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自殺対策 うつ病 対応研修 1.気づき、つなぎ 2.治療、対応 3.仕事 4.面接
たくさんのご質問ありがとうございます 気づき、つなぎ 仕事が多忙な職場環境で、職員にうつ傾向が見られた場合、管理職の対応はどうすればよいのか うつ病を疑ったほうが良い身体症状の訴えの例 医療機関へのつなげ方(本人に自覚がない場合も含めて) 医療機関での受診に抵抗がある方への対応・医療につなぐ方法 (重症うつの場合) 受診を案内するかどうかの判断基準・症状による病院選びのポイント 治療と対応 自殺対策 うつ病対応研修 相談機関の援助者としてできること 治療期間の目安(薬物療法について、薬づけのイメージがあるが・・) うつによる自殺企図のパターン(見せかけじゃない可能性が高いケースの例) 新型うつ病について 従来のうつ病との見分け方、対応方法や支援方法の違い等 仕事:復職、就職 職場の同僚が、うつで長期休暇をしている場合、復職に向けた支援を職員の立場で担えるものか、またその方 法 援助対象者がうつでなかなか就労に結びつかない場合、どのタイミングで声を掛けるのが有効なのか。 面接 支援者として、本人に接するときの留意事項 その場では解決しえない、マイナス話題の適切な聞き方。 相談業務において特に注意すべきことについて、禁句など 法律相談の窓口案内の担当者・・うつ病や精神病と思われる来庁者が多い。支離滅裂な話にどう対応したらよ いか。 セルフケア 2013年12月11日(水) 汐入メンタルクリニック 阿瀬川孝治 本人やご家族への面談後、相談員のこころの健康について留意すること 1.きづき つなぎ 1.気づき、つなぎ 仕事が多忙な職場環境で、職員にうつ 2.治療、対応 傾向が見られた場合、管理職の対応は 3.仕事 4.面接・セルフケア 相談機関の援助者としてできること どうすればよいのか? いつもと違う部下の様子 いつもと違う部下の様子 遅刻、早退、欠勤が増える 休みの連絡がない 残業、休日出勤が不釣り合 いに増える 仕事の効率が悪くなる ミス・事故が多くなる 職場での会話が少なくなる 業務の結果がなかなか出て こない 部下から相談もちかけられたら 即時対応する 「あなたの話をききますよ」と いう雰囲気が重要 じっくり聴く。うなづく。 語調が大事。ゆっくり話す。 価値判断は避ける。 結論を急がない。 産業医、専門医につなげる 表情に活気がなく、動作に も元気がない 不自然な言動が目立つ 注意・集中力低下 服装が乱れたり、衣服が 不潔であったりする 相談役としての上司 声をかける 耳を傾ける 一緒に考える 仲間、同僚、友人でもあり 業務のコントロールをする = 横の関係 = 縦の関係 →彼らをサポートする 生産性を減退させない 周囲の士気を損ねない →診断はしなくてもよい 面接のポイント ① 面接のポイント ② 業務として話し合う 業務上での問題点を伝える 部屋に入ったときから援助面接は始まっている 本人の意見や考えを聴く 内容はその場の雰囲気が決定付ける 一緒に考える 専門家への相談を提案する 気持ちが傾くまで、焦らない 期限を決めて話し合いを続ける 治るかもよ、というメッセージを伝える 伝えたいこと ことば(トーク) 伝わること 表情、声のトーン、音や光、雰囲気 (非言語要素) 1.きづき つなぎ うつ病を疑ったほうが良い身体症 状の訴え 疲れやすい だるい(倦怠感) あちこち痛い ⇒インフルエンサのようだ゙ うつ病 の 身体症状 うつ病患者の約65%が痛みを抱えている • 自然的ランダム化試験(ARTIST)(n = 573): 一次医療のうつ病患者の疼痛の有病率は69%1 • 国際電話調査(n = 18980): 慢性疼痛性身体疾患を伴うMDD患者は43.4%2 • 試験14報のメタアナリシス 疼痛の平均有病率は65%3 • 米国電話調査(n = 5808): MDD 疼痛なし3 MDD 疼痛あり3 35% 65% 慢性疼痛を伴ううつ病患者は65.6%4 1. Bair MJ, et al. Psychosom Med. 2004;66(1):17-22. 