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消費における二重の情報処理: 消費者情報処理から消費
Kobe University Repository : Kernel Title 消費における二重の情報処理 : 消費者情報処理から消費 欲望の創発へ Author(s) 栗木, 契 Citation 流通研究 = Journal of marketing & distribution,4( 1):1-14 Issue date 2001-03 Resource Type Journal Article / 学術雑誌論文 Resource Version publisher DOI URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/90000547 Create Date: 2017-03-29 消費における二重の情報処理 一消費者情報処理か ら消費欲望の創発へ 栗 木 契 ( 岡山大学) 要約 ( アブス トラク ト) 消費は、選択のプロセスである。例えば、消費者が缶 コーヒーを買お うとするとき、競合する缶 コーヒーの なかから特定の銘柄が選択 されるO この選択意思決定の メカニズムをとらえることも、た しかにマーケテイン グの重要な課題である。だが、消費者は選択を望んでいるのではない。消費者は、欲 しい ものを手に入れたがっ F. Fi r a t が言 うように、購買意思決定 とは、必要をよりよく満たす製品やサービスを選択す ているのであるoA. る意思決定であると同時に、何 を必要 とするかを確立する意思決定でもある★ 1 。消費は、このように少なくと も二つの意思決定のための情報処理を通 じて達成されるのである◆2。 本稿は、この二つの情報処理の相互の関連性 を検討する。二つの情報処理の機構が相互に独立 して作動 して いる限 り、特定の製品やサービスの購買へ と消費者が向か うための中心的な ドライビング・フォースを獲得す ることはできない。だが、両者が相互の作動を触発 し合いなが ら進行するプロセスを形成するとき、消費者は 当該の製品やサービスの購買へ と向かうことになる。われわれは、今ここで作動 している消費欲望の起源を、 この自己準拠的な循環する関係に兄いだすことができるのである。 キーワー ド 消費者情報処理、手段一 目的の連鎖、マーケテイング近視眼、自己組織化、創発、 消費欲望、ディスプレイ、ブランド 1.消費者情報処理 の プ ロセス 原材 料 、パ ッケー ジ ・デザ イ ン、ブ ラ ン ド・イ メー ジ、製造 メー カー、等 々で あ る。さ らに、 味 につ いてい えば、苦 み、甘 み、 コク とい っ 消 費 は、次の よ うな消 費者情報処理 の プ ロ た具合 に、それぞれの属性 の細 目を設 定す る セ ス と と らえ る こ とが で きる。 例 え ば、 缶 こ とがで きる。 この多岐 にわた る属性 とそ の コー ヒー を購 入 しよ うとす れ ば、通常 い くつ 細 目を選択 的 に知覚 し、評価す る こ とを通 じ かの選択肢 が あ る● 3 。われ われ は、複 数 の銘柄 て、購 買対 象 の選択- と結 びつ けてい く。 こ の缶 コー ヒー を比 較 、 評価 し選 択 す る。 缶 れが購 買 意思決定 の ための消 費者情 報処理 で コー ヒーは、パ ソコ ンや 自動車の よ うな製品 あ る。 と比べ る とはるか に単純 だ とはい え、 さまざ まな属性 か ら成 り立 って い る。味、価 格 、量 、 当然 なが ら、 実 際 に購 買 を行 うた め に は、 以上 の ような情報 処理 だ けで はな く、支 出可 能性の確保 も必要である。しか し、マーケテ イ モー ド、カテゴリー ・ モー ドなどが知 られてい ング研究や消費者行動研究の主要 な関心 は、 る7。あるいは、獲得 された情報を処理 して評 購 買対象 の選択 の局面 に向け られて きた★ 4 。 価 を形成する局面では、感情帰属型ルール、連 われわれ も同様 に、以下では支出可能性が確 結型ルール、分離型ルール、辞書編纂型ルー 保 されていることを所与 として検討 を進めて ル、線形代償型ルールなどが知 られている● 8 。 い く。それは第 1に、議論が過度に複雑 にな ることを避けるためである。第 2に、マーケ テ イングと総称 される諸活動が必要 となるの しか し、問題はこれにとどまらない。購買 は、大量生産 に よ り低 コス ト化 した製 品や 意思決定にあたっては、知覚、評価 というサ サー ビスの大量流通が実現 している状況の も ブ ・プロセスのそれぞれで、情報の選択的取 とでだか らである。 この ような状況の もとで 得、統合、代替案の比較、選択等の情報処理 は、支払いの面か らの購買行動-の制約は低 が行われる。加 えて、 これ らの情報処理のそ 下 してい るはず であ る。 だが、 その こ とに れぞれについてそのルールの選択が行われな よって、企業は販売面における制約か ら全面 ければならない。 的に開放 されるわけではない★ 5 。商品の購買 当然 なが ら、あ らゆる購買意思決定におい は、支出可能性の確保 に加 えて、購買対象 と て、缶 コー ヒーの購買に際 して採用 されたの して選択 されることを経て実現す るか らであ と同 じや り方が採用 されるわけではない。例 る。 えば、 自動車の ような商品の購入にあたって 購買対象の選択の局面 に限ってみて も、購 は、 よ り慎重で時間をかけた意思決定が行わ 買意思決定のための情報処理 のプロセスは、 れるであろう。あるいは、同 じ缶 コーヒーの 複雑 に入 り組 んだ行為の束 となる。消費者行 購買であって も、電車が出発するまでの短い 動研究 は、 購買意思決定のための情報処理 を、 時間に駅の売店で急 いで買い求める場合 と、 知覚 と評価 とい う二つの基本的なサブ ・プロ 仕事帰 りに立ち寄ったコンビニエ ンス ・ス ト セスか ら成 り立つプロセスととらえて きた★ 6 。 アの店内でゆっ くりと品定めをする場合 とで 購買意思決定にあっては、 まず、代替案 とな は、異 なった意思決定のや り方が採用 される る製品やサー ビスに関す る情報の収集が行わ ことになるだろう。