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2012 年11月作成 T-ELM-224C(01) 診断が遅れた一例 初診は1歳のとき。主訴は耳炎、肺炎、鼠径ヘルニア。 ヘルニア手術を受ける。 3歳: 短指と鷲手の症状 弾発指の手術 男性患者(32 歳当時)a 6歳∼16歳: 進行性の関節拘縮、倦怠、手指の機能低下 慢性の下痢 アキレス腱の延長術 度重なるヘルニア手術 推定診断:関節拘縮症 レントゲンで股関節、脊髄、頚部圧迫が判明。脊柱は脊柱前弯過度の所見。 25歳:角膜混濁および網膜変性症が現れる。 20年にわたり様々な領域の専門医(小児科、リウマチ科、胃腸科、呼吸器 科、眼科)の診察を受ける。 33歳のとき、心弁膜症をきっかけに、初めてムコ多糖症Ⅰ型(シャイエ症候 群)の診断を受ける。最初の症状が現れてから30年が経過していた。 a a 筋骨格 ムコ多糖症の患者さんを診たことは ありませんか? 眼 10 歳 b 20 歳 b b 32 歳 耳 この女性が、生命を脅かす進行性疾患を患っていると想像できるでしょうか。 ムコ多糖症Ⅰ型およびⅡ型の治療は、早期診断が重要です。 このパンフレットでは、 先生方にムコ多糖症Ⅰ型(MPS Ⅰ)およびムコ多糖症Ⅱ型(MPS Ⅱ)の徴候および症状をご理解いただき、患者さんが早期診断と適切な治療を早い段階で 受けられるよう、各領域ごとにその特徴を紹介しております。 胃腸 MPS Ⅰと MPS Ⅱの中でも特に、軽症型の患者さんを鑑別するのは容易ではありません。 臨床所見は多様であるため、診断は困難を極めます。 症状は幼少期に発現しますが、その徴候が他の疾患によるものと区別しにくいことが多い ため、診断が数年にわたって遅れることも多く、患者さんが重度の障害、不可逆的な器官 障害、早期における死亡のリスクにさらされる可能性もあります 1。 MPS の 徴候を ご存知で すか? 心血管系 早期診断には、MPS Ⅰおよび MPS Ⅱを示唆する徴候や症状 を的確に鑑別することが重要です。 各器官で起こりうる徴候や症状については、3 ページの「診断 のためのガイド」 、詳細については 6 ページ以降をご参照くだ さい。 呼吸器 現在、MPS Ⅰはアウドラザイム ® により、MPS Ⅱはエラプレースにより、効果的に治 療することが可能となっています。 治療の効果を最大限に引き出し、疾患の進行を遅らせ、器官障害を最小限に抑えるには、 早期診断が不可欠です。 MPS Ⅰまたは MPS Ⅱが疑われる場合は、簡便な血液検査に よって確定診断が可能です。 早期診断により、合併症を最小限に抑え、患者さんの生活の改善につながると 考えられます。 神経系 1 ムコ多糖症(MPS)の手掛かり A. 外見からみた徴候 鷲手:指をまっすぐに伸ばすことができない c 角膜混濁 d(MPS Ⅰのみ) 歩行異常、つま先 歩き、低身長 b 臍ヘルニア、鼠径ヘルニア b B. よくある患者さん・ご家族からの愁訴 書くこと、重い物を持つこと、自分で服を着ることが 難しい いつも極度に疲れていて、気力が全くない 短い距離でも歩くのがつらい 明るい日中は特に目が痛くなるため、帽子なしではい られない(MPSⅠのみ) 私の子供は、以前は問題なくスポーツ(水泳など)が できたが、今では他の子供たちと同じようにはできな くなってしまった 私の子供は何度も繰り返し耳の感染症にかかってお り、聴覚に障害があるのではないかと思う 軟便や下痢を繰り返し、重症になることもある お腹が大きく膨らんでおり、好きな服を着ることがで きない C. 患者さんの病歴 幼児期に何度も他科を紹介され、いくつもの手術を経 験している(鼓膜チューブ留置術、ヘルニア手術およ び手根管開放術等) 治療をしているが、効果が感じられない 日常的な活動が困難で、運動には耐えられない 一般的な発達の程度が兄弟姉妹と比べて遅い 注記:特定の症状が認められない場合でも MPS の可能性は否定できません。重症度、症状が現れる器官、進行速度は 患者さんによって異なります。 2 筋骨格 診断のためのガイド: MPS Ⅰおよび MPS Ⅱの徴候と症状 眼 頭部からつま先にかけての理学的検査 眼(MPSⅠのみ) 角膜混濁 羞明 ここに挙げる徴候のうち2つ以上が観察された場合は MPSⅠまたはMPSⅡの可能性があります。ただし典型 例とは異なる症例も多いため、特定の症 状が認めら れない場合でもその可能性は否定できません。 耳 耳 進行性の難聴 再発性の耳感染 呼吸器 再発性の上気道閉塞および 耳鼻咽喉感染(中耳炎など) 睡眠時無呼吸、いびき、喘鳴 胃腸 筋骨格 関節硬化・拘縮 手指の機能発達不全 (弾発指、鷲手、手根管症候群) 疲労、歩行異常 呼吸器 神経 手根管症候群 脊髄圧迫 心臓 心血管系 心雑音 心臓弁肥厚 胃腸 慢性の下痢 肝脾腫 神経系 3 MPS は重篤な疾患です ムコ多糖症Ⅰ型(MPSⅠ)およびⅡ型(MPSⅡ)は生命を脅かすこともある進行性かつ遺伝性の代 謝性疾患です。全世界における発症率は、MPSⅠで新生児の10万人に1人、MPSⅡでは、重症型が 26万人に1人、軽症型が26万人に1人と推定されています。2 MPSⅠはα-L-イズロニダーゼ、MPSⅡはイズロン酸-2-スルファターゼというライソゾーム酵素の 欠損によって、グリコサミノグリカン(GAG)が細胞内に蓄積し、機能不全を引き起こします。 3 結果として複数の器官に進行性の障害が生じ、 早期に死亡することが多いとされています。 最も多い死因は、 MPS Ⅰでは、呼吸器感染、閉塞性気道疾患、および心臓疾患とされています。 4 また、MPSⅡで最も多い死因は気道疾患とされ、成人例では心臓疾患も比較的多いと報告されていま す。