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栽培資源チーム [PDFファイル/11.8MB]

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栽培資源チーム [PDFファイル/11.8MB]
平 成 23 年 度
5
カワハギ種苗量産技術開発
中里礼大・景平真明・金澤 健・井本有治
気は 7kL 円形キャンバス水槽では中央にエアースト
事業の目的
ーンを 1 個と周囲に樋を 1 基設置し、50kL 八角形
カワハギの人工種苗の安定量産技術を確立する。
コンクリート水槽では 8 辺底部それぞれに長さ約
1m のユニホースと中央付近にエアーストーンを設
置して、仔魚の沈下を防ぎながら飼育水全体が対流
するようにした。底質改善を目的に貝化石 10g/kL
事業の方法
を日没後に飼育水へ添加した。また、淡水クロレラ
(生クロレラ V12:クロレラ工業株式会社)を毎日、
1.採卵
採卵に使用した親魚は 2007 年、2009 年に養殖業
飼育水 1kL あたり 10 ~ 20mL ずつを水道水で希釈
者から購入した天然由来の養殖魚の他、2007 ~ 2009
し飼育水槽へ定量ポンプを使って添加した。水温は
年産人口種苗を水産研究部地先の海面小割生け簀(5
自然水温から徐々に 24 ℃まで加温した。飼育水の
× 5 × 5m)で養成したものを用いた。餌料は MP
DO は 5 ~ 7mg/L を維持するように酸素を供給し
を週 5 日飽食給餌した。
た。日令 30 頃からは毎日サイホン方式により底掃
採卵は水槽に網を敷き込みその中へ親魚を高密度
除を行った。
に収容する水槽内での高密度自然産卵方式をとっ
餌料は、開口前日から日令 30 頃までは S 型ワム
た。ふ化仔魚が確認されたら網ごと親魚を取り出し
シ(タイ株)および S 型ワムシ(大分県漁業公社株)
種苗生産を開始した。収容した親魚の産卵を同調さ
を飼育水槽内で 10 ~ 20 個体/mL になるよう給餌し
せるために、収容する際 HCG(ゴナトロピン:(株)
た。日齢 14 頃からアルテミア幼生を、日齢 17 頃か
あすか製薬)を 100 または 500IU/kg 打注した。親
ら配合飼料を順次重複させながら給餌した。ワムシ
魚を収容した水槽の飼育水はろ過海水を流水にして
は淡水クロレラ(HG 生クロレラ V12:クロレラ工
自然水温(20.0 ℃前後)で行った。採卵のための親
業株式会社)で培養した。アルテミア幼生は強化剤
魚の水槽収容は 5 月 24 日から 6 月 17 日までの間で
(スーパーカプセル A-1:クロレラ工業株式会社)
計 5 回行った(表 1)。
で栄養強化した。
表1
回次
収容日
1
2
3
4
5
5月24日
6月3日
6月5日
6月7日
6月17日
親魚尾数
雄
雌
25
25
19
17
11
11
8
8
20
20
3.採卵時の網取り出し時期の検討
採卵方法
親魚由来
天然
人工
人工
人工
人工
飼育水槽 ホルモン打注量
(kl)
(IU)
50
100
50
500
7
500
7
500
50
500
先述のとおり、採卵方法として水槽内に網を敷き
込みその中に親魚を収容してふ化仔魚が確認された
日に網ごと親魚を取り出す方法を行っている。
しかし、カワハギは粘性沈着卵を産出するため網
に卵が付着する可能性が示唆された。これまでふ化
仔魚がみられたらすぐに網を取り上げていた。そこ
で網の取り出し時期の検討をするために、0.5kL お
2.種苗生産
採卵で得られたふ化仔魚を用い、7kL 円形キャン
よび 1kL パンライト水槽を用いて網に付着する卵
の割合を調べた。
バス水槽 2 面、50kL 八角形コンクリート水槽 3 面
7 月 8 日に 1kL パンライト水槽 2 基にそれぞれ網
で種苗生産を行った。自然採卵によりふ化仔魚が現
(3 × 3 × 3m)を敷き込み親魚を 6 尾(雄 2 尾、
れたら親魚を全て取りだし、採卵水槽で種苗生産を
雌 4 尾)ずつ収容した。収容の際 HCG 打注は行っ
行った。飼育水については、7kL 円形キャンバス水
ていない。2 日後の 7 月 10 日に親魚のみを取り出
槽はろ過海水、50kL 八角形コンクリート水槽は紫
し網は 0.5kL パンライト水槽 2 基にそれぞれ移し、
外線殺菌海水を使用した。換水は日齢 15 頃までは
ふ化仔魚が初めて出現した 7 月 13 日に 1kL パンラ
止水、それ以降は 1 日 5%から徐々に増加した。通
イト水槽および 0.5kL パンライト水槽それぞれのふ
大分水研事業報告
6
化仔魚尾数の比較を行った。サンプリング方法とし
2.種苗生産
ては 3 点柱状サンプリングとし、中央エアレーショ
ふ化仔魚 997,321 尾を用いて種苗生産を行った。
ンを 1 時間行い仔魚の一カ所への蝟集がないことを
取り上げ尾数は、合計 83,785 尾で、平均生残率は
確認後サンプリングを行った。また、2 水槽を用い
8.4%、平均全長は 28.3 ~ 32.8mm であった(表 3)。
て 2 回試験を行ったので便宜上それぞれを R1、R2
形態異常は特に見られなかった。
とする。
表2
4.初期および中期減耗期対策の検討
カワハギの種苗生産で大きく減耗するポイントは
大きく 2 点ある。1 点目は生まれてから接餌不良個
体が多いことである。接餌できなければ数日後に死
んでしまう。昨年度日令 0 から 10 での 50kL 水槽 2
面での平均生残率をみると 18%と低い。カワハギ
採卵結果
回次
収容日
ふ化確認日
1
2
3
4
5
合計
5月24日
6月3日
6月5日
6月7日
6月17日
5月29日
6月8日
6月9日
6月12日
6月22日
飼育水槽 ふ化仔魚尾数
(kl)
(尾)
50
156,000
50
338,385
7
120,129
7
255,758
50
127,049
997,321
はふ化したてでは全長が 2mm と小さく遊泳能力も
低い。そのため①初期餌料としてこれまで S 型ワ
3.採卵時の網取り出し時期の検討
ムシ(大分県漁業公社株)を給餌していたが、S 型
結果を表 4 に示した。網への卵付着割合は 1.2 ~
ワムシ(タイ株)の給餌、②餌密度を 10 個体/ml
8.8%となった。網があることで仔魚の遊泳障害、
から 20 個体/ml への倍増、③エアレーション量を
体表のスレ等の原因になる恐れがあるため、今回の
最小限にする方法を 50kL 水槽で併用して行った。
試験により、仔魚が現れたら迅速に網を取り出すこ
今年度 50kL 水槽 3 面を使用して本試験を行った。
とが必要であることがわかった。
カワハギは日令 25 を過ぎる頃からお互いを突き
あう”共食い”で大きく減耗する。多いときには一
表4
日に数千尾も死ぬこともあり種苗生産技術を確立す
るためには無視できない。昨年度日令 10 から 50 で
の 50kL 水槽での平均生残率をみると 21%と低かっ
R1
R2
網への卵付着数結果
1kl水槽
10,789
8,667
0.5kl水槽
125
761
網への卵付着割合
1.2%
8.8%
た。そこで、低照度処理と言われる水槽上面を寒冷
紗で覆う方法を行った。この方法は一部の業者が同
4.初期および中期減耗期対策の検討
じフグ目の種苗生産で行っている方法である。使用
初期減耗期対策の結果について表 5 に示した。昨
した水槽は 50kL 大型水槽で昨年度との日令 10 か
年度は初期生残率が 18%であったのに対し、今年
ら取り上げ日令 50 までの生残率の比較を行った。
度のそれは 79%と飛躍的に生残率の向上が図れた。
中期減耗期対策の結果について表 6 に示した。昨
年度は中期生残率が 22%であったのに対し、今年
事業の結果
度のそれは 42%と生残率の向上が図れた。
しかし、上記 2 点の対策は同ロットでの比較では
ないため、来年度は同ロットでの比較検証を行う必
1.採卵
要がある。
採卵結果を表 2 に示した。
今年度は計 5 回の採卵を行い、すべてのラウンド
表5
で多量のふ化仔魚の獲得に成功した。
昨年度と比較してホルモン打注量を低減させたが
(1,000IU/kg → 100 または 500IU/kg)問題なく多量
のふ化仔魚の獲得に成功した。
表3
回次
1
2
3
4
5
合計
出荷時の
収容日 ふ化確認日
日令
5月24日 5月29日
53
6月3日
6月8日
49
6月5日
6月9日
53
6月7日
6月12日
56
6月17日 6月22日
50
H22(50kl水槽2面)
H23(50kl水槽3面)
初期減耗対策の結果
平均ふ化仔魚尾数 平均 10日令尾数 初期生残率
155,381
27,524
18%
232,717
184,949
79%
種苗生産結果
飼育水量 ふ化仔魚尾数 沖出し尾数
kl当たりの
(kl)
(尾)
(尾)
生産尾数(尾)
54
156,000
27,852
516
53
338,385
23,272
439
6.4
120,129
7,512
1,174
7.1
255,758
2,387
336
50
127,049
22,762
455
997,321
83,785
生残率(%)
17.9%
6.9%
6.3%
0.9%
17.9%
8.4%
沖出しサイズ
親魚由来
(mm)
29.6±4.1
天然
28.3±6.6
人工
32.4±8.7
人工
32.8±7.5
人工
30.4±5.9
人工
平 成 23 年 度
表6
H22(50kl水槽2面)
H23(50kl水槽1面)
中期減耗期対策
平均10令尾数
27,524
66,521
平均50令尾数 中期生残率
6,023
22%
27,852
42%
7
今後の課題
カワハギの大きな課題であったふ化仔魚の大量確
保については概ね解決した。今後はさらなる生残率
向上の技術を構築する必要がある。
大分水研事業報告
8
ヒラメの高温耐性品種の作出-1
供試魚の生産
(国庫委託)
景平真明・金澤 健・中里礼大・井本有治
国庫委託事業の構成
特性を持つヒラメ養殖家系の開発・確保が期待され
ている。そこで、遺伝的多様性が豊富な素材として、
〇平成 23 年度地球温暖化対策推進費
Ⅰ.地球温暖化による沿岸漁場環境への影響評価・
種苗生産施設で飼育されている多数の天然ヒラメ親
魚を対象に、遺伝的形質としての高温耐性
適応技術開発事業
を評価する方法の検討、ならびにそれらの特性を持
1.温暖化育種適応事業
つ家系を探索することを目的として、養殖生産の安
1)ニジマスチーム
定化に貢献することを目指す。
2)アマノリチーム
3)ヒラメチーム
事業の方法
①ヒラメ高温耐性家系の探索と形質評
価法の開発並びに確保
(増養殖研究所)
②高温耐性を持つ天然ヒラメの探索
1. 種苗生産工程
若狭湾で漁獲され(独)水産総合研究センター日本
(日本海区水産研究所・増養殖研究所・
海区水産研究所宮津庁舎で親魚として養成されたヒ
大分県農林水産研究指導センター)
ラメのうち、雌 9 尾と雄 11 尾を種苗生産に使用し
③貧酸素耐性ヒラメの評価法と探索
た。2011 年 3 月 9、10 日に宮津庁舎で人工授精に
(神奈川県水産技術センター)
より、個体毎に等量の卵と精子を交配させ、得られ
④ヒラメの高温耐性関連形質の評価と
た受精卵を同年 3 月 10、11 日に宅配便により当研
DNA マーカー等の探索
究部に搬送した。
(東京海洋大学)
1)無給餌生残指数(SAI)
種苗生産に用いる仔魚の活力の目安を得るため、3
本報告では大分県が担当した②「高温耐性を持つ
天然ヒラメの探索」について述べる。
月 13 日(1 日齢)に 50kL 種苗生産水槽から 3L カッ
プで掬い出した孵化仔魚を、チップの先端をカット
なお、国庫委託事業は平成 21 - 25 年度までの 5
して口径を広げた 1,000µL ピペットマンを用いて、
ヵ年事業として計画され、実施者は毎年入札によっ
48 穴マイクロプレートに 1 尾ずつ収容した。18.5
て決定される。当県は当年度(2011 年)からの参加
℃に保ったインキュベーター中で、生残魚がいなく
となる。
なるまで毎日生残尾数を確認した。無給餌生残指数
(SAI)は下式により算出した。
事業の目的
地球的規模での温暖化に伴い海水温の上昇が顕著
になると予測されており、養殖業において重要な位
置を占めているヒラメ養殖業でも、疾病の増加や代
謝異常による死亡など、生産性の低下が懸念されて
1
k
SAI = ― × Σ (N-hi)×i
N
i=1
N:最初の仔魚数
hi:i日目の斃死仔魚の累積尾数
k:生残尾数が0となった日
2)種苗生産
受精卵は 50kL 八角水槽に収容し種苗生産した。
いる。このような状況のなか、今後の対応策として、
50kL 種苗生産水槽は正八角形の壁面構造の水槽で、
温暖化による海水温の上昇に対して耐性を持つ、す
壁面の底辺に設置した散気管(底辺の半分の長さ)か
なわち、高い飼育水温でも成長や生残に優れた生物
らの通気により飼育水を回転させ、そのままでは水
平 成 23
年 度
9
面中央部に強い下降流が生じるため、中央部には 1
基(5t-1、5 号)で引き続き飼育した。また 10t-1、2
個エアストーンを配置して下降流を散らせた。
号で生じた劣位個体は適時タモで掬い出し 5kL 円
種苗生産方法は、省力、省コスト、種苗の高活力
形水槽(5t-9 号)に収容した。各水槽でみられた形態
と優れた面が多い、いわゆる「ほっとけ飼育」を採用
異常個体(有眼側白化、右ヒラメ、短躯等)は適時目
した。「ほっとけ飼育」は止水の種苗生産水槽内に生
視除去し、毎日死亡魚の数と重量を計測した。いず
クロレラを添加してワムシを増殖させる方法で、飼
れの水槽も満水にはせず、水位は半分以下とし、水
育水槽内の細菌叢が安定するため、飼育トラブルが
槽壁面に沿って注水を高圧力で噴出させ(塩ビパイ
少ないと言われている。
プ配管の吐出口を潰して狭めた)、常に流水状態を
種苗生産水槽内のワムシの増殖を安定化するた
保った。
め、飼育水は 80%海水とし、低水温でも増殖率の
配合飼料は中部飼料社製のえづけーる(L ~ LL)
高い L 型ワムシ小浜株を(独)水産総合研究センタ
と日本配合飼料社製の海産仔稚魚用アンブローズ
ー日本海区水産研究所能登島庁舎から譲り受け導入
400 を使用し、日間給餌率を 4%とし(飼料効率を
した。飼育水温は無換水の間は 18.5 ℃に設定し、
100%と仮定)、10kL 水槽は自動給餌機+手撒き給
換水開始後に設定水温を徐々に下げた。最終的には
餌とし、5kL 水槽は手撒き給餌のみとした。配合飼
15.5 ℃まで下げ、100%換水後は無加温とした。
料の粒径は、成長差を抑制するため、常に至適サイ
止水飼育中に摂餌量が水槽内のワムシの増殖量を
上回るようになってからは、適時栄養強化した L
ズよりも小径のものを選択した。
2)目合い選別2回目
型および SS 型ワムシ(大分県漁業公社株)を添加し
6 月 10 日(91 日齢)に 10t-1、2 号水槽の稚魚を全
た。ワムシの培養及び栄養強化はクロレラ工業社製
て取り上げ、対角線 17mm の角目トリカルネット
の生クロレラ V12 ハイグレード(以下、生クロレラ
籠で大小選別をおこない、大群を 10t-1、3 号に小
HG という)で行った。
群を 10t-2 号に収容した。
その後、ワムシ添加を継続しつつ、アルテミア添
中間育成時(5/17 ~ 6/10)の飼育結果から、10kL
加を始め、更に配合飼料(えづけーる:中部飼料社
水槽の飼料効率を 140%として給餌量を算出した。
製/アンブローズ:日本配合飼料社製)も並行して給
10t-1、3 号水槽は日間給餌率を 3%とし、10t-2 号水
餌した。アルテミアはクロレラ工業社製の A1 パウ
槽は当初日間給餌率を 4%としたが、残餌がみられ
ダーで栄養強化した。配合飼料の給餌量は(社)日本
るようになったため 6 月 30 日(111 日齢)からは 3%
栽培漁業協会発行の栽培漁業技術シリーズ「ヒラメ
に変更した。5kL 水槽分は飼料効率を 160%、日間
の種苗生産マニュアル」 8.配合飼料の投餌基準(P46
給餌率を 4%とした。
~ 52)を参照し、平均全長と飼育尾数を元に算出し
た。
3)目合い選別3回目
7 月 7 日(118 日齢)には 10t-1、2、3 号水槽の稚
稚魚が着底する前(27 ~ 28 日齢)に、集魚灯を用
魚を全て取り上げ、対角線長 26mm の角目トリカ
いて隣接する 50kL 水槽にサイホン移動させた。移
ルネット籠、と長径 22mm の 6 角目ネトロンネッ
動直後に柱状採集によって、移動稚魚数の概略を把
ト籠を用いて大中小選別をおこない、大群を 10t-1、3
握し、その後は毎日、底掃除時に排出される斃死魚
号に中群を 10t-2 号に収容し、小群を 5t-9 号に移槽
数を計数した。56 日齢からは着底できずに水面付
した。
近を遊泳している劣位個体を適時掬い取り、5kL 円
目合い選別 2 回目以降の飼育結果から、10kL 水
形水槽(5t-1、5 号)に移した。生産水槽内で 0.1%程
槽は飼料効率を 170%として給餌量を算定した。日
度で推移していた死亡率が、0.7%を越えるように
間給餌率は 10t-1、2 号水槽を 2%とし、10t-2 号水
なったため 67 日齢で全個体取上げ、篩によりサイ
槽はを 3%とした。5kL 水槽分は飼料効率を 190%、
ズ選別をして 10kL、5kL 円形水槽に収容した。全
日間給餌率を 2%とした。
工程紫外線殺菌水のみを注水として使用した。
4)現地養殖試験供試魚取上
7 月 12 日に 10t-3 号を、13 日に 10t-1 号を現地養
2. 中間育成工程
1)目合い選別1回目
5 月 17 日(67 日齢)に種苗生産した全個体を 50kL
水槽から取り上げ、長径 9.5mm のネトロンネット
籠で篩い大小選別をした。大群は 10kL 円形水槽 2
基(10t-1 号、 2 号)に、小群は 5kL 円形水槽 2 基
(5t-2 、 6 号)に収容した。また、種苗生産中にタモ
及び柄杓で掬い出した劣位個体は 5kL 円形水槽 2
殖試験用として、佐伯市蒲江西の浦の陸上ヒラメ養
殖生産者の水槽に持ち込んだ。
大分水研事業報告
10
事業の結果
生残数
450,000
(尾)
全長
25
(㎜)
400,000
1.種苗生産工程
1)無給餌生産指数(SAI)
3 月 13 日(1 日齢)にマイクロプレートに収容した
15
250,000
200,000
150,000
が 22 尾と集中的に発生したが、これらは採集時の
100,000
その後は、3 月 17 日(5 日齢)に 1 尾死亡した以降数
移槽
300,000
48 尾のうち、3 月 14 、 15 日(2 、 3 日齢)に死亡個体
ダメージによるものと判断し、計算から除外した。
20
350,000
10
5
50,000
0
0
0
10
30
40
50
60
70
日 齢
日間は変化が無かったが、3 月 21 日(9 日齢)に 7 尾
死亡し、翌 22 日(10 日齢)に 17 尾が、翌 23 日(11 日
20
図1
種苗生産期間中の成長及び生残数
齢)に最後の 1 尾が死亡した。
計算の結果、本種苗生産群の SAI は 41.6 であっ
ラ V12(以下生クロレラ SV という:クロレラ工業
た。ただし、今回の SAI は 1 日齢で収容し、収容
社製)を 500ml/日、水槽内に添加し、「ほっとけ飼
直後の斃死魚を計算から除外したため、実態よりも
育」を開始した。4 日齢(TL3.5 ± 0.2mm)には摂餌個
高く評価された可能性がある。
体がみられ始め、5 日齢(TL3.6 ± 0.3mm)は多くの
2)種苗生産
個体が摂餌し、6 日齢(TL4.0 ± 0.2mm)では採集全
宅配された受精卵を 3 月 10 日と 11 日に 50kL 水
個体が摂餌し捕食ワムシ数も 16.0 ± 6.2 個/尾と飛
槽に収容した。
躍的に伸びた。
3 月 10 日に宅急便で 5 箱に分けて到着した受精
飼育水中のワムシの密度は概ね 10 個/ml 前後で
卵の水温は 9.9 ~ 10.2 ℃であった。一旦、0.2kL 卵
推移し、8 日齢(TL5.2 ± 0.4mm)時に 15.0 個/ml と
管理水槽(無加温)に全卵収容し、柱状サンプリング
最高値となったが、その後は急速に低下し、12 日
(密度法)で卵を計数した。発生が正常に進んでいる
齢(TL6.4 ± 0.4mm)時には 2.0 個/ml となったため
正常卵は 78.8 万粒で、異常卵は 4.2 万粒であった。
以後毎日 SS 型ワムシを中心に添加した。飼育水槽
計数後、全卵 50kL 種苗生産水槽(設定水温 14 ℃)
中のワムシ不足から 13 日齢(TL6.7 ± 0.7mm)の朝
に移槽した。
には一時的に仔魚の消化管内(捕食)ワムシ数が 0 個
3 月 11 日には 14:40 に昨日同様 5 箱分の受精卵が
/尾となったが、ワムシ添加後は 62 ± 14.3 個/尾と
届き、直ちに 0.2kL 卵管理水槽に収容した。計卵準
速やかに回復した。15 日齢(TL7.7 ± 1.1mm)には捕
備をしているときに、昨日卵を収容した 50kL 水槽
食ワムシ数が 100 を越えるようになったため、アル
の底面散気管の前に大量の卵が沈んでいるのに気付
テミアの添加を開始した。添加量は 5 個/尾を開始
き、回収し検卵したところ、一部死卵を含むものの
時の目安とし、以後徐々に増やした。ワムシの添加
正常発生卵が多数を占めていた。水中の卵を目視し
は 34 日齢(TL14.3 ± 0.6mm)まで継続し、アルテミ
たところ明らかに疎であったため、全体的にエア量
アの添加は 55 日齢(TL20mm 前後)まで継続した。
を強めた。飼育水の比重が軽いため沈殿したものと
24 日齢(TL11.6 ± 0.8mm)には眼が左右対称位置
思われる。引き続き 0.2kL 卵管理水槽の計卵をしよ
からずれ始めた個体が 7 割程度みられ、着底前に配
うとしていたところ、東日本大震災の大津波警報に
合飼料に餌付けさせなくてはならないため、配合飼
よる避難指示がでたため、計数せずにそのまま 50kL
料の給餌を開始した。同日午前中に中部飼料社製の
水槽に流し込み、加温設定を 14 ℃→ 18.5 ℃に変更
えづけーる S(粒径 0.25 ~ 0.45mm)を手撒きで散布
して退去した。
したところ、7 割以上の個体が摂餌した。以後、27
翌 3 月 12 日は依然避難勧告中であったため水槽
日齢(TL12.1 ± 0.5mm)に集魚灯を用いたサイホン
を覗き込んだだけであったが、一部孵化仔魚が確認
移槽を開始するまで、過剰と思われる量の配合飼料
できた。警報が解除された 3 月 13 日には孵化が完
を散布した。
了したと判断し、3 点の柱状採集により総孵化仔魚
換水は 18 日齢(TL8.7 ± 0.9mm)から開始し、換
数を 42 万 4 千尾と推定した。同日に、水中に漂う
水直前の pH は 7.18 であった。換水初日の 15%/日
卵殻や死卵等を沈殿被覆させるため、貝化石を 3kg
から徐々に換水率を上げ、移槽当日の 27 日齢時に
散布した。10 日齢までほぼ毎日柱状採集を実施し、
は 100%とした。移槽は元水槽の排水弁を止め、全
概ね 30 万尾前後で推移した(図 1)。
てサイホンによる移動先水槽への送水とした。サイ
3 月 13 日(2 日齢)に L 型ワムシを 10 個/ml とな
ホンホースの吸水口を水面近くに配置し、その直上
るように種苗生産水槽に添加し、スーパー生クロレ
にて集魚灯として 100W 白熱電灯を設置した。1 晩
で大半の稚魚を移槽できたため翌日には撤去した。
平 成 23
年 度
11
飼料効率を 100%と想定し、日間給餌率を 4%と
換水率
300
(%)
した。10kL 水槽は早朝 1 回(1/3 量)を自動給餌機で、
ワムシ
250
残り(2/3 量)を 9 時、 13 時、 16 時に手撒きで給餌し、
アルテミア
200
5kL 水槽は 9 時、 13 時、 16 時に所定量を手撒き給餌
移槽
150
した。配合飼料は、10kL 水槽では当初えづけーる L
100
を、6 月 3 日(84 日齢)からはえづけーる LL(粒径
えづけーるS
えづけーるM/アンブローズ400
えづけーるL
50
1.30 ~ 2.00mm)を給餌した。5kL 水槽では当初アン
0
0
10
20
30
40
50
60
70
日 齢
図2 種苗生産期間中の換水率の推移と餌料系列
ブローズ 400 を、5 月 27 日(77 日齢)からはえづけ
ーるLを給餌した。
10kL 水槽 2 基(10t-1、2 号)では収容した 41,738
尾のうち、育成中(5/17 ~ 6/10)に 7,998 尾が死亡、
移動稚魚数は 14.5 万尾、未移槽の残稚魚数は 3.3 万
形態異常魚 380 尾を除去し、劣位個体 4,711 尾を
尾であった。
5t-9 号に移動させた。5kL 水槽 4 基(5t-1、2、5、6
移送後は換水率を 100%に維持し、44 日齢(TL16.5
号)では合計 16,874 尾を収容し、育成中(5/17 ~
± 0.8mm)時に 150%に上げ、取上直前の 67 日齢時
6/10)に死亡魚と形態異常魚合わせて 4,784 尾分減
に 250%まで上げた(図 2)。
少した。10kL 水槽の劣位個体を移動させた 5t-9 号
中 部 飼 料 社 製 の え づ け ー る S( 粒 径 0.25 ~
は、合計 4,711 尾を収容し、404 尾が死亡減耗した。
0.45mm)を 24 日齢から 42 日齢の間、えづけーる M
中間育成開始時(67 日齢)に 58,612 尾であった稚
(粒径 0.45 ~ 0.75mm)を 38 日齢から 42 日齢の間、
魚は、6 月 10 日(91 日齢)には 45,450 尾となった。
えづけーる L(粒径 0.75 ~ 1.20mm)を 56 日齢から
同日、10kL 水槽 2 基分を全量取り上げ、篩選別を
65 日齢の間給餌した。また、日本配合飼料社製の
実施した(図 3)。
海 産 仔 稚 魚 用 ア ン ブ ロ ー ズ 200( 粒 径 0.23 ~
0.42mm)を 43 日齢から 46 日齢の間、アンブローズ
400(粒径 0.42 ~ 0.65mm)を 43 日齢から 65 日齢の
間給餌した。
35 日齢(TL13.6 ± 0.6mm)時に 50kL 水槽壁面の
観察窓から着底個体が観察された。ただ、多くの個
体の右眼はまだ有眼側に移動しておらず、44 日齢
(TL16.5 ± 0.8mm)あたりから、概ね有眼側に右眼
60,000
(尾)
目合い選別
3回目
目合い選別
2回目
50,000
5kl水槽
40,000
30,000
20,000
10kl水槽
10,000
がみられるようになった。途中斃死個体が目立つよ
うになり、41 日齢(TL15.4 ± 0.9mm)で日間死亡率
0
5/17
5/22
5/27
6/1
6/6
6/11
6/16
6/21
6/26
7/1
7/6
7/11
が 4.5%に達し、検鏡により多数の滑走細菌が確認
図3 中間育成時の各水槽の収容尾数の推移
されたので、ニフルスチレン酸ナトリウムによる薬
*淡色は10kl水槽群を、濃色は5kl水槽群を示す。
*水槽毎に境界線によって区分し、下段から水槽番号の若
い順に並べている。
浴を、翌日から 3 日間実施した。実施後は日間死亡
率が 0.5%となり、49 ~ 59 日齢までは 0.1%程度で
推移した。
60 日齢以降は徐々に死亡率が増加し、0.7%に至
るようになったため、これ以上の無選別飼育は困難
と判断し、5 月 17 日に全量取り上げて大小選別を
して 10kL 円形水槽と 5kL 円形水槽に収容した。
2. 中間育成工程
1)目合い選別1回目
5 月 17 日(67 日齢)に、長径 9.5mm のネトロンネ
ット籠を用い、大群(平均体重 0.33g)41,738 尾を
10kL 円形水槽 2 基に、小群(平均体重 0.23g)9,374
尾を 5kL 円形水槽 2 基に収容した。種苗生産中に、
50kL 水槽から劣位個体を適時ピックアップして収
容した 5kL 円形水槽 2 基(5.000 尾、2500 尾)とを合
わせて、合計 58,612 尾で中間育成を開始した。
2)目合い選別2回目
6 月 10 日(91 日齢)に 10kL 水槽飼育分を全量取
り上げ、対角線長 17mm のトリカルネット籠を用
い て、大小選 別を行った 。大群 (平均体重 2.32g)
14,015 尾を 10t-1、3 号水槽に、小群(平均体重 1.05g)
11,914 尾を 10t-2 号水槽に収容した。得られた結果
から、5 月 17 日から 6 月 10 日の間の飼料効率が
142%であったことがわかった。
給餌率は「事業の方法」に記したとおり。
10kL 水 槽 で は 、 え づ け ー る LL( 粒 径 1.30 ~
2.00mm)を 6 月 11 日(92 日齢)から 21 日(102 日齢)
の 間 、 林 兼 産 業 社 製 の ジ ュ ニ ア A( 粒 径 1.1 ~
1.3mm)を 6 月 20 日(101 日齢)から 27 日(108 日齢)
の間、ジュニア B(粒径 1.5 ~ 1.7mm)を自動給餌分
大分水研事業報告
12
(早朝に日量の 1/3 給餌)として 6 月 28 日(109 日齢)
4)現地養殖試験供試魚取上
から 30 日(111 日齢)の間、手撒き分(日給餌量の
現地養殖試験は当県ヒラメ養殖の主産地である大
2/3)として 6 月 28 日から 7 月 5 日(116 日齢)の間、
分県漁協下入津支店組合員の A 水産に依頼した。A
えづけーるフロート 1 号(粒径 1.8mm)を自動給餌
水産は下入津支店のヒラメ陸上養殖生産施設群のち
分として 7 月 1 日(112 日齢)から7月 5 日(116 日
ょうど中央部に位置する。7 月 10 日前後に A 水産
齢)の間、給餌した。
から「試験水槽の準備ができたので、早急に持ち込
5kL 水槽では水槽毎に、体サイズに応じて、えづ
むよう」指示があったため、供試魚の選定を急いだ。
けーる L、えづけーる LL、ジュニア B の順に給餌
当初計画では、生産した全種苗のうち最頻値付近の
飼料を転換した。
サイズのものを供試魚とするつもりであったが(人
10kL 水槽(10t-1、2、3 号)では 6 月 10 日(91 日齢)
為的な選抜の影響を最小限とするため)、全個体を
に収容した 25,879 尾のうち、7 月 6 日(117 日齢)ま
選別には時間を要するため、比較的サイズのそろっ
での間に 1,285 尾が死亡、劣位個体 216 尾を 5t-9 号
ている 10t-1、3 号を現地養殖試験の供試魚とする
に移動させた。5kL 水槽(5t-1、2、5、6、9 号)では
ことにした。それらは、種苗生産個体の中の高成長
合計 16,403 尾を収容し、途中 10kL 水槽からの劣位
群になり、7 月 7 日(118 日齢)時点での平均全長は
個体の追加 216 尾があり、2,642 尾が死亡した。
10t-1 号が 100.4 ± 6.9mm、3 号が 98.9 ± 4.5mm、2
中間育成開始時(67 日齢)に 58,612 尾であった稚
魚は、6 月 10 日(91 日齢)に 45,450 尾となり、7 月 6
日(117 日齢)には 38,355 尾となった。
号が 88.6 ± 6.0mm であった(図 4)。
7 月 12 日(123 日齢)に 10t-3 号水槽分を全量取り
上げ、クルマエビ放流に用いられるエビカゴに 100
3)目合い選別3回目
尾/カゴの密度で供試魚を収容し、冷却水を満たし
7 月 7 日(118 日齢)に 10kL 水槽飼育分を全量取
た 1kL 角形活魚水槽に午前は 30 カゴ(+空カゴ)、
り上げ、対角線長 26mm の角目トリカルネット籠
午後は 35 カゴ(+空カゴ)収容して酸素通気しつつ
と長径 22mm の 6 角目ネトロンネット籠を用いて
現地に搬入した。7 月 13 日(124 日齢)には 10t-1 号
大中小選別 をおこなっ た。大群 (平均体重 7.27g)
水槽分を 140 尾/カゴの密度で同様に現地搬入し、
14,011 尾を 10t-1、3 号水槽に、中群(平均体重 5.26g)
一部個体はサンプル及び他の試験の供試魚として残
8,531 尾を 10t-2 号水槽に収容した。小群(平均体重
した。
3.14g)907 尾を 5t-9 号水槽に移した。
測定の結果 6 月 10 日(91 日齢)から 7 月 6 日(117
3500
(尾)
5kl水槽群
日齢)の間の飼料効率は 177%であった。以後の給
3000
餌率は「事業の方法」に記したとおりに定めた。
2500
10t-2号
10kL 水槽では、えづけーるフロート 1 号(粒径
2000
10t-3号
1.8mm)を 7 月 8 日(119 日齢)の早朝に自動給餌し
1500
10t-1号
(1/3 日量)、残分(2/3 日量)をジュニア A を手撒き
1000
給餌した。7 月 9 日(120 日齢)以降は日新丸紅のひ
500
らめ F-2 を早朝に自動給餌(1/3 日量)し、残分(2/3
0
日量)をえづけーるフロート 2 号(粒径 2.3mm)を手
撒き給餌した。
50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100 105 110 115 120
全長(㎜)
図4
中間育成終了時の各水槽の全長組成
平 成 23
年 度
13
ヒラメの高温耐性品種の作出-2
現地養殖試験
(国庫委託)
景平真明・金澤 健・中里礼大・井本有治
事業の目的
高水温に強いヒラメを育種すること、もしくはそ
の方法を確立することを最終目的とする。
本事業は 2009 年度から開始され、これまでに高
水温下の飼育試験によって高水温耐性家系候補魚が
何尾か選ばれている。本年度からは当県が参加し、
実際にヒラメ養殖場で飼育試験を実施して、候補魚
を選ぼうとするものである。
事業の方法
高水温耐性家系候補魚を含む、若狭湾産天然ヒラ
メ♂ 11 尾×♀ 9 尾から得た人工授精卵を用いて大
分県水試で種苗生産し供試魚とした。
1.現地養殖試験
図1 一般的な種苗受け入れ後の水槽管理
7 月 12、13 日に供試魚を佐伯市蒲江西野浦のヒ
ラメ陸上養殖生産者(A 水産)の水槽に持ち込んだ。
出荷が始まると、水槽毎に飼育魚数に濃淡が生じる
