...

基幹水利施設ストックマネジメント事業

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

基幹水利施設ストックマネジメント事業
基幹水利施設ストックマネジメント事業
(富山県における取組み)
目
次
(Ⅰ)基幹水利施設ストックマネジメント事業の目的
1.事業の目的
2.富山県の取組み概要
(Ⅱ)富山県の農業水利施設の概要
1.実施地区位置
2.富山県の4ヶ年における取組み状況
3.実施地区の施設概要
4.構造別の延長グラフ
5.構造区分別の延長
6.造成年別の割合
(Ⅲ)ストックマネジメントの実施概要
1.全体フロー
2.作業毎の概要
3.DGPS、PDA、デジカメを利用した現地調査
4.施設機能評価の考え方
5.対策工法の検討
6.機能保全コスト
7.対策シナリオの効果
(Ⅳ)今後の展開、方向性
(Ⅰ)基幹水利施設ストックマネジメント事業の目的
1.事業の目的
国営及び県営土地改良事業により造成された既存のダム、頭首工、揚水機場、幹線水
路等の基幹的な農業水利施設の有効活用を図り、効率的な機能保全対策を推進するため、
施設の劣化状況等を調べる機能診断を行い、機能保全計画の作成及び当該計画に基づく
対策工事を一貫して実施することにより、施設の機能を効率的に保全することを目的と
しています。
2.富山県の取組み概要
富山県では、平成18年度に農業水利施設保全対策事業で早月沿岸地区、射水平野地
区の2地区の機能診断を行い、平成19年度からは基幹水利施設ストックマネジメント
事業となり、平成19年度は常願寺川右岸地区・常願寺川左岸地区・神通川左岸地区・
小矢部川地区の4地区、平成20年度は黒部川沿岸地区・神通右川右岸地区・井田川流
域地区・氷見地区・庄川沿岸地区の5地区、平成21年度は魚津地区、高岡地区の2地
区の機能診断を行っており、富山県全域における県営造成施設を4ヶ年に渡り、計13
地区の機能診断を富山県土地改良事業団体連合会により実施しました。
(Ⅱ)富山県の農業水利施設の概要
1.実施地区位置
黒部川沿岸
氷見
魚津
高岡
早月川沿岸
射水平野
常願寺川左岸
神通川左岸
常願寺川右岸
庄川沿岸
井田川流域
小矢部川
神通川右岸
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
2.富山県の4ヶ年における取組み状況
調査水路延長 約880km
岐阜県
富山湾上空から見た調査水路図
水土里ネット富山
立山(雄山)
黒部ダム
剣岳
石川県
長野県
富山湾
富山新港
年度
H18
新潟県
: 調査対象路線
地区名
水路延長 年度計
早月川沿岸
29.8
射水平野
79.8
109.6
H19 常願寺川左岸
59.2
常願寺川右岸
63.7
神通川左岸
98.2
小矢部川
64.2
285.2
H20
庄川沿岸
98.3
氷 見
46.8
井田川流域
67.0
神通川右岸
29.5
黒部川沿岸
85.5
326.9
H21
高岡
70.2
魚津
85.6
155.8
合 計
877.6
877.6
数値地図50mメュシュ標高をカシ
ミール3Dを用いて作成
3.実施地区の施設概要
○ 構造別の延長
用水路
単位:km
実施
年度
地区名
H18
早月川沿岸
射水平野
常願寺川左岸
常願寺川右岸
神通川左岸
小矢部川
庄川沿岸
氷 見
井田川流域
神通川右岸
黒部川沿岸
高岡
魚津
合 計
H19
H20
H21
鉄 筋
無 筋
コンクリート
コンクリート コンクリート 二次製品
12.52
33.50
16.45
13.54
36.06
5.01
55.28
5.70
34.72
23.79
35.06
42.62
24.45
338.70
11.65
4.12
23.93
21.24
2.44
22.37
10.18
0.48
14.87
1.96
11.48
1.00
0.87
122.47
3.65
13.14
23.20
12.17
3.35
5.12
2.80
トンネル
矢板
パイプライン
及び管水路
0.68
0.84
1.01
6.41
3.01
5.32
0.27
3.03
3.02
0.26
24.41
27.85
7.70
23.04
0.13
3.46
71.01
9.47
32.48
その他
0.13
39.07
122.07
2.92
12.00
2.86
1.17
2.32
1.10
5.50
0.70
3.42
3.74
1.32
37.89
排水路
地区名
H18
早月川沿岸
射水平野
常願寺川左岸
常願寺川右岸
神通川左岸
小矢部川
庄川沿岸
氷 見
井田川流域
神通川右岸
黒部川沿岸
高岡
魚津
合 計
H20
H21
29.81
33.50
46.95
60.93
95.38
59.41
92.97
33.94
63.24
29.47
53.02
