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コンサルタントの選び方

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コンサルタントの選び方
賢い内部統制の構築 コンサルタントの選び方
http://www.hbs.gr.jp/
HBS
Hi ro Busin ess Solut ions
賢い内部統制の構築
<コンサルタントの選び方>
(1)内部統制構築でのコンサルタントの活用
(2)コンサルタントに聞いてみよう
(3)こんなコンサルタントに気をつけよう
(4)コンサルタントの選び方
(5)RFP(提案依頼書)の発行とRFI・RFQの適宜利用
(6)コンサルタント選びを病院選びと譬えて
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賢い内部統制の構築 コンサルタントの選び方
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(1)内部統制構築でのコンサルタントの活用
内部統制評価や監査の義務化への対応は、コンサルタントなしでできるか(=ツールや
コンサルタントを利用しない)と質問されれば、「残念ですがNoです。何らかの形でコ
ンサルタントを活用することが賢明です。」と答えることになるだろうと思う。余計なコ
ストをかけずに対応したいと考えているところが多いことは十二分に理解しているつもり
である。しかし、正直言って、あきらめる方がいいと思う。なぜか。以下の理由による。
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内部統制の構築はどこも経験がないので、経験ある人と共にやる方が賢明。
内部統制監査は監査人の胸先三寸で決まるので、調整できる人がいる方がよい。
バブル期以降のリストラで管理部門に十分な要員がいない。
社内調整(トップマネジメントや関係部署)との意見調整は第三者機関を交える方
がより進めやすい。
9 コンサルタント会社の他社事例を採り入れることができる。
9 プロジェクトマネジメント能力が求められるので、社内より社外がよい。 等々。
最近、「コーチング」ということが流行っている。スポーツでも良いコーチにつくこと
は大切なことである。確認したいこととして、スポーツでのコーチは試合の主役ではない。
コンサルタントはあくまでも下地であり、表に登場する役割にはない。企業によっては、
コンサルタントに丸投げしたり、全てをやってもらおうという風潮がある。良いコーチを
採り入れても、試合に出るのはコーチではなく選手(企業側の要員)であることをよく認
識すべきである。
コンサルタントは、クライアントがより効率よく、より効果的に行動できるよう焦点を
絞り、あらゆる行動の選択肢を明確にする役割を演じる必要がある。そのため、内部統制
に関わる知識の習得はもとより、コミュニケーションのための「聞く」「観察」「提案」
「調整」等のスキルが要求され、クライアントが保有している「スキル」「資源」を効率
的に利用し生産性を高めるための仕事が求められる。
コンサルタントを選ぶ際には、以下のようなことを確認することが大事である。
・ これまでの経験(クライアント数、経験業種、年数)
・ 専門的な知識をどこで学習したか(出身校、職歴、年数)
・ 何かの認定資格を取得しているか
・ 内部統制以外の専門領域はなにか
・ 他にどんなスキル、知識を持っているか
こうしたことは書類でわかることであるが、コンサルタントを選ぶ際に、最も大事なの
は相性であり、コミュニケーションがうまくいくかどうかである。話しやすいか、話し方
のテンポは合っているか、安心して関わることができるかなどを確認することが求められ
る。したがって、書類だけで判断せず、必ず面接によって決めていくことをお勧めする。
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(2)コンサルタントに聞いてみよう
コンサルタント会社から「当社に任せて下さい・・・。とか、「最高のエース級を派遣
しますから・・・」。とか、「全て任せて下さい!」「ご安心下さい!」とか言われても
鵜呑みにしてはいけない。こういうことは、どんなコンサルタント会社の営業でも言うこ