現地養殖試験は、高水温耐性候補家系を含む種苗
ため、他の水槽のものを合わせて、無駄な水槽の解
を用いて、実際の養殖現場で飼育試験を実施し、家
系間の成長・生残を比較し、より現場に即した家系
(親魚)を選定することを目的とする。
現地養殖試験を委託した A 水産の施設は、飼育
消に努める。
現地養殖試験を実施するにあたり、A 水産と交わ
した覚書の概要は以下のとおりである。
・供試魚は水産研究部が生産し、A 水産に無償で提
用水は海底からの汲み上げ海水で、夏場に不足する
供し、その施設で供試魚の養殖試験を実施する。
溶存酸素を補うため、液体酸素を添加している。生
・養殖試験に要する経費は A 水産が負担する。
産魚はヒラメとカワハギである。
・養殖試験の期間は 1 年 3 ヵ月以上とするが、状況
養殖業者の種苗受け入れ後の一般的な水槽管理状
に応じて協議の上変更できる。
況を図 1 に示した。標準的な水槽面積である 7 × 7m
・A 水産は飼育試験中の飼育管理に関する情報(給
水槽の場合、8cm サイズの種苗であれば、5,000 尾
餌量、死亡数、投薬、分槽等)を日々記録する。
以上を収容する。密度があまり粗であると餌食いが
・供試魚が出荷サイズにまで成長したときは、A 水
落ちるため、最初から薄飼いはしない。その後、徐
産はこれを販売し、養成試験に要した経費等に充当
々に成長差がついてくるため、約 1 ヵ月後に大小の
するものとする。ただし、販売額が支出を下回って
選別をして、2 水槽に分養する。更に成長差がつい
も、水産研究部にその責を求めない。
てくると更に大中小選別を実施し、3 水槽に分養す
・養成試験中に大量斃死や形態異常が発生した際
る。その後は、成長差に伴う共食い等のトラブルが
に、互いにその責を求めない。
少なくなるため、多くの場合出荷まで選別しない。
14
大分水研事業報告
1)供試魚の搬入
同様の評価を得られないかを模索している。それが
7 月 12 日(123 日齢)に A 水産第一養殖場 1 号水
水温 33 ℃下での生残状況(死亡までの経過時間)を
槽(6 × 6m)に 1,500 尾の供試魚を、7 号水槽(7 ×
比較する短期評価試験である。
7m)に 5,000 尾を収容した。7 月 13 日(124 日齢)に 2
本年度は現地養殖試験と同ロットのものを、増養
号水槽(7 × 7m)に 5,000 尾を収容した。各水槽には
殖研と当研究部で別々に短期評価試験を行い、得ら
水温ロガーを設置し、飼料は栄養強化したモイスト
れた結果に差が有るかを比べる試験(①現地養殖試
ペレットを与えた。
験群)と、本事業とは別に当研究部で独自に育種し
2)高水温期成長試験
ようとしている「豊後水道漁獲♂ 62 尾×人工産♀ 4
7 ~ 10 月の海水温が高い時期に飼育試験を実施
尾」によって得た種苗(②大分育種対象群)を前者と
し、高水温に強い家系を選定することを目的とする。
同様に増養殖研と当研究部で短期評価試験を行っ
飼育試験期間中に選別・分槽を行わないため、10
月まで 1 水槽内で安全に飼育可能な尾数として、
1,500 尾を 1 号水槽(6 × 6m)に収容した。
た。結果の解析は増養殖研の業務分担となる。
短期評価試験の供試魚は、過去の飼育水温の影響
をできるだけ排除するため、まず水温 22 ℃で 4 日
試験開始時に供試魚と同群の稚魚 200 尾の全長、
間(飼育水温が 22 ℃を上回る場合は省く)、水温 27
体重を測定のうえ、鰭の一部を切除し 99.5%エタノ
℃で 3 日間水温馴致させる。その後に致死的な水温
ール液に保存後、(独)水産総合研究センター増養殖
である水温 33 ℃下に曝し、個体毎の斃死までの経
研究所(以下、増養殖研という)に送り、DNA 解析
過時間を比較することにより、群としての高水温耐
により個体毎に父母親魚を特定した。また、10 月 25
性を評価するものである。
日(228 日齢)の試験終了時に供試魚から 200 尾を無
作為に抽出し、全長を測定後、鰭の一部を採集し、
開始時と同様の処置をし、個体毎の親魚を特定した。
事業の結果
3)養殖工程成長・生残試験
出荷に至るまでの養殖全工程における成長や生残
を追跡し、顕著に成長や生残率が劣る家系(親魚)を
排除することを目的とする。
飼育期間中は通常の養殖生産工程に倣って飼育す
1. 現地養殖試験
1)供試魚の搬入
搬入作業は滞りなく終了し、特に搬入後のトラブ
ルも発生せず当初の計画通り飼育試験を開始した。
るため、7 月 12 日(123 日齢)に 7 号水槽(7 × 7m)
2)高水温期成長試験
に 5,000 尾を、翌 13 日(124 日齢)に 2 号水槽(6 ×
7 月 12 日(123 日齢)に 1 号水槽(6 × 6m)に供試
6m)に 5,000 尾を収容した。
魚を 1,500 尾収容し、10 月 25 日(228 日齢)までの
9 月 19 日(192 日齢)に 7 号水槽から目視で大サイ
間無選別で飼育した。A 水産地先海面の水深 1m の
ズの 1,200 尾を抜き取り、4 号水槽に移した。翌 20
最高水温は 8 月 29 日 15 時に記録した 28.4 ℃で、
日に4号水槽から 200 尾を無作為抽出し、個体毎に
試験期間中に 28 ℃を越えた日は 8 月に 6 日、9 月
全長を測定し、鰭の一部を採取した。また 7 号水槽
に 1 日あった。一方、養殖場内の飼育水槽の最高水
から 100 尾を無作為抽出し、同様の処置をした。
温は 8 月 13 日 15 時に記録した 27.0 ℃で、最低水
2 号水槽は飼育トラブルにより減耗したため、選
別分養は行わなかったが、10 月 19 日(222 日齢)に
温は試験開始初日の 21.3 度であった。試験期間中
の平均水温は 24.3 ± 1.2 ℃であった(図 2)。
水槽整理の都合上、3 号水槽に移槽した。
28
た 1 号水槽分も含めて、目視による大小選別を実施
26
し、大群を第二養殖場 5 号水槽に、小群を同養殖場 4
号水槽に分養した。
間もなく供試魚群から初出荷が始まるということ
で、2012 年 2 月 27 日(353 日齢)に無作為抽出した
200 尾の全長、体重を測定し、鰭の一部を切除採集
した。
水温(℃)
12 月 5 日(269 日齢)には高水温期成長試験に供し
24
22
20
高水温期成長試験
18
16
14
2.短期評価試験(ヒートショック生残試験)
12
7/1
8/1
9/1
10/2
11/2
12/3
1/3
2/3
3/5
高水温耐性ヒラメの評価は、本来は一定期間の高
水温下での飼育試験の下に判断すべきであるが、こ
れには労力と多大なコストが掛かるため、短期間で
図2
試験飼育用水の水温変化
*網掛け部分は高水温期成長試験の実施期間を表す。
平 成 23
試験開始時は供試魚数 1,500 尾、平均全長 101.5
年 度
15
表1
雄親魚別の種苗の成長量及び組成率の比較
表2
雌親魚別の種苗の成長量及び組成率の比較
± 7.4mm であったが、終了時には 1,154 尾、219.9
± 18.8mm になった(図 3)。並行して飼育していた
他の水槽の供試魚が著しく減耗したのに対して、本
試験区は安定した飼育状況であった。
図3
高水温成長試験における
開始時と終了時の抽出200尾の全長組成
7 月 12 日(123 日齢)に無作為抽出サンプリングし
た 200 尾のうち 155 尾と、10 月 25 日(228 日齢)に
サンプリングした 200 尾のうち 167 尾について親子
判別を行い、雄親、雌親別の組成を求め、成長の指
標として全長を比較した(表 1、2)。親子判別率は
98%であった。供試魚における各親別の組成比は均
等ではなく、雄では開始時(7 月)が 1 ~ 30%、終了
時(10 月)が 1 ~ 22%と大きくばらついていた。雌
でも同様で前者が 0 ~ 39%、後者が 0 ~ 38%であ
った。
成長をみると雄では開始時(7 月)は親魚個体番号
m1、m2、m11 が、越夏後の終了時(10 月)では m1、m9
が平均よりも優れていた。雌では f8 の成長が良い
傾向がみられた。しかしいずれも有意な差は認めら
れなかった。m1 家系は昨年度(独)水産総合研究セ
ンター日本海区研究所宮津庁舎が実施した、高水温
飼育試験においても成長が優れ、m9 は本年度同セ
ンター増養殖研究所が実施した 33 ℃ヒートショッ
ク生残試験でも生残率が高かった家系である。今後
は m1、m9 を高水温耐性家系候補として、事業を
進めていく予定である。
A 水産も例外ではなく、高水温成長試験を実施し
た第一養殖場 1 号水槽以外はトラブルが続き、2012
年 3 月時点での供試魚全体の生残率は 18%しかな
かった(図 4)。
3)養殖工程成長・生残試験
2011 年(平成 23 年)の夏は現地養殖試験を委託し
たA水産を含む入津湾一帯のヒラメの陸上養殖業者
にとって、過去に例を見ない生残率の低い年となっ
た。本年度は台風が何度か来襲し、元来水交換の極
めて悪い入津湾でも、昨年ほど湾内水は成層せず、
底層の貧酸素層の発達も顕著ではなかったが、一帯
では寄生虫病(スクーチカ症)や細菌性疾病(エドワ
ジエラ症、新型連鎖球菌症)が頻発し、ヒラメの養
成自体を断念した(全数処分)養殖場も数経営体あっ
た。
図4 供試魚の生残尾数の推移
大分水研事業報告
16
当初計画では、養殖工程成長試験の最終サンプリ
ングは、供試魚が 2 回目の夏を越す 2012 年 10 月以
降の予定であったが、前述のような事情により、A
水産は経営上早目の出荷をせざるを得なくなった。
そのため、2012 年 2 月 27 日(353 日齢)に供試魚群
から無作為抽出した 200 尾の全長、体重を測定、鰭
の一部を切除採集し増養殖研究所に DNA 検体とし
て送った。200 尾は各水槽(4 号、5 号)の生残尾数
の割合を反映させるため、4 号水槽(選別小群、平
均全長 258 ± 20mm)から 89 尾、5 号水槽(選別大群、
平均全長 306 ± 22mm)から 111 尾を無作為に抽出
した(図 5)。なお、DNA 分析(親判別)は予算の都
合上、平成 24 年度事業で実施する予定である。
図6 短期評価試験用2klL槽
8 月 16 日(158 日齢)の 5 時 30 分に供試魚群から
無作為に 10 尾(予備魚)を取り出して 100 尾とし、
設定水温を 33 ℃にした。試験槽の水温は 6 時 30 分
には 33.0 ℃に達し、供試魚全てが死亡した 13 時 30
分までの間の最高水温は 33.3 ℃、最低水温は 32.7
℃、平均水温は 33.0 ℃± 0.2 ℃であった。30 分毎
に 測 定 し た 溶 存 酸 素 量 の 最 高 値 は 6.70mg/L
(107.6%)、最低値は 6.26mg/L(105.1%)、平均値は
6.37 ± 0.12mg/L(106.2 ± 0.7%)であった。
図5 出荷前供試魚の200尾抽出個体の全長組成
検死は 30 分毎に、エアレーションを止めて、主
に鰓蓋の開閉の有無を目視確認して行った。経過時
2.短期評価試験(ヒートショック生残試験)
間(30 分)毎の死亡状況を図 7 に示した。
①現地養殖試験群
30
と同群の個体 120 尾を増養殖研に送った。
本県では 8 月 13 日(155 日齢)に現地養殖試験に
供したものと同群の個体 110 尾(以下、供試魚とい
う)を、29 ℃に保った短期評価試験用の 2kL 円形水
槽に移した。短期評価試験では、33 ℃のヒートシ
ョックを与える前に、水温 22 ℃で 4 日間、29 ℃で 3
日間の水温馴致(無給餌)をするのが定法であるが、
今回 は 自然 水 温が 23 ℃ を常 時 越えて いた ため 、
29 ℃馴致から開始した。
死亡個体数(尾)
7 月 25 日(136 日齢)に現地養殖試験に供したもの
25
20
15
10
5
0
0
1
2
3
4
5
経過時間(時間)
6
7
8
図7 現地養殖試験群の短期評価試験の結果
試験水槽は水量を 1kL とし、1.39L/分(2 回転/日)
の滅菌海水を注水しながら、ボイラー加温(熱交換
30 分経過時には供試魚の大部分が遊泳し、一部
パイプによる間接加温)により水温を制御した。エ
の個体に吻部を水面から突き出す行動がみられた。1
アレーションは棒状エアストーンを水槽壁面から角
時間経過時には吻突上げ個体が目立つようになり、
度を付けて、4 点通気することによって、水槽水を
フラついて一瞬無眼側が上になった個体がみられ
ゆっくりと回転させた。特に 33 ℃に曝露時は通気
た。1.5 時間経過後は死亡魚が発生し、着底個体が
を強め、排水口の溶存酸素を DO メーターで監視し
徐々に増えてきた。3 時間経過時には遊泳個体は希
ながら酸素不足にならないように心掛けた(図 6)。
になり、3.5 時間経過後には全ての個体が着底した。
供試魚は、8 月 13 日 8 時 30 分から 8 月 16 日 5
以後、遊泳する個体はほとんどみられなくなった。
時 30 分の間、水温 29 ℃下で馴致した。その間の水
死亡魚は 5 時間経過以降急増し、5.5 時間、6 時間
温(1 分毎に自動記録)は最高水温が 29.4 ℃、最低水
に大量斃死し、その後は生残魚数の減少とともに漸
温が 28.7 ℃、平均水温は 29.0 ± 0.2 ℃で、供試魚
減し、8 時間経過時に全個体が死亡した。供試魚の
に異常はなかった。
平均死亡時間は 330 ± 89 分であった。死亡後全個
平 成 23
年 度
体を測定したところ、供試魚の平均全長は 111.1 ±
本試験で得られた結果は増養殖研に報告した。
②大分県育種対象群
増養殖研が全国各地の種苗生産ヒラメの高水温耐
性を比較する調査の一環として、大分県が育種対象
(育種素材)として確保しているヒラメ群(豊後水道
漁獲♂ 62 尾×人工産♀ 4 尾)も短期評価試験に供さ
20
死亡個体数(尾)
8.3mm、平均体重は 11.1 ± 2.7g であった。
17
15
10
5
0
3
れた。得られた結果を比較するために、当研究部で
4
5
6
7
8
経過時間(時間)
9
10
も並行して短期評価試験を実施した。
9 月 9 日に大分県の育種対象群を飼育している
図8 大分県育種対象群の短期評価試験の結果
10kl 水槽から 310 尾を無作為に抜き取り、水量を
1kL に保った 2kL 水槽に収容した。9 月 10 日(134
増え、2.5 時間後には供試魚の 3 割が、3 時間後に
日齢)に配合飼料を 91g 与えた後は給餌しなかった。
は 7 割が、3.5 時間後には 9 割が、4 時間後にはほ
9 月 14 日(138 日齢)に増養殖研に 120 尾を供試魚と
ぼ全ての個体が着底した。4.5 時間後には横転する
して発送した。9 月 16 日(140 日齢)に 110 尾を残し
個体が出始め、5 時間後には死亡魚が現れた。その
てその他を飼育水槽から除去し(無作為抽出)、注水
後はまとまった数の死亡魚が発生し、7 時間後にや
量を 1.39L/分(2 回転/日)に調整した。自然水温が常
や治まったがその後再び増加し、時間軸上において
時 24 ℃を越えていたため、22 ℃馴致工程を省き、9
二峰型の死亡頻度を示した。最後の 1 尾は 9.5 時間
月 18 日(142 日齢)の 8 時 30 分から飼育水温を 29
後には身体が硬直しつつあり瀕死であったがまだ呼
℃に設定した(試験水槽の管理は「①現地養殖試験
吸しており、10 時間後に確認したときには絶命し
群」と同様)。同日 9 時 16 分に水温が 29.0 ℃に達し、
ていた。
9 月 21 日(145 日齢)の 6 時 00 分まで水温設定を維
死亡後全個体を測定したところ、供試魚の平均全
持した。その間の最高水温は 29.3 ℃、最低水温は
長は 110.5 ± 8.4mm、平均体重は 10.9 ± 2.4g であ
28.7 ℃、平均水温は 29.0 ± 0.2 ℃で、供試魚に異常
った。体サイズは①の現地養殖試験群とほぼ同じで
はなかった。
あったが、大分県育種対象群の平均死亡時間は 413
9 月 21 日(145 日齢)の 6 時前に供試魚群から無作
± 70 分と、顕著に長かった。
為に 10 尾(予備魚)を取り出して 100 尾とし、設定
本試験で得られた結果は増養殖研に報告した。増
水温を 33 ℃にした。試験水槽の水温は 7 時 06 分に
養殖研での短期評価試験の結果は、やや裾野の広い
は 33.0 ℃に達し、供試魚全てが死亡した 16 時 00
一峰型のグラフであったが、平均死亡時間は概ね同
分までの間の最高水温は 33.3 ℃、最低水温は 32.7
じであった。なお、増養殖研が大分県以外に、5 地
℃、平均水温は 33.0 ± 0.2 ℃であった。30 分毎に
域で種苗生産された稚魚を用いて、同様の短期評価
測定した溶存酸素量の最高値は 6.74mg/L(108.3%)、
試験を行ったところ、大分県のものが最も平均死亡
最 低 値 は 6.29mg/L( 106.7%) 、 平 均 値 は 6.36 ±
時間が長かった。大分県の種苗は、まだ選抜育種を
0.10mg/L(107.3 ± 0.5%)であった。
始めていない、育種素材として確保している群であ
経過時間(30 分)毎の死亡状況を図 8 に示した。
るが、最も高水温耐性(ヒートショック耐性)がある
30 分経過時には供試魚の大部分が遊泳し、1 時間
種苗として評価された。遺伝的な多様性を内包した
経過後には吻部を水面から突き出す行動が目立っ
群(天然♂ 62 尾×人工♀ 4 尾)でもあり、今後の選
た。1.5 時間後にも吻上げ個体が目立ったが着底個
抜育種に期待を持たせる結果であった。
体も 20 尾程みられた。その後、徐々に着底個体が
大分水研事業報告
18
ヒラメの高水温耐性品種の作出-3
育種素材群の種苗生産(2011年生産群)
景平真明・金澤 健・中里礼大・井本有治
事業の目的
大分県は全国の養殖ヒラメの 3 割を供給する日本
一の生産地である。その中でも佐伯市蒲江の入津湾
には養殖業者が集中しており、養殖ヒラメの供給拠
点となっている。
近年、大分県沿岸域では海水温の上昇傾向がみら
れ、2008 年は特に夏場の高水温が著しく、入津湾
のヒラメ養殖場では各種トラブルや疾病が頻発して
生残率が下がり、養殖経営を揺るがす事態となった。
今後も水温の上昇が続けばヒラメ養殖の存続が危ぶ
まれる。
本研究ではヒラメの高水温耐性品種を確立するこ
とにより、当県のヒラメ養殖産業を支援することを
図1 日本近海のヒラメ7系群
目的とする。
事業の方法
次善の策として、大分県漁協鶴見支店の産地市場(以
下、鶴見市場という)で水揚げされるヒラメを親魚
1.親魚の確保
に導入することにした。鶴見市場で水揚げされるヒ
2010 年(平成 22 年)に種苗生産したヒラメは、「人
ラメは、主に鶴見崎以南の日向灘北端(豊後水道南
工産ヒラメ(♀ 10 尾×♂ 10 尾)の自然交配による群
端)付近で小型底曳網によって漁獲される。それら
(2/21 卵回収)」と「人工産♀ 5 尾×天然♂ 11 尾を人
が「太平洋南部系群」なのか「瀬戸内海系群」に属する
工授精させた群(4/14 媒精)」で、その後の高水温選
のか精査していないが、できるだけ多くの個体を導
抜試験(ヒートショック)に供した。
入することで対応することにした。また、昨年の経
本年は、今後「高水温耐性を持つヒラメ」を選抜育
験から、漁獲魚(主に底曳網による)を一時的にせよ
種していくための基となる「選抜育種対象群」を種苗
活魚としてストックしておくことは極めて困難であ
生産し、有効な選抜を実施していくことを主な課題
るため、親魚として利用するのは雄のみとし、水揚
とした。「選抜育種対象群」を確保するにあたり、「高
げされた直後に採精して凍結保存することにした。
水温耐性に係わる遺伝子を持つ」可能性を少しでも
そのような経緯で、ヒラメの産卵時期とも重なる
上げることが重要である。もし、「選抜育種対象群」
3 ~ 4 月に、放精する雄のみを鶴見市場で合計 62
に求める遺伝子が存在しなければ、今後いかに選抜
尾購入し、その場で採精して持ち帰り、液体窒素中
育種に努めても、目標(高水温耐性ヒラメ)には到達
に保存した。
できないからである。
種苗生産にはまとまった量の卵を確保する必要が
そこで、国内のヒラメの 7 系群(図 1)のうち最も
あるため、雌親魚には既に何度か種苗生産実績があ
生息水温が高いと思われる「太平洋南部系群」を親魚
る当研究部の親魚を使用した。これらは、入津湾の
として確保することを最優先に、鹿児島県や宮崎県
2008 年の猛暑(生残率が極めて悪かった)を生き残
で親魚の入手を試みたが諸般の事情により断念し、
った個体で、愛媛県の民間種苗会社が生産したもの
である。
平 成 23
2.精子の凍結保存
年 度
19
4.オキシダント消毒
精子の凍結保存と凍結精子の媒精技術は日本水産
オキシダント消毒は(独)水産総合研究センター増
株式会社大分海洋研究センター(佐伯市鶴見有明浦)
養殖研究所上浦庁舎から技術指導を受けた。受精さ
から指導を受け実施した。精子の凍結保存の手順は
せた翌日(4/27)に受精卵の発生段階が胚体形成期
以下のとおりである。
(眼胞は形成されつつあったが、筋節は未分化であ
①精液を搾出法により個体毎にスピッツ管に採取し
った)であることを確認し、オキシダント消毒をし
た。この際、濃厚な精液のみを採取するよう努め
たうえで、50kL 種苗生産水槽に卵収容した。オキ
た。採精後スピッツ管は保冷剤を入れたクーラー
シダント消毒の手順は以下のとおりである。
ボックスで研究室まで持ち帰った。
① 200L 卵管理水槽の注水・散気を止め数分間静置
②顕微鏡下(100 倍)で精子が十分に運動能を有する
後、柄杓とサイホンによって、ボールを添えた卵受
か確認した結果、採取した精液で活性が低いもの
ネット手網に受精卵を集めた。
は無かった。
②遊離オキシダント濃度(全オキシダントではない)
③精液 1 に対し、希釈液(海産魚用リンゲル(表 1)
を 0.28ppm に調整した(目標値は 0.3ppm)電解殺菌
+ DMSO10%)を 3 の割合でよく混合し、1 分以
水を受精卵を受けたボールに注ぎ、3 分間流水下で
内にドライアイス(-79 ℃)表面に予め空けておい
浸漬消毒した。
た穴(半球)の中に分注機を用いて、0.05cc ずつ滴
③消毒後、速やかに殺菌海水を注いだ別のボールに
下し、ペレット状に凍結させた。
受精卵を移し、残留オキシダントを流した。充分に
④完全に凍結した後、精子ペレットを冷凍保存用の
洗浄後、50kL 種苗生産用水槽に移した。
バイアルに速やかに移し、液体窒素(-196 ℃)中
に保存した。
5.種苗生産工程
表1 海産魚リンゲルの組成(g/L)
NaCl
KCl
CaCl2・2H2O
MgCl2・6H2O
NaH2PO4・2H2O
NaHCO3
Glucose
8.22
0.39
0.72
0.23
0.28
1.00
1.00
3.人工授精
精子が一定個体数量分確保できたので、4 月 24
日に雌親魚群のうち採卵可能と思われる(腹部の張
4 月 27 日に卵収容した。29 日に孵化仔魚を多数
確認したので、この日を 0 日齢とした。
1)無給餌生残指数(SAI)
種苗生産に用いる仔魚の活力の目安を得るため、
48 穴マイクロプレートに、オキシダント消毒後の
卵を、パスツールピペットを用いて 1 穴 1 個ずつ計
48 個を収容した。20.5 ℃に保ったインキュベータ
ー中で、孵化した仔魚の生残魚がいなくなるまで毎
日生残尾数を確認した。無給餌生残指数(SAI)は下
式により算出した。
りを確認)7 個体(平均全長 699 ± 31mm)に排卵誘
発ホルモン(以下、HCG という)を 300IU/kg 量打注
した。打注 24 時間後(4/25)の卵は搾出したが生産
には使用せず、48 時間後(4/26)に得られた卵のう
ち、検鏡して正常(濁りの無い透明な卵)と判断した
4 個体分 510g を、62 個体分の凍結精子と媒精し、18
℃に調温した 0.2kL 卵管理水槽(注水量は 1 回転/
時)に収容した。凍結精子の媒精の手順は以下のと
おりである。
① 8 粒/個体の凍結精子、合計 496 粒(62 個体分)を
1L サンプル瓶に入れ、殺菌海水 500ml を加えて素
早く蓋をして数秒激しく震とうし、速やかにボール
に受けた搾出卵(約 500g)にかけ、製図用羽根ぼう
きで 1 分程ゆっくりと攪拌した。
②精子の凍結防止剤として含まれる DMSO に細胞
毒性が有るため、媒精させたボールに、更に大量の
殺菌海水を注ぎ、他のボールを添えた卵受ネット手
網(ゴースネット)内に受精卵を入れ、殺菌海水の流
水で充分洗浄した後、200L 卵管理水槽(殺菌海水:
自然水温 16.7 ℃)に収容した。
1
k
SAI = ― × Σ (N-hi)×i
N
i=1
N:最初の仔魚数
hi:i日目の斃死仔魚の累積尾数
k:生残尾数が0となった日
2)種苗生産
種苗生産方法は、省力、省コスト、種苗の高活力
と優れた面が多い、いわゆる「ほっとけ飼育」を採用
した。種苗生産水槽内のワムシの増殖を安定化する
ため、飼育水は 80%海水とし、低水温でも増殖率
の高い L 型ワムシ小浜株(水産総合研究センター日
本海区水産研究所能登島庁舎から譲渡)と SS 型ワ
ムシ(大分県漁業公社株)を併用した。本種苗生産に
先だって行った国委託事業のヒラメ種苗生産では、
低塩分水によって受精卵を沈殿させてしまったた
め、今回は初めからエア量を強めに設定した。
水槽上面の照明は 8 ~ 17 時点灯とし、6 月 6 日
(38 日齢)から 6 時半~ 17 時に変更した。飼育水温
は開始時は無加温とし(16.8 ~ 16.9 ℃)、間もなく
大分水研事業報告
20
20.5 ℃に設定した。換水を開始したのは 5 月 15 日
腹部が張り出し採卵可能と思われた 7 尾に対して、4
(16 日齢)からで、5%/日換水とした。換水開始日は
月 24 日 13 ~ 14 時に HCG を打注し、翌 25 日の同
移槽予定日から逆算して決めた。その後、10 、 20 、
時刻に搾卵した。24 時間後の卵には過熟卵が含ま
40 、 60 、 80 、 100 、 150%/日と換水率を日々上げ、
れることが予想されたため、種苗生産に用いる予定
150%/日のとき(5/22:23 日齢)に集魚灯&サイホン
は無かったが、翌日の予行演習も兼ねて人工授精さ
で隣の 50kL 水槽に稚魚の移槽を開始し、5 月 24 日
せ、0.2kL 卵管理水槽に収容した。媒精には 100g/
(25 日齢)で移槽を完了した。150%換水時に加温か
尾以上搾卵できたものを使用したが、最も卵量が多
ら、自然水温飼育に切り替えた。
かった 5E76(表 2)の卵は一見して白濁卵を含むの
計画では水槽内でワムシを増殖させる「ほっとけ
が判った。浮上卵は柱状サンプリング(密度法)によ
飼育」で種苗生産する予定であったが、種苗生産水
って、沈下卵は全量回収(重量法)によって卵数を算
槽内のワムシ密度が基準の 10 個/ml を上回る日が
出したところ、沈下卵が 61.4 万粒、浮上卵が 4.4 万
ほとんど無かったため、ワムシ(L 型ワムシ小浜株、
粒で、浮上卵のうち 2 万粒は発生が正常に進んでい
SS 型ワムシ大分県漁業公社株)を連日(2 日間を除
なかった。
く)添加補充した。種苗生産水槽内にはクロレラ工
業社製のスーパー生クロレラ V12(以下、生クロレ
表2 HCG打注後の採卵結果及び検卵結果
ラ SV という)を定量ポンプで 500ml/日量を添加し
タグ
ナンバー
5E76
2004
7140
7971
0411
3C0A
0453
た。ワムシの培養及び栄養強化はクロレラ工業社製
の生クロレラ V12 ハイグレード(以下、生クロレラ
HG という)で行った。
その後ワムシ添加を継続中に、アルテミア添加を
始め、更に日本配合飼料社製の配合飼料アンブロー
ズも並行して給餌した。アルテミアはクロレラ工業
社製の A1 パウダーで栄養強化した。配合飼料の給
餌量は(社)日本栽培漁業協会発行の栽培漁業技術シ
リーズ「ヒラメの種苗生産マニュアル」 8.配合飼料の
投餌基準(P46 ~ 52)を参照し、平均全長と飼育尾
数を元に算出した。配合飼料給餌は初めは手撒きで
行ったが、6 月 6 日(38 日齢)からは 6 時 30 分にセ
ットした自動給餌機で 1 日の給餌量の 1/3 を与え、
残りを 9 、 11 、 13 、 15 時に手撒き給餌した。
6 月 15 日(48 日齢)に稚魚の全量を取り上げ、5kL
水槽 3 基にほぼ 3 等分になるように分槽収容した。
全長
(㎜)
712
716
667
721
721
740
670
4/25
4/26
検卵
採卵量(g) 採卵量(g) 結果
423.8
630.3
×
19.9
65.3
×
50.1
100.4
◎
-
169.2
〇
-
205.7
◎
107.9
231.5
〇
196.3
180.4
×
*◎は異常卵がほとんどみられない
〇は異常卵が一部にみられるが大部分は正常
×は異常卵が多くみられる
朱文字の卵を人工授精に使用
HCG 打注 48 時間後に親魚毎に搾卵し、「事業の
方法-3.人工授精」の項に記したとおりに人工授精
した。0.2kL 卵管理水槽に収容後、前述の方法にて
卵数を算出したところ、沈下卵が 6.8 万粒、浮上卵
のうち正常に発生しているものが、88.5 万粒、異常
なものが 1.1 万粒であった。
4.オキシダント消毒
「事業の方法-4.オキシダント消毒」の項に記し
事業の結果
たとおりに実施した。
5.種苗生産工程
1.親魚の確保
1)無給餌生残指数(SAI)
雄 62 個体から採精し、凍結保存した。雄漁獲魚
4 月 27 日に胚胎形成期でプレート穴に収容した
の入手日(入手尾数)は 3/16(4 尾)、3/22(20 尾)、3/30
卵は 4 月 29 日に孵化(0 日齢)したが、孵化率は低
(10 尾)、4/6(12 尾)、4/7(16 尾)で、3 月 22 日に入
く 29%(14 尾/48 個)であった。翌 30 日(1 日齢)に 1
手した個体のうち 6 尾のみ翌日に採精したが(活魚
尾が死亡し、5 月 2 日(3 日齢)に 5 尾が、翌 3 日(4
として保持)、その他は入手当日に採精凍結した。
日齢)に 1 尾が死亡した後は数日変化が無かったが、
5 月 7 日(8 日齢)に一気に 6 尾が死亡し、翌 8 日(9
2.精子の凍結保存
「事業の方法」の項および前述のとおり凍結精子を
作成保存した。
日齢)に最後の 1 尾が死亡した。
計算の結果、本種苗生産群の SAI は 17.3 であっ
た。
2)種苗生産
3.人工授精
水産研究部水槽で飼育中の雌親魚 12 尾のうち、
4 月 27 日に受精卵を収容したときは、卵管理水
槽(水温 16.8 ~ 9 ℃)との水温差を生じさせないよ
平 成 23
年 度
21
うに、50kL 種苗生産水槽を無加温(水温 16.8 ~ 9
で、全く摂餌していない個体が高い割合でみられ(5
℃)としたが、翌 28 日の 8 時に設定温度 20.5 ℃で
尾/10 尾)大量減耗の兆しかと思われたが、翌々日
加温を開始した。
の 7 日齢(平均全長 5.0 ± 0.8mm)時には、全個体摂
4 月 29 日に孵化仔魚(0 日齢)数を柱状サンプリン
グ(密度法)で計数したところ、14.1 万尾であった。
餌しており(31.0 ± 17.6 個/尾)、仔魚数も 7.5 万尾
と大きく減耗しておらず杞憂であった。
翌 30 日(1 日齢:平均全長 3.2 ± 0.2mm)には卵黄
をかなり吸収した仔魚(眼にはグアニンが発達)がみ
られ始めたので、L 型ワムシ小浜株を飼育水中の密
度が 10 個/ml となるように添加した。2 日齢(平均
全長 3.1 ± 0.1mm)にはワムシを摂餌した仔魚がみ
生残数
150,000
(尾)
全長
30
(㎜)
25
125,000
移 槽
20
100,000
られ始め、3 日齢(平均全長 3.6 ± 0.3mm)には、採
15
75,000
集した全個体の消化管からワムシが確認された
10
50,000
5
25,000
(20.0 ± 11.1 個/尾)。
一方、種苗生産水槽のワムシの増殖(「ほっとけ飼
育」)は計画どおりに行かず、朝一のワムシ密度計数
で 5 月 3 日(4 日齢)に 10.5 個/ml となった以外は、
10 個/ml を上回る日は無かった。これは、ちょうど
この時に L 型ワムシの連続培養生産が不調で、ワ
0
0
0
10
20
日 齢
30
40
50
図3 種苗生産期間中の成長及び生残数
その後の、摂餌は順調で 9 日齢(平均全長 6.7 ±
ムシの活力が低かった(動き悪い)ことが原因であ
0.4mm)時に平均ワムシ摂取量は 39.7 ± 10.9 個/尾、
る。また、更に運が悪いことに、SS 型ワムシの連
10 日齢(平均全長 7.5 ± 0.3mm)時に 56.1 ± 15.4 個/
続培養も丁度同時期に不調で、SS 型ワムシの添加
尾、12 日齢(平均全長 7.8 ± 0.5mm)時に 83.4 ± 23.6
も「ほっとけ飼育」には寄与しかなかった。そのため、
個 /尾 と 急 激 に 増 加 し 、 13 日 齢 (平 均 全 長 8.4 ±
5 月 3 、 4 日以外は連日ワムシ(適時 L 型・SS 型)を
0.6mm)時には計数不能となった。この頃には、眼
添加した。ワムシの添加は 5 月 21 日(21 日齢)まで
継続した(図 2)。
の移動が始まっている個体が半数近くみられるよう
になり、16 日齢(平均全長 10.6 ± 0.4mm)時には観
察した全個体で眼が移動中であった。
換水率
160
(%)
水温
22
(℃)
16 日齢あたりから水中の気泡を捕食しようとす
るいわゆる「エア噛み」個体がみられるようになりア
21
140
20
120
ルテミアの給餌を始めた。同時に換水も開始し、日
100
々換水量を増やしていった。換水直前の飼育水の pH
80
は 7.99 であった。20 日齢からは配合飼料のアンブ
60
ローズ 200(粒径 0.23 ~ 0.42mm)の手撒き給餌も開
19
L型ワムシ
18
SS型ワムシ
17
アルテミア
16
40
アンブローズ200
15
20
アンブローズ400
14
0
-10
0
10
20
日齢
30
40
50
図2 種苗生産期間中の換水率と水温の推移
及び餌料系列
始し、過剰と思われる量を 4 日間散布し、配合飼料
に餌付かせた。
