがあった。 【カルタ取りゲーム】 ALT が言った動物のカードを素早く取り,取ったカードを挙げて見せる。1回目は一人で, 2回目は2人組で,3回目は班で行った。子どもたちは ALT の発音をよく聞き取り,カードを 挙げていた。昨年度は,2人組で行った時,カードが1セットしかなく,取れずに不満そうに している子もいたのだが,今年は2セット用意したところ,多くの子が取れる喜びを感じるこ とができていた。しかし,グループになるとたくさんのカードが目の前にあり,人の動きを見 て取っている子もいた。低学年には二人組までの活動が適当であると思われる。 写真1 一人でのカルタ取り(並べた所) 写真2 カードを取って喜ぶ子ども 【動物集めゲーム】 Child A : What’s this? Child B : (It’s a) lion.. 相手に何のカードを持っているか見えないように持 ち,“What’s this? ”と聞く。相手がそのカードに描 かれている動物を予想して答える。答えた動物とカー ドの絵が同じなら,そのカードをもらうことができる。 どんどん相手を代えて,たくさんのコミュニケーショ ンを取り,カードを集める。 相手に話しかけないとカードが集められないことか ら,子どもたちは積極的にたくさんの友だちと会話を していた。また,多くの子どもが ALT のところにも 写真3 ALT とゲームを楽しむ 積極的に行き,ゲームを楽しんでいた。 昨年度は,ルールや質問文が難しいという反省点があったため,今年度は,事前に同じよう なゲームを日本語で行ったり,質問文を簡単にしたりした。子どもたちの意欲的な姿から,こ の工夫点は効果があったと考える。 ゲームを始める時と,終わる時に“Hello” “Good-bye”などの挨拶をしたり,カードをも らった時に“Thank you.”とお礼を言ったりすることも大事だと思った。 -国際 20- ③ たかめあう段階 紙芝居「Brown Bear,Brown Bear, What do you see?」 昨年度も同じ紙芝居の読み聞かせをしたのだが,表紙 を見て覚えていた子は,一人だけだった。読み聞かせが 進むにつれて,思い出したようだった。昨年度に比べる と,色や動物の名前が分かっているので,知っている色 や動物を口にしたり,次に出てくる動物を予想して言っ たりと反応もよかった。 6 写真4 紙芝居を聞く 成果と課題 (1)実践の成果 ○ 授業後の子どもたちのアンケートでは,元気よく英語を話すことができた。(97%:37 名 /38 名)。色を英語で言えるようになった。(97%:37 名/38 名)という結果が見られた。 ふつう 3% いいえ 0% ふつう 3% はい 97% 図1 いいえ 0% はい はい ふつう ふつう いいえ 元気よく英語を話すことができた はい 97% 図2 いいえ 色を英語で言えるようになった また,子どもたちの感想には,「かみしばいがおもしろかった」や「ALT と話せて楽しかっ た」など,理解できる楽しさやコミュニケーションできる楽しさを味わっている子が増えてき た。 ○ 前年度の課題(ゲームや会話の難易度)から活動を見直したり,子どもたちに身近な内容 を取り扱った活動やカルタ取りや神経衰弱など聞いて動く活動を取り入れたりすることで,子 どもたちが意欲的にゲームや発話する姿が見られた。 ○ 英語活動の後の子どもたちのアンケートでは,英語の授業が好き 33 人(82%),まあまあ 好き 7 人(8%)。英語が好きになった 32 人(80%),まあまあすきになった 8 人(20%)とい う結果が見られた。このことから,ほぼ全員の子が楽しんで英語の授業を受けていたと考えら れる。 (2)課題 ・ 活動における効果的な人数を考えて活動を設定すること。 ・ ALT との打ち合わせがスムーズに行くように時間の確保をしたり,カリキュラムの作成を したりすること。 -国際 21- 【実践事例 4】 考える楽しさを味わいながらコミュニケーション能力を高める中学年の英語活動の展開 第4学年 『動物園へ行こう!』 久留米市立日吉小学校 教諭 大久保 佐恵子 実践の概要 本実践は,国際社会を主体的に生きる子どもを育てるために,楽しみながら英語活動をする ことを通して,コミュニケーション能力を高めることをねらいとした授業実践である。中学年 においては,動く楽しさに加えて頭を働かせて考える楽しさを味わいながらコミュニケーショ ン能力の基礎を培うことができるような活動の工夫が必要であると考えた。そこで,動物の特 徴を体で表現したり,その体の特徴(色)や好きな食べ物など動物に関係のある英語表現と動 物とつなげたりする活動を取り入れ,子どもたちの英語に対する興味や意欲が高められるよう にした。 キーワード:コミュニケーション能力 1 ・ 考える(頭を働かせる)楽しさ 指導観 本題材では,動物の英語表現に親しむことをねらいとしている。この題材は, 「動物」という 子どもにとって身近な内容であり,動物の特徴を体で表現したり,その体の特徴(色)や好き な食べ物など動物に関係のある英語表現と動物とつなげたりすることを通して,子どもたちが 体を動かすとともに,頭を働かせながら楽しむことができる活動である。動物の言い方を学習 することは,英語と日本語の似ている発音(表現)や違う発音(表現)への興味や,身近なも のを英語で言えるという自信を持つことができ,英語に対する興味・関心を高めることにつな がると考える。 本活動の指導にあたっては,動物の名前をリズムに合わせて言ったり,ゲーム(【動物カルタ】 【カード集めゲーム】【豚のしっぽゲーム】)をしたり,歌♪『Zoo Tra-la-la』を歌ったりして 意欲的に取り組めるようにしたい。 そしてこれらの活動を通して,動物の英語表現に慣れ親しみ,楽しんで英語表現ができる子 どもに育てていきたい。そのために,まず「つかむ」段階では,3年生で学習したより身近な 動物の英語表現から導入し,ALT の発音を聞いたり,【動物カルタ】をしたりする活動から, 動物の英語表現に興味を持てるようにする。次に「さぐる」段階では,まだ扱っていない動物 の英語表現を導入し,その英語表現で【動物カルタ】をしたり,♪『Zoo Tra-la-la』を動きな がら歌ったりする活動から,動物の英語表現に親しむことができるようにする。そして, 「ふか める」段階では, 【カード集めゲーム】や【豚のしっぽ】をしたりする活動から,楽しみながら 動物の英語表現を自分から話すことができるようにさせたい。最後に, 「いかす」段階では, 【1 ヒント連想ゲーム】から,その動物に関係のある英語表現と動物の表現をリンクさせ, 【チャン ツ】や【動物カルタ】から,動物の英語表現に関係のある英語表現に聞き慣れていかせ,絵本 「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?」の読み聞かせを聞かせ,学習のまとめをした い。 