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シュネラージェネティックス
第8号
2006 1
WINTER
Vol.8
第12回日本遺伝子診療学会ランチョンセミナー2
医学教育としての遺伝カウンセリング
ロールプレイ実習
古庄 知己
講師 信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野
信州大学医学部附属病院遺伝子診療部
日時 平成17年8月6日(土)
会場 信州大学旭総合研究棟
はじめに
遺伝子診療と密接な関連のあるヒト遺伝情報の扱い
方について、日本においては現在まさに、ルール作りと
体制整備が進められているところである。まず、遺伝子
に関する研究を行う際には遺伝カウンセリングの提供を
考慮すべきであることが、3省(文部科学省、厚生労働
省、経済産業省)の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関
する倫理指針(2001)」に記載され、それを契機にほ
とんどの大学病院に遺伝子医療部門が設置されるように
なった。さらに、個人情報保護法が2005年4月に完全
施行となることを受けて、厚生労働省は「医療・介護関
係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイ
ドライン」を作成し、その中の10番目に「遺伝情報を
診療に活用する場合の取扱い」の項目を設け、「医療機
関等が、遺伝学的検査を行う場合には、臨床遺伝学の専
門的知識を持ち、本人及び家族等の心理社会的支援を行
うことができる者により、遺伝カウンセリングを実施す
る必要がある」と記載している。今後は、大学病院以外
の医療機関においても適切な遺伝医療を実施できる体制
を整備することが求められる。
そのような状況の中で、第12回日本遺伝子診療学
会が信州大学(長野県松本市)で開催された(会長:福
嶋義光[信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野
教授・同附属病院遺伝子診療部部長])。本学会は、遺伝
子診療の基礎となるゲノムサイエンスの新しい潮流を適
格に把握し、将来を展望できるような学際的組織であり、
遺伝医学研究者、臨床遺伝専門医、遺伝子検査の担い手
である企業の研究者などから構成されている。信州大学
医学部附属病院遺伝子診療部は、日本で最初に設立され
た遺伝子診療部門であり、その診療経験を基盤に、「遺
伝子診療と生命保険」、「遺伝子診療と特許」、「遺伝子検
査委託・受託の現状と課題」、「最新の遺伝子解析技術」、
「我が国の遺伝医学の現状と課題」など様々なテーマで
活発な討議が行われた。同大学医学部社会予防医学講座
遺伝医学分野は、遺伝医学に関する学生教育についても
日本の最先端を走っている。その特色ある教育の一つと
して、「遺伝カウンセリングロールプレイ実習」があり、
ランチョンセミナーのなかで、この実習についての説明
および最優秀グループの学生による実演が行われた。今
号では、その模様をお伝えする。
1
遺伝子診療学会ランチョンセミナー
医学教育としての
遺伝カウンセリング
ロールプレイ実習
遺伝子診療学会ランチョンセミナー
医学教育としての遺伝カウンセリング
ロールプレイ実習
イントロダクション
スライド1
櫻井 晃洋(信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野助教授)
臨床の場で遺伝情報をどのように扱うのかという臨床
遺伝学的知識と共に、遺伝カウンセリングのなかで、ど
のように患者さんやご家族に伝え、そして支えていった
らよいかという態度レベルの教育が、今後ますます重要
になってくると思われます。
このような動向を捉え、信州大学医学部では、医学部4
年生に対して平成8年から遺伝カウンセリングロールプ
レイ実習を実施しております。スタート当初から、それぞ
れの担当者の工夫も合わさり、現在はより充実したプロ
グラムへとステップアップして参りました。さらに、去
年からは古庄先生を中心に色々な仕組みが構築され、最
信州大学医学部では、平成8年度から医学部4年生時
終的には学生諸君による発表会と、教員たちの投票によ
に、遺伝カウンセリングロールプレイ実習を行っており
る最優秀グループの選考が行われるまでに至りました。
ます。目的は、遺伝学の系統講義で学んだ知識を実際の
本日は、まず古庄先生の方からそのロールプレイ実習
診療、すなわち疾患を有する患者さん、ご家族のケアに
の概要を説明させていただき、後ほど学生諸君による実
どのように生かしていくのかを学習する、ということに
演をご覧いただきます。
あります。
それでは古庄先生、よろしくお願いいたします。
スライド2
古庄 知己 先生
信州大学医学部社会予防医学講座
遺伝医学分野
信州大学医学部附属病院
遺伝子診療部
皆さん、こんにちは。信州大学病院遺伝子診療部の古
庄と申します。今日は、「医学教育としての遺伝カウン
セリングロールプレイ実習」と題しまして、学生さんの
方法は、1グループ4人、1回3時間(1.5時間の2コ
取り組みをご紹介したいと思います。まず、最初にどう
マ)を5回、という実習の中で、提示されたケースにど
いう実習なのかということを、教官の側からご説明申し
のような医学的問題があり、そしてご家族にどのような
上げます。それで、実習のねらいや成果をご説明した後
悩みが生じているのかを整理し、医学的情報をどのよう
に、実際に学生さんに演じていただいて、その後また先
に伝えたら良いのか、またそれに対し患者さん、ご家族