23 日齢(平均全長 13.6 ± 1.3mm)の時に、集魚灯&
サイホン(150%換水/日)によって、隣の 50kL 水槽
への移槽を開始(15:45)した。翌朝(9:30)には 7 割
ほどが移動していたが、もう一晩継続し、大部分の
3 日齢時に、SAI プレートで一定量の斃死があり、
個体を移槽させた。移槽後直ちに多数の着底個体が
飼育水中に多数の懸濁物がみられたことから、仔魚
みられた。移槽後はワムシ給餌を止め、アルテミア
の夜間計数を実施したが、10.9 万尾と大きな変化は
給餌を数日行った後は、全量配合飼料の給餌とした。
なかった。念のために貝化石を 3kg 散布した。また、5
38 日齢時からは自動給餌機による早朝給餌を始め、
日齢(平均全長 3.7 ± 0.4mm)時に、ワムシを大量に
45 日齢まで継続し、47 日齢で全量取り上げ、5kL
摂餌している(10,14,27,28,28 個/尾)個体がいる一方
水槽 3 面に移動した。
大分県水試事業報告
22
ヒラメの高水温耐性品種の作出-4
育種素材群の育成及び選抜(2011年生産群)
景平真明・金澤 健・中里礼大・井本有治
事業の目的
高圧力で噴出させ(塩ビパイプ配管の吐出口を潰し
て狭めた)、常に流水状態を保った。各水槽でみら
現在大分県のヒラメの陸上養殖の最大の課題は高
れた形態異常個体(有眼側白化、右ヒラメ、短躯等)
水温期の生残率の向上である。本研究では高水温期
は適時目視除去し、毎日死亡魚の数と重量を計測し
に強い種苗を育種し、現場に供給することが最終目
た。
配合飼料の給餌量は各水槽とも同一とし、摂餌状
標である。
2011 年度は「高水温耐性に係わる遺伝子」を内包
況をみながら適時給餌量を増やした。6 月 16 日(48
する育種対象群を種苗生産し、それらに対して有効
日齢)から 7 月 3 日(65 日齢)の間は中部飼料社製の
な選抜を行って選抜育種を進めていくことが課題で
えづけーる M(粒径 0.45 ~ 0.75mm)を、7 月 4 日(66
ある。新たな養殖用種苗として求められる形質は、
日齢)にはえづけーる M(粒径 0.45 ~ 0.75mm)と LL
一般種苗にも当てはまる、高成長や高活力以外に
(粒径 1.30 ~ 2.00mm)の混合飼料を、7 月 5 日(67
①高水温耐性があること
日齢)から 7 月 10 日(72 日齢)の間はえづけーる LL
②低酸素耐性があること
の単独給餌を、7 月 11 ~ 12 日(73 ~ 74 日齢)には
の 2 点があげられる。①はこれまでも述べてきた課
えづけーるフロート 2 号(粒径 2.3mm)を、7 月 13
題であるが、同時に入津湾の養殖現場では夏期の飼
日(75 日齢)から 27 日(89 日齢)の間は再びえづけー
育用水の低酸素が常態化しており、取水の DO(溶
る LL を、7 月 28 日(90 日齢)から 31 日(93 日齢)ま
存酸素量)が 1mg/L を切ることがしばしばあり、多
での間は林兼産業社製のジュニア A(粒径 1.1 ~
くの養殖場では液体酸素を常時添加して高水温期を
1.3mm)を、9 、 11 、 13 、 15 時に手撒きにより給餌し
凌いでいる。
た。
本事業では、①はある程度成長した個体にピット
タグを打って個体識別し、長期的(1 ~ 2 ヵ月)な高
10kL 水槽が空いたため、8 月 1 日(94 日齢)に計
数計量し 10t-1 号水槽に全数移槽した。
水温下での成長量で評価していく、②は種苗生産さ
れた育種種苗群を低酸素下で育成し、高成長群を選
抜していくことによって実施する。
2.育成及び低DO飼育選抜
常時低酸素下で飼育して、成長の良い個体を随時
選抜し、年度内に「育種対象群」を 500 ~ 1,000 尾程
度にすることを目標にした。
事業の方法
1)第1回選別
「育種対象群」は 8 月 1 日以降、全工程で 10kL 水
1.中間育成
槽で飼育管理した。10kL 水槽の底面積は 8.973m
2
選抜育種に供すために本年度種苗生産した「育種
で 、 平 均 体 重 2.89g の 稚 魚 を 14,899 尾収 容 した
対象群」を供試可能な 3g 程度に育成することを目標
(1,660 尾/m )。低 DO 飼育選抜は「過密な状態で飼
にした。
育後、高成長群(大サイズ)を抜き取る」という方法
6 月 15 日(47 日齢)に「育種対象群」を 50kL 種苗
2
で実施した。
生産水槽から全数取り上げ、5kL 水槽 3 基(5t-3 、 4 、
水槽の水量は 4kL とし、槽壁面に沿って注水を
8 号)に概ね 3 等分して収容した。本来は飼育環境
高圧力で噴出させ、常に流水状態を保った。配合飼
履歴を均しくするために、同一水槽で飼育管理すべ
料は林兼産業(株)のノヴァ EP-0 号(粒径 1.8mm)を
きであるが、全数を収容可能な 10kL 水槽群が別事
主 飼 料 と し て 、 同 社 の ジ ュ ニ ア A( 粒 径 1.1 ~
業のヒラメで占められていたため、次善の策として
1.3mm)や(株)ヒガシマルの海涛(みなみ)3 号(粒径
5kL 水槽に分槽した。各水槽は無加温で、満水には
0.9 ± 0.1mm)、中部飼料(株)のえづけーる LL(粒径
せず水位を半分以下とし、水槽壁面に沿って注水を
1.2 ~ 2.0mm)を併用した。日間給餌率を 3%とし、
平 成 23
年 度
23
飼料効率は、先行飼育した「国庫委託ヒラメ」の結果
を参考に 180%で計算した。自動給餌機で 5 時半に
日量の 1/3 を給餌し、残りの 2/3 を 10、14、18 時
に給餌した。DO の測定は、最も低い値を示すと考
えられる排水口で適時測定した。
9 月 1 日(130 日齢)に全数取り上げ、20mm ×
22mm(対角線 27mm)のトリカルネット籠で篩い、
大サイズのみを 10t-2 号水槽に収容した。
2)第2回選別
図1 10kl水槽への注水方法の変更
9 月 1 日(125 日齢)に行った選別の大群(平均全長
*左は9/12(9580尾、129㎏)14時の各箇所のDO値を示した
102.4 ± 8.8mm 、総数 9,937 尾、総重量 100,495g)を
ていたが、新方式では側面から水槽中心に向かって
10t-2 号で、低 DO 条件下で飼育した。
配管された 40mm 塩ビ管にドリルで孔を開け、仰
水槽の仕様、給餌方法及び管理は「第 1 回選別」と
角 45°方向に海水を噴出させ、その先で底面水をリ
同じとした。配合飼料はノヴァ EP-0 号(粒径 1.8mm)
フトアップさせるためにエアストーンで曝気した。
を 9 月 18 日(142 日齢)まで与え、それ以降は(株)
第 3 回選別までは日間給餌率を定めていたが、本
ヒガシマルのひらめ皇 EP-2 号(粒径 4.3 ± 0.3mm)
工程からは飽食給餌とした。8 時半頃と 15 時半頃
を与えた。日間給餌率は 9 月 16 日(140 日齢)まで
の 2 回に分けて手撒きにより給餌した。配合飼料は
は 2.5%で、それ以降は 2.0%とした。飼料効率は第 1
2012 年 3 月 9 日(314 日齢)まではひらめ皇 EP-2 号
回選別時に求められた 136%とすべきところであっ
(粒径 4.3 ± 0.3mm)を、それ以降はひらめ皇 EP-3
たが、計算ミスにより 116%で増重量を計算したた
号(粒径 5.4 ± 0.4mm)与えた。
め給餌量は目標を下回った。
12 月 19 日(234 日齢)に全数を取り上げ計数計量
9 月 28 日(152 日齢)に全数を取り上げ、27mm ×
後、一部受傷魚を除き、新方式の 10t-1 号に移した。
28mm(対角線 38mm)のトリカルネット籠で篩い、
2012 年 1 月 13 日(259 日齢)、2 月 13 日(290 日齢)、3
大サイズのみ 10t-1 号に収容した。
月 16 日(321 日齢)に抽出サンプル測定を行い、3 月
3)第3回選別
19 日(324 日齢)に全数を取り上げ、250mm にライ
9 月 28 日(152 日齢)に行った選別の大群(平均全
ンを引いた計測板を用いて大小選別を行い、大サイ
長 131.5 ± 7.2mm 、総重量 112,775g、総数 5,361 尾)
を 10t-1 号で、低 DO 条件下で飼育した。
ズを洗浄清掃した 10t-1 号に再収容した。
5)第4回選別以降
水槽の仕様、及び管理は従来どおりだが、自動給
3 月 16 日(324 日齢)に行った選別の大群(平均全
餌機は早朝(6 時)のみ使用し(所定の給餌量の 1/3)、
長 259.1 ± 7.7mm、総重量 150.28kg、総数 752 尾)
残り(2/3)は 9 、 13 、 16 時に手撒き給餌した。また 10
を 10t-1 号で、低 DO 条件下で飼育した。飼育管理
月 11 日(165 日齢)以降は自動給餌機の不調により、
方法は前節同様とし、ひらめ皇 EP-3 号を日に 2 回
全量手撒き給餌(9 、 13、16 時)とした。配合飼料は
飽食給餌した。
前回同様、ひらめ皇 EP-2 号(粒径 4.3 ± 0.3mm)を
与えた。日間給餌率は 10 月 14 日(168 日齢)までは
事業の結果
2.0%で、それ以降は 1.5%とし、同時に注水量も増
やした。飼料効率は第 2 回選別時に求められた
125%を適用して増重量を計算した。
1.中間育成
11 月 17 日(202 日齢)に全数を取り上げ、175mm
移槽翌日の 6 月 16 日(48 日齢)に 1,300 尾以上の
にラインを引いた計測板を用いて大小選別を行い、
減耗(斃死、除去)があった以外は特に大きなトラブ
大サイズのみ 10t-2 号に収容した。
ルは無かった。8 月 1 日(94 日齢)までの間の生残率
4)第4回選別
は 71.1%であった。移槽当初は 3 水槽とも均等に収
11 月 17 日(202 日齢)に行った選別の大群(平均全
容したつもり(バケツ採りで分配)であったが、8 月 1
長 186.3 ± 6.7mm、総重量 108,005g、総数 1,731 尾)
日の全数計数の結果及び斃死履歴から逆算すると、
を 10t-2 号で、低 DO 条件下で飼育した。
5t-3 、 4 、 8 号の収容尾数はそれぞれ 6,868 尾、6,396
水槽の仕様は、飼育当初は従来と同じ注水方法の
尾、7,697 尾で、5t-8 号が特に収容密度が高かった。
の水槽で飼育を始めたが、飼育水の DO が水槽内で
その影響は個体の成長量に表れ、平均体重(総数)は
均質となるように 10t-1 号に新たな注水配管を施し
それぞれ、3.12g/尾(4,410 尾)、3.02g/尾(4,695 尾)、
(図 1)、12 月 19 日に「育種対象群」を全て移槽させ
2.61g/尾(5,794 尾)と収容尾数に反比例する結果と
た。従来方式の注水口は側面の底面近くに配置され
なった(図 2)。
大分県水試事業報告
24
齢)くらいから飼育水槽中央の排水口付近に若干残
餌がみられ始め、8 月 29 日(122 日齢)朝に大量斃死
が発生した(図 5)。急遽、排水、死体・残餌の除去、
全開注水を行った。発見時点で既に大量の死体が積
もっており、生残個体も重篤な酸欠個体は有眼側の
体色が灰白色になっていた。全ての処理を終えるの
に 2 時間ほど掛かり、斃死個体は計 1,642 尾であっ
た。
図2
取り上げ後の飼育尾数の変化と
飼育水温の推移
2.育成及び低DO飼育選抜
図 3 に中間育成以降の飼育水温の推移を、図 4 に
低 DO 選抜に伴う飼育尾数の推移を表した。水温デ
ータがところどころ欠測しているのは、飼育施設の
制御盤の内蔵メモリーのトラブルに因る。低 DO 飼
育選抜の結果、飼育尾数を目標(1,000 ~ 500 尾)ど
おりの 752 尾(2012/4/1 現在)にまで絞り込むことが
図5 飼育尾数と排水中のDOの推移(8/1-9/1)
できた。各選別の詳細は以下に記す。
*DOは当日観測した値のうち最も低いものを表した
大量斃死の原因は過給餌にあったと思われる。飼
26.0
水温(℃)
24.0
育開始時に飼料効率を 180%と想定したが、実際の
22.0
飼料効率は 136%に留まり(低 DO 下では飼料効率が
落ちるのかもしれない)、8 月末時期の日間給餌率
20.0
は 3.7%になっていた(計画では 3%)。低 DO と過給
18.0
餌が重なった結果、酸欠状態となり斃死個体が発生
16.0
したと思われる。
14.0
9 月 1 日(125 日齢)に 20mm × 22mm(対角線
12.0
27mm)目合いの篩い籠を用いて、大小選別を行っ
10.0
5/31
7/1
8/1
9/1
10/2
11/2
12/3
1/3
2/3
3/5
図3 中間育成後の飼育水温の推移
*グラフ中の1円は1日(1440分)の水温の平均値を表す
た。大群の平均全長は 102.4 ± 8.8mm で、総重量
は 100,495g、総数は 9,937 尾(重量法)であった。小
群の平均全長は 86.0 ± 6.7mm で、総重量は 10,200g、
総数は 1,617 尾(重量法)であった(図 6)。大群を
10t-2 号に収容し、小群は処分した。
図4 低DO飼育選抜に伴う飼育尾数の推移
1)第1回選別
収容した 8 月 1 日(94 日齢)以降、大きなトラブ
ルはなく順調に成育していたが、8 月 25 日(118 日
図6 「育種対象群」の全長組成(9/1)
*大、小群それぞれの抽出サンプルの個体測定結果を群
全体に引き延ばした
2)第2回選別
収容した 9 月 1 日(125 日齢)以降、大きなトラブ
平 成 23
年 度
25
ルは無く順調に成育した。9 月 9 日(133 日齢)に供
試魚として 310 尾を無作為抽出した以外は、大きな
変動は無かった(図 7)。飼育条件の変更は、9 月 16
日(140 日齢)に残餌が目立ったため、日間給餌率を
2.5%→ 2.0%に変えたことである。
図9 飼育尾数と排水中のDOの推移(9/28-11/17)
*DOは当日観測した値のうち最も低いものを表した
図 10 に 11 月 15 日観測した給餌に伴う DO の変
化を示した。初回の給餌後急速に DO が低下し、徐
々に回復するが、再給餌時に再低下するため、日中
図7 飼育尾数と排水中のDOの推移(9/1-9/28)
は概ね低 DO 下にあることが判った。
*DOは当日観測した値のうち最も低いものを表した
9 月 28 日(152 日齢)に全数を取り上げ、27mm ×
28mm(対角線 38mm)のトリカルネット籠で篩い、
大 小 選 別 を 行 っ た 。 大 群 の 平 均 全 長 は 131.5 ±
7.2mm、総重量は 112,775g、総数は 5,361 尾(重量
法)であった。小群の平均全長は 117.5 ± 7.6mm、
総重量は 62,925g、総数は 4,249 尾(重量法)であっ
た(図 8)。飼育期間中の飼料効率は 125%であった。
大群を 10t-1 号に収容し、小群は処分した。
図10 給餌に伴う飼育水槽中のDOの変化
*矢印は給餌時をその下の数値は給餌量を示す
11 月 17 日(202 日齢)に全数を取り上げ、175mm
にラインを引いた計測板を用いて大小選別を行っ
た。大群の平均全長は 186.3 ± 6.7mm、総重量は
108,005g、総数は 1,731 尾(実測)であった。小群の
平均全長は 164.1 ± 10.6mm で、総重量は 155,355g、
総数は 3,532 尾(実測)であった(図 11)。飼育期間中
の飼料効率は 122%であった。大群を 10t-1 号に収
容し、小群は処分した。
図8 「育種対象群」の全長組成(9/28)
*大、小群それぞれの抽出サンプルの個体測定結果を群
全体に引き延ばした
3)第3回選別
収容した 9 月 28 日(152 日齢)以降、大きなトラ
ブルは無かったが(図 9)、本工程の後半は収容密度
が高くなったためか、酸欠を示す行動(水面をあっ
ぷあっぷする)がしばしばみられた。飼育条件の変
更として、飼育魚が所定の給餌量を全て摂餌しきれ
ない日が 4 日続いたので、10 月 15 日(169 日齢)以
降、日間給餌率を 2.0%→ 1.5%にし、注水量を増や
した。
図11 「育種対象群」の全長組成(9/28)
*大、小群それぞれの抽出サンプルの個体測定結果を群
全体に引き延ばした
大分県水試事業報告
26
4)第4回選別
収容した 11 月 17 日(202 日齢)以降、大きなトラ
ブルは無かった。本工程ではほとんど斃死が発生せ
ず、飼育尾数の主な減少は、12 月 19 日(234 日齢)
の水槽移動時の受傷魚の除去と定期サンプリング
(1/13 、 2/13 、 3/16)によるものであった(図 12)。
尾数(尾)
500
12/19
400
1/13
300
2/13
200
100
0
3/16
全長(㎜)
図14 育種対象群の全長組成の推移(12/19→3/16)
*抽出サンプルの個体測定結果を群全体に引き延ばした
図12 飼育尾数と排水中のDOの推移(11/18-3/19)
*DOは当日観測した値のうち最も低いものを表した
本工程から配合飼料の給餌を、日間給餌率に沿っ
た制限給餌から、飽食給餌に切り替えた。低 DO 下
での飼育であったが、概ね摂餌は良好で、「育種対
象群」は順調に成長した(図 13)。
図15
「育種対象群」の全長組成(3/19)
*大、小群それぞれの抽出サンプルの個体測定結果を群
全体に引き延ばした
→ 3/19)の飼料効率は 100%であった。大群を 10t-1
号に再収容し、小群は処分した。
5)第4回選別以降
図13 日間摂餌率の推移と平均体重の変化
(11/17→3/17)
図 1 に示したとおり、従来方式の注水口は水槽側
面の底近くに配置されていたため、注水口付近及び
収容した 3 月 19 日(324 日齢)以降、死亡魚は無
かった。飼育管理は前節を踏襲したが、飼育密度が
下がったため DO がやや上がり、日間摂餌率も若干
上昇した(図 16)。
側面では相対的に DO が高く、円心の排水口付近で
は 1mg/L 近く DO 値が低かったが、新方式ではヒ
ラメが定位している底面の DO 値の差は最大でも
0.5mg/L 以下に収まるようになった。
12 月 19 日(234 日齢)の「育種対象群」の平均全長
は 212.9 ± 8.0mm で、翌年 1 月 13 日(259 日齢)に
は 226.4 ± 8.4mm、2 月 13 日(290 日齢)は 239.8 ±
9.8mm、3 月 16 日(321 日齢)は 253.9 ± 10.6mm で
あった(図 14)。徐々にバラツキが大きくなってき
たので、3 月 19 日(324 日齢)に全数を取り上げ、
250mm にラインを引いた計測板を用いて大小選別
を行った。
大 群 の 平 均 全 長 は 259.1 ± 7.7mm、 総 重 量 は
150.28kg、総数は 752 尾(実測)であった。小群の平
均全長は 243.5 ± 7.3mm で、総重量は 125.25kg、
総数は 776 尾(実測)であった(図 15)。飼育前半
(11/18 → 12/19)の飼料効率は 121%で、後半(12/19
図16 育種対象群のDOと日間摂餌率の推移
(2012年3月)
今後は低 DO 下飼育選抜(若しくは急性酸欠選抜)
で更に「育種対象群」の総数を絞り込みピットタグで
個体標識したうえで、28 ℃か 29 ℃に加温した水槽
で 1 ~ 2 ヵ月程度飽食給餌飼育を行い、高成長個体
を親魚として選抜し、可能であれば F1 を種苗生産
したい。
平 成 23
年 度
27
ヒラメの高水温耐性品種の作出-5
高水温下飼育試験(2010年生産群)
景平真明・金澤 健・中里礼大・井本有治
事業の目的
・2011 年 3 月に高水温負荷選抜(2 割生残)を実施し
高水温生残魚を確保した。また、未処理魚も保持し
2010 年に種苗生産し、致死的高水温負荷生残(ヒ
た。
ートショック)試験を経て選抜したヒラメが、高水
温下の飼育でも良好な成長を示すのかを確認するこ
とを目的に試験を実施した。また、同時に高水温耐
性ヒラメ育種用の有望親魚を探ることも目的とし
3. 試験設定
1)供試魚群の供試までの管理
【人工♀×人工♂】
2010 年度末に実施した致死的高水温負荷選抜の
た。
後、「高水温生残魚」と「未処理魚」それぞれを 5kL
水槽(5t-8 号、 4 号)に収容し、無加温の殺菌海水で
事業の方法
飼育した。
2012 年 6 月 6 日に「高水温生残魚」 100 尾と「未処
1.試験概要
理魚」 48 尾にピットタグを装着し個体測定し、飼育
家系として 2 系統、供試履歴として 2 組の、合計 4
研究棟(屋内飼育実験施設)外の円形 20kL 水槽に移
群(2 系統× 2 組)を高水温(27 ℃、29 ℃)に維持し
した。外円形 20kL 水槽では、寒冷紗の天幕を張り、
た水槽に収容し、飽食給餌で飼育後に成長量を比較
充分な量の生海水を注水し、(株)ヒガシマルのひら
した。供試履歴の 2 組とは、「致死的高水温負荷試
め皇 EP-5 号を 1 日 1 回飽食給餌した。
験の生残魚(以後、高水温生残魚という)」と「未処理
魚」を指す。
8 月 22 日に全数を取り上げ飼育研究棟に搬入し、
個体測定後、本「高水温下飼育試験」に供する個体を
一定の基準の下に抽出し、10kL 円形試験水槽(10t-3
2.2家系の生産飼育履歴
号)に移した。残りの「高水温生産魚」 72 尾を 5t-4
【人工♀×人工♂】
号に、「無処理魚」 23 尾を 5t-8 号に収容した。
・愛媛県の A 水産が種苗生産し、大分県漁協下入
②【人工♀×天然♂】
津支店の組合員が陸上水槽で養殖生産していたもの
2010 年度末~本年度当初に実施した致死的高水
を、親魚として 2009 年 11 ~ 12 月に購入し、2010
温負荷選抜の後、「高水温生残魚」と「未処理魚」それ
年 2 月 21 日に自然採卵により得た卵を用いて当研
ぞれを 5kL 水槽(5t-7 号、 3 号)に収容し、無加温の
究部で種苗生産した。
殺菌海水下で飼育した。
・中間育成中(濾過海水)の 2010 年 6/18 ~ 7/15 の
6 月 6 日に「高水温生残魚」 92 尾に対して、6 月 8
間(10cm サイズ)にスクーチカ症が大発生し飼育魚
日に「高水温生残魚」 10 尾、「未処理魚」 40 尾に対し
が 10,193 尾から 1,248 尾に大減耗した後に、収束し
て、ピットタグを装着し個体測定した。ただ、6 月 8
た。以後、生残魚は順調に成育した。
日の処置の際、作業効率を優先しまとめて麻酔処理
・2011 年 1 ~ 3 月に高水温負荷選抜(2 割生残)を実
をしたため、13 尾が覚醒せず減耗させてしまった。6
施し高水温生残魚を確保した。また、未処理魚も保
月 8 日の測定後、全数を 5t-7 号に収容し、充分な
持した。
量の殺菌海水を注水し、ひらめ皇 EP-5 号を 1 日 1
【人工♀×天然♂】
回飽食給餌した。
・前述の A 水産人工種苗由来の♀ 5 尾と、大分県
8 月 23 日に全数を取り上げ個体測定後、本「高水
漁協鶴見支店で 2010 年 4 月 13 日に水揚げされた♂
温下飼育試験」に供する個体として「高水温生残魚」
11 尾を、4 月 14 日に人工授精し、種苗生産した。
の中から一定の基準を満たす 27 尾を抽出し、「無処
・中間育成中に、一時滑走細菌症が発生したが、抗
理魚」の全個体 27 尾とともに 10kL 円形試験水槽
菌剤の投与で大量斃死には至らなかった。
(10t-3 号)に移した。残りの「高水温生産魚」 74 尾を
大分水研事業報告
28
5t-7 号に収容した。
2)供試魚群からの供試魚の選定
3)高水温下飼育試験の試験水槽の設定
本試験では長期間加温飼育しなくてはならないた
「人工♀×天然♂」の「無処理魚」が 27 尾しか確保
め、換水率は極力抑えたいところであるが、加温は
できなかったため、供試 4 群(区)の供試個体数を 27
熱交換パイプによる間接加温であるため、ある程度
尾/区とした。
攪拌してやらなければ温度ムラが生じる。また、供
【人工♀×人工♂】
試魚を 100 尾以上収容し給餌飼育するため、流水に
供試魚の能力を標準化するため、6 月 6 日から 8
しなければ酸欠に陥る恐れがある。そのため、注水
月 22 日までの成長量において、高成長個体と低成
とは別に水中ポンプによる流水ユニットを水槽外面
長個体を除いた。具体的には全長の成長倍率が 1.10
に設置し、常に飼育水が回転するようにした(図 1)。
未満の個体(「高水温生残魚」 2 尾、「未処理魚」 10 尾)
を除いた。また、全長の成長倍率が 1.27 以上の個
体(「高水温生残魚」 2 尾、「未処理魚」は無し)も候補
魚から除いた。その結果、「未処理魚」の候補魚が 31
尾となり、更に全長が 400mm 以上のものと 320mm
未満の個体を除き 27 尾を供試魚とした。「高水温生
残魚」も同じ基準を満たす候補魚から、27 尾を無作
為抽出し供試魚とした。
選出された 2 群の供試魚の平均個体値と平均成長
倍率を表 1 に示した。
表1 人工♀×人工♂家系の2群の供試魚の平均値
平均全長 平均体重 平均成長倍率(6/6→8/22)
(㎜)
(g)
全長
体重
「高水温生残魚」 360 ± 18 532 ± 85
1.18 ± 0.05 1.58 ± 0.22
「未処理魚」
368 ± 18
557 ± 82
1.15 ± 0.04 1.47 ± 0.19
図2 水槽内部の状況
飼育水量は 1kL とし、1 回転/日となるように殺
菌海水を注水した。酸素不足の影響を排除するため、
水槽側面に配置したエアストーンから高濃度酸素を
②【人工♀×天然♂】
既に「未処理魚」は 27 尾しか残存していないので、
全個体供試魚とした。「高水温生残魚」は全長の成長
倍率が 1.57 と飛び抜けて高かった 1 個体を除き、27
尾を無作為抽出した。
選出された 2 群の供試魚の平均個体値と平均成長
倍率を表 2 に示した。
含むエアを曝気させ、常に溶存酸素濃度(以下、DO
という)が 100%を越えるよう留意した。
水温はセンサー制御システムにより自動調整し、
測温値は 1 分毎に制御盤のメモリーに記録した。
飼料は毎日 16 時頃ひらめ皇 EP-6 号を手撒きによ
り飽食給餌した。排泄物等の汚れはサイホン式底掃
除器具により、適時除去した。
4)27℃下飼育試験
表2 人工♀×天然♂家系の2群の供試魚の平均値
平均全長 平均体重 平均成長倍率(6/8→8/23)
(㎜)
(g)
全長
体重
「高水温生残魚」 315 ± 19 371 ± 68
1.29 ± 0.04 2.07 ± 0.24
「未処理魚」
313 ± 30 361 ± 109 1.20 ± 0.04 1.78 ± 0.23
8 月 22 日に供試魚群を収容してから、無給餌、
無加温(水槽水温は 24 ~ 26 ℃前後)で管理した。8
月 26 日の 15 時から 27 ℃に向けて加温を開始した。
給餌は 8 月 27 日から開始し、9 月 27 日まで継続し
た。水質モニタリングのため、8 月 27 日(給餌直
前)、9 月 6 日、9 月 18 日、9 月 26 日に飼育水を採
水し、NH4-N、NO2-N、NO3-N、PO4-P 濃度を調べた。9
月 29 日に全個体取り上げ個体測定後、試験水槽に
再収容した。
5)29℃下飼育試験-1回目
27 ℃下飼育試験に引き続いて 29 ℃試験を実施し
た。9 月 29 日に測定後再収容した供試群をそのま
ま 27 ℃で給餌飼育し、10 月 5 日から飼育水温を 29
℃に上げ試験を開始した。しかし、10 月 9 日に酸
図1 試験水槽の構造
素発生機が故障停止し、急激に DO が低下し斃死魚
が発生したため中断した。
平 成 23
6)29℃下飼育試験-2回目
年 度
29
飼育期間中に「人工♀×天然♂」家系の「高水温生
10 月 9 日の事故から 4 日間無給餌、27 ℃飼育の
残魚」のうち 1 尾が 9 月 10 日に死亡した。その個体
後、10 月 12 日から飼育水温を 29 ℃にし再スター
は収容時よりも全長は 2mm 伸びていたが(336 →
トした。同日から給餌を開始し、11 月 10 日まで継
338mm)、体重は 6g 減少していた(407 → 401g)。
続した。水質モニタリングのため、10 月 12 日(給
また、原因は謎であるが、「人工♀×人工♀」家系の
餌直前)、10 月 21 日、11 月 1 日に飼育水を採水し、
「未処理魚」群の中の 1 尾と、「人工♀×天然♂」家系
NH4-N、 NO2-N、 NO3-N、 PO4-P 濃 度 を 調 べ た 。 11
の「高水温生残魚」群の中の 1 尾が行方不明であっ
月 11 日に全個体取り上げ個体測定後、試験水槽に
た。
再収容し、以後無加温で飼育した。
当初は成長量の比較を全長で行う予定であった
が、供試魚の中に体重が減少する個体がみられたの
で、より高水温適応能力が反映されやすい体重を指
事業の結果
標とすることにした(全長は減少しないため)。
「人工♀×人工♂」家系では 27 ℃の水温下では
1. 27℃下飼育試験
試験期間中の最高水温は 28.1 ℃、最低水温は 26.7
「未処理魚」区の方が「高水温生残魚」区よりも成長が
僅かに良かった(図 5)。
℃、平均水温は 27.2 ± 0.3 ℃で、ほぼ計画どおりに
850
水温を調整することができた。
水質は、水産用水基準(2005 年版)の水産 3 種の
基準である、全窒素 1.0mg/L 以下、全リン 0.09mg/L
可能な水質を維持できたと考える(図 3)。
750
9/28体重(g)
以下を、9 月 26 日以外はクリアできており、実験
人工♀×人工♂
800
700
650
600
550
高水温生残魚
500
未処理魚
線形 (高水温生残魚)
450
線形 (未処理魚)
400
400
500
600
700
800
8/22体重(g)
図3 27℃下飼育試験中の水質の推移
図5 人工♀×人工♂家系の27℃下での増体重
9 月の中旬頃に、他の水槽との兼ね合いで多少 DO
700
不足が生じたが、それ以外はほぼ 80%以上を保つ
650
ことができた。摂餌量は DO 不足の時と、前日に大
人工♀×天然♂
600
量に摂餌した時に低下したが、全般に渡って概ね良
550
9/28体重(g)
好に摂餌した(図 4)。
500
450
400
350
高水温生残魚
未処理魚
300
線形 (高水温生残魚)
250
線形 (未処理魚)
200
200
図4 27℃飼育下飼育試験中のDOと摂餌量の推移
300
400
500
600
700
8/22体重(g)
図6 人工♀×天然♂家系の27℃下での増体重
大分水研事業報告
30
一方「人工♀×天然♂」家系では逆に極僅かに「高
今回は DO を 80 %以上に保つことができた。DO
水温生残魚」区の方が「未処理魚」区よりも成長が上
が安定していた一方で、摂餌量はムラが多く、連続
回った(図 6)。しかし、いずれの結果も有意差は
して摂餌が良かったことはあまり無かった。特に、
認められなかった(共分散分析-ANCOVA)。
前日に大量に摂餌したときには全く食べないことが
しばしばあった。試験前は高水温のストレスで摂餌
2.29℃下飼育試験-1回目
27 ℃下飼育試験に引き続き、10 月 5 日から 29 ℃
量が極端に減少することを心配したが、摂餌は概ね
良好であったと思われる(図 8)。
試験を開始した。水温を上げたため、DO 不足は供
試魚にストレスになると考え、酸素供給量を前回試
験時よりも増やした。そのため、飼育水の DO は安
定して 120%を越えていたが、10 月 8 日の朝に斃死
魚が発生した。多くの個体が喘ぎながら泳いでいた
ので、酸欠であることは一見して判った。DO は
2.20mg/L(34.1%)と極めて低く、酸素発生装置が停
止していたことが原因であった。酸素発生装置は機
内の酸素濃度が既定値よりも低くなるとロックが掛
かる仕組みになっているが、供給量を上げたため酸
素の濃縮が間に合わず低濃度となり、自動停止した
ものであった。直ちにエアレーションを全開放し、
強曝気を施したところ、15 分後には DO は 3.32mg/L
(52.0%)となり、全個体着底した。その後 DO は 80%
前後で安定し、設定水温も 29 ℃→ 27 ℃に変更した。
10 月 8 日に斃死魚を 2 尾除去したが、10 月 10 日
にも 1 尾を除去した。この個体は腐敗が著しかった
ので、10 月 8 日死亡個体の取り残しと思われた。
供試魚のダメージが回復したと思われたので、29
℃下飼育試験を 10 月 12 日から再開した。
3.29℃下飼育試験-2回目
試験期間中の最高水温は 29.7 ℃、最低水温は 26.4
℃、平均水温は 29.0 ± 0.3 ℃で、ほぼ計画どおりに
水温を調整することができた。
水質モニタリングでは、全体的に 27 ℃試験の時
よりも値が高かった(図 7)。
図8 29℃飼育下飼育試験中のDOと摂餌量の推移
試験期間中に斃死魚は出なかったが、熱交換パイ
プで火傷を負った個体がみられたので、10 月 23 日
にボイラーの釜の温度を 70 ℃→ 40 ℃に下げた。し
かし、水温が 28 ℃までしか上がらなくなったので、
翌 24 日に釜の温度を 40 ℃→ 50 ℃に上げた。
「人工♀×人工♂」家系では 29 ℃の水温下では「未
処理魚」区の方が「高水温生残魚」区よりも成長が僅
かに良かった(図 9)。一方「人工♀×天然♂」家系で
は逆に「高水温生残魚」区の方が「未処理魚」区よりも
僅かに成長が上回った(図 10)。しかし、いずれの
結果も有意差は認められなかった(共分散分析
-ANCOVA)。
以上、27 ℃、29 ℃両試験において、致死的高水
温の耐過魚が高成長を示すという結果は得られなか
った。
人工♀×人工♂
900
11/11体重(g)
800
700
600
高水温生残魚
図7 29℃下飼育試験中の水質の推移
未処理魚
500
線形 (高水温生残魚)
これは、諸事情により燃油代を節約せざるを得ず、
2 ~ 3 割ほど注水量を下げたためと思われる。水産
用水基準(水産 3 種)をいずれの日も満たしたておら
ず、試験結果への影響は否定できないが、飼育管理
上の問題は無かったので実験を遂行した。
線形 (未処理魚)
400
400
500
600
700
800
900
9/29体重(g)
図9 人工♀×人工♂家系の29℃下での増体重
平 成 23
