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Fujitsu Standard Tool
世界の資金循環の変化をもたらす
チャイナマネーの新動向
富士通総研 経済研究所
主席研究員 朱 炎
[email protected]
All Rights Reserved, Copyright Fujitsu Research Institute 2008
問題意識と報告内容
„ 問題意識
„
外貨流入と外貨準備の急増は中国経済にさまざまな問題をもたらし、政策の
転換が必要
„
政策調整の実施により、対外投資を奨励し、人民元高への調整が加速する
ことによって、チャイナマネーは世界に向かっていく
„
チャイナマネーは世界の資金循環に変化をもたらし、世界経済に大きな影響
を与える。日本にもメリット
„ 報告内容
外貨流入急増の問題点と政策転換
2. 対外投資の促進
3. 人民元の調整と元の国際化
4. 世界への影響
1.
1
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1.外貨流入急増の問題点
と政策転換
2
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外貨流入の急増と増えすぎる外貨準備
輸出奨励、外資導入、人民元レートを低く抑える結果、貿易黒字と外
国直接投資の大幅拡大、外貨流入が急増、外貨準備も急増
億ドル(残高)
18000
億ドル
3000
16,822
16000
2500
貿易黒字
14000
外国直接投資
2000
12000
外貨準備(右目盛)
10000
1500
8000
6000
1000
4000
500
2000
0
0
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07 08.3
注:2008年の外貨準備は3月末、貿易黒字と外国直接投資は1-3月
出所:中国人民銀行(中央銀行)、商務部
3
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外貨流入と過剰流動性の悪循環
人民元レートの
安定、過小評価
外貨準備
急増
マネーサプ
ライ急増
景気過熱
資産バブル
人民元資金の
大量放出
中央銀行による
市場介入
直接投資
外貨供給過剰
人民元高圧力
貿易黒字
資産価格
の急騰
ホットマネー
人民元高観測
4
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対外経済政策の調整が必要
„ 輸出奨励策の見直し
„ 外資優遇策の見直し
„ 対外投資の奨励
„ 為替レート調整の加速
5
その内容と影
響を検討する
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2.対外投資の促進
6
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対外投資奨励への政策変更
„ 背景
外貨準備を減らし、過剰流動性の解消、カネ余りにはけ口を
„ 技術、市場、資源の獲得、貿易摩擦の回避
„ 中国経済のグローバル化、企業の実力増強
„
„ 対外投資を奨励
企業の対外直接投資、とくに企業買収
„ 政府系投資ファンド(SWF)
„ 対外証券投資
„
7
海外での資産運用により
新たな発展を図る
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中国の対外直接投資
・途上国では市場の新規開拓、先進国への迂回輸出、グリーンフィールド投資
・先進国では技術、ブランド、販売ルート獲得のため企業買収、拠点設立
・資源確保のため資源企業、油田、鉱山を買収、開発に参加
億ドル
200
9 3 7 .5
180
億ドル
1000
900
投資額・フロー
(左目盛)
160
800
7 5 0 .3
投資額・ストック
(右目盛)
140
5 7 2 .0
120
600
4 4 7 .8
100
80
2 9 9 .2
1 7 6 .3
3 3 2 .2
60
1 8 7 .2
0
500
400
300
1 2 2 .6
40
20
700
200
4 4 .3
3 7 .3
5 .5
2000
注:非金融部門
5 5 .0
7 .9 2 7 .0
100
2 8 .5
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
出所:商務部
8
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実力を増す中国企業
中国企業の株式時価総額が急増、企業買収の力も備えた
世界の時価総額トップ10企業
2007年末
順
位
企業名
単位:億ドル
2006年末
時価総額
企業名
2005年末
時価総額
企業名
時価総額
1 中国石油天然気(中)
7 ,2 4 0 エクソンモービル (米)
4 , 4 6 9 GE(米)
3,715
2 エクソンモービル (米)
5 ,1 9 6 GE(米)
3 , 8 4 1 エクソンモービル (米)
3,495
3 GE(米)
3 ,7 4 6 マイクロソフト(米)
2 , 9 3 9 マイクロソフト(米)
2,801
4 中国移動(中)
3 ,5 4 1 シティグル ープ(米)
2 , 7 3 6 シ ティグル ープ(米)
2,535
5 中国工商銀行(中)
3 ,3 9 0 ガスプロム(露)
2 , 7 2 2 BP(英)
2,196
6 マイクロソフト(米)
3 ,3 3 8 中国石油天然気(中)
2 , 5 3 6 P&G(米)
2,004
7 ガスプロム(露)
3 ,3 3 6 トヨタ自動車(日)
2 , 4 1 1 ウォル マート(米)
1,981
8 中国建設銀行(中)
2 ,8 5 8 バンク・オブ・アメ リカ(米)
