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1 土田社長記者会見要旨 日 時 : 平成15年12月
土田社長記者会見要旨 日 時 : 平成15年12月16日(火) 午後3時30分∼午後4時05分 場 所 : 東証 ARROWS プレゼンテーション・ステージ 社 長 本日説明する一点目は、 「ETF の上場制度の見直しについて」である。 まず、見直しの趣旨であるが、本年 5 月の会見で説明したように、現在、ETF については、本年の計算期間末日における受益者数が500 人未満となって上場 廃止基準に該当した場合であっても上場廃止とせず、猶予期間を1 年間延長す る暫定的な措置を行っている。これは、株価指数に連動して価格が形成される という ETF の特性が、流通市場において実際に発揮されている状況がみられ たことから、上場株券の株主数に係る上場廃止基準に倣って設定した受益者数 基準について、改めて、別の角度も含めて検討する余地が認められたことによ るものである。 ETF の株価指数に連動するという商品特性にかんがみると、少なくとも株主 数基準と同水準の受益者数を求める必要性はないものと言えるが、受益者数が 極めてわずかな ETF の中には、売買成立の頻度が非常に低い銘柄が見受けら れる。そのような売買状況を踏まえると、受益者の換金機会を確保するために は、やはり一定程度の売買成立頻度が期待できる受益者数の要件を残しておく ことが適当と考えられる。 そこで、上場廃止基準における受益者数の要件について、基準そのものの撤 廃はしないものの、所要数を緩和する見直しを行うものである。 具体的な対応については、受益者数が 100 人未満の場合において、1 年間の 猶予期間内に 100 人以上にならないときに上場廃止することとする。ただし、 猶予期間における値付日数比率が 30%以上である場合は、猶予期間終了時点の 受益者数が 100 人に達しない場合であっても、受益者数の改善が期待できるも のとして、直ちに上場廃止とはせず、猶予期間を更新する取扱いとする。 本件については、パブリックコメントの手続きに付したうえで、来年2 月上 旬を目途に実施したいと考えている。 1 二点目は、「四半期財務情報の開示の充実に関する適時開示制度の見直しに ついて」である。 当取引所では、本年8 月に四半期開示に関する検討委員会の報告書の公表と 併せて、上場会社の四半期開示に関する今後の取組みの方針を公表している。 本件は、その取組みの方針に沿った制度要綱であり、現在、売上高を中心とす る「四半期業績の概況」として上場会社に求めている四半期財務情報の開示に ついて、より有用な情報を投資者に提供するために、より詳細な「四半期財務・ 業績の概況」の開示を求めることとするものである。 改正の具体的な内容であるが、上場会社は、現行の「四半期業績の概況」の 開示に代えて、第 1 四半期及び第 3 四半期における当該上場会社の企業集団、 すなわち連結ベースの経営成績及び財政状態に係る四半期財務情報を含む「四 半期財務・業績の概況」を開示しなければならないものとする。 実務上、適時開示を求める事項としては、売上高、営業利益、経常利益、四 半期純利益、総資産及び株主資本並びに四半期財務情報の作成に当たっての基 本的な考え方等であり、実際には、要約の損益計算書、貸借対照表が添付され るイメージになる。 また、四半期財務・業績の概況の開示については、システム対応や子会社に おける対応等の必要がある上場会社についての実務上の準備期間を考慮し、施 行日以後 3 年以内に開始する事業年度については、引き続き、現行の売上高等 の開示で足りるとするなど、所要の経過措置を設けることとする。 本件については、パブリックコメント手続きに付したうえで、平成 17 年 3 月期第 1 四半期、すなわち平成 16 年 4-6 月期の開示から適用したいと考えて いる。 三点目は、 「売買停止期間の見直しについて」である。 当取引所では、平成 10 年 7 月以前においては、会社情報に係る売買停止を 行った場合は終日停止としていたが、平成 10 年 7 月には発行者による情報発 表後 90 分後に売買を再開し、平成 11 年 12 月からは 60 分後に売買再開とする など、情報通信インフラなど外部環境の変化等を踏まえながら、適宜、売買停 止期間の見直しを行ってきたところである。その後、インターネット等の更な 2 る普及により、情報入手の迅速性、容易性は格段に向上した。