生方のご意見、あるいはご質問をいただく、というよう
がどのように感じるかを議論していきます。
なかたちにしたいと思います。それではスライドで説明
して参りたいと思います。
その上でシナリオを作成し、患者と家族側、医師とカ
ウンセラー側に分かれて演じます。演技の発表は学生、
2
教官、学外の遺伝カウンセリング専門家の前で行われ、
と武部啓先生(近畿大学大学院遺伝カウンセリングコー
批評を受けるというかたちになります。
ス)がいらっしゃってましたので、熱いメッセージを学
生に送っていただきました。第2回は、収集した情報に
スライド3
基づいて、疾患をある程度理解したうえで登場人物や環
境を設定し、大まかなストーリーを作成しました。それ
で患者家族側の背景、思い、医療側の思いを検討してい
きました。また、全員に対して教官の側から出生前診断
についてのミニレクチャーをしました。
第3回は、疾患の概略についての発表会です。先に説
明しましたように、12疾患を取り扱っておりますが、
自分たちの疾患の理解だけですと、遺伝医学的な知識の
広がりが少ないと考えられます。そこで、他のグループ
の取り扱っている疾患も理解しようということで、疾患
の概略についてのレジメを作成し、パワーポイントで各
班に発表してもらいました。
第4回はストーリーを練って、ドラマ練習を行いまし
今年度提示したケースですけれども、さまざまな遺伝
形式の疾患を扱っています。多因子遺伝としては口唇口
蓋裂、糖尿病、染色体異常としてダウン症など、それか
ら家族性腫瘍、神経疾患、というかたちでさまざまなも
のに取り組み、そして学習していけるようにしています。
た。2回目のミニレクチャーでは、遺伝カウンセリング
というものに対し、なかなか理解できていないようでし
たので、それを改めて整理するという機会にしました。
第5回は小テストを行い、実際に遺伝学的なことの理
解が十分であるのかどうかというのをテストしました。
そしてドラマ練習を継続し、予行演習を行い、第6回と
スライド4
第7回で発表会をしました。そしてレポート提出、とい
うかたちにしました。
スライド5
実習の実際をお示しします。このように、今回の学年
の方々は7回実習をしていますが、第1回目はガイダン
スということで、まずどういう実習かを説明しました。
その後あらかじめ収集した情報に基づいて、グループご
これが、発表会の様子ですが、学生さんが、医者の役、
とに臨床遺伝学的問題を検討しました。この時は、福嶋
それから看護師さんやカウンセラーの役、そして家族の
教授(信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野)
役をやって、こうやって熱心に演じています。
3
遺伝子診療学会ランチョンセミナー
医学教育としての遺伝カウンセリング
ロールプレイ実習
スライド6
スライド8
実際に発表会を行ったのは階段教室で、みんなの注目
1疾患について2グループが担当しておりますが、そ
する中で一生懸命演じていただく、というような状況で
れぞれ発表してもらいます。その後で2グループに出て
す。
きてもらって、他の学生や批評をしてくださる学外の方
や教官と、ディスカッションを行いました。これも、同
スライド7
じ疾患を扱っていても、ドラマの切り口や、疾患の見方
というのはさまざまですので、非常に勉強になる場面だ
と思います。
スライド9
このようなかたちで、みんなが一生懸命見て、前列に
何名か学外の遺伝カウンセリング専門家の先生方をお招
きして、いろいろご意見をいただくようなかたちをとり
ました。
去年の表彰式の様子です。すばらしいロールプレイを
披露した2チームが同点優勝でした。このように優勝チ
ームには立派なトロフィーが授与されます。今年も本当
に僅差で、2班がほぼ同率で並んだのですが、そのうち
1つの班に来ていただいております。
4
スライド10
従事者は何ができるのか。今後歩んでいく医療従事者と
しての人生の中で考え続けていきたい。疾患について調
べ、患者や患者を取り巻く一人ひとりの思いを考えてい
く大変価値のある実習ができた。”、というふうに言って
くれています。
スライド12
学生評価についてお話しします。なかなかこういうソフ
トな実習なので難しいのですが、一つには臨床遺伝学的な
知識を十分持って発表してくれたら良いということで、レ
ジュメの内容、疾患についての発表がどうだったか、レポ
ート内容、小テストの結果を評価しました。さらに、グル
ープ討議への個々人の参加度や積極性、実際のドラマ発表
会での表現力や患者さん・ご家族への配慮、遺伝カウンセ
またある学生さんはこのように感じていました。“実
リングの質、全体としての熱意などを多くの教官が検討し
習する前はこの学年になってわざわざ寸劇を演じること
て評価をしました。
はばかばかしいと思っていた。(実際始める前に大方の
学生さんは、こんな印象をもっていらっしゃいます。)
スライド11
しかし実際には疾患についての文献調査から始めて、シ
ナリオ作りにいたるまでいろいろ考えさせられた。特に
カウンセリングの場面では、実際に自分が医療者の立場
であるならばどのように話すか、またクライアントの立
場であったならば何を聞きたいか、どのように説明を受
けたいかなど、10分の寸劇では語りつくせないほどの
さまざまな思いが浮かび上がり、今回のシナリオでは残
念ながらあまり描写できなかった部分に関しても、シナ
リオを練る際に社会的背景や人間関係などを細かく設定
していたので、思い入れがある。それで、単なる想像上
の登場人物ではあるが、患者さんの会などのWeb サイ