2 , 4 0 1 トヨタ自動車(日)
1,871
9 AT&T(米)
2 ,5 3 5 BP(英)
2 , 1 7 5 バンク・オブ・アメ リカ(米)
1,853
1 0 中国石油化工(中)
2 ,4 9 6 HSBC (英)
2 , 0 9 0 HSBC (英)
1,804
注:2007年末時価総額上位500社に中国企業(香港含む)は44社、日本企業の40社を上回った
出所:日本経済新聞など
9
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増加する中国企業による海外での企業買収
近年の主要買収案件
時期
中国企業
買収対象
業種
金額
2 0 0 8 年4 月
平安保険
Fortis Inve stme nt(ベルギー)に5 0 %出資 金融
2 1.5 億ユーロ
2 0 0 8 年1 月
中国アルミ集団
リオ・ティント(英・豪)に12%出資
資源
140.5億ドル
2 0 0 7 年1 1 月
平安保険
Fortis Grou p(ベルギー)に4 .1 8 %出資
金融
1 8.1 億ユーロ
2 0 0 7 年1 0 月
中国工商銀行
Standard Ban k(南ア)に20 %出資
銀行
5 5 億ドル
2 0 0 7 年7 月
国家開発銀行
Barclays銀行(英)に3.1%出資
銀行
30億ドル
2 0 0 6 年1 2 月
中国銀行
SALE(星) を買収
リース
9.7 億ドル
2 0 0 6 年8 月
中国建設銀行
香港Ban k of Ame ric a(Asia)を買収
銀行
12 .5 億ドル
2006年
中国海洋石油
ナイジェリアの油田権益を買収
石油
22 .7 億ドル
2006年
尚徳太陽能電力 MSK(日) を買収
太陽電池
3 億ドル
2 0 0 5 年1 2 月
中国石油
PK石油( 加)を買収
石油
41 .8 億ドル
2 0 0 4 年1 2 月
レノボ
IBMのPC部門(米)を買収
PC
17 .5 億ドル
2004年
上海汽車
双竜自動車(韓)を買収
自動車
5 億ドル
10
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政府系投資ファンド(SWF)の創設
„ 中国投資有限責任公司 (China Investment Corporate Ltd., CIC)
„
2007年9月29日に設立
„
国務院直属の企業(財政部出資)
„ 主な目的
外貨準備の積極運用
„ 過剰流動性の解消
„ 国有金融機関の持ち株会社
„
„ 資本金2,000億ドル
„
„
特別国債の発行で
外貨準備を購入
今後も拡大する可能性
世界の主要政府系投資ファンド
順位
名称
国名
運用資産
億ドル
資金ソース
1
アブダビ投資庁
アブダビ首長国
6,250
石油
2
政府年金基金
ノルウェー
3,220
年金
3
サウジアラビア通貨庁
サウジ
3,000
石油
4
政府投資公社(GIC)
シンガポール
2,150
政府資金
5
クウェート投資庁
クウェート
2,130
石油
6
中国投資(CIC)
中国
2,000
外貨準備
7
安定化基金
ロシア
1,275
石油
8
テマセク
シンガポール
1,080
政府資金
9
カタール投資庁
カタール
600
石油
10
リビア投資庁
リビア
400
石油
出所:日本経済新聞などによりまとめ
11
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中国投資(CIC)の投資
„ 国有金融機関への出資(約1,330億ドル)
„
国有銀行、証券に出資、国を代表する出資者に
„ 国際金融市場で運用(約670億ドル)
„
世界の主要市場に証券投資
• 人材、海外運用委託の会社を募集中
„
優良企業に5~10%出資、株式保有
• 米ブラックストンに30億ドル
• 米モルガン・スタンレーに56億ドル
• 中鉄集団のIPOに1億ドル
„ 中国企業の海外買収を支援
„
買収資金を間接的提供
9 国家外貨管理局(SAFE)も企業に出資、外貨準備を運用
9 2008年4月、石油大手の仏トタルの株式1.6%を18億ユーロで取得、
英BPの株式1%を10億ポンドで取得
12
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対外証券投資の拡大
„ 社会保障基金(NSSF)も対外投資
„
資本金4,600億元(約640億ドル)、2割まで対外証券投資可能、今後拡大へ
対外証券投資は海外の資産管理・運用会社に委託
„ 将来は企業買収、出資も
„
„ 国内機関投資家による対外証券投資 適格国内機関投資家(QDII)
銀行、証券、保険、ファンド会社が自ら投資、投資家から募集
„ 2007年末に50社、認可投資枠は645億ドル、実際の投資額は353億ドル
08年末には900億ドルまで拡大か
„
現段階の投資先はおもに香港、シンガポール
„ 銀行監督当局間の協定により、銀行系ファンドは香港、シンガポール、英国、
米国、日本に投資可能
„
„ 個人投資家による対外証券投資
解禁待ち、現段階の投資先は香港限り
„ 数百億ドル規模に
„
13
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3.人民元レート調整と元の国際化
14
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人民元のレート調整
„ 元高調整の背景
過剰流動性の解消、マクロ経済の安定
„ 米国からの圧力
„ 輸出産業の対応能力
„
„ 元高調整のテンポ
„
2005年7月に2%の切り上げと制度改革
„ 2007年下期以降、元高調整が加速
• 2008年4月10日、初めて1ドル=7元を割り込み
„
さらに加速する必要がある
15
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為替調整の加速