人工♀×天然♂
700
年 度
31
29℃
27℃
1400
人工♀×人工♂
高水温生残魚
体重
(g)
052E
1726
7510
153A
2452
3515
3051
4E35
7926
7A68
7E20
1B30
7866
7522
7553
6209
7557
0217
2B73
7919
7527
7560
2016
4254
382B
0749
0C33
1200
650
11/11体重(g)
1000
600
800
550
600
500
高水温生残魚
未処理魚
450
400
線形 (高水温生残魚)
線形 (未処理魚)
200
5/31
400
400
450
500
550
600
650
700
9/29体重(g)
1400
体重
(g)
7/1
8/1
9/1
10/2
11/2
12/3
1/3
2/3
人工♀×人工♂
未処理魚
7976
4150
2731
7037
247F
3B02
7900
7547
4230
7500
2E19
761F
7908
7674
5260
246E
006B
7542
7918
1536
7565
260E
7939
7363
550D
4F35
1200
図10 人工♀×天然♂家系の29℃下での増体重
1000
4. 親魚候補の探索
高水温飼育下で成長の良い個体を探索した
800
(図 11)。
・「人工♀×人工♂」の高水温生残魚群
600
153A(?)、1726(♂)、3515(♂)、1B30(♂)、052E(♂)、
7E20(♂)が 27 ℃、29 ℃を通じて良好な成長を示し
た。
・「人工♀×人工♂」の未処理魚群
4150(?)、7037(?)、7976(♂)、7547(♂)、7918(♂)、
246E(♂)が 27 ℃、29 ℃を通じて良好な成長を示し
400
200
5/31
1000
体重
(g)
900
た。
800
・「人工♀×天然♂」の高水温生残魚
700
7525(?)、5348(?)、0C69(♂)、7914(♂)、2656(♂)、
7614(♂)、7566(♂)、573B(♂)が 27 ℃、29 ℃を通
8/1
9/1
10/2
11/2
12/3
1/3
2/3
人工♀×天然♂
高水温生残魚
600
じて良好な成長を示した。
500
・「人工♀×天然♂」の未処理魚群
400
1B31(?)、 1B25(♀)、 1A7C(♂)、 1B28(♂)、 1B1B
300
(♂)、 1B0C(♂)、 1B17(♂)、 1A72(♂)、 1B2C(♂)、
7/1
200
1A77(♂)が 27 ℃、29 ℃を通じて良好な成長を示し
た。
上記個体は高水温耐性家系選抜の親魚候補とした
い。
100
5/31
体重
1,100
(g)
1,000
7/1
8/1
9/1
10/2
11/2
12/3
1/3
2/3
人工♀×天然♂
未処理魚
1A68
1B31
1A63
1A6A
1B14
1A7C
1A74
1B01
1A76
1B0A
1B28
1B25
1A7E
1B0C
1B27
1B1B
1B04
1B11
1B2F
1B17
1B07
1A72
1B2C
1A71
1B08
1A77
1A7F
900
800
700
600
500
400
300
200
100
5/31
7/1
8/1
0C69
7525
5348
300F
674B
4253
4F5C
7516
0E31
7C1D
7520
420B
2656
7537
7566
5C08
7524
7914
7951
2A45
6239
7614
3156
1A70
573B
260F
9/1
10/2
11/2
12/3
1/3
図11 供試魚群の成長履歴
2/3
大分水研事業報告
32
磯焼け対策に関する技術開発
井本有治
事業の目的
行い、3 月 26 日には船上のコンプレッサーを使っ
た高圧水で網掃除を行った。今年度は夏期に大型台
大分県豊後水道域の一部において、1996 年頃に
風の被害があったため、11 月 21 日にロープの補修
発生したと考えられる大型褐藻類の衰退、いわゆる
と張り直し、11 月 4 日と 3 月 28 日には土嚢の追加
磯焼けは、その後は回復しないものの拡大すること
を行った。また、台風のため囲い網の一部が破損し
もなく継続している。水産研究部では、カジメ類が
て魚類が侵入したため、10 月 3 日と 11 月 21 日に
減少した原因解明と復旧対策を目的に 1999 年度か
囲い網の中に建網を設置し、魚類の駆除を行った。
ら各種調査を実施し、磯焼けの持続要因として植食
蒲江
性魚類の食害が関与していることを明らかにした。
サエゴヤ
2004 年度からは、特に磯焼けからの回復技術を見
●
いだすことを目的とし、2007 年度までは佐伯市鶴
藻場調査
見大島での仕切網を用いた磯焼け岩礁域での藻場の
回復試験を中心に実施した。2007 年度からは、比
較的波浪が強い磯焼け岩礁域に隣接する砂質海底に
洲の鼻
おいて、クロメとホンダワラ類の藻場を造成する技
■
術の確立を中心に取り組んでいる。
蚊帳式囲網
N
屋形島
事業の方法
1.蚊帳式囲網を用いた磯焼け域での藻場造成
500m
図1
蚊帳式囲網と藻場調査の位置
2007 ~ 2008 年度に佐伯市蒲江屋形島洲の鼻に造
成した蚊帳式囲網(囲網は 14 × 14 × 1.7m で網目 7
2)調査
節、内部の造成基質は 10 × 10m の範囲に 1.2 × 1.2
囲網の中や周囲の海藻の生育状況を調べるため、
× 1.0m のコンクリートブロック 5 基と 0.5 ~ 2 ト
月に 1 回スキューバを用いて潜水観察し、海藻の状
ンの自然石)を維持管理し藻場の形成状況を調べた。
況を確認した。
試験区の位置を図 1 に示した。
2.磯焼け域に残存する藻場の季節変動
1)施設の維持管理
蒲江屋形島の磯焼け砂質域の試験区から 2km ほ
施設の規格は次のとおり。
ど離れた蒲江湾内のサエゴヤには、クロメを優占種
大きさ
14m × 14m × 1.7m
とする群落が存在する(図 1)。この藻場において
目合
7節
毎月 1 回、1m の海藻の定量採集を 2 ヵ所で行い、
網目の形状 角目
クロメについては個体ごとに全長、茎長、湿重量を
結節
無結節
測定し、他の種類については種類ごとに湿重量を測
糸の太さ
400 デニール/ 50 本
定した。
その他
防藻染色
ダイバー出入り口用チャック 2 ヵ所
2
3.磯焼け域での水温測定
メモリー式の水温計(TidbiT、Onset 社)を屋形
スキューバ潜水による施設の点検と軽微な補修を
周年にわたって月に 3 日ずつ、地元の海士漁業組合
へ委託した。6 月 3 日に網修理とフジツボ落としを
島洲の鼻の水深 5m 付近の海底に設置して、30 分間
隔で水温を記録した。
平 成 23
年 度
事業の結果
33
4,000
3,500
囲網の中の優占種はクロメとヨレモクモドキであ
った。両種とも今年度は母藻移植を行わなかったが、
3,000
湿質重( g/㎡)
1.蚊帳式囲網を用いた磯焼け域での藻場造成
新しい世代の発生が見られた。クロメは春~夏にか
2,500
2,000
1,500
1,000
500
けて当年発生群の生長とともに量は増加した。7 月
0
8 11 2 5 8 11 2 5 8 11 2 5 8 11 2 5 8 11 2 5 8 11 2
の台風で囲い網が破損して魚類が侵入したため、そ
れ以降食害が目立つようになった。建網による魚類
2006年 2007年
2008年
2009年
2010年
2011年2012年
駆除を 2 回実施したため魚類の数は減少し、食害も
1400
発生群が見られ、順調に生長している。ヨレモクモ
1200
ドキは 6 月に急激に減少し、7 月調査時には確認で
きなくなった。その後 9 月に幼体が出現したが、例
年より数は少なく、生長が悪かった。食害を受けて
湿重量( g/㎡)
目立たなくなった。1 月調査時にはクロメの新しい
1000
800
600
400
おり、1 月以降はほとんど確認されなくなった。7
200
月の囲い網の破損で侵入した魚類(主にブダイ)は
0
8 11 2 5 8 11 2 5 8 11 2 5 8 11 2 5 8 11 2 5 8 11 2
クロメよりヨレモクモドキの幼体を好んで摂餌した
2006年 2007年
と考えられる。
2010 年 4 月に殻長 34mm で放流した放流したア
図 2
2008年
2009年
2010年
2011年2012年
蒲江サエゴヤにおけるクロメ(上段)とホン
ワビは 2011 年 6 月には 62mm サイズに成長してい
ダワラ類(下段)の現存量(湿重量 g/㎡)
た。囲い網の中の石は大きくて動かせないため、歩
の月変化
留調査は難しい。
網の外ではクロメの当年発生群が見られ生長して
いたが、11 月に急激に減少し、12 月調査時には全
く確認できなくなった。11 月以前も魚による食害
痕は確認されていたが、秋に食圧が増加したと考え
られる。その後 2 月調査時には当年発生群が多数見
られるようになった。周年を通してクロメが確認さ
れたのは網のすぐ外側であり、離れた場所では確認
されなかった。
2.磯焼け域に残存する藻場の季節変動
図3
サエゴヤで採集した 1m 当たりの現存量をクロメ
2
蒲江磯焼け地域の水温変動
とホンダワラ類に分けて、2006 年 8 月から 2012 年 3
月までを月別に図 2 に示した。クロメは今年度も例
年どおり夏期に最大、冬期に最少となる季節変動を
を受けたが、軽微な補修で対応可能であった。海中
示した。ホンダワラ類は今年度も前年度と同様に周
に網等の構造物を設置した場合に台風被害の問題は
年にわたってほとんど見られなかった。
常に生じるが、今回は蚊帳方式の優秀性が証明され
た。囲い網内に放流したアワビは成長しているよう
3.磯焼け域での水温測定
過去 4 年間の測定結果を図 3 に示した。昨年度は
冬期の水温の下がり方が大きかったが、今年度はそ
のような現象は見られず、ほぼ周年並に推移した。
であるが、石が大きくて動かせないため、坪刈り調
査が難しい。漁獲サイズになった段階で取り上げ、
生残率と成長を確認する必要がある。
蒲江のサエゴヤに残る藻場では、昨年度は冬季に
クロメが多く残っていたが、今年度は例年どおりほ
ぼ消滅した。10 月~ 11 月にかけての減少が激しく、
今後の問題点
魚類の食害によるものと考えられた。なぜこの時期
に食害が急に増加するのか、原因を究明する必要が
蚊帳方式の囲網試験区では夏季に大型台風の被害
ある。
大分水研事業報告
34
シラスに関する魚群マップの作成と
迅速的な情報提供システムの構築
(水研委託)
行平真也・徳光俊二
月 30 日、10 月 7 日、10 月 18 日に調査を行った。
事業の目的
調査には漁業調査船「豊洋」(75t)を用いた。海洋
近年、シラスの漁獲量が減少する一方で、燃油価
調査項目は、気象観測、コンパクト CTD(アレッ
格は高騰しており、漁家は厳しい経営を余儀なくさ
ク電子社製 ASTD687)による底層までの 1m 間隔
れている。船びき網漁業にとって効率的な魚群の探
の水温と塩分、透明度、ADCP(RD 社製多層式超
索による燃料経費の削減は喫緊の課題である。
音波流向流速計)による流況、計量魚群探知機(カ
本事業では、船びき網漁業者の効率的な操業を支
イジョーソニック社製 KFC-3000)による魚群分布
援する目的で、計量魚群探知機データから抽出した
量とした。卵稚仔は改良型ノルパックネットの鉛直
シラス魚群を水温等の海況情報と重ねて海図上に表
曳きにより採集し、ホルマリン固定後、カタクチイ
示し、WEB 上に即日配信するシステムを構築する。
ワシ卵稚仔の同定及び計数を行った。なお、卵稚仔
本年度は、調査船豊洋が航行する際に情報提供を行
数は、海面 1m 当たりの密度に換算して比較した。
2
うとともに佐伯湾及び別府湾において、シラスの漁
場加入機構を明らかにするために海洋調査と卵稚仔
3.別府湾シラス漁場調査
浅海定線調査の定点を基に、調査点 14 点(図 2)
調査を実施した。
を設置し、2011 年 9 月 26 日から 9 月 27 日、10 月 25
日から 10 月 26 日に調査を行った。なお、調査項目
については佐伯湾と同様である(浅海定線調査同様、
事業の方法
S-24 及び S-28 では卵稚仔採集は実施していない)。
1.シラス魚群情報の提供
本年度、調査船豊洋が航行する際に、情報提供シ
事業の結果
ステムを用いて情報発信を行った。
1.シラス魚群情報の提供
2.佐伯湾シラス漁場調査
本年度、計 86 回の情報提供を行った。
豊後 水 道 中 部 に 位 置 す る 佐 伯湾 に 調 査 点 11 点
(図 1)を設置し、2011 年 6 月 30 日、7 月 8 日、9
33.45
33.1
杵築
蒲戸埼
33.05
33.4
上浦
St.2
St.3
St.4
33.35
St.8
33
S-21
日出
St.1
St.7
St.6
S-29
S-28
St.5
S-30
St.9
S-31
St.11
S-20
S-26
33.3
St.10
S-22
S-27
S-24
S-23
S-19
S-25
33.25
32.95
鶴御埼
131.9
131.95
図1
132
132.05
132.1
132.15
調査定点図(佐伯湾)
e -1
132.2
132.25
33.2
131.45
131.5
131.55
図2
131.6
131.65
131.7
131.75
131.8
調査定点図(別府湾)
131.85
131.9
131.95
平 成 23
2.佐伯湾シラス漁場調査
年 度
35
3.別府湾シラス漁場調査
1)水温
1)水温
表層水温の水平分布状況を図 3 に示した。6 月 30
表層水温の水平分布状況を図 7 に示した。表層で
日と 7 月 8 日の調査において、湾奥部に高温域が分
観測された水温の範囲は 9 月 26 日から 9 月 27 日の
布した。
調査では 22.5 ~ 24.1 ℃、10 月 25 日から 10 月 26
日の調査では 21.9 ~ 22.3 ℃であった。
2)塩分
表層塩分の水平分布状況を図 4 に示した。表層で
2)塩分
観測された塩分の範囲は 30.52 ~ 34.27psu で、番匠
表層塩分の水平分布状況を図 8 に示した。表層で
川河口において低塩分域が分布した。
観測された塩分の範囲は 30.04 ~ 33.24psu であっ
た。
3)卵稚仔調査
カタクチイワシの卵の採集結果を図 5 に、稚仔の
3)卵稚仔調査
採集結果を図 6 に示した。卵について、6 月 30 日、7
カタクチイワシの卵の採集結果を図 9 に、稚仔の
月 8 日の調査では St.1 の調査地点で多く分布して
採集結果を図 10 に示した。卵について、9 月 26 日
いた。6 月、7 月の傾向としては、湾口部から湾奥
から 9 月 27 日の調査では湾奥部に多く分布してい
部にかけて分布量が増加していたが、9 月、10 月に
たが、10 月 25 日から 10 月 26 日の調査ではほとん
おいては、湾口部に多く卵が分布していた。また、
ど見られなかった。また、稚仔について、調査期間
稚仔について、10 月 18 日の調査ではほとんど見ら
中は、ほとんど見られなかった。
れなかったが、その他の調査では、全域にわたり、
分布していた。
33.1
33.1
33.05
33.05
33
33
32.95
32.95
2011年6月30日
131.9
131.95
2011年7月8日
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
131.9
33.1
33.1
33.05
33.05
33
33
32.95
32.95
2011年9月30日
131.9
131.95
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
131.95
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
2011年10月7日
131.9
131.95
132
33.1
33.05
33
32.95
2011年10月18日
131.9
131.95
132
図3
佐伯湾における表層水温分布図(℃)
大分水研事業報告
36
33.1
33.1
33.05
33.05
33
33
32.95
32.95
2011年6月30日
131.9
131.95
2011年7月8日
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
131.9
33.1
33.1
33.05
33.05
33
33
32.95
32.95
2011年9月30日
131.9
131.95
132
131.95
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
2011年10月7日
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
図4
佐伯湾における表層塩分分布図(psu)
131.9
131.95
33.1
33.05
33
32.95
2011年10月18日
131.9
131.95
132
平 成 23
33.1
33.1
33.05
33.05
33
33
32.95
131.95
2011年7月8日
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
131.9
33.1
33.1
33.05
33.05
33
33
32.95
32.95
2011年9月30日
131.9
131.95
37
32.95
2011年6月30日
131.9
年 度
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
131.95
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
2011年10月7日
131.9
131.95
33.1
0出現なし
to 1
33.05
1 to 10
1~10粒/㎡
33
10 to 50
10~50粒/㎡
32.95
2011年10月18日
50~100粒/㎡
50
to 100
131.9
131.95
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
100
to 500
100~500粒/㎡
500
to 1000
500~
粒/㎡
図5
佐伯湾におけるカタクチイワシ卵の水平分布図(1 ㎡あたり)
大分水研事業報告
38
33.1
33.1
33.05
33.05
33
33
32.95
32.95
2011年6月30日
131.9
131.95
2011年7月8日
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
131.9
33.1
33.1
33.05
33.05
33
33
32.95
32.95
2011年9月30日
131.9
131.95
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
131.95
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
2011年10月7日
131.9
131.95
33.1
0出現なし
to 1
33.05
11~10尾/㎡
to 10
33
10 to 50
10~50尾/㎡
32.95
2011年10月18日
131.9
131.95
132
132.05
132.1
132.15
132.2
132.25
50~100尾/㎡
50
to 100
100
to 500
100~500尾/㎡
500
to 1000
500~
尾/㎡
図6
佐伯湾におけるカタクチイワシ稚仔の水平分布図(1 ㎡あたり)
平 成 23
33.45
33.45
33.4
33.4
33.35
33.35
33.3
33.3
33.25
33.25
年 度
2011年9月26日-9月27日
33.2
131.45
131.5
131.55
131.6
131.65
2011年10月25日-10月26日
131.7
131.75
131.8
図7
131.85
131.9
33.2
131.45
131.95
33.45
33.4
33.4
33.35
33.35
33.3
33.3
33.25
33.25
2011年9月26日-9月27日
131.5
131.55
131.6
131.65
131.5
131.55
131.6
131.65
131.7
131.75
131.8
131.85
131.9
131.95
131.75
131.8
131.85
131.9
131.95
別府湾における表層水温分布図(℃)
33.45
33.2
131.45
39
2011年10月25日-10月26日
131.7
131.75
131.8
図8
131.85
131.9
33.2
131.45
131.95
131.5
131.55
131.6
131.65
131.7
別府湾における表層塩分分布図(psu)
33.45
33.45
0出現なし
to 1
0出現なし
to 1
11~10粒/㎡
to 10
33.4
11~10粒/㎡
to 10
33.4
10~50粒/㎡
10
to 50
10~50粒/㎡
10
to 50
50~100粒/㎡
50
to 100
33.35
33.3
33.3
33.25
33.25
2011年9月26日-9月27日
33.2
131.45
131.5
131.55
131.6
131.65
50~100粒/㎡
50
to 100
33.35
2011年10月25日-10月26日
131.7
131.75
図9
131.8
131.85
131.9
131.95
33.2
131.45
131.5
131.55
131.6
131.65
131.7
131.75
131.8
33.45
131.9
131.95
33.45
0出現なし
to 1
0出現なし
to 1
11~10尾/㎡
to 10
33.4
11~10尾/㎡
to 10
33.4
10~50尾/㎡
10
to 50
10~50尾/㎡
10
to 50
50~100尾/㎡
50
to 100
33.35
33.3
33.25
33.25
2011年9月26日-9月27日
131.5
131.55
131.6
131.65
50~100尾/㎡
50
to 100
33.35
33.3
33.2
131.45
131.85
別府湾における卵の水平分布図(1 ㎡あたり)
2011年10月25日-10月26日
131.7
131.75
図 10
131.8
131.85
131.9
131.95
33.2
131.45
131.5
131.55
131.6
131.65
131.7
別府湾における稚仔の水平分布図(1 ㎡あたり)
131.75
131.8
131.85
131.9
131.95
大分水研事業報告
40
資源に関する基礎調査
資源評価調査委託事業
(水研委託)
西山雅人・徳光俊二・行平真也・井本有治
事業の目的
3. シラス混獲比調査
豊後水道域(佐伯湾)および別府湾(日出町)で
我が国の 200 海里漁業水域設定に伴い、当該水域
操業する機船船曳網の漁獲物について、イワシ類の
内における漁業資源を科学的根拠に基づいて評価
稚仔魚の月別混獲比を調査した。標本はホルマリン
し、漁業資源の維持培養および高度利用の推進に資
で固定したのち、同定を行った。
するため、必要な基礎資料を整備することを目的と
する。なお、この調査は(独)水産総合研究センター
4. 卵稚仔分布調査
中央水産研究所および同瀬戸内海区水産研究所の委
浅海定線および沿岸定線調査で LNP ネット(鉛
託調査で、全国規模で実施されている。調査対象魚
直曳き)と稚魚ネット(水平曳き)により魚類卵稚仔
種はマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシ、サ
を採集した。採集した標本は、ホルマリンで固定後、
バ類、マアジ、マダイ、ヒラメ、タチウオ、イサキ、
卵と稚仔の同定および計数を行った。
浅海・沿岸各定線の卵稚仔採集位置を図 1 に示し
サワラ、トラフグである。
た。また、各定線においてネット種類毎の調査点数
を表 1 に示した。
事業の方法
1. 標本船調査
豊後水道域において、中型まき網(6 統)、小型
機船底曳網(2 隻)、機船船曳網(3 隻)、釣り(6
隻)および定置網(2 統)の各標本船を対象に操業
日誌の記帳を依頼し、漁業種類別、漁場別漁獲量を
調査した。
2. 生物測定調査
豊後水道域においてまき網漁業によって漁獲さ
れ、鶴見魚市場に水揚げされたマイワシ、カタクチ
イワシ、ウルメイワシ、マアジ、サバ類を対象に体
長、体重、生殖腺重量を調べた。また、釣り、刺網、
まき網によって漁獲され、佐賀関、臼杵、鶴見支店
に水揚げされたサワラを対象に体重と尾叉長を測定
図1
した。なお、マイワシ、カタクチイワシ、ウルメイ
卵稚仔採集位置
ワシの肥満度(F)、成熟度(GI)は次式により求め
●は浅海定線のLNPネット、■は沿岸定線のLNPネ
た。
ット、○は稚魚ネットの採集位置を示す。
F ={BW /(BL) }× 10
3
3
GI ={GW /(BL) }× 10
3
4
表1
使用したネットの種類と調査定点数
ただし、BL は被鱗体長(cm)、BW は体重(g)、GW
は生殖腺重量(g)を示す。なお、マアジ、サバ類、サ
ワラについては BL は尾叉長(FL)を用いた。
浅海定線
沿岸定線
LNPネット 稚魚ネット
18
3
13
4
平 成 23 年 度
5.モジャコ資源調査(漁場一斉調査)
41
精密測定調査用試料は鶴見市場で購入した。精密
調査船「豊洋」を用い、モジャコ資源調査を豊後
測定はイサキの尾叉長、体重、性別、生殖腺指数
水道域で 2011 年 3 月 28 日、4 月 11 日、4 月 18 日、4
(GSI)及び胃内容物を調べた。また、卵巣の一部
月 28 日、5 月 9 日の計 5 回実施した。
及び耳石を採取し、それぞれ分析試料として保存し
調査は、流れ藻を三角すくい網ですくい、流れ藻
た。
に随伴するモジャコを採捕した。採捕したモジャコ
は船上で海水を満たしたサンプル瓶に収容し、帰港
後、ただちに全長、体重を測定した。また、表面水
温、潮流等について調査船搭載機器による観測を実
9.トラフグ資源評価調査
豊後水道域における主要 4 支店(佐賀関、臼杵、
保戸島、鶴見)の月別漁獲量を調べた。
施した。
6.マダイ、ヒラメ資源評価調査
事業の結果
1)市場調査
臼杵、津久見、佐伯、鶴見の各市場においてマダ
1.標本船調査
イの尾叉長とヒラメの全長を測定した。また、放流
各標本船の操業実態は大分県農林水産研究指導セ
魚を識別するため、マダイは鼻孔連結を、ヒラメは
ンター水産研究部において集計し、中央水産研究所
体色異常を調べた。マダイの調査日数は、臼杵が 45
へ送付した。
日、津久見が 26 日、佐伯が 37 日、鶴見が 56 日、
ヒラメの調査日数は、臼杵が 29 日、津久見が 19 日、
2.生物測定調査
佐伯が 30 日、鶴見が 36 日であった。体長をもとに
2011 年 4 月から 2012 年 3 月まで行った市場調査
年齢を推定するにあたっては、マダイは 1980 年代
における生物測定の結果を魚種別に表 2 に示した。
に求められた成長式1)を用いた。
また、魚種ごとの体長組成を表 3 ~ 8 に示した。な
お、各魚種の体長測定部位はカタクチイワシ、ウル
7.タチウオ資源評価調査
1)漁獲量調査
メイワシ、マイワシについては被鱗体長、マアジ、
サバ類、サワラについては尾叉長である。
豊後水道域における主要水揚地の漁業種類別漁獲
量及び曳縄釣り主要水揚地(佐賀関、臼杵、津久見)
3.シラス混獲比調査
の月別漁獲量を調べた。また、臼杵曳縄釣りにおけ
豊後水道域と別府湾において 2011 年 4 月から
るタチウオ漁獲量と出漁隻数を出荷伝票から集計し
2012 年 3 月までの間に実施したシラス混獲比調査
CPUE を推計した。
結果を図 2 に示した。
2)魚体測定及び精密測定調査
調査期間中、佐伯湾においては 4 月はマイワシが
2011 年 5 月から 2012 月 3 月までの間に臼杵のタ
漁獲の大部分と占めていたが、それ以降はほとんど
チウオ曳縄釣り漁船に計 15 回乗船し、釣獲された
がカタクチイワシであった。2011 年 4 月~ 7 月、11
タチウオ(肛門前長)を全数測定するとともに、一
月にウルメイワシの混獲が見られた。また、別府湾
部を買い上げ精密測定調査試料とした。
においてはほとんどがカタクチイワシであった。
精密測定はタチウオの全長、肛門前長、頭長、体
高、眼径、体重、性別、生殖腺指数(GSI)及び胃
2011 年 12 月にウルメイワシ、2012 年 1 月にはマイ
ワシの混獲が見られた。
内容物を調べた。また、卵巣の一部及び耳石を採取
し、それぞれ分析試料として保存した。
4.卵稚仔分布調査
調査結果を表 9、10 に示した。2011 年 4 月、5 月、8
8.イサキ資源評価調査
1)漁獲量調査
鶴見市場に水揚げされるイサキの漁獲量を調べ
た。
月、9 月および 2012 年 2 月の浅海定線調査は海況
不良のため一部が欠測となった。
カタクチイワシ卵は、浅海定線で 2011 年 5 ~ 11
月に出現が見られ、特に 7 月に多く出現した。沿岸
2)魚体測定及び精密測定調査
定線では 5 ~ 10 月及び 2 月~ 3 月に出現が見られ
2011 年 4 月から 2012 年 3 月までの間に毎月 3
た。
回、鶴見市場および臼杵市場において尾叉長・体重
タチウオ卵は浅海定線では 5 月および 9 ~ 10 月
を測定した。鶴見市場では尾叉長を測定できない場
に出現した。沿岸定線で 4 ~ 8 月および 10 ~ 11 月
合には 1 箱あたりの重量を測定し、尾叉長へ換算し
に出現した。
た。
42
大分水研事業報告
ウルメイワシの卵稚仔は浅海定線調査では出現し
を占めた(図 4-1)。主要水揚地である佐賀関・臼
なかった。沿岸定線で 11 ~ 3 月に出現が見られた。
杵・津久見の漁獲量は 409 トンで前年より 6%増加
マアジの仔魚は浅海定線で 5 ~ 6 月に出現が見られ
した。また、臼杵の漁獲量は 262 トン、CPUE は 60kg/
た。沿岸定線では 5 ~ 6 月および 1 月に確認された。
隻・日で前年をわずかに上回った(図 4-2)。
サバ類の卵稚仔は例年どおり若干の出現にとどまっ
た。
2)魚体測定及び精密測定調査
5 月~ 3 月の間に、タチウオ 3,601 尾の魚体測定
及び 1,014 尾の精密測定を行った。臼杵の曳縄釣り
5.モジャコ資源調査(漁場一斉調査)
2011 年 3 月 28 日から 5 月 9 日までの調査結果
は、モジャコ情報第 1 ~ 5 号としてまとめ、漁業者
では保戸島沖漁場に産卵盛期前である 5 月、8 月お
よび 10 月に小型雄魚の加入が認められ、11 月に小
型雌魚の加入が認められた(図 4-3)。
および関係機関に配布した。
調査結果を表 11-1、 11-2 に示した。3 月 28 日は
モジャコの採捕はなかったが、4 月 11 日は 213 尾、4
月 18 日は 1,322 尾、4 月 28 日は 110 尾、5 月 9 日
は 179 尾が採捕された。モジャコのサイズ(平均全
長)は 2.1 ~ 8.3cm であった。
8.イサキ資源評価調査
1)漁獲量調査
周年に亘り漁獲されているが、漁獲量のピークは
夏季(6 月)であった(図 5)。
2)魚体測定及びイサキ精密測定調査
7,867 尾の魚体測定を行った。臼杵市場における
6.マダイ、ヒラメ資源評価調査
尾叉長組成を図 6-1 に、鶴見市場での尾叉長組成を
1)市場調査
図 6-2 に示した。
2011 年 4 月から 2012 年 3 月までのマダイの年齢
5 月~ 11 月にかけて雄 55 個体雌 81 個体の精密測
別漁業種類別個体数を表 12 に示した。マダイは
定を実施したところ、6 月中~下旬に平均生殖腺熟
12,038 尾を調べたところ、2 ~ 4 歳が 63.2%を占め
度指数が増加が見られた(表 14)。
た。漁業種類別には、底曵網 24.3%、釣り 22.4%、
刺網 21.5%が多かった。放流魚と考えられる鼻孔連
9.トラフグ資源評価調査
結は、10,696 尾を調べたうちの 186 尾(1.7%)で認
豊後水道域で最も漁獲量の多い保戸島支店の漁獲
められた。1996 年度から 2011 年度まで継続して調
量は 1985、86 年の 56 トンをピークに大きく減少し、
べた臼杵と佐伯における鼻孔連結の混獲率(%)を
1990 年には 10.6 トンとなった。その後、漁獲量は
図 3 に示した。2011 年度の鼻腔異常率は、臼杵で
回復し、1996 年まで 14.5 ~ 28 トンの範囲で推移し
1.0%、佐伯で 2.7%であった。
たが、1997 年、1998 年にそれぞれ 3.9 トン、3.7 ト
次に、ヒラメの 2011 年 4 月から 2012 年 3 月まで
の年齢別漁業種類別個体数を表 13 に示した。
ンとさらに減少し、以後 10 トンを上回る漁獲はな
い。2008 年は 4.5 トン、2009 年は 5.3 トン、2010
ヒラメは 1,104 尾を調べたところ、86 尾が放流魚
年は 4.9 トン、2011 年は 3.6 トンとなった(図 7)。
で混獲率は 7.8%と推定された。天然魚、放流魚を
また、主要 4 支店における過去 5 年間の漁獲量の推
併せた年齢別漁獲尾数比率は、2 歳が 42%と最も多
移は 2005 年までは減少または横ばい傾向であった
く、次いで 1 歳魚が 33%であった。0 歳~ 2 歳では
が、2006 年は 4 支店全てで増加に転じた。しかし
全体の 77%を占め、前年の 51%と比較して高くな
2007 年以降は、4支店全てで 2006 年を下回った
った。一方、3 歳魚以上の割合は減少している。漁
(図 8)。
業種類別では底曳網が最も多く 51%を占め、次い
で刺網が 30%、定置網が 4%、釣りが 2%であった。
文
献
7.タチウオ資源評価調査
1)漁獲量調査
1) 大分県水産試験場.昭和 59 年度回遊性魚類共同
豊後水道における主要水揚地の漁業種類別タチウ
放流実験調査事業
オ漁獲量は、9 月から 2 月に多く、釣りが全体の 97%
書.1985;36-41.