購買意思決定が行われる れる。知覚のサブ ・プロセスである。 このサ 状況 によって、選択代案に上る銘柄数 も、選 ブ ・プロセスでは、感覚器 を通 じた外部刺激 択 の際 に考慮 され る属性 の数 も、選択 にあ の選択的取得 と、過去の経験や記憶 に基づ く たって許容 される最低限の基準 も、記憶 され 情報 との統合 とが行われる。続いて、獲得 さ た情報の活用の しかた も異なって くるのであ れた情報 を比較、考慮 し、最良 と判断 される る。購買意思決定 とは、代替案 となる製品 ・ 代替案が選ばれる。評価のサブ ・プロセスで サー ビスの さまざまな属性 に関わる情報 を選 ある 択的に取得 し、それ らを統合 して、代替案の 。 こうした情報の取得や統合 は、消費者が現 選択のための比較 と評価 とを行 うプロセスで 実 に受け入れ可能な、簡便 な手続 きで行われ ある。とはいえ、このプロセスの進め方が、あ なければな らない。 これ らのサブ ・プロセス らか じめ特定の もの として定 まっているわけ の基本的モデル として、例 えば、情報 を獲得 ではない。消費者は、常 に同 じようなや り方 し知覚 を形成する局面では、 ピース ミール ・ で ものを買い求めるわけではない。 2 図 1)缶コーヒーを買うための消費者情報処理のプロセス /- ′ が必要 な こ とが捨 象 されて いる。 、 - 一 一 一 - - 「 缶 コー ヒー を買 う」こと は、目的である と同時 に、例 ・二 票 、慧 _ - 1-- ∼ 慧 莞 _ / ヲ 一 つ - / えば 「会議 の合 間 に気分転 換 をす る」といった、さらに 1 ▼知覚 ( 情報の選択的取得、統合) - 情報処理のルール 上位の 目的の手段 で もある。 1 p, q, ・ ・ ・ l そ して、 さ らに またその上 位 には 「会議 にお ける集 中 ▼評価 ( 代替案の比較、選択) ー 情幸 拠 理のルール r x , y , -1 力 を保つ」 とい った 目的が あ り、「 会議の合 間に気分転 l 換 をす る」 こ とはそのため L朋買行動 の手段 となる。 目的 は よ り 採用 される情報処理の方法は、その購買意 上位 の 目的の手段 とな り、手段 は よ り下位 の 思決定が どの ような 目的を満たすために行 わ 手段 の 目的 となる。 こう した関係 の連鎖の な れるのかによって異 なって くる。購買関与概 かに、知覚一 評価 の情報処理は組み込 まれて 念が想定 しているように、購買 目的の重要性 いる。消費者が行 う製品やサー ビスの選択意 が高ければ、包括 的で複雑 な情報処理が行 わ 思決定 を理解す るためには、なぜ消費者がそ れることになるだろう★ 9 。あるいは、目的が急 の ような選択意思決定 を行 うのか を理解 しな を要す る ものである場合 には、行 うことの容 ければな らないのであ る★ 1 0 。 易 な簡略化 された意思決定の方法が採用 され 缶 コー ヒー を買 う」とい う目的の るだろ う。「 2.手段一 日的の連鎖の功罪 もとで行われる購 買意思決定の方法 は、なぜ 「 缶 コー ヒーを買 う」のかに関わる、よ り上位 必要の相対化 の 目的が どの ような ものであるか に よって、 知覚や評価 を通 じた購買対象の選択意思決 異なって くるのである。 定 は、手段一 目的の連鎖のなか に組 み込 まれ すなわち、購買意思決定のための情報処理 ている。 この連鎖 を通 じて よ り上位 の 目的 と は、知覚か ら評価へ と至 るプロセスだけでは 関係づ け られることに よって、知覚や評価 の meansend な く、 「手段一 目的 の連 鎖 ( ための情報処理 の進め方が特定化 され る。 」 とも関わることになる。知覚一 評価 c h a i n) 手段一 目的の連鎖 を上位の階層へ と遡 るこ とい う情報処理のプロセスの背後 には、手段 とが、知覚や評価 のプロセスに もた らす もの - 目的の連鎖 に関わる情報処理のプロセスが は、それだけではない。Gu t ma nらが述べ てい 缶 隠されている。図 1に示 されているのは、「 るように、手段一 目的の連鎖 を遡及す ること コー ヒーを買 う」 とい う所与の 目的 を達成す は、購買のための知覚や評価 を推進す る根拠 るための情報処理のプロセスである。しか し、 を示す ことで もある●11。よ り上位の 目的は、そ 「なぜ缶 コー ヒーを買 うのか」は示 されていな の手段 となる情報処理 を推進す る必要性 を示 い。す なわち、そ こでは、「 缶 コー ヒー を買 う」 す役割 をになう。「 缶 コー ヒーを買 う」ための とい う目的には、 さらにその必要 を示す 目的 情報処理の必要性 は、その背後 に隠 された手 3 過 ぎない。 段一 目的の連鎖 を上位の階層 に遡 ることを通 じて示 されるのである 。 「 何かを購買す る」とい う直接の 目的 さえ掲 図 2)手段一 目的の連鎖 げれば、後は自動的に購買意思決定が進行す ( EB9) るわけではない。①それだけでは、購買意思 † J( 手段 ) 決定のための知覚や評価 に際 して、 どのよう b ) ( 5g な情報処理のルールを採用すればよいのかが 定 まらない。② また、なぜ、その ような購買 意思決定を行わなければならないのか もわか ( 56 g ) 羊一 貯) H( 題 を解決 して くれる。手段一 目的の連鎖 を遡 ( 5Gg) ることによって、購買対象の知覚や評価の進 め方が特定化 されると同時に、その必要性が 根拠づけ られるのである。 しか し、手段- 目的の連鎖 は、購買意思決 定にとって両刃の剣である。手段一 目的の連 マーケテ イングを しかける側にとって、よ 鎖 との関連づけは、購買意思決定が扱 わねば り深刻 な問題は、手段- 目的の連鎖 を遡 るこ な らない問題 を一 一 一層複雑化 させ ることにな り とで、当該の カテゴリーを対象 として購買意 かねない。 この ことに も注意が必要である。 思決定 を行 う必要が、相対化 されて しまうこ 第 1に、手段一 目的の連鎖 は無限に遡及可能 とである。 この第 2の問題 により、購買意思 である。