47.49
78.65
724.76
単位:km
実施
年度
H19
計
鉄 筋
無 筋
コンクリート
コンクリート コンクリート 二次製品
2.72
0.43
0.66
0.15
0.99
2.96
7.12
2.12
20.75
8.45
5.33
51.68
3.77
12.01
6.92
2.23
3.81
0.95
1.52
1.59
0.51
0.87
5.15
トンネル
5.28
12.11
0.47
46.89
矢板
27.72
0.49
0.36
0.43
0.15
3.14
0.75
0.15
0.54
33.43
パイプライン
及び管水路
その他
3.87
0.60
1.69
1.22
1.08
5.14
1.29
0.63
15.52
計
46.32
12.20
2.72
2.82
4.80
5.28
12.86
3.71
32.43
22.72
6.97
152.83
4. 構造別の延長グラフ
魚津
用水路
高岡
黒部川沿岸
神通川右岸
井田川流域
氷
見
庄川沿岸
小矢部川
神通川左岸
常願寺川右岸
常願寺川左岸
射水平野
早月川沿岸
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
鉄 筋
コンクリート
無 筋
コンクリート
コンクリート
二次製品
トンネル
魚津
排水路
高岡
黒部川沿岸
神通川右岸
井田川流域
氷 見
庄川沿岸
小矢部川
矢板
神通川左岸
常願寺川右岸
パイプライン
及び管水路
その他
常願寺川左岸
射水平野
早月川沿岸
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
5.構造区分別の延長
構造区分
延長
(km)
延長比
(%)
構造区分別の水路延長(km)
鉄筋コンクリート
390
44.4
鉄筋コンクリート
無筋コンクリート
128
14.6
無筋コンクリート
コンクリート二次製品
118
13.4
コンクリート二次製品
トンネル
33
3.8
トンネル
33
矢板
34
3.9
矢板
34
122
13.9
パイプライン・管水路
53
6.0
その他
パイプライン・管水路
その他
390
72%
128
118
122
53
0
100
200
300
400
6.造成年別の割合
用水路
S30以前
3.8%
S61以降
33.2%
S51~60
20.9%
S30以前
0.1%
排水路
S31~40
8.6%
S41~50
33.5%
S31~40
2.9%
S41~50
31.5%
S61以降
38.3%
S51~60
27.2%
(Ⅲ)ストックマネジメントの実施概要
1.全体フロー
日 常
管 理
(機能監視)
定 点 調 査
現地調査(精査)
目 視 調 査
現地踏査(概査)
事前調査
事前調査
・重点的調査地点において劣化度
を判定するためのデータ収集
・目視による全線概要調査
機能診断
調査
・前歴事業、補修履歴等の整理、
施設管理者からの聞き取り等
機能診断
評価
・特に重点的に調査すべき箇所
を現地調査箇所として抽出
劣化要因の推定
健全度の判定
対象施設の
グルーピング
・既存資料や機能診断調査
結果等から劣化要因の推定
・調査単位毎に施設の劣化
進度をランク分け
(性能指標・健全度評価)
・劣化要因及び健全度により
対象施設をグルーピング
劣化進行の予測
劣化進行の予測
対策工法
の検討
・グループ毎に
劣化進行の予測
対策工法の選定
対策工法の選定
機能保全コスト
の算定・比較
機
対策実施シナリオの作成
対策実施シナリオの作成
・グルーピングされた施設毎に
対策工法を複数選定
施設別の機能保全コスト算定
施設別の機能保全コスト算定
計画の作成
・近接目視を中心とした調査
・施設別に対策実施シナリオ毎の
機能保全コストを算定
・選定された対策工法・実施時期を組み
合わせて対策シナリオを複数作成
地区の機能保全コスト算定
地区の機能保全コスト算定
・施設別に算定された機能保全コストを
基に、地区全体の機能保全コストを算定
機能保全コストの比較結果より選定された経済的かつ合理的な対策
実施シナリオについて、実施時期、対策の優先度等を盛り込んだ計画を作成
能
保 全
対 策
の
実 施
「農業水利施設の機能保全の手引き」より
2.作業毎の概要
機能診断調査
「農業水利施設の機能保全の手引き」、 「農業水利施設ストックメネジメント
マニュアル」を基本に、劣化や不具合などを把握する。
定点調査
目視調査
調査ユニットの中で変状の代表的な区間を選
定し詳細な調査を実施する。
全線を目視で劣化状況を把握し、図面
に不具合を記録、主要な劣化の写真撮
影を行う。
調査ユニット
目視調査
目視で劣化状況を把握
該当する区間に戻り、詳細な調査を実施
定点調査
変状の著しい区間を選定
3.DGPS、PDA、デジカメを活用した現地調査
