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2011 年度 卒業論文 「日本における外国人留学生の雇用」 経営学部経営

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2011 年度 卒業論文 「日本における外国人留学生の雇用」 経営学部経営
2011 年度 卒業論文
「日本における外国人留学生の雇用」
経営学部経営学科
4 年 12 組 29 番
1710080116
文素羅
目次
はじめに ..................................................................... 3
1 研究の背景 ................................................................ 3
2 研究の目的 ................................................................ 3
第1章
日本で働く外国人労働者 ............................................... 4
1 日本における外国人労働者の動向 ............................................ 4
2 日本における外国人留学生の動向 ............................................ 6
第2章
日本企業で働く外国人留学生........................................... 10
1 外国人留学生の就職活動................................................... 10
2 日本で働く外国人留学生................................................... 11
第3章
外国人留学生を雇用する日本企業 ....................................... 19
1 日本企業が外国人留学生を採用する理由 ..................................... 19
2 留学生に期待する将来の役割や留学生に求められる資質 ....................... 20
3 外国人留学生を採用した日本企業 ........................................... 20
第4章
外国人留学生の雇用に関する課題 ....................................... 24
1 変わっていく雇用市場..................................................... 24
2 外国人留学生の雇用に関する課題 ........................................... 25
おわりに .................................................................... 27
2
はじめに
1. 研究の背景
近年、尐子化による労働力人口の減尐により日本国内の労働力人口が年々減尐している。
その中、労働職人口の不足やクローバル化による企業内構造の見直しや FTA・EPA などの協
定により、日本における外国人労働者や外国人留学生の雇用が年々増加している。外国人
の不法滞在や犯罪問題などにより、外国人労働者の流入を巡り外国人労働者の受け入れに
ついて様々な議論がされている中、なぜ外国人労働者、特に外国人留学生の雇用が増加し
ているのだろうか。外国人留学生として日本で就職活動を体験した筆者は、日本における
外国人労働者、特に筆者と同じ立場に立つ外国人留学生の雇用の増加に疑問を持ったため、
外国人留学生の雇用について研究を行う。
2. 研究の目的
外国人による犯罪は平成 17 年に 47,865 件とピークに達し、平成 22 年には 19,809 件と
年々減尐しているものの、まだ発生している。外国人による様々な問題は外国人の日本へ
の流入を厳しくし、就職への道を妨げるが、近年日本で働く外国人労働者数は年々増加の
傾向を見せている。外国人労働者数は平成 22 年に 649,982 人に達し、前年度に比べ 15.5%
増加した。外国人の雇用、特に日本で高等教育を受けた留学生の就職率が年々増加する傾
向を見せる理由はなぜなのか。日本の景気悪化により日本人学生の就職活動も厳しくなり、
まだ外国人への厳しい視線も存在する中、外国人留学生が日本でどのように就職活動を行
い、就職に成功しているのか。また、日本企業は外国人留学生のどのような点をメリット
とし、採用しているのか。この論文では外国人留学生にかかわる様々な資料やアンケート
を基に、日本における外国人留学生の雇用の実態を把握し、紹介していく。
3
第1章
日本で働く外国人労働者
1. 日本における外国人労働者の動向
平成 22 年 10 月末現在、日本における外国人労働者数は 649,982 人であり、前年度に比
べ 15.5%増加した。単純労働者の受け入れについては、日本国民のコンセンサスを踏まえつ
つ、十分慎重に対応することが不可欠ではあるが、日本の経済社会の活性化や一層の国際
化を図る観点から、専門的、技術的分野の外国人労働者の受け入れをより積極的に推進す
る日本政府の外国人労働者対策により、外国人労働者数は年々増加の傾向を見せているの
である。ここでは、日本で働いている外国人労働者の在留資格および外国人労働者の属性
を用い、外国人労働者の動向について説明する。
(1)外国人労働者のカテゴリー1
出入国管理及び難民認定法上、外国人は「就労目的で在留が認められる者」、「身分に基
づき在留する者」、
「特定活動等」、「資格外活動」の4つの形態での就労が可能とされてい
る。この論文ではフルタイムで働く外国人労働者を扱っているため、資格外活動の説明は
省略する。
まず、就労目的で在留が認められる者とは、
「専門的・技術的分野」で働く者を称し、そ
の範囲は産業及び難民生活などに与える影響を総合的に勘案して個々の職種毎に決定され
る。「専門的・技術的分野」に該当する主な在留資格には、技術、人文知識、企業内転勤、
国際業務、技能、教授、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育の11項目に別
れており、外国人労働者は各在留資格に定められた範囲で報酬を受ける活動が可能である。
11項目の在留資格の中で、多くの外国人留学生が卒業後取得する在留資格は、技術、人
文知識、企業内転勤の3項目である。
次に、身分に基づき在留する者とは、定住者(主に日系人)や永住者、日本人の配偶者
などを称し、これらの在留資格を持つ外国人は在留中の活動に制限がないため、様々な分
野で報酬を受ける活動が可能である。
最後に、特定活動等について説明する。特定活動には、技能実習や EPA に基づく外国人
看護師・介護福祉士候補者、外交官等に雇用される家事使用人、ワーキングホリデー等を
称する。特定活動の在留資格で日本に在留する外国人は、個々の許可の内容により報酬を
受ける活動の可否が決定される。
(2)外国人労働者の属性
ここでは、国籍別外国人労働者の割合、在留資格別外国人労働者の割合、産業別外国人
労働者数を紹介し、日本における外国人労働者の属性について説明していく。
1厚生労働省『外国人雇用状況の届出状況』2011.10
4
図2-1 国籍別外国人労働者の割合
中国
86,302人
13.28%