とである。仕事の取り極めの前には、どこでも「当社が一番です」と主張するので、見極
める目を養う必要がある。
例えば、住宅展示場に行当社の建物は地震に弱いです」とか「断熱・防音に弱点があり
ます」とか言うはずがない。鉄筋・鉄骨・木造、それぞれに優劣があるはずなのに、どこ
も素晴らしいように思えるようなものである。
住宅での大切なことは、営業担当者ではなく「現場監督を誰が務めるのか」というこ
とは言うまでもない。しかし、契約してから現場監督と面談するという流れになる場合が
少なくないのでないか。むしろ、多いのではないか。日本の場合、営業担当者と何回とな
く打ち合わせを重ねていくと、情が移っていき、全部任せて大丈夫だと思ってしまうよう
な風潮があるのではないか。そうなっていくと、現場監督と予め面談することは大事だと
思っていても、この重要なステップを見過ごしてしまうことになってしまいがちになる。
人事の採用でも面接をするのは当たり前である。したがって、実際の担当予定者(で
ないとダメ!)に以下のようなことを聞いてみるとよい。コンサルタント会社の営業や
上司の話を鵜呑みにしてしまうと、後で取り返しのつかなくなることもあり得る。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
ダイレクトレポーティングの廃止はどう思いますか
フレームワークに何を利用しますか
内部統制では何が重要ですか
内部統制は、何から始めればいいですか
SOX法についてどう思いますか
監査人との連携で大切なことは何ですか
日本版SOX法ではなぜ「ITへの対応」が基本的要素に入ったのですか
内部統制構築上のコンサルタントの役割は何か
相手の資質を見極めることが目的なので、「正解は何?」ということは特に限定しない。
むしろ、予想もしない良い応対でも見られたらその方は“○”ということになる。たとえ
ば、「もしあなたが銀行の支店長として、夕方、一日の帳尻が100円合わないことが発
覚したらどうしますか?」との質問を投げかけるようなものである。
ある人は、「迷わずポケットから出す」と答える人もいるだろうし、「合うまで返さな
い」という人も中にはいることと思う。サプライズな回答はどういうものだろうか。
どうしてこのような質問を作ったのか、回答上のポイントはどういうものなのか、私の
意見を述べさせていただく。できることなら、最後に「あなたは誠実ですか」との質問
を加えてみたかった。だが、このように質問しても「そうですね」としか応えようがない
と思うので、割愛してしまった。
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① ダイレクトレポーティングの廃止はどう思いますか
いわゆる日本版SOX法では、米国SOX法で実施しているダイレクト・レポーティン
グがない。ダイレクト・レポーティングとは、監査人が、直接内部統制監査を行って意見
表明することである。これによって米国では多大なコストがかかったとの批判から日本版
SOX法では要求されていない。しかし、ダイレクトレポーティングの廃止によって、企
業の内部統制報告書を監査人はチェックするだけで自ら検証できない、いわばダルマ状態
になる。監査人が直接内部統制を評価せずどうやって監査上の意見表明ができるのかとの
困惑の声は多い。したがって、踏襲しようが廃止しようが問題となる。
私自身、ダイレクトレポーティングの廃止は、米国SOX法との相違点の5本指に入る
大事な論点だと思っている。このことに対してどのような意見を持っているのか、資質を
見極めるのに良い質問ではないかと思う。
ダイレクトレポーティングって何ですか? というような応対をすれば論外である。
「チクること」とか「ダイエットレポート」とかの勘違いがあればおもしろい。
② フレームワークに何を利用しますか
内部統制構築でベースとなるフレームワークのことを聞いてみる。つまり、どのくらい
知識があるかということである。なんだかんだ言っても「COSO」は内部統制のバイブ
ルのようなものなので、これが出てこないコンサルタントは厳しい。。日本ではIT統制
が取り立たされているので、COBITであるとかITILが出てくることもあろう。ま
た、ISMSが話題になるケースもあるだろう。これらは決して必須ではないと思う。実