5 MPS症例は病型を問わず、疾患に起因した顕著な合併症を経験し、これが進行とともに悪化し、恒久 的な障害へと至ります。 MPSは極めて多様な臨床所見を示します。 この疾患の臨床所見は多岐にわたりま す。最も重症で進行が早い病型は、 MPS Ⅰではハーラー症候群(重症型)、MPS Ⅱでは重症型、また、軽症で進行が比 較的緩やかな病型は、 MPS Ⅰではハー ラー・シャイエ症候群(中間型)および シャイエ症候群(軽症型)、MPSⅡでは 軽症型です。6 e MPS Ⅰの重症型では、明白かつ重篤な 症状を呈するため、鑑別は比較的容易で す。 MPS Ⅱの重症型も MPS Ⅰと同様の 臨床所見(角膜混濁を除く)が現れるた め、鑑別は難しくありません。しかし MPS Ⅰ、 MPS Ⅱともに軽症型は、徴候 や症状が顕著でなく、一つ一つの徴候や 症状は一般的な疾患と似ているため鑑別 は極めて困難です。1 MPSⅠおよびMPSⅡの症状の現れ方は 多岐にわたり、症状は同じでも、ごく軽 症から重症まで発現の程度は様々で、進 行速度も異なります。 f 早期の精神発達遅滞 正常∼ほぼ正常の 精神発達 10歳になる前に 死亡 [1] f 正常な精神発達 10∼20歳の間に死亡 [1] 寿命は短くなるが、 30 歳を超えて生存す るのが一般的* [1] 1 出典 英国MPS学会 – “Survival in MPS” 診断が確認された症例の平均年齢 * 4 筋骨格 MPS Ⅰおよび MPS Ⅱの一つ一つの症状は 他の疾患とよく似た症状を呈します 鑑別診断が必要な疾患 (若年性)リウマチ性関節炎 結合織の疾患(例:強皮症) 変形性リウマチ疾患 筋ジストロフィー 多発性筋炎 自己免疫疾患 ペルテス病 手根管症候群 耳 あまり重要ではないと思われた症状(耳鼻 咽喉の感染、ヘルニアまたは関節痛)を示 す小児の患者さんが実は MPSに罹患して いることがあります。 関節拘縮 眼 軽症型のMPSⅠまたはMPSⅡの患者さん は、明らかな身体症状がなく、知能も正常 なことが多いことから、臨床的に MPSを 疑う指標が少ないとされています。 反応性気道疾患(アレルギー、喘息) セリアック病 軽症型MPSⅠの診断の遅れ 診断が遅れると、不可逆的な器官障害、病 状の悪化、不適切な治療や処置(手術、麻 酔)など、軽症型症例におけるリスクを増 大させ、深刻な臨床的結末をもたらす可能 性があります。1 初発症状 2.9 平均年齢(歳) 胃腸 診断 9.2 呼吸器 軽症型 MPSⅠの症状発現(2.9 歳)と診断(9.2 歳)の平均年齢との 間には大きな開きがあることが、文献において裏付けされています。1 その他 10% 整形外科 8% 幼児期に他科への紹介や外科的処置を何度 も経験している場合、 MPSを疑う必要が あります。 心血管系 ほとんどの患者さんが、正しい診断を受け る前に、外科的処置を数回にわたり受けて います。 器官別の手術頻度 軽症型MPSⅠ 眼科 5% 腹部 15% 心臓 5% 神経 15% 点滴関連 8% 耳鼻咽喉 34% 神経系 データ出典:MPSⅠレジストリー(www.mpsiregistry.com) 5 筋骨格 筋骨格系に現れる徴候と症状 筋骨格系の合併症はよく見られ、多くが幼児期早期に現れます。 関節拘縮や関節硬化が複数の関節に生じると、顕著な障害を起こし、服を着るといった 単純な日常の活動も困難となります。4 MPSⅠまたはMPSⅡの初期徴候として複数の弾発指が現れます。7, 8, 9 進行性の関節症により、可動性が制限されます。10 弾発指の腱鞘切開術、手根管再建、および骨や関節(股関節、脊柱、膝)の異形成の矯 正手術など、整形外科手術がしばしば必要となります。11, 12 筋骨格系に現れる徴候と症状 特に手、肩、肘、膝における非炎症性の関節拘 縮と疼痛 関節硬化 / 拘縮や関節可動制限(指、膝、肘、腰、 アキレス腱に現れ、弾発指、鷲手、歩行異常や つま先歩行を起こす)。 筋力低下や過度の疲労 典型的な鷲手。完全に指を伸ばすことができない。 特に、小児(左)と成人(右)の手の幅が広い。c, b 運動能力の障害、可動性の制限 股関節異形成、後側弯症、脊柱前弯過度 多発骨異形成(頭蓋骨、肋骨、脊柱、骨盤、長 短の長管骨) 骨の成長の遅れに起因する低身長 特異的顔貌、濃い髪と厚い皮膚 肩関節可動域の制限(最大に伸展した状態) 、右肘および 肩関節の拘縮、左肩甲骨の突出。首が短く、肩幅が狭く、 光過敏のため帽子を着用している。g 6 筋骨格 MPS Ⅰおよび MPS Ⅱは関節炎のように診られることがありますが、関節の炎症を伴いません。 眼 MPS Ⅰおよび MPS Ⅱにしか見られない特徴 8 非炎症性の関節硬化/拘縮 赤血球沈降速度(ESR) 、C 反応性タンパク(CRP)、白 血球(WBC)は上昇せず、朝のこわばりもない リウマチ因子(RF)と抗核抗体(ANA)は陰性 耳 ステロイドまたは抗炎症性薬(ステロイド、金製剤など) が効かない 胃腸 MPS Ⅰの 9 歳の少女で、臍ヘルニアおよび 複数の関節拘縮が見られる。腰と膝の拘縮に より、過度の脊柱前弯を伴う姿勢の異常が生 じ、歩行異常を起こす g レントゲン検査で、手、腰、脊柱に特徴的な異常がしばしば認められます。 脊柱後弯や脊柱側弯はよく見られる症状であり、腰痛と背部痛を伴います。 呼吸器 心血管系 鷲手と尖った中手骨。指骨近位の拡大。橈骨・尺骨遠位 の V 字状変形 c 神経系 骨盤および大腿骨頭の形成不全。腸骨の基部は 細く、幅広い腸骨の炎症を伴う。寛骨臼は十分 に発達していない。大腿骨頭骨端は平坦で、大 腿骨頚は肥大しており外反位である h 7 筋骨格 眼に現れる徴候と症状 角膜混濁はMPSⅠに特徴的な徴候です。 