瀬戸内海西部海域総合報告
平 成 23 年 度
表2
カタクチ
マイワシ
サバ類
年月日
採集地
漁場
4/6
4/27
5/13
5/23
5/25
5/31
6/10
6/22
6/22
6/28
6/28
7/7
7/7
7/12
7/12
8/3
8/3
8/3
8/10
8/10
8/10
8/10
8/30
9/1
9/1
9/9
9/9
9/29
9/29
9/29
9/29
10/17
10/17
10/28
11/18
11/22
12/15
2/21
3/15
3/28
計
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
年月日
採集地
漁場
5/25
5/31
6/10
6/22
6/22
6/28
6/28
7/7
7/7
7/12
7/12
8/3
8/3
8/10
8/10
8/10
9/9
9/9
9/29
10/28
10/28
12/28
12/28
1/19
1/19
1/19
1/27
3/15
3/28
計
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
年月日
採集地
漁場
4/6
4/27
5/13
5/13
5/25
5/31
6/10
6/10
6/10
6/10
6/22
6/22
6/22
6/28
6/28
7/7
7/7
7/12
7/12
7/12
7/12
8/3
8/3
8/10
8/10
8/30
9/1
9/9
9/9
9/29
10/17
10/17
10/28
11/18
11/22
12/15
12/28
1/19
1/27
3/15
3/15
3/15
計
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
43
2011年4月~2012年3月の魚種別測定結果
漁業
種類
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
漁業
種類
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
漁業
種類
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
測定
尾数
145
44
1
15
135
1
147
140
34
136
133
135
138
139
30
33
101
84
37
97
82
140
88
79
83
15
129
132
6
140
127
52
37
130
42
124
136
40
166
144
3617
測定
尾数
1
130
61
116
137
18
137
137
12
129
131
103
134
11
75
104
109
122
47
113
1
154
146
58
74
26
136
5
9
2436
測定
尾数
12
134
5
12
21
107
137
3
171
103
135
4
26
88
30
12
1
165
101
6
23
149
29
32
103
3
11
31
32
10
30
137
7
28
1
4
117
1
6
156
62
125
2370
平均
10.0
8.2
8.1
8.8
10.4
7.2
8.8
8.9
10.8
12.1
9.0
11.1
7.4
10.9
12.0
10.9
10.3
8.2
7.8
10.9
10.6
10.4
8.9
7.6
7.0
9.8
7.3
11.2
6.2
11.1
7.1
7.9
7.9
7.2
7.8
7.2
5.8
8.4
8.2
8.5
被鱗体長(㎝)
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
平均
7.6
8.7
8.8
10.1
13.0
13.5
10.2
12.9
9.9
13.0
13.4
13.5
13.5
13.7
13.8
13.8
14.9
15.2
14.7
16.0
14.6
19.8
19.8
19.9
20.1
20.3
20.6
19.2
19.2
平均
10.7
14.2
14.0
24.1
16.4
17.1
30.4
18.0
30.5
30.4
22.4
15.7
17.5
18.6
16.5
17.9
18.1
29.9
30.4
20.1
18.1
21.3
16.7
13.8
22.8
20.5
16.9
19.0
18.7
19.0
23.0
19.5
18.3
18.9
17.9
18.1
31.8
26.7
32.0
32.7
32.7
33.1
体長(㎝)
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
体長(㎝)
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
SD
1.7
0.9
0.8
8.6
2.3
1.8
1.5
0.5
1.5
1.5
1.2
1.6
1.3
1.1
1.7
1.5
3.4
2.5
5.4
1.3
2.6
1.2
0.7
1.2
5.4
1.1
2.7
2.1
1.3
2.6
3.7
1.0
1.4
0.3
2.5
2.1
1.5
1.6
1.7
SD
0.8
0.7
ウルメ
1.5
0.7
1.5
0.6
1.1
1.0
0.5
1.0
0.7
1.0
0.8
0.5
0.7
0.5
1.0
0.5
0.6
0.6
0.7
0.6
0.6
0.4
0.5
0.8
0.4
1.0
0.6
0.5
0.7
0.6
0.5
0.6
0.6
0.8
0.9
1.1
SD
マアジ
0.6
0.5
0.7
0.8
0.7
0.7
1.3
0.7
1.0
1.0
0.9
1.0
1.1
0.9
0.8
0.6
0.7
0.7
0.5
0.8
0.7
0.6
0.7
0.6
0.8
2.0
2.5
サワラ
年月日
採集地
漁場
4/6
4/27
5/13
5/25
5/25
5/31
6/10
6/10
6/22
6/22
6/28
6/28
7/7
7/7
7/12
7/12
7/12
8/3
8/3
8/3
8/10
8/10
8/10
8/10
8/30
9/1
9/1
9/9
9/9
9/9
9/29
9/29
9/29
9/29
10/17
10/28
10/28
11/18
12/15
12/28
12/28
1/19
1/19
1/19
1/27
1/27
2/21
3/15
3/28
計
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
豊後水道
佐伯湾
豊後水道
豊後水道
年月日
採集地
漁場
4/6
4/6
4/27
5/13
5/25
5/31
6/10
6/22
6/22
6/28
7/7
7/12
7/12
8/3
8/10
8/10
8/30
9/1
9/1
9/9
9/29
9/29
10/17
10/17
10/17
10/28
10/28
11/18
11/18
11/22
11/30
11/30
12/15
12/15
12/28
2/21
3/15
3/28
計
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
鶴見
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
豊後水道
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
佐伯湾
年月日
採集地
8/18
8/23
8/23
8/26
8/29
8/31
9/5
9/7
9/8
9/9
9/19
9/24
9/27
9/29
9/29
10/5
10/5
10/17
10/18
10/30
11/2
11/15
12/5
12/15
計
臼杵
鶴見
佐賀関
佐賀関
鶴見
臼杵
佐賀関
佐賀関
臼杵
佐賀関
佐賀関
佐賀関
鶴見
鶴見
臼杵
佐伯
佐賀関
鶴見
鶴見
佐賀関
佐伯
佐賀関
佐賀関
佐伯
漁業
種類
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
測定
尾数
6
10
2
19
1
18
54
12
141
137
134
136
139
138
89
133
143
54
156
133
13
114
142
61
145
19
118
27
138
106
10
9
99
139
138
143
105
13
2
57
47
140
124
119
113
203
4
2
161
4166
漁業
種類
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
まき網
測定
尾数
178
6
8
33
74
133
69
5
1
23
136
59
1
12
135
126
134
104
154
140
137
136
135
102
55
141
89
144
144
143
140
138
56
146
150
146
42
155
3730
漁業
種類
釣り
釣り
釣り
釣り
釣り
釣り
釣り
釣り
釣り
釣り
釣り
測定
尾数
1
5
1
2
16
1
1
1
15
1
1
1
2
2
7
2
2
6
3
1
1
1
1
11
85
被鱗体長(㎝)
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
平均
6.8
6.3
8.7
7.9
8.4
8.3
7.4
20.9
8.9
11.5
12.7
8.9
11.0
7.5
12.7
11.6
11.5
11.0
11.0
8.5
9.4
10.4
8.8
10.2
10.1
7.7
8.7
11.0
12.3
12.9
11.7
12.5
11.9
12.4
13.0
14.7
14.9
12.8
14.7
18.9
18.6
19.4
19.7
19.3
20.4
20.4
16.6
19.1
20.6
平均
18.0
12.8
15.9
22.3
17.6
18.1
18.1
8.8
11.5
10.0
7.4
17.7
18.9
11.3
12.9
11.2
17.4
12.4
13.5
12.7
13.6
12.5
15.0
12.7
13.1
13.4
14.0
14.1
13.9
14.3
13.8
13.3
13.3
13.5
13.8
13.7
15.9
14.6
平均
64.0
65.8
70.0
67.5
64.5
78.0
70.0
75.0
69.5
69.0
65.0
67.0
64.5
89.6
68.8
60.5
69.0
68.0
75.7
76.0
70.0
72.0
66.0
52.7
SD
0.9
0.8
0.6
0.9
0.9
2.1
0.8
0.8
1.2
0.9
0.8
1.0
0.8
1.1
1.3
1.1
0.8
0.7
0.5
0.8
0.7
0.7
0.8
0.8
1.3
0.9
1.0
0.8
0.8
0.8
0.4
0.9
0.7
0.8
1.3
1.2
0.9
0.5
1.2
1.1
0.9
0.8
1.1
1.0
1.1
5.5
0.4
1.7
体長(㎝)
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
±
体長(㎝)
±
SD
0.9
5.9
0.5
3.0
4.0
1.4
3.0
0.3
4.3
0.6
1.0
1.8
1.0
1.5
2.7
0.9
2.2
0.9
1.1
0.6
0.8
1.3
0.7
0.7
0.8
1.2
0.6
0.8
1.2
1.5
1.0
1.1
1.7
0.7
1.8
1.1
SD
±
2.0
±
0.7
2.1
±
5.5
±
±
±
±
±
±
±
1.3
12.2
3.3
17.7
1.4
8.5
5.8
±
13.8
大分水研事業報告
44
表3
月
尾数計
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5.5
6
6.5
7
7.5
8
8.5
9
9.5
10
10.5
11
11.5
12
12.5
13
13.5
14
14.5
15
15.5
16
4月
189
5月
152
2011年4月~2012年3月のカタクチイワシ体長組成(被鱗体長cm)
6月
590
7月
442
8月
662
2
4
11
15
35
43
29
1
1
38
47
49
37
64
49
14
3
1
1
0
0
2
0
4
38
63
62
37
74
120
147
79
26
5
2
1
9月
711
10月
219
11月
166
12月
136
1月
0
2月
40
3月
310
1
2
5
11
18
14
19
37
43
31
6
3
1
3
1
3
5
10
23
35
36
27
8
1
1
4
2
1
14
24
64
115
114
53
17
11
26
31
63
38
10
1
7
26
90
162
99
32
6
20
19
27
49
56
70
33
11
2
1
15
26
67
65
33
7
3
2
1
15
33
44
48
19
3
3
1
1
7
26
48
35
11
5
3
1
1
1
1
1
13
13
9
3
6
7
16
25
35
56
67
56
28
9
2
平 成 23 年 度
表4
月
尾数計
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5.5
6
6.5
7
7.5
8
8.5
9
9.5
10
10.5
11
11.5
12
12.5
13
13.5
14
14.5
15
15.5
16
16.5
17
17.5
18
18.5
19
19.5
20
20.5
21
21.5
22
22.5
23
23.5
24
24.5
25
4月
16
2
3
1
6
2
2
5月
40
1
3
4
4
14
5
8
1
45
2011年4月~2012年3月のウルメイワシ体長組成(被鱗体長cm)
6月
614
2
1
1
1
1
2
6
10
13
20
63
98
63
35
25
34
21
36
48
46
48
19
6
3
7月
642
1
1
9
18
34
37
26
12
11
31
53
68
78
69
65
52
35
21
15
2
3
1
4
4
2
1
1
8月
818
1
4
29
76
95
88
105
145
116
84
45
24
4
2
9月
665
1
2
3
10
19
30
24
26
16
14
20
57
92
134
102
60
32
16
6
1
10月
386
11月
13
12月
106
1月
699
2月
4
3月
163
1
1
2
7
19
48
56
55
58
48
33
24
10
8
2
5
6
4
3
1
4
2
2
1
1
1
1
3
3
7
16
11
18
16
11
10
8
1
2
2
2
14
44
74
107
128
120
99
53
26
13
9
4
2
2
1
4
6
7
9
17
16
17
20
16
12
14
13
6
3
1
1
大分水研事業報告
46
表5
月
尾数計
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5.5
6
6.5
7
7.5
8
8.5
9
9.5
10
10.5
11
11.5
12
12.5
13
13.5
14
14.5
15
15.5
16
16.5
17
17.5
18
18.5
19
19.5
20
20.5
21
21.5
22
22.5
23
23.5
24
24.5
25
4月
0
5月
131
3
13
28
38
38
10
1
2011年4月~2012年3月のマイワシ体長組成(尾叉長cm)
6月
469
2
18
28
45
62
86
44
26
12
20
26
54
31
13
2
7月
409
1
2
2
11
11
22
38
30
37
75
85
65
26
3
1
8月
427
2
4
7
31
51
75
76
100
54
20
6
1
9月
278
1
1
3
11
35
71
90
54
10
1
1
10月
114
11月
0
12月
300
1月
294
2月
0
3月
14
1
1
3
10
40
43
14
3
1
1
9
35
54
68
75
41
14
1
1
1
1
9
32
56
69
62
44
13
9
2
1
1
3
2
1
1
平 成 23 年 度
表6
月
尾数計
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5.5
6
6.5
7
7.5
8
8.5
9
9.5
10
10.5
11
11.5
12
12.5
13
13.5
14
14.5
15
15.5
16
16.5
17
17.5
18
18.5
19
19.5
20
20.5
21
21.5
22
22.5
23
23.5
24
24.5
25
25.5
26
26.5
27
27.5
28
28.5
29
29.5
4月
192
5月
240
47
2011年4月~2012年3月のマアジ体長組成(尾叉長cm)
6月
98
7月
196
3
3
1
9
5
2
2
3
27
50
40
9
4
2
1
8月
407
9月
671
10月
522
11月
709
12月
352
2
11
12
34
50
99
165
186
84
37
6
3
5
3
1
1
5
2
1
1
5
15
22
46
84
74
61
16
11
2
5
1
3
2
1
1
1
1月
0
2月
146
3月
197
1
5
2
2
4
3
15
40
39
36
22
19
5
2
2
1
1
1
1
1
1
2
1
1
9
10
48
46
49
20
8
6
5
1
4
1
1
5
3
3
5
3
1
1
1
4
9
15
11
8
6
5
4
3
1
2
1
1
4
7
7
16
8
8
7
1
1
1
1
1
3
16
33
40
20
12
23
53
35
35
17
8
12
3
2
1
4
8
13
18
18
18
10
2
2
1
1
5
33
73
131
140
116
72
35
18
11
6
4
4
4
3
5
4
2
1
1
2
1
5
3
4
7
16
70
97
101
71
64
35
25
11
4
3
1
1
7
18
22
41
35
17
5
3
17
42
38
28
13
17
8
15
8
3
1
2
1
1
2
1
大分水研事業報告
48
表7
月
尾数計
10
10.5
11
11.5
12
12.5
13
13.5
14
14.5
15
15.5
16
16.5
17
17.5
18
18.5
19
19.5
20
20.5
21
21.5
22
22.5
23
23.5
24
24.5
25
25.5
26
26.5
27
27.5
28
28.5
29
29.5
30
30.5
31
31.5
32
32.5
33
33.5
34
34.5
35
35.5
36
36.5
37
37.5
38
38.5
39
39.5
2011年4月~2012年3月のサバ類体長組成(尾叉長cm)
4月
146
5
1
4
5月
145
3
6月
697
7月
308
8月
316
6
6
15
24
21
32
23
8
1
3
1
3
4
5
2
11
9
7
14
21
9
14
16
3
8
3
1
1
1
1
5
4
9
9
3
4
5
12
14
13
12
1
3
5
7
8
8
9
16
33
33
41
28
23
6
3
1
4
11
6
2
5
15
19
18
32
20
11
3
11
20
18
30
33
13
7
5
3
1
2
2
3
6
6
4
7
6
7
2
4
2
1
1
1
1
2
1
1
1
1
1
2
7
37
52
43
51
50
60
54
36
12
3
1
4
6
18
58
67
58
28
13
1
1
9月
84
10月
174
11月
29
12月
121
1月
7
2月
0
3月
343
2
3
3
3
5
7
10
13
6
8
3
7
4
3
1
3
1
2
1
1
11
15
17
27
14
17
10
6
5
1
1
1
4
2
2
3
1
1
1
5
11
5
6
4
1
1
1
10
3
4
3
2
1
1
3
2
2
2
1
1
1
1
1
1
1
1
2
1
1
1
1
9
15
21
17
21
9
1
3
4
4
1
1
3
1
1
1
5
1
11
16
25
36
38
39
54
44
21
17
15
5
6
3
1
2
1
平 成 23 年 度
表8
月
尾数計
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
77
78
4月
5月
49
2011年4月~2012年3月のサワラ体長組成(尾叉長cm)
6月
7月
8月
26
9月
31
10月
14
11月
2
12月
12
1
1
1
1
1
1
2
1
1
1
1
1
4
3
4
3
4
2
4
1
1
2
3
2
3
1
4
3
3
1
2
1
2
1
1
1
2
1
3
1
1
1
1
1
1月
2月
3月
大分水研事業報告
100%
80%
80%
2011年
表9
カタクチ
ウルメ
サバ類
タチウオ
マアジ
調査点数
卵
稚仔
卵
稚仔
卵
稚仔
卵
稚仔
卵
稚仔
稚仔
表10
マイワシ
カタクチ
ウルメ
サバ類
タチウオ
マアジ
調査点数
卵
稚仔
卵
稚仔
卵
稚仔
卵
稚仔
卵
稚仔
稚仔
カタクチ
ウルメ
2011年
その他
マイワシ
カタクチ
ウルメ
3月
2月
1月
12月
11月
10月
9月
4月
3月
2月
1月
12月
11月
10月
9月
マイワシ
図2
マイワシ
8月
0%
7月
0%
6月
20%
5月
20%
8月
40%
7月
40%
60%
6月
60%
5月
混獲比(尾数)
100%
4月
混獲比(尾数)
50
その他
2011年度におけるシラス混獲比調査結果(左 佐伯湾、右 別府湾)
2011年4月~2012年3月における大分県沿岸の主要魚種卵稚仔採集量(浅海定線)
4月
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
10
5月
0.5
0.0
47.9
8.8
0.0
0.0
0.2
0.1
0.4
0.0
0.2
17
6月
0.2
0.0
37.1
4.9
0.0
0.0
0.1
0.0
0.0
0.0
0.2
18
7月
0.0
0.0
81.4
38.7
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
18
8月
0.0
0.0
17.1
5.3
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
12
9月
0.0
0.0
1.8
0.3
0.0
0.0
0.0
0.0
0.3
0.0
0.0
16
10月
0.0
0.0
0.3
1.9
0.0
0.0
0.0
0.0
0.5
0.1
0.0
18
11月
0.0
0.0
0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
18
12月
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
18
1月
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
18
2月
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
16
個/曳
3月
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
18
2011年4月~2012年3月における大分県沿岸の主要魚種卵稚仔採集量(沿岸定線)
4月
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.1
0.1
0.0
13
5月
0.0
0.0
1.2
0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
0.2
0.0
0.3
13
6月
0.0
0.0
2.4
1.6
0.0
0.0
0.0
0.0
0.5
0.0
0.3
13
7月
0.0
0.0
0.2
1.3
0.0
0.0
0.0
0.0
0.2
0.0
0.0
13
表11-1
調査日
視認流れ藻数
採取流れ藻数
モジャコ付着数
平均尾数(尾/藻)
平均全長(㎝)
3月28日
11
4
0
0.0
-
8月
0.0
0.0
5.8
0.4
0.0
0.0
0.0
0.0
0.2
0.2
0.0
13
9月
0.0
0.0
4.7
3.4
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
13
10月
0.0
0.0
2.3
0.8
0.0
0.0
0.0
0.0
0.8
0.2
0.0
13
11月
0.0
0.0
0.0
0.0
0.1
0.0
0.0
0.0
0.3
0.1
0.0
13
12月
0.1
0.0
0.0
0.0
1.4
0.2
0.0
0.0
0.0
0.1
0.0
13
1月
0.0
0.0
0.0
0.1
0.5
0.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.1
13
2月
0.0
0.0
0.2
0.0
0.2
0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
13
モジャコ資源調査結果
4月11日
多数
9
213
23.7
6.5
4月18日
92
5
1322
264.4
2.1
4月28日
110
4
110
27.5
2.8
5月9日
111
6
179
29.8
8.3
個/曳
3月
0.0
0.0
0.6
0.1
0.2
0.0
0.0
0.2
0.0
0.0
0.0
13
平 成 23 年 度
表11-2
3月28日
4月11日
4月18日
4月28日
5月9日
測点
11モ1-1-1
11モ1-2-1
11モ1-3-1
11モ1-4-1
11モ2-1-1
11モ2-1-2
11モ2-2-1
11モ2-3-1
11モ2-4-1
11モ2-5-1
11モ2-6-1
11モ2-7-1
11モ2-8-1
11モ3-1-1
11モ3-2-1
11モ3-3-1
11モ3-4-1
11モ3-4-2
11モ4-1-1
11モ4-2-1
11モ4-2-2
11モ4-3-1
11モ5-1-1
11モ5-2-1
11モ5-3-1
11モ5-4-1
11モ5-5-1
11モ5-6-1
モジャコ資源調査結果(詳細)
位置
時刻
10:47
10:53
11:54
12:20
10:04
10:15
10:35
11:22
11:43
12:28
12:46
12:24
9:57
10:20
11:01
11:27
9:47
10:07
11:05
10:13
10:28
10:59
11:43
12:46
13:57
N
32.48.97
32.48.40
32.43.27
32.43.35
32.56.78
32.55.47
32.51.84
32.43.68
32.43.64
32.43.62
32.44.28
32.50.19
32.57.15
32.54.87
32.48.98
32.45.36
32.57.14
32.53.81
32.48.96
32.56.30
32.55.44
32.51.23
32.44.52
32.45.05
32.58.40
表12
E
132.09.84
132.09.69
132.01.61
132.00.53
132.10.57
132.10.57
132.10.77
132.09.31
132.05.47
132.00.27
131.59.91
132.02.51
132.10.51
132.08.80
132.08.32
132.07.55
132.10.39
132.10.08
132.08.25
132.10.31
132.10.35
132.09.99
132.08.71
131.59.59
132.06.68
表面水温 流れ藻及び付着生物の状況
視認流れ藻数 付着モジャコ尾数
(℃) 大きさ(m×m) 重量(㎏)
19.7
0.3×0.3
0.3
計11個
0
19.6
1.0×1.0
2.0
0
19.5
0.5×0.7
0.8
0
19.7
0.5×0.5
0.6
0
16.6
1.5×1.5
7.0
多数
27
1.0×1.0
2.5
1
16.9
1.0×1.0
3.8
15
17.9
1.5×1.5
7.6
16
18.2
1.0×1.0
2.5
13
18.1
1.0×1.0
7.6
10
18.3
1.0×1.0
6.5
101
18.3
0.5×0.5
1.3
30
16.8
1.0×0.5
8.2
0
16.6
0.5×0.5
0.5
計92個
221
16.6
1.0×1.0
3.5
661
17.3
1.0×1.0
7.0
15
17.3
0.5×0.5
6.6
12
0.5×0.5
4.1
413
16.8
1.0×1.0
3.8
計110個
13
16.8
1.0×1.0
7.5
46
0.5×0.5
0.8
44
17.7
0.5×0.5
0.9
7
20.2
2.0×2.0
12.0
計111個
62
20.1
1.0×1.0
4.5
0
21.0
1.0×1.0
3.0
9
20.7
0.5×0.5
3.5
76
20.8
2.0×1.0
8.0
28
19.6
1.0×1.0
3.1
4
魚市場調査によるマダイの年齢別漁業種類別個体数
8
臼杵
7
鼻腔異常率(%)
月日
51
佐伯
6
5
4
3
2
1
0
96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11
図3
マダイ鼻腔異常率の推移
大分水研事業報告
52
表13
年齢
0
小型底曳網
6
魚市場調査によるヒラメの年齢別漁業種類別個体数
刺網
12
釣り
1
小型定置網
その他
1 (1)
不明
1
合計
21 (1)
1
151 (3)
150 (23)
6 (1)
20 (2)
14
22 (5)
363 (34)
2
253 (5)
124 (25)
13 (1)
16 (1)
24 (3)
31
461 (35)
3
89 (4)
32 (4)
3
7
7 (1)
8 (1)
146 (10)
4
34 (1)
10
1
2
3
6 (1)
56 (2)
5
18
1
1
3
26 (1)
4
10 (1)
6
4 (1)
7
2
8+
9
566 (14)
3 (1)
2
2 (1)
1 (1)
335 (54)
26 (3)
1
47 (3)
1
50 (5)
(
図4-1
図4-2
漁業種類別タチウオ漁獲量
釣りによる漁獲量およびCPUEの推移(臼杵)
1
3 (0)
4
18 (2)
80 (7)
)はそのうち放流魚
1104 (86)
平 成 23 年 度
図4-3
曳縄釣りで漁獲されたタチウオの体長組成
53
大分水研事業報告
54
20,000
漁獲量(㎏)
15,000
2000-2011年平均
2011年
2012年
10,000
5,000
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
月
図5
鶴見市場におけるイサキ漁獲量推移
表14
イサキ精密測定結果
雌
採集日
水揚げ港
漁法
雄
平均
平均
個体数
個体数
尾叉長(mm)
体重(g)
生殖腺熟度指数
513
14.7
6
尾叉長(mm)
体重(g)
生殖腺熟度指数
301
528
19.6
5/19
鶴見
釣り
5
306
6/12
津久見
不明
4
312
492
11.8
0
-
-
-
6/14
鶴見
不明
1
380
1,054
20.9
2
389
1,140
15.1
6/15
鶴見
釣り
7
292
438
13.2
0
-
-
-
6/28
鶴見
釣り
2
311
494
13.0
6
303
513
20.5
6/29
鶴見
釣り
10
300
496
24.7
3
321
588
20.0
6/30
鶴見
釣り
10
243
242
17.8
3
258
310
10.4
7/24
大浜沖
不明
0
-
-
-
1
229
193
7.1
7/26
鶴見
釣り
8
277
323
8.8
2
260
287
9.0
7/28
佐賀関
釣り
1
332
619
14.9
0
-
-
-
8/4
鶴見
釣り
5
357
650
4.5
5
339
583
7.5
8/17
鶴見
釣り
5
307
416
1.9
3
300
393
2.3
8/26
鶴見
釣り
6
278
310
2.3
4
279
324
1.6
8/31
臼杵
不明
0
-
-
-
1
254
208
0.7
9/1
鶴見
釣り
3
255
233
1.5
3
247
216
0.5
9/16
鶴見
釣り
1
272
289
1.4
3
293
351
0.6
9/29
佐賀関
釣り
0
-
-
-
1
338
568
0.5
10/5
鶴見
釣り
10
271
289
0.8
7
320
481
0.8
10/14
鶴見
釣り
3
313
448
1.7
4
322
470
0.7
11/4
臼杵
釣り
0
-
-
-
1
241
196
0.2
平 成 23 年 度
12
50
45
50
2011/12
N=0
1
40
45
35
30
25
20
1
2011/6
N=469
40
35
30
25
20
15
15
5
50
45
40
0
35
1
0
30
2
2
25
3
4
20
4
6
15
5
8
10
6
10
5
7
12
50
2011/11
N=66
8
14
60
10
9
2011/5
N=154
16
5
50
45
40
35
0
30
2
0
25
4
1
20
6
2
15
3
10
8
5
4
18
2011/10
N=60
10
40
2011/4
N=23
5
10
6
55
1
30
45
50
45
50
45
50
50
2012/1
N=0
1
40
40
35
30
25
20
15
5
50
45
1
2011/7
N=449
50
45
60
40
35
30
25
20
0
15
0
10
0
5
10
10
0
20
1
30
0
20
0
10
50
40
35
30
25
20
15
10
20
2011/8
N=370
40
5
50
45
40
35
30
25
20
15
10
0
5
0