「 缶 コー ヒーを買 う」のは 「 会議の合 決定で扱 わなければならない問題は一層複雑 間に気分転換 をす る」 ためだ とい う関係 は、 化する。例 えば、手段一 目的の連鎖 を 「 缶 コー 手段一 目的の連鎖の入 り口に過 ぎない。すな ヒーを買 う」か ら 「会議の合間に気分転換 を わち、「 会議の合間に気分転換 をする」ために す る」- と遡 った としよう。問題は、この 「 会 「 缶 コー ヒーを買 う」のだ とすると、 さらに、 議の合間に気分転換 をす る」 という目的にこ なぜ 「 会議の合間に気分転換 をす る」 ことが たえるための手段が、「 缶 コー ヒーを買 う」こ 必要 なのかが問われることになる■12。 これに とだけではないことである。一つの 目的に対 対 して、「 会議 における集中力 を保つ」と答え して、それを満たすための手段が常に一つ し れば、 さらに、なぜ 「 会議 における集中力 を か存在 しないわけではない★ 1 3 。 コーヒー以外 保つ」 ことが必要なのかが問われることにな の他の飲み物 を買って もよい し、歩 き回った る。 この ように 目的は、無限に問い続 けるこ り、体操 を した りしてみて もよいのである とがで きる す なわち、手段一 目的の連鎖 を遡 ることは、 。 。 そ もそ もは所与の 目的であったことが らを、 手段一 目的の連鎖が無限に遡及可能だ とい うことは、直接的には、消費 とい う行為が窓 相対的な選択肢の一つ として しまうことで も 意的で根拠のない ものであることを逃れるこ あるのである。そ して、手段一 目的の連鎖が とがで きない、 とい うことを意味 している。 無限に遡及可能であるとい うことは、この相 だが、それだけであれば、消費は根源的な確 対化の可能性が無限に広がっているというこ 信 を欠いたまま行われるとい うだけの ことに となのである ( 図 2)。 4 T. Le vi t tがその古典的な論文 「 マーケテイ 要なのだ」 とい う思い込みの もとで企業経営 ング近視眼」で とりあげたの も、 この手段- を進 め る こ との危 険性 を指摘 す るため に、 目的の連鎖 を通 じた相対化の可能性が もた ら Le vi t tは、製品の必要性 を相対化 してみせた す問題である。Le vi t tは、アメリカの鉄道会 のである■15。 社が どうして衰退 して しまったのかを、次の とはいえ、Le vi t tの論文 に対 しては次の よ ように論 じた■ 1 4 。「 鉄道産業が、成長 を停止 し うな批判がある。Le vi t tは、鉄道会社 は自ら たのは、旅客 と貨物 の輸送 に対す る需要が が「 鉄道事業ではな く輸送事業 に属 している」 減ったためではない。需要は増 え続けている。 と考えるべ きであった と言 う●16。だが、 この 今 日、 鉄道会社が危機 に見 まわれているのは、 ような事業定義では、一般化の レベルが高す 旅客 と貨物の輸送が鉄道以外の手段 (自動車、 ぎて戦略 を方向付 けることがで きない と、 H. Ⅰ . トラック、航空機 または電話)に奪われたた Ans o 刑 ま述べている★17。「 輸送事業」とい う定 めではな く、鉄道会社 自身がそれ らの需要 を 義では、可能な任務の範囲が広す ぎるのであ 満たす ことを放棄 したか らである。鉄道は自 る。すなわち、鉄道会社 は、「 新たに長距離 ト らの事業 を、輸送事業 と考 えるのではな く、 ラック事業 を行 うべ きなのか、 タクシー事業 鉄道事業 と考えて しまったために、自分の顧 を行 うべ きなのか、それ ともレンタカー事業 客 を他へ追いやって しまった。 」 を行 うべ きなのか」 とい う問題 に答えること 鉄道会社は、「 輸送 を目的 と考えず、鉄道が がで きない。事業の定義 は、狭過 ぎもせず、か 目的 と考えた」ために、 自ら発展の可能性 を といって広す ぎもしないように定めな くてほ 閉 ざ して しまった。手段一 目的連鎖 を一段 ならないのである 。 遡 って しまえば、鉄道 に来 るとい う必要 は、 事業の定義 に対す るこの ような扱いが必要 他で もあ り得る手段の一つに過 ぎない。だが、 なのは、企業は一方で制約 された経営資源の 鉄道会社は、この必要の相対性 を見落 として もとでその事業 を展 開 しているか らであ る いたのである Ans o f fの主張は、 この間題 に対応 している 。 。 。 まとめよう0 一 方で、手段一 目的の連鎖 を Le vi t tが指摘 したのは、消費者が特定の製品 遡ることは、購買意思決定をよ り根源的な必 やサー ビスを選択す る必要 は絶対的なもので 要に結びつけ、かつ知覚や評価のためのルー はな く、他で もあ り得 る可能性 に開かれた も ルの採用に指針 をもた らす。 この点では、手 ので あ る とい うこ とで あ った。 た しか に、 段- 目的の連鎖の遡及は、 どの ように消費が Ans o fの言 うようにこの可能性の全てを埋 め 行われるかを特定化することにつなが る。だ つ くす ように事業 を展開 してい くことは不可 が同時に、手段一 目的の連鎖の遡及は、当該 能である。そこで An s o f fは、さらに競争への の消費を行 うことの必要性 を相対化 して しま 対応、製品 一市場特性や 自社の経営資源 など うことにもつながるのである との関連性 ( シナジー) といった観点 を加 え 。 ることで、事業展 開の範囲を一定の領域 に絞 り込むことを提唱 している★18。 事業の定義 Le vi t tの論文は、企業経営 における製品中 だが、いずれの対応 をとるにせ よ、製品や 心あるいは生産中心の発想 を批判す ることを サー ビスの必要性が、相対化の可能性 に開か 狙い とした ものである。 「 す ぐれた製品であれ れたままであることに変わ りはない。事業の ばひとりでに売れる」、「この製品は絶対 に必 定義 によ り、 自社の供給する製品やサー ビス 5 に対する必要性が相対化 される可能性 は、解 りなが ら、実際に個 々の消費者に手段へ 目的 消 されたわけではないのである。 の連鎖 をた どらせてみるのである。ラダリン Le vi t tや Ans ofの提唱する対応 は、必要の グ法 による調査 は、次のような流れに沿って 相対化の問題 を前提 としてはいるが、必要の 行 われ る。 