また、市場参加 者からは迅速な取引機会の提供についてニーズが寄せられている。更に、来年 2 月施行予定のインサイダー取引規制の見直しにより、上場会社が行った開示 情報は直ちに取引所等のホームページで入手が可能となる予定である。 このような外部環境の変化や市場参加者のニーズに対応するため、売買停止 期間を見直し、現行の 60 分から 30 分に短縮するものである。 本件については、来年の 1 月 8 日までの間、パブリックコメント手続きに付 し、新聞広告やリーフレットの配布等、市場参加者の皆様に十分に周知を図っ たうえで、来年 2 月中旬を目途に施行する予定である。 最後に、 「 『東京証券取引所 2003 大納会・2004 大発会』について」説明させ ていただく。 当取引所では、恒例の大納会を本年12 月 30 日に、大発会を来年 1 月 5 日に 開催する。 大納会では、ゲストとして宇宙飛行士の毛利衛様とロボット Honda ASIMO をお迎えする。 毛利様は、1992 年に NASA スペースシャトル「エンデバー号」に科学者宇 宙飛行士として搭乗され、更に2000 年には 2 回目の搭乗を成し遂げておられ る。また、米国アラバマ大学や筑波大学の客員教授も務められ、現在は、日本 科学未来館館長に就任されておられる。このように、宇宙飛行士として様々な 困難を乗り越え、果敢に宇宙にチャレンジされ、今なお、様々な分野での御活 動を通して、我々に未来への夢と希望を与え続けていただいている。 また、Honda ASIMO は、正に日本の技術・開発力の高さを象徴し、未来の 可能性を示唆してくれるロボットである。余談になるが、鉄腕アトムは今年 2003 年に誕生したという筋書きだそうで、その関係で、ASIMO は今年色々な イベントに引っ張りだこだそうである。そうした忙しいさなか、東証に来てい ただけるということである。 そのような両ゲストをお迎えして、参加される皆様とともに元気に、そして 明るく今年の手締めをしたいと思う。 そして大発会では琴の生演奏で会場を彩り、また例年どおり晴着の方々もお 3 迎えし、華やかに明るい新年を迎えたいと考えている。 (以下、質疑応答) 記 者 今回が今年最後の定例会見である。上場に向けていろいろ考えていることが あると思うが、社長が考えておられる来年1 年、あるいは今年 1 年を振り返っ てどのような年であったのかお伺いしたい。 社 長 確かに今日で今年の定例会見は最後である。来年のことは、また来年に入っ てから申し上げた方が気合が入っていいと思うので、主として、この1 年の回 顧についてお話させていただきたい。 昨年この時期の会見の場においては、1 年の回顧として「株式会社東証とし ての船出の年」であったと申し上げたかと思う。今年は、それに続いて、一言 で言えば「株式会社東証という船が巡航速度に入った年」と言うことができる かと思う。 そういう東証としての 1 年の回顧として、三点申し上げたい。 一点目は、やはり何と言っても、証券市場にようやく明るい兆しが見えてき たということである。 株価は 3 月 11 日に TOPIX で安値 770.62 ポイントをつけた 以降、企業業績の回復などを背景に上昇し、10 月 20 日には 1,105.59 ポイントの 高値を記録した。また、時価総額を見ても昨年末の約243 兆円から 10 月末に は約 306 兆円と、一時は 300 兆円を回復した。最近も浮いたり沈んだりという 感じである。さらに、こうした株価水準にもまして目をみはるのは売買高、売 買代金の膨らみ、高水準維持である。昨年1 年間の市場第一部の一日平均売買 高、売買代金は 8 億 4,200 万株、7,758 億円であったが、今年は先週までで一 日平均 12 億 6,000 万株、9,760 億円である。特に、年後半の 7 月以降は 14 億 3,100 万株、1 兆 2,512 億円である。以前にも申し上げたが、マーケットにと って豊かな流動性が保たれているということは最も大事なことである。私ども は、これを支え、維持できるような施策を今後とも考えていかなければならな いと思っているところである。 二点目は、新たな企業の上場が引き続き堅調であり、特に私どものマザーズ において顕著であったことである。東証への新規上場会社数の推移を見ると、 4 平成 12 年にいわゆるIT バブルを背景に 157 社と史上最高を記録した。その後 も市況の低迷にもかかわらず、新規上場の会社数としては、平成13 年には 92 社、平成14 年には 94 社と、かなりの高水準を維持してきた。