施に内部統制監査に対応していくと、以下のようなことが検討課題になり、こうしたこと
の解を持っていることが重要でITへの対応は
9 「全社の売上高(利益)の何パーセントを構成する部門・業務プロセスを内部統制の
整備・評価対象にすべきか」
9 「業務プロセスを『文書化』するための図表をどのような様式で作成すればよいか」
9 テストはどのように行うか。テスト範囲はどう決めるか。
日本での法制化であるので、金融庁内部統制部会から公表されるものは必須であり、最
も拠り所になっていくのは「実施基準」となるだろう。
③ 内部統制では何が重要ですか
こういう質問には答えはないが、資質を見極めるのには適した質問ではないかと思う。
予想もしないような良い応対があるとか、経験に根付いた深く頷くようなコメントが返っ
てくれば素晴らしい方かと思う。
私ならなんと答えるだろうか・・・。無難な答えとして「会社のためになって、かつ、
従業員のためになるような視点で取り組むこと」と言うことにしておきたい。
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④ 内部統制は、何から始めればいいですか
こういう質問になると、少しは現実的なものになってくる。内部統制そのものの議論も
必要であるが、実際に構築していくとなると、当然、手順が必要になってくる。進め方の
コツがあるものである。そこで、こういう質問をぶつけてみると、そのコンサルタントが
構築経験があるかどうか、どうすれば効率的に進められるかを考えてるかどうかがわかる。
⑤ SOX法についてどう思いますか
私自身はSOX法は悪法極まりないものと思っています(笑)。良きにつけ悪しきにつ
け、SOX法に対する持論を持ってる人が望ましいと思う。どこがいいとこなのか、どう
いうように対応すればいいのか、欠点は何か、等々、コンサルタント自身が前向きに法を
噛み砕いて理解しておくことが大事なのである。
これを抜きに、「法制化されるから内部統制を強化しましょう」としか言わないような
コンサルタントは自分の営業のことしか考えていないと言ってよい。
私は、多くのコンサルタント会社もSOX法対応が「無駄だ」「意味がない」と感じて
いることと思う。ただ、SOX特需のビジネスチャンスを逃したくないとの思いが大半で
ある。そういうコンサルタントは否定的なことを絶対に言わない。どちらかというと臆病
なのである。自分に自信があれば自分の主義主張を堂々と述べることと思う。
⑥ 監査人との連携で大切なことは何ですか
最終的に、監査人が内部統制監査の意見表明を行うので公認会計士の思考回路・行動パ
ターンを理解している人が望ましい。このような質問で、「定期的な情報交換の場を設け
る」「何か生じたときの報告先に含めておく」「会計監査人の中での報告ルート(上司と
部下)に留意する」というような応対が返ってきたら及第点を与えられると思う。
⑦ 日本版SOX法ではなぜ「ITへの対応」が基本的要素に入ったのですか
理由を聞かれても「わからない」と答えるのが普通である(笑)。ただし、金融庁の内
部統制部会の議事録はホームページで公開されていて、議論の経緯が誰にでもわかるよう
になっている。ちなみにIT統制が入ってくる理由として第四回の議事録では「財務諸表
の作成は情報システムにその多くを依存していることから、情報システムが有効に機能し
ているか否かが、内部統制に不可欠であり、評価・基準を策定する際には、IT統制につ
いても、重要な部分を基準に織り込んでいく必要があるのではないか」と記載されている。
こうした回答が模範回答であるとは言い切れないが、普段から「なぜ?」と考えてる人
がいいのではないか。
⑧ 内部統制構築上のコンサルタントの役割は何か
通常、コンサルタントの役割は提案書での体制図上、位置付けや役割がしっかりと記述
されているべきものである。企業側の体制と役割、コンサルタントの作業内容と役割、こ
れらは計画段階で確立されている必要がある。そうでなくとも、実行段階になるといい加
減になっていくものであるので、せめて計画段階ではしっかりして欲しい。計画段階でな
ければ、どうしようもないほどひどくなる。
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(3)こんなコンサルタントに気をつけよう
コンサルタントは相性のようなものなので、一概に「良い悪い」は特定しずらい。だが、
