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ECHONET(エコーネット)の技術動向

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ECHONET(エコーネット)の技術動向
シャープ技報
第82号・2002年4月
ECHONET(エコーネット)の技術動向
Technical Trends of ECHONET
上 田 宏 *
Hiroshi Ueda
要 旨
世界の国々は,CO2 の削減,医療費の削減,バリア
フリーや安全な社会づくりなどいくつもの共通の大き
な課題を抱えている。日本では,このために産業も家
庭も,種々の対策を打ってきている。しかし,さらに
効果的に解決していくためには,複数の機器や複数の
システムを統合するシステム的な管理が不可欠になっ
てきている1)。本稿では,これらを実現するための設
備系ホームネットワークである ECHONET 注1の技術
内容,応用事例および今後の方向について紹介する。
The countries in the world have many common tasks,
such as the reduction of CO2 emissions, the reduction of
health care costs, and creation of a barrier-free safe society.
In Japan, various measures have been made in the industry
level and home level to solve these issues. Ultimately,
however, a more effective resolution will require
systematic management that integrates a plurality of
devices or systems 1). In this paper, we introduce the
technical contents, application examples, and the future
direction of the ECHONET that is designed to control
home appliances for resolution above subjects.
注1:ECHONET,エコーネットは,エコーネットコンソーシ
アムの登録商標です。
ECHONET( Energy Conservation and Homecare
Network)の特長は以下の通りである。
(1)電力線,無線,赤外線等の配線不要な様々な
伝送メディアをサポート
(2)システム構成をオブジェクト指向によりモデ
ル化
(3)ネットワークアーキテクチャのオープン化
(4)共通的API(Application Programming Interface)
を通信ミドルウェア化
(5)プラグアンドプレイ機能
(6)アプリケーションの実現に必要な共通的,基
本的機能をサービスミドルウェア化
以下,本特長を含むECHONETの技術内容,応用事
例や今後の方向等について紹介する。
1 . ECHONET の技術内容2)3)
1・1 ECHONETネットワーク構成
ECHONETでは,さまざまな伝送メディアの特性を
活用し,最適なシステムが構築できるように,複数種
の伝送メディア,プロトコルを使用可能とする。主な
伝送メディアの「ECHONETのネットワーク構成モデ
ル」を図1に示す。ドメインの外部とは,ECHONET
ゲートウェイ(GW)を介して接続する。またドメイ
ン内の異種プロトコル(異種伝送メディア)間は,
まえがき
1997 年 12 月に,次世代設備系ネットワークの標準
化と普及活動を目的として発足したエコーネットコン
ソーシアムは,2001年度では,会員数100社を超えた。
当社を含むA会員6社が規格作りを担当し,2000年7
月には ECHONET 規格書バージョン 1.0 を一般公開
し,2001年度はバージョン2.0,2.1を会員内公開した。
現在さらに新規伝送メディアの収納規格化作業を進め
ている。
図1 ECHONET のネットワーク構成モデル
* 電化システム事業本部 電化商品開発センター
Fig. 1 Network model composition of ECHONET.
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ECHONET(エコーネット)の技術動向
図2 ECHONET アドレス
Fig. 2
ECHONET address.
ECHONET ル ー タ を 介 し て 接 続 す る 。 従 っ て
ECHONETのネットワーク構成は,ルータで区切られ
た同一プロトコルのネットワーク(サブネット)の集
合で示されることになる。
サブネット内では,対象サブネットの識別子(Net
ID)と対象の機器やコントローラの識別子(Node ID)
が定義される。図2のように,Net ID と Node ID の対
でECHONETアドレスを定義し,このアドレスを利用
してECHONETルータは,システムに対し異種伝送メ
ディア間をシームレスに接続する。
1・2 ECHONET通信レイヤ構成
図3に「ECHONET 通信レイヤ構成」を示す。大別
すると,通信ミドルウェア部と,伝送メディア関係
(伝送メディアごとの下位通信ソフトウェア部,伝送
メディア部)から構成されるが,さらにアプリケー
ションソフトウェアの中で,
サービスミドルウェア部
が特化され規定されている。ECHONET 通信ミドル
ウェアには,その構成要素として,ECHONET 通信処
理部,プロトコル差異吸収処理部,機器オブジェクト
がある。さらに通信レイヤ構成ブロック間のインタ
フェースとして基本 API(Application Programming
Interface)
,共通下位通信インタフェース,個別下位通
信インタフェースを設ける。また,アプリケーション
ソフトの処理を助ける共通ライブラリ的な役割を果た
すサービスミドルウェアをサービスオブジェクトとし
て設ける。
図3 ECHONET 通信レイヤ構成
Fig. 3 Communication layer composition of ECHONET.