2 目標 (1)歌やゲームを通して,体を動かしながら動物の英語表現に慣れ親しむことができる。 (2)動物の英語表現を使って【動物カルタ】や【カード集めゲーム】,【豚のしっぽ】などの ゲームを楽しむことができる。 -国際 22- 3 計画(4時間) 時数 活 段階 動 内 容 1.あいさつをする。 つ 2.本時のめあてをつかむ。 知っている動物の名前を使って‘動物カルタ’をしよう。 3.歌♪『Zoo Tra-la-la』を聞く。 ① か 4.既知の動物の英語表現を復習する。 dog, cat, monkey, pig, lion, mouse, elephant, tiger, bear, panda, rabbit 5.【動物カルタ】をする。 む C: What's this? ALT: (It’s a) dog, cat, monkey,… 6.あいさつをする。 1.あいさつをする。 2.前時の復習をし,本時のめあてをつかむ。 さ 新しい動物の名前を使って‘動物カルタ’をしよう。 3.歌♪『Zoo Tra-la-la』を歌う。 4.既知の動物の英語表現から新しい動物の英語表現を広げる。 ② ぐ Lion, kangaroo, monkey, elephant, zebra, cow, sheep, duck, frog, penguin, giraffe, horse, ・チャンツに合わせて言う。 る 5.【動物カルタ】をする。 C: What's this? HRT: (It’s a) lion, kangaroo, monkey,… 6.あいさつをする。 1.あいさつをする。 ふ 2.歌♪『Zoo Tra-la-la』を動きながら,歌う。 3.前時の復習をし,本時のめあてをつかむ。 か ③ ・チャンツに合わせて言う。 ・【カード集めゲーム】をする。 め B: Lion. A: Yes. / No. 動物の名前を使って‘豚のしっぽ’をしよう。 4.【豚のしっぽ】をする。 る A: What’s this? ※めくったカードの動物を英語で言う。 5.絵本「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?」の読み聞かせを聞く。 6.あいさつをする。 1.あいさつをする。 2.歌♪『Zoo Tra-la-la』を動きながら,歌う。 い 3.前時の復習をし,本時のめあてをつかむ。 ・【1ヒント連想ゲーム】 ④ か 英語を 聞き取ろう。 4.動物に関係のある英語表現を聞き,動物の英語表現を言う練習をする。 本 時 動物に関係のある す ・ チャンツ ・ 【動物カルタ】をする 5.【豚のしっぽ】をする。 6.絵本「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?」の読み聞かせを聞く。 7.あいさつをする。 -国際 23- 4 授業仮説 動物の表現が定着し,他の英語表現にも興味が広がっている段階において,動物を表す英語を 使って動物に関係のある英語表現を聞き取る活動を設定すれば,既知の表現と未知の表現をリン クさせながら,動物以外の新しい英語表現を広げていき,動物を表す英語に慣れ親しむことができ るであろう。 5 指導の実際と考察 (1)対象: 日吉小学校 (3)題材名: 4年1組 30名 (2)期間: 平成18年10月 「動物園へ行こう!」 (4)展開 児童の活動 段階 HRT の支援 | 1 始めのあいさつをする。 1 笑顔であいさつする。 | Good afternoon. Good afternoon. How are you? で I’m fine thank you, and you? I’m fine, too, thank you. 2 ♪『How Are You?』と♪『Zoo Tra-la-la』を 2 楽しく表現できるように動きながら歌うよ あ 動きながら歌う。 う促す。 3 前時の復習をし,本時のめあてをつかむ。 う (1) 学習した動物を出し合う。 | (2) 1ヒント連想ゲームをして本時のめあてをつ | 3 ゲームやクイズで子どもの意欲を高め る。 かむ。 | 動物に関係のある ふ 英語を 聞こう。 4 動物に関係のある英語表現を聞き,動物の 英語表現を言う練習をする。 4 (1) HRT の英語を聞いて,関係のある動物の (1) 動物に関係のある表現をチャンツに合 れ 名前をチャンツに合わせて言う。 わせて発音する。 Lion, kangaroo, monkey, elephant, cow, king, pocket, banana, apple, milk, horse, zebra, sheep, duck, frog, carrot, stripe, soft hair, fish, green, leaf, giraffe, penguin あ ice (2) 関係のある動物の名前を言いながら, 掲示カードを指差す。 (2) 動物に関係のある表現を発音し,いろ いろな場所に掲示してあるカードを指 差すように促す。 (3) 関係のある動物の名前を言いながら, う | | 2 人ペアで机の上のカードを指差す。 (3) 動物に関係のある表現を発音し,2人 でカードを指差すように促す。 (4) 関係のある動物の名前を言いながら,1人 (4) 動物に関係のある表現を発音し,1人 でカードを挙げる。 でカードを持ち上げるように促す。 | 5 2人ペアで【動物カルタ】をする。 5 カードが多かった方の子どもを賞賛する | 6 【豚のしっぽ】をする。 6 めくったカードの英語表現を発音するよ うに促す。 た か め あ う 7 絵本「Brown Bear, Brown Bear, What Do 7 絵本「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?」の読み聞かせをする。 You See?」の読み聞かせを聞く。 8 あいさつをする。 8 あいさつをする。 Thank you very much. That’s all for today. Good-bye. You’re welcome. See you. -国際 24- ① であう段階 歌♪『Zoo Tra-la-la』 歌詞には lion, kangaroo, monkey, elephant が出てくる。黒 板に掲示した動物カードを指差したり,それぞれの動物の特徴 を表すところでは,その動きをしたりして,体を動かしながら 歌を歌う。ただ歌うのではなく,動物の特徴を表すところで動 作を取り入れたことにより,子どもたちが楽しんで歌っている 姿が見られた。 写真1 体を動かしながら 歌う子ども 【動物を表す英語を出し合う】 前時までに学習した12の動物の名前を次々に出し 合っていた。子どもたちは今まで学習した動物の表現 を意欲的に答えていた。教室の壁などに動物カードを 掲示していたことが,子どもたちの発表にもつながり 効果的であったと考える。 