現場で位置情報、劣化・不具合情報、写真情報の全てを電子ファイルで取得する。
■現地での作業状況
黒部川沿岸地区:寺田川排水路 (K3-20-01)
DPGS受信機
oth通
e to
Blu
劣化不具合、確認
信
PDAの画面に現在地がリアル
タイムでプロットされ、登録する
PDAに位置情報、
属性情報を記録
写真撮影
図面を持ち歩かず、PDAで全てデータ処理を行う。
使用PDA Panasonic CF- P1
HP iPAQ2490
■写真とのリンク
GPSの時計とデジカメ撮影時間のマッチング
登録したポイントに、劣化・
不具合の情報を登録する
4.施設機能評価の考え方
「農業水利施設の機能保全の手引き」から引用
■健全度評価
健全度
ランク
■標準的な劣化曲線式
施設の状態
対応する
対策の目安
S-5
変状がほとんど認められな
い状態。
対策不要
S-4
軽微な変状が認められる状
態。
要観察
S-3
変状が顕著に認められる状
態。劣化の進行を遅らせる
補修工事などが適用可能な
状態。
補修
(補強)
S-2
施設の構造的安定性に影響
を及ぼす変状が認められる
状態。補強を伴う工事によ
り対策が可能な状態。
補強
(補修)
S-1
施設の構造的安定性に重大
な影響を及ぼす変状が複数
認められる状態。近い将来
に施設機能が失われる、又
は著しく低下するリスクが
高い状態。補強では経済的
な対応が困難で、施設の改
築が必要な状態。
S-1が43年
更新
機能診断の履歴が無く、性能低下を予測する手段がない場合
には、全国的な過去の診断結果を統計処理し、標準的な性能
低下曲線を策定し、個々の施設機能診断の結果でこれを補正
して推定する方法を用いる。
5.対策工の検討
対策工法の選定
・劣化特性を踏まえた対策工法の候補選定
・技術的適応性の検討
補修・補強・更新
数量計算、構造計算、積算
機能保全コストの比較検討に用いる
対策実施シナリオの検討・作成
・機能保全コストの検討に用いるシナリオの検討
・供用年数の検討
6.機能保全コスト
(1)算定の基本的条件
①ライフサイクルコストとの関係
・検討対象期間(40年)における機能保全コストの算定
・過年度の建設費や、検討対象期間(40年)後の残存価値は除く
・通常要する維持管理費は除く(経年による大差が見られない場合)
②経費の現価換算
・社会的割引率の適用(将来割引率)
6年後
6年後
既
存
施
設
造
成
残存価値
機能保全コスト
検討期間(40年)
検討イメージ図
S-2.0になる
年数
評
価
診
断
6年後
9年
余寿命
(機能保全コストから差し引く)
補修1
20年
更 新
40年
補修1
20年
補修3
20年
補修2
20年
更 新
40年
Case1
Case2
Case3
更 新
40年
補強
30年
更 新
40年
予測した年数分を延伸し、更新を実施する。
Case4
Case5
7.対策シナリオ の効果(縮減率)
7, 000,000
6, 000,000
余寿命まで待って更新の
機能保全コスト
5, 000,000
安価となるシナリオの機能
保全コスト
コ
ス
ト 4, 000,000
66.4%
27.1%
(
千 3, 000,000
円
43.0%
)
26.6%
41.6%
1, 000,000
32.4%
23.0%
黒部 川沿 岸
神通 川右 岸
見
井田 川流 域
氷
庄川 沿岸
小矢 部川
神通 川左 岸
常願 寺川 右岸
常願 寺川 左岸
0
48.8%
魚津
58.5%
26.2%
高岡
48.8%
2, 000,000
(Ⅳ)今後の展開、方向性
今後の劣化の進行を定期的に調査・把握するとともに、適時・適切な対策が求められる。
それには、構築データの活用と施設状態のマネジメントが不可欠。
水土里ネット富山(富山県土地改良事業団体連合会)では、効率的に実施することを提案していきたい。
また、流域全体の施設機能を図るため対象路線の拡大を図ることも必要。
■定期的なフォローアップ調査の実施
・施設状態のマネジメント。(劣化の進行具合、健全度)
・健全度に応じて対象路線。
■継続的な調査への調査資料の活用
・現地での作業を効率的に実施。(GPSの活用)
■効率的な調査システム(仕組みを含めて)の検討
・通常の維持管理の中である程度調査できる仕組みづくり。
■準幹線水路のストックマネジメントへの普及
・今後は「団体営かん排」、「ほ場整備事業」で造成された「準幹線」に適用を拡大。
・制度の充実、負担などを考慮し、土地改良区が取り組みやすい環境づくりを支援。
調査データの活用を活用したフォローアップ調査例
写真
GIS
劣化・不具合内容
位置情報(緯度・経度)
PDA、GPSレシーバーに
位置情報などを転送
・ナビゲーションによる位置確認
・状況を確認し、再評価
情報を整理・構築して状態監視、
対策工等の検討につなげる。
Fly UP