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治験の成功は 時の運によるのか? - Scripintelligence Japan

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治験の成功は 時の運によるのか? - Scripintelligence Japan
治験の成功は
時の運によるのか?
SYLVIA MARECKI, PHD
SENIOR DIRECTOR,
PRODUCT MANAGEMENT & STRATEGY
1
2
医薬品開発は、リスクのある試みである。ギャンブルだとさえ言う人もいる。しかし、成
功する治験を実施する確率はどれほどであろうか。多数の研究において、医薬品開発の全体
的な成功率は、治療の試験相の移行速度及び承認の可能性を検討することで主に評価されて
いるが、今日までに、治験レベルの成功率を報告した研究はない。本稿では、成功と相互に
関連すると考えられる方策を見出すことを目指して、この領域を掘り下げ、治験レベルで成
功を詳しく検討する。
企業主導治験のうち、2008 年 1 月 1 日から 2012 年 12 月 31 日までに完了し、かつ良好
なアウトカムが見られた(定義:治験の主要評価項目で統計学的有意性が達成されている、
及び/又は治験依頼者又は治験責任医師から「良好なアウトカムが得られた」又は「成功で
あった」との報告がある)第 II ~ III 相試験を検出するため、Trialtrove 及び Trialpredict のデー
タを利用した。この期間中に、合計 7,005 試験が完了し、3,686 試験が良好なアウトカムを
達成しており、全体的な成功率は、「時の運」の確率をわずかに上回る 52.6% であった。
トップ 10 の疾患は、いくつかの主要治療領域に広がっているが、この期間中に完了し、
成功した治験で、試験数が最も多かった疾患は 2 型糖尿病であった(表 1)。成功した治験で
は、大手製薬会社が治験依頼者のトップ 10 を占め、生物製剤が医薬品のトップ 10 の多数を
占め、米国が治験実施国のトップであった(表 1)。成功した治験の実施国のトップ 10 に、ポー
ランドとロシアが入っていることは注目されるが、成果を得るために、新興市場にまで拡大
した国の選択が始まっており、そのような選択の拡大は、成功の 1 方策を示している可能性
があることも示唆される。
表1. 極めて大きな成功が得られた疾患、製薬会社、医薬品、治験実施国のトップ10
疾患
治験依頼者
医薬品
実施国
・2型糖尿病
・ロシュ
・ベバシズマブ
・米国
・呼吸器感染、ワクチン
・グラクソ・スミス
クライン
・エルロチニブ
・ドイツ
・リツキシマブ
・カナダ
・ドセタキセル
・フランス
・インダカテロール
・英国
・セツキシマブ
・スペイン
・ボルテゾミブ
・イタリア
・ラニビズマブ
・ポーランド
・レナリドミド
・ロシア
・カペシタビン
・ベルギー
・乳癌
・喘息
・慢性閉塞性肺疾患
・関節リウマチ
・非小細胞性肺がん
・高血圧
・HIV
・アレルギー性鼻炎
・ノバルティス
・ファイザー
・メルク
・サノフィ
・ジョンソン・エンド・
ジョンソン
・アストラゼネカ
・ブリストル・マイヤーズ
スクイブ
・リリー
Source : Trialtrove® and Trialpredict®, August 2013
3
いくつかの治療領域は、他の領域と比べて成功した治験の割合が大きい(図 1)
。2008 年
から 2012 年に完了した治験全体で最も多数の治験が行われた治療領域は、腫瘍及び中枢神
経系で、これらの領域の成功率はそれぞれ、51.9% と 47.2% であり、いずれも全体的な成功
率である 52.6% よりも低かった。この期間中、自己免疫/炎症の分野の成功率は 56% で最
も高く、続いて代謝、心血管関連の順であった。確実に、多数の要因が治験成功の基礎にある。
今回の分析では、これらの要因の一部を探索し、成功と相関があると考えられる要因と治験
成功を引き出すために治験依頼者がこれらの方策をどのように用いているかについて解明す
るための端緒を得る。
図1. 治療領域別の治験の成功
1800
60
その他の完了治験
良好なアウトカムの治験
成功率(完了治験に対する%)
1600
56
1400
54
1200
52