まず 、同 一カテ ゴリーの複数の 相対化の問題その ものを解消 しようとしてい 商 品 を選択 す る際 に被験者が重要視す る属 るわけではない。その意味で、これ らは消極 性 を特定す る★20。続いて ラダリングに入る。 的な対1 芯である。必要の相対化の問題 に対 し 「なぜ」 を繰 り返 し重ねて問いかけることで、 て、マーケテ イングが よ り積極的にアプロー at t r i but e s )を出発 選択時に重視 された属性 ( チす ることはで きないのだろうか。節 を改め 点 に、 そ の属 性 が 消 費 者 に もた らす便 益 て順次その可能性 を検討 してい くことに しよ ( c o ns eque nc e s ) 、さらにその便益 を意義のあ う るもの と評価す る価値観 ( va l ue s ) をとらえ 。 ようとするのである 。 3.必要の相対化を超えて 基本的なラダリングのプロセスは、次の よ うに進行す る。 まず、商品選択の際に重要視 購買意思決定の ドライ ビング ・フォース した属性 について、「なぜ、あなたにとってこ 消費の必要 は、一意に定めがたい ものであ の属性が重要 なのか」 を尋ね、得 られた回答 る。必要は、常 に他で もあ り得る可能性 に開 に対 して再 び 「なぜ 、 その ことがあなたに かれている。しか し、それにもかかわ らず、購 とって重要なのか」 を尋ねる。 さらに回答 さ 買意思決定が全面的に滞 って しまうわけでは れ理 由に対 して 「なぜ、そのことがあなたに ない。消費者は、窓意的で相対的な可能性の とって重要 なのか」 とい う質問を繰 り返す。 なかで、購買意思決定 を達巡 しなが ら行 うこ 質問は、被験者の回答が、事前に定義 された ともあれば、確信 をもって行 うこともある。 最終的な価値観の段 階に到達する、あるいは そ して、後者の ような購買意思決定は、けっ 被験 者 が 回答 をみつ け られ な くなった り、 して例外的な ものではないのである。 堂 々巡 りの回答をするようになるまで繰 り返 「 缶 コー ヒーを買 う」ことの必要は、それ程 される。 ラダリング法 を用いることで、図 3 確かなことではないのか もしれないが、一方 の ような手段一 目的の連鎖 を、実際の消費者 でわれわれは、缶 コー ヒーが確か は缶 コー ヒー に限 った話 で は な 図 3)ラダリング法で採集 された 手段 一 目的の連親 ( ワインの事例)● 2 1 い。他の製品やサー ビスであって 抽象的 に必要だ と思 うことがある。 これ も当然起 こ りうることである。無 よき家庭生活の持続 惰 れの人物 を思い出す 限後退 と相対化の可能性 に開かれ ていなが ら、消費の必要が確信 さ 妻 と会話がで きる れる。 この ような事態は どの よう ( 便益) に して生 じるのだろうか。 ラダリング法 とよばれる消費者 洗 練 され たイメー ジ とても女性的 ボ トルの形 かわい らしいラベル 調査の手法ある● 1 9 。製品やサー ビ スに関わる選択意思決定 を振 り返 眠た くな らない 具体的 6 の認識をベースに しなが ら導 き出す ことがで い。それにもかかわ らず、さらなる必要性 に きる 根拠づけ られることな く、なぜ直接的な便益 。 ∫ . Gut ma nは、ソフ トドリンクに関す るラダ が購買意思決定の ドライビング ・フォース と リング調査 を行った後で、あ らためて被験者 な り得て しまうのだろうか。われわれはさら に、導 き出された手段一 目的の連鎖の各段 階 にこの間題 を考 えてみる必要がある。 と、実際の商品選択 との関連 を評価 させてい る★ 2 2 。その回答によれば、被験者は、 ソフ ト 循環する関係の輪 ドリンクを購買する際の商品選択にあたって、 手段一 目的の連鎖の媒介的な位置 にある直 より直接的な便益の方 をより強 く考慮 してい 接 的 な便 益が、購 買意思決定 の ドラ イビ ン る。 また、被験者は、 よ り直接的な便益であ グ ・フォース とな り得て しまう。 この ような るほ ど、ソフ トドリンクの購買によって充足 ことが起 こるのは、意思決定のプロセスの中 される可能性が高い とみな している。た しか で手段 と目的が生起す る際の因果の関係が、 に缶 コーヒーを飲 んで一息いれることは、会 まず 目的があって手段が選択 されるとい うよ 議に集中 して臨み、 自分の能力 を充分 に発揮 うな、一方向の単純 な連鎖 には限定 されない するといった、よ り高次の 目的を満たすため か らである。佐 々木壮太郎 らの言 うように、 の手段 となる。だが、われわれが缶 コーヒー 手段一 目的の連鎖 は、購買選択のための知覚 を買お うとするときにはいつで も、こうした や評価 を通 じて獲得 され る知識 の流動 的 な 高次の 目的のことを考えるわけではないので ネ ッ トワークのある一時点における状態 をと ある らえ た もの で もあ る ★24。 さ らに言 え ば、 。 こうした結果を踏 まえて、Gut ma nは、高次 K. Gr une r tらが指摘 しているように、手段一 の価値観は、低次の便益がなぜ必要かを説明 目的の連鎖 は、購買対象の選択 を行 うための はす るが、購 買意思決定の ドライ ビ ング ・ 一つの前提 であると同時に、購買選択 を通 じ フォースとはなるわけでない と述べ ている 。 て獲得 される知識のネッ トワー クであるとい む しろ多 くの場合、消費はよ り直接的な便益 う二面性 をもっている' 2 5 。そ して、重要なの に突 き動かされて推進 される。 しか し、その は、 このことか ら次のような自己準拠的な関 必要性 を根拠づ けることを求め られた とき、 係の輪が生み出されることである 。 この直接的な便益 はよ り高次の便益や価値観 M. Mi ns kyは、われわれの意思決定や行為 へ と結びつけて説明 されるようになるとい う を導いているのは、 目的 と手段がお互いにお のである●23。 互いを同時に利用 し合 うとい う 「因果関係の なるほ ど、購買意思決定時には、ラダリン 輪」 を含 んだ関係 だ と述べている★26。