2012/2
N=142
15
30
10
20
5
10
40
35
30
25
20
15
10
25
2011/9
N=536
イサキ月別尾叉長組成(臼杵市場)
35
30
25
20
15
10
50
45
40
0
35
0
30
5
25
10
20
10
15
20
10
15
5
30
図6-1
2012/3
N=162
20
5
40
40
50
5
50
45
40
35
30
25
20
15
10
0
5
0
大分水研事業報告
56
300
70
2011/4
N=714
250
2011/10
N=639
60
50
200
40
150
30
100
70
50
45
40
35
30
25
20
15
40
2011/5
N=555
60
5
50
45
40
35
30
25
20
15
10
0
5
10
0
10
20
50
2011/11
N=318
35
30
50
25
40
20
30
15
20
80
50
45
2011/12
N=324
40
35
60
40
35
30
25
20
15
45
2011/6
N=1064
70
5
50
45
40
35
30
25
20
15
10
0
5
5
0
10
10
10
30
50
25
40
20
30
45
50
45
50
45
50
45
50
40
35
30
25
20
2012/2
N=92
20
40
40
35
30
25
20
15
25
2011/8
N=488
50
5
50
45
40
0
35
0
30
1
25
2
10
20
20
15
3
10
4
30
5
40
60
2012/1
N=33
5
15
50
5
50
45
6
2011/7
N=610
10
60
40
35
30
25
20
15
0
10
5
0
5
10
10
10
15
20
15
30
60
40
35
30
25
20
15
5
50
45
40
35
30
25
20
0
15
0
10
5
5
10
10
10
20
20
2011/9
N=478
50
2012/3
N=121
15
40
30
10
20
5
10
図6-2
イサキ月別尾叉長組成(鶴見市場)
40
35
30
25
20
15
10
5
50
45
40
35
30
25
20
15
10
0
5
0
漁獲量(トン)
1985年
1986年
1987年
1988年
1989年
1990年
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
漁獲量(トン)
平 成 23 年 度
図7
8
6
4
2
0
2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
図8
主要4支店におけるトラフグ漁獲量の推移
57
60
50
40
30
20
10
0
保戸島支店におけるトラフグ漁獲量の推移
12
10
佐賀関
臼杵
保戸島
鶴見
大分水研事業報告
58
資源・環境に関するデータの収集・情報の提供-1
漁海況予報事業
(国庫委託金)
行平真也・徳光俊二
事業の目的
集、気象観測および計量魚群探知機(カイジョーソ
ニック社製 KFC-3000)による魚群分布量とした。
効率的な操業と漁業経営に貢献するため、伊予灘
調査には漁業調査船「豊洋」(75t)を用いた。
・別府湾及び豊後水道域での海況や漁況などの基礎
的データを定期的に収集し、それらのデータやそれ
らを基礎とした漁海況予測情報を漁業者や関係機関
2.沿岸定線調査
沿岸定線調査では、豊後水道海域において図 1 に
示した 22 定点で、毎月中旬に調査を行った。調査
へ発信・配信することを目的とした。
項目及び使用船舶は浅海定線調査の項目と同様であ
る。
事業の方法
3.水揚実態調査
大分県漁協鶴見支店、米水津支店および蒲江支店
1.浅海定線調査
浅海定線調査では、国東半島沖合域および別府湾
にまき網漁業の水揚げ状況報告を周年依頼した。ま
内において図 1 に示した 29 定点で、毎月上旬に調
た、佐賀関支店についても、釣り等による漁獲状況
査を行った。調査項目はコンパクト CTD(アレッ
の報告を同様に依頼した。
ク電子社製)による底層までの 1m 間隔の水温と塩
分(但し、表層についてはデジタル水温計、鶴見精
4.情報の提供
機社製電気塩分計による計測)、透明度、改良型ノ
1から3で得られた情報について、漁業者や関係
ルパックネット垂直曳き(水深 0 ~ 150m)とマル
機関にファクシミリ及び郵送、またはホームページ
チネット水平曳き(10 分間)による卵稚仔魚の採
で公表を行った。
山口県
事業の結果
3
2
1
5
9
8
1.浅海定線調査
伊予灘
7
1)水温
10
11 12
別府湾
22
23
16
17
21
29 28 27
30 26
24
31 25
1
13
18 33
14
32
15
差の評価を表 1 に示した。
34
20
35
19
1
月別に調査定点平均水温の推移を図 2 に、平年偏
愛媛県
3
伊予灘において、5 月、9 月に「高め」、11 ~ 12
豊後水道北部
36
2
6
月に「やや高め」となった他は「平年並み」で推移
5
4
9
7
8
高知県
B
A
10
大分県
11
12
14
15
13
別府湾において、3 ~ 4 月に「やや低め」、5 月に
16
19
豊後水道南部
「高め」、8 ~ 9 月と 12 月に「やや高め」となった
18
17
20
した。(なお、4 月と 8 月は伊予灘の大部分の定点
で欠測)
豊後水道中部
22
他は「平年並み」で推移した。
21
宮崎県
浅海定線調査
(ナ-セ-9線)
沿岸定線調査
(ナ-5-2線)
図1
調査地点
2)塩分
月別に調査定点平均塩分の推移を図 3 に、平年偏
差の評価を表 2 に示した。
平 成 23
年 度
59
伊予灘において、2 ~ 3 月、5 ~ 6 月に「やや高
トンで、前年(15 トン)を大きく上回り、1986 年
め」、9 月と 12 月に「やや低め」となった他は「平
から 2010 年までの平均漁獲量に対する比(以下「平
年並み」で推移した。(なお、4 月と 8 月は伊予灘
年比」という。)は 24%と、平年(9,474 トン)を
の大部分の定点で欠測)
下回った。
別府湾において、2 月と 4 月に「やや高め」、5 月
に「高め」、12 月に「やや低め」となった他は期間
2)ウルメイワシ
を通して「平年並み」で推移した。
2011 年のまき網漁獲量は、4,084 トンで、前年(918
トン)を上回り、平年比 421%と、平年(969 トン)
2.沿岸定線調査
を上回った。
1)水温
月別に調査定点平均水温の推移を図 4 に、平年偏
差の評価を表 3 に示した。
豊後水道北部において、4 月と 11 ~ 12 月に「高
め」、5 月と 8 月に「やや高め」となった他は「平
3)カタクチイワシ
2011 年のまき網漁獲量は、1,833 トンで、前年
(2,174 トン)を下回り、平年比 81 %と、平年(2,270
トン)を下回った。
年並み」で推移した。
豊後水道中部において、6 月と 11 ~ 12 月に「や
や高め」となった他は期間を通して「平年並み」で
推移した。
豊後水道南部において、1 ~ 2 月に「やや低め」、4
月に「やや低め」、11 月に「高め」、12 月に「やや
高め」となった他は「平年並み」で推移した。
4)マアジ
2011 年のまき網漁獲量は、1,173 トンで、前年(313
トン)を上回り、平年比 39%と、平年(3,010 トン)
を下回った。
また、2011 年の県漁協佐賀関支店に水揚げされ
た釣り主体の漁獲量(以下「佐賀関漁獲量」という。)
は、145 トンとなり、前年(177 トン)を下回り、
2)塩分
平年比 68%(以下、佐賀関については 1988 年から
月別に調査定点平均水温の推移を図 5 に、平年偏
2010 年までの平均漁獲量に対する比)と、平年(214
差の評価を表 4 に示した。
トン)を下回った。
豊後水道北部において、1 ~ 3 月と 9 月に「や
や高め」、4 ~ 5 月に「高め」、12 月に「やや低め」
となった他は「平年並み」で推移した。
豊後水道中部において、4 ~ 5 月と 9 月に「やや
高め」、6 月に「やや低め」、12 月に「やや低めから
5)サバ類
2011 年のまき網漁獲量は、2,159 トンで、前年
(7,173 トン)を下回り、平年比 44%と、平年(4,924
トン)を下回った。
平年並み」となった他は「平年並み」で推移した。
また、2011 年の佐賀関のマサバの漁獲量は、103
豊後水道南部において、4 ~ 5 月と 9 月に「やや
トンとなり、前年(80 トン)を上回り、平年比 70%
高め」となり、6 ~ 7 月に「やや低め」、8 月に「平
と、平年(148 トン)を下回った。
年並みからやや高め」となった他は「平年並み」で
推移した。
4.情報の提供
3.水揚実態調査
(短期)を 24 回、海況・魚群速報(豊後水道の海
2011 年度において、大分県豊後水道漁海況速報
各魚種ごとの漁獲量について表 5 に示した。
洋調査結果)を 6 回、海況・魚群速報(別府湾・国
1)マイワシ
東半島沖合の海洋調査結果)を 12 回の計 42 回の情
2011 年の県漁協鶴見支店以南のまき網漁業によ
報提供を行った。
る漁獲量(以下「まき網漁獲量」という。)は 2,262
大分水研事業報告
60
図2
2011 年伊予灘(Sta.1-18)・別府湾(Sta.19-31)の水温変化(℃)
平 成 23
表1
年 度
伊予灘・別府湾における水温の平年偏差の評価(2011 年)
61
大分水研事業報告
62
図3
2011 年伊予灘(Sta.1-18)・別府湾(Sta.19-31)の水温変化(psu)
平 成 23
表2
年 度
伊予灘・別府湾における塩分の平年偏差の評価(2011 年)
63
大分水研事業報告
64
図4
2011 年豊後水道北部(Sta.1-9)・中部(Sta.10-16)・南部(Sta.17-22)の水温変化(℃)
平 成 23
表3
年 度
豊後水道における水温の平年偏差の評価(2011 年)
65
大分水研事業報告
66
図5
2011 年豊後水道北部(Sta.1-9)・中部(Sta.10-16)・南部(Sta.17-22)の塩分変化(psu)
平 成 23
表4
年 度
豊後水道における塩分の平年偏差の評価(2011 年)
67
大分水研事業報告
68
表5
マイワシ
1986年
1987年
1988年
1989年
1990年
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
平年
27,778
36,002
35,342
27,422
31,129
26,124
20,095
17,026
3,027
2,675
2,668
928
619
696
451
1,754
1
94
18
175
693
1,001
690
419
15
2,262
9,474
漁獲量調査結果(単位:トン)
まき網漁獲量(鶴見・米水津・蒲江支店)
ウルメイワシ カタクチイワシ
マアジ
191
322
132
367
261
272
513
1,102
1,387
2,046
2,291
1,224
1,704
830
645
1,035
35
320
306
690
1,822
2,057
996
2,759
918
4,084
969
4,218
2,708
2,845
1,453
2,779
772
3,125
1,299
1,816
1,038
2,791
1,175
2,808
5,562
2,068
2,771
1,544
1,374
917
2,040
1,734
3,716
1,729
2,301
2,174
1,833
2,270
3,052
2,671
2,480
1,629
1,016
797
2,443
5,477
4,487
4,315
4,120
6,220
7,498
3,725
3,759
2,269
3,795
1,987
3,967
2,774
2,248
1,522
1,785
893
313
1,173
3,010
サバ類
7,293
15,378
3,320
4,676
3,411
1,427
1,528
5,318
5,614
4,856
14,230
12,478
859
2,751
3,747
694
182
5,473
1,646
11,009
3,607
693
3,054
2,687
7,173
2,159
4,924
釣り漁獲量(佐賀関支店)
マアジ
138
158
182
195
211
225
214
217
232
240
244
248
170
196
210
215
265
224
244
253
229
241
177
145
214
マサバ
148
154
144
209
270
242
126
92
201
161
117
124
118
120
147
261
184
173
72
80
79
96
80
103
148
平 成 23 年 度
69
資源・環境に関するデータの収集・情報の提供-2
地元要望調査①(クラゲ調査)
行平真也・徳光俊二
事業の目的
事業の方法
近年、大分県海域において夏季を中心にクラゲ類
調査は、2011 年 4 月~ 2012 年 3 月の間に行われ
(主にミズクラゲ)が大量発生し、網を漁具として
た浅海定線調査および沿岸定線調査の際に平行して
用いる漁業の操業に支障をきたしており、クラゲ類
実施した。
の分布状況に関する情報提供が求められている。こ
図 1 に示した 65 定点において、船上からの目視
のような要望に応えるため、クラゲ類の発生状況及
観察により、概ね 5m × 5m 範囲内の海面中に分布
び分布状況を把握し、漁業関係者に情報提供を行う
している(視認できる)クラゲ類の個体数を各定点
ことを目的とし、クラゲ類の目視観察調査を行った。
毎に数えた。
周防灘
sb-14
sb-7
事業の結果
sb-8
sb-13
sb-15
sb-6
sb-9
sb-17
s-3
s-2
s-1
sb-4
s-5
sb-10
s-9
各月の調査結果を図 2 に示した。 目視観察の結
s-7
s-8
伊予灘
果、クラゲ類は 2011 年 5 月、6 月、7 月、8 月、9
s-10
33.5
s-11
別府湾
s-21
s-29s-28
s-27
s-30 s-26
s-22
s-31
s-25
s-24 s-23
s-20
s-12
s-13
s-17
s-16
月において出現した。クラゲ類が確認されたのは、65
s-14
定点のうち 10 点であった。
s-15
s-18 s-33 s-34
s-35
s-19
豊
後
水
道
e-3
e-2
e-1
s-36
e-6
e-5
e-4
大分県
e-9
10 個/25m であり、他の分布密度では、30 個以上
2
/25m の高密度での分布が、7 月に佐賀関(e-1)で 1
2
回観察されたのみであった。
クラゲ類は 5 ~ 9 月にかけて多く出現し、それ以
e-8
e-7
外の月ではほとんどみられなかった。
e-11
e-10
33
出現したクラゲ類の分布密度は、ほとんどが 1 ~
e-13
e-12
e-16
e-15
なお、調査結果の概要は、「クラゲ情報」として
漁業者と関係機関にファクシミリおよび郵送で通報
するとともに、当研究部のホームページ上で公開し
e-14
e-19
e-18
e-22
e-17
e-21
e-20
131.5
図1
132
調査位置図
た。
大分水研事業報告
70
33.5
33.5
33.5
33
33
33
2011年4月
131.5
2011年6月
2011年5月
131.5
132
132
131.5
33.5
33.5
33.5
33
33
33
2011年7月
131.5
2011年8月
132
131.5
2011年9月
132
131.5
33.5
33.5
33.5
33
33
33
2011年10月
131.5
33.5
131.5
132
2011年12月
2011年11月
132
132
132
131.5
132
33.5
33.5
0 to 1
出現無し
1~10個体/25㎡
1 to 10
33
33
33
10~30個体/25㎡
10 to 30
30~ 個体/25㎡
30 to 100
2012年1月
131.5
2012年3月
2012年2月
132
図2
131.5
132
131.5
クラゲ分布状況(2011 年 4 月~ 2012 年 3 月)
132
平 成 23 年 度
71
資源・環境に関するデータの収集・情報の提供-2
地元要望調査②(ヨコワ漁場調査)
行平真也・徳光俊二
事業の目的
近年、夏季にヨコワ漁を営む漁業者が増加してお
り、ヨコワ漁の開始時期の水温データの情報提供が
求められている。このような要望に応えるため、ヨ
コワ漁場となる海域において、水温調査を行った。
事業の方法
調査は、2011 年 7 月 11 日から 7 月 14 日にかけ
て、沿岸定線調査と併せて実施した。調査項目はコ
ンパクト CTD(アレック電子社製)による底層ま
での 1m 間隔の水温と塩分(但し、表層については
デジタル水温計、鶴見精機社製電気塩分計による計
図1
表層水温分布
測)、透明度、気象観測とした。調査には漁業調査
船「豊洋」(75t)を用いた。
事業の結果
調査結果について、表層水温分布を図 1 に、50m
層水温分布を図 2 に示した。
なお、調査結果の概要は、2011 年 7 月 15 日付の
海況・魚群速報(豊後水道の海洋調査結果)におい
て、沿岸定線調査結果と併せて、漁業者と関係機関
にファクシミリおよび郵送で公表するとともに、当
研究部のホームページ上で公開した。
図2
50m 層水温分布
大分水研事業報告
72
タチウオ資源回復計画推進に関する研究
(国庫交付金、一部水研委託)
徳光 俊二
事業の目的
2.水揚げ量調査
タチウオは以前より県外市場へまとめて出荷され
タチウオは大分県漁業における重要な魚種で全国
る頻度が高かったことなどから、流通形態が他の魚
屈指の漁獲量を誇る。1984 年の 7,316 トンの漁獲量
種に比べて確立されており、魚体サイズ別に銘柄分
をピークに 1996 年まで好漁が続いたが、1997 年以
けされ(5 キロ当たりの尾数)、集荷または出荷さ
降 1,000 ~ 3,000 トン台に減少した(図 1)。
れている。そのため漁協各支店や仲買(もしくは運
1998 年に漁業者による自主的なタチウオ資源管
搬業者)には銘柄別の取扱伝票や市場出荷伝票等の
理計画を策定し取り組んだが、韓国輸出等により価
資料が比較的良好な状態で残されている場合が多
格高騰し、船数も増えたため操業をめぐるトラブル
い。
が増加した。そのため 2006 ~ 2008 年度にタチウオ
そこで漁業種類別に漁獲量、漁獲隻数の変動を把
資源調査および資源診断等の解析を実施し、2009
握するため、タチウオ主要水揚げ支店である姫島、
年 3 月に大分県タチウオ資源回復計画が策定され
くにさき、佐賀関、臼杵の 4 支店について銘柄別取
た。これに伴い県はタチウオの資源状態をモニター
扱伝票もしくは市場出荷伝票からの集計を行った。
し、必要に応じて資源管理方策を提示することが求
3.卵稚仔調査
められている。
今年度は悪化しているタチウオの資源状態を把握
伊予灘から豊後水道にかけて毎月調査船で実施し
するための漁業情報の収集、生物調査等により知見
ている卵稚仔調査のサンプルのうち、2011 年 4 月
の収集・整理を進めるとともに、資源解析により現
~ 2012 年 3 月のタチウオ卵稚仔の出現状況および
状の管理方策について検討を行った。
産卵期のピークを調べた。
4.資源解析
2011 年までの富来、姫島、臼杵の 3 地区を合計
した年級別漁獲尾数を元にコホート解析(VPA)に
よりタチウオ資源の状況を調べた。推定したタチウ
オ資源状況から、現在の漁獲努力がそのまま継続し
た場合の資源量について将来予測を行い、管理方策
について検討を行った。
図1
事業の結果
大分県におけるタチウオ漁獲量の推移
(2011年は速報値)
1.標本船日誌調査
曳縄釣りを営む大分県漁協佐賀関、臼杵支店所属
事業の方法
の計 5 経営体に標本船日誌(4 月~ 3 月:1 経営体、
10 月~ 3 月:4 経営体)の記帳を依頼し、操業日別
1.標本船日誌調査
タチウオ漁業の操業実態を把握するため、標本船
の銘柄別タチウオ漁獲量、漁場位置に関するデータ
を収集しデータベース化作業を行った。
(ひき縄釣、はえ縄、底びき網等)について、操業
位置や漁獲量の記帳報告を依頼し、年間を通して操
業状況を調べた。
2.水揚げ量調査
今年度対象とした地区は、県漁協の姫島、くにさ
平 成 23
年 度
73
き、佐賀関、臼杵の 4 支店で、月別の漁獲量および
銘柄別取扱量を過去のデータを含めて調査し、デー
タベース化作業を行った。
近年、銘柄別取扱量の集計値と月別漁獲量に乖離
がみられたため、資源解析に使用する年級別漁獲尾
数については補正を行い、月別の漁獲量に整合する
ようにした。
3.卵稚仔調査
前年と同様に卵は 4 月に豊後水道において出現
し、5 月以後範囲が次第に北に広がるとともに豊予
海峡周辺での出現数が増大した(付図 1)。旬別の結
果より、本年のピークは豊予海峡付近では 5 月下旬
~ 6 月下旬に出現したのに対して、豊後水道で 9 月
中旬と 10 月下旬に出現した(図 2)。前年と同様に、
卵の出現時期は 4 月から 11 月と長期に亘り海域に
よってピークが異なった。タチウオ卵の採集数は前
図3
タチウオ年級別漁獲尾数
資源重量は 2001 年が最も少なく 2002 年以後増加
傾向にあったが、2007 年をピークに以後減少に転
じた。一方、資源量に占める漁獲量の比率(漁獲割
合)は 2000 年をピークに 2003 年まで減少傾向にあ
ったが、2004 年以降は横ばい傾向にある(図 4)。
年に比べて全般に少なく、2 ヵ年続けて減少傾向に
ある。
図4
タチウオ資源量と漁獲割合
3)再生産関係
1998 年から 2011 年におけるそれぞれタチウオの
産卵親魚量とその翌年の 0 才魚の加入尾数の関係に
図2
タチウオ卵採集数の旬別変化
ついて、密度依存型から密度独立型に修正した。そ
の結果、タチウオは近年加入不足が続いており、何
4.資源解析
1)年級別漁獲尾数
らかの要因により産卵環境が悪化しているものと思
われる(図 5)。
前年に求めた富来、姫島、臼杵の 3 地区を合計し
た年級別漁獲尾数を見直し、修正したものを図 3 に
示した。これまでと同様に漁獲魚の大半を 1 才魚が
占め、当才魚は漁獲対象となっていない。2004 年
以降は 2 才魚(銘柄;9 ~ 12 本)が増え、最近で
はその比率は 2006 年、2007 年がきわめて高くなっ
ている。
2)資源量と漁獲割合
計算に使用した資源特性値は以下のとおり。
寿命:6 年
自然死亡係数(M):0.4
成熟割合:0 才- 0、1 才- 0.5、2 才以上- 1.0
産卵数:体重(相対成長式から算出)から換算
ただし、富来地区の 2000 年と 2001 年のデータは欠
測。
図5
タチウオ産卵親魚と0歳魚の関係
大分水研事業報告
74
4)資源評価
今後の課題
再生産関係を見直した現状の漁獲係数(F)と漁
獲量、親魚量及び各種Fについて図 6 に示した。現
タチウオの資源水準は低下しており、管理方策の
状の F(current)は 1.20 で資源回復計画策定時の 1.10
強化がすべきであることから、資源管理の方向性に
に比べて 0.10 増加していることが判明した。これ
資する産卵状況等の生態的な知見から、新たな管理
は資源に対する漁獲圧力が増していることを示す。
方策を提言する必要がある。特に春卵の出現が少な
また F(current)は F(max)0.85 を越えているこ
くなっていることから、春の大型産卵親魚を保護が
とから、依然として成長乱獲(漁獲開始年令が早い
保護が必要である。
状態)にある可能性か強い。
文
献
1) 末吉 隆.伊予灘及び豊後水道におけるタチウオ
の回遊状況.南西外海の資源・海洋研究.1999
;15:69-79.
2) 真田康広.タチウオの資源動向調査と資源管理.
黒潮の資源海洋研究.2010;12:73-78.
図6
漁獲係数と親魚量及び漁獲量の関係
平 成 23
年 度
75
LNPネット1網当たりの採集卵数
付図1
2011年のLNPネット1曳網あたりのタチウオ卵の月別出現状況
大分水研事業報告
76
豊予海峡周辺におけるマアジ、マサバの資源生態に関する研究
新資源管理体制整備事業
(一部委託)
西山雅人・徳光俊二・行平真也
事業の目的
所及び産卵期のピークを調べた。卵稚仔の分析は日
本エヌ・ユー・エス(株)に委託した。
豊予海峡周辺海域では、マアジ・マサバは複数の
2)成熟調査
漁法で漁獲される。釣りとまき網の操業海域が一部
2011 年 4 月から 2012 年 3 月まで、定期的にマサ
重複することから、漁業調整上の問題が発生してい
バ 115 個体、マアジ 813 個体を大分県漁協佐賀関支
る。漁業調整上の問題解決を図るために、同海域に
店他から入手し、生物測定するとともに成熟状況を
おけるマアジ・マサバの資源生態などの科学的な知
調べた。なお、一部個体については、豊後水道や伊
見が関係業界団体(県漁協やまき網協議会等)から
予灘で漁獲された個体も含まれる。
強く求められている。現在、漁業者・行政機関・試
雌については精密測定後に卵巣を摘出し、10%ホ
験研究機関が三位一体となって問題解決に向けての
ルマリン液で固定した。ホルマリン固定した試料の
取組を行っているところである。
一部(漁獲時間帯が明確な個体)は、産卵時間帯を
そこで、本事業において当該海域に分布するマア
推定するための試料として、常法により卵巣組織切
ジ・マサバの回遊経路や産卵場などの資源生態的な
片を作成し、組織標本とした。標本作製及び組織学
特徴を解明し、秩序ある漁場の適正利用を構築する
的な観察は日本エヌ・ユー・エス(株)に委託した。
ための基礎資料とするため、標識放流調査、産卵・
3)産卵親魚調査(マアジ産卵時間帯の推定)
成熟調査、飼育実験等を行った。
天然海域に生息するマアジの産卵時間帯を推定す
なお、同海域に生息するマアジ・マサバの資源生
るため、2011 年 4 月 11 ~ 12 日及び 6 月 28 ~ 29
態調査は、2007 年度より継続的に実施している。
日に刺網による試験操業および釣獲試験操業を実施
した。試験操業に用いた刺網は、テグス網 3 号、目
合は 5 節及び 7 節で長さ 90m、高さ 7m である。釣
事業の方法
獲試験操業では、通常の操業で漁業が使用している
漁具を用いた。操業はいずれも夕方から翌朝にかけ
1.標識放流調査
マサバの中長期的な行動生態を把握する目的で、
て行った。漁獲した個体は全て水産研究部へ持ち帰
り、精密測定に供した。
2011 年 11 月、2012 年 1 月の間に計 4 回、豊予海峡
雌については精密測定後に卵巣を摘出し、10%ホ
の佐賀関地先においてタグ標識による放流調査を実
ルマリン液で固定した。ホルマリン固定した試料の
施した。供試魚は一本釣りによって漁獲され、活か
一部は、常法により卵巣組織切片を作成し、組織標
しておいたものを使用した。マサバの一部は海面近
本とした。標本作製及び組織学的な観察は日本エヌ
くで群れていたものを一本釣りにより釣獲して直ぐ
・ユー・エス(株)に委託した。
に標識し、再びマサバの群れの中に放流するように
した。放流尾数は 212 尾であった。
3.マアジ人工授精卵による飼育実験
2.産卵・成熟調査
海域におけるマアジ産卵量を試算するためには、水
1)卵稚仔調査
温別の発生所要時間のパラメータが必要となる。そ
伊予灘から豊後水道にかけて毎月調査船で実施し
こでマアジ卵水温別発生所要時間を推定するための
ている卵稚仔調査のサンプルの内、2011 年 4 月~
飼育実験を実施した。なお、本試験は次年度以降の
2012 年 3 月まで計 27 回、延べ 652 点のネット調査
本格的な実験に向けて、問題点や改善点等を洗い出
(定線調査点を含む)により、卵稚仔の濃密出現箇
すことを目的とした予備試験として実施したもので
卵稚仔調査で採集したマアジ卵数から、調査対象
ある。
平 成 23 年 度
親魚は、2011 年 5 月 17 日に佐賀関支店所属の漁
業者が釣獲したマアジ 20 個体を用いた。親魚を水
77
で出現した。豊後水道では卵の出現はなかった。伊
予灘での出現量が最も多かった。
研内に設置したパンライト水槽内(1 トン)で馴致
B.マアジ
後にホルモン投与(HCG:300IU/kg)した。ホルモ
マアジ卵は 3 月下旬から 7 月中旬に豊予海峡、伊
ン投与約 37 時間後に、切開法で卵および精子を採
予灘、別府湾及び豊後水道の沿岸域で広く出現した。
取し、人工授精させた。得られた人工授精卵をウォ
特に豊予海峡において 5 月中旬に集中して分布する
ータバス水槽に設置した 5 試験区(14 ℃、16 ℃、18
特徴がみられた。
℃、20 ℃、22 ℃)に収容し、定期的に試料を採取
2)成熟調査
しホルマリン固定した。ホルマリン固定卵の同定は、
精密測定したマサバ雌 60 尾およびマアジ雌 394
日本エヌ・ユー・エス(株)で行った。
尾について、生殖腺熟度指数の変化を図 1、2 に示
した。マサバは成熟・産卵の目安である KG5 以上
4.定置網に入網するマアジ当歳魚の組成
の雌が 2011 年 4 月、2012 年 2 月、3 月に、マアジ
本県沿岸域におけるマアジ当歳魚の尾叉長組成を
は成熟・産卵の目安である GSI が 2 以上の雌が、
把握するために、津久見地先に設置された定置網に
2011 年 4 月~ 6 月及び 2012 年 2 月、3 月に多数出
入網したマアジ当歳魚の尾叉長組成を明らかにし
現した。
た。サンプリングは 2011 年 10 月から 2012 年 3 月
25
までの期間中、週 1 回程度の間隔で行った。2,179
個体について生物測定を実施した。
20
2011年4月~2012年3月
N=60
KG
15
10
事業の結果
5
1.標識放流調査
0
2011 年度はマアジの標識放流は実施していない
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
が、過去に標識放流した個体の再捕報告が 2 尾あっ
図1
た。2009 年 12 月 1 日に高島周辺海域で放流した個
体が、2011 年 8 月 12 日(放流後 619 日後)に牛島
14
付近で釣りで漁獲された。2010 年 4 月 21 日に別府
12
湾旧 2 号ブイ南で放流した個体が、2011 年 10 月 18
10
マサバの再捕報告は計 4 尾であった。2010 年 12
月 21 日に三崎沖で放流した個体が、2011 年 6 月 21
日(放流後 182 日後)に国東沖 10 ~ 20km の海域
で沖建網で再捕された。2011 年 1 月 14 日に三崎沖
GSI
日(放流後 545 日後)に再捕された。なお、再捕海
域は不明であった。
マサバ雌の熟度指数の変化
2011年4月~2012年3月
N=394
8
6
4
2
0
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
で放流した個体が、伊予灘で 2011 年 10 月 13 日(放
流後 272 日後)
図2
マアジ雌の熟度指数の変化
にタチウオ釣りで再捕された。2011 年 11 月 23 日
に豊予海峡で放流した個体が、伊予灘で 2011 年 12
3)産卵親魚調査(マアジ産卵時間帯の推定)
月 7 日(放流後 14 日後)にタチウオ釣りで再捕さ
刺網試験操業での漁獲個体はなかった。2011 年 4
れた。2012 年 1 月 17 日に豊予海峡で放流した個体
月 11 ~ 12 日の釣獲試験操業では、マアジ 3 尾、サ
が、別府湾で 2012 年 3 月 9 日(放流後 52 日後)に
バ類 1 尾が漁獲された。6 月 28 ~ 29 日の釣獲試験
タチウオ釣りで再捕された。
操業ではマアジ 4 尾、サバ類 6 尾が漁獲された。
2.産卵・成熟調査
の熟度指数を目安に選んだ 60 個体の卵巣組織を観
1)卵稚仔調査
察した。観察結果を表 1 に示す。なお、表内の MN
A.マサバ
は核移動期を、HO は吸水卵を、PO1 ~ PO3 は排卵
精密測定したマアジから漁獲時間帯が明確で卵巣
マサバ卵は 5 月中旬から 5 月下旬には、伊予灘、
後濾胞の形状(PO1:濾胞は大型で顆粒膜細胞の配
豊予海峡で、7 月上旬、中旬には伊予灘、豊予海峡
列が見られる。ほぼ排卵直後と推定される排卵後濾
胞、PO2:PO1 より僅かに退行が進んだ状態。排卵
大分水研事業報告
78
後数時間と推定される排卵後濾胞。PO3:濾胞は小
型で顆粒膜細胞が僅かに残る状態。排卵後数時間~
4.定置網に入網するマアジ当歳魚の組成
2011 年 10 月の尾叉長モードは、13.5cm、11 月は
1 日と推定される排卵後濾胞)をそれぞれ意味する。
13.5cm、12 月は 12.5cm、2012 年 1 月は測定なし、2
漁獲時間帯は、07 時~ 10 時、17 時~ 05 時までの
月は 13.5cm、3 月は 13.5cm であった。
間である。排卵直後や吸水卵を持つ卵巣は、19 時
~翌 01 時の間で確認されたことから、この時間帯
今後の課題
が産卵時間帯と推定された。なお、排卵後濾胞の形
状区分は、飼育実験に供したマアジ親魚の卵巣を基
準とした。さらに、吸水卵が観察された 9 個体につ
2010 年 6 月には、佐賀関一本釣りと臼津まき網
いては、バッチ産卵数(雌 1 尾あたり 1 回の産卵数)
漁業者間でマアジ・マサバの親魚保護を目的とした
を計測したところ、60 ~ 80,000 粒と推定された。
休漁日協定が締結された。その結果として産卵時期
に該当する 4 ~ 6 月の期間中に 3 日間の休漁が実施
表1
吸水卵および排卵後濾胞区分の経時分布
3/31 4/13
07:00~08:00
08:00~09:00
09:00~10:00
17:00~18:00
18:00~19:00
19:00~20:00
20:00~21:00
21:00~22:00
22:00~23:00
23:00~24:00
24:00~01:00
01:00~02:00
02:00~03:00
03:00~04:00
04:00~05:00
5/4
-
5/5 5/9