1000
50
800
48
600
46
400
44
200
0
成功率
治験数
58
42
ONC
CNS
A/I
MET
INF DIS
CV
OPHTH
GU
40
ONC = 腫瘍、CNS=中枢神経系、A/I=自己免疫/炎症、MET=代謝及び内分泌、INF DIS=感染性疾患、
CV=心血管関連、OPHTH=眼科関連、GU=泌尿生殖器疾患
Source : Trialtrove® and Trialpredict®, August 2013
いずれの治験依頼者が成功したこれらの治験に資金提供したか、そして、上位の治験依頼
者の中で、成功はどのように分布しているのか。表 1 に示すとおり、2008 年から 2012 年の
期間全体で、成功した完了治験が最多であった会社はロシュであった。治療領域別の治験の
成功を治験依頼者別に分類したところ、ロシュは、腫瘍領域において首位の治験依頼者であ
り、ノバルティスは自己免疫/炎症及び眼科関連領域で、グラクソ・スミスクラインは感染
性疾患で首位であることが判明した。しかし、これらの治験依頼者とともにトップ 20 に入
る他の依頼者は、一般的に多数の治療領域にまたがって治験成功を収めていた。
4
図2. トップ20の治験依頼者別に示す成功した治験の動向
800
第一三共
700
ノボ・ノルディスク
アムジェン
アステラス
セルジーン
アッヴィ
バイエル
武田
フォレスト・ラボラトリーズ
600
治験数
500
ベーリンガーインゲルハイム
400
イーライリリー
ブリストル・マイヤーズスクイブ
300
アストラゼネカ
ジョンソン・エンド・ジョンソン
200
サノフィ
メルク
ファイザー
ノバルティス
100
0
グラクソ・スミスクライン
ONC
MET
A/I
INF DIS
CNS
CV
OPHTH
GU
ロシュ
ONC = 腫瘍、CNS=中枢神経系、A/I=自己免疫/炎症、MET=代謝及び内分泌、INF DIS=感染性疾患、
CV=心血管関連、OPHTH=眼科関連、GU=泌尿生殖器疾患
Source : Trialtrove® and Trialpredict®, August 2013
これらの成功した治験の治療領域全体で、国の利用頻度に何らかの差があるのだろうか。
治療領域全体で資金提供に差はあるが、特定治療領域におけるトップ 20 の国の相対的利用
頻度は治療領域全体における利用頻度と概ね一致していることは特筆すべきことであり、依
然として米国が最も治験に利用された国である(図 3)。この結果は、マクロレベルにおいて
利用国選択の方策は治験依頼者全体及び治療領域全体で概ね同じであるが、利用国別の勘定
では、自己免疫/炎症の領域が飛び越えて首位になっている(図 1 と図 3 の比較)ことから
明らかなように、各治療領域において 1 治験で利用された国の平均数に、ばらつきがあるこ
とを示している。
これらのトップ 20 の国には、東欧、南米、アジア太平洋地域の国が含まれ、これらの国
の相対的な利用頻度は、米国を除く他のトップ 20 の国に対して、大まかに比例することも
注目される。東欧が重要地域になっていることは明白であり、今後、南米及びアジア太平洋
地域の国の利用に伸びが見られるであろうと考えられる。
東欧が重要地域になっていることは明白であり、
今後、南米及びアジア太平洋地域の国の利用に
伸びが見られるであろうと考えられる。
5
図3. 治療領域別に示す成功した治験の動向:トップ20の国
3000
2500
治験数
2000
1500
1000
500
0
A/I
ONC
MET
CNS
CV
INF DIS
GU
OPHTH
ルーマニア
メキシコ
オーストリア
スウェーデン
日本
インド
ハンガリー
チェコ共和国
オランダ
オーストラリア
ベルギー
ロシア
ポーランド
イタリア
スペイン
英国
フランス
カナダ
ドイツ
米国
ONC = 腫瘍、CNS=中枢神経系、A/I=自己免疫/炎症、MET=代謝及び内分泌、INF DIS=感染性疾患、
CV=心血管関連、OPHTH=眼科関連、GU=泌尿生殖器疾患
Source : Trialtrove® and Trialpredict®, August 2013
成功した治験が極めて多数見られた上位の治療領域において、グラクソ・スミスクライン、
リリー、及びロシュは、表 2 に示す 4 領域のうち 3 領域でトップ 5 の治験依頼者に入っていた。