写真2 動物の英語を出し合う 1ヒント連想ゲーム ねらいは前時までに学習してきた動物の英語表 現の定着だが,頭を働かせながら楽しませるため に,それぞれの動物に関連する新しい英語表現を 提示し,その表現の中から動物に関係のあるキー ワードを聞き分け,動物の名前を当てるゲームを 行った。 提示した英語表現 (キーワード) →動物の名前 It’s king of animals.→lion, It has a pocket.→ kangaroo, 写真3 1ヒント連想ゲーム It likes bananas.→ monkey, It likes apples. →elephant , It has milk. →cow , It likes carrots. →horse , Its body is stripe. →zebra , It has soft hair. →sheep, It likes fish →duck , Its color is green. →frog, このゲームで,子どもたちは意欲的に関係のある 動物の名前を答えることができた。もちろん,耳で 聞き取るだけではなく,ピクチャーカードを用意し ておき,発音だけでは聞き取れなかった時には,ピ クチャーカードを見せながら発音することで,子ど もたちが英語表現をつなげていく支援となった。 It likes leaf. →giraffe, It lives in ice world. →penguin -国際 25- ② ふれあう段階 チャンツ リズムに合わせて,動物の名前の言い方を練習した。教 師が関係のある新しい英語表現を言い,それを聞いて子ど もたちは動物の英語表現を言った。子どもたちは,リズム に合わせて発音していた。 【動物カードを使って】 写真4 チャンツ 教師が発音する新しい英語表現を聞き,関係のある動物の名前を言いながら,教室のいろい ろな所に掲示してあるカードを指差す。次に,ペアで動物カードを指差しながら行い,最後に 一人でカードを取り挙げて見せる。 子どもたちは教師の発音をよく聞き取り,掲示してあるカードを指差したり,カードを挙げ たりしていた。新しい英語表現の発音を聞き,既習の動物の英語表現と結びつけるのに有効で あったと考える。チャンツの段階では,新しい英語表現が聞き慣れていなかった子どもも,繰 り返し行ったことで,動物の英語表現とつなげることができるようになった。 【動物カルタ】 聞き慣れてきた新しい英語表現を使って, 【動物カルタ】をした。自分のカードに加えて,ペ アの友達のカードも取っていいルールである。最後に多くのカードを持っていた方が勝ちとし, 勝った子どもを立たせて賞賛を行った。 写真6 カルタに勝って喜ぶ子どもたち 写真5 友達の分のカードにも 手を伸ばしている子どもたち 【豚のしっぽ】 動物カードを班の人数分集め,裏返しにして大きく 輪を描くように並べ,順番にカードを引いて輪の中に カードを表向きに返して重ねていく。 引いたカードが lion の場合,カードの上に手をすば やくつき,手を出すのが一番遅れた子どもが,輪の中 に今まで出されたカードをすべて取る。カードを手に 取った子どもは,その取ったカードから次のカードを 出していく。最後に,手にカードを持っていなかった 子どもの勝ちとなる。 -国際 26- 写真7 豚のしっぽを楽しむ 子どもたちは, 【豚のしっぽ】が大好きなので,動物の英語表現の発音に親しみながら,楽し めるゲームであり,学習の最後に行うことは有効だったと考える。 さらに,カードの裏に,本時で導入した関係のある新しい英語表現を印刷しておくことで, 豚のしっぽゲームの中でも,連想しながら頭を働かせて取り組むことができたと考える。 ② たかめあう段階 絵本「Brown Bear, Brown Bear, What do you see?」の読み聞かせ 子どもたちは,絵をしっかり見て,聞いていた。 子どもたちが学習してきた動物が多く登場していたので 楽しみながら動物を表す英語表現を振り返ることができ ていた。 “What do you see?”のフレーズでは,読んでく れた先生の後につけて発音することもできていた。 6 成果と課題 (1) ○ 写真8 絵本を聞く 実践の成果 授業後の子どもたちのアンケートでは, 『英語活動は好きですか。』に 30 名中 26 名の子ど もたちが「好き(とても 14 名,まぁまぁ 12 名)」と答えていた。主な理由は「英語で歌った り,あいさつをしたりして楽しい」「英語が上手になって楽しい」「いろいろな活動をしながら 英語が学べる」などである。本題材の中では,毎回アンケートを取りながら,子どもたちの要 望も取り入れつつも,いくつかのゲームを取り入れることは効果的であったと考えられる。 ○ 時数を追うごとに子どもたちに動物の英語表現は定着し,英語表現を使った活動に楽しん で参加する姿が増えていった。第1時では 80%の子どもたちが楽しく活動に参加できていたが, 第4時では 93%もの子どもたちが活動に参加することができた。 ○ 第4時では教師の発音を単純に繰り返すだけではなく,違う英語表現を聞いて既習の動物 の英語表現を発音するという新しいタスクを導入したことで,前時までと同じ【チャンツ】や 【動物カルタ】の活動でも新鮮味が出て,楽しめていた。活動方法は分かっているので,子ど もたちも安心して取り組むことができていた。 (2) ○ 課題 授業後の子どもたちのアンケートでの,『英語活動は好きですか。』で「きらい(あまり1 名,きらい3名)」と答えた児童については,今後その理由を明確にし,英語が好きになるよう に努めること。 ○ 他の学習でも当てはまることだが,教師が指示を出さなくても,子どもたちが活動をでき るように,英語活動のスタイルを構築させること。 ○ 題材と題材をつなぐことができるような活動の工夫と年間カリキュラムを見直すこと。 -国際 27- 【実践事例 5】 子どもたちが「言いたいこと・話したいこと」を表現しようとする小学校英語活動 第5学年 『Let’s go to eat!』 久留米市立西牟田小学校 教諭 田島 孝則 実践の概要 本実践においては,児童が楽しく英語による言語材料に慣れ親しみながら,コミュニケーシ ョン能力を養うことに焦点化した学習活動のあり方を追究する事とした。子どもたちに身につ けさせたい「コミュニケーション能力」とは,子どもたちがそれまでに積み上げてきた英語経 ...... 験の中から,自分が使える表現を生かしながら自ら積極的に意思の疎通を図ろうとする態度と 能力を育てることと考え,小さいステップで無理なく英語表現に慣れる工夫をしながら,自分 の決めたことを人に伝える活動を組み立てれば,コミュニケーションの質を評価する活動へと 高めることができた。 