トを参照して実際にどのような悩みがあるのかを考え、
このような作業は、はじめに実習に対して抱いていた思
実習が終わった際の学生の感想をいくつかご覧にいれ
いとは裏腹に充実している。”私たちが期待していたこ
たいと思います。この方は、“脚本作りのとき、私が接
とをまさに受け止めて、熱心に取り組んでくれたのだと
した筋ジストロフィーの方々、ご家族の方々との会話や
思いました。
姿を思い起こしていた。彼らの苦しみは私たちの想像を
超えるものであろう。その苦しみを軽減するために医療
5
遺伝子診療学会ランチョンセミナー
医学教育としての遺伝カウンセリング
ロールプレイ実習
スライド13
スライド14
まとめのその1を示しますが、やはり、“なぜ医学部4
先ほどの学生さんの感想文にもありましたが、医師とし
年生に遺伝カウンセリングを学ばせるのかとか、実習す
ての態度レベルの向上や遺伝に関する問題が重要である、
るのか”、といういうような疑問は毎年常にありまして、
という認識の点では、本実習は有意義であろうと考えてい
学生さんと語り合ったりする中で、今のところ僕たちが
ます。しかしながら、多くの時間と手間を費やしている実習
1つ考えていることは、遺伝カウンセリングの持つ医療
なので、知識の向上や学ぶ姿勢の確立などということにつ
の中の普遍性です。遺伝カウンセリングにおいて大事な
いても、是非貢献していきたいと思っています。こうした
ことは、疾患のあらゆる事項に対する正確な情報を収集
点では、さらなる改善が必要であると考えて、取り組んで
する、というのがまず第一です。そして、かつ、患者さ
いるところです。
ん、ご家族の心理的負担を想像しなければならない。そ
して、これらをもとにわかりやすい説明と心理的支援を
スライド15
しなければならない。その次には、カウンセリング的な
姿勢(聞く姿勢)、そしてチーム医療が必要です。そし
て目指すのは、患者さん、ご家族が疾患と共存しながら
十分納得したその人らしい人生を送る手助けをするこ
と。そしてそれらはおそらく治療成績の向上につながっ
たり、医療不信の軽減や研究の進歩にもつながるであろ
う、というようなことが期待されます。実際には遺伝カ
ウンセリングの実習を行っているわけなのですが、これ
はあらゆる疾患に対する包括的医療と共通点が多いので
はないかと考えているのです。そして各分野において、
より良い医療を目指すうえでのヒントが多く含まれてい
るであろうということで、学生さんの中で遺伝カウンセ
リングに将来直接携わる人は少ないと思われますが、ど
なたにとっても役立つことと期待しています。
こちらが関わっているスタッフです。信州大学医学部
社会予防医学講座遺伝医学分野および附属病院遺伝子診
療部の連携で対応をしています。長野県立こども病院の
川目先生にもお手伝いいただいております。
6
スライド16
スライド18
多くの先生方が発表会に参加して、さまざまなご意見
ここから、演技を理解していただく際の前置きをさせ
をくださいました。この場をお借りして、あらためて深
ていただきます。少しずつ皆さんもボルテージを上げて
謝いたします。
いただけると嬉しいです。今回のテーマはハンチントン
病です。
スライド17
スライド19
それで、皆さま待ちかねていたと思いますが、今年度優
れたシナリオを作成し、
熱演を見せてくれた班によるロール
プレイの実演を是非ご覧いただきたいと思います。
演者は発表会の後さらに、皆様に見ていただくために
シナリオを書き直し、演技の練習を重ねてきました。
ハンチントン病とは、多くの先生方はご存知だと思い
ますが、劇を理解しやすくするために簡単にまとめます
と、学生さんがまとめてくれたのを、ちょっとこの日用
にダイジェスト版にしたものですが、無踏運動、痴呆な
どの精神症状を主体とする慢性進行性の常染色体優性遺
伝疾患です。日本ではまれといわれておりますが、優性
遺伝で、浸透率は100%で表現促進現象がある、とい
った遺伝学的な特徴があります。病因としてはHD遺伝
子のトリプレットリピートの伸長、症状としてはスライ
ドのようなものがあります。そして診断としては確定診
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遺伝子診療学会ランチョンセミナー
医学教育としての遺伝カウンセリング
ロールプレイ実習
断はDNA解析があります。治療としては現時点では研
ん。当然技術的にはできる、というのかもしれませんが、
究がなされているけれども、有効な予防法、根治療法と
成人発症ですので日本においては社会的合意が形成され
いうところまではいってない状態です。対症療法を中心
ていない疾患と考えられています。
としたサポートが行われています。
予後としては慢性進行性で、10年から20年の経過で
スライド21
亡くなることが多いということです。サポートグループ
としては、日本ハンチントン病ネットワーク、国際ハン
チントン協会というのが知られています。
スライド20
今日のロールプレイにおける役名を示します。父親が
ハンチントン病と診断された川崎洋一郎、その妻晶子、
対応する臨床遺伝専門医松本、そして認定遺伝カウンセ
ラー藤井です。
それではいよいよこれからロールプレイを始めたいと
ハンチントン病の遺伝カウンセリング上の留意点をま
思います。
とめますと、まずご本人や家族への告知に際して、“治
療法がない、予後不良の疾患であるため、配慮が必要で
ある”、というのが1つ目のステップになります。ここ
では、症状を緩和させるための治療、介護に関する相談、
心理的支援が重要になります。ただ治療法がないという
ことを言い放つのは問題があります。