46,221人
7.11%
23,360人
3.59%
116,363人
17.90%
韓国
外国人労働者数
649,975人
287,105人
44.17%
フィリピン
ブラジル
ペルー
61,710人
9.49% 28,921人
4.45%
G8、オールトラリア、ニュー
ジーランド
(出所)厚生労働所『外国人雇用状況の届出状況』平成 22 年度より作成
図 2-1 の国籍別外国人労働者の割合を見ると、中国人が 44.2%で一番多く、その次に日系
人が多いと見られるブラジル、その他となった。筆者の母国である韓国からの外国人労働
者数は 28,921 人と、4.45%を占めている。
図2-2 在留資格別外国人労働者数の割合
103人 0%
110,586人
17%
専門的・技術的分野の在留資
格
特定活動
296,834人
46% 外国人労働者数 123,342人
649,975人
19%
11,026人 2%
108,091人
16%
技能実習
資格外活動
身分に基づく在留資格
不明
(出所)厚生労働所『外国人雇用状況の届出状況』平成 22 年度より作成
次に、図 2-2 の在留資格別外国人労働者数の割合を見ると、身分に基づく在留資格を持
つ外国人労働者数が一番多く、その次に外国人留学生が修得する在留資格である専門的・
技術的分野の在留資格を持つ外国人労働者数が多かった。また、外国人留学生が在学中ア
ルバイトやインターンを目的とし習得する資格外活動が 16%と、3 番目に多い割合を占めて
いることで、外国人留学生が在学中にも日本でアルバイトやインターン活動を行っている
ことが分かる。
5
図2-3 産業別外国人労働者数
製造業
102,608人
16%
情報通信業
259,632人
39%
93,764人 14%
外国人労働者数
649,975人
44,531人 7%
72,289人 11%
24,634人 4%
卸売業、小売業
宿泊業、飲食サービス業
教育、学習支援業
サービス業(他に分類されな
いもの)
その他
62,812人 9%
(出所)厚生労働所『外国人雇用状況の届出状況』平成 22 年度より作成
(注)
「サービス業(他に分類されないもの)」には、建設設計業、デザイン業、法律事務所、労働者派遣業、
ビルメンテナンス業等が含まれる。
最後に図 2-3 の産業別外国人労働者数を見ると、製造業が 39.9%と一番の割合を占め、ま
だ単純労働を行っている労働者が多いことがわかる。また、外国人観光客への接客を含む
宿泊業、飲食サービス業が 11.1%、言語教育を含む教育、学習支援業が 6.9%を占め、外国
語を使う産業分野に従事する外国人労働者も多いことがわかる。
2. 日本における外国人留学生の動向
グローバル化や日本人学生数の減尐に伴い、外国人留学生の入学枠を増やす大学が多く
なっていることや、優秀な外国の人材を積極的に流入する政策を広めている日本政府によ
り、外国人留学生は年々増加している。ここでは外国人留学生の概況や日本への就職を希
望する外国人留学生の推移を基に、日本における外国人留学生の動向について述べていく。
(1)外国人留学生の概況
ここでは日本における留学生数の推移や在学段階別外国人留学生の割合、国籍別外国人
留学生の割合を通じて、現在日本で修学している外国人留学生について説明する。
まず、下記の図 2-4 を参照すると、外国人留学生数は平成 20 年度に 123,829 人とピーク
に達し、年々増加する傾向を見せている。優秀な人材を日本国内に集めるための日本政府
の積極的な外国人流入政策が外国人留学生が年々増加している原因の一つであると考えら
れる。
6
図2-4 日本における留学生数の推移
留学生総数
140,000
123,829
117,302121,812117,927118,498
109,508
95,550
120,000
人数
100,000
80,000
60,000
78,812
51,298 55,755
64,011
40,000
20,000
0
年度
(出所)JASSO『平成 20 年度外国人留学生在籍状況調査結果』2008.10
次に、図 2-5 の国籍別外国人留学生の割合を参照すると、中国人が外国人留学生の約 6
割を占め、その次に韓国人が多くを占めていることが分かる。図 2-1 で中国人が外国人労
働者の約 5 割を占めていることから、中国人留学生は就学後、日本で就職する割合が他国
に比べ高いと考えられる。
図2-5 国籍別外国人留学生の割合
12,602人 10%
中国
2,114人 2%
韓国
12,403人 10%
台湾
5,082人 4%
東南アジア
72,766人 59%
18,862人 15%
ヨーロッパ
その他
(出所)JASSO『平成 20 年度外国人留学生在籍状況調査結果』2008.10
最後に下記の図 2-6 の在学段階別外国人留学生の割合を参照すると、大学・短大・高専
に在学する外国人留学生が半数を占めていて、次に大学院に在学する留学生が約 3 割を占
めている。この図表から、日本の大学で修学する能力を持ち、日本人学生と同様に教育を
受けている外国人留学生が非常に多いことがわかる。
7
図2-6 在学段階別外国人留学生の割合
2,235人 2%
25,753人 21%
32,666人 26%
大学院
大学(学部)・短大・高専
専修学校(専門課程)
準備教育課程
63,175人 51%
(出所)JASSO『平成 20 年度外国人留学生在籍状況調査結果』2008.10
(2)日本への就職を希望する外国人留学生
図2-7 留学生等からの就職目的の申請数等の推移
14,000
11,789
11,410
12,000
10,230
9,034
申請件数(人)
10,000
8,000
6,788
5,820
6,000
4,132
4,000 2,663
2,000
0
2,391
3,0713,039
2,989 2,689
272 82
3,600
8,467
11,040
10,262
9,584
8,272
7,831
4,254
5,264
5,878
申請件数
許可件数
不許可件
数
3,581 3,209 3,778
910 762 1,148 749 646 636
350 551 391 476 556
年度
(出所)法務省入国管理局『平成 22 年における留学生等の日本企業への就職状況について』2011
図 2-7 の通り、外国人留学生の数は、この 10 年でおよそ倍増しており、平成 22 年 5 月 1
日に 141,774 人となった。一方、平成 22 年において、
「留学」または「就学」の在留資格
を有する外国人が日本企業への就職を目的として在留資格変更許可申請を行った件数は
8,467 人にも上り、そのうち 7,831 人が許可されている。この人数は平成 20 年まで増加傾
向にあったものの、平成 21 年からは、景気低迷による採用抑制の影響から減尐している。
上記の資料を通じて、外国人の中でも外国人留学生数は年々増加し、それにつれ卒業後
日本でも就職を希望する外国人留学生も増加していることがわかった。それでは、なぜ外
国人留学生が日本での就職を希望し、就職活動の際、日本人学生に比べ外国人留学生が持
8
つ強みや弱みにはどのようなものがあるのか。また、日本企業は日本人学生を後にし、な
ぜ外国人留学生を採用するのか。次の章では、実際日本で働いている外国人留学生へのイ
ンタビューや外国人留学生を採用している日本企業の情報を通じて、日本における外国人
留学生の雇用の実態についてより詳しく述べていく。
9
第2章
日本企業で働く外国人留学生
1. 外国人留学生の就職活動
日本企業の正社員採用は終身雇用が前提であり、社員一人の生涯賃金は3億とも言われ