図4 住宅用 EMS(エネルギー管理システム)サービスミド
ルウェアと同サービスオブジェクト
Fig. 4 Service middleware and service object of energy
management system for residence.
1・3 サービスミドルウェア部 アプリケーションソフトウェアの開発負担を軽減す
るため,アプリケーションの実現に必要な共通的,基
本的処理を定義し,その機能をアプリケーションソフ
トウェアから利用できるようにAPIを提供するソフト
ウェアを規定している。さらにこれらの機能や,設定
情報などをネットワークから利用可能とするものとし
てサービスオブジェクトを定義する。
サービスミドルウェアには,
様々なアプリケーショ
ンに応用可能な連動機能や,スケジュール機能,ゲー
トウェイ機能等がある。
図4にその他のサービスミド
ルウェアとして,事例提案されている「住宅用 EMS
(エネルギー管理システム)サービスミドルウェアと
同サービスオブジェクト」を示す。EMS アプリケー
ションソフトウェアの3つの機能を汎用的な部分(制
御対象機器管理機能,電流量監視機能)と独自部分
(機器制御機能)に切り分け,汎用的な部分をモデル
化し,これを1つの住宅用 EMS サービスミドルウェ
アとして定義することを示している。
1・4 ECHONET通信ミドルウェア部
(1)ECHONET 通信処理部
アプリケーションソフトウェアが設備系システムの
機器を遠隔制御したり,
機器の状態をモニタしたりす
る際の処理を簡単に実行できるための通信プロトコル
処理や,通信プロトコル処理のための情報の保持や,
自機器あるいは他機器の状態などの様々な情報の管理
を行う。すなわち,他の機器の機器オブジェクトなど
のオブジェクトに対するアクセスを行うための通信処
理を行う。この通信プロトコル,他機器への公開情報
とそのアクセス手順を示すオブジェクト定義,ルー
ティング処理,アドレス管理について規定する。図5
に「通信ミドルウェア部処理等概要(レイヤ構成概
図)
」を示す。
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シャープ技報
第82号・2002年4月
図6 機器オブジェクト構成例図
Fig. 6 Composition example of device object.
図5 通信ミドルウェア部処理等概要(レイヤ構成概図)
Fig. 5 Outline of communication middleware processing
(Layer composition ).
(2)機器オブジェクト
センサやエアコンや冷蔵庫などの設備機器あるいは
白物家電機器が保持する情報や,リモートで操作可能
な制御項目を論理的にモデル化したものであり,
遠隔
制御のためのインタフェース形式を統一したものであ
る。各々の機器が持つ情報や制御対象(オブジェクト
プロパティ)やこれに対する操作方法を規定する。機
器オブジェクトは,「センサ関連機器」「空調関連機
器」
「住宅設備関連機器」
「調理・家事関連機器」
「健
康関連機器」
「管理・操作関連機器」の6グループに
分類されている。これら各グループごとにグループ
コードが充当されている。そして,各オブジェクトご
とに,クラスが分類されている。例えば,
「センサ関
連機器」オブジェクトには,人体検知センサクラス,
温度センサクラス等 42 種類のクラスがコード化され
ている。
「空調関連機器」オブジェクトには,家庭用
エアコンクラス,
空気清浄機クラス等4種類のクラス
がコード化されている。そして,各クラス毎にプロパ
ティが定義されている。図6に「機器オブジェクト構
成例図」を示す。
機器オブジェクトの規定は,ECHONETの重要な特
長である。コンソーシアムでは,ネットワーク対象機
器の種類(クラス)やそのプロパティ内容を随時更新
しており,国際標準化提案も予定している。
(3)プロトコル差異吸収処理部
プロトコル差異吸収処理部の目的は,電力線や無
線,LON,赤外線などの複数の伝送メディアと下位通
信プロトコルからなるネットワークを統合して,
単一
のネットワークに見せることである。これにより,複
数の伝送メディアを用途に合わせて選択できたり,ま
たこれを組み合わせて使用できるシステム構成を指向
する際,伝送メディアごとのアドレスや電文サイズ等
の違いを意識したりする必要はなくなる。図5の「通
信ミドルウェア部処理等概要(レイヤ構成概図)
」に
あるように,アドレス変換処理,通信種別変換処理,
メッセージの分割・組み立て処理等を行う。
(4)共通下位通信インタフェース部
各伝送メディアごとに定められた下位通信ソフト
ウェアの種別に関わらず,ECHONET通信ミドルウェ
アから見れば下位通信ソフトウェアが共通仕様を持つ
ものとして見えるインタフェースである。すなわち,
プロトコル差異吸収処理部にて下位通信ソフトウェア
毎の差異が吸収された形式にて下位通信ソフトウェア