米国と英国は、依然として、これらの治療領域で治験に利用される国の上位に入るが、自己
免疫/炎症の領域に限り、成功した治験の実施国トップ 5 にポーランドが入っている。治験
の成功は、国の利用頻度となんらかの相関があるかもしれないと考えることは興味深い。自
己免疫/炎症領域での治験の成功率は最も高く、その領域は、治験で極めてよく利用された
トップ 5 の国に東欧の国が入った唯一の治療領域であることから、利用国の選択が治験成功
に影響を与えるかどうかを検討し、他に可能性のある成功の方策を検討するためのケースス
タディに、この領域を使用した。
治験の成功は、国の利用頻度となんら
かの相関があるかもしれないと考える
ことは興味深い。
6
表2. 治療成功率別の上位の治療領域
治療領域
腫瘍
成功率(完了治
験に対する%)
51.9%
(809/1,560)
トップ5の
治験依頼者
56%
(713/1,274)
乳癌
ベバシズマブ
米国
非小細胞性肺がん
エルロチニブ
フランス
セルジーン
非ホジキンリンパ腫
ドセタキセル
ドイツ
リリー
大腸癌
セツキシマブ
英国
ボルテゾミブ
イタリア
多発性骨髄腫
ノバルティス
喘息
インダカテロール
米国
グラクソ・スミス
クライン
関節リウマチ
アダリムマブ
ドイツ
慢性閉塞性肺疾患
トシリズマブ
カナダ
アレルギー性鼻炎
Olodaterol
英国
乾癬
トファシチニブ
ポーランド
ファイザー
疼痛(侵害受容性)
プレガバリン
米国
ジョンソン・エン
ド・ジョンソン
疼痛(神経因性)
パリペリドン
ドイツ
うつ病
アリピプラゾール
カナダ
グラクソ・スミス
クライン
統合失調症
プラミペキソール
フランス
パーキソン病
デュロキセチン
英国
2型糖尿病
シタグリプチン
米国
糖尿病合併症
インスリンデグ
ルデク
ドイツ
メルク
アッヴィ
47.2%
(650/1,376)
トップ5の
実施国
サノフィ
ロシュ
中枢神経系
トップ5の医薬品
ロシュ
グラクソ・スミス
クライン
自己免疫/
炎症
トップ5の疾患
リリー
メルク
代謝
55.1%
(600/1,089)
ブリストル・マイ
ヤーズスクイブ
アストラゼネカ
リリー
ロシュ
ノボ・ノルディ
スク
骨粗しょう症
便秘
肥満
エキセナチド
エポエチンベータ
リナグリプチン
カナダ
英国
スペイン
Source : Trialtrove® and Trialpredict®, August 2013
自己免疫/炎症領域内の疾患レベルで治験成功を評価したところ、2008 年から 2012 年ま
でに成功した治験数が最多であり、かつ全体的な完了治験数も最多であるという点で、喘息、
関節リウマチ及び COPD がトップ 3 の疾患として検出された(図 4)。喘息の治験の成功率
(52%)は、52.6% という全データセットの平均値よりもわずかに低く、この治療領域の平均
値(56%)よりも多少低かった。一方で、関節リウマチと COPD の治験の成功率は 62% を
超えた。国の利用頻度が、成功の方策を考える上で手がかりにならないであろうか。
7
図4. 自己免疫/炎症領域におけるトップ10の疾患(2008年∼2012年)
250
70
その他の完了治験
良好なアウトカムの治験
成功率(完了治験に対する%)
65
60
150
成功率
治験数
200
55
100
50
50
45
40
病
ン
炎
ー
ロ
ク
性
瘍
潰
嚢
胞
性
大
維
線
腸
症
植
移
炎
関
ア
レ
関
ル
節
ギ
リ
ー
骨
性
乾
節
癬
炎
鼻
PD
ウ
CO
マ
喘
チ
息
0
Source : Trialtrove® and Trialpredict®, August 2013
トップ 15 の国に東欧の 4 ヵ国
(ポーランド、ハンガリー、ロシア、ルーマニア)が入っており、
自己免疫/炎症領域では、相対的に東欧の影響がより明白に認められる(図 5)。更に、メキ
シコ及びアルゼンチンがトップ 20 の国に入っているが、これは、地理的拡大が治験成功に
関わっている可能性があることを示唆するエビデンスである。
これらのトップ 20 の国のいずれかが関わった治験における成功率は、この治療領域の平
均値を上回った。韓国 が関わった治験で最高値が見られ、この国が関わった 76% 近くの治
験は成功している。明らかに、単に特定国を臨床試験に含めることが成功につながる保証は