MPSⅡではしばしば網膜色素変性症が見られます。 眼 角膜混濁は両側性・周辺性のことが多く、徐々に角膜中央部へと進み次第に濃くなりま す。この異常は細隙灯検査で検出することができます。 時間が経つにつれ水晶体の濁り、眼圧の上昇、および視神経の損傷が 生じ、角膜移植が必要となることがあります。13, 14 網膜色素変性症、緑内障、視神経萎縮により、羞明、視力低下、失明 が生じることがあります。15 角膜混濁と 羞明は、MPS Ⅰ の強力な 指標です。 眼の徴候および症状 両側性の角膜混濁、多くは周辺性 羞明または光過敏症 乳頭浮腫または視神経円板萎縮 網膜障害(網膜色素変性症など)、夜盲症へと進行。MPS Ⅱでも認められます。 緑内障 失明(部分的または完全) MPS Ⅰ症例の角膜混濁は両側性であることが 多く、周辺実質前部から始まり後部および中 央部へと進む g 8 左目に角膜混濁があり、右目に 角膜移植を受けた MPS Ⅰ症例 c 耳に現れる徴候と症状 中程度~重度の難聴がおよそ50%の症例で起こります。 再発性の急性症候を伴う慢性耳炎は幼児期によく見られますが、 MPS の患者さんは気道が細く分泌物の粘性が高い ため、特に耳鼻咽喉感染を起こしやすいとされてい 喉 ます。 性の耳鼻咽 進行性の難聴は、主に高周波数領域で起こり、進行の 後期段階に起こる傾向にあります。4 耳 圧平衡チューブやグロメットを付けていないか、再 発性の耳感染症や中耳炎、鼓膜の瘢痕形成の徴候がな いかを確認する必要があります。 再発 れば、 感染症があ は MPS Ⅱ MPS Ⅰまた 高いと の可能性が す。 考えられま 耳に現れる徴候および症状 再発性の耳感染症(耳炎)、複数回にわたるグロメット挿入 胃腸 中耳炎の既往歴 言語発達がゆっくり、または遅延 耳鼻咽喉の手術(アデノイド切除扁桃摘出術、グロメット挿入) 高周波領域における中程度∼重度の難聴 呼吸器 中耳に滲出液が充満して、 伝音性難聴を起こすことがある。 心血管系 GAGの蓄積による エウスタキー管の閉塞 中耳チューブから外耳へ過剰 な滲出液が排出される。滲出 液が排除された後、中耳小骨 がどのように見えるかに注目。 変形が見られることがある。 MPSⅠおよび MPSⅡ症例の耳に生じる問題 神経系 9 筋骨格 胃腸に現れる徴候と症状 ヘルニアや肝腫大はMPSⅠおよびMPSⅡの指標となることがあります。 眼 臍ヘルニアと鼠径ヘルニアは非定型かつ持続性で外科的処置後も再発しやすいため乳児 期に見られることもあります。4 腹部突出を伴う肝腫大はほとんどの患者さんで見られますが、軽症型では脾臓が正常で あることもあります。4 耳 胃腸の合併症 腹痛の愁訴 臍ヘルニアまたは鼠径ヘルニア 肝腫大と、これに起因する腹部の隆起、悪い姿勢、筋力の低下 胃腸 筋力低下と運動不足によりひどくなる、突発性、 慢性、難治性の下痢 腹腔内圧と結合組織の衰弱により ヘルニアが生じる g 10 呼吸器に現れる徴候と症状 呼吸器および耳鼻咽喉の感染症は、MPSⅠおよびMPSⅡの初期徴候です。 拘束性肺症候群と再発性の呼吸器感染症が若年で現れるため、合併症発現頻度が高くな り、生活の質が低下する一因となっています。1, 4 軽症のMPSⅠ患者さんでは症状が進行する前に診断して、適切な治療を施し、呼吸器の 合併症を最小限に抑えることが不可欠です。 呼吸器に現れる徴候と症状 再発性の耳鼻咽喉感染症(中耳炎、副鼻腔炎など) 閉塞性気道疾患 閉塞性および拘束性肺症候群による努力肺活量の低下 運動時呼吸困難 睡眠時無呼吸、いびき、睡眠障害、日中の傾眠 喘鳴、持続性の鼻汁 呼吸器 心血管系 GAG の蓄積が披裂粘膜を拡張させ、気道の 部分的閉塞を起こしている i 神経系 花綱状 GAG の蓄積が咽頭と咽喉に見られ、 咽頭を変形させている i 11 筋骨格 心血管系に現れる徴候と症状 心臓疾患はMPSⅠおよびMPSⅡにおける最も多い若年期の死亡要因です。 眼 心弁膜の変形はよく見られる症状であり、幼児期または青年期に起こる可能性があります。 軽症型症例のほとんどで弁の肥厚が見られ、原発性の僧帽弁形成不全や大動脈弁形成不全を伴い、 逆流や狭窄を起こします。16 冠動脈疾患は、血管全体に潜行性の狭窄が生じるという特徴があるため非定型であり、通常の心検 査では見つかりにくいとされています。 耳 胃腸 心臓の動脈の狭窄に より、心筋への血流が 減少 僧帽弁逆流:心室収縮時に 血流が逆流 心筋が肥大し、 心室を圧縮 心筋の線維化 MPS 症例の心臓に生じる問題 呼吸器 32 歳の MPS Ⅰ症例の胸部レントゲン像。 心臓肥大、肝腫大、肋骨異形成(オール 状の肋骨、太く短い鎖骨) 、および脊柱側 弯症に注目 g 心血管系に現れる徴候と症状 心雑音、漏斗胸 狭窄を伴う弁の肥厚 心血管系 大動脈弁および僧帽弁逆流 肺高血圧または全身性高血圧 心不全または肺性心 律動異常 冠動脈性心疾患 左心室肥大 左心室の拡張および収縮異常 12 心臓疾患は進行性に悪化し、突然死 の主な原因となるため、最終的に弁 置換術などの心臓への外科的介入が 必要となります。 神経学的徴候と症状 小児では稀な手根管症候群が認められたら、 MPS Ⅰまたは MPS Ⅱを疑う必要がありま す。 ムコ多糖症は、小児の手根管症候群の主要な原因とされています。17 手根管症候群はMPSⅠおよびMPSⅡにおける典型的な特徴ですが、痛みや顕著な知覚 障害を伴わない非定型の場合もあります。8, 18 最も一般的に行われる外科的治療法は手根管の神経圧迫、頚髄減圧術、重度の中耳炎に 対するグロメット挿入です。1, 19 多くの患者では最初の徴候として夜間の疼痛、しびれ、刺痛が現れますが、神経伝達速 度が重度に低下すると起こるのが一般的です。 