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第8回レスキューロボットコンテストにおける 計算機システムの性能評価
第 8 回レスキューロボットコンテストにおける 計算機システムの性能評価 °小枝 正直(大阪電気通信大学),小島 篤博(大阪府立大学),山内 仁(岡山県立大学), レスキューロボットコンテスト実行委員会 Performance Evaluation of Computer System for 8th Rescue Robot Contest °Masanao Koeda, Atsuhiro Kojima, Hitoshi Yamauchi, Executive Committee of Rescue Robot Contest Abstract— Rescue Robot Contest is a robot competition concerning lifesaving in urban disasters. In this competition, in order to evaluate the operations of rescue robots, sensor mounted dummies for simulating disaster victims are used and the sensor data are stored to RDBMS. In this report, the results of performance evaluation of the computer system for 8th rescue robot contest are presented. 1. はじめに 筆者らが運営しているレスキューロボットコンテス ト(以下レスコン)[1] は,大規模都市災害における救 助活動をテーマとしたもので,今年で 8 回目を迎えた. 本コンテストでは競技運営のために独自の情報システ ムを構築しており,競技状況の管理,得点計算,観客 への競技状況提示等の処理を行っている.第 7 回競技 会から競技の評価基準となる救助ダミー(以下ダミヤ ン)が一新され [3],これに対応するために計算機シス テムの構成も大幅に見直した [2].本システムの特徴は, PHP を用いた Web ベースのユーザインタフェースと リレーショナルデータベース(以下 DB)による Web アプリケーション型システムとなっている点である. 本報告では,第 8 回における計算機システムの変更 点,およびダミヤンから得られるデータの DB への書 込み処理能力について述べる. 3. 第 8 回での主な変更点 OS の変更 前 大 会 で は Master Server の OS を VineLinux4.2 としていたが,最新のカーネル及 びデバイスドライバを利用するために第 8 回では Ubuntu8.04 に変更した.これに伴い,各種アプ リケーションも Table 2 に示す通りにアップデー トした. ダミヤン数の増加に対応 第 8 回から競技に用いられる ダミヤン数が 6 となったため,DB のテーブル構 成,Receiver のデータ送信,Display の画面配置, Entry のインタフェースなど各サブシステムを改 変して対応した. センサ値のオフセットを実装 ダミヤンのセンサ値のオ Master Server HTTP Web Server 2. 計算機システム概要 本計算機システムは以下のサブシステムから構成さ れる.サブシステム間の接続の概略を Fig.1 に示す. Master Server(基幹システム)競技の最新状況,ダ ミヤンのセンサ値等を記録するための DB,後述 する Entry に必要な Web サーバと PHP 等が動作 している.Table 1, 2 にサーバ機の仕様を示す. Entry x2 Web Browser PHP ODBC RDBMS Receiver Bluetooth Visual Basic JDBC Damiyan Score Java UDP Display x2 VGA Visual Basic Projector x2 Fig.1 System overview Receiver(ダミヤンデータ受信システム)ダ ミ ヤ ン からのセンサ値を受信し,DB に逐次記録する. Visual Basic により実装されている. Entry(情報入力インタフェース)競技中に発生する イベントやダミヤンのセンサ補正情報入力のため のインタフェースを提供する.PHP により記述さ れ,DB へデータの読み書きを行う. Display(競技情報表示システム)競技会場内に設置 された大型ディスプレイ等に競技情報を表示する. VisualBasic により実装されている (Fig.2). Score(競技進行管理システム)競 技進行を管理し, その情報を Display へ送信する.Java により実 装されており,DB との連携には JDBC を用いて いる.Master Server 上で動作している. Fig.2 Display snapshot Table 1 Specification of Master Server CPU HDD RAM FUJITSU PRIMERGY TX150 S6 Intel Xeon Processor 3065 (2.33GHz) 73GB (SAS, RAID1) 1GB (PC2-6400) 作戦会議の残り時間表示 競技参加チームに与えらた 3 分間の作戦会議時間をカウントダウン形式でメイ ンモニタに表示するために,DB と Score での同 期処理,Entry へのインタフェース追加等で対応 した. 