以下のようなコンサルタントはよくないと言えるのではないか。
① 話さない
どれだけ知識があろうが、人にうまく伝えられなければコンサルタントとして失格であ
る。メールで書ければいいと思うかもしれないが、最後に大事なのは対話の中で進めてい
くことである。その点、話さない人は失格といえるのではないか。
② 大声で説得しようとする
自分の主張を通そうと大声で説得しようとするようなコンサルタント、内部統制を強化
しろと力説するようなコンサルタント、こういう人は危険である。
そもそも内部統制の度合いをコンサルタント
③ IT統制やCOBITを前面に出す
SOX法における効果的なIT投資とは「手作業で実施していた作業を自動化して効率
を上げる」ことである。米国の事例によると、手作業を始める前にIT投資した企業は、
皆失敗しているようである。なぜなら、ユーザ部門側(財務、営業)で要求仕様が固まっ
ていない段階でのIT投資は、大抵、手戻りとなって失敗してしまうのである。米国の事
例を踏まえれば、初年度にSOX法対応の業務フローを確立し、2年目以降にIT投資を
して効率化するのが王道のようである。
ところが、「ITへの対応」が入ったばっかりに、ここぞとばかりIT投資を始めてし
まうと、二の舞になりかねない。また、COBITはたしかに網羅性も内容も優れてはい
るけれど、これに沿って運用していこうとなると現実的でない部分がある。それを知って
るコンサルタントはCOBITを前面に出そうとはしない。そもそもIT全般統制に関る
経験を積んでいるコンサルタントは希少価値であって、COBITを前面に出すコンサル
タントはIT統制の経験がなく、書物等の勉強をし始める中でCOBITを勧めていくよ
うになるのである(かくいう私がそうであった。。。)
④「大変だ大変だ」と煽る
米国のSOX法と日本のものとは異なるはずなのに、SOX法(米国)404条の対応
事例を引き合いに出したり、リスクや業務プロセスが何百・何千になるとの例を挙げて大
変さを煽るようなコンサルタント、こういう人も危険ではないか。
コンサルタントは、本来、企業の味方であるはずなのに、これではどちらが味方かわか
らなくなってします。
ともかく、SOX法をSEX法と読み間違えるような、結局、金と欲望にしか興味ない
コンサルタントは意外と結構多い。こういうコンサルタントを採用しないよう、賢く見極
めていきたいものである。
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(4)コンサルタントの選び方
一般的に、コンサルタントに発注する方法は、以下の4つがあるようである。
① 特命方式
会社が自力で、もしくは信頼する第三者の紹介を経て、これぞと思うコンサルタントに
直接依頼する方式。可能であれば、これは会社にとってもコンサルタントにとっても明快
で、最も自然な選定方法ではないかと思う。
② 競技(コンペ)方式(多分、一番多い)
与条件を整理した上で、公募または指名によって複数の提案案を求め、最も優れた提案
案の提出者に仕事を依頼する方式である。実行にはそれなりのエネルギーを必要とします
が、手をかけるだけの成果は得られる。広く提案を募りたい場合には、この方式がよい。
③ プロポーザル方式
公募または複数者の指名によって、応募者に過去の提案実績等の資料に加えて若干の技
術提案の提示を求め、これらを総合して提案者を選ぶ方式。
④ 入札方式
物品の調達先や施工業者を決めるのと同様に、提案料を入札で競わせて提案者を決める
方式。入札は、誰が行っても結果の同一性が保証される場合には有効ですが、建築提案は
内容や質があらかじめ特定できず、提案者の見識や力量、提案に投じる時間などによって
大きく左右される。したがって、品質を保ちうる提案条件が綿密に作成できるといった特
殊なケースを除けば、不適当な方法といえる。
<コンペ方式とプロポーザル方式との違い>
コンペ方式は「提案内容を比較する」のに対して、プロポーザル方式では「提案者を選
ぶ」という点が異なる。つまり、コンペ方式では「どの案が一番よいか」が競われ、プロ
ポーザル方式では「どの提案者が適当か」が問われる。
コンペ方式は「提案内容の選定」が目的ですから、案の優劣を判断するのに必要な体制
図・機能などの提出を求めることになります。また、原則として当選案が実施設計を経て、