ているため、日本企業は新卒採用の際にそれだけの賃金を払うに値する人物か否かを真剣
に見極める。企業側は学生の質を見極めるために、エントリーシートによる書類選考や、
数次にわたる面接、筆記試験など、多くのハードルを課している。日本の新卒採用は他国
比べ、その多くが 10 月から 5 月にかけて集中的に実施されている。就職活動の時期が決め
られている日本の独特な就職事情を知らない留学生は、必要な情報を手に入れることが出
来ず、スタートが遅れ、準備の不十分な状態で選考に臨んでしまい、思うような結果を得
られないケースが多い。そのため、外国人留学生が急増している近年、外国人留学生の就
職活動を支援する情報サイトや支援機構が数多く登場している。ここでは外国人留学生の
就職活動を支援する団体の説明を通じて、外国人留学生がどのような形で就職活動を行っ
ていくのかについて述べていく。
まずは、外国人留学生の就職活動を支援する日本政府について説明する。外国人留学生
の就職活動を支援する日本政府機関には大きく「独立行政法人日本学生新機構」(以下
JASSO)
、
「ハローワーク」
、
「東京外国人雇用サービスセンター」の三つが存在する。
JASSO は奨学金貸与事業や学生生活支援事業、留学生支援事業の三つの事業を通じて、学
生がより良い環境で修学出来るよう、教育環境を整備し、次代の社会を担う人材をより豊
かにするため、国際総合理解の増進に寄与することを目標としている機構である。JASSO は
毎年外国人留学生就活準備セミナーを開催し、各種セミナーや相談コーナーを設けること
で、外国人留学生の就職活動を支援している。また、外国人留学生のための就活ガイドを
発行し、外国人留学生が就職する際必要な情報を提供している。
ハローワークは、全国 550 以上のハローワークや他の付属施設で集めた求人を基に、求
職者に合った仕事が見つかるよう、相談を通じて求職の紹介を行っている。ハローワーク
は東京外国人雇用サービスセンターとの連携を通じて、外国人留学生の採用を行っている
企業を紹介している。また、大学院や大学在学中の留学生は学内就職活動セミナーを通じ
て、ハローワークの求職サービスに登録することが出来るため、日本人学生には提供され
ない就職活動システムを利用することが出来る。
東京外国人雇用サービスセンターは外国人労働者向けに様々な求人情報を提供している。
企業側と外国人留学背側向けにそれぞれ情報を提供し、双方がより効率的に求人・求職情
報を交換出来るように支援している。特に、外国人留学生のために様々な対策セミナーを
開催することで、外国人留学生が就職活動の情報を習得しやすい環境を作っている。また、
東京、新宿、名古屋、大阪などに相談窓口を設けることで、常時就職活動の譲歩を得られ
るように支援している。
次に、就職活動を行う学生が良く利用する情報サイトであるリクナビやマイナビも外国
10
人留学生の就職活動を積極的に支援している。
株式会社リクルートで運営している就職活動支援サイトのリクナビは 2012 年から 2013
年卒業予定外国人留学生向けの就職活動サポートサービスを開始した。リクナビのサービ
スは英語と日本語の二つの言語を使うことで、日本語の習得が未熟な外国人留学生も就職
への情報を得易い環境を作っている。また、このサービスは 3 つのサービスで構成されて
いて、外国人留学生専用情報が便利かつ素早く手に届くようにしている。その 3 つのサー
ビスとは、総合商社や外資系グローバル企業など、国内優良企業からの応募促進メールを
提供する特別案内メールサービス、外国人留学生向けのセミナー情報をサイトやメールで
提供するセミナー情報提供サービス、エントリー・面接・筆記試験などの就職活動スケジ
ュールや内定を獲得した外国人留学生の就職必勝法などをコンテンツとして提供する就職
活動に役立つノウハウ・コンテンツサービスとなっている。このサービスは外国人留学生
ならではの就職活動に関する悩みや不安を解消するためのコンテンツや、外国人留学生を
積極採用している企業情報の提供に特化していることが特徴である。
株式会社マイナビは、2011 年卒業予定学生向けのサービスから『外国人留学生特集』を
開始した。また、2011 年卒業予定の外国人留学生を対象とした就職セミナーを 2010 年 7 月
より定期的に開催しており、2013 年卒業予定の外国人留学生を対象とした就職セミナーも
東京や大阪などで開催し、外国人留学生の就職活動を支援している。マイナビの就職セミ
ナーは、マイカフェ(就職相談コーナー)という外国人留学生の就職活動に関する悩みや
知りたいことについて、同世代のマイナビの外国人社員が相談に乗るコーナーを設けるこ
とで、外国人留学生へのサポート環境を十分に備えていることが特徴である。マイカフェ
は日本語、英語、韓国語、中国語の 4 つの言語に対応しているため、リクナビと同様に日
本語に未熟な外国人留学生の就職へ大変役立つシステムであると考えられる。
上記の就職情報サイトは、日本人学生と土曜のスケジュールで就職活動を行うことは可
能であるが、語学力や情報量の不足から、国内における企業の採用スケジュールや選考フ
ローに上手く乗れないことの多い外国人留学生を支援する役割を持ち、全国の各大学や学
生へのネットワークを活かし、情報収集で出遅れがちな外国人留学生に適した情報やサー
ビスを提供している。また、日本語だけではなく、様々な言語のサービスを提供すること
で、国際的な人材の求人をより効率的にサポートできるようにしている。
2. 日本で働く外国人留学生
ここでは日本で大学を卒業し、現在日本企業で働いている 5 人の外国人労働者へのイン
タビューを通じて、日本における外国人留学生の実態について述べていく。
まずは、筆者がインタビューを取った韓国出身・明治大学卒業生のハ・ウンジさんのイ
ンタビューを見てみよう。
11
問:日本への留学を決心したきっかけは?
答:日本人の親戚がいて子供の頃から日本の文化に触れる機会が多く、自然に興味を持つ
ようになり、日本への留学を決めました。
問:日本での就職理由は?
答:もし卒業してそのまま韓国に帰ってしまったら、もう二度と日本で働けることはでき
ないかも知れないと思ったからです。
問:日本企業で発揮出来るあなたの強み・弱みとは?
答:強みはグローバル感覚です。日本で留学しながら、他の国の留学生とも交流が多く、
異文化理解ができるようになったのが強みです。弱みは日本人でないことです。弱みとは
言えませんが、日本人ではないため、日本人ほど日本語が出来ないことや日本の文化につ
いてまだ知らないところもたくさんあると思います。
問:日本での就職において心掛けたことは?
答:日本語とポジティブな考え方です。やはり、企業では外国人を雇う際に日本語が出来
るかどうかをいちばん見ていると思ったので、尊敬語やイントネーションに心掛けました。
そして、うまくいかなくても常に前向きに考えてきました。
問:現在の勤務先の選択理由と担当業務は?
答:貿易関係の会社で働いていますが、私が持っている才能(言語能力とグローバル感覚)
を一番発揮できるところだと考えました。そして、貿易関係の仕事は非常に将来性が高い
と考えたからです。
問:現在働く中で感じる満足・不満足は?
答:韓国の企業とやり取りが多いのですが、たまに日本語も英語も話せない方は日本人ス
タッフとはコミュニケーションが取れないため、私が対応しています。その時、自分の能
力を発揮されている気がしてすごくやりがいを感じます。不満足は学生時代とは違って、
自分の時間が尐ないところです。
問:日本企業に求めることは?
答:外国人にもっとチャンスを与えてほしいです。
問:後輩へアドバイスするなら?
