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17 Clostridium perfringens A 型および Clostridium
17 Clostridium perfringens A 型および Clostridium septicum が分離された肉用鶏の壊疽性皮膚炎 県北家畜保健衛生所 二ノ宮 奈緒子・森田 光太郎 中央家畜保健衛生所 高山 1 はじめに 裕介 でマレック病(MD)、トリニューモウイルス感染 壊 疽 性 皮 膚 炎 は 、 Clostridium septicum 症(TRT)、伝染性気管支炎(IB)および大腸菌 (C.septicum)または Clostridium perfringens (E.coli)。10 日齢と 17 日齢でニューカッスル (C.perfringens)の感染により、皮膚病変を伴 病(ND)および伝染性ファブリキウス嚢病(IBD) って鶏が急死する疾病である。C.perfringens に を実施していた(表−2)。 よる症例の報告は少なく、主に C.septicum の感 表ー2 ワクチン歴 染により、4から8週齢のブロイラーに多発す るとされている[1]。 今回、管内の肉用鶏農場で、C.perfringens A 0 10 MD・TRT IB・E.coli ND・IBD 17 日齢 型および C.septicum による壊疽性皮膚炎が発生 したので、その概要を紹介する。 2 発生概要 ND・IBD 平成 23 年3月 17 日、肉用鶏(US チャンキー 種)約 72,000 羽を堆積式飼育する農場において、 6鶏舎のうち3鶏舎で沈うつ、呼吸器症状およ び死亡鶏の腐敗が早いとの稟告で、病性鑑定を 各鶏舎5羽について、インフルエンザ簡易検査 を実施し、陰性を確認した。 実施した。 各鶏舎から、死後間もない死亡鶏3羽ずつ(6 号鶏舎は4羽)の計 10 羽を病性鑑定に供した。 剖検の結果、胸部から腹部の筋肉の煮肉様変性 表−1 発生鶏群の概要 が見られた(図―1)。また、心のう炎・肝包膜 鶏舎 2号 5号 6号 A B B 入雛日 H.23.2.6 H.23.2.13 H.23.2.13 入雛羽数 13,905羽 8,240羽 8,240羽 32日齢 39日齢 39日齢 孵卵場 日齢 炎も認められた。 発生鶏群の概要を表−1に示す。発生鶏舎は 2号、5号および6号の3鶏舎で、5号と6号 は孵卵場および入雛日が同一であった。病性鑑 定時の日齢は、2号が 32 日齢、5号および6号 が 39 日齢であった。ワクチネーションは、初生 - 61 - 図−1 胸部から腹部筋肉の煮肉様変性 胸筋 10 羽分 10 検体を、スライドグラスにスタ ンプし、グラム染色後に直接鏡検を行った結果、 (3)毒素検査(マウス接種法) 全検体で、グラム陽性の長桿菌・大桿菌・球菌 C.perfringens 10 検 体 10 株 、 お よ び と、少なくとも3種類の細菌が確認された(図― C.septicum 2検体2株について、定法にしたが 2)。 いマウス2匹ずつに実施した。C.perfringens に ついては、培養上清 0.5ml を尾静脈接種し、 C.septicum については、培養菌液 0.2ml を大腿 部筋肉内接種した。 結果、C.perfringens については、全て 48 時 間以内に2匹とも死亡した。また C.septicum に ついても 24 時間以内に2匹とも死亡し、さらに 肝臓から同菌が回収された。 図−2 胸筋スタンプ標本(グラム染色) 4 まとめおよび考察 今回の症例は、臨床症状および細菌学的検査 3 所見から、C.perfringens A 型および C.septicum 検査成績 による壊疽性皮膚炎と、鶏大腸菌症の合併症と (1)細菌分離 胸筋 10 羽分 10 検体をそれぞれ 63℃・30 分間 診断された。 加温処理したものを、10%卵黄液添加カナマイ 対策として、アモキシシリンの飲水投与を実 シン含有 CW 寒天培地(ニッスイ)に接種し、 施したほか、病原微生物の鶏舎間拡散を防止す 37℃・48 時間嫌気培養(嫌気ジャー法)した結 るため、発生後早期に管理者を鶏舎ごとに決め、 果、24 時間培養で C.perfringens が、48 時間培 さらに各鶏舎専用の長靴を設置するよう指導し 養で C.septicum が分離された。 た。また、病原微生物を排除するため、出荷後、 なお、各鶏舎2羽の加温処理前の胸筋からは、 鶏糞・敷料を全量搬出し、鶏舎を清掃・水洗後 Staphylococcus lentus が、各鶏舎3羽の主要臓 に塩素系消毒薬で消毒・乾燥を2回行い、鶏舎 器からは大腸菌が分離された。 周囲や通路への消石灰散布を実施した。 2月入雛群において、出荷率(出荷羽数/そえ (2)PCR 法 C.perfringens は、主要毒素(α、β、εおよ びな含む入雛羽数)は、2、5および6号鶏舎 びι)の組み合わせで、A 型から E 型の毒素型に の発生が影響し、農場全体で 76.1%であったが、 型別される(表−3)。分離された C.perfringens 対策の結果、8月入雛群については、97.7%と改 2株について、定法にしたがい PCR を実施した 善した。なお8月入雛群は、出荷先が変更した 結果、どちらもα毒素を産生する A 型と同定さ 影響で、鶏舎ごとの出荷率の算出が不可能であ れた。 った。 表ー3 C.perfringens の型別 菌型 A型 B型 C型 D型 E型 表−4 出荷率(%)の推移 主要毒素 入雛月 α β ε ι + + + + + − + + − − − + − + − − − − − + 全体 2月 88.1 56.6 80.9 77.2 71.8 82.7 76.1 4月 92.6 93.0 94.6 91.7 93.2 94.0 93.1 6月 94.0 94.9 94.5 95.3 92.2 92.7 94.1 ( 97.7 ※ 2号 3号 4号 6号 8月 1号 99.0 5号 ) ( 93.5 ) ※8月入雛群は、1から4号および5・6号 を、それぞれまとめた成績 - 62 - 一般にクロストリジウムのような芽胞菌は、 環境に強く、いったん侵入を許すと、清浄化が 難しく、その後も再発を繰り返すと言われてい るなかで、今回の事例では、その後の再発もな く、出荷率も改善傾向を示すことができた。 参考文献 [1]鶏病研究会編:カラーマニュアル鳥の病気 第4版,83-84(2001) - 63 -