次のステップは遺伝に関する情報提供です。この疾患
と診断されますと、次の世代の再発率が50%、浸透率
が高い(100%である)ことがわかり、ご家族が患者
となる可能性まで示すことになります。そしてその後、
しばしば沸き起こってくるのが家族の発症前遺伝子検査
ができるのかどうか、という問題です。これに関しては、
結果が陽性でも陰性でも心理的負担が大きいということ
が言われておりますので、日本の遺伝カウンセリング現
場の中でもハードルは非常に高い診断、ということにな
ります。「知る権利」もあるし、
「知らないでいる権利」
もあるわけです。
さらに出生前診断を希望する家族もあるかもしれませ
8
プロローグ
川崎洋一郎(28歳)の父は、信濃大学神経内科でハ
ンチントン病の診断を受けた。遺伝する病気と母か
ら聞いた洋一郎は、自分も発症するのではないかと
不安になり、父の主治医に何度か相談を持ちかけた。
発症前診断が技術的に可能との話を聞き、洋一郎は
そのための遺伝子検査を希望するようになった。父
の主治医に紹介されて、今回妻晶子と共に遺伝子診
療部で遺伝カウンセリングを受けることになった。
今後のことも含めて、一緒に考えていきまし
実 演
ょう。
洋一郎
失礼します。
洋一郎・晶子 はい。
晶子
失礼します。
医師
医師(松本) どうぞお座りください。
ではまず、川崎さんのことについて、いくつ
か確認させてください。
川崎さんは、28才で、こちらの晶子さんと
医師
初めまして、川崎洋一郎さんですね。臨床遺
ご結婚なさっていますね。先日、川崎さんの
伝専門医の松本です。よろしくお願いします。
お父様が、ハンチントン病と診断されたため
に、ご自身も発症するかもしれないと心配さ
洋一郎
よろしくお願いします。
晶子
よろしくお願いします。
れて来院された、ということでしたね。
洋一郎
そうです。親父の様子を見ていると、自分も
ああなってしまうのではないかと不安で不安
カウンセラー 認定遺伝カウンセラーの藤井です。よろしく
(藤井)
でたまらなくて。
お願いします。
医師
医師
今回が初めての遺伝カウンセリングになりま
川崎さんには、ごきょうだいはいらっしゃい
ますか?
すね。今まで、ハンチントン病については神
経内科外来で主治医の方から説明していると
洋一郎
いえ。僕は一人っ子です。
医師
そうですか。ごきょうだいがいらっしゃる場
思いますが、川崎さんは、発症前診断を受け
たいというお気持ちをお持ちということでよ
ろしかったでしょうか。
合、ごきょうだいもお父様からハンチントン
病になる遺伝子の変化を受け継いでいる可能
洋一郎
はい。
医師
では、これから発症前診断に向けて、数回に
があるのですが、いらっしゃらないのであれ
わたって遺伝カウンセリングを進めていくこ
ば問題ありません。
性があります。ですので、ごきょうだいの方
にも遺伝カウンセリングをおすすめする場合
とになります。診断を受けたいということで
すが、受けない、という選択肢もあります。
9
洋一郎
そうなんですか。自分一人だけの問題ではな
遺伝子診療学会ランチョンセミナー
遺伝教育としての遺伝カウンセリング
ロールプレイ実習
いんですね。
症状を薬で抑えるといった対症療法は行うこ
とができます。
医師
ええ。では、次に、これまでの話と重なるか
もしれませんが、ハンチントン病について説
洋一郎
(ハァ)・・・そうですか・・・。
明させていただきます。ハンチントン病とい
うのは遺伝性の疾患です。病気が遺伝すると
カウンセラー 川崎さんは、どうして診断を受けたいとお考
いっても、それにはいろいろな形式があって、
えになったのですか。
ハンチントン病の場合には「常染色体優性遺
伝」という形式で遺伝します。この遺伝形式
洋一郎
はっきりさせたいんです。さっきも言いまし
は、ご両親のいずれかが病気を持つ場合、
たけど、病気になるかならないか分からない
50%の確率でこどもにその病気が伝わると
まま過ごすのは耐えられません。白黒つけた
いうものです。
いんです。
症状としては、体の自由がきかなくなったり、
精神に影響がでたり、認知障害がみられたり
カウンセラー 奥さんはどう思っていらっしゃいますか。
します。
晶子
洋一郎
主人の気持ちはわかります。けど、もし主人
あの、僕も自分で調べてみたんですが、もし
がハンチントン病だとしても、いつ発症する
仮に遺伝していたら、100%発症するとい
のかはわからないんですよね。遺伝していた
うのは、やっぱり本当なんですか。
としても、いつ発症するのか、毎日びくびく
しながら生活するのは、正直とてもこわいで
医師
はい。遺伝している場合には、発症する年齢
す。それに・・・(口ごもる)
に多少の差はありますが、確実に発症してし
まいます。また川崎さんの場合、お父様から
カウンセラー 何か不安なことがあるんですか。何でも遠慮
の遺伝ということになりますので、お父様の
無くおっしゃってください。
発症年齢より、早い時期に発症しやすい傾向
にあります。
晶子
・・・あの・・・、もし主人が陽性だとした
ら、・・・こどもは・・・。
洋一郎
発症を防ぐとか、発症した場合の治療法とか
は、ないんですか。
カウンセラー 今後、お子さんを希望していらっしゃる、と
いうことですね。
医師
現在のところ発症を防ぐ治療法は開発されて
いません。発症した場合にも根本的な治療と
いうのは、行えないのが現状です。ですが、
晶子
ええ、そうなんです。できたらこれから欲し
いと思ってるんです。
10
カウンセラー ご主人もそのようなお気持ちがおありなんで
医師
川崎さんは、もし検査の結果が陽性だった場
合、どのように受け止めていこうとお考えで
すか?