答:落ち込まないで自信を持って就職活動を続けてほしいです。そして、企業の知名度だ
けを重視しないで、自分が本当にやりたいことは何か真剣に考えてほしいです。
ハさんのインタビューを見ると、ハさんは自身のグローバル感覚や多国語を話せる外国
人ならではの長所を生かした仕事をしていることがわかる。また、ハさんの弱みである日
本語や日本の文化への理解を強みでカバーし、ポジティブな考え方をすることで、自分の
手で働きやすい環境を作っている。
ここからは 2013 年外国人留学生のための就活ガイドに紹介されている 4 つのインタビュ
12
ーを通じて、外国人留学生の雇用に迫っていく。
まずは、韓国出身・中央大学大学院卒業生のイ・ヨンホさんのインタビューを見てみよ
う。
問:日本での就職理由は?2
答:日本に来て学んだ日本のマナー、習慣、人間関係、考え方などを実際の生活にいかし、
日本での生活の中でさらに勉強したいと考えていました。経済的な面でも日本がいいと思
いましたので日本での就職を決めました。
問:現在の勤務先の選択理由と担当業務は?
答:もともと不動産に興味があり大学の卒業論文は土地制度について書きましたし、日本
の不動産の制度、契約の仕組みなども勉強したかったので不動産業界を希望しました。
普通の人の生活は衣・食・住が基本です。私が留学した際、衣・食はお金があれば買え
ましたが、住は保証人、大家さんの審査などでなかなか得ることができませんでした。そ
こで、私が不動産会社に勤めれば後輩に私の留学生活より尐しでも良い生活環境を提供す
ることができると思い、現在の会社を選択しました。
今は、大家さんと入居者との賃貸契約を担当しています。留学生にとって日本の賃貸契
約は、自国と違うことがたくさんあります。マナー、生活習慣、ライフラインなどを説明
し、留学生が日本の生活を楽しめるようにお手伝いしています。
問:企業への自己アピールは?
答:外国人が入居する際、賃貸契約のときに起こるトラブルを、語学力をいかして解決で
きる点をアピールしました。大家さんは私を通じて外国人の入居者へ意思を伝えることが
でき、入居者も私を通じて自分の意思を誤解なく大家さんへ伝えることができるので安心
です。これが両者の満足につながることもアピールしました。
問:就職活動開始時期と応募企業数は?
答:博士前期課程を卒業して就職活動を始めました。4 月中旬からでした。50 社くらいエ
ントリーして説明会に行きました。
問:具体的な就職活動内容は?
答: マイナビ、リクナビ、日経就職ナビや、大学の就職センターも利用しました。
問:事前準備や企業研究はどのような方法で行ったのか?
答:ホームページと会社説明会に参加して、その資料を中心に調べました。自分と会社を
分析し、どのように会社に貢献できるか、その会社で私はどのような役割を果たせるかに
ついて考えました。私が果たせる役割を採用担当者に伝えられるような書類を作成するの
が大変でした。
問:エントリーシートや履歴書はどのような方法で作成したのか?
2
JASSO 著『2013 年外国人留学生のための就活ガイド』2012 62P
13
答:アピール方法を工夫しました。また、この会社で働きたいという強い意思が表現でき
ているかをよく確認しました。日本語は、日本人の友人に確認してもらいました。
問:面接の準備はどのように行ったのか?
答:自己紹介、志望動機、将来の夢、長所、短所などについて質問されました。とても緊
張しましたが、私が考えていることをすべて表現するように心がけました。会話では、発
音しやすく相手も理解しやすいような言葉を選びました。
問:後輩へアドバイスをするなら?
答:一生懸命頑張って死ぬほど大変なのに、そこからさらにもう一歩踏み出すことは想像
するだけでも大変なことです。大変なところで一歩踏み出すか踏み出さないかは自分次第
ですが、踏み出す人と踏み出さない人とでは、その後で大きな差が出ると思います。
イさんのインタビューを見ると、ハさんと同じく、語学力をアピールしながら就職活動
を行い、現在も外国人の生活にかかわる仕事を担当している。イさんの場合、就職活動時
に日本人学生と同じく、就職活動をサポートする情報サイトを利用したが、自己アピール
時は、多国語を話せることや、日本人学生より自身のある長所をアピールし、就職活動を
終えている。
次はロシア出身・筑波大学大学院卒業生のニコロワ・タチアナさんのインタビューを見
てみよう。
問:日本での就職理由は?3
答:元々日本に興味がありました。日本で学んだ知識や日本語を失いたくないので、日本
での就職を希望しました。
問:現在の勤務先の選択理由と担当業務は?
答:弊社では輸出入コンサルティング、中古医療機器販売の業務を行っています。私は翻
訳、通訳、海外取引先との連絡、またそれに伴う書類作成や国内企業との連絡などを主に
行っています。学生時代に翻訳や通訳をした経験があります。その経験が生かせると思い、
現在の勤め先を選択しました。
自分の国と違うビジネスのやり方を学ぶことができます。また、毎日日本語の勉強がで
きることも日本で就職してよかったと思います。
問:企業への自己アピールは?
答:医療分野において通訳・翻訳の経験を持っている点をアピールしました。
問:就職活動開始時期と応募企業数は?
答:博士課程の 1 年生(2010 年 4 月)からです。企業は約 10 社、大学や研究機関は 30 以
上にエントリーしました。
問:具体的な就職活動内容は?
3 JASSO 著『2013 年外国人留学生のための就活ガイド』2012 P63
14
答:利用したサイトは JREC-IN、Career Cross、Gaijin Pot Jobs、日経就職ナビ、b-cause、
翼インターナショナル、Partner などです。また、A-vision や Hiwork といった会社にも
登録しました。
問:事前準備や企業研究はどのような方法で行ったのか?
答:企業のホームページです。
日本語での筆記試験の対策が大変でした。
日本人の学生よりも年齢が上なので、不利であると感じました。また、私は外国人であり、
留学生には珍しい美術を専攻していました。そのため、私の専門知識を生かせる職種は、
日本では非常に限られていると感じました。
問:エントリーシートや履歴書はどのような方法で作成したのか?
答:特に自己アピールや志望動機の書き方に注意しました。会社が求める人材がわからな
い場合は、自分の特技や希望をはっきり書くようにしました。
問:面接の準備はどのように行ったのか?
答:注意した点は、自信を持って、大きな声で答えることです。主観的な意見かもしれま
せんが、私にとっては難しいことでした。学歴や職歴、経験だけではなく、ロシアの習慣
やロシア人の性格についても質問されたことに、とても驚きました。
問:後輩へアドバイスをするなら?
答:日本語を学ぶことが一番重要だと思います。たとえ日本語能力試験の 1 級、2 級に合
格しても、それで終わりではありません。周りの日本人の言い方をよく聞いて、覚えて、
毎日努力してみてください。そうすると、外国人の弱点である日本語力は、あなたの強み
になるでしょう。
ニコロワさんの場合、今まで述べてきた外国人労働者とは違って、ヨーロッパ出身であ
ることや現役学生との年齢の差を克服して就職活動に成功し、日本で働いている。そのた
め、他学生とは就職活動時に利用する情報サイトの種類も違うし、心掛けていたことにも
差が見られる。
次は、中国出身・神奈川大学大学院卒業生の左芝慧(サ・シゲイ)さんのインタビュー
を見てみよう。
問:日本での就職理由は?4
答:日本の大学で学んだ理論知識を日本の企業に実践したいと思い、日本で就職すること
を希望しました。
問:現在の勤務先の選択理由と担当業務は?