の機能を使用する際のインタフェースである。
1・5 伝送メディアとECHONET下位通信ソフト
ウェア部
(1)伝送メディアと下位通信ソフトウェア部
ECHONET が対象とする伝送メディアは,電灯線,
小電力無線,ツイストペア線,赤外線であり,これら
の伝送メディアごとに,下位通信ソフトウェアとし
て,通信プロトコル仕様を規定する。このうち
LonTalk® 注2,赤外線(IrDA Control)のプロトコル仕
様は既存仕様を活用するが,ECHONET では,その収
容方法を規定する。下位通信ソフトウェアは,このよ
うな伝送メディア毎に特有の通信プロトコル処理を
行うソフトウェアであり,主にOSI参照モデルのレイ
ヤ 1,2 層と一部 3 層に相当する通信処理を行う。
表1に「5種類の下位通信ソフトウェア概要」を示
す。本下位通信ソフトウェアのフレーム構成を電灯線
を例にして紹介する。図7に「電灯線通信のレイヤ
1,2,3フレーム構成」を示す。ここでレイヤ1ペ
イロードフレーム長は,Short Frame, Middle Frame,
Long Frame, Double Long Frame, Answer Frame の5種
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ECHONET(エコーネット)の技術動向
表1 5種類の下位通信ソフトウェア概要
注2:LonTalk® は,米国及びその他の国々における Echelon Co.
の登録商標です。
Table 1 Software outline of the five lower level
communications.
種別
電灯線
小電力無線
拡張HBS
IrDA依存
LonTalk®依存
下位通信ソフトウェア概要
電波法施行規則に準拠し,屋内に既設の電灯線をメディアと
する直接スペクトラム拡散方式の下位通信ソフトウェア。
ARIB標準規格STD−16,及びSTD−30に基づき,小電力無線
をメディアとする下位通信ソフトウェア。
JEITAのET−2101(HBS)に拡張することで,ツイストペア
線をメディアとした下位通信ソフトウェア。ET−2101から
最大伝送距離の延長(最大1km),媒体対数として1対を
許す,アドレス重複検出等の変更を行っている。
IrDA CIR Standard(IrDA Control)に基づき,赤外線をメデ
ィアとする下位通信ソフトウェア。通信距離は標準8m,伝
送速度75kbps,応答性は通常13.8msecの即応性を有している。
通信形態は,1:N(最大8)が可能。
LonTalk®プロトコルに準拠し,小電力無線をメディアとする
下位通信ソフトウェア。プロトコル処理は伝送メディアに依
存しないため,幅広い種類のメディアに対応可能である。
1・7 ECHONET構成機器と接続
(1)ECHONET 機器のタイプ
ECHONET では,ECHONET 機器として,それがサ
ポートしている ECHONET 通信ミドルウェアの内容
に よ り ,「 フ ル ECHONET 機 器 」 と 「 フ レ ッ ク ス
ECHONET機器」の2タイプとなる。
「フルECHONET
機器」とは,電灯線通信などのECHONET で規格化さ
れた通信インタフェースを持ち機器単独でECHONET
システムへ接続可能な機器である。一方,
「フレック
ス ECHONET機器」とは,共通下位通信インタフェー
ス よ り も 上 の ECHONET 通 信 ミ ド ル ウ ェ ア
レイヤ3フレーム
データヘッダー
(11B)
レイヤ3ペイロード
レイヤ2フレーム
ID
(4B)
プリアンプル 同期コード
(8B)
(2B)
プリアンプル
同期コード
フレームタイプ
ハウスコード
ID
CC
FCS
フレームタイプ
(1B)
CC
(2B)
レイヤ2ペイロード
1・6 ECHONET電文構成(フレームフォーマッ
ト)
ECHONET 電文形式は,基本電文形式(1電文で1
つのプロパティ内容の参照,変更を行う形式)
,複合
電文形式(1電文で複数のプロパティ内容の参照,変
更を行う形式)
,任意電文形式(ベンダー独自規定の
情報のやり取りの形式)の3種類があり,それぞれに
セキュア(暗号化)機能の有無があるので,合計6種
類の形式がある。図8にセキュア機能のない「平文電
文形式の場合の ECHONET フレーム」3種類を示す。
FCS
(2B)
ハウスコード
レイヤ1ペイロード
(8B) (40/54/96/176/16B)
:シンボル同期コード
:フレーム同期コード
:フレーム長/種類定義コード(5種類)
:家庭用識別ID(メーカコード3B,個別識別コード5B)
:送信者と受信機の端末ID(各2B)
:コントロールコード
:フレーム検査シーケンス
図7 電灯線通信のレイヤ1,2,3フレーム構成
Fig. 7 Frame composition of power line communication
layer 1, 2 and 3.
