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参考:独立行政法人の会計処理
独立行政法人の会計処理 独立行政法人においては、企業会計原則を基本としつつ、独立行政法人の制度上の特性(公共的な性格を 有していること、利益の獲得を目的としないこと、独立採算制を前提としないこと等)に応じてこれに必要な 修正を加えた、独立行政法人会計基準により会計処理を行っています。独立行政法人特有の会計処理には、 例えば以下のものがあります。 ○ 運営費交付金の国からの交付から精算に至る会計処理について 運営費交付金とは、独立行政法人に対して国から負託された業務の財源です。運営費交付金の会計処理は、 ① 国からの交付をもって直ちに収益に計上せず、一旦「運営費交付金債務」として流動負債に計上し、 ② 業務や期間等の進行に応じて、 「運営費交付金債務」を収益( 「運営費交付金収益」 )等に振り替えます。 また、中期目標期間の最終年度決算において、 ③ 中期目標期間中に交付された運営費交付金の残額を全額収益に振り替え、 ④ 当該収益化により積立金(利益剰余金)が発生した場合、次期中期目標期間の業務に充てるために必要 な額として主務大臣が承認した額を除き、国庫に返納します。 ○ 固定資産に係る会計処理について 独立行政法人においては、固定資産をその取得財源別に管理する必要があります。このため、独立行政法 人会計基準において、固定資産の会計処理がその取得財源別にそれぞれ定められています。詳細については、 「独立行政法人の財源及び固定資産等に係る主な会計処理」 (次ページ)をご参照下さい。 ○ 賞与及び退職給付に係る会計処理について 賞与及び退職給付については、企業会計においては、「当期の負担に属する額」(一事業年度のコスト)を 費用として損益計算書に計上し、 「当期の負担に属する額」のうち、当該年度に支出しなかった額を引当金に 計上します(発生主義)。一方、独立行政法人会計基準においては、その財源が国から措置される場合は引当金 を計上せず、当該年度に支払った額を費用として損益計算書に計上します(現金主義)。 なお、独立行政法人が作成する行政サービス実施コスト計算書においては、賞与及び退職給付について、 発生主義に基づく額を把握するため、損益計算書上の現金主義による計上額の調整項目として、 「引当外賞与 見積額」及び「引当外退職給付増加見積額」を計上します(「引当外賞与見積額」及び「引当外退職給付増加 見積額」の算定については、貸借対照表及び損益計算書の注記をご参照下さい。)。 ○ ファイナンス・リースの会計処理について リース取引については、オペレーティング・リース取引とファイナンス・リース取引があります。オペレ ーティング・リース取引は通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うのに対し、ファイナンス・ リース取引は売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います。その結果、損益に影響が出ることとなり ます。詳細については、 「ファイナンス・リースの会計処理とは?」 (3ページ目)をご参照下さい。 独立行政法人の財源及び固定資産等に係る主な会計処理 財源 内容 国及び地方公共団体か 出資金 運営費交付金 補助金 施設整備費 補助金 受託収入 会計処理 資本金として計上 (借)固定資産 /(貸)資本金 らの現物出資及び出資 取得した固定資産の減価償却費の 認識に係る仕訳 (借)損益外減価償却 / (貸)減価償却累計額 累計額(純資産) (注2) 独立行政法人の運営資 受領時に流動負債に計上し、 金として国から交付 業務の進行に応じて負債から (借)固定資産 /(貸)資産見返運営 ※非償却資産:(貸)資本剰余金 特定の事業を行うため 受領時に流動負債に計上し、 (借)固定資産 /(貸)資産見返補助金 に国等から交付 業務の進行に応じて負債から 等(負債) 収益等に振替 ※非償却資産:(貸)資本剰余金 特定の固定資産(建物 受領時に流動負債に計上し、 (借)固定資産 /(貸)資本剰余金 等)を建設するために 業務の進行に応じて負債から 国から交付 資本剰余金等に振替 特定の業務を提供する 役務の完了により収益として ための受託契約に基づ 計上 大学校授業料・雇用促 役務の完了により収益として 進住宅貸料等(当機構 計上 (借)減価償却費 費交付金(負債) (借)資産見返運営費 収益等に振替 く収入=対価関係あり 自己収入 固定資産を取得した場合の 当該資産に対応する科目(注 1) / (貸)減価償却累計額 / (貸)資産見返運営費 交付金(負債) 交付金戻入(収益) (借)減価償却費 / (貸)減価償却累計額 (借)資産見返補助金 / (貸)資産見返補助金 等(負債) (借)損益外減価償却 等戻入(収益) / (貸)減価償却累計額 累計額(純資産) (注2) (借)固定資産 / (貸)収入 (借)減価償却費 (企業会計と同じ処理) (企業会計と同じ処理) / (貸)減価償却累計額 の場合) (注1) 通常、固定資産を購入した場合、貸方には「現金」 、「未払金」等が計上されますが、固定資産とその取得財源を明確にするため、便宜上、上記の とおり記載しています。 (注2) 独立行政法人会計基準第87に規定する「特定の償却資産」に該当しない資産(その減価に対応すべき収益の獲得を予定している資産)の場合は、 (借)減価償却費となります。 ファイナンス・リースの会計処理とは? お金を借りて機械装置等を購入したとみなし、借入元本と支払利息をあわせた額(支払リース料)をリース期間にわたって元利均等払い で返済する取引です。借入元本は、お金を借り入れた場合と同様に負債計上し、元本返済に応じて減少させます。機械装置等は、購入した 場合と同様に資産計上し、耐用年数にわたって毎期均等額を減価償却します。(耐用年数はリース期間、残存価額を0として計算します。) 上記の会計処理にあたり、損益計算書上の費用としては、支払利息と減価償却費が計上されます。(借入元本の返済は負債の減少なので 費用計上されません。) 減価償却費は毎期一定額となりますが、支払利息は借入元本の残額に応じて変動しますので、費用計上額はリース期間の前半に大きく なり、後半になるに従って減少します。また、これらの費用に対応する収益としては、支払リース料と同額の運営費交付金収益が計上され ます。支払リース料は毎期一定額ですので、収益計上額も毎期一定額となります。 【参考:ファイナンス・リース会計の具体例】 1年目 2年目 3年目 10 10 10 10 10 50 5 4 3 2 1 15 8 9 10 11 12 50 ④費用合計(①+②) 15 14 13 12 11 65 ⑤収益合計(②+③) 13 13 13 13 13 65 △2 △1 0 1 2 0 ①減価償却費 ②支払利息 ③借入元本返済額 (機械装置等対価額) 損 益(①−②) 4年目 5年目 合計 この結果、リース期間の前半においては、費用(支払利息+減価償却費)>収益(支払リース料=支払利息+借入元本返済額)となるため損失の要因 となり、後半においては、費用<収益となるため利益の要因となります。 ただし、減価償却費の各年度合計額(機械装置等対価額)=借入元本であるため、リース期間を通じた損益のトータルは±0となります。