すか。
洋一郎
ええ、まあ。結婚したときはそうでもなかっ
たですけど。最近は生活も落ち着いてきまし
洋一郎
陽性だったら?その時は、その事実をしっか
り受け止めて生きていこうと思ってますよ。
たし、何より妻がずっとこどもを欲しがって
いますしね。
晶子
医師
医師
具体的にはどのように考えていますか。
影響が出るんですか。
洋一郎
それはぁ・・・、その・・・。
もしです、川崎さんが陽性である場合の話に
医師
事実をしっかり受け止めるという姿勢は、と
先生、主人が陽性ならこどもにはどのような
なりますが、お子さんには50%の確率で遺
ても重要です。ですが、陽性結果がでれば、
伝します。
どうしても気持ちに大きな変化が生じてしま
います。ですので、検査を受ける前に、仕事
晶子
や家族のことなどを、自分がどうしていきた
50%・・・、ですか・・・。
いのかを冷静に考えてみませんか?
カウンセラー 突然のお話で驚かれたとは思いますが、お伝
えしなければならないことですので・・・。
洋一郎
そう言われても・・・、正直言って・・・、
そんなことは考えたくないです。
洋一郎
なあ、陽性だったら、いっそこどもはあきら
めないか?
カウンセラー そうですね。川崎さんにとっては、辛いこと
になりますが、陽性だった場合のこともしっ
晶子
そんな。だって、私がどれだけこどもが欲し
かり考えておくことが、さきほど川崎さんが
いか、あなた知ってるでしょ?
おっしゃっていた「受け止める」ということ
につながると思いますよ。
洋一郎
そんなこと言ったって、しかたないじゃないか。
洋一郎
晶子
そうだなぁ・・・。もしかしたら、陽性にな
それはそうかもしれないけれど、あきらめき
るのが怖くて、考えないようにしていたのか
れないわ。50%遺伝するっていうけれど、
もしれません。なんとか、少しずつ考えてみ
普通のこどもが生まれる可能性だってあるん
るようにします。
ですよね。
カウンセラー 奥さんはどのようにお考えですか。
カウンセラー そうですよ。病気を受け継ぐ可能性も、受け
継がない可能性も同じく50%、ということ
なのです。お子さんに関しては、本当に難し
晶子
私は・・・。私は本当は検査を受けて欲しく
い問題だと思います。すぐに答えを出す必要
ないんです。陰性だったらすごく安心できま
はありませんので、遺伝カウンセリングを行
すけど、もし陽性だったらどうすればいいん
いながら、お二人の気持ちをゆっくり整理し
ですか。いつ発症するかわからないし、薬だ
ていきませんか。お互いが思っていることを
ってないんですよね。それに、病気だとなった
正直に、納得のいくまで話し合うことが大事
ら、仕事もできなくなってしまうかもしれな
ですよ。
いでしょ。そうしたら生活だって保障されな
くなるし、いいことなんて何一つないですよ。
晶子
はい・・・。
カウンセラー 奥さんの考えはもっともだと思います。「検
洋一郎
11
うーん・・・。
査を受けない」ということも、選択肢の一つ
遺伝子診療学会ランチョンセミナー
医学教育としての遺伝カウンセリング
ロールプレイ実習
です。ご自身の遺伝情報について、当然知る
権利はありますが、知らないでいる権利も同
じようにあるんですよ。
洋一郎
知らないでいる権利、ですか?でも、それは
現実から目をそらしているということじゃな
いんですか。
カウンセラー いいえ。必ずしもそうとはいえませんよ。
先ほど、奥さんがおっしゃっていたように、
結果が陽性だった時の精神面への影響は、今
考えているものよりもはるかに大きなものか
もしれません。そのような不安を抱えて生活
することはとても大きな負担になると考えら
だければと思います。
れます。ですから、検査をしないことにする、
というのも選択肢の1つなんですよ。
洋一郎
(間)そうですね。今日遺伝カウンセリング
を受けてみて、結果が出た後のことを全然考
晶子
そうですよね。知らないほうがいいことだっ
えていなかったことがわかりました。家で妻
てたくさんあるのよ。
と一緒に、もう一度よく考えてみます。
ねぇあなたお願い、もう一度考え直して。
カウンセラー そうですね。これから病気のことを考えてい
洋一郎
・・・言ってることは分かるよ・・・。で
く上で、奥さんの支えはどうしても必要です。
も・・・、検査を受けないでいるのもやっぱ
お二人で話し合ってみてくださいね。私たち
り不安なんだ・・・。
もできる限りお手伝いしてまいります。次に
来られる日が決まりましたら、ご連絡くださ
医師
そうですね。たしかに、発症するかどうかわ
い。また、それまでにご心配なことがありま
からない状態で過ごしていくということも負
したら、いつでもご連絡ください。こちらが、
担にはなるでしょう。ただ、例え陽性だとい
遺伝子診療部のメールアドレスです。
う結果が出たとしても、すぐに発症するわけ
ではないですし、いつ発症するかまでは検査
洋一郎
はい、ありがとうございます。
