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第1部4章

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第1部4章
第4章
このPDFは,CQ出版社発売の「電源回路設計 2009」の一部分の見本です.
内容・購入方法などにつきましては以下のホームページをご覧下さい.
<http://shop.cqpub.co.jp/hanbai/books/MTR/MTRZ200905.htm>
専用 RISC マイコンの登場で
普及環境が整い出した
dsPIC による
ディジタル制御電源の試み
田本 貞治
Sadaharu Tamoto
ディジタル制御電源の流行の兆しが見えてきまし
いったん直流に変換し,再度インバータによって交流
た.ディジタル制御電源の一番のメリットは,制御そ
のものがソフトウェア・プログラマブルであるという
に変換して安定化された交流電力を出力します.停電
したときは,バッテリからインバータを介して交流電
ことから,電源装置そのものに大きな可能性を与えて
力を出力します.常時インバータ方式と言います.
くれるということです.しかし,可能性をほんとに現
実のものにできるかどうかは,すべてにおいて価格と
常時商用運転方式は,停電発生時に停電を検出して
バッテリ運転に切り替えるため,切り替え時に 10 ms
のトレードオフになっています.
しかし,半導体技術とくにマイクロプロセッサの進
程度の瞬断が発生しますが,常時インバータ方式は常
にインバータを運転しているため,無瞬断でバッテリ
歩は,そのトレードオフの敷居を大幅に引き下げ,身
近な関心事に変えつつあるというのが最近の状況で
運転に切り替えることができます.
ですから,たとえば堅牢性を要求される情報処理シ
す.
ステムにおけるサーバ
(あるいはパソコン)などへの無
ここでは,ディジタル制御電源のメリットをいち早
く 取 り 入 れ て い る UPS( Uninterruptible Power
停電電源装置として本当に安心して使用できる UPS
となると,常時インバータ方式にならざるを得ません.
System)…無停電電源装置への適用例と,開発に進む
ときの具体的な試作・評価方法について紹介します.
しかしながら,高信頼度の常時インバータ方式 UPS
を実現するには,図 2 に示すように複数のコンバータ
UPS にディジタル制御電源技術を
適用すると
● UPS …無停電電源装置とは
UPS(Uninterruptible Power System)とは,商用電
/インバータを系統的に管理する必要があり,アナロ
グ回路主体の従来型コンバータ/インバータ技術だけ
では,実現がおぼつかなくなります.
● ディジタル制御電源技術を適用すると
源が停電したときでも,装置内部のバッテリに蓄えら
そこで登場するのが,ディジタル制御電源の技術で
れた直流電力を交流電力に変換して出力し続け,負荷
機器が停止しないようにする無停電電源装置のことで
す.ディジタル制御電源の事例として,無瞬断の常時
インバータ方式 UPS について紹介します.
す.
UPS には図 1 に示すように,大別して二つの方式が
動作ブロック図は図 2 に示したとおりですが,商品
の一例を写真 1 に示します.この UPS では,商用電
あります.ひとつは,商用電源が正常なときはバッテ
源を PFC(力率改善)機能をもつ AC − DC コンバータ
リを充電するとともに商用電源をそのまま出力し,停
電したときにバッテリからインバータを介して交流電
によりいったん直流電圧に変換しています.この直流
電圧を DC − AC インバータにより,商用電源と同じ
力を出力するものです.常時商用運転方式と言います.
もう一方は,商用電源が正常なときも,商用電源を
交流電圧に変換して出力します.商用電源が正常なと
きは充電器によりバッテリを充電しておき,停電が発
AC入力
停電検出/バッテリ充電制御
無停電
AC出力
整流・停電検出/
バッテリ充電
AC
DC
AC入力
AC-DC
コンバータ
インバータ
無停電
AC出力
インバータ
バッテリ
バッテリ
(a)常時商用運転方式
(b)常時インバータ方式
〈図 1〉UPS 二つの方式
UPS にディジタル制御電源技術を適用すると
43
直送
AC-DC
コンバータ
(PFC)
AC入力
DC-AC
インバータ
バッテリ電圧昇圧回路
無停電AC出力
AC運転時
バックアップ運転時
故障時
充電器
バッテリ
〈図 2〉常時インバータ方式 UPS を実現するには
しています.図(b)の制御ブロック図に示すように,
2 回路の DC 電圧を A − D 変換して基準電圧との誤差
電圧を求め,演算します.演算が終わると± DC 電圧
〈写真 1〉
フル・ディジタルの 1kVA UPS
(商品型名 UPS1010SS,`ユタカ電機製作所)
が DC160 V になるように,演算結果と基準正弦波信
号との乗算を行って基準電流を生成します.この基準
電流は入力と同じ周波数の正弦波信号となっていま
生するとバッテリ電圧昇圧回路を起動して DC − AC
す.
次に入力電流を A − D 変換し,正弦波状に変化する
インバータを動作し続け,交流電力を負荷に供給し続
けます.
基準電流との誤差を求め,誤差電流を演算して PWM
出力によりスイッチング素子を動作させ,入力電流を
各ブロックはスイッチング電源回路になっていて,
各回路の電圧・電流がマイクロプロセッサ… MPU に
歪みの少ない正弦波電流に変換します.ここでは A − D
変換 4 チャネルと PWM を 1 チャネル使用し,DC 電
よるディジタル制御部のインターフェース… A − D コ
圧と入力電流のディジタル演算を行っています.
ンバータに取り込まれ,各回路の PWM スイッチング
素子…パワー MOS に PWM 信号を出力して制御が行
● ディジタル制御による DC − AC インバータ
われています.
DC − AC インバータは,図 4 に示すようにパワー
MOS を 2 個使用したハーフ・ブリッジ型となってお
● ディジタル制御による PFC +昇圧コンバータ
り,± DC160 V の直流電圧から AC100 V の交流電圧
図 3 に PFC を組み込んだ AC − DC コンバータの構
成を示します.AC100 V を昇圧コンバータ回路によ
に変換して出力します.このインバータでは出力電圧
を A − D 変換し,基準正弦波に追随するように演算し,
り PFC 動作(力率改善)を行いながら整流し,ニュー
トラル・ラインに対して± DC160 V の 2 電源を出力
PWM 出力により 2 個のパワー MOS を交互に
ON/OFF 動作させ,交流電圧を発生しています.
入力 H
AC100V
N
+
D1
CT L
C2
スイッ
チング
回路
C1
DC出力
C3
PWM
出力
入力電流
入力電圧
AD1
AD0
D2
PWM1
MPU
+DC160V
N
−DC160V
−
+DC電圧
AD2
AD3
−DC電圧
(a)AC-DCコンバータ
(PFC)
回路
入力電流
+DC電圧
演算
乗算
−DC電圧
演算
PWM
基準電流
基準電圧
基準正弦波信号
(b)AC-DCコンバータ
(PFC)
の制御ブロック
〈図 3〉ディジタル制御による PFC +昇圧コンバータ
44
第 4 章 dsPIC によるディジタル制御電源の試み
PWM出力
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