キーワード:コミュニケーション能力・言いたいこと・話したいこと・国際理解教育 1 指導観 本学級の子ども達は,入学してから1・2年各 20 時間,3・4年 25 時間の英語活動の経験 がある。本校は,犬塚小学校および三潴小学校とともに3校に一人のネイティブ・スピーカー の ALT を配置されており,週2回の来校を得てほとんど ALT とともに英語活動に取り組む事 ができてきた。低学年で経験してきた色や数字,動物といった単純な言葉については抵抗なく 聞いたり発話したりする事が出来る児童が多いが, 「あまりわからない。」とか「好きではない。」 と感じている児童も出てきており,個人差が広がってきていると言える。 思春期にさしかかり,ゲームをしたり歌を歌ったりすることを「幼稚だ。」と嫌がる児童も出 てきたこの期になると,低・中学年で活動してきたことと同じような手だてでは意欲的に活動 しなくなってくるが,活動のあり方を工夫することで英語を使ったコミュニケーションを楽し む事ができるようにしたい。 子ども達は,食べる事や食べ物について比較的高い関心を持っている。このことを生かしな がら,子ども達に英語での注文やそれを受けるやりとりを経験させたい。ファーストフードや レストランでの注文は,自分が欲しい物を手に入れるために自分の意志を相手に伝えようとす る事が必要であるばかりでなく,自分の希望の物を選択できる幅もあり,子ども達の活動意欲 を満足させる事ができる場面だと言える。また,子ども達にとって身近な物の名前を多く使う ばかりか,異文化や背景を理解したり味わったりする事ができるものと言える。 この活動では,子ども達が知っている言葉から知らない言葉へと語彙を増やすような活動を 組み立てる事で,低いハードルを何度も超える体験ができるように工夫し,楽しく英語活動に 取り組めるようにしたい。具体的には,自分が食べたい食べ物や知りたい食べ物の言い方など を考えさせることで,自然に語彙数を増やすようにしたい。 また,中・低学年で多用したチャンツやカード取りゲームなどから,一定の場面を想定して ロールプレイングする手法に高める事で,自然な形でより多くのコミュニケーション活動や発 話を促したい。2 目標 (1)ALTや先生たち,友だちに英語でレストランの注文をしたり聞いたりすることを楽し む事ができる。 (2)英語活動で身につけた食べ物やレストランでの会話の表現を生かしながら,コミュニケ ーションの楽しさを味わう。 -国際 28- 3 計画(4時間) 主 な 活 動 内 容 ○ALT と HRT のデモンストレーションを見て学習のめあてをつかむ。 Let’s go to eat! 英語でも外食できるようになろう! ○ 料理や飲み物などの英語での言い方を聞く。 ① ※通訳をしたり聞き方を知らせたりする。 How can I say ( )in English. ○学習したもの以外の料理や飲み物などの英語での言い方を聞く。 ① ○ みんなでひとつのレストランメニューを作る。 ※メインディッシュ,デザート,ドリンクに分けながら 本時 ○「ゴチになります」ゲームで楽しむ ○グループごとにレストランメニューを作る。 ① ※好きな料理の国別にメニューが作れるようグルーピングする ○前時で作ったメニューを使って,レストランでのやりとりをロールプレイする。 ※ 注文票を準備しておき,記録したり容易に計算ができるようにしたりする。 Welcome to our restraint. May I help you? What would you like? ① I’d like (to have) spaghetti and coffee. OK! Wait a moment. Here you are. How much is it? 11 dollars, please. Here you are. Thank you. Have a nice day! 4 主眼 ○ レストランでの注文のやりとりをしながら,食べ物(料理)を表す表現に慣れ親しむ。 ○ ALT や HRT とのコミュニケーションを通して,英語でのコミュニケーションの仕方を楽 しむ。 5 授業仮説 レストランなどの外食に出かける場面を想定して,HRT や ALT と英語を使ってコミュニ ケーションする活動を設定し,やりとりをしながら進めるゲームをすれば料理名やオーダー する英語表現に慣れ親しむ事ができるであろう。 6 指導の実際と考察 (1)対象: 西牟田小学校 (3)題材名: 5年1組 28名 (2)期間: 平成18年11月 「Let’s go to eat!」 (4)展開 主 な 学 習 活 動 と 内 容 Warming up 1 ALT とあいさつを交わす。ALT:Hello. How are you today? C:Hello. I’m great! 導 ♪Hello, how are you? 入 2 「10 Wow! Game」「挨拶ゲーム」で友だちに英語表現をする。 3 歌を歌う。 ♪It’s a small world. (CD:開隆堂) 展 開 Main Activity 4 料理名を表す英語表現を思い出し,表現する。 Spaghetti, gratin, stake, omelet, salad, sandwiches, noodles, ramen, kid’s plate, -国際 29- etc… ※ 思い出した料理名を表示するために絵カードを提示。 5 リズムチャンツで発話の練習をする。Repeat after ALT. 6 「ゴチになります」ゲームをする。 学校へ行こう Ver. ※ ゲームのルールを説明する。(設定金額○○ドル) ※ 英語でのやりとりを楽しませる。 What would you like? I’d like an omelet, a steak, a salad, an ice-cream and a coffee, then STOP! ※グループごとの値段を計算して順位を決定する。→順位を発表する。 Closing ※ ALT にショートスピーチを求める。 終 7 ALT のショートスピーチを聞き,本時の感想を話し合う。 Last weekend, I went to nice restaurant…. 末 8 ALT に挨拶をして本時学習を終わる。 That’s all for this class. Thank you! 第1時「活動目標の設定」 外国人 ALT にウエイトレス役をしてもらって,英語を使ってのレストランでのやり取りの場 面をデモンストレーションした。片言の英語でも,何とか自分のオーダーしたい料理を伝える ことができた様子を示すことで,活動の目標を明確にイメージさせようと考えた。そして,子 どもたちに単元の活動目標を Let’s go to eat! た。 英語でも外食できるようになろう! とし そして,子どもたちの中には英語を知らなかったり覚え なくてはいけなくて嫌だ・不安だと感じていたりする子がいる ことから,知っているであろうと思われる料理の名前からピク チャーカードで示し,想起させた。