答:大学院にて「グローバル企業における人的資源管理」を研究してきたので、人材サー
ビス企業に勤めることが一番だと思ったからです。
4 JASSO 著『2013 年外国人留学生のための就活ガイド』2012 P61
15
弊社は人材派遣会社であり、テクニカルサポート(技術開発・設計など)
、オフィスサポー
ト(一般事務、翻訳など)及びコンサルティング(教育研修、外国人雇用に関するサポー
トなど)を行っています。私は人材開発室に所属し、人材採用、社員教育研修及び外国人
雇用に関するコンサルティング業務を担当しております。
日本で働いてよかったと思うことは、スキルアップの時間と機会を十分作って頂いたこと
です。
問:企業への自己アピールは?
答:留学期間に学んだ専門知識を企業の発展に生かすことができるとアピールしました。
そして入社後に担当したい業務を自ら伝え、その理由を十分アピールしました。
問:就職活動開始時期と応募企業数は?
答:大学院へ入学してからです。就職活動のための情報収集は、自分の日課になりました。
応募したのは 2 社です。
問:具体的な就職活動内容は?
答: 就職活動のためのサイトを利用しました。また、奨学金をもらっていた財団からの求
人情報も参考にしました。
問:事前準備や企業研究はどのような方法で行ったのか?
答:同じゼミの日本人学生から情報収集しました。そして常に指導教官に、進路について
相談しました。就職活動のスケジュールを作ることが一番難しかったです。企業は本当に
留学生を採用したいか、はっきりと分からない部分があり戸惑いました。
問:エントリーシートや履歴書はどのような方法で作成したのか?
答:職務経歴書は職務経験のほかにも、業績をはっきり書いたほうがいいと思います。
問:面接の準備はどのように行ったのか?
答:誠実な態度で正直に答えるように心がけました。
・日本でどのぐらい生活したいですか。いつか帰国する予定がありますか。
・5 年後の自分像を話してください。という質問をされました。
問:後輩へアドバイスをするなら?
答:夢を諦めず、いつでも前向きに頑張ってください。
サさんのインタビューを見ると、他学生とは違って、外国語能力をアピールするのでは
なく、専門知識や業績をアピールし、それを活かしながら働いている。また、日本人学生
との情報共有を通じて、着実に就職の準備をしていたことも、他学生に比べ、就職活動を
スムーズに行えたと考えられる。
最後に、中国出身・大阪大学卒業生の孫立超(ソン・リツチョウ)さんのインタビュー
を見てみよう。
16
問:日本での就職理由は?5
答:日本のモノづくり技術だけでなく、日本会社の運営、管理、プロジェクトマネジメン
トを学びたいからです。また、日本での生活を通して、異文化体験もしたいと考えていま
す。
問:現在の勤務先の選択理由と担当業務は?
答:私は化学メーカーへの就職を目指していました。住友ケミカルエンジニアリング株式
会社は化学プラント業界でのトップ企業で、優れた技術を持っていますし、海外へも積極
的に展開しているので、魅力を感じていたからです。
事業内容は化学プラントを中心とした化学メーカーで、具体的には化学プラントの設計開
発をしています。
問:企業への自己アピールは?
答:来日した頃は日本語が話せませんでしたが、努力した結果、日本語で学会発表ができ
るまでになりました。この経験を踏まえて、私はどんなことでも向上心を持って積極的な
行動があれば実現できること、また今後も困難を乗り越えてさまざまなことに挑戦する自
信があることをアピールしました。
問:就職活動開始時期と応募企業数は?
答:2010 年 2 月から始めて、15 社くらい応募しました。
問:具体的な就職活動内容は?
答: 採用情報を手に入れることが重要だと思います。日本人学生がよく使う「リクナビ」
や「マイナビ」などを利用しました。留学生に対する就職サイトも活用しました。例えば
JASSO、IFSA のホームページの就職活動情報をよく見ていました。また、所属大学で開催
される就職イベントを活用すれば、その大学だけの情報を得ることができます。
筆記試験は、早めに準備することが必要です。SPI テストの問題集をしっかりやってくだ
さい。
問:事前準備や企業研究はどのような方法で行ったのか?
答:会社説明会です。説明会に行く前に、その会社のホームページをチェックしておけば、
関心があることについて質問できます。説明会において、その会社の雰囲気などもわかり
ます。そのため、自分の性格に合うかどうかが分かると思います。また、他の人が書いた
就職活動体験の日記を参考にしました。その会社の人事の方がどのような質問をするかが
よくわかりました。
問:エントリーシートや履歴書はどのような方法で作成したのか?
答:自分の長所、経験、志望動機などを具体的な例を交えて説明しました。志望動機はし
っかり考えなければなりません。そして自分の長所及び経験(大学で頑張ったこと)を十
分にアピールしました。その内容が将来の業務に関係があれば、説得力があると思ったか
らです。
5 JASSO 著『2013 年外国人留学生のための就活ガイド』2012 P64
17
問:面接の準備はどのように行ったのか?
答:自信をもって、元気な返事することです。質問が分からない時はもう一度聞いてくだ
さい。また、一番行きたい会社の面接を受ける前に、同じ業種の会社の面接に参加するこ
とで、面接の雰囲気に慣れることができます。何度も練習することが必要ですが、答えを
暗記しなくてもいいです。正直に答えることが重要です。
面接を受けた後は次回の面接の準備のために、聞かれた項目などのメモをとるといいです。
問:後輩へアドバイスをするなら?