今年は今日現在 で 109 社、年内上場を承認済みの会社も含めれば117 社と史上第 2 番目の水準 になると見込まれる。その中で、マザーズについて更に申し上げれば、平成 12 年に 27 社を記録し、その後低迷する時期もあったが、昨年後半以降回復して おり、今年は今日現在 30 社、年内上場を承認済みの会社も含めれば 33 社と過 去最高の社数である。社数だけでなく、話題性があり、関係者から高い評価を 受けている会社の上場もあると言うことができると思っており、今後ますます 新興企業の方々のお役に立てるのではないかと期待している。 三点目は、私ども株式会社東証自身の業績に関してである。市況の回復を主 たる要因として今中間期には大幅な増益を達成し、更には今年度通期で見ても 増益を達成できる見込みである。ただ、ここで申し上げたいのは、市況の回復 のみに依存しているというわけではなく、費用面での削減努力も大きな効果を 生んでいるということである。市況の影響度を弱める、それに左右される体質 を改めていくということを目指しているが、これは非常に努力を要することで、 一朝一夕にはできないことである。そうではあるが、例えば、今年市況が持ち 直すまでのような低水準の下にあっても、ある程度の利益水準を確保できる財 務基盤はできつつあると思っている。そうした意味で正しく冒頭申し上げたよ うに、ベースとなるスピードは出せる、巡航速度に入ったということが言える と思っている。もちろん、コスト削減と言っても、殊に東証のような場合には、 ただやみくもに減らせばよいというものではないし、私はそう思っていない。 サービスとは品質とコストとの関数である。ある程度コストをかければサービ スは向上するという事実はあるわけで、片一方で品質をどの程度まで向上させ るかということもあり、ひとつの関数なのである。その最適解を考えねばなら ないということだと思う。私どもは今後とも、市場の信頼性確保、安定性確保 という分野への投資は前向きに考えていきたいと思っている。 東証としては以上であるが、最後にやや私の個人的な感想になるかもしれな いが一点付け加えたい。今年も、様々な会議に出席するためいろいろなところ に出掛けた。国内ではコミュニティー・ミーティングというイベントをやって 5 おり、地方都市に 4 回行った。これは株式会社化後始めたものであるが、地方 都市に行っていろいろお話を伺える機会ができた。また、海外は米国、アジア などに 5 回出張した。春先に SARS問題があったので1∼2 回予定よりも減っ たかもしれない。そのうち、とりわけ印象深かったのは、やはり10 月の WFE ニューヨーク総会である。私は副議長という肩書きを持ってはいたが、やや突 発的な事態で、議長であるグラッソーNYSE 議長の突然の退任により、NYSE ですぐにそれに対応する体制をとれなかったために、私がにわかに議長代行と して会議を仕切ることになった。さすがに世界約 50 ヶ国の取引所の代表、重 鎮が集まるところで、その会議を仕切るということであり、しかも直前の要請 により、ということで、正直なところ緊張と圧力を感じたが、東証職員の援助 もあり何とか切り抜けた。来年の 10 月には東京総会を開くという予定を立て ている。これはこれで主催者側として、大変なイベントであり、何とか無事成 功させて、少しでも東証のプレゼンスの向上につなげたいと思っている。私が 会議の議長をしたのはこれと、2001 年の EOSEF の総会である。いずれにせ よ、そういう経験を少しでも来年に活かせればと考えているところである。 以上のように、一応の前進はあったと思う。しかし来年はますますすること が多い。中でも大きな目玉は、2005 年度の株式上場に向けて頑張らねばならな いことである。来年はそういうことで極めて重要な年である。その他いろいろ な懸案がある。それにどう対応するかということについては、年末に改めて考 えて、年明け以降、会見の場などでまたお話したいと思う。 記 者 大阪証券取引所と地方との連携について堺屋さんが提言されたが、その動き に関してどのように思われるか。 社 長 そうしたことは報道で読んだり、聞いたりしている。なかんずく報道で大き く取り上げられている話題は、いろいろな取引所がある中で、今度取引所にな ろうとしているジャスダックとヘラクレスの間の問題である。ただ、今のお話 でも明らかなように、我々は当事者ではないので、コメントは特に持ち合わせ ていない。 一般論的としては、かねがね私どもの考え方を申し上げている。