PO2、PO3
PO2
-
5/17
5/22
6/28
された。2011 年度も引き続き、協定が締結されて
おり、漁業調整上の問題解決に向けて確実に進展し
ている。今後は、休漁効果の試算や実行可能な管理
方策の提示が求められる。
PO3
PO3
-
これらの課題解決には、同海域におけるマアジ・
PO1
PO1、HO
PO2、PO3
PO1、HO
PO1
PO1
マサバの資源生態調査を継続して実施していく必要
がある。
PO3
-
-
PO3、MN
-
マアジについては、漁獲情報に基づいたコホート
解析や漁業から独立した卵数法を用いた資源量推定
を行っていくことが望まれる。コホート解析には精
3.マアジ人工授精卵による飼育実験
度の高い銘柄別の漁獲情報が必要である。また卵数
ホルモン投与による人工授精を試みたが、飼育実
法では、当該海域におけるマアジ産卵量やバッチ産
験に供するための十分な受精卵を確保できなかっ
卵数、産卵頻度等のパラメータを整備する必要があ
た。そのため経時的なサンプリング数自体が少なか
る。産卵量試算には、水温別発生所要時間が必要で
った。しかし 16 ℃区、20 ℃では Caa 期、18 ℃区
あることから、人工授精卵を十分に確保し飼育実験
では Cab 期、22 ℃区では Cac 期とふ化仔魚が得ら
を行う必要がある。本年度の予備試験から、改善す
れた。なお、14 ℃区では B 期以降にステージが進
べき項目の抽出が出来ているので、次年度以降は抽
んだ個体は観察されなかった。今回の試験では、ふ
出された改善点に焦点をあて、飼育実験を実施すれ
化仔魚が得られたのが 22 ℃区のみであったため、
ば、パラメータ推定は可能であろう。また、天然海
Caa 期に達する時間を水温別発生所要時間として
域に生息するマアジの産卵時間帯については 19 時
図 3 に示した。16 ~ 22 ℃区で得られた発生所要時
~翌 01 時の間であることが明らかになったので、
間は、下記の式で示された。
この時間帯にサンプリングすることで産卵直前の個
発生所要時間(H)=2597.8 ×水温(T)-1.4672
体を確保できる可能性が高まる。それらサンプルの
卵巣を観察することでバッチ産卵数や産卵頻度など
の卵数法に必要なパラメータ推定が可能となるであ
ろう。保護効果試算のためには、定置網等に入網す
50
る「豆アジ」銘柄や「小サバ」銘柄の日齢査定からふ化
ふ化所要時間
40
日を推定することも検討すべきことである。
また、マサバ、マアジの移動範囲、中長期的な移
30
動を把握するには継続してタグ標識放流を実施し、
20
再捕報告の精度を高める必要がある。
10
0
14
16
18
20
22
水温(℃)
図3
人工授精卵の水温区別発生所要時間
24
平 成 23 年 度
79
基盤整備・栽培漁業・資源回復の推進に関する基礎調査-1
新漁業管理体制整備事業(TAC・TAE)
(一部委託)
行平真也・西山雅人・徳光俊二
事業の目的
および周辺域における漁獲状況に関して取りまとめ
た。
本事業は水産資源の適切な利用と管理を行うた
め、これまで資源管理関連事業で行ってきた資源管
3.標本船日誌調査
理に、効率的操業や漁業経費の削減、魚価対策など
特定の漁業種類を対象とした包括的な資源回復計
質的管理を取り込み、持続可能な漁業の振興を行う
画の作成に資するため、豊後水道域における小型底
ことを目的としている。
びき網漁業を対象として漁獲動向を調査した。
今年度は、前年に引き続いて TAC 管理およびシ
ステム運用、TAE 管理に関する調査、豊後水道域
事業の結果
の小型底びき網漁業の漁獲状況について調査した。
1.TAC管理およびシステム運用
事業の方法
1)漁獲管理情報処理
TAC システム、ファックス等により、大分県内
1.TAC管理およびシステム運用
の主要漁協 22 支店から採捕報告があった。2011 年
1)漁獲管理情報処理
における大分県のマアジ TAC 配分量は 4,000 トン
「大分県の海洋生物資源の保存及び管理に関する
で、それに対してマアジは 1,410 トン採捕された
計画」および「海洋生物資源の採捕の数量等の報告
(図 1)。マイワシは配分量(若干量)に対し、1,707
に関する規則」に基づき、TAC 対象魚種のマアジ、
トン採捕された(図 2)。サバ類(マサバ・ゴマサ
マイワシ、サバ類について、大分県漁業協同組合か
バ)は配分量(若干量)に対し、1,685 トン採捕さ
ら TAC システム(漁獲管理情報システム)を利用
れた(図 3)。
して漁獲水揚げ情報を収集した。
収集した情報は、対象魚種別に解析して 1 ヵ月ご
とに水産振興課へ報告した。また、対象魚種を含む
水産上重要な魚種の漁獲量情報については、漁況海
況情報として定期的に発行している速報に利用し
た。
2)遊漁船日誌調査
TAC 対象魚種のうちマアジおよびサバ類につい
ては、漁業者以外の一般遊漁者の漁獲比率が高いこ
とから、これらの遊漁船業を営む大分県遊漁船業協
同組合所属の 2 経営体に標本船日誌(4 月~ 3 月)
の記帳を依頼し、操業実態等を把握した。
2.TAE管理
国が作成し、関係府県において資源回復計画を実
践している瀬戸内海域のサワラを対象に、豊後水道
図1
マアジの漁業種類別採捕数量(2011年)
大分水研事業報告
80
マアジを主に漁獲していた。1 日 1 人当たりの漁獲
尾数は昨年度をやや上回っていた。乗船人数および
操業日数は、2001 年度以降ゆるやかな減少傾向に
あったが、2003 年度を境にして大きく減少してお
り、2011 年度も大きな増加はみられなかった。
表1
標本船B
操業日数(日)
53
0
乗船人数(人)
267
0
漁獲尾数(尾)
7,145
0
1日1人当たりの漁獲
尾数(尾/人・日)
26.8
0.0
3000
乗船人数
350
2500
操業日数
300
250
2000
200
1500
150
1000
100
500
50
2011
2010
2009
2008
年度
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
0
2000
0
図4
延べ日数
マイワシの漁業種類別採捕数量(2011年)
標本船A
延べ人数
図2
標本船の操業状況
標本船2隻における乗船人数・操業日数の推移
2.TAE管理
図3
サバ類の漁業種類別採捕数量(2011年)
サワラの漁獲量および市場調査による体長測定を
実施している佐賀関支店の資料を解析し、取りまと
2)遊漁船日誌調査
めた結果を水産振興課へ報告した。
標本船 2 経営体における 2011 年 4 月から 2012 年
3 月までの操業状況を整理して表 1 に示した。また、
3.標本船日誌調査
同標本船 2 経営体における 2000 年度から 2011 年度
小型底びき網漁業を営む大分県漁業協同組合臼
までの乗船人数および操業日数(合計値)の推移を
杵、佐伯、米水津、上入津支店所属の計7経営体に
図 4 に示した。
標本船日誌(4 月~ 3 月)の記帳を依頼し、漁獲・
標本船の営業形態は日中の船釣りを行っており、
操業実態等を把握した。
平 成 23 年 度
81
基盤整備・栽培漁業・資源回復に関する基礎調査-2
磯根資源調査(アワビ類・アカウニ調査)
(国庫補助)
金澤 健・井本有治
事業の目的
2.調査場所
豊後水道の北部:臼杵(泊ヶ内地先)及び南部:蒲
アワビ類やアカウニ、イセエビ、サザエなどの磯
江(入津湾地先)を調査場所とした(図 1)。
根資源について、海水温上昇などの影響により、産
卵時期の変化が指摘されている。そこで、より効果
的な資源管理措置を検討するために、成熟度や成長
等の、基礎的知見を集積する。
なお、2011 年度は、アワビ類(クロアワビ、メガ
3.精密測定
殻長、殻付き総重量、軟体部重量、可食部重量、
雌雄判別及び生殖腺成熟度の項目について測定を行
った。
イアワビ)及びアカウニの生殖腺の成熟時期につい
アワビの生殖腺は、中腸腺にとりまいて「角状突
て重点的に調査を行い、その変化を明らかにするこ
起」を形成するが、生殖腺の熟度の量的変動を比較
とを目的とした。
することが困難であるため、生殖腺成熟度について
は、下記のとおり、猪野ら
Ⅰ
1)
の成熟度係数から求
めた。
アワビ類
1)角状突起を切り出し、ホルマリンで 1 週間程度
調査の方法
固定した後、先端から 1cm、2cm、3cm(大型
個体では 4cm)の位置で輪切りにした(図 2)。
1.調査期間
2011 年 8 月下旬から 2012 年 3 月下旬の間に、26
回の検体の買取り及び特別採捕による検体の入手を
行った。8 月~ 10 月及び 12 月 10 日~ 3 月の間は、
県漁協臼杵支店及び(有)丸二水産から入手し、アワ
ビ類の禁漁期間である 11 月~ 12 月 10 日の間は、
特別採捕により入手した。
なお、各調査月は、1 ~ 15 日を「上旬」、16 ~月
末日を「下旬」に区切ってデータ処理を行った。
1cm
2cm
図2
臼杵(泊ヶ内)
3cm
4cm
角状突起の輪切り
生殖腺(精巣/卵巣)
中腸腺
B-A
×100
蒲江(入津湾)
= ○○%
B
図1
調査場所(豊後水道 北部:臼杵・南部:蒲江)
A
B
図3
横断面の測定と比率の算出方法
大分水研事業報告
82
2)輪切りした断面から、生殖腺と中腸腺の横断面
(径)を測定し、その比率を求めた(図 3)。
図 4 に精密測定に供したアワビ類の大きさ(殻長
組成)を示す。
3)輪切りした断面ごとの生殖腺と中腸腺の横断面
当調査に供したアワビ類の大きさは、140mm 以
比率を平均して、その個体の生殖腺成熟度係数
下の個体が約 9 割を占め、最大はクロアワビでは
とした。
58.0mm、メガイアワビでは 172.9mm であった。
なお、殻長 100mm 以下の個体については、漁業
4.精密測定に供したアワビ類の種類と個体数、大
きさ
調整規則で採捕が制限されていることから、資源管
理の対象外と考え、精密測定に供さなかった。
表 1 に、精密測定に供したアワビ類の種類と個体
数を示す。なお、精密測定に供した種類はクロアワ
5.調査場所における水温の測定
ビ及びメガイアワビであり、マダカアワビは含まれ
水温の測定は、各調査場所付近の水深約 8m に、
ていない。また、エゾアワビと思われた個体は、正
水温ロガー(TidbiD)を、ロープにより垂下して設置
確に同定できなかったため、クロアワビに含めて扱
して、自動で測定した。水温は 1 時間ごとに測定し、1
った。
日の平均水温を、その日の水温とした。また、「上
各月、上旬と下旬にそれぞれの調査場所から、ク
ロアワビ及びメガイアワビを 15 個体ずつ入手する
旬」水温は 1 ~ 15 日までの平均水温、「下旬」水温
は 16 日~月末日の平均水温とした。
計画であったが、海況や漁模様などにより不足が生
じた。
調査の結果
表1
精密測定に供したアワビの種類と個体数
臼
杵
蒲
江
1.生殖腺成熟度推移と水温推移
クロアワビ
メガイアワビ
クロアワビ
メガイアワビ
8月下旬
8
14
15
3
9月上旬
2
12
21
20
9月下旬
14
10
15
8
10月上旬
16
10
14
14
10月下旬
16
16
15
8
11月上旬
3
8
14
17
11月下旬
5
6
15
14
12月上旬
15
14
15
16
12月下旬
13
14
15
3
臼杵地先におけるクロアワビ及びメガイアワビの
生殖腺成熟度推移と水温推移を図 5 に示す。
両種ともに 8 月下旬には、卵及び精子を持つ個体
が確認された。9 月下旬から生殖腺成熟度が上昇し、
11 月上旬に最大(クロアワビ 71%、メガイアワビ
53%)であった。その後、12 月中旬までに、生殖腺
成熟度は急に下降するが、1 月以降は、クロアワビ
は 15%前後で横ばい、メガイアワビは緩やかに下
降した。
1月上旬
5
12
9
水温は、9 月 8 日(上旬)に最高水温 24.5 ℃を観測
15
7
15
15
し、その後下降して、最低水温は 3 月 5 日(上旬)の
16
15
8
3
12.4 ℃であった。
14
13
188
143
1月下旬
15
2月上旬
2月下旬
3月上旬
3月下旬
7
7
種類別合計
145
138
調査場所別
合計
1)臼杵地先
283
331
個体数
臼杵クロ
175
150
125
100
75
50
25
0
臼杵メガイ
蒲江クロ
蒲江メガイ
100 110 120 130 140 150 160 170
殻長(mm)
図4
精密測定に供したアワビ類の大きさ
図5
臼杵地先におけるアワビ類の生殖腺
成熟度推移と水温推移
平 成 23 年 度
図6
83
蒲江地先におけるアワビ類の生殖腺
成熟度推移と水温推移
臼杵地先におけるアワビ類の生殖腺成熟度の上昇
は、水温が下降し始めた時期(9 月下旬)と一致して
いた。
図7
個体ごとの生殖腺成熟度推移
(臼杵地先:クロアワビ)
図8
個体ごとの生殖腺成熟度推移
(臼杵地先:メガイアワビ)
2)蒲江地先
蒲江地先におけるクロアワビ及びメガイアワビの
生殖腺成熟度推移と水温推移を図 6 に示す。
クロアワビでは 8 月下旬には、卵及び精子を持つ
個体が確認され、9 月上旬から両種とも生殖腺成熟
度係数が上昇し、11 月上旬に最大(クロアワビ 65%、
メガイアワビ 64%)であった。その後、両種とも生
殖腺成熟度は下降するが、クロアワビでは、12 月
上旬から 2 月下旬まで、係数は 40%前後でほぼ横
ばいで、3 月上旬に急下降した。
水温は、蒲江地先においては、調査場所内のアワ
ビ類主漁場から離れた場所で測定したため、次年度
は、水温測定場所について、再度検討する。なお、
参考値として、水温の傾向としては、9 月 21 日(下
旬)に最高 25.8 ℃、2 月 4 日(上旬)に最低 12.6 ℃で
あり、その後上昇して、3 月 31 日には 14.8 ℃を観
測した。
蒲江地先におけるアワビ類の生殖腺成熟度は、水
温が下降し始める前から上昇し始めていたが、水温
が下降し始めた時期(10 月上旬)に急激に上昇した。
2.個体ごとの生殖腺成熟度推移
臼杵地先及び蒲江地先におけるクロアワビ、メガ
により、全個体を平均した生殖腺成熟度の 11 月下
イアワビの個体ごとの生殖腺成熟度推移を、図 7 ~
旬以降の推移は、見かけ上、15%前後の横ばいとな
10 に示す。
った(図 5 参照)。
1)臼杵地先 ― クロアワビ(図 7)
2)臼杵地先 ― メガイアワビ(図 8)
8 月下旬から 11 月上旬にかけて、生殖腺成熟度
8 月下旬から 11 月上旬にかけて、生殖腺成熟度
の高い個体が増加し、11 月下旬以降は、生殖腺成
の高い個体が増加し、11 月下旬以降は、生殖腺成
熟度が低い個体が多くなった。これは、産卵及び放
熟度が下降し、3 月下旬には係数はゼロとなった。11
精によるものと考えられた。一方で、11 月下旬以
月下旬以降も、生殖腺成熟度が高い個体が確認され
降も生殖腺成熟度の高い個体がみられた。これ
たが、クロアワビよりは少なかった。これにより、
大分水研事業報告
84
40%前後と高い水準を維持していた。
4)蒲江地先 ― メガイアワビ(図 10)
8 月下旬から 11 月下旬にかけて、生殖腺成熟度
の高い個体が増加し、12 月上旬から生殖腺成熟度
の低い個体がみられ始めた。12 月下旬以降も、生
殖腺成熟度の高い個体は確認されたが、個体数は少
なかった。これにより、全個体を平均した見かけ上
の生殖腺成熟度の推移は、11 月下旬以降、漸減し
た(図 5 参照)。
5)個体ごと生殖腺成熟度のまとめ
各地先において、クロアワビ、メガイアワビとも
に、10 月上旬から 11 月下旬にかけて、多くの個体
の生殖腺成熟度が高くなり、その後、漸減していっ
た。その中で、11 月下旬以降も生殖腺成熟度が高
い個体も確認され、各地先ともに、メガイアワビよ
りもクロアワビに多く見られた。これらは、放卵、
放精をせず、卵、精子を持ち続けた個体なのか、1
度放卵、放精をして、その後、もう一度成熟したも
図9
個体ごとの生殖腺成熟度推移
のなのかは不明であった。
(蒲江地先:クロアワビ)
3.各地先関係漁協支店における調査結果説明会
アワビ類の資源管理について、海水温の上昇等、
現在の環境に合った、より良い方策を検討するため
に、調査結果の説明会を行った。今後、アワビ類の
資源管理を考えていく上で、重要な点として、禁漁
期前、約 1 ヵ月前の 10 月上旬から、多くの個体で
生殖腺成熟度が高くなっている(卵、精子を多く持
っている)ことを説明した。
1)臼杵地先における結果報告
日時:2012 年 3 月 26 日(月)
場所:県漁協臼杵支店 2 階大会議室
参集:7 名(潜水組合役員)
2)蒲江地先における結果報告
日時:2012 年 3 月 21 日(水)
場所:県漁協下入津支店 2 階大会議室
参集:41 名(下入津潜水組合員:31 名、
上入津潜水組合員:10 名)
図10
個体ごとの生殖腺成熟度推移
(蒲江地先:メガイアワビ)
生殖腺成熟度の 11 月下旬以降の推移は、緩やかな
下降を示した(図 5 参照)。
3)蒲江地先 ― クロアワビ(図 9)
8 月下旬から 11 月上旬にかけて、生殖腺成熟度
の高い個体が増加し、11 月下旬からは生殖腺成熟
文
献
1) 猪野 峻,原田和民.茨城県に於けるアワビ産卵
期.東海区水産研究所業績書 1961;275-281.
2) 浮 永久 他 編.アワビ類の種苗生産技術.栽培
漁業技術シリーズ 2.社団法人日本栽培漁業協
会.1995.
度の低い個体がみられ始めた。一方で、生殖腺成熟
3) 佐々木良.アワビ類.「水産増養殖システム 貝
度の高い個体も多くみられ、臼杵地先のクロアワビ
類・甲殻類・ウニ類・藻類」(森 勝義 編)恒星
よりも顕著であった。これにより、全個体を平均し
社厚生閣,東京.2005;85-120.
た見かけ上の生殖腺成熟度の推移は、2 月下旬まで
平 成 23 年 度
2
アカウニ
85
個体数
調査の方法
1.調査期間
2011 年 8 月下旬から 12 月下旬の間に、延べ 19
回の買取りなどにより、県漁協臼杵支店及び(有)丸
175
臼杵アカウニ
150
蒲江アカウニ
125
100
75
二水産から入手した。
なお、各調査月は、1 ~ 15 日を「上旬」、16 ~月
末日を「下旬」に区切ってデータ処理を行った。
50
25
2.調査場所
アワビ類の調査と同様に、豊後水道の北部:臼杵
0
40
(泊ヶ内地先)及び南部:蒲江(入津湾地先)を調査場
50
60
70
80
90
100
殻径(mm)
所とした(図 1)。
図11
3.精密測定
精密測定に供したアカウニの大きさ
殻径、殻を含んだ総重量、生殖巣重量、雌雄判別
及び中間骨長径の項目について測定を行った。なお、
当調査に供したアカウニの大きさは、最小は
個体ごとの相対的な生殖巣重量として、生殖巣重量/
42.3mm、最大は 112.8mm であり、50mm から 70mm
総重量× 100 により、生殖巣指数を算出した。
の個体が約 85%を占めた。
4.精密測定に供したアカウニの個体数と大きさ
調査の結果
表 2 に、精密測定に供したアカウニの個体数を示
す。各月、上旬と下旬にそれぞれの調査場所から、30
個体ずつ入手する計画であったが、海況や漁模様に
1.生殖巣指数推移と水温推移
より、過不足が生じた。臼杵地先からは、合計 226
1)臼杵地先
個体、蒲江地先からは合計 229 個体入手して精密測
臼杵地先におけるアカウニの生殖巣指数推移と水
温推移を図 12 に示す。なお、水温については、ア
定に供した。
図 11 に精密測定に供したアカウニの大きさ(殻径
ワビ類調査と同じである。
水温の低下とともに、8 月下旬から 10 月下旬の
組成)を示す。
間は、指数は 9%から 11%の間で微増傾向、10 月下
表2
精密測定に供したアカウニの個体数
臼
杵
蒲
旬に 11.0%と最大になり、その後、11 月下旬に 6.0%
江
8月下旬
15
―
9月上旬
30
30
9月下旬
30
30
10月上旬
20
30
10月下旬
30
30
11月上旬
18
6
11月下旬
28
33
12月上旬
29
52
12月下旬
26
18
合 計
226
229
図12
臼杵地先におけるアカウニの生殖巣指数
と水温推移
大分水研事業報告
86
蒲江地先では、水温の推移とほぼ一致して、生殖腺
指数も増減した。
今後の課題
アカウニの総重量及び殻から取り出した生殖巣を
測定する上で注意しなければならないことは、精密
測定前の「水切り」方法と時間であり、また、漁獲
してから経過した時間及び海藻の繁茂状況等の生育
環境、すなわち、胃内容物が多くあるかないかによ
っても、総重量が変わってくる。これら諸条件を統
図13
蒲江地先におけるアカウニの生殖巣指数
一しなければ、生殖巣指数(生殖巣重量/総重量×
と水温推移
100)にも大きな差異が生じる可能性がある。
今回、その諸条件を統一していなかったため、生
まで減少し、一転、12 月は 9 月~ 10 月と同水準
の 9%台まで増加、横ばいという推移を示した。
2)蒲江地先
殖巣指数にも誤差が生じ、生殖腺指数の経月変化及
び水温との関係にも影響があったと思われるため、
今後の検討課題としたい。
蒲江地先におけるアカウニの生殖巣指数推移と水
温推移を図 13 に示す。
生殖巣指数は9月下旬に 11.7%と最大になり、そ
文
献
の後、水温の低下とともに、増減しながら 12 月下
旬には 7.0%まで漸減した。
9 月上旬からの調査では、生殖巣指数の最大時期
を明瞭に把握しにくかったので、もっと早い時期か
らの調査を検討する必要がある。
1) 渡邉庄一.長崎県沿岸におけるアカウニの資源
生物学的研究.長崎県総合水産試験場研究報告
2008;36:49-84.
2) 渡邉庄一,夏苅 豊.長崎県平戸島におけるアカ
3)生殖巣指数推移のまとめ
ウニの生殖周期と初成熟.水産増殖 2009;56:
生殖腺指数は、臼杵地先では 10 月下旬にピーク
303-313.
が認められ、蒲江地先では 9 月下旬に認められた。
3) 吾妻行雄.ウニ類.「水産増養殖システム 貝類
臼杵地先では、水温の低下が始まってから指数が
・甲殻類・ウニ類・藻類」(森 勝義 編)恒星社
増加、その後、減少するものの、12 月には再び増
加し、水温推移と関連がないようにみられた。一方、
厚生閣,東京.2005;347-348.
平 成 23 年 度
87
基盤整備・栽培漁業・資源回復の推進に関する基礎調査-3
イサキ放流効果調査
中里礼大・景平真明・西山雅人
事業の目的
なからず標識付け作業後に死亡する個体が存在す
る。そこで、新たな標識としてリボンタグ標識を昨
大分県ではイサキは重要な栽培漁業対象魚種の一
年度行った。しかし、リボンタグを付けた稚魚を飼
つであるが、これまで放流後の追跡調査は行われて
育したところ数日後に標識箇所の皮膚がえぐれ、標
おらず放流効果に関する知見はない。
識が脱落する例が多々みられた。そこで新たな標識
そこで、沿整の漁村再生事業(保戸島)の中でイサ
方法の検討を行った。
キ放流効果調査を実施することになった。
4.放流効果調査(市場調査)
放流魚を追跡するための方法として市場に集荷さ
事業の方法
れた漁獲物の中から標識魚を探索する、いわゆる市
場調査をおこなった。
1.漁村再生事業(保戸島)の全体計画
調査内容は、腹鰭抜去標識の確認を最優先し、人
2009 年度から 2011 年度の 3 ヵ年に毎年 5 万尾の
工採苗魚に特徴的にみとめられる鼻孔隔皮欠損 1),2)
イサキを保戸島地先に放流する。その放流効果調査
(以下、鼻孔異常という)も確認した。可能な場合は
を 2009 年度から 2012 年度の間に実施する。
尾叉長、体重の測定をおこなった。
1)佐賀関市場
佐賀関では一本釣りで漁獲されたイサキを支店の
2.標識放流
(社)大分県漁業公社(以下公社)が生産した尾叉
小割生け簀に集荷し、出荷の度に陸揚げし活〆する
長約 7cm のイサキ種苗 5 万尾に右腹鰭抜去標識を
ため、測定日と漁獲日は一致しない。また、活〆→
施し、2011 年 10 月 12 日に保戸島の北東側に開け
シャーベット氷漬け(プラスチックコンテナ)→箱詰
た砂浜沖合の消波ブロック際に放流した(図 1)。
め→保冷車積み込み、の流れの中で、氷漬けしてい
る 30 分足らずの間に標識魚の確認と尾叉長の測定
を行うため、出荷全数の確認はできず、また活〆後
放流地点
にサイズ毎に仕分けてコンテナに入れられるため、
調査標本数が少なければ尾叉長組成は実際の漁獲状
況を反映していない可能性が高い。ただし、手に取
って確認計測できるため、両側とも腹鰭および鼻孔
異常の確認を確実におこなえる。
2)臼杵市場
イサキのトロ箱にはパーチ(フィルム)が掛けられ
ていないので、手に取って腹鰭と鼻孔の確認ができ、
尾叉長および体重の測定もおこなえる。また、保戸
島周辺で漁獲(釣り)されたイサキがまとまった量で
図1
放流地点
入荷する。
3)津久見市場
3.リボンタグ標識の装着手法の開発
現在腹鰭抜去による標識付けを行っているが、1
イサキのトロ箱にはパーチを掛けないので両側の
腹鰭と鼻孔の確認ができる。
年も経過すると鰭の再生が行われる個体が現れるた
4)佐伯市場
め標識方法として確実ではない。また、小型サイズ
イサキは大部分が活魚として扱われているため、
での鰭抜きであるため稚魚へのダメージは大きく少
腹鰭および鼻孔の確認は鮮魚があるときのみおこな
大分水研事業報告
88
うが、その数は限られている。
区、リボンタグ区、コントロール区にそれぞれ 100
5)鶴見市場
尾ずつ収容し 12 月 21 日まで飼育した。1 回/日、週 5
イサキは周年水揚げされており、その量も群を抜
日飽食給餌を行った。
いている。トロ箱にはパーチが掛かっているが、パ
試験開始から 1 週間程度で片リボンタグ区はすべ
ーチを外して調査を行ったため鼻孔の両側確認およ
て標識が脱落した。試験終了時の生残数は片リボン
び腹鰭の確認ができた。
タグ区は 70 尾、リボンタグ区は 96 尾、コントロー
ル区は 99 尾となった。それぞれの平均尾叉長は 89.6
± 5.8mm、91.8 ± 5.4mm、87.6 ± 6.7mm となった。
事業の結果
3.放流効果調査(市場調査)
1.標識放流
鼻孔確認を合計 10,407 尾(両側 8,596 尾、片側
1)腹鰭抜去作業
1,811 尾確認)調べ、鼻孔異常個体が 28 尾確認され
10 月 4 日から 6 日の 3 日間で合計 5 万尾のイサ
た。腹鰭確認を合計 10,515 尾調べ、腹鰭抜去個体
キ種苗の左腹鰭を小型ペンチを用いて抜去した。抜
が 37 尾確認された。内訳は以下のとおりである。
去作業をおこなった人員の総労働量は 7,694 分・人
で、平均すると 1 人当たり 458 尾/時の処理速度で
あった。
2)放流種苗の測定
10 月 3 日に放流予定魚の中から無作為に 50 尾抽
1)佐賀関市場
826 尾を手持ち確認した結果、腹鰭抜去個体は見
られず、鼻孔異常個体が 2 尾(右側異常、左側異常
それぞれ 1 尾ずつ)確認された。
2)臼杵市場
出し、尾叉長および体重を測定した。各項目の平均
鼻孔を計 2,391 尾(両側:1,039 尾、片側:1,352
値と標準偏差はそれぞれ 74.0 ± 4.1 ㎜、5.5 ± 1.0g
尾)確認した結果、鼻孔異常個体が 1 尾(右側異常)
であった。50 尾のうち鼻孔異常が確認されたのは 25
確認された。腹鰭を計 2,321 尾確認した結果、腹鰭
尾(50%)で、そのうち 9 尾は両側に、7 尾は右側の
抜去個体が 1 尾(右側異常)確認された。
み、9 尾は左側のみに異常があった。
3)津久見市場
参考までに公社に記録が残っている放流種苗の鼻
鼻孔を計 881 尾(両側:761 尾、片側:120 尾)
孔異常率は 2003 年度が 55.8%(平均全長 55.6mm)、
確認した結果、鼻孔異常個体が 3 尾(右側異常)確
2004 年度が 29.0%(平均全長 56.8mm)、2005 年度が
認された。腹鰭を計 870 尾確認したが、腹鰭抜去個
9.5%(平均全長 85.3mm)であった。また、2009 年度
体は見られなかった。
に当研究部で無作為に 113 尾確認したところ 26%
4)佐伯市場
(平均全長 88.3mm)、であった。2010 年度も同様
鼻孔を計 980 尾(両側:975 尾、片側 5 尾)確認
に無作為に 101 尾確認したところ 15%(平均尾叉
した結果、鼻孔異常個体が 3 尾(両側異常 1 尾、右
長 79.1mm)であった。
側異常 2 尾)確認された。腹鰭を計 1,167 尾確認し
3)標識魚の放流
県漁協鶴見支店から活魚運搬船「おおしま」を傭
船し、10 月 12 日に 2 回に分けて保戸島地先に標識
た結果、腹鰭抜去個体が 1 尾確認された。
5)鶴見市場
鼻孔を計 5,329 尾(両側:4,995 尾、片側:334 尾)
魚を運搬し放流した。放流作業を円滑に行うため、
確認した結果、鼻孔異常個体が 19 尾(右側異常 5
活魚槽には 5m 角のモジ網を敷き込み、ステンレス
尾、左側異常 14 尾)確認された。腹鰭を 5,331 尾
の金枠で網の浮き上がりを押さえたうえで、種苗を
確認した結果、腹鰭抜去個体が 28 尾(右側異常 1
収容した。放流地先までの運搬時には活魚槽にはボ
尾、左側異常 25 尾、両側異常 2 尾)確認された。
ンベで酸素を供給した。放流時には金枠を取り外し、
網を絞ったうえでバケツで水ごと種苗を掬い取り、
放流した。放流作業は円滑に実施できた。
2.標識手法の検討
今後の課題
山田ら 3) によると、大分県海域のイサキの成長の
リボンタグを魚体に貫通させた状態にしておくと
雌雄差は少なく、尾叉長は満1歳で 167mm、2 歳で
傷が癒えずに標識が脱落してしまった。そこで、リ
238mm、3 歳で 276mm になるとしている。そのた
ボンタグの一端を魚体に埋め込んだ標識手法(図 2、
め、2010 年度放流群が保戸島周辺でのイサキの主
便宜上片リボンタグ標識と記載する)の有効性を検
たる漁法である一本釣りで漁獲されるのは、2012
討した。試験は 10 月 6 日から行い、片リボンタグ
年以降になると思われる。
平 成 23 年 度
腹鰭抜去は再生がみられるなど完全な標識方法と
89
文
献
は言えないが、7 割以上が容易に識別可能(再生面
積が半分以下)であり、今のところ最も有効な標識
1) 熊本県栽培漁業協会.イサキ人工種苗にみられ
と思われる。今後は、より確実な標識方法の探索を
た鼻孔隔皮異常について.栽培漁業事例集(平成
する必要がある。
10 年度版),水産庁資源生産推進部栽培漁業課
1999:53-54.
2) 松岡正信.カンパチ、イサキ、キジハタおよび
ヒラメにおける鼻孔隔皮欠損の出現状況.水産
増殖 2004;52(3):307-311.
3) 山田英俊・片山知史.豊後水道西部海域におけ
るイサキの年齢と成長.黒潮の資源海洋研究
2007;8:100.
図2
リボンタグ装着上面図
大 分 水 研 事 業報 告
90
基盤整備・栽培漁業・資源回復の推進に関する基礎調査-4
魚礁効果調査
西山雅人・行平真也
の設置されていない対照区で実施した。対照区は魚
事業の目的
礁区と同じ水深と底質である海域とした。
本県では県や市町村が事業主体となり漁場整備を
実施している。整備した漁場の効果は、漁業者に漁
2.高浜沖漁場
場位置や漁獲物組成を記録してもらう標本船日誌や
釣獲試験操業は、2012 年 3 月 7 日に実施した。
試験操業等で把握する。本年度は関崎北部漁場と高
試験操業は、用船した漁業者 1 名(大分県漁協津久
浜沖漁場を対象として釣獲試験操業を実施し、漁場
見支店所属)が日頃の操業で使用している漁具(手
の効果を検証した。
釣り道具)を用いて、漁業者自身が行った。当日は
水産研究部研究員が 1 名乗船した。魚礁が設置され
た魚礁区と試験区として天然礁での操業を行った。
調査は、06 時~ 14 時までの約 8 時間行った。
事業の方法
調査対象は図 1 に示す漁場である。
事業の結果
1.関崎北部漁場
関崎北部漁場
精密測定結果を表 1 に示す。魚礁区では、イサキ 3
個体(2.0kg)、ウマヅラハギ 39 個体(16.1kg)、タ
マガシラ 1 個体(0.2kg)が漁獲された。対照区で
は、ウマヅラハギ 2 個体(1.3kg)、タマガシラ 1 個
体(0.2kg)が漁獲された。、イサキ 3 個体の尾叉長
は、37.0cm、34.0cm、36.8cm であった。イサキに
ついては、豊後水道西部海域で漁獲された個体から
成長式が推定されているが
1)
、釣獲試験で漁獲され
た個体は 10 歳以上の高齢魚と推定された。
2.高浜沖漁場
高浜沖漁場
精密測定結果を表 2 に示す。魚礁区での漁獲はな
かった。対照区では、イサキ 7 個体(4.1kg)が漁
獲 さ れた 。 イサ キ の尾 叉長 は、 29.1cm、 36.6cm、
38.0cm、35.2cm、33.5cm、32.0cm、34.6cm で 2 歳
図1
調査対象漁場の位置
魚 1 個体、他の 6 個体は 10 歳以上の高齢魚と推定
された。
1.関崎北部漁場
釣獲試験操業は、2011 年 11 月 4 日に実施した。
用船した漁船(大分県漁協佐賀関支店所属)に水産
今後の課題
研究部職員 3 名、水産振興課漁場整備班職員 2 名、
中部振興局職員 1 名の計 6 名が乗船し、釣獲試験操
魚礁の効果を検討するには、様々な手法があるが、
業を行った。調査は、06 時~ 14 時までの約 8 時間
釣獲試験操業は、実施時期により操業結果は大きく
行った。試験操業は魚礁が設置された魚礁区と魚礁
影響される。高浜沖漁場は 3 月に調査を実施したが、
平 成 23
年 度
水温の高い時期が釣獲が期待されるとの意見も用船
91
今後は少ない労力で継続的に実施できる効果調査
した漁業者から聞き取った。そのため、複数年にわ
を検討し、実施していく必要があろう。
たる年間を通した調査実施体制が望まれる。
文
県下全域にわたり設置されている魚礁を全て調査
献
することは現実的ではない。調査対象漁場を選定し、
集中的に調査する体制も検討すべきである。
1)山田英俊・片山知史・高田淳史・安楽康宏・真
また、魚礁の効果を検証する際には、複数の手法
田康広.豊後水道西部海域におけるイサキの年
を組み合わせて実施することでより精度の高い結果
齢と成長および漁獲物の年齢組成.水産海洋研
を得ることが期待できる。
究 2011;75(3):161-169.