類が選択できる。ハウスコードのうち,上位3バイト
で構成されるメーカコードは,
エコーネットコンソー
シアムへの申請により登録,付与される。下位5バイ
トの個別識別コードは,
メーカコードを保有する会社
が,シリアル番号のようにユニークな番号を割り当て
ることにより管理する。
(2)個別下位通信インタフェース部
下位通信ソフトウェアと通信ミドルウェアのプロト
コル差異吸収処理部との間のインタフェースである。
下位通信ソフトウェアにおける通信プロトコルが,
ECHONET とは別の規格(例えば,IrDA Control)で
定められている場合や,
すでに市場に出回っている下
位通信ソフトウェアを使用する場合,
個別下位通信イ
ンタフェースにより,この通信プロトコルや下位通信
ソフトウェアをどのように利用するかを明確にしてい
る。
― 43 ―
図8 平文電文形式の場合の ECHONET フレーム
Fig. 8 Normal ECHONET frame.
シャープ技報
第82号・2002年4月
図9 ECHONET 機器アダプタと機器とのやりとり
Fig. 9 Communication between device adapter and device of ECHONET.
(ECHONET 通信処理部)及びアプリケーションソフ
トウェアを機器本体に持たせ,
これと共通下位通信イ
ンタフェース以下の通信処理を行う ECHONET 機器
アダプタとを接続することによって ECHONET シス
テムへ接続されるような機器を言う。表2に
「ECHONET 機器の各タイプと ECHONET 通信レイヤ
構成ブロックとの関係」を示す。図9に「ECHONET
機器アダプタと機器とのやりとり」を示す。
ECHONETコントローラが,機器アダプタを介してエ
アコンに接続されている構成例である。
(2)ECHONET 接続のための機器アダプタのタイ
プ
フレックス ECHONET 機器への接続用機器アダプ
タである「通信変換機器アダプタ」と,フルECHONET
機器への接続用機器アダプタである
「伝送メディア付
加機器アダプタ」の2種類に大別される。
「通信変換
機器アダプタ」と接続した機器は,別の異なる
ECHONET下位通信プロトコルでECHONETシステム
に接続可能となる。また「伝送メディア付加機器アダ
プタ」と接続した機器は,下位通信ソフトウェアを付
加してECHONETシステムに接続可能となる。前記の
表2に「機器アダプタの各タイプとECHONET通信レ
イヤ構成ブロックとの関係」を示す。
(3)ゲートウェイ
ゲートウェイ(図1の GW)は,宅外の何らかのシ
ステムや,同一住居内におけるAVCC系のシステム等
他のシステムと,ECHONET システムとの連携を行
う。
ゲートウェイの基本的な機能を共通化し,これを
ゲートウェイサービスミドルウェアとして定義し,他
システムとの接続を行うアプリケーションソフトは,
このゲートウェイサービスミドルウェアを必ず介して
からECHONETドメイン内のECHONET機器へのアク
表2 各タイプと ECHONET 通信レイヤ構成ブロックとの関係
Table 2 Relation between each type and communication
layer composition of ECHONET.
ECHONET機器
ECHONET機器アダプタ
フルECHONET
フレックス
通信変換機器 伝送メディア
機器
ECHONET機器
アダプタ
付加機器アダプタ
アプリケーション
ソフトウェア
サービスミドル
ウェア
機器オブジェクト
ECHONET通信
処理部
プロトコル差異
吸収処理部
下位通信
ソフトウェア
○
○
―
―
―
―
―
―
○
○
―
―
○
○
―
―
○
―
○
○
○
アダプタ用の
通信ソフトウ
ェアを搭載
○
アダプタ用の
通信ソフトウ
ェアを搭載
セスを行うこととする。図 10 に「ゲートウェイ構成
概念図」を示す。
― 44 ―
図 10 ゲートウェイ構成概念図
Fig. 10 Concept of gateway composition.