そのまま実現されることになります。一方、プロポーザル方式では、「コンサルタントの
選定」を目的に(提案者の考え方や力量を知るために)「技術提案」を求めるわけで、案
自体には拘束されない(変更もありうる)ことになる。したがって「案」の表現も構想図
程度の精度にとどめ、代わってヒアリングを通して提案者の考え方や人物・体制などを確
かめた上で総合判断する。
内容が特定できない場合、まず、「どこに」を決めるのも一案(特命に近い)である。
いずれにせよ、要求仕様をまとめ、RFP(提案依頼書)を発行し、お互いの納得の元で
選定されていくのが望ましいと思う。
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(5)RFP(提案依頼書)の発行とRFI・RFQの適宜利用
コンサルタントを利用する場合、後で「言った」「言わない」のような争い事にならな
いよう、要求仕様を書面にしておくことが大事である。一般的に要求仕様はRFP(
Request for Proposal = 提案依頼書)と呼ばれる。
RFPをまとめる目的は、概ね以下の通りである。
・現状の整理
意外と現状を第三者に伝えられるほどまとまっていないものである。
・要望の整理
課題や要望を話し出すときりがなく出てくる。端的にまとめることが必要。
・文書化による社内意見の調整・共有化
大抵、社内の意見はまとまりにくいものであり、たたき台の状態であっても
文書として何かあるとまとめやすいものである。
多くの問題の一つに「私は知らなかった、聞いてない」ということがあるの
で、文書としてまとめて共有化するのがよい。
・ベンダーからの誤解の予防
外部に頼むときは、体制/役割/作業内容/成果物 を予め確定させて発注
すべきである。これらが曖昧であればうまくいくはずがない。
・第三者に聞きやすい(複数ベンダーに依頼しやすい)
一方、RFPをまとめておかないと以下のような弊害が起こる。
・延々と会議や議論が続く。
・あれもやりたい、これもやりたいとなる。
・現状を整理できない。
・後で「言った」「言わない」の揉め事になる。
・相談してもうまく伝わらない。
・範囲がどんどん広がり収拾がつかなくなる。
RFPの発行先は何社ぐらいが適当か。私は3社からせいぜい5社が適当かと思う。と
ころが10社程度にRFPを発行しているケースが散見される。その場合、企業側もコン
サルタント側も骨が折れる。たしかに、広く色んな会社の意見を聞いてみたいとの思いは
理解できる。その場合、RFPではなく、RFI(Request for Information = 情報提供
依頼)を発行してみてはどうだろうか。
RFI(Request For Information) は「提案要請」を作成するために必要な情報提供を
依頼する文書である。RFIは一般的にRFPに先立って発行されるが、必ずしもRFI
発行先は発注先の選定候補にはなりえない。これに対して、RFPは、調達の目的を達成
するために調達対象の情報化資源に対する提案を求め、最適な調達先を決定するための「
提案要請」である。両者の違いを住宅建築に譬えてみれば、RFIは「住宅展示場を回る
」「雑誌やインターネットで調べる」「どんな工法があるかを学習する」「価格の目安を
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知る」「カタログを請求する」といったようなもので、何気なく会社を見極めるものであ
る。こうした活動は7−8社から10社以上でも構わない。これに対してRFPは、仕様
を決めプランと見積を依頼する。3社からせいぜい5社ぐらいが妥当である。
なぜRFIを発行するのか。最初からRFP作成に着手できればいいが、以下のような
状況があるからである。
・自企業だけでは要望をまとめきれず、調査の必要がある。
・新技術が登場してきている。
・思わぬ良い会社がある場合がある。
・調査活動をしながら社内の意識が高めたい。
・コストの目安を予め知っておく。
・導入事例を探求する。
RFPを作成することは、骨が折れる作業であるので、そのための情報収集としてRF
I発行は有効である。
次に、RFQ(Request for Quatation = 見積依頼)ということに触れたい。コンサル
タント会社にすれば、RFPを見ただけで、責任あるサービス提供価格を提示することは