表1
№ 水揚年月日
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
2011/11/4
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釣獲試験操業結果(関崎北部漁場)
漁獲時刻
測定年月日
06:00-07:00
06:00-07:00
07:00-08:00
07:00-08:00
07:00-08:00
07:00-08:00
07:00-08:00
07:00-08:00
07:00-08:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
08:00-09:00
09:00-10:00
09:00-10:00
09:00-10:00
09:00-10:00
10:00-11:00
10:00-11:00
10:00-11:00
10:00-11:00
10:00-11:00
10:00-11:00
10:00-11:00
10:00-11:00
11:00-12:00
11:00-12:00
11:00-12:00
12:00-13:00
12:00-13:00
13:00-14:00
13:00-14:00
13:00-14:00
13:00-14:00
13:00-14:00
13:00-14:00
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2011/11/4
表2
№
水揚年月日
漁獲時刻
魚種
全長
ウマヅラハギ
イサキ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
イサキ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
タマガシラ
タマガシラ
イサキ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
ウマヅラハギ
尾叉長
31.7
39.8
31.4
34.2
31.6
32.5
32.2
33.3
36.0
34.3
27.9
30.0
34.0
29.8
31.5
26.4
30.3
26.1
25.7
34.9
30.0
31.4
32.4
33.8
31.0
25.6
26.2
35.1
26.1
31.0
32.0
32.8
35.3
32.7
30.1
34.4
33.2
22.7
22.2
39.7
32.1
29.5
27.1
28.8
34.1
34.1
37.0
34.0
36.8
体重
漁場
429.77
664.00
449.65
475.00
399.56
410.00
476.00
498.00
620.00
495.84
301.31
354.54
576.31
354.38
391.17
261.13
371.37
214.90
289.64
554.34
398.03
486.00
571.18
576.41
443.42
259.28
230.51
426.18
243.05
430.54
377.24
471.36
584.62
522.82
346.33
745.91
547.00
217.32
238.91
730.00
472.74
400.40
290.76
316.50
540.86
428.76
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
対照区
対照区
対照区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
試験区
釣獲試験操業結果(高浜沖漁場)
測定年月日
魚種
全長
尾叉長
体重
漁獲海域
漁場
1
2012/3/7
11:47
2012/3/7 イサキ
39.9
36.6
648.77 豊後水道
対照区(北の瀬)
2
2012/3/7
12:01
2012/3/7 イサキ
40.2
38.0
790.33 豊後水道
対照区(北の瀬)
3
2012/3/7
12:16
2012/3/7 イサキ
37.5
35.2
642.75 豊後水道
対照区(北の瀬)
4
2012/3/7
12:22
2012/3/7 イサキ
36.2
33.5
502.97 豊後水道
対照区(北の瀬)
5
2012/3/7
12:29
2012/3/7 イサキ
34.4
32.0
495.32 豊後水道
対照区(北の瀬)
6
2012/3/7
12:42
2012/3/7 イサキ
37.3
34.6
622.87 豊後水道
対照区(北の瀬)
7
2012/3/7
12:45
2012/3/7 イサキ
30.6
29.1
422.61 豊後水道
対照区(北の瀬)
大分水研事業報告
92
基盤整備・栽培漁業・資源回復の推進に関する基礎調査-5
DNA標識によるクルマエビ放流効果調査(2010年放流群)
景平真明・金澤 健・中里礼大・井本有治
調査の目的
大入島
これまで佐伯湾地区では、クルマエビの放流効果
を高めるため全長 50mm サイズの稚エビを囲い網
囲い網
で馴致後に放流してきた。しかし、自治体の種苗放
東浜
流予算が年々削減される中、放流規模を維持してい
くためには、放流サイズの小型化も検討せざるを得
ない状況にある。
当調査では放流サイズを全長 30mm にした場合、
50mm と比較してどの程度の放流効果があるのか知
見を得ることを目的とした。
放流は 2010 年度に実施され、本年度も引き続き
図1
囲い網の設置場所
放流群を追跡した。
2)漁獲物の標本採集
かつて、佐伯湾奥ではクルマエビの刺網漁が盛ん
であったが、近年は漁業者の高齢化にともないほと
調査の方法
んど操業されていない。現在のクルマエビの水揚げ
漁業公社で生産した、親エビの DNA 情報が既知
な種苗を放流し、その後漁獲されたエビの DNA 情
報を読み取り放流種苗か否かを判定した。
のほとんどは小型機船底曳き網(以後、小底という)
によるものである。
そのため、クルマエビ漁獲物標本を得る調査定点
1)2010年度放流種苗
として、周年安定して小底によるクルマエビが水揚
放流種苗は全長 30mm と 50mm の 2 群とし、そ
げされる大分県漁協鶴見支店の公設地方卸売市場
れぞれの親エビは他の放流用種苗の親とは独立した
(以後、鶴見市場という)を選んだ。鶴見市場では活
ものを使用した。使用した親エビの数は 30mm 群
エビのあがり(死亡もしくは衰弱したもの)の中か
が 66 個体、50mm 群が 33 個体であった。
ら、無償で個体測定と尾肢の採取(DNA 検体)をさ
当初の計画では DNA 情報が既知な 30mm 種苗を
せていただいた。
100 万尾、50mm 種苗を 6 ~ 7 万尾の予定であった
本年度は昨年度に引き続き、毎月 150 個体を目処
が、30mm 分の生産が不調であったため、30mm は
に個体測定及び DNA 検体を採取した。本年度に入
一部 DNA 情報が不明のものが当試験とは別に当該
り、明らかに当歳と思われるサイズのクルマエビが
水域に放流された(表 1)。
増えてきたので、調査は 2011 年 10 月で打ち切った。
表1
2010 年に限定した調査として、小底が操業しな
2010年度種苗放流の概要
平均全長
受入尾数
30 ㎜
32 ㎜
55 ㎜
53.3 万尾
42.0 万尾
11.6 万尾
受入日
放流日
7/15
8/19
8/25
7/23
8/21
8/26
DNA 情報
既 知
不 明
既 知
佐伯湾地区で保有する潜砂馴致用の囲い網(目合
い佐伯湾奥でのデータを得るため、佐伯支店の組合
員の K 氏に依頼して、共同漁業権内で刺網漁をお
こなってもらった。捕獲したクルマエビは全量検体
として買い取った。
3)DNA標識による追跡調査
い 5mm)は 50mm サイズ用で、30mm の種苗は囲い
標本エビは全長(額角先端から尾節末端)、体長(眼
網を抜けてしまうため、囲い網の内側に農業用の防
窩後端から尾節末端)、体重、性を測定後、尾肢の
風ネット(目合い 4mm)を張り合わせた。
一部を切除し 99.5%エタノールに保存して DNA 検
囲い網の設置場所を図 1 に示した。
査用の検体とした。検体は DNA を抽出後、まず親
平 成 23
年 度
93
エビとミトコンドリア DNA(以後、mt-DNA という)
した。昨年度 mt-DNA が放流群と一致し、日程の
の塩基配列が一致するものを選出して、マイクロサ
都合で ms-DNA を未査定であった 2011 年 3 月採集
テライト DNA(以後、ms-DNA という)検査に回し、
の 4 個体は、検査の結果放流個体ではなかった。
親子判定(放流したエビかどうか)した。DNA 抽出
本年度新たに mt-DNA 検査した 102 個体のうち 3
及び mt-DNA 検査を(株)バイオマトリックスに、
個体が放流群と一致した。このうち 1 個体のハプロ
ms-DNA 検査を(株)日本総合科学に依頼した。
タイプは累積で 10 個体が一致しており、クルマエ
昨年度に日程の都合で ms-DNA 検査ができなか
ビの mt-DNA の多様さから考えると、放流群由来
った 4 個体(2011 年 3 月漁獲分のうち mt-DNA 検査
ではないかとの疑問が生じる。本調査で DNA 検査
で一致)の DNA を ms-DNA 検査し、放流群か否か
に供した 1,152 個体に対して、1,057 のハプロタイ
を判定した。
プが存在した(図 2)ことから、漁獲日や漁獲場所が
2011 年の 4 月から 10 月の間に鶴見市場で採取し
異なるクルマエビが、同一の mt-DNA ハプロタイ
た DNA 検体 1,034 個体分のうち、予算の都合上 5
プに集中するのは、自然界にそのハプロタイプが卓
~ 7 月の 102 個体分を mt-DNA 検査に供した。
越して存在しているか、放流等の人為的影響若しく
はその痕跡ではないかと思われる。いずれにしても、
2010 年 8 月 21 日放流群の DNA 情報が無いため、
由来の特定は困難である。
調査の結果
唯一言えるのは、2010 年放流の DNA 標識クルマ
エビに限るなら、佐伯湾周辺の地元漁業者に対して
DNA標識による追跡調査
は放流効果が乏しかったということである。
表 2 に mt-DNA 検査と ms-DNA 検査の結果を示
mt-DNA、ms-DNA検査結果
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
50㎜放流群
30㎜放流群
図2 調査で検出されたmt-DNAの1,057ハプロタイプとその頻度
Hap_1051
Hap_951
Hap_901
Hap_1001
ハプロタイプNo.
Hap_851
Hap_801
Hap_751
Hap_701
Hap_651
Hap_601
Hap_551
Hap_501
Hap_451
Hap_401
Hap_351
Hap_301
Hap_251
Hap_201
Hap_151
Hap_101
Hap_51
所属サンプル数
Hap_1
ハプロタイプ数
表2
大分水研事業報告
94
基盤整備・栽培漁業・資源回復の推進に関する基礎調査-6
豊後水道南部小型機船底びき網漁業における試験的操業調査
行平真也
事業の目的
された期間後半の操業を比較したところ、操業海域
は期間前半は佐伯湾等の内湾域に偏っていたが、期
豊後水道南部の一部海域において、38kW 以上の
漁船を使用する小型機船底びき網漁業は漁業調整
間後半は、解除された沖合域での操業が多く、漁場
が分散されていることが示唆された。
上、5 月 1 日から 8 月 31 日までの間、操業が制限
されている。しかし、近年、大分県漁業協同組合な
2.漁獲量と魚種組成の検討
どの操業制限見直しの要望により、2010 年度から
試験的操業の全期間に参加した漁業者 26 名につ
2012 年度において、図 1 の海域において試験的操
いて解析したところ、期間中の総漁獲量は 26,057kg、
業を実施することとなった。
う ち 解 除 海 域 は 9,570.8kg( 37%)、 非 解 除 海 域 は
本調査は、豊後水道南部小型機船底びき網漁業に
16,486.4kg(63%)であった。解除海域内において
よる試験的操業の操業実態を把握するため標本船日
は、かに類、えそ、こち、くるまえび、うちわえび
誌調査の解析を実施した。
が多く漁獲されており、また非解除海域内において
は、かわはぎ、うちわえび、えそ、まだい、こちが
多く漁獲されていた。
事業の方法
調査は、2011 年 5 月から 7 月にかけて、試験的
操業に参加する漁業者を対象に標本船日誌調査を依
頼した。標本船日誌には、操業日時、操業時間、漁
獲物の重量、金額、操業位置を記載する項目を設け
た。
試験的操業に申し込んだ漁業者全 40 名(前半、後
半のみを含む)のうち、試験的操業に全期間参加し
た漁業者 26 名、前半のみ制限が解除された漁業者 1
名、後半のみ制限が解除された漁業者 6 名の計 33
名と試験的操業には参加していないが標本船日誌に
協力を申し出ていただいた漁業者 3 名の計 36 名の
標本船日誌について解析を実施した。なお、病気や
他の漁業を営んだことで、ほとんど操業しなかった
漁業者 7 名の標本船日誌は解析から除外した。
事業の結果
1.漁場の分散についての検討
期間の後半のみ制限が解除された漁業者につい
て、制限が解除されていない期間前半と制限が解除
図1
試験的操業海域
平 成 23 年 度
95
フルボ酸鉄による藻場造成力実証試験
井本有治、景平真明・金澤 健
また、県内全域の地区別の状況を確認するため、
はじめに
溶存態鉄の測定を行った。
近年、河川から供給されるをフルボ酸鉄等の溶存
態鉄が藻類の繁殖に効果があるとする説があるが、
事業の方法
科学的なデータが不足しており、一般的な説とはな
っていない。
大分県では 1996 年ころから磯焼けが問題となっ
1.佐伯湾溶存態鉄調査
ており、現在までの調査で魚類による食害が大きな
図 1 に示す佐伯湾内の 30 定点で、6 月~ 7 月に
原因であることがわかっているが、その他の要因に
溶存態鉄の測定を行った。この 30 定点は前年度の
ついては不明な点は多い。
調査で、2011 年 2 月に海藻の種類ごとの被度を確
そこで、溶存態鉄を増加させることが磯焼け対策
認している。今回は溶存態鉄の量と海藻の量の相関
として有効であるのか確認するため、調査を実施し
の有無を確認した。なお、海藻調査を冬期、溶存態
た。今年度は、3 年間調査の 2 年目である。
鉄の測定を夏期に実施したのは、それぞれが最も多
いと思われる時期を選んだためある。
Ⅰ
2.県内全域溶存態鉄調査
溶存態鉄調査
図 2 に示す県内の 30 定点で、8 月~ 9 月に溶存
態鉄の測定を行った。
事業の目的
佐伯湾で、溶存態鉄の量と海藻の量の相関を確認
するための調査を行った。
30
26
27
28
29
25
24
20
19
23
22
18
21
17
16
1
15
12
2
3
14
13
11
9
4
7
10
8
図1
佐伯湾溶存態鉄調査の定点
6
5
大 分 水 研 事業 報 告
96
季に行ったものである。溶存態鉄の濃度が海藻の生
事業の結果
長の制限要因となっているのであれば、比較的少な
い冬季の溶存態鉄量が関係している可能性があり、
1.佐伯湾溶存態鉄調査
溶存態鉄の測定結果を表 1、及び図 3 に示す。ま
来年度は冬季の調査を行う必要がある。
た、2011 年 2 月に実施した海藻調査結果を表 2 に、
溶存態鉄と海藻被度の相関を表 3 に、それぞれ示す。
溶存態鉄と海藻合計被度との相関係数は 0.10 であ
2.県内全域溶存態鉄調査
溶存態鉄の測定結果を表 4、及び図 4 に示す。調
査定点による差は大きいが、海域による大きな差は
り、相関はほとんどないと考えてよい。
ただし、この調査は溶存態鉄濃度が比較的多い夏
認められなかった。また、磯焼けが問題となってい
る佐伯湾以南と、それ以外の地域の溶存態鉄の量に
大きな差は見られなかった。
8
6
1
2
3
4
7
5
(井本有治)
9
10
11
表1
佐伯湾溶存態鉄調査結果
表1 佐伯湾溶存態鉄調査結果
St
12
13
16
17
15
14
18
20
19
21
22
23
24
25
26
27
28
30
図2
29
1
2
3
4
5
6
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8
9
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11
12
13
14
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16
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24
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29
30
月日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月28日
6月30日
6月30日
6月30日
6月30日
6月30日
7月13日
7月13日
7月13日
7月13日
7月13日
7月13日
7月13日
7月13日
7月13日
7月13日
緯度
N 32°59.061′
N 32°58.012′
N 32°57.806′
N 32°57.201′
N 32°56.702′
N 32°56.749′
N 32°56.749′
N 32°56.167′
N 32°57.248′
N 32°56.659′
N 32°57.523′
N 32°58.225′
N 32°57.495′
N 32°57.318′
N 32°58.797′
N 32°59.569′
N 32°59.599′
N 32°59.849′
N 33°00.978′
N 33°00.894′
N 32°59.831′
N 32°59.629′
N 33°00.500′
N 33°01.533′
N 33°02.028′
N 33°02.924′
N 33°03.023′
N 33°03.005′
N 33°02.787′
N 33°03.391′
経度
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
132°04.201′
132°04.745′
132°03.646′
132°04.236′
132°04.762′
132°03.758′
132°01.988′
132°00.845′
131°59.374′
131°58.609′
131°58.308′
131°57.173′
131°57.010′
131°56.502′
131°55.450′
131°56.367′
131°57.352′
131°55.605′
131°56.142′
131°55.604′
131°55.180′
131°54.037′
131°54.177′
131°55.241′
131°55.338′
131°55.616′
131°56.302′
131°56.952′
131°58.836′
132°00.711′
県内全域溶存態鉄調査の定点
佐伯湾の溶存態鉄濃度(23年6月~7月)
1µg/L
5µg/L
図3
佐伯湾の溶存態鉄調査結果
溶存態鉄
(ppb)
4.1
0.6
0.8
7.9
8.6
6.9
1.8
5.0
1.5
1.3
3.8
3.0
1.4
1.8
3.3
2.7
5.8
2.1
8.6
3.2
1.3
4.9
4.4
4.4
7.5
2.9
2.1
3.1
4.0
1.1
DIN
(umol/L)
3.63
3.85
2.10
3.19
2.46
2.98
1.87
2.42
2.53
1.28
2.00
1.26
0.85
0.68
1.52
1.71
0.64
0.85
0.39
0.37
1.12
0.53
0.60
0.99
0.71
0.63
1.30
1.03
2.59
2.74
PO4-P
(umol/L)
0.19
0.24
0.13
0.23
0.17
0.21
0.20
0.17
0.19
0.16
0.26
0.16
0.10
0.20
0.18
0.11
ND
0.08
ND
0.08
0.20
0.14
0.16
0.26
0.15
0.16
0.26
0.20
0.44
0.35
平 成 23 年 度
表2 海藻調査結果
(単位:被度%)
St
クロメ類
ホンダワラ類 大型藻類
小型藻類
全計
A
B
A+B
C
A+B+C
1
7
7
57
63
2
10
10
70
80
3
20
20
60
80
4
0
77
77
5
50
50
25
75
6
2
2
73
75
7
3
3
67
70
8
36
16
53
38
90
9
5
26
31
44
75
10
34
36
70
14
84
11
52
27
78
7
85
12
38
40
78
9
86
13
22
58
80
10
90
14
15
32
47
20
67
15
25
15
40
8
48
16
41
26
68
8
75
17
15
41
56
30
86
18
13
30
43
13
57
19
10
63
73
7
80
20
18
3
22
60
82
21
20
20
25
45
22
2
2
63
65
23
18
2
20
47
67
24
35
30
65
18
83
25
44
26
70
14
84
26
35
23
58
15
73
27
45
38
83
5
88
28
26
49
75
11
86
29
31
41
73
10
83
30
18
48
65
23
88
97
表4 県内全域の溶存態鉄調査結果
St
月日
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
表3 鉄濃度と海藻被度の相関
相関の対象
相関係数
鉄濃度とクロメ類(A)
-0.06
鉄濃度とホンダワラ類(B)
0.01
鉄濃度と大型海藻(A+B)
-0.03
鉄濃度と小型海藻(C)
0.08
鉄濃度と海藻合計(A+B+C)
0.10
Ⅱ
8月26日
8月26日
8月26日
8月26日
8月26日
8月26日
8月24日
8月24日
8月24日
8月24日
8月24日
8月24日
8月24日
8月22日
8月22日
8月22日
8月22日
8月22日
9月9日
9月9日
9月9日
9月9日
9月9日
9月9日
9月26日
9月26日
9月26日
9月26日
9月8日
9月1日
33°38.300′
33°35.501'
33°35.788′
33°35.860′
33°37.645′
33°39.544′
33°41.230′
33°44.400′
33°43.130′
33°40.232′
33°33.883′
33°29.359′
33°27.494′
33°26.128′
33°22.432′
33°21.317′
33°19.077′
33°15.802′
33°16.302′
33°14.123′
33°11.271′
33°08.874′
33°04.817′
33°06.590′
33°02.913′
32°56.447′
32°54.269′
32°52.660′
32°46.795′
32°45.000′
経度
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
131°12.246′
131°22.180′
131°25.254′
131°25.535′
131°27.988′
131°29.866′
131°33.602′
131°40.198′
131°39.617′
131°39.708′
131°44.555′
131°44.067′
131°43.403′
131°42.732′
131°37.713′
131°32.527′
131°30.184′
131°37.010′
131°57.666′
131°53.673′
131°50.928′
131°49.268′
131°56.457′
132°01.758′
131°59.142′
132°01.56′
132°00.380′
131°59.720′
131°54.127′
131°39.663′
溶存態鉄
(ppb)
1.6
6.2
1.1
2.6
0.8
8.9
5.9
3.8
1.5
3.9
2.9
7.7
1.5
1.0
3.2
1.5
1.8
4.0
1.8
3.0
1.4
9.6
3.5
3.3
12.0
3.3
2.3
1.8
6.2
2.3
塩分
(‰)
20.847
31.010
31.273
31.324
31.297
30.957
30.049
32.429
31.624
31.956
31.687
31.209
30.177
32.072
31.410
30.394
30.984
30.044
33.044
33.267
33.059
33.062
33.217
33.391
33.153
31.578
33.305
33.517
33.639
33.806
藻類の溶存態鉄要求量調査
(フラスコ培養試験)
事業の目的
5ppb
1ppb
緯度
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
N
沿岸海水に溶存鉄を加えることが、海藻の生長に
何らかの影響を与えるかを検証する。
事業の方法
試験には研究部内の流水水槽に大量に繁茂してい
たリボンアオサ(図 1)を用いた。採集したリボン
アオサ葉体から、穴空けポンチ(図 2)で直径 10mm
の円盤状葉片を作成し 1 試験区当たり 30 枚を供試
した(図 3)。
試験区は当研究部前の海から採取した海水を濾過
加熱滅菌した 5μg/L 区と、Fe(Ⅲ)-EDTA を加える
ことによって濃度調整した、20μg/L、40μg/L、80μg/L、
160μg/L の合計 5 区を設定した。
培養には 1L の専用フラスコを用い、各区溶存鉄
図4
県内全域の溶存態鉄結果
濃度を調整した培養水を定量ポンプで 1L/日の量を
滴下換水した(図 4)。
恒温室は 20 ℃に設定し、照度は 12,000 ルクスに
統一した。照明は 12 時間照明/日にした。試験は 11
月 1 日に開始し、7 日後の 11 月 8 日に終了した。
各試験区の生長量は葉片片面の増面積で求めた。
試験終了後の供試葉片はガラス板でプレスし、葉片
を最大限広げた状態で写真撮影(図 5)し、画像デー
タ(図 6)を元にキーエンス社の「粒度解析アプレケ
ーション」を用いて面積を数値化した(図 7)。
大 分 水 研 事業 報 告
98
図6 撮影した画像(中央黒円が開始時の面積)
図1
リボンアオサ
図7 画像解析ソフトで面積を数値化
図2
穴空けポンチ打抜き
平均成長倍率
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0
50
100
150
200
Fe濃度(μg/L)
図3
各区30枚ずつ供試
図8 各試験区葉片の平均生長倍率
事業の結果
各試験区の葉片の平均生長倍率を図 8 に示した。
各試験区の生長量を統計的に比較するため、等分
図4
恒温室内の専用フラスコで1週間培養
散性についてバートレット検定をしたところ不等分
散と判定されたため、クラスカル・ウォリス検定(数
値ではなく順位を多重比較)を採用した。
その結果、P 値は 0.072 > 0.05(5%危険率)となり
試験区間に有意な差は認められなかった。
培養液の鉄濃度を増加しても海藻の生長に有意な
差が見られないというのは、昨年度実施したヒジキ
の培養実験と同じ結果であった。今までの実験は鉄
濃度を増加したら海藻の生長は早くなるかを確認す
るものであったが、明確な差は認められなかった。
来年度は逆に培養液の鉄濃度を低下し、鉄濃度を減
少させれば海藻の生長は遅くなるのかを確認する必
要がある。
図5 供試葉片を高解像度カメラで望遠撮影
(景平真明)
平 成 23 年 度
Ⅲ
99
ヒジキ陸上養成試験
事業の目的
事業の結果
1.試験(1)
供試ヒジキの重量測定結果を表 3 及び図 3 に示し
ビバリーユニットは海水中への鉄分供給を目的と
した新日本製鐵の海藻用施肥製品である。ビバリ-
た。結果を基に2元配置分散分析を行ったところ、
次の結果が得られた。
ユニットが海藻の生長と溶存態鉄量に及ぼす影響を
鉄鋼スラグの添加効果:有意差なし
調べる。
腐植土の添加効果
:強い有意差あり
交互作用
:有意差なし
腐植土の添加が海藻の生長に効果があることはす
事業の方法
でに認められていることであり本実験でも確認でき
たが、鉄鋼スラグの添加効果は認められなかった。
しかし海藻の種類により鉄要求量が異なることも考
1.試験(1)
試験は 5 月 6 日~ 6 月 9 日の 35 日間実施した。
試験は屋外 1kL 水槽を使用し、4 試験区を表 1 のと
えられるため、次年度は海藻の種類を変え、再現性
を確認する必要がある。
おり設定した(図 1)。昨年度の実験で明確な差が
出なかったため、今回は添加する鉄鋼スラグと腐植
表2
土の量を 6 倍に増加した。ただし水槽容量を 0.5kL
から 1kL としたため、単位水量あたりの添加量は 3
倍となった。また、換水率を 2 回転から 1 回転に下
げた。各試験区にロープに挟み込んだヒジキを収容
試験(2)の設定
①ビバリーユニット区(鉄鋼スラグ17.5㎏+腐植土7.5㎏)
②鉄鋼スラグ区(鉄鋼スラグ17.5㎏)
③腐植土区(腐植土7.5㎏)
④対照区(何も設置せず)
し、試験開始時と終了時の重量を測定した。
2.試験(2)
試験は 2011 年 10 月 6 日~ 2012 年 1 月 16 日の
103 日間実施した。試験には屋内 1kL 水槽を使用し、
4 試験区を表 2 のとおり設定した(図 2)。海藻は使
用せず、溶存態鉄量の推移を確認することを目的と
した。溶存態鉄の測定は新日本製鐵の関連会社であ
るニッテクリサーチが行った。
表1
試験(1)の設定
①ビバリーユニット区(鉄鋼スラグ15㎏+腐植土15㎏)
②鉄鋼スラグ区(鉄鋼スラグ15㎏)
③腐植土区(腐植土15㎏)
④対照区(何も設置せず)
図2
表3
試験区
①
②
③
④
図1
試験区全景
試験区全景
開始時と終了時の総重量(g)の変化
開始時 終了時
190
262
199
199
155
208
172
190
増重量
72
0
53
18
大 分 水 研 事業 報 告
100
試験に用いた鉄鋼スラグユニットは、大型土嚢袋
1.4
(通称フレコンパック、材質ポリプロピレン製)に、
1.3
鉄鋼スラグ(転炉スラグ)と腐植土を 1 対 1(容積
1.2
成
長 1.1
率
①ス+腐
比)に混合・充填したもの(100kg/袋)を(株)製鉄
②スラグ
鉱業大分から 16 袋購入した。前年度の試験では溶
③腐植土
1
④なし
存態鉄の溶出が確認されなかったため、今回は次の
改良を加えた。
0.9
① 200kg 8 袋→ 100kg 16 袋とした(表面積を増
0.8
開始時(5月6日)
加させた)。
終了時(6月9日)
②フレコンパックの側面下部に径 5mm の穴を 8
図3
開始時と終了時の総重量(g)の変化
③フレコンパック上部を紐で縛らず、開放状態と
70
した。
スラグ+土
60
2)試験場所及び筏への鉄鋼スラグの垂下
スラグ
50
土
40
試験は、佐伯市蒲江入津地区の西野浦湾で行った。
無
30
試験には、魚類養殖用の 10m × 10m 角の筏を用い
20
た。
10
試験区の筏には、鉄鋼スラグユニット 16 袋を等
0
間隔に、袋上部が水深 0.9m 程度になるように 12 月
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
90
95
100
鉄濃度( μg/L)
個ずつあけた。
経過日数
1 日に垂下した。対照区の筏は、鉄鋼スラグ無垂下
とした。
図4
溶存態鉄量の変化
試験区と対照区の筏は、190m 程度の距離を離し
た。
3)海藻の張り込み
2.試験(2)
試験に用いた海藻は、徳島県鳴門産ワカメと、大
溶存態鉄の測定結果を図 4 に示した。試験区設定
分県佐伯市上浦地先産のヒジキである。
1 ヵ月後には試験区 1(鉄鋼スラグ+腐植土区)及
ワカメは、幹縄(太さ 12mm)10m に対して、種
び試験区 2(腐植土区)で溶存態鉄量の増加が確認
糸 12m を巻き付けたロープを 8 本作成して、試験
された。しかし 2 ヵ月後には確認されなかった。鉄
区と対照区に 4 本ずつ、12 月 1 日に張り込んだ。
鋼スラグ及び腐植土を添加すると溶存態鉄の増加は
ワカメ幼体は 30 個体測定し、平均が 28.8mm、最
確認されるが、その効果は短期間しか継続しないこ
大が 55.0mm、最小が 10.0mm であった。
とがわかった。
ヒジキは、約 5cm おきに 20cm サイズの幼体 2 ~
(金澤
健)
3 株(8 ~ 10 本)を挟み込んだロープを 2 本作成し、
試験区と対照区に 1 本ずつ張り込んだ。張り込みは
12 月 7 日に行った。張込時のサイズは、30 個体測
Ⅳ
海藻養殖における鉄鋼スラグの生長促進
効果の検証
事業の目的
定して平均が 19.2cm、最大が 28.0cm、最小が 10.0cm
であった。
2.生長促進効果確認調査
1)水質
鉄鋼スラグの藻類生長促進効果を確認するため
に、佐伯市蒲江入津地区西野浦湾において、ワカメ
とヒジキの養殖試験を行った。
0.9m 層の採水を行い、DIN、PO4-P、溶存態鉄に
ついて分析を行った。
溶存態鉄の分析には、採水直後あるいは 1 日後に
実験室で 0.45μm のメンブレンフィルターで濾過
後、海水 1L に対して硝酸を 1ml 添加して冷蔵保存
事業の方法
1.海藻養殖試験区の設定
1)鉄鋼スラグ
したものを用いた。濾過海水中の溶存態鉄は、キレ
ート交換樹脂(MetaSep IC-ME:GL サイエンス社)を
用いた固相抽出による濃縮後、ICP-MS を用いて測
定した。なお、溶存態鉄の分析は、社団法人大分県
薬剤師会に依頼した。
平 成 23 年 度
12
1 月 10 日、2 月 6 日に現地調査を行い、海藻の生
10
長を目視観察した。2 月 28 日の最終調査時には海
藻の取り上げを行い、幹縄 1m 当たりの取り上げ重
量を測定した。
ロープ1mあたり の重量(㎏)
2)海藻の生長促進効果
事業の結果
101
試験区
対照区
8
6
4
2
0
No1
No2
No3
No4
1.水質調査
図2
DIN、PO4-P は、試験区と対照区で大差なく経過
試験終了時のワカメ取上重量の比較
した。DIN は、試験区が 2.18 ~ 3.35μM、対照区が
1.8
~ 0.38μM、対照区が 0.01 ~ 0.35μM で推移した。
1.6
溶存態鉄の測定結果を図 1 に示した。溶存態鉄は、
鉄鋼スラグ垂下前(12 月 1 日)が、試験区は 0.9μg/L、
対照区は 1.5μg/L であった。鉄鋼スラグ垂下後の溶
存態鉄濃度は、試験区が 0.9 ~ 1.9μg/L、対照区が 0.7
~ 2.3μg/L で推移し、試験区と対照区で明瞭な濃度
ロープ1mあたりの重量(㎏)
0.82 ~ 5.96μM で推移した。PO4-P は、試験区が 0.09
差は見られず、鉄鋼スラグユニットからの溶存態鉄
試験区
対照区
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
No1
溶出は確認できなかった。
No2
No3
No4
No5
2.5
図3
試験終了時のヒジキ取上重量の比較
鉄濃度( ppb)
2
1.5
試験区
1
Ⅴ
鉄鋼スラグ礁調査
対照区
事業の目的
0.5
0
12/1
図1
12/7
1/10
鉄鋼スラグ礁の海藻に対する影響を確認する。
2/6
溶存態鉄の測定結果
事業の方法
2.海藻の生長促進効果確認調査
ワカメの幹縄 1m 当たりの取り上げ重量の結果を
図 2 に、同様にヒジキの結果を図 3 に示した。
図 1 に示す下入津と姫島の 2 ヵ所で、新日本製鐵
(株)が設定した鉄鋼スラグの試験区で潜水調査を
ワカメ、ヒジキともに対照区の取り上げ重量の方
行い、海藻の種類と量を確認した。試験区の設定を
が試験区に比べて大きい傾向にあり、ヒジキでは両
表 1 に示した。下入津は 5 月、8 月、11 月、2 月に、
区間に有意な成長差が認められた(Mann-Whitney
姫島は 7 月、10 月に調査を行った。
検定)。昨年度も同様の調査で、有意差はないもの
下入津は試験区(コンクリートブロックと鉄鋼ス
の対照区の方が生長がよい結果が出ている。その理
ラグ)と対照区(コンクリートブロックのみ)を設
由については、試験区と対照区の条件が同一でなか
定し、試験区、対照区とも、魚類による食害を防止
った可能性が高い。
する目的で半分を網で囲っている。また、下入津で
(井本有治)
は海水の溶存態鉄の濃度を測定した。測定は(社)大
分県薬剤師協会が行った。
大 分 水 研 事業 報 告
102
あるが、それを除くと鉄鋼スラグ設置区と対照区で
大きな差は見られず、鉄鋼スラグからの鉄の溶出は
確認されなかった。
2.姫島北部
海底は砂質で、水深は浅く、大潮時には干出する
場所であった。
7 月、10 月とも、上から見た被度は 10%であっ
た。上部側面にはウミトラノオが多く、有用種のヒ
ジキも一部に見られた。下部側面にはトゲモクが多
図1
調査地点
かった。鉄鋼スラグ礁を設置した場所は周辺の砂質
表1 試験区の設定
設置時期
鉄鋼ス ラグの種類
下入津
平成21年10月 ビバリーユニット
姫島(北部) 平成20年12月 ビバリーボックス、ビバリーロック
姫島(南部) 平成20年12月 ビバリーボックス
帯と比べて海藻の量は多かった。これは付着基質が
対照区の有無
有
無
無
増加したためと考えられ、したがって投石と同等の
効果は認められる。しかし対照区がないこともあり、
鉄鋼スラグの効果であるかどうかは確認できない。
3.姫島南部
海底は砂と礫、石が混在する海域であり、北部に
比べて水深は深い。また、付着基質が多い海域であ
事業の結果
る。海藻類は北部に比べて多く、上から見た被度は 7
月が 60%、10 月が 100%であった。ホンダワラ類が
1.下入津
小型藻類のみが繁茂する海域であり、5 月、8 月、11
多く、トゲモクが優占種であった。他にノコギリモ
月はマクサ、2 月はマクサとトサカノリが優占種で
ク、ジョロモクが多かった。周辺も藻類の多い海域
あった。上から見た被度は 5 月が 70%、8 月と 11
であり、鉄鋼スラグ礁と周辺海域の差は認められな
月が 30%、2 月が 70%であった。8 月と 11 月に海
かった。
(井本有治)
藻が少なかったのは 8 月の大型台風の影響が考えら
れた。
周年を通して鉄鋼スラグ設置区と対照区で海藻の
Ⅵ
種類と量に大きな差は見られなかった。
調査結果のまとめと今後の問題点
5 月調査時にはクロメが網の内部で確認された。
しかし 8 月の台風で網囲い試験区は大破し、その直
大分県沿岸域の溶存態鉄濃度の測定を 2 年間行
後の調査では確認されなかった。このことから、こ
い、データを集めた。定点による差、季節による差
の海域でクロメ等の大型海藻が少ないことは魚の食
は大きいが、平均は 3 ~ 4μg/L と推定され、これは
害が原因であると考えられた。
全国の他地区のデータと比較してほぼ平均的な数値
であった。
この溶存態鉄濃度が海藻の要求量を満たしている
18
鉄鋼スラグ設置区
溶存態鉄濃度(μg/L)
16
かどうかが大きな問題であり、確認するためにフラ
対照区
14
スコ実験を行った。鉄は海藻の必須栄養素であり、
12
10
鉄フリー海水では海藻は生長できないことは知られ
8
ている。鉄フリー海水に鉄を添加することにより海
6
藻の生長はよくなり、しかしある濃度になったとき
4
に海藻の要求量を満たし、それ以上添加しても生長
2
0
22年8月
11月
23年2月
5月
8月
11月
24年2月
に差はなくなると想定される。そのときの濃度が 3
~ 4μg/L より大きければ、大分県沿岸域では溶存態
鉄の添加が海藻の増殖に有効であると推論できる。
図2
下入津の溶存態鉄測定結果
過去 2 年間は自然海水の溶存態鉄濃度を増加して海
藻の生長がよくなるかどうかを確認したが、有意な
前年度からの溶存態鉄の測定結果を図 2 に示し
た。2011 年 8 月の対照区の飛び値は原因が不明で
差は見られなかった。今後は自然海水より鉄低濃度
の培養液を用い、試験を継続する必要がある。
平 成 23 年 度
鉄鋼スラグ礁の効果を確認するため、水槽実験、
103
実際、現地海藻養殖試験と鉄鋼スラグ礁調査の結
現地海藻養殖試験、鉄鋼スラグ礁効果調査を行った。
果、溶存態鉄の増加は確認されなかった。水槽実験
水槽実験の結果、鉄鋼スラグ+腐植土区で溶存態鉄
の結果から推測すると、鉄鋼スラグ設置直後は溶存
の増加は認められたが、その期間は約 1 ヵ月と短か
態鉄を増加させる効果があったが、短期間で効力を
った。水槽実験の設定は海水 1 トンに対して鉄鋼ス
失った可能性が強い。
ラグ 17.5kg、腐植土 7.5kg を添加、換水率 1.0 であ
溶存態鉄の増加が海藻の増殖に効果があるのか、
り、これは海中に鉄鋼スラグ礁を設置した場合より
まだ結論は出せないが、それを確認するためには溶
鉄濃度は高くなりやすい設定であると考える。水槽
存態鉄を継続して供給できる製品の開発が必要であ
実験で鉄高濃度の維持ができないのであれば、海中
る。
での効果も期待できないと考える。
(井本有治)
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