答:
「人間万事塞翁が馬」という言葉の通り、幸不幸は前もって知ることができません。自
信を持って取り組めば、いい結果が生まれます。
ソンさんのインタビューを見ると、ソンさんは自身が入りたい企業を目標に就職活動を
行うことで、モチベーションを上げることが出来、就職活動もその後の労働もスムーズに
行えたことが分かる。また、就職活動の情報サイトはもちろん、学内セミナーなどにも参
加することで、自ら就職活動への扉を開いたと考えられる。
上記の 5 件のインタビューを通じて、外国人留学生が日本での就職を決心する理由は、
日本に興味があり、日本で身につけた日本語や知識を活かしていくためであることが分か
った。外国人留学生が就職活動を行う際利用しているツールとしては、この論文でも取り
上げている就職情報サイトが主である。外国人留学生の勤務業界や業務に関しては、勤務
先を貿易会社やグローバル企業としていることや、語学能力を活かせる業務を担当してい
ることから、国際業務に多くかかわっていることがわかった。就職活動時に注意している
ことに、外国人留学生が持つ弱みとも言える日本語や日本文化への理解などが挙げられた
ことから、就職活動を行う際言語に関する悩みを持つ外国人留学生が多いと見られる。最
後に、外国人留学生の共通点は、難関にぶつかっても諦めずに、前進する性格や常に向上
心を持って弱みである日本語力を上げていく所であると考えられる。
18
第3章
外国人留学生を雇用する日本企業
ビジネスマーケットを海外にシフトさせ、語学力の高さや海外配属ニーズが高まる一方、
バイタリティや積極性を持ち合わせたポテンシャルの高い優秀な人材確保の必要性から、
外国人留学生の採用ニーズが高まっている。今年 10 月に発表した、『2012 年卒マイナビ企
業新卒内定状況』では、2012 年卒で外国人留学生を採用した企業が 10.7%(上場企業では
27.1%)
であったが、
2013 年卒は採用する企業や検討中の企業が 32.8%
(上場企業では 58.6%)
となっており、採用に至る企業の割合は 2012 年卒採用時と比較し、増加することが予定さ
れる6。厳しい景気悪化の中、就職する外国人留学生数が 2 年連続減尐した中、外国人留学
生を採用する企業が増加している理由とは何なのか。ここでは、日本企業が留学生を採用
する理由や留学生に求める資質などを基に、外国人留学生を雇用する日本企業について述
べていく。
1. 日本企業が外国人留学生を採用する理由
図表 3-1 日本企業が留学生を採用する理由
国籍に関係なく優秀な人材を確保するため
65.3%
事業の国際化に資するため
37.1%
職務上、外国語の使用が必要なため
36.4%
外国人ならではの技能・発想を採り入れるため
9.4%
日本では高度な人材が集まらないため
3.8%
外国人の方が人件費コストを低く抑えられるため
0.7%
その他
5.7%
特に理由はない
5.5%
(出所)独立行政法人労働政策研究・研修機構「日本企業における留学生の就労に関する調査」
(2009 年 6
月)より
採用実績のある企業に留学生の採用理由を聞いたところ、図表 3-1 を参照すると、「国籍
に関係なく優秀な人材を確保するため」という回答が最も多くなっている。次いで、
「事業
の国際化に資するため」、
「業務上、外国語の使用が必要なため」との回答も多く、ダイバ
ーシティ戦略や国際化に対応した理由となっている。
6株式会社マイナビ:『2012
年卒マイナビ企業新卒内定状況調査』2012
19
2. 留学生に期待する将来の役割や留学生に求められる資質
図表 3-2 を参照すると、外国人の特性を生かした採用理由を持っている企業や海外展開
の程度が高い企業以外は、外国人留学生を日本人社員と同様に考えている企業が約半数で
ある。図表 3-3 を見ても、留学生に「報告書やビジネスレターなどの文書を作成できるレ
ベル」の日本語を求めている企業が 68.8%と、約 7 割を占めている。つまり、日本企業は外
国人留学生に日本人学生と同じレベルの仕事能力や言語能力を求めていることが分かる。
図表 3-2 留学生に期待する将来の役割
一般の日本人社員と同様に考えている
48.9%
海外との取引を担う専門人材
19.3%
高度な技能・技術を生かす専門人材
15.5%
海外の現地法人の経営幹部
9.8%
会社・会社グループ全体の経営を担う経営幹部
3.0%
その他
1.1%
無回答
2.3%
(出所)独立行政法人労働政策研究・研修機構「日本企業における留学生の就労に関する調査」
(2009 年
6 月)より
図表 3-3 留学生に求められる日本語力
報告書やビジネスレターなどの文書を作成できるレベル
68.8%
ビジネス上のやり取りができるレベル
26.2%
簡単な日常会話ができるレベル
3.1%
日本語はほとんど必要ない
0.1%
無回答
1.7%
(出所)独立行政法人労働政策研究・研修機構「日本企業における留学生の就労に関する調査」
(2009 年
6 月)より
3. 外国人留学生を採用した日本企業
(1)楽天株式会社の外国人の採用・雇用
楽天株式会社では、社内会議の英語公用語化を版票してから大きな注目を集めることと
なっている。実際、楽天では 2012 年に日常会話を含むすべての会話の英語化を図ろうとし
ている。
楽天の 2011 年度の新卒採用は、全体数 469 名で、そのうち外国人は 76 名となっている。
20
楽天のこれまでの留学生の採用実績を見ると、2008 年は 168 名中 3 名が外国人留学生であ
ったが、2009 年では、309 名中 15 名が外国人留学生となり、そして 2010 年では、398 名中
55 名が外国人留学生となっており、毎年外国人留学生の日本における採用が拡大している。
楽天では 2013 年までに、世界 27 カ国の地域で楽天のサービスを提供する世界戦略を打
ち出している。そして、楽天では国際的な経営展開を 2008 年より 2010 年にかけて行った。
国際経営展開のもとに楽天では、ここ数年積極的に外国人留学生や現地採用を行っている。
楽天のグローバル人材は韓国のサムスンをモデルにしており、日本において採用した外国
人留学生も、現地採用したそうも、1 回日本において研修・勤務を経験し、そのあと世界中
にグローバル配置される形となる。
海外マーケットでの成功が今後世界ナンバーワンインターネット起業を目指す楽天にと
って重要である。楽天はその中でもアジア市場を切り口として海外マーケットへの展開を
進めており、中国人やインド人の留学生の採用を積極的に行っている。
外国人技術者の採用担当をしている楽天の執行役員は、国別に一般的な性格が違うため、
採用時には各国別にこのなる採用基準を持つことで、人物像のバランスをとれるように心
がけていると話した。
楽天では、多様な人材をまとめる人事制度づくりを行っている。具体的には、社員の意
識調査を行いそれを基に人事の基本方針として「Keep Growing 成長する人、成長する会社」
を確立し、評価制度などの人事制度の改革を行っている。評価制度の改革としては、パフ
ォーマンスの評価だけではなく、ビヘイビア評価やプロセス評価を導入し、仕事の進め方
や能力が高まればよいパフォーマンスが出るという考え方から、発揮能力も評価する評価
制度への転換を行っている。
また、多様な人材をまとめる経営理念・企業文化づくりを行っている。その具体的な楽
天のコンセプトとしては、
「楽天の成功の 5 つのコンセプト」と「楽天のグループコンセプ