これまでに学習したことの あるものや,もともと日本語化していて子どもたちが知ってい ると考えている言葉を多用することで, 「自分は意外と英語を知 っている。話せる。」と思わせようと考えた。授業後の感想の中 写真1 食べ物の復習 にも,「意外とたくさんの英語の言葉を知っていて,驚いた。」と書いた子どももいたことから もわかるように,比較的低いハードルであるように感じさせることができた。 第2時「ゴチゲームでロールプレイ」 実際に,ウエイトレス役とお客さん役になりきって,レストランでのオーダー場面をロール プレイすることで,英語でのコミュニケーションの仕方を楽しみながら食べ物(料理)を表す 表現に慣れ親しむことができるように,テ レビ番組で扱っている「ゴチゲーム」をや ってみることにした。 【Warming up】ALT と挨拶を交わした後, 「10 Wow ゲーム」 「挨拶ゲーム」で友だちの名前 を呼び合ったりやりとりをする楽しさを味 わったりすることで,ウォーミングアップ させることとした。どちらのゲームも,次 写真2 ♪It’s a small world 写真3 ALT や友だちと楽し く挨拶 に発話する友だちの名前を示さなければな らないルールで行わせた。このことで,誰を指名するのか興味を持って聞いたり,誰を指名す -国際 30- ると楽しく活動できるか考えたりしながらゲームを楽しむことがで きた。 次に,その月に歌っていた「It’s a small world」を歌うことで,学 級全体の雰囲気をリラックスさせることができた。 【Main ActivitiesⅠ・Ⅱ】次に,料理名を表す英語表現を思い出し 発話する活動を行うことで,英語表現の記憶を呼び戻し,成就感を 写真4 料理名を指差す 味わわせることができるように,ピクチャーカードを使って復習を 行った。ピクチャーカードのほとんどを発話できるので,カードが 黒板の上にいっぱいになった。 ALT の機転の利いた発話指導やテンポのよさに,子どもたちも,リ ズミカルに発話することができていた。このように,視覚的に「た くさん学習したなあ。」と思える場面を設定することで成就感を味わ わせると同時に,「意外とたくさんの英語を話せる,知っている。」 写真5 オーダーを考える と自信を持たせることができた。 そして,これらの「食べ物を英語で言うのは簡単だ。」という思い を生かしながら,ウエイトレスに見立てた ALT との対話によって,レストランでのオーダーが 疑似体験できる「ゴチゲーム」を始めようと試みた。ただ,その ままの多くのピクチャーカードではゲームとして構成しにくく感 じていたので, 【啓林館・小学生のえいご3】の中からメニューを 取り出すことにした。 一人ずつ手元にそのメニューを持ちながら,メニューに書いて ある食べ物の絵の英語での言い方を改めて確認する。ALT が呼ぶ 言葉の絵を指で押させるだけの簡単な作業だ。子供たちは不安な 写真6 ALT にオーダーする く確認していくことができた。 「友だちのメニューを指で押さえて みよう。」という指示を出すと,更に楽しそうに活動することができた。 【Main ActivitiesⅢ】それぞれの料理にはあらかじめ値段を決めているが,それを知らせずに オーダーをして,設定金額に近いほうから順位を競うゲーム「ゴチゲーム」をしようと提案。 子どもたちは,それぞれの料理がおよそいくらぐらいするか考えながら,何をオーダーするか 思案し始めた。もちろん,ネイティブ・スピーカーではないので英語での話し合いはしない。 日本語をふんだんに使って, 「○○ドルぐらいじゃない?」 「そりゃ,たか過ぎるやろ。」 「これが 食べたいなあ。」などと楽しそうに会話しながら疑似体験させることができた。「英語活動の時 間には,英語でしか話してはいけません。」などと言う先生がおられるという話を聞いたことも あるが,そのような無理強いをしたところで,日本語で知的にあれやこれやと考えながら,英 語を使ってコミュニケーションをとろうとしている姿こそ大切にしていきたいと考え,日本語 で話している子どもたちに英語を無理強いしなかった。グループごとにおよそオーダーしたい 料理を選択できたところで,ネイティブの ALT にウエイトレス役となって注文を聞きに行って もらった。 オーダーをとりに行く役をしてくれた ALT もとても自然な形でやり取りをしてくれて,声の 小さい子には「Pardon?」と聞き返したり「How many?」と数を聞いてみたり,種類を聞い てみたりするなどアドリブでやりとりをすることで,本来のやり取りに近い状況を作り出して くれた。このことで,子どもたちはごく自然に英語でのやり取りに取り組むことができた。 【Closing(Listening Time)】私がそれまでによくした失敗だが,ゲームで盛り上がり何のため に英語を使ったコミュニケーションを行ったかわからないままに授業を終えてしまうというこ -国際 31- とがある。他の教科の授業でも行うように,活動の意味を価値付けてあげる授業の評価を子ど もたちにしなければならないと考えた。その際,子どもたちに「大きな声で」「たくさん」「ア イコンタクト」という評価の視点ばかりを伝えていても,子どもたちのコミュニケーション能 力は高まらない。コミュニケーションの質を問うたりコミュニケーションをとろうとすること の値打ちに気づかせたりする評価活動に取り組ませたいと考えた。 ALT にあらかじめショートスピーチを頼んでおいて,話してもらうことにした。 I went to a Birthday party of my friend. At the party, I ate a lot of nice food. I had some salad, spaghetti, tacos, yakisoba, and Umeshu. It was so delicious. Thank you. そして,子どもたちに聞き取れた言葉を聞いてみた。子どもたちは, 「なんか誕生日のことを 話していた。」「スパゲティー?」「梅酒とか言っていたよ。」と答えてくれた。すかさず「よく 聞き取れたね~。」「さすが。」と評価した。 英語で発話することだけが値打ちがあることではなく,相手の話をよく聞きその話にきちん と反応したり対応した言葉を発したり呼応した行動が取れることが値打ちあるということつま りコミュニケーションの質を,問い続けなければならないと改めて感じる。 第3時「オリジナルメニューを作ろう」 レストランでのやり取りをロールプレイした経験を生かして,自分たちがグループごとに作 ったメニューを使って,お互いに注文を受けたり注文したりするという活動を提案した。子ど もたちの自分からかかわりたい・参加したいという欲求と合致し,意欲的に活動に取り組むこ とができた。その際,ALT にはどのような言い方をするのかわからない英単語を教えるという サポート役を果たしてもらうことにした。