因果関 グを通 じて到達す るような高次の価値観では 係の輪 は、次の ように二つの意識がお互いに な く、直接的な便益がプロセスを推進 してい 支え合 うことによって形成 される★ 2 7 。 るのであれば、購買意思決定時には、その前 提 となる消費の必要性が、手段一 目的の連鎖 Aが原 因 となって Bが起 こる (ジ ョンは、 を通 じて無限後退 と相対化 に陥って しまうと 仕事 に疲 れ を感 じたので、家 に帰 りたか っ いう問題は起 こらない。 ところが、一方で直 た。 ) Bが原因 となって Aが起 こる (ジ ョンは、 接的な便益は、その必要性 をさらに根拠づけ られなければな らない中間的な目的に過 ぎな 家 に帰 りたか ったので、仕事 に疲 れ を感 じ 7 るにもかかわ らず、消費は必要の相対化に陥 た。) ることな く推進 されることである。そ して、 こうした因果の 自己準拠的な関係の輪が形 次節で述べ るように、マーケテ イングは、消 成 される際には、二つの意識の どちらが最初 費における自己準拠的な関係の輪 を形成する の原因であって もか まわない。例 えばジ ョン ように働 きかけることで、特定の製品やサー は、仕事 を した くない とい うこと、あるいは ビスに向けて消費を推進す る一定の可能性 を 家 に帰 りたい とい うことの、 どち らか らで も 手にす ることがで きるのである。 考え始めることがで きる。そ して、いったん 4.マーケテ イングが導 く消費欲望の創発 この グルグル回る関係がで きあがると、一方 は もう一方か ら支 えられ続 けることになる。 中間的 な 目的に過 ぎない便益 であって も、 消費欲望の起源 こうした 自己準拠的な関係の輪 を形成 して し 目的を完全に欠いた状態で、消費は行われ まえば、 さらなる必要性 に根拠づけ られるこ るわけではない。 しか し、この 目的は、消費 とな く消費のプロセスは推進 される。す なわ の揺 る ぎのない起源ではない。購買 目的は、 ち、手段 と目的が この ような相互に支え合 う 購買- と至 る意思決定のプロセスがめざす到 関係の輪 を形成 して しまえば、 さらにその必 達点 とい うよ りは、む しろこのプロセスを推 要性 を根拠づけ られな くて も、消費は消費者 進する上での媒介項の一つ と見なすべ きなの の心 をとらえて離 さない問題 となる。そ して、 である。 目的は、 目的を満たすための意思決 購買意思決定へ と向か う一連の行為は、必要 定のプロセス以前に、確たる起源に根 ざして の相対性の問題 を逃れ、 自律的に進行 してい 定 まっているわけではない。 くことになる む しろ消費が 一つの定 まった 目的によって 。 導かれるのは、それが意思決定のプロセスを とはいえ、 この 自己準拠 的な関係 の輪 は、 その循環の中に とどまる限 りにおいて絶対的 導 くと同時に、意思決定のプロセスを通 じて な消費の推進力 と成 り得 るのであって、その 触発 されることで支持 されているか らなので 外部か ら問い直 されれば、単 なる相対的な可 ある。すなわち、手段一 目的の連鎖 を遡 って 能性の一つ に過 ぎない。 ラダリング調査 にお いった先にある要素ではな く、この連鎖がか いて見 られたように、「なぜ」この循環の もと たちづ くる自己準拠的な相互に支え合 うダイ で購買意思決定が行われなければな らないの ナ ミックな関係の機構 こそが、今ここで作動 かが問い直 されれば、 さらに消費の必要性 を している消費欲望の起源なのである。 この欲望の起源は、循環する意識の作動が 相対化 して しまうような不確定な根拠へ と関 連づける他にないのである。 つ くり出す機構であ り、消費者がなん らかの 意識 を相互に触発す る因果の 自己準拠的な 意識の断片 を産出することなしには生成 しな 関係 の輪 が 、消 費 の プ ロセ ス を推 進 す るO い。 もちろん、 ジョンの心の中で生 じた 「 仕 これは、あ くまで も当座の可能性 に過 ぎない。 事 をした くない」 という意識の産出が、彼の 自己準拠的な関係の輪 を形成す ることで、必 心 をとらえている自己準拠的な関係の輪 を形 要の相対化の問題が全面的に克服 されるわけ 成する際の、不可欠の前提だ というわけでは ではない。 しか し、重要 なのは、 この輪が回 ない。 この関係の輪 を形成す る きっかけは、 り続けている間は、根源的な確信が不在であ 「 家に帰 りたい」という意識であってもかまわ β ないのである。また、当初の断片的な意識が、 意思決定の複雑で入 り組 んだ循環的 な構成 を 自己準拠的な関係の輪 を支 え続 けるわけでは 検討 して きた。 この複雑で入 り組 んだプロセ ない。いったん形成 されて しまえば、 自己準 スに企業活動 を斉合 させ る際の指針が、消費 拠的な関係の輪 を支えることになるのは、 自 者の必要 と欲求 に従 うことだけではない こと 己準拠的な関係の輪その ものなのである。 は明 らかである。 二つの木片 を摩擦 させ るこ とで火がつ く。 現実 にマーケテ イングは、一方で次の よう この摩擦か ら火への転換 は、質的に異 なる も なアプローチ を併用 している。す なわち、 ま の間の転換 である。われわれが論 じてい る、 ず消費者 を具体 的な商品を志向 した行為へ と 断片的な意識か ら生成す るプロセスが、循環 巻 き込んで しまうのである。例 えば、 メデ ィ す る関係の輪 となるとい う局面で生 じている ア を使 った広 告 、 店 舗 で の デ ィス プ レ イ、 の も、同様の質的に異なる ものの間の転換 で シ ョウア ップ された展示会 とい った手法 を、 ある。河本英夫は、 こうした新 たな回路 の創 マーケテ イングは古 くか ら採 用 し、その さま 発 を伴 う生成のプロセスを 「 産出的因果」 と ざまなバ リエー シ ョンを開発 して きた。 こう 呼び、創発 を伴わない単 なる生成のプロセス した活動の意義 は、端 的には商品を見せ るこ と区別 を している。★ 2 8 。 とにあ る●30。 商 品 を見せ る とい う活動 は、見 る とい う、 とはいえ一方で、 ジ ョンの心の中に 「 仕事 を した くない」あるいは 「 家 に帰 りたい」 と 特定の商品 を志 向 した行為へ の消費者の参加 いった ような意識が全 く芽生えなければ、 こ を引 き出す。 