2. Ohayon MM. J Clin Psychiatry. 2004;65(suppl 12):5-9. 3. Bair MJ, et al. Arch Intern Med. 2003;163(20):2433-2445. 4.Arnow BA, et al. Psycho Med; In Press 痛みを伴ううつ病の問題点 • 疼痛と精神的苦悩の愁訴に強い相関がある1 • 医療費が増大する • 医療サービスの増大~過剰利用2 • うつ病患者に背部痛と片頭痛が合併すると、 医療費はそれぞれ2.8倍、4倍増大する3 • 説明不能の身体症状の治療転帰は不良4 • 寛解率が低い5 • 再燃、自殺、物質乱用のリスクがより増大する6、7 1.Bao Y, et al. Psychiatr Serv. 2003;54:693-697. 2. Greenberg PE, et al. J Clin Psych. 2003;64(Suppl 7):17-23. 3. Sheehan DV. Manag Care 2002;11:7-10. 4. Kroenke K, et al. Am J Med. 1989; 86:262-266. 5. Fava M, et al. J Clin Psych. 2004;65:521-530. 6. Hirschfeld RM, et al. JAMA. 1997;277:333-340 7. Paykel ES, et al. Psychol Med. 1995;25:1171-1180. 1.きづき つなぎ ・受診を案内するかどうかの判断基準 ・症状による病院選びのポイント ・医療機関へのつなげ方 (本人に自覚がない場合も含めて) ・医療機関での受診に抵抗がある方への対応 ・医療につなぐ方法 (重症うつの場合) 本人が受診拒否しているとき 医療機関・専門医を受診を検討するとき 精神疾患が疑われるとき 緊急度を評価する 緊急度高いときは受診を促す 表情、態度、言動が明らかにおかしい 自傷、自殺のリスクが高い 感情や行動のコントロールが難しい 精神科に対する心理的抵抗、偏見がある アルコール乱用、薬物乱用 本人の困り感と援助者が考える課題とに Gapがある 現状で日常生活に支障を来たしているとき 本人、家族が受診を希望したとき 拒否している理由を探る 拒否感情を丁寧に話し合う 焦らず、待つ 2.治療 対応 気づき⇒受診 寛解⇒復職 治療期間の目安 薬物療法について・・・薬づけのイメ ージがあるが・・ 健康・発症前 治療期 回復・維持期 治療期 前期(急性期) 治療の目標 ・不快な気分や苦痛感の軽減 ・睡眠、食欲の改善を目指す 治療初期 (急性期) 治療期 前期(急性期) 周囲の対応 ・想像以上に疲れやすい。 ・焦らず、慌てず。 ・申し訳なさ、自責感など を感じていることが多い。 周囲の態度や言葉に敏 感になっている。 ・本人にどう接すればい いか、家族として何をして もらいたいか、してもらい たくないか、たずねる。 治療初期 (急性期) 状況や心理面へのアプローチ ・「病人」役割を果たす ・今後の経過や治療の流れ ・休養の必要性⇒診断書 ・家族や周囲への説明 ・日々の暮らし方の助言 薬物療法 ・薬物療法で期待できること ・服薬継続の意義 ・抗うつ剤の効果・副作用 診察 ・労う ・経過を聞く 生活歴、職歴、症状の経過 ・発症した状況は丁寧に。 ・周囲からの情報 ・診断・治療の必要性を説明 ⇒「病気」「病人」 治療期 中期の頃 ・当初の不快感・苦痛感は軽減 ~トンネルを抜けた感じ。 ・周囲からみると少し元気がでて きている。でも本調子ではない。 ・生活リズムを整える: ・散歩、適度な運動、家事など。 ・復帰への焦りがでる頃。 ⇒ぼちぼち。 ・職場と連絡する 中期 周囲の対応 ・親切さをベースにして、 普通の接し方でよい。 ・外出、外食などは誘って みてもいい。 ・適度な刺激は回復の促 進因子となる。 周囲の対応 ・本人と連絡してみてよい。 ・復帰までの段取り ・職場の受け入れ状況を 中期 各院 (回復にむけて) 治療期 後期(復職準備期) 後期 ・意欲・覇気がでてくる頃。 ・生活リズム、活動量を発病前の頃に戻し ていく。 ・身体的・心理的に負荷をかけて、回復度 合いを確かめ、地固めしていく。 2.治療 対応 新型うつ病について 従来のうつ病との見分け方 対応方法や支援方法の違い等 職場・周囲 ・復職準備性の確認 ・睡眠、食欲など基礎体力、生活リズム ・復帰日を決める 「従来のうつ病」 「現代型(新型)うつ病」 • まじめ、几帳面、律儀、責任感 が強い、 • 組織への過剰適応 • 自分の好きな仕事や活動の時 だけ元気になる • 「うつ」で休職することにあまり 抵抗がない。 • 休職中の手当など社内制度を よくチェックしていて、上手に利 用する傾向がある • 自責感に乏しく、他罰的で会社 や上司のせいにしがち。 • うつ気分、喜びの喪失が主症状 • 身体症状が前景化 • 否定的思考 • 自分のせいと考える • 休むことに抵抗する 現代型うつ病の3類型 ある種のパーソナリティ傾向と関連づけられるもの 1. 回避性、自己愛性パーソナリティ傾向にともなううつ状態 スチューデントアパシー、退却神経症、未熟型うつ病 社会・経済・文化・時代に対して 自ら違和感に気づき 受診 早期に受診する 寛解・回復 非定型うつ病、気分変調症 2. 過眠、過食、感情反応性 ディスチミア親和型 うつ病の中核的な病態は不変。 3. 従来のうつ病と現代とは「表現形」が違っているだけ、病態は変わってい ない。 症状が出揃わない発症早期に受診する~軽症、不全型。 重症 時間経過 松浪克文「現代のうつ病論」 2008 より改変 現代型のうつ病を生む背景にあるもの 3つの「うつ病」と現代型うつ病 ① ③ ② パーソナリティ傾向 神経症圏 うつ病 非定型うつ病 (中核的) 経営的余裕のなさ・人員削減 仕事・職場に対する強迫性の低下 精一杯努力する姿を無防備に発揮していると、「信頼」は得 るが、頼まれる仕事量も増えてしまう。 「彼は忙しすぎるから、これ以上頼めないな」という人事的 配慮や人員の応援を期待できる組織的な余裕はない。 組織に安心して依存することができない! 双極うつ病 気分変調症 診断基準(DSM-IV)という枠組み 「現代型(新型)うつ病」と呼ばれているもの 打たれ弱さ・叱られ下手 業務指導でも「人格を否定された」と思ってしまう 成果主義(的雰囲気) 「自分は不当に低く評価されている」と考えてしまう 自傷・自殺のリスク 2.治療 対応 致死性の予測 狭義の自殺企図 うつによる自殺企図のパターン 自殺の意図が 曖昧な過量服薬 (見せかけじゃない可能性が高いケー スの例) 意識的な自傷 反復されるなかで 進行する可能性 リストカットなど 無意識的な自傷 摂食障害・アルコール・薬物乱用など 手段・方法の致死性 自己破壊的行動スペクトラム 松本俊彦 2010 自殺の意図が曖昧な過量服薬(OD) 自殺企図の60~70% 既遂者⇒縊首が多い。しかし、その直前に飲酒、ODしてい 3.仕事:復職、就職 職場の同僚が、うつ病で長期休暇をしてい ることが多い。OD既往者も多い。 る場合、復職に向けた支援を職員の立場で 【特徴】 担えるものか、またその方法 アピールや操作を意図したODは少ない 不快感情の軽減目的が多い 自殺の意図がある者のほうが予告してからODする 「予告=本気で死ぬ気がない証拠」と決めつけてはいけない! 医学的障害の深刻さと自殺リスクとは関係しない 援助対象者がなかなか就労に結びつかない 場合、どのタイミングで声を掛けるのが有 効なのか? 