子どもたちは,言い方が分からないときには in English? How can I say と ALT に聞くように約束をしておき,自分たちの作りたい各国料理メニューを作成することが できた。 第4時「オリジナルメニューでロールプレイ」 前時に作成したグループごとのオリジナルメニューを使って,レストランのウェイター役と お客さん役になりきったロールプレイをメインにした活動を行った。さすがに子どもたちが自 分たちで作ったメニューだけあって,注文を取りに行ったときに「○○がおすすめですよ。」な どとアドリブをきかせた発言ができたり,「おししいですよ~。」と期待をあおったりする発言 も見られた。英語によるやり取りはそれほどハードルを高くせず,第 2 時に行った ALT との やり取りにならって What would like? I‘d like to , , , and . Thank you. というやり取りにした。子どもたちが話したいという欲求の内容とコミュニケーションしなけ ればならない内容はこれで十分だった。 授業後のアンケートから このユニットの第3時を除いて 1 時間の活動ごとに,アンケートを子どもたちに書いてもら った。質問項目は①楽しかったか?②英語を聞き取れたか?③英語を話せたか?④活動の感想 の 4 点である。アンケートの回答の変化が顕著であった項目は以下のとおりであった。 -国際 32- 話せた? 図1 話せた? ばっちり ばっちり まあまあ まあまあ あまり あまり ぜんぜん ぜんぜん 第1時 話せた? 図2 第2時 話せた? 図1と図2に示すとおり,どの時間においても,チャンツやスキットで同程度の発話量があ るにもかかわらず,コミュニケーション活動やタスク活動に取り組んだ第2時・第4時と取り 組まなかった第1時では,話せたと感じているかどうかという印象に大きな違いが見られる。 繰り返し発話しているだけでは子どもたちは「話せた。」と感じないで,自分が話したいことを 話したときに「話せた。」と感じるということが分かる。このことから,子どもたちに「話せた。」 という成就感を感じさせるようなコミュニケーション活動は,子どもたちが話したいことを話 させるよう計画を立てるべきであることが明らかである。 7 研究の成果と課題 (1)実践の成果 ○ 小さいステップで何度もネイティブの発音を繰り返し聞く工夫をすることは,自然な形で 英語の音声に慣れさせることができ,子どもたちに自信を持たせ,英語嫌いを作らない指導方 法のひとつとして確認することができた。 ○ ゲーム化された活動の中で,自分の決めたことを人に伝える活動を工夫することは,子ど もたちの興味・関心を高める方法として有効である。 ○ 発話数やカードの獲得数などのコミュニケーションの量から,発話した内容や伝わったか どうかなどコミュニケーションの質を評価することによってさらに,話される英語を聞きたく なる活動へと高めることができた。 (2)課題 ① 教材・教具等の面で 英語活動の授業の準備をする際に最も時間を要するのが,多くの教材・教具の中から「どの歌」 「どのカード」 「どんなゲーム」と選択をすることである。 「何年生の何の Unit では~を使えば 良い。」ということを明らかにするには,これからの多くの実践に学ぶしかない。 ② カリキュラムの面で それぞれの Unit がそれぞれの学年の発達段階・児童の実態や英語の経験年数・ALT の訪問 回数などに合致した内容になっているかどうか,実践を重ねながら検証していくしかない。さ らに,子どもたちにどの程度のスキルを身につけさせることが妥当であるのか,中学校英語科 や英語教育全体からのコンセンサスも得る必要がある。 ③ 授業実践から 細かいステップを組むほど時間がかかるが抵抗は少ない。スキルの向上は遅くなるが,コミ ュニケーション活動やタスク活動を行うことで興味・関心を高めることができる。明確なガイ ドラインがない現在,語学としての英語活動だけを目的とせず,英語活動を行うことで子ども たちにどんな力を育てたいのか明確にしていく作業が必要である。 -国際 33- 【実践事例6】 積極的に英語で発話しようとする態度を育成する英語活動の展開 第1学年 『英語で自己紹介しよう』 久留米市立城南中学校 教諭 山本 大輔 実践の概要 本実践は,人間の言語習得の段階に沿った英語活動を通して,積極的に英語で発話しようと する態度を育成することをねらいとした授業実践である。 人間は「聞くこと」 「話すこと」 「読むこと」 「書くこと」の順に言語を習得する。しかしなが ら,現状では,日本人の多くが,「読むこと」「書くこと」を中心とした英語を学習してきたた め,音声によるコミュニケーション能力が十分ではない。音声によるコミュニケーション能力 を育成するためには,文法や語彙などについての知識を持っているだけではなく,実際にコミ ュニケーションを目的として英語を運用する活動を積み重ねる必要がある。このため,英語の 授業においては,生徒が英語で自分を表現したり,相手を理解したりすることを通して成就感 を味わうことができる場を設定し,英語で発話しようとする態度の育成を図っていかなければ ならない。 1 単元名 2 指導観 Unit3 グリーン先生の初授業 本学級の生徒たちは,授業中積極的に発表 表1 英語の4技能に関するアンケート することができる。また,意欲的に英語でコ ミュニケーション活動に取り組むことができ る。事前のアンケート(資料1)によれば, 「英語を話せるようになりたいか」という質 問に対して90パーセントの生徒が「話せる ようになりたい」と答えている。しかしなが 英 語 の4技 能に関 す るア ンケー ト 聞 く こと 14 話 す こと 4 11 8 読 む こと 12 書 く こと 0% 10 20% 得意 5 16 13 10 とて も 得意 10 12 40% 11 7 60% あま り得 意で は な い 4 13 80% 100% 全然 得意で はない ら,英語の4つの技能「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」のうち,「話すこと」 に最も自信があると答えた生徒は10パーセントしかおらず,授業においてさらに実践的な場 面が必要となる。 本単元は,カナダから来たグリーン先生が若葉中学校で初めて授業をする場面である。 生徒はこれまでに,be 動詞を用いた初対面のあいさつの仕方,身のまわりの物についての説 明や問答の仕方を学習しており,本単元において初めて一般動詞を用いた自己紹介の仕方を学 習する。国際化が進み,国内外を問わず誰でも英語で自己紹介をする局面に遭遇することが予 想される今日,実際に英語による自己紹介を体験することは,英語の表現力を高める上で大変 意義深い。また,その後の3人称を用いた表現の習得へと発展していくものである。 