ここにわれわれは、単 なる適合 の循環す る関係が出現す ることもない。す な 化 とは異 なる、触発型のマーケテ イング活動 わち、消費への欲求や欲望 は、消費者が、特 の原初的形態 を兄いだす ことがで きる。 定の商品の必要へ と結 びつ く何 らかの要素 に 具体的に、缶 コー ヒーの購買 に関わるご く 意識 を向けることを きっかけに して創発す る 日常的な一局面 を と りあげてみ よう。消 費者 のである。 が缶 コーヒーを飲みたい とい う欲求 を感 じて、 缶 コー ヒー を販売 している 自動販売機の前で 商品を志向 した行為の触発 立 ち止 まる。 この とき、欲求 は行為 に先行 し 消費への ドライビング ・フォース となる欲 ているように思 える。 自動販売機 の前で立 ち 求や欲望が、以上の ようなかたちで生成す る 止 まったか ら、缶 コー ヒー を飲 みた くなった のであれば、マーケテ イングが消費に対す る わけではないのである。だが 、状況 を とらえ 際のアプローチは、消費者 を購買- と導 く目 る枠組み をもう少 し広 げてみ よう。何気 な く 的をとらえ、それ を満たす手段 を市場 に供給 道 を歩いていた消費者 は、缶 コー ヒーの 自動 す ることに尽 きる、 と宣言す るわけにはいか 販売機が 目に入 ることで、「ち ょっ と一休みす な くなる。た しかに、消費需要 と企業活動の るか」 と思い、缶 コー ヒーを買お うとしたの mat chi ng) をはかろ うとす る際 に、 斉合化 ( か もしれない。そ うだ とす る と、缶 コー ヒー 「 消費者の必要 と欲求を満たす製品 とサー ビス を飲み たい とい う欲求が確 立 され る以前 に、 の開発 ・ 提供」を軽視す ることはで きない。し 消費者 はすでに缶 コー ヒーを志 向 した行為の か し、この適合化 ( f i t t i ng)を 「 企業の至上命 プロセスに巻 き込 まれていたことになる。す 令」● 2 9とみなすのは明 らかに行 き過 ぎなので なわち、消費者は、見 る とい う、缶 コー ヒー ある。われわれは、消費 とい う行為 における を志 向 した行為 に巻 き込 まれ る こ とで、缶 9 コー ヒーが発す る 「ち ょっと一休み」 とい う には、購買意思決定 を誘導する消費のモデル メッセージを想起 し、缶 コー ヒーへの購買に となる要素が巧みに組み込 まれている。例え 向か うさ らなる志 向 を生成 してい るのであ ば、ブラン ド化 によって、上述 した 「ちょっ る。 と一休み」の ような意味づけが、製品やサー 商品を見ることによ り、消費者 は特定の商 ビスに与 えられる' 3 2 。見るという行為は、 こ 品を志向 した行為 に巻 き込 まれる。この行為 の 「ち ょっと一休み」 というブラン ドのメッ をきっかけに当該の商品に対す る必要の認識 セージを介することで、当の商品に対する購 が触発 され、 そ して この新 たな必要 の 自覚 買意思決定 を推進する関係の輪の生成へ と結 が、その商品に対す る消費者の情報処理への びついてい くのである 。 取 り組み をさらに推進す る。すなわち、商 図 4)消費欲望の生成を触発するマーケテイング活動 品に視線 を注 ぐなかで、特定の商品を購 ( 7-ケテ1ンク' ; ' 5m) 買す ることに向か う意識の循環が新たに デ ィスプレイ、広告 生成 してい くのである。 この ように消費 者 を、マーケテ イング活動が、特定の商 ら _ _ _ ぎ 晶 を 見 る ' / 「 ブランド化 品 を志 向 した行為- と誘導す るこ とで、 一 一 一 ㌧ ( 消費モー ドやライフスタイルの想起) 消費を導 く自己準拠的な相互 に支え合 う ( 関係が触発 されることになる 。 製品、サービスの必要の喚起) ブラン ド化が導 く消費欲望の触発 繰 り返すが、消費者が特定の商品へ と意識 それだけではない。 自己準拠的な関係の輪 を向けることは、消費への欲求や欲望が生 じ に導かれた購買対象の選択 は、再びブラン ド る上での一つの きっかけに過 ぎない。見ると のメッセージを介 して、さらに新たな自己準 い う行為か ら直接 的に生 じるのは、単 なる知 拠的な関係の輪の生成へ と導かれる。ブラン 覚や理解で しかない。 しか し、何気 な く商品 ドは、 さまざまなメ ッセー ジを発 している。 に向け られた視線が、自己準拠的な関係の輪 例 えば、ブラン ドは、生活に用いるさまざま の生成へ と結びつ くことによって継続的に支 なものに統一感 を与 えるライフスタイルを象 えられることで、特定の商品の購買に対す る 徴 した り、商品の選択時にデザ イン、品質、ア 欲求や欲望が創発 される フター ・サー ビス等々の属性のなかで何 を重 。 視すべ きかを語 りかけた りするのである。 こ 上述 した缶 コー ヒーの購買のケースでは、 この創発の局面で、見ることに加 えて、製品 のライフスタイルや、選択的情報取得のルー のブラン ド化が重要 な役割 を果た している ルは、ブラン ドの選択 をさらなるブラン ドの この ことも見落 とさない ように したい。 選択へ と誘導する自己準拠的な関係の輪の生 。 成 を媒介す る★33。 製品やサー ビスのブラン ド化 とは、単に名 すなわち、あるブラン ドを選択することは、 前やマークを付与するとい うだけのことでは ない。ここで重要なのは、ブラン ド化 を通 じ そのブラン ドが提唱 しているライフスタイル て、製品やサー ビスが強いメッセージ性 を帯 の選択 を触発する。そ して消費者が、この選 びる ようになる とい うこ とであ る ★31。 そ し 択 されたライフスタイルに沿って商品を買い て、このブラン ドが発す るメッセージのなか 進め ようとす るとき、 さらにそのブラン ドが 10 選択 されることになる。あるいは、商品選択 再現 と、購買後のプロセスの先取 りとが、購 時にあるブラン ドを考慮することが、そのブ 買のプロセスの中で生 じるとき、は じめて購 ラン ドが示唆 している、商品の選択時に重視 買のプロセスは成立す る。選択 に相即 して起 すべ き属性 を想起 させ る。