からといって、川崎さんの不安が全て取り除
晶子
ありがとうございました。
かれるというわけではないんですよ。
洋一郎
これからもよろしくお願いします。
それは、つまり検査を受けないほうが良い、
医師
こちらこそよろしくお願いします。焦らずに
ではわかりません。ですから、検査を受けた
洋一郎
っていうことですか。
医師
ゆっくりと考えていきましょう。
いいえ。そういうことではないんですよ。検
―モノローグ―
査を受けるかどうかを最終的に決めるのは、
川崎さんご自身です。私たちは、可能性のあ
洋一郎
ふぅー・・・。この年でこんなことになるな
る選択肢を全てお話して、それぞれのメリッ
んて、思ってもみなかった。よりにもよって
トやデメリットを十分に考えた上で、決めて
治らない病気が遺伝するなんて・・・勘弁し
もらいたいのです。一度結果を知ってしまっ
てくれよ親父・・・。けど、考えてみれば親
てからでは、後戻りできません。今の川崎さ
父だって、じーちゃんか、ばーちゃんから遺
んにとって、検査が本当に必要なものなのか
伝してたってことだもんな。親父を恨んでも
どうか、検査を受ける前に十分にお考えいた
仕方がないか。
12
晶子はやっぱりこども欲しいんだな。でも俺
れど、幸せに暮らしてきた。私も夫も一生懸命
の子ってことは、病気が遺伝している可能性
にがんばってきた。特別に人に迷惑をかけた
があるってことだよ。なら、なおさら俺が病
ことも、贅沢をしたこともない。それなのに、
気かどうかはハッキリさせておいた方がいい
どうして私たちがこんな目にあわなければな
と思うんだけど、なんで検査を受けるなって
らないのだろうか。
結婚して、
こどもを育てて、
いうんだろう?確かに、今日話を聞いて、親
私はごく平凡な穏やかな生活を夢見ていた。
父の病気がこどもに遺伝したらって考える
でも、その夢は、見てはいけないものだった
と、本当にこわくなってしまった。だから、
のかしら。こどもを産みたいっていう私に、
さっきはこどもをあきらめようなんて言って
夫は陽性ならあきらめてくれって言った。先
しまったけど、もっと晶子に気をつかってや
生やカウンセラーの方がおっしゃることは、
ればよかったな・・・。でも、大丈夫って言
よく分かる。どんなに正常なこどもが産まれ
える自信は今の俺にはないよ。そうだ、出生
る可能性があったとしても、その可能性にか
前診断っていうのがあるって新聞に書いてあ
けてこどもを産むべきではないんだろう。だ
ったけど、この病気ではおなかの赤ん坊を検
ってこどもはくじびきではない。それに、も
査してもらえるんだろうか?ただ・・・、病
し、異常を抱えて生まれてきたら、いずれ夫
気とわかったとして、どうするっていうん
と同じ苦しみを持つことになる。親としてそ
だ?それで妊娠をあきらめるなんていうの
んな無責任なことはできない。わかっている。
は、俺たちは身勝手過ぎやしないか・・・。
夫にはあんなふうに言ってしまったけれど、
陽性であれば、こどもはあきらめなくちゃい
「仮に陽性だったら、どう受け止めるか?」
けない。そうしなくちゃいけない。わかって
って先生言ってたな。陽性だったらどうなっ
いるんだけれど、気持ちがついていかない。
ちゃうんだろう。確か、親父より早く発症す
夫は検査を受けたいと言った。その気持ちは
るって言ってたよな。あの様子だと仕事はで
分からないわけじゃない。私が彼なら、同じ
きなさそうだし・・・。そうだよ、会社に言
ように考えると思う。でも、もし万が一陽性
わなくちゃ。なんて言えばいいんだ?「ハン
だったらって考えると、怖くて怖くて、とて
チントン病という、今のところは治せない病
も賛成なんてできない。陽性だった時、私は
気に、いずれ、なります・・・。」とでも言
本当に夫を支えることができるのかしら。生
うか・・・。さすがに、いきなりクビにされ
活はちゃんと送れるのかしら。何より、これ
たりはしないよな・・・。仕事がなくなった
からの生活に希望を見いだすことはできるの
ら、こどもどころじゃないぜ。それはないに
かしら。
しても昇進とか影響はあるかもしれない。こ
どうして私たちが・・・。結局いつもそれば
れは陽性だって分かっても、言わないほうが
かり思ってしまう。楽しそうに仲良く歩いて
よさそうだよ。家族のことを考えるっていっ
いる親子を見ると、胸がしめつけられるよう
ても、ハンチントン病って生命保険とかに入
に苦しい。どうしてこうなったのかなんて誰
れるのか?やばい、かなりまずいぞ。しっか
にもわからない。そんなこと考えたって何の
り受け止めるなんて簡単に言っちゃったけ
解決にもならない。私が考えなきゃいけない
ど、全然簡単じゃないや。白黒つけてはっき
のは、これからどうしていくかということ。
りさせるのはいいけど、検査をするにして
わかっている。わかっているんだけど、すご
も、いろんな問題が出てくるんだなぁ。
く辛い。
はぁ・・・、検査が本当に必要なのか、やっ