難しい場合がある。価格を提供するということは仕様や状況が全て把握されないといけな
いが、提案段階では不確定な要素が多い。確定した価格を提示するためには、ユーザー/
ベンダー共に相当の労力を要することから、提案段階での価格提示は概算に止め、その後
に詳細な見積依頼(=RFQ)を行う手法も一案かと思う。そうすれば、RFP作成段階
で価格策定に必要な全ての情報を提示する必要もなく、一歩前に進めることができる。
良いRFPは、「利害関係の無い」「上流ができるプロが書くのがいい」と思う。言い
換えれば、「中立な立場」で、「短期間」で、「少人数の専門家」で行うことである。
RFPは単なるベンダへの告知文書というわけではない。また、暗黙の了解で落札が決
まっている業者が形式的に作るものではない。中立に良いRFPを作成することができた
ならば、その後の導入もうまくいくものである。しかし、企業側にRFPを作成できるだ
けの資源がなく、RFP作成自体をベンダーに依存する場合もある。そうなると、識者の
意見を聞くつもりが、結局ベンダの思惑通りのRFPになってしまうことを危惧する。
中立性を指向するあまり、経験の少ない素人担当が作ったRFPは、ボロが出やすく、
プロジェクト全体を凌駕するものにはなり得ないものである。
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(6)コンサルタント選びを病院選びと譬えて
コンサルタントを選ぶことを「病気になったらどの病院にかかるか」との譬えから、考
えてみることにしよう。その場合、
• これまでにかかったことのある病院
• 知り合いの紹介
• 近くの病院(意外と多い)
• 本やネットで調べる
といったような方法によることと思う。評判については「あそこの病院はよかった」「
ここの病院はやめる方がいい」というようなものがあるかと思うが、意外と「あそこの病
院のXX先生はよかった」とか「ここの病院のYY先生は悪かった」と担当医まで言及し
ているケースばかりではない。
よく「組織」か「人」かとの議論があるが、コンサルタントは「人」によって大きく変
わる。なので、「どこそこ」の会社が良かった/悪かった、だけの判断ではなく、「どこ
そこ」の「誰」が良かった/悪かった、との判断をして欲しい。
大企業になればなるほど、大きな病院にかかることが多い。「どこが良い」「ここはダ
メ」と様々な関係者が言ってくるので(いわば親戚のようなものである。普段ロクな付き
合いもしないのに、肝心な時には口出して、主張が通らないと後々ややこしくなるのであ
る)、担当者としてもどの病院にかかるかを調整するのに疲れ、これまで付き合いがあり、
それなりに大きな病院で、無難なところを選んでしまう。万が一、そこで死亡してしまっ
たところで、親戚に対して説明がつく。
反対に、「ここはいい」と探し出したような病院であれば、うまく行く時は良いが、1
00%うまく行くとは限らないので、うまく行かなかった時の批判が恐くなる。本来、新
しいことをやろうとするなら、新しいところと共にやるのがいいのだが、しようがないよ
うである。
どこがいいか迷った時は、「セカンドオピニオン」のようなことをするのがいいと思う。
医療の世界でも大病になったと思えば、2つから3つぐらいの病院を周り、本当にそうな
のかを確かめてみることが必要である。
実は、専門家の意見ほど多様なものはない。この事実が意外とわからないようである。
「あの先生が言ったことだから」と一人の意見を鵜呑みにしてしまうようである。もし、
法の世界であって、一人の意見が通ってしまうならば裁判は不要になってしまう。色んな
解釈や考え方がある分野が専門家を必要とする分野である。
ところが「士族」に弱いのが日本社会のようである。
内部統制監査が必要となった背景には、外部監査がうまく機能しなかったと、外部監査
のあり方を見直すのが筋であると思うが、いつの間にか、企業側の内部統制が悪いのでは
と問題が摩り替わっているようにさえ思える。「士族」といえども金を払っているのは企
業側である。しっかりと見極めて欲しい。
病院の言われるがままの治療によって死んでしまったら悔いだけが残る。大事なのは企
業側の主体性である。
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