軽症型のMPS症例では、脊髄圧迫や頚椎不安定がよく見られます。 歩行異常、知覚の変化、下肢の衰弱を伴う患者は、脊髄圧迫がないか神経科医の診察を 受ける必要があります。 グルコサミノグリカンが硬膜に浸潤して頚髄圧迫が起きた場合、神経外科的治療による 矯正を施さなければ痙性不全麻痺につながる可能性があります。4, 20 頭頚部が不安定であると頚部外傷の危険性 が高まるため、このような症例に麻酔を施 す場合には、特に注意が必要となります。 この進行性の脊髄圧迫は、早期に発見・治 療しないと不可逆的な障害へと至る可能性 があります。 脊髄圧迫、頚髄障害に至る j 神 神経 経系 系 13 筋骨格 診断検査と治療 診断 眼 MPSⅠまたはMPSⅡが疑われる場合、他の疾患 と鑑別するには、血液サンプルを用いた酵素活 性測定検査が最適です。また、この検査は MPS を確定または除外できる唯一の方法とされていま す。 MPSⅠまたはMPSⅡの最終的な診断は、該当す 耳 るライソゾーム酵素の活性が欠損していることを 実証する必要があります。 検査機関をお探しの場合、弊社までご連絡ください。 お近くの検査機関をご案内させていただきます。 <ご連絡先> ジェンザイム・ジャパン株式会社 くすり相談室 電話番号:0120-255-011 FAX 番号:03-6301-4045 〒 163-1488 東京都新宿区西新宿三丁目 20 番 2 号 ホームページ http://www.genzyme.co.jp/ 胃腸 治療の早期開始が不可欠 アウドラザイム ® またはエラプレースによる酵素補充療法によって、患者さんを衰弱させ 呼吸器 る症状を改善し自立性を維持または回復させ、患者さんとご家族の生活の質を改善に導く ことができるかもしれません。 患者さんに最良の治療を施すには、分野の枠を越えた専門家がチームとなって特定の全身 性の合併症に対する支持療法を行いながら、アウドラザイム ® またはエラプレースを投与 して疾患の根本的な原因に対処することが重要だと考えられています。 心血管系 神経系 14 MPS を疑おう 患者さんに以下の症状のいずれかが認められませんか? 関節拘縮/痙縮 ヘルニア 角膜混濁 手根管症候群 弁異常 b b MPS Ⅰおよび MPS Ⅱの概要 進行性で生命を脅かす 多器官性で症状が様々 他の疾患とよく似た症状 MPS を 確定診 断の対 象に 診断の遅れが多い 早期診断・早期治療が不可欠 MPSⅠはアウドラザイム®、MPSⅡはエラプレースに より治療可能 疑いのある場合、直ちに代謝専門医にご相談を お近くで検査機関をお探しの場合、弊社までご連絡ください。 MPSが患者さんにもたらす影響は深刻なものです。MPS ⅠおよびMPSⅡの徴候を認識す ることにより、症状に苦しむ患者さんを治療へ導くことができるかもしれません。 患者さんの命は早期診断にかかっています。 15 2012年11月作成 遺伝子組換えムコ多糖症Ⅰ型治療剤 薬価基準収載 点滴静注液 2.9mg ALDURAZYME ラロニダーゼ(遺伝子組換え)点滴静注用製剤 ® 日本標準商品分類番号 承 認 番 号 薬 価 収 載 販 売 開 始 * 国 際 誕 生 貯 法 使 用 期 限 規 制 区 分 873959 21800AMX10867000 2006年12月 2006年12月 2003年4月 凍結を避け、2∼8℃保存 包装に表示されている期限内に使用すること 生物由来製品・劇薬・処方せん医薬品注) 注)注意−医師等の処方せんにより使用すること 【警告】 アナフィラ 本剤の投与当日に本剤に関連する症状として発現するinfusion associated reactionのうち、 キシー反応があらわれる可能性があるので、本剤は、緊急時に十分な対応のできる準備をした上で投与を開 始し、 投与終了後も十分な観察を行うこと。また、重篤なinfusion associated reactionが発現した場合に は、 本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。 (「重大な副作用」、 「重要な基本的注意」の項参照) 【禁忌】 (次の患者には投与しないこと) 本剤の成分に対しアナフィラキシーショックの既往歴のある患者(「重要な基本的注意」の項参照) 【組成・性状】 1.組成(1 バイアル(5mL)中) 成 分 1 バイアル中の含量 ラロニダーゼ(遺伝子組換え)注 1) 2.9mg 注 2) 塩化ナトリウム 43.9mg リン酸二水素ナトリウム一水和物 63.5mg 添 加 物 リン酸一水素ナトリウム七水和物 10.7mg ポリソルベート 80 0.05mg 注 1)チャイニーズハムスター卵巣細胞により産生。本剤は製造工程でウシ胎児血清及びブタ膵臓由来トリプシンを使用している。 注 2)500 単位(U)に相当。ラロニダーゼ(遺伝子組換え)1U は合成基質 4- メチルウンベリフェリルイズロニドを1分間に 1µmol 加水分解する単位。 2.性状 性状 pH 浸透圧比 無色から微黄色の澄明又はわずかに乳白色の液 5.2 ~ 5.9 1.5 〜 1.8 有 効 成 分 【効能・効果】 ムコ多糖症Ⅰ型 ■効能・効果に関連する使用上の注意 (1)中枢神経系症状に対する有効性は認められていない。 【用法・用量】 通常、ラロニダーゼ(遺伝子組換え)として、1 回体重 1kg あたり 0.58mg を週 1 回、点滴静注する。 ■用法・用量に関連する使用上の注意 (1)希釈方法:患者の体重あたりで計算した必要量を採取し、体重 7kg 未満の患者には日局生理食塩液で希釈して 50mL とし、 体重 7kg 以上 20kg 以下の患者には 100mL とし、体重が 20 kg を超える患者の場合には 250mL とすること。 (2)投与速度:投与速度は初期値 10µg/kg/ 時から開始し、患者の忍容性を十分確認しながら最初の 1 時間で 15 分ごとに段階的 に上げ、200µg/kg/ 時以下で投与する。最大投与速度に達した後は、投与が完了するまでこの速度を維持し、2 ∼ 3 時間かけ て投与すること。 ( 「重要な基本的注意」の項及び「適用上の注意」参照) (3)本剤投与により infusion associated reaction(潮紅、発熱、頭痛、発疹等)が発現する可能性がある。これらの症状を軽減 させるために、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤またはその両方を本剤投与開始の 60 分前に前投与することが望ましい。 【使用上の注意】 1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること) (1)本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者(「重要な基本的注意」の項参照) (2)肝・腎機能に高度な障害のある患者[投与経験が少なく安全性が確立していない] 2.重要な基本的注意 (1) 本剤はたん白質製剤であり、アナフィラキシーショックが起こる可能性が否定できないため、観察を十分に行い、異常が認 められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、このような症状の発現に備え、緊急処置を取れる準備をし ておくこと。ムコ多糖症Ⅰ型患者では冠動脈疾患の罹患率が高いことから、エピネフリンの使用を検討している場合には注 意が必要である。 (2) 本 剤 投 与 に よ り infusion associated reaction( 潮 紅、 発 熱、 頭 痛、 発 疹 等 ) が 発 現 す る 可 能 性 が あ る。Infusion associated reaction が現れた場合には、投与速度を下げるか、一旦投与を中止し、適切な薬剤治療(副腎皮質ホルモン剤、 抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤又は抗炎症剤等)や緊急処置を行うこと。 (3)ほとんどの患者に IgG 抗体の産生が予測されるため、定期的にラロニダーゼ(遺伝子組換え)に対する IgG 抗体検査を行う ことが望ましい。 (4)本剤は、セルバンク構築時にメキシコ、米国又はカナダ産のウシ胎児血清を使用しているが、製造工程においてウシ血清の 除去処理を行っており、また、伝達性海綿状脳症(TSE)に関する理論的なリスク評価を行い、一定の安全性を確保する目 安に達していることを確認している。しかしながら、TSE の潜在的伝播の危険性を完全に排除することはできないことから、 疾病の治療上の必要性を十分に検討の上、本剤を投与すること。また、投与に先立ち患者への有用性と安全性の説明も考慮 すること。なお、本剤投与により TSE がヒトに伝播したとの報告はない。 3.副作用 外国における第 3 相プラセボ対照二重盲検比較臨床試験及び継続試験(182 週間)では、45 例中 30 例(67%)に副作用(臨床検 、関節痛 9 例(20%) 、頭痛 8 例(18%) 、潮紅 7 例(16%) 、 査値異常変動を含む)が認められた。主な副作用は、発疹 11 例(24%) 、悪心、腹痛、骨痛、関節障害各 5 例(11%)であった。 [承認申請時] 疼痛、発熱、注射部位反応各 6 例(13%) (1)重大な副作用 1)重篤な infusion associated reaction:重度のアナフィラキシー様反応(呼吸障害等)を投与中に起こすことがあるので、観 察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤の投与及 び気道確保等の適切な処置を行うこと。 ( 「警告」 、 「重要な基本的注意」の項参照) 16 (2)その他の副作用: 一般的全身 中枢・末梢神経系 皮膚 血管系 消化器系 筋骨格系 肝臓 心血管系 呼吸器系 心拍数・心リズム 血液 適用部位 精神系 代謝 その他 5%以上 疼痛、発熱、体温変動感 頭痛 発疹、そう痒症 潮紅 悪心、腹痛、嘔吐 関節障害、関節痛、骨痛 低血圧 5%未満 インフルエンザ様症候群、疲労、悪寒、浮腫、アナフィラキシー様反応、蒼白 浮動性めまい、反射亢進、歩行異常、錯感覚、片頭痛、異常感覚 皮膚障害、蕁麻疹、多汗、脱毛症、皮膚冷湿 静脈障害 下痢、消化不良、口内乾燥、歯肉増生、変色歯 筋力低下 ビリルビン血症、血清 AST(GOT)増加、血清 ALT(GPT)増加 心雑音 咳嗽、呼吸困難、呼吸障害、低酸素症 頻脈 紫斑、頚部リンパ節症 注射部位反応 激越、錯乱 体重増加、低カリウム血症、低マグネシウム血症 溢血 4.高齢者への投与 高齢者では生理機能が低下していることが多く、副作用の発現に特に注意し、慎重に投与する。高齢者に対する安全性は確立して いない(使用経験がない)。 5.妊婦、産婦、授乳婦への投与 (1)妊婦又は妊娠している可能性のある患者には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること(妊 娠中の投与に関する安全性は確立していない)。 (2)授乳中の患者には投与しないことが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること(授乳中の投与に関す る安全性は確立していない)。 6.