ECHONET(エコーネット)の技術動向
2 . ECHONET の応用事例
3 . ECHONET の今後の方向
環境問題に関連しての省エネルギーの必要性,
高齢
化社会を迎えての健康面や安全面のサポートの必要
性,さらにはパソコンや携帯電話によるネットワーク
サービス受容の一般化等の現状において,ECHONET
から以下のホームネットワークサービスが提案されて
いる。
「ECHONET 規格仕様書バージョン 1.0」内容の一般
公開(2000 年 7 月)後,バージョン改訂が進行してい
る。基本 API 部に Java 注3言語用への対応を追記,不正
アクセスに対する ECHONETミドルウェアレベルでの
防止策として暗号化仕様,認証仕様を規定,下位伝送
メディアのプラグアンドプレイ仕様の追加・改修,機
器オブジェクト仕様の追加等である。さらに
ECHONET の今後の方向として,高速メディアへの対
応,IP ネットワークとの連携強化,国際標準化への提
案取り組みを予定している。伝送メディアインフラは,
今急速に高速化へ向かっている。ECHONETとしても,
現在の低速中心のメディアに加えて,高速メディアを
規格収納することにより,さらに応用範囲の多様化と
AV系・情報系との共存が図れる。IPとの連携も可能に
なる。高速伝送メディアとして,まず Bluetooth 注3を
ECHONET 伝送メディアに収納する作業が行われてお
り,本年 6 月には会員内に規格化内容をレビューの予
定である。引き続き,法規制の緩和がらみであるが,1.7
∼ 30MHz 帯の高速電力線通信をも ECHONET 伝送メ
ディアに規格化収納検討の予定である。
(1)エネルギーサービス
省エネルギーを目的として,エアコン,換気扇,照
明,ブラインド等の協調制御や,人の在・不在時制御,
あるいは使用者の省エネ意識喚起の手段としての電気
使用量や電気料金のモニターがある。
また電力会社と
契約し,
電力会社の負荷平準化に寄与する契約電力デ
マンド制御等が提案されている。
(2)ホームヘルスケアサービス
日常の健康管理サービス,高齢者生活ケアサービ
ス,在宅医療サービス等に関係する。持病や体調に応
じた食材管理は,
「食」を扱う冷凍冷蔵庫や電子レン
ジの情報機能に関係する。外部の連携先は,医療機
関,健康アドバイス会社,介護支援センター等であ
る。
(3)セキュリティサービス
防火(火災,ガス漏れ,漏電監視),防災(漏水検
知,地震対応,凍結防止),防犯(訪問者管理,侵入
者防止)等を目的としたサービスで,セキュリティセ
ンターに直結する本格的なものから,
外出者の携帯電
話等へ通報する簡易なシステムまで,
種々のサービス
システムが考えられる。
(4)快適生活支援サービス
白物家電機器や設備機器の集中操作や運転モニ
ター,
スケジュール運転等の利便性を訴求するサービ
スや,
センサーと連動した機器連携快適制御等の快適
性を訴求するサービス等である。
(5)モバイルサービス
携帯電話や勤務先のパソコンから,
留守宅の機器の
運転状態をモニタしたり,機器操作,施錠操作を行う
ことができるサービスである。同様に外部から,留守
宅への訪問者対応や,独居高齢者生活状況の遠隔モニ
タ等のサービスも実現できる。
(6)機器リモートメンテサービス
メンテナンスサービスセンターと連携して,
宅内機
器遠隔故障診断,
保守サービスや宅内機器運転遠隔コ
ンサルタントサービスが実現できる。今後,ネット
ワーク対応機器には,故障内容が情報として出力でき
る仕組みや,
運転履歴や故障履歴が蓄積できる仕組み
が内蔵される。
注3:Java は米国及びその他の国における米国 San Microsystems,Inc. の商
標または登録商標です。Bluetooth は,その商標権者の所有です。
むすび
以上,ECHONET の技術内容から,サービスアプリ
ケーションの事例,今後の方向まで概観した。
ECHONET は共通のミドルウェアで,複数の伝送メ
ディアに対応できるため,
シーンに応じて伝送メディ
アの使い分けが可能であるが,
さらに伝送メディアと
して,Bluetooth 等高速メディア系も収納の動きにあ
り,IP系との連携ともあいまって,アプリケーション
の実現方法も多様化,高精度化が期待できる。
ECHONET環境が構築できれば,同一環境下で種々の
サービスの具現化が可能となるが,
サービスの受容性
検証が重要である。同検証により,システム化による
種々の問題点の抽出と解決が図られ,またECHONET
対応低価格デバイスの開発や開発環境の充実も順次図
られ,ECHONET の実用化が促進されると考える。
参考文献
1) エコーネットコンソーシアムのパンフレット
(1999)
.
2) The ECHONET Specification Version 1.0,
(オンライン)入手先
〈http://www.echonet.gr.jp/〉
(参照2002.1).
,
3) 上田宏,
“新規配線不要の設備系ネットワーク
「エコーネット」
とそ
の応用”
,
OHM
(2000.8)
.
― 45 ―
(2
002年1月2
2日受理)
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