そ して、 この選択 こる、選択の必要や基準 に対す る先行投射 を 的情報取得のルールに したがって商品選択が 通 じて、 自己準拠的な関係の輪が形成 されな 行われることで、先のブラン ドが選択 されや ければ、「トライアル誘導」「イ ンタラクシ ョ す くなる。 このようにブラン ド化 を、商品を 顧客 リテ ンシ ョン」 の三つの アプ ン促進 」「 選択するプロセスと、当の選択の基準 を選択 ローチか らは、商品の単 なる知覚や評価や想 するプロセスとが連動す るようになるための 起が生 じるだけで、消費者 をその購買へ と駆 しかけともとらえることがで きる。 り立てる消費欲望は創発 されないのである。 消 費- の欲望が創発 され るの は、 マー ケ テ イングがブラン ド化 を進め、製品やサー ビ 交換か ら創発へ∼結びにかえて スが強い メッセー ジ性 を帯 びることによ り、 以上のデ ィスプ レイとブラン ド化 を通 じた 消費欲望の創発のプロセスは、和 田充夫が提 選択が同時に当の選択の必要や基準の選択 と 唱 した 「トライアル誘導」-「インタラクショ なるとい う二重の作動の相即す るプロセスが 顧客 リテ ンシ ョン」の三つのア ン促進」- 「 生 じた ときである。 このブラン ド化が もた ら プローチか ら成るマーケテ イングのフレーム す選択の反射性 を介 して、視線の対象の無 自 と対応する■34。すなわち、商品を見せ ること 覚 な選択か ら、消費を推進す る自己準拠的な は 「トライアル誘導」であ り、ブラン ドの メッ 関係の輪が触発 されるのである。 セージが果た しているのは 「インタラクシ ョ 消費は、必要 をよ りよく満たす製品 ・ サー ビ ン促進」 と 「 顧客 リテ ンション」である。た スを選択す るための情報処理 と、何 を必要 と だ し、和円はこの三つのアプローチを、時系 するかを確立す るための情報処理 とが、相互 列的 に進行す る三つ の プ ロセ ス、す なわ ち 依存的に作動する自己準拠的な回路 を形成す ( 1 )購買前のプロセス、( 2)購買のプロセス、 ることによ り、特定の商品に向けて推進 され ( 3) 購買後のプロセスのそれぞれに対応する る。 この ような作 動 の 回路 に対 してマー ケ もの と見なしている。 テイングは働 きかけているのである。 この と 本稿では、この中の購買のプロセスに限定 き、マーケテ イングが発する情報は、消費者に して検討を進めて きたことになる。そ して重 よって 目的を達成す るために処理 されると同 要なのは、購買のプロセスその ものが、和 田 時に、消費者の 目的を支 える自己準拠 的な関 の挙げる三つのアプローチによって触発 され 係の輪 を触発する役割 も果たす。われわれは、 る作動が循環する因果の輪 を形成す るときに この消費欲望 とい う、特定の商品を志向 しな 成立するプロセスだ とい うことである。つ ま が ら循 環 す る関係 の輪 が触 発す る端緒 を、 り、「トライアル誘導」に導かれた消費者の行 デ ィスプ レイ、ブラン ドな どに兄いだ して き 為は、消費を導 く循環す る凶采の輪の単なる た。このマーケテイングによる、欲望の創発に 先行条件ではないのである。 この消費者によ 対するアプローチの原型 を、われわれは今後、 る行為は、その作動 を循環する因果の輪 を通 さらに精査 してい く必要があるだろう。マー じて支えられることで、与件 として持続す る ケテイングは、価値 を交換する経路であると ことになる。すなわち、購買前のプロセスの ともに、価値 を創発する ドラマなのである。 77 参考文献 2, pp. 4061 ・青木幸弘 ( 1992), 「 消費者情報処理の理論」, 大 ・村田昭治 ( 1974), 「 消費者行動 とマーケテイン 運皇編 『マーケテ イングと消費者行動 :マーケ グ ・システム」, 吉 田正昭、村田昭治、井関利明 テ ィング ・サイエンスの新展開』有斐閣 , pp1 29- pp. 21 5248 編『 消費者行動の理論」 】 第 2版、丸善 , , 154 ・森下二次也 ( 1993) 『マーケテ イング論の体系 ・阿部周造 ( 1984), 「 消費者情報処理理論」, 中西 と方法』千倉書房 , 正雄編著 『 消費者行動分析のニュー・フロンテ ィ ・和田充夫 ( 1 999) 『 関係性 マーケテイングと演 ア :多属性 分析 を中心 に』誠 文堂新光社 ,pp. 劇消費 : 熱烈 ファンの創造 と維持の構図』ダイヤ 11 91 64 モ ン ド社 , ・池尾恭一 ( 1999) 『日本型 マーケテ イングの革 IAnsof f , H. l gor( 1965) , Cor por at eSt r at egy, 新』有斐閣 McGr awHHBookCompany( 広田寿亮訳 『 企業 , 1999) 『ブラン ド:価値の創造』岩 ・石井淳蔵 ( 戦略論』産業能率大学出版部 , 1 969) 波新書 ・Cl aeys, C. , A. 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I ,J our nalofAdv er t i s l n gRes ear ch, 28 * 4 杉本 ( 1 997)pp. 1 2 1 3。 ( 1), pp. ll 31 * 5 森下 ( 1 993)pp. 6 7。 * 6 * 1 Fi r at( 1 9 85) 中西 ( 1 984)pp. 91 9、阿部 ( 1 984)p. 1 22、 佐 々木 ( 1 997) * 7 清水 ( 1 999)pp. 1 0111 。 1 9 99) も、購 買意思決定の 書 2 同様 に上原 ( ♯ 8 阿部 ( 1 984)pp. 1 281 31、青木 ( 1 992) ための二つの情 報処理 の存在 を指摘 し、 それ らを情報処理系 と情報創造系 と名付 p. 1 47。 けている。p. 26 40 ' 9 池尾 ( 1 999)pp. 1 0911 2、清水 ( 1 999) 本稿 は、こう した先行研究 にお ける指摘 p. 1 04。 を念頭 に置 きなが ら、さらに この情報処 1 984)pp. 1 24 1 1 25、 書 1 0 Gut man( 1 982)、阿部 ( 理系 と情報創造系 との結合のモー ドにつ Reynol ds& Gut man( 1 9 88)、青木 ( 1 992) いての検 討 を進 め よ う とす る もの で あ p. 1 44、Gut man ( 1 997)。 