ないが、この国を含めた治験を詳細に検討すると、成功するための方策に手がかりが得られ
るかもしれない。
図5. トップ20の国における自己免疫/炎症領域の治験の成功率(2008年∼2012年)
700
80
その他の完了治験
良好なアウトカムの治験
600
成功率(完了治験に対する%)
75
70
400
65
300
60
200
ン
チ
ン
カ
ゼ
リ
ア
ル
フ
国
ア
韓
南
コ
シ
ン
キ
メ
デ
ー
ア
ェ
ニ
ス
Source : Trialtrove® and Trialpredict®, August 2013
8
ウ
マ
ア
ル
ー
国
リ
和
ラ
ト
オ
ー
ス
共
ダ
ェ
コ
ン
ー
ギ
ラ
オ
チ
ル
ア
ベ
ー
シ
リ
ロ
ガ
ア
ハ
ン
リ
ン
イ
タ
イ
ペ
ス
ス
ン
ン
ラ
ラ
フ
ポ
ー
英
ナ
ツ
カ
イ
米
ド
ド
50
国
0
ダ
55
国
100
成功率
治験数
500
喘息、COPD、関節リウマチは、自己免疫/炎症領域全体のトップ 3 の適応症であるばかり
ではなく、それらは、また、韓国が関与して成功した治験全体の 68% を占めていた。実際、
韓国は、自己免疫/炎症の領域で治験に利用されたトップ 20 の国のうち、3 つの適応症全て
の臨床試験で利用され、それらの成功率が 75% を超えた唯一の国であった(図 6)
。この 3 つ
の適応症で、エストニア及びフィリピンにおける成功率も 75% を超えたが、症例数が少ない
ため、それらの国は解析しなかった。韓国で実施された治験の種類に関して明確にするため
これらの成功率の高かった治験に対して、より詳しい分析を行った。
図6. 喘息、COPD、及び関節リウマチの治験でトップ30に入る国
その他の完了治験
120
100
成功率
90
80
80
70
60
60
50
40
40
20
30
20
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
100
90
120
100
80
70
60
50
成功率
40
30
20
90
100
80
70
60
60
成功率
80
50
40
40
20
30
0
国
ニ
ア
ー
ラ
フ ンド
ィ
リ
ピ
ン
韓
ト
ジ
ス
エ
ー
ュ
ニ
ア
ェ
ー
デ
ン
ク
キ
バ
ロ
ウ
ス
ン
ー
ン
マ
ス
ド
イ
デ
ン
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ラ
リ
ン
ビ
ン
ト
ス
オ
ー
ダ
チ
ン
ロ
コ
コ
ン
ラ
ゼ
ア
ル
カ
チ
ェ
オ
ア
リ
ア
フ
コ
リ
南
シ
ガ
キ
ル
メ
ブ
ア
本
日
ー
リ
ル
タ
ペ
イ
ナ
ス
ン
ラ
フ
ア
イ
ラ
ク
ー
ニ
マ
ウ
ア
リ
ガ
ー
ル
国
シ
ン
英
ロ
ハ
ド
ダ
ナ
カ
ツ
ン
ラ
ー
イ
ポ
米
国
20
ド
COPDの治験数
0
関節リウマチの治験数
成功率
喘息の治験数
100
良好なアウトカムの治験
Source : Trialtrove® and Trialpredict®, August 2013
9
これらの韓国の治験で対象となった薬剤の作用機序の上位には、長時間作用型 β2 刺激薬
(LABA)、長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)
、CD80/CD86 拮抗薬、Jak 阻害薬、
及び TNF- α拮抗薬があり、比較的新規の作用機序の薬剤とともに既知の作用機序の薬剤が
含まれていることがわかる。更に、ベーリンガーインゲルハイム、グラクソ・スミスクライン、
ノバルティス、及びファイザーが、これらの成功した韓国の治験のうち 60% を実施していた。
したがって、既知の薬剤のみ、あるいは単一薬剤の開発プログラムのみで成功に至ったわけ
ではないと考えられる。
韓国が関与した成功した大半の治験は国際共同試験であり、20% のみが韓国に限って実施
された試験であった。これらの国際共同試験では、韓国の他に 70 ヵ国が実施国となってい
るが、そのトップ 20 を図 7 に示す。韓国が関与したこれらの治験のうち、62% には、米国
の治験実施施設も含まれていた。これは、傾向として、大半の治験に米国が含まれるという
既に報告した所見と一致する。全体的なデータセット(図 3)と比較すると、これらの 20 ヵ
国には、より多くの南米、東欧及びアジア太平洋地域の国が含まれており、韓国とともに治