たほうがいいのか、自信なくなってきた
医師
今日の遺伝カウンセリングは、これでよかっ
よ・・・。次のカウンセリングまでに、晶子
たのだろうか・・・。遺伝カウンセリングが終
とよく話し合わなきゃ。
わると、いつも自分に問いかけてしまいます。
私たち医師が、遺伝カウンセリングを受ける
晶子
13
こんなことになるなんて想像すらしていなか
患者さんにできる一番大切なことは、正確な
った。結婚してこれまで、平凡かもしれないけ
情報を伝え、考えるきっかけとしてもらうこ
遺伝子診療学会ランチョンセミナー
医学教育としての遺伝カウンセリング
ロールプレイ実習
とです。そのときに、患者さんの気持ちを誘
したらあるかもしれない。そのときに、医師
導しないように、自分の意見を押し付けない
よりも少し、患者さんに近いところに立って、
ようにすべきであるし、いつもそうしている
それをカバーできたら、と思うのです。とは
つもりです。しかし、それがなかなかうまく
いっても、カウンセリングの後にはいつも、
いきません。今日も、知らないでいるという
本当にこれでよかったのか、これがベストの
選択肢について説明したつもりでしたが、川
選択だったのか、考えてしまいます。実際、さ
崎さんには、発症前診断を受けるべきではな
まざまな選択をするのは患者さん本人だし、
いと私が言っているように受け取られてしま
私にできることといったら、患者さんが心の
ったかもしれません。こういうことがあるた
中に溜め込んでしまっている不安を察して、
びに自分の説明の仕方が悪いのだと反省して
少しだけでも外に出せるようにお手伝いをす
しまうのです。
ることくらいしかないのかもしれません。代
自分と同じような年の患者さんが、突然ふり
わりに答えを出すことも、不安をすっかり取
かかってきた「遺伝」の負担に苦しむ様子を
り除いてあげることも、できるはずもないの
目の当たりにするたびに、もしこれが自分だ
です。ですが、やっぱり患者さんには、あと
ったらどうしようかと、考えてしまいます。
で後悔しない選択肢を選んでもらいたい。で
もしかしたら、もっと不安定になったり、何
きる限り時間をかけて、納得した上で決めて
かにあたりちらしたりするかもしれません。
もらいたい。そのために、家族を含めた患者
検査ができるのであれば、検査を受けたいと
さんが、落ち着いて、今後について考えられ
当然考えるでしょう。医師の言うことを白々
るような環境と必要な情報をこれからも精一
しく感じることもあるでしょう。でも、今ま
杯提供していきたい、そう思っています。
でお手伝いをしてきた患者さんから教えられ
たことは、厳しい状況のなかで、悩みながら
自分らしい決断をする人間の強さと、それを
古庄:
お疲れさまでした。そのまま座っていてくだ
支える家族の絆でした。気が付くと、自分が
さい。時間が少しありますので、もしフロア
患者さんから励まされて働いているという気
の先生方から、ご意見、ご質問などありまし
もするのです。
たら、お願いします。私たち教官の方にでも
今日はまだ1回目の遺伝カウンセリングで
いいですし、学生さんの方に聞いてくださっ
す。あせらず、ゆっくり時間をかけて、川崎
てもかまいませんので。
さんがご自身の状況に向き合うお手伝いをし
ていこうと思います。そして川崎さんと晶子
質疑応答
さんご夫婦が、十分考えて、納得の上、自分
たちらしい選択ができるよう支えていきたい
と思います。そのために臨床遺伝専門医とい
質問1
熱演ありがとうございました。いろいろと
断片的な情報はおうかがいしていたのです
う仕事を選んだのだから。
が、初めて見せていただいて、非常に感銘
カウンセラー 私は、認定遺伝カウンセラーとして、臨床遺伝
を受けました。学生さんの方への質問でよ
専門医の医師とともに遺伝カウンセリングを
ろしいでしょうか。簡単で結構ですけれど
行っています。日本では、この専門職ができ
も、それぞれ、先程古庄先生の方からも、
てまだ間がないので、日々手探りの状態です。
ロールプレイした感想についてのご紹介が
疾患についての正確な情報を提供するのはも
あったのですが、それぞれの皆さんのご感
ちろん大事なことですが、それ以上に、説明
想をいただければと思います。
を受けたあとの患者さんの心を受け止め、支
えていく、ということが私の役割なのではな
いかと思っています。適切な情報提供を含め
古庄:
一人ずつお願いします
た遺伝カウンセリング、ということを考える
とき、医師だけでは十分でない点が、もしか
洋一郎役学生 私は患者役をやらしていただいたので、将来
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自分がこどもをもつことをちょっと考えてし
診断がふっと浮かんでしまう難しさはあると
まい、かなりブルーになりました。お医者さ
思うんですね。ただ、非常にいい質問をいた