る。結論 を先取 りすれば、情報処理系が * 11 Gut man ( 1 982)、Cl aeys ,Swi nnen,& 単独で機能す る限 り、そ こで生 じるのは Abeel e( 1 995)、Gut man ( 1 997) 。 単 なる知覚 や評価 に過 ぎない はず で あ * 1 2 あ るいは、それは製 品やサー ビスに対す る。あ るいは、情報創造系 が単独 で機能 る、コ ミッ トメ ン トや購 買 関与 度の強 さ す る限 り、そ こで生 じるのは相対的 な必 や弱 さが、なぜ生 じるのかが 問われ る と 要の 叶能性 が存在す ることの理解 に過 ぎ い うこ とで もあ る。 そ こで和 田 ( 1 999) ないはずであ る。 しか し、この二つ の系 は、ブラ ン ド形成 を進 め る際 には、この の間で円環 的 な結 合が 果た され た とき、 製品やサー ビスへ の コ ミッ トメン トや購 個 々の商品に対す る単 なる知覚や評価や 買 関与度 を規定す る要 因 となる、ライフ 吋能性 の理解 ではな く、その購 買へ と意 スタイルな どの よ り上位 の価値 のマ ネジ 思決定 を押 し進めてい く作動が消 費者 の メ ン トを行 う必要があ るこ とを指摘 して 内に創発す るのであ る。 い る。pp. 1 5 01 51 。 ' 3た しかに、購 買意思決定 における選択肢 * 1 3 Gut man ( 1 99 0) の カテゴ リー として、「 缶 コー ヒー」は極 * 1 4 Levi t t( 1 962) 訳 pp. 43440 め て限定 され た もの で あ る。特 定 製 品 5 4730 事 1 5 Levi t t( 1 962) 訳 pp. ジャンルにおける銘柄選択 に、購 買意思 46。 + 1 6 Levi t t( 1 962) 訳 p. 決定は限定 され るわけではない。購 買意 1 3 01 34。 事 1 7 Ans o f f( 1 965) 訳 pp. 思決定 には、「ソフ トドリンク」、「 夕食の 1 35 1 40。 ' 1 8 Ans of ( 1 965)訳 pp. 13 事 1 9 Re ynol ds& Gut man (1988)、Cl aeys . ns kyが挙げている事例は、直接 * 27 この Mi Swi nnen,& Abeel e (1995)、Gut man 消費- と結 びつ くものではない。だが、 ( 1 997)、丸岡 ( 1998)。 同様の関係 は、消費への欲求を形成する ' 20 ラダリングの出発点 となる属性の特定に 局面で も成立 し得 る。例 えば、( 太郎は、 は、い くつかの方法がある。例 えば、① 少 し頭がぼんや りしていることに気がつ 被験者に当該のブラン ドや商品に対す る いたので、缶 コー ヒー を飲みた くなっ 評価 求 め、その際 を注 目した属性 を問 たった)⇔ ( 太郎 は、缶 コーヒーを飲み う、②調査対象 となるブラン ドや商品 と た くなったので、少 し頭がぼんや りして 同一のカテゴリーに含 まれる商品をリス いることに気がついた) という関係や、 トア ップ し、それ らを被験者にとって意 ( 次郎 は、夏休 み に子供 たちを連れて 味のある仕方で 2つのグループに分割 し オー トキャンプに出かけるというプラン て もらい、その分割の基準 に用いた属性 を思いついたので、オフロー ド・ワゴン を問 う、③ 同一 カテゴリーの商品 1 )ス ト に 自家用車 を買い換 えた くなった)⇔ か ら、あ る特 定 の状 況 にふ さわ しい商 ( 次郎は、オフロー ド・ワゴンに自家用車 品、あるいは当該の状況で被験者が直近 を買い換 えた くなったので、夏休みに子 に購買 した商品を答えて もらい、その際 供たちを連れてオー トキャンプに出かけ に注 目 した属性 を問 う、 な どであ る るというプランを思いついた)という関 。 Gut ma n (1997)、丸岡 (1998)。 係 をあげることがで きる。もちろん、こ ' 21 Re yno l ds& Gut ma n(1988)をもとに作 の消費 を創発す る相互 に支 え合 う関係 成。 は、二項間の ものであって も、三項間の * 22 Gu t ma n (1997)。 関係あるいは四項間のものであって もか * 23 あるいは、 Gr une r t& Gr une r t(1995)は、 まわない。 ラダリング調査 には、被験者が商品選択 ' 28 河本 ( 2000) p, 44. 時に参照 していた手段一 目的の連鎖 を再 * 29 村 田 ( 1 974) p. 233。 現す るだけでな く、さらに新たな手段一 * 30 資本主義社会の発展のなかで、富の増加 目的の連鎖 を創出 して しまう可能性があ は消費の増加 と常に結びつ くわけではな ることを指摘 している。ラダリングのプ い。パ リにおいて、富の増加が消費の増 ロセスの中で、被験者は、商品選択の基 加 と結びつ くようになる転換点は、19世 準 とした便益の必要性 を説明することを 紀の後半であった。この時期に、パサー 求め られることによ り、新 たに商品選択 ジュや百貨店に代表 される、視覚 ( 照明、 時には想定 していなかった連鎖 を発見 し 品物のデ ィスプレー、広告)重視の商法 て しまう。ラダリングには、被験者 を商 が出現 していることを、北山 ( 1 991 )が 品選択時に参照 していた手段一 目的の連 1 91 1 92, pp. 20621 2。 指摘 している。 pp. 鎖の先- と進 ませて しまう可能性がある 1 999) pp. 6567。 ■ 31 上原 ( のである 事 32 石井 ( 1 999)pp. 1 781 1 79。 。 * 24 佐 々木 & 新倉 ( 1 999)。 1 999)pp. 1 821 96。 ♯ 33 石井 ( * 25 Gr une r t& Gr une r t(1995)。 ♯ 34 和 田 ( 1 999)p. 61。 書 26 Mi ns ky (1986) 訳 pp. 5455。 14