本単元の指導にあたっては,まず一般動詞 like,play,have を用いた英文や don’t(do not) を用いた英文を使ってコミュニケーション活動を行い,自己紹介に必要な英文を習得させる。 次に,Do you ~?とその応答文を用いたコミュニケーション活動を行い,問答するための英文 を習得させる。さらに,自己紹介の原稿を作成させ,班の中でリハーサルを行い,ピクチャー カードやジェスチャーなどを用いながら効果的に自己紹介をする方法を考えさせる。最後に, 1人ずつ英語で自己紹介をさせ,積極的に英語で話す態度を身に付けさせる。 -国際 34- 3 目標 (1) 自己紹介を聞き取り,Do you ~?や Are you ~?を使って,積極的に質問することが できる。 (2) 一般動詞 like, play, have などを用いたり,ピクチャーカードやジェスチャーを用い たりしながら,英語で自己紹介をすることができる。 (3) 好きなものや嫌いなもの,特技,持ち物についての自己紹介の内容を聞きとることが できる。 (4) 一般動詞を用いた肯定文,否定文,疑問文の構造を理解し,be 動詞と一般動詞を使 い分けることができる。 4 第1学年英語単元指導計画 Unit 3 (評価の観点: ①コミュニケーションへの意欲・関心・態度 ②表現の能力 ③理解の能力 ④言語・文化についての知識・理解) 留意点及び意欲を高める手だて 評価の観点(B段階)・方法 次 時 学習活動・内容 一 1 ○ 一 般 動 詞 like, play, ○スポーツや食べ物のピ ワークシート Unit 3-1③ 1 have などを用いて英語 クチャーカードを用い ・一般動詞 like, play な で表現する活動を行う。 て,一般動詞を用いた どを用いた英文を聞き 表現に気づくようにす とって3~5文を書く る。 ことができる。 ○Unit 3-1 の内容把握を ○フラッシュカードを用 単語テスト Unit 2-3④ する。 い,単語の発音練習を ・正答率が45~75パ させる。 ーセントである。 ○グループ内のペアで会 話文を読ませる。 二 1 1 ○Do you like/play/have~?を ○スポーツや食べ物のピ ワークシート Unit 3-2③ 用いて友達に英語で質 クチャーカードを用い ・一般動詞 like, play な 問したり,友達から質問 て,Do you ~?を用いた どを用いた英文を聞き された内容に英語で答 表現と応答文の表現に とって3~5文を書く えたりする活動を行う。 気づくようにする。 ことができる。 ○Unit 3-2 の内容把握を ○フラッシュカードを用 単語テスト Unit 3-1④ する。 い,単語の発音練習を ・正答率が45~75パ させる。 ーセントである。 ○グループ内のペアで会 話文を読ませる。 三 1 ○don’t(do not)を用いて英 ○スポーツや食べ物のピ ワークシート Unit 3-3③ 語で表現する活動を行 クチャーカードを用い ・一般動詞 like, play な う。 て,一般動詞を用いた どを用いた英文を聞き 表現に気づくようにす とって3~5文を書く る。 ことができる。 -国際 35- 1 ○Unit 3-3 の内容把握を ○フラッシュカードを用 単語テスト Unit 3-2④ する。 い,単語の発音練習を ・正答率が45~75パ させる。 ーセントである。 ○グループ内のペアで会 話文を読ませる。 四 1 ○発表原稿を作成する。 ○自己紹介の手順を理解 単語テスト Unit 3-3④ させる。 ・正答率が45~75パ ○評価基準を説明する。 1 ○ ピ ク チ ャ ー カ ー ド を 作 ○原稿をもとにピクチャ ピクチャーカード② 成する。 ーカードを作成させ, ・自己紹介に関するピク ○発表の個人練習をする。 1 ーセントである。 効果的な使用法を考え チャーカードを作成す させる。 ることができる。 ○ 班 内 で リ ハ ー サ ル を 行 ○質問の仕方や答え方を 本時1 い,相互評価する。 ○自己紹介をする。 練習する。 ○発表者は原稿を持たず 教師用採点表② に発表をさせたり,質 ・各観点の合計が9~1 問に答えさせたりす る。 5点である。 聞きとり用プリント③ ○聞き手が発表者に Are ・自己紹介の内容を45 you ~?や Do you ~?を ~75パーセント聞き 使って質問する場を設 とって書くことができ 定する。また,発表者 る。 は英語で質問に答えさ 質問回数記録用座席表① せる。 ・英語で3回質問をする ことができる。 5 授業仮説 言語の習得過程(聞く→話す→読む→書く)に沿った英語活動を通して習得した言語材 料を用いて,英語で自己紹介をしたり,自己紹介を聞きとって質問したりする場を設定す れば,積極的に英語で発話しようとする態度を育成することができるであろう。 6 指導の実際と考察 平成18年9月28日(木) 第5校時 於 1年1組・2組教室 7 主眼 ○ 一般動詞 like, play, have などを用いた肯定文や,don’t を用いた否定文を使いながら,英 語で積極的に自己紹介をすることができる。 ○ 好きなものや嫌いなもの,特技,持ち物についての自己紹介の内容を聞きとることができ る。 ○ Do you ~?や Are you ~?を使って,英語で質問することができる。 8 準備 教師用採点表,聞きとり用プリント,質問回数記録用紙,ストップウォッチ -国際 36- 9 指導計画 (評価の観点: ①コミュニケーションへの意欲・関心・態度 ②表現の能力 ③理解の能力 ④言語・文化についての知識・理解) 段階 学習活動・内容 1.英語であいさつをする。 活動を促す支援 ○大きな声であいさつする。 2-A 5 観点 方法 ② スピーチ 英語で自己紹介をしよう。 3.自己紹介の手順,注意点, ○どんなことが評価の対象にな 評価項目を確認する。 入 配時 2-B 2.本時のめあてを確認する。 導 形態 (別図1~3参照) るのか明確にする。 ○聞き手は自己紹介の内容を記 録するように指示する。 / 4.英語で自己紹介をする。 ・始めのあいさつ 展 ○計時して,発表者1人あたり 2-A 40 の自己紹介と質疑応答の時間 2-B ・自分の名前 の合計が2分程度になるよう ・出身小学校 にする。 評価表 ・するスポーツや演奏する楽 器について ・好きなことについて ・持っているものについて 記録 ③ 用紙 5.発表者以外の生徒は自己紹 開 介の内容を記録する。 6.質疑応答をする。 ・聞き手の生徒は,自己紹介 質疑用 ① 評価表 ○自己紹介が終わったら,質問 者を指名する。 の内容について英語で質問 ○ 質 問 者 の 質 問 回 数 を 記 録 す をする。 る。 ・発表者は質問に対する答え ○発表者への拍手を促す。 を英語で答える。 / ま と をする。 8.英語であいさつする。 