んの立場というのが、結局わかったようなわ
だきました。ありがとうございました。
からないような感じだったので、できれば、
医者役もやってみたかったですね。
質問3
晶子役学生
今の続きですが、もし患者さんの方が出生
シナリオを考える段階で、言い回しがすごい
前診断を強く希望された場合に、どのよう
難しいというのが一番の感想で、同じことを
なシナリオになってたのでしょうか。もう
伝えるにしても、いかにその相手の人、患者
どうしてもこれがしたい、ということをお
さんに対して、気持ちを傷つけない、という
二人がおっしゃったために・・・。
か、尊重して、かつ、正確に情報を伝えるの
に、どういうふうに言ったらいいのか、とい
うことをものすごく考えさせられました。
医師役学
僕の考えですが、このハンチントン病という
のは、発症するまでにかなりの年数がありま
医師役学生
僕は、医師役をやったのですが、同じ説明でも
すよね。そしたら、これから作る子どもに対
やっぱり、話し方によって患者さんの受け取り
して出生前診断を行って、もしそれで中絶す
方がいろいろ変わると思うんですね。で、それ
る、ということになると、それはもう将来の
をどのように話したら良いかとか、そういう
可能性、病気の治療法も含めた可能性も全部
ことを結構考えて演じました。そういうのは、
否定しちゃうことになるので、その辺はやは
今後、生かせるのではないかと思っています。
り説得というと変ですけれども、あまりこち
らではそういう方向ではないですよ、という
カウンセラー役 私は、カウンセラーの役ということだったの
学生
話をしたいとは思います。
ですが、ドクターとどういう違いを出すのが
ベストなのかというのをみんなで話しなが
最後に
ら、よくわからないことも多かったのですが、
先生にも聞きながら、という感じで・・・。
清水学会理事長(慶應義塾大学医学部分子生物学教室)
これからきっと増えていくのでしょうけれ
コメント
ど、どういう対応が良いのかというのが、す
私は臨床家ではありませんで、知識として
ごく悩みながらで大変でした。
はいろいろなことは知っていますけれども
大変興味深く、こういった寸劇的に皆さん
が勉強されているというのは非常に感動い
質問2
シナリオを立てる上で、出生前診断のこと
たしました。同時に、(信州大学だけでは
を敢えて医師の方からは言わずに終わりに
ないと思いますが)すごく素直でやさしい
したというのは、何か意味があって敢えて
気持ちを持った人ばっかりで、代表的にそ
そういうストーリーにしたのですか?
ういう人たちが多いのではないかと思い、
感心し、尊敬いたします。学校教育のトレ
ーニングとしておやりになっているという
医師役学生
シナリオの設定としては、遺伝カウンセリング
のはもちろんですが、こういうようなこと
が数回行われるうちの1回目ということだった
を、もっと主体的に、なるべく早い時期に
ので、まず、患者さんを第一に考えて、それで
地域とか社会に伝えていくような活動にな
もしかしたら数回やっていく中で出生前診断の
っていくと、社会からのすばらしい理解を
話も多分するだろう、というふうにしました。
得られるのではないかというふうに思いま
すので、頑張ってください。本当にありが
古庄:
メインテーマがハンチントン病、神経難病の
発症前診断ということになりましたが、やは
り発症前診断をやるということは当然出生前
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とうございました。
遺伝子診療学会ランチョンセミナー
医学教育としての遺伝カウンセリング
ロールプレイ実習
福嶋先生(信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野)
コメント
学生諸君、どうもありがとうございました。
無理を言って、夏休みなのにずっと練習を続
けていただきました。ランチョンセミナーと
いうことで、こういうかたちでやらせていた
だきました。遺伝子診療学会の取り組みとし
ては初めてのことだと思いますけれども、こ
ういうこともこれからの遺伝子診療の普及、
発展ということには重要かと思います。ご参
集くださいました方々、本当にありがとうご
ざいます。
それでは最後にもう一度学生のみなさんに暖
かい拍手をお願いします。
ご苦労さまでした。
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シュネラージェネティックス 第8号 2006(平成18)年1月10日 発行
企画・編集・発行
遺伝子事業部
京都市中京区河原町通二条上る清水町346番地 TEL. 075-257-8541
URL. http://www.falco-genetics.com/
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