ト」がある。楽天の成功の 5 つのコンセプトとしては、①常に改善、常に前進、②
Professionalism の徹底、③仮説→実行→検証→仕組化、④顧客満足の最大化、⑤スピー
ド!!スピード!!スピード!!である。楽天グループ・ブランドコンセプトについては、
大義名分・品性高潔・用意周到・新年不抜・一致団結となっている。この楽天グループの
世界共通のコンセプトに共鳴する人であれば、人種、性別、年齢を超えて、楽天に入社し
てもらい、共に経営に参画してもらいたいとしている。
(2)パナソニックの外国人の採用・雇用
パナソニックでは 2003 年に「グループ採用センター」と立ち上げ、従来世界 200 社の現
地法人で個別に採用を行っていた現地採用を、世界 5 拠点のリクルートセンターで一括採
用を行うようにしている。パナソニックでは、BRICS とベトナムのみならず、メキシコ、イ
ンドネシア、ナイジェリア、トルコ、サウジアラビア、バルカン諸国への事業展開も積極
的に行う予定であり、それら各国の現地マーケティング戦略を強化するためにも、将来の
元気幹部社員となる人材の採用を世界 5 拠点のリクルートセンターで一括採用することを
21
構想している。
パナソニックでは、世界共通のスクリーンメソッドを開発し、採用面接の際に複数の質
問で相手の価値観を見極め、2011 年から世界 5 拠点での人事の採否のガイドラインとした。
しかし、スクリーンメソッドに沿い、パナソニックらしい人材を採用しても、外国人留学
生の場合、異文化不適応などの様々な理由から早期に辞める傾向が高かった。そのため、
パナソニックでは、入社後すぐに上司が数年先までの担当業務を考えて、
「外国人社員育成
計画書」を作成し、それを外国人従業員本人に見せて数年後までの育成方針について話し
合うこととなっている。また、海外経験などがあるメンターを決め、直属の上司に言えな
い相談を受け付ける制度も設けている。そして 2 年目には、グローバル採用チームのメン
バーが外国人社員全員と 1 対 1 で話す「2 年目面談」を実施し、上司が外国人社員育成の方
針を守っているかを確認すると同時に、仕事や生活の問題も聞くようにしている。こうし
た外国人社員育成施策の実施後、施策導入前には入社 3 年以内で約 3 割が辞めていた外国
人社員の離職率が半減しているという。
(3)小売・外食企業の外国人の採用・雇用の活性化
日本では、将来の尐子高齢化による労働力不足による外国人労働者の利用や縮小する日
本国内の市場での成長の限界から新強国への海外展開を睨んで、小売り・外食産業の日本
企業において積極的に外国人留学生の採用を行う企業が見られるようになってきた。
例えば、ローソンでは、2008 年 4 月より外国人留学生を社員として採用し、全国のロー
ソンに店長代理としての業務に就かせている。同署の留学生の社員への採用は、増え続け
る外国人留学生のアルバイトへの対応という意味があった。しかし、外国人社員の誕生に
よって、今後違いのある店舗や商品開発を行う上で、価値観の異なる人材の採用によって、
新たな気付きが生まれる点が重要である点に気が付き始め、2009 年 4 月には、40 人の外国
人を採用している。
ニトリホールディングスでは、日本の尐子化を睨んで、2006 年度から毎年 10 人前後の外
国人留学生の採用を行っている。ニトリでは、知識や技術の習得に大変熱心な外国人留学
生を採用することは組織活性化であると考えている。毎年業績が好調なニトリには、優秀
な日本人学生が集まる半面、受け身の姿勢の学生が増えており、その点、知識や技術の習
得に大変熱心な外国人留学生を採用することは、日本人従業員の若手に大きな刺激を与え
ると感じている。
また、小売り大手のドンキホーテも、2011 年度の総合職の新卒採用の内定者 142 人うち
58 人を外国人留学生枠として採用した。ドンキホーテの外国人留学生の大量採用は、2013
年以降の中国展開をにらんだものである。特に、2011 年のドンキホーテの新卒募集では、
中国事業幹部候補生募集を明確に打ち出したことによって、2000 人以上の外国人留学生の
募集が集まり、その中から優秀とみなされた 50 人が内定することとなったのである。内定
を受けた 50 人はまず、日本の店舗に配属され、業績競争を行い、その結果を基に中国への
新事業展開の経営幹部として移動されることとなる予定である。ドンキホーテの人事制度
22
は、実力主義・業績主義の傾向が強く、人種にかかわらず高い業績を示せば、高い評価を
受けられる仕組みとなっているため、外国人留学生にとっては魅力であると同時に、ドン
キホーテの経営者にとっては人事制度を最大に生かす人材を採用できると考えられる。
この章では日本で実際働いている外国人留学生や外国人留学生を雇用した経験のある企
業のデータを通じて、これまでの日本における外国人留学生の雇用の実態について詳しく
述べた。それでは、この先の外国人留学生の雇用などのような形で変化していくのか。ま
た、外国人留学生の雇用が多く行われることにより生まれる課題にはどのようなものがあ
るのか。次の章では、外国人留学生の雇用に関する課題について述べていく。
23
第4章
外国人留学生の雇用に関する課題
第 1 章でも述べたように、外国人留学生は就職活動の際日本人留学生に比べ、情報への
アプローチが遅く、期待を満たさない結果を残す学生も尐なくない。筆者はその原因が外
国人留学生をグローバル人材と育てていく任務を果たしている教育機関にあると考えた。
なぜなら、各教育機関が入学直後から将来の進路・就職を見据えたキャリア教育や留学生
の就職指導を行えば、外国人留学生の就職活動の環境が整備され、就職活動への準備不足
が解消されることで、就職活動をする際に日本人留学生との格差がなくなると思ったから
である。そのためここでは、変わっていく雇用市場の中で、各教育機関がどのようなキャ
リア教育を行い、指導すればいいのかについて述べていく。
1. 変わっていく雇用市場
労働のグローバリゼーションは世界の労働市場を大きく変えた。労働のグローバリゼー
ションには、外国人労働者・移民労働者、さらには自国民を低賃金労働者として利用する
側面と、優れた科学者・IT 技術者などの頭脳を世界中から自国へ集めるという 2 つの側面
がある。このような傾向は、これまでも資本主義システムの原理として以前からもあった
傾向であるが、冷戦終結後、東欧の社会主義国が崩壊し、世界全体を資本主地システムが
覆うようになり、グローバル化が展開するようになって、より顕著に現れるようになって
きた。その端的な現れは、資本の論理が世界で進行し、先進国、途上国を問わず、世界規
模での富裕層と貧困層の二極化が進行してきたことからも見てとれよう。労働のグローバ
リゼーションをもっとも積極的に展開してきたのは、アメリカであり、多くの移民労働者
の受け入れを建国当初から進めると共に、世界から優秀な頭脳を集めてきた。また、ヨー
ロッパにおいても、労働力不足を低賃金の移民労働者で補うという政策から優れた科学
者・技術者などの頭脳を世界中からヨーロッパへ集めるという政策へ転換している。同じ
くアジアにおいても、中国や台湾がテクノパークをつくり、自国の頭脳を集中化させる政
策を取っている。
日本の場合、尐子高齢化の急速な進行と円高を背景としたデフレ経済の中で、いずれ3K
などの生産労働者のみならず多数の低賃金労働に外国人労働者を必要とすると同時に、国
際競争圧力から優れた科学者・IT 技術者・医師や優秀な留学生などの頭脳労働者を世界中