き点を伝える。 ○大きな声であいさつする。 め 10 4 7.本時の自己紹介の自己評価 ○本時の良かった点と改善すべ 個 2-A 1 2-B 発表方法 (1)臨場感を高めるために2つの教室を使用 して自己紹介を行う。 〔B 座 グループ〕 黒 席 (2)学級の生徒を2つのグループ,A(1班 板 〔A 座 グループ〕 黒 席 板 ~4班) ・B(5班~8班)に分割し,それぞれ の教室へ移動させる。 (3)Aグループの生徒はBグループの教室で, A-2 Bグループの生徒はAグループの教室で1人ず つ自己紹介を行う。 (4)聞き手は発表内容を記録し,既習の疑問 A-1 B-2 〔廊下〕 -国際 37- 図1 発表手順 B-1 文を用いて自己紹介についての質問をし,発表者はそれに対して英語で応答する。 (5)次の発表者は廊下で待機する。(図1) (6)最初の発表者の自己紹介が終わったら,2番目の発表者は入室し,自己紹介をする。 最初の発表者は自分の教室に戻る。(図2) (7)ABの3番目の発表者は廊下で待機する。(図3) 〔B グループ〕 座 席 A-1 〔A グループ〕 黒 座 板 席 B-1 〔B グループ〕 黒 座 板 席 A-2 〔A グループ〕 黒 座 板 席 黒 B-2 板 B-3 〔廊下〕 B-2 〔廊下〕 A-2 A-3 図2 発表手順 11 図3 発表手順 考察 (1)スピーチ 下書きの段階でモデルとなる自己紹介の形 式を提示したため,生徒全員が与えられた 形式に沿って自己紹介の原稿を作成した。 単調な発表にならないように,①原稿を見 ずに自己紹介をする,②ピクチャーカード または実物を使う,③英語で簡単な質疑応 写真1 発表の様子 写真2 待機している生徒 答の場を設定した(写真1)。授業時間外の休憩時間にもペアで何度も練習に取り組む姿も見ら れた。特に廊下で順番を待つ段階では,多くの生徒が緊張した様子だった(写真2)。 (2)発表内容の記録 発表内容を記録用紙に記録するよう指 示したが,書くことよりも聞きとること に集中させるために,日本語で記録する か英語で記録するかを特に指定をしなか った。10パーセントの生徒だけが,す べて英語で記録していた。 資料1 自己紹介記録用紙 (3)質疑応答 質疑応答にあたっては,①質問者が「すること・しないこと」について英語で表現する,② 質問者は同じ話題について発表者に質問する(例:I play tennis. Do you play tennis?),③発 表者が質問に対して応答するように,事前に手順を指導した。また,質問者は1人3回以上挙 手して質問することを目標とした。質問した回数が10回以上だった生徒が16人いた一方で, 3回未満の生徒が8人いた。 -国際 38- 12 成果と課題 (1) ① 実践の成果 ALTとのTTの視点から 本実践においては,自己紹介の準備段階から評価規 準・基準に至るまで,ALTと普段よりも綿密な打ち 合わせを行った。通常,ALTとのTTを実施する場 資料2 スピーチ評価表 合,1つの教室を使用して1学級の生徒を2人で指導 する。しかし,今回は2つの教室を使用して分割授業 を行い,授業者が日本語を使用せず,すべて英語で発 話したことにより,生徒が英語で発話する場を多く設 定することができた。 ② 資料3 質疑用評価表 発話しようとする態度を育成する視点から 授業後の子どもたちのアンケートでは, 「英語を話すことに自信を持つことができたか」と 問いに対して,77.5%(31名/40名)の生徒が「自信を持つことができた」と回答した。 また, 「もっと英語を話すことができるようになりたいか」という問いに対して,95%(38 名/40名)の生徒が「話すことができるようになりたい」と答えた。このことから,言語の習 得段階に沿った英語活動を通して習得した言語材料を用いて自己紹介をしたことにより,積極 的に英語で発話しようとする態度を育成することができたと考えられる。 表2 英語の発話に関するアンケート1 表3 英語の発話に関するアンケート2 英 語 の 発 話 に関 す る ア ン ケー ト1 ( 英 語 を話 せ る よ う にな りたいか ) スピ ー チ 前 17 英 語の 発 話に関す るア ンケー ト2 (英語 を話 す こ とに自 信を持つこ とが で きたか ) 19 3 1 とても 思 う スピ ー チ 後 30 8 15 思う 1 1 6 2 .5 あま り思 わ な い 0% とて も 思 う 20% 思う 40% 60% あま り思 わ な い 80% 100% 1 7 .5 全 然 思わ な い 全然思わない 5 0 20 40 60 80 (2)研究の課題 ① コミュニケーション能力の視点から 英語の学習の初期段階や導入において,ゲーム的な活動を用いて生徒の興味関心を高めるこ とは必要である。しかしながら,その過程で習得した言語材料を実際のコミュニケーションの 場面で使用することがなければ,ゲーム的な活動はゲームとして終結してしまう。」コミュニケ ーションの目的は情報を共有することである。受信者にとって未知の情報を発信者が保有して いる場合に,発信者が発話によって受信者に伝え,双方が情報を共有する活動が音声によるコ ミュニケーションである。発話によるコミュニケーションを通して情報を共有することで,達 成感や喜びを感じることができる場を設定することが重要である。 ② 接続を図るカリキュラムの視点から 学校教育において英語によるコミュニケーション能力の育成を図るためには,英語の習得過 程において一貫性のある指導を行う必要がある。小中の接続を図るためには,学習指導要領を 踏まえ,各段階で求められる英語力の達成目標を設定し,英語教育のカリキュラムの実践と見 直しを継続していくことが今後の課題である。 -国際 39- Ⅸ 研究の成果と課題 1 成果 (1)小学校での英語学習(65時間の授業用)の授業指導案を作成することができた。 (2)良い意味で,小学校の先生の英語学習に対する意識と中学校の英語教師の英語の授業に 対する意識の差を認識することができた。 2 課題 (1)子どものための「小学校の英語学習と中学校の英語授業との連携」を考えたとき,小学 校では5・6年生での英語の文字の学習を始める必要があると考える。また,中学校では,小 学校での英語学習が歌やビンゴなど,ゲーム形式の活動が中心であったことを踏まえ,中学校 1年生の段階では,同じようにゲーム形式に楽しい活動を授業の中に取り入れるなど,子ども が「突然難しくなった」と感じることがないような授業展開を工夫する必要がある。 (2)授業指導案については,教材の入手方法や英語での表現の仕方など,英語があまり得意 ではない小学校の先生方も使いやすいように改正していく必要がある。 (3)久留米市独自の小学校での英語学習のカリキュラムが作成されたことを受け,中学校で も独自のカリキュラムを作成しても良いのではないか。 -国際 40-