性能評価 4. 4·1 非同期コミットの有効性検証 第 8 回では,DB の非同期コミット1 を試験的に導入 した.これは物理ディスクへの書込みを待たずに次の トランザクションを処理することでデータベースの整 合性を保ちつつ応答速度を向上させる機能で,ダミヤ ンからのデータのような大量の小さなトランザクショ ンを効率的に処理できるようになる2 . 非 同 期 コ ミット の 有 効/無 効 に よ る DB へ の 書 込 み 性 能 を 調 べ る た め に ,1000 レ コ ー ド を 1.0, 16.6[msec/record] で書込んだ際の処理時間を計測した. その結果,Fig.3 に示すように,非同期コミットの場合 に高速にトランザクション処理できることが示された. また,本システムにおける同期・非同期コミットでの 1 レコード処理時間はそれぞれ 4[ms], 1[ms] 程度と推定 できる. 4·2 ダミヤンのデータ記録間隔 Fig.4 は,ファーストミッション第 1 競技紫ダミヤン のデータで,レスキュー活動開始から約 5 秒間に DB に記録されたデータを元に作成した.横軸はデータの シリアル番号,縦軸は連続する 2 データの時間間隔で ある.ダミヤンには無線データ送信機(以下 WAA)が 内蔵されている [3] が,本大会ではそのデータ送信間隔 を 0.1[sec] と設定していた.しかし DB 上では一定間 隔で記録されておらず,大半が約 0.01[sec] 間隔か,約 10 データ毎に約 1[sec] 間隔で記録されていたことが分 かった3 . Table 2 OS and softwares OS, Software Ubuntu postgresql apache php sun-java-jdk Version 8.04 LTS Server amd64 kernel 2.6.24-19-server SMP 8.3.3 2.2.8 5.2.4-2 6.06 競技終了後,Receiver の一部を修正して再実験した ところ,Fig.5 の結果が得られ,ほぼ 0.1[sec] の安定し たデータ間隔となることを確認した. 5. おわりに 本稿ではレスコン第 8 回競技会において運用した計 算機システムの性能評価とその結果について述べた.解 析の結果,非同期コミットの有効性が示された.また 競技においてダミヤンデータの DB 上での時間間隔が 不均一であったことが判明した.この問題は Receiver の修正により改善されることが分かった.WAA から 送信されるパケットにはデータ計測時刻も含まれてお り,これを利用することで痛み算出精度が向上すると 考えられる.次回の競技会では,ここで得られた結果 を元に計算機システムの改良を行い,より正確なデー タ収集と適切な競技評価システムの構築を目指す. 謝辞 株式会社富士通岡山システムエンジニアリング様に はサーバ機譲渡及び機材レンタルに多大なご協力を頂 きました.ここに心より感謝の意を表します. 参考文献 [1] レ ス キュー ロ ボット コ ン テ ス ト 公 式 サ イ ト: http://rescue-robot-contest.org [2] 小島,山内,小枝:“レスキューロボットコンテス トのための競技運営システムの開発”,第 7 回情報 科学技術フォーラム(FIT2008), O-001 (2008). [3] 沖,升谷他:“レスキューロボットコンテストにお ける新レスキューダミーの提案” ,第 7 回計測自動 制御学会システムインテグレーション部門講演会 (SI2006)講演論文集, 1G3-5, pp.294-295 (2006). Interval [sec] フセットを取れるようにし,不要な痛みを計測し ないようにした. 1.2 1.1 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 Damiyan Data Ideal Interval 0 10 20 30 Data Number 40 50 Fig.4 Data interval in a first mission 25.0 21.1 17.5 15.0 10.0 5.0 4.8 1.8 0.0 synchronous asynchronous synchronous asynchronous 1000 records, 1.0[msec/record] 1000 records, 16.6[msec/record] Fig.3 Effect of asynchronous commit 1 非同期コミットは PostgreSQL8.3 より実装された. ただし DB がクラッシュした際,トランザクションが消 失する危険性がある. 3 この傾向は全競技の全ダミヤンにおいて同様であった. 2 Interval[sec] Time [sec] 20.0 1.2 1.1 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 Damiyan Data Ideal Interval 0 10 20 30 Data Number 40 50 Fig.5 Data interval using fixed Receiver