験に利用されていることは興味深い。このような傾向は、より広い地理的地域を含めて国の
選択が行われ、新興地域のこれらの国が次第に治験成功で重要な役割を果たすようになって
いることを示し、成功の方策を示唆している。
韓国が関与した治験に占める%
図7. 韓国が関与した自己免疫/炎症の治験における国の選択の方策
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
ー
ア
ル
リ
ペ
湾
タ
ド
台
ー
リ
ン
イ
イ
ハ
ン
ガ
国
ー
和
共
コ
チ
ェ
ベ
ル
ギ
カ
ン
ア
フ
リ
イ
ル
ス
ペ
南
ア
リ
ラ
ブ
ト
ス
オ
ー
ジ
国
ラ
コ
英
ス
シ
ン
キ
メ
ン
ラ
フ
ド
チ
ン
ン
ゼ
ル
ラ
ア
ポ
ア
ー
シ
ロ
イ
ツ
ダ
ド
ナ
カ
米
国
0%
Source : Trialtrove® and Trialpredict®, August 2013
国の選択を地理的に拡大することは、治験依頼者が採用している方策であり、その方策は
治験の成功と相関があると考えられる。実際に、喘息、COPD、及び関節リウマチに注目し
た場合、成功した治験には、この期間中に完了して成功しなかった治験よりも平均して多数
の国が関与していた(図 8a)。また、成功した試験は、成功しなかった試験よりも 1 治験当
たりの実施施設数が多かった(図 8b)。興味深いことであるが、成功した治験の目標登録者
数は、この期間中に完了して成功しなかった試験と比べて多かったことから、成功した治験
は比較的大規模な試験であったことが示唆される。これらの治験では地理的に拡大した国が
利用され、治験実施施設数が多く、目標登録者数の平均値が高かったにもかかわらず、これ
らの 3 疾患についてこの期間中に完了して成功しなかった治験と比較して、これらの疾患の
成功した治験では平均登録期間が短かった。治験の成功に影響する他の因子を明らかにする
には、さらなる分析が必要である。
10
図8. 喘息、COPD、関節リウマチを対象として、2008年から2012年までに完了し、
成功した治験及び成功しなかった治験における登録関連評価項目の平均値
9
1治験当たりの目標登録者数
600
8
7
6
5
4
3
2
1
0
良好なアウトカムの治験
その他のアウトカムの治験
500
400
300
200
100
0
喘息
1治験当たりで報告された実施施設数の平均値
図8 d
COPD
関節リウマチ
図8 b
80
70
60
50
40
30
20
10
0
喘息
COPD
関節リウマチ
喘息
1治験当たりの登録期間の平均値(ヵ月)
1治験当たりの参加国数の平均値
図8 a
COPD
関節リウマチ
COPD
関節リウマチ
図8 c
20
15
10
5
0
喘息
Source : Trialtrove® and Trialpredict®, August 2013
2008 年から 2012 年までの期間中に完了した治験の成功率は「時の運」よりもわずかに良
好で 52.6% であったが、それは、全体的にみて、偶然の確率をわずかに上回るのみであった。
このような確立は、Michael Hay (BioMedTracker) らが解析を実施し(Hay, M., et al Nature
Biotechnol. 2014 Jan 9, 32(1): 40 - 51)
、Tufts Center for the Study of Drug の最近の解析の中
で報告された、第 I 相の開発段階の医薬品が承認される確率は 10.4% でしかなかったという
医薬品開発の成功率よりも、かなり良好な数値である。医薬品開発コストが増加を続け、新
薬が承認される確率がカジノの勝率よりも低いならば、治験成功の方策を考える上で、治験
成功の確率をより良い方向に向けることは有益であろう。
国の選択は治験成功に影響する要因である可能性があるが、治験デザイン、検討した治療
薬の特性、治験実施施設/治験責任医師の選択も全て、治験成功に影響する可能性があると
考えられ、今後の解析で検討する。そして、このような見識を利用すれば、より良い治験を
デザインして施行することができ、治験の成功率を向上させ、医薬品の承認率を全体的に高
めることができると考えられる。
11
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