小児等への投与 外国で実施した 20 例の 5 歳未満の患者に対する非盲検臨床試験における副作用は、発熱 7 例(35%)、悪寒 4 例(20%)、高血 圧 3 例(15%)、頻脈、酸素飽和度低下が各 2 例(10%)、捻髪音、呼吸窮迫、喘鳴、斑状皮疹、そう痒症、血中鉄減少、心拍数 増加、振戦、蒼白が各 1 例(5%)であった。 7.適用上の注意 (1)他剤との混注を行わないこと。 (2)各バイアルは一回限りの使用とすること。 (3)調製方法: (1)患者の体重に基づいて本剤の投与量を算出し、投与に必要なバイアル数を決定する。冷蔵庫より投与に必要なバイアル 数を取り出し、室温になるまで放置する(約 20 分間)。 (2)調製前に本剤の変色及びバイアル内に微粒子が含まれていないか各バイアルを目視検査すること。変色の見られるものま たは微粒子が混入しているものは使用しないこと。 (3)本剤は日局生理食塩液で希釈した後に患者へ投与するため、薬液総量に相当する日局生理食塩液を準備する。患者の体 重に基づいて投与する薬液総量を決定する。薬液総量は、体重 7kg 未満の患者には 50mL、体重 7kg 以上 20 kg 以 下の患者には 100mL とし、体重 20 kg を超える患者の場合には 250mL とする。 (4) (1)で算出した本剤の投与量の等量を(3)で決定した日局生理食塩液バックより抜き取り廃棄する。 (5)バイアルから必要量を抜き取り、日局生理食塩液バックにゆっくり添加し、静かに混和する。急激な振盪溶解は避けること。 (6)患者に投与する前に微粒子が混入してないか希釈液を目視検査する。肉眼で確認できる粒子のない無色澄明な液のみを 使用すること。 (4)投与速度:下表を参考に、約 3 ∼ 4 時間かけて投与すること。(「用法及び用量」の項参照) 体重 7kg 未満の患者 体重 7kg 以上 20kg 以下の患者 投与総量= 50mL 投与総量= 100mL 1mL/時(約10µg/kg/時)×15分 2mL/時(約10µg/kg/時)×15分 バイタルサインを測定 2mL/時(約20µg/kg/時)×15分 4mL/時(約20µg/kg/時)×15分 し、安定していれば次段 4mL/時(約50µg/kg/時)×15分 8mL/時(約50µg/kg/時)×15分 階の速度にまで上げる。 8mL/時(約100µg/kg/時)×15分 16mL/時(約100µg/kg/時)×15分 投与終了までこの速度で 16mL/時(約200µg/kg/時)×3時間 32mL/時(約200µg/kg/時)×3時間 投与する。 バイタルサインを測定 し、安定していれば次段 階の速度にまで上げる。 投与終了までこの速度で 投与する。 体重 20kg を超える患者 投与総量= 250mL 5mL/時(約10µg/kg/時)×15分 10mL/時(約20µg/kg/時)×15分 バイタルサインを測定し、安定していれば次段階の速度にまで上げる。 20mL/時(約50µg/kg/時)×15分 40mL/時(約100µg/kg/時)×15分 80mL/時(約200µg/kg/時)×3時間 投与終了までこの速度で投与する。 【取扱い上の注意】 凍結、振盪を避けること。希釈後は速やかに使用すること。希釈後直ちに使用できない場合は、希釈した本剤を 2 ∼ 8℃で保存し、 24 時間以内に使用すること。 【承認条件】 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積さ れるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把 握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な 措置を講じること。 【包装】 アウドラザイム点滴静注液 2.9mg:1 バイアル ** 2012 年 11 月改訂(第 5 版) * 2009 年 12 月改訂 ●その他の詳細につきましては、添付文書をご参照ください。 ●警告、禁忌を含む使用上の注意の改訂には十分ご留意ください。 【製造販売元】 ** アウドラザイム ® / ALDURAZYME® is the registered trademark of BioMarin / Genzyme LLC. 17 遺伝子組換えムコ多糖症Ⅱ型治療剤 薬価基準収載 ELAPRASE® 点滴静注液 6mg イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)点滴静注用製剤 日本標準商品分類番号 承 認 番 号 薬 価 収 載 販 売 開 始 貯 法 使 用 期 限 規 制 区 分 2012年11月作成 873959 21900AMX01739000 2007年10月 2007年10月 凍結を避け2∼8℃で保存、遮光保存 包装に表示されている期限内に使用すること 生物由来製品・劇薬・処方せん医薬品注) 注)注意−医師等の処方せんにより使用すること 【警告】 本剤の投与によりinfusion associated reactionのうち重篤なアナフィラキシー反応、 ショックが発現 (1) する可能性があるので、緊急時に十分な対応のできる準備をした上で投与を開始し、投与終了後も十分 な観察を行うこと。また、 重篤なinfusion associated reactionが発現した場合には、本剤の投与を中止 し、 適切な処置を行うこと。 (「重要な基本的注意」、 「重大な副作用」の項参照) 重症な呼吸不全又は急性呼吸器疾患のある患者に投与した場合、 infusion associated reactionに (2) よって症状の急性増悪が起こる可能性があるので、患者の状態を十分に観察し、必要に応じて適切な処 置を行うこと。 (「重要な基本的注意」、 「重大な副作用」の項参照) 【禁忌】 (次の患者には投与しないこと) 本剤の成分に対しアナフィラキシーショックの既往歴のある患者(「重要な基本的注意」の項参照) 【組成・性状】 1.組成(1 バイアル(3mL)中) 有 効 成 分 添 加 物 成 分 イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)注 1) 塩化ナトリウム リン酸二水素ナトリウム一水和物 リン酸一水素ナトリウム七水和物 ポリソルベート 20 1 バイアル中の含量 6.0 mg 24.0 mg 6.75 mg 2.97 mg 0.66 mg 注 1)ヒト培養細胞により産生。本剤は製造工程でウシ血清、ブタ膵臓由来のトリプシンを使用している。また、本剤の製造工程 の一部であるアフィニティーカラムクロマトグラフィー工程で、大腸菌により産生した遺伝子組換えたん白質を固相化した 樹脂を用いているが、この原材料の製造工程で、大腸菌の培養培地成分として、ウシ組織(脂肪細胞、骨髄、結合組織、心 臓及び骨格筋)由来成分を使用している。 2.性状 性状 pH 浸透圧比 無色澄明又はわずかに乳白色の液体 5.7 ∼ 6.3 約1 【効能・効果】 ムコ多糖症Ⅱ型 ■効能・効果に関連する使用上の注意 中枢神経系症状に対する有効性は認められていない。 【用法・用量】 通常、イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)として、1 回体重 1kg あたり 0.5mg を週 1 回点滴静脈内投与する。 ■用法・用量に関連する使用上の注意 ( 「適用上の注意」の項参照) (1)希釈方法:患者の体重あたりで計算した必要量を取り、日局生理食塩液 100mL で希釈する。 (2)投与速度:1 ∼ 3 時間かけて投与する。なお、本剤の投与開始初期の時点では、投与速度は、患者の忍容性を十分確認しなが ら段階的に上げ、投与することが望ましい。Infusion associated reaction が発現するおそれがあるため、一部の患者には ( 「重要な基本的注意」 、 「適用上の注意」 長時間かけて点滴静注する必要があるが、その場合は 8 時間を超えないようにする。 及び「取扱い上の注意」の項参照) 【使用上の注意】 1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること) 本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者(「重要な基本的注意」の項参照) 2.重要な基本的注意 (1)本剤はたん白質製剤であり、アナフィラキシーショックが起こる可能性が否定できないため、観察を十分に行い、異常が認 められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、このような症状の発現に備え、緊急処置を取れる準備をして おくこと。 (2)重度及び難治性のアナフィラキシー様反応が発現した患者は、初回発現 24 時間以降にも、アナフィラキシー様反応が発現す る可能性があるので、観察期間を延長し、適切な薬剤治療を行うこと。 (3)本剤投与により、infusion associated reaction(頭痛、発熱、発疹、そう痒症、紅斑、蕁麻疹、高血圧等)が発現することがある。 Infusion associated reaction が現れた場合、投与速度の減速又は投与の一時中止、適切な薬剤治療(副腎皮質ホルモン剤、 抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤又は抗炎症剤等) 、もしくは緊急処置を行うこと。また、次回投与以降は、本剤投与前に抗ヒス タミン剤や副腎皮質ホルモン剤の投与を考慮すること。 (4)重症な呼吸不全又は急性呼吸器疾患のある患者に投与した場合、infusion associated reaction によって症状の急性増悪が 起こる可能性があるので、患者の状態を十分に観察し、必要に応じて適切な処置を行うこと。また、急性発熱性呼吸器疾患の ある患者においては、投与日を遅らせることを考慮すること。 (5)IgG 抗体産生が予測されるため、定期的にイデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)に対する IgG 抗体検査を行うことが望ましい。 (6)本剤の製造工程の一部であるアフィニティーカラムクロマトグラフィー工程で、大腸菌により産生した遺伝子組換えたん白 質を固相化した樹脂を用いているが、この原材料の製造工程で大腸菌の培養培地成分として、米国産ウシ脂肪細胞、骨髄、結 合組織、心臓及び骨格筋由来成分を使用している。当該ウシ原材料は欧州の公的機関である欧州薬局方委員会(EDQM)の 評価に適合していることが証明されている。また、本剤の投与により伝達性海綿状脳症(TSE)が伝播したとの報告はない。 これらのことから、本剤による TSE 伝播のリスクは極めて低いものと考えられるが、理論的リスクを完全には否定し得ない ため、その旨を患者に説明することを考慮すること。 18 3.副作用 日本人 4 名を含む外国における第Ⅱ / Ⅲ相プラセボ対照二重盲検比較臨床試験(53 週間)において本剤を毎週投与した 32 例中 23 例(72%)に副作用(臨床検査値異常変動を含む)が認められた。主な副作用は、頭痛 9 例(28%) 、発熱、そう痒症各 7 例(22%) 、 、発疹、蕁麻疹各 5 例(16%)であった。 [承認申請時] 高血圧 6 例(19%) (1)重大な副作用 :アナフィラ 重度の infusion associated reaction(本剤投与中又は本剤投与開始 24 時間以内に発現する本剤投与と関連する反応) キシー様反応(呼吸窮迫、低酸素症、低血圧、血管浮腫、発作等)を起こすことがある。投与中あるいは投与終了後は、観察を十分 に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤の投与及び気道確保等 の適切な処置を行うこと。 ( 「警告」 、 「重要な基本的注意」の項参照) (2)その他の副作用 第Ⅱ / Ⅲ相臨床試験(毎週投与群)において報告された副作用 5%以上 5%未満 血液およびリンパ系 貧血、リンパ節炎、血小板減少症 精神系 不安 神経系 頭痛、浮動性めまい、振戦 意識レベルの低下、知覚過敏 眼 流涙増加 アレルギー性結膜炎、霧視 耳および迷路 回転性眩暈 心臓 不整脈、チアノーゼ、動悸 血管 高血圧、潮紅、低血圧 呼吸器、胸郭および縦隔 咳嗽、頻呼吸、喘鳴音 呼吸困難、鼻閉、気管支痙攣、咽頭炎、肺塞栓症、鼻漏 胃腸 腹痛、悪心、下痢、舌腫脹 上腹部痛、胃腸炎、軟便 発疹、そう痒症、蕁麻疹、そう痒性 斑状皮疹、湿疹、顔面浮腫 皮膚および皮下組織 皮疹、紅斑 筋骨格系および結合組織 関節痛、筋痛、筋痙攣、頚部痛、背部痛、骨痛 腎および尿路 遺尿、夜間頻尿 悪寒、倦怠感、冷感、局所の炎症、注射部位関節腫脹、疼痛、 全身障害および投与局所 発熱、末梢性浮腫 異物感 血中アルカリホスファターゼ増加、血中乳酸脱水素酵素増加、 臨床検査 血中ビリルビン増加、血中尿酸増加、ヘモグロビン減少、心拍 数減少、心拍数増加 4.高齢者への投与 高齢者では生理機能が低下しているので、副作用の発現に特に注意し、慎重に投与する。高齢者に対する安全性は確立していない (使用経験がない)。 * 5.妊婦、産婦、授乳婦への投与 (1)妊婦又は妊娠している可能性のある患者には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること(妊 娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(ラット)において胎児へ移行することが報告されている)。 (2)授乳中の患者には投与しないことが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること(授乳中の投与に関す る安全性は確立していない。動物実験(ラット)において乳汁中へ移行することが報告されている)。 6.小児等への投与 5 歳未満の小児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。 7.適用上の注意 (1)他剤との混注を行わないこと。 (2)各バイアルは一回限りの使用とすること。 (3)調製方法: 1)患者の体重に基づいて 0.5mg/kg の用量で本剤の投与量を算出し、投与に必要なバイアル数を決定する。 2)調製前に本剤の変色及びバイアル内に異物が含まれていないか各バイアルを目視検査すること。本剤は無色澄明、 又はわずかに乳白色の溶液である。変色の見られるものまたは異物が混入しているものは使用しないこと。本剤 の急激な振盪は避けること。 3)1)で算出した必要数量のバイアルから、本剤の投与量を取る。 4)本剤の全投与量を日局生理食塩液 100mL で希釈する。日局生理食塩液の輸液バッグに本剤を添加し、静かに 混和する。急激な振盪は避けること。 5)必要量を抜き取った後のバイアル内の残液は、施設の手順に従って廃棄すること。 (4)投与速度:下表を参考に、約 1 ∼ 3 時間かけて投与すること。(「用法・用量」の項参照) 3 時間投与の例 投与速度 投与時間 備 考 8mL/ 時 15 分間 16mL/ 時 15 分間 バイタルサインを測定し、安定していれば次の段階の速度まで上 げる。 24mL/ 時 15 分間 32mL/ 時 15 分間 40mL/ 時 2 時間 投与終了までこの速度で投与する。 8.その他の注意 ムコ多糖症Ⅱ型は X 連鎖劣性遺伝疾患であるが、稀に女性患者の報告がある。臨床試験に女性患者の参加はなく、女性における 本剤の安全性は確立していない。 【取扱い上の注意】 凍結、振盪を避けること。本剤は保存剤を使用していないので、希釈液は速やかに使用すること。遅くとも希釈後 8 時間以内に 投与を完了することとし、やむをえず保管する場合には 2 ∼ 8℃で 24 時間以内とすること。 【承認条件】 日本人での投与経験が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積 されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を 把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要 な措置を講じること。 【包装】 エラプレース点滴静注液 6mg:1 バイアル ** 2012 年 11 月改訂(第 4 版) * 2009 年 12 月改訂 ●その他の詳細につきましては、添付文書をご参照ください。 ●警告、禁忌を含む使用上の注意の改訂には十分ご留意ください。 【製造販売元】 ** 【製造元】 Shire Human Genetic Therapies, Inc. 米国 Elaprase Ⓡ is a trademark of Shire Human Genetic Therapies, Inc. 19 筋骨格 参考文献 眼 1. 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