人民元/米ドルレートの調整
6.90
7.00
„ 元高への調整が加速
元/ドル
„
元高
„
7.10
7.20
„
7.30
調整幅の拡大、従来の上下0.3%
から0.5%
2007年下期から調整がスピード
アップ
2005年7月~2008年4月まで
18.4%の元高
7.40
元高調整のペース
7.50
7.60
期初安値
元安
2005年
7月22日
2005年
7~12月
2006年
1~12月
2007年
1~12月
2008年
1~4月
7.70
7.80
7.90
8.00
8.10
8.20
8.30
05/7 05/10 06/1 06/4 06/7 06/10 07/1 07/4 07/7 07/10 08/1 08/4
16
期末高値
上昇率%
8.2765
8.1111
2.00
8.1111
8.0702
0.50
8.0702
7.8087
3.24
7.8087
7.3046
6.46
7.3046
6 .9 9 2 0
4 .2 8
注:4月は10日
出所:中国国家外貨管理局
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為替管理制度の改革、人民元の国際化
„ 為替管理制度の整備 金融市場の対外開放も加速
経常取引を自由化したが、まだ規制が残り、完全な自由化を
„ 資本取引の自由化には慎重、規制緩和で徐々に自由化
„
• 対外直接投資を奨励
• 対外証券投資の部分解禁
適格国外機関投資家制度(QDII)、個人投資家も対外投資
• 国内証券市場の対外開放、部分解禁
適格国外機関投資家制度(QFII) 認可枠は100億ドルから300億ドルに拡大
„ 実質上の人民元国際化が加速
„
周辺国での人民元流通
• 日本でも人民元建てクレジットカード(銀聯、UnionPay)が使用可能
„
香港で人民元のオフショア市場
• 人民元預金、人民元建て債券発行
„
人民元建て貿易決済も拡大へ
17
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4.世界経済への影響
18
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世界の金融市場への影響
„ 世界的資金の流れを変える
„
外貨準備は従来おもに米国債で運用、独自運用により、米国債の保有を減らす
• 米国への資金還流が変調、長期資金の不足
„
直接投資、企業買収、証券投資などの形で中国から世界に資金を還流
中国による米国債の保有状況
億ドル
5000
%
45
4500
40
4000
35
3500
中国の保有分
3000
対外貨準備比
30
25
中国のシェア
2500
20
2000
15
1500
10
1000
500
5
0
0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
07.3
07.6
07.9
07.12
注:財務省証券(Treasury Securities)、期末値。シェアは外国保有総額に占める中国の割合
19
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世界に向かうチャイナマネー
„ 中国の対外投資のインパクト
元高で強い人民元が対外投資をプッシュ
„ 直接投資
„
• 途上国への投資 労働集約型・低付加価値産業の移転
• 先進国での企業買収、不動産も買い漁り
„
政府系投資ファンド
• 米国の金融危機をチャンスに「ウォール街を買え」との主張も、入る時期を探る
„
対外証券投資
• 香港市場に殺到、混乱も。今後シンガポール市場も
„ 中国の投資への懸念と警戒
途上国での影響力拡大に警戒
„ 大企業・資源企業の買収に対する懸念と警戒、政治的阻止と排除
„ 政府系ファンドの商業的経営活動にも政治的意図と警戒
„
投資摩擦も発生する
20
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チャイナマネーは日本にもやってくる
„ 日本への中国企業進出
買収:技術目当てで中小企業を買収、今後は大企業の買収もありうる
„ マーケット、技術、調達のための拠点設立
„
• 研究開発センターの設立
„ 対日証券投資
„
対日投資に意欲、制度上も可能
• 政府系ファンド(CIC)が対日投資を準備、100億ドル説も
• 金融機関は日本でのファンド運用(QFII)を計画、制度上も可能
„
欧米資本にもチャイナマネーが混在
„ 問題点
人材不足がネック、対日投資の収益性が低いことが問題、魅力の欠如
„ 運用委託の資産管理・運用会社の選任に日本企業が欠場
„
21
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チャイナマネーがもたらすビジネスチャンス
„ 中国企業の日本進出と企業買収のメリット
„
三つの事例
• 上海電気は倒産した秋山印刷機械を買収(02年)、中国への販売拡大で経営再建
• オリックスはスキー用品のフェニックスを中国のスポーツ用品メーカー、中国動向集団に2円で
売却、国内市場縮小で再建断念のため(08年4月)
• 新日本石油は中国石油と日本での製油所経営で合弁を決定、アジアへの輸出と稼働率向上
が目的(08年5月)
„
三つのメリット
• 後継者問題、コストや市場の変化で廃業に直面する中小企業を生かす
• 高度化、産業再編のため、スピンアウトされる企業、事業の受け皿
• 中国市場への販売拡大で企業の発展
„
チャイナマネーの投資の特徴
• 比較的長期的投資、オイルマネー、欧米の投資ファンドと違う
„ 証券投資のメリット
„
„
„
市場の活性化
サブプライム危機で日本市場から引き上げた欧米資本を補う
今後の証券投資の対中進出にもプラス
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