致死性予測が難しい 松本俊彦ら 2013 健康・発症前 “通常業務可“ セルフケア 急性期 診断、薬物・心理療法 日常生活可能なレベル 本人 “労務復帰可“ 寛解 治療期 睡眠・食欲 運動 Work-Life 復職準備性 復職準備性 Balance “1日決算主義“ 再発予防 再休職予防 継続 回復期 「仕事術」 リワーク 職場との連絡 環境管理 職場 1.本人 1.本人 ・主治医の意見、病状、生活 ・主治医の意見、病状、生活 ・「思い」、ニーズ(会社に対する期待) ・「思い」、ニーズ(会社に対する期待) 2.職場 2.職場 ・発症要因との関連、配置転換の要否 ・発症要因との関連、配置転換の要否 ・受け入れ準備 ・受け入れ準備 ・ニーズ(本人への役割期待) ・ニーズ(本人への役割期待) or 休職 復帰準備開始 回復・維持期 回復期 適応期 受け入れ準備開始 業務の配分(さじ加減) ラインによるケア 心理的腫れ物に触らない 業務制限 精神健康の啓発 ようにする 本人との連絡時期、方法 安定前期 健康管理室 産業医 役割期待の変化 再燃の危機 安定後期 真の復職 治療期の中盤以降は “自主トレ“ を開始する時期 治療期の後期は、復帰に向けて “キャンプ“ “オープン戦”を行う時期 休職を経験した著者の経験 に基づいた「うつ病」と「仕 事」を続けるコツが満載。 職場の上司の皆さんにもヒ ントがあります。 知らず知らずに傷つけてしまう言葉 4.面接 それくらいのこと、よくあることです 支援者として、本人に接するときの留 もっとうまくご主人を操縦すればいいのに 意事項 あなたのどんな行為が暴力に結びついたのですか? いつまでこんな状況に我慢しているつもりですか? あなたが今の状況を変えようとしないのなら、これ以上 相談業務において特に注意すべきこと について、禁句など 私にできることはありません 私なら、そんな関係はさっさと清算しているでしょう なぜいつまでもそんな人と一緒にくらしているのですか ジャッジメントを手放すこと(水島広子先生) 援助的な言葉 よく打ち明けてくれましたね あなたの言うことを信じています あなたが悪いわけではありません。被害を受けてい ジャッジメント:ある人の主観に基づいて下される評価 私たちは常にジャッジメントの誘惑にさらされている。 お世話したいとき・・・・ るのは、あなたのせいではありません。 あなたの安全と健康が心配です。 ゆっくり考えて、自分で決めていいのですよ 状況が変わったら、情報を提供したり、相談にのる ことができます。 新しい知識を得たとき、困っている人がいるとき 援助者自身の思い、価値観が投影される ジャッジメントは「凶器」「暴力」にもなる。 ジャッジメントを手放す 相手の話を聞くときに、自分の評価 (ジャッジメント)を脇に置いておく 相談、治療に疲れにくくなる。燃え尽きにくくなる。 4.面接 その場では解決しえない、マイナス話題の 適切な聞き方。 Radical Acceptance とりあえずどんな内容でも聴く姿勢 「よくわからないので、もう少し噛み砕い て教えてもらえるか」 「少し状況を整理しましょう」 法律相談の窓口案内の担当者には、うつ病 や精神病と思われる来庁者が多い。 支離滅裂な話にどう対応したらよいか 状況・課題を整理する 4.面接 解決の優先順位をつけ、支援の糸口を見つける。 安全 育児・教育 経済・就労 法律・離婚 健康上問題 人間関係 問題を整理するという共同作業が、広義の心理的支援に なる。 関わる人がみな、支援者・治療者になる。 より楽に援助するために 外在化する 状況を整理する、優先順位をつける 自分の価値観から中立になる ジャジメントを手放す 守備範囲を把握しておく 出来ること/出来ないことを仕分ける シェアする 援助は神輿担ぎみたいなもの 本人や周りの力を信頼する 時間を味方につける 本人やご家族への面談後、相談員のここ ろの健康について留意すること。