新興市場を 統合してはどうかという議論はないことはないと思う。しかし、立地条件その 他あるが、それぞれの市場がそれぞれの特徴をベースに競争することは、新興 6 企業にとってもメリットのあることであり、決して否定されるものではないと 思っている。したがって、スローガン的に「市場統合」と言われても、そうい う言葉ににわかには賛成できない。 最近はその方面の記事も多くなり、御関心も増えているのだろうと思う。今 後、それぞれの市場を取り巻く環境がどうなるのか、それによってその市場が どのような状況になるのかについては、我々も問題意識を持って注視していき たいと思う。ただ、それについて、私ども東証から何かを言っていくというこ とは、現在はもちろん、おそらく今後もないと思っているが、東証は日本では 目に付く存在であるので、何らかの働き掛けなり、提案を受けることはあり得 ることであり、私どもはそうした立場にあると思っている。これは今年とか来 年とかのことを言っているつもりはないが、行く行く世の中の先を考えると、 あらゆる議論があり得るので、我々に対して何らかの働き掛けや提案があると いうことはあり得ないことではない。その場合にどう対応するのかという問題 意識を持つことは必要であると思っている。ただ繰り返すが、今年、来年には おそらくそういうことはないと思う。 記 者 今、金融審議会で銀行の証券仲介業解禁が議論されており、まだ結論ははっ きり出ていないが、証券市場活性化などの面から、今の流れとしては銀行に仲 介業を解禁する方向で検討していると理解している。この件について社長のお 考えを伺いたい。 社 長 その問題は証券取引法 65 条の問題であるのか、仲介業の問題であるのか、 人によって焦点の当て方が違っているような感じがある。いずれにしてもこれ は非常に大きなテーマである。今、金融審において、関係者がそれぞれの立場 で、様々な観点から審議を行っている状況であり、また、ここは記者会見の場 であるので、東証社長としてのコメントは差し控えたいと思う。私は、過去何 十年にわたってこの問題を別の角度からではあるが見続けてきた一人であり、 過去の思い出とか、当面のいろいろな論点についての感想はいろいろとある。 しかし、それは東証社長としての感想ではないので、ここでは差し控えたいと 思う。 記 者 同じく金融審の話であるが、自主規制機関の検査の見直しに関して、取引所 と日証協の役割分担も話し合われていると思う。合同にするという提案もある 7 ようだが、どういうふうになるのか。 社 長 金融審では当初、どの程度の幅広い問題意識を持って取り上げるつもりなの か、また、みんなの議論がどの辺に収斂するのか見当がつかなかったので、い ろんな意味で考え込まされる事態もあった。あえて重ねる必要はないと思うが、 かねがね申し上げているのは、私ども東証では自主規制機能を極めて重視して いるということである。市場開設者自身が自主規制機能を発揮し、それを通じ て市場の公正性・信頼性の確保を図ることは、取引所にとって欠かせない仕事 だと思っているし、 現に東証は、おそらく日本のいろいろな取引所の中で最高・ 最大の布陣を敷いている。詳しくは申し上げないが、売買審査の件数、投入し ている人員、システム投資は大変なものである。更に、考査業務、上場審査な ども含めて幅広く言えば、自主規制業務に全体の 1/3 程の人員を投下している。 これは正に東証の品質保証、ブランドであると思っているので、私ども東証自 身の自主規制部門の活動を確保したいということが大原則である。 ただ、実際の運用形態については、殊に私どもが相手とする方々から、いろ いろな御要望や問題の指摘もあるようなので、検査を受ける会社の事務負担の 軽減を図るとか、検査の実効性と効率性を高めるということは、当然官民を通 じて考えなければならない。その際に「自主規制部門の中で各機関の特徴を活 かしつつ、連携して一体的に検査を行う」ということがワーキンググループの 報告書において提言されているようであり、それはもう少し高次元の部会など でオーソライズされることになると思う。私どもは、そういう意味での運用上 の効率化、殊に、可能であれば、相手方の事務負担の軽減を図るということに ついては、大いに工夫し関係者と協議していきたいと思う。自主規制機能を確 保するということは東証の大原則であるが、その運用の具体的な段階でいろい ろ御相談に応じる余地はかなりあるだろうと見ている。いずれ審議会の議論も まとまるであろうから、それと相前後して関係者で相談を始めることになると 思う。 以 8 上