から日本へ集めるという必要性も他の先進資本主義国以上に高まっている。そのため、世
界から優秀な研究者、技術者、外国人留学生を集めることが日本の労働市場の大きな課題
となっている。2002 年度から始まった 21 世紀 COE プログラムでも、世界からトップクラス
の研究者を招待し、日本の大学を世界最高水準の研究教育拠点にすることが目標とされて
いる。また、日本政府骨太方針と称している「経済財政運営と構造改革における基本方針
2006」では、世界から優秀な研究者、技術者、外国人留学生を集めることが、日本の労働
生産性を向上させ、日本の尐子高齢化時代の中でも、成長路線を継続するための方策の一
24
つとして位置付けられている。7つまり、優秀な外国人労働者や留学生の流入は今後大幅に
増加し、それにつれ国境に関係なく働く人材も増えていくと考えられる。
2. 外国人留学生の雇用に関する課題
(1) 明治大学の事例
筆者が所属している明治大学では、様々なキャリア教育を用意し、学生がよりスムーズ
に就職活動を行えるようにサポートしている。しかし、そのほとんどは大学 3 年生時から
行われるものであり、日本の独特な就職活動文化を知らない外国人留学生にとっては不十
分なものであると考えた。その例として、就職活動時必修である自己分析や自己アピール
は就職活動時まで行ってきた一連の大学生活の中から、学生が自分自身の長女をアピール
できる出来事を探すことから始まる。しかし、外国人留学生の場合、この仕組みを知らな
い人が多いため、3 年生の後期からキャリアセンターを利用しても、それまで積み重ねてき
たものがない人は、スムーズに就職活動を行うことが出来なくなってしまう。また、敬語
や日本企業へのマナーなど、自然と身につくまで時間がかかるものは、3 年生の後期から学
ぶには無理があると考えられる。そのため、明治大学のキャリアセンターを利用し、その
プログラムを体験した事のある筆者は、外国人留学生と日本人の就職活動の支援は異なる
時期や内容で展開していくことで、より良い結果を出せるのではないかと考えた。例えば、
外国人留学生の必修単位となる日本語の授業で、就職活動に役立つ日本語教育を行ったり、
日本のマナーを身につけられる授業を必修科目として設置するなど、外国人留学生が大学
入学時から日本での就職への対策を立てられるようなプログラムを設けることが明治大学
の課題であると考えた。
(2) キャリア教育
各教育機関は入学直後から将来の進路・就職を見据えたキャリア教育を行うための計画
を具体化し、海外を含む多彩なインターンシップ先の開拓と準備教育プログラムの単位化
を行う必要がある。その一環として、企業や団体の第一線で活躍している人材を講師と招
聘することで、学生が就業観の形成やキャリア形成目標を確立しやすくなる。また、キャ
リア支援室では、学生の個人カルテを作成し、学生一人ひとりの進路・就職希望や言語能
力、習得した資格などを入学時から時系列にデータを管理することで、学期ごとにアンケ
ートや面談を実施し、より効率的に就職活動を支援することが出来る。その他にも、外国
人留学生自らが企画・運営する就職活動のサークルを新設することで、支援することで、
国別、日本人学生・外国人留学生別に学生グループを組織化し、日本の就職前線の現状や
外国人留学生の就職などの分析を通じて、学生同士の情報交換を促すことも出来る。
(2)外国人留学生の就職指導
各教育機関は大学内で募集希望企業が会社説明会や採用選考を行うオンキャンパス・リ
7守屋貴司著『日本の外国人留学生・労働者と雇用問題』晃洋書房
25
2011 より引用
クルーティングを積極的に行う必要がある。日本人学生より情報へのアプローチが遅い外
国人留学生も、オンキャンパス・リクルーティングなら、就職活動をより効率的に行うこ
とが出来る。また、キャリア支援室では窓口での対応やメール、ウェブでのコミュニケー
ションを通じて、学生と出来るだけ近い距離で、就職活動に対する問題についてきめ細や
かな対応を行うべきである。その他にも各教育機関は、入国管理局との信頼関係構築に力
を入れることで、外国人留学生の就職指導に欠かせないポイントとなってくる在留資格の
変更申請手続きについて随時指導し、日本企業に内定した外国人留学生全員が在留資格変
更の許可を得られるようにする必要がある。
26
おわりに
これまで日本における外国人留学生の雇用について述べてきた。この論文では、実際日
本で働いている外国人留学生や、外国人留学生の雇用を子なっている企業の実例を通じて、
近年盛んでいる外国人留学生の雇用の実態を研究している。筆者も日本で就職活動を行っ
た外国人留学生として、この論文を作成しながら、日本での就職活動についてより深く知
ることが出来たし、筆者自身の就職活動について反省するきっかけにもなった。
2011 年 3 月 11 日に発生した被害日本大震災により、一時的に外国人が日本を離れること
もあったが、マイナビによると、震災の影響にもかかわらず、留学生の約 7 割が日本に留
まっていたという。
特に大学 4 年生や大学院 2 年生の日本での就職や卒業への意志は固く、
卒業の意思については、ほぼ全員が卒業する予定、就職意思については「もともと日本で
就職するつもりだったし、今後も日本で就職したい」が全体で 90%を超えた。震災の影響で
卒業・就職を諦める割合は、国籍を問わず低いと言えそうである。また「もともと日本以
外で就職するつもりだったが、今後は日本で就職したい」という学生が東日本では全体よ
りも高い 8.3%おり、震災の結果、日本の良さが再認識できた、覚悟が固まったという学生
も一定数いると考えられる。
円高や尐子高齢化による日本国内市場の縮小や将来の労働力不足を背景とした海外市場
への急速なシフトや企業のグローバル化などにより、日本政府・企業側が外国人留学生の
雇用を促し、積極的に行っていることと、日本での就職を強く希望する外国人留学生の固
い意志が結合し、この先も日本における外国人留学生は増加していくと思われる。外国人
留学生は計画的な就職プランを用意し、日本人学生と同等に就職活動を行えるよう心掛け
るべきであり、日本政府や各教育機関は外国人留学生がより就職活動を行いやすいような
環境作りに力を入れるべきである。また、日本企業は採用後のキャリアプランを用意する
ことで、外国人留学生が長期的にその能力を活かせるような制度を作らねばならない
27
〔参考文献〕
警察庁刑事局組織犯罪対策部国際捜査管理部『来日外国人犯罪の検挙状況』2011.8
厚生労働省『外国人雇用状況の届出状況』2011.10
外務省『第 9 次雇用対策基本計画』1999.8
JASSO『平成 20 年度外国人留学生在籍状況調査結果』2008.10
JASSO『2013 年外国人留学生のための就活ガイド』2012
法務省入国管理局『平成 22 年度における留学生などの日本企業への在職状況について』
2011
株式会社マイナビ『2012 年卒マイナビ企業新卒内定状況調査』2012
守屋貴司著『日本の外国人留学生・労働者と雇用問題』晃洋書房 2011
あとがき
2 年間ゼミをやってきて、プレゼン大会の次に頑張ったのがこの卒論です。企業へのイン
タビューや学校の事例などを行っていたら、より完成度の高い卒論になったのではという
後悔もありますが、大学生活の最後をゼミの卒論でかざすことが出来て、良かったと思い
ます。
黒田ゼミ、マジ最高です!!!!
ありがとうございました!!!!
28
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